JP2019192083A - 音楽評価ツール - Google Patents

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Abstract

【課題】発達障害や知的障害、精神障害、及び認知症などの老年障害があるものに対し、現在の音楽能力を評価し、音楽療法、音楽指導を受けたことによる音楽能力の成長の度合いを長期的に評価しうる評価指標及び評価する方法を提供すること。【解決手段】障害児者の音楽能力を評価する評価ツールであって、歌唱、鍵盤楽器、及びリズムのいずれか1又は2以上の評価項目よりなり、各評価項目は、取り組む姿勢の評価である基礎部分、及び技能の評価である発展部分からなり、基礎部分、発展部分それぞれについて、レベル別評価基準が設定されて該レベル別評価基準ごとに達成度を採点可能とした、障害児者の音楽能力を評価する評価ツール。本評価ツールによれば、障害児者の音楽能力を的確に評価することができる。そのため評価結果を参考にして、それぞれの障害児者に適した音楽療法、及び音楽指導が可能となる。【選択図】なし

Description

本発明は、発達障害や知的障害、精神障害、及び認知症などの老年障害があるものに対し、音楽能力、及びや音楽療法、音楽指導を受けたことによる音楽能力の長期的な成長、を評価しうる評価指標及び評価する方法に関する。
子どもの発達を評価するにあたって、特に障害のある子どもは、同一個体内において身体的、社会的発達と、知的、精神的発達の段階に差異がみられる場合が少なくないことが知られている。そのため、実際の教育現場では、「個に応じた教育」を行うことが強く求められており、まず現時点での子どもの発達の程度を客観的に把握し、実態に即した具体的な取り組みを考えていくことが必要となる。
子どもの発達支援という観点から、実際の教育現場では特に音楽が、子どもの発達を促すことを目的としてさまざまな形で活用されていること多い。障害のある子どもであっても、音楽に対して何らかの反応を示し、この反応は発達に伴って変化する。とくに発達障害の場合には、発達の初期において言語の習得に困難を来す場合が多く、対人関係的、情緒的な面での発達にも遅れがみられることが少なくない。こうした子供たちに対してきわめて有効なかかわり方の1つに、非言語的コミュニケーションの方法を工夫することが挙げられる。
言語的コミュニケーションが難しい障害児者のコミュニケーション能力の獲得を目指して、音楽を活用した取り組みが数多くなされている。音楽は非言語的コミュニケーション(Non-Verbal-Communication)であり、障害を持つが故に言語的コミュニケーションが困難な子どもにおいても、音楽は「お互いに理解(了解)し合える世界」「共感し合える世界」をもたらすものとして、音楽の有効性が示唆されている(非特許文献1)。
このような背景から、音楽を聞いたり演奏したりする際の生理的・心理的・社会的な効果を応用して、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容を目的として、音楽を意図的・計画的に使用する方法として音楽療法が積極的に行われている。音楽療法は、歌唱や演奏を行う能動的音楽療法と、音楽を聴くなどの受動的音楽療法の2つに大きく分けることができる。また、音楽療法は音楽を用いたセラピーであり、そのための技術を持った専門家が行わなければ成果を上げる事が難しいものである。単に歌を歌ったり、音楽を聴いたりということとは違い、音楽療法士が個々のニーズに合わせて音楽を提供し、その成果を分析しながら支援を行うことが必要である。
音楽療法を行う上では、音楽療法を受ける者の現状分析や、音楽療法における成果の分析が非常に重要となる。しかしながら、発達障害や知的障害、精神障害、及び認知症などの老年障害を有している場合は特に、他者の発する言葉の意味内容を理解したり、自己の認知状態を口頭で説明したり、さらには発語そのものが困難な場合が多く、これらの分析が難しい。
