JP2020027038A - 誘導結合プラズマ質量分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高濃度の酸マトリクスを含む試料溶液を、誘導結合プラズマを用いた質量分析方法によって高感度、高精度に分析することを可能にする誘導結合プラズマ質量分析方法を提供する。【解決手段】誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて、酸濃度が1容量%以上の酸マトリクスを含む試料溶液の分析を行う誘導結合プラズマ質量分析方法であって、前記試料溶液をチューニング液として導入し、キャリアガス流量またはメイクアップガス流量を調節する第1チューニング工程と、集束レンズの焦点を調整する第2チューニング工程と、を有することを特徴とする。【選択図】図3

Description

この発明は、誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて、高濃度の酸マトリクスを含む試料溶液を高精度に分析することを可能にする誘導結合プラズマ質量分析方法に関するものである。
誘導結合プラズマを用いた質量分析方法(以下、ICP−MSと称することがある)は、質量分析部に導入するイオン化源として誘導結合プラズマを用いたものであり、現在知られている元素の分析方法の中でも、最も高感度に定量、定性分析が可能な分析方法の1つである。
ICP−MSは、アルゴンなどのキャリアガス中に試料溶液を噴霧して試料を含むミストを生成し、プラズマ装置によって構成成分を熱励起によりイオン化する。そして、イオン化された分析対象成分を含む構成成分を、円錐状の金属先端に細孔を有するサンプラーによって、真空状態の質量分析部に導入する。質量分析部は、集束レンズ、二重収束型質量分離部や四重極フィルターなどの質量分離装置、および検出器を備え、電気量として質量数に応じたイオンを計測する。この電気量と試料の濃度との関係より、試料溶液中の目的成分の定量を行う(例えば、特許文献1を参照)。
例えば、半導体材料の洗浄や高純度金属材料の分析には、高純度の酸が用いられる。この高純度酸中に極微量の金属不純物であってもその分析に大きく影響を与えるため、これら極微量の金属不純物を分析する必要がある。このためICP−MSを用いて、高濃度の酸マトリクス(共存主要元素)を含む試料溶液を分析する必要がある。
こうした高濃度の酸マトリクス(共存主要元素)を含む試料溶液をICP−MS装置に導入した場合、検出感度が大きく低下し、試料溶液を高精度に分析することが困難であった。ICP−MSに高濃度の酸マトリックスを導入すると、スペクトル干渉及び、非スペクトル干渉の影響を受ける。一般に、酸濃度が高くなると、粘度が高くなり、エアロゾルの粒子径や輸送効率が変化し、感度が低下すると言われている。従来は、標準添加法、マトリックスマッチング法及び、内部標準法等にて補正して測定していた。しかしながら、高濃度酸マトリックスによる感度の低下の影響は、空間電荷効果、冷却効果(クーリングエフェクト)、最大イオン密度領域のシフトの影響が原因として挙げられる。
特許第4903515号公報
しかしながら、高濃度の酸マトリクスを含む試料溶液による検出感度の低下は、酸の種類によって検出感度が低下する傾向が異なる現象がみられるので、上述した各検量線法によって検出感度の低下を補正して測定することは可能だが、大幅に感度が低下するため、高感度、高精度に分析を行うことは難しいという課題があった。
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、高濃度の酸マトリクスを含む試料溶液を、誘導結合プラズマを用いた質量分析方法によって高感度、高精度に分析することを可能にする誘導結合プラズマ質量分析方法を提供することを目的とする。
従来、誘導結合プラズマ質量分析装置は、装置メーカーにて作製したチューニング溶液を用いて、チューニングを行っていたが、本発明者は、分析したい酸濃度のチューニング液に、分析対象元素およびマトリクスを添加した溶液を用いてチューニングを行うことで、高感度、高精度に分析できることを見出した。
