JP2020078162A - 分散型エネルギーマネージメントシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】マルチエージェントシステムの合意制御の手法を用いて分散型エネルギーマネージメントシステムの各エネルギー源の状態を制御する構成に於いて、各エネルギー源の状態の制御目標に対する追従性を改善する。【解決手段】分散型エネルギーマネージメントシステムは、エネルギー伝送路により連結された各エネルギー源に於ける選択された状態指標値が同一の合意値に収束するように制御する。合意値に収束する状態指標値の制御目標値が、各エネルギー源の状態指標値を成分とするベクトルX(t)と重み付きグラフラプラシアンLwとを用いて構成される微分方程式dX(t)/dt=−Lw・X(t)の解により与えられる。【選択図】なし

Description

本発明は、複数のエネルギー源の状態を制御するためのシステムに係り、より詳細には、分散して配置された複数のエネルギー源をネットワークに連結してマルチエージェントシステムを構成し、各エネルギー源がネットワーク内の他のエネルギー源の状態を参照しながら、それぞれの状態を制御するよう構成された分散型エネルギーマネージメントシステムに係る。なお、エネルギー源は、例えば、発電機(同期発電機、非同期発電機等)、太陽電池、風車(風力発電機等)、水車(水力発電機等)、燃料電池、化学電池、蓄電池、その他の発電装置、充電器、充放電器、発光器、加熱器、冷却器、ボイラー、エンジン、ガスタービン、蒸気機関など、エネルギーを種々の媒体を通じて又は種々の担体に載せて送出する任意の機械器具又は装置であってよい。また、エネルギー源に於いて制御されるべき状態は、出力(パワー)、電圧、圧力、温度、トルク、駆動力、制動力、電磁力、電磁場強度、電波強度、周波数、振動数、位相、力率、時刻、電流、流量、流速、体積、電荷密度、磁束密度、エンタルピー、エネルギー量(蓄熱量、充電量等)、体積など、任意の計測可能な物理量及び/又はそれらの変化率若しくは変動率であってよい。
エネルギーの発生方式又は変換方式の多様化や、省エネルギー、二酸化炭素の排出削減及びエネルギー供給のリスク分散の要請などから、電力又はその他のエネルギーの供給方式として、従前の一つの大規模な発電所等のエネルギー源からエネルギーが各地へ需要に応じて分配される方式(集中型エネルギー供給方式)から、複数の場所に配置されネットワーク化された中・小規模のエネルギー源から各地へエネルギーを分配する方式(分散型エネルギー供給方式、スマートグリッドシステムなど)への移行が検討され、採用されつつある。かかる分散型エネルギー供給方式に於いて、分散して配置された複数のエネルギー源は、それぞれ、自律的に自身の状態を制御するようになっているところ、各地へのエネルギー分配のタスクを達成するために、ネットワーク全体としても状態が制御される必要があるので、そのために、従前の集中型エネルギー供給方式とは異なる態様にて複数のエネルギー源の状態を管理するシステム(分散型エネルギーマネージメントシステム)が種々提案されている。
例えば、特許文献1に於いては、複数の発電機及び負荷を含む分散型電力系統に於いて、電力系統の区分開閉器で分離された区間毎に配置された区間エージェントが、区間内の潮流量を把握し、潮流増減量を、発電機エージェント又は下流区間のエージェントに対して調整依頼し、発電機エージェント又は下流区間エージェントがそれぞれ自律的に他の発電機エージェント又は下流区間エージェントと調整を行う連鎖を繰り返すことで区間内の分散型電源及び下流区間の需給制御を行うマルチエージェント技術を用いたシステムが提案されている。かかるシステムでは、区間内に発電機エージェントが複数存在する構成に於いて、潮流増減量の依頼に応じて個々の発電機エージェントが一対一の最適化を繰り返して、全体を最適化することが開示されている。特許文献2では、特許文献1の構成に於いて、分散電源の台数制御を容易にしつつ、コストやCO排出量を最適化するために、開閉器エージェントが、発電機エージェントの出力に応じた「不満足度」を台数制御のための評価値とし、「不満足度」を集計し、区間内の「発電機の稼働状況」を取得し、区間内の発電機の現在の電力出力と最高効率点での電力出力との差を「過不足電力量」として集計し、「不満足度」、「発電機の稼働状況」及び「過不足電力量」から区間内の発電機の選択と起動・停止制御と出力制御を行う構成が提案されている。また、特許文献3は、複数の配電装置が相互に通信可能に結合された電力網に於いて、切り離した配電装置を特定する過程、切り離した配電装置を復旧する過程、電力網内の配電装置の各個に対する信頼性指標を計算する過程、信頼性指標に基づいて電力網内の重大な配電装置を特定する過程と、重大な配電装置に基づいて電力網内部にスケールフリー通信網を確立する過程とを実行するシステムが提案されている。そこに於いて、配電装置を切り離し又は復旧する際にグラフラプラシアンを計算して、電力網内の配電装置を特定することが示されている。特許文献4は、マルチエージェントシステムを構成する電力管理システムに於いて、統計値を共有するユーザ数の増加に対応しつつ各ユーザに関するデータの秘匿性を向上させるべく、各ユーザの情報処理装置が最大電力量とその分割値に基づいて分割値を示す分割値データを送信する送信先を特定し、分割値データを送信し、分割値データを受信した他の情報処理装置が分割値から、複数の電力管理装置が管理する電力量の平均値または標準偏差を算出するといった構成を提案している。更に、分散型エネルギーマネージメントシステムに於ける電源又はエネルギー源等のエージェントの状態の制御に於いて、マルチエージェントシステムの制御手法が有効であることが、非特許文献1等にて提案されている。
特開2009−159808 特開2010−213454 特開2013−017381 特開2016−099955
システム制御工学シリーズ22「マルチエージェントシステムの制御」 東俊一他5名 コロナ社 2015年9月18日
分散型エネルギーマネージメントシステムに於ける各エネルギー源の状態の制御の一つの態様として、システム内のエネルギー源の種々の状態(例えば、各エネルギー源から供給される電力の電圧或いは流体の温度若しくは圧力等)を互いに一致させる制御が実行される場合がある。そのような場合、従前であれば、一つの管理・制御装置が、一括的に、システム内の全てのエネルギー源の状態を監視し、全てのエネルギー源に対して制御のための指令を送出するといった構成となるところ、システムの規模が大きくなればなるほど、管理・制御装置の負担が増大し、また、唯一の管理・制御装置に不具合が生じてしまうと、そのことがシステム全体に影響してしまうこととなる。そこで、近年に於いては、マルチエージェントシステムの合意制御の手法に従って、各エネルギー源の種々の状態を制御することが提案されている。
かかるマルチエージェントシステムの合意制御では、端的に述べれば、まず、システム内の各エネルギー源であるエージェントと、エージェント間にて状態を伝達する状態伝達経路とが、それぞれ、代数的グラフ理論に於けるノードとエッジとして考えられる。そして、ノードとエッジとで構成されるネットワークに於けるノード間の連結状態が行列成分を用いて表された隣接行列Aと、各ノードに於いて連結されている他のノードの数が対角成分にて表された次数行列Dとを決定し、これらの行列を用いて、グラフラプラシアンLを
L=D−A …(1)
により算出し、各エージェントの制御されるべき対象となる状態x(t)[iは、エージェント(ノードの符号)であり、tは、時間である。状態x(t)が複数の成分から成るベクトルであってもよい。]を成分とした状態ベクトルX(t)、即ち、
Figure 2020078162
[nは、システム内のエージェントの数]
が、下記の微分方程式に従って変化するように制御される。
dX(t)/dt=−L・X(t) …(3)
ここにおいて、各エージェントの状態x(t)の微分値は、自身の状態x(t)と状態伝達経路で接続されたエージェント(隣接エージェント)の状態x(t)[i≠j]との差分[x(t)−x(t)]に依存すると設定され、式(3)の解となるX(t)の各成分x(t)は、システム内のエージェントの全てが状態伝達経路で連結されているとき(厳密には、システムにて構成されているグラフがグラフ内のノードが全て連結している無向グラフであるか、或いは、全域木を持つとき)、一つの合意値に漸近的に一致することとなる(非特許文献1)。従って、上記の合意制御によれば、システムに於いて、一つの管理・制御装置にて全エージェントの状態を監視し制御指令を与えるのではなく、各エージェントが自身とそれぞれの隣接エージェントの状態を参照して状態を制御することによって、システムの全エージェントの状態を一つの合意値に一致させることが可能となる。そして、分散型エネルギーマネージメントシステムに於ける各エネルギー源の状態の制御をマルチエージェントシステムの合意制御に従って実行する場合には、各エネルギー源の実際の状態が、グラフラプラシアンを用いて決定される制御目標(式(3)の解X(t)の成分)に追従するように、自身の状態と隣接するエネルギー源の状態とを参照して制御されることとなる。
ところで、分散型エネルギーマネージメントシステムは、典型的には、システム内のエネルギー源の間がエネルギーを伝送する伝送路(エネルギー伝送網)で連結され、そのエネルギー伝送網を通じて各地の需要に対してエネルギーが供給される構成、即ち、システム内のエネルギー源が協働してエネルギーを各地に分配供給する構成となっている。かかるシステムの場合、エネルギー源間のエネルギー伝送の態様の種類によっては、エネルギーの伝送中の損失や伝送の遅れが生じ、その程度は、通常、或るエネルギー源から別のエネルギー源までの伝送路の距離(伝送路距離)が長くなるほど、或いは、或るエネルギー源から別のエネルギー源までの伝送路に於いて介在するエネルギー源を中継する伝送路の数(或るエネルギー源から別のエネルギー源までに直列に連結される伝送路の数(図2参照)。以下、伝送路中継数と称する。)が増えるほど、大きくなる。例えば、エネルギーが電流や熱媒体によって伝送される場合には、伝送路距離が長いほど又は伝送路中継数が多いほど、伝送中のエネルギーの散逸による損失が増大し、また、エネルギーが水、蒸気、ガスなどの時定数の大きい流体によって運ばれる場合には、流体の移送に有限な時間を要することから、伝送路距離が長いほど又は伝送路中継数が多いほど、エネルギーの伝送の遅れの程度が大きくなる。
