JP2019198271A - 二本鎖核酸分子、dna、ベクター、がん細胞増殖抑制剤、医薬、及びspon1−trim29融合遺伝子の利用 - Google Patents

二本鎖核酸分子、dna、ベクター、がん細胞増殖抑制剤、医薬、及びspon1−trim29融合遺伝子の利用 Download PDF

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Abstract

【課題】がん細胞の増殖を効果的に抑制することができ、がんの予防及び/又は治療に用いる二本鎖核酸分子の提供。前記二本鎖核酸分子、前記二本鎖核酸分子をコードする配列を含むDNA、前記DNAを含むベクター、の少なくともいずれかを含むがん細胞増殖抑制剤、前記がん細胞増殖抑制剤を含む医薬、卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法、卵巣がん個体の卵巣がん治療薬に対する抵抗性を判定する方法、及び、卵巣がん個体における前記医薬の有効性を判定する方法、の提供。【解決手段】(a)特定のヌクレオチド配列を含むセンス鎖、(b)前記(a)のセンス鎖と二本鎖を形成する該センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖、とを含むSPON1遺伝子、及び、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子の発現を抑制するための二本鎖核酸分子。【選択図】なし

Description

本発明は、がん、特に卵巣がんの予防乃至治療に好適に用いることができる二本鎖核酸分子、前記二本鎖核酸分子をコードする配列を含むDNA、前記DNAを含むベクター、前記二本鎖核酸分子、DNA、及びベクターの少なくともいずれかを含むがん細胞増殖抑制剤、及び前記がん細胞増殖抑制剤を含む医薬、並びにSPON1−TRIM29融合遺伝子の存在の有無を指標とする、卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法、卵巣がん個体の卵巣がん治療薬に対する抵抗性を判定する方法、及び卵巣がん個体における前記医薬の有効性を判定する方法に関する。
卵巣がんは最も致死率が高い婦人科がんであり、年間約4,500人の日本人女性が死亡している。卵巣がんは、初期には症状に乏しく、多くは進行がんとして発見され、その場合の5年生存率は30%以下に留まる。卵巣がん特異的な腫瘍マーカーや超音波検査の至適実施時期など、卵巣がんの有効なサーベイランス方法は未だに確立されていない。
卵巣がんは主に高異型度漿液性がん、明細胞がん、類内膜がん、粘液性がんの4組織型に分類され、本邦での発生頻度はそれぞれ36%、24%、17%、11%である。レジメンの改善により卵巣がんの予後は改善しつつあるが、特に明細胞がんと粘液性がんは化学療法耐性が知られており、依然として予後不良である。また、漿液性がんと類内膜がんは化学療法感受性が比較的高いが、6割以上が再発するとも言われている。近年では、分子標的治療薬や免疫療法の開発が行われるなど、難治性及び化学療法耐性の卵巣がんに対する新たな治療法の開発は急務となっている。
これまでに、卵巣がんにおいて、組織特異的な遺伝子変異の報告がされている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、詳細な分子メカニズムや治療対象になりうる標的遺伝子は未だに明らかになっていない。
高異型度漿液性がんでは、TP53やBRCA1/2の遺伝子変異が多いことが知られており、これによりゲノム不安定性が生じるとされる。ゲノムの再構築により複数の遺伝子が連結されて生じる新たな遺伝子を融合遺伝子といい、融合遺伝子から産生される異常なタンパク質は細胞増殖シグナルを活性化する、あるいは細胞分化シグナルを抑制することで腫瘍化の原因となりうる。卵巣がんでも融合遺伝子の報告は幾つかされている(例えば、非特許文献2及び3参照)。しかしながら、診断及び治療意義のある融合遺伝子は不明であるのが現状である。
以上のように、従来の技術だけでは限界があり、腫瘍マーカー、診断、治療標的、治療法選択にあたってのバイオマーカー、創薬などに用い得る技術の速やかな開発が強く求められている。
Gurung A, Hung T, Morin J, Gilks CB. (2013) Molecular abnormalities in ovarian carcinoma:clinical, morphological and therapeutic correlates. Histopathology 62: 59−70 Kannan K, Coarfa C, Chao PW1, Luo L, Wang Y et al. (2015) Recurrent BCAM−AKT2 fusion gene leads to a constitutively activated AKT2 fusion kinase in high−grade serous ovarian carcinoma. Proc Natl Acad Sci U S A 112(11): E1272−7 Kannan K, Coarfa C, Rajapakshe K, Hawkins SM et al. (2014) CDKN2D−WDFY2 is a cancer−specific fusion gene recurrent in high−grade serous ovarian carcinoma. PLoS Genet 10(3): e1004216
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、がん細胞の増殖を効果的に抑制することができ、がんの予防乃至治療に好適に用いることができる二本鎖核酸分子、前記二本鎖核酸分子をコードする配列を含むDNA、前記DNAを含むベクター、前記二本鎖核酸分子、DNA、及びベクターの少なくともいずれかを含むがん細胞増殖抑制剤、及び前記がん細胞増殖抑制剤を含む医薬、並びに、卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法、卵巣がん個体の卵巣がん治療薬に対する抵抗性を判定する方法、及び卵巣がん個体における前記医薬の有効性を判定する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、がん組織におけるSPON1−TRIM29融合遺伝子を初めて同定し、前記融合遺伝子ががん細胞の増殖及び化学療法耐性に関わる可能性を見い出し、また、本発明の二本鎖核酸分子により、前記融合遺伝子の発現を抑制することができることを知見した。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> SPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子の発現を抑制するための二本鎖核酸分子であって、
(a)配列番号:1〜配列番号:5のいずれかで表される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、
(b)前記(a)のセンス鎖と二本鎖を形成する該センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖とを含むことを特徴とする二本鎖核酸分子である。
<2> 前記<1>に記載の二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とするDNAである。
<3> 前記<2>に記載のDNAを含むことを特徴とするベクターである。
<4> 前記<1>に記載の二本鎖核酸分子、前記<2>に記載のDNA、及び前記<3>に記載のベクターの少なくともいずれかを含むことを特徴とするがん細胞増殖抑制剤である。
<5> がん細胞に、前記<4>に記載のがん細胞増殖抑制剤を作用させることを特徴とするがん細胞の増殖抑制方法である。
<6> がんを予防乃至治療するための医薬であって、前記<4>に記載のがん細胞増殖抑制剤を含むことを特徴とする医薬である。
<7> 個体に、前記<7>に記載の医薬を投与することを特徴とするがんの予防乃至治療方法である。
<8> 卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法であって、
個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程と、
前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出されない細胞と比べて、卵巣がん細胞の増殖が亢進すると判定する工程とを含むことを特徴とする方法である。
<9> 卵巣がん個体の卵巣がん治療薬に対する抵抗性を判定する方法であって、
個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程と、
前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、卵巣がん治療薬に対する抵抗性を有すると判定する工程とを含むことを特徴とする方法である。
<10> 卵巣がん個体における前記<7>に記載の医薬の有効性を判定する方法であって、
個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程と、
前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、前記<7>に記載の医薬が有効であると判定する工程とを含むことを特徴とする方法である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、がん細胞の増殖を効果的に抑制することができ、がんの予防乃至治療に好適に用いることができる二本鎖核酸分子、前記二本鎖核酸分子をコードする配列を含むDNA、前記DNAを含むベクター、前記二本鎖核酸分子、DNA、及びベクターの少なくともいずれかを含むがん細胞増殖抑制剤、及び前記がん細胞増殖抑制剤を含む医薬、並びに、卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法、卵巣がん個体の卵巣がん治療薬に対する抵抗性を判定する方法、及び卵巣がん個体における前記医薬の有効性を判定する方法を提供することができる。
