JP2020111523A - 機能性ナノ構造体 - Google Patents

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一樹 上田
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Abstract

【課題】構造安定性および温度応答性を有するナノ構造体を実現すること。【解決手段】親水性ブロックと疎水性ブロックとを含む第1の両親媒性分子が複数個集合して構成される第1の領域と、第1の両親媒性分子とは異なる第2の両親媒性分子が複数個集合して構成される第2の領域とを含む壁部で囲まれている中空体であって、上記壁部の第2の領域が固相から液相に転移する相転移温度において上記第1の領域は固相である。【選択図】なし

Description

本発明は、ナノ構造体、およびその製造方法に関する。
近年ナノテクノロジーの重要性が高まっており、ナノサイズ物質特有の性質を活かした種々の新規機能性材料が開発されてきた。このようなナノサイズの機能性材料は、エネルギー、エレクトロニクス、および医薬等の幅広い分野への応用が期待されている。例えば、医薬分野においては、リン脂質からなるナノ粒子であるリポソーム等が、薬剤送達システム(DDS)におけるキャリアとして利用されている。
また、ペプチドで構成されるナノ構造体として、非特許文献1には、親水性ブロックと疎水性ヘリックスブロックとを有する両親媒性ペプチド鎖を用いて種々の形状のペプチドナノ構造体を作製したことが記載されている。
M Ueda et al., Advances in Biosinpired and Biomedical Materials, volume 1, 19-30 (2017)
より効率的に薬剤を送達しうるキャリアの開発が望まれる。そこで、本発明の一態様は、構造安定性および温度応答性を有するナノ構造体を実現することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るナノ構造体は、親水性ブロックと疎水性ブロックとを含む第1の両親媒性分子が複数個集合して構成される第1の領域と、第1の両親媒性分子とは異なる第2の両親媒性分子が複数個集合して構成される第2の領域とを含む壁部で囲まれている中空体であって、上記壁部の第2の領域が固相から液相に転移する相転移温度において上記第1の領域は固相である。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るナノ構造体は、親水性ブロックと疎水性ブロックとを含む第1の両親媒性分子が複数個集合して構成される第1の領域と、第1の両親媒性分子とは異なる第2の両親媒性分子が複数個集合して構成される第2の領域とを含む壁部で囲まれている中空体であって、上記第1の両親媒性分子は、親水性ペプチドブロックと疎水性ペプチドブロックとを含む両親媒性ペプチド鎖であり、上記第2の両親媒性分子は、脂質である。
本発明の一態様によれば、構造安定性および温度応答性を有するナノ構造体を実現することができる。
ナノ構造体の一例を示す模式図である。 ナノ構造体の製造方法の一例を示す模式図である。 実施例1におけるTEM画像(A〜D、F〜I)、cryo−TEM画像(E)、およびDLS分析の結果(J)を示す図である。 実施例1におけるTEM画像を示す図である。 実施例1におけるTEM画像を示す図である。 実施例1におけるTEM画像およびDLS分析の結果を示す図である。 実施例2におけるCD測定の結果を示す図である。 実施例2におけるCD測定の結果を示す図である。 実施例3におけるFRET解析の結果を示す図である。 実施例3におけるLaurdanテストの結果を示す図である。 実施例3におけるLaurdanテストおよびDSC測定の結果を示す図である。 実施例4における放出実験の結果を示す図である。 実施例4における放出実験の結果を示す図である。 実施例4における放出実験の結果を示す図である。
(概要)
本発明の一態様に係るナノ構造体は、親水性ブロックと疎水性ブロックとを含む第1の両親媒性分子が複数個集合して構成される第1の領域と、第1の両親媒性分子とは異なる第2の両親媒性分子が複数個集合して構成される第2の領域とを含む壁部で囲まれている中空体であって、上記壁部の第2の領域が固相から液相に転移する相転移温度において上記第1の領域は固相である。本発明の一態様に係るナノ構造体は、構造安定性および温度応答性といった機能を有する。
本発明の他の態様に係るナノ構造体は、親水性ブロックと疎水性ブロックとを含む第1の両親媒性分子が複数個集合して構成される第1の領域と、第1の両親媒性分子とは異なる第2の両親媒性分子が複数個集合して構成される第2の領域とを含む壁部で囲まれている中空体であって、上記第1の両親媒性分子は、親水性ペプチドブロックと疎水性ペプチドブロックとを含む両親媒性ペプチド鎖であり、上記第2の両親媒性分子は、脂質である。
(第1の両親媒性分子)
第1の両親媒性分子としては、両親媒性ペプチド鎖等が挙げられる。なお、以下、第1の両親媒性分子が有する親水性ブロックを「第1の親水性ブロック」と称し、第1の両親媒性分子が有する疎水性ブロックを「第1の疎水性ブロック」と称する場合がある。
「第1の親水性ブロック」とは、親水性を示す領域を指す。第1の親水性ブロックが有する「親水性」という物性の具体的な程度は、特に限定されないが、少なくとも、第1の親水性ブロックが、第1の両親媒性分子の他の領域と比較して相対的に親水性が強い領域であり、当該他の領域と共に両親媒性分子を形成することによって、第1の両親媒性分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の親水性を有していればよい。あるいは、第1の両親媒性分子が媒体中で自己組織化して、自己集合体を形成することが可能となる程度の親水性を有していればよい。
「第1の疎水性ブロック」とは、疎水性を示す領域を指す。第1の疎水性ブロックが有する「疎水性」という物性の具体的な程度は、特に限定されないが、少なくとも、第1の疎水性ブロックが、第1の両親媒性分子の他の領域と比較して相対的に疎水性が強い領域であり、当該他の領域と共に第1の両親媒性分子を形成することによって、第1の両親媒性分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の疎水性を有していればよい。あるいは、第1の両親媒性分子が媒体中で自己組織化して、自己集合体を形成することが可能となる程度の疎水性を有していればよい。
一例では、「第1の親水性ブロック」と「第1の疎水性ブロック」とは、両親媒性分子内で互いに隣接している。一例では、「第1の親水性ブロック」と「第1の疎水性ブロック」とは、一方が鎖状の両親媒性分子の一端側に、他方が当該両親媒性分子の他端側に配されている。
(両親媒性ペプチド鎖)
本明細書において「ペプチド」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合した化合物を指す。本明細書において「アミノ酸」は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、およびそれらの修飾および/または化学的変更による誘導体を包含する概念であり、また、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸等を包含する。好ましくは、α−アミノ酸である。本発明において「両親媒性ペプチド鎖」は、ペプチドをベースとする両親媒性の分子であり、一部にペプチド以外の構成要素が存在していてもよい。そのような構成要素として、例えば、N末端またはC末端の修飾、ブロック間の非ペプチドリンカー等が挙げられる。
