以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
以下で説明する実施形態では、本発明を適用したモバイルネットワークの例として、LTE/LTE−Advancedネットワークを想定している。なお、本発明は、LTEネットワーク以外のモバイルネットワークにも適用されてもよい。例えば、本発明は、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)で規格化が進められている第5世代(5G)のモバイルネットワークに対して適用されてもよい。
<ネットワーク構成>
本実施形態で想定しているLTEネットワークは、無線アクセスネットワークであるE−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Network)と、コアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)とで構成される。E−UTRANは、多数の基地局(基地局装置)で構成される。LTEでは、基地局はeNodeB(以下、「eNB」と表記する。)と称される。eNB同士は、X2インタフェースを介して接続される。また、各eNBは、S1インタフェースを介して、直接、EPCに接続される。なお、X2インタフェース及びS1インタフェースはいずれも論理インタフェースである。S1インタフェースは、ユーザプレーン(U−Plane)の信号(ユーザデータ)を伝送するためのS1−Uインタフェースと、制御信号を伝送するためのS1−MMEインタフェースとで構成される。S1−Uインタフェースは、各eNBと、ゲートウェイ装置であるS−GW(Serving Gateway)とを接続する。S1−MMEインタフェースは、各eNBと、MME(移動管理装置)とを接続する。
図1は、本発明の実施形態に係るノード装置であるMECノード10を含むネットワーク構成例を示す図である。MECノード10は、エッジコンピューティング(本実施形態ではMEC)のためのノード装置である。図1では、コアネットワーク内の移動管理装置及びゲートウェイ装置の一例として、それぞれ、EPCのMME11及びS−GW12を示している。なお、規格化が進められている5Gモバイルネットワークでは、移動管理装置はAMF(Access and Mobility Management Function)と称され、ゲートウェイ装置はUPF(User Plane Function)と称されている。
本実施形態では、図1に示すように、MME11に収容されている複数のeNBと、MME11を含むEPCとの間に(eNBとMME11との間の制御チャネル上に)MECノード10を配置する。これにより、MME11に収容されている多数のeNBの少なくとも一部をMECノード10に収容させるとともに、MECノード10をMME11に収容させる。MECノード10は、S1インタフェース(S1−Uインタフェース又はS1−MMEインタフェース)を介してeNBとEPCとの間で伝送されるパケットの中身を解析(パケットを解読)する機能(DPI機能)を有するように構成される。
MECノード10には、図1の例のように5個のeNBに限らず、任意の数のeNBを収容することが可能である。また、1つのMME11に対して、それぞれ異なるeNB群を収容する複数のMECノード10を収容してもよい。なお、図1のネットワーク構成例は、機能構成を示すものであり、必ずしも物理的な構成を示すものではない。例えば、MECノード10は、ゲートウェイ装置(S−GW又はP−GW(Packet Data Network Gateway))と同一の筐体に物理的に実装されてもよい。
<ページング処理>
ここで、図12を参照して、本実施形態の前提となる、LTEネットワークにおけるページング処理の概要について説明する。
MMEは、無線端末(UE)の位置を管理するために、複数のTA(トラッキングエリア)を管理している。各TAは、1つ以上のeNB(1つ以上のセル)によって構成される、UEの位置を示すセル単位である。MMEは、UEごとに、1つ以上のTAをリスト化し、当該1つ以上のTAの識別子(TAI)のリストであるTAIリスト(TAI-List)を生成し、UEに割り当てる。TAIリストには、通常、UEが直近に在圏していたTAのTAI等が含まれる。図12の例では、MMEは、3つのTA(TA#1,TA#2,TA#3)を管理しており、TA#1及びTA#2のTAIから成るTAIリストをUEに割り当てている。
TAIリストは、UEが在圏している限りMMEへ位置登録要求を行う必要がないエリア(TA群)に対応する。UEは、TAIリスト外のTAへ移動すると、当該TA内のeNBを介して、UEが在圏しているTAが設定されたTAU (Tracking Area Update) Request(位置登録要求)メッセージをMMEへ送信する。これにより、MMEが保持する、UEが在圏するTAを示す在圏情報が更新される。
LTEネットワークでは、インターネット等の外部ネットワークからUE向けのユーザデータパケットが発生すると、S−GWからMMEへDownlink Data Notification(下りリンクデータ通知)が送信される。MMEは、下りリンクデータ通知を受信すると、対象となるUEの在圏情報に基づいて、当該UEのページングを行う。具体的には、MMEは、所定のページングポリシーに従って、1つ以上のeNBへ、対象となるUEのページングのためのページングメッセージを送信する。図12の例では、UEにより位置登録が行われているTA#1に対してページングが行われている。
MMEからページングメッセージを受信したeNBは、当該eNBが形成しているセル内へページングメッセージを送信する。図12に示すように、ページング対象のUEは、eNBからページングメッセージの受信に応じて、Service Request(サービス要求)メッセージを、当該ページングメッセージの送信元のeNB#2を介してMMEへ送信する。これにより、UEとeNB#2との間のコネクション、及びeNB#2とS−GWとの間のコネクションが確立され、当該コネクションを介した下りリンク及び上りリンクのデータ伝送が可能になる。
MMEが用いる上述のページングポリシーは、ページングの範囲(ページングエリア)及び頻度(時間間隔)等を定める。ページングポリシーには、例えば、(1)UEが直近に在圏していたeNB(Last eNB)、(2)UEが直近に位置登録しているTA(Last TAI)、(3)TAIリスト(TAI-List)、の順に、ページングを行うことが定められうる。あるいは、(1)Last TAI、(2)TAI-List、(3)TAI-List、の順に、ページングを行う(即ち、Last TAIに対するページングの後に、TAI-Listに対するページングを2回繰り返す)ことが定められうる。