そして、上記の如きエネルギーの損失や伝送の遅れの発生や増大は、マルチエージェントシステムの合意制御による各エネルギー源の状態の制御にも影響し得ることとなる。各エネルギー源の状態の制御をマルチエージェントシステムの合意制御に従って実行する場合、既に触れた如く、各エネルギー源の状態の制御目標が、各エネルギー源の状態の情報と(通信ネットワーク等を通じて得られる)隣接するエネルギー源の状態の情報とを参照してグラフラプラシアンを用いて決定され、各エネルギー源は、自身の状態を制御目標に追従させるように調節するところ、各エネルギー源の状態の実際の調節は、現在の自身の状態とエネルギー伝送網を通じたエネルギーの伝送を介して伝達される隣接のエネルギー源の状態とに基づいて実行されることとなる。その際、各エネルギー源に於いて、システム内の他のエネルギー源から実際に伝送されてくるエネルギーは、その伝送路距離が長いほど、或いは、伝送路中継数が多いほど、損失や遅れにより低減し、その寄与が低下しているにもかかわらず、制御目標の決定に於いて、通信ネットワーク等を通じて得られた情報に於ける隣接するエネルギー源の状態の指標値をそのまま参照した場合には、制御目標の決定で参照した他のエネルギー源(隣接するエネルギー源及びそれに隣接するエネルギー源)の状態とエネルギー伝送路を通じて伝達される他のエネルギー源の状態との間に齟齬が生じることとなり、このことにより、各エネルギー源の実際の状態を、グラフラプラシアンによって決定された制御目標に追従させることが困難となってしまうことがある(より具体的には、状態の制御目標値と実際値との偏差が解消しにくくなり、例えば、状態の調節制御に於いて積分器が利用されている場合には、積分器の値が飽和するなどの現象が発生して、状態を制御目標へ変化させることが困難となってしまうなどの不具合が生ずることが起き得る。)。そして、各エネルギー源の状態をグラフラプラシアンによって決定された制御目標に追従させることが困難となれば、システム内のエネルギー源の状態を互いに一致させることも困難となってしまう。
上記の如きエネルギー源間のエネルギーの伝送中の損失や遅れによる各エネルギー源の状態の制御への影響は、要すれば、エネルギー源間の伝送路距離又は伝送路中継数の増大と共に各エネルギー源の状態に於ける他のエネルギー源の状態による寄与が低下することがグラフラプラシアンを用いて決定される制御目標に於いて考慮されていないことに起因している。従って、グラフラプラシアンを用いた制御目標の決定に於いて、エネルギー源間の伝送路距離或いは伝送路中継数の増大に応じて、各エネルギー源の状態に対する(各エネルギー源に伝達される)他のエネルギー源の状態の寄与を低減しておくことによって、上記の如きエネルギーの伝送中の損失や遅れによる各エネルギー源の状態の制御への影響が緩和若しくは解消され、各エネルギー源の実際の状態の制御目標に対する追従性を改善することが可能となると考えられる。本発明に於いては、この知見が利用される。
かくして、本発明の一つの課題は、分散型エネルギーマネージメントシステムに於ける各エネルギー源の状態をマルチエージェントシステムの合意制御の手法を用いて制御する構成に於いて、エネルギー源の状態の制御目標の決定に際して、各エネルギー源の状態に対する他のエネルギー源の状態の寄与がエネルギー源間の伝送路距離或いは伝送路中継数に応じて低下することを考慮し、これにより、各エネルギー源の実際の状態の制御目標に対する追従性を改善することである。
本発明によれば、上記の課題は、複数のエネルギー源から成るエネルギー源群を含み、前記エネルギー源群に於ける各エネルギー源が前記エネルギー源群に於ける他のエネルギー源とエネルギー伝送路により連結されたエネルギー伝送網が構成され、前記エネルギー伝送網に於いて互いに連結されたエネルギー源間にて各エネルギー源の状態が伝達される分散型エネルギーマネージメントシステムにして、前記各エネルギー源に於ける選択された状態の指標値が同一の合意値に収束するように前記各エネルギー源の前記選択された状態が制御されるシステムであって、
前記各エネルギー源の前記選択された状態の指標値に対する前記合意値に収束する制御目標値が、時間tに於ける前記各エネルギー源の前記選択された状態の指標値を成分とするベクトルX(t)とその時間微分dX(t)/dtと前記エネルギー伝送網の重み付きグラフラプラシアンLwとを用いて構成される微分方程式:
dX(t)/dt=−Lw・X(t) …(4)
の解であるベクトルX(t)の対応する成分により与えられ、
前記重み付きグラフラプラシアンLwに於いて、前記エネルギー源群に於ける各エネルギー源と他のエネルギー源との間のエネルギー伝送路の距離が長いほど又は前記エネルギー源群に於ける各エネルギー源と他のエネルギー源との間のエネルギー伝送路に於いて介在するエネルギー源を中継する伝送路の数が多いほど、前記他のエネルギー源の状態の指標値に乗ぜられる成分の大きさが相対的に低減されるよう設定されているシステムによって達成される。
上記の構成に於いて、本発明の対象となる「分散型エネルギーマネージメントシステム」とは、既に触れた如き、システム内の複数のエネルギー源がエネルギー伝送路で連結されて成るエネルギー伝送網を構成し、エネルギー伝送網を通じて協働してエネルギーを各地に分配供給するよう構成されたシステムである。ここに於いて、「エネルギー源」は、「技術分野」の欄にて列記されている如きエネルギーを送出する任意の機械器具又は装置であってよく、エネルギー源群を構成する複数のエネルギー源の種類は、エネルギー源間でのエネルギーの伝送が可能であれば、同じ種類であっても、異なる種類であってもよい。また、エネルギー源間に連結されるエネルギー伝送路には、そこに伝送されるエネルギーの形態(例えば、液体又は流体に担持される熱エネルギー、電流又は電磁波によって搬送される電気エネルギー、固体の変形によって伝送される弾性エネルギー、光波によって伝播する光エネルギー、音波によって伝播する音波エネルギーなど)に応じて、流体導管、導電線、綱、索条若しくは軸等の機械要素、光ファイバ、音波管等が適宜選択されてよい。各エネルギー源に於ける「選択された状態」とは、エネルギー源間のエネルギーの伝送に伴ってエネルギー源間にて伝達され得るエネルギー源に於ける「技術分野」の欄にて列記されている如き任意の状態又はそれらの組み合わせであってよい。「選択された状態の指標値」とは、かかる選択された状態を表す指標値である(以下、「状態指標値」と称する。)。
そして、上記の本発明のシステムに於いて、上記の如く、各エネルギー源に於ける選択された状態の制御は、状態指標値が同一の制御目標値に収束するように実行され、かかる制御目標値は、重み付きグラフラプラシアンLwを用いた(式(3)と同様の形式の)式(4)の微分方程式の解のベクトルX(t)の対応する成分によって与えられるところ、かかる重み付きグラフラプラシアンLwに於いて、各エネルギー源と他のエネルギー源と間のエネルギー伝送路の距離、即ち、伝送路距離、が長いほど又は各エネルギー源と他のエネルギー源との間のエネルギー伝送路に於いて介在するエネルギー源を中継する伝送路の数、即ち、伝送路中継数、が多いほど、他のエネルギー源の状態の指標値に乗ぜられる成分の大きさが相対的に低減されるよう設定される。
この点に関し、より詳細に説明すると、まず、一般に、システム内にて各エージェント(本システムではエネルギー源)が他のエージェントからその状態が伝達されてくる状態伝達経路(通信ネットワーク等)にて連結されている構成に於いて各エージェントの状態指標値を同一の合意値に収束させる制御(マルチエージェントシステムの合意制御)の場合、状態指標値に対する制御目標値を与える微分方程式(式(3))に於けるグラフラプラシアンLは、n行×n列(nは、システム内のエージェントの個数)の行列であり、
Figure 2020078162
の形式にて表される。そして、システム内の一つのエージェントi[i(=1〜n)は、エージェントに付された整数符号]の状態指標値x(t)の制御は、微分方程式(3)に従い、システム内の別のエージェントj[j(=1〜n)は、エージェントに付された整数符号であり、j≠iである。]の状態指標値x(t)を用いて、
dx(t)/dt=−Σaij(x(t)−x(t)) …(6)
[Σは、j=1〜nについての総和]
により表される関係式が成立するように実行される。ここに於いて、エージェントiの状態指標値x(t)とエージェントjの状態指標値x(t)との差分(x(t)−x(t))の係数aijは、式(5)のグラフラプラシアンLのi行j列(j≠i)に設定される成分であり、エージェントiとエージェントjとの連結状態を表している。具体的には、エージェントiとエージェントjとが直接に連結しているときには(エージェントiとエージェントjとの間に代数的グラフ理論に於けるエッジ(本システムではエネルギー伝送路に相当)が存在するときには)、正数(>0)に設定され、エージェントiとエージェントjとが直接に連結されていないときには、成分aij=0と設定される。即ち、エージェントiとエージェントjとが互いに隣接したエージェント(隣接エージェント)である場合のみ、差分(x(t)−x(t))に乗ぜられる成分aijが正数に設定される。従って、式(6)によれば、エージェントiの状態指標値x(t)は、陽には、自身の状態指標値x(t)と隣接エージェントjの状態指標値x(t)との差分(x(t)−x(t))に依存して制御されることになるが、隣接エージェントjの状態指標値x(t)は、隣接エージェントjに更に隣接した別のエージェントの状態指標値xに依存することとなるので、結局、エージェントiの状態指標値x(t)は、システム内のエネルギー伝送網に連結されている全てのエージェントの状態指標値に依存して制御されることとなる。
上記の式(6)に於いて正数となる成分aijについて、従前の、典型的なグラフラプラシアンLの場合には、i、jによらず、或る一定値(典型的には、aij=1)が設定される。しかしながら、本発明に於ける重み付きグラフラプラシアンLwの場合には、各エージェントから見た他のエージェントまでの伝送路距離が長いほど又は伝送路中継数が多いほど、他のエージェントの状態指標値に対して乗ぜられる成分の大きさが相対的に低減されるよう設定される。即ち、本発明に於いて、式(6)は、下記の如く修正される。
dx(t)/dt=−Σawij(x(t)−x(t)) …(6a)
[Σは、j=1〜nについての総和]
ここに於いて、awijは、グラフラプラシアンLに於けるaijに対応して、本発明のシステムの重み付きグラフラプラシアンLwにて設定される成分である。重み付きグラフラプラシアンLwは、式(5)と同様の形式を有し、そこに於いて、i行j列(j≠i)の成分は、−awijにより与えられ、対角成分(i行i列の成分)は、Σawij[Σは、j=1〜nの総和、ただし、j≠i]により与えられる。そして、重み付きグラフラプラシアンLwのi行j列[j≠i]の成分(−awij)には、エージェントjの状態指標値x(t)が乗ぜられるところ、本発明のシステムに於いては、システム内の各エージェントとエージェントjと間のエネルギー伝送路が長いほど又は伝送路中継数が多いほど、成分−awijの大きさ(即ち、awij)が相対的に小さく設定されることとなる。即ち、エージェントjの状態指標値x(t)が関わる状態指標値との差分に乗ぜられる成分awijは、エージェントjから各エージェントまでの伝送路距離又は伝送路中継数が増大するほど低減されることとなる。従って、システム内に於いて、或るエージェントが各エージェントから見て離れた位置となる頻度が多いほど、その或るエージェントの状態指標値に乗ぜられる成分awijは、相対的に小さい値に設定される(各エージェントとエージェントjとの間の伝送路中継数が1のときには、各エージェントがエージェントiとなるが、伝送路中継数が>1のときには、エージェントjの直前のエージェントがエージェントiとなる。)。実施の形態に於いて、重み付きグラフラプラシアンLwに於ける成分−awijの大きさ(即ち、awij)は、各エージェントとエージェントjと間の伝送路距離又は伝送路中継数の関数であってよく、awijは、各エージェントとエージェントjと間に対して設定された伝送路距離又は伝送路中継数が増大するほど、0に近づくこととなる。