図1aは、試験例1−1の融合遺伝子の探索の流れの概要を示す図である。 図1bは、試験例1−2において、融合転写産物の融合部位を確認した結果を示す図である。 図1cは、試験例1−3のネスティングPCRの結果を示す図−1である。 図1dは、試験例1−3のネスティングPCRの結果を示す図−2である。 図1eは、試験例1−4のネスティングPCRの結果を示す図である。 図2aは、SPON1遺伝子とTRIM29遺伝子のタンパク質レベルの構造と、SPON1−TRIM29融合遺伝子の予想されるタンパク質レベルの構造を示す模式図である。 図2bは、SPON1遺伝子とTRIM29遺伝子のエクソンレベルの構造と、SPON1−TRIM29融合遺伝子の予想されるエクソンレベルの構造を示す模式図である。 図3は、試験例2におけるウェスタンブロッティングの結果を示す図である。 図4aは、試験例3におけるシスプラチンなし(0μM)、シスプラチンあり(0.2μM、1μM)での細胞増殖試験の結果を示す図である。 図4bは、試験例3におけるパクリタキセルなし(0nM)、パクリタキセルあり(2nM、5nM)での細胞増殖試験の結果を示す図である。 図4cは、試験例3におけるオラパリブなし(0μM)、オラパリブあり(1μM、2μM)での細胞増殖試験の結果を示す図である。 図5aは、試験例4における薬剤なしの場合のアポトーシス解析の結果を示す図である。 図5bは、試験例4におけるシスプラチン(1μM)を添加した場合のアポトーシス解析の結果を示す図である。 図5cは、試験例4におけるパクリタキセル(5nM)を添加した場合のアポトーシス解析の結果を示す図である。 図5dは、試験例4におけるオラパリブ(2μM)を添加した場合のアポトーシス解析の結果を示す図である。 図5eは、試験例4における薬剤の添加の有無のそれぞれの場合におけるアネキシンV陽性のアポトーシス細胞の割合を示した図である。 図6aは、試験例5−1のVector−A2780 #A細胞におけるノックダウン効率を確認した結果を示す図である。 図6bは、試験例5−1のVector−A2780 #B細胞におけるノックダウン効率を確認した結果を示す図である。 図6cは、試験例5−1のSPON1−TRIM29−A2780 #A細胞におけるノックダウン効率を確認した結果を示す図である。 図6dは、試験例5−1のSPON1−TRIM29−A2780 #B細胞におけるノックダウン効率を確認した結果を示す図である。 図6eは、試験例5−2における薬剤なしの場合の細胞増殖試験の結果を示す図である。 図6fは、試験例5−2におけるシスプラチン(1μM)添加の場合の細胞増殖試験の結果を示す図である。 図6gは、試験例5−2におけるパクリタキセル(2nM)添加の場合の細胞増殖試験の結果を示す図である。 図6hは、試験例5−2におけるオラパリブ(2μM)添加の場合の細胞増殖試験の結果を示す図である。
(二本鎖核酸分子)
本発明の二本鎖核酸分子は、SPON1−TRIM29融合遺伝子の発現を抑制するための二本鎖核酸分子であって、(a)配列番号:1〜配列番号:5のいずれかで表される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、(b)前記(a)のセンス鎖と二本鎖を形成する該センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖とを含む。
なお、本発明において「二本鎖核酸分子」とは、センス鎖とアンチセンス鎖とがハイブリダイズしてなる二本鎖の核酸分子をいう。
<SPON1−TRIM29融合遺伝子>
前記SPON1−TRIM29融合遺伝子は、SPON1(Spondin 1)遺伝子と、TRIM29(tripartite motif−containing 29)遺伝子とが融合した遺伝子である。
前記SPON1−TRIM29融合遺伝子は、後述する試験例で示すように、本発明者らによって初めて見い出されたものであり、そのcDNA配列は配列番号:19で表され、タンパク質のアミノ酸配列は配列番号:20で表される。
前記SPON1−TRIM29融合遺伝子は、後述する試験例で示すように、がん細胞の増殖を亢進したり、化学療法に対する耐性を付与したりする機能を有する。
なお、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子のcDNA配列及びアミノ酸配列は、その機能を有する限り、配列番号:19或いは配列番号:20で表される配列において、置換、欠失、挿入、付加がされたものであってもよい。
例えば、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子のcDNA配列としては、前記配列番号:19で表される塩基配列との配列同一性として、70%以上であるものが好ましく、80%以上であるものがより好ましく、90%以上であるものが更に好ましく、95%以上であるものが特に好ましい。なお、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子のcDNA配列としては、下記SPON1−TRIM29融合遺伝子のタンパク質のアミノ酸配列をコードする配列であれば、前記配列番号:19で表される塩基配列との配列同一性が、70%未満となってもよい。
前記SPON1−TRIM29融合遺伝子のタンパク質のアミノ酸配列としては、前記配列番号:20で表されるアミノ酸配列との配列同一性として、80%以上であるものが好ましく、85%以上であるものがより好ましく、90%以上であるものが更に好ましく、95%以上であるものが特に好ましい。
前記塩基配列或いはアミノ酸配列の配列同一性は、公知の方法により決定することができ、例えば、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:p.2264−2268, 1990、及びProc. Natl. Acad. Sci. USA 90:p.5873−5877,1993参照)により決定する方法などが挙げられる。このようなアルゴリズムを用いたBLASTプログラムがAltschulらによって開発されている(J. Mol. Biol. 215:p.403−410, 1990参照)。これらは、例えば、NCBIタンパク質データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)で利用することができる。
本発明において、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子は、そのmRNA配列が前記二本鎖核酸分子の標的となり、前記二本鎖核酸分子によってその発現が抑制されることから、本明細書中において前記SPON1−TRIM29融合遺伝子を、前記二本鎖核酸分子の「標的遺伝子」と称することがある。
<センス鎖、アンチセンス鎖>
本発明者らは、鋭意検討の結果、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子のmRNA配列の中でも、ある特定の標的配列(配列番号:1〜配列番号:5のいずれか)に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖を含む二本鎖核酸分子が、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子に対して顕著に優れた発現抑制効果を有することを見出した。したがって、本発明の二本鎖核酸分子は、(a)配列番号:1〜配列番号:5のいずれかで表される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、(b)前記(a)のセンス鎖と二本鎖を形成する該センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖とを含むものである。
ここで、前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖は、RNA鎖であってもよいし、RNA−DNAキメラ鎖であってもよい。前記センス鎖と前記アンチセンス鎖とは、互いにハイブリダイズすることで前記二本鎖核酸分子を形成することができる。
前記二本鎖核酸分子の中でも、前記センス鎖が、配列番号:1〜配列番号:3のいずれかで表される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖であることが好ましく、配列番号:1〜配列番号:2のいずれかで表される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖であることがより好ましい。
前記センス鎖が、前記好ましいセンス鎖であると、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子に対する強い発現抑制効果に加え、がん細胞の増殖抑制効果にも優れる点で、有利である。
なお、前記二本鎖核酸分子におけるセンス鎖は、前記所定の配列番号の標的配列に対応するヌクレオチド配列を含んでいればよく、その他のヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
また、前記二本鎖核酸分子におけるアンチセンス鎖は、前記センス鎖とハイブリダイズすることができる程度に相補的なヌクレオチド配列を含んでいればよく、その他のヌクレオチド配列を含んでいてもよいが、前記センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を70%以上含むことが好ましく、80%以上含むことがより好ましく、90%以上含むことが更に好ましく、95%以上含むことが特に好ましい。
<種類>
前記二本鎖核酸分子の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二本鎖RNA(double−stranded RNA:dsRNA)、二本鎖RNA−DNAキメラなどが挙げられる。
ここで、「二本鎖RNA」とは、センス鎖及びアンチセンス鎖のいずれもがRNA配列で構成されてなる二本鎖核酸分子をいい、「二本鎖RNA−DNAキメラ」とは、センス鎖及びアンチセンス鎖のいずれもがRNAとDNAとのキメラ配列で構成されてなる二本鎖核酸分子をいう。
前記二本鎖RNA及び二本鎖RNA−DNAキメラは、siRNA(small interfering RNA)若しくはキメラsiRNAであることが特に好ましい。
ここで、siRNAとは、18塩基長〜29塩基長の小分子二本鎖RNAであり、前記siRNAのアンチセンス鎖(ガイド鎖)と相補的な配列をもつ標的RNAを切断し、標的遺伝子の発現を抑制する機能を有する。
前記siRNAは、前記したようなセンス鎖及びアンチセンス鎖を有し、かつ前記標的遺伝子の発現を抑制し得るものであれば、その末端構造に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記siRNAは、平滑末端を有するものであってもよいし、突出末端(オーバーハング)を有するものであってもよい。中でも、前記siRNAは、各鎖の3’末端が2塩基〜6塩基突出した構造を有することが好ましく、各鎖の3’末端が2塩基突出した構造を有することがより好ましい。
また、キメラsiRNAとは、siRNAのRNA配列の一部がDNAに変換された、18塩基長〜29塩基長の小分子二本鎖RNA−DNAキメラをいう。中でも、siRNAのセンス鎖の3’側の8塩基以内、及び、アンチセンス鎖の5’側の6塩基以内の塩基がDNAに変換された、21塩基長〜23塩基長の小分子二本鎖RNA−DNAキメラであることが好ましい。前記キメラsiRNAは、前記siRNAと同様に、標的遺伝子の発現を抑制する機能を有する。なお、前記キメラsiRNAには、DNAに変換された配列の一部をRNAに再度変換した態様も含まれる。