「親水性ペプチドブロック」とは、親水性を示す領域を指し、一部にペプチド以外の構成要素が存在していてもよい。親水性ペプチドブロックが有する「親水性」という物性の具体的な程度は、特に限定されないが、少なくとも、親水性ペプチドブロックが、両親媒性ペプチド鎖の他の領域と比較して相対的に親水性が強い領域であり、当該他の領域と共に両親媒性ペプチド鎖を形成することによって、両親媒性ペプチド鎖全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の親水性を有していればよい。あるいは、両親媒性ペプチド鎖が媒体中で自己組織化して、自己集合体を形成することが可能となる程度の親水性を有していればよい。
親水性ペプチドブロックを構成するアミノ酸の種類は特に限定されない。親水性ペプチドブロックを構成するアミノ酸としては、例えば、N−メチルグリシン(サルコシン)、リジン、およびヒスチジン等が挙げられる。「親水性」は、例えば、親水性ペプチドブロックを構成するアミノ酸の側鎖による水素結合によってもたらされてもよいし、親水性ペプチドブロックを構成するアミノ酸の主鎖のカルボニル基による水素結合によってもたらされてもよい。親水性ペプチドブロックを構成するアミノ酸は、非イオン性(電荷がない)であることが好ましい。水和による親水性の方がイオンによる親水性よりも弱いため、親水性ペプチドブロックの長さを選択することによって自己集合体の形状をコントロールし易いという利点がある。また、ナノ構造体の表面が非イオン性のポリマーで覆われることで、生体内において異物として認識されにくいという利点がある。このような非イオン性アミノ酸として、サルコシンが好ましい。
親水性ペプチドブロックは複数種のアミノ酸から構成されていてもよい。親水性ペプチドブロックを構成するアミノ酸の種類および比率は、親水性ペプチドブロック全体として親水性となるように当業者によって適宜決定される。
親水性ペプチドブロックを構成するアミノ酸の数は、特に限定されないが、5〜80個が好ましく、15〜40個がより好ましく、20〜35個がさらに好ましく、一例においては26個が特に好ましい。アミノ酸の数が5個以上である場合、親水性の度合いが十分となり、自己集合体が目的の形状を取り易くなり得る。また、アミノ酸の数が80個以下である場合、親水性ブロックが大きくなり過ぎず、自己集合体が目的の形状を取り易くなり得る。
「疎水性ペプチドブロック」とは、疎水性を示す領域を指し、一部にペプチド以外の構成要素が存在していてもよい。疎水性ペプチドブロックが有する「疎水性」という物性の具体的な程度は、特に限定されないが、少なくとも、疎水性ペプチドブロックが、両親媒性ペプチド鎖の他の領域と比較して相対的に疎水性が強い領域であり、当該他の領域と共に両親媒性ペプチド鎖を形成することによって、両親媒性ペプチド鎖全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の疎水性を有していればよい。あるいは、両親媒性ペプチド鎖が媒体中で自己組織化して、自己集合体を形成することが可能となる程度の疎水性を有していればよい。
疎水性ペプチドブロックを構成するアミノ酸の種類は特に限定されないが、好ましくは疎水性アミノ酸である。疎水性ペプチドブロックを構成するアミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、アミノイソ酪酸、ノルロイシン、α−アミノ酪酸、およびシクロヘキシルアラニン等が挙げられる。疎水性ペプチドブロックは、ヘリックス構造を形成していることが好ましい。ヘリックス構造を形成している場合、構造が強固であり、稠密に平行に配向するという利点がある。このようなヘリックス構造を形成するものとして、ロイシン−アミノイソ酪酸、ポリアラニン、ポリグリシン、およびポリプロリン等が挙げられる。
疎水性ペプチドブロックは複数種のアミノ酸から構成されていてもよい。疎水性ペプチドブロックを構成するアミノ酸の種類および比率は、疎水性ペプチドブロック全体が疎水性となるように当業者によって適宜決定される。
疎水性ペプチドブロックを構成するアミノ酸の数は、特に限定されないが、8〜30個が好ましく、8〜20個がより好ましく、12〜16個がさらに好ましく、一例においては14個または16個が特に好ましい。
親水性ペプチドブロックと疎水性ペプチドブロックとの長さの比率は、特に限定されないが、アミノ酸の個数比で1:1〜3:1であることが好ましい。
親水性ペプチドブロックと疎水性ペプチドブロックとは、どちらがN末端側であってもよいが、合成の容易性の観点から、親水性ペプチドブロックがN末端側であることが好ましい。
また、親水性ペプチドブロックと疎水性ペプチドブロックとは、リンカーを介して結合していてもよいし、リンカーを介さず直接結合していてもよい。リンカーはペプチドから構成されるものでもよいし、非ペプチドのものでもよい。
また、両親媒性ペプチド鎖のN末端およびC末端は、安定性(pHや温度等の条件によって分子が変化することなく外部環境に対して安定なナノ構造体が得られる)の観点から、修飾(保護)されていることが好ましい。また、両親媒性ペプチド鎖のN末端またはC末端に蛍光物質等が結合して標識されていてもよい。
両親媒性ペプチド鎖は、好ましい一例において、親水性ペプチドブロックがサルコシンを繰り返し単位として含み、疎水性ペプチドブロックが(ロイシン−アミノイソ酪酸)を繰り返し単位として含む。より好ましい一例において、両親媒性ペプチド鎖は、下記式(I)で表されることが好ましい。mは、特に限定されないが、5〜80であることが好ましく、15〜40であることがより好ましく、20〜35であることがさらに好ましく(20〜30、22〜28、または24〜28等であってもよい)、特に好ましい一例では26である。nは、特に限定されないが、4〜15であることが好ましく、4〜10であることがより好ましく、6〜8であることがさらに好ましく、特に好ましい一例では7または8である。疎水性ペプチドブロックのポリ(ロイシン−アミノイソ酪酸)は、ロイシンのキラリティーが同じである場合、ヘリックス構造を形成する。一例において、ロイシンはL−ロイシンである。Rとしては、特に限定されないが、活性をもたない保護基が挙げられ、具体的にはケトール基およびアセチル基等が挙げられる。Rとしては、特に限定されないが、活性をもたない保護基が挙げられ、具体的にはアルコキシ基(例えば、炭素数1〜4のアルコキシ基)およびベンジルエステル基等が挙げられる。
さらに好ましい一例において、下記式(II)で表されることが好ましい。mおよびnは、上記と同様である。
両親媒性ペプチド鎖の一例としては、例えば、ポリ(サルコシン)26−b−(L−Leu−Aib)(図1のA)、ポリ(サルコシン)26−b−(L−Leu−Aib)(S26L16)等が挙げられる。
両親媒性ペプチド鎖の合成法は、特に限定されず、公知のペプチド合成法を用いることができる。ペプチド合成は、例えば、液相法によるペプチド縮合等によって行うことができる。
ナノ構造体の壁部のうち第1の壁部(第1の領域)が両親媒性ペプチド鎖を含んで構成される場合、当該両親媒性ペプチド鎖は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。
(第2の両親媒性分子)
第2の両親媒性分子は、第1の両親媒性分子とは異なる両親媒性分子を指し、例えば、脂質等が挙げられる。以下、第2の両親媒性分子が有する親水性ブロックを「第2の親水性ブロック」と称し、第2の両親媒性分子が有する疎水性ブロックを「第2の疎水性ブロック」と称する場合がある。