現状や成果を分析する試みとしては、音楽を活用した子どもの発達とそれを評価するものとして、例えば、アセスメントツールと実践ツールの開発を試みたもの(非特許文献2)はあるが、アセスメントツールとしては発達段階の非常に初期のレベルを評価できるに留まっている。
琉球大学教育学部障害児教育実践センター紀要No.7,59-84,2005
発明者は、今までのアセスメントツール(音楽評価ツール)は、音楽的な成長といえる程度に達する障害児者の状態を分析することはできず、障害児者の発達段階の初期レベルを評価できるにとどまるのであって、音楽療法の結果、発達段階の初期のレベルを超えた音楽能力を獲得した障害児者に対し、長期的に利用することができないという問題を見出した。つまり、現状では、これらの者に対する現在の音楽能力を評価し、音楽療法、音楽指導を受けたことによる音楽能力の成長を長期にわたり評価しうる評価指標というものが存在していないという問題が存在した。
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、取り組む姿勢の評価である基礎部分と、音楽技能の評価である発展部分の2段階で評価することで、発達障害や知的障害、精神障害、及び認知症などの老年障害があるものに対し、音楽療法、音楽指導を受けたことによる音楽能力の成長を発達の初期段階から、音楽的な成長といえる程度まで達した段階まで、継続して長期的に評価しうることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.障害児者の音楽能力を評価する評価ツールであって、
歌唱、鍵盤楽器、及びリズムのいずれか1又は2以上の評価項目よりなり、
各評価項目は、取り組む姿勢の評価である基礎部分、及び技能の評価である発展部分からなり、
基礎部分、発展部分それぞれについてレベル別評価基準が設定されて、該レベル別評価基準ごとに達成度を採点可能とした、
障害児者の音楽能力を評価する評価ツール。
2.基礎部分のレベル別評価基準は、評価項目に応じて、声、言葉、フレーズ、動き、音、及び課題曲のいずれか1又は2以上が課題として設定され、
発展部分のレベル別評価基準は、曲の難易度に基づいて各レベルで課題曲が設定されてなる
前記1の評価ツール。
3.基礎部分のレベル別評価基準は、歌唱、鍵盤楽器については、1.興味関心、2.表現意欲、3.音楽の認知と表現、の全てが評価基準として設定され、リズムについてのレベル別評価基準は1.興味関心、3.音楽の認知と表現、の全てが評価基準として設定されてなる
前記1又は2の評価ツール
4.歌唱の発展部分のレベル別評価基準の達成度を、a.速度の変化、b.拍の流れ・リズム、c.音程、d.階名唱(固定ド)、e.強弱の変化、f.歌詞唱という6つの観点全てから採点して評価されるようにした前記1〜3のいずれか1の評価ツール。
5.鍵盤楽器の発展部分のレベル別評価基準の達成度を、a.速度の変化、b.拍の流れ・リズム、c.打鍵の正確性、d.強弱の変化という4つの観点全てから採点して評価されるようにした前記1〜4のいずれか1の評価ツール。
6.リズムの発展部分のレベル別評価基準の達成度を、a.速度の変化、b.拍の流れ・リズム、c.アンサンブルという3つの観点全てから採点して評価されるようにした前記1〜5のいずれか1の評価ツール。
7.歌唱、鍵盤楽器、リズムという3つの評価項目のうち、いずれか1又は2以上を、前記1〜6のいずれか1の評価ツールにより評価する、障害児者の音楽能力を評価する方法。
本発明によれば、現在の音楽能力を評価でき、音楽療法や音楽指導を受けたことによる音楽能力の成長を初心者段階から熟練者段階まで継続的に、そして長期的に評価しうる評価指標及び評価する方法を提供できる。その結果、音楽療法、及び音楽指導を継続している障害児者の変化についても的確に評価することが可能となり、より各障害児者に適した音楽療法、及び音楽指導か可能となる。
本発明の評価ツールは表で表現されていてもよいし、プログラム化されていてもよい。表であればその表に従って採点すれば、障害児者の音楽能力を評価できるし、プログラム化されていればパソコンの問いに答えることで障害児者の音楽能力を評価することができる。
