以下、本発明に係る実施形態の筋電位取得装置を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係る実施形態の筋電位取得装置のブロック図である。
本発明に係る実施形態の筋電位取得装置10は、ボツリヌス療法患者に対するボツリヌストキシン投与単位の基準となる最大筋電位を取得する筋電位取得装置である。なお、本実施形態では、ボツリヌス療法患者である、睡眠の際に口腔内装置を、長期間に渡って装着する睡眠時ブラキシズムや、閉塞性睡眠時無呼吸(OAS)の患者について、以下説明するが、ボツリヌス療法の対象となる患者であれば、睡眠時ブラキシズムや、閉塞性睡眠時無呼吸(OAS)の患者に限らず、適応可能である。
筋電位取得装置10は、ボツリヌス療法患者に貼付される生体用電極11、11と、ボツリヌス療法患者の覚醒時に所定時間経過毎に生体用電極11、11から導出された複数の筋電位を取得する筋電位取得部12と、筋電位取得部12で取得された複数の筋電位をそれぞれ増幅し、且つ整流化することにより複数の筋電位信号として生成する増幅整流部13と、増幅整流部13により生成された複数の筋電位信号毎の最大筋電位を抽出する最大筋電位抽出部14と、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位の内、最も大きい最大筋電位を基準最大筋電位とし、基準最大筋電位が所定の条件を満たすか否かを判定する投薬基準判定部15と、を有する。なお、筋電位取得部12、増幅整流部13、最大筋電位抽出部14、及び投薬基準判定部15は、筋電位取得装置10の制御部として、例えばCPU等から構成され、後述した記憶部16に記憶された各処理プログラムを適宜読み出して実施することにより、本発明に係る各種機能を実施する。
また、筋電位取得装置10は、生体用電極11、11から導出された複数の筋電位、増幅整流部13により生成された筋電位信号、最大筋電位抽出部14により抽出された最大筋電位に加え、各種データ、及び各処理プログラム等を記憶する記憶部16を有する。さらに、筋電位取得装置10は、最大筋電位等を表示することができる表示部17を有する。なお、筋電位取得装置10は、有線又は無線により、パソコンや、タブレットPC等の情報通信端末と通信可能であり、筋電位取得装置10から検出、及び算出された各データを、当該情報通信端末において各種解析することが可能である。また、筋電位取得装置10は、図1に図示していないがボツリヌス療法患者毎の患者識別番号や、性別、年齢等を入力することが可能な入力部や、筋電位取得装置10の各種機能を実施させる電源部を有する。
生体用電極11、11は、例えば銀塩化銀表面電極(ディスポ電極)であって、ボツリヌス療法患者の咬筋の筋電位を導出するために、ボツリヌス療法患者の咀嚼筋である、咬筋と側頭筋の内、咬筋に対応する皮膚表面に貼付される。また、生体用電極11、11は、電極リード線を介して、筋電位取得部12と電気的に接続されており、ボツリヌス療法患者の噛み締めに応じて生じた筋電位を導出し、筋電位取得部12へ出力する。
筋電位取得部12は、生体用電極11、11から導出された複数の筋電位を取得する。本実施形態では、筋電位取得部12は、ボツリヌス療法患者が覚醒時に最大噛締めを2〜3秒間持続した後、例えば所定の休憩時間を挟む動作を複数回繰り返すことによって、生体用電極11、11から導出された筋電位を取得する。例えば、ボツリヌス療法患者が最大噛締めを3回繰り返した場合、筋電位が3つ取得され、またボツリヌス療法患者が最大噛締めを5回繰り返した場合、筋電位が5つ取得されることになる。なお、筋電位取得部12により取得された複数の筋電位は、ボツリヌス療法患者毎に付与された患者識別番号に紐づけられて、記憶部16に記憶される。
生体用電極11、11により導出される咬筋の振幅値は、対象となる筋に対して、最大随意収縮を測定したものであるが、筋のコンディションにより、同じ筋力が発揮されても筋電位は変動することから、筋電位振幅と筋張力の間には単調増加の関係は成立しても、線形関係は必ずしも成立せず、筋電位の振幅値と筋張力とは必ずしも等しくならない。そして、筋電図から咬筋力を推定するためには、同じ筋力であっても筋電位が変動することより、筋電位を複数回測定しないと最大筋電位であるかを判別が困難である。そこで、筋電位取得部12は、筋電位を複数回取得し、筋電図に見られた極端な値が電極接触不良や、噛締め不良等の要因で偏差が大きい場合の測定値を除外し、最大噛締めであるか否かの妥当性を評価し、測定結果の精度の向上を図っている。
ここで、ボツリヌス療法患者の覚醒時における最大噛み締めは、医療従事者の指示に従い行ってもよいし、筋電位取得装置10に時間計測部(図示しない)を設け、予め設定した計測開始・終了時間、及び休憩開始・終了時間に合わせて、発生されるピーブ音等の通知音や、発光されるランプの色等に従って、ボツリヌス療法患者に最大噛み締めを行わせてもよい。