上記の本発明のシステムの構成によれば、各エネルギー源と他のエネルギー源との間の伝送路距離が長いほど又は伝送路中継数が多いほど、式(6a)に於ける他のエネルギー源の状態指標値x(t)に乗ぜられる成分awijが低減され、その分、各エネルギー源の状態指標値の制御目標値を決定する状態指標値の時間微分に対する他のエネルギー源の状態指標値の寄与が低減されることとなる。既に述べた如く、各エネルギー源の状態指標値の制御目標値の決定に際して参照する他のエネルギー源の状態指標値には、通信ネットワーク等を通じて取得した情報に於ける値が用いられるところ、そこに於ける他のエネルギー源の状態指標値の寄与が低減されれば、制御目標値の決定の段階でエネルギー源間のエネルギーの伝送中の損失や遅れに起因した各エネルギー源の状態に於ける他のエネルギー源の状態による寄与の低下が考慮されることとなり、かくして、制御目標値の決定に於いて参照する他のエネルギー源の状態指標値と、各エネルギー源の状態の制御に於いて参照する他のエネルギー源の状態指標値との寄与の齟齬が低減又は解消され、各エネルギー源の実際の状態の制御目標に対する追従性を改善することが期待される。
上記の本発明のシステムに於ける各エージェントの状態指標値を同一の合意値に収束させる制御として採用される合意制御の態様は、合意値が各エージェントの状態指標値の初期値の平均値となる平均合意制御、合意値が或る一つのエージェントの状態指標値の初期値となるリーダー・フォロワー合意制御又は合意値がその他の値(例えば、各エージェントの状態指標値の初期値の幾何平均値、最大値、最小値、中央値)となる合意制御など、種々の態様であってよい。合意値を如何に設定するかは、当業者に於いて、システム内の各エージェントのエネルギー伝送路の連結状態を参照してグラフラプラシアンの成分を適宜設定することによって決定可能である。
上記の本発明のシステムの実施の態様に於いて、重み付きグラフラプラシアンLwに於ける成分awijの設定に際しては、まず、システム内のエージェント間の連結状態を表すn行×n列の隣接行列A、即ち、i行j列(j≠i)の成分が、エージェントiとエージェントjとが隣接しているときには、正定値(典型的には、1)に設定され、それ以外の場合には、0に設定されている行列を調製し、各エネルギー源について、かかる各エネルギー源から見た他のエネルギー源までの伝送路距離が長いほど又は伝送路中継数が多いほど小さくなる重みを、前記の隣接行列Aに於ける他のエネルギー源に対応する非零成分に対して乗じて得られた重み付き隣接行列Aw[k(=1〜n)は、各エネルギー源の符号]を調製し、かかる各エネルギー源の重み行列の全てを加算して全体重み付き隣接行列Aw(=ΣAw[Σは、k=1〜nの総和])を調製し、かかる全体重み付き隣接行列Awのi行j列(j≠i)の成分に基づいて、重み付きグラフラプラシアンLwに於ける成分awijが設定されてよい。この点に関し、より詳細には、一つの態様に於いては、全体重み付き隣接行列Awのi行j列(j≠i)の成分が重み付きグラフラプラシアンLwに於ける成分awijにそのまま設定されてよい。また、別の態様に於いては、次数行列D(隣接行列Aの行方向の成分の和が対応する行の対角成分に設定されている行列)の対角成分を全体重み付き隣接行列Awの対応する行方向の成分の和にて除算して得られる規格化重み行列Ωを調製し、行列Ωと行列Awの積を演算し、かかる積のi行j列(j≠i)の成分が重み付きグラフラプラシアンLwに於ける成分awijに設定されてよい(上記のいずれの態様に於いても、Lwの対角成分は、前記の如く、Σawij[Σは、j=1〜nの総和]により与えられる。)。
また、上記の各エネルギー源についての重み付き隣接行列Awの調製に於いては、まず、各エネルギー源から見た他のエネルギー源までの伝送路距離又は伝送路中継数を、隣接行列Aに於ける他のエネルギー源とその一つ手前のエネルギー源との連結状態を表す非零成分に対して乗じて得られた距離行列ADkを調製し、距離行列ADkの成分を参照して、重み付き隣接行列Awの各成分に対する重みが、距離行列ADkの対応する成分が大きくなるほど、小さくなるよう設定されるようになっていてよい。各エネルギー源kから他のエネルギー源jまで或るエネルギー伝送路を通ったときの伝送路距離又は伝送路中継数をd ijとすると(注)、重み付き隣接行列Awの各成分に対する重みw(d ij)は、例えば、距離行列ADkの対応する成分d ijを用いて、
(d ij)=fdkij-do …(7)
の如く決定されてよい。ここに於いて、f(0<f<1)は、重み係数であり、doは、各エネルギー源からから隣接エネルギー源までの伝送路距離又は伝送路中継数(各エネルギー源から他のエネルギー源までの伝送路距離又は伝送路中継数の最小値)である。
(注)実施形態の欄にて例示されている如く、エネルギー源kとエネルギー源jとの間を連結するエネルギー伝送路は複数存在する場合があり、エネルギー伝送路によって、伝送路距離又は伝送路中継数が異なり得る。上記のd ijは、エネルギー源kからエネルギー源jまでのエネルギー伝送路のうちのエネルギー源jに隣接するエネルギー源iを通る経路に於けるエネルギー源kとエネルギー源jとの伝送路距離又は伝送路中継数を示している。
ところで、上記の本発明の対象となる分散型エネルギーマネージメントシステムに於いて、エネルギー伝送網に対して任意のエネルギー源が着脱することが可能な場合がある。例えば、エネルギー源が車両などの移動体に担持されており、或る時には、エネルギー伝送網へ連結し、別の時には離脱するといった状況が起き得る。その場合、従前の構成では、エネルギー源がエネルギー伝送網に対して着脱する度にグラフラプラシアンの次元数の変更が必要となり、エネルギー源の状態の制御のための制御目標値の演算を連続的に実行することが困難となっている(即ち、制御目標値の算出に於いて、エネルギー伝送網に於けるエネルギー源の着脱があると、次元数の異なるグラフラプラシアンを使い分ける必要が生じる。)。
この点に関して、本発明の発明者等は、上記の本発明のシステムによれば、重み付きグラフラプラシアンLwの構成に際して、着脱可能なエネルギー源がエネルギー伝送網に連結しているときには、各エネルギー源と着脱可能なエネルギー源との間に於ける伝送路距離又は伝送路中継数に通常の値を設定し、着脱可能なエネルギー源がエネルギー伝送網から離脱しているときには、各エネルギー源と着脱可能なエネルギー源との間に於ける伝送路距離又は伝送路中継数に、仮想的に、実際のエネルギー伝送網に於いて見られる伝送路距離又は伝送路中継数が無視できるほど大きな値を設定することによって、エネルギー源がエネルギー伝送網に連結しているときでもエネルギー伝送網から離脱したときでも、グラフラプラシアンの構造を変更せずに、連続的に制御目標値の算出が可能となることを見出した。これは、本発明のシステムに於いて用いている重み付きグラフラプラシアンLwに於いて、着脱可能なエネルギー源がエネルギー伝送網から離脱したときに、各エネルギー源と着脱可能なエネルギー源との間に於ける伝送路距離又は伝送路中継数を仮想的に大きな値に設定することによって、着脱可能なエネルギー源の状態の指標値に乗ぜられる成分の大きさが相対的に無視し得るほど小さくなり、各エネルギー源の状態に対する着脱可能なエネルギー源の状態の寄与を無視し得るほど小さくできることによっている。
かくして、本発明のシステムのもう一つの態様によれば、上記の本発明のシステムであって、前記複数のエネルギー源の少なくとも一部が前記エネルギー伝送網に対して着脱可能なエネルギー源であり、
前記着脱可能なエネルギー源が前記エネルギー伝送網から離脱しているときには、前記重み付きグラフラプラシアンLwに於いて、前記各エネルギー源と前記着脱可能なエネルギー源との間のエネルギー伝送路の距離又は前記各エネルギー源と前記着脱可能なエネルギー源との間のエネルギー伝送路に於いて介在するエネルギー源を中継する伝送路の数が仮想的に前記エネルギー伝送網に於いて実際に見られるエネルギー伝送路の距離又は前記各エネルギー源と前記着脱可能なエネルギー源との間のエネルギー伝送路に於いて介在するエネルギー源を中継する伝送路の数が無視できるほど大きな値に設定され、前記着脱可能なエネルギー源の状態の指標値に乗ぜられる成分の大きさがその他の非零成分に比して無視できるほど小さくなるよう設定されるシステムが提供される。かかる構成によれば、エネルギー伝送網に於いてエネルギー源の着脱があっても、各エネルギー源と着脱可能なエネルギー源との間の伝送路距離又は伝送路中継数を仮想的に増減するだけで、同一の構造のグラフラプラシアンを用いて、マルチエージェントシステムの合意制御に従った各エネルギー源の状態の制御が可能となる。
かくして、上記の本発明の構成によれば、分散型エネルギーマネージメントシステムに於いて各エネルギー源の選択された状態の指標値が同一の合意値に収束するように各エネルギー源の選択された状態を制御する構成に於いて、状態指標値に対する制御目標値の決定に用いられるグラフラプラシアンに於ける成分の大きさに対し、エネルギー源(エージェント)間の伝送路距離又は伝送路中継数に依存して、より具体的には、伝送路距離又は伝送路中継数の増大と共に成分の大きさが相対的に小さくなるように、重み付けを適用することによって、エネルギー源間のエネルギーの伝送中の損失や遅れに起因した制御目標値の決定に於いて参照する他のエネルギー源の状態指標値と各エネルギー源の状態の制御に於いて参照するエネルギーの伝送を介して伝達される他のエネルギー源の状態指標値との齟齬が緩和又は解消され、各エネルギー源の実際の状態の制御目標に対する追従性が改善されることが期待される。本発明のシステムの構成は、多種多様なエネルギー伝送網に連結されたエネルギー源の状態の制御のために適用可能であり、また、従前であれば、エネルギー源間のエネルギーの伝送中の損失や遅れによって、マルチエージェントシステムの合意制御が良好に作用しなかったシステムに於いても適用でき、分散型エネルギーマネージメントシステムに於けるマルチエージェントシステムの合意制御のより広範な利用ができるようになることが期待される。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
