以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付す。
(実施形態1)
図1に、本発明の実施形態1に係る給湯システム1の全体構成を示す。給湯システム1は、家屋Hに設置された給湯機5の運転を制御することで、家屋Hで消費される電力を管理するシステムである。家屋Hは、いわゆる一般的な住宅建物であって、商用電力系統8と発電設備3とから供給される電力の需要地(電力消費地)である。図1に示すように、給湯システム1は、発電設備3と、給湯機5と、複数の機器7(機器7−1,7−2,…)と、を備える。
発電設備3は、家屋Hに設置され、自然エネルギーである太陽光によって発電する設備である。商用電力系統8が家屋Hを含む不特定多数の需要地に電力を供給するのに対して、発電設備3は、特定の需要地の需要家によって所有され、特定の需要地である家屋Hに電力を供給する設備である。このような発電設備3は、分散型電源ともいう。
発電設備3は、太陽光発電(PV:Photovoltaic)するPVパネル30と、PV用のパワーコンディショナ(パワーコンディショニングシステム)31と、を備える。PVパネル30は、例えば多結晶シリコン型のソーラーパネルである。PVパネル30は、家屋Hの屋根の上に設置され、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで太陽光発電する。PVパネル30は、発電手段(発電部)として機能する。パワーコンディショナ31は、PVパネル30において発電された電力の供給を受け、供給された電力を、電力線D2を介して分電盤9に出力する。
図2に、パワーコンディショナ31の構成を示す。図2に示すように、パワーコンディショナ31は、インバータ32と、制御部33と、記憶部36と、通信部37と、を備える。
インバータ32は、電力を変換する電力変換部として機能する。インバータ32は、PVパネル30から供給された直流電力を、家屋H内で使用できるように、規定の変換効率で交流電力に変換し、電力線D2に出力する。これにより、インバータ32は、電力の需要地(消費地)である家屋H及び商用電力系統8に、PVパネル30によって発電された電力を供給する。
制御部33は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びRTC(Real Time Clock)等を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ又はDSP(Digital Signal Processor)等ともいう。また、制御部33は、PVパネル30によって発電された電力を計算する発電電力計算部34と、パワーコンディショナ31の状態を管理する状態管理部35と、を含む。制御部33において、CPUは、ROMに格納されたプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、パワーコンディショナ31を統括制御する。
記憶部36は、例えば、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリであって、いわゆる二次記憶装置(補助記憶装置)としての役割を担う。記憶部36は、制御部33が各種処理を行うために使用する各種プログラム及びデータ、並びに、制御部33が各種処理を行うことにより生成又は取得する各種データを記憶する。
通信部37は、制御部33の制御の下、通信アダプタ38に接続されており、通信アダプタ38を介して外部と通信するための通信インタフェースを備える。通信部37は、家屋H内に構築された通信ネットワークを介して、給湯機5の給湯コントローラ54と通信する。通信ネットワークは、例えば、エコーネットライト(ECHONET Lite)に準じた家電ネットワーク、又は、RS232Cの規格に準じたシリアル通信ネットワーク等である。
通信部37は、通信アダプタ38を介して、交流電流を計測するセンサであるCT(Current Transformer)1及びCT2と接続される。CT1及びCT2は、それぞれ、商用電力系統8と分電盤9との間に配設された電力線D1、及び、発電設備3と分電盤9との間に配設された電力線D2に設置されている。
電力線D1に配設されたCT1は、商用電力系統8から家屋Hに供給される電力P1を計測する。電力P1は、家屋Hにおいて電力を需要する需要家が電気事業者から買った電力(買電電力)に相当する。電力線D2に配設されたCT2は、発電設備3から分電盤9に出力される電力P2を計測する。電力P2は、発電設備3によって発電された電力であって、家屋H内に出力された電力(発電電力)に相当する。通信部37は、CT1及びCT2によって計測された電力P1,P2の計測値を取得する。
図3に、発電設備3が理想的に発電した場合における1日の発電量の推移を示す。図3において、縦軸は発電設備3が発電可能な発電量の最大値に対する実際の発電量の割合を示し、横軸は時刻を示している。発電設備3による発電量は、太陽の光が必要であるため、朝(図3の例では6時)から増加し、昼(図3の例では12時)にピークに達し、日没(図3の例では18時)に向かうに従い減少する。また、太陽光が得られない時間帯(図3の例では18時から6時)では、発電することができない。
電力線D1を流れる電力P1と電力線D2を流れる電力P2との和は、電力の需要地である家屋Hの総消費電力に相当する。すなわち、家屋Hの総消費電力をPcと表すと、Pc=P1+P2の関係式が成立する。
発電設備3から出力される電力P2が、家屋Hの総消費電力Pc(=P1+P2)を超えると、家屋Hでは余剰電力が生じる。余剰電力が生じると、家屋Hの需要家は、余剰電力を逆潮電力として商用電力系統8へ供給することで、電気事業者に電力を売る(売電する)ことができる。このように、家屋Hから商用電力系統8へ電力が供給されることで電力が需要家側から電気事業者側へ戻ることを、「逆潮流」という。逆潮流が生じている間は、電力線D1を流れる電力P1は、負の値になる。
続いて図1に戻って、給湯機5の説明に移る。給湯機5は、ヒートポンプユニット50とタンクユニット51とを備える貯湯式の給湯機である。ヒートポンプユニット50とタンクユニット51とは、湯水が流れる水配管52で接続されている。給湯機5は、分電盤9により分岐された電力線D3を介して、商用電力系統8及び発電設備3と電気的に接続されており、商用電力系統8と発電設備3とのいずれかから供給された電力を得て動作する。
ヒートポンプユニット50は、例えばCO2(二酸化炭素)又はHFC(ハイドロフルオロカーボン)等を冷媒として用いたヒートポンプ式の熱源器である。ヒートポンプユニット50は、周辺の空気を熱源として、貯湯タンク53内の低温水を高温水に沸き上げる。図4に示すように、ヒートポンプユニット50は、圧縮機81と、第1の熱交換器82と、膨張弁83と、第2の熱交換器84と、送風機85と、水ポンプ86と、制御基板89と、を備える。
冷媒配管80は、圧縮機81と、第1の熱交換器82と、膨張弁83と、第2の熱交換器84と、を環状に接続している。これにより、冷媒が循環する冷媒回路(冷凍サイクル回路)が形成されている。冷媒回路は、ヒートポンプ又は冷凍サイクル等ともいう。水配管52は、貯湯タンク53の下部を起点に、水ポンプ86及び第1の熱交換器82を経て貯湯タンク53の上部に戻る。これにより、湯水が循環する沸上げ回路が形成されている。
圧縮機81は、冷媒を圧縮して冷媒配管80(冷媒回路)を循環させる。具体的に説明すると、圧縮機81は、冷媒配管80を流れる冷媒を圧縮して、冷媒の温度及び圧力を上昇させる。温度及び圧力が上昇した冷媒は、圧縮機81から吐出されて、冷媒配管80を循環する。圧縮機81は、自機を駆動する電動機を備え、電動機における回転子の回転運動によって冷媒を圧縮する。圧縮機81は、インバータ回路を備え、電動機の回転速度に応じて容量(単位時間当たりの送り出し量)を変化させる。電動機の回転速度は、電動機の単位時間当たりの回転数であって、駆動周波数ともいう。圧縮機81は、制御基板89から指示される制御値に従って電動機の回転速度を変化させ、容量を変更する。
第1の熱交換器82は、市水を目標の沸上げ温度(貯湯温度ともいう。)まで昇温加熱するための加熱源である。第1の熱交換器82は、プレート式又は二重管式等の熱交換器であり、冷媒配管80を流れる冷媒と、水配管52を流れる水(低温水)と、の間で熱交換する水冷媒熱交換器である。第1の熱交換器82における熱交換により、冷媒は放熱し、水は吸熱する。
膨張弁83は、冷媒配管80を流れる冷媒を膨張させて、冷媒の温度及び圧力を下降させる。膨張弁83は、制御基板89から指示される制御値に従って弁の開度を変更する。
第2の熱交換器84は、送風機85により送られる外気と、冷媒配管80を流れる冷媒と、の間で熱交換する空気熱交換器である。第2の熱交換器84における熱交換により、冷媒は吸熱し、外気は放熱する。