増幅整流部13は、筋電位取得部12で取得された複数の筋電位をそれぞれ増幅し、且つ整流化することにより複数の筋電位信号として生成する。具体的には、先ず、増幅整流部13は、差動増幅器により筋電位に含まれる同相成分ノイズ、例えば許容電圧による交流障害を除去し、筋電図を導出する。続いて、低域遮断フィルタが、導出した筋電位から10Hz以下の周波数帯を遮断する。10Hz以下の周波数帯を遮断することにより、皮膚と生体用電極11、11との間で発生する直流の分極電圧を除去することができる。そして、生体増幅器が10Hz以下の周波数帯が遮断された筋電図を60db程増幅した後、高域遮断フィルタが当該筋電図の100Hz以上をフィルタリングする(図2(a)を参照)。このような生体増幅器や高域遮断フィルタにおける処理により、増幅器等から発生するホワイトノイズを除去することができる。このような処理を実施することによって、増幅整流部13は、筋電位取得部12で取得された複数の筋電位から、10Hz〜100Hzの表面筋電図を生成することができる(図2(a)を参照)。次に、増幅整流部13は、生成した10Hz〜100Hzの表面筋電図を全波整流器に通し、絶対値へ変換する。具体的には、図2(b)において、陰性波形(破線)を陽性波形(実線)へ反転させて絶対値波形とする。さらに、増幅整流部13は、A/D変換器により整流化した筋電位をデジタル化する。なお、上述した全波整流器により、生成した10Hz〜100Hzの表面筋電図を絶対値へ変換せず、デジタル化した後にRMS(二乗平方根)処理を実施し、平均化することなく、絶対値へ変換することができる。
上述した処理を実施することにより、増幅整流部13は、筋電位取得部12で取得された複数の筋電位をそれぞれ筋電位信号として生成し、記憶部16に記憶させる。なお、増幅整流部13は、筋電位信号毎に識別番号を付与し、筋電位信号と患者識別番号とを紐づけ、記憶部16に記憶させるとよい。
最大筋電位抽出部14は、増幅整流部13により生成された複数の筋電位信号毎の最大筋電位を抽出する。具体的には、時系列に従って、筋電位信号から筋電位のピーク(図2(b)中の符号P1を参照)を記憶部16に最大筋電位として一時記憶させておく。次に、時系列を進め、次に現れた筋電位のピーク(図2(b)中の符号P2を参照)と記憶部16に一時記憶させた筋電位のピーク(P1)とを比較し、次に現れた筋電位のピーク(P2)が大きい場合、次に現れた筋電位のピーク(P2)を記憶部16に最大筋電位として一時記憶させる。一方、記憶部16に一時記憶させた筋電位のピーク(P1)が大きい場合、さらに時系列を進め、次に現れる筋電位のピーク(図2(b)中の符号P3を参照)と比較する。このような処理を、時系列の最後の筋電位のピークまで実施する。そのようにして、最大筋電位抽出部14は、筋電位信号から最大筋電位(図2(b)中の符号PPを参照)を抽出し、最大筋電位を患者識別番号に紐づけ、記憶部16に記憶させる。本実施形態では、少なくとも5回分の筋電位信号から、それぞれの最大筋電位が抽出されるため、5つの最大筋電位(PP)が抽出されることになり、区間筋電位の最大値を取得することができる。ここで、区間筋電位とは、ボツリヌス療法患者によって行われた最大噛締め行為の開始から終了までに検出された筋電位をいう。なお、図2(b)中の符号P1、P2、P3、P4、及びPPは、説明の便宜上付したものである。
投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)の内、最も大きい最大筋電位(PP)を基準最大筋電位とし、基準最大筋電位が所定の条件を満たすか否かを判定する。
ここで、所定の条件は、例えば基準条件1〜3の3通りがある。基準条件1は、基準最大筋電位が、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)と、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)から算出した偏差とに基づいて作成された箱ひげ図の外れ値であるか否かであり、箱ひげ図の外れ値でない場合、基準条件1を満たすことになる。また、基準条件2は、基準最大筋電位が、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)の中央値の外れ値であるか否かであり、中央値の外れ値でない場合、基準条件2を満たすことになる。さらに、基準条件3は、基準最大筋電位が、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)の再平均値の外れ値であるか否かであり、再平均値の外れ値でない場合、基準条件3を満たすことになる。
基準条件1は、次の通りである。投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)と、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)から算出した偏差とに基づいて、箱ひげ図を作成する。また、投薬基準判定部15は、基準最大筋電位が箱ひげ図の外れ値でないと判定した場合、基準最大筋電位が基準条件1を満たすと判定する。
本実施形態では、投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)と、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)から算出した偏差とから、先ず四分位数を算出する。具体的には、投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)、例えば5つの最大筋電位を昇順に並び替え、最大筋電位(PP)の最小値、最大値を算出する。次に、投薬基準判定部15は、昇順に並び替えた5つの最大筋電位の内の真ん中の値を中央値として算出する。さらに、投薬基準判定部15は、第1四分位数、及び第3四分位数を算出する。具体的には、投薬基準判定部15は、中央値を除いて、中央値より数値が小さい下位データと中央値より数値が大きい上位データとを分けて、下位データの中央値を第1四分位数と、上位データの中央値を第3四分位数とする。そして、投薬基準判定部15は、最大筋電位の最小値、最大値、中央値、第1四分位数、及び第3四分位数とそれらの偏差とに基づいて、箱ひげ図を作成する。