前記キメラsiRNAの末端構造としても、前記siRNA同様、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平滑末端を有するものであってもよいし、突出末端(オーバーハング)を有するものであってもよい。
前記キメラsiRNA(二本鎖RNA−DNAキメラ)は、血中安定性が高い、免疫応答誘導性が低い、製造コストが低いなどの点で、有利である。
前記siRNA若しくはキメラsiRNAの具体例としては、配列番号:7のセンス鎖と配列番号:8のアンチセンス鎖とからなるキメラsiRNA、配列番号:9のセンス鎖と配列番号:10のアンチセンス鎖とからなるキメラsiRNA、配列番号:11のセンス鎖と配列番号:12のアンチセンス鎖とからなるキメラsiRNA、配列番号:13のセンス鎖と配列番号:14のアンチセンス鎖とからなるキメラsiRNA、配列番号:15のセンス鎖と配列番号:16のアンチセンス鎖とからなるキメラsiRNAなどが挙げられる。
これらの中でも、配列番号:7のセンス鎖と配列番号:8のアンチセンス鎖とからなるキメラsiRNA、配列番号:9のセンス鎖と配列番号:10のアンチセンス鎖とからなるキメラsiRNA、配列番号:11のセンス鎖と配列番号:12のアンチセンス鎖とからなるキメラsiRNAが好ましく、配列番号:7のセンス鎖と配列番号:8のアンチセンス鎖とからなるキメラsiRNA、配列番号:9のセンス鎖と配列番号:10のアンチセンス鎖とからなるキメラsiRNAがより好ましい。
また、前記二本鎖RNAは、shRNA(short hairpin RNA)であってもよい。ここで、shRNAとは、18塩基〜29塩基程度のdsRNA領域と3塩基〜9塩基程度のloop領域を含む一本鎖RNAであるが、shRNAは、生体内で発現されることにより、塩基対を形成してヘアピン状の二本鎖RNAとなる。その後、shRNAはDicer(RNase III酵素)により切断されてsiRNAとなり、標的RNAの発現抑制に機能することができる。
前記shRNAの末端構造としても、前記siRNA及び二本鎖RNA−DNAキメラ同様、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平滑末端を有するものであってもよいし、突出末端(オーバーハング)を有するものであってもよい。
<修飾>
また、前記二本鎖核酸分子は、目的に応じて、適宜修飾を有していてもよい。例えば、核酸分解酵素(ヌクレアーゼ)に対する耐性を付与し、培養液中や生体中における安定性を向上させる等の目的から、前記二本鎖核酸分子に、2’O−methyl化修飾や、ホスホロチオエート化(S化)修飾、LNA(Locked Nucleic Acid)修飾等を施すことができる。また、例えば、細胞への導入効率を高める等の目的から、前記二本鎖核酸分子のセンス鎖の5’端、或いは3’端に、ナノ粒子、コレステロール、細胞膜通過ペプチド等の修飾を施すこともできる。なお、前記二本鎖核酸分子にこのような修飾を施す方法としては、特に制限はなく、従来公知の手法を適宜利用することができる。
<入手方法>
前記二本鎖核酸分子の入手方法としては、特に制限はなく、それぞれ従来公知の手法に基づき作製することができる。
例えば、前記siRNAは、所望のセンス鎖とアンチセンス鎖とに相当する18塩基長〜29塩基長の一本鎖RNAを、それぞれ既存のDNA/RNA自動合成装置等を利用して化学的に合成し、それらをアニーリングすることにより作製することができる。また、アニーリング済の二本鎖siRNAの市販品を入手することもできるし、siRNA合成受託会社に合成を依頼することにより入手することもできる。また、後述する本発明のベクターのような、所望のsiRNA発現ベクターを構築し、前記発現ベクターを細胞内に導入することにより、細胞内の反応を利用してsiRNAを作製することもできる。
また、前記キメラsiRNAは、例えば、キメラ核酸分子であるセンス鎖とアンチセンス鎖とをそれぞれ化学合成し、それらをアニーリングすることにより、作製することができる。
(DNA、ベクター)
本発明のDNAは、前記した本発明の二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含むDNAであり、また、本発明のベクターは、前記DNAを含むベクターである。
<DNA>
前記DNAとしては、前記した本発明の二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含むDNAであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列の上流(5’側)に、前記二本鎖核酸分子の転写を制御するためのプロモーター配列が連結されていることが好ましい。前記プロモーター配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CMVプロモーター等のpol II系プロモーター、H1プロモーター、U6プロモーター等のpol III系プロモーターなどが挙げられる。
また、更に、前記二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列の下流(3’側)に、前記二本鎖核酸分子の転写を終結させるためのターミネーター配列が連結されていることがより好ましい。前記ターミネーター配列としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記プロモーター配列、前記二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列、及び前記ターミネーター配列を含む転写ユニットは、前記DNAにおける好ましい一態様である。なお、前記転写ユニットは、従来公知の手法を用いて構築することができる。
<ベクター>
前記ベクターとしては、前記DNAを含むものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクターなどが挙げられる。前記ベクターは、前記二本鎖核酸分子を発現可能な発現ベクターであることが好ましい。
前記二本鎖核酸分子の発現様式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば二本鎖核酸分子としてsiRNAを発現させる方法として、短い一本鎖RNAを二本発現させる方法(タンデム型)、shRNAとしての一本鎖RNAを発現させる方法(ヘアピン型)等が挙げられる。
前記タンデム型siRNA発現ベクターは、前記siRNAを構成するセンス鎖をコードするDNA配列と、アンチセンス鎖をコードするDNA配列とを含み、かつ、各鎖をコードするDNA配列の上流(5’側)にプロモーター配列がそれぞれ連結され、また、各鎖をコードするDNA配列の下流(3’側)にターミネーター配列がそれぞれ連結されたDNAを含む。
また、前記ヘアピン型siRNA発現ベクターは、前記siRNAを構成するセンス鎖をコードするDNA配列と、アンチセンス鎖をコードするDNA配列とが逆向きに配置され、前記センス鎖DNA配列とアンチセンス鎖DNA配列とがループ配列を介して接続されており、かつ、それらの上流(5’側)にプロモーター配列が、また、下流(3’側)にターミネーター配列が連結されたDNAを含む。
前記各ベクターは、従来公知の手法を用いて構築することができ、例えば、前記DNAを、予め制限酵素で切断したベクターの切断部位に連結(ライゲーション)することにより構築することができる。
前記DNA又は前記ベクターを細胞に導入(トランスフェクト)することにより、プロモーターが活性化され、前記二本鎖核酸分子を生成することができる。例えば、前記タンデム型ベクターにおいては、前記DNAが細胞内で転写されることにより、センス鎖及びアンチセンス鎖が生成され、それらがハイブリダイズすることによりsiRNAが生成される。前記ヘアピン型ベクターにおいては、前記DNAが細胞内で転写されることにより、まずヘアピン型RNA(shRNA)が生成され、次いで、ダイサーによるプロセシングにより、siRNAが生成される。
(がん細胞増殖抑制剤)
本発明のがん細胞増殖抑制剤は、がん細胞の増殖を抑制するためのがん細胞増殖抑制剤(「腫瘍増殖抑制剤」と称することもある)であり、前記した本発明の二本鎖核酸分子、DNA、及びベクターの少なくともいずれかを含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
<二本鎖核酸分子、DNA、ベクター>
前記二本鎖核酸分子の詳細としては、前記した本発明の二本鎖核酸分子の項目に記載した通りである。前記二本鎖核酸分子は、標的とするSPON1−TRIM29融合遺伝子の発現を効果的に抑制することができるので、がん細胞の増殖を抑制するための前記がん細胞増殖抑制剤の有効成分として好適である。また、前記DNA、ベクターの詳細としても、前記した本発明のDNA、ベクターの項目に記載した通りである。
前記がん細胞増殖抑制剤中の前記二本鎖核酸分子、DNA、及びベクターの少なくともいずれかの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記がん細胞増殖抑制剤は、前記二本鎖核酸分子、DNA、及びベクターの少なくともいずれかそのものであってもよい。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記二本鎖核酸分子、DNA、及びベクターの少なくともいずれかを所望の濃度に希釈するための生理食塩水、培養液等の希釈用剤や、対象とする細胞内に前記二本鎖核酸分子、DNA、及びベクターの少なくともいずれかを導入(トランスフェクト)するためのトランスフェクション試薬などが挙げられる。
前記がん細胞増殖抑制剤中の前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<がん細胞>
前記がん細胞増殖抑制剤の適用対象となるがん細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、卵巣がん細胞が好適に挙げられる。
前記卵巣がん細胞の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記したSPON1−TRIM29融合遺伝子を発現する細胞が好適に挙げられる。また、卵巣がん治療薬に対する抵抗性を有する(以下、「化学療法に対する抵抗性を有する」と称することもある)卵巣がん細胞も好適に挙げられる。
前記卵巣がん治療薬としては、特に制限はなく、公知の化学療法に用いられる薬が挙げられ、例えば、シスプラチン、パクリタキセル、及びオラパリブからなる群から選択される少なくとも1種などが挙げられる。
前記がん細胞は、体外で培養されている細胞であってもよいし、また、がんを患う個体の体内に存在する細胞であってもよい。
<作用>