本実施形態では、MME11は、UE単位でのページングポリシーの制御を行わず、UEによらず予め設定されたページングポリシーに従って、各UEのページング処理(即ち、ページングメッセージを、S1−MMEインタフェースを介して1つ以上のeNBへ送信する処理)を行う。その一方で、eNBとMME11との間に設けられたMECノード10によって、UE単位でのページングポリシーの制御(調整)を実現する。
具体的には、MECノード10は、複数のeNBのそれぞれとMME11との間で伝送されるシグナリング情報を解析することにより、当該複数のeNBのセル内に存在するUEのページングにおけるページング範囲を調整するための情報を収集する。収集される情報は、例えば、UEの移動状況を示す情報及び通信状況を示す情報の少なくともいずれかである。MECノード10は、MME11によって所定のページングポリシーに従って1つ以上のeNBに向けて送信された、UEのページングのためのページングメッセージを受信すると、上記のように収集した情報に基づいてページング範囲を決定する。更に、MECノード10は、決定したページング範囲に含まれる各eNBへ、UEのページングのためのページングメッセージを送信する。
このようにして、エッジコンピューティングを利用してUE単位でページング処理を制御する。これにより、MME11におけるページング処理に伴うトランザクション負荷を増加させずに、UE単位でページングポリシーを制御することを実現する。即ち、既存の移動管理装置(MME)の動作に影響を与えずに、ページングポリシーをUE単位で制御(調整)することが可能になる。
以下では、このようなページング処理を実現するためのMECノードの構成例、及び、MECノードにおける具体的な処理手順の例について説明する。
<MECノードの構成>
図2は、本実施形態に係るMECノード10のハードウェア構成例を示すブロック図である。MECノード10は、CPU21、ROM22、RAM23、外部記憶装置24(HDD等)、及び通信装置25(通信インタフェース)を有する。
MECノード10では、例えばROM22、RAM23及び外部記憶装置24のいずれかに格納された、MECノード10の各機能を実現するプログラムがCPU21によって実行される。なお、CPU21は、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサによって置き換えられてもよい。
通信装置25は、CPU21により制御下で、EPC内のMME11又はS−GW12と、MECノード10に収容されている各eNBとの間で伝送されるパケットの転送(受信及び送信)、及び各eNBとの通信(例えば、各eNBからのローカル情報の取得)を行いうる。また、通信装置25は、CPU21による制御下で、隣接する他のMECノードとの通信を行いうる。MECノード10は、それぞれ接続先が異なる複数の通信装置25を有していてもよい。
なお、MECノード10は、各機能を実行する専用のハードウェアを備えてもよいし、一部をハードウェアで実行し、プログラムを動作させるコンピュータでその他の部分を実行してもよい。また、全機能がコンピュータとプログラムにより実行されてもよい。
図3は、本実施形態に係るMECノード10の機能構成例を示すブロック図である。MECノード10の各機能は、例えば図2のハードウェアによって実現される論理的な機能であり、CPU21がROM22等に格納されたプログラムを実行することによって実現されうる。本実施形態では、MECノード10は、パケット送受信部31、フロー識別部32、シグナリング解析部33、端末情報解析部34、情報管理部35、及び制御部36を有する。なお、MECノード10は、収容している各eNBからローカル情報(例えば、各eNBのセル内の無線通信状況を示す情報)を取得する機能を実現するためのローカル情報取得部37を更に有していてもよい。
パケット送受信部31は、eNBとEPCとの間で伝送されるパケットを受信する機能、及びeNB又はEPCへパケットを送信する機能を有する。フロー識別部32は、パケット送受信部31によって受信されたパケットのフロー識別を行う。本実施形態では、フロー識別部32は、一連の受信パケットのフローが、シグナリング情報(制御情報)を含む制御パケット(S1−MMEパケット)のフローであるか、ユーザデータを含むデータパケット(S1−Uパケット)のフローであるかを識別する。
シグナリング解析部33は、複数のeNB及びMME11のいずれかから受信されたパケットに含まれるシグナリング情報を解析して、当該受信パケットが対象としているUE(対象UE)、及び当該受信パケットに含まれるメッセージの種別を識別する。シグナリング解析部33は、それらの識別結果を端末情報解析部34へ出力する。
また、シグナリング解析部33は、解析対象のシグナリング情報が暗号化されている場合には、識別された対象UEによって使用されている暗号化情報(暗号化キー)を情報管理部35から取得する。更に、シグナリング解析部33は、取得した暗号化情報を用いて、対象UEに関する暗号化されたシグナリング情報を復号する。
シグナリング解析部33は、シグナリング情報の解析における、対象UEについての暗号化されたシグナリング情報の復号に使用可能な暗号化情報を、MECノード10(情報管理部35)が保持していない場合には、対象UE用の使用可能な暗号化情報が存在しないことを、端末情報解析部34及び制御部36へ通知する。例えば、情報管理部35が管理しているユーザ情報テーブルに含まれる、対象UEの暗号化情報を用いて、暗号化されたシグナリング情報を復号できない場合に、上述の通知が行われる。また、情報管理部35が管理しているユーザ情報テーブルから、対象UEに対応する(暗号化情報を含む)レコードが削除されたことにより、対象UEの暗号化情報を喪失している場合に、上述の通知が行われてもよい。
制御部36は、シグナリング解析部33から上述の通知を受けると、後述する再接続制御(図10及び図11)により、対象UEの暗号化情報を取得する。なお、暗号化情報は、後述するように、端末情報解析部34によって、隣接する他のMECノードから取得される場合もある。
端末情報解析部34は、シグナリング解析部33によって識別されたメッセージ種別に応じて、受信パケットに含まれるメッセージから情報を収集し、収集した情報を情報管理部35に保持(管理)させる。例えば、端末情報解析部34は、上記のメッセージが、アタッチ、位置登録、又はハンドオーバに関連するメッセージであれば、当該メッセージから、対象UEの移動状況を示す情報を収集する。また、端末情報解析部34は、上記のメッセージが、無線接続又は無線解放に関連するメッセージであれば、当該メッセージから、対象UEの通信状況を示す情報を収集する。以下では、移動状況を示す情報としてUEの移動履歴を、通信状況を示す情報としてUEの通信履歴を収集する場合の、MECノード10によって実行される処理の具体例を説明している。
