JP2020019967A - 摩擦材および摩擦部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境負荷の高い銅を含有しない、または銅の含有量が0.5質量%以下の摩擦材において、錆固着力、錆剥離の少ない摩擦材を提供すること。【解決手段】結合剤、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材であって、該摩擦材中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、前記繊維基材としてフィブリル化アラミド繊維を含有し、油含浸法で測定される気孔率が15%以下であって、スコーチ処理を行わない摩擦材とする。【選択図】なし
Description
本発明は、自動車等の制動に用いられるディスクブレーキパッド等の摩擦材に関し、特にアスベストを含まないノンアスベスト摩擦材に関する。また、該摩擦材と裏金を組み合わせて形成した摩擦部材に関する。
自動車等には、その制動のためにディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材が使用されている。摩擦材は、ディスクローター、ブレーキドラム等の対面材と摩擦することにより、制動の役割を果たしている。そのため、摩擦材には、良好な摩擦係数、耐摩耗性(摩擦材の寿命が長いこと)、強度、音振性(ブレーキ鳴きや異音が発生しにくいこと)等が要求される。摩擦係数は車速、減速度やブレーキ温度によらず安定であることが要求される。また、摩擦界面で発生した錆によって摩擦材が摩擦対面材と固着し、発車時の異音発生や摩擦材の表面剥離(錆剥離)などの問題が生じる場合がある。錆固着性能を改善するために、犠牲陽極として作用する亜鉛やpHを上げるアルカリ金属塩を添加するなどの摩擦材組成が提案されている。(特許文献1〜2)
摩擦材には、結合材、繊維基材、無機充填材および有機充填材等を含む摩擦材組成物が用いられ、前記特性を発現させるために、一般的に、各成分を1種または2種以上を組合せた摩擦材組成物が用いられる。中でも銅は繊維や粉末の形態で摩擦材に配合され、高温での制動条件下での摩擦係数の保持(耐フェード性)や高温での耐摩耗性改善、摩擦材の強度向上に有効な成分である。しかし、銅を含有する摩擦材は、制動時に生成する摩耗粉に銅を含み、河川、湖や海洋汚染等の原因となる可能性が示唆されているため、使用を制限する動きが高まっている。
このような銅の使用量を制限する動きの中、特許文献3には、銅を含有しない組成における強度、耐摩耗性を改善する手法として、複数の凸形状を有するチタン酸カリウムと生体溶解性無機繊維とを含有させることを特徴とする摩擦材が提案されている。
環境有害性の高い銅を含まない摩擦材は材料強度が低く、錆剥離が問題となる。特許文献1〜2で提案されている防錆効果や、特許文献3で提案されている銅を含有しない組成における摩擦材強度向上では、銅を含有しない摩擦材の錆剥離の改善効果は充分ではなかった。
本発明では、上記事情を鑑みなされたもので、環境負荷の高い銅を含有しない、または銅の含有量が0.5質量%以下の摩擦材において、錆固着力、錆剥離の少ない摩擦材を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、銅を含有せず、摩擦材の材料強度を向上するためにフィブリル化アラミド繊維を含有する組成において、摩擦材の強度と錆の抑制効果、および錆と摩擦材の相互作用の観点で錆固着力と錆剥離の低減を鋭意検討し、製造工程においてスコーチ処理を行わないことが効果的であることを見出した。すなわち、スコーチ処理を行わないことで、摩擦材表層の結合剤の熱分解物由来の有機酸による錆発生が抑制されることを見出した。また、スコーチ処理を行うと摩擦材表層の気孔率が増加するが、スコーチ処理を行わない場合、摩擦材表層の気孔率の増加が生じず、このため、摩擦材強度も向上するため、錆固着、錆剥離改善効果との相乗効果で優れた改善効果を示すことを見出した。
また、本発明者らは、上記のフィブリル化アラミド繊維を含有するとともにスコーチ処理を行わない摩擦材においては、気孔率を15%以下とすると、摩擦材の強度がより高くなり錆剥離しにくくなるとともに、気孔率が小さいことで摩擦材の気孔への錆の侵入が少なくなるため、より高い錆固着および錆剥離の改善効果を示すことを見出した。また、犠牲陽極として防錆作用を示す亜鉛粉末や、摩擦材のpHを効果的に向上せしめる水酸化カルシウムまたは/および炭酸ナトリウムを特定量含有させることで、上記の摩擦材における錆固着力、錆剥離の改善効果をさらに向上させることができることを見出した。さらに、摩擦材強度を向上せしめかつ発錆量が少なくなる特定量のスチール繊維の添加や、同じく摩擦材強度を向上せしめる複数の凸部形状を有するチタン酸カリウムを添加することにより、上記の摩擦材における錆固着力、錆剥離の改善効果をさらに向上させることができることを見出した。加えて、摩擦材のpHを12〜13とすることで、上記の摩擦材における錆固着力、錆剥離の改善効果をさらに向上させることができることを見出した。そして、イオンクロマトグラフで測定される硫酸イオン濃度が1000ppm以下とすることで、上記の摩擦材における錆固着力、錆剥離の改善効果をさらに向上させることができることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づくものであり、本発明の摩擦材は、具体的に、結合剤、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材であって、該摩擦材中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、前記繊維基材としてフィブリル化アラミド繊維を含有し、摩擦材および摩擦部材の製造工程においてスコーチ処理を行わないことを特徴とする。
