本開示は、一般に、治療剤を、水への溶解性を少なくとも多少有する実質的に疎水性の酸と合わせることを含む、治療用ナノ粒子を調製する方法に関する。治療用ナノ粒子は、例えば、薬物添加量および/または薬物放出特性が改善されている場合がある。一部の実施形態では、実質的に疎水性の酸を、開示されるナノ粒子に含める(すなわち、ドープする)および/またはナノ粒子調製プロセスに含めることで、改善された薬物添加量を含むナノ粒子を得ることができる。さらに、ある特定の実施形態では、疎水性の酸を含む、かつ/またはその存在下で調製されているナノ粒子は、改善された制御放出特性を示し得る。例えば、開示されるナノ粒子は、疎水性の酸なしで調製されたナノ粒子に比べて、治療剤をよりゆっくりと放出し得る。
理論に束縛されるものではないが、疎水性の酸を含む開示されるナノ粒子製剤は、実質的に疎水性の酸と、例えば、治療剤のアミン基との間に疎水性イオン対(HIP)が形成されることで、かなり改善された製剤特性(例えば、薬物添加量および/または放出特性)を備えると考えられる。本明細書において使用する場合、HIPとは、クーロン引力によってまとまった、逆の電荷を帯びた一対のイオンである。ここでも理論に束縛されるものではないが、一部の実施形態では、HIPを使用して、治療剤の疎水性を増大させることができる。一部の実施形態では、疎水性が増大した治療剤は、ナノ粒子製剤にとって有益となり得、治療剤の有機溶媒への溶解性がより高くなり得るHIP形成がもたらされる場合がある。本明細書で企図されるHIP形成によって、例えば、薬物添加量が増加しているナノ粒子を得ることができる。例えば一部の実施形態では、水溶液への治療剤の溶解性が低下するために、ナノ粒子からの治療剤の放出をより緩徐にすることもできる。さらに、治療剤を大きい疎水性の対イオンと複合させることで、治療剤のポリマーマトリックス内での拡散を緩やかにすることもできる。有利なことに、HIP形成は、疎水性基の治療剤への共有結合によるコンジュゲーションを必要とせずに起こる。
理論に束縛されるものではないが、HIPの強度は、企図されるナノ粒子の薬物添加量および放出速度に影響すると考えられる。例えば、HIPの強度は、以下でより詳細に論じるとおり、治療剤のpKaと疎水性の酸のpKaの差の大きさを広げることにより高めることができる。また、理論に束縛されるものではないが、イオン対形成の条件も、企図されるナノ粒子の薬物添加量および放出速度に影響すると考えられる。
本明細書において開示されているナノ粒子は、1種、2種、3種またはそれ超の生体適合性および/または生分解性ポリマーを含み得る。例えば、企図されるナノ粒子は、約35〜約99.75重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約99.75重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約99.5重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約99重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約98重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約97重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約97.95重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約96重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約95重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約94重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約93重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約92重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約91重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約90重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約85重量パーセント、一部の実施形態では、約50〜約80重量パーセント、および一部の実施形態では、約65〜約85重量パーセントの生分解性ポリマーおよびポリ(エチレングリコール)(PEG)を含む1種または複数のブロックコポリマー、ならびに約0〜約50重量パーセントの生分解性ホモポリマーを含み得る。
一部の実施形態では、開示されるナノ粒子は、ビンクリスチンおよび薬学的に許容できるその塩(ビンクリスチンpKa値:pKa1=5.0、pKa2=7.4)から選択される、治療剤を含む。
一部の実施形態では、開示されているナノ粒子は、約0.2〜約35重量パーセント、約0.2〜約20重量パーセント、約0.2〜約10重量パーセント、約0.2〜約5重量パーセント、約0.5〜約5重量パーセント、約0.75〜約5重量パーセント、約1〜約5重量パーセント、約2〜約5重量パーセント、約3〜約5重量パーセント、約1〜約20重量パーセント、約2〜約20重量パーセント、約5〜約20重量パーセント、約1〜約15重量パーセント、約2〜約15重量パーセント、約3〜約15重量パーセント、約4〜約15重量パーセント、約5〜約15重量パーセント、約1〜約10重量パーセント、約2〜約10重量パーセント、約3〜約10重量パーセント、約4〜約10重量パーセント、約5〜約10重量パーセント、約10〜約30重量パーセント、または約15〜約25重量パーセントの治療剤を含み得る。
ある特定の実施形態では、開示されるナノ粒子は、疎水性の酸を含む、かつ/または疎水性の酸を含む方法によって調製される。そのようなナノ粒子は、疎水性の酸なしの方法によって調製されたナノ粒子より高い薬物添加量を備え得る。例えば、疎水性の酸を含む方法によって調製された開示されるナノ粒子の(例えば重量による)薬物添加量は、疎水性の酸なしの方法によって調製された開示されるナノ粒子より約2倍〜約10倍高い、またはなおより高い場合もある。一部の実施形態では、疎水性の酸を含む第1の方法によって調製された開示されるナノ粒子の(重量による)薬物添加量は、疎水性の酸を含まないことを除き、第1の方法と同一である第2の方法によって調製された開示されるナノ粒子より少なくとも約2倍高い、少なくとも約3倍高い、少なくとも約4倍高い、少なくとも約5倍高い、または少なくとも約10倍高い場合がある。
適切ないかなる疎水性の酸も企図される。一部の実施形態では、疎水性の酸は、カルボン酸(例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸など)、スルフィン酸、スルフェン酸、またはスルホン酸である場合がある。場合によって、企図される疎水性の酸には、2種以上の酸の混合物を含み得る。場合によって、疎水性の酸の塩を製剤中に使用してもよい。
例えば、開示されるカルボン酸は、脂肪族カルボン酸(例えば、環式または非環式、分岐または非分岐炭化水素鎖を有するカルボン酸)である場合がある。開示されるカルボン酸は、一部の実施形態では、これらに限定されないが、ハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、およびI)、スルホニル、ニトロ、およびオキソを含めた1つまたは複数の官能基で置換されていてもよい。ある特定の実施形態では、開示されるカルボン酸は、非置換であってもよい。
例示的なカルボン酸としては、置換または非置換の脂肪酸(例えば、C6〜C50脂肪酸)が挙げられる。一部の例において、脂肪酸は、C10〜C20脂肪酸である場合がある。他の例では、脂肪酸は、C15〜C20脂肪酸である場合がある。脂肪酸は、場合によって、飽和である場合もある。他の実施形態では、脂肪酸は、不飽和である場合もある。例えば、脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸または多価不飽和脂肪酸である場合がある。一部の実施形態では、不飽和脂肪酸基の二重結合は、シス配座である場合がある。一部の実施形態では、不飽和脂肪酸の二重結合は、トランス配座である場合がある。不飽和脂肪酸には、これらに限定されないが、オメガ3、オメガ6、およびオメガ9脂肪酸が含まれる。
飽和脂肪酸の非限定的な例としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、ペンタコサン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、ノナコサン酸、メリシン酸、ヘナトリアコンタン酸(henatriacontanoic acid)、ラッセル酸、プシリン酸(psyllic acid)、ゲジン酸(geddic acid)、セロプラスチン酸(ceroplastic acid)、ヘキサトリアコンタン酸、およびこれらの組合せが挙げられる。
不飽和脂肪酸の非限定的な例としては、ヘキサデカトリエン酸、アルファ−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ヘンエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、リノール酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサジエン酸、ジホモ−ガンマ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサジエン酸、アドレン酸(adrenic acid)、ドコサペンタエン酸、テトラコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、オレイン酸(pKa=約4〜5;logP=6.78)、エイコセン酸、ミード酸、エルカ酸、ネルボン酸、ルーメン酸、α−カレンド酸、β−カレンド酸、ジャカル酸、α−エレオステアリン酸、β−エレオステアリン酸、カタルプ酸、プニカ酸、ルメレン酸(rumelenic acid)、α−パリナリン酸、β−パリナリン酸、ボセオペンタエン酸、ピノレン酸、ポドカルピン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、およびこれらの組合せが挙げられる。
疎水性の酸の他の非限定的な例としては、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(すなわち、キシナホ酸(xinafoic acid))(pKa=約2〜3、logP=2.97)、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸(pKa=−2、logP=1.3)、ナフタレン−2−スルホン酸(pKa=−1.8、logP=2.1)、パモ酸(pKa=2.4)、ケイ皮酸、フェニル酢酸、(±)−ショウノウ−10−スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(pKa=−1.8、logP=6.6)、およびこれらの組合せなどの、芳香族酸が挙げられる。疎水性の酸の他の非限定的な例としては、ドデシル硫酸(pKa=−0.09、logP=4.5)、ジオクチルスルホコハク酸(pKa=−0.8、logP=5.2)、ジオレオイルホスファチジン酸(pKa=約2)、およびビタミンD3−スルフェート(pKa=−1.5)が挙げられる。
一部の実施形態では、疎水性の酸は、胆汁酸である場合がある。胆汁酸の非限定的な例としては、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸(pKa=4.65、logP=3.79)、ハイコール酸(hycholic acid)、ベータ−ムリコール酸、コール酸(pKa=約4.5、logP=2.48)、タウロコール酸、コレステリル硫酸(cholesteryl sulfate)(pKa=−1.4)、リトコール酸、アミノ酸抱合胆汁酸、およびこれらの組合せが挙げられる。アミノ酸抱合胆汁酸は、任意の適切なアミノ酸に抱合されていてもよい。一部の実施形態では、アミノ酸抱合胆汁酸は、グリシン抱合胆汁酸またはタウリン抱合胆汁酸である。
ある特定の例では、疎水性の酸は、高分子電解質である場合がある。例えば、高分子電解質は、ポリスルホン酸(例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)もしくはデキストラン硫酸)またはポリカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸もしくはポリメタクリル酸)である場合がある。
場合によって、企図される酸は、分子量が約1000Da未満、一部の実施形態では、約500Da未満、一部の実施形態では、約400Da未満、一部の実施形態では、約300Da未満、一部の実施形態では、約250Da未満、一部の実施形態では、約200Da未満、一部の実施形態では、約150Da未満である場合がある。場合によって、酸は、約100Da〜約1000Daの間、一部の実施形態では、約200Da〜約800Daの間、一部の実施形態では、約200Da〜約600Daの間、一部の実施形態では、約100Da〜約300Daの間、一部の実施形態では、約200Da〜約400Daの間、一部の実施形態では、約300Da〜約500Daの間、一部の実施形態では、約300Da〜約1000Daの間の分子量を有することがある。ある特定の実施形態では、企図される酸は、分子量が、約300Daより大きい、一部の実施形態では、400Daより大きい、一部の実施形態では、500Daより大きい場合がある。ある特定の実施形態では、ナノ粒子製剤中に使用される疎水性の酸の分子量を増大させることにより、ナノ粒子からの治療剤の放出速度を緩徐にし得る。
一部の実施形態では、疎水性の酸は、少なくとも部分的に、酸の強度に基づいて選択することができる。例えば、疎水性の酸は、25℃で求められる水中での酸解離定数(pKa)が、約−5〜約7、一部の実施形態では、約−3〜約5、一部の実施形態では、約−3〜約4、一部の実施形態では、約−3〜約3.5、一部の実施形態では、約−3〜約3、一部の実施形態では、約−3〜約2、一部の実施形態では、約−3〜約1、一部の実施形態では、約−3〜約0.5、一部の実施形態では、約−0.5〜約0.5、一部の実施形態では、約1〜約7、一部の実施形態では、約2〜約7、一部の実施形態では、約3〜約7、一部の実施形態では、約4〜約6、一部の実施形態では、約4〜約5.5、一部の実施形態では、約4〜約5、一部の実施形態では、約4.5〜約5である場合がある。一部の実施形態では、酸は、25℃で求められるpKaが、約7未満、約5未満、約3.5未満、約3未満、約2未満、約1未満、または約0未満である場合がある。
ある特定の実施形態では、疎水性の酸は、少なくとも部分的に、疎水性の酸のpKaとプロトン化された含窒素治療剤のpKaの差に基づいて選択することができる。例えば、一部の例では、25℃で求められる、疎水性の酸のpKaとプロトン化された含窒素治療剤のpKaの差を、約1pKa単位〜約15pKa単位の間、一部の実施形態では、約1pKa単位〜約10pKa単位の間、一部の実施形態では、約1pKa単位〜約5pKa単位の間、一部の実施形態では、約1pKa単位〜約3pKa単位の間、一部の実施形態では、約1pKa単位〜約2pKa単位の間、一部の実施形態では、約2pKa単位〜約15pKa単位の間、一部の実施形態では、約2pKa単位〜約10pKa単位の間、一部の実施形態では、約2pKa単位〜約5pKa単位の間、一部の実施形態では、約2pKa単位〜約3pKa単位の間、一部の実施形態では、約3pKa単位〜約15pKa単位の間、一部の実施形態では、約3pKa単位〜約10pKa単位の間、一部の実施形態では、約3pKa単位〜約5pKa単位の間、一部の実施形態では、約4pKa単位〜約15pKa単位の間、一部の実施形態では、約4pKa単位〜約10pKa単位の間、一部の実施形態では、約4pKa単位〜約6pKa単位の間、一部の実施形態では、約5pKa単位〜約15pKa単位の間、一部の実施形態では、約5pKa単位〜約10pKa単位の間、一部の実施形態では、約5pKa単位〜約7pKa単位の間、一部の実施形態では、約7pKa単位〜約15pKa単位の間、一部の実施形態では、約7pKa単位〜約9pKa単位の間、一部の実施形態では、約9pKa単位〜約15pKa単位の間、一部の実施形態では、約9pKa単位〜約11pKa単位の間、一部の実施形態では、約11pKa単位〜約13pKa単位の間、一部の実施形態では、約13pKa単位〜約15pKa単位の間とすることができる。