本発明は、歌唱、鍵盤楽器、及びリズムから選択した少なくとも1つの評価項目により、音楽能力を評価し、音楽療法、音楽指導を受けたことによる音楽能力の成長を発達の初期段階から継続して長期的に評価する。また、当然ながら、歌唱、鍵盤楽器、及びリズムのうち2又は3を併せて評価し、総合的に障害児者の現状を評価してもよい。
本発明では、歌唱、鍵盤楽器、及びリズムについて、それぞれ基礎と発展の2段階で評価するよう構成されている。基礎は取り組む姿勢に注目したものであり、発展は音楽を表現するための技能に注目したものである。
本発明において歌唱とは、声を用いて音楽を作り出すことを言い、調の使用、リズム、持続音、共鳴などさまざまな発声技術によって通常の音声を強化することで行なわれるものである。歌唱を行う場合、楽器による伴奏はあってもなくてもよい。歌唱は独唱でもよいし、他の者とのグループの中で行われてもよい。例として異なる音程の声を歌う歌手による合唱団や、ロックグループやバロックアンサンブルなど楽器演奏家とともに歌うことなどが挙げられる。
本発明の歌唱の評価ツールは、基礎と発展の2段階で評価するよう構成されている。歌唱の基礎として、レベル順になった評価基準を設ける。具体的には、レベル別評価基準は、低レベルから高レベルまで順に、I.音・声への興味や関心、II.曲に合わせた表現意欲、III.音楽の認知の表現、というように分け、さらにI、II、IIIをより細かく、「声、言葉、フレーズ、音、課題曲」という課題をもとに分けることが好ましい。分けられたそれぞれのレベルにおいて、達成度合いを採点しこれを合計したものを評点Aとし、音楽能力の評価に使用する。
例えば、I(レベル1)は、「I音・声への興味や関心」について、簡単な音、声を課題としたものとし、「簡単な音、声(例えば「教師の言葉やなじみのある音」)に対し興味関心があるか」について、表1「評点の基準(基礎)」で採点する。これが最高点であれば、次のI(レベル2)は「I音・声への興味や関心」について、次に簡単な声・音を課題としたものとし、「次に簡単な声・音(例えば「バイバイ、さよなら」)に興味関心があるか」について表1「評点の基準(基礎)」で採点し、前レベルの得点を加点して評点とする。ここでも最高点であれば、「II曲に合わせた表現意欲」を評価する。例として、II(レベル3)「童謡等の歌に合わせて母音で歌おうとするか」を、表1「評点の基準(基礎)」で採点し、前レベルまでの得点を加点して評点とする。以上のよう順繰りにレベルを上げていき、障害児者の歌唱能力を採点し前レベルまでの得点を加点して合計し、基礎部分の評点Aとし音楽能力の評価に使用する。もちろん、歌唱能力におおよそのあたりをつけ、それより低いレベルの採点はすべて最高点として加点し、適当な評価レベルから評価を始めてもよい。(以下の評価についても同じ)。
また、歌唱の発展としてもレベル順になった評価基準を設ける。具体的には、レベル別評価基準は、曲の難易度に基づいて課題曲を設定し、その課題曲の難易度で低レベルから高レベルまで分ける。各難易度の課題曲について、階名や歌詞で歌うことができる程度について、達成度合いを採点しこれを合計したものを発展部分の評点Bとし音楽能力の評価に使用する。
例えば、発展の初期レベル(レベル7)では、課題曲を難易度の低い「ちょうちょう」として、これをどの程度歌唱できるかを採点する。採点は、表2で示す6つの観点について、表3に示す「評点の基準(歌唱、発展)」で配点し、これらを合計して採点する。これが最高点であれば、さらに、難易度のやや高い課題曲「むすんでひらいて」(レベル8)をどの程度歌うことができるかを、同様に採点し、前レベルまでの得点を加点して評点とする。以上のように順繰りにレベルを上げていき、障害児者の歌唱能力を評価していく。
本発明の鍵盤楽器とは、鍵盤を操作することによって演奏する楽器の総称であり、慣用的な名称として用いられている。例えばピアノ、オルガン、チェンバロ、などが代表的な鍵盤楽器である。楽器分類上でいうと、弦鳴楽器に属するピアノ・チェンバロ・クラビコード・、気鳴楽器に属するパイプオルガン・リードオルガン・アコーディオン・チェレスタ、電鳴楽器に属する電子ピアノ・・電子オルガン・シンセザイザーなどがある。