本発明の摩擦材においては、油含浸法で測定される気孔率を15%以下とすることが好ましい。また、前記無機充填材として亜鉛粉末を含有することが好ましく、前記無機充填材として水酸化カルシウムを2.5〜10質量%または/および炭酸ナトリウムを0.2〜2質量%で含有することが好ましい。さらに、本発明の摩擦材においては、前記繊維基材としてスチール繊維を2〜8質量%で含有することが好ましく、前記無機充填材として、複数の凸部形状を有するチタン酸カリウムを含有することが好ましい。そして、本発明の摩擦材においては、摩擦材のpHは12〜13であることが好ましく、イオンクロマトグラフで測定される硫酸イオン濃度が1000ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の摩擦部材は、上記の本発明の摩擦材と裏金とを用いて形成されることを特徴とするものである。
本発明によれば、自動車用ディスクブレーキパッド等の摩擦材に用いた際に、環境負荷の高い銅を用いなくとも、錆固着力が小さく錆剥離の少ない摩擦材および摩擦部材を提供することができる。
以下、本発明の摩擦材および摩擦部材について詳述する。なお、本発明の摩擦材は、アスベストを含まない、いわゆるノンアスベスト摩擦材である。
[摩擦材]
本実施形態の摩擦材は、銅を含有しない、もしくは銅を含有する場合において銅の含有量が0.5質量%以下であることを特徴とする摩擦材である。すなわち、環境有害性の高い銅および銅合金を実質的に含有せず、元素としての銅の含有量が0.5重量%以下であり、好ましくは含有量0質量%の摩擦材である。このため、制動時に摩耗粉が生成しても、河川、湖や海洋汚染の原因とならない。
本実施形態の摩擦材は、銅を含有しない、もしくは銅を含有する場合において銅の含有量が0.5質量%以下であることを特徴とする摩擦材である。すなわち、環境有害性の高い銅および銅合金を実質的に含有せず、元素としての銅の含有量が0.5重量%以下であり、好ましくは含有量0質量%の摩擦材である。このため、制動時に摩耗粉が生成しても、河川、湖や海洋汚染の原因とならない。
(フィブリル化アラミド繊維)
本発明の摩擦材は、フィブリル化アラミド繊維を含む。フィブリル化アラミド繊維は、複数の枝分かれを有し、BET比表面積が5〜15m2/gであることが特徴であり、帝人株式会社製Twaron1099、1095、3091、東レ・デュポン株式会社製ケブラー1F538、1F1710などが挙げられる。これらのフィブリル化アラミド繊維は、繊維強度が高く多数の枝分かれを有するため、銅を含有しない組成においても効果的に摩擦材強度を向上させため、摩擦材の繊維基材として好適なものである。
本発明の摩擦材は、フィブリル化アラミド繊維を含む。フィブリル化アラミド繊維は、複数の枝分かれを有し、BET比表面積が5〜15m2/gであることが特徴であり、帝人株式会社製Twaron1099、1095、3091、東レ・デュポン株式会社製ケブラー1F538、1F1710などが挙げられる。これらのフィブリル化アラミド繊維は、繊維強度が高く多数の枝分かれを有するため、銅を含有しない組成においても効果的に摩擦材強度を向上させため、摩擦材の繊維基材として好適なものである。
(スコーチ処理)
本発明の摩擦材は、その製造工程でスコーチ処理を行わないことを特徴とする。通常、ディスクブレーキパッドに用いられる摩擦材は、高温でのブレーキ効きの改善を主な目的として、摩擦材表面をフェノール樹脂の分解温度以上の高温で処理するスコーチ処理を行う。しかしながら、スコーチ処理を行うと摩擦材表面のフェノール樹脂が分解するため、摩擦材表面の気孔率が増加して錆が気孔を通じて摩擦材内部に浸入しやすくなるとともに、フェノール樹脂が熱分解して生じる有機酸により錆が発生しやすいものとなる。このため、本発明の摩擦材においては、このスコーチ処理を行わないことで、摩擦材表層のフェノール樹脂の熱分解物由来の有機酸による錆発生が抑制される。また、摩擦材表面の気孔率がスコーチ処理で増加することを防ぎ、錆固着力および錆剥離を効果的に抑制する。このように本発明の摩擦材はスコーチ処理を廃止したため、摩擦材の内部だけでなく表面まで同等の気孔率を有するものとなり、極めて錆が発生しにくいものとなる。
本発明の摩擦材は、その製造工程でスコーチ処理を行わないことを特徴とする。通常、ディスクブレーキパッドに用いられる摩擦材は、高温でのブレーキ効きの改善を主な目的として、摩擦材表面をフェノール樹脂の分解温度以上の高温で処理するスコーチ処理を行う。しかしながら、スコーチ処理を行うと摩擦材表面のフェノール樹脂が分解するため、摩擦材表面の気孔率が増加して錆が気孔を通じて摩擦材内部に浸入しやすくなるとともに、フェノール樹脂が熱分解して生じる有機酸により錆が発生しやすいものとなる。このため、本発明の摩擦材においては、このスコーチ処理を行わないことで、摩擦材表層のフェノール樹脂の熱分解物由来の有機酸による錆発生が抑制される。また、摩擦材表面の気孔率がスコーチ処理で増加することを防ぎ、錆固着力および錆剥離を効果的に抑制する。このように本発明の摩擦材はスコーチ処理を廃止したため、摩擦材の内部だけでなく表面まで同等の気孔率を有するものとなり、極めて錆が発生しにくいものとなる。
なお、摩擦材は、原料となる摩擦材組成物を予備成形した予備成形体を熱成形、もしくは原料となる摩擦材組成物を直接熱成形した熱成形体を加熱処理して得られ、その後、塗装、加工、スコーチ処理を行って製品となる。このため、熱成形体を加熱処理して得られた摩擦材がスコーチ処理を経たかどうかは、摩擦材表面と摩擦材内部の性状を比較することにより調べることができる。すなわち、スコーチ処理以外の塗装、加工処理によって、摩擦材の表面と摩擦材内部の性状は変化しないため、摩擦材の表面と摩擦材内部の性状の変化が認められる場合、この変化はスコーチ処理による影響であることが明らかである。
このようなスコーチ処理による摩擦材の表面と摩擦材内部の性状の変化は、例えば、表面の硬さと内部の硬さにより調べることができる。すなわち、スコーチ処理を行った摩擦材は、上記のように表面のフェノール樹脂が熱分解するため、摩擦材表面の硬さが、スコーチ処理の加熱の影響が小さい摩擦材内部の硬さに比べて低下することとなる。ここで、硬さの測定は、ロックウェル硬さのRスケール(HRR)もしくはSスケール(HRS)のいずれかのスケールで測定するとともに、測定した硬さの値が50〜90の範囲となるスケールを用いる。いずれのスケールの場合でも硬さの値が50未満あるいは90を超えると、硬さに差がある場合であっても測定値の差が顕れにくくなるため、硬さの差を測定するためには適していない。摩擦材の硬さは、図1に示すように、未使用の完成製品である摩擦材の摩擦面となる表面の硬さ(表面硬さ)を測定するとともに、同じ摩擦材を用いて摩擦材の摩擦面となる表面から2mm除去した後の除去面の硬さ(内部硬さ)を測定する。このようにして測定した表面硬さと内部硬さの差が5ポイント以下であれば、スコーチ処理を受けていないことがわかる。
