JP2020050641A - 心疾患治療用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】カテーテルによる細胞移植療法において、細胞の生着率を向上させ、改善した治療効果をもたらすことができる、心疾患治療用組成物を提供する。【解決手段】細胞移植療法に用いられる心疾患治療用組成物であって、カテーテルによって投与され、細胞と、徐放性担体に担持された生物活性物質とを含み、前記生物活性物質が、前記細胞の心筋及び/又は血管への分化能を増強させる機能、心臓の線維化組織の心筋及び/又は血管への分化能を増強させる機能ならびに心臓の心筋細胞及び/又は血管細胞の増殖能を増強させる機能から選ばれる少なくとも1つの機能を有する、組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞移植療法に用いられる心疾患治療用組成物に関する。
近年、心不全等の心疾患の治療として、心臓の左心室の内壁等の生体組織に細胞を移植して、血管新生、細胞分化等を図る治療が行われている。しかしながら、細胞のみを単独で移植した場合、細胞の生着が不十分であり、所望の治療効果が得られないという問題があった。
この問題を解決するため、細胞増殖(成長)因子を含有するヒドロゲルからなる細胞移植療法用材料を、細胞移植の際に適用する方法(特許文献1)、塩基性線維芽成長因子を含むヒドロゲルと心臓組織由来の多能性幹細胞とを含む、細胞移植療法に用いられる心疾患治療薬(特許文献2)が提案されている。
また、心臓治療においては、心臓由来の細胞外マトリックスを使用する組成物が提案されている(特許文献3、特許文献4)
特開2002−145797号公報 国際公開第2009/048166号 特表2013−536246号公報 特表2018−521018号公報
しかしながら、カテーテルによる細胞移植療法における細胞の生着率は依然として低く、十分な治療効果が得られていないのが現状である。本発明は、カテーテルによる細胞移植療法において、細胞の生着率を向上させ、改善した治療効果をもたらすことができる、心疾患治療用組成物を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)細胞移植療法に用いられる心疾患治療用組成物であって、
カテーテルによって投与され、
細胞と、徐放性担体に担持された生物活性物質とを含み、
前記生物活性物質が、前記細胞の心筋及び/又は血管への分化能を増強させる機能、心臓の線維化組織の心筋及び/又は血管への分化能を増強させる機能ならびに心臓の心筋細胞及び/又は血管細胞の増殖能を増強させる機能から選ばれる少なくとも1つの機能を有する、
組成物。
(2)前記細胞を含む第1の組成物と、前記徐放性担体に担持された生物活性物質を含む第2の組成物とを含む、(1)の心疾患治療用組成物。
(3)前記第1の組成物と前記第2の組成物を同時又は異なるタイミングで投与する、(2)の心疾患治療用組成物。
(4)前記第1の組成物を投与した後、前記第2の組成物を投与する、(3)の心疾患治療用組成物。
(5)前記第2の組成物を投与した後、前記第1の組成物を投与する、(3)の心疾患治療用組成物。
(6)前記細胞が、骨格筋芽細胞、骨髄単核細胞、間葉系幹細胞、内皮前駆細胞、心臓幹細胞、ES細胞、iPS細胞、心筋様細胞及び造血細胞からなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)〜(5)のいずれかの心疾患治療用組成物。
(7)前記生物活性物質が、細胞増殖(成長)因子、エクソソーム及びmiRNAからなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)〜(6)のいずれかの心疾患治療用組成物。
(8)前記生物活性物質が、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、間質細胞由来因子(SDF-1)、インスリン様成長因子(IGF-1)、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)及び線維芽細胞増殖因子10(FGF10)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)〜(6)のいずれかの心疾患治療用組成物。
(9)前記徐放性担体が、脱細胞化された生物由来組織、天然由来材料及び生体適合性の合成材料から選ばれる少なくとも1種である、(1)〜(8)のいずれかの心疾患治療用組成物。
(10)前記徐放性担体が、脱細胞化された心臓組織である、(1)〜(8)のいずれかの心疾患治療用組成物。
(11)前記徐放性担体が、ヒドロゲルの形態である、(1)〜(10)のいずれかの心疾患治療用組成物。
(12)前記徐放性担体が、逆熱応答性である、(1)〜(11)のいずれかの心疾患治療用組成物。