次に、投薬基準判定部15は、箱ひげ図の外れ値を算出する。本実施形態では、箱ひげ図の外れ値は、箱ひげ図の最大値が第3四分位数に四分位範囲の1.5倍を加算した値以上である場合とする。箱ひげ図の最大値、すなわち基準最大筋電位が第3四分位数に四分位範囲の1.5倍を加算した値以上の場合、アーチファクト不良、例えば生体用電極11、11がボツリヌス療法患者の咬筋に貼付した電極が汗などにより、皮膚表面から浮いてしまい、隙間が生じることによって接触インピーダンスが高くなり、分極電圧が発生したと想定されるからである。
また、基準条件1において、箱ひげ図の最小値が第1四分位数から四分位範囲の1.5倍を減算した値以下である場合、外れ値とする条件を追加してもよい。箱ひげ図の最小値が第1四分位数から四分位範囲の1.5倍を減算した値以下の場合、コンプライアンス不良、例えばボツリヌス療法患者が噛締めを行った際、適切に噛締め行為が行うことができない等の事態が想定されるからである。
次に、基準条件2は、以下の通りである。投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)の最大値、中央値、最小値、及び偏差を算出する。なお、偏差は、最大値から最小値までの偏差である。また、投薬基準判定部15は、最大値、すなわち基準最大筋電位が中央値の外れ値であるか否かを判定し、基準最大筋電位が外れ値でないと判定した場合、基準最大筋電位が基準条件2を満たすと判定する。
本実施形態では、投薬基準判定部15は、最大値が中央値に1.75を乗算した値以上であるか否かを判定する。そして、投薬基準判定部15は、最大値が中央値に1.75を乗算した値以上であれば、最大値を外れ値と判定する。最大値、すなわち基準最大筋電位が、中央値に1.75を乗算した値以上である場合、上述したアーチファクト不良である可能性が高いからである。なお、基準条件2では、最大値が中央値の外れ値であるか否かを判定する条件として、中央値に1.75を乗算した値としたのは、基準条件1において、第3四分位数を基準とし、外れ値を判定することに整合させたものである。
また、基準条件2において、投薬基準判定部15は、最小値が中央値に0.25を乗算した値以下であるか否かを判定してもよい。そして、投薬基準判定部15は、最小値が中央値に0.25を乗算した値以下であれば、最小値を外れ値と判定してもよい。最小値が、中央値に0.25を乗算した値以下である場合、上述したコンプライアンス不良である可能性が高いからである。
さらに、基準条件3は、以下の通りである。投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)の最大値、中央値、最小値、平均値、再平均値及び偏差を算出する。なお、偏差は、最大値から最小値までの偏差である。また、投薬基準判定部15は、最大値、すなわち基準最大筋電位が再平均値の外れ値であるか否かを判定し、基準最大筋電位が外れ値でないと判定した場合、基準最大筋電位が基準条件3を満たすと判定する。
本実施形態では、投薬基準判定部15は、最大値が平均値に1.5を乗算した値以上であるか否かを判定する。投薬基準判定部15は、最大値が平均値に1.5を乗算した値以上であれば、平均値に1.5を乗算した値以上と判定した最大値を除いた、中央値、最小値、及び平均値から再平均値を算出する。
投薬基準判定部15は、平均値に1.5を乗算した値以上と判定した最大値が、再平均値に1.75を乗算した値以上であるか否かを判定する。そして、投薬基準判定部15は、平均値に1.5を乗算した値以上と判定した最大値が、再平均値に1.75を乗算した値以上であれば、最大値を外れ値と判定する。最大値、すなわち基準最大筋電位が、再平均値に1.75を乗算した値以上である場合、上述したアーチファクト不良である可能性が高いからである。
また、基準条件3において、投薬基準判定部15は、最小値が平均値に0.5を乗算した値以下であるか否かを判定してもよい。投薬基準判定部15は、最小値が平均値に0.5を乗算した値以下であれば、平均値に0.5を乗算した値以下と判定した最小値を除いた、最大値、中央値、及び平均値から再平均値を算出する。
投薬基準判定部15は、平均値に0.5を乗算した値以下と判定した最小値が、再平均値に0.25を乗算した値以下であるか否かを判定する。そして、投薬基準判定部15は、平均値に0.5を乗算した値以下と判定した最小値が、再平均値に0.25を乗算した値以下であれば、最小値を外れ値と判定する。最小値が、再平均値に0.25を乗算した値以下である場合、上述したコンプライアンス不良である可能性が高いからである。
また、投薬基準判定部15は、基準最大筋電位が上述した基準条件1、基準条件2、又は基準条件3を満たす場合、ボツリヌストキシン投与単位の基準と判定する。さらに、投薬基準判定部15は、表示部17に対し、ボツリヌストキシン投与単位の基準と判定した基準最大筋電位を出力し、表示させる。
