JP2019105260A - プラント制御装置および発電プラント - Google Patents
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Abstract
【課題】過熱度に関する制約を考慮しつつ蒸気温度を適切に制御可能なプラント制御装置を提供する。【解決手段】一の実施形態によれば、プラント制御装置は、ガスタービンと、前記ガスタービンの排ガスから熱回収して第1蒸気を生成する排熱回収ボイラと、前記第1蒸気に冷却水を注入して第2蒸気を排出する減温装置と、前記第2蒸気を過熱して第3蒸気を排出する過熱器と、前記第3蒸気により駆動される蒸気タービンと、を備える発電プラントを制御する。前記装置は、前記第3蒸気の温度に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する第1制御量を算出する。前記装置はさらに、前記第2蒸気の過熱度または温度に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する第2制御量を算出する。前記装置はさらに、前記第1制御量と前記第2制御量の低い方に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する。【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、プラント制御装置および発電プラントに関する。
一般に、コンバインドサイクル型の発電プラントは、ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを備えている。ガスタービンは、燃焼器から供給されたガスにより駆動される。排熱回収ボイラは、ガスタービンから排出された排ガスの熱を利用して主蒸気を生成する。蒸気タービンは、排熱回収ボイラから供給された主蒸気により駆動される。
コンバインドサイクル型の発電プラントは、例えば次のように起動される。まず、ガスタービンの出力値(以下「GT出力値」と呼称する)を許容される出力値に保持して排熱回収ボイラを焚き上げ、主蒸気温度を上昇させる。
この際、GT出力値は、蒸気タービンの第1段内面のメタル温度(以下「メタル温度」と呼称する)に応じて調整され、具体的には、ガスタービンの排ガス温度が、メタル温度と同じか、メタル温度より少し高くなるように調整される。これにより、排熱回収ボイラからの主蒸気温度は、蒸気タービンの起動に適した温度となり、蒸気タービンに発生する熱応力を低減できる。
上記の発電プラントを起動する場合、発電プラントが長時間休止され、メタル温度が低温状態まで冷却された所謂コールド起動では、低温の主蒸気による蒸気タービンの起動が望ましい。従ってコールド起動では、排ガス温度が極力低い温度となるような小さいGT出力値で運転される。即ち、低温の主蒸気温度が、GT出力値の調整により実現される。
低温の主蒸気温度を実現するための別の手法として、排熱回収ボイラのなかに設置した減温装置を使用することが考えられる。そこで、蒸気に冷却水を注入する減温制御と、GT出力値の調整(排ガス温度の調整)とを組み合わせて、低温の主蒸気温度を実現することが考えられる。
このような減温制御を行わない場合、排ガス温度を低下させるためにGT出力値を小さくすると、主蒸気流量が低下してしまう。そこで、減温制御を導入すれば、主蒸気流量の低下を抑制しつつ、GT出力値を小さくして排ガス温度を低下させることができる。簡単に言えば、GT出力値の低減(排ガス温度の低下)をほどほどの水準で妥協することで、主蒸気流量の低下を抑制するものである。
一方、この減温制御は、以下のように別の目的にも使用可能である。
近年の技術動向によれば、最新型の商用ガスタービンは高性能化が強く指向されているため、ガスタービンは高い燃焼温度で運転される特性を保持するようになり、必然的に排ガスも高温化してきている。この高温化は、蒸気タービンの起動が開始(通気)されるガスタービンのパーシャル出力帯域(低負荷運転状態)にも及んでいる。そのため、蒸気タービンの通気に適した主蒸気温度を生成すべく、GT出力値を運転上許容できる最低の値まで低下させたとしても、排ガス温度が高すぎることが問題となる。具体的には、一般的な事業用コンバインドサイクル発電プラントのコールド起動において、蒸気タービンの通気に適した主蒸気温度は約300〜350℃である。これに対し、最新ガスタービンのモデルタイプによっては、許容できる最低出力運転の排ガス温度は500℃近傍がほぼ下限となり、それにより生成される蒸気も500℃近傍という高温となる。
減温装置による減温制御は、このような技術動向によりもたらされる高温の蒸気を冷却するために適用することが考えられる。この減温制御では例えば、コールド起動において500℃の蒸気に冷却水を注入して327℃に冷却するようなことが求められる。しかしこれは、約170℃の大幅な減温であり、大量の冷却水を蒸気に注入することになる。従来の減温制御ではせいぜい50℃程度の減温が要求されるのに対し、この例での減温制御ではその約3倍の減温を要求される。よって、この例での冷却水は多量となり、蒸気の過熱度が著しく低下することが問題となる。具体的には、極端に過熱度が低下した蒸気が減温装置の下流の熱交換器群に流入することで、蒸気中の水滴により熱交換器が損傷してしまう。別言すれば、過熱度の観点から注入できる冷却水には限度があり、許容される過熱度の範囲内で可能な低温の主蒸気を生成することが求められる。
そこで、本発明の実施形態は、過熱度に関する制約を考慮しつつ蒸気温度を適切に制御可能なプラント制御装置および発電プラントを提供することを課題とする。
一の実施形態によれば、プラント制御装置は、ガスタービンと、前記ガスタービンの排ガスから熱回収して第1蒸気を生成する排熱回収ボイラと、前記第1蒸気に冷却水を注入して第2蒸気を排出する減温装置と、前記第2蒸気を過熱して第3蒸気を排出する過熱器と、前記第3蒸気により駆動される蒸気タービンと、を備える発電プラントを制御する。前記装置は、前記第3蒸気の温度に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する第1制御量を算出する第1制御部を備える。前記装置はさらに、前記第2蒸気の過熱度または温度に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する第2制御量を算出する第2制御部を備える。前記装置はさらに、前記第1制御量と前記第2制御量の低い方に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する第3制御部を備える。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1から図6では、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(比較例)
図6は、比較例の発電プラント1とプラント制御装置2の構成を示す図である。本比較例の発電プラント1は、発電プラント1を制御するプラント制御装置2を備えている。本比較例の発電プラント1は、コンバインドサイクル型の発電プラントである。コンバインドサイクルの方式にはいくつかの種類あるが、ここではガスタービン12と蒸気タービン31が同軸に直結されていない別軸型を例にしている。
図6は、比較例の発電プラント1とプラント制御装置2の構成を示す図である。本比較例の発電プラント1は、発電プラント1を制御するプラント制御装置2を備えている。本比較例の発電プラント1は、コンバインドサイクル型の発電プラントである。コンバインドサイクルの方式にはいくつかの種類あるが、ここではガスタービン12と蒸気タービン31が同軸に直結されていない別軸型を例にしている。
第1から第3実施形態について説明する前に、本比較例の減温装置22による減温制御について説明する。そして、この説明を踏まえて、第1から第3実施形態の減温装置22による減温制御について説明することにする。
発電プラント1は、図6に示すように、圧縮機11と、ガスタービン12と、GT(ガスタービン)発電機13と、燃焼器14と、燃料調節弁15と、排熱回収ボイラ16と、給水ポンプ21と、減温装置22と、節炭器23と、ドラム24と、蒸発器25と、1次過熱器26と、2次過熱器27と、蒸気タービン31と、ST(蒸気タービン)発電機32と、加減弁33と、バイパス調節弁34と、復水器35と、循環水ポンプ36とを備えている。減温装置22は、減温調節弁22aと、減温器22bとを備えている。