また、スコーチ処理による摩擦材の表面と摩擦材内部の性状の変化は、未使用の完成製品である摩擦材表面の表面から削り出した試料(表面試料)と、同じ摩擦材の内部から削り出した試料(内部試料)を用いて熱重量分析(Thermogravimetric Analysis:TG)を行った際の質量の減少量の差から調べることができる。すなわち、使用していない完成製品としての摩擦材においては、スコーチ処理を行っている場合、摩擦材表面は、既にスコーチ処理時の熱履歴を受けているため、摩擦材の表面から採取した表面試料について熱重量分析を行うと、既に熱履歴を受けているため質量の減少量が小さくなる。これに対し摩擦材内部より採取の内部試料は、熱重量分析を行うと、スコーチ処理の影響が小さいため質量の減少量が大きくなる。したがって、熱重量分析を行った際に、摩擦材表面を含む表面試料の質量の減少量と摩擦材内部の内部試料の質量の減少量の差が生じている場合は、摩擦材表面に製造工程で熱を受けた履歴があることがわかり、スコーチ処理を行ったものであることがわかる。その一方で、スコーチ処理を受けていない摩擦材は、表面が大きな熱履歴を受けていないことから表層試料の熱重量分析を行った際の質量の減少量と内部試料の質量の減少量が等しいもしくは差が僅かである場合、この摩擦材はスコーチ処理を受けていないことがわかる。
この観点より、図2に示すように、未使用の完成製品である摩擦材を用いて、この摩擦材表面から深さ1mmの範囲内を削り出した際に発生する切粉を回収した試料(表面試料)を用いて熱重量分析を行った際の400℃における質量の減少量と、削り出し後の摩擦材を用いて、基の摩擦材の表面から2mmとなる範囲を除去した後、摩擦材の除去された表面から深さ1mmの範囲内を削り出した際に発生する切粉を回収した試料、すなわち基の摩擦材表面から2〜3mmの範囲より削り出した際に発生する切粉を回収した試料(内部試料)を用いて熱重量分析を行った際の400℃における質量の減少量との差が5%以下であれば、その摩擦材はスコーチ処理を行っていないと判断できる。摩擦材には、カシューダストやゴム成分が含有される場合があるが、これらの成分の分解開始温度は400℃より低いこと、およびスコーチ処理は一般的に400℃以上で実施されることから、熱重量分析における質量の減少量の比較について400℃で行うことで十分比較が可能である。なお、試料の削り出しにはフライスカッターやエンドミル等を用いることができる。また、削り出した試料の粒度が大きい場合は、乳鉢等を用いて熱重量分析に適した粒度に調整できる。
上記の熱重量分析は、株式会社リガク製Thermo plus EVO TG8120等を用いることができる。測定雰囲気は空気、測定温度範囲は25〜1000℃、昇温速度は10℃/分。試料量10mg、試料容器はアルミナ製のものを用いることが推奨される。
なお、近年では自動車の燃費改善のため、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やEV(Electric Vehicle)の台数が増加しているが、これらの車両では回生ブレーキにより運動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電するとともに、発電された電気を蓄電することでバッテリーの充電を行って、電気使用量の低減を行っている。回生ブレーキによる発電は、運動エネルギーが高い高速で行う方が発電効率が高くなることから、高速での制動は回生ブレーキにより行われ、発電効率が低下して回生ブレーキが上手く機能しない低速領域においてディスクブレーキパッドによる制動が行われるようになってきている。このように、ディスクブレーキパッドの高速での使用機会が低減しているため、スコーチ処理を廃止しても問題がなくなってきている。
(気孔率)
本発明の摩擦材においては、油含浸法で測定される気孔率が15%以下とすることが好ましい。ここでいう油含浸法で測定される気孔率とは、JIS D4418に準じて測定される気孔率であり、閉気孔を含まない開気孔率のことをいう。本発明の摩擦材は、気孔率を小さくすることで、銅を含有しない組成においても摩擦材の強度を十分なものとするとともに、気孔を通じての摩擦材への錆の取り込みを少なくして、錆固着力を小さくすることで錆剥離を防止する。摩擦材の気孔率は、製造工程で調整が可能であり、特に成形工程における成形圧力、成形温度、成形時間による調整が容易である。具体的には、成形圧力、成形温度を高くし、成形時間を長くすることで気孔率を低減することができる。
本発明の摩擦材においては、油含浸法で測定される気孔率が15%以下とすることが好ましい。ここでいう油含浸法で測定される気孔率とは、JIS D4418に準じて測定される気孔率であり、閉気孔を含まない開気孔率のことをいう。本発明の摩擦材は、気孔率を小さくすることで、銅を含有しない組成においても摩擦材の強度を十分なものとするとともに、気孔を通じての摩擦材への錆の取り込みを少なくして、錆固着力を小さくすることで錆剥離を防止する。摩擦材の気孔率は、製造工程で調整が可能であり、特に成形工程における成形圧力、成形温度、成形時間による調整が容易である。具体的には、成形圧力、成形温度を高くし、成形時間を長くすることで気孔率を低減することができる。
摩擦材が裏金と一体となったディスクブレーキパッドについて、気孔率を測定する場合は、摩擦材部分と裏金との間で切断し、摩擦材部分について油含浸法により気孔率を測定すればよい。このとき測定する摩擦材部分は、摩擦面となる表面から5mm以上とすることが好ましい。
(亜鉛粉末)