水ポンプ86は、貯湯タンク53の下部からの低温水を第1の熱交換器82へ搬送する。水ポンプ86は、インバータ回路を備え、制御基板89から指示される制御値に従って駆動回転数を変更することにより、搬送する際の水流量を変化させることができる。
制御基板89は、いずれも図示しないが、CPU、ROM、RAM、通信インタフェース及び読み書き可能な不揮発性の半導体メモリ等を備える。制御基板89は、圧縮機81、膨張弁83、送風機85及び水ポンプ86のそれぞれと、図示しない通信線を介して通信可能に接続する。また、制御基板89は、図示しない通信線を介して、リモコン55及び給湯コントローラ54と通信可能に接続する。制御基板89は、リモコン55又は給湯コントローラ54から送信された指示に従って、圧縮機81、膨張弁83、送風機85及び水ポンプ86の動作を制御する。
図1に戻って、タンクユニット51は、貯湯タンク53、給湯コントローラ54及び混合弁56等を備える。これらの構成部品は、金属製の外装ケース内に収められている。
貯湯タンク53は、ステンレス又は樹脂等で形成されている。貯湯タンク53の外側には断熱材(図示せず)が配置されている。これにより、貯湯タンク53内で、高温の湯(以下、高温水という。)を長時間に亘って保温することができる。高温水の温度は、例えば60度又は70度等である。
給湯コントローラ54は、給湯機5を統括的に制御する制御装置である。給湯コントローラ54は、ヒートポンプユニット50の制御基板89と図示しない通信線を介して通信可能に接続されている。また、給湯コントローラ54は、通信線59を介してリモコン55と通信可能に接続されている。
図5に、給湯コントローラ54の構成を示す。図5に示すように、給湯コントローラ54は、制御部61と、記憶部62と、計時部63と、通信部64と、を備える。これら各部はバス69を介して接続されている。
制御部61は、いずれも図示しないが、CPU、ROM及びRAM等を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ又はDSP等ともいう。制御部61において、CPUは、ROMに格納されたプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、給湯コントローラ54を統括制御する。
記憶部62は、例えば、フラッシュメモリ、EPROM又はEEPROM等の不揮発性の半導体メモリであって、いわゆる二次記憶装置(補助記憶装置)としての役割を担う。記憶部62は、制御部61が各種処理を行うために使用する各種プログラム及びデータ、並びに、制御部61が各種処理を行うことにより生成又は取得する各種データを記憶する。
計時部63は、RTCを備えており、給湯コントローラ54の電源がオフの間も計時を継続する計時デバイスである。
通信部64は、制御部61の制御の下、家屋H内に構築された前述の通信ネットワークを介して通信するための通信インタフェースを備える。通信部64は、発電設備3のパワーコンディショナ31と通信ネットワークを介して通信する。
また、通信部64は、リモコン55及びヒートポンプユニット50の制御基板89と通信するためのインタフェースを備える。通信部64は、リモコン55から操作指令を受信し、リモコン55に表示データを送信する。また、通信部64は、ヒートポンプユニット50に動作指令を送信する。なお、給湯コントローラ54は、外付けの通信アダプタ(図示せず)を介して、通信ネットワークに接続される仕様であってもよい。
通信部64は、交流電流を計測するセンサであるCT3と接続される。CT3は、分電盤9と給湯機5の間に配設された電力線D3に設置されており、分電盤9から給湯機5に供給される電力P3を計測する。この電力P3は、給湯機5において消費される電力に相当する。
図1に戻って、リモコン55は、給湯機5の運転状態及び貯湯状態等を表示してユーザに提示するための端末装置である。リモコン55は、家屋Hにおける浴室、洗面所又は台所等に設置され、ユーザから沸上げ又は給湯等に関する操作入力を受け付ける。
リモコン55は、いずれも図示しないが、CPU、ROM、RAM、読み書き可能な不揮発性の半導体メモリ、押しボタン、タッチパネル又はタッチパッド等の入力デバイス、有機ELディスプレイ又は液晶ディスプレイ等の表示デバイス、及び、通信インタフェース等を備える。
沸上げ動作(沸上げ運転)の開始時には、貯湯タンク53内の高温水は消費されており、貯湯タンク53の下部には市水の温度に近い低温水が貯留している。図示しないポンプを作動させることで、この低温水がヒートポンプユニット50の上述した第1の熱交換器82へ入水され、冷媒との熱交換により昇温し、高温水となる。この高温水は貯湯タンク53の上部に戻され、貯湯タンク53内では、上部に高温水、下部に低温水が滞留して温度成層が形成され、高温水と低温水との間には温度境界層が生成される。
沸上げ量が増えて、高温水の領域が大きくなると貯湯タンク53の下部に温度境界層が近づき、第1の熱交換器82へ入水する水の温度(入水温度)が次第に上昇する。
貯湯タンク53の上部には出湯管が接続されており、貯湯タンク53からこの出湯管を介して出湯した高温水が、混合弁56にて市水と混合される。これにより、ユーザが所望する温度(例えば40℃)の湯水となって、例えば浴室、洗面所又は台所等に配設されたシャワー57又は蛇口58等の給湯端末に供給される。このとき、貯湯タンク53では、上部から流出した高温水の体積分、水道圧により、下部に接続された給水管から市水が供給される。これにより、貯湯タンク53内では温度境界層が上方へ移動する。高温水が少なくなると、給湯機5は、追加沸上げを行う。
機器7(機器7−1,7−2,…)は、例えば、エアコン、照明器、床暖房システム、冷蔵庫、IH(Induction Heating)調理器又はテレビ等の電気機器である。機器7−1,7−2,…は、家屋H(その敷地も含む)内に設置され、分電盤9により分岐された電力線D4,D5,…を介して、商用電力系統8及び発電設備3と電気的に接続されている。
次に、図6を参照して、給湯システム1の機能的な構成について説明する。図6に示すように、パワーコンディショナ31は、機能的に、計測値取得部301と、電力出力部305と、電力情報送信部307と、表示制御部309と、を備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部36に格納される。そして、制御部33において、CPUが、ROM又は記憶部36に記憶されたプログラムを実行することによって、各部の機能を実現する。
計測値取得部301は、商用電力系統8から家屋Hに供給される電力P1の計測値、及び、発電設備3から出力される電力P2の計測値を取得する。前述したように、商用電力系統8から家屋Hに供給される電力P1は、電力線D1に配設されたCT1によって計測される。また、発電設備3から出力される電力P2は、電力線D2に配設されたCT2によって計測される。計測値取得部301は、商用電力系統8から家屋Hに供給される電力P1の計測値を取得することで、発電電力Paのうちの商用電力系統8に供給される逆潮電力(−P1)の計測値も取得することができる。
計測値取得部301は、CT1,CT2によって得られた電力P1,P2の計測値を、定期的に又は必要に応じて通信部37を介して取得する。計測値取得部301は、制御部33が通信部37と協働することによって実現される。
パワーコンディショナ31は、計測DB(Database)310を備える。計測DB310は、計測値取得部301によって取得された電力P1,P2の計測値を記憶する。計測DB310は、電力P1,P2の計測値を計測値取得部301が取得する度に、取得された計測値を格納することで、買電電力P1及び発電電力P2の履歴を記憶する。計測DB310は、記憶部36の記憶領域に構築される。
図7に、計測DB310に記憶される計測データの具体例を示す。図7に示すように、計測DB310は、買電電力P1の電力量、及び発電電力P2の電力量を時系列順に記憶する。電力量は、予め定められた時間に亘る電力の積算値である。計測値取得部301は、電力P1,P2の計測値を取得すると、電力P1,P2の電力量を計算し、電力量及び位相角を計測DB310に順次格納していく。
電力出力部305は、PVパネル30によって発電された電力(発電電力)を出力する。具体的に説明すると、電力出力部305は、インバータ32を制御し、PVパネル30によって発電された電力を直流電力から交流電力に変換して、家屋H内に出力する。電力出力部305によって出力される電力は、PVパネル30において発電された電力(パネル発電電力)に規定の変換効率を乗じて得られた電力である。電力出力部305は、制御部33がインバータ32と協働することによって実現される。
