JP2020051835A - 被験試料の評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炎症予防用化粧料、抗炎症用化粧料、炎症予防剤、抗炎症剤などの開発などに有用であり、被験試料が有するTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を容易に評価することができる被験試料の評価方法を提供すること。【解決手段】被験試料が有する抗炎症作用を評価する被験試料の評価方法であって、被験試料と単球とを接触させ、単球のTRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を測定し、当該生理学的事象に基づき、前記被験試料が有する抗炎症作用を評価することを特徴とする被験試料の評価方法。【選択図】なし

Description

本発明は、被験試料の評価方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、炎症予防用化粧料、抗炎症用化粧料、炎症予防剤、抗炎症剤などの開発などに有用な被験試料の評価方法に関する。
炎症は、化学的刺激、物理的刺激などによって引き起こされる生体反応の1つである。炎症は、組織などに損傷を与えることがあることから、当該炎症に対して抗炎症剤が適用されることがある。しかし、炎症には、種々の発症機構があることから、炎症を抑制する新たな抗炎症剤が待ち望まれている。
ところで、TRPV4は、感覚受容に関与するチャネルである(例えば、非特許文献1参照)。しかし、本発明者らは、現時点では、TRPV4の活性化と炎症の抑制との関連性が具体的に記載された文献を現時点では発見していない。
沼田朋大ら、「TRPチャネルの構造と多様な機能」、日本生化学会邦文誌 生化学、公益社団法人日本生化学会、2009年、第81巻、第11号、p.962―983
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、被験試料が有する抗炎症作用を容易に評価することができる被験試料の評価方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、被験試料が有する抗炎症作用を評価する被験試料の評価方法であって、被験試料と単球とを接触させ、単球のTRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を測定し、当該生理学的事象に基づき、前記被験試料が有する抗炎症作用を評価することを特徴とする被験試料の評価方法に関する。
本発明によれば、被験試料が有する抗炎症作用を容易に評価することができる被験試料の評価方法が提供される。
実施例1において、試料の種類とIL−1β相対値との関係を調べた結果を示すグラフである。 実施例2において、試料の種類とIL−1β相対値との関係を調べた結果を示すグラフである。 実施例3において、RNA試料の種類とIL−1β mRNA量の増加度との関係を調べた結果を示すグラフである。 実施例4において、RNA試料の種類とIL−1β mRNA量の増加度との関係を調べた結果を示すグラフである。 実施例5において、試料の種類とIL−1β質量濃度との関係を調べた結果を示すグラフである。
本発明の被験試料の評価方法は、被験試料が有する抗炎症作用を評価する被験試料の評価方法であって、被験試料と単球とを接触させ、単球のTRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を測定し、当該生理学的事象に基づき、前記被験試料が有する抗炎症作用を評価することを特徴とする。
本発明の方法によれば、被験試料による単球のTRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を測定し、当該生理学的事象に基づき、被験試料が有する抗炎症作用を評価するという操作が採られているので、被験試料が有する抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を容易に評価することができる。
本発明の方法の具体例としては、
(A)単球と被験試料とを接触させ、TRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を測定するステップ、
(B)単球のTRPV4の機能の抑制条件下に、当該単球と被験試料とを接触させ、TRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を測定するステップ、および
(C)ステップ(A)および(B)で測定された生理学的事象に基づき、被験試料による単球のTRPV4に対する活性促進作用を評価し、当該活性促進作用の評価結果に基づき、前記被験試料が有する抗炎症作用を評価するステップ
を含む方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ステップ(A)では、単球と被験試料とを接触させ、TRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を測定する。
単球は、単離された株化されていない単球(以下、「単離単球」という)であってもよく、単球株化細胞であってもよい。単離単球の供給源としては、例えば、ヒト末梢血、ヒト骨髄、マウス末梢血、マウス骨髄などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。単離単球としては、例えば、ヒト単離単球、マウス単離単球などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ヒト単離単球としては、例えば、古典的単球、中間型単球、非古典的単球などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ヒトの古典的単球は、CD14陽性およびCD16陰性(CD14+CD16-)を示す。ヒトの中間型単球は、CD14陽性およびCD16陽性(CD14+CD16+)を示す。ヒトの非古典的単球は、CD14低発現または陰性およびCD16陽性(CD14lo/-CD16+)を示す。マウス単球としては、例えば、古典的単球、非古典的単球などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。マウスの古典的単球は、Ly6c高発現(Ly6chi)を示す。マウスの非古典的単球は、Ly6c低発現(Ly6clo)を示す。単離単球は、例えば、採取された末梢血、採取された骨髄を用い、後述の調製例1に記載の手法にしたがって調製することができる。単球株化細胞としては、例えば、THP−1、U937、KG1などのヒト単球株化細胞などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
TRPV4は、例えば、細胞外液の浸透圧の減少などによって活性化する非選択性陽イオンチャネルの1つである。TRPV4は、GenBankアクセッション番号:NM_021625に示されるアミノ酸配列を有する。
被験試料としては、例えば、無機化合物、有機化合物、植物抽出物、細胞培養上清、細胞抽出物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。被験試料は、液体である場合、そのまま用いてもよく、必要に応じて溶媒で希釈して用いてもよい。また、被験試料は、固体である場合、溶媒に溶解させて用いることができる。
溶媒は、被験試料の種類、測定対象の生理学的事象の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、被験試料の種類、測定対象の生理学的事象の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。溶媒としては、例えば、生理的食塩水、リン酸緩衝生理的食塩水、精製水、エタノール、エタノール水溶液、カルシウム含有溶液〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコースおよび10mM2−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]エタンスルホン酸(HEPES)塩酸緩衝液(pH7.4)〕、カルシウム不含溶液〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、5mMグリコールエーテルジアミン四酢酸、10mMグルコースおよび10mMのHEPES塩酸緩衝液(pH7.4)〕、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