一部の例では、25℃で求められる、疎水性の酸のpKaとプロトン化された含窒素治療剤のpKaの差を、少なくとも約1pKa単位、一部の実施形態では、少なくとも約2pKa単位、一部の実施形態では、少なくとも約3pKa単位、一部の実施形態では、少なくとも約4pKa単位、一部の実施形態では、少なくとも約5pKa単位、一部の実施形態では、少なくとも約6pKa単位、一部の実施形態では、少なくとも約7pKa単位、一部の実施形態では、少なくとも約8pKa単位、一部の実施形態では、少なくとも約9pKa単位、一部の実施形態では、少なくとも約10pKa単位、一部の実施形態では、少なくとも約15pKa単位とすることができる。
一部の実施形態では、疎水性の酸は、約2〜約15の間、一部の実施形態では、約5〜約15の間、一部の実施形態では、約5〜約10の間、一部の実施形態では、約2〜約8の間、一部の実施形態では、約4〜約8の間、一部の実施形態では、約2〜約7の間、または一部の実施形態では、約4〜約7の間のlogPを有し得る。一部の例では、疎水性の酸は、約2を越える、約4を越える、約5を越える、または6を越えるlogPを有し得る。
一部の実施形態では、企図される疎水性の酸は、例えば、治療用ナノ粒子の特性を改善するのに有利である相転移温度を有する場合がある。例えば、酸は、約300℃未満、場合によって、約100℃未満、場合によって、約50℃未満である融点を有することがある。ある特定の実施形態では、酸は、約5℃〜約25℃の間、場合によって、約15℃〜約50℃の間、場合によって、約30℃〜約100℃の間、場合によって、約75℃〜約150℃の間、場合によって、約125℃〜約200℃の間、場合によって、約150℃〜約250℃の間、場合によって、約200℃〜約300℃の間の融点を有することがある。場合によって、酸は、約15℃未満、場合によって、約10℃未満、または場合によって、約0℃未満の融点を有することがある。ある特定の実施形態では、酸は、約−30℃〜約0℃の間、または場合によって、約−20℃〜約−10℃の間の融点を有することがある。
例えば、本明細書で開示される方法およびナノ粒子において使用する酸は、少なくとも部分的に、酸を含む溶媒への治療剤の溶解度に基づいて選択することができる。例えば、一部の実施形態では、酸を含む溶媒に溶解した治療剤は、約15mg/mL〜約200mg/mLの間、約20mg/mL〜約200mg/mLの間、約25mg/mL〜約200mg/mLの間、約50mg/mL〜約200mg/mLの間、約75mg/mL〜約200mg/mLの間、約100mg/mL〜約200mg/mLの間、約125mg/mL〜約175mg/mLの間、約15mg/mL〜約50mg/mLの間、約25mg/mL〜約75mg/mLの間の溶解度を有する場合がある。一部の実施形態では、酸を含む溶媒に溶解した治療剤は、約10mg/mLを超える、約50mg/mLを超える、または約100mg/mLを超える溶解度を有する場合がある。一部の実施形態では、疎水性の酸を含む溶媒に溶解した治療剤(例えば、治療剤と溶媒と疎水性の酸とからなる第1の溶液)は、治療剤が、疎水性の酸を含有しない溶媒(例えば、治療剤と溶媒とからなる第2の溶液)に溶解している場合の、少なくとも約2倍高い、一部の実施形態では、少なくとも約5倍高い、一部の実施形態では、少なくとも約10倍高い、一部の実施形態では、少なくとも約20倍高い、一部の実施形態では、約2倍〜約20倍高い、または一部の実施形態では、約10倍〜約20倍高い溶解度を有する場合がある。
場合によって、薬剤溶液(すなわち治療剤の溶液)中の酸の濃度は、約1重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約2重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約3重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約4重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約5重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約6重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約8重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約10重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約12重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約14重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約16重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約1重量パーセント〜約5重量パーセントの間、一部の実施形態では、約3重量パーセント〜約9重量パーセントの間、一部の実施形態では、約6重量パーセント〜約12重量パーセントの間、一部の実施形態では、約9重量パーセント〜約15重量パーセントの間、一部の実施形態では、約12重量パーセント〜約18重量パーセントの間、および一部の実施形態では、約15重量パーセント〜約21重量パーセントの間でよい。ある特定の実施形態では、薬剤溶液中の疎水性の酸の濃度は、少なくとも約1重量パーセント、一部の実施形態では、少なくとも約2重量パーセント、一部の実施形態では、少なくとも約3重量パーセント、一部の実施形態では、少なくとも約5重量パーセント、一部の実施形態では、少なくとも約10重量パーセント、一部の実施形態では、少なくとも約15重量パーセント、および一部の実施形態では、少なくとも約20重量パーセントでよい。
ある特定の実施形態では、(例えば、ナノ粒子を製剤する間の当初の、例えば、水相、有機相、エマルジョン相、および/もしくはクエンチ中の、および/またはナノ粒子中の)疎水性の酸の治療剤に対するモル比は、約0.1:1〜約6:1の間、一部の実施形態では、約0.1:1〜約5:1の間、一部の実施形態では、約0.1:1〜約4:1の間、一部の実施形態では、約0.1:1〜約3:1の間、一部の実施形態では、約0.1:1〜約2:1の間、一部の実施形態では、約0.1:1〜約1.5:1の間、一部の実施形態では、約0.1:1〜約1.2:1の間、一部の実施形態では、約0.1:1〜約1:1の間、一部の実施形態では、約0.1:1〜約0.75:1の間、一部の実施形態では、約0.1:1〜約0.5:1の間、約0.25:1〜約6:1の間、一部の実施形態では、約0.25:1〜約5:1の間、一部の実施形態では、約0.25:1〜約4:1の間、一部の実施形態では、約0.25:1〜約3:1の間、一部の実施形態では、約0.25:1〜約2:1の間、一部の実施形態では、約0.25:1〜約1.5:1の間、一部の実施形態では、約0.25:1〜約1:1の間、一部の実施形態では、約0.25:1〜約0.5:1の間、一部の実施形態では、約0.5:1〜約6:1の間、一部の実施形態では、約0.5:1〜約5:1の間、一部の実施形態では、約0.5:1〜約4:1の間、一部の実施形態では、約0.5:1〜約3:1の間、一部の実施形態では、約0.5:1〜約2:1の間、一部の実施形態では、約0.5:1〜約1.5:1の間、一部の実施形態では、約0.5:1〜約1:1の間、一部の実施形態では、約0.5:1〜約0.75:1の間、一部の実施形態では、約0.75:1〜約2:1の間、一部の実施形態では、約0.75:1〜約1.5:1の間、一部の実施形態では、約0.75:1〜約1.25:1の間、一部の実施形態では、約0.75:1〜約1:1の間、一部の実施形態では、約1:1〜約6:1の間、一部の実施形態では、約1:1〜約5:1の間、一部の実施形態では、約1:1〜約4:1の間、一部の実施形態では、約1:1〜約3:1の間、一部の実施形態では、約1:1〜約2:1の間、一部の実施形態では、約1:1〜約1.5:1の間、一部の実施形態では、約1.5:1〜約6:1の間、一部の実施形態では、約1.5:1〜約5:1の間、一部の実施形態では、約1.5:1〜約4:1の間、一部の実施形態では、約1.5:1〜約3:1の間、一部の実施形態では、約2:1〜約6:1の間、一部の実施形態では、約2:1〜約4:1の間、一部の実施形態では、約3:1〜約6:1の間、一部の実施形態では、約3:1〜約5:1の間、一部の実施形態では、約4:1〜約6:1の間でよい。
一部の例では、当初の(すなわち、ナノ粒子を製剤する間の)疎水性の酸の治療剤に対するモル比が、ナノ粒子中の(すなわち、カプセル化されていない疎水性の酸および治療剤を除去した後の)疎水性の酸の治療剤に対するモル比と異なっていてよい。他の例では、当初の(すなわち、ナノ粒子を製剤する間の)疎水性の酸の治療剤に対するモル比が、ナノ粒子中の(すなわち、カプセル化されていない疎水性の酸および治療剤を除去した後の)疎水性の酸の治療剤に対するモル比と本質的に同じになってもよい。
場合によって、治療剤を含有する溶液は、ポリマーを含有する溶液と別々に調製してもよく、次いで、2種の溶液を、ナノ粒子の製剤前に合わせてもよい。例えば、一実施形態では、第1の溶液が、治療剤と疎水性の酸とを含有し、第2の溶液が、ポリマーと、場合により疎水性の酸とを含有する。第2の溶液が疎水性の酸を含有しない製剤は、例えば、プロセスにおいて使用される疎水性の酸の量を最小限に抑える、または場合によって、疎水性の酸と、例えば疎水性の酸の存在下で分解し得るポリマーとの接触時間を最小限に抑えるのに、有利となる場合がある。他の場合では、治療剤、ポリマー、および疎水性の酸を含有する単一溶液を調製してもよい。
一部の実施形態では、ナノ粒子を製剤する前に疎水性イオン対を形成させてもよい。例えば、(例えば、適切な量の治療剤および疎水性の酸を含有する溶液を調製することにより、)企図されるナノ粒子を製剤する前に、疎水性イオン対を含有する溶液を調製することができる。他の実施形態では、ナノ粒子を製剤する間に疎水性イオン対を形成させてもよい。例えば、ナノ粒子を調製するプロセスステップの間(例えば、エマルジョン形成の前、および/またはエマルジョン形成の間)に、治療剤を含有する第1の溶液と、疎水性の酸を含有する第2の溶液とを合わせることができる。ある特定の実施形態では、治療剤および疎水性の酸を企図されるナノ粒子にカプセル化する前に、疎水性イオン対が形成され得る。他の実施形態では、疎水性イオン対を、ナノ粒子中で、例えば、治療剤および疎水性の酸をカプセル化した後に形成させてもよい。
ある特定の実施形態では、疎水性の酸は、25℃で求められる溶解度が、水100mLに約2g未満、一部の実施形態では、水100mLに約1g未満、一部の実施形態では、水100mLに約100mg未満、一部の実施形態では、水100mLに約50mg未満、一部の実施形態では、水100mLに約25mg未満、一部の実施形態では、水100mLに約10mg未満、一部の実施形態では、水100mLに約5mg未満、一部の実施形態では、水100mLに約2mg未満、一部の実施形態では、水100mLに約1mg未満である場合がある。他の実施形態では、酸は、25℃で求められる溶解度が、水100mLに約1mg〜水100mLに約2gの間、一部の実施形態では、水100mLに約1mg〜水100mLに約1gの間、一部の実施形態では、水100mLに約1mg〜水100mLに約500mgの間、一部の実施形態では、水100mLに約1mg〜水100mLに約100mgの間、一部の実施形態では、水100mLに約1mg〜水100mLに約50mgの間、一部の実施形態では、水100mLに約1mg〜水100mLに約25mgの間、一部の実施形態では、水100mLに約1mg〜水100mLに約10mgの間、一部の実施形態では、水100mLに約1mg〜水100mLに約5mgの間である場合がある。一部の実施形態では、疎水性の酸は、25℃で本質的に水に不溶性である場合がある。
一部の実施形態では、開示されるナノ粒子は、ナノ粒子を調製する際に使用された任意の疎水性の酸を、調製後は本質的に含んでいなくてもよい。他の実施形態では、開示されるナノ粒子は疎水性の酸を含んでもよい。例えば、一部の実施形態では、酸の、開示されるナノ粒子中の含有量は、約0.05重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約0.5重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約1重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約2重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約3重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約5重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約7重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約10重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約15重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約20重量パーセント〜約30重量パーセントの間、一部の実施形態では、約0.05重量パーセント〜約0.5重量パーセントの間、一部の実施形態では、約0.05重量パーセント〜約5重量パーセントの間、一部の実施形態では、約1重量パーセント〜約5重量パーセントの間、一部の実施形態では、約3重量パーセント〜約10重量パーセントの間、一部の実施形態では、約5重量パーセント〜約15重量パーセントの間、一部の実施形態では、約10重量パーセント〜約20重量パーセントの間でよい。
一部の実施形態では、開示されるナノ粒子は、例えば、室温(例えば25℃)および/または37℃のリン酸緩衝溶液に入れたとき、(例えば、約1分〜約30分、約1分〜約25分、約5分〜約30分、約5分〜約1時間、約1時間、または約24時間かけて、)約2%未満、約5%未満、約10%未満、約15%未満、約20%未満、約25%未満、約30%未満、もしくは40%未満の治療剤しか実質的に直ちに放出しない。
ある特定の実施形態では、治療剤を含むナノ粒子は、例えば25℃および/または37℃の水溶液(例えばリン酸緩衝溶液)に入れたとき、治療剤の約0.01〜約50%、一部の実施形態では約0.01〜約25%、一部の実施形態では約0.01〜約15%、一部の実施形態では約0.01〜約10%、一部の実施形態では約1〜約40%、一部の実施形態では約5〜約40%、および一部の実施形態では約10〜約40%が約1時間かけて放出されるのに実質的に相当する速度で、治療剤を放出し得る。
一部の実施形態では、治療剤を含むナノ粒子は、水溶液(例えば、リン酸緩衝溶液)中に、例えば、25℃にて、および/または37℃にて置かれたとき、治療剤の約10〜約70%、一部の実施形態では、約10〜約45%、一部の実施形態では、約10〜約35%、または一部の実施形態では、約10〜約25%が約4時間にわたり放出されることに実質的に相当する速度で、治療剤を放出し得る。
ある特定の実施形態では、治療剤を含むナノ粒子は、例えば、25℃および/または37℃の水溶液(例えばリン酸緩衝液)に入れたとき、治療剤の約0.01〜約60%、一部の実施形態では約0.01〜約50%、一部の実施形態では約0.01〜約45%、一部の実施形態では約0.01〜約40%、一部の実施形態では約0.01〜約35%、一部の実施形態では約0.01〜約30%、一部の実施形態では約0.01〜約25%、一部の実施形態では約0.01〜約15%、一部の実施形態では約0.01〜約10%、一部の実施形態では約1〜約50%、一部の実施形態では約5〜約50%、一部の実施形態では約10〜約50%、一部の実施形態では約20〜約50%、一部の実施形態では約10〜約30%、一部の実施形態では約1〜約10%が約24時間かけて放出されるのに実質的に相当する速度で、治療剤を放出し得る。
一部の実施形態では、治療剤を含むナノ粒子は、25℃および/または37℃の水溶液(例えばリン酸緩衝溶液)に入れたとき、治療剤の約1〜約70%、一部の実施形態では約2〜約70%、一部の実施形態では約5〜約70%、一部の実施形態では約10〜約70%、一部の実施形態では約20〜約70%、一部の実施形態では約30〜約70%、一部の実施形態では約1〜約60%、一部の実施形態では約1〜約50%、一部の実施形態では約1〜約40%、一部の実施形態では約1〜約30%、一部の実施形態では約1〜約20%、一部の実施形態では約1〜約10%、一部の実施形態では約5〜約35%、または一部の実施形態では約25〜約60%が約50時間かけて放出されるのに実質的に相当する速度で、治療剤を放出し得る。
一部の実施形態では、開示されるナノ粒子は、37℃のリン酸緩衝溶液に入れたとき、治療剤を、例えば、少なくとも約1分間、少なくとも約1時間、またはそれ超の間実質的に保持し得る。