電力情報送信部307は、計測DB310に記憶された計測データを参照して、買電電力P1及び発電電力P2の履歴を示す電力情報を生成する。そして、電力情報送信部307は、生成された電力情報を、家屋H内に構築された通信ネットワークを介して給湯機5に送信する。電力情報送信部307は、制御部33が通信部37と協働することによって実現される。
表示制御部309は、通信部37を介して図示しないユーザインターフェースと通信し、状況に応じた表示画面をユーザインターフェースの表示デバイスに表示する。表示制御部309は、制御部33が通信部37と協働することによって実現される。
次に、給湯コントローラ54の機能的な構成について説明する。図6に示すように、給湯コントローラ54は、機能的に、沸上げ部604と、電力情報取得部605と、表示制御部608と、操作受付部609と、を備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部62に格納される。そして、制御部61において、CPUが、ROM又は記憶部62に記憶されたプログラムを実行することによって、各部の機能を実現する。
電力情報取得部605は、抑制指示によって定められる期間において、パワーコンディショナ31から電力情報を取得する。電力情報は、電力情報送信部307によって送信された、買電電力P1及び発電電力P2の履歴を示す情報である。電力情報取得部605は、電力情報を家屋H内に構築された通信ネットワークを介して取得する。電力情報取得部605は、制御部61が通信部64と協働することによって実現される。
沸上げ部604は、ヒートポンプユニット50の制御基板89と通信し、ヒートポンプユニット50を制御することにより、湯を沸き上げる。湯を沸き上げるとは、貯湯タンク53内の低温水がヒートポンプユニット50によって高温水に沸き上げられ、高温水が貯湯タンク53に供給されることを意味する。沸上げ部604は、制御部61が計時部63及び通信部64と協働することによって実現される。
沸上げ部604は、発電設備3の発電電力によって、湯を沸き上げる。具体的に説明すると、沸上げ部604は、発電設備3が発電している最中に、ヒートポンプユニット50を駆動して湯を沸き上げる。これにより、発電電力を有効に活用して商用電力系統8への逆潮流を低減させる。
給湯機5は、電力を熱に変換して湯として貯めることで、家屋Hにおいて電力を貯めることができる。通常、給湯機5は、電気料金が安い夜間に湯を沸き上げて貯湯タンク53に貯めておく。しかしながら、沸上げ部604は、発電電力を貯める手段として給湯機5を利用する。沸上げ部604は、発電設備3が発電している際にヒートポンプユニット50を動作させ、発電電力を貯蓄することで、逆潮流を低減させる。
このとき、沸上げ部604は、電力情報取得部605によって取得された電力情報に基づいて、湯を沸き上げる。図3に示したように、時間帯により発電設備3の発電量は変化する。そのため、効率的に電力を消費又は貯蓄するためには、発電量に応じて発電電力を消費又は貯蓄をする必要がある。そのために、沸上げ部604は、発電電力P2の計測値を参照し、圧縮機81を駆動する電動機の回転速度を発電電力に応じて変化させて、湯を沸き上げる。
図8に、圧縮機81を駆動する電動機の回転速度と電動機の入力電力(消費電力)の関係を示す。電動機の出力電力は、回転速度とトルクとの掛け算で定められるため、電動機の回転速度を増加させると増加する。そのため、図8に示すように、電動機の入力電力は、回転速度にほぼ比例して増加する。このような電動機の特性を利用し、発電設備3による発電量に応じて電動機の回転速度を調整することで、給湯機5における消費電力を調整することができる。
具体的に説明すると、沸上げ部604は、発電設備3の発電電力に相当する電力を給湯機5が消費するように、電動機の回転速度を調整する。給湯機5は、圧縮機81の電動機の入力以外にも、風を送るファンモータ及び制御基板89等により電力を消費しているが、給湯機5の8割程度は圧縮機81の電動機により消費されている。そのため、電動機の回転速度を調整することで、給湯機5の消費電力を効率的に制御することができる。
図9に、発電設備3の発電電力に応じて回転速度を変化させる例を示す。図9に示すように、沸上げ部604は、発電電力が大きくなるほど回転速度を増大させ、発電電力が小さくなるほど回転速度を減少させる。言い換えると、沸上げ部604は、圧縮機81を駆動する電動機を、発電電力に応じた回転速度、具体的には発電電力に比例する回転速度で運転して、湯を沸き上げる。このように、電動機の回転速度を発電電力に応じて変化させることで、発電電力を電動機で効率的に消費することができ、逆潮流を低減させることができる。
より詳細に説明すると、沸上げ部604は、発電電力の履歴に応じて電動機の回転速度を変化させて、湯を沸き上げる。発電電力の履歴とは、過去の発電電力の情報をいう。給湯コントローラ54は、パワーコンディショナ31から、計測DB310において時系列順に記憶された過去の発電電力P2を示す電力情報を取得することによって、発電電力の履歴を取得する。
図3に示したように、1日における発電量は時刻によってカーブを描くように変化する。このような発電量の傾向は、天候及び季節等によって多少変動するものの大きくは変わらない。そのため、発電電力の履歴から、将来の各時刻における発電量を予測することができ、それに合わせた電動機の回転速度を推定することができる。これを利用し、沸上げ部604は、発電電力の履歴から、前日以前における現在の時刻と同じ時刻の発電電力を特定する。そして、沸上げ部604は、特定した発電電力に応じて電動機の回転速度を変化させて、湯を沸き上げる。このように発電電力の履歴を用いることで、前もって高精度に回転速度を設定することができる。
このとき、沸上げ部604は、発電電力と、発電電力の単位時間当たりの変化量と、に応じて電動機の回転速度を変化させて、湯を沸き上げる。発電電力の単位時間当たりの変化量とは、図3に示した発電量のグラフにおける傾きをいう。この変化量は、発電量が増加している場合(例えば午前)には増加量(正の値)であって、発電量が減少している場合(例えば午後)には減少量(負の値)である。
沸上げ部604は、発電電力の履歴から、前日以前における現在の時刻と同じ時刻の発電電力を特定し、更にその発電電力の単位時間当たりの変化量を計算する。そして、沸上げ部604は、特定した発電電力に計算した変化量を加算した電力に応じて電動機の回転速度を変化させて、湯を沸き上げる。具体的に説明すると、沸上げ部604は、発電電力が増加している場合は、現在と同じ時刻の過去の発電電力よりも大きい電力に応じて回転速度を変化させ、発電電力が減少している場合は、現在と同じ時刻の過去の発電電力よりも小さい電力に応じて回転速度を変化させる。このように、電力量の傾きから将来の発電量を予測することで、電動機をより効率的に運転することができる。
また、沸上げ部604は、発電電力と、発電電力が1日のうちでピークに達する時刻と、に応じて電動機の回転速度を変化させて、湯を沸き上げる。発電電力が1日のうちでピークに達する時刻とは、1日のうちで発電量が最も大きくなる時刻であって、一般的には12時付近の時刻である。例えば発電量がピークに達する時では変化量は0になるため、今後発電量が増加せず、電動機の回転速度を増加する必要は無いと推定できる。そのため、電動機の回転速度を過剰に変化させることを抑制でき、電動機をより効率的に運転することができる。天候又は季節によって発電時間及び発電量は変動するが、発電電力がピークに達する時刻は、既知である。そのため、時期とそのピーク時刻とを予め設定しておき、ピーク時刻も含めて将来の発電量を予測することで、電動機をより効率的に運転することができる。
なお、発電設備3による発電量は、理想的には図3に示したように滑らかに変化するが、実際には、図10に示すように、急な曇り又は雨等の突然の天候の変化によって急激に変動する。また、発電量の傾きも大きな値になるため、このような発電量の急激な変化に合わせて電動機を運転すると、電動機の回転速度は急激に増減する。
これを回避するために、沸上げ部604は、規定時間における発電電力の平均値に応じて電動機の回転速度を変化させて、湯を沸き上げる。具体的に説明すると、沸上げ部604は、パワーコンディショナ31から取得された電力情報によって示される発電電力の履歴から、規定時間毎に発電電力の平均値を計算する。そして、沸上げ部604は、計算した平均値とその変化量とから将来の発電を予測し、予測した発電量に応じて回転速度で電動機を運転して、湯を沸き上げる。
発電電力の平均値を算出する規定時間は、1分以上2時間以下の時間である。少なくとも1分の時間で発電電力を平均することで、突然の天候の変化による発電量の変動を平滑化することができる。また、発電電力はおよそ2時間毎に大きく変化するため、2時間以下の時間で発電電力を平均することで、平均値の傾きを精度良く計算することができる。