(13)前記カテーテルが、マルチルーメンカテーテルである、(1)〜(12)のいずれかの心疾患治療用組成物。
本発明によれば、カテーテルによる細胞移植療法において、細胞の生着率を向上させることができる心疾患治療用組成物が提供される。
本発明の組成物の投与に使用することができるマルチルーメンカテーテルの部分構造の外観斜視図である。 本発明の組成物の投与に使用することができるマルチルーメンカテーテルの部分構造の断面図である。
本発明は、細胞移植療法に用いられる心疾患治療用組成物に関する。本発明の組成物は、心臓の収縮及び拡張機能の向上が求められる心疾患の治療に適している。心疾患としては、心筋梗塞、狭心症、心筋外傷が挙げられる。細胞移植療法における移植部位としては、心臓の左心室、右心室、心房が挙げられる。本発明の組成物は、左心室内側への移植に適している。
<細胞>
本発明の組成物は、細胞を含む。細胞は、心疾患の細胞移植療法に用いることができるものであればよい。
細胞としては、体細胞(例えば、心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞)、幹細胞(例えば、筋芽細胞、心臓幹細胞等の組織幹細胞、胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞等の多能性幹細胞、間葉系幹細胞)が挙げられる。体細胞は、幹細胞、特にiPS細胞から分化させたものであってもよい。具体的な細胞としては、筋芽細胞(例えば、骨格筋芽細胞)、間葉系幹細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、胎盤、臍帯血由来のもの)、心筋細胞、線維芽細胞、心臓幹細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、上皮細胞(例えば、口腔粘膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、鼻粘膜上皮細胞)、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞)、肝細胞(例えば、肝実質細胞)、膵細胞(例えば、膵島細胞)、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞が挙げられる。
中でも、骨格筋芽細胞、骨髄単核細胞、間葉系幹細胞、内皮前駆細胞、心臓幹細胞、ES細胞、iPS細胞、心筋様細胞(線維芽細胞から、心筋誘導因子を遺伝子導入し、作製された心筋細胞と同様の性質を示す細胞)、造血細胞が好ましい。
骨格筋芽細胞としてはCD56陽性を示すもの、骨髄単核細胞としてはCD177陽性、CD34陽性を示すもの、間葉系幹細胞としてはCD105陽性示すもの、CD117陽性、CD45陰性を示すもの、内皮前駆細胞としてはCD34陽性、CD133陽性を示すもの、心臓幹細胞としてはc−kit陽性、CD45陰性を示すもの、ES細胞としてはOct4陽性、Nanong陽性、SSEA4陽性を示すもの、iPS細胞としては、Oct4陽性、Nanong陽性、SSEA4陽性を示すものが、それぞれ挙げられる。iPS細胞又はiPS細胞から心筋細胞への分化の途中段階にあり、CD82陽性、GFRA2陽性、PDGFRA陽性、KDRA陽性を示す細胞も好ましい。
細胞は、1種でも、2種以上の組み合わせでもよい。
<徐放性担体に担持された生物活性物質>
本発明の組成物は、徐放性担体に担持された生物活性物質を含む。
<<生物活性物質>>
本明細書において、生物活性物質とは、導入された生体内で生理活性を示す物質をいう。本発明における生物活物質は、細胞の心筋及び/又は血管への分化能を増強させる機能、心臓の線維化組織の心筋及び/又は血管への分化能を増強させる機能ならびに心臓の心筋細胞及び/又は血管細胞の増殖能を増強させる機能のいずれか1つの機能を少なくとも有するものであり、導入された生体内において当該機能の発揮を通じて生理活性を示し、ひいては生体内での細胞の生着を促すことができる。
細胞の心筋及び/又は血管への分化能を増強させる機能において、細胞は、本発明の組成物に含まれる細胞に対応する。心臓の線維化組織の心筋及び/又は血管への分化能を増強させる機能において、線維化組織は、心臓の梗塞部、線維芽細胞を含む。心臓の心筋細胞及び/又は血管細胞の増殖能を増強させる機能には、これらの細胞のアポトーシスを防ぐ機能も包含される。心筋細胞は、正常細胞及び冬眠心筋を含む。
このような生物活物質としては、細胞増殖(成長)因子、エクソソーム、miRNA、サイトカイン、ケモカイン、インターロイキン、生理活性タンパク質、心外膜由来パラクリン因子(例えば、低グリコシル化フォリスタチン様1(FSTL1))が挙げられる。
中でも、細胞増殖(成長)因子、エクソソーム、miRNAが好ましい。
