JP2020075260A - カバーガス組成物および溶融金属の酸化または燃焼の防止方法 - Google Patents

カバーガス組成物および溶融金属の酸化または燃焼の防止方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属の製造において、溶融する金属の表面が空気と接触して酸化または燃焼するのを防止するのに有効なカバーガス組成物として、地球温暖化係数が小さく、低燃焼性であるカバーガス組成物の提供およびそれを用いた溶融する金属の表面が空気と接触して酸化または燃焼するのを防止する方法を提供することを課題とする。【解決手段】溶融する金属の表面が空気との接触により酸化または燃焼するのを防止するためのカバーガス組成物であって、ヒドロクロロフルオロオレフィンを含む保護ガスを含有するカバーガス組成物および、溶融する金属の表面が空気との接触により酸化または燃焼するのを防止する方法であって、前記表面に上記のカバーガス組成物を供給する工程を含む方法。【選択図】なし

Description

本発明はカバーガス組成物およびそれを用いた溶融金属の酸化または燃焼を防止する方法に関する。
マグネシウム、マグネシウム合金等の金属を鋳造等のために溶融させると、溶融した金属が空気中の酸素と激しく反応し酸化物を形成、燃焼することが知られている。このような溶融金属の酸化を防止するために、溶融金属上に保護融剤をかける方法、ヘリウム、アルゴンまたは窒素等の不活性ガスで保護する方法、または溶融金属と反応して保護膜を形成するとされる保護ガスを含むカバーガス組成物で表面を覆う方法が採用されている。
従来、マグネシウムやマグネシウム合金製造工程に使用されてきた保護ガスとして、二酸化イオウ(SO)が知られている。SOは安価であるが、臭気とともに毒性が比較的高いため使用に制限があり、これに代わって、比較的毒性がなく簡便、安全に使用できることから六フッ化イオウ(SF)が広く用いられてきた。
保護ガスとしてSFを使用したときの溶融マグネシウム/マグネシウム合金の保護機構は明確ではないが、以下の反応で進むとされている。この場合、保護膜は最初酸化マグネシウム(MgO)であるが、さらにSFと反応してフッ化マグネシウム(MgF)となることが示されている。ここで、フッ素は溶融マグネシウム/マグネシウム合金の保護において重要な役割を果たしており、保護ガス分子中のフッ素含量が大きい方が保護膜を形成するのに有利と考えられ、SFの使用が広く行われていた。
2Mg(液体)+O→2MgO(固体) (1)
2Mg(液体)+O+SF→2MgF(固体)+SO (2)
2MgO(固体)+SF→2MgF + SO (3)
しかしながら、SFは地球温暖化係数が二酸化炭素(CO)の約24,000倍あり、しかも大気寿命が3,200年と非常に長いため京都議定書において排出を規制されている物質である。
SFに代わる保護ガスとして、上記フッ素含有量の観点をもとに、様々な含フッ素化合物が提案されている。例えば、特許文献1では、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、メトキシノナフルオロブタン(HFE−7100)、エトキシノナフルオロブタン(HFE−7200)、ジヒドロデカフルオロペンタン(HFC−43−10mee)が挙げられ、好ましいカバーガス組成物として、HFC−134aと乾燥空気を有するものが推奨されている。しかし、これらの化合物は地球温暖化係数が高いため、より環境負荷が小さいカバーガス組成物が求められていた。
特表2002−541999号公報
本発明は、マグネシウム等の金属の製造において、溶融する金属の表面が空気と接触して酸化または燃焼するのを防止するのに有効なカバーガス組成物として、地球温暖化係数(以下、「GWP」という。)が小さく、低燃焼性であるカバーガス組成物の提供およびそれを用いた溶融する金属の表面が空気と接触して酸化または燃焼するのを防止する方法を提供することを課題とする。
本発明は、以下の構成のカバーガス組成物および溶融金属の酸化または燃焼の防止方法を提供する。
[1] 溶融する金属の表面が空気との接触により酸化または燃焼するのを防止するためのカバーガス組成物であって、ヒドロクロロフルオロオレフィンを含む保護ガスを含有するカバーガス組成物。
[2] 前記ヒドロクロロフルオロオレフィンは、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンおよび1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロペンテンから選ばれる少なくとも1種である、[1]のカバーガス組成物。
[3] 前記ヒドロクロロフルオロオレフィンとして1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含み、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンにおける(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの割合は、(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン:(E)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンで示される質量比で50:50〜100:0である、[2]のカバーガス組成物。
[4] 前記保護ガスが、さらにヒドロクロロフルオロオレフィン以外の含フッ素化合物を含有する[1]〜[3]のいずれかのカバーガス組成物。
[5] 前記含フッ素化合物が、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロエーテルから選ばれる少なくとも1種である[4]のカバーガス組成物。
[6] 前記カバーガス組成物が、さらにキャリアガスを含有する[1]〜[5]のいずれかのカバーガス組成物。