なお、発電電力が許容時間を超えて大きく変化した場合には、その値を平均から除外することができる。また、図3に示した理想的な発電量から、発電量の傾きの上限及び下限を設け、発電量の単位時間当たりの変化量が上限又は下限を超えた場合に平均から除外しても良い。
次に、圧縮機81を駆動する電動機の設計について説明する。図11に、電動機の回転速度と電動機の電圧及び効率との関係を示す。電動機の電圧は、電動機を稼働させるために電動機に印加される電圧である。電動機の効率は、電動機の入力電力(消費電力)に対する出力電力の割合で定められる。図11に示すように、電動機の回転速度は、電動機の特性によって定められた最小値と最大値との間の範囲内で変化する。回転速度が変化する最小値と最大値との間を、低速区間と中間区間と高速区間という3つの区間に均等に分ける。
電動機に印加される電圧は、予め定められた最大電圧までは回転速度にほぼ比例して増加し、最大電圧まで達すると、それ以上回転速度を増加させても最大電圧のまま維持される。言い換えると、電動機は、印加電圧が最大電圧に達する回転速度(図11におけるA点)より大きい回転速度で電動機を運転する場合、電動機の界磁を弱めて回転速度を増加させることで、印加電圧を最大電圧より大きくせずに回転速度を増加させる。これは、一般的に、過変調制御又は弱め界磁制御と呼ばれる。
電動機の効率は、印加電圧が最大電圧に達する回転速度(図11におけるA点)付近で最大となり、回転速度がそれ以上大きくなって過変調制御が開始すると低下する。そのため、印加電圧が最大電圧に達する付近の回転速度で電動機を運転することが、最も効率が良い。通常の夜間の沸上げ運転の場合、夜間は十分な時間があるため、給湯機5は、圧縮機81の機械効率も加味して、低い回転速度で時間をかけて湯を沸き上げる。そのため、低い回転速度で運転した場合に電動機の効率が最大になるように、電動機が設計されることが望ましい。しかしながら、上述したように発電電力によって湯を沸き上げる給湯機5においては、発電電力で湯を沸き上げた場合の電動機の回転速度で効率が最大になるように電動機を設計することが良い。
そのため、電動機を、回転速度の最大値と最小値との間に含まれる複数の区間のうちの、発電電力に応じて定められる電力を圧縮機81が消費する際における回転速度が含まれる区間において、電動機に印加される電圧が電動機が過変調運転を開始する電圧に達するように設計する。ここで、回転速度の最大値と最小値との間に含まれる複数の区間とは、具体的には低速区間と中間区間と高速区間という3つの区間である。電動機が過変調運転を開始する電圧とは、最大電圧であって、図11におけるA点の電圧である。
発電電力に応じて定められる電力とは、具体的には、発電設備3によって発電されている期間において発電電力を平均した電力である。発電設備3によって発電されている期間は、例えば6時から18時までの日が出ている期間である。この平均電力は、日が出ている期間における発電電力を、季節による変動を平滑化するために1年間に亘って平均した電力である。
発電電力を平均した電力を圧縮機81が消費する際における電動機の回転速度は、圧縮機81の消費電力の大部分は電動機の入力電力であるため、図8に示した電動機の回転速度と入力電力との関係によって特定することができる。低速区間と中間区間と高速区間とのうちの、このように特定される回転速度が含まれる区間において、電動機に印加される電圧が過変調運転の開始電圧(最大電圧)に達するように、電動機を設計する。
具体的に説明すると、発電電力を平均した電力を圧縮機81が消費する際における電動機の回転速度が、3つの区間のうちの中間区間に含まれる場合には、図11に示すように、中間区間において印加電圧が最大電圧に達するように、電動機を設計する。これに対して、発電電力を平均した電力を圧縮機81が消費する際における電動機の回転速度が、高速区間に含まれる場合には、図12に示すように、高速区間において印加電圧が最大電圧に達するように、電動機を設計する。低速区間についても同様である。このように、発電電力を平均した電力を圧縮機81が消費する際に効率が最大となるように電動機を設計することで、電動機は、長い時間高い効率で運転することができる。そのため、発電電力をより有効に利用することができる。
電動機の回転速度の最小値と最大値との間を複数の区間に分ける理由は、自然エネルギーによる発電量は、季節、天候又は設置場所によって発電量が異なるからである。言い換えると、電動機の回転速度を、複数の区間のうちから選ばれた1つの区間の範囲内で設計することができるため、設計が容易になる。
なお、圧縮機81の電動機の巻線方式は、集中巻であっても良いし分布巻であっても良いし、極数及び固定子スロット数はどのように組み合わせても良い。また、電動機の設計として、希土類磁石、フェライト磁石、IPM(Interior Permanent Magnet)構造又はSPM(Surface Permanent Magnet)構造等、様々な設計が可能である。すなわち、電動機の電圧を設計できるものであれば、どのような構造の電動機も使用可能である。但し、高効率な電動機を構成するためには、磁力の強い希土類磁石を使用するのが一般的であり、リラクタンストルクを有効に使用できる永久磁石埋め込み型の電動機が適している。そのため、希土類磁石を使用した永久磁石埋め込み型電動機が最も効率がよく運転できるため、最も適している。希土類磁石に使用されるレアアース(Dy、Nd又はTb等)は、その含有量を問わず使用することができる。また、電動機を駆動するインバータ回路は、母線電圧を昇圧させる昇圧回路等、どのようなものであっても良い。
表示制御部608は、通信部64を介してリモコン55と通信し、状況に応じた表示画面をリモコン55の表示デバイスに表示する。操作受付部609は、通信部64を介してリモコン55と通信し、ユーザがリモコン55を操作して入力した情報を受け付ける。表示制御部608及び操作受付部609は、それぞれ制御部61が通信部64と協働することによって実現される。
以上のように構成された給湯システム1において実行される処理の流れについて、図13及び図14を参照して、説明する。
図13に、給湯システム1において実行される処理の概要を示す。図13に示す処理は、発電設備3及び給湯機5が正常に動作可能な状態において、繰り返し実行される。図13に示す処理が開始すると、パワーコンディショナ31は、CT1及びCT2によって取得された買電電力P1及び発電電力P2の計測値を取得する(ステップS11)。そして、パワーコンディショナ31は、取得した計測値で計測DB310を更新する(ステップS12)。ステップS11において、パワーコンディショナ31の制御部33は計測値取得部301として機能する。
次に、パワーコンディショナ31は、計測DB310に記憶された計測値から電力情報を生成して、電力情報を給湯機5に送信する(ステップS13)。電力情報を送信するタイミングは、例えば、発電が開始されて計測DB310が更新されたタイミングである。或いは、パワーコンディショナ31は、1日のうちの予め決められた時刻に、又は、給湯機5からの要求に応じて、電力情報を送信しても良い。ステップS13において、パワーコンディショナ31の制御部33は、電力情報送信部307として機能する。
一方で、給湯コントローラ54は、沸上げ部604として機能し、沸上げ処理を実行する(ステップS14)。図14に、ステップS14において実行される給湯コントローラ54の沸上げ処理の詳細を示す。
図14に示す沸上げ処理において、給湯コントローラ54の制御部61は、パワーコンディショナ31から送信された電力情報を取得する(ステップS401)。電力情報を取得すると、制御部61は、取得した電力情報によって示される発電電力が、予め設定された沸上げの開始可能電力より大きいか否かを判定する(ステップS402)。発電電力が開始可能電力より大きくない場合(ステップS402;NO)、制御部61は、沸上げを開始せず、ステップS401において次の電力情報を取得するまで待機する。
これに対して、発電電力が開始可能電力より大きい場合(ステップS402;YES)、制御部61は、沸上げを開始する処理に移行する。沸上げを開始する前に、制御部61は、発電電力に基づいて、電動機の回転速度を決定する(ステップS403)。具体的に説明すると、制御部61は、パワーコンディショナ31から取得した電力情報に含まれる発電電力の履歴から、発電電力の平均値とその傾きとを計算する。そして、制御部61は、計算した平均値と傾きとに応じて、発電電力に相当する電力を給湯機5が消費するように、電動機の回転速度を決定する。
回転速度を決定すると、制御部61は、沸上げ運転を開始する(ステップS404)。具体的に説明すると、制御部61は、決定した回転速度で電動機を運転させて圧縮機81を駆動し、貯湯タンク53に高温水を供給し始める。
