JP2020110282A - 生体用の超音波照射治療装置 - Google Patents
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また特許文献2には、処理槽の水中に超音波を照射して活性酸素を生じさせ、処理槽に漬けられた生体の表面部に棲み付いた白癬菌などを死滅させて治療を行う超音波処理装置が開示されている。
一方、特許文献2で提案されている装置は、特定の周波数の超音波を水中で発生させることで活性酸素を発生させ、活性酸素で生体の表面部には棲み付いた白癬菌などを死滅させるものであり、生体の表面部から離れた奥部組織を処置することは原理上出来ない。
さらに、特表2010−500091号公報には、超音波を直接照射して、生理的に有効な物質を活性させる手法が開示され、そこには活性酸素を用いて、がん組織を破壊させることも提案されている。しかしながら、この手法は、事前形成された活性酸素を封じ込めたカプセルに超音波を照射して、カプセルを意図的に破壊して、周囲のがん組織を破壊するものであり、カプセルを体内に挿入することに加えて、寿命の短い活性酸素を封じ込めたカプセル内に封じ込めておくことじたい実現性の乏しいものである。
これに対して本発明は、本発明者らの鋭意医特定の周波数の超音波を生体組織に直接照射すれば、生体組織内の細胞に含まれている水分子を分解して、活性酸素を生じさせることができるという新たな発見に基づき、これを利用したものである。
したがって、本発明の目的は、複数の線状ビームにすることで骨組織等を回避させて、生体内の目標点にある組織に集中的に直接照射して活性酸素を有効に生じさせることで、患部を化学的に分解させて治療を行う新規な生体用の超音波照射治療装置を提供することを目的としている。
また、身体内に骨組織等があっても、超音波の複数の線状ビームはそれらを回避して、生体の目標点に集合して到達させて治療を行うことができる。
更に、患部の組織に特定周波数の超音波を与えることで組織内の水分子を分解させて、活性酸素を発生させるので、発生した活性酸素の強い酸化力を用いて患部を化学分解させ液状化させることができる。そのため、処置された組織は、熱変性による処置とは異なり、組織を硬化させることがなく、新陳代謝によって迅速に自然消滅させ、治癒できる。
超音波照射治療装置1は、超音波USを線状ビームにして照射する複数の超音波発生器11を配備し、これらの超音波発生器11から照射された超音波USが生体内に設定された目標点に集中するように構成した超音波照射治療装置本体10と、目標点において複数の超音波線発生器から照射される複数の線状ビームの照射出力の合計した値で有効な活性酸素が生じるように調節する出力調節手段20とを備えている。ここに灰色線は超音波USの照射軌道を示している。
超音波USの線状ビームは、その照射軌道のようにほとんど広がることなく一線状に進行する性質を示す。また活性酸素は、酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものであり、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、過酸化水素等を含むが、反応性の高いヒドロキシラジカル、一重項酸素を有効に活用することが望ましく、これらは生体組織に特定周波数の超音波USを照射することによって生体組織に含まれている水と酸素が分解されて生じる。
超音波発生器11の主たる構成要素である超音波発生素子11aは、例えば圧電セラミックで構成される。すなわち酸化チタンや酸化バリウム等の圧電性、逆圧電性を呈するセラミック粉の板状焼結体であり、それぞれの面にベース金属板、蒸着層からなる電極11bが形成されている。その電極11bに交流電圧を印加すると圧電セラミックが変形を繰り返して超音波USを発する。
本発明者らの知見では、1〜2MHzの周波数を有する超音波が特に生体患部を化学変化させて破壊させるのに適しており、そのため、本発明で使用する圧電セラミックの共振周波数もその周波数に合わせられている。
また圧電セラミックの表面形状も、超音波USを線状ビームにして照射するのに適したものが選択されている。なお超音波発生素子11aは、前記のものに限定されることはなく、水晶、ロッシェル塩、チタン酸バリウム等を用いたものでも利用できる。
超音波発生器11には、照射された超音波USから拡散成分等を除去して好適な直線ビームとするためのホーン部材11eが付加されていてもよいが、ホーン部材11eは必須の構成要素ではなく、必要に応じて用いればよい。
超音波発生器11は、ネジ11fなどの固定具によって基台10aに固定されている。
本発明において、生体Hは例えば人体であり、目標点Tは腫瘍組織である。超音波照射治療装置1は、前記のように複数の超音波発生器11から超音波USを照射して生体H内の目標点に集中させることで、その目標点Tにおいてのみ生体組織を破壊するために有効な濃度の活性酸素ROを発生させて破壊することを目的としたものである。