そして、投薬基準判定部15は、基準最大筋電位をボツリヌストキシン投与単位の基準と判定した場合、基準最大筋電位の値に応じて、ボツリヌス療法患者の咬筋力を、「咬筋力弱」、「咬筋力小」、「咬筋力中」、及び「咬筋力強」とレベル分けし、ボツリヌストキシン投与単位を判定し、表示部17にレベル分けしたボツリヌス療法患者の咬筋力を表示させ、又はボツリヌストキシン投与単位を表示させる構成としてもよい。例えば、「咬筋力弱」は、基準最大筋電位が0.5mV以下とし、ボツリヌストキシンの投与は不要とする。「咬筋力小」は、基準最大筋電位が0.5mV以上1mV未満とし、ボツリヌストキシンの投与単位は20単位とする。「咬筋力中」は、基準最大筋電位が1mV以上3mV未満とし、ボツリヌストキシンの投与単位は25単位とする。「咬筋力強」は、基準最大筋電位が3mV以上とし、ボツリヌストキシンの投与単位は30単位とする。なお、ボツリヌストキシン1瓶当たり100単位(4cc)とし、25単位を1ccとする。
一方、投薬基準判定部15は、基準最大筋電位が基準条件1、基準条件2、又は基準条件3を満たさない場合、ボツリヌストキシン投与単位の基準としない旨を通知する。基準最大筋電位が基準条件1、基準条件2、又は基準条件3を満たさない場合、投薬基準判定部15は、基準最大筋電位が生体用電極11、11の装着不良や、ボツリヌス療法患者の噛み締め行為の不良等の要因による異常所見であると推定されるため、ボツリヌストキシン投与単位の基準としないと判定する。
この際、投薬基準判定部15は、表示部17に対し、外れ値である旨を示す通知を出力する。当該通知は、ピーブ音等の通知音の発生、ランプの点灯、又はエラーメッセージの表示等により知らせる構成としてもよい。さらに、投薬基準判定部15は、外れ値と判定した場合、表示部17に対し、新たに筋電位の取得を促す旨の通知を出力してもよい。その際、投薬基準判定部15は、筋電位取得部12に対し、改めて複数の筋電位を取得させる指示を出力する構成としてもよい。
上述した増幅筋電部13、最大筋電位抽出部14、及び投薬基準判定部15は、記憶部16に記憶された各処理プログラムを適宜読み出して実行し、筋電位取得装置10に係る各種機能を実現している。
次に、筋電位取得装置10に係る最大筋電位がボツリヌストキシン投与単位の基準と判定される処理手順を、図3に示すフローチャートに基づいて、以下説明する。なお、以下処理手順は、ボツリヌス療法患者による最大噛み締め行為が5回行われた場合とする。また、ボツリヌス療法患者による最大噛み締め行為が5回以上であれば、同様な処理手順を実施することが可能である。
医療従事者は、生体用電極11、11を、ボツリヌス療法患者の咀嚼筋である、咬筋に対応する皮膚表面に貼付する。その後、ボツリヌス療法患者は、医療従事者の指示に従って、覚醒時に、最大噛み締めを2〜3秒間持続した後、所定の休憩時間を挟む行為を、5回繰り返す。その際、生体用電極11、11は、ボツリヌス療法患者の最大噛み締めの際に咬筋から生じた5回分の筋電位を導出し、筋電位取得部12へ出力する(ステップS101)。
次に、筋電位取得部12は、ボツリヌス療法患者の覚醒時に所定の休憩時間経過毎に生体用電極11、11から取得された5回分の筋電位を取得する(ステップS102)。ここで、筋電位取得部12は、取得した5回分の筋電位をボツリヌス療法患者毎に付与された患者識別番号に紐づけて、記憶部16に記憶させる。
増幅整流部13は、筋電位取得部12で取得された5回分の筋電位をそれぞれ増幅し、且つ整流化し、5回分の筋電位信号として生成する(ステップS103)。具体的には、先ず、増幅整流部13は、差動増幅器により筋電位に含まれる同相成分ノイズを除去し、筋電図を導出する。続いて、低域遮断フィルタが、導出した筋電位から10Hz以下の周波数帯を遮断する。そして、生体増幅器が10Hz以下の周波数帯が遮断された筋電図を60程増幅した後、高域遮断フィルタが当該筋電図の100Hz以上をフィルタリングする。こうして、増幅整流部13は、筋電位取得部12で取得された複数の筋電位から、10Hz〜100Hzの表面筋電図を生成する(図2(a)を参照)。次に、増幅整流部13は、生成した10Hz〜100Hzの表面筋電図を全波整流器に通すことにより、絶対値へ変換する。具体的には、図2(b)において、陰性波形(破線)を陽性波形(実線)へ反転させて整流波形とする。さらに、増幅整流部13は、A/D変換器により整流化した筋電位をデジタル化する。
最大筋電位抽出部14は、増幅整流部13により生成された5回分の筋電位信号毎の最大筋電位を抽出する(ステップS104)。具体的には、最大筋電位抽出部14は、時系列に従って、筋電位信号から筋電位のピークを抽出し(図2(b)中の符号P1を参照)、記憶部16に最大筋電位として一時記憶させる。次に、最大筋電位抽出部14は、時系列を進め、次に現れた筋電位のピーク(図2(b)中の符号P2を参照)を抽出し、抽出した次に現れた筋電位のピーク(P2)と記憶部16に一時記憶させた筋電位のピーク(P1)とのどちらが大きいか否かを比較する。
ここで、最大筋電位抽出部14は、次に現れた筋電位のピーク(P2)が大きいと判断した場合、記憶部16に一時記憶させた筋電位のピーク(P1)を削除し、次に現れた筋電位のピーク(P2)を記憶部16に最大筋電位として一時記憶させる。一方、最大筋電位抽出部14は、記憶部16に一時記憶させた筋電位のピーク(P1)が大きいと判断した場合、さらに時系列を進め、次に現れる筋電位のピーク(図2(b)中の符号P3を参照)と記憶部16に一時記憶させた筋電位のピーク(P1)とのどちらが大きいか否かを比較する。