細胞増殖(成長)因子としては、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、間質細胞由来因子(SDF-1)、インスリン様成長因子(IGF-1)、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、線維芽細胞増殖因子10(FGF10)が挙げられる。
エクソソームとしては、幹細胞由来エクソソーム(例えば、CPC由来エクソソーム、MSC由来エクソソーム)が挙げられる。エクソソームは、低酸素、酸化ストレス等の外的刺激を与えた細胞に由来するエクソソーム(stress-preconditioned exosome)であってもよく、遺伝子改変された細胞に由来するエクソソーム(Gene-modified cell-derived exosome)であってもよい。
miRNAとしては、miR−1、miR−133a、miR−126、miR−155が挙げられる。miRNAは、エクソソームに内包された形態であってもよい。
生物活性物質は、1種でも、2種以上の組み合わせでもよい。
<<徐放性担体>>
本発明における徐放性担体は、生物活性物質を担持することができ、生体環境に導入された後、担持した生物活性物質を徐放するものであればよい。生物活性物質は、分子間力、水素結合等の物理的作用により、徐放性担体に担持され得、生体内で徐放性担体が吸収・分解されるのに伴い、徐放され得る。生物活性物質が徐放されることで、細胞の生着を促す生理活性が持続的に示され、ひいては細胞の生着率を向上させることができる。
徐放性担体としては、脱細胞化された生物由来組織(細胞外マトリックス)、天然由来材料、生体適合性の合成材料が挙げられる。これらの徐放性担体は、導入された生体内で、細胞の生着環境を整える働きが期待できる。中でも、細胞外マトリックスが好ましい。
細胞外マトリックスとしては、心臓、腎臓、膀胱、軟骨等に由来する組織を脱細胞化したものが挙げられる。組織は、哺乳動物(例えば、ヒト、ブタ、ウシ、ヤギ、ラット)からのものであることができ、ヒトからのものであることが好ましい。中でも、心臓組織(例えば、心筋組織)由来の細胞外マトリックスが好ましく、特に、ヒトの心臓組織(例えば、心筋組織)由来の細胞外マトリックスが好ましい。
細胞外マトリックスは、心臓(例えば、心筋)、腎臓、膀胱、軟骨等の生物由来組織をホモジナイズすることで、抽出することができる。界面活性剤を有する処理液(例えば、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)溶液)による処理、又は超高静圧の印加によって、生物由来組織中の細胞を破壊し、破壊した細胞を除去することで、脱細胞化を行い、適宜、凍結乾燥、酵素による消化、可溶化等を行い、細胞外マトリックスを得てもよい。
細胞外マトリックスは、主に繊維状タンパク質、構造タンパク質、グリコサミノグリカン等の成分で構成され、以下のものを含む全ての型のコラーゲン:原繊維(I型、II型、III型、V型、XI型);facit(IX型、XII型、XIV型);短鎖(VIII型、X型)、基底膜(IV型)、及び他のもの(VI型、VII型、XIII型)、エラスチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、フィビュリン、カドヘリン、ラミニン、アグリン、エンタクチン、テネイシン、リンクタンパク質、プロテオグリカン、アグリカン、パールカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、デコリン、ビグリカン、セルグリシン、シンデカン、グリピカン、ルミカン、ケラトカン、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヒアルロン酸、キチン等を含み得る。個々の成分の比率は、脱細胞化する組織の構成に依存する。
細胞外マトリックスに含まれる成分は、0.5〜300kDaの分子量であることが好ましく、より好ましくは1〜200kDaである。
天然由来材料としては、ゼラチン、コラーゲン、デンプン、ペクチン、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、アルギン酸、フィブリン、マトリゲル、ケラチン及びこれらの誘導体が挙げられる。
生体適合性の合成材料としては、ポリ乳酸(PLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポロキサマーが挙げられる。
徐放性担体は、細胞外マトリックス、天然由来材料及び生体適合性の合成材料から選ばれる2種以上からなる複合材料であってもよい。例えば、PLGA粒子が細胞外マトリックスで被覆された材料、アルギン酸粒子が細胞外マトリックスで被覆された材料が挙げられる。
徐放性担体は、ヒドロゲルの形態であってもよい。例えば、生物活性物質を担持させる際に、徐放性担体をヒドロゲルの形態にしてもよい。