沸上げ運転を実行している間、制御部61は、沸上げ運転が終了したか否かを判定する(ステップS405)。沸上げ運転が終了していない場合には(ステップS405;NO)、制御部61は、処理をステップS404に留める。すなわち、制御部61は、沸上げ運転が終了するまで、電動機の回転速度を調整しながら、沸上げ運転を継続する。最終的に、沸上げ運転が終了した場合には(ステップS405;YES)、制御部61は、沸上げが終了した旨を示すメッセージ又は画像等をリモコン55に表示し、沸上げ処理を終了する。
以上説明したように、実施形態1に係る給湯システム1は、発電設備3の発電電力によって湯を沸き上げる際に、圧縮機81を駆動する電動機の回転速度を発電電力に応じて変化させる。その結果、商用電力系統8への逆潮流を抑制することができ、且つ、発電電力を効率的に利用することができる。
特に、給湯機5において電動機の回転速度を制御するための電力情報は、パワーコンディショナ31において生成され、パワーコンディショナ31から給湯機5に直接送信される。そのため、給湯システム1は、パワーコンディショナ31及び給湯機5という最低限の構成で、発電電力を効率的に活用することができる。
また、実施形態1に係る給湯システム1において、電動機は、回転速度の最大値と最小値との間に含まれる複数の区間のうちの、発電電力を平均した電力を圧縮機81が消費する際における回転速度が含まれる区間において、電動機に印加される電圧が最大電圧に達するように設計されている。その結果、電動機は、長い時間高い効率で運転することができ、発電電力をより有効に利用することができる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。
図15に、実施形態2に係る給湯システム1aの全体構成を示す。図15に示すように、給湯システム1aは、発電設備3aと、給湯機5aと、複数の機器7(機器7−1,7−2,…)と、ルータ12と、を備える。
ルータ12は、例えばインターネット等である広域ネットワークNを介して電力サーバ14と接続されている。ルータ12は、ブロードバンドルータであって、広域ネットワークNを介して電力サーバ14と通信することができる。なお、ルータ12以外の構成は実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
電力サーバ14は、商用電力系統8によって各需要家に商用電源を提供する電気事業者によって運営されるサーバである。電力サーバ14は、各需要家の需要地に設置された発電設備3aのパワーコンディショナ31aと、広域ネットワークNを介して通信可能に接続されている。
発電設備3aのパワーコンディショナ31a及び給湯機5aの給湯コントローラ54aは、家屋H内に構築された通信ネットワークを介してルータ12と通信し、ルータ12を介して、電力サーバ14と通信する。
図16に、実施形態2に係る給湯システム1aの機能的な構成を示す。なお、給湯コントローラ54a及びパワーコンディショナ31aのハードウェア構成は、実施形態1における給湯コントローラ54及びパワーコンディショナ31の構成とそれぞれ同じであるため、説明を省略する。
図16に示すように、パワーコンディショナ31aは、機能的に、計測値取得部301と、指示取得部303と、指示情報送信部304と、電力出力部305と、余力電力計算部306と、電力情報送信部307と、表示制御部309と、を備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部36に格納される。そして、制御部33において、CPUが、ROM又は記憶部36に記憶されたプログラムを実行することによって、各部の機能を実現する。
また、パワーコンディショナ31aは、計測DB(Database)310と、指示DB320と、を備える。計測DB310及び指示DB320は、記憶部36の記憶領域に構築される。なお、計測値取得部301及び表示制御部309の機能は実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
指示取得部303は、PVパネル30によって発電された電力の、商用電力系統8への供給を抑制する指示を取得する。商用電力系統8への電力の供給を抑制する指示とは、電力サーバ14によって配信されるPV抑制の指示(抑制指示)である。以下、電力サーバ14によって配信される抑制指示について説明する。
電力サーバ14は、特定の条件が満たされた場合に、発電設備3aを所有する各需要家に対して、特定の期間における各需要家の発電設備3aから商用電力系統8への電力の供給、すなわち逆潮流を抑制する指示を配信する。このように逆潮流を抑制する理由は、需要家から商用電力系統8へ多くの電力が供給されすぎて、商用電力系統8の需給バランスが崩れることを防止するためである。電力サーバ14によって配信される逆潮流を抑制する指示を「抑制指示」といい、発電設備3aの出力を制御して逆潮流を抑制することを「PV抑制」という。PV抑制は、「出力抑制」又は「出力制御」等ともいう。
具体的に説明すると、電力サーバ14は、各需要家の発電設備3aが設置された場所における天気予報、日射量及び日照時間等の気象情報を気象事業者から取得し、PV抑制のスケジュールを作成する。そして、電力サーバ14は、作成したスケジュールに従って、PV抑制を実施する日の前日までに、抑制指示を各需要家へ配信する。PV抑制の実施期間は、通常、商用電力系統8の需給状況に対して発電設備3aによる発電電力が過剰となる期間、例えば多くの日射量が見込まれる晴天時の昼間の時間帯である。なお、PV抑制を実施する必要がない日には、電力サーバ14は、抑制指示を配信しない。
電力サーバ14によって配信される抑制指示は、PV抑制を実施する特定の期間を示す時間情報と、PV抑制時における発電設備3aの出力制限の指示値を示す指示値情報と、を含んでいる。具体的に説明すると、抑制指示は、PV抑制を実施する特定の期間として、特定の日における特定の時間帯、すなわちPV抑制を実施する年月日と時刻(開始時刻及び終了時刻)との情報を指定する。
また、抑制指示は、PV抑制時における発電設備3aの出力制限の指示値として、発電設備3aのパワーコンディショナ31aから家屋Hの分電盤9へ出力される電力の、発電設備3aの発電電力の定格値に対する割合(%)を指定する。ここで、発電設備3aの発電電力の定格値とは、発電設備3aが適正な条件の下で安全に出力可能な最大の電力値を意味し、具体的にはPVパネル30の定格容量とパワーコンディショナ31aの定格容量とのうちの小さい方に相当する。
図17に、電力サーバ14によって配信される抑制指示の具体例を示す。図17中の実線Laは、PV抑制が指示されなかった場合における発電設備3aによる発電電力の推移を表しており、日射量が多くなる正午をピークとして昼間に大きな値を示す。これに対して、図17中の破線Lpは、抑制指示によって指定される発電設備3aの出力制限の指示値の推移を表している。
図17の例では、9時から11時まで及び13時から15時までの時間帯で、発電設備3aから出力される電力を定格値の40%(例えば5.0kWの定格値に対して2.0kW)に抑制することが指定されている。また、11時から13時までの時間帯で、発電設備3aから出力される電力を定格値の0%に抑制する、すなわち発電設備3aによって発電された電力を全く出力しないことが指定されている。言い換えると、指示値が100%未満となる9時から15時までの時間帯において、発電設備3aから出力される電力は抑制される。これに対して、指示値は100%となる0時から9時まで及び15時から24時までの時間帯では、発電設備3aから出力される電力は実質的に抑制されない。以下では、指示値を電力の単位で表した値を、「指示電力」という。
電力サーバ14が抑制指示を配信すると、指示取得部303は、配信された抑制指示を、広域ネットワークN及び通信部37を介して取得する。指示取得部303は、抑制指示を取得すると、取得した抑制指示によって指定されるスケジュール及び指示値等のPV抑制の内容を、指示DB320に格納する。指示取得部303は、制御部33が通信部37と協働することによって実現される。
図16に戻って、指示DB320は、指示取得部303によって取得された抑制指示の内容を記憶する。抑制指示の内容とは、具体的には抑制指示によって指定されるPV抑制のスケジュール及び指示値である。指示DB320は、指示取得部303が電力サーバ14から抑制指示を取得する度に、記憶されたPV抑制のスケジュール及び指示値を更新していく。
指示情報送信部304は、指示取得部303が抑制指示を取得した場合、抑制指示の内容を示す指示情報を給湯機5aに送信する。抑制指示の内容とは、具体的には、PV抑制が指示された旨、及びその日時等である。指示情報送信部304は、指示取得部303が抑制指示を取得した場合、このような抑制指示の内容を示す指示情報を生成する。そして、指示情報送信部304は、生成した指示情報を、PV抑制の実施日の前日の23時までに、家屋H内に構築された通信ネットワークを介して給湯機5aに送信する。指示情報送信部304は、制御部33が通信部37と協働することによって実現される。