このように、最大筋電位抽出部14は、上述した処理を、時系列の最後の筋電位のピークまで実施し、最も大きい筋電位のピークを最大筋電位(図2(b)中の符号PPを参照)として抽出する。また、最大筋電位抽出部14は、5回分の筋電位信号に対し、上述した処理をそれぞれ実施し、5回分の最大筋電位(PP)を抽出する。そして、最大筋電位抽出部14は、抽出した最大筋電位(PP)を、ボツリヌス療法患者毎に付与された患者識別番号に紐づけて、記憶部16に記憶させる。
投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された5回分の最大筋電位(PP)の内、最も大きい最大筋電位を基準最大筋電位とし、基準最大筋電位が所定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS105)。ここで、所定の条件、例えば基準条件1は、基準最大筋電位が箱ひげ図の外れ値であるか否かを判定し、基準最大筋電位が箱ひげ図の外れ値でないと判定した場合、基準条件1を満たすと判定する。
本実施形態では、投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された5回分の最大筋電位と、最大筋電位抽出部14により抽出された5回分の最大筋電位(PP)から算出した偏差とから箱ひげ図を作成する。基準最大筋電位が投薬基準判定部15により作成された箱ひげ図の外れ値であるか否かを判定する処理手順について、図4を用いて、以下説明する。
投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された5回分の最大筋電位と、最大筋電位抽出部14により抽出された5回分の最大筋電位から算出した偏差とから、四分位数を算出する(ステップS201)。
本実施形態では、先ず投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された5回分の最大筋電位(PP)を昇順に並び替え、最大筋電位の最小値、最大値を算出する。また、投薬基準判定部15は、昇順に並び替えた5つの最大筋電位の内の真ん中の値を中央値として算出する。さらに、投薬基準判定部15は、偏差を算出する。なお、偏差は最大値から最小値までの偏差である。
次に、投薬基準判定部15は、第1四分位数、及び第3四分位数を算出する。投薬基準判定部15は、中央値を除いて、中央値より数値が小さい下位データと中央値より数値が大きい上位データとを分けて、下位データの中央値を第1四分位数と、上位データの中央値を第3四分位数とする。
そして、投薬基準判定部15は、最大筋電位の最小値、最大値、中央値、第1四分位数、及び第3四分位数とより、箱ひげ図を作成する(ステップS202)。
ここで、実施例1として、筋電位抽出部14により抽出された5回分の最大筋電位(PP)が、1回目:3mV、2回目:4.5mV、3回目:2.6mV、4回目:5mV、5回目:3.6mVとした場合、投薬基準判定部15は、以下のように箱ひげ図を作成する。
投薬基準判定部15は、箱ひげ図を作成するために、最大筋電位の最小値、最大値、中央値、第1四分位数、及び第3四分位数を算出する。先ず、投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された5回分の最大筋電位を、2.6mV、3mV、3.6mV、4.5mV、5mVへ並べ替え、最大筋電位の最小値を2.6mVと、最大筋電位の最大値を5mVと算出する。次に、投薬基準判定部15は、最大筋電位の中央値を3.6mVと算出する。さらに、投薬基準判定部15は、最大筋電位の第1四分位数を3mVと、最大筋電位の第1四分位数を4.5mVと算出する。そして、投薬基準判定部15は、算出した最大筋電位の最小値、最大値、中央値、第1四分位数、及び第3四分位数と偏差とに基づいて、図5に示す箱ひげ図を作成する。
次に、投薬基準判定部15は、箱ひげ図の外れ値を算出する(ステップS203)。箱ひげ図の外れ値は、第3四分位数に四分位範囲の1.5倍を加算した値を外れ値とする。
実施例1では、投薬基準判定部15は、図5に示す箱ひげ図の最大値が第3四分位数に四分位範囲の1.5倍を加算した値である6.75mV以上であるか否かを判定する(ステップS204)。そして、投薬基準判定部15は、図5に示す箱ひげ図の最大値が第3四分位数に四分位範囲の1.5倍を加算した値である6.75mV以上である場合、箱ひげ図の最大値を外れ値と判定する(ステップS205)。箱ひげ図の最大値が第3四分位数に四分位範囲の1.5倍を加算した値以上の場合、上述したアーチファクト不良である可能性が高いからである。
実施例1では、投薬基準判定部15は、箱ひげ図の最大値(5mV)は、第3四分位数に四分位範囲の1.5倍を加算した値である6.75mV以下であるから、箱ひげ図の最大値を外れ値でないと判定する。そして、投薬基準判定部15は、図3に示すフローチャートのステップS105の基準条件1を満たすと判定し、ステップS106へ進む。一方、投薬基準判定部15により、箱ひげ図の最大値が外れ値であると判定された場合、図3に示すフローチャートのステップS105の基準条件1を満たさないと判定され、ステップS107へ進む。
なお、箱ひげ図の外れ値として、箱ひげ図の最小値が第1四分位数から四分位範囲の1.5倍を減算した値以下である場合を加えてもよい。実施例1では、投薬基準判定部15は、図5に示す箱ひげ図の最小値が第1四分位数から四分位範囲の1.5倍を減算した値である1.5mV以下である場合、図5に示す箱ひげ図の最小値を外れ値と判定する。箱ひげ図の最小値が第1四分位数から四分位範囲の1.5倍を減算した値以下の場合、上述したコンプライアンス不良である可能性が高いからである。