[7] 前記キャリアガスは、窒素、二酸化炭素、空気およびアルゴンから選ばれる少なくとも1種である[6]のカバーガス組成物。
[8] 前記金属は、マグネシウム、アルミニウム、リチウムおよびこれらの金属の合金から選ばれる1種である[1]〜[7]のいずれかに記載のカバーガス組成物。
[9] 溶融する金属の表面が空気との接触により酸化または燃焼するのを防止する方法であって、前記表面に[1]〜[8]のいずれかのカバーガス組成物を供給する工程を含む方法。
本発明のカバーガス組成物は、マグネシウム等の金属の製造において、溶融する金属の表面が空気と接触して酸化または燃焼するのを有効に防止できるとともに、GWPが小さく、低燃焼性である。また、本発明の方法によれば、本発明のカバーガス組成物を用いることで、環境負荷を低減しながら、安全かつ有効に、溶融金属の酸化または燃焼を防止できる。
本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、略称として、ハイフン(−)より後ろの数字およびアルファベット小文字部分だけを用いることがある。本明細書において、数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
<カバーガス組成物>
本発明のカバーガス組成物は、溶融する金属の表面が空気と接触して酸化または燃焼するのを防止するためのカバーガス組成物であって、ヒドロクロロフルオロオレフィンを含有する。
本発明のカバーガス組成物は、ヒドロクロロフルオロオレフィン(以下、「HCFO」ともいう。)を保護ガスとして含有する。本明細書において保護ガスとは、例えば、上記SFで説明したように、溶融する金属と反応して保護膜を形成することで溶融金属の表面を酸化から保護する作用を有するガスをいう。本発明のカバーガス組成物は、HCFOを含む保護ガスを含有する。
ここで、HCFOはハロゲン元素としてフッ素と塩素を含有する。したがって、保護膜の形成にあたってはフッ素および塩素の両方が溶融する金属と反応に関与する。例えば、金属がマグネシウムの場合、保護膜には、MgFおよびMgClが含まれる。
本発明のカバーガス組成物が対象とする金属は、空気との接触により酸化または燃焼する金属である。具体的には、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、マグネシウム合金、アルミニウム合金、リチウム合金が挙げられる。本発明のカバーガス組成物は、特にマグネシウムまたはマグネシウム合金に適用した場合にその効果が大きい。
本発明のカバーガス組成物は、保護ガスのみで構成されていてもよく、保護ガス以外に、保護ガスを希釈するためのキャリアガスを含有していてもよい。キャリアガスは溶融金属に対して不活性であるか、溶融金属と反応しても単独では溶融金属の酸化を防止するような保護膜を形成できないガスである。
なお、本発明のカバーガス組成物は、使用される環境において気相であればよい。すなわち、本発明のカバーガス組成物は、例えば、溶融炉内に収容された溶融する金属の表面に供給されて用いられる。したがって、本発明のカバーガス組成物は、例えば、常温で液相であっても、供給される溶融炉内の温度で気相であればよい。
なお、溶融炉の温度は溶融する金属の溶融温度により、該溶融温度は金属の種類による。溶融温度は、マグネシウムまたはマグネシウム合金の場合、650〜900℃程度であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金の場合、660〜900℃程度であり、リチウムまたはリチウム合金の場合、185〜430℃程度である。
本発明のカバーガス組成物が含有するHCFOを含む保護ガスおよびキャリアガスのそれぞれについても、同様に、使用される環境において気体であればよい。ただし、作業性の観点から本発明のカバーガス組成物、保護ガス、キャリアガスは常温で気体であるのが好ましい。
また、本発明のカバーガス組成物は、保護ガスとしてHCFOを含有することで、GWPを低く調整できる。HCFOは、大気中のOHラジカルによって分解されやすい炭素−炭素二重結合を有することから、GWPは殆どの場合10以下である。本発明のカバーガス組成物は、GWPが100以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、1以下がさらに好ましい。GWPは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(2014年)に示される、または該方法に準じて測定された100年の値である。本明細書において、GWPは特に断りのない限りこの値をいう。また、混合物におけるGWPは、組成質量による加重平均とする。
(保護ガス)
本発明のカバーガス組成物は、保護ガスの構成成分としてHCFOを含有する。HCFOは、上記のとおり、GWPが小さい。HCFOは、不燃であるか燃焼性が低い。本発明のカバーガス組成物は、このようなHCFOを含有することで、溶融金属の表面が空気と接触して酸化または燃焼するのを有効に防止できるとともに、GWPが小さく、低燃焼性の組成物である。
HCFOとして、具体的には、炭素数2〜5のHCFOが挙げられ、炭素数は、3〜5がより好ましい。HCFOにおけるフッ素原子および塩素原子の数は、合わせて5個以上が好ましい。