上記のフィブリル化アラミド繊維を含有するとともに気孔率を15%以下とした上でスコーチ処理を行わない本発明の摩擦材においては、亜鉛粉末を含有させることが好ましい。粉末状の亜鉛は、制動により摩擦材の摩擦界面に延展して摩擦界面を被覆する状態となるが、亜鉛は酸化しやすいことから摩擦界面を被覆した亜鉛が、犠牲陽極作用により選択的に酸化されることで、摩擦材中の他の成分の酸化すなわち発錆を防止して摩擦界面全体の防錆を行う。このため、摩擦材中に亜鉛粉末を含有させると、錆固着力がよりいっそう低減するとともに、錆剥離を抑制する効果がより大きくなる。粉末状の亜鉛としては、アトマイズなどで製造される通常摩擦材に用いられる粉末状の亜鉛を用いることができるが、摩擦材表面での延展による防錆効果の観点で粒径は細かいほどよく、10〜500μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。また、亜鉛の添加量は、防錆効果の観点で1質量%以上が好ましく、2質量%がより好ましい。しかしながら、亜鉛の過剰添加は、高温使用時における摩擦材の耐摩耗性の悪化を引き起こすため、10質量%以下の添加量で用いることが好ましく、8質量%がより好ましい。
上記のフィブリル化アラミド繊維を含有するとともに気孔率を15%以下とした上でスコーチ処理を行わない本発明の摩擦材においては、亜鉛粉末を含有させることが好ましい。粉末状の亜鉛は、制動により摩擦材の摩擦界面に延展して摩擦界面を被覆する状態となるが、亜鉛は酸化しやすいことから摩擦界面を被覆した亜鉛が、犠牲陽極作用により選択的に酸化されることで、摩擦材中の他の成分の酸化すなわち発錆を防止して摩擦界面全体の防錆を行う。このため、摩擦材中に亜鉛粉末を含有させると、錆固着力がよりいっそう低減するとともに、錆剥離を抑制する効果がより大きくなる。粉末状の亜鉛としては、アトマイズなどで製造される通常摩擦材に用いられる粉末状の亜鉛を用いることができるが、摩擦材表面での延展による防錆効果の観点で粒径は細かいほどよく、10〜500μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。また、亜鉛の添加量は、防錆効果の観点で1質量%以上が好ましく、2質量%がより好ましい。しかしながら、亜鉛の過剰添加は、高温使用時における摩擦材の耐摩耗性の悪化を引き起こすため、10質量%以下の添加量で用いることが好ましく、8質量%がより好ましい。
(水酸化カルシウムおよび/または炭酸ナトリウム)
本発明の摩擦材においては、無機充填材として、水酸化カルシウムおよび/または炭酸ナトリウムを含有させることが好ましい。水酸化カルシウムや炭酸ナトリウムは、通常の摩擦材に用いられる粉末状の水酸化カルシウムおよび炭酸ナトリウムを用いることができるが、水溶性の観点で、粒径の細かいもの、特に100μm以下の粉末が好ましい。水酸化カルシウムおよび炭酸ナトリウムは摩擦対面材の防錆効果があるだけでなく摩擦材の成形時にフェノール樹脂の硬化触媒として作用し、摩擦材強度を向上させる。しかし、過度に添加しすぎるとフィブリル化アラミド繊維の強度を低下させる。そのため、本発明の摩擦材においては水酸化カルシウムの含有量は2.5〜10質量%が好ましく、炭酸ナトリウムの含有量は0.2〜2質量%が好ましい。このような水酸化カルシウムおよび炭酸ナトリウムは、上記の摩擦材に一方のみを添加しても良く、両方を同時に添加しても良い。
本発明の摩擦材においては、無機充填材として、水酸化カルシウムおよび/または炭酸ナトリウムを含有させることが好ましい。水酸化カルシウムや炭酸ナトリウムは、通常の摩擦材に用いられる粉末状の水酸化カルシウムおよび炭酸ナトリウムを用いることができるが、水溶性の観点で、粒径の細かいもの、特に100μm以下の粉末が好ましい。水酸化カルシウムおよび炭酸ナトリウムは摩擦対面材の防錆効果があるだけでなく摩擦材の成形時にフェノール樹脂の硬化触媒として作用し、摩擦材強度を向上させる。しかし、過度に添加しすぎるとフィブリル化アラミド繊維の強度を低下させる。そのため、本発明の摩擦材においては水酸化カルシウムの含有量は2.5〜10質量%が好ましく、炭酸ナトリウムの含有量は0.2〜2質量%が好ましい。このような水酸化カルシウムおよび炭酸ナトリウムは、上記の摩擦材に一方のみを添加しても良く、両方を同時に添加しても良い。
(スチール繊維)
本発明の摩擦材においては、繊維基材として、スチール繊維を含有させることが好ましい。スチール繊維は、びびり振動切削法などで得られるストレート繊維と、長繊維のカットなどで得られるカール状繊維がある。ストレート繊維が直線状の繊維形状なのに対し、カール状繊維は繊維が曲がった形状をしている。カール状繊維のほうが摩擦界面において摩擦材からの脱落が少なく、高温制動における摩擦特性保持の観点で好ましい。カール状のスチール繊維は、日本スチールウール株式会社製カットウールなど、市販されているものを使用することができる。スチール繊維は、摩擦材の強度を向上させ錆剥離を抑制するが、スチール繊維自体が錆びることで、多量の添加により錆固着力を増加させてしまう。スチール繊維の含有量を2〜8質量%とすることで、本発明の摩擦材において、錆固着力と錆剥離を両立して抑制することができる。スチール繊維の繊維径は、高温における耐摩耗性の観点で100μm以下が好ましい。スチール繊維の繊維長は、高温における耐摩耗性の観点で2500μm以下が好ましい。
本発明の摩擦材においては、繊維基材として、スチール繊維を含有させることが好ましい。スチール繊維は、びびり振動切削法などで得られるストレート繊維と、長繊維のカットなどで得られるカール状繊維がある。ストレート繊維が直線状の繊維形状なのに対し、カール状繊維は繊維が曲がった形状をしている。カール状繊維のほうが摩擦界面において摩擦材からの脱落が少なく、高温制動における摩擦特性保持の観点で好ましい。カール状のスチール繊維は、日本スチールウール株式会社製カットウールなど、市販されているものを使用することができる。スチール繊維は、摩擦材の強度を向上させ錆剥離を抑制するが、スチール繊維自体が錆びることで、多量の添加により錆固着力を増加させてしまう。スチール繊維の含有量を2〜8質量%とすることで、本発明の摩擦材において、錆固着力と錆剥離を両立して抑制することができる。スチール繊維の繊維径は、高温における耐摩耗性の観点で100μm以下が好ましい。スチール繊維の繊維長は、高温における耐摩耗性の観点で2500μm以下が好ましい。
(複数の凸形状を有するチタン酸カリウム)
本発明の摩擦材においては、無機充填材として、複数の凸形状を有するチタン酸カリウムを含有させることが好ましい。複数の凸形状を有するチタン酸カリウムとは、不規則な方向に複数の凸部が延びる形状を有する不定形のチタン酸カリウムのことで、摩擦調整剤として用いることができることが知られている(特許文献3)。例えば、大塚化学株式会社製「テラセスJP」が挙げられる。このような不規則な方向に複数の凸部が延びる形状を有する不定形のチタン酸カリウムは、凸部が摩擦材の強度向上に効果的であり、特に本発明の摩擦材の錆剥離の抑制に効果的である。本発明の摩擦材中における複数の凸形状を有するチタン酸カリウムの含有量は、錆剥離抑制の観点で1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。