このような治療方法によれば、組織内で発生した活性酸素ROは、その強力な酸化作用によって組織を化学的に分解し破壊するので、破壊された組織は老廃物となって液状化する。そして、液状化した老廃物は新陳代謝によって、体液の循環等によってその場所から短時間で自然除去されるので、その結果として、自然の再生治癒力を有効に作用させて早期回復が期待できる。
なお複数の超音波発生器11は同一の周波数の超音波USを発生してもよいし、それぞれ異なる周波数の超音波USを発生してもよい。ただし、全ての超音波発生器11から共通の周波数かつ目標点Tにおいて同位相になるように超音波USを照射すれば効率よく、患部組織を化学的に分解して破壊させる活性酸素ROの濃度を適切なものに設定できる。
なお複数の超音波発生器11の各々から照射された超音波が集中する目標点Tでは、各直線ビームのエネルギーが合計されたものになる。例えば3つの超音波発生器11のそれぞれから5Wで超音波の直線ビームを照射した場合、目標点Tでは15Wのエネルギーになる。このように目標点Tにおける合計エネルギーが適切な値にすれば、目標点Tまでの中間部分では組織変性を生じさせない温度上昇に抑え、かつ目標点Tでは組織を化学的に分解し破壊するのに十分な濃度の活性酸素ROを生じさせることができる。
活性酸素ROの内、特に有効なスーパーオキシドやヒドロキシラジカル等のラジカル類や一重項酸素は、反応性が高くて寿命が短いので超音波USがなくなるとすぐに消滅する。したがって、超音波USによる患部の有効な治療時間は、超音波USの照射時間とほぼ等しくなる。
この実験結果によれば、図3(a)に示すように、目標点Tにおける交差角度が約45度を超えていれば、超音波USの直線ビームはそれぞれそれまでの進行方向を維持したまま離れていく。そして、この場合、目標点Tを含む狭い領域、つまり超音波の線状ビームと同様の直径を有する球状領域に有効な活性酸素ROが生じることになる。
これに対して図3(b)に示すように、目標点Tにおける交差角度が45度未満、好ましくは7〜30度に設定すると、複数の直線ビームから単独のより強力な直線ビームが合成され、その合成ビームが生体Hの深部に向かって進行していく。この場合、目標点Tとそれに隣接した深奥部とを含むより広い領域に有効な活性酸素ROを生じさせることが出来る。交差角度が小さい超音波USの複数の線状ビームから単独でより強力な線状ビームが合体される現象は、実験によって確認されている。
以上の原理を応用すれば、腫瘍組織の広がり具合に応じて、超音波USの交差角度を選択することにより、より効果的に深部に存在する腫瘍組織を化学的に分解し破壊することが可能になる。
この例の超音波照射治療装置1では、装置本体10は、アルミ等の金属、またはフェノール等の樹脂からなる円筒状の基台10aとして構成されている。複数の超音波発生器11が基台10aの内周面に中心方向を向いて配置され、これらの超音波発生器11から照射された超音波USは基台10aの中心に集中、交差するようになっている。また超音波発生器11のそれぞれに対して、その対面位置に超音波吸収材10fが配置されている。
なおこの例でも、図1に示した例のように、基台10aの内周面にレール溝10bを設けたり、超音波発生器11の角度を調節可能にしたりすることによって、照射方向調節手段10dを構成することはもちろん可能である。
10 超音波照射装置本体
11 超音波発生器
10d 照射方向調節手段
20 出力調節手段
H 生体
RO 活性酸素
T 目標点
US 超音波
Claims (6)
- 特定周波数の超音波を線状ビームとして照射する複数の超音波発生器を配備し、これらの超音波発生器から照射された超音波が生体内に設定された目標点に集中するように構成されている超音波照射装置本体と、
前記目標点において、生体組織を化学的に分解させるのに有効な濃度の活性酸素が生じるように、前記複数の超音波線発生器の照射出力を調節する出力調節手段とを備えている生体用の超音波照射治療装置。 - 前記複数の超音波発生器の照射方向を調節する照射方向調節手段を更に備えている請求項1に記載の生体用の超音波照射治療装置。
- 前記超音波は、ビーム幅が3〜12mmである請求項1又は2に記載の生体用の超音波照射治療装置。
- 前記複数の超音波線発生器はいずれも、周波数1〜2MHzの超音波を照射する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の生体用の超音波照射治療装置。
- 前記複数の超音波線発生器は、前記目標点において合計して、5〜100Wの出力で超音波を照射する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の生体用の超音波照射治療装置。
- 前記複数の超音波発生器から照射された超音波は、前記目標点において互いに45度未満の鋭角で交差する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の生体用の超音波照射治療装置。
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