前記がん細胞増殖抑制剤は、例えば、がん細胞に導入(トランスフェクト)することによって、前記細胞に作用させることができる。前記導入の方法としては、特に制限はなく、従来公知の手法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トランスフェクション試薬を用いる方法、エレクトロポレーションによる方法、磁気粒子を用いる方法、ウイルス感染を利用する方法などが挙げられる。
がん細胞に対して作用させる前記がん細胞増殖抑制剤の量としても、特に制限はなく、細胞の種類や所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、1×10個の細胞数に対し、有効成分(前記二本鎖核酸分子)の量として、0.1μg程度が好ましく、5μg程度がより好ましく、15μg程度が特に好ましい。
<併用>
後述する試験例で示すように、本発明のがん細胞増殖抑制剤の有効成分である二本鎖核酸分子を作用させることにより、がん細胞が有する化学療法に対する耐性を低減することができる。そのため、本発明のがん細胞増殖抑制は、前記卵巣がん治療薬と組み合わせて使用してもよい。
(がん細胞増殖抑制方法)
前記がん細胞増殖抑制剤は、前記二本鎖核酸分子、DNA、及びベクターの少なくともいずれかを含むので、がん細胞に作用させることにより、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子の発現抑制を介して、がん細胞の増殖を効果的に抑制することができる。したがって、本発明は、がん細胞に、前記がん細胞増殖抑制剤を作用させることを特徴とするがん細胞の増殖抑制方法(「腫瘍増殖抑制方法」と称することもある)にも関する。
前記がん細胞としては、特に制限はなく、上記したがん細胞増殖抑制剤のがん細胞の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
また、前記がん細胞増殖抑制方法では、上記したがん細胞増殖抑制剤の併用の項目に記載したのと同様に、卵巣がん治療薬を更に作用させてもよい。
(医薬)
本発明の医薬は、がんを予防乃至治療するための医薬であって、前記した本発明のがん細胞増殖抑制剤を含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
本発明において、前記予防とは、がんの発生や再発を防止することをいい、前記治療とは、がんの症状を治したり、和らげたり、進行を防いだりすることをいう。
<がん細胞増殖抑制剤>
前記がん細胞増殖抑制剤の詳細としては、前記した本発明のがん細胞増殖抑制剤の項目に記載した通りである。
前記がん細胞増殖抑制剤は、前記した本発明の二本鎖核酸分子、DNA、及びベクターの少なくともいずれかを含むので、標的とするSPON1−TRIM29融合遺伝子の発現抑制を介して、がん細胞の増殖を効果的に抑制することができる。
即ち、前記がん細胞増殖抑制剤は、がんを予防乃至治療するための医薬として好適に利用可能である。前記がんとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、卵巣がんが好適に挙げられる。
前記卵巣がんの種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記したSPON1−TRIM29融合遺伝子を発現するがんが好適に挙げられる。また、上記した卵巣がん治療薬に対する抵抗性を有する卵巣がんも好適に挙げられる。
前記医薬中の前記がん細胞増殖抑制剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記医薬は、前記がん細胞増殖抑制剤そのものであってもよい。
ここで、前記医薬の有効成分となる前記二本鎖核酸分子としては、非修飾の状態の二本鎖核酸分子そのものを用いてもよいが、適切に予防乃至治療効果が得られるよう、生体への投与に適した形態の二本鎖核酸分子を用いることが好ましい。
例えば、前記二本鎖核酸分子は、生体内における二本鎖核酸分子の安定性を高めることができる点で、修飾が施されていることが好ましい。前記二本鎖核酸分子に施し得る修飾の種類としては、特に制限はなく、例えば、2’O−methyl化修飾、ホスホロチオエート化(S化)修飾、LNA(Locked Nucleic Acid)修飾などが挙げられる。また、標的細胞への導入効率を高める等の目的から、例えば、前記二本鎖核酸分子のセンス鎖の5’端、或いは3’端に、ナノ粒子、コレステロール、細胞膜通過ペプチド等の修飾を施すこともまた好ましい。前記二本鎖核酸分子に前記修飾を施す方法としては、特に制限はなく、従来公知の手法を適宜利用することができる。
また、前記二本鎖核酸分子は、標的細胞への導入効率を高めることができる点で、リポソームや高分子マトリックス等と複合体を形成していることも好ましい。前記複合体を形成する方法としても、特に制限はなく、従来公知の手法を適宜利用することができる。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体などが挙げられる。前記担体としても、特に制限はなく、例えば、剤型等に応じて適宜選択することができる。また、前記医薬中の前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<剤型>
前記医薬の剤型としては、特に制限はなく、例えば、後述するような所望の投与方法に応じて適宜選択することができ、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶液、懸濁液、用事溶解用固形剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤などが挙げられる。
前記経口固形剤としては、例えば、前記有効成分に、賦形剤、更には必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸などが挙げられる。前記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。前記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などが挙げられる。前記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。前記着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄などが挙げられる。前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。
前記経口液剤としては、例えば、前記有効成分に、矯味・矯臭剤、緩衝剤、安定化剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチンなどが挙げられる。
前記注射剤としては、例えば、前記有効成分に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。
前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。前記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。前記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
前記軟膏剤としては、例えば、前記有効成分に、公知の基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等を配合し、常法により混合し、製造することができる。
前記基剤としては、例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィンなどが挙げられる。前記保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどが挙げられる。
前記貼付剤としては、例えば、公知の支持体に前記軟膏剤としてのクリーム剤、ゲル剤、ペースト剤等を、常法により塗布し、製造することができる。前記支持体としては、例えば、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルム、発泡体シートなどが挙げられる。
<投与>
前記医薬は、がんの予防乃至治療に好適である。したがって、前記医薬は、がんに罹患した個体に投与することにより好適に使用することができる。
前記医薬の投与対象個体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられるが、これらの中でも、ヒトが特に好ましい。
前記医薬の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、前記医薬の剤型、疾患の種類、患者の状態等に応じて、局所投与、全身投与のいずれかを選択することができる。例えば、局所投与においては、前記医薬の有効成分(前記二本鎖核酸分子)を、所望の部位(例えば、腫瘍部位)に直接注入することにより投与することができる。前記注入には、注射等の従来公知の手法を適宜利用することができる。また、全身投与(例えば、経口投与、腹腔内投与、血液中への投与等)においては、前記医薬の有効成分(前記二本鎖核酸分子)が所望の部位(例えば、腫瘍部位)まで安定に、かつ効率良く送達されるよう、従来公知の薬剤送達技術を適宜応用することが好ましい。
前記医薬の投与量としては、特に制限はなく、投与対象である患者の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1日の投与あたり、有効成分(前記二本鎖核酸分子)の量として、1mg〜100mgが好ましい。
また、前記医薬の投与回数としても、特に制限はなく、投与対象である患者の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて、適宜選択することができる。
前記医薬の投与時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記疾患に対して、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。中でも、前記医薬は、がん細胞の増殖を阻害し、前記がん細胞の増殖による腫瘍の増大を防ぐ効果に優れることから、前記医薬は前記疾患の出来る限り早期の段階に投与されることが望ましいと考えられる。
後述する試験例で示すように、本発明の医薬の有効成分である二本鎖核酸分子を作用させることにより、がんの化学療法に対する耐性を低減することができる。そのため、本発明の医薬は、上記した卵巣がん治療薬と組み合わせて使用してもよい。
(予防乃至治療方法)
前記医薬は、前記がん細胞増殖抑制剤を含むので、癌を患う個体に投与することにより、標的とするSPON1−TRIM29融合遺伝子の発現抑制を介して、がん細胞の増殖を効果的に抑制し、がんを予防乃至治療することができる。したがって、本発明は、個体に前記医薬を投与することを特徴とするがんの予防乃至治療方法にも関する。
前記がんとしては、特に制限はなく、上記した医薬の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
