JP2019190832A - 核磁気共鳴測定装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】超伝導材料により構成された検出コイルを用いて核磁気共鳴を検出する場合において、試料付近での静磁場の乱れを抑制する。【解決手段】プローブヘッド28内には試料管32の両側に一対のコイルユニット36,38が設けられている。コイル44,52は、超電導状態において負の磁化を生じさせる高温超電導材料(負磁化型材料としてのn型HTS材料)により構成されている。コイル46,54は、所定の冷却過程を経て超電導状態において正の磁化を生じさせる高温超電導材料(正磁化型材料としてのp型HTS材料)により構成されている。試料付近において、負の磁化による磁場と正の磁化による磁場との打ち消し合いが生じる。【選択図】図2

Description

本発明は核磁気共鳴測定装置及び方法に関し、特に、核磁気共鳴の検出で利用される超伝導材料に関する。
核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)は、静磁場中に置かれた原子核がそれ固有の周波数をもった電磁波と相互作用する現象である。その現象を測定する装置が核磁気共鳴測定装置である。MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置も核磁気共鳴測定装置の一種である。
典型的な核磁気共鳴測定装置は、分光計及び核磁気共鳴測定用プローブ(NMRプローブ)を有する。NMRプローブ内には、測定対象としての試料に対して電磁波を照射すると共に試料からの核磁気共鳴信号を検出する検出コイルが設けられている。近時、検出コイルを超伝導材料、特に高温超伝導(HTS:High Temperature Superconductor)材料、で構成する研究が進められている(特許文献1−3を参照)。超伝導材料によって検出コイルを構成すれば、その冷却状態においてその電気抵抗がゼロになるので、非常に高いQ値を実現でき、つまり高感度且つ高分解能での測定を実現できる。従来、検出コイルは一種類の超電導材料により製作されている。
なお、特許文献4には、常磁性をもった金属箔と反磁性をもった金属箔を交互に積層することにより構成された磁化補正材料が開示されている。しかし、特許文献4には複数の超伝導材料の組み合わせは開示されていない。
米国特許第9274199号明細書 特許第5904326号明細書 特開2016−151494号公報 特開2003−11268号公報
塩原融ら「REBCO高温超伝導線材の開発−微細組織と臨界電流特性−」日本金属学会誌第80巻第7号、2106年、pp.406-419.
検出コイルを超伝導材料で構成した場合、典型的には、マイスナー効果により、超伝導材料中において外部静磁場を打ち消すように反磁性磁化(負の磁化)が生じる。この磁化が測定対象付近において静磁場の乱れ(不均一性)を生じさせる。静磁場の乱れは分解能低下等の要因となるものである。検出コイル以外の部材を超伝導材料で構成した場合においても同じような問題が生じる。
本発明の目的は、超伝導材料を利用して核磁気共鳴を検出する場合において、測定対象付近での静磁場の乱れを抑制し、あるいは、測定対象付近において静磁場の均一度を高めることにある。
実施形態に係る核磁気共鳴測定装置は、測定対象を収容した収容空間の周囲に設けられ、前記測定対象において生じる核磁気共鳴の検出に際して機能する材料であって、超電導状態において負の磁化を生じさせる超電導材料である負磁化型材料と、前記収容空間の周囲に設けられ、前記測定対象において生じる核磁気共鳴の検出に際して機能する材料であって、超電導状態において正の磁化を生じさせる超電導材料である正磁化型材料と、を含むことを特徴とするものである。
上記構成によれば、収容空間の周囲に負磁化型材料と正磁化型材料とが併設されているので、収容空間内において、負の磁化による磁場と正の磁化による磁場との打ち消し合いが生じる。すなわち、単一の超伝導材料のみを配置した場合においてはその磁化により静磁場の乱れが生じてしまうが、相補関係にある二種類の超伝導材料の併設により、静磁場の乱れを解消又は改善できる。
なお、第二種超伝導材料についての超伝導状態には混合状態(常伝導状態とマイスナー状態とが混在した状態)が含まれ、それを前提として、第二種超伝導材料を適宜選択することにより、上記の正磁化型材料を得ることが可能である。一般的には、静磁場中において冷却を行う過程を経ることにより、超伝導状態において、残留磁化として正の磁化を生じさせることが可能である。