電力出力部305は、指示取得部303が抑制指示を取得した場合、抑制指示によって定められる期間において、PVパネル30によって発電された電力のうちの、発電された電力より少ない電力を出力する。抑制指示によって定められる期間とは、抑制指示によって指示されたPV抑制の実施期間である。電力出力部305は、PV抑制の実施期間が到来すると、インバータ32を制御することにより、PVパネル30からパワーコンディショナ31aに供給された発電電力のうちの電力線D2に出力される電力を抑制する。その結果、電力線D2にはPVパネル30によって発電された電力のうちの全ては出力されず、発電された電力より少ない電力が出力され、残りの電力は出力されない。なお、発電された電力より少ない電力が出力されることは、電力が全く出力されないことを含む。電力出力部305は、制御部33がインバータ32と協働することによって実現される。
電力出力部305は、PV抑制が実施されない期間では、パワーコンディショナ31aからの出力を抑制しない。言い換えると、電力出力部305は、PVパネル30によって発電された電力(発電電力)のうちの出力可能な電力を全て家屋H内に出力する。これに対して、PV抑制が実施される期間では、電力出力部305は、パワーコンディショナ31aからの出力を抑制する。
以下では、パワーコンディショナ31aによって出力可能な電力を発電電力Paと表して、パワーコンディショナ31aから実際に出力された電力(出力電力)P2と区別する。PV抑制が実施されない期間では、出力電力P2は発電電力Paと等しくなり、PV抑制が実施される期間では、出力電力P2は発電電力Paよりも小さくなる。PV抑制が実施される期間において、発電電力Paと出力電力P2との差分(Pa−P2)は、損失電力(発電ロス)として失われる。
電力出力部305は、出力電力を抑制する方法として、進相位相制御を実行する。言い換えると、電力出力部305は、PV抑制の実施期間において、電流の位相を電圧の位相からずらすことで、出力する電力を抑制する。より詳細に説明すると、PV抑制が実施される期間において、家屋Hの総消費電力Pcが指示電力より小さい場合、電力出力部305は、出力電力P2を、指示電力まで抑制する(出力抑制モード)。これに対して、PV抑制が実施される期間において、家屋Hの総消費電力Pcが指示電力より大きい場合、電力出力部305は、出力電力P2を、指示電力までではなく、総消費電力Pcに等しい電力までしか抑制しない(逆潮流ゼロモード)。
余力電力計算部306は、余力電力を計算する。余力電力とは、PVパネル30によって発電された電力Paのうち、パワーコンディショナ31aが出力可能な電力の余力である。言い換えると、余力電力は、PV抑制の実施期間において、給湯機5aを含む家屋H内の機器が消費可能であるにも拘わらず、出力抑制によりパワーコンディショナ31aから出力されていない電力である。余力電力計算部306は、制御部33における発電電力計算部34によって実現される。
余力電力計算部306は、PV抑制の実施期間におけるPVパネル30によって発電された電力Paと電力出力部305によって出力された電力P2との差分を余力電力と計算する。PV抑制の実施期間における出力電力P2は、計測値取得部301によって計測値として取得することができる。これに対して、PVパネル30による発電電力Paは、PV抑制が実施されている間は、直接計測することができない。そのため、余力電力計算部306は、出力電力P2における電圧と電流との位相差から出力電力P2の力率を計算し、計算した力率を発電電力Paの定格値に乗じることによって、PV抑制の実施期間における発電電力Paの推定値を計算する。発電電力Paの定格値は、ROM又は記憶部36等に予め記憶されている。
余力電力計算部306は、計算した発電電力Paの推定値から、出力電力P2の計測値を減じることによって、余力電力を計算する。例えば、発電電力Paの定格値が6.0kW、力率が0.9、及び出力電力P2の計測値が4.0kWである場合、余力電力計算部306は、1.4kW(=6.0kW×0.9−4.0kW)の電力を、余力電力として計算する。
電力情報送信部307は、余力電力計算部306によって計算された余力電力を示す電力情報を給湯機5aに送信する。具体的に説明すると、電力情報送信部307は、PV抑制の実施期間におけるPVパネル30によって発電された電力Paと電力出力部305によって出力された電力P2との差分を示す電力情報を生成する。そして、電力情報送信部307は、生成された電力情報を、家屋H内に構築された通信ネットワークを介して給湯機5aに送信する。電力情報送信部307は、制御部33が通信部37と協働することによって実現される。
次に、給湯コントローラ54aの機能的な構成について説明する。図16に示すように、給湯コントローラ54aは、機能的に、指示情報取得部601と、計画生成部602と、沸上げ部604と、電力情報取得部605と、表示制御部608と、操作受付部609と、を備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部62に格納される。そして、制御部61において、CPUが、ROM又は記憶部62に記憶されたプログラムを実行することによって、各部の機能を実現する。なお、表示制御部608及び操作受付部609の機能は実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
指示情報取得部601は、パワーコンディショナ31aから送信された指示情報を取得する。指示情報は、指示情報送信部304によって送信された、PV抑制が指示された旨、及びその日時等の情報である。指示情報取得部601は、指示情報を家屋H内に構築された通信ネットワークを介して取得する。指示情報取得部601は、制御部61が通信部64と協働することによって実現される。
計画生成部602は、指示情報取得部601が指示情報を取得すると、指示情報に基づいて、沸上げ計画を生成する。沸上げ計画とは、沸上げ運転の開始時刻、終了時刻、沸上げ時間、沸上げ量、及び沸上げ能力等を定めたものである。計画生成部602は、1日のうちの予め定められた時刻(例えば23時)が到来すると、学習DB610を参照して、翌日の沸上げ計画を生成する。生成された計画は、RAM又は記憶部62等に記憶される。計画生成部602は、制御部61が記憶部62と協働することによって実現される。
給湯コントローラ54aは、学習DB610を備える。学習DB610は、記憶部62内の記憶領域に構築される。学習DB610は、前日までの湯の沸上げ量及び使用量(給湯量)等のデータを格納したデータベースである。計画生成部602は、学習DB610に記憶された前日までの沸上げ量及び使用量等を参照して、翌日に使用される湯の量を予測する。そして、計画生成部602は、予測される翌日の湯の使用量と貯湯タンク53に残った湯の量とから、目標となる沸上げ量を決定する。
沸上げ量を決定すると、計画生成部602は、湯を沸き上げる時刻を決定する。具体的に説明すると、計画生成部602は、翌日にPV抑制が実施されない場合、決定した沸上げ量の湯の全てを、買電単価が安くなる夜間に沸き上げる計画を生成する。これに対して、翌日にPV抑制が実施される場合には、計画生成部602は、PV抑制中に発生する損失電力を低減させるため、決定した沸上げ量の湯の一部を夜間に沸き上げ、残りを昼間のPV抑制中に沸き上げる計画を生成する。
沸上げ部604は、計画生成部602によって生成された沸上げ計画に従って、湯を沸き上げる。具体的に説明すると、翌日にPV抑制が実施される指示情報を指示情報取得部601が取得していない場合、沸上げ部604は、計画生成部602によって生成された夜間沸上げ計画に従って、目標となる沸上げ量の湯の全てを夜間に沸き上げる。これに対して、翌日にPV抑制が実施される指示情報を指示情報取得部601が取得した場合、沸上げ部604は、指示情報によって定められるPV抑制の実施期間より前の夜間に第1の量の湯を沸き上げ、PV抑制の実施期間である昼間において、余力電力に応じて第2の量の湯を沸き上げる。
電力情報取得部605は、抑制指示によって定められる期間において、パワーコンディショナ31aから電力情報を取得する。電力情報は、電力情報送信部307によって送信された、PV抑制の実施期間におけるPVパネル30によって発電された電力Paと電力出力部305によって出力された電力P2との差分に基づく情報であって、具体的には発電設備3aの余力電力を示す情報である。電力情報取得部605は、電力情報を家屋H内に構築された通信ネットワークを介して取得する。電力情報取得部605は、制御部61が通信部64と協働することによって実現される。