上記の課題を解決するために、本発明の誘導結合プラズマ質量分析方法は、誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて、酸濃度が1容量%以上の酸マトリクスを含む試料溶液の分析を行う誘導結合プラズマ質量分析方法であって、前記試料溶液をチューニング液として導入し、キャリアガス流量またはメイクアップガス流量を調節する第1チューニング工程と、集束レンズの焦点を調整する第2チューニング工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、酸濃度が1容量%以上の酸マトリクスを含む試料溶液をチューニング液として導入し、キャリアガス流量またはメイクアップガス流量を調節する第1チューニング工程と、集束レンズの焦点を調整する第2チューニング工程とを行うことによって、酸マトリクスに含まれる共存元素酸化物の生成率を所定範囲内にして、分析対象元素の検出感度が最大の状態で酸マトリクスを含む試料溶液を分析することができる。これにより、高濃度の酸マトリクスを含む試料溶液であっても、高感度、高精度に分析対象元素を分析することが可能になる。
また、本発明では、前記酸マトリクスに含まれる共存元素酸化物の生成率が0.7%以上、1.2%以下の範囲内になるように、前記第1チューニング工程と前記第2チューニング工程のうち少なくともいずれか一方を行ってもよい。
また、本発明では、前記試料溶液に含まれる分析目的元素の検出感度が最大になるように、前記第1チューニング工程と前記第2チューニング工程のうち少なくともいずれか一方を行ってもよい。
また、本発明では、前記酸マトリクスを構成する酸は、フッ化水素酸、硝酸、塩酸、過塩素酸、硫酸、リン酸のいずれかを含んでいてもよい。
本発明の誘導結合プラズマ質量分析方法によれば、高濃度の酸マトリクスを含む試料溶液を、誘導結合プラズマを用いた質量分析方法によって高感度、高精度に分析することが可能になる。
本発明の微量元素分析方法に用いることが可能な誘導結合プラズマ質量分析装置の一例を示す構成図である。 誘導結合プラズマ質量分析装置のプラズマトーチおよびサンプラーを示す断面図である。 本発明の誘導結合プラズマ質量分析方法を段階的に示したフローチャートである。 本発明の検証例を示すグラフである。 本発明の検証例を示すグラフである。 本発明の検証例を示すグラフである。 本発明の検証例を示すグラフである。
(誘導結合プラズマ質量分析装置)
まず最初に、本発明の誘導結合プラズマ質量分析方法に用いることが可能な誘導結合プラズマ質量分析装置の一例について説明する。
図1は、誘導結合プラズマ質量分析装置の一例を示す構成図である。
誘導結合プラズマ質量分析装置10は、試料溶液導入部11と、ICP生成部12と、質量分離部13と、ICP生成部12および質量分離部13の間に配されたサンプラー14と、を備えている。
試料溶液導入部11は、試料溶液テーブル21、給液ポンプ22、噴霧器23、スプレーチャンバー24、キャリアガス供給部25、添加ガス供給部26、およびこれらを接続する複数の配管27から構成されている。
試料溶液テーブル21は、容器に収容された複数種類の試料溶液Rを保持可能であり、任意の試料溶液Rに対して吸引管28を導入する。本実施形態では、試料溶液Rとして、例えば、高濃度の酸マトリクスを含む試料溶液が用いられる。
給液ポンプ22は、試料溶液Rに挿入された吸引管28を介して試料溶液Rを吸引し、噴霧器23に供給する。給液ポンプ22としては、ペリスタルティックポンプ、シリンジポンプなどを用いることができる。
噴霧器23には、試料溶液Rと、この試料溶液Rのエアロゾル生成のためのキャリアガスがキャリアガス供給部25から供給される。キャリアガスとしては、不活性ガスが好ましく用いられ、本実施形態では、アルゴンガスが用いられる。キャリアガスは、キャリアガス供給部25の流出側に設けられたキャリアガスの流量調節器45によって、その流量が任意に調節される。
噴霧器23は、試料溶液Rをエアロゾル化する。このエアロゾル化された試料溶液R(以下、試料ミストと称することがある)は、キャリアガス流によって運ばれ、ICP生成部12に導入される。なお、ICP生成部12に導入される試料ミストおよびキャリアガスの混合体をメイクアップガスと称する。
噴霧器23は、その先端部分が、スプレーチャンバー24内に露出するように配置される。スプレーチャンバー24は、試料ミストの液滴が巡回することのできる筒状壁を備える。試料ミストは、キャリアガス流とともにメイクアップガスとしてICP生成部12に供給される。一方、比較的大径の液滴は、スプレーチャンバー24の底部に接続された排液ドレン29から排出される。
スプレーチャンバー24とICP生成部12との間には、試料ミストに対して添加ガスを導入する添加ガス供給部26が接続されることが好ましい。添加ガス供給部26から供給される添加ガスは、例えば、アルゴンガスが用いられる。