また、端末情報解析部34は、隣接する他のMECノードから、シグナリング解析部33によって識別された対象UEの暗号化情報(暗号化キー)を取得する機能を有する。具体的には、端末情報解析部34は、受信パケットに含まれる暗号化されていないシグナリング情報に基づいて、対象UEがMECノード10に収容される直前に収容されていた他のMECノードを特定し、特定した当該他のノード装置から暗号化情報を取得する。
ただし、受信パケットに含まれるメッセージの種別に応じて、シグナリング情報に基づいて特定したMECノードが、暗号化情報を有している場合と有していない場合とがある。例えば、当該メッセージが、異なるMMEによって管理されるエリア間の対象UEの移動を伴わない位置登録又はハンドオーバに関連するメッセージである場合には、シグナリング情報に基づいて特定したMECノードが、暗号化情報を有している。このため、このような場合に、シグナリング情報に基づいて他のMECノードを特定し、暗号化情報の取得を試みることが有効である。
なお、対象UEが、いずれのMECノードにも収容されていないeNBのセルから、MECノード10に収容されているeNBのセルへハンドオーバを行った場合には、対象UEが直前に収容されていた他のMECノードは存在しない。即ち、暗号化情報についての問い合わせ先となるべき他のMECノードが存在せず、MECノード10は、他のMECノードから暗号化情報を取得することはできない。端末情報解析部34は、このように他のMECノードから暗号化情報を取得できなかった場合、そのことを制御部36へ通知する。制御部36は、端末情報解析部34から通知を受けると、後述する再接続制御により、対象UEの暗号化情報を取得する。
情報管理部35は、後述する図4に例示されるような、基地局情報、隣接MECノード情報、及びユーザ情報を管理する。端末情報解析部34によって収集された情報は、ユーザ情報として情報管理部35で管理されうる。情報管理部35は、RAM23又は外部記憶装置24に各情報を格納した状態で、各情報を管理する。
制御部36は、MME11からページングメッセージが受信されると、端末情報解析部34によって収集され、情報管理部35によって管理されている情報に基づいて、ページング範囲を決定する。更に、制御部36は、決定したページング範囲に含まれる各eNBへページングメッセージを送信する。また、制御部36は、シグナリング解析部33又は端末情報解析部34からの通知に応じて、後述する再接続制御により、対象UEの暗号化情報を取得する。
<情報管理部の管理情報>
次に、図4を参照して、情報管理部35が管理する情報の例について説明する。情報管理部35は、図4に示すように、各情報をテーブル形式で管理しうる。
図4(A)は、情報管理部35が管理する基地局情報テーブルの一例である。基地局情報は、基地局(eNB)の識別情報と、当該識別情報に対応付けられた、各eNBが属するTAに対応するTAI、及び各eNBが収容されているMECノードを示す情報とを含む。基地局情報は、MECノード10に対して予め設定される情報であり、後述する端末登録処理等に使用される。なお、基地局情報は、ネットワーク構成の変更(例えば、MECノード10又は隣接MECノードに収容されるeNBの追加)に応じて更新されてもよい。
図4(B)は、情報管理部35が管理する隣接MECノード情報テーブルの一例である。隣接MECノード情報は、MECノード10に隣接する各MECノードの情報として、各MECノードが収容されているMME、及び各MECノードに割り当てられたIPアドレスを含む。隣接MECノード情報は、MECノード10に対して予め設定される情報であり、後述する端末登録処理等に使用される。なお、隣接MECノード情報は、ネットワーク構成の変更(例えば、隣接MECノードの追加)に応じて更新されてもよい。
図4(C)は、情報管理部35が管理するユーザ情報テーブルの一例である。ユーザ情報テーブルは、無線端末(UE)ごとのレコードとして、当該UEの端末IDに対応付けられた暗号化情報、及び端末情報解析部34により収集された情報(履歴情報)を含む。ユーザ情報テーブルに保持される情報は、MECノード10に収容されている又は収容されたことがあるUEに関する情報に相当する。暗号化情報は、パケット送受信部31によって受信された制御パケットに含まれる(eNBを介してUEとMME11との間で送受信される)NAS(非アクセス層)メッセージの解読に使用される、NAS暗号化情報(暗号化キー)である。履歴情報は、UEの移動履歴及び通信履歴の少なくともいずれかを含む。
ここで、NASは、UEとMMEとの間のプロトコルスタックにおける機能レイヤである。NASのメッセージは、MMEとeNBとの間ではS1AP(アプリケーションプロトコル)のメッセージのペイロードとして伝送され、eNBとUEとの間ではRRC(無線リソース制御)プロトコルのメッセージのペイロードとして伝送される。このようにして、NASメッセージは、下位レイヤのメッセージにカプセリングされた状態でeNBを透過する。NASメッセージの暗号化は、NAS暗号化情報を使用して、送信ノード(UE又はMME)によって行われる。なお、NASメッセージのヘッダ部分には、当該NASメッセージが暗号化されているか否かを示すフラグが付与される。このため、当該フラグを参照することによって、NASメッセージが暗号化されているか否かを識別できる。
ユーザ情報テーブルは、更に、UEごとのレコードとして、制御部36によって使用される接続ベアラ情報及び再接続待ちフラグを含む。接続ベアラ情報は、対応するUEに対して確立されているベアラを示す情報である。本実施形態では、接続ベアラ情報として、S1APで使用される、E−RAB ID、QCI(QoS Class Identifier)及びARP(Allocation and Retention Priority)が保持される。QCI及びARPは、UEに対して確立されているベアラのサービス品質に関連するパラメータの一例である。このように、情報管理部35は、ユーザ情報テーブル内で、UEに対して確立されているベアラのサービス品質に関連するパラメータを、UEごとに保持している。
また、ユーザ情報テーブル内の再接続待ちフラグは、後述する再接続制御における、対応するUEに対するデタッチ処理(図10(A)のS403又は図10(B)のS504)の実行が保留された状態であるか否かを示すフラグである。このデタッチ処理は、UEの認証を伴う、EPC(コアネットワーク)への再アタッチを当該UEに実行させる制御信号を、当該UEへ送信することによって開始される。本実施形態では、制御部36は、再接続制御におけるデタッチ処理の実行対象のUEに対して、音声通信用のベアラ等の特定のベアラが確立されている間には、デタッチ処理の実行を保留し、特定のベアラが解放された後にデタッチ処理を実行する。