また、前記予防乃至治療方法では、上記した卵巣がん治療薬を更に投与してもよい。
(卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法)
本発明の卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法は、検出工程と、増殖能判定工程とを少なくとも含み、必要に応じてその他の工程を含む。
<検出工程>
前記検出工程は、個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程である。
−試料−
前記試料としては、対象とする個体から調製したものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、病変部位の細胞や組織、血液などが挙げられる。前記試料は、更にRNA調製処理、タンパク質調製処理などが施されてもよい。前記試料は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
前記個体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられるが、これらの中でも、ヒトが特に好ましい。
−SPON1−TRIM29融合遺伝子−
前記SPON1−TRIM29融合遺伝子は、上記した本発明の二本鎖核酸分子のSPON1−TRIM29融合遺伝子の項目に記載したとおりである。
−検出−
前記検出の対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、mRNA、タンパク質などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記mRNAを検出する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、RNAシーケンスによる方法、qRT−PCRで得られた産物をサンガー法でシーケンスする方法、ネスティングPCR法、DNAアレイ法、ノーザンブロット法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記各種PCRに用いるプライマーセットとしては、SPON1−TRIM29融合遺伝子の塩基配列、若しくはSPON1−TRIM29融合遺伝子のタンパク質をコードする塩基配列を特異的に増幅できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、上記した本発明の二本鎖核酸分子のSPON1−TRIM29融合遺伝子の項目にも記載したように、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子のcDNA配列及びアミノ酸配列は、その機能を有する限り、配列番号:19或いは配列番号:20で表される配列において、置換、欠失、挿入、付加がされたものであってもよい。
前記プライマーセットの一例としては、後述した試験例で用いたプライマーセットなどが挙げられる。
前記タンパク質を検出する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、ウェスタンブロット法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ウェスタンブロット法に用いる抗体としては、特に制限はなく、公知の方法により調製した抗体を用いることができる。
<増殖能判定工程>
前記増殖能判定工程は、前記検出工程において、前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出されない細胞と比べて、卵巣がん細胞の増殖が亢進すると判定する工程である。
後述する試験例で示すように、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子を発現する細胞は、発現しない細胞と比べて、細胞の増殖が亢進する。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記検出工程に用いる試料を調製する工程などが挙げられる。前記試料を調製する方法としては、特に制限はなく、RNA、cDNA、タンパク質などの検出しようとするSPON1−TRIM29融合遺伝子の態様に応じて、公知の方法を適宜選択することができる。
(卵巣がん個体の卵巣がん治療薬に対する抵抗性を判定する方法)
本発明の卵巣がん個体の卵巣がん治療薬に対する抵抗性を判定する方法は、検出工程と、抵抗性判定工程とを少なくとも含み、必要に応じてその他の工程を含む。
<検出工程>
前記検出工程は、個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程であり、上記した卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法の項目における検出工程と同様にして行うことができる。
<抵抗性判定工程>
前記抵抗判定工程は、前記検出工程において、前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、卵巣がん治療薬に対する抵抗性を有すると判定する工程である。
後述する試験例で示すように、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子を発現するがん細胞は、卵巣がん治療薬に対する抵抗性を有する。
前記卵巣がん治療薬としては、特に制限はなく、公知の化学療法に用いられる薬が挙げられ、例えば、シスプラチン、パクリタキセル、及びオラパリブからなる群から選択される少なくとも1種などが挙げられる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法の項目におけるその他の工程と同様の工程などが挙げられる。
(卵巣がん個体における本発明の医薬の有効性を判定する方法)
本発明の卵巣がん個体における本発明の医薬の有効性を判定する方法は、検出工程と、有効性判定工程とを少なくとも含み、必要に応じてその他の工程を含む。
<検出工程>
前記検出工程は、個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程であり、上記した卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法の項目における検出工程と同様にして行うことができる。
<有効性判定工程>
前記有効性判定工程は、前記検出工程において、前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、上記した本発明の医薬が有効であると判定する工程である。
後述する試験例で示すように、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子を発現するがん細胞に本発明の二本鎖核酸分子を投与すると、その増殖を抑えることができ、また、上記した卵巣がん治療薬に対する抵抗性を低減することもできる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法の項目におけるその他の工程と同様の工程などが挙げられる。
以下に本発明の試験例を説明するが、本発明は、これらの試験例に何ら限定されるものではない。
(試験例1−1)
卵巣がんの臨床検体は、学校法人埼玉医科大学国際医療センターIRBの承認の下(#13−165)、匿名化済みの既存検体を用いた。前記臨床検体の内訳は、以下の通りであった。
<臨床検体>
・ 初発卵巣がん : 8症例(以下、それぞれ「Ov1」〜「Ov8」と称することがある。)
・ 初発検体とペアの再発卵巣がん : 8症例(以下、それぞれ「Ov9」〜「Ov16」と称することがある。)
・ 初発高異型度漿液性がん : 10症例(以下、それぞれ「Ov17」〜「Ov26」と称することがある。)
・ 初発明細胞がん : 6症例(以下、それぞれ「Ov27」〜「Ov32」と称することがある。)
・ 正常卵巣組織 : 6症例(以下、それぞれ「Ov33」〜「Ov38」と称することがある。)
<RNAシーケンス>
前記各臨床検体から、NucleoSpin(登録商標) miRNA(Takara社)を用いて全てのRNAを調製した。RNAのクオリティーはバイオアナライザー(Agilent社)で解析し、全てのRNAのRIN値は7以上であった。
RNAライブラリをSureSelect Strand Specific RNA ライブラリ 調製キット(Agilent社)で調製し、HiSeq 2500(登録商標)(Illumina社)を用いて100 bp Paired Endの条件でRNAシーケンスを施行した。
<バイオインフォーマティクスを用いた融合遺伝子解析>
RNAシーケンスから得られたFASTQファイルの塩基配列からリボソームRNA配列とアダプター配列を除いた。その後、TopHatマッピングプログラムをBowtieマッピングプログラムとともに用いてRefseq遺伝子データベース(hg19)にマッピングし、エクソン−エクソンで結合し、かつフレームシフトしていない融合遺伝子を探索した。
両方の遺伝子がRefseq遺伝子に該当し、かつ、2つの遺伝子にまたがるリード数が10以上であり、さらにアミノ酸が50以上のタンパク質をコードするものに絞り込んだところ、融合遺伝子として、SPON1−TRIM29融合遺伝子を同定した。
図1aに、融合遺伝子の探索の流れの概要を示す。
(試験例1−2)
SPON1−TRIM29融合遺伝子がRNAシーケンス解析結果で予想されたように融合しているかを調べるために、qRT−PCRで得られた産物についてサンガー法でシーケンスを解析した。
<サンガー法シーケンス>
1μg若しくは0.5μgのRNAを逆転写反応させ、cDNAに変換した。
cDNA 0.067μLを以下に示したプライマーを用いてPCRにかけた。PCRは、KAPAを用いてアニーリング温度60℃で施行した。
PCR産物を1%アガロースゲルで精製し、サンガー法でシーケンス解析をした。具体的には、BigDye Terminator v3.1を用いてアニーリング温度50℃でPCRにかけた。次いで、PCR産物をエタノール沈殿で精製し、3500 Genetic Analyser(登録商標)(Applied Biosystems社)を用いてシーケンス解析を施行した。
−プライマー−
・ SPON1−TRIM29−Fw:
5’−gaccatgctgggaccttcc−3’(配列番号:21)
・ SPON1−TRIM29−Rv:
5’−cttgatgcggtccttctcctt−3’(配列番号:22)
シーケンス解析の結果、SPON1遺伝子のエクソン2の3’側とTRIM29遺伝子のエクソン2の5’側が転写産物上で結合していることが確認された。図1bに、融合部位を確認した結果を示す。
(試験例1−3)