「第2の親水性ブロック」とは、親水性を示す領域を指す。第2の親水性ブロックが有する「親水性」という物性の具体的な程度は、特に限定されないが、少なくとも、第2の親水性ブロックが、第2の両親媒性分子の他の領域と比較して相対的に親水性が強い領域であり、当該他の領域と共に両親媒性分子を形成することによって、第2の両親媒性分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の親水性を有していればよい。あるいは、第2の両親媒性分子が媒体中で自己組織化して、自己集合体を形成することが可能となる程度の親水性を有していればよい。
第2の親水性ブロックを構成する成分の種類は特に限定されない。第2の親水性ブロックを構成する成分には、例えば、リン酸基、アミン基、水酸基、カルボキシル基、硫酸基、ニトロ基等が含まれる。これらの親水性の官能基は、例えば、自身が鎖の一部又は全部を構成していてもよいし(例えば、他の官能基との結合に使われていてもよい)、他の化学構造(特に限定されないが、例えば、鎖状又は環状の炭化水素基、鎖状又は環状のエーテル基等)上に配置をされていてもよい。
「第2の疎水性ブロック」とは、疎水性を示す領域を指す。第2の疎水性ブロックが有する「疎水性」という物性の具体的な程度は、特に限定されないが、少なくとも、第2の疎水性ブロックが、第2の両親媒性分子の他の領域と比較して相対的に疎水性が強い領域であり、当該他の領域と共に第2の両親媒性分子を形成することによって、第2の両親媒性分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の疎水性を有していればよい。あるいは、第2の両親媒性分子が媒体中で自己組織化して、自己集合体を形成することが可能となる程度の疎水性を有していればよい。
第2の疎水性ブロックを構成する成分の種類は特に限定されない。第2の疎水性ブロックを構成する成分には、例えば、中鎖炭化水素基;長鎖炭化水素基;1つ以上の芳香族基、脂環式基または複素環基で置換された中鎖炭化水素基や長鎖炭化水素基;等が含まれる。また、中鎖炭化水素基または長鎖炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。第2の両親媒性分子は、第2の疎水性ブロックとして、1つの中鎖炭化水素基または長鎖炭化水素基のみを含むもの(例えば、1本鎖の脂質)であってもよいし、複数の中鎖炭化水素基または長鎖炭化水素基を含むもの(例えば、2本鎖の脂質)であってもよい。第1の両親媒性分子の種類に応じて適宜決定される。本発明に用いられる脂質は、特に限定されない。
中鎖炭化水素基または長鎖炭化水素基を構成する炭素の数は、特に限定されないが、5個以上であることが好ましく、10個以上であることがより好ましく、12個以上であることがさらに好ましい。中鎖炭化水素基または長鎖炭化水素基を構成する炭素の数は、20個以下であることが好ましい場合があり、18個以下であることがより好ましい場合がある。一例においては12、14、または16個が特に好ましい。長鎖炭化水素基の長さは相転移温度に影響するため、所望の中空体の相転移温度に応じて適宜決定される。
第2の親水性ブロックと第2の疎水性ブロックとの原子数の比は、1:3〜1:5であることが好ましい。
一例では、「第2の親水性ブロック」と「第2の疎水性ブロック」とは、両親媒性分子内で互いに隣接している。一例では、「第2の親水性ブロック」と「第2の疎水性ブロック」とは、一方が鎖状の両親媒性分子の一端側に、他方が当該両親媒性分子の他端側に配されている。
(脂質)
本明細書において「脂質」とは、水系媒体中において、第2の親水性ブロックが外側(水相)に向かって配向し、第2の疎水性ブロックが内側に向かって配向して層(典型的な一例では脂質二重層)を形成し得る任意の脂肪酸誘導体を指す。「脂質」には、天然の脂質だけでなく、人工脂質も包含される。
脂質としては、例えば、リン脂質等が挙げられる。リン脂質としては、例えば、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC(図1のA))、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DLPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)等が挙げられる。
ナノ構造体の壁部のうち第2の壁部(第2の領域)が脂質を含んで構成される場合、当該脂質は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。
(中空体)
本発明の一実施形態のナノ構造体は、第1の両親媒性分子(例えば、両親媒性ペプチド鎖)が複数個集合して構成される第1の壁部(壁部全体における第1の領域)と、第2の両親媒性分子(例えば、脂質)が複数個集合して構成される第2の壁部(壁部全体における第2の領域)とを含む壁部で囲まれた中空体である。第1の両親媒性分子(例えば、両親媒性ペプチド鎖)と第2の両親媒性分子(例えば、脂質)との集合の仕方は特に限定されないが、一例において、自己集合的な配向会合による。より具体的な一例では、疎水性相互作用による集合である。
以下、第1の両親媒性分子が両親媒性ペプチド鎖であり、第2の両親媒性分子が脂質である場合を例に説明をする。
第1の壁部は層構造を有していてもよく、例えば、親水性ペプチドブロックが第1の壁部の内表面層および外表面層に配置され、疎水性ペプチドブロックが第1の壁部の内部層に配置され得る。より具体的には、中空体の第1の壁部は、隣接する両親媒性ペプチド鎖において、親水性ペプチドブロックが反対側に配置されるように会合し得る。そのため、一部の両親媒性ペプチド鎖における親水性ペプチドブロックで構成される第1の親水層と、疎水性ペプチドブロックで構成される疎水層と、残りの両親媒性ペプチド鎖における親水性ペプチドブロックで構成される第2の親水層とからなる3層構造を有し得る。
第2の壁部は層構造を有していてもよく、例えば、第2の親水性ブロックが第2の壁部の内表面層および外表面層に配置され、第2の疎水性ブロックが第2の壁部の内部層に配置され得る。より具体的には、中空体の第2の壁部は、脂質2重層構造を有し得る。
第1の壁部および第2の壁部がこのような構造である場合、中空体の外表面層が親水性であるため、水との親和性が良好であり、生体への適用性がより高い。また、中空体の内表面層が親水性であるため、親水性の剤を好適に保持(好ましくは内包)することができる。また、ナノ構造体の第2の壁部が固相から液相(液晶状態を含む液体状)に転移する相転移温度未満では、両親媒性ペプチド鎖の疎水層と脂質の疎水層との疎水性相互作用により、保持した剤の漏れ出しを抑制することができる。
中空体において、両親媒性ペプチド鎖が複数個集合して第1の壁部を構成し、脂質が複数個集合して第2の壁部を構成する。中空体が第1の壁部と第2の壁部とを有することにより、中空体の相転移温度は、第2の壁部の相転移温度よりも高い温度を示す。中空体は、第1の壁部の堅さにより、構造安定性を有し、低い温度において固相、高い温度において液相となる第2の壁部の性質により、温度応答性を有する。構造安定性は、例えば、4℃で中空体を保存したときに、少なくとも1ヵ月間構造を維持している場合、十分な構造安定性を有しているといえる。
中空体は、図1のBに示すように、第1の壁部(Peptide membrane)と第2の壁部(Lipid domain(Lipid Gate))とが相分離した構造である。つまり、中空体は、両親媒性ペプチド鎖と脂質との均一混和した構造ではない。第1の壁部と第2の壁部とが相分離した構造であることにより、第2の壁部の相転移温度以上で開くゲートのサイズを十分に確保することができる。これにより、中空体が剤を内包している場合、第2の壁部の相転移温度以上で、ゲートのサイズよりも小さい剤をゲートから放出することができる。