HCFOとして、具体的な化合物として、1,1,2−トリクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1222xa)、1,2,3−トリクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1222xd)、1,1,3−トリクロロ−2,3−ジフルオロプロペン(1222ya)、1,3,3−トリクロロ−1,2−ジフルオロプロペン(1222yb)、1,3,3−トリクロロ−2,3−ジフルオロプロペン(1222yd)、1,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(1223xb)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223xd)、2,3−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(1223xe)、1,1−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(1223ya)、1,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロプロペン(1223yb)、3,3−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロプロペン(1223yc)、1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(1223yd)、3,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロプロペン(1223ye)、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223za)、2−クロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロペン(1224xc)、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224xe)、1−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(1224yb)、3−クロロ−1,1,2,3−テトラフルオロプロペン(1224yc)、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224yd)、3−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(1224ye)、1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224zb)、1,2−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xd)、1,3−ジクロロ−1,2−ジフルオロプロペン(1232yb)、1,3−ジクロロ−2,3−ジフルオロプロペン(1232yd)、3,3−ジクロロ−2,3−ジフルオロプロペン(1232yf)、2−クロロ−1,1,3−トリフルオロプロペン(1233xc)、2−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(1233xe)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、1−クロロ−1,2,3−トリフルオロプロペン(1233yb)、3−クロロ−1,1,2−トリフルオロプロペン(1233yc)、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(1233yd)、3−クロロ−1,2,3−トリフルオロプロペン(1233ye)、3−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(1233yf)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)、1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5,5−オクタフルオロペンテン(1428yd)、1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロペンテン(1437dycc)、1−クロロ−3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンテン(1437zd)、1−クロロ−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロペンテン(1446dzcc)が挙げられる。
HCFOについては、以下の記載についても同様とする。これらのHCFOは、いずれも、一般的な方法で製造可能である。例えば、脱塩化水素または脱フッ化水素することで所望の構造のHCFOとなる原料含フッ素飽和炭化水素を、相間移動触媒の存在下に塩基と接触させて脱塩化水素または脱フッ化水素することで製造できる。また、還元することで所望のHCFOとなる、クロロフルオロオレフィン(CFO)やHCFOを、触媒の存在下で還元することで製造できる。
これらのHCFO中でも、本発明のカバーガス組成物の保護ガスとしては、低毒性、低燃焼性であって、比較的沸点が低く常温で気相であることで取り扱いが容易であり、かつ、フッ素と塩素の合計含有量が比較的大きなHCFOが好ましい。上記観点から、保護ガスとして用いるHCFOとしては、1224yd、1233yd、1437dyccが好ましく、1224ydが特に好ましい。なお、本発明のカバーガス組成物は、HCFOの1種を単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
1224ydには、E体である(E)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224yd(E))とZ体である(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224yd(Z))の2つの幾何異性体が存在する。本明細書においては、1224ydの(E)、(Z)の表記がないものは、1224yd(E)若しくは1224yd(Z)、または1224yd(E)および1224yd(Z)の任意の割合の混合物を示す。本明細書において、分子内に二重結合を有し、E体とZ体が存在する他の化合物についても同様に示す。