本発明の鍵盤楽器の評価ツールも、基礎と発展の2段階で評価するよう構成されている。鍵盤楽器の基礎として、レベル順になった評価基準を設ける。具体的には、低レベルから高レベルまで順に、I.楽器への興味や関心、II.曲に合わせた表現意欲、III.音楽の認知の表現というように分け、さらに、I、II、IIIをより細かく「動き、音、課題曲」という課題をもとに分けると好ましい。分けられたそれぞれのレベルにおいて、達成度合いを採点しこれを合計したものを評点Aとし、音楽能力の評価に使用する。
例えば、I(レベル1)は、「I.楽器への興味や関心」について「動き」を課題としたものとし、「身体のそばにある楽器や玩具に手を伸ばしてつかもうとするか」について、表1「評点の基準(基礎)」で採点する。これが最高点であれば、I(レベル2)を採点し、前レベルの得点を加点して評点とする。I(レベル2)は「I.楽器への興味や関心」について「音」を課題としたものとする。「手の近くに楽器や玩具をもっていき触れさせると、それを持って音を出すことができるか」について、表1「評点の基準(基礎)」で採点し、前レベルの得点を加点して評点とする。以上のように順繰りにレベルを上げていき、採点結果を採点して前レベルまでの得点を加点して合計し、障害児者の鍵盤楽器操作能力を評価する。
また、鍵盤楽器の発展としてもレベル順になった評価基準を設ける。具体的には、レベル別の評価基準は、曲の難易度に基づいて課題曲を設定し、その課題曲で難易度を分ける。各難易度の課題曲について、指示された運指を守り、右手や左手で弾くことができる程度について、達成度合いを採点しこれを合計したものを評点Bとし、音楽能力の評価に使用する。
例えば、発展の初期レベル(レベル7)では、課題曲を難易度の低い〈バイエル〉の全音右手の指の打鍵練習24番とし、これをどの程度できるかを採点する。採点は、表4で示す4つの観点について、表5に示す「評点の基準(鍵盤、発展)」で配点し、これらを合計して採点する。これが最高点であれば、さらに難易度のやや高い〈バイエル〉の全音右手の指の打鍵練習24番をどの程度できるかを採点し、前レベルまでの得点を加点して評点とする。以上のように順繰りにレベルを上げていき、採点して、その結果を合計し、障害児者の鍵盤楽器操作能力を評価する。
「リズムは連続的運動現象において規則的に反復する時間的進行秩序である。」といわれ、旋律・和声と並んで音楽を形成する三大要素の一つである。リズムのない音楽は存在しないことからも、リズムは音楽の形成に基礎的な役割を果たすものである。本発明においては、楽曲の流れにそって規則的にくりかえされる音に強弱(長短や高低のときもある)をくわえたもの、別な言い方をすれば拍に強弱(や長短や高低)をつけたものである。
また身体表現は、小学校指導書音楽編にも明記されているように広く普及した活動である。身体表現には次の様な活動がある。全く自由な動き(頭や上体を揺らす、行進、足踏み、スキップ等)、手や足で拍を取る活動(手拍子、足拍子、膝打ち、机を指先で打つ、指揮等)、歌詞内容や曲想、旋律の流れに合わせた活動である。前者二つは反応的活動、後者は表現的活動といえる。一般に、身体反応とは音楽を聴いて自然に反応する動きであり、比較的自由で束縛のない受動的活動である。身体表現とは音楽を聴いて身体で表現する動きであり、能動的活動である。反射的反応である身体反応が、意図的表現へ発達したものが身体表現であるといえる。
本発明においては、リズムとはリズムをとることだけでなく、音楽に反応し対応する全ての身体の動きであると捉え、身体反応と身体表現を含めて、リズムとして評価する。
本発明のリズムの評価ツールは、基礎と発展との2段階で評価するよう構成されている。リズムの基礎として、レベル順になった評価基準を設ける。具体的には、レベル別評価基準は、低レベルから高レベルまで順に、I.リズムへの興味や関心、II.音楽の認知と表現というように分け、さらにI、IIをより細かく、「動き、課題曲」という課題をもとに分ける。分けられたそれぞれのレベルにおいて、達成度合いを採点しこれを合計したものを評点Aとし、音楽能力の評価に使用する。