本発明の摩擦材においては、無機充填材として、複数の凸形状を有するチタン酸カリウムを含有させることが好ましい。複数の凸形状を有するチタン酸カリウムとは、不規則な方向に複数の凸部が延びる形状を有する不定形のチタン酸カリウムのことで、摩擦調整剤として用いることができることが知られている(特許文献3)。例えば、大塚化学株式会社製「テラセスJP」が挙げられる。このような不規則な方向に複数の凸部が延びる形状を有する不定形のチタン酸カリウムは、凸部が摩擦材の強度向上に効果的であり、特に本発明の摩擦材の錆剥離の抑制に効果的である。本発明の摩擦材中における複数の凸形状を有するチタン酸カリウムの含有量は、錆剥離抑制の観点で1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。
(摩擦材のpH)
本発明の摩擦材においては、摩擦材のpHを高くすると、錆固着力をより低減できるとともに、錆剥離をより抑制できるため、摩擦材のpHを12以上とすることが好ましい。摩擦材のpHは、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど、水溶時にアルカリ性を示す成分を含有させることで容易に増加させることができる。上記のフィブリル化アラミド繊維は、高いpHの水溶液に長時間曝露することで、加水分解により強度が低下するため、摩擦材のpHは13以下とすることが好ましい。摩擦材のpHは、JASO C458−86に準拠して測定することができる。
本発明の摩擦材においては、摩擦材のpHを高くすると、錆固着力をより低減できるとともに、錆剥離をより抑制できるため、摩擦材のpHを12以上とすることが好ましい。摩擦材のpHは、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど、水溶時にアルカリ性を示す成分を含有させることで容易に増加させることができる。上記のフィブリル化アラミド繊維は、高いpHの水溶液に長時間曝露することで、加水分解により強度が低下するため、摩擦材のpHは13以下とすることが好ましい。摩擦材のpHは、JASO C458−86に準拠して測定することができる。
(硫酸イオン)
本発明の摩擦材においては、イオンクロマトグラフで測定される硫酸イオン濃度が500ppm以下であることが好ましい。摩擦材の硫酸イオン濃度が高くなると、その分、摩擦材に錆が発生しやすくなる。摩擦材中の硫酸イオン濃度の低減は、通常の摩擦材に用いられる素材のうち、製造工程で硫酸を使用することがあるチタン酸塩やカシューダストなどについて、硫酸イオンの少ない銘柄を使用することで、摩擦材の硫酸イオンを低減することが可能である。例えば、硫酸イオンの少ないチタン酸塩としては、具体的に東邦マテリアル株式会社製TOFIXなどが挙げられる。また、硫酸イオンの少ないチタン酸塩としては、東北化工株式会社製FF1700などが挙げられる。
本発明の摩擦材においては、イオンクロマトグラフで測定される硫酸イオン濃度が500ppm以下であることが好ましい。摩擦材の硫酸イオン濃度が高くなると、その分、摩擦材に錆が発生しやすくなる。摩擦材中の硫酸イオン濃度の低減は、通常の摩擦材に用いられる素材のうち、製造工程で硫酸を使用することがあるチタン酸塩やカシューダストなどについて、硫酸イオンの少ない銘柄を使用することで、摩擦材の硫酸イオンを低減することが可能である。例えば、硫酸イオンの少ないチタン酸塩としては、具体的に東邦マテリアル株式会社製TOFIXなどが挙げられる。また、硫酸イオンの少ないチタン酸塩としては、東北化工株式会社製FF1700などが挙げられる。
なお、摩擦材の硫酸イオン濃度は、次の手順で測定することができる。摩擦材3.0gに純水20gを加え、130℃で3時間加熱抽出する。放冷後、抽出液をろ過し、さらに固層抽出を行い適宜希釈することで試料溶液とする。この試料溶液について、硫酸イオン標準液による検量線法で、イオンクロマトグラフを用いて硫酸イオンを定量測定する。
以下に、イオンクロマトグラフの測定条件の一例を例示する。
検 出 器:電気伝導度検出器
カ ラ ム:無機陰イオン交換カラム(ダイオネクス製IonPac AS12Aなど)
溶 離 液:2.7mmol/l Na2CO3+0.3mmol/l NaHCO3
流 速:1.33ml/min
注 入 量:25μl
定量方法:硫酸イオン標準液のイオンクロマトグラムと保持時間の一致するピークについて、検量線法により検出量を計測する。
検 出 器:電気伝導度検出器
カ ラ ム:無機陰イオン交換カラム(ダイオネクス製IonPac AS12Aなど)
溶 離 液:2.7mmol/l Na2CO3+0.3mmol/l NaHCO3
流 速:1.33ml/min
注 入 量:25μl
定量方法:硫酸イオン標準液のイオンクロマトグラムと保持時間の一致するピークについて、検量線法により検出量を計測する。
(結合材)
結合剤は、摩擦材に含まれる有機充填材、無機充填材および繊維基材などを一体化し、強度を与えるものである。本発明の摩擦材に含まれる結合材としては特に制限は無く、通常、摩擦材の結合材として用いられる熱硬化性樹脂を用いることができる。
結合剤は、摩擦材に含まれる有機充填材、無機充填材および繊維基材などを一体化し、強度を与えるものである。本発明の摩擦材に含まれる結合材としては特に制限は無く、通常、摩擦材の結合材として用いられる熱硬化性樹脂を用いることができる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂;アクリルエラストマー分散フェノール樹脂およびシリコーンエラストマー分散フェノール樹脂などの各種エラストマー分散フェノール樹脂;アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂およびアルキルベンゼン変性フェノール樹脂などの各種変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。特に、良好な耐熱性、成形性および摩擦係数を与えることから、フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂を用いることが好ましい。