実施形態においては、前記負磁化型材料及び前記正磁化型材料の内の少なくとも一方の全部又は一部が、送信機能、受信機能及びシールド機能の内の少なくとも1つの機能を発揮する。望ましくは、負磁化材料及び正磁化材料の一方又は両方により、送信コイル、受信コイル、又は、送受信コイルが構成される。その場合、静磁場の乱れの抑制と相俟って、高感度且つ高分解能でのNMR測定が実現される。見方を変えれば、上記構成は、核磁気共鳴検出用のコイルを超伝導材料で構成した場合に生じる固有の問題を、それと相補関係にある別の超伝導材料を併設することによって、改善又は解消するものである。送信コイルの概念には、観測核に対して電磁波を照射するコイル、及び、非観測核に対して電磁波を照射するコイルの両者が含まれ得る。
実施形態において、前記負磁化型材料及び前記正磁化型材料は、前記収容空間における少なくとも一部分において、前記負の磁化により生じる磁場と前記正の磁化により生じる磁場とが全体的又は部分的に相互に打ち消されるように、配置される。その場合、望ましくは、静磁場の均一度がより高まるように、各材料の位置、形態、物量等が調整される。負磁化型材料及び正磁化型材料の一方又は両方の位置や姿勢等を可変できるように構成してもよい。望ましくは、収容空間から見て対称となるように2つの材料が配置される。3種類以上の超伝導材料の組み合わせを採用してもよい。
実施形態において、前記負磁化型材料は複数の負磁化型材料層を構成し、前記正磁化型材料は複数の正磁化型材料層を構成し、前記複数の負磁化型材料層及び前記複数の正磁化型材料層は、前記収容空間における少なくとも一部分において、前記負の磁化により生じる磁場と前記正の磁化により生じる磁場とが全体的又は部分的に相互に打ち消されるように、配置されている。例えば、各材料層はコイルを構成する。
実施形態において、前記複数の負磁化型材料層は第1の負磁化型材料層と第2の負磁化型材料層とを含み、前記複数の正磁化型材料層は第1の正磁化型材料層と第2の正磁化型材料層とを含み、前記収容空間の一方側に前記第1の負磁化型材料層及び前記第1の正磁化型材料層が設けられ、前記収容空間の他方側に前記第2の負磁化型材料層及び前記第2の正磁化型材料層が設けられる。この構成によれば、収容空間から見て、一方側及び他方側においてそれぞれ巨視的に見て負の磁化と正の磁化の打ち消し合いが生じる。望ましくは、2つの基板は平行に設けられる。その場合、一方側の材料層配列と他方側の材料層配列とが対称となるので、静磁場の乱れの抑制が容易となり、また、収容空間の全体にわたって静磁場の均一度を高められる。
実施形態においては、前記収容空間の一方側に第1積層体が設けられ、前記収容空間の他方側に前記第1積層体に対して対称の積層構造を有する第2積層体が設けられ、前記第1積層体は、第1基板、並びに、前記第1基板上に所定順序で積層された前記第1の負磁化型材料層及び前記第1の正磁化型材料層、からなり、前記第2積層体は、第2基板、並びに、前記第2基板上に前記所定順序で積層された前記第2の負磁化型材料層及び前記第2の正磁化型材料層、からなる。この構成によれば、各積層体の製作が容易化される。各基板の前面(収容空間に向く面)に積層体を形成してもよいし、各基板の後面(収容空間に向く面とは反対側の面)に積層体を形成してもよい。望ましくは、負磁性型材料層と正磁性型材料層との間に中間層が設けられる。
実施形態において、前記第1の負磁化型材料層及び前記第1の正磁化型材料層が一方側の積層コイルを構成し、前記第2の負磁化型材料層及び前記第2の正磁化型材料層が他方側の積層コイルを構成し、前記一方側の積層コイルと前記他方側の積層コイルは互いに対称の形態を有する。望ましくは、各積層コイルが送受信コイルを構成する。共振周波数の調整その他の目的から、2つの積層コイルの内の一方又は両方の姿勢を可変する機構を設けてもよい。
実施形態においては、前記負磁化型材料が少なくとも1つの受信コイルを構成し、前記正磁化型材料が少なくとも1つの送信コイルを構成する。正磁化型材料として、通常、磁性イオンを含む第二種超伝導材料が利用される。その材料中において磁性イオンがピン止め中心として機能するならば臨界電流値が大きくなる。他のピン止め中心が存在している場合においても同様である。その観点から、正磁化型材料により送信コイルを構成するのが望ましい。その場合、負磁化型材料により受信コイルが構成され得る。なお、負磁化型材料をピン止め効果を期待できる第二種超伝導材料で構成してもよい。