ICP生成部12に導入されるメイクアップガスは、ICP生成部12の流入側に設けられたメイクアップガスの流量調節器46によって、その流量が任意に調節される。
ICP生成部12は、プラズマトーチ31、およびプラズマガス供給部39から構成される。
図2は、プラズマトーチおよびサンプラーの一例を示す断面図である。プラズマトーチ31は、一端が開放面32aとされたプラズマ発生筒32、プラズマ発生筒32に接続される試料ミスト導入部33、およびプラズマガス導入部34、および高周波誘導コイル35を備えている。なお、プラズマ発生筒32の外周には、このプラズマ発生筒32を冷却するための冷却ガスを流す冷却ガス流路(図示略)が更に形成されていてもよい。
プラズマ発生筒32は円筒形の部材であり、その内部がアルゴンと試料溶液を構成する元素のプラズマを発生させるプラズマ発生室36とされる。
試料ミスト導入部33は、スプレーチャンバー24から供給される試料ミストをプラズマ発生室36に導入する。
プラズマガス導入部34は、一端がプラズマガス供給部39(図1参照)に接続され、このプラズマガス導入部34からプラズマ発生室36にプラズマガスが導入される。プラズマガスとしては、例えば、アルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスが用いられる。本実施形態では、プラズマガスとしてアルゴンガスを用いている。
高周波誘導コイル35は、プラズマ発生筒32の外周面に沿って巻回された導体であり、プラズマ発生室36にプラズマ2を発生するためのエネルギーである高周波電流が印加される。プラズマ発生室36にプラズマガスが導入された状態で高周波誘導コイル35に高周波電流を印加することによって、プラズマ2を点火状態にすることができる。
その後、試料溶液Rの分析のために、試料ミスト導入部33から試料ミストが導入される。これによって、試料溶液を構成する各元素は、プラズマ2内でイオン化される。プラズマ2はプラズマ発生筒32の開放面32aからサンプラー14に向けて放出される。これらはプラズマトーチ移動装置43に支持されている。
プラズマトーチ移動装置43は、ユニット化された高周波誘導コイル35、プラズマ発生筒32を水平方向に移動させる。これによって、プラズマ発生筒32の開放面32aと、サンプラー14を構成するサンプリングコーン41との間隔を接近させたり離間させたりすることで、サンプリング深さを任意の深さに可変できる。
サンプリング深さを調節することにより、サンプラー14を通過するイオン数を変更することができる。また、サンプリング深さを調節することにより、プラズマの温度領域を制御することが出来る。すなわち、測定対象とする元素のイオン化ポテンシャルに合致したサンプリング深さを設定することにより、最適なイオン化効率を得る温度領域を選択して分析することができる。
サンプラー14は、サンプリングコーン41と、スキマコーン42とから構成されている。サンプリングコーン41は円錐状部材であり、円錐の先端部の位置に開口41aが形成されている。スキマコーン42は、サンプリングコーン41よりも小径の円錐状部材であり、その一部はサンプリングコーン41と重なるように配置されている。スキマコーン42には、円錐の先端部の位置に、サンプリングコーン41の開口41aと同軸上で重なるように開口42aが形成されている。
再び図1を参照して、質量分離部13は、集束レンズ(エクストラクションレンズ)51、質量分離装置52、および検出装置53から構成されている。
集束レンズ51は、サンプラー14を透過したイオンを質量分離装置52に向けて集束させる。集束レンズ51としては、イオンレンズが用いられる。集束レンズ51は、ファーストイオンレンズ51aと、セカンドイオンレンズ51bとから構成されている。なお、集束レンズ51は、必ずしも2つのイオンレンズから構成されている必要は無く、1つ、または3つ以上のイオンレンズから構成されていても良い。
ファーストイオンレンズ51aは、質量分離部13に流入するイオン流の流入側に配され、ファーストイオンレンズ51aの事前調整(チューニング)によって、イオンの集束位置がプラス方向(質量分離装置52に向かう方向)に調節される。また、セカンドイオンレンズ51bは、ファーストイオンレンズ51aの後段側に配され、セカンドイオンレンズ51bの事前調整(チューニング)によって、イオンの集束位置がマイナス方向(質量分離装置52から遠ざかる方向)に調節される。