1224yd(Z)は、1224yd(E)よりも化学的安定性が高く、保護ガスとして好ましい。また、1224yd(Z)は低毒性である。そのため、1224ydにおける1224yd(Z)および1224yd(E)の割合は、1224yd(Z):1224yd(E)で示される質量比が50:50〜100:0であることが好ましく70:30〜100:0であることがより好ましく、90:10〜99.9:0.1がさらに好ましい。なお、1224yd(Z)および1224yd(E)のGWPはともに1であり、以下の燃焼性試験において不燃性である。
ASTM E−681に規定された設備を用いて、25℃、大気圧に制御された容器内で検体と空気の混合物に対して燃焼試験を行った際に、混合物全体積に対する検体の割合が0体積%を超え100体積%までの全範囲で燃焼性を有しない場合、該検体を「不燃性である」という。燃焼性の有無は、混合物に着火後、火炎の広がりを目視にて確認し、上方への火炎の広がりの角度が90°以上の場合を燃焼性あり、90°未満の場合を燃焼性なし、と判断する。
また、本発明のカバーガス組成物におけるHCFOの全量に対する1224ydの含有割合は、60〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。
保護ガスは、HCFOのみで構成されてもよく、本発明の効果を損なわない範囲でHCFO以外のその他の保護ガス成分を含有してもよい。その他の保護ガス成分としては、例えば、HCFO以外の含フッ素化合物が好ましい。保護ガスにおけるHCFO含有量は、40〜100質量%が好ましく、70〜100質量%が好ましく、100質量%がさらに好ましい。
HCFO以外の含フッ素化合物としては、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、およびヒドロフルオロエーテル(HFE)から選ばれる少なくとも1種が好ましい。保護ガスとしての性能を高める観点からは、HFCおよびHFEが好ましく、保護ガス全体、またはカバーガス組成物全体のGWPを低く維持できる観点からは、HFOが好ましい。
HFCは、HCFOに比べてGWPが高いことが知られている。したがって、HCFOと組合せるHFCとしては、上記保護ガスとしての性能を高め、GWPを許容の範囲にとどめる観点から、適宜選択されることが好ましい。
オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が小さいHFCとして具体的には炭素数1〜5のHFCが好ましい。HFCは、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、環状であってもよい。
HFCとしては、ジフルオロメタン、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、ペンタフルオロブタン、ヘプタフルオロシクロペンタン、ジヒドロデカフルオロペンタン等が挙げられる。
なかでも、HFCとしては、オゾン層への影響が少なく、かつ保護ガスとしての性能が優れる点から、HFC−32、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、HFC−134a、HFC−125、HFC−152a、HFC−227ea、HFC−43−10meeがより好ましい。HFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる保護ガス(100質量%)中のHFCの含有割合は、GWPを考慮しながら適宜調整する。保護ガス(100質量%)中のHFCの含有割合は、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
HFOであれば、GWPはHFCに比べて桁違いに低い。したがって、HCFOと組み合わせるHFOとしては、GWPを考慮するよりも、保護ガスとしての性能を向上させることに留意して、適宜選択されることが好ましい。なお、HFOの中には燃焼性を有する化合物があり、HCFOと組み合わせて保護ガスとする場合には、燃焼性の点についても配慮すべきである。
HFOとしては、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132)、2−フルオロプロペン(HFO−1261yf)、1,1,2−トリフルオロプロペン(HFO−1243yc)、(E)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(E))、(Z)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(Z))、(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(E))、(Z)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(Z))、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz(E))、(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz(Z))が挙げられる。
HFOとしては、HFO−1234yf、HFO−1234ze(E)、HFO−1234ze(Z)、HFO−1336mzz(Z)、HFO−1243zfが好ましく、HFO−1234yf、HFO−1234ze(E)、HFO−1234ze(Z)、HFO−1336mzz(Z)がより好ましい。HFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる保護ガス(100質量%)中のHFOの含有割合は、燃焼性を考慮しながら適宜調整する。保護ガス(100質量%)中のHFOの含有割合は、60質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