実施形態に係る核磁気共鳴測定方法は、静磁場空間内であって測定対象を収容する収容空間の周囲に、超電導状態において負の磁化が生じる超電導材料である負磁化型材料、及び、超電導状態において正の磁化が生じる超電導材料である正磁化型材料を配置する工程と、前記負磁化型材料及び前記正磁化型材料を冷却してそれらを超伝導状態にし、これにより前記収容空間における少なくとも一部分において、前記負の磁化により生じる磁場と前記正の磁化により生じる磁場とが全体的又は部分的に相互に打ち消される状態を生じさせる工程と、前記負磁化型材料及び前記正磁化型材料が前記超伝導状態にある状況下において、前記負磁化型材料及び前記正磁化型材料の内の少なくとも一方を利用して前記測定対象で生じる核磁気共鳴を検出する工程と、を含むことを特徴とするものである。例えば、NMRプローブのプローブヘッド内に負磁化型材料及び正磁化型材料を設けておき、静磁場発生状態にある静磁場発生器内にプローブヘッドを挿入した上で、プローブヘッドが冷却される。これにより、正磁化型材料中に正の磁化が残留する。
本発明によれば、超伝導材料を利用して核磁気共鳴を検出する場合において、測定対象付近での静磁場の乱れを抑制でき、あるいは、測定対象付近において静磁場の均一度を高められる。
実施形態に係る核磁気共鳴測定装置の構成例を示すブロック図である。 プローブヘッド内の構成(n型HTS材料及びp型HTS材料の第1配置例)を示す図である。 プローブヘッド内の構成を示す斜視図である。 ReBCO中の希土類元素ごとのボーア磁子数等を示す図である。 n型HTS材料及びp型HTS材料を示す図である。 n型HTS材料としてのYBCOの特性を示す図である。 p型HTS材料としてのDyBCOの特性を示す図である。 n型HTS材料及びp型HTS材料の第2配置例を示す図である。 n型HTS材料及びp型HTS材料の第3配置例を示す図である。 n型HTS材料及びp型HTS材料の第4配置例を示す図である。 n型HTS材料及びp型HTS材料の第5配置例を示す図である。 第5配置例についての変形例を示す図である。 実施形態に係る核磁気共鳴測定方法を示す流れ図である。
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、実施形態に係るNMR測定装置の構成例が示されている。図示されたNMR測定装置は、測定対象である試料への電磁波の照射により、試料中の特定原子核において核磁気共鳴を生じさせ、その後に生じる信号(FID信号)を観測するものである。試料として、気体試料、液体試料及び固体試料があげられる。NMR測定装置は、制御ユニット10、測定ユニット12及び冷却器14によって構成される。なお、z方向は垂直方向であり、x方向が第1水平方向であり、y方向が第2水平方向である。
測定ユニット12は、NMRプローブ16及び静磁場発生器18によって構成される。静磁場発生器18は、試料が存在する空間において、z方向に平行で均一な静磁場を生成するものである。静磁場発生器18は、z方向に沿って形成された貫通孔としてのボア18Aを有している。NMRプローブ16は、大別して、挿入部16Aと基部16Bにより構成される。挿入部16Aがボア18A内に挿入される。挿入部16Aの上部であるプローブヘッド28内には、試料管、検出コイル、ピックアップコイル(中継コイル)等が設けられている。プローブヘッド28の内部構造については後に図2及び図3を用いて説明する。
NMRプローブ16の内部は真空状態とされている。冷却器14は、プローブヘッド28内の各要素(特に検出コイル、ピックアップコイル及び電気回路)を冷却するためのものである。検出コイルは、相補関係にある2種類の酸化物高温超伝導材料(後に説明する負磁化型材料としてのn型HTS材料及び正磁化型材料としてのp型HTS材料)により構成される。検出コイルの冷却により、それを構成する2種類の酸化物高温超伝導材料がいずれも超伝導状態となる。ちなみに、その冷却は、静磁場中において行われる(Field Cooling方式)。実施形態において、冷却器14は、配管26を通じて、液体ヘリウム又は低温ヘリウムガスをNMRプローブ16内に送り込むものである。他の液体又はガスが冷媒として利用されてもよい。なお、ボア18A内にはシミング用ユニットも配置されているが、それについては図示省略されている。
制御ユニット10は分光計として機能するものである。具体的には、制御ユニット10は、送信部20、受信部22及び演算制御部24を有している。図1には、制御ユニット10における主な構成のみが図示されており、その細部については図示省略されている。送信部20は、送信パルスシーケンスに従う送信信号(RF信号)を生成し、それをNMRプローブ16に送る。これにより検出コイルから試料に対して電磁波が照射される。試料で生じた核磁気共鳴を表す信号が検出コイルにおいて検出され、これによりNMRプローブ16から受信部22へ受信信号が送られる。受信部においては、受信信号を処理することにより、NMRスペクトルを生成する。そのデータは演算制御部24へ送られる。演算制御部24においてNMRスペクトルが生成されてもよい。演算制御部24は、図1に示された各構成の動作を制御し、また、取得されたデータを解析する機能を有する。