SPON1−TRIM29融合遺伝子の発現の検証を行うために、試験例1−1でRNAシーケンスを施行した卵巣がん臨床検体38症例(Ov1〜Ov38)と、追加で用意した初発高異型度漿液性がん50症例(S1〜S50)のRNAから常法によりcDNAを作製し、以下のプライマーを用いてネスティングPCRを施行した。前記PCRは、ExTaqを用いて、1回目は94℃2分でホールド後、熱変性は94℃10秒、アニーリングは65℃30秒、伸張は72℃1.5分で20サイクル、2回目は94℃2分でホールド後、熱変性は94℃10秒、アニーリングは65℃30秒、伸張は72℃1分で25サイクルの条件で施行した。
<プライマー>
−1回目−
・ SPON1−TRIM29−nest−Fw1:
5’−atgaggctgtccccggcgcccctg−3’(配列番号:23)
・ SPON1−TRIM29−nest−Rv1:
5’−tcatggggcttcgttggacccaat−3’(配列番号:24)
−2回目−
・ SPON1−TRIM29−nest−Fw2:
5’−agaccctggacaaagtgccc−3’(配列番号:25)
・ SPON1−TRIM29−nest−Rv3:
5’−gtccgccttgcacatcttct−3’(配列番号:26)
図1c及び1dにネスティングPCRの結果を示す。なお、図1c中の「NT」は、「鋳型なし」を表す。
SPON1−TRIM29融合遺伝子は、RNAシーケンスで検出された高異型度漿液性がんの再発検体であるOv14、分類不能がんの再発検体であるOv10、及び類内膜がんであるOv7とOv15の初発再発ペアで発現していることを確認したが、Ov14の初発ペア検体であるOv6とOv10の初発ペア検体であるOv2からは検出されなかった(図1c)。
また、追加で用意した初発高異型度漿液性がん50症例(S1〜S50)では、11検体でSPON1−TRIM29の発現が確認された(図1d)。
以上の結果から、SPON1−TRIM29融合遺伝子の転写物は、卵巣がん臨床検体82検体中15例(18%)に発現していることがわかった。ジャンクションが完全に一致したSPON1−TRIM29融合遺伝子の転写物が違う患者検体から得られたことから、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子のタンパク質が、複数の検体で発現していることが示唆された。
(試験例1−4)
以下のヒト卵巣がん由来細胞におけるSPON1−TRIM29融合遺伝子の発現の検証を試験例1−3と同様にして行った。
−ヒト卵巣がん由来細胞−
・ A2780
・ OVCAR3
・ OV90
・ SKOV3
・ RMG1
なお、A2780及びRMG1は、RPMI−1640に10%FBSと1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地で培養した。OVCAR3、SKOV3、OV90は、DMEMに10%FBSと1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地で培養した。
図1eにネスティングPCRの結果を示す。
図1eに示されるように、検証した5つの卵巣がん細胞株では、SPON1−TRIM29融合遺伝子の発現は確認されなかった。
SPON1−TRIM29融合遺伝子の予想される構造を図2a及び2bに示す。
図2aは、SPON1遺伝子とTRIM29遺伝子のタンパク質レベルの構造と、SPON1−TRIM29融合遺伝子の予想されるタンパク質レベルの構造を示す模式図である。SPON1遺伝子は、シグナルペプチド、細胞外マトリックスと結合するリーラー(Reeler)、胚神経細胞の発生に関わるスポンジン(Spondin)_N、6つのトロンボスポンジンタイプ1ドメイン(Thrombospondin type1 domain)を有する。TRIM29遺伝子は、ジンクフィンガー(Zinc finger)ドメイン、B−ボックス(B−box)、コイルドコイル(Coiled−coil)を有する。SPON1−TRIM29融合遺伝子はインフレームの融合遺伝子であり、TRIM29遺伝子のC末端側のアミノ酸配列に、SPON1遺伝子由来のシグナルペプチド配列を含む領域が結合したタンパク質を形成すると予想された。
図2bは、SPON1遺伝子とTRIM29遺伝子のエクソンレベルの構造と、SPON1−TRIM29融合遺伝子の予想されるエクソンレベルの構造を示す模式図である。SPON1遺伝子のエクソン1〜エクソン2と、TRIM29遺伝子のエクソン2〜エクソン11が融合したタンパク質が形成されることが予想された。
SPON1−TRIM29融合遺伝子のcDNA配列を配列番号:19に、SPON1−TRIM29融合遺伝子のタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:20に示した。
(試験例2)
<クローニング>
SPON1−TRIM29融合遺伝子のタンパク質を発現させるプラスミドのコンストラクトを以下のようにして作製した。
SPON1−TRIM29融合遺伝子を発現する上記したOv14のRNAに対して、以下のプライマーを用いてRT−PCRを施行した。得られたPCR産物のC末端にフラッグ(FLAG)タグ配列を付加して、pcDNA3ベクターに挿入した。
−プライマー−
・ SPON1−TRIM29−full−Fw:
5’−attgaattcaggctgtccccggcgcccctgaag−3’(配列番号:27)
・ SPON1−TRIM29−full−Rv:
5’−attctcgagtcatggggcttcgttggacccaat−3’(配列番号:28)
<トランスフェクション>
前記クローニングで作製したコンストラクトを、ヒト腎臓由来細胞の293T細胞株又はヒト卵巣がん由来細胞のA2780細胞株に、FuGENE HD(Roche社)を用いてトランスフェクションし、SPON1−TRIM29融合遺伝子一過性発現細胞を作製した。
また、前記クローニングで作製したコンストラクトを、融合遺伝子を導入していないpCDNA3ベクターに代えた以外は、同様にして、ヒト腎臓由来細胞の293T細胞株又はヒト卵巣がん由来細胞のA2780細胞株にトランスフェクションした。
なお、293T細胞はDMEMに10%FBSと1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地で培養し、A2780細胞は、RPMI−1640に10%FBSと1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地で培養した。
上記トランスフェクション後のA2780細胞を100mg/mLのG418を用いて選択培養し、恒常発現細胞株をそれぞれ2クローンずつ作製した。以下、前記クローニングで作製したコンストラクトをトランスフェクションした恒常発現細胞株を「SPON1−TRIM29−A2780 #A」、「SPON1−TRIM29−A2780 #B」と、融合遺伝子を導入していないpCDNA3ベクターをトランスフェクションした恒常発現細胞株を「Vector−A2780 #A」、「Vector−A2780 #B」と称することがある。
<ウェスタンブロッティング>
上記で作製した細胞における融合遺伝子の発現を以下のようにして確認した。結果を図3に示す。
細胞抽出液は、トランフフェクションの24時間後に2×サンプルバッファーを用いて調製した。具体的には、細胞をPBSで洗浄した後2×サンプルバッファーを加えて細胞を溶解し、100℃で15分間加熱処理した。
ウェスタンブロッティングでは、前記細胞抽出液を10% SDS−ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動した後、トランスファーバッファー(39mM グリシン、48mM トリスベース、20%メタノール)を用いてPVDFメンブレン(Merck Millipore社)に転写した。メンブレンを1×TBSTで洗浄し、1×TBSTで作製した5%スキムミルクで30分間ブロッキングした。1×TBSTで3回洗浄後にCan Get Signal(TOYOBO社)で3,000倍に希釈した一次抗体を4℃で一晩反応させた。1×TBSTで2回洗浄後にCanget Signalで3,000倍に希釈した二次抗体を1時間反応させた。1×TBSTで3回洗浄後にPierce ECL Plus Western Blotting Substrate(Thermo Fisher Scientific社)を用いて検出した。抗体は、抗FLAG抗体(F3165−5MG, Sigma−Aldrich社)、抗マウス抗体(Code: NA931, GE Healthcare社)を使用した。
図3に示されるように、目的とする細胞株が作製されたことが確認された。
(試験例3)
SPON1−TRIM29融合遺伝子の細胞増殖能に対する影響を調べるために、試験例2で作製した細胞株の「SPON1−TRIM29−A2780 #A」、「SPON1−TRIM29−A2780 #B」、「Vector−A2780 #A」、「Vector−A2780 #B」を用いて、細胞増殖試験を施行した。
細胞増殖試験は、「Ikeda K, Shiba S, Horie−Inoue K, Shimokata K, Inoue S. (2013) A stabilizing factor for mitochondrial respiratory supercomplex assembly regulates energy metabolism in muscle. Nat commun 4:2147.」に記載のDNAアッセイと同様にして解析した。
具体的には、上記細胞を96ウェルプレートに5,000個/ウェルずつ播き、その翌日に以下の卵巣がん治療薬を各濃度で振りかけた。卵巣がん治療薬を投与した日をデイ1(Day1)として、Day1、Day3又はDay5に、培地を除いて−30℃に凍結した。なお、A2780細胞は、RPMI−1640に10%FBSと1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地で培養した。
前記凍結物に水を100μLずつ入れ、1時間後に−80℃で凍結した。凍結の2時間後に室温で融解した。20μg/mLのHoechst 33258(Molecular Probes社)を入れたTNE溶液を100μL/ウェルずつ入れてARVOマルチプレートリーダー(PerkinElmer社)で蛍光強度を計測した。
<卵巣がん治療薬及び投与濃度>
・ シスプラチン : 0μM、0.2μM、1μM
・ パクリタキセル : 0nM、2nM、5nM
・ オラパリブ : 0μM、1μM、2μM
シスプラチンを投与した場合の結果を図4aに、パクリタキセルを投与した場合の結果を図4bに、オラパリブを投与した場合の結果を図4cに示す。
図4a〜4c中の横軸の各項目における棒グラフは、左側から順に、「Vector−A2780 #A」、「Vector−A2780 #B」、「SPON1−TRIM29−A2780 #A」、「SPON1−TRIM29−A2780 #B」の結果を示す。また、各図中、「*」はp値<0.05を表し、「**」はp値<0.01を表し、「***」はp値<0.001を表し、「****」はp値<0.0001を表す。