一般に、「ナノ粒子」は、1000nm未満、例えば、約10nm〜約200nmの直径を有する任意の粒子を指す。開示されている治療用ナノ粒子は、約60〜約120nm、または約70〜約120nm、または約80〜約120nm、または約90〜約120nm、または約100〜約120nm、または約60〜約130nm、または約70〜約130nm、または約80〜約130nm、または約90〜約130nm、または約100〜約130nm、または約110〜約130nm、または約60〜約140nm、または約70〜約140nm、または約80〜約140nm、または約90〜約140nm、または約100〜約140nm、または約110〜約140nm、または約60〜約150nm、または約70〜約150nm、または約80〜約150nm、または約90〜約150nm、または約100〜約150nm、または約110〜約150nm、または約120〜約150nmの直径を有するナノ粒子を含み得る。
ポリマー
一部の実施形態では、ナノ粒子は、ポリマーのマトリックスと治療剤とを含んでいてもよい。一部の実施形態では、治療剤は、ポリマーマトリックスの少なくとも一部と会合させることができる。治療剤は、ポリマーマトリックスの表面と会合するか、ポリマーマトリックス内にカプセル化されるか、ポリマーマトリックスによって囲まれるか、かつ/またはポリマーマトリックスにわたって分散し得る。
任意の適切なポリマーを、開示されているナノ粒子において使用することができる。ポリマーは、天然または非天然(合成)のポリマーでよい。ポリマーは、2種またはそれ超のモノマーを含むホモポリマーまたはコポリマーでよい。配列に関して、コポリマーは、ランダム、ブロックでよいか、またはランダムおよびブロック配列の組合せを含むことができる。典型的には、ポリマーは、有機ポリマーである。
用語「ポリマー」は、本明細書において使用する場合、当技術分野で使用されるようなその通常の意味を与えられ、すなわち、分子構造は、共有結合によって連結した1つまたは複数の繰り返し単位(モノマー)を含む。繰り返し単位は、全て同一であり得るか、または場合によって、ポリマー内に存在する2種以上のタイプの繰り返し単位があり得る。場合によって、ポリマーは、生物学的に由来するもの、すなわち、生体ポリマーでよい。非限定的な例には、ペプチドまたはタンパク質が含まれる。場合によって、さらなる部分、例えば、生物学的部分、例えば、下記に記載したものがまた、ポリマー中に存在し得る。2種以上のタイプの繰り返し単位がポリマー内に存在する場合、ポリマーは、「コポリマー」と言われる。ポリマーを用いる任意の実施形態では、用いられるポリマーは、場合によって、コポリマーであり得ることを理解すべきである。コポリマーを形成する繰り返し単位は、任意の様式で配置し得る。例えば、繰り返し単位は、ランダムな順序で、交互の順序で、またはブロックコポリマーとして配置してもよく、すなわち、それぞれが第1の繰り返し単位(例えば、第1のブロック)を含む1つまたは複数の領域、およびそれぞれが第2の繰り返し単位(例えば、第2のブロック)を含む1つまたは複数の領域などを含む。ブロックコポリマーは、2つ(ジブロックコポリマー)、3つ(トリブロックコポリマー)、またはそれ超の数の別個のブロックを有し得る。
開示されている粒子は、コポリマーを含むことができ、これは一部の実施形態では、通常、2種またはそれ超のポリマーが一緒の共有結合によって互いに会合している、2種またはそれ超のポリマー(例えば、本明細書に記載されているもの)を説明する。このように、コポリマーは、第1のポリマーおよび第2のポリマーを含んでいてもよく、これらは一緒にコンジュゲートされて、ブロックコポリマーを形成し、第1のポリマーは、ブロックコポリマーの第1のブロックでよく、第2のポリマーは、ブロックコポリマーの第2のブロックでよい。当然ながら、ブロックコポリマーは、場合によって、ポリマーの複数のブロックを含有してもよく、「ブロックコポリマー」は、本明細書において使用する場合、単一の第1のブロックおよび単一の第2のブロックのみを有するブロックコポリマーのみに限定されないことを当業者は理解する。例えば、ブロックコポリマーは、第1のポリマーを含む第1のブロック、第2のポリマーを含む第2のブロック、および第3のポリマーまたは第1のポリマーなどを含む第3のブロックを含み得る。場合によって、ブロックコポリマーは、任意の数の第1のポリマーの第1のブロック、および第2のポリマーの第2のブロック(およびある特定の場合では、第3のブロック、第4のブロックなど)を含有することができる。さらに、ブロックコポリマーはまた、場合によって、他のブロックコポリマーから形成することができることに留意すべきである。例えば、第1のブロックコポリマーは、別のポリマー(ホモポリマー、生体ポリマー、別のブロックコポリマーなどでよい)にコンジュゲートして複数のタイプのブロックを含有する新規なブロックコポリマーを形成し、かつ/または他の部分(例えば、非ポリマー部分)にコンジュゲートし得る。
一部の実施形態では、ポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)は、両親媒性でよく、すなわち、親水性部分および疎水性部分、または相対的に親水性部分および相対的に疎水性部分を有する。親水性ポリマーは、一般に水を引きつけるものでよく、疎水性ポリマーは、一般に水をはねかえすものでよい。親水性または疎水性ポリマーは、例えば、ポリマーの試料を調製し、水とのその接触角を測定する(典型的には、ポリマーは、60°未満の接触角を有し、一方、疎水性ポリマーは、約60°超の接触角を有する)ことによって同定することができる。場合によって、2種またはそれ超のポリマーの親水性は、互いに対して測定してもよく、すなわち、第1のポリマーは、第2のポリマーより親水性であり得る。例えば、第1のポリマーは、第2のポリマーより小さな接触角を有し得る。
一組の実施形態では、本明細書において企図されるポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)は、生体適合性ポリマー、すなわち、典型的には、生きている対象中に挿入または注射されたとき、例えば、T細胞応答によるかなりの炎症および/または免疫系によるポリマーの急性拒絶を伴わずに有害な応答を惹起しないポリマーを含む。したがって、本明細書において企図される治療用粒子は、非免疫原性であり得る。非免疫原性という用語は、本明細書において使用する場合、循環抗体、T細胞、もしくは反応性免疫細胞を通常引き起こさないか、または最小レベルのみを引き起こし、個体においてそれ自体に対する免疫応答を通常引き起こさない、その天然状態における内在性成長因子を指す。
生体適合性は典型的には、免疫系の少なくとも一部による材料の急性拒絶を指し、すなわち、対象中に植え込んだ非生体適合性材料が、対象において十分に重大であり得る免疫応答を誘発し、免疫系による材料の拒絶は、適当に制御することができず、材料を対象から除去しなくてはならないような程度であることが多い。生体適合性を決定するための1つの単純な試験は、ポリマーを細胞へとin vitroで曝露させることでよい。生体適合性ポリマーは、典型的には中程度の濃度で、例えば、50マイクログラム/106個の細胞の濃度でかなりの細胞死をもたらさないポリマーである。例えば、生体適合性ポリマーは、細胞、例えば、線維芽細胞または上皮細胞に曝露したとき、たとえこのような細胞によって貪食されるか、そうでなければ取り込まれるかしても、約20%未満の細胞死をもたらし得る。様々な実施形態において有用であり得る生体適合性ポリマーの非限定的な例には、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(グリセロールセバシン酸)、ポリグリコリド(すなわち、ポリ(グリコール)酸)(PGA)、ポリラクチド(すなわち、ポリ(乳)酸)(PLA)、ポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸(PLGA)、ポリカプロラクトン、またはこれらおよび/もしくは他のポリマーを含めたコポリマーまたは誘導体が含まれる。
ある特定の実施形態では、企図される生体適合性ポリマーは、生分解性でよく、すなわち、ポリマーは、生理学的環境内、例えば、体内で、化学的および/または生物学的に分解することができる。本明細書において使用する場合、「生分解性」ポリマーは、細胞中に導入されるとき、細胞の機構によって(生物学的に分解可能)、および/または化学プロセス、例えば、加水分解によって(化学的に分解可能)、細胞に対してかなりの毒性効果を伴わずに細胞が再使用または処分することができる成分へと分解されるものである。一実施形態では、生分解性ポリマーおよびこれらの分解副生成物は、生体適合性であり得る。
本明細書において開示されている粒子は、PEGを含有してもよいか、またはしなくてもよい。さらに、ある特定の実施形態は、ポリ(エステル−エーテル)を含有するコポリマー、例えば、エステル結合(例えば、R−C(O)−O−R’結合)およびエーテル結合(例えば、R−O−R’結合)によって結合した繰り返し単位を有するポリマーを対象とすることができる。一部の実施形態では、生分解性ポリマー、例えば、カルボン酸基を含有する加水分解性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)繰り返し単位とコンジュゲートして、ポリ(エステル−エーテル)を形成し得る。ポリ(エチレングリコール)繰り返し単位を含有するポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)はまた、「ペグ化」ポリマーと称することができる。
例えば、企図されるポリマーは、(例えば、対象内で)水への曝露によって自発的に加水分解するものでよいか、またはポリマーは、(例えば、約37℃の温度での)熱への曝露によって分解し得る。ポリマーの分解は、使用するポリマーまたはコポリマーによって様々な速度で起こり得る。例えば、ポリマーの半減期(ポリマーの50%がモノマーおよび/または他の非ポリマー部分に分解することができる時間)は、ポリマーによって数日、数週間、数カ月、または数年程度であり得る。ポリマーは、例えば、酵素活性または細胞の機構によって、場合によって、例えば、リゾチーム(例えば、相対的に低pHを有する)への曝露によって、生物学的に分解し得る。場合によって、ポリマーは、細胞に対して有意な毒性効果を伴わずに、細胞が再使用するか、または処分することができる、モノマーおよび/または他の非ポリマー部分に分解し得る(例えば、ポリラクチドは加水分解して、乳酸を形成し得、ポリグリコリドは加水分解して、グリコール酸などを形成し得る)。
一部の実施形態では、ポリマーは、本明細書において「PLGA」と集団的に称される、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー、例えば、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)およびポリ(ラクチド−co−グリコリド);ならびに本明細書において「PGA」と称される、グリコール酸単位、ならびに本明細書において「PLA」と集団的に称される、乳酸単位、例えば、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、およびポリ−D,L−ラクチドを含むホモポリマーを含めた、ポリエステルであり得る。一部の実施形態では、例示的なポリエステルには、例えば、ポリヒドロキシ酸;ラクチドおよびグリコリドのペグ化ポリマーおよびコポリマー(例えば、ペグ化PLA、ペグ化PGA、ペグ化PLGA、およびその誘導体)が含まれる。一部の実施形態では、ポリエステルは、例えば、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ペグ化ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、ペグ化ポリ(カプロラクトン)、ポリリシン、ペグ化ポリリシン、ポリ(エチレンイミン)、ペグ化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(L−ラクチド−co−L−リシン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸]、およびその誘導体を含む。
一部の実施形態では、ポリマーは、PLGAであり得る。PLGAは、乳酸およびグリコール酸の生体適合性および生分解性コポリマーであり、様々な形態のPLGAは、乳酸:グリコール酸の比によって特性決定することができる。乳酸は、L−乳酸、D−乳酸、またはD,L−乳酸でよい。PLGAの分解速度は、乳酸−グリコール酸の比を変化させることによって調節することができる。一部の実施形態では、PLGAは、概ね85:15、概ね75:25、概ね60:40、概ね50:50、概ね40:60、概ね25:75、または概ね15:85の乳酸:グリコール酸比によって特性決定することができる。一部の実施形態では、粒子のポリマー(例えば、PLGAブロックコポリマーまたはPLGA−PEGブロックコポリマー)中の乳酸のグリコール酸モノマーに対する比を選択して、様々なパラメータ、例えば、水の取込み、治療剤の放出および/またはポリマー分解の反応速度について最適化し得る。
一部の実施形態では、ポリマーは、1種または複数のアクリルポリマーであり得る。ある特定の実施形態では、アクリルポリマーは、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリアクリルアミド、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、メタクリル酸グリシジルコポリマー、ポリシアノアクリレート、および上記のポリマーの1つまたは複数を含む組合せを含む。アクリルポリマーは、低含量の第四級アンモニウム基を有するアクリル酸およびメタクリル酸エステルの完全に重合されたコポリマーを含み得る。
一部の実施形態では、ポリマーは、カチオン性ポリマーでよい。一般に、カチオン性ポリマーは、負に帯電している核酸鎖(例えば、DNA、RNA、またはその誘導体)を凝縮および/または保護することができる。アミン含有ポリマー、例えば、ポリ(リシン)、ポリエチレンイミン(PEI)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマーは、一部の実施形態では、開示されている粒子における使用のために企図される。
一部の実施形態では、ポリマーは、カチオン性側鎖を担持する分解性ポリエステルでよい。これらのポリエステルの例には、ポリ(L−ラクチド−co−L−リシン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)が含まれる。
PEGは、終端しており、末端基を含んでいてもよいことが企図されている。例えば、PEGは、ヒドロキシル、メトキシもしくは他のアルコキシル基、メチルもしくは他のアルキル基、アリール基、カルボン酸、アミン、アミド、アセチル基、グアニジノ基、またはイミダゾールで終端し得る。他の企図される末端基には、アジド、アルキン、マレイミド、アルデヒド、ヒドラジド、ヒドロキシルアミン、アルコキシアミン、またはチオール部分が含まれる。
当業者は、例えば、開環重合技術(ROMP)などによって、ポリマーをアミンで終端しているPEG基に反応させるEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)およびNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)を使用することによって、ポリマーをペグ化するための方法および技術について知っている。
一実施形態では、ポリマーの分子量(または、例えば、コポリマーの異なるブロックの分子量の比)は、本明細書に開示されている有効な処置のために最適化することができる。例えば、ポリマーの分子量は、粒子分解速度(例えば、生分解性ポリマーの分子量を調節することができるとき)、溶解度、水の取込み、および薬物放出動態に影響を与えてもよい。例えば、ポリマーの分子量(または、例えば、コポリマーの異なるブロックの分子量の比)は、粒子が合理的な期間(数時間から1〜2週間、3〜4週間、5〜6週間、7〜8週間などの範囲)内で、処置される対象において生分解するように調節することができる。
開示されている粒子は、例えば、PEGおよびPL(G)Aのジブロックコポリマーを含むことができ、例えば、PEG部分は、約1,000〜20,000、例えば、約2,000〜20,000、例えば、約2〜約10,000の数平均分子量を有してもよく、PL(G)A部分は、約5,000〜約20,000、または約5,000〜100,000、例えば、約20,000〜70,000、例えば、約15,000〜50,000の数平均分子量を有してもよい。