徐放性担体は、外部刺激に応答して、物理的及び/又は化学的特性の変化を示すものであってもよい。外部刺激としては、温度、pH、電場、光が挙げられ、中でも、温度、pHが好ましい。外部刺激は、導入された生体内の環境を含む。物理的及び/又は化学的特性の変化としては、粘度の上昇又は低下が挙げられ、中でも粘度の上昇が好ましい。
徐放性担体は、投与対象の生体内の環境と同様の条件下で、粘度の上昇を示すものが好ましい。このような徐放性担体を組成物に含有させることによって、カテーテル投与の際には、組成物を流動状態とすることができ、その後、投与対象の生体内の環境により組成物の粘度が上昇することで、投与された細胞や生物活性物質の漏出防止を図ることができる。
中でも、逆熱応答性を示す徐放性担体が好ましい。本明細書において、逆熱応答性とは、温度の上昇に伴い粘度の上昇を示す性質をいう。生体内の環境と同様の温度(例えば、体温(37℃)付近))で、例えば、液状から硬質ゲルの硬さまで粘度が変化するような逆熱応答性を示す徐放性担体を使用することで、カテーテル投与の際には、組成物を流動状態とすることができ、その後、投与対象の体温等により組成物の粘度が上昇することで、投与対象に形成された穿刺痕を封止することができ、生物活性物質の漏出防止を図ることができる。このような逆熱応答性を有する徐放性担体としては、細胞外マトリックス、コラーゲン、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー407)が挙げられる。細胞外マトリックスの逆熱応答性は、生物組織を脱細胞化した後、酵素による消化を行うことによって制御することができる。
徐放性担体は、1種でも、2種以上の組み合わせでもよい。
<<担持方法>>
生物活性物質を徐放性担体に担持させる方法としては、生物活性物質と徐放性担体を液体(例えば、水、水溶液等の溶液)中で混合する方法が挙げられる。本明細書において、溶液は、懸濁液を含む。
細胞外マトリックスを徐放性担体として使用する場合、粉末形態の細胞外マトリックスを調製し、これを生物活性物質の溶液(例えば、水溶液)と混合する方法が挙げられる。粉末形態の細胞外マトリックスは、凍結乾燥させた細胞外マトリックスを粉砕することにより得ることができる。粉末形態の細胞外マトリックスは、多孔質であることができ、孔に生物活性物質を担持させることができる。
<その他の成分>
本発明の組成物には、細胞及び徐放性担体に担持された生物活性物質に加えて、造影剤、pH調整剤、薬剤(例えば、プロスタサイクリン作動薬)、水、緩衝液、生理食塩水等の任意成分を含むことができる。
<組成物>
本発明の組成物において、細胞の量は、使用する細胞の種類、心疾患の種類、程度、患者の年齢等によって変動させることができ、例えば、1×10〜1×10個/患者が挙げられる。本発明の組成物によれば、細胞の生着率が向上することが見込めるので、従来よりも少ない量としてもよい。
生物活性物質の量は、使用する細胞の種類によって変動させることができ、例えば、細胞1×10個当たり、0.1〜1000μgが挙げられる。本発明の組成物によれば、生物活性物質を生体内に止まらせ、機能を発揮させることが見込めるので、従来よりも少ない量としてもよい。
徐放性担体の量は、生物活性物質を担持できる量であれば、特に限定されない。細胞外マトリックスを徐放性担体として使用する場合、細胞の生着環境を整える点から、組成物中、0.1〜90質量%が挙げられる。
本発明の組成物は、細胞、徐放性担体に担持された生物活性物質、任意成分を混合することによって得ることができる。あるいは、細胞、徐放性担体に担持された生物活性物質、任意成分のいずれか1つ以上を含む組成物を複数調製して、各組成物をカテーテルにより投与することを通して、細胞、徐放性担体に担持された生物活性物質、任意成分の組み合わせとしてもよい。徐放性担体に担持された生物活性物質は溶液(例えば、水溶液)の形態であってもよい。
例えば、本発明の組成物は、細胞を含む第1の組成物と、徐放性担体に担持された生物活性物質を含む第2の組成物の組み合わせであってもよい。第1の組成物、第2の組成物は、それぞれ任意成分を含むことができる。あるいは、任意成分を含む組成物をさらに調製し、カテーテルにより投与することを通して、組み合わせてもよい。
第1の組成物は、細胞を水、生理食塩水、緩衝液等の液体で希釈したものが挙げられる。第2の組成物は、溶液(例えば、水溶液)の形態にある徐放性担体に担持された生物活性物質が挙げられる。
第1の組成物と第2の組成物は、同時又は異なるタイミングで投与することができる。異なるタイミングでの投与の場合、第1の組成物を投与した後、第2の組成物を投与してもよく、あるいは第2の組成物を投与した後、第1の組成物を投与してもよく、第1の組成物と第2の組成物を交互に投与してもよい。先に投与を開始した組成物の投与終了の前に、次に投与する組成物の投与を開始してもよいが、先に投与を開始した組成物の投与終了後に、次に投与する組成物の投与を開始することが好ましい。投与の先・後は、投与の開始の先・後で決まるものとする。