図4a〜4cの結果から、「SPON1−TRIM29−A2780 #A」及び「SPON1−TRIM29−A2780 #B」は、「Vector−A2780 #A」及び「Vector−A2780 #B」に比較して、有意に増殖が亢進していることが示された。また、「SPON1−TRIM29−A2780 #A」及び「SPON1−TRIM29−A2780 #B」は、各化学療法に対して、有意な耐性を示すことが確認された。
(試験例4)
SPON1−TRIM29融合遺伝子による薬剤耐性のメカニズムを解析するために、FACS(Fluorescence−activated cell sorting)を用いたアポトーシス解析を以下のようにして行った。
試験例2で作製した細胞株の「SPON1−TRIM29−A2780 #A」又は「Vector−A2780 #A」を6ウェルプレートに150,000個/ウェルずつ播いた。翌日に薬剤(シスプラチン1μM、パクリタキセル5nM、又はオラパリブ2μM)を添加した。薬剤を投与した日をDay1として、Day4に細胞を回収した。また、薬剤を添加しなかった場合についても同様にして細胞を回収した。なお、A2780細胞は、RPMI−1640に10%FBSと1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地で培養した。
回収した細胞をFITCアネキシンVとヨウ化プロピジウム(PI)(FITC Annexin V Apoptosis Detection Kit I, BD Biosciences社)で染色し、FACS Callibur(登録商標)(BD Biosciences社)を用いて測定した。
薬剤なしの場合の結果を図5aに、シスプラチンを添加した場合の結果を図5bに、パクリタキセルを添加した場合の結果を図5cに、オラパリブを添加した場合の結果を図5dに示す。また、薬剤の添加の有無のそれぞれの場合におけるアネキシンV陽性のアポトーシス細胞の割合を図5eに示す。
これらの図から、薬剤の投与により増加するアネキシンV陽性のアポトーシスを示す細胞の割合が、「Vector−A2780 #A」と比べて、「SPON1−TRIM29−A2780 #A」では有意に減少していることが示され、SPON1−TRIM29融合遺伝子は、これらの卵巣がん治療薬によって誘導されるアポトーシスに対して抵抗性を付与することにより、細胞増殖を亢進させることが示された。
(試験例5−1)
<二本鎖核酸分子の作製>
細胞増殖の亢進及び薬剤耐性の獲得がSPON1−TRIM29融合遺伝子によるものかを調べるために、SPON1−TRIM29融合遺伝子の融合部位にまたがる二本鎖核酸分子(siFusion #1〜#6)を設計した。二本鎖核酸分子は、Sigma−Aldrich社にて合成した。
なお、ネガティブコントロールとして使用した二本鎖核酸分子(siLuc)は、RNAi社にて合成した。
以下に、各二本鎖核酸分子の配列を示す。
<<siFusion #1>>
−標的配列−
5’−ggaccttccagacggagct−3’(配列番号:1)
−二本鎖核酸分子(キメラsiRNA)の配列−
−−センス鎖−−
5’−ggaccuuccagacggagcutt−3’(配列番号:7)
−−アンチセンス鎖−−
5’−agcuccgucuggaaggucctt−3’(配列番号:8)
配列番号:7及び8中、下線部はDNAを表し、下線部なしはRNAを表す。
<<siFusion #2>>
−標的配列−
5’−ccttccagacggagctgtcat−3’(配列番号2)
−二本鎖核酸分子(キメラsiRNA)の配列−
−−センス鎖−−
5’−ccuuccagacggagcugucautt−3’(配列番号9)
−−アンチセンス鎖−−
5’−augacagcuccgucuggaaggtt−3’(配列番号10)
配列番号:9及び10中、下線部はDNAを表し、下線部なしはRNAを表す。
<<siFusion #3>>
−標的配列−
5’−ggaccttccagacggagctgt−3’(配列番号3)
−二本鎖核酸分子(キメラsiRNA)の配列−
−−センス鎖−−
5’−ggaccuuccagacggagcugutt−3’(配列番号11)
−−アンチセンス鎖−−
5’−acagcuccgucuggaaggucctt−3’(配列番号12)
配列番号:11及び12中、下線部はDNAを表し、下線部なしはRNAを表す。
<<siFusion #4>>
−標的配列−
5’−gctgggaccttccagacggag−3’(配列番号4)
−二本鎖核酸分子(キメラsiRNA)の配列−
−−センス鎖−−
5’−gcugggaccuuccagacggagtt−3’(配列番号13)
−−アンチセンス鎖−−
5’−cuccgucuggaaggucccagctt−3’(配列番号14)
配列番号:13及び14中、下線部はDNAを表し、下線部なしはRNAを表す。
<<siFusion #5>>
−標的配列−
5’−tgggaccttccagacggagct−3’(配列番号5)
−二本鎖核酸分子(キメラsiRNA)の配列−
−−センス鎖−−
5’−ugggaccuuccagacggagcutt−3’(配列番号15)
−−アンチセンス鎖−−
5’−agcuccgucuggaaggucccatt−3’(配列番号16)
配列番号:15及び16中、下線部はDNAを表し、下線部なしはRNAを表す。
<<siFusion #6>>
−標的配列−
5’−ttccagacggagctgtcattg−3’(配列番号6)
−二本鎖核酸分子(キメラsiRNA)の配列−
−−センス鎖−−
5’−uuccagacggagcugucauugtt−3’(配列番号17)
−−アンチセンス鎖−−
5’−caaugacagcuccgucuggaatt−3’(配列番号18)
配列番号:17及び18中、下線部はDNAを表し、下線部なしはRNAを表す。
<<siLuc>>
−二本鎖核酸分子(siRNA)の配列−
−−センス鎖−−
5’−guggauuucgagucgucuuaa−3’(配列番号29)
−−アンチセンス鎖−−
5’−aagacgacucgaaauccacau−3’(配列番号30)
<SPON1−TRIM29融合遺伝子発現抑制効果の検討>
上記で作製した二本鎖核酸分子を試験例2で作製した細胞株の「SPON1−TRIM29−A2780 #A」、「SPON1−TRIM29−A2780 #B」、「Vector−A2780 #A」、又は「Vector−A2780 #B」にトランスフェクションし、48時間培養後に全RNAを回収してquantitative real−time PCRを行うことにより、各二本鎖核酸分子の各細胞におけるSPON1−TRIM29融合遺伝子発現に対する抑制効果(ノックダウン効果)を検討した。
実験方法の詳細を以下に示す。
[細胞培養]
前記細胞は、RPMI−1640に10%FBSと1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地で培養した。
[トランスフェクション]
6ウェルプレートに、前記細胞を1×10個/ウェルとなるようにまき、その翌日に、OPTI−MEM(Invitrogen社製)及びトランスフェクション試薬であるRNAi MAX(Invitrogen社製)を用いて二本鎖核酸分子をトランスフェクションした。導入した二本鎖核酸分子の量は、培地中で10nMとなるように調整した。
[SPON1−TRIM29融合遺伝子発現レベルの測定]
トランスフェクションし48時間培養した後に、ISOGEN(株式会社ニッポンジーン製)を用いて全RNAを細胞より回収した。前記全RNA 1μgを用いて、SuperScript(登録商標) III Reverse Transcriptase(Life Technologies社製)により、cDNAを合成した。
前記cDNAを10倍希釈し、そのうちの2μLを用いてquantitative real−time PCRを行った。前記quantitative real−time PCRは、StepOnePlus(登録商標) Real−Time PCR Systems(Life Technologies社製)、及びKAPA SYBR Fast PCR kit(日本ジェネティクス株式会社製)を用いて行い、SPON1−TRIM29融合遺伝子(配列番号:19)及び内部コントロールであるGAPDH遺伝子の発現レベルを測定した。
前記SPON1−TRIM29融合遺伝子(配列番号:19)の発現レベルは、前記GAPDH遺伝子に対する発現レベルをCycle数からΔΔCt法を用いて算出した。
なお、quantitative real−time PCRに用いたプライマーは、以下の通りである。
−GAPDH遺伝子−
・ GAPDH_FW:
5’−ggtggtctcctctgacttcaaca−3’(配列番号:31)
・ GAPDH_RV:
5’−gtggtcgttgagggcaatg−3’(配列番号:32)
−SPON1−TRIM29融合遺伝子−
・ SPON1−TRIM29−Fw:
5’−gaccatgctgggaccttcc−3’(配列番号:21)
・ SPON1−TRIM29−Rv:
5’−cttgatgcggtccttctcctt−3’(配列番号:22)
Vector−A2780 #A細胞におけるノックダウン効率を確認した結果を図6aに、Vector−A2780 #B細胞におけるノックダウン効率を確認した結果を図6bに、SPON1−TRIM29−A2780 #A細胞におけるノックダウン効率を確認した結果を図6cに、SPON1−TRIM29−A2780 #B細胞におけるノックダウン効率を確認した結果を図6dに示す。
図6a〜6d中、「siLuc」は「siLuc」をトランスフェクションした場合の結果を示し、「SiFusion#1〜#6」それぞれ「SiFusion#1〜#6」をトランスフェクションした場合の結果を示す。
図6a〜6dの結果から、「SiFusion#1〜#6」のうち、siFusion#6以外では、SPON1−TRIM29融合遺伝子のノックダウンが確認された。
(試験例5−2)
試験例5−1で作製した「SiFusion#1〜#6」のうち、SPON1−TRIM29融合遺伝子の発現抑制効果が認められた「SiFusion#1〜#5」について、試験例2で作製した細胞株の「SPON1−TRIM29−A2780 #A」、「SPON1−TRIM29−A2780 #B」、「Vector−A2780 #A」、「Vector−A2780 #B」を用いて、細胞増殖試験を施行した。
細胞増殖試験は、試験例3と同様に、DNAアッセイにより解析した。
具体的には、上記細胞を96ウェルプレートに5,000個/ウェルずつ播き、その翌日にOPTI−MEM(Invitrogen社製)及びトランスフェクション試薬であるRNAi MAX(Invitrogen社製)を用いて二本鎖核酸分子(SiFusion#1〜#5、又はSiLuc)をトランスフェクションした。なお、導入した二本鎖核酸分子の量は、培地中で10nMとなるように調整した。さらにその翌日に卵巣がん治療薬(シスプラチン(1μM)、パクリタキセル(2nM)、又はオラパリブ(2μM))を添加した。卵巣がん治療薬の添加を行った日をデイ1(Day1)としてDay4に、培地を除いて−30℃に凍結した。また、薬剤なし場合も同様にして試験を行った。なお、A2780細胞はRPMI−1640に10%FBSと1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地で培養した。