また、プラント制御装置2は、図6に示すように、設定器41と、減算器42と、PID(Proportional-Integral-Derivative)コントローラ43と、関数発生器51と、減算器52と、設定器53と、比較器54と、切替器61と、設定器62とを備えている。
発電プラント1はさらに、温度センサTS1、TS2、TS3と、圧力センサPSとを備えている。
燃料調節弁15は、燃料配管に設けられている。燃料調節弁15を開くと、燃料配管から燃焼器14に燃料A1が供給される。一方、圧縮機11は、圧縮空気を燃焼器14に供給する。燃焼器14は、圧縮空気と共に燃料A1を燃焼させ、高温・高圧のガスを発生させる。ガスタービン12は、このガスにより回転駆動される。GT発電機13は、この回転を利用して発電を行う。ガスタービン12から排出された排ガスA2は、排熱回収ボイラ16に送られる。排熱回収ボイラ16は、後述するように、排ガスA2から熱回収して蒸気を生成する。
給水ポンプ21は、給水配管に水を送る。給水配管は、第1および第2配管に分岐している。第1配管は、減温装置22の減温器22bに接続されており、減温装置22の減温調節弁22aは第1配管に設けられている。第2配管は、節炭器23に接続されており、節炭器23により加熱された水はドラム24に送られる。減温調節弁22aを開くと、第1配管の水が、冷却水A3として減温器22bに供給される。減温器22bは、後述するように、排熱回収ボイラ16により生成された蒸気に冷却水A3を注入して、この蒸気を冷却する。
節炭器23、蒸発器25、1次過熱器26、および2次過熱器27は、排熱回収ボイラ16内に設けられており、排熱回収ボイラ16の一部を構成している。ドラム24内の水は、蒸発器25に送られ、蒸発器25内で排ガスA2により加熱されることで飽和蒸気となる。飽和蒸気は、1次過熱器26内で排ガスA2により過熱され、1次過熱蒸気A4として1次過熱器26から排出される。1次過熱蒸気A4は、減温器22b内で冷却水A3により冷却され、減温器出口蒸気A5として減温器22bから排出される。減温器出口蒸気A5は、2次過熱器27内で排ガスA2によりさらに過熱され、2次過熱蒸気A6として2次過熱器27から排出される。排熱回収ボイラ16は、この2次過熱蒸気A6を蒸気タービン31に排出する。以下、2次過熱蒸気A6を主蒸気A6と呼称する。
温度センサTS1は、減温器出口蒸気A5の温度を検出し、温度の検出結果をプラント制御装置2に出力する。圧力センサPS1は、減温器出口蒸気A5の圧力を検出し、圧力の検出結果をプラント制御装置2に出力する。温度センサTS2は、主蒸気A6の温度を検出し、温度の検出結果をプラント制御装置2に出力する。具体的には、温度センサTS2は、2次過熱器27から排出され、排熱回収ボイラ16の蒸気流出口の付近の主蒸気A6の温度を検出する。温度センサTS3は、蒸気タービン31の第1段動翼の内面付近に設置されており、蒸気タービン31の第1段内面のメタル温度を検出し、温度の検出結果をプラント制御装置2に出力する。
排熱回収ボイラ16により生成された主蒸気A6は、蒸気配管に排出される。蒸気配管は、主配管とバイパス配管とに分岐している。主配管は、蒸気タービン31に接続されており、バイパス配管は、復水器35に接続されている。加減弁33は、主配管に設けられている。バイパス調節弁34は、バイパス配管に設けられている。
加減弁33を開くと、主配管の主蒸気A6が蒸気タービン31に供給される。蒸気タービン31の起動工程において、加減弁33を開弁し蒸気タービン31に主蒸気A6を供給開始することを通気と呼ぶ。蒸気タービン31は、通気後に主蒸気A6の供給量を増しながら昇速および並列される。並列後、ST発電機32は、蒸気タービン31により駆動されて発電を行う。このように、主蒸気A6は、蒸気タービン31を駆動させるために使用される。蒸気タービン31から排出された排気蒸気A7は、復水器35に送られる。
一方、バイパス調節弁34を開くと、バイパス配管の主蒸気A6が蒸気タービン31をバイパスして復水器35に送られる。
循環水ポンプ36は、復水器35に循環水A8を供給する。循環水A8の例は、海水である。復水器35は、主蒸気A6と排気蒸気A7を循環水A8により冷却し、主蒸気A6と排気蒸気A7を水に戻す。循環水A8が海水である場合には、復水器35から排出された循環水A8は海に戻される。
図6は、排ガスA2の温度(以下「排ガス温度」と呼称する)が比較的低温の商用のガスタービン12を使用して構成されるコンバインドサイクル型の発電プラント1を示している。このような発電プラント1では、上述の理由とは別の技術的理由で減温装置22は使用されている。
発電プラント1を起動する工程において、ガスタービン12の出力は、初負荷から中間出力域を経て定格100%出力(ベース負荷)に到達するが、そのとき中間出力域での排ガスA2の温度は、ベース負荷運転時の排ガスA2の温度よりも高くなる。そのため、中間出力域での主蒸気A6の温度も、ベース負荷運転時の主蒸気A6の温度よりも高くなるのが一般的である。そして、本比較例の減温装置22は、この中間出力域で主蒸気A6を冷却するために設置されている。
この発電プラント1に減温装置22を設置しない場合、排熱回収ボイラ16は、中間出力域に備えて高温の主蒸気A6に耐え得る高価な素材で製造する必要がある。しかしこれは、経済性の面で得策ではない。なぜなら中間出力域は、発電プラント1の起動工程における一過性の通過帯域であり、発電プラント1の商用運転のほとんどはベース負荷またはその近傍で行われるからである。このことを考慮すると、排熱回収ボイラ16を一過性の通過帯域のために高コスト化することは、そのコストパフォーマンス(費用対効果)に照らして経済的とは言えない。
これを具体的な数値で説明すると、一般的な商用のガスタービン12において最も排ガス温度が高くなる中間出力域では、排ガスA2の温度は630℃程度である。この排ガスA2から生成される主蒸気A6の温度は、冷却水A3を注入しない場合、620℃から630℃の近傍となる。このような温度は、2次過熱器27や不図示の再熱器にとって許容されない高温である。
そこで、本比較例の発電プラント1は、減温装置22により冷却水A3を注入して主蒸気A6を例えば570℃以下に冷却する。こうすることで、通過帯域での熱効率(性能)は低下するものの、630℃の耐熱性は必要なくなり、570℃の耐熱性で十分となる。そのため、排熱回収ボイラ16の製造コストを圧縮でき、経済的に合理的である。
(1)本比較例のPID減温制御
以下、本比較例のプラント制御装置2による減温制御について説明する。
以下、本比較例のプラント制御装置2による減温制御について説明する。
設定器41は、主蒸気A6の温度(以下「主蒸気温度」と呼称する)の設定値として、570℃を保持している。この570℃は、前述の通り、排熱回収ボイラ16の耐熱性から定められた目標温度である。減算器42は、プロセス値B2として、温度センサTS2から主蒸気温度の測定値を取得する。そして、減算器42は、主蒸気温度の設定値(SV値)B1とプロセス値(PV値)B2との偏差B3を出力する(偏差B3=PV値B2−SV値B1)。
PIDコントローラ43は、主蒸気温度の制御用に設けられており、減算器42から偏差B3を取得し、偏差B3をゼロに近づけるためのPID制御を行う。PIDコントローラ43から出力される操作量(MV値)B4は、後述する減温器出口過熱度C4が30℃以上のときは、減温調節弁22aの開度である。ここで、蒸気の過熱度とは、蒸気の温度と飽和温度との差である(過熱度[℃]=温度[℃]−飽和温度[℃])。主蒸気温度が570℃に達すると、減温器22bに冷却水A3が注入され、主蒸気温度は570℃に冷却される。
このPID減温制御では、減温装置22は、620℃から630℃に上昇しようとする主蒸気A6を570℃に冷却するだけであり、減温幅で言えば50℃〜60℃程度の冷却を行えばよいだけなので、減温装置22の負担は比較的軽い。換言すれば、一定の主蒸気流量(T/H)に注入される冷却水の量は少なく、減温器出口過熱度C4が2次過熱器27の運転に支障になるほど低下することはない。