細胞の漏出を防ぐ点から、第1の組成物を投与した後に、第2の組成物を投与することが好ましい。中でも、第2の組成物において逆熱応答性の徐放性担体を用いると、第1の組成物の投与した後に投与される第2の組成物の粘度が体温により上昇して、心臓組織への穿刺痕を封止することができるので、細胞の漏出を防ぐ点から、特に好ましい。
細胞が生体組織に生着し易い環境を予め整える点から、第2の組成物を投与した後に、第1の組成物を投与することが好ましい。中でも、第2の組成物において逆熱応答性の徐放性担体を用いると、第2の組成物の粘度が体温により上昇して、生物活性物質が生体内に止まりやすくなるので、生体組織に生着し易い環境を整える点から、特に好ましい。
本発明の組成物は、カテーテル投与可能な粘度に調整して、カテーテルを投与することができる。粘度は、カテーテルの内径に応じて変動させることができ、カテーテル投与時のハンドリング性及び穿刺痕からの細胞漏出防止の点から、例えば、1〜20,000mPa・sとすることができ、好ましくは1〜3,000mPa・sであり、より好ましくは1〜100mPa・sである。細胞、徐放性担体に担持された生物活性物質、任意成分のいずれか1つ以上を含む組成物を複数調製して、各組成物をカテーテルにより投与する場合、各組成物について、上記の粘度の例示及び好ましい範囲を適用することができる。よって、第1の組成物、第2の組成物についても同様に上記の例示及び好ましい範囲を適用することができるが、一般に、第1の組成物の方が、第2の組成物よりも高い粘度を有する。
細胞漏出防止の点から、投与後に組成物の粘度が上昇し、例えば流動性を失った状態となり、カテーテル内を注入方向に対して逆流することが抑制されることが好ましい。好ましくは、粘度が上昇し、例えば流動性を失った状態となるまでの時間は、投与後、数秒〜数10分であることが好ましく、より好ましくは10秒〜5分である。細胞、徐放性担体に担持された生物活性物質、任意成分のいずれか1つ以上を含む組成物を複数調製して、各組成物をカテーテルにより投与する場合、各組成物について、上記の時間の例示及び好ましい範囲を適用することができる。よって、第1の組成物、第2の組成物についても同様に上記の時間の例示及び好ましい範囲を適用することができる。
<カテーテル>
本発明の組成物はカテーテルによって投与される。カテーテルは、心疾患の細胞移植療法に用いることができるものであればよい。例えば、カテーテルを、大腿動脈から被検者の体内に挿入し、大動脈及び大動脈弁を通じて左心室内まで延在させることができる。カテーテルの外径は、例えば、20Fr以下とすることができ、3〜12Frが好ましく、4〜8Frが特に好ましい。
第1の組成物と第2の組成物の組み合わせの場合、複数のルーメンを備えるマルチルーメンカテーテルを用いることができる。第1の組成物を複数のルーメンのいくつかを通して投与し、第2の組成物を複数のルーメンの他のいくつかを通して投与することができる。例えば、第1のルーメンと第2のルーメンを備えるダブルルーメンカテーテルを用いる場合、第1の組成物を第1のルーメンを通して投与し、第2の組成物を第2のルーメンを通して投与することができる。
マルチルーメンカテーテルの複数のルーメンは、共通の開口を有していてもよく、異なる開口を有していてもよい。異なる開口を有している場合、複数のルーメンのそれぞれが開口を有していてもよく、あるいは複数のルーメンのいくつかが共通する開口を有していてもよい。第1の組成物と第2の組成物を異なる開口を通して投与することが好ましい。異なる開口を備えた穿刺部を有するマルチルーメンカテーテルを用いることにより、1つの穿刺痕で第1の組成物と第2の組成物とを異なる開口から別々に投与することができる。
このような投与は、例えば、遠位端側に図1及び2に示す部分構造を有するマルチルーメンカテーテルを用いて行うことができる。以下、図1及び2を例にとって、マルチルーメンカテーテルを説明するが、本発明の組成物は、このマルチルーメンカテーテルに限られず、種々のカテーテルにより投与することができる。
マルチルーメンカテーテル1は、径方向の内側に位置する内側ルーメン31と、径方向の外側に位置する外側ルーメン32(図中、4つ。)を備えている。マルチルーメンカテーテルの側面11は遠位端8に向かうに連れて縮径するテーパ面12を備えている。内側ルーメン31は先端面20に開口33を有し、外側ルーメン32はテーパ面12に開口34を有する。このように、内側ルーメン31の開口33は、外側ルーメン32の開口34よりも軸方向の遠位端8側に位置する。