図2には、実施形態に係るプローブヘッド28の構造(二種類のHTS材料の第1配置例)が示されている。シールド29は例えば円筒形状を有する。シールド29によって外界から来る電磁波が遮断される。シールド29の外側には図示されていないプローブ容器が設けられている。プローブ容器の内部28Aは気密室であり、それは真空状態とされている。
台座34は水平方向に広がった円盤状の形態を有し、それは例えば熱伝導性の良好な金属、例えば銅により構成されている。冷却器からの冷媒が供給される熱交換器、及び、熱交換器と台座34との間に設けられた熱伝導部材は、図示省略されている。プローブヘッド28をz方向に貫くように内側隔壁としての管30が設けられている。管30の内部には大気が存在し、その内部の温度は室温である。測定時に、管30の内部に試料管32が配置される。試料管32の中には測定対象である試料が収容されている。例えば、管30内に所定温度をもったガスを流し込み、これにより試料の温度が制御されてもよい。
台座34上であって管30の一方側にはコイルユニット36が起立姿勢で配置されており、台座34上であって管30の他方側にはコイルユニット38が起立姿勢で配置されている。コイルユニット36、38は互いに平行な関係を有し、試料中心から見て互いに対称の構成を有している。
図示の構成例において、コイルユニット36は、基板40及び2つのコイル44,46を有する。基板40は、絶縁性材料としてのサファイヤガラス等により構成される。基板40は、試料管32側を向いた前面40a及びそれとは反対側の後面40bを有している。前面40a上にはコイル44が設けられている。図示の構成例において、コイル44は、超伝導状態において負の磁化を生じさせる第1の酸化物高温超伝導材料(n型HTS材料)からなる薄い層又は膜として構成され、それは例えば1ターン型の面状コイルである。後面40b上にはコイル46が設けられている。コイル46は、所定の過程を経た超伝導状態において正の磁化を生じさせる第2の酸化物高温超伝導材料(p型HTS材料)からなる薄い層又は膜として構成され、それはコイル44と同じく例えば1ターン型の面状コイルである。図示の構成例では、x方向から見て、コイル44及びコイル46は同じ形状(コイルパターン)を有している。
コイルユニット38はコイルユニット36と同様の構成を有する。すなわち、コイルユニット38は、基板48及び2つのコイル52,54を有する。基板48は、上記基板40と同様に、サファイヤガラス等により構成される。基板48は前面48a及び後面48bを有している。前面48a上にはコイル52が設けられている。コイル52は、上記コイル44と同様に、第1の酸化物高温超伝導材料(n型HTS材料)からなる薄い層又は膜として構成され、それは例えば1ターン型の面状コイルである。後面48b上にはコイル54が設けられている。コイル54は、上記コイル46と同様に、第2の酸化物高温超伝導材料(p型HTS材料)からなる薄い層又は膜として構成され、それは例えば1ターン型の面状コイルである。図示の構成例では、x方向から見て、コイル44、46、52,54はいずれも同じ形状(コイルパターン)を有している。
試料を収容している収容空間の近傍に、n型HTS材料及びp型HTS材料の内の一方のみを設けた場合、当該HTS材料において生じる磁化が収容空間内における静磁場の乱れを引き起こす。これに対し、上記構成のように、収容空間の近傍に、n型HTS材料及びp型HTS材料の両方を設ければ、n型HTS材料で生じた負の磁化によって収容空間内において生じる第1の磁場と、p型HTS材料で生じた正の磁化によって収容空間内において生じる第2の磁場と、が互いに打ち消し合いあるいは相殺されるので、HTS材料の配置に起因する静磁場の乱れを抑制できる。第1の磁場と第2の磁場が完全に打ち消されるのが理想であるが、収容空間内の少なくとも一部分において、少なくとも部分的な打ち消し合いが生じる限りにおいて、静磁場の乱れは改善される。換言すれば、上記構成は、相補的に働く2つのHTS材料を併用し、巨視的に見て磁化相殺の作用を得るものである。図2の構成では、試料の一方側及び他方側のそれぞれで磁化相殺の作用が生じているとも言える。