単球と被験試料との接触は、例えば、被験試料を含有する単球用培地において、単球の生理学的機能の維持に適した培養条件下に単球を培養することなどによって行なうことができる。
単球用培地は、例えば、基本培地に培地添加物を添加することによって調製することができる。培地添加物としては、例えば、血清、抗生物質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。基本培地としては、例えば、RPMI1640培地、MEM培地、IMDM培地、Ham’s F12培地などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。単球用培地は、血清飢餓培地であってもよく、非血清飢餓培地であってもよい。血清飢餓培地は、通常、好ましくは0〜1%(v/v)、より好ましくは0〜0.5%(v/v)の血清濃度を有する。非血清飢餓培地は、通常、好ましくは2〜10%(v/v)、より好ましくは5〜10%(v/v)の血清濃度を有する。これらの単球用培地のなかでは、種々の生理活性物質を含有する血清を含むので被験試料の効果をより特異的に評価することができることから、血清飢餓培地が好ましい。
単球用培地における被験試料の量は、被験試料の種類、単球の数などによって異なるので一概に決定することができないことから、被験試料の種類、単球の数などに応じて適宜決定することが好ましい。単球と被験試料との接触に用いられる単球用培地は、被験試料の溶媒として用いられる単球用培地と同様である。単球と被験試料との接触時間は、被験試料の種類、培養温度などによって異なるので一概に決定することができないことから、被験試料の種類、培養温度などに応じて適宜決定することが好ましい。単球と被験試料との接触時間は、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは0.15時間以上、より好ましくは0.5時間以上、より一層好ましくは1時間以上、さらに好ましくは3時間以上、さらに一層好ましくは6時間以上であり、前記と同様に抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは72時間以下、より好ましくは12時間以下、さらに好ましくは8時間以下である。
培養条件には、培養温度、培養雰囲気における二酸化炭素濃度などが含まれる。培養温度は、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは35℃以上、より好ましくは36.5℃以上であり、前記と同様に抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは38℃以下、より好ましくは37.5℃以下である。具体的には、培養温度は、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、通常、好ましくは35〜38℃、より好ましくは36.5〜37.5℃である。培養雰囲気における二酸化炭素濃度は、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは4%(v/v)以上、より好ましくは5%(v/v)以上であり、前記と同様に抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは10%(v/v)以下、より好ましくは7%(v/v)以下である。具体的には、二酸化炭素濃度は、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、通常、好ましくは4〜10%(v/v)、より好ましくは5〜7%(v/v)である。
TRPV4の活性化を介して引き起こされる生理学的事象としては、例えば、(i)単球のTRPV4の活性化に起因する炎症関連因子またはそのmRNAの発現量の減少、(ii)単球のTRPV4の活性化に起因する単球からM1型マクロファージへの分化の抑制、(iii)単球のTRPV4の活性化に起因する単球の細胞内カルシウムイオン濃度の増加、(iv)単球のTRPV4の活性化に起因する単球の膜電位の増加などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
生理学的事象の測定法としては、以下の測定法1〜測定法4などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
<測定法1>
測定法1では、生理学的事象として、前記「(i)単球のTRPV4の活性化に起因する炎症関連因子またはそのmRNAの発現量の減少」が用いられる。測定法1は、
(1a)単球と炎症惹起物質とを接触させるステップ、および
(1b)炎症関連因子またはそのmRNAの発現量を測定するステップ
を含む。
単球と炎症惹起物質との接触は、例えば、炎症惹起物質を含有する単球用培地において、単球の生理学的機能の維持に適した培養条件下に単球を培養することなどによって行なうことができる。
炎症惹起物質としては、例えば、リポ多糖;K3CpGなどのCpGオリゴヌクレオチド;Pam3CSK4などのリポペプチド;Poly I:Cなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
単球用培地における炎症惹起物質の量は、炎症惹起物質の種類、単球の数などによって異なるので一概に決定することができないことから、炎症惹起物質の種類、単球の数などに応じて適宜決定することが好ましい。培養条件は、単球と被験試料との接触の際に用いられる培養条件と同様である。
測定法1をステップ(A)に用いる場合、測定法1のステップ(1a)では、被験試料および炎症惹起物質は、同時に単球に接触させてもよく、別々に単球に接触させてもよい。
被験試料および炎症惹起物質を同時に単球に接触させる場合、例えば、被験試料と炎症惹起物質とを含有する単球用培地などを用いることができる。被験試料および炎症惹起物質を同時に単球に接触させる際の培養温度は、前記培養条件における培養温度と同様である。単球と被験試料と炎症惹起物質との接触時間は、被験試料の種類、炎症惹起物質の種類、培養温度などによって異なるので一概に決定することができないことから、被験試料の種類、炎症惹起物質の種類、培養温度などに応じて適宜決定することが好ましい。
被験試料および炎症惹起物質を別々に単球に接触させる場合、被験試料を単球に接触させた後、炎症惹起物質を当該単球に接触させてもよく、炎症惹起物質を単球に接触させた後、被験試料を当該単球に接触させてもよい。炎症惹起物質と単球とを接触させる際の培養温度は、前記培養条件における培養温度と同様である。単球と炎症惹起物質との接触時間は、炎症惹起物質の種類、培養温度などによって異なるので一概に決定することができないことから、炎症惹起物質の種類、培養温度などに応じて適宜決定することが好ましい。単球と炎症惹起物質との接触時間は、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは0.15時間以上、より好ましくは0.5時間以上、より一層好ましくは1時間以上、さらに好ましくは3時間以上、さらに一層好ましくは6時間以上であり、前記と同様に抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは72時間以下、より好ましくは12時間以下、さらに好ましくは8時間以下である。
炎症関連因子は、炎症部位に存在する因子である。炎症関連因子としては、例えば、IFN−α、IFN−γ、IL−1α、IL−1β、IL−12p70、IL−13、IL−17α、IL−4、IL−6、TNF−α、GM−CSFなどの炎症性サイトカイン;IP−10、MCP−1、MIP−1α、MIP−1βなどのケモカイン;E−セレクチン、P−セレクチン、sICAM−1などの細胞接着因子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの炎症関連因子のなかでは、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、IFN−α、IFN−γ、IL−1α、IL−1β、IL−12p70、IL−13、IL−17α、IL−4、IL−6、TNF−α、GM−CSF、IP−10、MCP−1、MIP−1α、MIP−1β、E−セレクチン、P−セレクチンおよびsICAM−1が好ましい。