本発明の摩擦材組成物中における、結合材の含有量は、5〜20質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。結合材の含有量を5〜20質量%の範囲とすることで、摩擦材の強度低下をより抑制でき、また、摩擦材の弾性率が高くなることによる鳴きなどの音振性能悪化をより抑制できる。
(有機充填材)
有機充填材は、摩擦材の音振性能や耐摩耗性などを向上させるための摩擦調整剤として含まれるものである。本発明の摩擦材に含まれる有機充填材としては、上記性能を発揮できるものであれば特に制限はなく、通常、有機充填材として用いられる、カシューダストやゴム成分などを用いることができる。
有機充填材は、摩擦材の音振性能や耐摩耗性などを向上させるための摩擦調整剤として含まれるものである。本発明の摩擦材に含まれる有機充填材としては、上記性能を発揮できるものであれば特に制限はなく、通常、有機充填材として用いられる、カシューダストやゴム成分などを用いることができる。
上記カシューダストは、カシューナッツシェルオイルを硬化させたものを粉砕して得られる、通常、摩擦材に用いられるものであればよい。
上記ゴム成分としては、例えば、タイヤゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、塩素化ブチルゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、などが挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用される。
本発明の摩擦材中における、有機充填材の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、3〜8質量%であることが特に好ましい。有機充填材の含有量を1〜20質量%の範囲とすることで、摩擦材の弾性率が高くなること、鳴きなどの音振性能の悪化を避けることができ、また耐熱性の悪化、熱履歴による強度低下を避けることができる。
(無機充填材)
無機充填材は、摩擦材の耐熱性の悪化を避けるためや、耐摩耗性を向上させるため、摩擦係数を向上する目的で添加される摩擦調整剤として含まれるものである。本発明の摩擦材は、通常、摩擦材に用いられる無機充填材であれば特に制限はない。
無機充填材は、摩擦材の耐熱性の悪化を避けるためや、耐摩耗性を向上させるため、摩擦係数を向上する目的で添加される摩擦調整剤として含まれるものである。本発明の摩擦材は、通常、摩擦材に用いられる無機充填材であれば特に制限はない。
上記無機充填材としては、例えば、マイカ、硫化錫、二硫化モリブデン、硫化鉄、三硫化アンチモン、硫化ビスマス、硫化亜鉛、酸化カルシウム、硫酸バリウム、コークス、黒鉛、マイカ、バーミキュライト、硫酸カルシウム、タルク、クレー、ゼオライト、ムライト、クロマイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、シリカ、ドロマイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、γアルミナ、珪酸ジルコニウム、二酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化セリウム、ジルコニア、酸化鉄などを用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、前記複数の凸形状を有するチタン酸カリウムの他に粒状または板状のチタン酸塩を組合わせて用いることができる。粒状または板状のチタン酸塩としては、6チタン酸カリウム、8チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム、チタン酸ナトリウムなどを用いることができる。
本発明の摩擦材中における、無機充填材の含有量は、30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましく、50〜60質量%であることが特に好ましい。無機充填材の含有量を30〜80質量%の範囲とすることで、耐熱性の悪化を避けることができ、摩擦材のその他成分の含有量バランスの点でも好ましい。
(繊維基材)
繊維基材は、摩擦材において補強作用を示すものである。
繊維基材は、摩擦材において補強作用を示すものである。
本発明の摩擦材は、通常、繊維基材として用いられる、無機繊維、金属繊維、有機繊維、炭素系繊維などを用いることができ、これらを単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記無機繊維としては、セラミック繊維、生分解性セラミック繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、シリケート繊維などを用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら、無機繊維の中では、SiO2、Al2O3、CaO、MgO、FeO、Na2Oなどを任意の組み合わせで含有した生分解性鉱物繊維が好ましく、市販品としてはLAPINUS FIBERS B.V製のRoxulシリーズなどが挙げられる。
上記金属繊維としては、通常、摩擦材に用いられるものであれば特に制限はないが、例えば、前記亜鉛粉末以外に、アルミ、鉄、錫、チタン、ニッケル、マグネシウム、シリコンなどの銅および銅合金以外の金属単体または合金形態の繊維や、鋳鉄繊維などの金属を主成分とする繊維が挙げられる。
上記有機繊維としては、前記フィブリル化アラミド繊維以外に、チョップドアラミド繊維などの枝分かれを持たないアラミド繊維、セルロース繊維、アクリル繊維、フェノール樹脂繊維などを用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記炭素系繊維としては、耐炎化繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、活性炭繊維などを用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の摩擦材における、繊維基材の含有量は、摩擦材において5〜40質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。繊維基材の含有量を5〜40質量%の範囲とすることで、摩擦材としての最適な気孔率が得られ、鳴き防止ができ、適正な材料強度が得られ、耐摩耗性を発現し、成形性をよくすることができる。