例えば、約10〜約99重量パーセントのポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、または約20〜約80重量パーセント、約40〜約80重量パーセント、もしくは約30〜約50重量パーセント、もしくは約70〜約90重量パーセントのポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを含む例示的な治療用ナノ粒子が本明細書において開示される。例示的なポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、約15〜約20kDa、または約10〜約25kDaの数平均分子量のポリ(乳)酸および約4〜約6、または約2kDa〜約10kDaの数平均分子量のポリ(エチレン)グリコールを含むことができる。
一部の実施形態では、ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、約0.6〜約0.95、一部の実施形態では、約0.7〜約0.9、一部の実施形態では、約0.6〜約0.8、一部の実施形態では、約0.7〜約0.8、一部の実施形態では、約0.75〜約0.85、一部の実施形態では、約0.8〜約0.9、および一部の実施形態では、約0.85〜約0.95の数平均分子量比率のポリ(乳)酸を有し得る。ポリ(乳)酸の数平均分子量比率は、コポリマーのポリ(乳)酸成分の数平均分子量を、ポリ(乳)酸成分の数平均分子量およびポリ(エチレン)グリコール成分の数平均分子量の合計で除することによって計算し得ることを理解すべきである。
開示されているナノ粒子は、約1〜約50重量パーセントのポリ(乳)酸またはポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸(PEGを含まない)を場合により含んでいてもよいか、または約1〜約50重量パーセント、もしくは約10〜約50重量パーセントもしくは約30〜約50重量パーセントのポリ(乳)酸もしくはポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸を場合により含んでいてもよい。例えば、ポリ(乳)酸またはポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸は、約5〜約15kDa、または約5〜約12kDaの数平均分子量を有し得る。例示的なPLAは、約5〜約10kDaの数平均分子量を有し得る。例示的なPLGAは、約8〜約12kDaの数平均分子量を有し得る。
治療用ナノ粒子は、一部の実施形態では、約10〜約30重量パーセント、一部の実施形態では、約10〜約25重量パーセント、一部の実施形態では、約10〜約20重量パーセント、一部の実施形態では、約10〜約15重量パーセント、一部の実施形態では、約15〜約20重量パーセント、一部の実施形態では、約15〜約25重量パーセント、一部の実施形態では、約20〜約25重量パーセント、一部の実施形態では、約20〜約30重量パーセント、または一部の実施形態では、約25〜約30重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを含有してもよく、ポリ(エチレン)グリコールは、ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、ポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、またはポリ(エチレン)グリコールホモポリマーとして存在し得る。ある特定の実施形態では、ナノ粒子のポリマーは、脂質にコンジュゲートすることができる。ポリマーは、例えば、脂質末端PEGでよい。
ナノ粒子の調製
本開示の別の態様は、開示されているナノ粒子を作製する系および方法を対象とする。異なる比の2種またはそれ超の異なるポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)を使用し、かつポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)から粒子を生成する一部の実施形態では、粒子の特性は制御される。例えば、ポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)は、その生体適合性および/または生成した粒子の免疫原性を制御するその能力のために選択し得る。
一部の実施形態では、ナノ粒子調製プロセス(例えば、以下で論述するとおりのナノ沈殿プロセスまたはナノエマルジョンプロセス)において使用される溶媒が、疎水性の酸を含んでもよく、これにより、そのプロセスを使用して調製されたナノ粒子に有利な特性を付与することができる。上で論述したとおり、場合によって、疎水性の酸は、開示されるナノ粒子の薬物添加量を改善し得る。さらに、場合によって、開示されるナノ粒子の制御放出特性は、疎水性の酸の使用によって改善し得る。場合によって、疎水性の酸は、例えば、プロセスにおいて使用される有機溶液または水溶液中に含まれていてもよい。一実施形態では、薬物を、有機溶液および疎水性の酸、ならびに場合により1種または複数のポリマーと合わせる。薬物を溶解させるのに使用される溶液中の疎水性の酸の濃度は、上で論述しており、例えば、約1重量パーセント〜約30重量パーセントの間などでよい。
一実施形態では、図1、図2A、および図2Bに表されるプロセスなどのナノエマルジョンプロセスが提供される。例えば、治療剤、場合により、疎水性の酸、第1のポリマー(例えば、PLA−PEGまたはPLGA−PEGなどのジブロックコポリマー)、および任意選択の第2のポリマー(例えば、PL(G)A−PEGまたはPLA)を、有機溶液と合わせて、第1の有機相を形成することができる。このような第1の相は、約1〜約50重量%の固体、約5〜約50重量%の固体、約5〜約40重量%の固体、約1〜約15重量%の固体、または約10〜約30重量%の固体を含み得る。第1の有機相を、疎水性の酸を場合により含有する第1の水相と合わせて、第2の相を形成することができる。有機溶液は、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ベンジルアルコール、Tween80、Span80など、およびこれらの組合せを含むことができる。ある実施形態では、有機相は、ベンジルアルコール、酢酸エチル、およびこれらの組合せを含み得る。第2の相は、約0.1〜50重量%、約1〜50重量%、約5〜40重量%、または約1〜15重量%の固体でよい。水相は、コール酸ナトリウム、酢酸エチル、ポリ酢酸ビニルおよびベンジルアルコールの1つまたは複数と組み合わせてもよい水であり得る。
一部の実施形態では、水相のpHは、プロトン化された治療剤のpKaおよび/または疎水性の酸のpKaに基づいて選択することができる。例えば、ある特定の実施形態では、治療剤は、プロトン化されているとき、第1のpKaを有する場合があり、疎水性の酸は、第2のpKaを有する場合があり、水相は、第1のpKaと第2のpKaの間のpKa単位に等しいpHを有する場合がある。特定の実施形態では、水相のpHは、第1のpKaと第2のpKaのほぼ中間にあるpKa単位に等しい場合がある。
例えば、油または有機相は、非溶媒(水)と部分的にのみ混和性である溶媒を使用し得る。したがって、十分に低い比で混合したとき、および/または有機溶媒で事前飽和された水を使用するとき、油相は液体のままである。例えば、高エネルギー分散システム、例えば、ホモジナイザーまたはソニケーターを使用して、油相を、水相に乳化し、液滴として、ナノ粒子に剪断し得る。エマルジョンの水性部分は、場合によっては「水相」としても公知であるが、これはコール酸ナトリウムからなり、酢酸エチルおよびベンジルアルコールで事前飽和されている界面活性剤溶液でよい。一部の例では、有機相(例えば、第1の有機相)が、治療剤を含む場合がある。加えて、ある特定の実施形態では、水相(例えば、第1の水相)が、実質的に疎水性の酸を含む場合もある。他の実施形態では、治療剤と、実質的に疎水性の酸の両方を、有機相に溶解させることができる。
第2の相を乳化して、例えば、1つまたは2つの乳化ステップにおいてエマルジョン相を形成することを行い得る。例えば、一次エマルジョンを調製し、次いで、乳化して、ファインエマルジョンを形成し得る。例えば、単純な混合、高圧ホモジナイザー、プローブソニケーター、撹拌棒、またはローターステーターホモジナイザーを使用して、一次エマルジョンを形成することができる。例えば、プローブソニケーターまたは高圧ホモジナイザーの使用によって、例えば、ホモジナイザーを通す1、2、3、またはそれ超のパスを使用することによって、一次エマルジョンをファインエマルジョンに形成し得る。例えば、高圧ホモジナイザーが使用されるとき、使用される圧力は、約30〜約60psi、約40〜約50psi、約1000〜約8000psi、約2000〜約4000psi、約4000〜約8000psi、または約4000〜約5000psi、例えば、約2000、2500、4000または5000psiであり得る。
場合によって、エマルジョンにおける液滴の表面対体積比が非常に高いことを特徴とし得るファインエマルジョン条件を選択して、治療剤および疎水性の酸の溶解度を最大にし、所望のHIPを形成させてもよい。ある特定の実施形態では、ファインエマルジョン条件下において、溶解した成分の平衡が非常に迅速に、すなわち、ナノ粒子の凝固より急速に起こり得る。したがって、例えば治療剤と疎水性の酸のpKa差に基づきHIPを選択する、またはファインエマルジョンのpHおよび/またはクエンチ溶液のpHなどの他のパラメータを調整することで、例えば、ナノ粒子の外での治療剤および/または疎水性の酸の拡散とは対照的に、ナノ粒子中でのHIPの形成が決定づけられることにより、ナノ粒子の薬物添加量および放出特性に有意な影響を及ぼすことができる。
一部の実施形態では、治療剤と実質的に疎水性の酸を、第2の相において、第2の相を乳化する前に合わせてもよい。一部の例では、第2の相を乳化する前に、治療剤と実質的に疎水性の酸が疎水性イオン対を形成し得る。他の実施形態では、第2の相が乳化される間に、治療剤と実質的に疎水性の酸が疎水性イオン対を形成し得る。例えば、治療剤と実質的に疎水性の酸は、第2の相において、第2の相を乳化するのと実質的に併行して合わせることができ、例えば、治療剤および実質的に疎水性の酸を、別個の溶液(例えば、2種の実質的に不混和性の溶液)に溶解させ、次いでこれを、乳化の際に合わせることができる。別の例では、治療剤および実質的に疎水性の酸を、別個の混和性の溶液に溶解させ、次いでこれを、乳化の際に、第2の相に送ることができる。
溶媒の抽出を完了し、粒子を凝固するために、溶媒蒸発または希釈を必要とし得る。抽出の反応速度およびよりスケーラブルなプロセスのより良好な制御のために、水性クエンチによる溶媒希釈を使用し得る。例えば、エマルジョンは、有機溶媒の全てを溶解するのに十分な濃度まで冷水に希釈して、クエンチされた相を形成することができる。一部の実施形態では、クエンチを約5℃またはそれ未満の温度で少なくとも部分的に行い得る。例えば、クエンチにおいて使用される水は、室温未満(例えば、約0〜約10℃、または約0〜約5℃)である温度であり得る。ある特定の実施形態では、エマルジョン相をクエンチするのに有利なpHを有するクエンチは、例えば、ナノ粒子の特性、例えば、放出プロファイルを改善するか、またはナノ粒子のパラメータ、例えば、薬物添加量を改善することによって選択し得る。クエンチのpHは、例えば、酸もしくは塩基滴定によって、または緩衝液の適当な選択によって調節し得る。一部の実施形態では、プロトン化された治療剤のpKaおよび/または疎水性の酸のpKaに基づき、クエンチのpHを選択することができる。例えば、ある特定の実施形態では、治療剤は、プロトン化されているとき、第1のpKaを有する場合があり、疎水性の酸は、第2のpKaを有する場合があり、エマルジョン相は、第1のpKaと第2のpKaの間のpKa単位に等しいpHを有する水溶液でクエンチされる場合がある。一部の実施形態では、得られた、クエンチされた相も、第1のpKaと第2のpKaの間のpKa単位に等しいpHを有する場合がある。特定の実施形態では、pHは、第1のpKaと第2のpKaのほぼ中間にあるpKa単位に等しい場合がある。
ある特定の実施形態では、乳化の間または後に、例えば、ファインエマルジョンにおける平衡条件の結果として、HIP形成が生じる場合がある。理論に束縛されるものではないが、有機可溶性の対イオン(すなわち、疎水性の酸)は、HIP形成の結果として、エマルジョンのナノ粒子への治療剤の拡散を促進し得ると考えられる。理論に束縛されるものではないが、ナノ粒子中でのHIPの溶解度は、エマルジョンの水相および/またはクエンチへのHIPの溶解度より高いため、HIPは、ナノ粒子の凝固前に、ナノ粒子中に残存し得る。例えば、クエンチに、治療剤のpKaと疎水性の酸のpKaの間にあるpHを選択することにより、イオン化された治療剤および疎水性の酸の形成を最適化することができる。しかし、高すぎるpHを選択すると、疎水性の酸をナノ粒子の外に拡散させる結果につながりかねず、一方、低すぎるpHを選択すると、治療剤をナノ粒子の外に拡散させる結果につながりかねない。
一部の実施形態では、クエンチは、水への溶解性を少なくとも多少有する実質的に疎水性の酸を含む場合がある。例えば、一部の実施形態では、水への溶解性を少なくとも多少有する実質的に疎水性の酸は、6個〜16個の間の炭素原子、一部の実施形態では、6個〜12個の間の炭素原子、一部の実施形態では、6個〜10個の間の炭素原子、一部の実施形態では、8個〜16個の間の炭素原子、一部の実施形態では、10個〜16個の間の炭素原子、または一部の実施形態では、12個〜16個の間の炭素原子を含んでいる場合がある。水への溶解性を少なくとも多少有する実質的に疎水性の酸の非限定的な例としては、カプロン酸(すなわち、ヘキサン酸)、エナント酸(すなわち、ヘプタン酸)、カプリル酸(すなわち、オクタン酸)、ペラルゴン酸(すなわち、ノナン酸)、カプリン酸(すなわち、デカン酸)、ウンデカン酸、ラウリン酸(すなわち、ドデカン酸)、トリデカン酸、ミリスチン酸(すなわち、テトラデカン酸)、ペンタデカン酸、パルミチン酸(すなわち、ヘキサデカン酸)、ケイ皮酸、フェニル酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジオクチルスルホコハク酸、ジオレオイルホスファチジン酸、胆汁酸(例えば、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、コール酸、およびリトコール酸)、およびこれらの組合せが挙げられる。
一部の実施形態では、水への溶解性を少なくとも多少有する実質的に疎水性の酸は、2種以上の実質的に疎水性の酸の混合物である場合もある。
一部の実施形態では、クエンチ中の実質的に疎水性の酸は、エマルジョン相の生成に使用される水相および/または有機相中の実質的に疎水性の酸に加えて存在する場合がある。他の実施形態では、クエンチは、実質的に疎水性の酸を含む場合があり、エマルジョン相の生成に使用される水相および/または有機相は、実質的に疎水性の酸を本質的に含まない場合がある。ある特定の実施形態では、クエンチ中の実質的に疎水性の酸は、企図される製剤の他の場所(例えば、エマルジョンの形成に使用される水相および/または有機相)において使用される実質的に疎水性の酸と同じである場合がある。ある特定の実施形態では、クエンチ中の実質的に疎水性の酸は、企図される製剤の他の場所(例えば、エマルジョンの形成に使用される水相および/または有機相)において使用される実質的に疎水性の酸と異なるある場合がある。
ある特定の実施形態では、実質的に疎水性の酸を含むクエンチを使用してエマルジョン相をクエンチすることで、企図されるナノ粒子に治療剤を添加するためのカプセル化効率を向上させることができる。例えば、一部の実施形態では、カプセル化効率は、約50%〜約100%の間、一部の実施形態では、約75%〜約100%の間、一部の実施形態では、約85%〜約100%の間、一部の実施形態では、約90%〜約100%の間、一部の実施形態では、約95%〜約100%の間となり得る。ある特定の実施形態では、カプセル化効率は、約100%となり得る。一部の実施形態では、水への溶解性を少なくとも多少有する実質的に疎水性の酸を含んだクエンチを含む方法を使用して調製されたナノ粒子は、有利なことに、実質的に疎水性の酸を含有しないクエンチを使用して調製されたナノ粒子に比べて、薬物添加量がより高くなる場合がある。
一部の実施形態では、企図されるナノ粒子の調製に使用されるクエンチに、水への溶解性を少なくとも多少有する実質的に疎水性の酸を含めることで、企図されるナノ粒子の放出特性に影響を及ぼすことができる。例えば、ある特定の実施形態では、ナノ粒子からの治療剤の放出速度は、クエンチ中の実質的に疎水性の酸の分子量が減らされると、増大する場合がある。