炎症関連因子の発現量の測定法としては、例えば、酵素標識免疫測定法(以下、「ELISA」という)、ウエスタンブロッティング法、免疫蛍光染色法、蛍光活性化セルソーティング(以下、「FACS」という)、蛍光標識ビーズを用いたマルチプレックスアッセイなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炎症関連因子のmRNAの発現量の測定法としては、例えば、リアルタイムRT−PCR、ノーザンブロッティング法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ELISAおよびウエスタンブロッティング法に用いられる抗体としては、例えば、炎症関連物質に対する抗体またはその抗体断片などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炎症関連物質に対する抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。炎症関連物質に対する抗体およびその抗体断片として、商業的に入手可能な抗体およびその抗体断片を用いることができる。
リアルタイムRT−PCR法に用いられるプライマー対としては、例えば、炎症関連因子をコードする核酸の塩基配列の一部からなるプライマーと当該核酸のアンチセンス鎖の塩基配列の一部からなるプライマーとからなるプライマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。プライマー対としては、商業的に入手可能なプライマー対を用いることができる。
ノーザンブロッティング法に用いられるプローブとしては、例えば、炎症関連因子をコードする核酸の全部または一部からなる核酸、炎症関連因子をコードする核酸のアンチセンス鎖の全部または一部からなる核酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。プローブが炎症関連因子をコードする核酸の一部からなる核酸または当該核酸のアンチセンス鎖の一部からなる核酸である場合、プローブの長さは、炎症関連因子の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、炎症関連因子の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。プローブの長さは、炎症関連因子の発現量の測定精度を向上させる観点から、通常、好ましくは20〜500ヌクレオチド長である。
<測定法2>
測定法2では、生理学的事象として、前記「(ii)単球のTRPV4の活性化に起因する単球からM1型マクロファージへの分化の抑制」が用いられる。単球からM1型マクロファージの分化は、単球とGM−CSFとを接触させることによって行なうことができる。測定法2は、
(2a)単球と顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(以下、「GM−CSF」という)とを接触させるステップ、および
(2b)M1型マクロファージの数を測定するステップ
を含む。
単球とGM−CSFとの接触は、例えば、GM−CSFを含有する単球用培地において、単球の生理学的機能の維持に適した培養条件下に単球を培養することなどによって行なうことができる。
単球用培地におけるGM−CSFの量は、単球の数などによって異なるので一概に決定することができないことから、単球の数などに応じて適宜決定することが好ましい。単球用培地におけるGM−CSFの量は、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、通常、好ましくは5ng/mL以上、より好ましくは10ng/mL以上であり、前記と同様に抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは200ng/mL以下、より好ましくは100ng/mL以下である。単球用培地は、被験試料の溶媒として用いられる単球用培地と同様である。培養条件は、単球と被験試料との接触の際に用いられる培養条件と同様である。
測定法2をステップ(A)に用いる場合、測定法2のステップ(2a)では、被験試料およびGM−CSFは、同時に単球に接触させてもよく、別々に単球に接触させてもよい。
被験試料およびGM−CSFを同時に単球に接触させる場合、例えば、被験試料とGM−CSFとを含有する単球用培地などを用いることができる。この場合、単球と被験試料とGM−CSFとの接触時間は、被験試料の種類などによって異なるので一概に決定することができないことから、被験試料の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。
被験試料およびGM−CSFを別々に単球に接触させる場合、被験試料およびGM−CSFを単球に接触させる順序は、特に限定されるものではない。単球とGM−CSFとの接触時間は、単球のTRPV4の活性化に起因する単球からM1型マクロファージへの分化を抑制する観点から、好ましくは3日間以上、より好ましくは5日間以上であり、前記と同様に抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは14日間以下、より好ましくは10日間以下である。
M1型マクロファージの数の測定法としては、例えば、フローサイトメトリーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。フローサイトメトリーによってM1型マクロファージの数を測定する場合、M1型マクロファージのマーカーとしては、例えば、CD14、CD11b、CD68、CD80、CD163などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのM1型マクロファージのマーカーのなかでは、単球とM1型マクロファージとの容易に区別化する観点から、CD14、CD11bおよびCD68が好ましい。M1型マクロファージは、「CD14陰性、CD11b陽性およびCD68陽性」を示すことを指標として検出し、計数することができる。
<測定法3>
測定法3では、生理学的事象として、前記「(iii)単球のTRPV4の活性化に起因する単球の細胞内カルシウムイオン濃度の増加」が用いられる。単球の細胞内カルシウムイオン濃度は、カルシウム指示薬を単球に導入し、単球内のカルシウムイオンと結合したカルシウム指示薬の量を指標として測定することができる。
カルシウム指示薬は、カルシウムイオンと結合したカルシウム指示薬の量を簡便な操作で測定することができることから、カルシウムイオンとの結合前後の変化を光学的特性の変化などによって検出することができる試薬であることが好ましい。光学的特性の変化としては、例えば、蛍光強度の変化、吸光度の変化などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものでない。カルシウム指示薬としては、例えば、カルシウムイオンとの結合前後に蛍光強度が変化する蛍光カルシウム指示薬などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。カルシウム指示薬の具体例としては、1−[6−アミノ−2−(5−カルボキシ−2−オキサゾリル)−5−ベンゾフラニルオキシ]−2−(2−アミノ−5−メチルフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸ペンタアセトキシメチルエステル(以下、「Fura 2−AM」という)、1−[2−アミノ−5−(2,7−ジクロロ−6−ヒドロキシ−3−オキソ−9−キサンテニル)フェノキシ]−2−(2−アミノ−5−メチルフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸テトラアセトキシメチルエステル(以下、「Fluo 3−AM」という)、1−[2−アミノ−5−(2,7−ジフルオロ−6−アセトキシメトキシ−3−オキソ−9−キサンテニル)フェノキシ]−2−(2−アミノ−5−メチルフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸テトラアセトキシメチルエステル(以下、「Fluo 4−AM」という)などの蛍光カルシウム指示薬などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。カルシウム指示薬のなかでは、カルシウムイオンの動態と夾雑物質の動態とを区別化し、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、カルシウムイオンとの結合前後に蛍光強度が変化する蛍光カルシウム指示薬が好ましく、Fura 2−AM、Fluo 3−AMおよびFluo 4−AMがより好ましい。