しかし設備故障の場合、例えば温度センサTS2が故障して高温値(570℃以上)を誤計測したような場合では、多量の冷却水A3が注入される。そのため、減温器出口蒸気A5中の水滴が2次過熱器27に流入し、2次過熱器27を損傷する可能性がある。このような事態に備えて、本比較例のプラント制御装置2は、減温器出口過熱度C4が30℃以下に低下したことを検知して減温調節弁22aを強制的に全閉する過注入防止機能を備えている。
(2)本比較例の過注入防止機能
関数発生器51は、圧力センサPS1から減温器出口蒸気A5の圧力(以下「減温器出口圧力」と呼称する)C1を取得する。関数発生器51は、蒸気の圧力と飽和温度との関係を規定する蒸気表(steam table)を関数として内蔵している。よって、関数発生器51は、この関数に基づいて減温器出口圧力C1に対応する飽和温度C2を出力する。
関数発生器51は、圧力センサPS1から減温器出口蒸気A5の圧力(以下「減温器出口圧力」と呼称する)C1を取得する。関数発生器51は、蒸気の圧力と飽和温度との関係を規定する蒸気表(steam table)を関数として内蔵している。よって、関数発生器51は、この関数に基づいて減温器出口圧力C1に対応する飽和温度C2を出力する。
減算器52は、温度センサTS1から減温器出口温度C3(測定値)を取得し、関数発生器51から飽和温度C2(計算値)を取得する。そして、減算器52は、減温器出口温度C3から飽和温度C2を減算して、減温器出口蒸気A5の過熱度(以下「減温器出口過熱度」と呼称する)C4を出力する。
設定器53は、減温器出口過熱度C4の閾値として、30℃を保持している。比較器54は、減算器52から減温器出口過熱度C4を取得し、設定器53から閾値(30℃)を取得し、減温器出口過熱度C4と閾値とを比較する。そして、比較器54は、減温器出口過熱度C4が30℃以下のときにスイッチ信号C5をオンに設定する。一方、比較器54は、減温器出口過熱度C4が30℃以上のときにスイッチ信号C5をオフに設定する。このスイッチ信号C5は、冷却水A3の注入方法を切り替えるための信号である。
切替器61は、スイッチ信号C5に応じて動作する。切替器61は、スイッチ信号C5がオンになると、弁開度指令D1を設定器62が保持している0%に切り替える。また、切替器61は、スイッチ信号C5がオフになると、弁開度指令D1を操作量(MV値)B4に切り替える。このようにして、減温器出口過熱度C4が高く確保されているときは、PID減温制御による減温制御がなされるが、減温器出口過熱度C4が30℃以下に低下したときは、減温調節弁22aは0%開度になり、全閉操作がなされる。
この過注入防止機能は、上述のように、設備故障等に起因する異常な過熱度低下のときに2次過熱器27を保護する目的で備えられている。減温調節弁22aを全閉させるという果断な保護動作は、日常的かつ高頻度に行われるものではないということで許容されている。
このように、本比較例のプラント制御装置2は、減温装置22を備えており、減温制御を行っているが、蒸気タービン31の通気時に主蒸気A6を冷却する減温制御は行っていない。また、本比較例のプラント制御装置2は、減温器出口蒸気A5の過熱度を監視する過注入防止機能は備えているが、この過熱度に応じて減温調節弁22aをフィードバック制御することは行っていない。
なぜなら一般的な商用のガスタービン12では、発電プラント1の起動工程において排ガスA2の温度を低温(350℃〜380℃程度)にできるからである。この排ガスA2から生成される主蒸気A6は、コールド起動に適した充分な低温状態となり、通気時にあえて冷却水A3で主蒸気A6を冷却する必要はない。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の発電プラント1とプラント制御装置2の構成を示す図である。
図1は、第1実施形態の発電プラント1とプラント制御装置2の構成を示す図である。
図1のプラント制御装置2は、図6に示す構成要素に加え、設定器55と、減算器56と、第2PIDコントローラ57と、上限器58と、設定器59と、加算器60と、低値選択器63と、設定器71と、高値選択器72と、比較器73と、設定器74と、低値選択器75と、減算器76と、第1PIDコントローラ77と、上限器78と、設定器79と、加算器80とを備えている。第1PIDコントローラ77とこれに関連する構成要素は、第1制御部の例である。第2PIDコントローラ57とこれに関連する構成要素は、第2制御部の例である。切替器61、設定器62、低値選択器63等は、第3制御部の例である。
まず、本実施形態の発電プラント1について説明する。
上述のように、減温器22bは、冷却水A3と1次過熱蒸気A4とを混合する。その結果、冷却水A3が蒸発し、この過程で1次過熱蒸気A4から熱を奪うことにより1次過熱蒸気A4は冷却されて減温器出口蒸気A5となる。またこの際、冷却水A3の一部は蒸発せず、水滴のまま減温器22bから排出される可能性がある。2次過熱器27は、減温器出口蒸気A5をさらに過熱して、より蒸気タービン31の駆動エネルギーの高い主蒸気A6を生成する役割を負っている。2次過熱器27はさらに、減温器出口蒸気A5が水滴を含むときには、これを加熱して蒸発させて蒸気に変換して、蒸気タービン31に水滴が流入しないようにする役割も負っている。1次過熱蒸気A4、減温器出口蒸気A5、主蒸気A6はそれぞれ、第1蒸気、第2蒸気、第3蒸気の例である。
本実施形態の減温装置22は、減温器出口蒸気A5の過熱度が適切に保持できている場合には、冷却水A3の注入量を増加させることにより、主蒸気A6の温度を目標温度にすることができる。冷却水A3の注入量を過度に増加させると、減温器出口蒸気A5の過熱度が大きく低下するが、これは、減温器出口蒸気A5中に多量の水滴が残存し、この水滴が2次過熱器27に流入することを意味する。2次過熱器27内の熱交換チューブは蛇行しており、水滴から物理的に衝撃を受け易い弱い形状となっている。そのため、2次過熱器27に水滴が多量に流入すると、熱交換チューブが損傷されてしまう。
そこで、減温器出口蒸気A5の過熱度が低下しないように、注入する冷却水A3の流量を制限することが求められる。許容される過熱度の範囲(例えば40℃以上)で可能な限り、低温の主蒸気A6を生成することが望ましい。
排熱回収ボイラ16により生成された主蒸気A6は、蒸気タービン31を駆動させるために使用される。加減弁33を開くと、主蒸気A6が蒸気タービン31に供給される。バイパス調節弁34を開くと、主蒸気A6が蒸気タービン31をバイパスして復水器35に送られる。本実施形態のバイパス調節弁34は、ドラム24の圧力が7.0MPaになるように開弁される。
次に、本実施形態のプラント制御装置2について説明する。
プラント制御装置2は、温度センサTS3から蒸気タービン31の第1段内面のメタル温度(以下「メタル温度」と呼称する)E1を受信する。蒸気タービン31の通気に最も適した主蒸気A6の温度は、メタル温度E1と同じまたはその近傍の温度である。このような温度を有する主蒸気A6を使用することで、通気時に蒸気タービン31に発生する熱応力を低減することができる。
このことは、理想的には、通気を許可する主蒸気A6の許可温度と、減温制御が目標とする主蒸気A6の目標温度の双方を、メタル温度E1に設定すればいいことを示唆している。そこで、本実施形態の制御は、基本的にはこの考え方に則った方法を採用する。ただし、現実的な問題によりこの制御の修正が必要となることを以下に説明する。
(1)通気の許可温度
通気の許可温度をメタル温度E1に設定できるのは、メタル温度E1が比較的高温のホット起動やウォーム起動のときに限られ、コールド起動では設定できない。なぜならコールド起動では、発電プラント1は長時間休止されて残熱を保有しないので、メタル温度E1はタービングランド蒸気を供給されている状態で80℃程度の低温だからである。通気前の起動工程にプレウォーミングを実施するケースでも、メタル温度E1は160℃程度の低温である。このメタル温度E1と同程度の低温の主蒸気A6を使用する場合、蒸気タービン31の通気は不可能である。
通気の許可温度をメタル温度E1に設定できるのは、メタル温度E1が比較的高温のホット起動やウォーム起動のときに限られ、コールド起動では設定できない。なぜならコールド起動では、発電プラント1は長時間休止されて残熱を保有しないので、メタル温度E1はタービングランド蒸気を供給されている状態で80℃程度の低温だからである。通気前の起動工程にプレウォーミングを実施するケースでも、メタル温度E1は160℃程度の低温である。このメタル温度E1と同程度の低温の主蒸気A6を使用する場合、蒸気タービン31の通気は不可能である。