一部の実施形態では、ナノ粒子形成プロセスにおいて使用する水溶液(例えば、限定はしないが、水相、エマルジョン相、クエンチ、およびクエンチされた相を含める)のpHは、独立に選択することができ、約1〜約3の間、一部の実施形態では、約2〜約4の間、一部の実施形態では、約3〜約5の間、一部の実施形態では、約4〜約6の間、一部の実施形態では、約5〜約7の間、一部の実施形態では、約6〜約8の間、一部の実施形態では、約7〜約9の間、および一部の実施形態では、約8〜約10の間でよい。ある特定の実施形態では、ナノ粒子形成プロセスにおいて使用する水溶液のpHは、約3〜約4の間、一部の実施形態では、約4〜約5の間、一部の実施形態では、約5〜約6の間、一部の実施形態では、約6〜約7の間、一部の実施形態では、約7〜約8の間、一部の実施形態では、約8〜約9の間でよい。
一部の実施形態では、この段階において治療剤の全ては粒子中にカプセル化されておらず、薬物可溶化剤をクエンチされた相に加え、可溶化した相を形成させる。薬物可溶化剤は、例えば、Tween80、Tween20、ポリビニルピロリドン、シクロデキストラン、ドデシル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ジエチルニトロソアミン、酢酸ナトリウム、尿素、グリセリン、プロピレングリコール、グリコフロール、ポリ(エチレン)グリコール、ビス(ポリオキシエチレングリコール)ドデシルエーテル、安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、またはこれらの組合せであり得る。例えば、Tween−80をクエンチしたナノ粒子懸濁液に加えて、遊離薬物を可溶化し、薬物結晶の形成を防止し得る。一部の実施形態では、薬物可溶化剤の治療剤に対する比は、約200:1〜約10:1であり、または一部の実施形態では、約100:1〜約10:1である。
可溶化した相を濾過して、ナノ粒子を回収し得る。例えば、限外濾過膜を使用して、ナノ粒子懸濁液を濃縮し、有機溶媒、遊離薬物(すなわち、カプセル化されていない治療剤)、薬物可溶化剤、および他の処理助剤(界面活性剤)を実質的に排除し得る。例示的な濾過は、タンジェンシャルフロー濾過系を使用して行い得る。例えば、溶質、ミセル、および有機溶媒が通過することを可能とする一方で、ナノ粒子を保持するのに適切な孔径を有する膜を使用することによって、ナノ粒子は、選択的に分離することができる。約300〜500kDa(約5〜25nm)の分画分子量を有する例示的な膜を使用し得る。
一定容量アプローチを使用してダイアフィルトレーションを行ってもよく、これは濾液が懸濁液から除去されるのと同じ速度で、ダイアフィルトレート(冷たい脱イオン水、例えば、約0〜約5℃、または0〜約10℃)を、供給懸濁液に加えてもよいことを意味する。一部の実施形態では、フィルタリングは、約0〜約5℃、または0〜約10℃の第1の温度、および約20〜約30℃、または15〜約35℃の第2の温度を使用した第1のフィルタリングを含み得る。一部の実施形態では、フィルタリングは、約1〜約30、場合によって、約1〜約15、または場合によって、1〜約6ダイアボリュームを処理することを含み得る。例えば、フィルタリングは、約0〜約5℃にて、約1〜約30、または場合によって、約1〜約6ダイアボリュームを処理し、約20〜約30℃にて、少なくとも1ダイアボリューム(例えば、約1〜約15、約1〜約3、または約1〜約2ダイアボリュームダイアボリューム)を処理することを含み得る。一部の実施形態では、フィルタリングは、異なる別個の温度にて異なるダイアボリュームを処理することを含む。
ナノ粒子懸濁液を精製および濃縮した後、粒子は、例えば、約0.2μmのデプスプレフィルターを使用した、1つ、2つまたはそれ超の無菌化および/またはデプスフィルターを通して通過させ得る。例えば、除菌濾過ステップは、制御された速度で濾過トレインを使用して治療用ナノ粒子をフィルタリングすることを含み得る。一部の実施形態では、濾過トレインは、デプスフィルターおよび無菌フィルターを含み得る。
ナノ粒子を調製する別の実施形態では、治療剤とポリマー(ホモポリマーとコポリマー)の混合物から構成される有機相が形成される。この有機相を、界面活性剤およびいくらかの溶解した溶媒から構成される水相と、概ね1:5の比(油相:水相)で混合する。一次エマルジョンは、単純に混合しながら、またはローターステーターホモジナイザーの使用によって、2つの相の組合せによって形成される。次いで、一次エマルジョンを、高圧ホモジナイザーの使用によって、ファインエマルジョンに形成する。次いで、混合しながら脱イオン水を加えて、ファインエマルジョンをクエンチする。一部の実施形態では、クエンチ:エマルジョン比は、約2:1〜約40:1、または一部の実施形態では、約5:1〜約15:1でよい。一部の実施形態では、クエンチ:エマルジョン比は、概ね8.5:1である。次いで、クエンチにTween(例えば、Tween80)の溶液を加えて、Tweenを全体で概ね2%を達成する。これは、カプセル化されていない遊離の治療剤を溶解させるのに役立つ。次いで、遠心分離または限外濾過/ダイアフィルトレーションのいずれかによってナノ粒子を単離する。
製剤の調製において使用されるポリマー、治療剤、および疎水性の酸の量は、最終製剤と異なる場合もあると理解される。例えば、治療剤のいくらかは、ナノ粒子に完全には組み込まれず、そのような遊離治療剤は、例えば、濾別される場合もある。例えば、一実施形態では、約9%の第1の疎水性の酸(例えば、脂肪酸)を含有する第1の有機溶液中に約11重量パーセントの理論添加量の治療剤を含有する第1の有機溶液と、約89重量パーセントのポリマー(例えば、ポリマーは、PLA−PEGを含む場合がある)を含有する第2の有機溶液と、約0.12%の第2の疎水性の酸を含有する水溶液とが、例えば、約2重量パーセントの治療剤、約97.5重量パーセントのポリマー、および合計約0.5%の疎水性の酸を含む最終ナノ粒子をもたらす製剤の調製において使用される場合がある。このようなプロセスは、約1〜約20重量パーセントの治療剤、例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約8、約10、または約15重量パーセントの治療剤を含む、患者への投与に適する最終ナノ粒子を提供することができる。
治療剤
企図されるナノ粒子は、適切ないかなる治療剤も含有し得る。公知の薬剤の適切なリストは、当業者によく知られており、そうしたリストとして、これらに限定されないが、それぞれが参照により本明細書に組み込まれるthe Merck Indexおよびthe FDA Orange Bookが挙げられる。
企図されるナノ粒子は、例えば、薬物を含有する粒子を対象内の特定の局限された場所に向かわせるのに標的化部分を使用して、例えば、薬物の局所的な送達がなされるのを可能にし得る実施形態において有用となり得る。一式の実施形態において、1種を超える治療剤の組合せを使用してもよい。
治療剤の非限定的な例としては、化学療法剤、例えば、Bcr−Ablチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ、およびバフェチニブ)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ゲムシタビン(gemzar)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、ベノレルビン(venorelbine)、5−フルオロウラシル(5−FU)、ビンブラスチンもしくはビンクリスチンなどのビンカアルカロイド、ブレオマイシン、パクリタキセル(taxol)、ドセタキセル(taxotere)、カバジタキセル、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT−11、10−ヒドロキシ−7−エチルカンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、S−Iカペシタビン、ftorafur、5’デオキシフルオロウリジン、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5−アザシトシン、5−アザデオキシシトシン、アロプリノール、2−クロロアデノシン、トリメトレキセート、アミノプテリン、メチレン−10−デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサプラチン(oxaplatin)、ピコプラチン、テトラプラチン(tetraplatin)、サトラプラチン、白金−DACH、オルマプラチン(ormaplatin)、CI−973、JM−216、およびこれらの類似体、エピルビシン、リン酸エトポシド、9−アミノカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン(karenitecin)、9−ニトロカンプトテシン、TAS103、ビンデシン、L−フェニルアラニンマスタード、イホスファミドメホスファミド(ifosphamidemefosphamide)、ペルホスファミド(perfosfamide)、トロホスファミド(trophosphamide) カルムスチン、セムスチン、エポチロンA〜E、tomudex、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アムサクリン、リン酸エトポシド、カレニテシン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、5−フルオロウラシル、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
潜在的に適切な併用薬物の非限定的な例としては、例えば、カバジタキセル、ミトキサントロン、およびミトキサントロン塩酸塩を含めた抗がん剤が挙げられる。別の実施形態では、ペイロードは、20−epi−1、25ジヒドロキシビタミンD3、4−イポメアノール(4−ipomeanol)、5−エチニルウラシル、9−ジヒドロタキソール、アビラテロン、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール塩酸塩(acodazole hydrochloride)、アクロニン、アシルフィイルベン(acylfiilvene)、アデシペノール(adecypenol)、アドゼレシン、アルデスロイキン、全tkアンタゴニスト、アルトレタミン、アンバムスチン(ambamustine)、アンボマイシン(ambomycin)、酢酸アメタントロン(ametantrone acetate)、アミドクス(amidox)、アミフォスチン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド(andrographolide)、血管新生阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリクス、アントラマイシン、抗背方化形態形成タンパク質1(anti-dorsalizing morphogenetic protein-1)、抗エストロゲン薬、抗新生物薬、アンチセンスオリゴヌクレオチド、グリシン酸アフィディコリン、アポトーシス遺伝子モジュレーター、アポトーシスレギュレーター、アプリン酸、ARA−CDP−DL−PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスパラギナーゼ、アスペルリン(asperlin)、アスラクリン(asulacrine)、アタメスタン、アトリムスチン(atrimustine)、アキシナスタチン1(axinastatin 1)、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザシチジン、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン(azatyrosine)、アゼテパ、アゾトマイシン(azotomycin)、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、ベンゾクロリン、ベンゾデパ(benzodepa)、ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine)、ベータラクタム誘導体、ベータ−アレチン(beta−alethine)、ベタクラマイシンB(betaclamycin B)、ベツリン酸、BFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン、ビサントレン塩酸塩、ビスアズイジニルスペルミン(bisazuidinylspermine)、ビスナフィド(bisnafide)、ジメシル酸ビスナフィド(bisnafide dimesylate)、ビストラテンA(bistratene A)、ビセレシン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、BRC/ABLアンタゴニスト、ブレフレート(breflate)、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブドチタン(budotitane)、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カルシポトリオール、カルホスチンC、カルステロン(calusterone)、カンプトテシン誘導体、カナリア痘IL−2、カペシタビン、カラセライド(caraceraide)、カバジタキセル、カルベチマー(carbetimer)、カルボプラチン、カルボキサミド−アミノ−トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール(carboxyamidotriazole)、カレストM3(carest M3)、カルムスチン、earn 700、軟骨由来阻害剤、カルビシン塩酸塩、カルゼレシン(carzelesin)、カゼインキナーゼ阻害剤、カスタノスペルニン(castanosperrnine)、セクロピンB、セデフィンゴール(cedefingol)、セトロレリクス、クロラムブシル、クロリン、クロロキノキサリンスルホンアミド(chloroquinoxaline sulfonamide)、シカプロスト(cicaprost)、シロレマイシン(cirolemycin)、シスプラチン、cis−ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA(collismycin A)、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン(conagenin)、クランベシジン816(crambescidin 816)、クリスナトール(crisnatol)、メシル酸クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA(curacin A)、シクロペンタントラキノン、シクロホスファミド、シクロプラタム(cycloplatam)、シペマイシン(cypemycin)、シタラビン、シタラビンオクホスフェート(cytarabine ocfosfate)、細胞溶解因子、シトスタチン(cytostatin)、ダカルバジン、ダクリキシマブ(dacliximab)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デヒドロジデムニンB(dehydrodidemnin B)、デスロレリン、デキシホスフアミド(dexifosfamide)、デキソルマプラチン(dexormaplatin)、デクスラゾキサン、デクスベラパミル、デザグアニン(dezaguanine)、メシル酸デザグアニン(dezaguanine mesylate)、ジアジクォン(diaziquone)、ジデムニンB、ジドキス(didox)、ジエチヒオルスペルミン(diethyhiorspermine)、ジヒドロ−5−アザシチジン、ジオキサマイシン(dioxamycin)、ジフェニルスピロムスチン(diphenyl spiromustine)、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドキソルビシン塩酸塩、ドロロキシフェン(droloxifene)、クエン酸ドロロキシフェン(droloxifene citrate)、プロピオン酸ドロモスタノロン、ドロナビノール、デュアゾマイシン(duazomycin)、デュオカンニシンSA(duocannycin Sa)、エブセレン、エコムスチン(ecomustine)、エダトレキセート、エデルホシン(edelfosine)、エドレコロマブ、エフロミチン(eflomithine)、エフロミチン塩酸塩、エレメン(elemene)、エルサルニトルシン(elsarnitrucin)、エミテフール(emitefur)、エンロプラチン(enloplatin)、エンプロメート(enpromate)、エピプロピジン(epipropidine)、エピルビシン、エピルビシン塩酸塩、エプリステリド、エルブロゾール(erbulozole)、赤血球遺伝子治療ベクター系、エソルビシン塩酸塩、エストラムスチン、エストラムスチン類似体、リン酸エストラムチンナトリウム、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン(etoprine)、エキセメスタン、ファドロゾール、ファドロゾール塩酸塩、ファザラビン(fazarabine)、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン(flezelastine)、フロクスウリジン、フルアステロン(fluasterone)、フルダラビン、リン酸フルダラビン、フルオロダウノルニシン塩酸塩(fluorodaunorunicin