なお、静磁場の乱れを抑制するために、各コイル44、46、52,54のサイズ、厚み、位置、姿勢又は形状を変化させてもよい。コイル44,52をp型HTS材料で形成し、コイル46,54をn型HTS材料で形成してもよい。試料付近において正磁界及び負磁界の打ち消し合いが生じる限りにおいて、試料の一方側にだけ、n型HTS材料及びp型HTS材料を配置してもよく、あるいは、試料の一方側にn型HTS材料を配置し、試料の他方側にp型HTS材料を配置してもよい。後に図8乃至図12を用いて各種の配置例について説明する。
図2に示す構成例において、複数のコイル44,46,52,54が相互インダクタンスによって結合される。複数のコイル44,46,52,54はコイル列56を構成し、それは検出コイルとして機能する。すなわち、複数のコイル44,46,52,54が協働して送受信機能を発揮する。具体的には、コイル列56は、送信時において電磁波を観測核へ照射し、受信時において、観測核からの核磁気共鳴信号を検出するものである。もっとも、個々のコイル44,46,52,54が独自の機能を担うように構成してもよい。例えば、コイル44,46,52,54の内の一部を送受信コイルとして機能させ、他の一部を特定核へ電磁波を照射する送信コイルとして機能させてもよい。すなわち、二重共鳴あるいは多重共鳴を生じさせるようにしてもよい。それ以外にも多様な構成が考えられる。
実施形態においては、検出コイルとしてのコイル列56に対して、中継コイルとしてのピックアップコイル58が誘導的に結合している。すなわち、コイル列56とピックアップコイル58がワイヤレスで電気的に接続されている。送信時においては、ピックアップコイル58からコイル列56へ送信信号が伝送される。受信時においては、コイル列56からピックアップコイル58へ受信信号(検出信号)が伝送される。ワイヤレス接続によれば、超伝導材料からなるコイル列への配線に伴って生じる各種の問題(Q値の低下等)が防止される。ピックアップコイル58は支柱60によって支持されている。支柱60は同軸構造を有し、支柱60を介して、ピックアップコイル58が同調整合用電気回路に接続される。ピックアップコイル58の形態として、線状の1ターンコイル、筒状の1ターンコイル、その他の形態をもったコイルを採用し得る。なお、コイル44,46,52,54に対して物体(誘電体、金属等)を近付けたり遠ざけたりすることにより、コイル列56の共振周波数等を調整し得る。個々のコイル44,46,52,54に対して信号線を接続するようにしてもよい。
図3には、プローブヘッド内の構成が斜視図として示されている。台座34上にはマウント62,64が設けられ、マウント62,64によってコイルユニット36,38が保持されている。コイルユニット36は基板の両面に形成されたコイル44,46を含み、コイルユニット38は基板の両面に形成されたコイル52,54を有する。なお、管30内には試料管32が収容されている。
次に、n型HTS材料及びp型HTS材料について詳述する。酸化物高温超伝導体は、一般に、希土類元素等を含むイオン層(絶縁層)を有する。YBa2Cu3O7+δ(以下、YBCOと言う。)においてはY層がイオン層である。DyBa2CuO8+δ(以下、DyBCOと言う。)においてはDy層がイオン層である。Bi2Sr2CaCu2O8+δにおいてはBi層がイオン層である。ReBa2CuOy(但しReは希土類元素)においてはRe層がイオン層である。それらの材料を便宜上、ReBCOと総称する。
図4には、ReBCOに関し、希土類イオンの有効径(上段)、超伝導転移温度TC(中段)、希土類元素のボーア磁子数g√(J+1)(但し、gはLandeのg因子であり、Jは希土類イオンのスピン数である)(下段)が示されている。希土類元素Reは、いずれの結晶中でも、+3価のイオンとして安定化している。なお、図4において、希土類イオンの有効径及び超伝導転移温度TCについては非特許文献1の表1に記載されている。ボーア磁子数は磁性を示すものである。
希土類元素Reの中には、ボーア磁子数がゼロであり、磁性を有していない元素が含まれる。Y、Eu、Bi、La等はReBCO中で非磁性イオンとなる。一方、希土類元素Reの中には、ボーア磁子数がゼロでなく値をもっており、つまり磁性を有している元素がある。例えば、Nd、Sm、Dy、Gd、Ho、Yb等は、ReBCO中で磁性イオンとなる。酸化物高温超電導材料を静磁場中で冷却するField Coolingの過程を経て、酸化物高温超伝導材料が常伝導状体から超伝導状態に転移したとき、図5に示すような磁化が生じるのと考えられる。