実施例1では、投薬基準判定部15は、箱ひげ図の最小値(2.6mV)は、第3四分位数に四分位範囲の0.5倍を加算した値である1.5mV以上であるから、箱ひげ図の最小値を外れ値でないと判定する。そして、投薬基準判定部15は、図3に示すフローチャートのステップS105の基準条件1を満たすと判定し、ステップS106へ進む。一方、投薬基準判定部15により、箱ひげ図の最小値が外れ値であると判定された場合、図3に示すフローチャートのステップS105の基準条件1を満たさないと判定され、ステップS107へ進む。
そして、投薬基準判定部15は、基準最大筋電位が箱ひげ図の外れ値でないと判定した場合、ボツリヌストキシン投与単位の基準と判定する(ステップS106)。さらに、投薬基準判定部15は、表示部17に対し、ボツリヌストキシン投与単位の基準と判定した基準最大筋電位を出力し、表示させる。
テップS106)。
実施例1では、投薬基準判定部15は、図5に示す箱ひげ図の最大値、すなわち基準最大筋電位(5mV)が箱ひげ図の外れ値(6.75mV)以下であるから、箱ひげ図の外れ値でないと判定し、基準最大筋電位(5mV)をボツリヌストキシン投与単位の基準と判定する。
ここで、投薬基準判定部15は、基準最大筋電位の値に応じて、ボツリヌス療法患者の咬筋力を、「咬筋力弱」、「咬筋力小」、「咬筋力中」、及び「咬筋力強」とレベル分けし、ボツリヌストキシン投与単位を判定してもよい。例えば、基準最大筋電位が0.5mV以下である場合、「咬筋力弱」と、基準最大筋電位が0.5mV以上1mV未満である場合、「咬筋力小」と、基準最大筋電位が1mV以上3mV未満である場合、「咬筋力中」と、基準最大筋電位が3mV以上である場合、「咬筋力強」と判定する。実施例1では、基準最大筋電位が5mVであるから、「咬筋力強」と判定される。そして、投薬基準判定部15は、ボツリヌストキシン投与単位を判定し、表示部17にレベル分けしたボツリヌス療法患者の咬筋力を表示させ、又はボツリヌストキシン投与単位を表示させる構成としてもよい。
一方、投薬基準判定部15は、基準最大筋電位が箱ひげ図の外れ値であると判定した場合、ボツリヌストキシン投与単位の基準としないと判定する(ステップS107)。ここで、投薬基準判定部15は、表示部17に対し、ボツリヌストキシン投与単位の基準としなかった旨を示す通知を出力する。当該通知は、ランプを点灯や、エラーメッセージの表示等により知らせる構成としてもよい。また、投薬基準判定部15は、筋電位取得部12に対し、新たに5回分の筋電位を取得する旨の通知をする構成としてもよい。
上述した筋電位取得装置10の最大筋電位がボツリヌストキシン投与単位の基準と判定される処理手順は、基準最大筋電位が箱ひげ図の外れ値でない場合、ボツリヌストキシン投与単位の基準と判定する処理であるが、箱ひげ図を作成するには、ボツリヌス療法患者の最大噛み締めによる筋電位が少なくとも5回分以上の取得が必要となる。
一方、ボツリヌス療法患者の最大噛み締めによる筋電位が3回分、又は4回分の取得である場合、箱ひげ図を作成し、箱ひげ図の外れ値でないことを判定することは困難である。そこで、箱ひげ図の外れ値を判定する処理と別の処理手順として、基準最大筋電位が中央値の外れ値であるか否かを判定する処理手順を図6に示すフローチャートを用いて、以下説明する。なお、上述した基準最大筋電位が箱ひげ図の外れ値であるか否かを判定する処理手順と同様な処理については説明を省略する。
投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された3回分の最大筋電位(PP)の内、最も大きい最大筋電位を基準最大筋電位とし、基準最大筋電位が基準条件2を満たすか否かを判定する。
投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)の最大値、中央値、最小値、及び偏差を算出する(ステップS301)。なお、偏差は最大値から最小値までの偏差である。
ここで、実施例2として、筋電位抽出部14により抽出された3回分の最大筋電位(PP)が、1回目:6mV、2回目:5mV、3回目:4mVとした場合、投薬基準判定部15は、最大値を6mVと、中央値を5mVと、最小値を4mVと、偏差を2mVと算出する。さらに、実施例3として、筋電位抽出部14により抽出された3回分の最大筋電位(PP)が、1回目:6mV、2回目:5mV、3回目:1mVとした場合、投薬基準判定部15は、最大値を6mVと、中央値を5mVと、最小値を1mVと、偏差を5mVと算出する。また、実施例4として、筋電位抽出部14により抽出された3回分の最大筋電位(PP)が、1回目:9mV、2回目:5mV、3回目:4mVとした場合、投薬基準判定部15は、最大値を9mVと、中央値を5mVと、最小値を4mVと、偏差を5mVと算出する。
次に、投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)の内、最大値が中央値の外れ値であるか否かを判定する(ステップS302)。そして、投薬基準判定部15は、最大値が中央値に1.75を乗算した値以上である場合、最大値を外れ値と判定する(ステップS303)。最大値が中央値に1.75を乗算した値以上である場合、上述したアーチファクト不良である可能性が高いからである。