蛍光カルシウム指示薬は、1種類の励起波長を有していてもよく、2種類以上の励起波長を有していてもよい。カルシウム指示薬が蛍光カルシウム指示薬である場合、当該蛍光カルシウム指示薬は、蛍光強度の測定が容易であり、検出強度が高いことから、2種類の励起波長を有する蛍光カルシウム指示薬が好ましい。細胞内カルシウム濃度の変化の測定に際して、1種類の励起波長を有する蛍光カルシウム指示薬を用いる場合、当該励起波長における蛍光強度に基づき、細胞内カルシウム濃度の変化を測定することができる。細胞内カルシウム濃度の変化の測定に際し、2種類以上の励起波長を有する蛍光カルシウム指示薬を用いる場合、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、当該2種類以上の励起波長から選ばれた2種類の励起波長(第1励起波長および第2励起波長)を選択し、第1励起波長および第2励起波長のそれぞれにおける蛍光強度から算出された蛍光強度比に基づき、細胞内カルシウム濃度の変化を測定することができる。細胞内カルシウム濃度の測定に際し、例えば、2種類の励起波長を有する蛍光カルシウム指示薬であるFURA 2−AMを用いる場合、第1励起波長における蛍光強度(以下、「第1蛍光強度」ともいう)として励起波長340nmにおける蛍光強度および第2励起波長における蛍光強度(以下、「第2蛍光強度」ともいう)として励起波長380nmにおける蛍光強度を用いることができる。蛍光強度比は、例えば、式(I):
[蛍光強度比]=[第1蛍光強度]/[第2蛍光強度] (I)
に基づいて求めることができる。
単球に蛍光カルシウム指示薬を導入する方法としては、例えば、単球が入った還流チャンバー内で蛍光カルシウム指示薬を含有する緩衝液を循環させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。指示薬導入後の単球と被験試料とを接触させる方法としては、蛍光カルシウム指示薬が導入された単球が入った還流チャンバー内で蛍光カルシウム指示薬を含有する緩衝液を循環させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。被験試料接触後の細胞とカルシウムイオンとを接触させる方法としては、例えば、カルシウムイオンを含有し、被験試料を含まない緩衝液を循環させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。緩衝液としては、例えば、HEPES緩衝液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。単球に蛍光カルシウム指示薬を導入する際の温度、単球と被験試料との接触温度および単球とカルシウムイオンとの接触温度は、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは35℃以上、より好ましくは36.5℃以上であり、前記と同様に抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは38℃以下、より好ましくは37.5℃以下である。単球と被験試料との接触時間は、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは0.5分間以上、より好ましくは1分間以上であり、細胞内カルシウムの変化を的確に評価する観点から、好ましくは1時間以下、より好ましくは0.5時間以下である。単球とカルシウムイオンとの接触時間は、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは1分間以上、より好ましくは5分間以上であり、前記と同様に抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。
<測定法4>
測定法4では、生理学的事象として、前記「(iv)単球のTRPV4の活性化に起因する単球の膜電位の増加」が用いられる。単球の膜電位の測定法としては、例えば、ホールセル法、セルアタッチ法などのパッチクランプ法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ステップ(B)では、単球のTRPV4の機能の抑制条件下に、当該単球と被験試料とを接触させ、TRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を測定する。ステップ(B)における生理学的事象の測定は、単球のTRPV4の機能の抑制条件下に行なうことを除き、ステップ(A)と同様の条件および方法によって行なうことができる。また、ステップ(B)で測定される生理学的事象は、ステップ(A)で測定された生理学的事象と同じ種類の生理学的事象である。
単球のTRPV4の機能を抑制する方法としては、例えば、TRPV4活性抑制剤と単球のTRPV4とを接触させる方法、単球のTRPV4をノックダウンまたはノックアウトさせる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
TRPV4活性抑制剤としては、例えば、2−メチル−1−[3−(4−モルホリニル)プロピル]−5−フェニル−N−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1H−ピロール−3−カルボキサミド(以下、「HC−067147」という)、3−([1,4’−ビピペリジン]−1’−イルメチル)−7−ブロモ−N−(1−フェニルシクロプロピル)−2−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−キノリンカルボキサミド(以下、「GSK2193874」という)、N−[4−[[4−(1−メチルエチル)−1−ピペラジニル]スルホニル]フェニル]−2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)ベンザミド塩酸塩(以下、「RN9893塩酸塩」という)、2,4−ジクロロ−N−(1−メチルエチル)−N−{2−[(1−メチルエチル)アミノ]エチル}ベンゼンスルホンアミド(以下、「RN−1734」という)、ルテニウムレッドなどのTRPV4アンタゴニストなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのTRPV4活性抑制剤のなかでは、単球のTRPV4の活性化を介して引き起こされる生理学的事象を的確に測定する観点から、TRPV4アンタゴニストが好ましく、HC−067147、GSK2193874、RN9893塩酸塩、RN−1734およびルテニウムレッドがより好ましく、HC067147およびGGSK2193874がさらに好ましい。
単球のTRPV4に接触させるTRPV4活性抑制剤の量は、TRPV4活性抑制剤の種類、単球の数などによって異なるので一概には決定することができないことから、TRPV4活性抑制剤の種類、単球の数などに応じて適宜決定することが好ましい。
TRPV4活性抑制剤と単球のTRPV4との接触は、単球のTRPV4の機能の抑制条件下での被験試料の作用を的確に評価する観点から、単球と被験試料との接触前または接触と同時に行なうことが好ましい。
TRPV4活性抑制剤と単球のTRPV4との接触を単球と被験試料との接触前に行なう場合、TRPV4活性抑制剤と単球のTRPV4との接触時間は、抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは5分間以上、より好ましくは15分間以上であり、前記と同様に抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を的確に評価する観点から、好ましくは24時間以下、より好ましくは1時間以下である。
TRPV4活性抑制剤と単球のTRPV4との接触を単球と被験試料との接触と同時に行なう場合、TRPV4活性抑制剤と単球のTRPV4との接触時間は、単球のTRPV4と被験物質との接触時間と同様である。
単球のTRPV4をノックダウンさせる方法としては、例えば、RNAサイレンシング法によってTRPV4遺伝子の発現を阻害する方法、ドミナント・ネガティブ変異体を発現させることによって正常なTRPV4の機能を阻害する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。単球のTRPV4をノックアウトさせる方法としては、例えば、相同組換法によってTRPV4遺伝子を破壊する方法、ゲノム編集技術によってTRPV4遺伝子を破壊する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ステップ(C)では、ステップ(A)および(B)で測定された生理学的事象に基づき、被験試料による単球のTRPV4に対する活性促進作用を評価し、当該活性促進作用の評価結果に基づき、前記被験試料が有する抗炎症作用を評価する。
ステップ(A)および(B)で測定された生理学的事象が「(i)単球のTRPV4の活性化に起因する炎症関連因子またはそのmRNAの発現量の減少」である場合、被験試料は、以下の指標(1a)および(1b)の少なくとも1つの指標に基づいて単球のTRPV4に対して活性促進作用を有すると評価される。
<指標(1a)>
ステップ(A)で測定された炎症関連因子の発現量がステップ(B)で測定された炎症関連因子の発現量と比べて少ないこと