再接続制御においてUEに対してデタッチ処理が制御部36によって実行されると、当該UEに対して確立されているベアラが解放され、当該UEが実行中の通信が一時的に切断される。しかし、音声通信等のリアルタイム性を要する通信が行われている場合には、このような通信の切断は避ける必要がある。そこで、デタッチ処理によるこのような通信の切断を避けるために、制御部36は、情報管理部35によって保持されている切断禁止テーブルにおいて定められたパラメータに対応するベアラ(例えば、QCI=5、かつ、ARP=4のベアラ)が確立されている間には、デタッチ処理を実行しないようにする。
情報管理部35は、ユーザ情報テーブル内のレコードが無制限に増加し、RAM23等の計算資源を過剰に消費することを避けるために、後述するように、ユーザ情報テーブル内の不要となったレコードを削除する機能を有していてもよい。
<MECノードの処理手順>
図5は、MECノード10によって実行される処理の手順を示すフローチャートである。MECノード10では、EPCと、MECノード10に収容されているeNBとの間で伝送されるパケットが、パケット送受信部31によって受信されるごとに、図5の手順による処理を実行する。なお、図5乃至図8及び図10に示される各ステップの処理の実行順序は、図示される順序に限定されず、順序を任意に変更して実行することも可能である。
まずS1で、パケット送受信部31が、EPC又はeNBから送信されたパケットを受信すると、当該受信パケットをフロー識別部32へ出力する。次にS2で、フロー識別部32は、受信したパケットのフロー識別を行う。具体的には、フロー識別部32は、受信パケットが制御パケット(S1−MMEパケット)であるか否かを判定し、受信パケットが制御パケットである場合には、S3へ処理を進める。一方、フロー識別部32は、受信パケットが制御パケットではない(即ち、ユーザデータを含むS1−Uパケットである)場合には、S11へ処理を進める。この場合、S11で、パケット送受信部31は、フロー識別部32によるフロー識別の結果に基づいて、受信パケットを、当該受信パケットにおいて指定された本来の宛先へ送信(転送)し、処理を終了する。
S3で、シグナリング解析部33は、受信パケットに含まれるシグナリング情報を解析して、当該受信パケットが対象としているUE(対象UE)、及び当該受信パケットに含まれるメッセージの種別を識別する。シグナリング解析部33は、それらの識別結果を端末情報解析部34へ出力する。なお、シグナリング解析部33は、暗号化されたシグナリング情報を解析するために、情報管理部35によって必要な暗号化情報が管理されている場合には、当該暗号化情報を使用する。
次にS4で、端末情報解析部34は、識別された対象UEに対応付けられた情報(図4(C)の暗号化情報及び履歴情報)が、情報管理部35によってユーザ情報テーブル内に保持(管理)されているか否かを判定する。端末情報解析部34は、対象UEの対応情報が保持されていない場合にはS5へ処理を進め、保持されている場合にはS7へ処理を進める。なお、端末情報解析部34は、ユーザ情報テーブル内に、対象UEの端末ID及び再接続待ちフラグのみが保持されている場合には、対応情報が保持されていないと判定し、S5へ処理を進める。
S5で、端末情報解析部34は、対象UEに対応する再接続待ちフラグがONに設定されているか否かを判定し、ONに設定されている場合には、S10へ処理を進める。この場合、端末情報解析部34は、対象UEに対して特定のベアラが確立されている間に、eNB及びMME11のいずれかからパケットを受信しても、他のノード装置(隣接MECノード)へ暗号化情報の問い合わせを行わない(図6のS106の処理を実行しない)ように動作する。これにより、後述する再接続制御(図10(B))により対象UEの暗号化情報が取得されるまで、端末情報解析部34が他のMECノードへ暗号化情報の問い合わせを実行する(繰り返す)ことを抑制できる。即ち、他のMECノードへ暗号化情報の問い合わせを、制御パケットの受信ごとに繰り返すことによる無駄な処理の発生を抑制できる。
S5で、端末情報解析部34は、再接続待ちフラグがOFFに設定されている場合には、S6へ処理を進める。S6では、端末情報解析部34は、図6に示す手順により、対象UEについて端末登録処理を実行する。S6の処理が完了すると、端末情報解析部34は、処理をS10へ進める。
一方、S7で、端末情報解析部34は、シグナリング解析部33からの通知に基づいて、情報管理部35によって管理されている、対象UEの暗号化情報の不正が検出されたか否かを判定する。端末情報解析部34は、対象UEの暗号化情報を用いて、暗号化されたシグナリング情報を正しく復号できない(対象UE用の使用可能な暗号化情報が存在しない)ことが通知された場合には、対象UEの暗号化情報の不正が検出されたと判定し、S9へ処理を進める。この場合、S9で、制御部36は、図10(A)に示す手順により、対象UEについて再接続制御を実行する。
S7で、端末情報解析部34は、対象UEの暗号化情報の不正が検出されなかったと判定した場合には、S8へ処理を進める。S8では、端末情報解析部34は、図7に示す手順により、対象UEについて情報更新処理を実行する。S8の処理が完了すると、端末情報解析部34は、処理をS10へ進める。
端末登録処理(S6)若しくは情報更新処理(S8)が完了した場合、再接続待ちフラグがONに設定されている場合(S5で「YES」)、又は、図10(A)に示す手順による処理が完了した場合、S10で、制御部36は、シグナリング解析部33による識別結果に基づいて、受信パケットに含まれるメッセージの種別がページングであるか否かを判定する。制御部36は、メッセージ種別がページングではない場合には、S11へ処理を進める。この場合、S11で、パケット送受信部31は、受信パケットを、当該受信パケットにおいて指定された本来の宛先へ送信(転送)し、処理を終了する。一方、制御部36は、メッセージ種別がハンドオーバである場合、S12へ処理を進め、図8に示す手順により、ページング制御を実行する。ページング制御の完了後、制御部36は、図5の手順による処理を終了する。
<端末登録処理>
次に、図6を参照して、端末登録処理(S6)の手順について説明する。端末登録処理は、対象UEの情報を、情報管理部35によって管理されるユーザ情報に登録することによって、対象UEをMECノード10に収容(登録)する処理である。
まず端末情報解析部34は、S101〜S104において、シグナリング解析部33による識別結果に基づいて、受信パケットに含まれるメッセージの種別を判別し、判別した種別に応じた処理を実行する。具体的には、端末情報解析部34は、メッセージ種別が、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)アタッチ、GUTI(Globally. Unique Temporary Identifier)アタッチ、X2ハンドオーバ、S1ハンドオーバ、及び位置登録、のいずれかであるかを判定する。端末情報解析部34は、メッセージ種別がこれらの種別のいずれでもない場合には、受信パケットに基づく処理を行わずに、端末登録処理を終了する。
(IMSIアタッチ)