このようなコールド起動に配慮して、メタル温度E1の下限値(327℃)が設定器71に設定されている。高値選択器72は、メタル温度E1と327℃の高値を選択し、選択した温度を制限メタル温度E2として出力する。なお、設定器71に設定する327℃は、ドラム24の圧力が7.0MPaのときの飽和温度である287℃に、40℃を加算した値である。
そして比較器73は、温度センサTS2が計測した主蒸気A6の温度(以下「主蒸気温度」と呼称する)E3と、制限メタル温度E2とを比較する。比較器73は、主蒸気温度E3が制限メタル温度E2に等しくなるまで上昇した場合や、主蒸気温度E3が制限メタル温度E2より高くなった場合に、蒸気タービン31の通気許可条件(温度条件)としてスイッチ信号E4を成立させる。一般にその他通気許可条件(圧力条件や流量条件など)は温度条件よりも早く成立しているので、スイッチ信号E4の成立と同時に蒸気タービン31の通気は開始される。
(2)減温制御の目標温度
減温制御の目標温度をメタル温度に等しくする場合の問題について記載する。スイッチ信号E4の成立により、蒸気タービン31の通気は開始される。蒸気タービン31に発生する熱応力を考慮すれば、通気後も主蒸気温度E3を制限メタル温度E2と等しく保持することが、熱応力が最も小さく、蒸気タービン31にとって負担が少ない。
減温制御の目標温度をメタル温度に等しくする場合の問題について記載する。スイッチ信号E4の成立により、蒸気タービン31の通気は開始される。蒸気タービン31に発生する熱応力を考慮すれば、通気後も主蒸気温度E3を制限メタル温度E2と等しく保持することが、熱応力が最も小さく、蒸気タービン31にとって負担が少ない。
本実施形態と比較例との相違点の1つは、第1PIDコントローラ77による主蒸気温度制御が、主蒸気温度E3を制限メタル温度E2に近付くように調整することである。しかし、主蒸気温度E3を制限メタル温度E2に調整することが可能なのは、メタル温度が400℃より高いウォーム起動の場合である。一方、メタル温度が400℃より低いコールド起動の場合には、後述するように、主蒸気温度E3を制限メタル温度E2に調整することができない。そこで、本実施形態のプラント制御装置2は、過熱度の問題を回避できる範囲内で、主蒸気温度E3を制限メタル温度E2にできるだけ近づけるよう動作する。
(3)通気後のメタル温度
スイッチ信号E4の成立により蒸気タービン31の通気は開始されると、メタル温度センサTS3が計測対象とする第1段内面に主蒸気A6が流入する。メタル温度は主蒸気A6よる影響を受けて一般には上昇し、メタル温度が327℃以上になったときには、制限メタル温度E2も高値選択により変動する。
スイッチ信号E4の成立により蒸気タービン31の通気は開始されると、メタル温度センサTS3が計測対象とする第1段内面に主蒸気A6が流入する。メタル温度は主蒸気A6よる影響を受けて一般には上昇し、メタル温度が327℃以上になったときには、制限メタル温度E2も高値選択により変動する。
しかし蒸気タービン31内で温度上昇を示すのは第1段内面の表面部だけであり、部材の内部は通気前の低温を維持する。熱応力の観点からは、制限メタル温度E2は通気直前の値に維持することが望ましい。プラント制御装置2はこの値を格納して使用する回路を備えているが、その説明は省略する。
(4)排熱回収ボイラ16の耐熱性
設定器74は、設定値として620℃を保持している。この620℃という温度は、比較例の設定器41の570℃と同様に、排熱回収ボイラ16の耐熱性に基づき定められた目標温度である。ただし、最新の高温ガスタービン12と排熱回収ボイラ16との関係を考慮して、設定器74は570℃よりも高温の620℃を設定値として保持している。
設定器74は、設定値として620℃を保持している。この620℃という温度は、比較例の設定器41の570℃と同様に、排熱回収ボイラ16の耐熱性に基づき定められた目標温度である。ただし、最新の高温ガスタービン12と排熱回収ボイラ16との関係を考慮して、設定器74は570℃よりも高温の620℃を設定値として保持している。
低値選択器75は、制限メタル温度E2と620℃の低値を選択し、選択した温度を主蒸気温度の設定値(SV値)E5として出力する。よって、メタル温度に関わらず主蒸気温度E3が620℃に達したときは、第1PIDコントローラ77により減温器22bに冷却水A3が注入され、主蒸気温度は620℃以下に保たれる。これにより、比較例と同様に中間出力域の高温蒸気による排熱回収ボイラ16の損傷を防止することができる。
減算器76は、プロセス値として主蒸気温度E3を取得する。そして減算器76は、主蒸気温度設定値(SV値)E5と主蒸気温度(PV値)E3との偏差E6を出力する(偏差E6=PV値E3−SV値E5)。
第1PIDコントローラ77は、主蒸気温度の制御用に設けられており、減算器76から偏差E6を取得し、偏差E6をゼロに近づけるためのPID制御を行う。第1PIDコントローラ77から出力される第1操作量(#1MV値)E7は、E7が後述のC7より小さいときには、減温調節弁22aの開度である。第1操作量E7は、第1制御量の例である。第1PIDコントローラ77が第1操作量E7を変化させると、減圧調節弁22aの開度が変化し、冷却水A3の流量が変化する。その結果、主蒸気温度E3が設定値E5に近づくようにフィードバック制御がなされて、時間の経過と共に両者は一致する。
このように、第1PIDコントローラ77は、温度センサTS2により計測された主蒸気温度E3に基づいて、減温装置22により注入する冷却水A3の量を制御する第1操作量E7を算出する。第1操作量E7は、上限器(UL:upper limiter)78によりその上限値を制限された後、低値選択器63に入力される。
一方、関数発生器51は、比較例と同様に、圧力センサPS1から減温器出口蒸気A5の圧力(減温器出口圧力)C1を取得する。関数発生器51は、蒸気の圧力と飽和温度との関係を規定する蒸気表を関数として内蔵している。よって、関数発生器51は、この関数に基づいて減温器出口圧力C1に対応する飽和温度C2を出力する。
なお、関数発生器51は、減温器出口圧力C1以外の圧力から飽和温度C2を算出してもよい。このような圧力の例は、ドラム24の圧力や主蒸気A6の圧力である。これらの圧力と減温器出口圧力C1との間には、わずかな圧力損失による差があるが、これらの圧力からも十分な精度の飽和温度C2を算出可能である。
減算器52は、温度センサTS1から減温器出口温度C3(測定値)を取得し、関数発生器51から飽和温度C2(計算値)を取得する。そして、減算器52は、減温器出口温度C3から飽和温度C2を減算して、減温器出口蒸気A5の過熱度(減温器出口過熱度)C4を出力する。
設定器53は、減温器出口過熱度C4の閾値として30℃を保持している。この30℃という閾値は、2次過熱器27が許容する最小の過熱度である。比較器54は、減算器52から減温器出口過熱度C4を取得し、設定器53から閾値(30℃)を取得し、減温器出口過熱度C4と閾値とを比較する。そして、比較器54は、減温器出口過熱度C4が30℃以下のときにスイッチ信号C5をオンに設定する。一方、比較器54は、減温器出口過熱度C4が30℃以上のときにスイッチ信号C5をオフに設定する。このスイッチ信号C5は、冷却水A3の注入方法を切り替えるための信号である。
設定器55は、減温器出口過熱度C4用の設定値として40℃を保持している。この40℃という設定値は、過注入防止機能の閾値である30℃に一定のマージン(10℃)を持たせた値であり、過注入防止機能の閾値に依存する値となっている。
減算器56は、プロセス値として減温器出口過熱度C4を減算器52から取得する。そして、減算器56は、減温器出口過熱度C4(PV値)とその設定値(SV値)との偏差C6を出力する(偏差C6=PV値C4−SV値)。
第2PIDコントローラ57は、減温器出口過熱度C4の制御用に設けられており、減算器56から偏差C6を取得し、偏差C6をゼロに近づけるためのPID制御を行う。第2PIDコントローラ57から出力される第2操作量(#2MV値)C7は、C7が前述のE7より小さいときには、減温調節弁22aの開度である。第2操作量C7は、第2制御量の例である。第2PIDコントローラ57が第2操作量C7を変化させると、減圧調節弁22aの開度が変化し、冷却水A3の流量が変化する。その結果、減温器出口過熱度C4が設定値(40℃)に近づくようにフィードバック制御がなされて、時間の経過と共に両者は一致する。