hydrochloride)、フルオロウラシル、フルロシタビン(flurocitabine)、ホルフェニメキス(forfenimex)、ホルメスタン、ホスキドン(fosquidone)、フォストリエシン、フォストリエシンナトリウム、ホテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン(galocitabine)、ガニレリクス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ゲムシタビン塩酸塩、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム(hepsulfam)、ヘレグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒドロキシ尿素、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、イダルビシン塩酸塩、イドキシフェン、イドラマントン(idramantone)、イホスファミド、イーノホシン(ihnofosine)、イロマスタット、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫賦活ペプチド、インスリン様成長因子1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロンアルファ−2A、インターフェロンアルファ−2B、インターフェロンアルファ−Nl、インターフェロンアルファ−N3、インターフェロンベータ−IA、インターフェロンガンマ−IB、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン(iobenguane)、ヨードドキソルビシン(iododoxorubicin)、イプロプラトム(iproplatm)、イリノテカン、イリノテカン塩酸塩、イロプラクト(iroplact)、イルソグラジン、イソベンガゾール(isobengazole)、イソホモハリコンドリンB(isohomohalicondrin B)、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF(kahalalide F)、ラメラリン−Nトリアセテート(lamellarin−N triacetate)、ランレオチド、酢酸ランレオチド、レイナマイシン(leinamycin)、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトルスタチン(leptolstatin)、レトロゾール、白血病阻害因子、白血球アルファインターフェロン、酢酸リュープロリド、リュープロリド/エストロゲン/プロゲステロン、リュープロレリン、レバミゾール、リアロゾール、リアロゾール塩酸塩、線状ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リソクリンアミド(lissoclinamide)、ロバプラチン、ロンブリシン(lombricine)、ロメトレキソール(lometrexol)、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、ロニダミン、ロソキサントロン(losoxantrone)、ロソキサントロン塩酸塩、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン(lurtotecan)、ルテチウムテキサフィリンリソフィリン(lutetium texaphyrin lysofylline)、溶解性ペプチド、マイタンシン(maitansine)、マンノスタチンA(mannostatin A)、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリライシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、メイタンシン、メクロレタミン塩酸塩、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルバロン、メルカプトプリン、メテレリン(meterelin)、メチオニナーゼ(methioninase)、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトクロプラミド、メトプリン(metoprine)、メツレデパ(meturedepa)、微細藻類タンパク質キナーゼC阻害剤、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、不適正二本鎖RNA、ミチンドミド(mitindomide)、ミトカルシン(mitocarcin)、ミトクロミン(mitocromin)、ミトギリン(mitogillin)、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトマルシン(mitomalcin)、マイトマイシン、マイトマイシン類似体、ミトナフィド(mitonafide)、ミトスペル(mitosper)、ミトタン、ミトトキシン線維芽細胞成長因子−サポリン、ミトキサントロン、ミトキサントロン塩酸塩、モファロテン(mofarotene)、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、モノホスホリルリピドa/マイコバクテリウム細胞壁SK、モピダモール、多剤耐性遺伝子阻害剤、多重腫瘍抑制因子1に基づく治療、マスタード抗がん剤、ミカペルオキシドB(mycaperoxide B)、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミコフェノール酸、ミリアポロン(myriaporone)、n−アセチルジナリン、ナファレリン、ナグレスチプ(nagrestip)、ナロキソン/ペンタゾシン、ナパビン(napa
vin)、ナフテルピン(naphterpin)、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン(nemorubicin)、ネリドロン酸(neridronic acid)、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン(nisamycin)、一酸化窒素モジュレーター、窒素酸化物抗酸化剤、ニトルリン(nitrullyn)、ノコダゾール、ノガラマイシン、n−置換ベンズアミド、O6−ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン(okicenone)、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オラシン(oracin)、経口サイトカイン誘導因子、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン(oxaunomycin)、オキシスラン(oxisuran)、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン(palauamine)、パルミトイルリゾキシン(palmitoylrhizoxin)、パミドロン酸、パナキシトリオール(panaxytriol)、パノミフェン(panomifene)、パラバクチン(parabactin)、パゼリプチン(pazelliptine)、ペグアスパラガーゼ、ペルデシン(peldesine)、ペリオマイシン(peliomycin)、ペンタムスチン(pentamustine)、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール(pentrozole)、硫酸ペプロマイシン、ペルフルブロン、ペルホスファミド(perfosfamide)、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン(phenazinomycin)、フェニルアセテート、ホスファターゼ阻害剤、picibanil、ピロカルピン塩酸塩、ピポブロマン、ピポスルファン(piposulfan)、ピラルビシン、ピリトレキシム、ピロキサントロン塩酸塩(piroxantrone hydrochloride)、プルアセチンA(placetin A)、プルアセチンB、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子、白金錯体、白金化合物、白金−トリアミン錯体、プリカマイシン、プロメスタン(plomestane)、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、プロカルバジン塩酸塩、プロピルビス−アクリドン、プロスタグランジンJ2、前立腺癌抗アンドロゲン薬、プロテアソーム阻害剤、タンパク質Aに基づく免疫モジュレーター、タンパク質キナーゼC阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、ピューロマイシン、ピューロマイシン塩酸塩、プルプリン、ピラゾルリン(pyrazorurin)、ピラゾロアクリジン(pyrazoloacridine)、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート、RAFアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、RASファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、RAS阻害剤、RAS−GAP阻害剤、脱メチル化レテリプチン(retelliptine demethylated)、エチドロン酸レニウムRE186、リゾキシン(rhizoxin)、リボプリン(riboprine)、リボザイム、RHレチナルニド(RH retinarnide)、RNAi、ログレチミド(rogletimide)、ロヒツキン(rohitukine)、ロムルチド、ロキニメックス、ルビギノンBl(rubiginone Bl)、ルボキシル(ruboxyl)、サフィンゴール、サフィンゴール塩酸塩、サイントピン(saintopin)、サルクヌ(sarcnu)、サルコフィトールA(sarcophytol A)、サルグラモスチム、SDI1模倣物、セムスチン、老化由来阻害因子1(senescence derived inhibitor 1)、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達モジュレーター、シムトラゼン(simtrazene)、単鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ボロカプト酸ナトリウム(sodium borocaptate)、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール(solverol)、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン(sonermin)、スパルホサフナトリウム(sparfosafe sodium)、スパルホス酸(sparfosic acid)、スパルソマイシン、スピカマイシンD(spicamycin D)、スピロゲルマニウム塩酸塩、スピロムスチン(spiromustine)、スピロプラチン(spiroplatin)、スプレノペンチン(splenopentin)、スポンギスタチン1(spongistatin 1)、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド(stipiamide)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ストロメライシン阻害剤、スルフィノシン(sulfinosine)、スロフェヌル(sulofenur)、超活性血管作動性腸ペプチドアンタゴニスト、スラジスタ(suradista)、スラミン、スウェインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリソマイシン(talisomycin)、タリムスチン(tallimustine)、タモキシフェンメチオジド(tamoxifen methiodide)、タウロムスチン(tauromustine)、タザロテン、テコガランナトリウム(tecogalan sodium)、テガフール、テルラピリリウム(tellurapyrylium)、テロメラーゼ阻害剤、テロキサントロン塩酸塩(teloxantrone hydrochloride)、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テロキシロン(teroxirone)、テストラクトン、テトラクロロデカオキシド(tetrachlorodecaoxide)、テトラゾミン(tetrazomine)、タリブラスチン(thaliblastine)、サリドマイド、チアミプリン(thiamiprine)、チオコラリン(thiocoraline)、チオグアニン、チオテパ、トロンボポエチン、トロンボポエチン模倣物、サイマルファシン、サイモポエチン受容体アゴニスト、チモトリナン(thymotrinan)、甲状腺刺激ホルモン、チアゾフリン、スズエチルエチオプルプリン(tin ethyl etiopurpurin)、チラパザミン、チタノセンジクロリド(titanocene dichloride)、トポテカン塩酸塩、トプセンチン(topsentin)、トレミフェン、クエン酸トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、酢酸トレストロン(trestolone acetate)、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン(triciribine)、リン酸トリシリビン(triciribine phosphate)、トリメトレキセート、グルクロン酸トリメトレキセート(trimetrexate glucuronate)、トリプトレリン、トロピセトロン、ツブロゾール塩酸塩(tubulozole hydrochloride)、ツロステリド(turosteride)、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメクス、ウラシルマスタード、ウレデパ(uredepa)、尿生殖洞由来成長阻害因子、ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト、バプレオチド(vapreotide)、バリオリンB(variolin B)、ベラレソール(velaresol)、ベラミン(veramine)、ベルジン(verdin)、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン(vinepidine sulfate)、硫酸ビングリシネート(vinglycinate sulfate)、硫酸ビンロイロシン(vinleurosine sulfate)、ビノレルビンもしくは酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン(vinrosidine sulfate)、ビンキサルチン(vinxaltine)、硫酸ビンゾリジン(vinzolidine sulfate)、ビタキシン(vitaxin)、ボロゾール、ザノテロン(zanoterone)、ゼニプラチン(zeniplatin)、ジラスコルブ(zilascorb)、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、またはゾルビシン塩酸塩などの抗がん薬でよい。
医薬製剤
本明細書において開示されているナノ粒子は、別の態様によれば、薬学的に許容できる担体と合わさり、医薬組成物を形成し得る。当業者が理解するように、担体は、下記のような投与経路、標的組織の場所、送達される薬物、薬物の送達の時間経過などに基づいて選択し得る。