図1(A)は、本実施形態の分散型エネルギーマネージメントシステムの構成を模式的に表した図である。図1(B)は、本実施形態のシステムに於けるエネルギー源間のエネルギーの伝送中に於いて生じ得るエネルギーの損失を説明する図である。図1(C)は、本実施形態のシステムに於けるエネルギー源間のエネルギーの伝送中に於いて生じ得るエネルギーの伝送の遅れを説明する図である。 図2(A)は、本実施形態のシステムに於いて、一つのエネルギー源(起点:エージェント1)から他のエネルギー源(エージェント2〜7)のそれぞれまでの伝送路距離又は伝送路中継数を説明する図である。図2(B)は、図2(A)に於けるシステムに於けるエージェント1からエージェント5までに連結されるエネルギー伝送路を展開して描いた図である。図2(C)は、起点となるエネルギー源と他のエネルギー源との間の伝送路距離又は伝送路中継数に対する、重み付きグラフラプラシアンLwの他のエネルギー源の状態指標値に乗ぜられる成分awijにて設定される重みW(d)の変化の例を示したグラフ図である。 図3(A)、(B)は、図2(A)のシステムに於いて、それぞれ、起点をエージェント2とした場合及び起点をエージェント4とした場合の他のエージェントまでの伝送路距離又は伝送路中継数を模式的に示した図である。 図4(A)は、本実施形態のシステムに於いて、システムの隣接行列から、各エージェントから他のエージェントまでの伝送路距離又は伝送路中継数を表す距離行列を算出するプログラムコードの一部を示している。図4(B)は、4つのエージェントからなるシステムのグラフ図である。 図5(A)は、図2(A)に例示のシステムに於いて、通常のグラフラプラシアンLを用いた状態指標値の微分方程式を解いた場合(上段)及び本実施形態の教示により調製した重み付きグラフラプラシアンLwを用いた状態指標値の微分方程式を解いた場合(下段)の各エージェントの状態指標値(制御目標値)の時間変化を示している。図5(B)は、図2(A)に例示のシステムに於いて、各エージェントの状態指標値に種々の初期値を与えた後に全エージェントの状態指標値が合意値に収束するまでの収束時間について、通常のグラフラプラシアンLを用いた場合の収束時間(重み付けなし−横軸)に対して本実施形態の教示により調製した重み付きグラフラプラシアンLwを用いた場合の収束時間(重み付けあり−縦軸)をプロットした図である。図中、点線は、プロットの近似曲線である。 図6(A)は、エージェント数が10であるシステムの例のグラフを示しており、図6(B)は、エージェント数が15であるシステムの例のグラフを示している。いずれの場合、辺で連結されたエージェント間の状態の伝達方向は双方向となった無向グラフである。図6(C)は、図6(A)、(B)のグラフに於ける、図5(B)と同様の、各エージェントの状態指標値に種々の初期値を与えた後に全エージェントの状態指標値が合意値に収束するまでの収束時間について、通常のグラフラプラシアンLを用いた場合(重み付けなし−横軸)に対して本実施形態の教示により調製した重み付きグラフラプラシアンLwを用いた場合(重み付けあり−縦軸)をプロットした図である。◇は、エージェント数n=10の場合であり、●は、エージェント数n=15の場合である。比較のため、n=7の結果△も表示されている。図中、太実線は、それぞれ、プロットの近似曲線である。 図7(A)、(B)は、図2(A)と同様のネットワーク構造のエネルギー伝送網を有するシステム(ただし、エージェント1−2に於ける状態の伝達・伝送方向は、エージェント1からエージェント2への一方向である。)であって、エネルギー伝送網に対して着脱可能なエージェント7(エネルギー源)を含むシステムのグラフを示しており、それぞれ、着脱可能なエージェント7がエネルギー伝送網に連結した状態、及び、着脱可能なエージェント7がエネルギー伝送網から離脱した状態が示されている。図7(C)は、図7(A)、(B)のシステムに於いて着脱可能なエージェント7に対するエネルギー伝送網への着脱状態が、仮想的に伝送路距離又は伝送路中継数に追加される仮想伝送路距離Dによって表されるグラフを示している。 図8(A)、(B)は、図7(C)に例示されたシステムに於いて、本実施形態の教示により、エネルギー伝送網に対する着脱可能なエージェントの着脱状態に応じて、仮想伝送路距離Dを設定して調製された重み付きグラフラプラシアンLwを用いた状態指標値の微分方程式を解いた場合の各エージェントの状態指標値の時間変化を示している。(A)は、D=0(エネルギー伝送網に着脱可能なエージェントが連結した状態)であり、(B)は、D=10000(エネルギー伝送網から着脱可能なエージェントが離脱した状態)である。 図9(A)〜(C)は、図8と同様に、図7(C)に例示されたシステムに於いて、本実施形態の教示により、エネルギー伝送網に対する着脱可能なエージェントの着脱状態に応じて、仮想伝送路距離Dを設定して調製された重み付きグラフラプラシアンLwを用いた状態指標値の微分方程式を解いた場合の各エージェントの状態指標値の時間変化を示している。(A)は、D=0の条件にて(着脱可能なエージェントがエネルギー伝送網に連結した状態に等価)初期値を与えて各エージェントの状態指標値の演算を開始し、各エージェントの状態指標値が合意値に収束する前にD=10000に設定した場合(着脱可能なエージェントがエネルギー伝送網から離脱した状態に等価)であり、(B)は、D=0の条件にて初期値を与えて各エージェントの状態指標値の演算を開始し、各エージェントの状態指標値が合意値に収束した後にD=10000に設定した場合であり、(C)は、D=0の条件にて初期値を与えて各エージェントの状態指標値の演算を開始し、各エージェントの状態指標値が合意値に収束する前に一時的にD=10000に設定した場合である。 図10(A)〜(C)は、図8、9と同様に、図7(C)に例示されたシステムに於いて、本実施形態の教示により、エネルギー伝送網に対する着脱可能なエージェントの着脱状態に応じて、仮想伝送路距離Dを設定して調製された重み付きグラフラプラシアンLwを用いた状態指標値の微分方程式を解いた場合の各エージェントの状態指標値の時間変化を示している。(A)は、D=10000の条件(着脱可能なエージェントがエネルギー伝送網から離脱した状態に等価)にて初期値を与えて各エージェントの状態指標値の演算を開始し、各エージェントの状態指標値が合意値に収束する前にD=0に設定した場合(着脱可能なエージェントがエネルギー伝送網に連結した状態に等価)であり、(B)は、D=10000の条件にて初期値を与えて各エージェントの状態指標値の演算を開始し、各エージェントの状態指標値が合意値に収束する前に一時的にD=0に設定した場合である。(C)は、D=10000の条件にて初期値を与えて各エージェントの状態指標値の演算を開始し、各エージェントの状態指標値が合意値に収束した後にD=0に設定した場合である。 図11(A)は、図2(A)と同様のネットワーク構造のエネルギー伝送網を有するシステム(ただし、エージェント1−2に於ける状態の伝達・伝送方向は、エージェント1からエージェント2への一方向である。)であって、エネルギー伝送網に対して二つの着脱可能なエージェント(エネルギー源)5、7を含むシステムのグラフを示しており、2つの着脱可能なエージェントに対するエネルギー伝送網への着脱状態が、仮想的に伝送路距離又は伝送路中継数に追加される仮想伝送路距離D1、D2によって表されたグラフを示している。図11(B)〜(D)は、図8、9、10と同様に、図11(A)に例示されたシステムに於いて、本実施形態の教示により、エネルギー伝送網に対する着脱可能なエージェントの着脱状態に応じて、仮想伝送路距離D1、D2を設定して調製された重み付きグラフラプラシアンLwを用いた状態指標値の微分方程式を解いた場合の各エージェントの状態指標値の時間変化を示している。(B)は、D1,D2=0の条件にて(着脱可能なエージェントがエネルギー伝送網に連結した状態と等価)初期値を与えて各エージェントの状態指標値の演算を開始し、各エージェントの状態指標値が合意値に収束する前に、D1,D2を、それぞれ、10000に設定した場合(エージェント5、7が順にエネルギー伝送網から離脱した状態に等価)であり、(C)は、D1,D2=0の条件にて初期値を与えて各エージェントの状態指標値の演算を開始し、各エージェントの状態指標値が合意値に収束する前にD1,D2を、順に一時的に、10000に設定した場合(エージェント5、7がエネルギー伝送網から順に一時的に離脱した状態に等価)であり、(D)は、D1,D2=0の条件にて初期値を与えて各エージェントの状態指標値の演算を開始し、エージェント5、7が各エージェントの状態指標値が合意値に収束する前にD1,D2を、順に一時的に、10000に設定し、残りのエージェントの状態指標値が合意値に収束した後に再びD1,D2=0に設定した場合である。
1…分散型エネルギーマネージメントシステム
Es…エネルギー源(エージェント)
Te…エネルギー伝送路
Ie…情報通信回線
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
システムの構成
図1(A)を参照して、本実施形態の対象である分散型エネルギーマネージメントシステムは、複数のエネルギー源Esからなるエネルギー源群に於いて、各エネルギー源Esが、エネルギーを伝送するエネルギー伝送路Teにて群内の少なくとも一つの別のエネルギー源Esと連結されてエネルギー伝送網を構成し、エネルギー伝送網を通じて協働してエネルギーを各消費地(図示せず)に、それぞれのエネルギーの要求の大きさに応じて、分配供給するよう構成されたシステムである。エネルギー源Esは、既に触れた如く、「技術分野」の欄にて列記されている如きエネルギーを送出する任意の機械器具又は装置であってよく、システム内のエネルギー源Esの種類は、エネルギー源間に於いてエネルギーの伝送が可能であれば、同じであっても、異なっていてもよい。消費地は、エネルギーを消費する任意の機械器具又は装置であり、エネルギー伝送路Teに対してエネルギー源Esと一体的に連結されていてもよく、別々に連結されていてもよい。エネルギー源間に於いて伝送されるエネルギーの形態は、例えば、流体(液体、気体)に担持される熱エネルギー、電流又は電磁波によって搬送される電気エネルギー、固体の変形によって伝送される弾性エネルギー、光波によって伝播する光エネルギー、音波によって伝播する音波エネルギーなど、任意の態様であってよく、エネルギー源間を連結するエネルギー伝送路Teの種類は、伝送されるエネルギーの形態に応じて、流体導管(配水管、ガス管等)、導電線、綱、索条若しくは軸、歯車等の機械要素、光ファイバ、音波管等から適宜選択されてよい。