<指標(1b)>
ステップ(A)で測定された炎症関連因子のmRNAの発現量がステップ(B)で測定された炎症関連因子のmRNAの発現量と比べて少ないこと
ステップ(A)および(B)で測定された生理学的事象が「(ii)単球のTRPV4の活性化に起因する単球からM1型マクロファージへの分化の抑制」である場合、被験試料は、以下の指標(2a)に基づいて単球のTRPV4に対して活性促進作用を有すると評価される。
<指標(2a)>
ステップ(A)で測定されたM1型マクロファージの数がステップ(B)で測定されたM1型マクロファージの数と比べて少ないこと
ステップ(A)および(B)で測定された生理学的事象が「(iii)単球のTRPV4の活性化に起因する単球の細胞内カルシウムイオン濃度の増加」である場合、被験試料は、以下の指標(3a)に基づいて単球のTRPV4に対して活性促進作用を有すると評価される。
<指標(3a)>
ステップ(A)で測定された単球の細胞内カルシウムイオン濃度がステップ(B)で測定された単球の細胞内カルシウムイオン濃度と比べて高いこと
ステップ(A)および(B)で測定された生理学的事象が「(iv)単球のTRPV4の活性化に起因する単球の膜電位の増加」である場合、被験試料は、以下の指標(4a)に基づいて単球のTRPV4に対して活性促進作用を有すると評価される。
<指標(4a)>
ステップ(A)で測定された単球の膜電位がステップ(B)で測定された単球の膜電位と比べて大きいこと
被験試料は、単球のTRPV4に対して活性促進作用を有する場合、抗炎症作用、好ましくはTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を有すると評価されることができる。被験試料は、単球のTRPV4に対して活性促進作用を有しない場合、抗炎症作用、好ましくはTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を有していないと評価されることができる。
以上説明したように、本発明の被験試料の評価方法によれば、被験試料が有する抗炎症作用、好ましくはTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を容易に評価することができる。したがって、本発明の被験試料の評価方法は、炎症予防用化粧料、抗炎症用化粧料、炎症予防剤、抗炎症剤などの開発に好適に用いられることが期待されるものである。
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、「%(m/v)」は質量/体積パーセント、「%(v/v)」は体積/体積パーセント(体積%)を示す。また、以下において、捕捉用抗体液、定量用標品、ビオチン検出用抗体液、ストレプトアビジンHRP抗体液および基質溶液〔A液/B液(体積比)=1/1〕は、ELISAキット〔アール・アンド・ディーシステムズ(R&D Systems)社製、商品名:Human IL−1beta/IL−1F2 DuoSet(登録商標) ELISA Development〕に含まれるものである。各略語の意味は、以下のとおりである。
<略語の説明>
BSA:ウシ血清アルブミン
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
FBS:ウシ胎仔血清
GAPDH:グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素
LPS:リポ多糖
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
PFA:パラホルムアルデヒド
調製例1
ヒトリンパ球分離用媒体〔GEヘルスケア社製、商品名:Ficoll−Paque PLUS〕を用い、密度勾配遠心法にしたがい、健常ボランティアの末梢血から末梢血単核細胞を分離した。末梢血単核細胞2.0×108個にACK溶解緩衝液(組成:150mM塩化アンモニウム、10mM炭酸水素カリウムおよび0.1mM EDTA)4mLを添加した。得られた混合物を15分間室温で静置することにより、前記混合物中の赤血球を溶血させた。
死細胞除去キット〔ミリテニー・バイオテク(Miltenyi Biotec)社製、商品名:MACS(登録商標) Dead Cell Removal Kit〕を用い、溶血後の混合物に含まれる死細胞を磁気標識した。得られた混合物を細胞分離用カラム〔ミリテニー・バイオテク社製、商品名:LSカラム〕に供して当該混合物から標識死細胞を除去した。
得られた混合物に含まれる末梢血単核細胞を細胞分離試薬〔ミリテニー・バイオテク社製、商品名:CD14 Micro Beads〕で磁気標識した。得られた混合物から標識末梢血単核細胞を磁気分離することにより、CD14陽性(CD14+)細胞群を得た。以下において、得られたCD14陽性細胞群を単離単球として用いた。
調製例2
ヒト単球株化細胞THP−1を培地A〔0.5%(v/v)FBS含有RPMI1640培地〕において、37℃の5%(v/v)二酸化炭素雰囲気中で培養した。LPS〔シグマ−アルドリッチ(SIGMA−Aldrich)社製、商品名:Lipopolysaccharides from Escherichia coli O111:B4〕と、TRPV4アゴニスト〔和光純薬(株)製、商品名:GSK1016790A〕とを表1に示される濃度となるように培地Aに添加した。その後、THP−1をさらに6時間培養した。なお、LPSは、炎症性サイトカインIL−1βの発現を誘導する。
得られた培養物にポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテル(TritonX−100)をその濃度が0.1%(v/v)になるように添加した。得られた混合物を氷上に10分間静置することにより、THP−1溶解物を調製した。THP−1溶解物を17800×gおよび4℃で5分間の遠心分離に供して上清を回収することにより、実験番号1−1〜1−5の試料を得た。
実施例1
捕捉用抗体液100μLをELISAプレートの各ウェルに入れた。前記ELISAプレートを4℃で一晩(約8時間)インキュベートした。前記ELISAプレートの各ウェル中の液体成分を除去した後、各ウェルを洗浄液〔0.05%(v/v)ポリオキシエチレンソルビタンモノウタラート(Tween−20)含有PBS溶液〕300μLで4回洗浄した。洗浄後のELISAプレートの各ウェルから残存している洗浄液を除去した。
ブロッキング緩衝液〔0.1%(m/v)BSA含有PBS溶液〕300μLを前記ELISAプレートの各ウェルに入れた後、前記ELISAプレートを室温で1時間インキュベートした。前記ELISAプレートの各ウェル中の液体成分を除去した後、各ウェルを前記洗浄液で4回洗浄した。
実験番号1−1〜1−5の試料100μLまたは定量用標品100μLを前記ELISAプレートの各ウェルに添加した。その後、前記ELISAプレートを室温でインキュベートした。インキュベーション開始から2時間経過時に前記ELISAプレートの各ウェル中の液体成分を除去した後、各ウェル中の反応生成物を洗浄した。
洗浄後のELISAプレートの各ウェルにビオチン検出用抗体液100μLを添加した。その後、前記ELISAプレートを室温で2時間インキュベートした。インキュベーション開始から2時間経過時に前記ELISAプレートの各ウェル中の液体成分を除去した後、各ウェル中の反応生成物を洗浄した。
洗浄後のELISAプレートの各ウェルにストレプトアビジンHRP抗体液100μLを添加した。その後、前記ELISAプレートを室温でインキュベートした。インキュベーション開始から20分間経過時に前記ELISAプレートの各ウェル中の液体成分を除去した後、各ウェル中の反応生成物を洗浄した。
前記ELISAプレートの各ウェルに基質溶液〔A液/B液(体積比)=1/1〕100μLを添加した後、前記ELISAプレートを遮光条件下に室温(25℃)でインキュベートし、反応生成物を染色した。インキュベーション開始から20分間経過時に、停止溶液50μLを前記ELISAプレートの各ウェルに添加した。
前記ELISAプレートをプレートリーダー〔テカン(TECAN)社製、商品名:インフィニット F200 PRO〕に供し、吸光度を測定した。また、定量用標品の吸光度を測定することにより、吸光度とIL−1β質量濃度との関係式を得た。吸光度とIL−1β質量濃度との関係式を用い、各試料のIL−1β質量濃度を算出した。つぎに、各試料のIL−1β質量濃度を用い、式(II):
[IL−1β相対値(倍)]
=[試料のIL−1β質量濃度]/[実験番号1−1の試料のIL−1β質量濃度] (II)
にしたがい、IL−1β相対値を求めた。