HFEは、HCFOに比べてGWPが高いことが知られている。したがって、HCFOと組合せるHFEとしては、上記保護ガスとしての性能を高め、GWPを許容の範囲にとどめる観点から、適宜選択されることが好ましい。
HFEとしては、メトキシノナフルオロブタン(HFE−7100)、1,1−ジフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(HFE−365mf−c)、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(HFE−347pc−f)、1,1−ジフルオロエチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエーテル(HFE−467sc−f)、エトキシノナフルオロブタン(HFE−569s1)、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(HFE−449mec−f)、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエーテル(HFE−449pc−f)、1,1−ジフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル(HFE−476pcf−c)、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエーテル(HFE−54−11mec−f)、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル(HFE−458pc−fc)、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル(HFE−55−10mec−fc)および3−メトキシ−4−トリフルオロメチル−1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(CCF(OCH)CF(CF)CF)等が挙げられる。
HFEとしては、これらの中でも、GWPが低く、比較的沸点が低い点から、HFE−7100、HFE−7200が好ましい。HFEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる保護ガス(100質量%)中のHFEの含有割合は、GWPおよび沸点を考慮しながら適宜調整する。保護ガス(100質量%)中のHFEの含有割合は、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
なお、保護ガス(100質量%)におけるHCFO以外のその他の保護ガス成分の含有量は、合計で60質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
(キャリアガス)
本発明のカバーガス組成物は、HCFOを含む保護ガスに加えて、キャリアガスを含有することが好ましい。カバーガス組成物が保護ガスとキャリアガスを含む場合、保護ガスとキャリアガスの割合は、保護ガスとキャリアガスの合計100体積%中、保護ガスが0.005〜10体積%、キャリアガスが90〜99.995体積%が好ましい。保護ガスの含有割合が下限未満であれば溶融金属の酸化からの保護効果が得られ難く、また上限値超であれば保護ガス由来の分解物が増加し、溶融金属に悪影響を与え、作業環境においても好ましくない効果が現れることがあり望ましくない。
保護ガスの含有割合は、0.01〜10体積%がより好ましく、0.02〜5体積%がさらに好ましい。キャリアガスの含有割合は90〜99.99体積%がより好ましく、95〜99.98体積%がさらに好ましい。
キャリアガスとしては、窒素、二酸化炭素、希ガス等の溶融金属に対して不活性なガス、および空気等が挙げられる。希ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴンが挙げられる。本発明のカバーガス組成物におけるキャリアガスは、窒素、二酸化炭素、空気およびアルゴンから選ばれる少なくとも1種を含むキャリアガスが好ましい。
保護ガスは、HCFOを含有することで、燃焼性が低いが、その他の保護ガス成分として燃焼性のあるガスを用いた場合、二酸化炭素、アルゴン、窒素等の不燃のキャリアガスを混合することが特に望ましい。
これらのなかでも、窒素は、溶融金属に対して不活性で、容易に入手でき、安全に使用できるので好ましい。
しかしながら、窒素を含む不活性なガスを単独でキャリアガスとして用いる場合、保護ガスの燃焼と溶融金属の保護とのバランスが崩れることがある。例えば、溶融金属表面の保護膜の形成が不十分となる、金属酸化物等の固形物の塊の除去が難しくなるといったことが生じうる。このような場合、黒煙の発生が認められることがある。
黒煙の発生を、金属がマグネシウムやマグネシウム合金の場合を例に説明する。黒煙の発生は、鋳造時の炉内の酸素濃度が低くなると、溶湯表面の保護膜形成に必要なMgO/(MgF+MgCl)比を維持することが難しくなり、保護膜の構造が不安定に(破れやすく)なり、破れた部分の活性マグネシウムがHCFOのフッ素原子や塩素原子を引き抜き、酸素不足下で高分子化して炭化すること等によるものと推定される。
鋳造時の炉内の酸素濃度が低くても溶湯上に形成された保護膜が安定に存在しつづければ、HCFOのフッ素原子や塩素原子は引き抜かれず黒煙は生じない。しかしながら、マグネシウム、マグネシウム合金の成形品が大きい場合や大量生産時には、溶湯にマグネシウム、マグネシウム合金のインゴットが投入され、投入の度に溶湯上の保護膜が常に壊されることになる。
インゴット投入時等に炉内外での空気の出入りはあるので、保護膜の形成のための酸素を確保することはできる。したがって、キャリアガス成分が、窒素等の不活性ガスのみでも空気の出入りを利用し、保護膜の形成のための酸素を確保すれば保護膜形成は行われることになる。しかしながら、適切な酸素濃度とするために炉の操業条件の管理が難しいものとなることがある。