端末情報解析部34は、メッセージ種別がIMSIアタッチである場合(S101で「YES」)、S110へ処理を進める。IMSIアタッチ及び後述するGUTIアタッチは、UEの電源ON時等に、UEがネットワークに新規接続(UEをネットワークに登録)するためにeNBを介してMME11へ送信するAttach Request(アタッチ要求)メッセージに基づいて特定されうる。とりわけ、IMSIアタッチ要求は、UEが初めてネットワークに登録される際に行われるため、隣接MECノードに当該UEの情報は保持されていない。このため、端末情報解析部34は、S106の処理を行わずに、S110へ処理を進める。
なお、IMSIアタッチは、UE(無線端末)の認証を伴うアタッチに相当する。IMSIアタッチが行われる場合、S110において、受信パケットに含まれるシグナリング情報から、対象UEの暗号化情報が取得され、情報管理部35によって管理されているユーザ情報テーブルに保存されうる。
(GUTIアタッチ)
端末情報解析部34は、メッセージ種別がGUTIアタッチである場合(S102で「YES」)、S106へ処理を進める。GUTIアタッチ要求を行った対象UEの暗号化情報は、隣接MECノードによって保持されている可能性がある。このため、S106で、端末情報解析部34は、隣接MECノードに対して、対象UEの暗号化情報についての問い合わせを行うことにより、隣接MECノードからの対象UEの暗号化情報の取得を試みる。
具体的には、端末情報解析部34は、Attach Requestメッセージ内の「Last visited registered TAI」要素を参照し、対象UEが直前に(最後に)在圏していたTAに対応するTAIを取得する。更に、端末情報解析部34は、情報管理部35によって管理されている基地局情報に基づいて、取得したTAIと対応付けられた収容MECノードを、対象UEが直前に収容されていたMECノードとして特定し、当該MECノードに対して問い合わせを行う。また、端末情報解析部34は、対象UEが直前に在圏していたTAに対応するTAIを取得できない場合には、Attach Requestメッセージ内の「Additional GUTI」要素に格納されているGUTIに基づいて、対象UEが直前に収容されていた1つ以上のMECノードとして推測する。更に、端末情報解析部34は、推測した各MECノードに対して問い合わせを行う。その後、端末情報解析部34は、S107へ処理を進める。
(X2ハンドオーバ)
端末情報解析部34は、メッセージ種別がX2ハンドオーバである場合(S103で「YES」)、S106へ処理を進める。X2ハンドオーバは、同じMME11に属するeNB間で行われるハンドオーバである。X2ハンドオーバでは、ハンドオーバ元のeNBとハンドオーバ先のeNBとの間でX2インタフェースを介して制御メッセージが送受信されるとともに、ハンドオーバ先のeNBからMME11へPath Switch Request(パス切替要求)メッセージが送信される。X2ハンドオーバは、このPath Switch Requestメッセージに基づいて特定されうる。
S106では、端末情報解析部34は、上述のように、隣接MECノードからの対象UEの暗号化情報の取得を試みる。具体的には、端末情報解析部34は、Path Switch Requestメッセージ内の「Source MME GUMMEI」要素に情報が含まれている場合には、当該情報に基づいて、対象UEが最後に収容されていたMMEを特定する。更に、端末情報解析部34は、情報管理部35によって管理されている隣接MECノード情報に基づいて、特定したMMEと対応付けられた収容MECノードを、対象UEが直前に収容されていた1つ以上のMECノードとして推測する。端末情報解析部34は、推測した各MECノードに対して問い合わせを行う。一方、Path Switch Requestメッセージ内の「Source MME GUMMEI」要素に情報が含まれていない場合には、端末情報解析部34は、情報管理部35によって管理されている隣接MECノード情報に基づいて、全ての隣接MECノードに対して問い合わせを行う。その後、端末情報解析部34は、S107へ処理を進める。
(位置登録又はS1ハンドオーバ)
端末情報解析部34は、メッセージ種別が位置登録又はS1ハンドオーバである場合(S104で「YES」)、S105へ処理を進める。位置登録は、UEからMME11へTAU Requestメッセージに基づいて特定され、S1ハンドオーバは、MME11からハンドオーバ先のeNBへ送信されるHandover Request(ハンドオーバ要求)メッセージに基づいて特定されうる。S105で、端末情報解析部34は、位置登録又はS1ハンドオーバが、対象UEのMME間の移動を伴っているか否かを判定し、伴っている場合にはS110へ処理を進め、伴っていない場合にはS106へ処理を進める。なお、位置登録又はS1ハンドオーバが、対象UEのMME間の移動を伴っている場合、S110において、対象UEと新しい接続先のMMEとの間でやりとりされるシグナリング情報から、対象UEの暗号化情報が取得され、情報管理部35によって管理されるユーザ情報テーブルに保存されうる。
MME間の移動を伴わない位置登録又はS1ハンドオーバが行われる場合、対象UEが直前に収容されていたMECノードから、対象UEの暗号化情報を取得できる可能性がある。このため、S106で、端末情報解析部34は、上述のように、隣接MECノードからの対象UEの暗号化情報の取得を試みる。
具体的には、端末情報解析部34は、メッセージ種別が位置登録の場合、TAU Requestメッセージ内の「Last visited registered TAI」要素を参照し、対象UEが直前に(最後に)在圏していたTAに対応するTAIを取得する。更に、端末情報解析部34は、情報管理部35によって管理されている基地局情報に基づいて、取得したTAIと対応付けられた収容MECノードを、対象UEが直前に収容されていたMECノードとして特定し、当該MECノードに対して問い合わせを行う。また、端末情報解析部34は、対象UEが直前に在圏していたTAに対応するTAIを取得できない場合には、TAU Requestメッセージ内の「Old GUTI」要素に格納されているGUTIに基づいて、対象UEが直前に収容されていた1つ以上のMECノードとして推測する。更に、端末情報解析部34は、推測した各MECノードに対して問い合わせを行う。その後、端末情報解析部34は、S107へ処理を進める。
また、端末情報解析部34は、メッセージ種別がS1ハンドオーバの場合、Handover Requestメッセージ内の「Source eNB to Target eNB Transparent Container」要素に含まれる「Last Visited Cell Information」を参照して、対象UEが直前に収容されていたeNBに対応するECGI(E-UTRAN Cell Global Identifier)を取得する。更に、端末情報解析部34は、情報管理部35によって管理されている基地局情報に基づいて、取得したECGIが示すeNBが収容されているMECノードを特定し、当該MECノードに対して問い合わせを行う。その後、端末情報解析部34は、S107へ処理を進める。
