JP2020083668A - ガラスフリット膜付きガラス基板のスクライブ方法 - Google Patents

ガラスフリット膜付きガラス基板のスクライブ方法 Download PDF

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智子 中川
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Abstract

【課題】ガラスフリット膜並びにガラス板の双方に同時にスクライブラインを形成することのできるガラスフリット膜付きガラス基板のスクライブ方法を提供する。【解決手段】厚みが0.5〜1mmのガラス板W1の一面に20〜30μmの厚みのガラスフリット膜W2が積層されたガラスフリット膜付きガラス基板Wに、分断用のスクライブラインを加工するスクライブ方法であって、刃先角度αが140〜160°である溝付きカッターホイールAを使用し、このカッターホイールAを基板のガラスフリット膜面W2から2N〜10Nの荷重で押し付けながら転動させることによりガラスフリット膜W2とガラス板W1の双方にスクライブラインを加工するようにした。【選択図】 図4

Description

本発明は、ガラス板の表面にガラスフリット膜を積層させたガラスフリット膜付きガラス基板に分断用のスクライブライン(切溝)を加工するスクライブ方法に関する。特に本発明は、ソーダガラス板の表面に約20〜30μmの薄いガラスフリット膜を積層させたガラスフリット膜付きガラス基板にスクライブラインを加工するスクライブ方法に関する。
近年において、各種電子機器基板用として、ソーダガラス板の表面にガラスフリットを薄くコーティングしたガラスフリット膜付きガラス基板が知られている。ガラスフリット膜付きガラス基板は、二酸化ケイ素に酸化ナトリウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素などの酸化物を加えて形成されたガラスフリットをペースト状にして、ガラス板の表面に薄くコーティングして焼成することにより形成されている。
従来、大判のガラス基板から単位製品を切り出す場合は、例えば、特許文献1で示すようなスクライブ装置を用いて、カッターホイールをガラス基板の表面に押し付けながら転動させて縦、横のスクライブライン(切溝)を形成し、次いで、基板を撓ませるなどをしてスクライブラインから分断することにより単位製品を取り出している。
ガラス基板にスクライブラインを加工するカッターホイールとして直径2mmから5mmのものがあり、その種類も刃先稜線部に一定のピッチで溝を設けた溝付きカッターホイールと、溝を有しないノーマルカッターホイールがある。これらのカッターホイールはガラス基板の厚みや材質によって使い分けられている。
ガラスフリット膜付きガラス基板では、ガラスフリット膜が焼成によって成膜されるので、冷却の際の収縮により成膜面が凹面状に反る傾向にある。この反りが大きい場合、吸着固定が容易となるように、ガラス板面からスクライブすることがしばしば行われる。ここで、基板の厚みが0.5〜1.0mmの場合、直径2mmで刃先稜線部での刃先角度αが100〜130°のカッターホイールが通常用いられている。このカッターホイールをガラス板の面から押し付けて転動させてスクライブラインをガラス板に形成し、次いでスクライブラインを形成した面とは反対側の面、即ちガラスフリット膜面からブレイクローラ或いはブレイクバーなどの押圧部材を押し付けることにより基板を撓ませて、スクライブライン下方の垂直クラックを基板厚み方向へ伸展させることにより分断している。
特許第3787489号公報
しかし、上記の加工方法によれば、ガラスフリット膜にスクライブラインが形成されていないので、ガラスフリット膜はガラス板の撓みによる分断と同時に引きちぎられるようにして無理に分離されることになる。このため、フリット膜がガラス板のスクライブラインに沿って高品質な分離ができず、分断端面に不規則な破断痕が形成されたり、ガラスフリット膜の無理な分断によるパーティクル(粉片)が発生したりして、品質低下の大きな原因となるといった課題があった。
また、ガラスフリット膜面からスクライブする場合にも、基板の厚さに対して一般的に用いられる100〜130°の刃先角度のカッターホイールでガラスフリット膜面からスクライブすると、ガラスフリット膜に不規則な水平方向への亀裂及び多数のパーティクルが生じることがあり、切り取られる単位製品の歩留まり及び品質が悪くなるといった問題点があった。
そこで本発明は、上記課題の解決を図り、ガラスフリット膜並びにガラス板の双方に同時にスクライブラインを形成することのできるガラスフリット膜付きガラス基板のスクライブ方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明方法では次のような技術的手段を講じた。即ち、本発明のスクライブ方法は、厚みが0.5〜1mmのガラス板の一面に20〜30μmの厚みのガラスフリット膜が積層されたガラスフリット膜付きガラス基板に、分断用のスクライブラインを加工するスクライブ方法であって、刃先角度が140〜160°であるカッターホイールを使用し、このカッターホイールを前記基板のガラスフリット膜面から2N〜10Nの荷重で押し付けながら転動させることによりガラスフリット膜とガラス板との双方にスクライブラインを加工するようにしたことを特徴とする。