これらファーストイオンレンズ51aおよびセカンドイオンレンズ51bを含む集束レンズ51は、集束レンズ調節機構55によって印加電圧を可変させ、イオンの集束位置(焦点)を調整することができる。
質量分離装置52は、集束レンズ51を介して導入されたイオンを質量電荷比に応じて分離する。質量分離装置52としては、四重極型分離装置や、磁場偏向型分離装置、イオントラップ型分離装置などを用いることができる。このうち、四重極型分離装置は、イオンを4本の電極内に通し、それぞれの電極に高周波電流を印加することによってイオンに摂動を加え、特定のイオンだけを透過させる。イオンが4本の電極内を透過する際に、それぞれの電極の電圧値を変化させることによって、通過可能なイオンの質量電荷比が変化し、マススペクトルを得ることができる。本実施形態では、質量分離装置52として、四重極型分離装置を用いている。
検出装置53は、質量分離装置52において質量電荷比ごとに分離されたイオンを検出する。検出装置53としては、例えば、電子増倍管、マイクロチャンネルプレートなどを用いることができる。こうした検出装置は、質量分離装置52を透過したイオンを増感させて検出する。
なお、サンプラー14から質量分離部13までは、真空ポンプ(図示略)によって減圧環境にする。例えば、大気圧環境にあるICP生成部12から、真空度が1×10−6mbar程度の検出装置53に向かって、圧力が漸減していくように構成する。
(誘導結合プラズマ質量分析方法)
以上のような構成の誘導結合プラズマ質量分析装置を用いた、本発明の誘導結合プラズマ質量分析方法を、図1―3を参照して説明する。
図3は、本発明の誘導結合プラズマ質量分析方法を段階的に示したフローチャートである。
本発明の誘導結合プラズマ質量分析方法は、後述する分析過程において分析目的元素の検出感度を最大限に高めるための、誘導結合プラズマ質量分析装置の事前調整(最適化)手順であるチューニング過程S01と、実際に分析目的元素を含む試料溶液を分析(測定)する手順である分析過程S02と、を有する。
本発明の誘導結合プラズマ質量分析方法に好適な試料溶液としては、高濃度の酸マトリクス(共存主要元素)を含むものが挙げられる。例えば、極微量の金属不純物が特性に影響を与える半導体材料や高純度金属材料などを高濃度の酸で処理した、高濃度の酸マトリクス(共存主要元素)を含む試料溶液が挙げられる。
酸マトリクスを構成する高濃度の酸としては、イオン化ポテンシャルが高い元素の無機酸、即ちイオン化されにくい元素の無機酸が挙げられる。例えば、フッ化水素酸、硝酸、塩酸、過塩素酸、硫酸、リン酸のいずれかを含む無機酸である。ここで例示したフッ化水素酸、硝酸、塩酸、過塩素酸は、例えばリン酸や硫酸などと比較してイオン化されにくい。
誘導結合プラズマ質量分析において、イオン化されにくい元素の無機酸がイオン化されると、プラズマのエネルギーが消費され、これによりプラズマの温度が低下して、分析目的元素に対する検出感度が低下する。更に、イオン化されにくい元素の無機酸によって最大イオン密度がゾーン内でシフトし、分析目的元素に対する検出感度が低下する。
このため、まず、チューニング過程S01によって、分析過程S02での分析目的元素の検出感度を最大限に高めるための誘導結合プラズマ質量分析装置10のチューニングを行う。
チューニング過程S01では、誘導結合プラズマ質量分析装置10に流すチューニング溶液として、分析過程S02で用いる高濃度、例えば酸濃度が1容量%以上の酸マトリクスを含む試料溶液を用いる。本実施形態では、試料溶液として、分析目的元素の例としてコバルト(Co)を20容量%の硝酸溶液性のマトリクスに添加した。さらに、酸化物を調整するセリウム(Ce)を添加した溶液を用いた。
まず最初に、上述した試料溶液と同等の成分のチューニング溶液を調整する(チューニング溶液調整工程S11)。チューニング溶液調整工程S11では、例えば、CoおよびCeを10ppbの濃度で含む20容量%の硝酸溶液をチューニング溶液として調整する。
次に、このチューニング溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置10の試料溶液テーブル21に載置し、吸引管28から吸い上げる(チューニング溶液導入工程S12)。
そして、吸い上げたチューニング溶液を噴霧器23から噴射して、スプレーチャンバー24内に試料ミストを形成するとともに、キャリアガス供給部25からキャリアガス、例えばアルゴンガス(Ar)を用いる。この時のArガスの流量をキャリアガス流量(L/分)とする。