中空体が有する第1の壁部と第2の壁部の数は特に限定されず、それぞれ少なくとも1つ有していればよく、複数有していてもよい。一例では、中空体の外表面において、第2の壁部が、第1の壁部に取り囲まれた1個または複数個の島状の領域として分布している。この場合は、1つの連続した第1の壁部の中に、1個または複数個の第2の壁部が島状に分布した状態で、中空体の外表面が構成されている。中空体の外表面における第2の壁部の形状は特に限定されないが、一例では、円形状又は楕円形状である。第2の壁部の相転移温度以上になると、外表面における第2の壁部の形状に応じたゲートが開きうる。
中空体において、第1の両親媒性分子と第2の両親媒性分子との占有表面積の比は特に限定されないが、例えば、40:60〜95:5であることが好ましく、69:31〜90:10であることがより好ましい。第1の両親媒性分子と第2の両親媒性分子とのモル比は、第1の両親媒性分子および第2の両親媒性分子の種類により適宜決定される。
本実施形態において、中空体の形状は特に限定されない。細胞内への取り込み易さの観点からは球状を有していることが好ましく、剤の保持性の高さの観点からは、第2の壁部が固相から液相に転移する相転移温度未満において閉じた構造(すなわち開口を有さない構造)であることが好ましい。
中空体の大きさは特に限定されないが、例えば、生体内利用に適した大きさという観点から、平均流体力学的直径(hydrodynamic diameter)が10〜500nmであることが好ましく、30〜250nmであることがより好ましく、50〜100nmであることがさらに好ましい。上記平均流体力学的直径は、25℃で動的光散乱法によって測定した、150mM NaCl、pH7.4の生理食塩水中の平均流体力学的直径である。
中空体における第1の壁部の厚みは、両親媒性ペプチド鎖の長さに依存し得るが、例えば、2〜10nmとすることができる。中空体における第2の壁部の厚みは、脂質の長さに依存し得るが、例えば、3〜7nmとすることができる。
一例において、中空体は、相転移温度未満においては閉じた構造となる。また、中空体は、相転移温度以上においては脂質が複数個集合して構成される第2の壁部が液相となるため、第2の壁部においてゲートが開いた構造となる。中空体において、第2の壁部が固相から液相に転移する相転移温度は、30〜40℃であり、当該相転移温度において第1の壁部は固相である。生体内で中空体を、第2の壁部の相転移温度以上に温めてゲートが開いた構造にする方法としては、例えば、光(例えば赤外光)を照射すると熱を発生して周辺を温める機能を有する分子と併用することにより、中空体の温度を当該相転移温度以上にすることができる。また、中空体が、第2の壁部の相転移温度以上の温度である炎症部位に到達すると、中空体の温度が当該相転移温度以上となる。
上記の通り、一例では、第2の壁部が固相から液相に転移する相転移温度において、第1の壁部は固相である。換言すれば、第1の壁部は、第2の壁部と比較して、固相から液相に転移する相転移温度がより高い。第1の壁部は、第2の壁部と比較して、固相から液相に転移する相転移温度が、例えば10℃以上高く、20℃以上高いことが好ましい。
中空体は、第1の両親媒性分子(例えば、両親媒性ペプチド鎖)と、第2の両親媒性分子(例えば、脂質)とを含む水系媒体を加熱することによって作製する。例えば、図2に示すように、両親媒性ペプチド鎖と脂質とを水系媒体に分散し、次いで加熱することによって作製し得る。これにより、両親媒性ペプチド鎖と脂質とが会合して、球形状になる。このとき、上述したように、第1の壁部と第2の壁部とが相分離した構造となる。
あるいは、予め加熱した状態の水系媒体に、第1の両親媒性分子(例えば、両親媒性ペプチド鎖)と、第2の両親媒性分子(例えば、脂質)とを分散して、そのまま所定時間の加熱を継続してもよい。
なお、本明細書において「水系媒体」とは、水を主成分とする液体を意図する。本明細書において「水を主成分とする液体」とは、液体に占める水の体積の割合が他の成分と比較して最も多いことを指し、好ましくは液体の体積の合計の50%を超え100%以下の量が水であることを指す。水系媒体は、例えば、生理食塩水、注射用蒸留水、その他pH緩衝溶液等の生体に安全に適用し得る液体であることが好ましい。
両親媒性ペプチド鎖は予め有機溶剤(エタノール、ジメチルホルムアミド、またはメタノール等)に溶解させ、この溶液を水系媒体に添加(例えば、インジェクション)してもよい。有機溶剤は、生体に安全に適用し得る液体であることが好ましく、エタノールがより好ましい。予め有機溶剤に溶解されておくことにより、両親媒性ペプチド鎖同士が結晶ではなく解離した状態で水系媒体中に添加されるため、効率的に中空体を形成させることができる。そのため、一例において、「水系媒体」には、当該有機溶剤が含有され得る。
中空体の作製において、水系媒体に対する両親媒性ペプチド鎖と脂質との量は、特に限定されないが、例えば、水中への分散性の観点から、0.001〜100mg/mLであることが好ましく、0.01〜10mg/mLであることがより好ましい。両親媒性ペプチド鎖の量は、特に限定されないが、例えば、収率を高める観点から、脂質1モルに対して、0.5モルより多く、12モル未満であることが好ましく、1モル以上、4モル以下であることがより好ましい。
水系媒体を予め下記の加熱温度に加熱をしておかない場合は、両親媒性ペプチド鎖と脂質との水系媒体への分散は、4〜30℃で行うことが好ましい。水系媒体への分散の温度は、上記範囲内において、用いる脂質の固相から液相に転移する相転移温度に応じて、適宜設定すればよい。例えば、相転移温度が高く、室温では水系媒体と混和せず分離する脂質の場合、当該脂質の相転移温度よりも高い温度で行うことが好ましい。また、両親媒性ペプチド鎖と脂質とを均一に分散させるために、撹拌することが好ましい。
加熱温度は、特に限定されないが、例えば、30〜90℃とすることが好ましい。また、加熱時間は、特に限定されないが、例えば、10分〜24時間とすることが好ましい。
上記で球形状を有するもので説明したが、中空体の形状はこれに限られず、楕円形状等であってもよい。
なお、上記では第1の両親媒性分子が両親媒性ペプチド鎖であり、第2の両親媒性分子が脂質である場合を例に説明したが、第1の両親媒性分子および第2の両親媒性分子が他の分子である場合も適宜参照することができる。
(剤の保持)
本発明の一実施形態のナノ構造体は、剤を保持(好ましくは内包)している。本明細書において「剤を内包している」とは、剤が中空体に共有結合されることなく、中空体の内部に存在していることを指す。典型的には、剤は液体に溶解または懸濁された状態で内包されている。当該液体は、親水性の液体であり得、上述の水系媒体であり得る。
中空体に剤を保持(好ましくは内包)させる方法は特に限定されず、好ましい一例では、剤を含有する液体(溶液または懸濁液)中で中空体を形成させる。例えば、剤を含有する水系媒体に第1および第2の両親媒性分子(例えば、両親媒性ペプチド鎖と脂質と)を分散し、次いで加熱して中空体を作製する。あるいは、予め加熱した状態の水系媒体に、剤と、第1の両親媒性分子(例えば、両親媒性ペプチド鎖)と、第2の両親媒性分子(例えば、脂質)とを分散して、そのまま所定時間の加熱を継続してもよい。
すなわち、本実施形態のナノ構造体の製造方法は、一例において、剤と、第1の両親媒性分子(例えば、両親媒性ペプチド鎖)と、第2の両親媒性分子(例えば、脂質)とを含む水系媒体を加熱することによって、中空体の作製と剤の保持とを同時進行で行う工程を含む。この方法では、効率的且つ容易に剤を保持(好ましくは内包)させることができる。
剤の大きさは、中空体の内径より小さいものであれば特に限定されないが、50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。一例において、剤の分子量は、100000以下、好ましくは50000以下、より好ましくは10000以下である。