非磁性希土類イオン層を含む酸化物高温超伝導材料(n型HTS材料)が超伝導状態となった場合、マイスナー効果により、反磁性が支配的に生じる。すなわち、当該材料において負の符号をもつ磁化(負の磁化)が生じる。一方、磁性希土類イオン層を含む酸化物高温超伝導材料(p型HTS材料)が超伝導状態となった場合、外部磁場により侵入した磁束が量子磁束として当該材料に残留する。つまり、常磁性と反磁性とが共存した混合状態が形成される。その際、希土類イオンによる常磁性が支配的となるならば、当該材料において正の符号をもつ磁化(正の磁化)が生じる。n型HTS材料は第一種超伝導材料又は第二種超伝導材料に属する。p型HTS材料は第二種超伝導材料に属する。第二種超伝導材料の選択により、n型HTS材料及びp型HTS材料の両者が得られる。
図6及び図7には実験結果が示されている。図6は、外部磁場(50kOe)下におけるYBCOの磁化の温度依存性68を示すものである(YBCOの厚さは300nm)。温度が下がるに従って負の磁化が増大している。YBCOはn型HTS材料としての特性を呈している。図7は、外部磁場(50kOe)下において、Field Cooling過程を経たDyBCOについての磁化の温度依存性65を示すものである(DyBCOの厚さは250nm)。温度が下がるに従って正の磁化が増大している。DyBCOはp型HTS材料としての特性を呈している。図7において、破線66は、キュリ一則に従って実験結果に対してフィッテイングを行った結果である。その際、有効磁気モーメントを9μBと仮定した。その有効磁気モーメントは図4に示したDyのボーア磁子数に近い。ボーア磁子数の大きさに依存して正の磁化が生じることを推認できる。なお、図6及び図7において、同じ温度15Kにおいては、YBCOの磁化として-0.42×10-3 emu/cm3が得られ、DyBCOの磁化として+4.5×10-3 emu/cm3が得られている。両者間には符号の差と絶対値の差が認められる。
n型HTS材料及びp型HTS材料の組み合わせ配置に際しては、2つの磁化の大小関係を考慮するのが望ましい。例えば、n型HTS材料としてYBCOを用い、p型HTS材料としてDyBCOを用いる場合、それらを試料の両側に試料から見て同じ距離で配置するのであれば、YBCOの厚さに対して、DyBCOの厚さを0.093(=0.42/4.5)倍にすればよい。そのような構成によれば、巨視的に見て負の磁化と正の磁化とを相殺させることが可能となる。換言すれば、試料中心において、負の磁化による磁場と正の磁化による磁場との打ち消し合いを実現することが可能となる。物量の調整ではなく距離等の調整によって上記打ち消し合いを実現してもよい。試料が存在する収容空間の全体にわたって良好な打ち消し合いが生じるように、n型HTS材料及びp型HTS材料を配置するのが望ましい。両者を積層しその積層体全体として見て磁化が相殺されるようにしてもよい。
p型HTS材料において、希土類イオン層中の磁性イオンがピン止め中心として機能する場合、大きな臨界電流値を期待できる。つまり、p型HTS材料の臨界電流値として、n型HTS材料の臨界電流値よりも大きな値を期待できる。このような性質に鑑み、p型HTS材料により送信コイルを構成し、n型HTS材料により受信コイルを構成してもよい。
図8には、n型HTS材料及びp型HTS材料についての第2配置例が正面図として示されている。図8はプローブヘッドの内部を示すものである。図2に示した構成と同一の構成には同一符号を付してある。
図8において、台座34上には、管30の両側に、一対のコイルユニット70,72が平行に配置されている。コイルユニット70は、基板74と、その前面74aに形成された積層体76と、を有する。コイルユニット72は、基板84と、その前面84aに形成された積層体86と、を有する。積層体76と積層体86は互いに対称の積層構造を有している。具体的には、積層体76は、図示の例において、p型HTS材料からなる下層としてのコイル78、中間層80、及び、n型HTS材料からなる上層としてのコイル82からなる。積層体76は、それ全体として、例えば1ターン型のコイルパターンを構成している。積層体86は、図示の例において、p型HTS材料からなる下層としてのコイル88、中間層90、及び、n型HTS材料からなる上層としてのコイル92からなる。積層体86は、それ全体として、上記積層体76と同様に、例えば1ターン型のコイルパターンを構成している。コイルパターンは、エッチング、堆積その他の手法により容易に製作可能である。中間層80,90は、n型HTS材料及びp型HTS材料の直接的接触を回避するための下地層又は隔離層として機能する。n型HTS材料及びp型HTS材料が適正に機能する限りにおいて中間層80,90を取り除いてもよい。
図8に示した第2配置例によれば、試料が存在する空間において、n型HTS材料が有する負の磁化により生じる磁場と、p型HTS材料が有する正の磁化により生じる磁場の打ち消し合いの効果をより高められる。また、各コイルユニット70,72の製作が容易化される。