[摩擦材]
本実施形態の摩擦材は、本発明の摩擦材の組成物を一般に使用されている方法で成形して製造することができ、好ましくは加熱加圧成形して製造される。詳細には、例えば、レーディゲミキサー(「レーディゲ」は登録商標)、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー(「アイリッヒ」は登録商標)等の混合機を用いて均一に混合し、この混合物を成形金型にて予備成形し、得られた予備成形物を成形温度130〜160℃、成形圧力20〜50MPa、成形時間2〜10分間の条件で成形し、得られた成形物を150〜250℃で2〜10時間熱処理することで製造される。またさらに、必要に応じて塗装、研磨処理を行うことで製造される。
本実施形態の摩擦材は、本発明の摩擦材の組成物を一般に使用されている方法で成形して製造することができ、好ましくは加熱加圧成形して製造される。詳細には、例えば、レーディゲミキサー(「レーディゲ」は登録商標)、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー(「アイリッヒ」は登録商標)等の混合機を用いて均一に混合し、この混合物を成形金型にて予備成形し、得られた予備成形物を成形温度130〜160℃、成形圧力20〜50MPa、成形時間2〜10分間の条件で成形し、得られた成形物を150〜250℃で2〜10時間熱処理することで製造される。またさらに、必要に応じて塗装、研磨処理を行うことで製造される。
[摩擦部材]
本実施形態の摩擦部材は、上記の本実施形態の摩擦材を摩擦面となる摩擦材として用いてなる。上記摩擦部材としては、例えば、下記の構成が挙げられる。
(1)摩擦材のみの構成。
(2)裏金と、該裏金の上に摩擦面となる本発明の摩擦材とを有する構成。
(3)上記(2)の構成において、裏金と摩擦材との間に、裏金の接着効果を高めるための表面改質を目的としたプライマー層、および、裏金と摩擦材との接着を目的とした接着層をさらに介在させた構成。
本実施形態の摩擦部材は、上記の本実施形態の摩擦材を摩擦面となる摩擦材として用いてなる。上記摩擦部材としては、例えば、下記の構成が挙げられる。
(1)摩擦材のみの構成。
(2)裏金と、該裏金の上に摩擦面となる本発明の摩擦材とを有する構成。
(3)上記(2)の構成において、裏金と摩擦材との間に、裏金の接着効果を高めるための表面改質を目的としたプライマー層、および、裏金と摩擦材との接着を目的とした接着層をさらに介在させた構成。
上記裏金は、摩擦部材の機械的強度の向上のために、通常、摩擦部材として用いるものであり、材質としては、金属または繊維強化プラスチック等、具体的には、鉄、ステンレス、無機繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック等が挙げられる。プライマー層および接着層は、通常、ブレーキシュー等の摩擦部材に用いられるものであればよい。
本実施形態の摩擦材は、錆固着力が小さく、錆剥離が少ないため、自動車等のディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の上張り材として特に有用であるが、摩擦部材の下張り材として成形して用いることもできる。なお、「上張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材であり、「下張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材と裏金との間に介在する、摩擦材と裏金との接着部付近のせん断強度、耐クラック性向上等を目的とした層のことである。
以下、本発明の摩擦材および摩擦部材について、実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれらに制限されるものではない。
[実施例1〜9および比較例1〜4](ディスクブレーキパッドの作製)
表1に示す配合比率に従って材料を配合し、実施例1〜9および比較例1〜4の摩擦材の組成物を得た。表中の配合比率は質量%である。
表1に示す配合比率に従って材料を配合し、実施例1〜9および比較例1〜4の摩擦材の組成物を得た。表中の配合比率は質量%である。
この摩擦材組成物をレーディゲミキサー(株式会社マツボー製、商品名:レーディゲミキサーM20)で混合し、得られた混合物を成形プレス(王子機械工業株式会社製)で予備成形した。得られた予備成形物を成形温度140〜160℃、成形圧力15〜45MPa、成形時間3〜10分間の条件で、成形プレス(三起精工株式会社製)を用いて鉄製の裏金(日立オートモティブシステムズ株式会社製)と共に加熱加圧成形した。得られた成形品を200℃で4.5時間熱処理し、ロータリー研磨機を用いて研磨し、必要に応じてスコーチ処理を行うことで実施例1〜9および比較例1〜4のディスクブレーキパッドを得た。なお、実施例および比較例では、裏金なしの摩擦材のみの摩擦材試料と、裏金の厚さ6mm、摩擦材の厚さ11mm、摩擦材投影面積52cm2のディスクブレーキパッド試料を作製した。摩擦材のみの摩擦材試料は、気孔率の測定、硫酸イオンの測定、pHの測定、硬さの測定および熱重量分析に用いた。また、ディスクブレーキパッド試料は、錆固着試験に用いた。
気孔の測定は、JIS D4418に準じて油含浸法により測定した。この結果を表1および表2に併せて記載した。
硫酸イオンの測定は、ダイオネクス社製電気伝導度検出器ICS―2000を用いるとともに、無機陰イオン交換カラムとしてダイオネクス社製IonPac AS12Aを用い、2.7mmol/lのNa2CO3と0.3mmol/lのNaHCO3を混合した溶離液を、流速:1.33ml/min、注入量:25μlの下で、硫酸イオン標準液のイオンクロマトグラムと保持時間の一致するピークについて、検量線法により検出量を計測することで行った。この結果を表1および表2に併せて記載した。