このように、第2PIDコントローラ57は、温度センサTS1からの減温器出口温度C3を用いて算出された減温器出口過熱度C4に基づいて、減温装置22により注入する冷却水A3の量を制御する第2操作量C7を算出する。第2操作量C7は、上限器58によりその上限値を制限された後、低値選択器63に入力される。
低値選択器63は、上限器78から第1操作量(#1MV値)E7を取得し、上限器58から第2操作量(#2MV値)C7を取得する。そして、低値選択器63は、第1操作量E7と第2操作量C7のうち低い方を選択し、選択した方を弁操作量(MV値)D2として出力する。弁操作量(MV値)D2は、減温器出口過熱度C4が過注入防止機能の作動しない30℃以上のときには、減温調節弁22aの開度である。
主蒸気温度制御は、第1PIDコントローラ77からの第1操作量E7に基づいて行われ、過熱度制御は、第2PIDコントローラ57からの第2操作量C7に基づいて行われる。低値選択器63による低値選択は、主蒸気温度制御から過熱度制御への切替や、過熱度制御から主蒸気温度制御への切替を適切に行うためになされる。
上限器78、58は、第1操作量E7と第2操作量C7の偏差が大きい場合等に、これらの切替を円滑化する役割を担う。例えば、第1操作量E7が20%であり、第2操作量C7が100%であり、両者の偏差が80%と大きい場合を想定する。この場合、発電プラント1の状況が変動して、第2操作量C7が100%から20%未満に減少し、両者の大小関係が逆転すると、制御上の遅れを生じる。この遅れ時間の間に、減温器出口過熱度C4は40℃を下回り、過注入防止機能の閾値である30℃に近づいてゆく。
この対策として、設定器59は、余裕代の設定値として5%を保持しており、加算器60は、この5%と弁操作量D2とを加算する。上限器58は、加算器60からこの加算結果を取得して、第2操作量C7に上限を設定するように構成されている。E7=20%、C7=100%の例では、D2は20%になることから、上限器58は加算器60から25%(20%+5%)を取得して、C7は25%が上限値となるように制限される。
このように、第2PIDコントローラ57からの第2操作量C7が、第1PIDコントローラ77からの第1操作量E7(ここでは20%)よりも大きい場合には、第2PIDコントローラ57からの第2操作量C7は、上限器58により25%以下に制限され、制限された第2操作量C7が低値選択器63に入力される。第2PIDコントローラ57からの第2操作量C7が100%の場合には、上限器58により100%が25%に変更され、25%という値が上限器58から低値選択器63に入力される。設定器59の5%という設定値は、第1所定値の例である。
この対策により、低値選択器63に入力されるE7(20%)とC7(25%)の偏差は、5%以内に抑えられる。発電プラント1の状況が変動してC7が減少する場合、C7は100%ではなく25%から減少するため、C7は速やかに20%以下まで降下することができる。これにより、減温器出口過熱度C4が、制御の遅れにより過注入防止機能の閾値である30℃に近づいてゆくことを防止することができる。
この場合、第2操作量C7が例えば14%まで減少すると、加算器80は、設定器79の設定値「5%」と弁操作量D2「14%」とを加算する。上限器78は、加算器80からこの加算結果を取得して、第1操作量E7に上限を設定するように構成されている。上限器78は、加算器80から19%(14%+5%)を取得して、E7は19%が上限値となるように制限される。この19%という値が、上限器78から低値選択器63に入力される。設定器79の5%という設定値は、第2所定値の例である。第2所定値は、第1所定値と同じ値でも異なる値でもよい。
このように、上限器78、58は、E7とC7の大きい方を、E7とC7の小さい方と5%との和に追従させるように作用する。これにより、両者の大小関係が逆転したときに円滑な制御移行を実現することが可能となる。なお、E7とC7との差が5%未満の場合には、上限器78、58による上限制限は作用しないため、第1、第2PIDコントローラ77、57からのE7、C7がそのまま低値選択器63に入力される。
本実施形態のプラント制御装置2は、比較例と同様に、設備故障等に起因する過熱度低下に備えて過注入防止機能を備えている。この過注入防止機能のための制御と、弁操作量D2による制御との切替のために、本実施形態のプラント制御装置2も切替器61を備えている。切替器61は、スイッチ信号C5がオフのとき(減温器出口過熱度C4が30℃以上のとき)には、弁開度指令D1として弁操作量(MV値)D2を出力する。一方、切替器61は、スイッチ信号C5がオンのとき(減温器出口過熱度C4が30℃以下)のときには、弁開度指令D1として設定器62が保持する0%を出力する。減温調節弁22aは、弁開度指令D1に応じて開閉する。
(5)コールド起動による蒸気タービン31の通気
図4は、第1実施形態のコールド起動におけるプラント制御方法を説明するためのグラフである。
図4は、第1実施形態のコールド起動におけるプラント制御方法を説明するためのグラフである。
以下、発電プラント1が長時間休止され、蒸気タービン31の第1段内面のメタル温度E1が低温状態まで冷却されたコールド起動について説明する。説明の便宜上、コールド起動のメタル温度E1は80℃とする。
発電プラント1の起動では、最初にガスタービン12を起動して、ガスタービン12の出力値(GT出力値)を許容される出力値まで上昇させる。ガスタービン12より排出された排ガスA2は、排熱回収ボイラ16に送られて主蒸気A6を生成する。ここに言う許容される出力値は、蒸気タービン31の通気前なので一般に比較的小さい出力値であり、例えばガスタービン負荷の10%から20%程度の部分負荷である。
この起動初期に生成される主蒸気A6は、その圧力、流量、温度が蒸気タービン31の通気を行うのに十分な許容値に達しないために、バイパス調節弁34を開弁させて復水器35に棄てられる。この起動工程は、排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧と呼ばれる。本実施形態では、バイパス調節弁34は、ドラム24の圧力が7.0MPaになるように開弁され制御される。ただし、このための回路の図示は省略する。
排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧を継続しながら、主蒸気A6の圧力、流量、温度は増加していく。これらのうち、圧力と流量は、比較的速やかに増加して通気許可条件に到達する。一方、主蒸気A6の温度上昇は緩慢であり、通気許可条件(コールド起動では327℃)に到達するのに時間を要する。
本実施形態のガスタービン12は、最新型の商用ガスタービンであり、その出力値が10〜20%と小さくても、排ガスA2の温度は高温特性を有する。この点は、本実施形態のガスタービン12は、従来型のガスタービンよりも主蒸気A6の温度上昇の面で有利である。
本実施形態では、排熱回収ボイラ16の耐熱性に配慮し、最初は排ガスA2を620℃の高温状態を保持しながら排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧を行う(図4)。その後、主蒸気温度E3(主蒸気A6の温度)が通気許可条件の近傍値である307℃に到達したときに、GT出力値を、運転上許容できる最低の値(例えば5%の部分負荷)まで低下させて排ガスA2の温度を降下させる。その結果、排ガスA2の温度は500℃に向けて低下し始める(図4)。
この理由は、排ガスA2の温度を620℃に設定し続けた場合には、高温すぎる主蒸気A6が生成されてしまうためであり、これを回避するためにGT出力値を低下させる。そして、ガスタービン12がその種の運転を許容する型式モデルである場合には、このときに併せてガスタービン12の入口案内翼の開度を増加させることで、排ガスA2の温度をさらに降下させる。
最新の商用ガスタービンは高い排ガス温度特性を有するため、許容できる最低出力運転を行い、かつ入口案内翼を開けて排ガスA2の温度を低下させたとしても、排ガスA2の温度は例えば500℃まで低減することが限界となる。主蒸気温度E3が307℃から327℃に上昇すると、蒸気タービン31の通気許可条件が成立して通気が開始される(図4)。