2つのコイルユニット70,72の内で一方だけを配置する場合においても、2種類のHTS材料が試料の近傍に存在しているので、一定の磁場の打ち消し合い効果を期待できる。上記の各積層体76,86において上層と下層とを入れ換えてもよい。また、各層の厚みを調整して静磁場の均一度を高めるようにしてもよい。
図9には、n型HTS材料及びp型HTS材料についての第3配置例が平面図として示されている。符号102はn型HTS材料で構成されたコイルを示し、符号104はp型HTS材料で構成されたコイルを示している。図示の例では、各コイル102,104は試料を収容する空間100の中心100a(x方向の中心x1)から見て等距離に設けられている(符号106,108参照)。この第3配置例によると、例えば、空間100内において上記磁場の打ち消し合いの効果を期待できる。もっとも、x方向について一様の打ち消し合いまでは期待できない。例えば、コイル102,104の両方が送受信コイルとして機能する。それらの一方のみが送受信コイルとして機能してもよい。
図10には、n型HTS材料及びp型HTS材料についての第4配置例が平面図として示されている。符号110,112はn型HTS材料で構成されたコイルを示し、符号114,116はp型HTS材料で構成されたコイルを示している。例えば、コイル110,112が受信用コイルとして機能し、コイル114,116が送信用コイルとして機能する。あるいは、コイル110,112が観測核用の送受用コイルとして機能し、コイル114,116が照射核用の送信用コイルとして機能する。後者の構成によれば二重共鳴又は多重共鳴を実現できる。
図11には、n型HTS材料及びp型HTS材料についての第5配置例が正面図として示されている。管120はz方向に伸長しており、その中が試料を収容する空間100である。符号122、124はp型HTS材料で構成された送受信用コイルを示している。符号126,128,130,132はn型HTS材料で構成されたプレート状のシールドを示している。各シールド126,128,130,132は電磁波を遮断又は打ち消す性質を有するものである。空間100の一方側において、シールド126,130によって、上下方向の電磁波通過幅100bが規定され、空間100の他方側において、シールド128,132によって、上下方向の電磁波通過幅100bが規定される。その中間高さがz1で示されている。このようにHTS材料によりコイル以外の部品を製作してもよい。
図12には、上記第5配置例についての変形例が平面図として示されている。空間100の両側にp型HTS材料で構成された送受信用コイル122,124が設けられている。それらの手前側に(試料側に)、n型HTS材料で構成されたプレート状のシールド134,136が設けられている。シールド134,136はそれぞれ開口134A、136Aを有し、それらの開口134A、136Aを電磁波が通過する。すなわち、図12に示す例では、y方向において電磁波通過範囲が制限されている。
以上示したいずれの設置例においても、試料の近傍にn型HTS材料及びp型HTS材料が併設されているので、負の磁化による磁場と正の磁化による磁場の全面的な又は部分的な打ち消し合いを期待でき、つまり静磁場の乱れの抑制を期待できる。
図13には、実施形態に係る核磁気共鳴測定方法が流れ図として示されている。S10では、静磁場を生じさせている静磁場発生器内にNMRプローブのプローブヘッドが差し込まれる。プローブヘッド内にはn型HTS材料及びp型HTS材料の両方が設けられている。その後、S12において、プローブヘッド内が冷却される。これによって、n型HTS材料が超伝導状態となり、マイスナー効果により反磁性磁化としての負の磁化が生じる。一方、p型HTS材料も超伝導状態となり、量子化磁束として残留磁束が生じる。その場合において、常磁性が支配的となる場合、正の磁化が生じる。S14では、負の磁化と正の磁化との打ち消し合いが生じている状況下において、核磁気共鳴が測定される。
上記実施形態によれば、超伝導材料を利用して核磁気共鳴を検出する場合において、測定対象付近での静磁場の乱れを抑制でき、あるいは、測定対象付近において静磁場の均一度を高められる。n型HTS材料及びp型HTS材料の組み合わせをMRI装置に適用することも可能である。
10 制御ユニット、12 測定ユニット、14 冷却器、16 NMRプローブ、18 静磁場発生器、44 コイル(n型HTS材料)、46 コイル(p型HTS材料)、52 コイル(n型HTS材料)、54 コイル(p型HTS材料)、58 ピックアップコイル。