そして、プラズマガス導入部34からプラズマトーチ31に対してプラズマガスを供給するとともに、プラズマトーチ31の高周波誘導コイル35に高周波電流を印加する。これによって、プラズマトーチ31のプラズマ発生室36内にプラズマが発生する。
そして、キャリアガスによって運ばれるチューニング溶液のミストが、プラズマトーチ31によって形成されたプラズマに晒され、チューニング溶液中の成分元素がイオン化される。なお、キャリアガス(チューニング溶液のミスト)やメイクアップガス流量の流量単位は(L/分)としている。
プラズマ2によってイオン化された元素は、集束レンズ51によって集束された後、質量分離装置52に導入される。質量分離装置52では、イオンを質量電荷比に応じて分離する。例えば、四重極型分離装置では、それぞれの電極に高周波電流を印加することによってイオンに摂動を加え、特定のイオンだけを透過させる。この時、それぞれの電極の電圧値を変化させることによって、通過可能なイオンの質量電荷比が変化する。
質量分離装置52によって質量電荷比ごとに分離されたイオンは、検出装置53に導入される。検出装置53は、イオンを増感させて検出する。これによって、イオンごとのマススペクトルが得られる。
こうしたチューニング溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置10内に流す間、試料溶液と同等の成分のチューニング溶液の分析目的元素であるコバルト(Co)および酸化物を調整する元素であるセリウム(Ce)と、その酸化物(CeO)をモニタリングする。
具体的には、コバルト(Co)の検出感度と、試料溶液に含まれるセリウム(Ce)に対するセリウム酸化物(CeO)の生成率(%:CeO/Ce)をモニタリングする。
そして、まずキャリアガス流量またはメイクアップガス流量の最適値を設定する(第1チューニング工程S13)。この第1チューニング工程S13では、キャリアガスの流量調節器45を操作してキャリアガス流量を連続的または段階的に変化させるか、あるいは、メイクアップガスの流量調節器46を操作してメイクアップガス流量を連続的または段階的に変化させて、CeOの生成率が0.7%以上、1.2%以下の範囲内になるように調整する。
次に、CeOの生成率を0.7%以上、1.2%以下の範囲内に保ちつつ、キャリアガス流量またはメイクアップガス流量を変化させて、コバルト(Co)の検出感度が最大になるように調整する。
こうした第1チューニング工程S13によって、高濃度の酸マトリクス(例えば硝酸)を含む試料溶液中の分析目的元素(例えばCo)を高感度、高精度に分析することが可能な、キャリアガス流量またはメイクアップガス流量の最適値を設定することができる。
続いて、集束レンズ51を構成するファーストイオンレンズ51aとセカンドイオンレンズ51bを最適状態に設定する(第2チューニング工程S14)。この第2チューニング工程S14では、集束レンズ調節機構55を操作してファーストイオンレンズ51aとセカンドイオンレンズ51bに加える印加電圧を変化させることでイオンの焦点位置を連続的または段階的に変化させて、CeOの生成率が0.7%以上、1.2%以下の範囲内になるように調整する。
次に、CeOの生成率を0.7%以上、1.2%以下の範囲内に保ちつつ、ファーストイオンレンズ51aとセカンドイオンレンズ51bによるイオンの焦点位置を変化させて、コバルト(Co)の検出感度が最大になるように調整する。
こうした第2チューニング工程S14によって、高濃度の酸マトリクス(例えば硝酸)を含む試料溶液中の分析目的元素(例えばCo)を高感度、高精度に分析することが可能な、集束レンズ51の最適焦点位置を設定することができる。
以上のような第1チューニング工程S13および第2チューニング工程S14を含むチューニング過程S01を行うことで、高濃度の酸マトリクス(例えばCeO)を含む試料溶液中の分析目的元素(例えばCo)を高感度、高精度に分析することを可能にする、キャリアガス流量またはメイクアップガス流量の最適値と、集束レンズ51の最適焦点位置とを設定できる。
次に、上述したチューニング過程S01によって設定されたキャリアガス流量またはメイクアップガス流量でキャリアガスまたはメイクアップガスを流し、チューニング過程S01によって設定された集束レンズ51の最適焦点位置でイオンを集束させて、試料溶液Rの分析を行う(分析過程S02)。