ここで、500℃の排ガスA2が、通気後も主蒸気温度E3を327℃より高温に上昇させ続けることを回避する必要がある。主蒸気温度E3の上昇を回避しないと、最終的に主蒸気温度E3は排ガスA2の温度に近接し、500℃という高温になってしまう。この場合、蒸気タービン31に発生する熱応力が大きくなる問題が生じてしまう。
そこで、本実施形態では、主蒸気温度E3の上昇に伴い、1次過熱蒸気A4に冷却水A3を注入する減温制御を開始し、主蒸気A6を冷却する。以下、この減温制御の詳細を説明する。
(6)コールド起動の通気時における減温制御
排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧および蒸気タービン31の通気の工程において、第1操作量E7と第2操作量C7の作用を図1および図4を参照して説明する。図4中の符号ΔTは、減温器出口温度C3と主蒸気温度E3との温度差を表す。
排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧および蒸気タービン31の通気の工程において、第1操作量E7と第2操作量C7の作用を図1および図4を参照して説明する。図4中の符号ΔTは、減温器出口温度C3と主蒸気温度E3との温度差を表す。
主蒸気温度E3=減温器出口温度C3+ΔT ・・・ 式1
温度差ΔT[℃]は、2次過熱器27が減温器出口蒸気A5を加熱する温度であり、具体的には、排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧時には40〜80℃程度である。しかしその値は、発電プラント1の起動時の様々な運転条件に依存するため、その値を特定することは難しい。温度差ΔTは例えば、排ガスA2の温度や流量、2次過熱器27のチューブメタル温度、ドラム24の圧力、主蒸気A6の温度や流量等に依存する。また、温度差ΔTは、コールド起動の時間的経過に伴い大きくなっていくのが一般的である。
温度差ΔT[℃]は、2次過熱器27が減温器出口蒸気A5を加熱する温度であり、具体的には、排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧時には40〜80℃程度である。しかしその値は、発電プラント1の起動時の様々な運転条件に依存するため、その値を特定することは難しい。温度差ΔTは例えば、排ガスA2の温度や流量、2次過熱器27のチューブメタル温度、ドラム24の圧力、主蒸気A6の温度や流量等に依存する。また、温度差ΔTは、コールド起動の時間的経過に伴い大きくなっていくのが一般的である。
なお、コールド起動のメタル温度E1は80℃なので、低値選択器75から出力される設定値E5は、設定器71に設定された327℃になる(図4)。
i)減温器出口温度C3<327℃−ΔT
排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧の初期において、減温器出口温度C3が327℃−ΔTよりも低い場合について説明する。ただし、ドラム24はすでに昇圧されており、バイパス調節弁34はドラム24を7.0MPaに維持するように開弁され制御されている。よって、圧力センサPS1が計測する減温器出口圧力C1は7.0MPaであり、関数発生器51が出力する飽和温度C2は287℃(正確には286.8℃)である。
排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧の初期において、減温器出口温度C3が327℃−ΔTよりも低い場合について説明する。ただし、ドラム24はすでに昇圧されており、バイパス調節弁34はドラム24を7.0MPaに維持するように開弁され制御されている。よって、圧力センサPS1が計測する減温器出口圧力C1は7.0MPaであり、関数発生器51が出力する飽和温度C2は287℃(正確には286.8℃)である。
そのため、温度センサTS1が計測する減温器出口温度C3が327℃(287℃+40℃)に到達するまでは、減温器出口過熱度C4は40℃より小さい値なので、偏差C6の極性はマイナスである。よって、第2PIDコントローラ57からの第2操作量C7は下限値の0%である。
低値選択器63は、第1操作量E7と第2操作量C7の低値を選択する。この際、C7が0%であるため、E7の値にかかわらず弁操作量D2は0%となり、減温調節弁22aは全閉状態となる。
また、i)の期間中に主蒸気温度E3は307℃に到達し、排ガスA2の温度はそれまでの620℃から500℃に低減され、次に行われる通気に備えることになる。
ii)減温器出口温度C3≧327℃−ΔT
その後、減温器出口温度C3が上昇して327℃−ΔTに到達したとき、主蒸気温度E3は327℃となる(式1を参照)。これにより、蒸気タービン31の通気許可条件が成立して通気が開始される(図4)。ただし、圧力や流量などのその他の通気許可条件はすでに成立済みとする。
その後、減温器出口温度C3が上昇して327℃−ΔTに到達したとき、主蒸気温度E3は327℃となる(式1を参照)。これにより、蒸気タービン31の通気許可条件が成立して通気が開始される(図4)。ただし、圧力や流量などのその他の通気許可条件はすでに成立済みとする。
そのとき、第1操作量E7に関しては、主蒸気温度E3が327℃であり、その設定値E5も327℃であるから、偏差E6はゼロである。そして、C3が327℃−ΔTより高温に上昇したとき、偏差E6の極性はプラスに転じ、第1操作量E7は下限値の0%より大きくなる。
しかし、第2操作量C7は依然として0%である。従って、低値選択器63は、第1操作量E7の値にかかわらず第2操作量C7を選択し、弁操作量D2は0%となる。そのため、減温調節弁22aは全閉状態となり、冷却水A3は注入されない。また、低値選択器63は、上限器78の作用により、第1操作量E7の値として、弁操作量D2「0%」と設定値「5%」との和である5%を受け取る。
その後、減温器出口温度C3が327℃に上昇するまで、減温調節弁22aは全閉状態であり、冷却水A3は注入されない。蒸気タービン31の通気は、主蒸気温度E3が327℃になると開始され、主蒸気温度E3が327℃より高温の主蒸気A6が蒸気タービン31に供給されることになる。
iii)減温器出口温度C3=327℃
その後、減温器出口温度C3が上昇して327℃に到達したとき、前述のとおり減温器出口過熱度C4は40℃となり、偏差C6はゼロとなる。そして、減温器出口温度C3が327℃より高温に上昇したとき、偏差C6の極性はプラスに転じ、第2操作量C7は下限値の0%より大きくなる。
その後、減温器出口温度C3が上昇して327℃に到達したとき、前述のとおり減温器出口過熱度C4は40℃となり、偏差C6はゼロとなる。そして、減温器出口温度C3が327℃より高温に上昇したとき、偏差C6の極性はプラスに転じ、第2操作量C7は下限値の0%より大きくなる。
その結果、弁操作量D2も0%より大きくなり、減温調節弁22aは開弁され、減温器出口過熱度C4を40℃に維持するように冷却水A3が注入される(図4)。減温器出口過熱度C4を40℃に維持するということは、減温器出口の圧力が7.0MPaである場合において、減温器出口温度C3を327℃に維持することを意味する。
この挙動をミクロ的な視点で観察すると、減温器出口温度C3が327℃から微小に温度上昇すると、第2操作量C7が増加して冷却水A3が増量され、減温器出口温度C3は327℃に戻る。なお、減温器出口温度が温度上昇する要因には、1次過熱器26のチューブメタル温度が高温化して1次過熱蒸気A4が高温化することなどがある。ここで、偏差C6はゼロとなるが、減温器出口温度C3が上昇して戻るというミクロ的な作用を繰り返すことで、弁操作量D2は次第に増加する。そして、冷却水A3の注入量が増加しながら、減温器出口温度C3は327℃一定に維持され、減温器出口過熱度C4は40℃に保持される(図4)。
この状態下における主蒸気温度E3と第1操作量E7の挙動を以下に説明する。
式1の関係より、主蒸気温度E3=327℃(C3)+ΔTが成り立つ。ΔTの値が一定であれば主蒸気温度E3は一定であるが、2次過熱器27のチューブメタル温度は次第に高温となり、主蒸気A6はより加熱されやすくなる。そのため、第2操作量C7の増加に伴う冷却水A3の増加はあるものの、ΔTは時間の経過と共に増大していく。