試料の種類とIL−1β相対値との関係を調べた結果を図1に示す。図中、レーン1は実験番号1−1の試料のIL−1β相対値、レーン2は実験番号1−2の試料のIL−1β相対値、レーン3は実験番号1−3の試料のIL−1β相対値、レーン4は実験番号1−4の試料のIL−1β相対値、レーン5は実験番号1−5の試料のIL−1β相対値を示す。
図1に示された結果から、実験番号1−3〜1−5の試料のIL−1β相対値(レーン3〜5)は、実験番号1−2の試料のIL−1β相対値(レーン2)と比べて小さいことから、TRPV4が活性化されているときの単球株化細胞のIL−1β発現量は、TRPV4が活性化されていないときの単球株化細胞のIL−1β発現量と比べて少ないことがわかる。また、培地AにおけるTRPV4アゴニストの量が多いほど、IL−1β相対値が低くなる傾向があることから、TRPV4活性が増強されるほど、IL−1β発現量は、減少することがわかる。
これらの結果から、単球株化細胞のTRPV4の活性化は、LPSによる炎症誘導条件下での単球株化細胞におけるIL−1β発現量を減少させることから、炎症を抑制させることがわかる。このように、単球株化細胞のTRPV4の活性化と炎症の抑制とが関連していることから、被験試料と単球株化細胞とを接触させ、TRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を用いることにより、前記被験試料が有する抗炎症作用を評価することができることがわかる。また、単球株化細胞のTRPV4を活性化させる物質は、TRPV4を活性化させて炎症を抑制することがわかる。
調製例3
調製例1で得られた単離単球を培地A〔0.5%(v/v)FBS含有RPMI1640培地〕において、37℃の5%(v/v)二酸化炭素雰囲気中で培養した。前記培地AにおけるTRPV4アンタゴニスト〔トクリス(TOCRIS)社製、商品名:HC067047〕の濃度を0μMまたは30μMに調製し、単離単球をさらに30分間培養した。
LPS〔シグマ−アルドリッチ(SIGMA−Aldrich)社製、商品名:Lipopolysaccharides from Escherichia coli O111:B4、製品番号:L2630〕およびTRPV4アゴニスト〔和光純薬(株)製、商品名:GSK1016790A〕をLPSの濃度が表2に示される濃度となるように前記培地Aに添加した。その後、単離単球をさらに6時間培養した。
得られた培養物にポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテル(TritonX−100)をその濃度が0.1%(v/v)になるように添加した。得られた混合物を氷上に10分間静置することにより、細胞溶解物を調製した。細胞溶解物を17800×gおよび4℃で5分間の遠心分離に供して上清を回収することにより、実験番号2−1〜2−8の試料を得た。
実施例2
実施例1において、実験番号1−1〜1−5の試料を用いる代わりに実験番号2−1〜2−8の試料を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、吸光度を測定した。定量用標品の吸光度を測定することにより、吸光度とIL−1β質量濃度との関係式を得た。吸光度とIL−1β質量濃度との関係式を用い、各試料のIL−1β質量濃度を算出した。各試料のIL−1β質量濃度を用い、式(III)
[IL−1β相対値(倍)]
=[試料のIL−1β質量濃度]/[実験番号2−1の試料のIL−1β質量濃度] (III)
にしたがい、IL−1β相対値を求めた。
試料の種類とIL−1β相対値との関係を調べた結果を図2に示す。図中、レーン1は実験番号2−1の試料のIL−1β相対値、レーン2は実験番号2−2の試料のIL−1β相対値、レーン3は実験番号2−3の試料のIL−1β相対値、レーン4は実験番号2−4の試料のIL−1β相対値、レーン5は実験番号2−5の試料のIL−1β相対値、レーン6は実験番号2−6の試料のIL−1β相対値、レーン7は実験番号2−7の試料のIL−1β相対値、レーン8は実験番号2−8の試料のIL−1β相対値を示す。
図2に示された結果から、実験番号2−3〜2−5の試料のIL−1β相対値(レーン3〜5)は、実験番号2−2および2−6の試料のIL−1β相対値(レーン2および6)と比べて小さいことから、TRPV4が活性化されているときの単離単球のIL−1β発現量は、TRPV4が活性化されていないときの単離単球のIL−1β発現量と比べて少ないことがわかる。また、培地AにおけるTRPV4アゴニストの量が多いほど、IL−1β相対値が低くなる傾向があることから、TRPV4活性が増強されるほど、IL−1β発現量は、減少することがわかる。
なお、実験番号2−7および2−8の試料のIL−1β相対値(レーン7および8)は、実験番号2−1の試料のIL−1β相対値(レーン1)と同程度であることから、TRPV4アゴニストおよびTRPV4アンタゴニストは、IL−1βを誘導しないことがわかる。
これらの結果から、単離単球のTRPV4の活性化は、LPSによる炎症誘導条件下での単離単球におけるIL−1β発現量を減少させることから、炎症を抑制させることがわかる。このように、単離単球のTRPV4の活性化と炎症の抑制とが関連していることから、被験試料と単離単球とを接触させ、TRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を用いることにより、前記被験試料が有する抗炎症作用を評価することができることがわかる。また、単離単球のTRPV4を活性化させる物質は、TRPV4を活性化させて炎症を抑制することがわかる。
調製例4
LPS〔シグマ−アルドリッチ(SIGMA−Aldrich)社製、商品名:Lipopolysaccharides from Escherichia coli O111:B4〕およびTRPV4アゴニスト〔和光純薬(株)製、商品名:GSK1016790A〕を表3に示される濃度となるように前記培地Aに添加し、培地B〜Dを得た。
実施例3
THP−1を培地A(実験番号3−1)、培地B(実験番号3−2)、培地C(実験番号3−3)または培地D(実験番号3−4)において、37℃の5%(v/v)二酸化炭素雰囲気中で培養した。培養開始から6時間経過時にTHP−1を回収し、PBSで洗浄した。
得られたTHP−1と全RNA抽出試薬〔モレキュラー・リサーチ(Molecular Research)社製、商品名:Trireagent〕とを用い、全RNA含有溶液を得た。全RNA含有溶液にクロロホルムを添加し、RNAを含有する水層を回収した。前記水層にイソプロパノールを添加してRNAを沈殿させた。沈殿させたRNAを70%(v/v)エタノール水溶液で洗浄した後、RNase不含水に溶解させ、実験番号3−1〜3−4のRNA試料を得た。
実験番号3−1〜3−4のRNA試料と逆転写キット〔キアゲン(QIAGEN)社製、商品名:QuantiTect reverse transcription kit〕とを用い、cDNAを合成した。cDNAと表4に示されるプライマー対とSYBR Green mix〔東洋紡(株)製、商品名:THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix〕とを用いてリアルタイムPCRを行ない、各試料のIL−1β Ct値およびGAPDH Ct値の平均値を得た。
各試料のIL−1β Ct値およびGAPDH Ct値の平均値を用い、式(IV):
[IL−1β ΔCt]
=[試料のIL−1β Ct値]−[GAPDH Ct値の平均値] (IV)
にしたがい、IL−1β ΔCtを求めた。つぎに、実験番号3−1のIL−1β ΔCt値を1としたときの各実験番号のIL−1β ΔCtの相対値を算出した。以下において、IL−1β ΔCtの相対値をmRNA量の増加度として用いた。
RNA試料の種類とIL−1β mRNA量の増加度との関係を調べた結果を図3に示す。図中、レーン1は実験番号3−1のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度、レーン2は実験番号3−2のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度、レーン3は実験番号3−3のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度、レーン4は実験番号3−4のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度を示す。