一例において、剤は親水性である。なお、「親水性の剤」には、疎水性の剤の表面を親水化処理したものも包含される。
剤としては、例えば、医薬、食品(特には機能性食品)における有効成分、化粧品分野における有効成分、イメージングシステム用分子プローブ、各種研究用試薬等が挙げられ、有機化合物、無機化合物、タンパク質や核酸等の生体分子等であり得る。ナノ構造体が内包している剤は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。本実施形態のナノ構造体によれば、これまで単独では細胞に取り込まれない薬剤、あるいは取り込まれ難かった薬剤を、細胞に効率的に取り込ませることができる。
また、本実施形態のナノ構造体は、その構造中にペプチドを含むため、生分解性を有する。そのため、ナノ構造体は、生体内(例えば、細胞内)において生分解され、生体内(例えば、細胞内)において、剤が放出されてもよい。一例において、剤の放出は、例えば、1日以上、2日以上、または4日以上持続され得る。生分解は、例えば、プロテイナーゼやペプチダーゼ等のプロテアーゼによって起こり得る。
本実施形態のナノ構造体は、クラスリンを介したエンドサイトーシスによってエネルギー依存的に取り込まれ得る(但し、これに限定される意図ではない)。クラスリンは多くの生物種が保有するタンパク質であるため、本実施形態のナノ構造体は多くの生物種の細胞に対して利用することができる。
本実施形態のナノ構造体は、第1および第2の両親媒性分子(例えば、両親媒性ペプチド鎖および脂質)の種類を変えることにより、ナノ構造体の構造安定性、温度応答性、大きさ、形状、組織選択性、生体内での分解速度、内包する剤の放出特性(徐放性等)等を調節することができる。
(さらなる応用)
本実施形態では、ナノ構造体を含む医薬組成物も提供される。当該医薬組成物は、剤として医薬を含んでいる。医薬としては、対象疾患に適したものを特に限定することなく用いることができるが、具体的には、抗癌剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、ステロイド剤、ホルモン剤、および血管新生阻害剤等が挙げられる。
医薬組成物は、投与経路は特に限定されないが、経口投与、静脈内または動脈内への血管内投与、腸内投与等の手法によって全身投与されてもよいし、経皮投与、舌下投与等の手法によって局所投与されてもよい。一例では、静脈注射で投与されることが好ましい。本実施形態の薬剤組成物を患者に投与する際の投与量は、内包される医薬の種類、対象の年齢、性別、体重、病状、投与経路、投与回数、および投与期間等に応じて適宜設定すればよい。また、投与の対象生物も特に限定されず、例えば、植物および動物が挙げられ、魚類、両生類、爬虫類、鳥類または哺乳類(哺乳動物)等の動物であることが好ましく、哺乳動物であることがより好ましい。哺乳動物の種類は特に限定されないが、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒトを除く霊長類等の実験動物;イヌ、ネコ等の愛玩動物(ペット);ウシ、ウマ、ブタ等の家畜;ヒトが挙げられる。
医薬組成物の剤型は特に限定されないが、親水性液体にナノ構造体が分散した液剤であり得る。親水性液体としては、水、アルコール、緩衝溶液等が挙げられる。また、医薬組成物は、ナノ構造体の他に、保存剤、安定化剤、緩衝剤、浸透圧調整剤、着色剤、香味料、甘味料、抗酸化剤、粘度調整剤等をさらに含んでいてもよい。
本実施形態のナノ構造体は、剤を内包し、細胞内に容易に取り込まれて、細胞内で剤を放出(例えば、徐放)し得る。そのゆえ、本実施形態の医薬組成物は、単独で投与する場合よりも効率的に医薬を細胞内へ送達することができるため、少ない量で長期間にわたって医薬の効果を奏し得る。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
〔実施例1:ペプチド−脂質ハイブリッドベシクル(PLHV)の形態1〕
(試料調製)
ポリ(サルコシン)26−b−(L−Leu−Aib)の両親媒性ポリペプチド(以下、「S26L14」とも称する)およびポリ(サルコシン)26−b−(L−Leu−Aib)(S26L16)を既報の参考文献1、2のように合成した。S26L14の合成は、HNMR分光法およびMALDI−TOF MS分光測定法によって確認した。
ペプチド−脂質ハイブリッドベシクル、ペプチド集合体、およびリポソームを、エタノールインジェクション法によって調製した。20mgのS26L14および1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)20mgをそれぞれエタノール400μLに溶解し、1mg/20μLのストック溶液とした。S26L14と、DMPCとのモル比が0:1、1:4、1:2、1:1、2:1、4:1、12:1、および1:0になるように、S26L14ストック溶液と、DMPCストック溶液とを混合した。S26L14とDMPCとの混合物10μL、S26L14のみ10μL、およびDMPCのみ10μLをそれぞれ生理食塩水(150mM NaCl、pH7.4)1mLに添加(インジェクション)し、25℃で30分間撹拌し、次いで撹拌を停止して分散液を90℃で1時間加熱し、風冷によって室温に戻した。このようにして、S26L14とDMPCとのモル比が1:4、1:2、1:1、2:1、4:1、および12:1のS26L14+DMPCの試料、S26L14のみの試料、およびDMPCのみの試料を得た(濃度は全て0.35mM)。なお、1:4、1:2、1:1、2:1、4:1、および12:1の比でS26L14およびDMPCを混合した混合物から調製したペプチド−脂質ハイブリッドベシクルを、それぞれPLHV1−4、PLHV1−2、PLHV1−1、PLHV2−1、PLHV4−1、およびPLHV12−1と称する。
脂質としてDMPCの代わりに1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)または1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)を用いた以外は上述の方法と同様にして、S26L14と、脂質とのモル比が1:1のS26L14+DPPCおよびS26L14+DSPCの試料を得た。
両親媒性ポリペプチドとして、S26L14の代わりにS26L16を用い、混合物を90℃の食塩水にインジェクションして30分間撹拌し、撹拌を停止して90℃で1時間加熱処理し、風冷によって室温に戻した以外は上述の方法と同様にして、S26L16とDMPCとのモル比が、1:1のS26L16+DMPCの試料、S26L16+DPPCの試料、およびS26L16+DSPCの試料を得た。
(透過型電子顕微鏡(TEM))
TEM画像は、JEM−1230(JEOL社製)を用いて、80kVの加速電圧で取得した。観察するために、分散液のドロップを炭素コートCu格子(Okenshoji Co., Ltd., Japan)上に載せ、2%酢酸サマリウムで逆染色し、過剰な液体を濾紙で除去した。
(動的光散乱(DLS))
生理食塩水中の分子集合体の流体力学的直径(hydrodynamic diameter)をHe−Neレーザーを用いるELSZ−2PL(大塚電子社製)によって分析した。測定は25℃で行った。
(リン脂質定量測定)
PLHV1−1分散液を透析によって洗浄し、フリーのS26L14およびDMPCを除去した。その後、PLHV1−1におけるS26L14およびDMPCの濃度を、リン脂質定量測定キット(PHOSPHOLIPID C AUTOKIT 2-10 DEGC 120TST, Wako, Japan)を用いた220nmおよび600nmにおけるUV吸光度から推定した。