また、上記の本実施形態のシステムに於いては、各エネルギー源Esに於ける任意に選択された状態が互いに同一の状態となるように、各エネルギー源Esの選択された状態の制御が各エネルギー源Es自身の選択された状態とエネルギー伝送路Teにて連結された別のエネルギー源Esの対応する選択された状態とに基づいて実行される。エネルギー源に於いて制御される状態は、エネルギー源間のエネルギーの伝送に伴って伝達される各エネルギー源に於ける状態であって、具体的には、「技術分野」の欄にて列記されている如き任意の計測可能な物理量及び/又はそれらの変化率若しくは変動率であってよい。制御される状態は、複数種類であってもよい。かかる各エネルギー源の状態の制御に於ける各エネルギー源の状態を表す指標値のための制御目標値は、各エネルギー源Esにエネルギー伝送路Teにて連結されたシステム内の別のエネルギー源Esの状態を参照して後述のマルチエージェントシステムの合意制御に準じて決定される。そのために、各エネルギー源Esは、エネルギー伝送路Teにて連結された別のエネルギー源Esとの間で、互いに各エネルギー源Esの選択された状態を表す「状態指標値」の情報の伝達が可能なように情報通信回線Ieにて接続され、これにより、情報通信ネットワークが構成され、各エネルギー源Esは、その情報通信ネットワークを通じて、エネルギー伝送路Teにて連結された別のエネルギー源の状態指標値を取得できるよう構成される。情報通信ネットワークは、有線通信、無線通信、光通信など、任意の態様にて構成されてよい。そして、各エネルギー源Esに於いては、選択された状態は、その状態指標値が上記の情報通信ネットワークを通じて取得された別のエネルギー源の状態指標値を用いて決定された制御目標値に一致するように、自身の選択された状態と別のエネルギー源からエネルギーの伝送に伴って伝達された別のエネルギー源の状態とに基づいて制御されることとなる。各エネルギー源に於ける選択された状態の制御処理は、選択された状態の種類に応じて実行されてよい。具体的な制御処理の態様は、選択された状態に応じて当業者に於いて適宜決定可能である。

ところで、上記のシステムの構成に於いては、既に述べた如く、各エネルギー源の状態指標値のための制御目標値を決定する際に参照される別のエネルギー源の状態指標値は、情報通信ネットワークを通じてそのまま各エネルギー源へ伝達されることとなるが、各エネルギー源に於ける状態の制御に於いて参照されるエネルギーの伝送に伴って伝達される別のエネルギー源の状態は、各エネルギー源へそのまま伝達されるとは限らず、情報通信ネットワークを通じて取得された指標値が表す別のエネルギー源の状態に対して齟齬を生じている場合がある。例えば、図2(B)に模式的に描かれている如く、エネルギーがエネルギー源Es1から順にエネルギー源Es2、Es3へと伝送されていく間に於いては、エネルギーの損失ΔQが生じ得るので、エネルギー源Es3、Es2のそれぞれから送出されたエネルギーは、伝送中に低下しつつ、エネルギー源Es2、Es1へ届くこととなる。このような場合、エネルギーの伝送に伴ってエネルギー源間を伝達される状態についても、その伝達の程度が低下している、換言すれば、エネルギーの送出側のエネルギー源の状態は、そのまま、エネルギーの受容側のエネルギー源へ伝達されず、受容側のエネルギー源に於ける送出側のエネルギー源の状態の寄与は低減されていると考えられる。そして、エネルギーの伝送中のエネルギーの損失ΔQは、エネルギー源間の伝送路距離が長くなるほど或いは伝送路中継数が多くなるほど、大きくなるので、これと共に、状態の伝達の程度、即ち、受容側のエネルギー源に於ける送出側のエネルギー源の状態の寄与も更に低下すると考えられる。また、図2(C)に模式的に描かれている如く、エネルギー源Es1から順にエネルギー源Es2、Es3へのエネルギーの伝送が流体の移送又は物体の変形に伴って為される場合、エネルギーの伝送の速度は、一般に、情報通信ネットワークを通じた状態指標値の伝達速度に比して遅いため、情報通信ネットワークを通じた状態指標値の伝達に対して、エネルギーの伝送に伴う状態の伝達に遅れΔtが発生することとなる。このような場合にも、エネルギーの伝送に伴ってエネルギー源間を伝達される状態は、そのまま、エネルギーの受容側のエネルギー源へ伝達されず、受容側のエネルギー源に於ける送出側のエネルギー源の状態の寄与は低減されると考えられる。そして、エネルギーの伝送遅れΔtも、エネルギー源間の伝送路距離が長くなるほど或いは伝送路中継数が多くなるほど、大きくなるので、これと共に、受容側のエネルギー源に於ける送出側のエネルギー源の状態の寄与も更に低下すると考えられる。
上記の如く、各エネルギー源へエネルギーの伝送に伴って伝達された別のエネルギー源の状態と情報通信ネットワークを通じて取得された状態指標値が表す別のエネルギー源の状態との間でエネルギーの伝送中に於ける損失及び/又は伝送遅れに起因した齟齬が生じている場合、既に述べた如く、各エネルギー源に於ける状態の制御は、自身の状態とエネルギーの伝送に伴って伝達された別のエネルギー源の状態とに基づいて調節されるので、各エネルギー源にて、その状態指標値を情報通信ネットワークを通じて取得された状態指標値を用いて決定された制御目標値へ追従させることは困難となることがある。より具体的には、各エネルギー源の状態の調節制御に於いては、典型的には、積分器が利用されていることが多いところ、上記の如き齟齬が生じていると、状態指標値と制御目標値との偏差が解消しにくくなり、これにより、積分器の値が飽和するなどの現象が発生して、状態指標値を制御目標値へ変化させることが困難となってしまうなどの不具合が生ずることが起き得る。そして、このような各エネルギー源の状態制御に対するエネルギーの伝送中に於ける損失及び/又は伝送遅れの影響は、エネルギー源間の伝送路距離が長くなるほど或いは伝送路中継数が多くなるほど、大きくなると考えられる。
そこで、本実施形態に於いては、上記の各エネルギー源の状態制御に対するエネルギーの伝送中に於ける損失及び/又は伝送遅れの影響を考慮し、各エネルギー源の状態指標値のための制御目標値の算定に際して、他のエネルギー源の状態指標値の寄与がエネルギー源間の伝送路距離が長くなるほど或いは伝送路中継数が多くなるほど低くなるように制御目標値の算定処理が改良される。かかる改良により、各エネルギー源に於ける状態の制御に於いて参照される別のエネルギー源の状態と、制御目標値の算定に際して参照される別のエネルギー源の状態との間の齟齬が緩和又は解消され、各エネルギー源の状態指標値の制御目標値に対する追従性が良くなり、各エネルギー源の実際の状態の制御目標に対する追従性を改善することが期待される。
本実施形態に於けるエネルギー源の状態指標値の制御目標値の算定処理
(i)グラフラプラシアンを用いた制御目標値の算定処理
本実施形態のシステムに於いては、各エネルギー源の状態指標値に対する制御目標値が、マルチエージェントシステムの合意制御に準じて算定される。マルチエージェントシステムの合意制御に於いては、一般的には、「発明の概要」の欄に於いても述べられているように、各エージェント、即ち、各エネルギー源(以下、エネルギー源を「エージェント」と称する。)の制御されるべき対象となる時間tの状態x(t)を成分とした状態ベクトルX(t)(式(2)参照)が、微分方程式:
dX(t)/dt=−L・X(t) …(3)
に従って変化するように制御される。ここに於いて、Lは、グラフラプラシアンであり、隣接行列Aと次数行列Dとを用いて、
L=D−A …(1)
により算出される。隣接行列Aは、システムに於けるエージェント間の連結状態を表すn×n行列であって(nは、システム内のエージェント数)、具体的には、その対角成分は、0であり、状態ベクトルX(t)に於ける成分jであるエージェントj(符号jが付されたエージェント)の状態x(t)が状態ベクトルX(t)に於ける成分iであるエージェントi(符号iが付されたエージェント)の状態x(t)に寄与するとき、即ち、エージェントjからエージェントiの状態が伝達されるようエージェントiとエージェントjとが連結されているときには、i行j列の非対角成分aijは、1に設定され、それ以外のときには、0に設定される。また、次数行列Dは、隣接行列Aの成分の行方向の和Σaij[Σは、j=1〜nについての総和。なお、j=iのときは、aii=0である。]がそれぞれ対応する行の対角成分となったn×n行列である。例えば、図1(A)に例示のシステム(エージェント数n=7)の場合、隣接行列A、次数行列D、グラフラプラシアンLは、下記の如く与えられる。
Figure 2020078162
Figure 2020078162
Figure 2020078162
上記の式(3)の微分方程式を状態ベクトルX(t)の成分毎に、即ち、エージェントの状態x(t)毎に書くと、「発明の概要」の欄に於いて既に述べた如く
dx(t)/dt=−Σaij(x(t)−x(t)) …(6)
[Σは、j=1〜nについての総和]
により表される。ここで、隣接行列の成分である係数aijは、エージェントiとエージェントjとが直接に連結している場合のみ、即ち、エージェントiとエージェントjとが隣接しているときのみ、1となり、それ以外では、0となるので、x(t)は、陽には、自身と隣接するエージェントの状態x(t)に依存して決定されることとなる。式(6)に於いては、各エージェントに於いて、自身の状態と隣接するエージェントの状態との差分が低減するように自身の状態が変化させられることとなるので、同式をx(t)について解くと、
Figure 2020078162
が成立し、従って、解xi(t)について、
Figure 2020078162
が成立するので、解x(t)は、同一の合意値αに収束することとなる。そして、本実施形態のシステムに於いては、上記のマルチエージェントシステムの合意制御に於いて演算される式(6)の解x(t)を、各エネルギー源の状態指標値の制御目標値として、各エネルギー源の状態の制御が実行され、式(6)の解x(t)、即ち、制御目標値が合意値αに収束することにより、各エネルギー源の状態が均一に制御されることが期待される。
なお、既に述べた如く、本実施形態で採用されるマルチエージェントシステムの合意制御の態様は、合意値が各エージェントの状態指標値の初期値の平均値となる平均合意制御、合意値が或る一つのエージェントの状態指標値の初期値となるリーダー・フォロワー合意制御又は合意値がその他の値(例えば、各エージェントの状態指標値の初期値の幾何平均値、最大値、最小値、中央値)となる合意制御など、種々の態様であってよい。システムに於いて構成されているネットワーク(情報通信ネットワーク及びエネルギー伝送網)に於いて、隣接したエージェント間の全てに於いて双方向に状態が寄与するようになっている場合には、隣接行列AとグラフラプラシアンLは、対称行列となり、合意値αがシステム内の全てのエージェントの状態指標値の初期値の平均値となる平均合意制御が達成される。一方、システムのネットワークに於いて、或る一つのエージェントの状態が別のエージェントの状態に影響されないようになっている場合、合意値αは、かかる一つのエージェント(リーダー・エージェント)の状態指標値の初期値となり、別のエージェント(フォロワー・エージェント)の状態指標値がリーダー・エージェントの状態指標値の初期値へ収束することとなるリーダー・フォロワー合意制御が達成される。この場合、隣接行列AとグラフラプラシアンLは、リーダー・エージェントの状態指標値に関わる成分について非対称となる(図7〜図11参照)。
(ii)本実施形態のシステムに於ける重み付きグラフラプラシアンLwに於ける非零成分awijの設定