S107で、端末情報解析部34は、S106において隣接MECノードからの対象UEの暗号化情報の取得に成功したか否かを判定し、成功した場合にはS110へ処理を進める。S110で、端末情報解析部34は、受信パケットに含まれるシグナリング情報から収集された情報を、情報管理部35によって管理されているユーザ情報テーブルに保存する。また、端末情報解析部34は、S106において隣接MECノードからの暗号化情報の取得に成功した場合には、取得した暗号化情報を、ユーザ情報管理テーブルに保存する。その後、端末情報解析部34は、S110で、対象UEについての移動履歴及び通信履歴の収集を開始し、端末登録処理を終了する。なお、移動履歴及び通信履歴は、図7を用いて後述するように、受信パケットのメッセージ種別に応じて取得できる。
一方、端末情報解析部34は、S106において隣接MECノードからの対象UEの暗号化情報の取得に失敗した場合には、S107からS108へ処理を進める。端末情報解析部34は、隣接MECノードから対象UEの暗号化情報を取得できなかった場合、S108で、対象UEの端末IDを、情報管理部35によって管理されているユーザ情報テーブルに保存し、S109へ処理を進める。S109で、制御部36は、図10(A)に示す手順により、対象UEについて再接続制御を実行する。
<情報更新処理>
次に、図7を参照して、情報更新処理(S8)の手順について説明する。情報更新処理は、受信パケットに基づいて、情報管理部35によってユーザ情報として管理されている、対象UEの移動履歴又は通信履歴を更新する処理である。
まず端末情報解析部34は、S201〜S202において、受信パケットに含まれるメッセージの種別を判別し、判別した種別に応じた処理を実行する。具体的には、端末情報解析部34は、メッセージ種別が、無線接続、無線解放、X2ハンドオーバ、S1ハンドオーバ、及び位置登録、のいずれかであるかを判定する。端末情報解析部34は、メッセージ種別がこれらの種別のいずれでもない場合には、受信パケットに基づく処理を行わずに、情報更新処理を終了する。
(無線接続又は解放)
端末情報解析部34は、メッセージ種別が無線接続又は解放である場合(S201で「YES」)、S203へ処理を進める。無線接続は、例えば、eNBからMME11へ送信される、S1APのメッセージであるInitial UE Messageに基づいて特定される。Initial UE Messageは、eNBとMME11との間でS1コネクションを確立するためのメッセージである。また、無線解放は、例えば、eNBからMME11へ送信される、S1APのメッセージであるUE Context Release Requestに基づいて特定される。UE Context Release Requestは、eNBとMME11との間でS1コネクションを切断するためのメッセージである。
S203で、端末情報解析部34は、パケット送受信部31によって受信されたパケットに含まれるメッセージの内容及び発生時刻に基づいて、情報管理部35によって管理されているユーザ情報テーブル内の、UEの通信履歴を更新する。例えば、端末情報解析部34は、無線接続に応じて、UEによる通信の開始時刻を通信履歴に保存し、無線解放に応じて、UEによる通信の終了時刻を通信履歴に保存しうる。なお、端末情報解析部34は、eNBとMME11との間で伝送する他のメッセージを解析することによって、通信の内容も通信履歴に含めることが可能である。通信履歴の更新が完了すると、端末情報解析部34は、情報更新処理を終了する。
(X2ハンドオーバ、S1ハンドオーバ又は位置登録)
端末情報解析部34は、メッセージ種別がX2ハンドオーバ、S1ハンドオーバ又は位置登録である場合(S202で「YES」)、S204へ処理を進める。S204で、端末情報解析部34は、パケット送受信部31によって受信されたパケットに含まれるメッセージの内容及び発生時刻に基づいて、情報管理部35によって管理されているユーザ情報テーブル内の、UEの移動履歴を更新する。例えば、端末情報解析部34は、受信パケットから、ハンドオーバ元のセル及びハンドオーバ先のセルにそれぞれ対応するeNBを示す情報(ID等)を位置情報として取得し、受信パケットの発生時刻とともに移動履歴に保存しうる。また、端末情報解析部34は、受信パケットから、UEが位置登録を行うTAに対応するTAIを位置情報として取得し、受信パケットの発生時刻とともに移動履歴に保存する。移動履歴の更新が完了すると、端末情報解析部34は、情報更新処理を終了する。
なお、図7の例には示していないが、端末情報解析部34は、Attach Requestメッセージを含むパケットを受信した場合に、当該メッセージの内容及び発生時刻に基づいて移動履歴を更新してもよい。
<ページング制御>
次に、図8を参照して、ページング制御(S12)の手順について説明する。制御部36は、MME11によって所定のページングポリシーに従って1つ以上のeNBに向けて送信された、対象UEのページングのためのページングメッセージを受信すると、図8に示す手順により、ページング制御を開始する。ページング制御は、MME11によって開始された、対象UEに対するページング処理を制御するために実行される。
まずS301で、制御部36は、情報管理部35によって管理されているユーザ情報テーブル内の、対象UEの履歴情報(移動履歴及び通信履歴の少なくともいずれか)に基づいて、ページングメッセージの送信対象となる1つ以上のeNBを含むページング範囲を決定する。例えば、移動履歴及び通信履歴に基づいて、UEの移動方向又は移動先の位置を予測し、移動方向に沿った位置又は移動先の位置の近傍のeNBを、ページング範囲に含めてもよい。あるいは、制御部36は、端末情報解析部34によって、通信履歴として対象UEのページング成功率が収集されている場合には、当該ページング成功率に基づいて、ページング範囲を決定してもよい。
次にS302で、制御部36は、S301で決定したページング範囲内の各eNBへ、対象UEのページングのためのページングメッセージを送信し、処理を終了する。なお、制御部36は、ページングに失敗した場合、ページングメッセージの送信を複数回にわたって繰り返してもよい。その場合、制御部36は、当該複数回の送信のうちの1回の送信において、対象UEに割り当てられたTAIリスト(TAI-List)内の全eNBへ、ページングメッセージを送信してもよい。これにより、制御部36によるページング範囲の調整により、対象UEが在圏しているeNBが、ページング範囲から漏れた場合にも、ページングを成功させることが可能になる。