例えば、I(レベル1)は、「I.リズムへの興味関心」について「動き」を課題としたもので、「音や音楽を聴いて、身体やその一部を動かして反応することができるか」について表1「評点の基準(基礎)」で採点する。これが最高点であればI(レベル2)を採点する。I(レベル2)も「動き」を課題としたもので「あやしことばを聞いて、頭や手足などを動かして、反応することができるか」について、同様に採点し、前レベルまでの得点を加点して評点とする。
以上のように順繰りにレベルを上げていき、障害児者の打楽器操作能力を評価していく。なお、リズムにおいて、歌唱や鍵盤の時と異なり、「曲に合わせた表現意欲」を設定していないのは、評価する者の主観で評価結果にばらつきが出ることを防ぐためである。
また、リズムの発展としてレベル順になった評価基準を設ける。具体的には、レベル別の評価基準は、曲の難易度に基づいて課題曲を設定し、その課題曲で難易度を分ける。各難易度の課題曲について、その課題曲のリズムに合わせて、声や動き、手拍子や打楽器などを叩くことができる程度について、採点し、これを合計して評点Bとし、音楽能力の評価に使用する。
例えば、発展の初期レベル(レベル7)では、課題曲を難易度の低い「いとまき」のリズムよみとし、これをどの程度、できるかを採点する。採点は、表6で示す3つの観点について、表7に示す「評点の基準(リズム、発展)」で配点し、これらを合計して採点する。これが最高点であれば、さらに難易度のやや高い課題曲でどの程度できるかを採点し、前レベルまでの得点を加点して評点とする。以上のように順繰りにレベルを上げていき、採点結果を合計し、障害児者の打楽器操作能力を評価していく。
被評価者の発達段階が基礎段階および発展段階にある場合のいずれにおいても、算出される合計点は高ければ高いほどよい。また、ある時点における評価の合計点とその後に計測した評価の合計点とを対比して合計点が大きくなっていることは、この評価ツールにおいて音楽能力に成長がみられることを示す。
本発明の評価ツールの使い方としては、例えば、歌唱、鍵盤楽器、リズムのいずれかに取り組んでいる様子をその場で観察しながら本発明の評価ツールに記載したり、ビデオ等で撮影し、後からその映像を観ながら本発明の評価ツールに記載したりする。
なお、障害児は個体差が大きいため、歌唱、鍵盤楽器、リズムのすべてに取り組める場合はトータルの総合得点で評価することができるが、リズムができても音程が覚えられないなど、どれかしかできない場合もあり、当然ながら、取り組むことができるものについてのみ評価することでもよい。
音楽教室に通っている知的障害児に対し、歌唱、鍵盤楽器、リズムに取り組んでもらい、その様子をビデオで撮影した。その映像をもとに、本発明の評価ツールによる評価を行った。
また、比較例として非特許文献1に示されている評価ツールを用いて評価を行った。なお、非特許文献1では発達の様子を大まかに捉えた大項目を設定し、その下位項目として発達の目安につき複数の中項目を設定し、1つの中項目に対して4つの小項目を設け、それぞれの小項目に基づいて評価することになっているが、文献中には小項目についての詳細な記載がないため、実際の評価は中項目に基づいて評価した。
[評価方法]
1.本発明による試験
3〜4名の生徒に対して、下記の表中に記載した年に撮影した映像をもとに、本発明の評価ツールで評価した結果を下記の表8〜表10に示す。なお、実施例の表中のブランクは当該生徒について歌唱・鍵盤、リズムに該当ビデオ映像を確認できておらず、評価していないものである。
2.比較試験(非特許文献1に基づく評価)
実施例として評価した3〜4名の生徒について、下記の表中に記載した年に撮影した映像をもとに、非特許文献1に記載された評価に基づき評価した結果を、下記の表12〜表14に示した。なお、評価に用いた表中に記載した年の映像は、実施例で用いた当該年のものと同一の映像である。
下記の表についての評価の記載は、非特許文献1に記載されているように、表11に基づいて記載している。
[結果]