上記の各エージェント(エネルギー源)の状態指標値に対する制御目標値の算定処理に於いて、式(6)は、各エージェントの状態指標値の制御目標値が陽には自身と隣接するエージェントの状態にのみ依存するよう記述されているが、隣接するエージェントの状態は、更に隣接するエージェントの状態に依存するので、結局、各エージェントに対する状態指標値の制御目標値は、システム内の全てのエージェントの状態に依存して決定されることとなる。この点に関し、上に説明された隣接行列Aでは、非零成分がaij=1に設定されていることから、一連の算定処理に算出された制御目標値に於いては、或るエージェントの状態に対して、別の全てのエージェントの状態は、エージェント間の伝送路距離又は伝送路中継数によらず、均等に寄与するようになっている。その場合、既に触れた如く、エージェント間の伝送路距離又は伝送路中継数に応じたエネルギーの伝送中に於ける損失及び/又は伝送遅れの影響が考慮されておらず、各エージェントの実際の状態を表す状態指標値の制御目標値に対する良好な追従性が得られないことがある。そこで、本実施形態に於いては、下記に説明される如く、制御目標値の算定に於いて、エージェント間の伝送路距離又は伝送路中継数に応じたエネルギーの伝送中に於ける損失及び/又は伝送遅れの影響を考慮して、各エージェントの状態指標値が制御目標値に良好に追従できるように、隣接行列、次数行列、グラフラプラシアンに於ける非零成分に対してエージェント間の伝送路距離又は伝送路中継数に応じた重み付けが行われる。即ち、「発明の概要」の欄に於いて述べた如く、本実施形態に於いては、式(6)に於けるaijをエネルギー源間の伝送路距離又は伝送路中継数に応じて重み付けされたawijに置き換え、式(6)が、下記の如く修正される。
dx(t)/dt=−Σawij(x(t)−x(t)) …(6a)
[Σは、j=1〜nについての総和]
具体的には、まず、システムに於いて、各エージェントからの他のエージェントまでの伝送路距離又は伝送路中継数が決定される。例えば、図1(A)に例示のエージェント数n=7のシステムの場合、エージェント1から見たエージェント2〜7までの伝送路距離又は伝送路中継数を表す距離指標値d(注)が、それぞれ、図2(A)に描かれている如く決定される。そして、図2(B)に模式的に描かれている如く、エージェント1の状態に対して、エージェント2〜7の状態の寄与は、距離指標値dが大きくなるほど低減すると考えられる(図2(B)に於いて、エージェント間の連結線の太さは、エージェント2〜5のエージェント1に対する寄与の大きさを表している。)。そこで、本実施形態に於いては、図2(C)に模式的に描かれている如く、距離指標値dが大きくなるほど低減する重みW(d)を設定し、重みW(d)を式(6)の対応する非零成分aijに乗じることによって隣接行列Aの重み付け処理が為される。
(注)距離指標値dは、好適には、エージェント間の実際のエネルギー伝送路の距離であってよいが、エージェント間にて直列に接続される伝送路の数(伝送路中継数)であってもよい。図示の例に於いては、説明のため、各エージェント間の距離を同一に設定しており、その場合には、伝送路距離は伝送路中継数に対応するので、距離指標値dは、伝送路距離と伝送路中継数とのいずれであってもよいように記載されている。
上記の隣接行列Aの重み付け処理に於いては、より詳細には、まず、各エージェントkについて、そのエージェントkから他のエージェントまでの距離指標値dに対応した重みW(d)が対応する隣接行列Aの成分aijに乗算された重み付き隣接行列Awが生成される。重み付き隣接行列Awに於いては、エージェントkから見てエージェントjまでの(エネルギー伝送路がエージェントjに隣接したエージェントiを通る場合の)距離指標値d ijがdであるとき、隣接行列Aに於けるエージェントjとそれに一つ手前にて隣接するエージェントiとの連結に対応する成分aijに対してW(d)が乗じられる。なお、ここに於いて、エージェントkからエージェントjまで複数の経路が存在する場合、経路毎の距離指標値d ijに対応する重みが用いられる。例えば、図2(A)に於けるエージェント1から見たエージェント5のように、エージェント2、3、4を通るエネルギー伝送路Iとエージェント2、6を通るエネルギー伝送路IIとがある場合には、エネルギー伝送路I上のエージェント4とエージェント5との連結を表す成分に対しては、エネルギー伝送路Iを通ってきた場合の距離指標値d=4に於ける重みW(d=4)が乗算され、エネルギー伝送路II上のエージェント6とエージェント5との連結を表す成分に対しては、エネルギー伝送路IIを通ってきた場合の距離指標値d=3に於ける重みW(d=3)が乗算される。また、エージェントkから見てエージェントjとそれに一つ手前にて隣接するエージェントiとの間の伝送路まで複数の経路を経て通過することができるときには、エージェントiとエージェントjとの連結を表す成分に対しては、より短い経路に於ける距離指標値dに於ける重みW(d)が乗算されてよい。従って、各エージェントkについての重み付き隣接行列Awのi行j列の成分aw ijは、d ij=dのとき、
aw ij=W(d)・aij …(10)
により算出される。
なお、重みW(d)は、距離指標値dの増大に対して低減する任意の関数を用いて設定されてよい。一つの例に於いて、W(d)は、
W(d)=κ・f …(11)
により決定されてよい。ここで、fは、0<f<1の重み係数であり、κは、任意の係数であり、例えば、システム内の距離指標値dの最小値doを用いて、κ=f−doなどと算出される値であってよい(その場合、W(do)=1となる。)。
また、一つの実施形態に於いて、各エージェントkについての重み付き隣接行列Awの調製に於いては、エージェントkから見た他のエージェントまでの距離指標値dを表す距離行列ADkを調製し、距離行列ADkの成分に基づいて、重み付き隣接行列Awの成分が演算されてよい。具体的には、距離行列ADkの成分d ijが隣接行列Aの成分aijに対応する距離指標値dを乗じることにより、即ち、
ij=d・aij …(12)
により与えられる。ここで、距離指標値dは、エージェントkから見たエージェントjまでの距離指標値dである。そして、重み付き隣接行列Awの成分aw ijは、例えば、
aw ij=fdkij−do・aij …(13)
などと算出されてよい。
例として、図2(A)に例示のシステムの場合、各エージェントについての距離行列ADk及び重み付き隣接行列Awは、下記の如くとなる。なお、式(14)のaw ijの演算に於いて、f、doは、それぞれ、f=1/2、do=1とした。図2(A)、図3(A)、(B)は、それぞれ、エージェント1、2、4(起点)から見た他のエージェントまでの距離指標値dを示している。
Figure 2020078162
Figure 2020078162
Figure 2020078162
Figure 2020078162
Figure 2020078162
Figure 2020078162
Figure 2020078162
なお、距離指標値dとして伝送路中継数を採用する場合、図4(A)に例示されている如きプログラムコードにより、隣接行列Aから各エージェントの距離行列ADkを調製することが可能である。図4(A)のプログラムコードに於いては、各エージェントを起点とした場合に於いて(1:)、まず、隣接行列Aに於いて起点エージェントからの距離指標値がd=1のエージェント(起点エージェントに隣接したエージェント)が関わる成分を0にした行列RES1を作成し(2:)、その行列RES1を隣接行列Aから減算して、隣接行列Aに於いて起点エージェントからの距離指標値がd=1のエージェントが関わる成分のみが非零となった行列EXT1を作成し(3:)、その行列EXT1を行列ADに設定する(4:)。しかる後、起点エージェントからの距離指標値dを2から1ずつ増分させながら(5:)、隣接行列Aに於いて起点エージェントから距離指標値がd−1までのエージェントに関わる成分が0にされた行列RES(d−1)に於いて、更に、起点エージェントからの距離指標値がd−1であるエージェントからの距離指標値がd=1のエージェント(起点エージェントからの距離指標値がdであるエージェント)が関わる成分を0にした行列RESdを作成し(6:〜16:)、その行列RESdを行列RES(d−1)から減算して、隣接行列Aに於いて起点エージェントからの距離指標値がdのエージェントが関わる成分のみが非零となった行列EXTdを作成し(17:)、行列EXTdに距離指標値dを乗じたものを行列ADに対して加算する処理(18:)が反復して実行される。そうすると、隣接行列Aに於ける非零成分aijの値が起点エージェントkから見たエージェントjの距離指標値dに変換された距離行列ADkが得られることとなる。
例として、図4(B)に例示されているシステムについて、エージェント2についての距離行列AD2の算出に於いては、まず、隣接行列Aとエージェント2に隣接するエージェントの関わる成分を0にする行列Cは、それぞれ、
Figure 2020078162
により与えられる。そうすると、隣接行列Aに於いて起点エージェントからの距離指標値がd=1のエージェントが関わる成分を0にした行列RESと、隣接行列Aに於いて起点エージェントからの距離指標値がd=1のエージェントが関わる成分のみが非零となった行列EXTとは、それぞれ、
Figure 2020078162
と算出される。しかる後、d=2に於いて、隣接行列Aに於いて起点エージェントから距離指標値が1までのエージェントに関わる成分が0にされた行列RESに於いて、起点エージェントからの距離指標値がd=2であるエージェントが関わる成分を0にする行列C’と、行列RESに於いて距離指標値がd=2であるエージェントが関わる成分が0になった行列RESは、
Figure 2020078162
と算出され、隣接行列Aに於いて起点エージェントからの距離指標値がd=2のエージェントが関わる成分のみが非零となった行列EXTと距離行列AD2とは、
Figure 2020078162
と算出される。
かくして、上記の如く、各エージェントkについての重み付き隣接行列Awが算出されると、各エージェントkについての重み付き次数行列Dwが、重み付き隣接行列Awの成分の行方向の和Σaw ij[Σは、j=1〜nについての総和。なお、j=iのときは、awii=0である。]がそれぞれ対応する行の対角成分となったn×n行列として与えられる。そして、各エージェントkについての重み付きグラフラプラシアンLw
Lw=Dw−Aw …(14)
により算出される。これは、各エージェントkの状態に対する他のエージェントの状態の寄与を距離指標値dの増大と共に低減させたものに相当し、上記の式(6)に於いて、下記の如く、距離指標値dに対応して低減する重みW(d)を非零成分aijに乗じた式に相当する。
dx(t)/dt=−λΣaw ij(x(t)−x(t)) …(15)
[Σは、j=1〜nについての総和]
ここで、λは、任意の定係数である。式(15)は、各エージェントkについて成立し、更に、各エージェントkについて式(15)にて算出されるエージェントiの状態の変化率dx(t)/dtが均等にエージェントiの状態に寄与するものと仮定すると(つまり、各エージェントkについてλが同一)、システム全体に於いて、エージェントiの状態の変化率は、各エージェントk(k=1〜n)について式(15)の値を合算して