図9は、上述のページング制御の具体例を示す図である。図9(A)及び(B)は、MME11におけるページングポリシーによるページング範囲を、MECノード10において広げる例を示している。また、図9(C)は、MME11におけるページングポリシーによるページング範囲を、MECノード10において狭める例を示している。
図9(A)の例では、UEが車載端末等であり、ある程度の速度でTA#1内を移動し続けているシナリオを想定している。この例では、MME11が、予め設定されたページングポリシーに従って、ページング対象のUE(対象UE)についてのLast eNB(本例ではeNB#1)に向けてページングメッセージを送信している。これに対して、MECノード10は、対象UEの移動履歴及び通信履歴に基づいて、ページング範囲を、より広いLast TA(本例ではTA#1)に決定し、TA#1に含まれるeNB#1及びeNB#2へページングメッセージを送信している。即ち、MECノード10は、MME11によるページング範囲を、より広い範囲に調整し、ページングメッセージの送信を行っている。なお、MECノード10は、ページング範囲を、Last TAよりも広いTAI-Listに決定してもよい。
図9(B)の例では、隣接したeNB#2及びeNB#3のセル境界付近をUEが頻繁に移動しているシナリオを想定している。この例では、図9(A)の例と同様、MME11が、予め設定されたページングポリシーに従って、ページング対象のUE(対象UE)についてLast eNB(本例ではeNB#1)に向けてページングメッセージを送信している。これに対して、MECノード10は、対象UEの移動履歴及び通信履歴に基づいて、ページング範囲を、より広いTAI-List(本例では、TA#1及びTA#2)に決定し、TAI-List内のeNB#1、eNB#2、eNB#3及びeNB#4へページングメッセージを送信している。即ち、MECノード10は、MME11によるページング範囲を、より広い範囲に調整し、ページングメッセージの送信を行っている。
図9(C)の例では、UEが静止IoT端末等であり、eNB#2のセル内でほぼ静止し続けているシナリオを想定している。この例では、MME11が、予め設定されたページングポリシーに従って、ページング対象のUE(対象UE)についてのLAST TA(本例ではTA#1)に向けてページングメッセージを送信している。これに対して、MECノード10は、対象UEの移動履歴及び通信履歴に基づいて、ページング範囲を、より狭いLast eNB(本例ではeNB#2)に決定し、eNB#2へページングメッセージを送信している。即ち、MECノード10は、MME11によるページング範囲を、より狭い範囲に調整し、ページングメッセージの送信を行っている。
<再接続制御(パケット受信時)>
次に、図10(A)を参照して、パケットの受信時に実行される再接続制御(S9又はS109)の手順について説明する。
S401で、制御部36は、対象UEに対して、情報管理部35によって管理されている切断禁止テーブル(図4(D))に登録されたベアラ(特定のベアラ)が確立されているか否かを判定する。この判定は、ユーザ情報テーブル内に保持されている接続ベアラ情報に基づいて行われる。制御部36は、切断禁止テーブルに登録されたベアラが対象UEに対して確立されていないと判定した場合、S402へ処理を進め、確立されていると判定した場合、S404へ処理を進める。
S404で、制御部36は、再接続待ちフラグをONに設定し、S10(図5)へ処理を進める。このようにして、制御部36は、切断禁止テーブルに登録されたベアラが対象UEに対して確立されている間には、再接続待ちフラグをONに設定し続け、当該UEに対するデタッチ処理(EPCへの再アタッチを当該UEに実行させる制御信号の送信)を行わない動作する。
一方、S402で、制御部36は、再接続フラグをOFFに設定し、S403へ処理を進める。S403で、制御部36は、対象UEに対するデタッチ処理を開始することで、対象UEの暗号化情報を取得する。その後、制御部36は、S10(図5)へ処理を進める。
図11は、上述の再接続制御による暗号化情報の取得に関連する通信シーケンスを示す図である。S403におけるデタッチ処理が開始されると、MECノード10は、図11に示す通信シーケンスに従って、対象UEの暗号化情報を取得する。
MECノード10は、対象UEに対するデタッチ処理を開始すると(S601)、S1APのメッセージであるUE Context Release Commandを含む制御信号を、eNBへ送信する(S602)。当該制御信号を受信したeNBは、RRCプロトコルのメッセージであるRRC Connection Releaseを含む制御信号を、対象UEへ送信する(S603)。なお、S602及びS603の制御信号は、EPC側からのデタッチを示す情報を含む。本実施形態では、この制御信号は、対象UEに対するデタッチ処理のための切断信号に相当する。MECノード10は、以下で説明するように、この切断信号の受信に応じて対象UEからMME11に対して行われる接続処理において、対象UEの暗号化情報を取得する。
対象UEは、eNBから受信した制御信号により、EPC側からのデタッチを検出すると(S604)、当該制御信号の受信に応じて、EPCへの再アタッチの実行を開始する(S605)。まず、対象UEは、NASメッセージであるAttach Requestを含む制御信号(第1要求信号)を、eNBを介してMME11へ向けて送信する(S606)。この制御信号は、UEの認証を伴わないアタッチ(再アタッチ)であるGUTIアタッチのための制御パケットを含む。
MECノード10は、eNBから受信した、Attach Requestを含む制御信号を、MME11へ転送せずにMECノード10において終端し、対象UEに対して、IMSIアタッチを促すように応答する(S607)。具体的には、MECノード10は、NASメッセージであるAttach Rejectを含む制御信号(アタッチ拒絶信号)を、対象UEへ送信する(S608)。この制御信号は、EPCがUEのIDを特定できないことを示す情報を、対象UEに対してIMSIアタッチを促す情報として含む。
対象UEは、上述のAttach Rejectを含む制御信号の受信に応じて、NASメッセージであるAttach Requestを含む制御信号(第2要求信号)を、eNBを介してMME11へ向けて送信する(S609)。この制御信号は、UEの認証を伴うアタッチ(再アタッチ)であるIMSIアタッチのための制御パケットを含む。MECノード10は、対象UEからeNBを介して、Attach Requestを含む制御信号を受信すると、当該制御信号を、MME11へ転送する。
その後、EPCへの対象UEの新規接続処理のためのシグナリング情報が、対象UEとMME11との間で伝送される(S610)。MECノード10は、このように、Attach Requestを含む制御信号(S609)により開始される新規接続処理において対象UEとMME11との間で伝送されるシグナリング情報から、対象UEの暗号化情報を取得する。