医薬組成物は、経口および非経口経路を含めた当技術分野において公知の任意の手段によって患者に投与することができる。用語「患者」は、本明細書において使用する場合、ヒト、ならびに例えば、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、および魚を含めた非ヒトを指す。例えば、非ヒトは、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類、またはブタ)であり得る。ある特定の実施形態では、非経口経路が、消化管において見出される消化酵素との接触を回避するために望ましい。このような実施形態によると、本発明の組成物は、注射(例えば、静脈内、皮下または筋内、腹腔内注射)、直腸、経膣的、局所的(散剤、クリーム剤、軟膏剤、もしくは点眼剤によるなど)によって、または吸入(スプレーによるなど)によって投与し得る。
特定の実施形態では、ナノ粒子は、それを必要とする対象に全身的に、例えば、IV注入または注射によって投与される。
注射可能な調製物、例えば、無菌の注射可能な水性または油性懸濁液は、適切な分散化剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知技術によって製剤化し得る。無菌の注射可能な調製物はまた、無毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液、懸濁液、またはエマルジョン、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液でよい。用いることができる許容できるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.、および等張食塩液がある。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒として従来用いられる。この目的のために、合成のモノまたはジグリセリドを含めた任意の刺激の少ない不揮発性油を用いることができる。さらに、脂肪酸、例えば、オレイン酸は、注射剤の調製において使用される。一実施形態では、本発明のコンジュゲートを、1%(w/v)のカルボキシメチルセルロースナトリウムおよび0.1%(v/v)のTWEEN(商標)80を含む担体液に懸濁させる。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用前に滅菌水もしくは他の無菌の注射可能な媒体に溶解もしくは分散させることができる無菌の固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって、無菌化することができる。
経口投与のための固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤を含む。このような固体剤形において、カプセル化されたか、またはカプセル化されていないコンジュゲートを、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容できる添加剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウム、ならびに/または(a)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア、(c)保湿剤、例えば、グリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリケート、および炭酸ナトリウム、(e)溶解遅延剤、例えば、パラフィン、(f)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、(h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ、ならびに(i)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物と混合する。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含む。
治療剤を含有するナノ粒子の正確な投与量は、処置される患者を考慮して個々の医師によって選択され、一般に、投与量および投与は、有効量の治療用ナノ粒子を処置される患者に提供するように調節されることを認識されたい。本明細書において使用する場合、治療剤を含有するナノ粒子の「有効量」は、所望の生物学的応答を引き出すのに必要な量を指す。当業者が理解するように、治療剤を含有するナノ粒子の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬物、標的組織、投与経路などの要因によって変わり得る。例えば、治療剤を含有するナノ粒子の有効量は、所望の期間にわたり所望の量の腫瘍サイズの低減をもたらす量であり得る。考慮し得るさらなる要因は、病態の重症度;処置される患者の年齢、体重および性別;食事、投与の時間および頻度;薬物の組合せ;反応感受性;ならびに治療に対する耐性/応答を含む。
ナノ粒子は、投与の容易さおよび投与量の均一性のために投与量単位形態で製剤化し得る。「投与量単位形態」という表現は、本明細書において使用する場合、処置される患者に適当なナノ粒子の物理的個別単位を指す。しかし、組成物の一日の総使用量は、正しい医学的判断の範囲内で主治医によって決められることが理解される。任意のナノ粒子について、治療有効用量は、細胞培養アッセイにおいて、または動物モデル、通常、マウス、ウサギ、イヌ、もしくはブタにおいて最初に推定することができる。動物モデルをまた使用して、望ましい濃度範囲および投与経路を達成する。次いで、このような情報を使用して、ヒトにおける投与のための有用な用量および経路を決定することができる。ナノ粒子の治療有効性および毒性、例えば、ED50(用量は集団の50%において治療的に有効である)およびLD50(用量は集団の50%まで致死的である)は、細胞培養物または実験動物において標準的な医薬手順によって決定することができる。毒性効果の治療効果に対する用量比は治療指数であり、これは、LD50/ED50の比として表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物は、一部の実施形態では有用であり得る。細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータは、ヒト使用のための投与量範囲の配合において使用することができる。
ある実施形態では、本明細書において開示されている組成物は、約10ppm未満のパラジウム、または約8ppm未満、または約6ppm未満のパラジウムを含み得る。例えば、ナノ粒子を含む組成物が本明細書において提供され、組成物は、約10ppm未満のパラジウムを有する。
一部の実施形態では、本明細書において開示されているナノ粒子を含む冷凍に適した組成物が企図され、冷凍に適した溶液、例えば、糖、例えば、単糖類、二糖類、もしくは多糖類、例えば、スクロースおよび/もしくはトレハロース、ならびに/または塩および/もしくはシクロデキストリン溶液を、ナノ粒子懸濁液に加える。糖(例えば、スクロースまたはトレハロース)は、例えば、粒子が冷凍によって凝集することを防止する凍結防止剤として作用し得る。例えば、複数の開示されているナノ粒子、スクロース、イオン性ハロゲン化物、および水を含むナノ粒子製剤であり、ナノ粒子/スクロース/水/イオン性ハロゲン化物は、約3〜40%/10〜40%/20〜95%/0.1〜10%(w/w/w/w)または約5〜10%/10〜15%/80〜90%/1〜10%(w/w/w/w)が本明細書において提供される。例えば、このような溶液は、本明細書に開示されているナノ粒子、約5重量%〜約20重量%のスクロースおよび約10〜100mMの濃度のイオン性ハロゲン化物、例えば、塩化ナトリウムを含み得る。別の例では、複数の開示されているナノ粒子、トレハロース、シクロデキストリン、および水を含むナノ粒子製剤が本明細書において提供され、ナノ粒子/トレハロース/水/シクロデキストリンは、約3〜40%/1〜25%/20〜95%/1〜25%(w/w/w/w)または約5〜10%/1〜25%/80〜90%/10〜15%(w/w/w/w)である。
例えば、企図される溶液は、本明細書に開示されているナノ粒子、約1重量%〜約25重量%の二糖類、例えば、トレハロースもしくはスクロース(例えば、約5重量%〜約25重量%のトレハロースもしくはスクロース、例えば、約10重量%のトレハロースもしくはスクロース、または約15重量%のトレハロースもしくはスクロース、例えば、約5重量%のスクロース)、および約1重量%〜約25重量%の濃度のシクロデキストリン、例えば、β−シクロデキストリン(例えば、約5重量%〜約20重量%、例えば、10重量%もしくは約20重量%、または約15重量%〜約20重量%のシクロデキストリン)を含み得る。企図される製剤は、複数の開示されているナノ粒子(例えば、PLA−PEGおよび活性剤を有するナノ粒子)、および約2重量%〜約15重量%(または約4重量%〜約6重量%、例えば、約5重量%)のスクロースおよび約5重量%〜約20重量%(例えば、約7重量パーセント〜約12重量%、例えば、約10重量%)のシクロデキストリン、例えば、HPbCDを含み得る。
本開示は、復元されたとき、最小量の大きな凝集体を有する凍結乾燥した医薬組成物に部分的に関する。このような大きな凝集体は、約0.5μm超、約1μm超、または約10μm超のサイズを有してもよく、復元された溶液中で望ましくないことがあり得る。凝集体サイズは、参照により本明細書に組み込まれている米国薬局方の32<788>において示されるものを含めた種々の技術を使用して測定することができる。USP32<788>において概略が述べられている試験は、光遮蔽粒子計数試験、顕微鏡粒子計数試験、レーザー回折、および単一粒子光学検知を含む。一実施形態では、所与の試料中の粒径は、レーザー回折および/または単一粒子光学検知を使用して測定される。
光遮蔽粒子計数試験によるUSP32<788>は、懸濁液中の粒径のサンプリングのためのガイドラインを規定する。100mLと等しい、またはこれ未満を有する溶液について、存在する粒子の平均数が、容器毎に≧10μmである6000個および容器毎に≧25μmである600個を超えない場合、調製は試験に準拠する。
USP32<788>において概略が述べられているように、顕微鏡粒子計数試験は、接眼マイクロメーターを有する100±10×の拡大率に調節した双眼顕微鏡を使用して粒子量を決定するためのガイドラインを規定する。接眼マイクロメーターは、100×の拡大率で見たとき、10μmおよび25μmを表す黒の基準円を有する象限に分割された円からなる円形直径グラティキュールである。直線状スケールは、グラティキュールの下に提供される。10μmおよび25μmに関する粒子の数を視覚的に符合させる。100mLと等しい、またはこれ未満を有する溶液について、存在する粒子の平均数が、容器毎に≧10μmである3000個、および容器毎に≧25μmである300個を超えない場合、調製は試験に準拠する。
一部の実施形態では、開示されている組成物の復元による10mLの水性試料は、1ml毎に600個未満の10ミクロンと等しい、もしくはこれ超のサイズを有する粒子;および/または1ml毎に60個未満の25ミクロンと等しい、もしくはこれ超のサイズを有する粒子を含む。
動的光散乱(DLS)を使用して、粒径を測定し得るが、これはブラウン運動に依存し、そのためこの技術は、いくつかのより大きな粒子を検出し得ない。レーザー回折は、粒子および懸濁培地の間の屈折率における差異に依存する。この技術は、サブミクロンからミリメートル範囲にて粒子を検出することができる。相対的に少(例えば、約1〜5重量%)量のより大きな粒子を、ナノ粒子懸濁液中で決定することができる。単一粒子光学検知(SPOS)は、約0.5μmの個々の粒子を計数する希薄な懸濁液の光遮蔽を使用する。測定した試料の粒子濃度を知ることによって、凝集体の重量パーセントまたは凝集体濃度(粒子/mL)を計算することができる。
凝集体の形成は、粒子の表面の脱水によって凍結乾燥の間に起こり得る。この脱水は、凍結乾燥の前に懸濁液中で凍結保護剤、例えば、二糖類を使用することによって回避することができる。適切な二糖類は、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、またはセロビオース、および/またはこれらの混合物を含む。他の企図される二糖類は、コウジビオース、ニゲロース、イソマルトース、β,β−トレハロース、α,β−トレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノーゼ、ゲンチオビオース、マンノビオース、メリビオース、メリビウオース(melibiulose)、ルチノース、ルチヌノース(rutinulose)、およびキシロビオースを含む。復元は、開始懸濁液と比較したときの等しいDLSサイズ分布を示す。しかし、レーザー回折は、いくらかの復元された溶液中でサイズが>10μmの粒子を検出することができる。さらに、SPOSはまた、FDAガイドラインの濃度超の濃度(>10μmの粒子について104〜105個の粒子/mL)で>10μmサイズの粒子を検出し得る。
一部の実施形態では、1種または複数のイオン性ハロゲン化塩は、糖、例えば、スクロース、トレハロースまたはこれらの混合物に対するさらなる凍結保護剤として使用し得る。糖は、二糖類、単糖類、三糖類、および/または多糖類を含んでいてもよく、かつ他の添加剤、例えば、グリセロールおよび/または界面活性剤を含んでいてもよい。場合により、シクロデキストリンを、さらなる凍結保護剤として含んでいてもよい。シクロデキストリンは、イオン性ハロゲン化塩の代わりに加え得る。代わりに、シクロデキストリンを、イオン性ハロゲン化塩に加え得る。
適切なイオン性ハロゲン化塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、またはこれらの混合物を含み得る。さらなる適切なイオン性ハロゲン化塩は、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化亜鉛、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化アンモニウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、またはヨウ化アンモニウム、および/またはこれらの混合物を含む。一実施形態では、約1〜約15重量パーセントのスクロースを、イオン性ハロゲン化塩と共に使用し得る。一実施形態では、凍結乾燥した医薬組成物は、約10〜約100mMの塩化ナトリウムを含み得る。別の実施形態では、凍結乾燥した医薬組成物は、約100〜約500mMの二価のイオン性塩化物塩、例えば、塩化カルシウムまたは塩化亜鉛を含み得る。さらに別の実施形態では、凍結乾燥される懸濁液は、シクロデキストリンをさらに含み得、例えば、約1〜約25重量パーセントのシクロデキストリンを使用し得る。
適切なシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、またはこれらの混合物を含み得る。本明細書において開示されている組成物における使用のために企図される例示的なシクロデキストリンには、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPbCD)、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリン、ジエチル−β−シクロデキストリン、トリ−O−アルキル−β−シクロデキストリン、グリコシル−β−シクロデキストリン、およびマルトシル−β−シクロデキストリンが含まれる。一実施形態では、約1〜約25重量パーセントのトレハロース(例えば、約10重量%〜約15重量%、例えば、5〜約20重量%)を、シクロデキストリンと共に使用し得る。一実施形態では、凍結乾燥した医薬組成物は、約1〜約25重量パーセントのβ−シクロデキストリンを含み得る。例示的な組成物は、PLA−PEG、活性/治療剤、約4%〜約6%(例えば、約5重量パーセント)のスクロース、および約8〜約12重量パーセント(例えば、約10重量%)のHPbCDを含むナノ粒子を含み得る。
一態様では、開示されているナノ粒子を含む凍結乾燥した医薬組成物を提供し、100mL未満または約100mLの水性媒体中で約50mg/mLのナノ粒子濃度での凍結乾燥した医薬組成物の復元によって、非経口投与に適した復元された組成物は、6000個未満、例えば、3000個未満の10ミクロンと等しい、もしくはこれ超の微粒子;および/または600個未満、例えば、300個未満の25ミクロンと等しい、もしくはこれ超の微粒子を含む。
微粒子の数は、例えば、光遮蔽粒子計数試験によるUSP32<788>、顕微鏡粒子計数試験によるUSP32<788>、レーザー回折、および単一粒子光学検知などの手段によって決定することができる。
ある態様では、それぞれが疎水性ポリマーセグメントおよび親水性ポリマーセグメント;活性剤;糖;ならびにシクロデキストリンを有するコポリマーを含む複数種の治療用粒子を含む、復元による非経口使用に適した医薬組成物を提供する。