沸上げ部604は、抑制指示によって定められる期間において、電力情報取得部605によって取得された電力情報に示される余力電力に応じて、電動機の回転速度を変化させて、湯を沸き上げる。言い換えると、沸上げ部604は、PVパネル30によって発電された電力Paと電力出力部305によって出力された電力P2との差分に応じて、電動機の回転速度を変化させて、湯を沸き上げる。沸上げ部604の処理は、実施形態1における説明において、「発電電力」を「余力電力」に置き換えたものと同様である。そのため、ここでは詳細な説明を省略する。
以上のように構成された給湯システム1aにおいて実行される処理の流れについて、図18及び図19を参照して、説明する。
図18に、給湯システム1aにおいて実行される処理の概要を示す。図18は、一回のPV抑制の指示が電力サーバ14から配信されてからそのPV抑制の実施が終了するまでの、電力サーバ14、発電設備3aのパワーコンディショナ31a及び給湯機5aの給湯コントローラ54aによって実行される処理の流れを示している。もし複数回のPV抑制の指示が電力サーバ14から配信された場合には、複数回のPV抑制のそれぞれについて、図18に示す処理が並列に実行される。
電力サーバ14は、PV抑制を実施することが決定し、そのスケジュール及び詳細な内容が確定すると、PV抑制の指示(抑制指示)を各需要家に配信する。電力サーバ14から抑制指示が配信されると、パワーコンディショナ31aは、配信された抑制指示を、広域ネットワークNを介して取得する(ステップS21)。ステップS21において、パワーコンディショナ31aの制御部33は、指示取得部303として機能する。
ステップS21において、パワーコンディショナ31aは、電力サーバ14から抑制指示が配信されたタイミングで、抑制指示を取得してもよい。或いは、パワーコンディショナ31aは、1日1回又は2回等のように予め定められたタイミングが到来すると、自ら電力サーバ14にアクセスすることにより、電力サーバ14から抑制指示を取得してもよい。
抑制指示を取得すると、パワーコンディショナ31aは、PV抑制が実施される日の前日まで待機する。そして、PV抑制が実施される日の前日になると、パワーコンディショナ31aは、取得した抑制指示の内容を示す指示情報を給湯機5aに送信する(ステップS22)。具体的に説明すると、パワーコンディショナ31aは、PV抑制が指示された旨、及びその日時等を示す指示情報を生成し、給湯機5aに送信する。ステップS22において、パワーコンディショナ31aの制御部33は、指示情報送信部304として機能する。
ステップS22においてパワーコンディショナ31aが指示情報を送信した場合、給湯コントローラ54aは、送信された指示情報を取得する(ステップS23)。ステップS23において、給湯コントローラ54aの制御部61は、指示情報取得部601として機能する。
指示情報を取得すると、給湯コントローラ54aは、取得した指示情報に従って、沸上げ計画を生成する(ステップS24)。具体的に説明すると、給湯コントローラ54aは、学習DB610に記憶された前日までの沸上げ量と使用量とから、翌日に使用される湯の量を予測する。そして、給湯コントローラ54aは、予測される翌日の湯の使用量と貯湯タンク53に残った湯の量とから、沸上げ量を決定する。
給湯コントローラ54aは、翌日にPV抑制が実施されない場合、決定した沸上げ量の湯の全てを夜間に沸き上げる計画を生成する。これに対して、翌日にPV抑制が実施される場合、給湯コントローラ54aは、決定した沸上げ量の湯の一部を夜間に沸き上げ、残りを昼間のPV抑制中に沸き上げる計画を生成する。ステップS24において、給湯コントローラ54aの制御部61は、計画生成部602として機能する。
給湯コントローラ54aは、沸上げ計画を生成すると、生成した計画に従って、夜間沸上げを実行する(ステップS25)。ステップS25において、給湯コントローラ54aの制御部61は、沸上げ部604として機能する。
その後、PV抑制が開始される時刻が到来すると、パワーコンディショナ31aは、発電電力の出力抑制を実行する(ステップS26)。図19に、ステップS26において実行されるパワーコンディショナ31aの出力抑制処理の詳細を示す。この出力抑制処理は、電力サーバ14から取得した抑制指示によって定められるPV抑制の開始時刻が到来すると、開始する。
図19に示す出力抑制処理が開始すると、パワーコンディショナ31aの制御部33は、CT1及びCT2によって取得された買電電力P1及び出力電力P2の計測値を取得する(ステップS601)。そして、制御部33は、取得した電力P1,P2の計測値に基づいて、パワーコンディショナ31aから出力される電力の位相を制御することにより、出力電力P2を抑制する(ステップS602)。ステップS601において、制御部33は計測値取得部301として機能し、ステップS602において、制御部33は電力出力部305として機能する。
出力電力を抑制すると、制御部33は、PV抑制の開始又は前回の余力電力計算時から集計時間が経過したか否かを判定する(ステップS603)。集計時間とは、余力電力を計算するための時間であって、例えば3分又は5分等に設定される。
集計時間が経過していない場合(ステップS603;NO)、制御部33は、処理をステップS601に戻す。集計時間が経過するまで、制御部33は、電力P1,P2の計測値を取得し、出力電力P2を抑制する処理を繰り返す。
集計時間が経過すると(ステップS603;YES)、制御部33は、出力抑制前における位相角の平均値を計算する(ステップS604)。具体的に説明すると、制御部33は、PV抑制の実施期間が開始される直前の予め定められた期間(例えば5分又は10分等)における位相角の平均値を計算する。
位相角の平均値を計算すると、制御部33は、計算結果に基づいて、発電電力を計算する(ステップS605)。具体的に説明すると、制御部33は、位相角の平均値の余弦を計算することで出力電力P2の力率を計算し、得られた力率を発電電力Paの定格値に乗じる。これにより、制御部33は、PV抑制の実施期間における発電電力Paの推定値を計算する。
発電電力Paを計算すると、制御部33は、計算された発電電力Paの推定値から出力電力P2の計測値を減じることで、余力電力を計算する(ステップS606)。これにより、制御部33は、PV抑制の実施期間において、給湯機5aを含む家屋H内の機器が消費可能であるにも拘わらず、パワーコンディショナ31aから出力されていない電力を見積もる。ステップS603からステップS606において、制御部33は、余力電力計算部306として機能する。
余力電力を計算すると、制御部33は、規定周期が経過したか否かを判定する(ステップS607)。規定周期は、給湯機5aへの余力情報の送信タイミングを決めるために設定された時間であって、例えば30分に設定される。直前の送信タイミングから規定周期が経過していない場合(ステップS607;NO)、制御部33は、ステップS608及びステップS609の処理をスキップする。
直前の送信タイミングから規定周期が経過すると(ステップS607;YES)、制御部33は、直前の送信タイミングから現在までにおいて計算された余力電力を平均化する(ステップS608)。そして、制御部33は、平均化された余力電力を示す電力情報を生成して、電力情報を給湯機5aに送信する(ステップS609)。ステップS608及びステップS609において、制御部33は、電力情報送信部307として機能する。
その後、制御部33は、出力抑制が終了したか否かを判定する(ステップS610)。出力抑制が終了していない場合(ステップS610;NO)、制御部33は、処理をステップS601に戻す。出力抑制が終了するまで、制御部33は、ステップS601からSステップS610までの処理を繰り返す。
最終的に、出力抑制が終了すると(ステップS610;YES)、制御部33は、出力抑制の解除を給湯機5aに通知する(ステップS611)。以上で、図19に示したパワーコンディショナ31aの出力抑制処理は終了する。
ステップS26におけるパワーコンディショナ31aの出力抑制処理と並行して、給湯コントローラ54aは、昼間沸上げ処理を実行する(ステップS27)。この昼間沸上げ処理は、パワーコンディショナ31aから取得した指示情報によって定められるPV抑制の開始時刻が到来すると、開始する。昼間沸上げ処理の詳細は、図14に示した処理において、「発電電力」を「余力電力」に置き換えたものと同様である。そのため、ここでは詳細な説明を省略する。
以上説明したように、実施形態2に係る給湯システム1aによれば、パワーコンディショナ31aが、PV抑制の実施期間において、PVパネル30の発電電力Paとパワーコンディショナ31aから出力された電力P2との差分を発電設備3aの余力電力として計算し、給湯機5aが、余力電力に応じた能力で湯を沸き上げる。その結果、PV抑制時に生じる発電ロスを減少させることができ、電力の利用効率を向上させることができる。