分析過程S02では、高濃度、例えば酸濃度が1容量%以上の酸マトリクスを含む試料溶液を試料溶液テーブル21に載置し、吸引管28から吸い上げ、噴霧器23から噴射して、スプレーチャンバー24内に試料ミストを形成する。キャリアガス供給部25から供給されるキャリアガス、例えばアルゴンガス(Ar)は、予め第1チューニング工程S13で設定された流量にされている。
そして、プラズマガス導入部34からプラズマトーチ31に対してプラズマガスを供給しつつ、プラズマトーチ31の高周波誘導コイル35に高周波電流を印加する。これによって、プラズマトーチ31のプラズマ発生室36内に試料溶液Rの成分は、プラズマ2によってイオン化される。
そして、キャリアガスによって運ばれるチューニング溶液のミストが、プラズマトーチ31によって形成されたプラズマに晒され、チューニング溶液中の元素がイオン化される。この時のキャリアガス(チューニング溶液のミスト)とメイクアップガス流量の合計流量は、予め第1チューニング工程S13で設定された流量にされている。
プラズマ2によってイオン化された元素(イオン)は、集束レンズ51によって集束された後、質量分離装置52に導入される。この時、集束レンズ51によるイオンの集束位置は、予め第1チューニング工程S14で設定された位置にされている。そして、質量分離装置52でイオンが質量電荷比に応じて分離され、検出装置53に導入される。そして、検出装置53で、イオンごとのマススペクトルが得られる。
以上のように、本発明の誘導結合プラズマ質量分析方法によれば、高濃度、例えば酸濃度が1容量%以上の酸マトリクスを含む試料溶液をチューニング液として導入し、キャリアガス流量またはメイクアップガス流量を調節する第1チューニング工程と、集束レンズの焦点を調整する第2チューニング工程とを行うことによって、酸マトリクスに含まれる共存元素酸化物の生成率を所定範囲、例えば0.7%以上、1.2%以下の範囲内にして、分析対象元素の検出感度が最大の状態で酸マトリクスを含む試料溶液を分析することができる。これにより、高濃度の酸マトリクスを含む試料溶液であっても、高感度、高精度に分析対象元素を分析することが可能になる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
以下、本発明の検証例について説明する。
(検証例1)
プラズマ誘導コイルの電力:1600W、
サンプリング深さ8mm
キャリアガス流量0.7L/分
ファーストイオンレンズ印加電圧:+5.5V
セカンドイオンレンズ印加電圧:−100V
試料溶液:Co、Ce含有20容量%硝酸
上述した条件で、Co、CeOの回収率およびCoの検出感度に対して、メイクアップガスの流量が及ぼす影響を測定した。この結果を図4に示す。
図4に示す結果によれば、メイクアップガスの流量が0.35〜0.45L/分までは、CoとCeOの回収率はほぼ100%近い。しかし、メイクアップガスの流量を0.45L/分以上にすると、Coの強度は増加するが、回収率は低下する。それに加えてCeOの回収率は、増加する傾向が見られた。CeOの回収率が高くなると、Coの回収率が低下し、高感度、高精度測定することは困難になる。
(検証例2)
プラズマ誘導コイルの電力:1600W、
サンプリング深さ8mm
キャリアガス流量0.7L/分
ファーストイオンレンズ印加電圧:+8.1V
セカンドイオンレンズ印加電圧:−150V
試料溶液:Co、Ce含有20容量%硝酸
上述した条件で、Co、CeOの回収率およびCoの検出感度に対して、メイクアップガスの流量が及ぼす影響を測定した。この結果を図5に示す。
図5に示す結果によれば、メイクアップガスの流量が0.25〜0.40L/分までは、CoとCeOの回収率はほぼ100%近い。しかし、メイクアップガスの流量を0.40L/分以上にすると、Coの強度は増加するが、回収率は低下する。それに加えてCeOの回収率は、増加する傾向が見られた。メイクアップガス流量が0.4L/分の時、Coの検出感度と回収率が高く、CeOの回収率も良好であり、最適条件であることが確認された。
(検証例3)
プラズマ誘導コイルの電力:1600W、
サンプリング深さ8mm
キャリアガス流量0.7L/分
ファーストイオンレンズ印加電圧:+8.1V
セカンドイオンレンズ印加電圧:−150V
試料溶液:Be,Mg,Al,Mn,Co,Ga,As,Sr,Cd,In,Cs,Pb,Bi,Uをそれぞれ含有する20容量%硝酸
上述した条件で各元素の回収率に対して、異なるメイクアップガスの流量(0.3L/分、0.35L/分、0.45L/分、0.5L/分)が及ぼす影響を測定した。この結果を図6に示す。