前記凍結物に水を100μLずつ入れ、1時間後に−80℃で凍結した。凍結の2時間後に室温で融解した。20μg/mLのHoechst 33258(Molecular Probes社)を入れたTNE溶液を100μL/ウェルずつ入れてARVOマルチプレートリーダー(PerkinElmer社)で蛍光強度を計測した。
薬剤なしの場合の結果を図6eに、シスプラチン(1μM)を投与した場合の結果を図6fに、パクリタキセル(2nM)を投与した場合の結果を図6gに、オラパリブ(2μM)を投与した場合の結果を図6hに示す。
図6e〜6h中の横軸の各項目における棒グラフは、左側から順に、「Vector−A2780 #A」、「Vector−A2780 #B」、「SPON1−TRIM29−A2780 #A」、「SPON1−TRIM29−A2780 #B」の結果を示す。また、各図中、「*」はp値<0.05を表し、「**」はp値<0.01を表し、「***」はp値<0.001を表し、「****」はp値<0.0001を表す。
図6e〜6hの結果から、卵巣がん治療薬を添加していない場合では、SiFusion#1又は#2を投与すると、「SPON1−TRIM29−A2780 #A」及び「SPON1−TRIM29−A2780 #B」で細胞の増殖が低下することが示された。
また、卵巣がん治療薬を添加した場合では、SiFusion#1、#2、又は#3を投与すると、「SPON1−TRIM29−A2780 #A」及び「SPON1−TRIM29−A2780 #B」の薬剤耐性が有意に減少することが観察された。
以上より、SPON1−TRIM29融合遺伝子は、卵巣がん細胞の増殖能を高めること、及び卵巣がん治療薬に対する耐性を獲得させることが示された。
また、本発明の二本鎖核酸分子により、SPON1−TRIM29融合遺伝子の発現を抑制できること、SPON1−TRIM29融合遺伝子を発現する細胞の増殖を抑制できること、及びSPON1−TRIM29融合遺伝子を発現する細胞の卵巣がん治療薬に対する耐性を減少させることができることが示された。
SPON1−TRIM29融合遺伝子は、卵巣がんの診断及び治療標的となる融合転写物である可能性があり、腫瘍マーカー、診断、治療標的、治療法の選択法、創薬などへの展開が期待される。
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> SPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子の発現を抑制するための二本鎖核酸分子であって、
(a)配列番号:1〜配列番号:5のいずれかで表される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、
(b)前記(a)のセンス鎖と二本鎖を形成する該センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖とを含むことを特徴とする二本鎖核酸分子である。
<2> 前記センス鎖が、配列番号:1〜配列番号:3のいずれかで表される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖である前記<1>に記載の二本鎖核酸分子である。
<3> 前記センス鎖が、配列番号:1〜配列番号:2のいずれかで表される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖である前記<1>から<2>のいずれかに記載の二本鎖核酸分子である。
<4> 二本鎖RNA及び二本鎖RNA−DNAキメラのいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の二本鎖核酸分子である。
<5> siRNA及びキメラsiRNAのいずれかである前記<1>から<4>のいずれかに記載の二本鎖核酸分子である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とするDNAである。
<7> 前記<6>に記載のDNAを含むことを特徴とするベクターである。
<8> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の二本鎖核酸分子、前記<6>に記載のDNA、及び前記<7>に記載のベクターの少なくともいずれかを含むことを特徴とするがん細胞増殖抑制剤である。
<9> がん細胞が、卵巣がん細胞である前記<8>に記載のがん細胞増殖抑制剤である。
<10> 前記卵巣がん細胞が、卵巣がん治療薬に対する抵抗性を有する前記<9>に記載のがん細胞増殖抑制剤である。
<11> 前記卵巣がん治療薬が、シスプラチン、パクリタキセル、及びオラパリブからなる群から選択される少なくとも1種である前記<10>に記載のがん細胞増殖抑制剤である。
<12> 前記卵巣がん治療薬と組み合わせて用いられる前記<8>から<11>のいずれかに記載のがん細胞増殖抑制剤である。
<13> がん細胞に、前記<8>から<12>のいずれかに記載のがん細胞増殖抑制剤を作用させることを特徴とするがん細胞の増殖抑制方法である。
<14> 前記がん細胞が、卵巣がん細胞である前記<13>に記載のがん細胞の増殖抑制方法である。
<15> 前記卵巣がん細胞が、卵巣がん治療薬に対する抵抗性を有する前記<14>に記載のがん細胞の増殖抑制方法である。
<16> 更に、前記卵巣がん治療薬を作用させる前記<14>から<15>のいずれかに記載のがん細胞の増殖抑制方法である。
<17> 前記卵巣がん治療薬が、シスプラチン、パクリタキセル、及びオラパリブからなる群から選択される少なくとも1種である前記<15>から<16>のいずれかに記載のがん細胞増殖抑制方法である。
<18> がんを予防乃至治療するための医薬であって、前記<8>から<12>のいずれかに記載のがん細胞増殖抑制剤を含むことを特徴とする医薬である。
<19> 個体に、前記<18>に記載の医薬を投与することを特徴とするがんの予防乃至治療方法である。
<20> 卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法であって、
個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程と、
前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出されない細胞と比べて、卵巣がん細胞の増殖が亢進すると判定する工程とを含むことを特徴とする方法である。
<21> 卵巣がん個体の卵巣がん治療薬に対する抵抗性を判定する方法であって、
個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程と、
前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、卵巣がん治療薬に対する抵抗性を有すると判定する工程とを含むことを特徴とする方法である。
<22> 前記卵巣がん治療薬が、シスプラチン、パクリタキセル、及びオラパリブからなる群から選択される少なくとも1種である前記<21>に記載の方法である。
<23> 卵巣がん個体における前記<18>に記載の医薬の有効性を判定する方法であって、
個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程と、
前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、前記<18>に記載の医薬が有効であると判定する工程とを含むことを特徴とする方法である。

Claims (10)

  1. SPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子の発現を抑制するための二本鎖核酸分子であって、
    (a)配列番号:1〜配列番号:5のいずれかで表される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、
    (b)前記(a)のセンス鎖と二本鎖を形成する該センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖とを含むことを特徴とする二本鎖核酸分子。
  2. 前記センス鎖が、配列番号:1〜配列番号:3のいずれかで表される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖である請求項1に記載の二本鎖核酸分子。
  3. 前記センス鎖が、配列番号:1〜配列番号:2のいずれかで表される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖である請求項1から2のいずれかに記載の二本鎖核酸分子。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とするDNA。
  5. 請求項4に記載のDNAを含むことを特徴とするベクター。
  6. 請求項1から3のいずれかに記載の二本鎖核酸分子、請求項4に記載のDNA、及び請求項5に記載のベクターの少なくともいずれかを含むことを特徴とするがん細胞増殖抑制剤。
  7. がんを予防乃至治療するための医薬であって、請求項6に記載のがん細胞増殖抑制剤を含むことを特徴とする医薬。
  8. 卵巣がん細胞の増殖能を判定する方法であって、
    個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程と、
    前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出されない細胞と比べて、卵巣がん細胞の増殖が亢進すると判定する工程とを含むことを特徴とする方法。
  9. 卵巣がん個体の卵巣がん治療薬に対する抵抗性を判定する方法であって、
    個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程と、
    前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、卵巣がん治療薬に対する抵抗性を有すると判定する工程とを含むことを特徴とする方法。
  10. 卵巣がん個体における請求項7に記載の医薬の有効性を判定する方法であって、
    個体から調製した試料中におけるSPON1遺伝子と、TRIM29遺伝子との融合遺伝子であるSPON1−TRIM29融合遺伝子を検出する工程と、
    前記試料中に前記SPON1−TRIM29融合遺伝子が検出された場合には、請求項7に記載の医薬が有効であると判定する工程とを含むことを特徴とする方法。
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