最終的にチューブメタル温度や冷却水量の変動は収まり、ΔTの増大も収束する。この状態のΔTをΔT’で表すと、以下の式2が成り立つ。
主蒸気温度E3=327℃+ΔT’ ・・・ 式2
なおΔT’は一般的に、40℃から80℃程度と見込まれるが、発電プラント1の運転条件で様々に変動する。
なおΔT’は一般的に、40℃から80℃程度と見込まれるが、発電プラント1の運転条件で様々に変動する。
また、主蒸気温度の設定値E5は327℃であるのに対し、主蒸気温度E3は327℃+ΔT’であるから、偏差E6はΔT’(プラス)である。よって、第1PIDコントローラ77から出力される第1操作量E7は増加しようとする挙動となり、低値選択器63が受け取る第2操作量E7は、上限器78の作用により、第2操作量C7に5%を上乗せした値に保持される。よって、コールド起動では、常にE7>C7の関係が成立し、後述するウォーム起動のようにE7>C7とE7<C7とが逆転するような事象は発生しない。
(7)コールド起動における本実施形態の効果
もし冷却水A3を注入しない通気方法を採用するならば、通気時に327℃であった主蒸気温度E3は時間経過と共に上昇して、最終的には排ガスA2の温度に近接して最高で500℃近傍の高温になる。
もし冷却水A3を注入しない通気方法を採用するならば、通気時に327℃であった主蒸気温度E3は時間経過と共に上昇して、最終的には排ガスA2の温度に近接して最高で500℃近傍の高温になる。
一方、本実施形態によれば、主蒸気温度E3は327℃から上昇するものの、最終的な状態で327℃+ΔT’(ΔT’は40℃〜80℃)の比較的低温に維持される。これは、許容される過熱度(40℃以上)の範囲内で蒸気タービン31の通気に適した低い主蒸気温度E3を得るという制御が実現されていることを意味する。
(8)ウォーム起動による蒸気タービン31の通気
図5は、第1実施形態のウォーム起動におけるプラント制御方法を説明するためのグラフである。
図5は、第1実施形態のウォーム起動におけるプラント制御方法を説明するためのグラフである。
以下、発電プラント1が停止された後、概ね48時間以内に再び発電プラント1を起動するウォーム起動について説明する。説明の便宜上、ウォーム起動のメタル温度E1は残熱により400℃に保持されているとする。
発電プラント1の起動では、最初にガスタービン12を起動して、GT出力値を許容される出力値まで上昇させる。ガスタービン12より排出された排ガスA2は、排熱回収ボイラ16に送られて主蒸気A6を生成する。ここに言う許容される出力は、蒸気タービン31の通気前なので一般に比較的小さい出力値であり、例えばガスタービン負荷の10%から20%程度の部分負荷である。
この起動初期に生成される主蒸気A6は、その圧力、流量、温度が蒸気タービン31の通気を行うのに十分な許容値に達しないために、バイパス調節弁34を開弁させて復水器35に棄てられる。この起動工程は、排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧と呼ばれる。本実施形態では、バイパス調節弁34は、ドラム24の圧力が7.0MPaになるように開弁され制御される。ただし、このための回路の図示は省略する。
排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧を継続しながら、主蒸気A6の圧力、流量、温度は増加していく。この様子は、コールド起動と同様である。
上述のように、設定器71には、コールド起動に配慮してメタル温度E1の下限値(327℃)が設定されている。高値選択器72は、メタル温度E1と327℃の高値を選択し、選択した温度を制限メタル温度E2として出力する。なお、設定器71に設定する327℃は、ドラム24の圧力が7.0MPaのときの飽和温度である287℃に、40℃を加算した値である。
本実施形態のウォーム起動において、制限メタル温度E2は400℃なので、蒸気タービン31の通気は主蒸気温度E3(主蒸気A6の温度)が400℃になったときに開始される。主蒸気温度E3を早く上昇させるために、最初は排ガスA2は620℃の高温を保持しながら排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧を行う。その後、主蒸気温度E3が通気許可条件の近傍値である380℃に到達したときに、GT出力値を、運転上許容できる最低の値(例えば5%程度の部分負荷)まで低下させて排ガスA2の温度を降下させる。その結果、排ガスA2の温度は500℃に向けて低下し始める(図5)。
この理由は、排ガスA2の温度を620℃に設定し続けた場合には、高温すぎる主蒸気A6が生成されてしまうためであり、これを回避するためにGT出力値を低下させる。
最新の商用ガスタービンは高い排ガス温度特性を有するため、許容できる最低出力運転を行い、かつ入口案内翼を開けて排ガスA2の温度を低下させたとしても、排ガスA2の温度は例えば500℃程度に低減することが限界となる。
500℃の排ガスA2により、主蒸気温度E3が380℃から400℃に上昇し、蒸気タービン31の通気許可条件が成立して通気が開始される(図5)。問題は、500℃の排ガスA2が通気後も主蒸気A6を加熱し続けると、主蒸気温度E3が400℃よりもさらに上昇し、最終的に主蒸気温度E3が排ガスA2の温度に近接して500℃近傍の高温になることである。これでは、蒸気タービン31に発生する熱応力が大きくなる問題が生じてしまう。
そこでウォーム起動においても、主蒸気温度E3の上昇に伴い1次過熱蒸気A4に冷却水A3を注入する減温制御を開始し、主蒸気A6を冷却する。しかしながら、その作用はコールド起動とは異なる。以下、この減温制御の詳細を説明する。
(9)ウォーム起動の通気時における減温制御
排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧および蒸気タービン31の通気の工程において、第1操作量E7と第2操作量C7の作用を図1および図5を参照して説明する。説明の便宜のため、減温器出口温度C3と主蒸気温度E3の関係(式1)をここに再掲する。符号ΔTは、減温器出口温度C3と主蒸気温度E3の温度差を表し、2次過熱器27が減温器出口蒸気A5を加熱する温度である。
排熱回収ボイラ16の昇温・昇圧および蒸気タービン31の通気の工程において、第1操作量E7と第2操作量C7の作用を図1および図5を参照して説明する。説明の便宜のため、減温器出口温度C3と主蒸気温度E3の関係(式1)をここに再掲する。符号ΔTは、減温器出口温度C3と主蒸気温度E3の温度差を表し、2次過熱器27が減温器出口蒸気A5を加熱する温度である。
主蒸気温度E3=減温器出口温度C3+ΔT ・・・ 式1
i)減温器出口温度C3<327℃−ΔT
コールド起動のi)と同じ理由で、弁操作量D2は0%であり、減温調節弁22aは全閉状態である(図5)。
i)減温器出口温度C3<327℃−ΔT
コールド起動のi)と同じ理由で、弁操作量D2は0%であり、減温調節弁22aは全閉状態である(図5)。
ii)減温器出口温度C3≧327℃−ΔT
その後、減温器出口温度C3が上昇して327℃−ΔTに到達したとき、主蒸気温度E3は327℃となる(式1を参照)。一方、低値選択器75から出力される設定値E5は、制限メタル温度E2の400℃であるから、偏差E6の極性はマイナスとなる。従って、第1PIDコントローラ77から出力される第1操作量E7は0%である。
その後、減温器出口温度C3が上昇して327℃−ΔTに到達したとき、主蒸気温度E3は327℃となる(式1を参照)。一方、低値選択器75から出力される設定値E5は、制限メタル温度E2の400℃であるから、偏差E6の極性はマイナスとなる。従って、第1PIDコントローラ77から出力される第1操作量E7は0%である。
よって、低値選択器63は、第1操作量E7と第2操作量C7の低値を選択する際に、第2操作量C7の値にかかわらず第1操作量E7を選択する。その結果、弁操作量D2は0%でとなり、減温調節弁22aは全閉状態となる。これが意味するところは、ウォーム起動の通気に好適な400℃に主蒸気温度E3が到達するまで、冷却水A3を注入する必要がないということである。
このii)の期間中に主蒸気温度E3は380℃に到達し、排ガスA2の温度は620℃から500℃に低減されて、次に行われる通気に備えることになる。
iii)減温器出口温度C3=327℃