このマルチルーメンカテーテル1の遠位端8を生体組織に穿刺した状態で、内側ルーメン31の開口33から第1の組成物を投与し、外側ルーメン32の開口34から第2の組成物を投与すると、生体組織の内壁近辺に第2の組成物が供給され、それよりも生体組織の奥側に第1の組成物が供給されることになる。そのため、マルチルーメンカテーテル1を生体組織の内壁から抜去した後に、第1の組成物に含まれる細胞が穿刺痕から漏出することを、第2の組成物により抑制でき、細胞の生体組織への生着を促すことができる。中でも、第1の組成物を投与した後に、第2の組成物を投与し、第2の組成物において逆熱応答性の徐放性担体を用いた場合、第2の組成物の粘度が体温により上昇して、心臓組織に形成された穿刺痕を封止することができるので、特に好ましい。
<参考例>
ブタの心筋を脱細胞化し、凍結乾燥・粉砕した粉末のバイアル(20mLバイアル中粉末100mg)を−20℃で冷凍保管した。冷凍保管から取り出した直後のバイアルに注射用水(滅菌水)6mLを添加し、1500rpmに設定したボルテックスミキサーによって60秒間振とうし、懸濁液とした。得られた懸濁液を10mLシリンジに取り、そのうち2mLを用いて、振動式粘度計(株式会社エー・アンド・デイ社製SV−1A)により粘度を測定した(25℃)。粘度は6.64mPa・sであり、カテーテル投与可能であることが確認できた。
本開示は、細胞移植療法に用いられる心疾患治療用組成物に関する。
1 カテーテル
8 遠位端
11 側面
12 テーパ面
20 先端面
31 内側ルーメン
32 外側ルーメン
33 内側ルーメンの開口
34 外側ルーメンの開口

Claims (13)

  1. 細胞移植療法に用いられる心疾患治療用組成物であって、
    カテーテルによって投与され、
    細胞と、徐放性担体に担持された生物活性物質とを含み、
    前記生物活性物質が、前記細胞の心筋及び/又は血管への分化能を増強させる機能、心臓の線維化組織の心筋及び/又は血管への分化能を増強させる機能ならびに心臓の心筋細胞及び/又は血管細胞の増殖能を増強させる機能から選ばれる少なくとも1つの機能を有する、
    組成物。
  2. 前記細胞を含む第1の組成物と、前記徐放性担体に担持された前記生物活性物質を含む第2の組成物とを含む、請求項1記載の心疾患治療用組成物。
  3. 前記第1の組成物と前記第2の組成物を同時又は異なるタイミングで投与する、請求項2記載の心疾患治療用組成物。
  4. 前記第1の組成物を投与した後、前記第2の組成物を投与する、請求項3記載の心疾患治療用組成物。
  5. 前記第2の組成物を投与した後、前記第1の組成物を投与する、請求項3記載の心疾患治療用組成物。
  6. 前記細胞が、骨格筋芽細胞、骨髄単核細胞、間葉系幹細胞、内皮前駆細胞、心臓幹細胞、ES細胞、iPS細胞、心筋様細胞及び造血細胞からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の心疾患治療用組成物。
  7. 前記生物活性物質が、細胞増殖(成長)因子、エクソソーム及びmiRNAからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の心疾患治療用組成物。
  8. 前記生物活性物質が、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、間質細胞由来因子(SDF-1)、インスリン様成長因子(IGF-1)、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)及び線維芽細胞増殖因子10(FGF10)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の心疾患治療用組成物。
  9. 前記徐放性担体が、脱細胞化された生物由来組織、天然由来材料及び生体適合性の合成材料から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の心疾患治療用組成物。
  10. 前記徐放性担体が、脱細胞化された心臓組織である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の心疾患治療用組成物。
  11. 前記徐放性担体が、ヒドロゲルの形態である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の心疾患治療用組成物。
  12. 前記徐放性担体が、逆熱応答性である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の心疾患治療用組成物。
  13. 前記カテーテルが、マルチルーメンカテーテルである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の心疾患治療用組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023136313A1 (ja) * 2022-01-14 2023-07-20 国立大学法人大阪大学 肝機能障害を処置するための組成物

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