実施例2では、最大値(6mV)は、中央値に1.75を乗算した値(8.75mV)未満であるから、最大値(6mV)は外れ値でないと判定される。また、実施例3では、最大値(6mV)は、中央値に1.75を乗算した値(8.75mV)未満であるから、最大値(6mV)は外れ値でないと判定される。さらに、実施例4では、最大値(9mV)は、中央値に1.75を乗算した値(8.75mV)以上であるから、最大値(9mV)は外れ値であると判定される。
さらに、投薬基準判定部15は、最小値が中央値に0.25を乗算した値以下であるか否かを判定してもよい。最小値が中央値に0.25を乗算した値以下である場合、上述したコンプライアンス不良である可能性が高いからである。
実施例2では、最小値(4mV)は、中央値に0.25を乗算した値(1.25mV)以上であるから、最小値(4mV)は外れ値でないと判定される。また、実施例3では、最小値(1mV)は、中央値に0.25を乗算した値(1.25mV)以下であるから、最小値(1mV)は外れ値であると判定される。さらに、実施例4では、最小値(4mV)は、中央値に0.25を乗算した値(1.25mV)以上であるから、最小値(4mV)は外れ値でないと判定される。
実施例2〜4において、実施例2の最大値、及び最小値は中央値の外れ値でないと判定されたことにより、図3に示すフローチャートのステップS105の基準条件2を満たすと判定され、ステップS106へ進む。一方、実施例3の最小値は中央値の外れ値であると判定されたことにより、図3に示すフローチャートのステップS105の基準条件2を満たさないと判定され、ステップS107へ進む。また、実施例3の最大値が中央値の外れ値であると判定されたことにより、図3に示すフローチャートのステップS105の基準条件2を満たさないと判定され、ステップS107へ進む。
上述した外れ値を判定する処理とまた別の処理手順として、基準最大筋電位が再平均値の外れ値であるか否かを判定する処理手順を図7に示すフローチャートを用いて、以下説明する。なお、上述した基準最大筋電位が箱ひげ図、又は中央値の外れ値であるか否か判定する処理手順と同様な処理については説明を省略する。
投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された3回分の最大筋電位(PP)の内、最も大きい最大筋電位を基準最大筋電位とし、基準最大筋電位が基準条件3を満たすか否かを判定する。
投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)の最大値、中央値、最小値、平均値、及び偏差を算出する(ステップS401)。なお、偏差は最大値から最小値までの偏差である。
ここで、実施例5として、筋電位抽出部14により抽出された3回分の最大筋電位(PP)が、1回目:6mV、2回目:5mV、3回目:4mVとした場合、投薬基準判定部15は、最大値を6mVと、中央値を5mVと、最小値を4mV、平均値を5mVと、偏差を2mVと算出する。さらに、実施例6として、筋電位抽出部14により抽出された3回分の最大筋電位(PP)が、1回目:6mV、2回目:5mV、3回目:1mVとした場合、投薬基準判定部15は、最大値を6mVと、中央値を5mVとし、最小値を1mVと、平均値を4mVと、偏差を5mVと算出する。また、実施例7として、筋電位抽出部14により抽出された3回分の最大筋電位(PP)が、1回目:10mV、2回目:5mV、3回目:4mVとした場合、投薬基準判定部15は、最大値を10mVと、中央値を5mVと、最小値を4mVと、平均値を6.3mVと、偏差を5mVと算出する。
次に、投薬基準判定部15は、最大筋電位抽出部14により抽出された複数の最大筋電位(PP)の内、最大値が平均値に1.5を乗算した値以上であるか否かを判定する(ステップS402)。そして、投薬基準判定部15は、最大値が平均値に1.5を乗算した値以上であれば、平均値に1.5を乗算した値以上と判定した最大値を除いた、中央値、最小値、及び平均値から再平均値を算出する。(ステップS403)。
実施例5では、最大値(6mV)は、平均値(5mV)に1.5を乗算した値(7.5mV)以下であるから、最大値(6mV)は外れ値でないと判定される。また、実施例6では、最大値(6mV)は、平均値(4mV)に1.5を乗算した値(6mV)以下であるから、最大値(6mV)は外れ値でないと判定される。さらに、実施例7では、最大値(10mV)は、平均値(6.3mV)に1.5を乗算した値(9.45mV)以上であるから、最大値(10mV)を除いた、中央値(5mV)、最小値(4mV)、及び平均値(6.3mV)から再平均値を算出する。
さらに、投薬基準判定部15は、平均値に1.5を乗算した値以上と判定した最大値が、再平均値に1.75を乗算した値以上であるか否かを判定する(ステップS404)。そして、投薬基準判定部15は、平均値に1.5を乗算した値以上と判定した最大値が、再平均値に1.75を乗算した値以上であれば、最大値を再平均値の外れ値と判定する(ステップS405)。最大値、すなわち基準最大筋電位が、再平均値に1.75を乗算した値以上である場合、上述したアーチファクト不良である可能性が高いからである。