図3に示される結果から、実験番号3−3のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度は、実験番号3−2のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度と比べて小さいことがわかる。これらの結果から、TRPV4が活性化されているときの単球株化細胞におけるIL−1β mRNA量は、TRPV4が活性化されていないときの単球株化細胞におけるIL−1β mRNA量と比べて少ないことがわかる。したがって、TRPV4の活性化は、単球株化細胞におけるIL−1βの発現をmRNAレベルで抑制することがわかる。なお、実験番号3−4のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度は、実験番号3−1のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度と同程度以下であることから、TRPV4アゴニストは、単独では、単球株化細胞におけるIL−1β mRNAの発現に対して影響を与えないことがわかる。
調製例5
LPS〔シグマ−アルドリッチ(SIGMA−Aldrich)社製、商品名:Lipopolysaccharides from Escherichia coli O111:B4〕およびTRPV4アゴニスト〔和光純薬(株)製、商品名:GSK1016790A〕を表5に示される濃度となるように前記培地Aに添加し、培地E〜Gを得た。
実施例4
調製例1で得られた単離単球を培地A(実験番号4−1)、培地E(実験番号4−2)、培地F(実験番号4−3)または培地G(実験番号4−4)において、37℃の5%(v/v)二酸化炭素雰囲気中で培養した。培養開始から6時間経過時に単離単球を回収し、PBSで洗浄した。
得られた単離単球と全RNA抽出試薬〔モレキュラー・リサーチ(Molecular Research)社製、商品名:Trireagent〕とを用い、全RNA含有溶液を得た。全RNA含有溶液にクロロホルムを添加し、RNAを含有する水層を回収した。前記水層にイソプロパノールを添加してRNAを沈殿させた。沈殿させたRNAを70%(v/v)エタノール水溶液で洗浄した後、RNase不含水に溶解させ、実験番号4−1〜4−4のRNA試料を得た。
実験番号4−1〜4−4のRNA試料と逆転写キット〔キアゲン(QIAGEN)社製、商品名:QuantiTect reverse transcription kit〕とを用い、cDNAを合成した。cDNAと表3に示されるプライマー対とSYBR Green mix〔東洋紡(株)製、商品名:THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix〕とを用いてリアルタイムPCRを行ない、各試料のIL−1β Ct値およびGAPDH Ct値の平均値を得た。
各試料のIL−1β Ct値およびGAPDH Ct値の平均値を用い、前記式(IV)にしたがい、IL−1β ΔCtを求めた。つぎに、実験番号4−1のIL−1β ΔCt値を1としたときの各実験番号のIL−1β ΔCtの相対値を算出した。以下において、IL−1β ΔCtの相対値をmRNA量の増加度として用いた。
実施例4において、RNA試料の種類とIL−1β mRNA量の増加度との関係を調べた結果を図4に示す。図中、レーン1は実験番号4−1のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度、レーン2は実験番号4−2のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度、レーン3は実験番号4−3のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度、レーン4は実験番号4−4のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度を示す。
図4に示される結果から、実験番号4−3のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度は、実験番号4−2のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度と比べて小さいことがわかる。これらの結果から、TRPV4が活性化されているときの単離単球におけるIL−1β mRNA量は、TRPV4が活性化されていないときの単離単球におけるIL−1β mRNA量と比べて少ないことがわかる。したがって、単離単球のTRPV4の活性化は、単球株化細胞の場合と同様に、IL−1βの発現をmRNAレベルで抑制することがわかる。なお、実験番号4−4のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度は、実験番号4−1のRNA試料のIL−1β mRNA量の増加度と同程度以下であることから、TRPV4アゴニストは、単独では、単離単球におけるIL−1β mRNAの発現に対して影響を与えないことがわかる。
調製例6
単球株化細胞THP−1を培地Aにおいて、37℃の5%(v/v)二酸化炭素雰囲気中で培養した。カルシウムキレート化剤〔アール・アンド・ディーシステムズ社製、商品名:BAPTA−AM〕を表6に示される濃度となるように添加した。カルシウムキレート化剤の添加時から30分間経過後、LPS〔シグマ−アルドリッチ(SIGMA−Aldrich)社製、商品名:Lipopolysaccharides from Escherichia coli O111:B4〕と、TRPV4アゴニスト〔和光純薬(株)製、商品名:GSK1016790A〕を表6に示される濃度となるように添加し、THP−1をさらに6時間培養した。
得られた培養物にポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテル(TritonX−100)をその濃度が0.1%(v/v)になるように添加した。得られた混合物を氷上に10分間静置することにより、THP−1溶解物を調製した。THP−1溶解物を17800×gおよび4℃で5分間の遠心分離に供して上清を回収することにより、実験番号5−1〜5−4の試料を得た。
実施例5
実施例1において、実験番号1−1〜1−5の試料を用いる代わりに実験番号5−1〜5−4の試料を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、吸光度を測定した。定量用標品の吸光度を測定することで得られた吸光度とIL−1β質量濃度の関係式を用い、試料に含まれるIL−1βの質量濃度を算出した。
試料の種類とIL−1β質量濃度との関係を調べた結果を図5に示す。図中、レーン1は実験番号5−1の試料のIL−1β質量濃度、レーン2は実験番号5−2の試料のIL−1β質量濃度、レーン3は実験番号5−3の試料のIL−1β質量濃度、レーン4は実験番号5−4の試料のIL−1β質量濃度を示す。
図5に示された結果から、実験番号5−3の試料のIL−1β質量濃度(レーン3)は、実験番号5−2の試料のIL−1β質量濃度(レーン2)と比べて低いことがわかる。これらの結果から、TRPV4アゴニストによって単球株化細胞のTRPV4が活性化されているときの単球株化細胞のIL−1β発現量は、TRPV4が活性化されていないときの単球株化細胞のIL−1β発現量と比べて少ないことがわかる。また、図5に示された結果から、実験番号5−4の試料のIL−1β質量濃度(レーン4)は、実験番号5−2の試料のIL−1β質量濃度(レーン2)と比べて高いことがわかる。実験番号5−4では、カルシウムキレート化剤が用いられているため、当該カルシウムキレート化剤と細胞内カルシウムイオンとがキレート錯体を形成することから、イオンチャネルとして機能するTRPV4の活性化によるIL−1β発現抑制作用が低下していると考えられる。
調製例7
FBSおよび抗生物質〔ギブコ社製、商品名:Antibiotic−Antimycotic〕をFBSの濃度が20%(v/v)、抗生物質の濃度が1%(V/V)となるようにRPMI1630培地に添加し、培地Hを得た。
GM−CSF〔シェナンドー(SHENANDOAH)社製、製品番号:100−08〕、TRPV4アゴニスト〔和光純薬(株)製、商品名:GSK1016790A〕およびTRPV4アンタゴニスト〔シグマ−アルドリッチ社製、商品名:GSK2193874〕を表7に示される濃度となるように培地Hに添加し、培地I〜Kを得た。
調製例8
M−CSF〔シェナンドー社製、製品番号:100−03〕、TRPV4アゴニスト〔和光純薬(株)製、商品名:GSK1016790A〕およびTRPV4アンタゴニスト〔シグマ−アルドリッチ社製、商品名:GSK2193874〕を表8に示される濃度となるように培地Hに添加し、培地L〜Nを得た。
実施例6
調製例1で得られた単離単球を、培地H(実験番号6−1)、培地I(実験番号6−2)、培地J(実験番号6−3)、培地K(実験番号6−4)、培地L(実験番号6−5)、培地M(実験番号6−6)または培地N(実験番号6−7)が入った培養容器において、37℃の5%(v/v)二酸化炭素雰囲気中で培養した。なお、培養開始から2日間および5日間経過時に、新鮮な培地を単離単球の培養系に追加した。