(結果および考察)
TEM画像を図3のA〜DおよびF〜I、図4のA〜F、図5、並びに図6のA、Bに示す。図3のA〜DおよびF〜Iのスケールバー、並びに図4のA〜Cは、200nmを示す。cryo−TEM画像を図3のEに示す。図3のEのスケールバーは、100nmを示す。DLSの結果を図3のJ、図6のC、および表1に示す。リン脂質定量測定の結果を表2に示す。
モル比1:1のS26L14とDMPCとの組み合わせ、およびモル比1:1のS26L16とDMPC、DPPC、およびDSPCとの組み合わせから調製した集合体の形態を、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察したところ、75nmの均一な直径を有するベシクルの集合体を得た(図3のDおよび図4のA〜D)。S26L14は、80nmの均一な直径および200nmの長さを有するナノチューブを形成した。一方、DMPCは、10〜10000nmの様々な直径を有するリポソームを形成した(図3のA)。PLHVの集合体の構造は、それらの純成分とは明らかに異なっていた。動的光散乱(DLS)分析も、集合体の間で様々なサイズを示した(図3のJおよび表1);PLHV、S26L14ナノチューブ、およびDMPCリポソームは、それぞれ直径が76nm、145nm、および2286nmであった。これらの結果は、S26L14とDMPCとが共集合して、ハイブリッドベシクルを形成したことを示す。PLHVの「均一な」サイズは、おそらくハイブリッド膜内に位置する均一な湾曲部(図5)を有する湾曲したシートドメインを形成しているS26L14に起因している。
次に、PLHVに関して混合比の効果を調べた。S26L14/DMPCの比1:4および1:2において、リポソームのようなハイブリッド集合体が観察された。集合体のサイズは均一ではなく、50〜2000nmの範囲であった(図3のBおよびC)。PLHVの膜厚は、DMPCリポソームと同じであった(図3のA)。1:1、2:1、および4:1のモル比で、75nmの均一な直径を有するPLHVを産出した(図3のC〜G)。動的光散乱(DLS)測定から、これらのPLHVは約0.1の多分散性指数を示した(表1)。一方、12:1の混合物は、分散液において、75nmのサイズのハイブリッドベシクルだけでなく、ナノチューブも見られた(図3のH)。これらの形態の結果を、算出された占有表面積の比によって、以下のように説明する。S26L14のα−へリックスブロックおよびDMPCの占有表面積は、それぞれ1.50nm(参考文献3)および0.66nm(参考文献4、5)とみなされる。1:4のモル比については、S26L14:DMPCの表面積比が36:64であった。この混合比においては、脂質膜側の寄与が支配的であって、リポソームのような集合体が観察された。1:1、2:1、および4:1のモル比については、S26L14:DMPCの表面積比は、それぞれ69:31、82:18、および90:10であった(表1)。これらの比については、PLHVの形態は、S26L14の寄与によって支配されていた。PLHV1−1におけるS26L14およびDMPCの組成比は、透析してフリーのS26L14およびDMPCを除去した後に評価した。S26L14の含有量は、220nmにおける吸光度によって推定した。DMPCの含有量は、リン脂質定量測定キットを用いて測定した。結果によると、PLHV1−1は、1:0.83のモル比で、S26L14およびDMPCから構成され、最初のモル比1:1に近かった(表2)。
PLHV1−1のベシクルを4℃で1ヵ月間保存し、それらの構造安定性をTEM観察およびDLS分析によって評価した(図6)。ベシクルの形状は、上記期間の間維持していた。ポリペプチドリッチなハイブリッドベシクルは、一般的なリポソームと比較して、高い安定性が見られた。したがって、これらのハイブリッドベシクルは、DDSキャリアとして用いるのに十分な安定性(すなわち、少なくとも1ヵ月)を有していることが示された。
〔実施例2:ペプチド−脂質ハイブリッドベシクル(PLHV)の形態2〕
(円偏光二色性(CD))
光学距離が1cmのセルを用いてJASCO J−720(JEOL社製)によってCD測定を行った。データは25℃で記録した。0.35mMの分散液をCDデータ収集前に5倍に希釈し、測定試料とした。
(結果および考察)
CD測定の結果を図7および8に示す。
PLHV1−1、PLHV4−1、S26L14ナノチューブ、およびDMPCリポソームの分散液の円偏光二色性(CD)スペクトルから、ハイブリッドベシクルにおいてペプチドドメインの存在が示された。データから、S26L14ナノチューブおよびPLHVの両方とも、222nmおよび208nmに2つの極小を有する、α−へリックスの配置の特性を示した(図7)。PLHV1−1、PLHV4−1、およびS26L14ナノチューブのθ222/θ208比は、それぞれ1.24、1.49、および1.69であった。比の値>1はα−へリックスの束の形成を示すので(参考文献6、7)、S26L14が堅くパッキングしていることは明らかである。PLHVについてのθ222/θ208比に見られた減少は、S26L14膜に挿入したDMPCがナノチューブを形成したS26L14のパッキングを緩めているためのものである。これは、PLHV1−1およびPLHV4−1は、ナノチューブを形成していないが、球状のベシクルを形成しているという結果である。さらに、26℃、38℃、および42℃における、PLHV1−1、PLHV4−1、およびS26L14集合体のCDスペクトルは、温度がペプチドの二次構造および束形成に影響を及ぼさないことを示した(図8)。
〔実施例3:相分離および相転移〕
(蛍光分光計)
JASCO FP−6500蛍光分光計(JEOL社製)を用いて、25℃、透過型セルで、集合させた分散液の蛍光スペクトルを得た。
(FRET(Forster共鳴エネルギー転移)解析)
PLHVの均一性/不均一性を調べるために、N−(7−ニトロ−2−1,3−ベンゾキサジアゾール−4−イル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(NBD−PE)およびN−(lissamineローダミン B スルホニル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(Rhod−PE)を用いて、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)分析を行った。FRET測定で、NBD−PEおよびRhod−PEは、それぞれドナーおよびアクセプターとして振る舞う。
分光計(Microplate Flash Reader, PerkinElmer, Waltham, MA, USA)を用いて、ベシクルのFRET実験を行った。NBD−PE/ローダミン(Rhod)−PEドナー/アクセプター対について、励起波長を460nmにセットし、480〜650nmの放出スペクトルを得た。既知の濃度のドナーおよびアクセプターでラベルされたベシクルを含むリポソームにおいてFRETを測定した。