表8に示す対象児童A13の歌唱、表9に示す対象児童A01,A02およびB16の鍵盤楽器、表10に示す対象児童A01,A02およびB16のリズムについて、評価した年が後になるほど、すなわち音楽教室でのレッスンを継続していくことで、対象児童の音楽能力のレベルが上がっていることがわかる。またB16、B17の歌唱、B17の鍵盤、B17のリズムについての評価できており、発達段階の初期レベルでも評価できることもわかった。
一方、比較試験では、発達段階の初期レベルは評価されているものの、表12に示す対象児童A13の歌唱、表13に示す対象児童A01,A02およびB16の鍵盤楽器、表14に示す対象児童A01,A02およびB16のリズムについては、非特許文献1に記載された評価によると、すべての項目について「反応や行動が明らかに観察できた場合」に該当しているため、それ以上の音楽能力の向上を評価することができなかった。
以上より、本発明の評価ツールにより、既存の評価ツールではできない、長期の評価ができることが確認された。

本発明により、発達障害や知的障害、精神障害、及び認知症などの老年障害があるものに対し、音楽能力を評価でき、音楽療法、音楽指導を受けたことによる音楽能力の成長を発達の初期段階から継続して長期的に評価することが可能となるので、音楽療法の際、各人に応じて適切な指導が行えるようになり、各人の音楽能力の発達を促すことに有用である。

Claims (7)

  1. 障害児者の音楽能力を評価する評価ツールであって、
    歌唱、鍵盤楽器、及びリズムのいずれか1又は2以上の評価項目よりなり、
    各評価項目は、取り組む姿勢の評価である基礎部分、及び技能の評価である発展部分からなり、
    基礎部分、発展部分それぞれについてレベル別評価基準が設定されて、該レベル別評価基準ごとに達成度を採点可能とした、
    障害児者の音楽能力を評価する評価ツール。
  2. 基礎部分のレベル別評価基準は、評価項目に応じて、声、言葉、フレーズ、動き、音、及び課題曲のいずれか1又は2以上が課題として設定され、
    発展部分のレベル別評価基準は、曲の難易度に基づいて各レベルで課題曲が設定されてなる
    請求項1の評価ツール。
  3. 基礎部分のレベル別評価基準は、歌唱、鍵盤楽器については、1.興味関心、2.表現意欲、3.音楽の認知と表現、の全てが評価基準として設定され、リズムについてのレベル別評価基準は1.興味関心、3.音楽の認知と表現、の全てが評価基準として設定されてなる
    請求項1又は2の評価ツール
  4. 歌唱の発展部分のレベル別評価基準の達成度を、a.速度の変化、b.拍の流れ・リズム、c.音程、d.階名唱(固定ド)、e.強弱の変化、f.歌詞唱という6つの観点全てから採点して評価されるようにした請求項1〜3のいずれか1の評価ツール。
  5. 鍵盤楽器の発展部分のレベル別評価基準の達成度を、a.速度の変化、b.拍の流れ・リズム、c.打鍵の正確性、d.強弱の変化という4つの観点全てから採点して評価されるようにした請求項1〜4のいずれか1の評価ツール。
  6. リズムの発展部分のレベル別評価基準の達成度を、a.速度の変化、b.拍の流れ・リズム、c.アンサンブルという3つの観点全てから採点して評価されるようにした請求項1〜5のいずれか1の評価ツール。
  7. 歌唱、鍵盤楽器、リズムという3つの評価項目のうち、いずれか1又は2以上を、請求項1〜6のいずれか1の評価ツールにより評価する、障害児者の音楽能力を評価する方法。
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興座亜希子, 外3名: "音楽を活用した子どもの発達と評価に関する方法論的研究:アセスメントツールと実践ツールの開発", 琉球大学教育学部障害児教育実践センター紀要, JPN6022011362, 31 March 2006 (2006-03-31), pages 59 - 84, ISSN: 0004738730 *

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