培養開始から7日間経過時に、細胞培養物を回収した。なお、接着細胞は、細胞解離試薬〔ギブコ社製、商品名:TrypLETM express〕を培養容器内に添加し、37℃で15分間静置した後、ピペッティングすることによって回収した。得られた細胞培養物をPBSで洗浄した。
死細胞染色色素〔インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:LIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stain kit〕を用い、細胞培養物に含まれる死細胞を染色した。その後、細胞培養物を抗CD14抗体〔バイオレジェンド(BioLegend)社製、商品名:BV421 anti−human CD14〕および抗CD11b抗体〔バイオレジェンド社製、商品名:APC anti−human CD11b〕とともに室温で10分間インキュベートすることにより、細胞培養物に含まれる細胞の細胞膜上のCD14およびCD11bを染色した。染色後の細胞培養物をPBSで洗浄した。
洗浄後の細胞培養物を0.5%(v/v)PFA含有PBS溶液に浸漬させ、室温で10分間固定した。固定後の細胞培養物を透過処理剤〔0.1%(v/v)ポリエチレングリコール tert−オクチルフェニルエーテル(TritonX−100)含有PBS溶液〕中でインキュベーションすることにより、細胞膜透過処理を行なった。処理後の細胞培養物をPBSで洗浄した。
洗浄後の細胞培養物を抗CD68抗体〔バイオレジェンド社製、商品名:FITC anti−human CD68〕ともに室温で10分間インキュベートすることにより、細胞培養物に含まれる細胞の内部のCD68を染色した。染色後の細胞培養物をPBSで洗浄した後、PBSに再懸濁し、試料を得た。
得られた試料をフローサイトメータ〔ビーディー(BD)社製、商品名:BD FACSAriaTM II〕に供した。CD14弱陽性、CD11b陽性およびCD68陽性を示す細胞をM1型マクロファージとしてソーティングし、CD14陽性、CD11b陽性およびCD68陽性を示す細胞をM2型マクロファージとしてソーティングすることにより、試料におけるM1型マクロファージおよびM2型マクロファージそれぞれの含有率を算出した。その結果を表9に示す。
表9に示された結果から、実験番号6−3のM1型マクロファージの含有率は、実験番号6−2および6−4のM1型マクロファージの含有率と比べて低いことがわかる。これらの結果から、単離単球のTRPV4の活性化は、単離単球からM1型マクロファージへの分化を抑制することがわかる。M1型マクロファージは、炎症を引き起こすことから、単離単球のTRPV4を活性化させる物質は、炎症を抑制することがわかる。
また、表9に示された結果から、実験番号6−6のM2型マクロファージの含有率は、実験番号6−5および6−7のM2型マクロファージの含有率と同程度以上であることがわかる。これらの結果から、単離単球のTRPV4の活性化は、単離単球からM2型マクロファージへの分化を抑制しないことがわかる。M2型マクロファージは、炎症を抑制することから、単離単球のTRPV4を活性化させる物質は、炎症を抑制することがわかる。
以上のことから、実施例1〜6において、TRPV4アゴニストを用いる代わりに被験試料を用い、単球のTRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を測定し、当該生理学的事象に基づき、被験試料が有する抗炎症作用を評価するという操作を採ることにより、被験試料が有する抗炎症作用、好ましくは単球のTRPV4の活性化を介した抗炎症作用を容易に評価することができることがわかる。
調製例9
LPS〔シグマ−アルドリッチ社製、製品番号:L2630〕、K3CpG〔ジーン・デザイン(Gene Design)社製、製品番号:CN65003)、Pam3CSK4〔インビトロジェン社製、製品番号:tlrl−pms〕、poly I:C〔シグマ−アルドリッチ社製、製品番号:p1530〕およびTRPV4アゴニスト〔和光純薬(株)製、商品名:GSK1016790A〕を表10に示される濃度となるように培地Aに添加し、血清飢餓培地1〜9を得た。
調製例10
LPS〔シグマ−アルドリッチ社製、製品番号:L2630〕、K3CpG〔ジーン・デザイン(Gene Design)社製、製品番号:CN65003)、Pam3CSK4〔インビトロジェン社製、製品番号:tlrl−pms〕、poly I:C〔シグマ−アルドリッチ社製、製品番号:p1530〕およびTRPV4アゴニスト〔和光純薬(株)製、商品名:GSK1016790A〕を表11に示される濃度となるように培地Aに添加し、通常培地1〜9を得た。
実施例7
(1)血清飢餓培養
調製例1で得られた単離単球を血清飢餓培地1(実験番号7−1)、血清飢餓培地2(実験番号7−2)、血清飢餓培地3(実験番号7−3)、血清飢餓培地4(実験番号7−4)、血清飢餓培地5(実験番号7−5)、血清飢餓培地6(実験番号7−6)、血清飢餓培地7(実験番号7−7)、血清飢餓培地8(実験番号7−8)または血清飢餓培地9(対照;実験番号7−9)において、37℃の5%(v/v)二酸化炭素雰囲気中で6時間培養した。
得られた培養物にポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテル(TritonX−100)をその濃度が0.1%(v/v)になるように添加した。得られた混合物を氷上に10分間静置することにより、単球溶解物を調製した。単球溶解物を17800×gおよび4℃で5分間の遠心分離に供して上清を回収することにより、実験番号7−1〜7−9の試料を得た。
得られた試料と測定試薬〔イーバイオサイエンス(eBioscience)社製、商品名:Procarta Plex Human Inflammation Panel(20plex)〕を用い、炎症関連因子の発現量を測定した。TRPV4アゴニストを含有していない培地を用いたときの炎症関連因子の発現量と、TRPV4アゴニストを含有している培地を用いたときの炎症関連因子の発現量とを比較し、TRPV4の活性化によって発現量が減少した炎症関連因子を調べた。
(2)通常培養
実施例7(1)において、血清飢餓培地1、血清飢餓培地2、血清飢餓培地3、血清飢餓培地4、血清飢餓培地5、血清飢餓培地6、血清飢餓培地7、血清飢餓培地8または血清飢餓培地9を用いる代わりに通常培地1(実験番号8−1)、通常培地2(実験番号8−2)、通常培地3(実験番号8−3)、通常培地4(実験番号8−4)、通常培地5(実験番号8−5)、通常培地6(実験番号8−6)、通常培地7(実験番号8−7)、通常培地8(実験番号8−8)または通常培地9(対照;実験番号8−9)を用いたことを除き、実施例7(1)と同様の操作を行ない、TRPV4の活性化によって発現量が減少した炎症関連因子を調べた。
TRPV4の活性化によって発現量が減少した炎症関連因子を表12〜14に示す。
以上の結果から、TRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象として表12〜14に記載の炎症関連因子またはそのmRNAの発現量の減少を用いることができることがわかる。
以上説明したように、単球のTRPV4の活性化は、炎症誘導条件下での単球におけるIL−1β mRNAの発現を抑制することから、炎症を抑制させることがわかる。このように、単球のTRPV4の活性化と炎症の抑制とが関連していることから、被験試料による単球のTRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を測定し、被験試料の評価に当該生理学的事象を用いることにより、前記被験試料が有する抗炎症作用を評価することができることがわかる。また、単球のTRPV4を活性化させる物質は、TRPV4を活性化させて炎症を抑制することがわかる。したがって、本発明は、炎症予防用化粧料、炎症予防剤などの開発に好適に用いられることが期待される。
配列番号:1は、IL−1βフォワードプライマーの配列である。
配列番号:2は、IL−1βリバースプライマーの配列である。
配列番号:3は、GAPDHフォワードプライマーの配列である。
配列番号:4は、GAPDHリバースプライマーの配列である。

Claims (1)

  1. 被験試料が有する抗炎症作用を評価する被験試料の評価方法であって、被験試料と単球とを接触させ、単球のTRPV4の活性化によって引き起こされる生理学的事象を測定し、当該生理学的事象に基づき、前記被験試料が有する抗炎症作用を評価することを特徴とする被験試料の評価方法。
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