0.8mol%のNBD−PEおよびRhod−PEでハイブリッドベシクルをラベルした。要するに、ポリペプチドおよびDMPCから構成されるハイブリッドベシクルについて、S26L14、DMPC、NBD−PE、およびRhod−PEのストックエタノール溶液を所望の比(S26L14:DMPC:NBD−PE:Rhod−PE=73:73:0.58:0.58または0nmol)になるように混合し、同時に生理食塩水(1mL)に添加(インジェクション)した。これにより、S26L14(73nmol)、DMPC(73nmol)、およびNBD−PE(0.58nmol)を含み、かつ、Rhod−PE(0.58nmol)を含む/含まないPLHV1−1試料を調製した。次いで、実施例1に記載した方法と同様に、混合物を撹拌し、加熱した。同様に、FRET解析のためのコントロール試料として、特定の混合比(DMPC:NBD−PE:Rhod−PE=73:0.58:0.58または0nmol、および146:0.58:0.58または0nmol)を有する、NBD−PEおよびRhod−PEを含む2種類のDMPCリポソーム試料を調製した。以下、NBD−PE(0.58nmol)を含み、かつ、Rhod−PE(0.58nmol)を含む/含まない、73nmol/mLのDMPCリポソームを「DMPC−73」とも称し、146nmol/mLのDMPCリポソームを「DMPC−146」とも称する。
さらに、アクセプターの非存在下および存在下におけるFRET効率Eを下記式(1)に従って計算するために、各ドナー(NBD−PEのみ)ラベルされたベシクルも調製した。
E(%)=(I−IDA)/(I)×100 …(1)
ここで、Iは、ドナーのみでラベルされたベシクルを含むサンプルのドナー強度であり、IDAは、ドナーおよびアクセプターの両方でラベルされたベシクルのドナー強度である。
(Laurdanテスト)
PLHV、S26L14ナノチューブ、およびDMPCリポソームの膜の流動性をN,N−ジメチル−6−ドデカノイル−2−ナフチルアミン(Laurdan)で測定した。Laurdanは、周囲の環境の極性に感受性の高い蛍光色素である。全体の分極値GP340は、下記式(2)によって算出される。
GP340=(I440−I490)/(I440+I490) …(2)
ここで、I440およびI490は、340nmで励起したLaurdanの440nmおよび490nmでの発光強度である。循環水槽によって、温度範囲は10〜42℃に制御した。
(示差走査熱量(DSC))
DSCはリポソームおよび他の分子の相転移を検出するのに広く用いられている。所望の濃度の20μLの自己集合したハイブリッドベシクル、DMPCリポソーム、またはペプチドナノチューブを蓋で密閉したアルミニウムパン上に置いた。生理食塩水のみを置いた参照試料パンも用いた。走査試料の温度範囲は1℃/分の加熱率で10〜60℃とした。
(結果および考察:相分離)
FRET解析の結果を図9に示し、Laurdanテストの結果を図10に示す。
PLHV1−1において、460nmでのNBD−PEの励起は、Rhod−PEの強い発光強度を伴う蛍光スペクトルを与え(図9のA)、FRET効率はDMPC−73分散液と同様であった(図9のB)。PLHV1−1およびDMPC−146におけるFRET色素対の濃度は同じであるものの、FRET効率は色素/脂質比がより高いDMPC−73の系に近かった(図9のC)。このことから、図9のCに示すように、PLHV1−1は不均一相分離した膜を有し、DMPCおよびS26L14ドメインの両方が存在していることが明らかとなった。
Laurdan剤(N,N−ジメチル−6−ドデカノイル−2−ナフチル−アミン)は、リポソームの不均一性をモニターするための分子プローブとしても用いることができる(参考文献8〜10)。Laurdanは、秩序液体相(Lo相)および無秩序液体相(Ld相)における脂質膜から生じた、それぞれ440nmおよび490nmにおける特定の発光ピークを示す(参考文献9、10)。図10は、42℃での、PLHV1−1、PHLV4−1、S26L14ナノチューブ、およびDMPCリポソーム分散液におけるLaurdanの蛍光スペクトルを示す。DMPC分散液において、490nmで単一ピークが観測され、S26L14ナノチューブの分散液において、440nmで単一ピークが観測された。これらの結果は、DMPCリポソームおよびS26L14ナノチューブが、それぞれ均一な無秩序相および秩序相を示した。一方、PLHV1−1およびPHLV4−1は、440nmおよび490nmの両方で発光ピークを示し、ハイブリッドベシクルにおける無秩序なDMPCドメインおよび秩序のあるS26L14ドメインの共存在を示した。
(結果および考察:相転移)
340nmの励起光を用いることによって、440nmおよび490nmにおけるLaurdanの発光強度から計算された、全体の分極GP340値は、膜表面の水和の度合いの有用な指標として示されている(式(2))(参考文献11、12)。温度の関数としてのGP340値を調べて、相転移温度を評価した。10〜42℃のS26L14ナノチューブのGP340値は一定であり、当該温度範囲に亘って相転移温度(T)は示されなかった(図11のA)。一方、DMPCのGP340値は〜25℃において劇的な変化が見られ、DMPCの既知のTに対応していた。PLHV1−1およびPLHV4−1のGP340値は、〜35℃において減少が見られた。膜の相転移を確認するために、示差走査熱量(DSC)測定も行った。PLHV1−1およびDMPCリポソームのサーモグラムは、PLHV1−1が38度の相転移温度を有し、DMPCリポソームが〜23℃の値を有していることが示された(図11のB)。さらに、DSC分析の結果も、S26L14ナノチューブは14〜46℃に相転移温度を有していないことを示した(図11のB)。上述したように、様々な温度におけるPLHVのCDスペクトル(図8)は、42℃は、PLHVにおけるペプチドの二次構造およびペプチド間の束形成に影響を与えないことを示した。これらの結果による考察によると、脂質ドメインおよびS26L14に相当するハイブリッドベシクルの相転移は、スペクトルに影響を与えなかった。
38℃におけるPLHVの相転移は、PLHVが相分離したDMPCおよびS26L14ドメインを有しており、S26L14ドメインが上述した温度範囲に亘ってTを有していなかったため、DMPCドメインによるものである。13℃の大きなTのシフトは、S26L14の堅いヘリックス束のドメインによって囲まれている点、小さなDMPCドメインである点から生じている。参考文献13、14には、様々なサイズの脂質ナノディスクを用いて、サイズがより小さい脂質ドメインが、よりT値が高くなることを報告されている。これらの研究によると、10℃のTのシフトは、ドメイン内の脂質において協同性を失うことによるものであり、その小さいサイズ、および、周りのドメインの環境と境界に位置する脂質との相互作用によるものであった。追加の3℃のTのシフトは、脂質ドメインに挿入されたペプチドの小さな一部分から生じている、または脂質ドメインを囲むペプチド膜の堅さによるものであると仮定している。
興味深いことに、Laurdanテストによると、PLHV1−1と比べて、PLHV4−1はわずかに大きな相転移温度のシフトを示した(図11のA)。このわずかな相転移シフトの原因として考えられるPLHVの2つの可能性のあるモデルがある:PLHVにおいて、より小さいサイズの脂質ドメインを有するベシクル、またはより少ない数の脂質ドメインを有するベシクルである。ドメインの数は相転移に影響を及ぼすことができないため、PLHV4−1におけるDMPCドメインはPLHV1−1に存在するDMPCドメインよりも小さいと結論付けられる。
〔実施例4:放出実験〕
(FITC−PEG2KおよびFITC−PEG5Kの合成)
FITC−PEG2KおよびFITC−PEG5Kの合成方法、および得られたFITC−PEG2KおよびFITC−PEG5KのNMRおよびMSスペクトルを以下に示す。
FITC−PEG2KのNMRおよびMSスペクトル
HNMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)7.99−6.54(m,FITC),3.88(m,2H,PEG−CH),3.66(PEG−CHCH),3.40(s,3H,PEG−OCH)。MALDI−TOF MS calculated for C11319851SNa[M+Na]m/z2454.27;found:2454.14。