<再接続制御(ベアラ解放検出時)>
次に、図10(B)を参照して、ベアラ解放検出時に実行される再接続制御の手順について説明する。MECノード10において、制御部36は、ユーザ情報テーブルに登録されているいずれかのUEに対して確立されているベアラが解放されたことを検出するごとに、図10(B)に示す手順による再接続制御を実行する。
S501で、制御部36は、解放されたベアラを使用していたUE(対象UE)に対応する再接続待ちフラグがONに設定されているか否かを判定し、OFFに設定されている場合には処理を終了し、ONに設定されている場合には、S502へ処理を進める。
S502で、制御部36は、S401と同様、対象UEに対して、情報管理部35によって管理されている切断禁止テーブル(図4(D))に登録されたベアラ(特定のベアラ)が確立されているか否かを判定する。制御部36は、切断禁止テーブルに登録されたベアラが対象UEに対して確立されていないと判定した場合、S503へ処理を進め、確立されていると判定した場合、処理を終了する。
S503で、制御部36は、再接続フラグをOFFに設定し、S504へ処理を進める。S504で、制御部36は、S403と同様、対象UEに対するデタッチ処理を開始することで、対象UEの暗号化情報を取得し、処理を終了する。なお、S504におけるデタッチ処理が開始されると、MECノード10は、上述のように、図11に示す通信シーケンスに従って、対象UEの暗号化情報を取得する。
このように、制御部36は、対象UEに対して特定のベアラが確立されている間には(S503で「YES」)、当該UEに対してデタッチ処理を行わない。制御部36は、対象UEに対して確立されていた特定のベアラが解放された後に(S503で「NO」)、当該UEに対してデタッチ処理(EPCへの再アタッチを当該UEに実行させる制御信号の送信)を行う(S504)。これにより、対象UEが、音声通信等のリアルタイム性を要する通信を行っている間には、当該UEに対するデタッチ処理により通信が切断されることを避けることができる。即ち、一時的な通信の切断が生じても対象UEに対する影響が少ない、より安全なタイミングにデタッチ処理を実行できる。
以上説明したように、本実施形態のMECノード10は、複数のeNBのそれぞれとMME11との間で伝送されるパケットに含まれるシグナリング情報を解析することにより、当該複数のeNBのセル内に存在するUEのページング範囲を調整するための情報を収集する。MECノード10は、解析における対象UEについての暗号化されたシグナリング情報の復号に使用可能な暗号化情報を保持していない場合に、対象UEの認証を伴うEPCへの再アタッチを対象UEに実行させる制御信号を、対象UEへ送信する。更に、MECノード10は、再アタッチのための接続処理において対象UEとMME11との間で伝送されるシグナリング情報から、対象UEの暗号化情報を取得する。
本実施形態によれば、UE単位でページング処理を制御するMECノード10において、暗号化されたシグナリング情報の解析に必要な暗号化情報を適切に取得することが可能になる。このため、例えば、UEがMME間の移動を伴うハンドオーバを行うまでの間、当該UEに関連するシグナリング情報から暗号化情報を取得できない状態が継続し、MECノード10によるUE単位でのページング処理の制御ができなくなることを防止できる。
これにより、MECノード10が、取得した暗号化情報を用いて、UE又はeNBとMME11との間で伝送されるシグナリング情報を解析し、収集した情報に基づいて、UE単位でページング処理を制御することが可能になる。即ち、MME11におけるページング処理に伴うトランザクション負荷を増加させずに、UE単位でページングポリシーを制御できる。即ち、既存の移動管理装置(MME)の動作に影響を与えずに、ページングポリシーをUE単位で制御(調整)することが可能になる。
また、本実施形態のMECノード10は、対象UEに対して特定のベアラが確立されていない状態で、対象UEの認証を伴うEPCへの再アタッチを対象UEに実行させる制御信号を送信する。これにより、MECノード10は、一時的な通信の切断が生じても対象UEに対する影響が少ない、より安全なタイミングに、対象UEの暗号化情報を取得することが可能である。
<ユーザ情報テーブル内のレコードの削除>
上述の実施形態は種々の変更が可能である。例えば、情報管理部35は、ユーザ情報テーブル内のレコードが無制限に増加し、RAM23等の計算資源を過剰に消費することを避けるために、ユーザ情報テーブル内の不要となったレコードを削除する機能を有していてもよい。
例えば、情報管理部35は、MECノード10に収容されていたUEが、他のMECノードに接続されたeNBのセルへハンドオーバした後に、当該他のMECノードからの問い合わせに応じて当該UEに対応する暗号化情報が当該他のMECノードへ提供された場合に、当該UEに対応するレコードをユーザ情報テーブルから削除してもよい。また、情報管理部35は、所定時間、通信を行っていないUEに対応するレコードを、ユーザ情報テーブルから削除してもよい。この所定時間は、例えば、LTEシステムの設定値であるPeriodic TAU Timer又はPurge Timerのタイムアウト値(例えば、約30分)よりも大きくなるように設定されてもよい。
このように、ユーザ情報テーブル内のレコードを適宜削除することにより、ユーザ情報テーブル内のレコードが無制限に増加することを防止でき、RAM23等の計算資源を過剰に消費することを防止できる。
<その他の実施形態>
MECノード10は、図3に示すように、ローカル情報取得部37を有していてもよい。このローカル情報取得部37は、MECノード10に収容されている各eNBのセル内の無線通信状況を示す情報を、ローカル情報として各eNBから取得する機能を有する。この場合、制御部36は、MME11からページングメッセージが受信されると、端末情報解析部34によって収集されたローカル情報に基づいて、ページング範囲を決定する。あるいは、制御部36は、情報管理部35によって管理されている情報と、ローカル情報との両方に基づいて、ページング範囲を決定してもよい。更に、制御部36は、決定したページング範囲に含まれる各eNBへページングメッセージを送信する。このような処理により、各eNBのセル内のローカルな状況に基づいて、MECノード10によるページングポリシーの調整を実現できる。
なお、本実施形態に係るMECノード(管理装置)は、コンピュータをMECノードとして機能させるためのコンピュータプログラムにより実現することができる。当該コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて配布が可能なもの、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。