図6に示す結果によれば、メイクアップガスの流量を大きくすると、高濃度酸に含まれる各元素の回収率は低くなる傾向が見られた。チューニングによってメイクアップガスの流量の最適値を予め見出すことにより、各元素の回収率を最適にできることが確認された。
(検証例4)
プラズマ誘導コイルの電力:1600W、
サンプリング深さ8mm
キャリアガス流量0.7L/分
メイクアップガス流量0.4L/分
ファーストイオンレンズ印加電圧:+5.5V
試料溶液:Co、Ce含有20容量%硝酸
上述した条件で、Co、CeOの回収率およびCoの検出感度に対して、セカンドイオンレンズの印加電圧が及ぼす影響を測定した。この結果を図7に示す。
図7に示す結果によれば、集束レンズを構成するセカンドイオンレンズの印加電圧、即ち集束レンズによるイオンの焦点を変化させると、高濃度酸に含まれるCoおよびCeOの回収率はあまり変化しないが、Coの検出感度は大きく変わる傾向が見られた。チューニングによって集束レンズの印加電圧の最適値を予め見出すことにより、Coの検出感度を最適にできることが確認された。
(検証例5)
硝酸(HNO)、フッ化水素酸(HF)、リン酸(HPO)、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、過塩素酸(HClO)のそれぞれの酸について、イオン化ポテンシャル、濃度10容量%での高温プラズマ中のイオンの数を示す。そして、それぞれの酸を試料溶液とした場合に、誘導結合プラズマ質量分析において、イオン化効率、空間電荷効果、最大イオン密度領域の変化、および冷却効果について、その影響をそれぞれ3段階で評価した。この結果を表1に示す。なお、評価項目は「×:影響が低い、△:影響中程度、○:影響が高い」で示した。
Figure 2020027038
表1に示す結果によれば、イオンの数がArよりも多くなると、空間電荷効果の影響を大きく受けるようになる。また、イオン化によってプラズマのエネルギーを消費し、その結果プラズマの温度が下がり、検出感度の低下につながる。更に、最大イオン密度の領域が変化することによっても検出感度が低下する。よって、リン酸(P)や硫酸(S)のイオン化ポテンシャルは、硝酸(N)、塩酸(Cl)、フッ化水素酸(F)、過塩素酸(Cl)よりも比較的に低いために、イオンの数が多い。このことにより、空間電荷効果の影響が大きく、感度が低下する。また、フッ化水素酸以外の酸は、最大イオン密度領域の変化によっても感度が低下する。さらに、冷却効果の影響も感度低下の原因の一つである。
10 誘導結合プラズマ質量分析装置
11 試料溶液導入部
12 ICP生成部
13 質量分離部
14 サンプラー
31 プラズマトーチ
41 サンプリングコーン
42 スキマコーン
45 キャリアガスの流量調節器
46 メイクアップガスの流量調節器
55 集束レンズ調節機構
R 試料溶液

Claims (4)

  1. 誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて、酸濃度が1容量%以上の酸マトリクスを含む試料溶液の分析を行う誘導結合プラズマ質量分析方法であって、
    前記試料溶液をチューニング液として導入し、キャリアガス流量またはメイクアップガス流量を調節する第1チューニング工程と、集束レンズの焦点を調整する第2チューニング工程と、を有することを特徴とする誘導結合プラズマ質量分析方法。
  2. 前記酸マトリクスに含まれる共存元素酸化物の生成率が0.7%以上、1.2%以下の範囲内になるように、前記第1チューニング工程と前記第2チューニング工程のうち少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする請求項1記載の誘導結合プラズマ質量分析方法。
  3. 前記試料溶液に含まれる分析目的元素の検出感度が最大になるように、前記第1チューニング工程と前記第2チューニング工程のうち少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする請求項1または2記載の誘導結合プラズマ質量分析方法。
  4. 前記酸マトリクスを構成する酸は、フッ化水素酸、硝酸、塩酸、過塩素酸、硫酸、及びリン酸のいずれかを含むことを特徴とする請求項3記載の誘導結合プラズマ質量分析方法。
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