実施例5、6の最大値は、外れ値でないと判定されたことにより、再平均値は算出されない。一方、実施例7は、最大値(10mV)を除いた、中央値(5mV)、最小値(4mV)、及び平均値(6.3mV)から再平均値(5.1mV)が算出される。そして、実施例7は、最大値(10mV)が再平均値(5.1mV)に1.75を乗算した値以上であると判定され、最大値(10mV)は再平均値の外れ値であると判定される。
さらに、投薬基準判定部15は、最小値が平均値に0.5を乗算した値以下であるか否かを判定してもよい。そして、投薬基準判定部15は、最小値が平均値に0.5を乗算した値以下であれば、平均値に0.5を乗算した値以下と判定された最小値を除いた、最大値、中央値、及び平均値から再平均値を算出する。
実施例5では、最小値(4mV)は、平均値(5mV)に0.5を乗算した値(2.5mV)以上であるから、最小値(4mV)は外れ値でないと判定される。また、実施例6では、最小値(1mV)は、平均値(4mV)に0.5を乗算した値(2.5mV)以下であるから、最小値(1mV)を除いた、最大値(6mV)、中央値(5mV)、及び平均値(4mV)から再平均値を算出する。さらに、実施例7では、最小値(4mV)は、平均値(6.3mV)に0.5を乗算した値(3.15mV)以上であるから、最小値(4mV)は外れ値でないと判定される。
さらに、投薬基準判定部15は、平均値に0.5を乗算した値以下と判定された最小値が、再平均値に0.25を乗算した値以下であるか否かを判定する。そして、投薬基準判定部15は、平均値に0.5を乗算した値以下と判定された最小値が、再平均値に0.25を乗算した値以下であれば、最小値を再平均値の外れ値と判定する。最小値が、再平均値に0.25を乗算した値以下である場合、上述したコンプライアンス不良である可能性が高いからである。
実施例5、7の最小値は、外れ値でないと判定されたことにより、再平均値は算出されない。一方、実施例6は、最小値(1mV)を除いた、最大値(6mV)、中央値(5mV)、及び平均値(4mV)から再平均値(5mV)が算出される。そして、実施例6は、最小値(1mV)が再平均値(5mV)に0.25を乗算した値(1.25mV)以下であるから、最小値(1mV)は再平均値の外れ値であると判定される。
実施例5〜7において、実施例5の最大値、及び最小値は再平均値の外れ値でないと判定され、図3に示すフローチャートのステップS105の基準条件3を満たすと判定され、ステップS106に進む。一方、実施例6の最小値は再平均値の外れ値であると判定されたことにより、図3に示すフローチャートのステップS105の基準条件3を満たさないと判定され、ステップS107に進む。また、実施例7の最大値は再平均値の外れ値であると判定されたことにより、図3に示すフローチャートのステップS105の基準条件3を満たさないと判定され、ステップS107に進む。
また、所定の条件である基準条件1〜3のいずれか一つ、またそれらを適宜組み合わせてもよく、適宜変更可能である。
本発明の筋電位取得装置10は、複数回の筋電位を測定し、その偏差から母集団の妥当性を算出して咬筋力を推定しているため、筋のコンディションにより、同じ筋力が発揮されても筋電位が変動したとしても、算出した咬筋力の信頼性を担保することができる。
本発明の筋電位取得装置10は、咬筋の最大筋電位を積分処理しない最大筋電位を取得することにより、ボツリヌス療法患者の潜在的な咬筋力を正確に把握することができ、ボツリヌストキシン投与単位の適正量を決定することができる。
また、本発明の筋電位取得装置10は、咬筋の最大筋電位を正確に取得することができるため、ボツリヌス治療介入前後の抑制効果を判読することができる。さらに、適切なボツリヌス療法を行うことにより、歯ぎしり、肩こり、片頭痛、顎疲労等の治療介入効果や閉塞性睡眠時無呼吸の歯科的治療として、口腔内装置の破損を抑制することができ、閉塞性睡眠時無呼吸(OAS)治療の継続性を図ることができる。また、睡眠時のブラキシズムの改善により、睡眠の質や健康QOL(クオリティオブライフ)の向上を図ることができる。
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを包含する。
上述した本実施形態では、ボツリヌス療法患者に対し、ボツリヌストキシン投与単位の基準と判定された咀嚼筋の最大筋電位が、表示部17に表示される構成であるが、ボツリヌス療法患者に対し、ボツリヌス療法の開始前と、所定期間経過後との咀嚼筋の最大筋電位を比較できるよう、図8に示すような表にして、表示させてもよい。
ボツリヌス療法患者毎に付与された患者識別番号に、基準最大筋電位を紐づけるとともに、基準最大筋電位の測定日情報を紐づけて、記憶部16に記憶させる構成とすることにより、図8に示すような表として、表示させることができる。また、ボツリヌス療法の開始前と、所定期間経過後との咀嚼筋の最大筋電位を容易に比較できるため、ボツリヌス療法患者のボツリヌス療法により、最大筋電位が減少していると共に、複数取得された筋電位の最大値から最小値までの偏差も減少していることを確認することができ、ボツリヌス療法による咬筋の抑制効果を容易に判別することができる。なお、図8中の「治療介入前」はボツリヌス療法の介入前を示し、「治療介入後」はボツリヌス療法の介入後3ヶ月経過後を示し、「経過観察」はボツリヌス療法の介入後1年経過後を示す。
上述した本実施形態では、ボツリヌス療法患者に対し、ボツリヌストキシン投与単位の基準となる咀嚼筋の最大筋電位を取得する構成について説明したが、咀嚼筋以外の他の筋活動の最大筋電位を取得し、ボツリヌストキシン投与単位の基準としてもよい。