pHの測定は、堀場製作所社製ガラス電極式水素イオン濃度指示計D−54を用い、摩擦材から削り出した切粉約3.0gと、超純水20gをポリテトラフルオロエチレン製耐熱容器に入れ、130℃で3時間加熱抽出を行い、冷却後、抽出液をろ過し、さらに固相抽出を行い、適宜希釈した試料溶液を用いて行った。この結果を表1および表2に併せて記載した。
硬さの測定は、摩擦材試料の摩擦面となる表面について硬さの測定を行い、次いで摩擦材試料の摩擦面となる表面から2mmを研磨して除去するとともに、除去面について硬さの測定を行った。なお、硬さの測定にあたっては、測定した硬さの値が50〜90の範囲となるよう、ロックウェル硬さのRスケール(HRR)もしくはSスケール(HRS)のいずれかのスケールを用いて行った。得られた表面の硬さと内部の硬さの差を表1および表2に併せて記載した。
熱重量分析は、摩擦材試料の表面から深さ1mmの範囲内をエンドミルにより削り出し、切粉を表面試料として採取した。次いで、基の摩擦材の表面から2mmとなる範囲を研磨して除去した後、試料のコンタミンを防ぐため研磨粉の掃除を行った。その後、摩擦材の除去面から深さ1mmの範囲内を同じくエンドミルにより削り出し、切粉を内部試料として採取した。得られた各々の切粉試料について、乳鉢で撹拌して粒度を100μmに調整した試料10mgをアルミナ製の試料容器に入れて、株式会社リガク製Thermo plus EVO TG8120を用いるて、測定雰囲気:空気、測定温度範囲:25〜1000℃、昇温速度:10℃/分として、熱重量分析を行った。このようにして得られた表面試料の400℃における質量の減少量と内部試料の400℃における質量の減少量の差について表1および表2に併せて記載した。
JIS D4414「さび固着試験方法」に準拠し、錆固着試験を行い、錆固着力を下記基準にて評価を行い、錆固着力50N未満のものを「◎」、錆固着力50N以上かつ100N未満のものを「○」、錆固着力100N以上のものを「×」として評価し、表1および表2に併せて記載した。
また、上記錆固着試験後、摩擦材の表面が剥離してロータ表面に転移しているかどうかを確認し、錆剥離として評価し、錆剥離が生じていないものを「○」、錆剥離が生じているものを「×」として評価し、この評価結果を表1および表2に併せて記載した。
本発明の実施例1〜9は、銅を含有する比較例2と同様、錆剥離は発生せず、小さい錆固着力を示した。また、銅を含有せず、フィブリル化アラミド繊維を含有するものの本発明の範囲の気孔率とスコーチ処理がないことを同時に満足しない比較例1、3、4に対し、実施例1〜9は錆固着力、錆剥離が少ないことは明らかである。
本発明の摩擦材組成物は、従来品と比較して、環境負荷の高い銅を用いなくとも、錆固着力が小さく、錆剥離も起こしにくいため、該摩擦材組成物は乗用車用ブレーキパッド等の摩擦材および摩擦部材に好適である。
Claims (12)
- 結合材、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材であって、
該摩擦材中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、
前記繊維基材としてフィブリル化アラミド繊維を含有し、
スコーチ処理を行わないことを特徴とする摩擦材。 - 結合材、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材であって、
該摩擦材中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、
前記繊維基材としてフィブリル化アラミド繊維を含有し、
硬さの測定した値が50〜90の範囲内となるロックウェル硬さRスケール(HRR)もしくはロックウェル硬さSスケール(HRS)のいずれかのスケールを用い硬さを測定するとともに、該スケールで測定した摩擦材の表面の硬さの値と、摩擦材の表面から2mm除去した後の除去面の硬さの値の差が5ポイント以下であることを特徴とする摩擦材。 - 結合剤、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材であって、
該摩擦材中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、
前記繊維基材としてフィブリル化アラミド繊維を含有し、
表面から1mmの範囲から採取した表面試料の熱重量分析における質量の減少量と、表面から2〜3mmの範囲から採取した内部試料の熱重量分析における質量の減少量との差が5%以下であることを特徴とする摩擦材。 - 油含浸法で測定される気孔率が15%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦材。
- 前記無機充填材として、亜鉛粉末を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の摩擦材。
- 前記無機充填材として、水酸化カルシウム2.5〜10質量%を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の摩擦材。
- 前記無機充填材として、炭酸ナトリウム0.2〜2質量%を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の摩擦材。
- 前記繊維機材として、スチール繊維2〜8質量%を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の摩擦材。
- 前記無機充填材として、複数の凸部形状を有するチタン酸カリウムを含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の摩擦材。
- pHが12〜13である、請求項1〜9のいずれかに記載の摩擦材。
- イオンクロマトグラフで測定される硫酸イオン濃度が1000ppm以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の摩擦材。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の摩擦材と裏金を用いて形成される摩擦部材。
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