ここで、前記カッターホイールとして、刃先稜線部に一定のピッチで溝を設けた溝付きカッターホイールを用いるのがよい。
本発明によれば、カッターホイールによるスクライブ時に、刃先角度を大きくしたことにより緩やかになった刃先斜面でガラスフリット膜を押し付け、ガラスフリット膜とガラス板の両方に垂直クラックを発生させることができる。これによりスクライブ荷重を効果的に加えることができて、不規則な方向へのワレや水平クラックを生じさせることなくガラスフリット膜とガラス板との双方に十分な深さのスクライブラインを形成することができるとともに、ガラスフリット膜のパーティクルの発生を最小限に抑えて品質低下を防ぐことができる。
また、ガラスフリット膜とガラス板の双方に垂直クラックを伴うスクライブラインが形成されるので、基板を撓ませて分断する際にガラス板の分断と同時にガラスフリット膜もスクライブラインに沿ってきれいに分離させることができ、これにより分断端面に従来のような不規則な破断痕が生じたり、無理な分断によるパーティクルの発生をなくして品質の優れた単位製品を切り出すことができるといった効果がある。
本発明方法に使用されるカッターホイールの斜視図である。 上記カッターホイールの正面図である。 上記カッターホイールでガラスフリット膜付きガラス基板をスクライブする時の断面図である。 スクライブ時の拡大断面図である。 本発明方法のスクライブ試験のデータを示す表である。 単板のソーダガラス板にスクライブ試験したときのデータを示す表である。
以下、本発明方法の詳細を図に基づいて説明する。
図1は本発明方法に用いられるカッターホイールを示す斜視図であり、図2はその正面図である。このカッターホイールAは、工具特性に優れた金属材料、例えば超硬合金や焼結ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド等から作製され、円板状のボディ1の中心に取り付け用の軸孔2を有し、円周面に互いに交わる左右の斜面3a、3aからなる刃先稜線部4が形成されている。カッターホイールAの外径Dは1.8〜3.0mmのものから選択されるが、本実施形態では外径Dが2mm、左右の斜面3a、3aが交わる刃先角度αが140〜160°で形成されており、また、厚みLは650μm、軸孔2の内径は0.8mmで形成されている。さらに、本実施形態では刃先稜線部4の全域に所定のピッチで溝5が加工され、この溝5と、残った刃先稜線部4とが交互に形成されることにより刃先が構成されている。
また、図3において、符号Wは本発明方法によってスクライブされるガラスフリット膜付きガラス基板であって、基台となるガラス板W1の上面にガラスフリット膜W2が積層されている。ガラス板W1の厚みは0.5〜1.0mmであり、ガラスフリット膜W2の厚みは20〜30μmのものが加工対象となる。本実施例では、ガラス板W1がソーダガラスで形成され、ガラスフリット膜が二酸化ケイ素(SiO)に酸化ナトリウム(NaO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ホウ素(B)、酸化亜鉛(ZnO)から選択される酸化物を加えた成分で形成されている。
スクライブラインを加工するに際して、上記のカッターホイールAを、図3に示すように、カッターホルダ6に軸7を介して回転自在に取り付けるとともに、ガラスフリット膜付きガラス基板Wをガラス板W1が下側となるように吸着テーブル8に吸着保持させる。
この状態でガラスフリット膜面からカッターホイールAを2N〜10Nの荷重で押し付けて転動させながらスクライブする。このスクライブの際、図4に示すように、刃先角度を大きくしたことにより緩やかになった刃先斜面3aでガラスフリット膜W2を押し付けながら刃先の先端を少なくともガラスフリット膜W2に食い込ませる。これにより、スクライブ荷重を効果的にガラス基板に加えることができて、不規則な方向へのワレや水平クラックを生じさせることなくガラスフリット膜W2とガラス板W1との双方にきれいなスクライブラインSを加工することができる。
また、カッターホイールAは基板Wとの摩擦によって転動するので刃先斜面3aとガラスフリット膜W2との接触面には滑りが生じていない。従って、図4に示すように、刃先先端の食い込み部分を除いて、刃先の緩やかな斜面3aに接触するガラスフリット膜部分が面圧で押さえられることになり、これにより、ガラスフリット膜W2における水平クラックの発生を抑えながらガラスフリット膜とガラス板の双方に垂直クラックを伴うスクライブラインを加工することができ、パーティクルの発生による品質低下を抑えることができる。
また、溝付きカッターホイールを用いることで、基板表面に形成される複数のスクライブラインが交差する場合であっても、確実にスクライブラインを形成することができ、またスクライブライン交点における品質低下を抑えることができる。