Claims (10)

  1. 測定対象を収容した収容空間の周囲に設けられ、前記測定対象において生じる核磁気共鳴の検出に際して機能する材料であって、超電導状態において負の磁化を生じさせる超電導材料である負磁化型材料と、
    前記収容空間の周囲に設けられ、前記測定対象において生じる核磁気共鳴の検出に際して機能する材料であって、超電導状態において正の磁化を生じさせる超電導材料である正磁化型材料と、
    を含むことを特徴とする核磁気共鳴測定装置。
  2. 請求項1記載の装置において、
    前記負磁化型材料及び前記正磁化型材料の内の少なくとも一方の全部又は一部が、送信機能、受信機能及びシールド機能の内の少なくとも1つの機能を発揮する、
    ことを特徴とする核磁気共鳴測定装置。
  3. 請求項1記載の装置において、
    前記正の磁化は、静磁場中において前記正磁化型材料を冷却してそれを超伝導状態にした後に当該正磁化型材料に残留した磁化である、
    ことを特徴とする核磁気共鳴測定装置。
  4. 請求項1記載の装置において、
    前記負磁化型材料及び前記正磁化型材料は、前記収容空間における少なくとも一部分において、前記負の磁化により生じる磁場と前記正の磁化により生じる磁場とが全体的又は部分的に相互に打ち消されるように、配置されている、
    ことを特徴とする核磁気共鳴測定装置。
  5. 請求項1記載の装置において、
    前記負磁化型材料は複数の負磁化型材料層を構成し、
    前記正磁化型材料は複数の正磁化型材料層を構成し、
    前記複数の負磁化型材料層及び前記複数の正磁化型材料層は、前記収容空間における少なくとも一部分において、前記負の磁化により生じる磁場と前記正の磁化により生じる磁場とが全体的又は部分的に相互に打ち消されるように、配置されている、
    ことを特徴とする核磁気共鳴測定装置。
  6. 請求項5記載の装置において、
    前記複数の負磁化型材料層は第1の負磁化型材料層と第2の負磁化型材料層とを含み、
    前記複数の正磁化型材料層は第1の正磁化型材料層と第2の正磁化型材料層とを含み、
    前記収容空間の一方側に前記第1の負磁化型材料層及び前記第1の正磁化型材料層が設けられ、
    前記収容空間の他方側に前記第2の負磁化型材料層及び前記第2の正磁化型材料層が設けられた、
    ことを特徴とする核磁気共鳴測定装置。
  7. 請求項6記載の装置において、
    前記収容空間の一方側に第1積層体が設けられ、
    前記収容空間の他方側に前記第1積層体に対して対称の積層構造を有する第2積層体が設けられ、
    前記第1積層体は、第1基板、並びに、前記第1基板上に所定順序で積層された前記第1の負磁化型材料層及び前記第1の正磁化型材料層、からなり、
    前記第2積層体は、第2基板、並びに、前記第2基板上に前記所定順序で積層された前記第2の負磁化型材料層及び前記第2の正磁化型材料層、からなる、
    ことを特徴とする核磁気共鳴測定装置。
  8. 請求項7記載の装置において、
    前記第1の負磁化型材料層及び前記第1の正磁化型材料層が一方側の積層コイルを構成し、
    前記第2の負磁化型材料層及び前記第2の正磁化型材料層が他方側の積層コイルを構成し、
    前記一方側の積層コイルと前記他方側の積層コイルは互いに対称の形態を有する、
    ことを特徴とする核磁気共鳴測定装置。
  9. 請求項1記載の装置において、
    前記負磁化型材料が少なくとも1つの受信コイルを構成し、
    前記正磁化型材料が少なくとも1つの送信コイルを構成する、
    ことを特徴とする核磁気共鳴測定装置。
  10. 静磁場空間内であって測定対象を収容した収容空間の周囲に、超電導状態において負の磁化が生じる超電導材料である負磁化型材料、及び、超電導状態において正の磁化が生じる超電導材料である正磁化型材料を配置する工程と、
    前記負磁化型材料及び前記正磁化型材料を冷却してそれらを超伝導状態にし、これにより前記収容空間における少なくとも一部分において、前記負の磁化により生じる磁場と前記正の磁化により生じる磁場とが全体的又は部分的に相互に打ち消される状態を生じさせる工程と、
    前記負磁化型材料及び前記正磁化型材料が前記超伝導状態にある状況下において、前記負磁化型材料及び前記正磁化型材料の内の少なくとも一方を利用して前記測定対象で生じる核磁気共鳴を検出する工程と、
    を含むことを特徴とする核磁気共鳴測定方法。
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