このような場合に、キャリアガスは、キャリアガス100体積%に対して、酸素を0.1〜10体積%含有するのが好ましく、酸素の含有割合は0.2〜6.0体積%がより好ましい。キャリアガスが酸素を含有する場合、キャリアガスは、0.5〜50体積%の乾燥空気と、50〜99.5体積%の窒素からなるものが好ましいく、より好ましくは1〜30体積%の乾燥空気と70〜99体積%の窒素からなるものがより好ましい。
空気含有量が低過ぎる場合には、マグネシウム合金溶湯表面の酸化マグネシウムの比率が低下するため保護膜形成が不完全となること、酸素不足により黒煙が発生しやすくなること等の問題を生じ、高過ぎる場合には、逆に酸化マグネシウムの比率が高まり保護膜の構造が変化すること、可燃性のガスの場合には燃焼の危険が高まること等の問題をともなうので好ましくない。
本発明のカバーガス組成物は、予め各含有成分の含有割合を調整し、そのまま、もしくはそれぞれの流量を個別に調整することにより目的の含有割合とし、溶融した金属の上部に連続的に流通することで使用することができる。
本発明のカバーガス組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で保護ガス、キャリアガス以外の成分を含んでいてもよい。保護ガス、キャリアガス以外の成分としては、非フッ素の有機化合物等の不純物、安定剤等の添加剤が挙げられる。カバーガス組成物の全量に対する保護ガス、キャリアガス以外の成分の含有量の割合は、0.1体積%以下が好ましく、0.01体積%以下がより好ましい。
(溶融金属の酸化または燃焼の防止方法)
本発明は、溶融する金属の表面が空気と接触して酸化または燃焼するのを防止する方法であって、金属表面に上記本発明のカバーガス組成物を供給する工程を含む方法を提供する。
金属、例えば、マグネシウム、アルミニウム、リチウムおよびこれらの金属の合金の溶融は、通常、溶融炉で行われる。溶融炉では、溶融されたこれら金属の表面は空気に曝された状態である。
本発明の方法においては、該溶融された金属の表面に空気が接触して酸化または燃焼することがないように上記カバーガス組成物を供給する。カバーガス組成物の供給方法としては、例えば、溶融炉内にカバーガス組成物を導入するカバーガス組成物導入部を設け、該導入部から溶融金属が収容された溶融炉内に噴射する方法が挙げられる。
溶融炉内に供給するカバーガス組成物の供給量は、収容される溶融金属の空気と接触する表面の面積や、溶融炉の形状、大きさ等に応じて、カバーガス組成物により形成される保護膜が溶融金属の空気と接触する表面を十分に覆うように適宜調整される。例えば、供給を噴射で行う場合、噴射速度や角度を適宜調整する。
本発明のカバーガス組成物は、溶融する金属の表面が空気と接触して酸化または燃焼するのを有効に防止できるとともに、GWPが小さく、低燃焼性である。本発明の方法によれば、このような本発明のカバーガス組成物を用いることで、環境負荷を低減しながら、安全かつ有効に、溶融金属の酸化または燃焼を防止できる。

Claims (9)

  1. 溶融する金属の表面が空気との接触により酸化または燃焼するのを防止するためのカバーガス組成物であって、ヒドロクロロフルオロオレフィンを含む保護ガスを含有するカバーガス組成物。
  2. 前記ヒドロクロロフルオロオレフィンは、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンおよび1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロペンテンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のカバーガス組成物。
  3. 前記ヒドロクロロフルオロオレフィンとして1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含み、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンにおける(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの割合は、(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン:(E)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンで示される質量比で50:50〜100:0である、請求項2に記載のカバーガス組成物。
  4. 前記保護ガスが、さらにヒドロクロロフルオロオレフィン以外の含フッ素化合物を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のカバーガス組成物。
  5. 前記含フッ素化合物が、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロエーテルから選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載のカバーガス組成物。
  6. 前記カバーガス組成物が、さらにキャリアガスを含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のカバーガス組成物。
  7. 前記キャリアガスは、窒素、二酸化炭素、空気およびアルゴンから選ばれる少なくとも1種である請求項6記載のカバーガス組成物。
  8. 前記金属は、マグネシウム、アルミニウム、リチウムおよびこれらの金属の合金から選ばれる1種である請求項1〜7のいずれか1項に記載のカバーガス組成物。
  9. 溶融する金属の表面が空気との接触により酸化または燃焼するのを防止する方法であって、前記表面に請求項1〜8のいずれか1項に記載のカバーガス組成物を供給する工程を含む方法。
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