FITC−PEG5KのNMRおよびMSスペクトル
HNMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)7.98−6.56(m,FITC),3.88(m,2H,PEG−CH),3.65(PEG−CHCH),3.38(s,3H,PEG−OCH)。MALDI−TOF MS calculated for C249471119[M+H]m/z5426.05;found:5427.59。
(FITC−PEG内包および放出実験)
自己消光特性を示す濃度である3mMのFITC−PEGを用いて、PLHVの内包特性および放出特性を調べた。所望のモル比のハイブリッドベシクルおよびDMPCリポソームストック溶液をFITC−PEGを含む生理食塩水に添加(インジェクション)し、2時間撹拌し、次いで、90℃で1時間加熱した。次いで、試料を遠心分離速度2000rpm、4℃で、Millipore社製の遠心分離フィルターユニット(30kDa分子量カットオフ)に通して、フリーのFITC−PEGを除去した。FITC−PEGの内包効率を下記式(3)のように算出した。
(Faf/Fbf)×100 …(3)
ここで、Fafは、遠心分離フィルターに通した後の蛍光強度であり、Fbfは、遠心分離フィルターに通す前の蛍光強度である。蛍光発光アッセイを用いて、ハイブリッドベシクルおよびDMPCリポソームからのFITC−PEG放出を測定した。要するに、100μLの、FITC−PEGを内包したハイブリッドベシクルまたはDMPCリポソームを20mLの生理食塩水に添加(インジェクション)し、均一に混合した。0.5、1、2、および4時間の間隔で、1mLの試料を取り出し、氷上で冷却して、更なる薬剤放出を停止した。FITC−PEGの放出率は、以下の式(4)を用いて算出した。
放出率(%)=(F−F)/(F100−F)×100 …(4)
ここで、Fは、特定の点での試料の蛍光強度であり、Fは、サンプルのバックグラウンドの蛍光であり、F100は、溶解緩衝液によって溶解したキャリアからの最大蛍光放出であり、3つの試料の平均である。溶解緩衝液(コード番号:CK12、ロット番号:KU749、Dojindo Molecular Technologies, INC., Japan)(5μL)を、FITC−PEGを内包したハイブリッドベシクル分散液(1mL)に添加し、分散液を60℃で10分加熱し、F100値を得た。490nmの励起波長、および520nmの発光波長で、JASCO FP−6500蛍光分光計(JEOL社製)を用いた。本放出実験で用いられた温度は、4℃、37℃、および42℃であった。PEGの分子量は2および5kDaであった。
(結果および考察)
フルオロセインイソシアネートでラベルされたポリエチレングリコール(Mw:2000)(FITC−PEG2K)を、FITCの蛍光を消光する十分高いFITC−PEG2K濃度で、PLHVに被包した。DMPCリポソーム、PLHV1−1、およびPLHV4−1におけるFITC−PEG2Kの放出効果は、それぞれ3.9%、7.1%、および5.8%であった。FITC−PEG2K放出実験は、4℃、37℃、および42℃で行われた。図12に示すように、FITC−PEG2Kは、一定温度下で時間の関数として放出された。FITC−PEG2Kの被包は、上述したすべての集合体について、4℃で4時間維持した(図12のA〜C)。DMPCリポソームについて、70%を超えるFITC−PEG2Kが、37℃および42℃において迅速に放出された。これは、DMPCリポソームが、37℃および42℃において無秩序な相であることによるものである(図11)。一方、PLHV1−1は、42℃でのみFITC−PEG2Kを放出し(図12のB)、37℃はTよりも低いため、FITC−PEG2Kは37℃では被包されたままであった。従って、DMPCドメインは、温度応答性のゲートとして振る舞っていた。同様の方法におけるPLHV4−1について、FITC−PEG2Kは37℃で放出されなかった。しかしながら、42℃において、ゆっくりとした放出が観測された(図6のC)。おそらく、DMPCドメインのサイズがより小さいと、PLHV4−1からのFITC−PEG2Kの放出率が減少した。さらに、他の小さな疎水色素sulforhodamine B(SRB)も、37℃でナノ粒子の内側にトラップされたままであり、42℃でPLHV1−1およびPLHV4−1から放出された(図13)。42℃で4時間加熱した後、SRBでは、FITC−PEG2Kよりもより多くの放出が観測された。これらの結果も、脂質ドメインのサイズが、トラップされる物質のサイズおよび放出率を潜在的に定めることができることを支持している。それゆえ、この結果は、ハイブリッドベシクルが薬剤を閉じ込め、かつ放出することができることを示している。より大きな分子量を有する、フルオロセインイソシアネートでラベルされたポリエチレングリコール(Mw:5000)(FITC−PEG5K)の放出動態を評価した。PLHV1−1からのFITC−PEG5Kの放出は、42℃で抑制された(図12のD)。一方、DMPCリポソームは、37℃(破線)および42℃(実線)の両方でFITC−PEG2Kと同様にFITC−PEG5Kを放出した(図14)。
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本発明のナノ構造体は、例えば、細胞内へ剤を輸送するためのキャリアとして、医薬、食品、化粧品等の分野において広く利用することができる。

Claims (11)

  1. 親水性ブロックと疎水性ブロックとを含む第1の両親媒性分子が複数個集合して構成される第1の領域と、第1の両親媒性分子とは異なる第2の両親媒性分子が複数個集合して構成される第2の領域とを含む壁部で囲まれている中空体であって、
    上記壁部の第2の領域が固相から液相に転移する相転移温度において上記第1の領域は固相である、ナノ構造体。
  2. 親水性ブロックと疎水性ブロックとを含む第1の両親媒性分子が複数個集合して構成される第1の領域と、第1の両親媒性分子とは異なる第2の両親媒性分子が複数個集合して構成される第2の領域とを含む壁部で囲まれている中空体であって、
    上記第1の両親媒性分子は、親水性ペプチドブロックと疎水性ペプチドブロックとを含む両親媒性ペプチド鎖であり、
    上記第2の両親媒性分子は、脂質である、ナノ構造体。
  3. 上記第2の両親媒性分子は、脂質である、請求項1に記載のナノ構造体。
  4. 上記第2の両親媒性分子は、リン脂質である、請求項3に記載のナノ構造体。
  5. 上記第1の両親媒性分子は、親水性ペプチドブロックと疎水性ペプチドブロックとを含む両親媒性ペプチド鎖である、請求項1、3又は4に記載のナノ構造体。
  6. 上記疎水性ペプチドブロックがヘリックス構造を形成している、請求項5に記載のナノ構造体。
  7. 25℃で動的光散乱法によって測定した、150mM NaCl、pH7.4の生理食塩水中の平均流体力学的直径が10〜500nmである、請求項1〜6の何れか1項に記載のナノ構造体。
  8. 上記第1の両親媒性分子と上記第2の両親媒性分子との占有表面積の比は、40:60〜95:5である、請求項1〜7の何れか1項に記載のナノ構造体。
  9. 剤を保持している、請求項1〜8の何れか1項に記載のナノ構造体。
  10. 請求項9に記載のナノ構造体を含む、医薬組成物。
  11. 請求項1〜10の何れか1項に記載のナノ構造体の製造方法であって、
    上記第1の両親媒性分子と、上記第2の両親媒性分子とを含む水系媒体を加熱して、中空体を作製する工程を含む、ナノ構造体の製造方法。
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