例えば、コポリマーは、ポリ(乳)酸−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーであり得る。復元によって、100mLの水性試料は、6000個未満の10ミクロンと等しい、もしくはこれ超のサイズを有する粒子;および600個未満の25ミクロンと等しい、もしくはこれ超のサイズを有する粒子を含み得る。
二糖類およびイオン性ハロゲン化塩を加えるステップは、約5〜約15重量パーセントのスクロースまたは約5〜約20重量パーセントのトレハロース(例えば、約10〜約20重量パーセントのトレハロース)、および約10〜約500mMのイオン性ハロゲン化塩を加えることを含み得る。イオン性ハロゲン化塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、および塩化亜鉛、またはこれらの混合物から選択し得る。ある実施形態では、約1〜約25重量パーセントのシクロデキストリンをまた加える。
別の実施形態では、二糖類およびシクロデキストリンを加えるステップは、約5〜約15重量パーセントのスクロースまたは約5〜約20重量パーセントのトレハロース(例えば、約10〜約20重量パーセントのトレハロース)、および約1〜約25重量パーセントのシクロデキストリンを加えることを含み得る。ある実施形態では、約10〜約15重量パーセントのシクロデキストリンを加える。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、またはこれらの混合物から選択し得る。
別の態様では、糖および塩を凍結乾燥した製剤に加え、復元によるナノ粒子の凝集を防止することを含む、医薬ナノ粒子組成物中で粒子の実質的な凝集を防止する方法を提供する。ある実施形態では、シクロデキストリンをまた、凍結乾燥した製剤に加える。さらに別の態様では、糖およびシクロデキストリンを凍結乾燥した製剤に加えて、復元によるナノ粒子の凝集を防止することを含む、医薬ナノ粒子組成物中の粒子の実質的な凝集を防止する方法を提供する。
企図される凍結乾燥した組成物は、約40mg/mL超の治療用粒子濃度を有し得る。非経口投与に適した製剤は、10mLの用量中に10ミクロン超のサイズを有する約600個未満の粒子を有し得る。凍結乾燥は、組成物を約−40℃超、または例えば、約−30℃未満の温度で冷凍し、冷凍した組成物を形成させ、冷凍した組成物を乾燥させ、凍結乾燥した組成物を形成することを含み得る。乾燥のステップは、約50mTorrで約−25〜約−34℃、または約−30〜約−34℃の温度にて起こり得る。
処置方法
一部の実施形態では、企画されるナノ粒子は、疾患、障害、および/または状態を処置し、緩和し、回復させ、軽減し、その発生を遅延させ、その進行を阻害し、その重症度を低減し、かつ/またはその1つもしくは複数の症状または特色の発生率を低減するのに使用することができる。一部の実施形態では、企図されるナノ粒子は、固形腫瘍、例えば、がんおよび/またはがん細胞の処置に使用することができる。
用語「がん」は、前悪性および悪性のがんを含む。がんには、これらに限定されないが、血液(例えば、白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、前立腺、胃がん、結腸直腸がん、皮膚がん、例えば、黒色腫または基底細胞癌、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、乳がん、頭頸部のがん、気管支がん、膵臓がん、膀胱がん、脳または中枢神経系がん、末梢神経系がん、食道がん、口腔または咽頭のがん、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、腎臓がん(例えば、腎細胞癌、急性腎芽細胞腫)、睾丸がん、胆道がん、小腸または虫垂がん、胃腸間質腫瘍、唾液腺がん、甲状腺がん、副腎がん、骨肉腫、軟骨肉腫、血液系組織のがんなどが含まれる。「がん細胞」は、対象内に単独で存在する腫瘍(すなわち、固形腫瘍)の形(例えば、白血病細胞)である場合もあり、またはがん由来の細胞株である場合もある。
がんは、様々な身体症状を伴うことがある。がんの症状は、一般に、腫瘍の種類および場所に応じて決まる。例えば、肺がんは、咳、息切れ、および胸痛を引き起こすことがあり、結腸がんは、多くの場合、下痢、便秘、および血便を引き起こす。しかし、少数であるが例を挙げると、発熱、悪寒、寝汗、咳、呼吸困難、体重減少、食欲減退、食欲不振症、悪心、嘔吐、下痢、貧血、黄疸、肝腫大、喀血、疲労、倦怠、認知機能障害、うつ病、ホルモンの乱れ、好中球減少症、疼痛、非治癒性のただれ、リンパ節の肥大、末梢神経障害、および性機能不全といった症状が、往々にして、多くのがんと一般に関連付けられる。
一態様では、がんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、がんの処置は、それを必要とする対象に治療有効量の発明の粒子を、所望の結果を得るのに必要となるような量で、そのような時間をかけて投与することを含む。ある特定の実施形態では、発明の粒子の「治療有効量」とは、がんを処置し、緩和し、回復させ、軽減し、その発生を遅延させ、その進行を阻害し、その重症度を低減し、かつ/またはその1つもしくは複数の症状または特色の発生率を低減するのに有効な量である。
一態様では、がんに罹患している対象に発明の組成物を投与する方法が提供される。一部の実施形態では、所望の結果(すなわち、がんの処置)を得るのに必要となるような量で、そのような時間をかけて、対象にナノ粒子を投与することができる。ある特定の実施形態では、企画されるナノ粒子の「治療有効量」とは、がんを処置し、緩和し、回復させ、軽減し、その発生を遅延させ、その進行を阻害し、その重症度を低減し、かつ/またはその1つもしくは複数の症状または特色の発生率を低減するのに有効な量である。
一部の実施形態では、企図されるナノ粒子は、それを必要とする患者に、併用療法の一環として投与することができる。例えば、ある特定の実施形態では、企図されるナノ粒子を、化学療法レジメンの一環として投与することができる。化学療法レジメンの非限定的な例としては、CHOP(すなわち、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、Oncovin(すなわち、ビンクリスチン)、およびプレドニゾン)、MOPP(すなわち、Mustargen、Oncovin、プロカルバジン、およびプレドニゾン)、COPP(すなわち、シクロホスファミド、Oncovin、プロカルバジン、およびプレドニゾン)、BEACOPP(すなわち、ブレオマイシン、エトポシド、アドリアマイシン、シクロホスファミド、Oncovin、プロカルバジン、およびプレドニゾン)、およびスタンフォードV(すなわち、シクロホスファミド、メクロレタミン、またはイホスファミドなどのマスタード誘導体;ドキソルビシン;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ブレオマイシン;エトポシド;およびプレドニゾン)が挙げられ、企図されるビンクリスチンナノ粒子を、前記化学療法レジメンのビンクリスチン構成要素の代わりに使用してもよいし、またはそれに加えて使用してもよい。一部の実施形態では、企図されるビンクリスチンナノ粒子は、デキサメタゾンおよび/もしくはL−アスパラギナーゼと組み合わせて、またはプレドニゾンと組み合わせて投与してもよい。
発明の治療プロトコルは、健康な個体(すなわち、がんのいずれの症状も示していない、かつ/またはがんと診断されたことがない対象)に、治療有効量の企図されるナノ粒子を投与することを含む。例えば、健康な個体は、がんの発病および/またはがんの症状の発症より前に、企画されるナノ粒子で「免疫化」することもでき、リスクがある個体(例えば、がんの家族歴を有する患者、がんの発病と関連する1つまたは複数の遺伝子変異を有する患者、がんの発病と関連する遺伝的多型を有する患者、がんの発病と関連するウイルスに感染した患者、がんの発病と関連する習慣および/または生活様式を有する患者など)は、がんの症状の発症と実質的に同時(例えば、その48時間以内、24時間以内、または12時間以内)に処置することができる。当然のことながら、がんを有することがわかっている個体は、いつでも発明の処置を受けることができる。
他の実施形態では、開示されるナノ粒子を使用して、がん細胞、例えば、肺がん細胞の成長を阻害することができる。本明細書において使用する場合、「がん細胞の成長を阻害する」または「がん細胞の成長を阻害すること」という用語は、がん細胞成長の速度が、未処置対照がん細胞の観察または予想された成長速度と比べて低減されるような、がん細胞増殖および/もしくは遊走の速度のいずれかの緩慢化、がん細胞増殖および/もしくは遊走の抑止、またはがん細胞の死滅を指す。「増殖を阻害する」という用語は、がん細胞または腫瘍のサイズの縮小または消失、ならびにその転移の可能性の低減も指す場合がある。細胞レベルでのこのような阻害が、患者において、がんのサイズを縮小し、その成長を阻止し、その侵襲性を低減し、またはその転移を予防もしくは阻害し得ることが好ましい。がん細胞成長が阻害されているかどうかは、適切な様々な徴候のいずれかによって、当業者が容易に判定することができる。
がん細胞成長の阻害は、例えば、がん細胞の細胞周期の特定の期における停止、例えば、細胞周期のG2/M期における停止によって証明することができる。がん細胞成長の阻害は、がん細胞または腫瘍サイズの直接的または間接的測定によって証明することもできる。ヒトがん患者では、このような測定は、一般に、磁気共鳴画像診断、コンピュータ体軸断層撮影、X線などの、周知の画像診断法を使用してなされる。がん細胞成長は、循環している癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、またはがん細胞成長と互いに関係付けられる他のがん特異的抗原のレベルを決定することなどにより、間接的に判定することもできる。がん成長の阻害は、一般に、対象の生存期間の延長および/または健康および幸福の増進とも互いに関係付けられる。
本明細書では、活性剤を含む、本明細書で開示するナノ粒子を患者に投与する方法であって、患者への投与の際、このようなナノ粒子が、薬剤単独の投与(すなわち、開示されるナノ粒子としてでない)に比べて、分布体積を実質的に縮小し、かつ/または遊離Cmaxを実質的に低減する方法も提供される。
本発明について、ここまでは大まかに述べており、以下の実施例を参照することで、これについてより容易に理解されるところとなるが、実施例は、ある特定の態様および実施形態を説明する目的で含めているにすぎず、本発明を一切限定するものでない。
(実施例1)
ビンクリスチン含有ナノ粒子の一般調製
薬物(例えば、ビンクリスチン)と、ポリマー(例えば、ポリ(乳酸)−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG))と、溶媒と、場合により疎水性の酸との混合物から構成される形で有機相を形成する。有機相を、界面活性剤と、いくらかの溶解した溶媒と、場合により疎水性の酸とから構成されている水相と、概ね1:5の比(油相:水相)で混合する。有機相中に概ね20%の固体を使用する。
ホモジナイザーを使用して2つの相を合わせることにより、一次粗エマルジョンを形成する。粗エマルジョンを、圧力を計器上で46psiに設定した高圧ホモジナイザー(110S)に、2回に分けて通して、ナノエマルジョン(ファインエマルジョン)を形成する。
撹拌プレート上で撹拌しながら、ナノエマルジョンを、5℃未満のクエンチ(水溶性の疎水性の酸を場合により含有する脱イオン水)中に注いで、クエンチされた相を形成する。クエンチ対エマルジョンの比は、10:1とする。クエンチされた相に、水中Tween80(35%(w/w))を、100:1のTween80対薬物比で加える。
300kDaのPallカセット(2枚膜)を用いたタンジェンシャルフロー濾過(TFF)を使用し、クエンチされた相を濃縮して、約200mLのナノ粒子濃縮物を形成する。ナノ粒子濃縮物を、約20ダイアボリューム(4L)の冷脱イオン水を用いてダイアフィルトレーションにかける。ダイアフィルトレーションにかけたナノ粒子濃縮物の体積を、最小限の体積に減らす。容器に冷水(100mL)を加え、ポンプで膜に通してすすぎ、スラリーを形成する。最終スラリー(約100mL)をガラスバイアルに収集する。
濾過されなかった最終スラリーの固体濃度の決定。風袋を測った20mLのシンチレーションバイアルに、ある体積の最終スラリーを加え、これを、凍結乾燥器/オーブンにおいて、減圧下で乾燥させる。乾燥したスラリーの体積中のナノ粒子の重量を求める。最終スラリーに、濃スクロース(0.666g/g)を加えて、10%スクロースとする。
0.45μmで濾過された最終スラリーの固体濃度の決定。最終スラリー試料の一部分は、スクロースを加える前に、0.45μmのシリンジフィルターで濾過する。風袋を計った20mLのシンチレーションバイアルに、ある体積の濾過された試料を加え、これを、凍結乾燥器/オーブンを使用して減圧下で乾燥させる。残存する、濾過されなかった最終スラリーの試料を、スクロースと共に凍結させる。
(実施例2)
ビンクリスチンを含有する治療用ナノ粒子
以下に記載するナノ粒子は、エマルジョンプロセスの有機相の一部として水溶性の疎水性の酸を使用し、実施例1に記載のとおりの方法を使用して調製した。この手順によって、表1〜6、ならびに図3A、図3B、および図3Cに示されるとおり、薬物カプセル化効率および薬物添加量を改善し、薬物の放出を緩徐にすることができる。
図3Aには、ビンクリスチン(VCR)薬物添加量、およびオクタノエートのビンクリスチンに対するアウトプット比(すなわち、オクタノエートのVCRとのイオン対形成)を、有機相中に使用されたオクタノエートのビンクリスチンに対する比に対して示す。図において認められるとおり、有機相中のオクタン酸の量を増加させると、VCR薬物添加量が増加し、VCRのオクタノエートとのイオン対形成が増進された。
図3Bには、4時間の時点で放出されたVCRの量を、オクタノエートのビンクリスチンに対するアウトプット比に対して示す。図において認められるとおり、有機相中のオクタン酸の量を増加させると、ナノ粒子からのVCRの放出がより緩徐になった。
図3Cには、表5および表6に記載した製剤について、放出されたVCRの累積量を経時的に示す。図において認められるとおり、有機相中のオクタン酸の量を増加させると、ナノ粒子からのVCRの放出がより緩徐になった。
(実施例3)
ビンクリスチンを含有する治療用ナノ粒子
以下に記載するナノ粒子は、エマルジョンプロセスの有機相およびクエンチの一部として水溶性の疎水性の酸を使用し、実施例1に記載のとおりの方法を使用して調製した。この手順によって、表7〜表10、ならびに図4A、図4B、図5A、および図5Bに示されるとおり、薬物カプセル化効率および薬物添加量を改善し、薬物の放出を緩徐にすることができる。
図4Aには、クエンチ中のオクタン酸濃度に対する、ビンクリスチン(VCR)薬物添加量を示す。図において認められるとおり、薬物添加量およびカプセル化効率は、クエンチ中に約7mg/mLのオクタン酸で最大に達した。
図4Bには、表7および表8に記載した製剤について、放出されたVCRの累積量を経時的に示す。図において認められるとおり、オクタン酸をクエンチに含めることで、オクタン酸をクエンチに含めずに調製したナノ粒子に比べて、ナノ粒子からのVCRの放出が緩徐になった。
図5Aには、クエンチ中のヘキサン酸濃度に対する、ビンクリスチン(VCR)薬物添加量を示す。図において認められるとおり、薬物添加量は、クエンチ中のヘキサン酸が増加すると共に増加した。
図5Bには、表9および表10に記載した製剤について、放出されたVCRの累積量を経時的に示す。図において認められるとおり、有機相中およびクエンチ中の両方にヘキサン酸を用いて調製したナノ粒子は、クエンチ中にだけヘキサン酸を用いて調製したナノ粒子と比べて、同様の放出プロファイルを示した。
(実施例4)
ビンクリスチンを含有する治療用ナノ粒子
以下に記載するナノ粒子は、エマルジョンプロセスのクエンチの一部として水溶性の疎水性の酸を使用し、実施例1に記載のとおりの方法を使用して調製した。この手順によって、表11〜表12および図6に示されるとおり、薬物カプセル化効率および薬物添加量を改善し、薬物の放出を緩徐にすることができる。
図6には、表11および表12に記載した2種の製剤について、放出されたVCRの累積量を経時的に示す。図において認められるとおり、クエンチ中にヘキサン酸を用い、有機相中にヘキサン酸を用いずに調製したナノ粒子は、クエンチ中または有機相中のいずれかにヘキサン酸を用いずに調製したナノ粒子に比べて、はるかに緩徐な放出プロファイルを示した。
均等物
当業者は、単に通例の実験法を使用して、本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、確認することができる。このような均等物は、下記の特許請求の範囲によって包含されるものとする。
参照による組込み
本明細書において引用した全ての特許、公開された特許出願、ウェブサイト、および他の参照文献の全内容は、参照によりその全体が明確に本明細書において組み込まれている。