(変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明を実施するにあたっては、種々の形態による変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態1,2では、沸上げ部604は、発電電力の履歴に応じて電動機の回転を変化させて、湯を沸き上げた。しかしながら、本発明において、沸上げ部604は、過去の発電電力ではなく、現在の発電電力の計測値を取得し、現在の発電電力に応じて電動機の回転速度を変化させて、湯を沸き上げても良い。現在の発電電力というリアルタイムの情報を用いることで、より精度良く回転速度を調整できる。
上記実施形態1,2では、パワーコンディショナ31,31aが買電電力P1及び発電電力P2の計測値を取得し、これらを示す電力情報を給湯機5,5aに送信した。しかしながら、本発明において、給湯コントローラ54,54aは、自身で買電電力P1及び発電電力P2の計測値を取得し、取得した計測値に基づいて電動機の回転速度を変化させて湯を沸き上げても良い。
上記実施形態1,2では、給湯コントローラ54,54aは、発電電力に応じて電動機の回転速度を変化させる機能を備えていた。しかしながら、本発明において、発電電力に応じて電動機の回転速度を変化させる機能を、給湯機5,5aの外部の機器が備えていても良い。外部の機器とは、例えばパワーコンディショナ31,31a、家屋H内の機器全体を制御する制御装置、又は広域ネットワークNを介して接続されるサーバ等である。但し、例えばこれら外部の機器のメーカーと給湯機5,5aのメーカーとが異なる場合、システムの連携が難しい。これに対して、給湯コントローラ54,54a又はモニタ等、給湯機の設備内にて発電電力に応じて電動機の回転速度を変化させる機能を備えることで、給湯機5,5aは、電力情報さえ取得できれば運転できる。そのため、上記の給湯システム1,1aを簡単に実現することができる。
また、沸上げ部604は、発電電力と、給湯機5が設置された需要地である家屋Hにおける給湯機5,5a以外の機器の消費電力と、の差分に応じて電動機の回転速度を変化させて、湯を沸き上げても良い。具体的に説明すると、家屋Hには、給湯機5,5a以外にも電力を消費する機器7−1及び機器7−2等が存在する。そのため家屋Hにおける給湯機5以外の機器の消費電力を発電電力から減じて得られた電力(余剰電力という。)を、電動機の回転速度を定める基準とすることができる。これにより、余剰電力を有効に利用することができる。このときの発電電力は現在の発電電力であっても良いし、発電電力の履歴を用いても良い。また、発電電力として規定時間における平均値を用いても良い。なお、家屋Hにおける給湯機5,5a以外の機器の消費電力は、総消費電力PcからCT3によって計測される給湯機で消費される電力P3を減じることによって得られる。
また、上記実施形態1,2では、電動機は、回転速度の最大値と最小値との間に含まれる複数の区間のうちの、発電電力を平均した電力を圧縮機81が消費する際における回転速度が含まれる区間において、電動機に印加される電圧が最大電圧に達するように設計された。しかしながら、本発明において、電動機は、複数の区間のうちの、発電設備3,3aによって発電される最大の電力を圧縮機81が消費する際における回転速度が含まれる区間において、電動機に印加される電圧が最大電圧に達するように設計されても良い。発電設備3,3aによって発電される最大の電力は、発電設備3,3aが発電可能な最大の電力であって、PVパネル30の容量とパワーコンディショナ31,31aの容量によって定められる。具体的に説明すると、ブレーカの容量の制限又は逆潮流の制限等によって、逆潮流の最大値を低減させたい場合がある。このような場合に、発電設備3,3aによって発電される最大の電力を圧縮機81が消費する際に効率が最大となるように電動機を設計することで、逆潮流の最大値を低減させることができる。
また、複数の区間のうちの、発電電力に応じて定められる電力を圧縮機81が消費する際における回転速度が含まれる区間において、電動機に印加される電圧が最大電圧に達するように電動機が設計されている場合において、給湯システム1,1aは、発電電力に応じて回転速度を変化させなくても良い。発電電力によって湯を沸き上げるものであれば、電動機の回転速度を適切に設計することで、電動機の効率を高めることができる。また、複数の区間のうちの、発電電力に応じて定められる電力を圧縮機81が消費する際における回転速度が含まれる区間において、電動機に印加される電圧が最大電圧に達するように電動機が設計される場合において、発電電力を、余剰電力又は余力電力に置き換えることもできる。
また、上記実施形態2では、余力電力計算部306は、PV抑制の実施期間における発電電力Paと出力電力P2との差分、すなわち発電設備3aにおける損失電力そのものを、余力電力として計算した。しかしながら、本発明において、PV抑制の実施期間における発電電力Paと出力電力P2との差分に基づく電力であれば、別の方法で定義されるものであってもよい。例えばマージンを確保するため、余力電力を、PV抑制の実施期間における発電電力Paと出力電力P2との差分(損失電力)から予め定められたマージンの値を減じた電力として定めることができる。
或いは、余力電力計算部306は、PV抑制の実施期間における発電電力Paと出力電力P2との差分(損失電力)に逆潮電力を加えた電力を、余力電力として計算してもよい。具体的に説明すると、余力電力計算部306は、PVパネル30によって発電された電力Paと電力出力部305によって出力された電力P2との差分に、計測値取得部301によって取得された逆潮電力(−P1)の計測値を加えることによって、余力電力を計算してもよい。このように、余力電力計算部306が逆潮電力を含めて余力電力を計算し、余力情報送信部307がその余力電力を示す余力情報を給湯機5aに送信することで、より多くの電力を給湯機5aの沸上げ運転に利用することができる。
また、上記実施形態1,2では、発電設備3,3aは、家屋Hに設置されていた。しかしながら、発電設備3,3aは、商用電力系統8とは別の電力系統であれば、家屋Hとは離れた敷地に設置され、遠隔から家屋Hに電力を供給するものであってもよい。この場合、発電設備3,3aが設置された場所を含めて需要地という。また、需要地は、上述した家屋Hのような一般住宅であることに限らず、発電設備3,3a及び商用電力系統8からの電力の需要地であれば、集合住宅、施設、ビル、又は、工場等であってもよい。また、発電設備3,3aは、太陽光によって発電することに限らず、風力又は地熱等で発電するものであっても良い。
上記実施形態1,2では、パワーコンディショナ31,31aの制御部33において、CPUがROM又は記憶部36に記憶されたプログラムを実行することによって、計測値取得部301、指示取得部303、指示情報送信部304、電力出力部305、余力電力計算部306、電力情報送信部307及び表示制御部309のそれぞれとして機能した。また、給湯コントローラ54,54aの制御部61において、CPUがROM又は記憶部62に記憶されたプログラムを実行することによって、指示情報取得部601、計画生成部602、電力情報取得部605、沸上げ部604及び表示制御部608のそれぞれとして機能した。しかしながら、本発明において、制御部33及び制御部61は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。制御部33及び制御部61が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。
また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部33及び制御部61は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
本発明に係るパワーコンディショナ31,31a及び給湯コントローラ54,54aの動作を規定する動作プログラムを既存のパーソナルコンピュータ又は情報端末装置等に適用することで、当該パーソナルコンピュータ又は情報端末装置等を、本発明に係るパワーコンディショナ31,31a及び給湯コントローラ54,54aとして機能させることも可能である。
また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD−ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、又は、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。