図5は、カッターホイールAで刃先角度αを変えたものを、それぞれ2Nから10Nのスクライブ荷重(基板に対する押圧荷重)で、ガラスフリット膜面からスクライブ試験した時の結果を示すものである。カッターホイールAの外径は2mm、溝数は200のものを使用した。また、加工対象のガラスフリット膜付きガラス基板のガラス板W1の厚みが0.7mm、ガラスフリット膜W2の厚みが27μmのものを用いた。
同図において、○印は、パーティクルの発生を抑制した状態でガラスフリット膜並びにガラス板の双方に良好な垂直クラックのスクライブラインを加工できた場合を示し、X印は、ガラス板W1の垂直クラックが不充分であった場合を示し、△印はガラスフリット膜に不良な水平クラックが生じた場合を示す。
このスクライブ試験では、刃先角度140°ではスクライブ荷重2N及び3Nで良好なスクライブラインが形成でき、同様に145°では2N〜5Nの荷重で形成でき、150°では2N〜7Nの荷重で形成でき、155°では2N〜10Nで形成できた。また、この試験によって、刃先角度が大きくなるにしたがって、より広い荷重範囲でスクライブ可能であることが判明した。加えて、刃先角度140〜155°の全てのカッターホイールで2Nの低いスクライブ荷重であってもスクライブラインを加工することができることが判明した。また、この試験結果から、上記の○印の領域では、きれいにスクライブラインを加工することができたことがわかる。
なお、試験データの提示は省略するが、上記の直径2mmの溝付きカッターホイールAと同じ刃先構成を有する直径2.5mmの溝付きカッターホイールの場合でも、上記と同様な試験を行った結果、直径2mmの溝付きカッターホイールの場合の試験データと同じような良好なスクライブラインをガラス板とガラスフリット膜の双方に形成することができた。
図6は、本発明との比較のため、ガラスフリット膜が形成されていない厚み0.7mmの単板のソーダガラスに上記と同じ溝付きカッターホイールでそれぞれ刃先角度が異なったものを用いてスクライブ試験した時のデータを示す表である。これによれば、刃先角度140〜155°のカッターホイールでは、2Nから8Nのスクライブ荷重全てにおいてスクライブラインの加工が不可であった。ガラスフリット膜付基板のガラス板面側にスクライブラインを形成する場合においても、同様の傾向が見られた。これに対し、本発明方法によりガラスフリット膜面からスクライブした時は、先の図5で示すように、刃先角度140〜155°の全てのカッターホイールで、2Nの低いスクライブ荷重であっても良好なスクライブラインを加工することができるとともに、刃先角度が大きくなるにしたがって、より広い荷重範囲でスクライブすることができる。
以上のように本発明方法によれば、カッターホイールによるスクライブ時に、刃先角度を大きくしたことにより緩やかになった刃先斜面3aをガラスフリット膜W2を押し付けることができる。これにより、スクライブ荷重を効果的に加えることができて不規則な方向へのワレや水平クラックを生じさせることなく、ガラスフリット膜W2とガラス板W1との双方に十分な深さのスクライブラインを形成することができるとともに、ガラスフリット膜のパーティクルの発生を抑制することができる。
また、ガラスフリット膜W2とガラス板W1の双方に垂直クラックを伴うスクライブラインが形成されるので、基板を撓ませて分断する際にガラス板の分断と同時にガラスフリット膜もスクライブラインに沿ってきれいに分離させることができ、これにより分断端面に従来のような不規則な破断痕が生じたり、無理な分断によるパーティクルが発生したりすることをなくして品質の優れた単位製品を切り出すことができる。
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものではなく、本発明の請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜変更、修正を加えることが可能である。
本発明は、ガラス板の表面にガラスフリット膜を積層させたガラスフリット膜付きガラス基板に分断用のスクライブラインを加工するのに利用することができる。
A カッターホイール
S スクライブライン
W ガラスフリット膜付きガラス基板
W1 ガラス板
W2 ガラスフリット膜
3a 刃先斜面
4 刃先稜線部
5 溝

Claims (3)

  1. 厚みが0.5〜1mmのガラス板の一面に20〜30μmの厚みのガラスフリット膜が積層されたガラスフリット膜付きガラス基板に、分断用のスクライブラインを加工するスクライブ方法であって、
    刃先角度が140〜160°であるカッターホイールを使用し、
    このカッターホイールを前記基板のガラスフリット膜面から2N〜10Nの荷重で押し付けながら転動させることによりガラスフリット膜とガラス板の双方にスクライブラインを加工するようにしたことを特徴とするガラスフリット膜付きガラス基板のスクライブ方法。
  2. 前記カッターホイールが、刃先稜線部に一定のピッチで溝を設けた溝付きカッターホイールである請求項1に記載のガラスフリット膜付きガラス基板のスクライブ方法。
  3. 前記カッターホイールの外径が1.8〜3.0mmである請求項1又は2のいずれかに記載のガラスフリット膜付きガラス板のスクライブ方法。
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