Figure 2020078162
により与えられ、ここで、任意の定係数λ=nとすると、
Figure 2020078162
が得られる。上記の式(17)から、システム全体の重み付きグラフラプラシアンLwは、
Lw=ΣLw=Σ(Dw−Aw) …(18)
[Σは、k=1〜nについての総和]
と算出される。ここで、システム全体の重み付き隣接行列(全体重み付き隣接行列)Aw、システム全体の重み付き次数行列(全体重み付き次数行列)Dwは、それぞれ、
Aw=ΣAw Dw=ΣDw …(19)
[Σは、k=1〜nについての総和]
により与えられる。そして、システム全体の重み付きグラフラプラシアンLwに於ける成分awijは、
awij=Σaw ij …(20)
[Σは、k=1〜nについての総和]
により与えられる。
例として、図2(A)に例示のシステムの場合の全体重み付き隣接行列Awと全体重み付き次数行列Dwは、下記の如くとなる。
Figure 2020078162
なお、上記のシステム全体の重み付きグラフラプラシアンLwは、全体重み付き次数行列Dwを用いずに、次数行列Dを用いて算出されてもよい。その場合、システム全体の重み付きグラフラプラシアンLwは、
Lw=D−Ω・Aw …(21)
により与えられる。ここで、Ωは、規格化重み行列であり、次数行列Dの対角成分Σaij[Σは、j=1〜nについての総和。]を全体重み付き隣接行列Awの行方向の和Σawij[Σは、j=1〜nについての総和。]で割って得られた行列である。即ち、規格化重み行列Ωの成分ωiiは、
ωii=Σaij/Σawij …(22)
[Σは、j=1〜nについての総和。]
により与えられる。例として、図2(A)に例示のシステムの場合の規格化重み行列Ωは、下記の如くとなる。
Figure 2020078162
かくして、重み付きグラフラプラシアンLwが得られると、下記の微分方程式:
dX(t)/dt=−Lw・X(t) …(4)
を解くことにより、即ち、式(6a)を解くことにより、システム内の各エージェントi(=1〜n)の状態指標値x(t)の制御目標値が算出される。式(6a)の形式から理解される如く、重み付きグラフラプラシアンLwを用いる場合も、式(6)の場合と同様に、各エージェントに於いて、自身の状態と隣接するエージェントの状態との差分が低減するように自身の状態が変化させられることとなるので、同式をx(t)について解くと、x(t)は、合意値αに収束することとなる。
ところで、上記の全体重み付き隣接行列Awの成分awijについて、「発明の概要」の欄に於いても触れた如く、システム内に於いて、エージェントjが各エージェントkから見て離れた位置となる頻度が多いほど、エージェントjの状態指標値に乗ぜられる成分awijは、相対的に小さい値に設定されることとなる。このことは、システム内に於いて、エージェントjがシステム内の他の各エージェントkとの位置が近くなるほど、エージェントjの状態指標値に乗ぜられる成分awijが相対的に大きくなり、エージェントjがシステム内に於いて与える影響が大きくなっていることを示している。即ち、全体重み付き隣接行列Awの成分awijは、エージェントjの状態x(t)がシステムに与える重要度又は影響度の指標となっているということができる。そして、或る成分awijが相対的に他の成分に比して無視できるほど小さいときには、エージェントjの状態x(t)の寄与は考慮しなくてよい、即ち、状態x(t)の情報の送受信は省略可能であるといえる。
計算例
例として、図5(A)に於いて、図2(A)に例示のn=7のシステムに於いて、通常のグラフラプラシアンL(重み付けなし)及び本実施形態による重み付きグラフラプラシアンLw(重み付けあり)とを用いて、微分方程式(3)、(4)を解いた場合の各エージェントの状態指標値x(t)の時間変化が、それぞれ、示されている。上段、下段に与えられた初期値x(0)は、同一である。なお、図2(A)のシステムは、無向グラフを構成しているので、微分方程式(3)、(4)の解の収束する合意値は、各エージェントの初期値x(0)の平均値となることが期待される(平均合意制御)。計算結果に於いて、図5(A)から理解される如く、本実施形態による重み付きグラフラプラシアンLwを用いた場合も、各エージェントの状態指標値x(t)は、合意値に収束することが観察された。また、同図にて示されている如く、全てのエージェントの状態指標値x(t)が合意値の0.1%以内に収束するまでの収束時間は、本実施形態による重み付きグラフラプラシアンLwを用いた場合の方が通常のグラフラプラシアンLを用いた場合よりも短かった。その傾向は、各エージェントの初期値x(0)としてランダムに異なる条件を与えた場合も同様であった。即ち、図5(B)に示されている如く、図2(A)のシステムに於いて、種々の初期値x(0)の条件を与えたときの、全エージェントの状態指標値が合意値に収束するまでの収束時間について、通常のグラフラプラシアンLを用いた場合の収束時間に対して重み付きグラフラプラシアンLwを用いた場合の収束時間をプロットしたものに於いて、プロットの近似曲線の傾きは1を下回り、通常のグラフラプラシアンLを用いた場合の収束時間に対する重み付きグラフラプラシアンLwを用いた場合の収束時間の短縮率は、7.151%であった。この現象は、一般に、グラフラプラシアンを用いた微分方程式を解いたときの各エージェントの状態が合意値に収束するまでの収束時間は、グラフラプラシアンの二番目に小さい固有値が小さいほど短くなるところ(非特許文献1)、重み付きグラフラプラシアンLwの成分は、通常のグラフラプラシアンLに対して1以下の重みが乗じられているため、二番目に小さい固有値が相対的に小さくなったためであると考えられる。
また、上記と同様の計算を図6(A)、(B)にそれぞれ示されたn=10、n=15のシステムについて行ったところ、いずれの場合も、各エージェントの状態指標値は、合意値に収束し、図6(C)に示されている如く、収束時間は、本実施形態による重み付きグラフラプラシアンLwを用いた場合の方が通常のグラフラプラシアンLを用いた場合よりも短くなった。収束時間の短縮の程度は、エージェント数が多いほど、顕著となった。これは、エージェント数が多くなるほど、システムの周辺に連結されたエージェントの他のエージェントに対する寄与を低減するよう重みが設定され、重み付きグラフラプラシアンLwの二番目に小さい固有値が相対的に小さくなる程度が大きくなることによると考えられる。
着脱可能なエネルギー源(エージェント)を含むシステムのグラフラプラシアンの算出
「発明の概要」の欄に於いても述べた如く、分散型エネルギーマネージメントシステムに於いて、エネルギー伝送網に対して、一部のエネルギー源が着脱することが可能な構成が考えられる。例えば、エネルギー源が車両などの移動体に担持されている場合、或る時には、移動体がエネルギー伝送網に接近して、その移動体に担持されているエネルギー源がエネルギー伝送網へ連結し、別の時には、移動体がエネルギー伝送網に離れるためにエネルギー源がエネルギー伝送網から離脱するといった状況が起き得る。そのようなシステムの構成に於いて各エネルギー源の状態指標値の制御目標値を演算する際に、上に説明されている如き通常のグラフラプラシアンLを用いる場合には、エネルギー伝送網に連結されているエージェント数に応じた次元数のグラフラプラシアンLを用いる必要があり、エネルギー源の状態の制御が不連続となっていた。例えば、図7(A)、(B)に例示されているn=7のシステムに於いてエージェント7が着脱可能である場合、エージェント7がエネルギー伝送網に連結されているときには(図7(A))、グラフラプラシアンLは、隣接行列Aと次数行列Dとして、7行7列の隣接行列A7×7と次数行列D7×7
Figure 2020078162
を用いて、L=D7×7−A7×7により演算される一方、エージェント7がエネルギー伝送網から離脱しているときには(図7(B))、グラフラプラシアンLは、隣接行列Aと次数行列Dとして、6行6列の隣接行列A6×6と次数行列D6×6
Figure 2020078162
を用いて、L=D6×6−A6×6により演算されることとなる。そうすると、エネルギー伝送網に対して着脱可能なエネルギー源が着脱する度に、別々の構造の隣接行列、次数行列及びグラフラプラシアンを用いることとなり、状態の制御を連続的に実行することが困難となる。
ところで、上記に説明された本実施形態による重み付きグラフラプラシアンLwを用いる場合、各エージェントの状態指標値に対する制御目標値の算出は、各エージェントに対する或るエージェントjの状態の寄与が、その距離指標値dの大きいほど、低減されるように実行される。即ち、上記の重み付きグラフラプラシアンLwに於いて、着脱可能なエネルギー源からシステム内の他のエネルギー源までの距離指標値dを、仮想的に対応する重みW(d)が無視できるようになる程度に大きな値に設定することにより、システムに於ける着脱可能なエネルギー源の状態の寄与が実質的に無視でき、着脱可能なエネルギー源がエネルギー伝送網に対して離脱している状態と実質的に等価な状態にて、制御目標値の算出が可能となる。
かくして、本実施形態のもう一つの態様に於いては、エネルギー伝送網に対して一部のエネルギー源が着脱することが可能なシステムに於いて、マルチエージェントシステムの合意制御に準じて各エネルギー源の状態の制御を実行する場合に、各エネルギー源の状態指標値の制御目標値を算出するために重み付きグラフラプラシアンLwを用い、その際、重み付きグラフラプラシアンLwに於いて、エネルギー伝送網に対して着脱可能なエネルギー源が連結しているときには、着脱可能なエネルギー源からシステム内の他のエネルギー源までの距離指標値dを通常の値に設定する一方、エネルギー伝送網に対して着脱可能なエネルギー源が離脱しているときには、着脱可能なエネルギー源からシステム内の他のエネルギー源のまでの距離指標値dを仮想的に大きな値を設定して、制御目標値の算出が実行されるようになっていてよい。かかる構成によれば、エネルギー伝送網に対する着脱可能なエネルギー源の着脱があっても、制御目標値を算出するための重み付きグラフラプラシアンLwは、その構造を変えずに、各エージェントと着脱可能なエネルギー源との間の距離指標値を変更するだけで利用可能であり、エネルギー源の状態の制御を連続的に実行することが可能となる。
具体的には、システムに於いて、各エージェント(エネルギー源)と着脱可能なエージェント(着脱可能なエネルギー源)との間の距離指標値dk ij
k ij=d+D …(23)
と設定される(図7(C))。ここで、dは、着脱可能なエージェントがエネルギー伝送網に連結されているときの距離指標値であり、Dは、着脱可能なエージェントがエネルギー伝送網から離脱しているときに距離指標値に大きな値を追加するための仮想的な距離(仮想伝送距離)である。即ち、着脱可能なエージェントがエネルギー伝送網に連結されているときには、D=0が設定され、着脱可能なエージェントがエネルギー伝送網から離脱しているときには、例えば、D=10000×doなどと設定されてよい(doは、システム内の距離指標値の最小値)。そして、各エージェントについての距離行列ADk及び重み付き隣接行列Awは、上記の式(13)、(14)を用いて、同様に算出されてよい。
例えば、図7(C)に例示のエージェント7が着脱可能となっているシステムの場合、各エージェントとエージェント7との間の距離指標値d 67、d 76、d ijに於いて、Dが加算されて、距離行列ADk及び重み付き隣接行列Awが算出される。図7(C)のシステムの場合の各エージェントについての距離行列ADk及び重み付き隣接行列Awは、下記の如くとなる。式(14)のaw ijの演算に於いて、f、doは、それぞれ、f=1/2、do=1とした。なお、図7(C)のシステムは、合意値がエージェント1の初期値となるリーダー・フォロワー合意制御が実行されるよう構成されている。
Figure 2020078162
Figure 2020078162
Figure 2020078162
Figure 2020078162
Figure 2020078162
Figure 2020078162
Figure 2020078162
そして、全体重み付き隣接行列Awと全体重み付き次数行列Dwは、下記の如くとなる。
Figure 2020078162
Figure 2020078162
図8〜図10は、上記の図7(C)に例示のシステムに於いて、仮想伝送距離Dを種々のタイミングにてD=0とD=10000との間で切換えた場合に於いて微分方程式(4)を解いて得られる各エージェントの状態指標値x(t)の時間変化が、それぞれ、示されている。t=0に於いて与えられている各エージェントの状態指標値の初期値は、いずれの条件に於いても同一である。
まず、図8(A)を参照して、初め(t=0)からD=0に設定した場合に於いては、エージェント7はエネルギー伝送網に対して着脱可能なエージェント7が連結した状態と等価な状態にあり、エージェント7を含めて全てのエージェントの状態指標値がエージェント1の状態指標値へ収束したのに対し、図8(B)に示されているように、初め(t=0)からD=10000に設定した場合には、エネルギー伝送網に対してエージェント7が離脱した状態と同様に、エージェント7以外のエージェントの状態指標値がエージェント1の状態指標値へ収束する一方、エージェント7の状態指標値は、初期値を維持した。この結果は、D=10000に設定した場合には、エージェント7の状態が他のエージェントの状態の影響を受けない状況が実現されることを示しており、このことは、D=10000と設定するなどして、仮想伝送距離を他のエージェント間に於ける距離指標値dが無視できるほど大きな値に設定することによって、エネルギー伝送網に対して着脱可能なエージェント7が離脱した状態と等価な状態が実現できていることを示している。
また、図9に於いては、初め(t=0)に於いてD=0に設定して演算を開始し、途中でD=10000に変更した場合の例が示されている。この場合、エージェント7がエネルギー伝送網に対して連結した状態で演算を開始することと等価である。同図を参照して、図9(A)に示されている如く、エージェント7の状態指標値がエージェント1の状態指標値へ収束する前に、D=10000に変更したときには、エージェント7の状態指標値は、変更時点の値を維持する一方、図9(B)に示されている如く、エージェント7の状態指標値がエージェント1の状態指標値へ収束した後に、D=10000に変更したときには、エージェント7の状態指標値は、エージェント1の状態指標値に収束した状態を維持した。そして、図9(C)に示されている如く、エージェント7の状態指標値がエージェント1の状態指標値へ収束する前に、D=10000に変更した後に再びD=0に戻した場合には、エージェント7の状態指標値は、D=10000となっている間は、D=10000への変更時点の値を維持し、D=0に戻した後でエージェント1の状態指標値に収束した(なお、D=10000をD=0に戻した時点に於いて、エージェント2〜6の状態指標値に於いて過渡的な変動も観察された。)。これらの結果に於いては、D=0からD=10000へ変更した時点にて、エージェント7の状態が他のエージェントの状態の影響を受けなくなる状況が実現されており、従って、D=0からD=10000へ変更することによって、エネルギー伝送網に対して連結していたエージェント7を離脱させた状況と実質的に等価な状態を実現できていることが示された。また、エージェント7の状態指標値に於いて、D=10000となっている間は値が保持され、D=10000をD=0に戻したときにエージェント1の状態指標値への収束を再開したことから、D=10000からD=0への変更によって、エネルギー伝送網に対して離脱していたエージェント7を連結した状態に復帰させた状況と実質的に等価な状態を実現できていることが示された。
更に、図10に於いては、初め(t=0)に於いてD=10000に設定して演算を開始し、途中でD=0に変更した場合の例が示されている。この場合は、エージェント7がエネルギー伝送網に対して離脱した状態で演算を開始することと等価である。同図を参照して、図10(A)〜(C)に示されている如く、エージェント2〜6がエージェント1の状態指標値へ収束する前であるか収束した後であるかによらず、D=10000からD=0に変更されると、エージェント2〜6の状態指標値が過渡的にエージェント7の状態指標値に引っ張られる方向に変動することが観察された。また、図10(B)に示されている如く、エージェント7の状態指標値は、D=0が設定されている間は、エージェント1の状態指標値へ収束する方向へ変移し、D=0からD=10000に変更されると、その時点の値を維持した。これらの結果は、D=10000からD=0に変更されると、エージェント7の状態が他のエージェントの状態の方向に引っ張られ、他のエージェントの状態もエージェント7の状態へ引っ張られる状況を示しているので、このことから、D=10000からD=0への変更によって、エネルギー伝送網から離脱していたエージェント7がエネルギー伝送網へ連結される状況と実質的に等価な状態を実現できていることを示している。また、D=0が設定されている間のみ、エージェント7の状態が変移していることから、D=10000の状態から一時的にD=0を設定することにより、エネルギー伝送網から離脱していたエージェント7がエネルギー伝送網へ一時的に連結される状況と実質的に等価な状態を実現できていることが示された。
かくして、上記の結果から、重み付きグラフラプラシアンLwに於ける仮想伝送距離DをD=0とD=10000との間で切換えるだけで、エネルギー伝送網に対して着脱可能なエージェント7が連結しているときと離脱しているときのそれぞれに於ける各エージェントの状態指標値の制御目標値を連続的に算出できることが示された。
次に、別の例として、図11(A)に描かれている如く、エージェント7とエージェント5とが着脱可能となっているシステムについて、上記と同様の計算を行った。図11(A)に例示のシステムに於いては、エージェント7と他のエージェントとの間の距離指標値に対しては、仮想距離D1を加算し(エージェント6、7の間の伝送路を通る距離指標値に対してD1が加算される。)、エージェント5と他のエージェントとの間の距離指標値に対しては、仮想距離D2を加算して(エージェント4、5の間及びエージェント6、5の間の伝送路を通る距離指標値に対して、それぞれ、D2が加算される。)、距離行列ADk及び重み付き隣接行列Awが算出される。これにより、エージェント5とエージェント7とが別々にエネルギー伝送網に対して着脱する状況が実現できることとなる。
具体的には、まず、図11(A)のシステムの距離行列ADk及び重み付き隣接行列Awは、下記の如くとなる。
Figure 2020078162
Figure 2020078162
従って、全体重み付き隣接行列Awの成分awijは、下記の通りとなる。
Figure 2020078162
全体重み付き次数行列は、前記までと同様に、全体重み付き隣接行列Awの成分awijの行方向の和が対角成分となった行列であるので、記載を省略する。
図11(B)〜(D)に於いては、図11(A)に例示のシステムに於いて、仮想距離D1、D2を種々のタイミングにてD1、D2=0とD1、D2=10000との間で切換えた場合に於ける微分方程式(4)を解いて得られる各エージェントの状態指標値x(t)の時間変化が、それぞれ、示されている。t=0に於いて与えられている各エージェントの状態指標値の初期値は、いずれの条件に於いても同一である。同図を参照して、いずれの場合も、エージェント2〜4、6の状態指標値がエージェント1の状態指標値に収束する前か収束した後によらず、D1、D2が、それぞれ、0に設定されているときには、エージェント7、5の状態指標値が、それぞれ、エージェント1の状態指標値に収束する方向に変移し、D1、D2が、それぞれ、10000に設定されているときには、エージェント7、5の状態指標値が、それぞれ、保持された。
かくして、これらの結果から、システム内にエネルギー伝送網に対して着脱するエージェントが複数存在する場合にも、重み付きグラフラプラシアンLwに於ける着脱可能なエージェントのそれぞれの仮想距離DをD=0とD=10000との間で切換えるだけで、エネルギー伝送網に対してそれぞれの着脱可能なエージェントが連結しているときと離脱しているときのそれぞれに於ける各エージェントの状態指標値の制御目標値を連続的に算出できることが示された。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。

Claims (1)

  1. 複数のエネルギー源から成るエネルギー源群を含み、前記エネルギー源群に於ける各エネルギー源が前記エネルギー源群に於ける他のエネルギー源とエネルギー伝送路により連結されたエネルギー伝送網が構成され、前記エネルギー伝送網に於いて互いに連結されたエネルギー源間にて各エネルギー源の状態が伝達される分散型エネルギーマネージメントシステムにして、前記各エネルギー源に於ける選択された状態の指標値が同一の合意値に収束するように前記各エネルギー源の前記選択された状態が制御されるシステムであって、
    前記各エネルギー源の前記選択された状態の指標値に対する前記合意値に収束する制御目標値が、時間tに於ける前記各エネルギー源の前記選択された状態の指標値を成分とするベクトルX(t)とその時間微分dX(t)/dtと前記エネルギー伝送網の重み付きグラフラプラシアンLwとを用いて構成される微分方程式:
    dX(t)/dt=−Lw・X(t)
    の解であるベクトルX(t)の対応する成分により与えられ、
    前記重み付きグラフラプラシアンLwに於いて、前記エネルギー源群に於ける各エネルギー源と他のエネルギー源との間のエネルギー伝送路の距離が長いほど又は前記エネルギー源群に於ける各エネルギー源と他のエネルギー源との間のエネルギー伝送路に於いて介在するエネルギー源を中継する伝送路の数が多いほど、前記他のエネルギー源の状態の指標値に乗ぜられる成分の大きさが相対的に低減されるよう設定されているシステム。
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