その後、減温器出口温度C3が上昇して327℃に到達したとき、減温器出口過熱度C4は40℃となり偏差C6はゼロとなる(図5)。
その後、減温器出口温度C3が上昇して327℃に到達したとき、減温器出口過熱度C4は40℃となり偏差C6はゼロとなる(図5)。
iv)減温器出口温度C3>327℃
減温器出口温度C3が327℃から上昇すると、偏差C6の極性はプラスに転じ、第2操作量C7は0%よりも大きくなる。このとき、主蒸気温度E3は未だ400℃より低温なので、偏差E6の極性は依然としてマイナスである。
減温器出口温度C3が327℃から上昇すると、偏差C6の極性はプラスに転じ、第2操作量C7は0%よりも大きくなる。このとき、主蒸気温度E3は未だ400℃より低温なので、偏差E6の極性は依然としてマイナスである。
そのため、第1PIDコントローラ77から出力される第1操作量E7は0%であり、第2PIDコントローラ57から出力される第2操作量C7は0%よりも大きい。その結果、低値選択器63は、弁操作量D2として0%を出力し、減温調節弁22aは全閉状態となる。
また、低値選択器63は、上限器58の作用により、第2操作量C7の値として、弁操作量D2「0%」と設定値「5%」との和である5%を受け取る。
v)減温器出口温度C3=400℃−ΔT
その後、減温器出口温度C3が上昇して400℃−ΔTに到達したとき、主蒸気温度E3は400℃(式1を参照)となり、蒸気タービン31の通気許可条件が成立して通気が開始される(図5)。ただし、圧力や流量などのその他の通気許可条件はすでに成立済みとする。
その後、減温器出口温度C3が上昇して400℃−ΔTに到達したとき、主蒸気温度E3は400℃(式1を参照)となり、蒸気タービン31の通気許可条件が成立して通気が開始される(図5)。ただし、圧力や流量などのその他の通気許可条件はすでに成立済みとする。
そのとき、第1操作量E7に関しては、主蒸気温度E3が400℃であり、その設定値E5も400℃であるから、偏差E6はゼロである。そして、C3が327℃−ΔTより高温に上昇したとき、偏差E6の極性はプラスに転じ、第1操作量E7は下限値の0%より大きくなる。よって、弁操作量D2も0%より大きくなり、減温調節弁22aは開弁され、主蒸気温度E3を400℃に維持するように冷却水A3が注入される。これは、ウォーム起動の通気に好適な400℃の主蒸気温度E3を維持する制御が開始されたことを意味する。
これをミクロ的な視点で挙動を観察すると、主蒸気温度E3が400℃から微小に温度上昇すると、第1操作量E7が増加して冷却水A3が増量され、主蒸気温度E3は400℃に戻る。ここで、偏差E6はゼロとなるが、主蒸気温度E3が上昇して戻るというミクロ的な作用を繰り返すことで、冷却水A3は増加しながら主蒸気温度E3は400℃に維持される。
減温器出口温度C3が400℃−ΔTのときの減温器出口過熱度C4は40℃以上であり、偏差C6の極性は依然としてプラスである。よって、第2PIDコントローラ57からの第2操作量C7は増加しようとしており、上限器58の作用によりC7はE7+5%に保持されている。よって、低値選択器63ではE7<C7が成立し、低値選択器63は弁操作量D2としてE7を出力し、減温調節弁22aは開弁され続ける。しかし、冷却水A3の注入が増量される過程で、減温器出口温度C3は低下していく。以下、この減温器出口温度C3が低下する事象を、式1を使用して説明する。
式1より、主蒸気温度E3=減温器出口温度C3+ΔTが成立する。主蒸気温度E3は400℃に保持されるので、式1を変形すれば、以下の式3のようになる。
減温器出口温度C3=400℃−ΔT ・・・ 式3
このΔTは、時間経緯と共に増加していく。その第1の理由は、前述のように、2次過熱器27のチューブメタル温度が高温化して主蒸気A6がより加熱されやすくなるためである。加えて、その第2の理由は、時間経緯と共に主蒸気A6の流量が増えるので、主蒸気温度E3を400℃に維持しようとすると、それに必要な冷却水A3の量は増加し、減温器出口温度C3は低下するためである。主蒸気温度E3を400℃に維持しつつ減温器出口温度C3が低下することは、ΔTが大きくなることを意味する。この2つの原因により、ΔTが大きくなると式3により減温器出口温度C3が低下していく。この様子は図5に示されている。
このΔTは、時間経緯と共に増加していく。その第1の理由は、前述のように、2次過熱器27のチューブメタル温度が高温化して主蒸気A6がより加熱されやすくなるためである。加えて、その第2の理由は、時間経緯と共に主蒸気A6の流量が増えるので、主蒸気温度E3を400℃に維持しようとすると、それに必要な冷却水A3の量は増加し、減温器出口温度C3は低下するためである。主蒸気温度E3を400℃に維持しつつ減温器出口温度C3が低下することは、ΔTが大きくなることを意味する。この2つの原因により、ΔTが大きくなると式3により減温器出口温度C3が低下していく。この様子は図5に示されている。
vi)ΔT=73℃のとき
ΔTが73℃に増加したとき、式3により減温器出口温度C3は327℃となる。前述のとおり、減温器出口温度C3が327℃のときに、減温器出口過熱度C4は40℃である。これは、主蒸気温度E3を400℃に維持するための冷却水A3の注入量と、減温器出口加熱度C4を40℃に維持するための冷却水A3の注入量が、等量となる場合に該当する。
ΔTが73℃に増加したとき、式3により減温器出口温度C3は327℃となる。前述のとおり、減温器出口温度C3が327℃のときに、減温器出口過熱度C4は40℃である。これは、主蒸気温度E3を400℃に維持するための冷却水A3の注入量と、減温器出口加熱度C4を40℃に維持するための冷却水A3の注入量が、等量となる場合に該当する。
vii)ΔT=74℃のとき
ΔTがさらに73+ε[℃]、例えば74℃に増加した場合について説明する。ΔTが74℃なので、式3により減温器出口温度C3は326℃まで低下する。このとき、減温器出口過熱度C4は39℃に低下し、偏差C6の極性はマイナスに転じる。よって、第2PIDコントローラ57から出力される第2操作量C7は、低減を開始する。
ΔTがさらに73+ε[℃]、例えば74℃に増加した場合について説明する。ΔTが74℃なので、式3により減温器出口温度C3は326℃まで低下する。このとき、減温器出口過熱度C4は39℃に低下し、偏差C6の極性はマイナスに転じる。よって、第2PIDコントローラ57から出力される第2操作量C7は、低減を開始する。
viii)ΔT>74℃のとき
そして、減温器出口過熱度C4が40℃に上昇、復帰するためには、冷却水A3の注入量を減らす必要がある。そのため、第2PIDコントローラ57はC7が低値選択器63により選択されるまでC7を低減する制御を行うので、E7<C7からE7>C7への逆転が生じる。
そして、減温器出口過熱度C4が40℃に上昇、復帰するためには、冷却水A3の注入量を減らす必要がある。そのため、第2PIDコントローラ57はC7が低値選択器63により選択されるまでC7を低減する制御を行うので、E7<C7からE7>C7への逆転が生じる。
図5に示すように、実際にこの逆転が生じるタイミングは、上限器58が設置されているにもかかわらず、少し遅延する。減温器出口過熱度C4は39℃より若干の降下を示すが、逆転後は冷却水A3の注入量が減って40℃に復帰する。
このようにして、冷却水A3の注入量が減少すると主蒸気温度E3は400℃より高くなり、偏差E6の極性はプラスに転じ、第1PIDコントローラ77からの第1操作量E7は増加する。よって、E7>C7の関係が維持され、減温器出口過熱度C4を40℃に維持する制御が継続される。換言すれば、減温器出口圧力C1が7.0MPaであれば、減温器出口温度C3を327℃に保つ制御が継続される。
そして、最終的にはΔTの変動は収束する。最終的なΔTの値をΔT’で表せば、式1より主蒸気温度E3=減温器出口温度C3+ΔT’=327℃+ΔT’が成り立つ。このΔT’は、一般的に40℃から80℃程度と見込まれるが、発電プラント1の運転条件に応じて様々な値をとる。
なお、ΔT’が73℃に満たないケースでは、vi)とvii)とviii)は発生せず、主蒸気温度E3が400℃の状態が継続されることになる。
(10)ウォーム起動における本実施形態の効果
このウォーム起動においては、蒸気タービン31のメタル温度「400℃」に対して主蒸気温度E3が400℃という理想的な起動方法が実現されていることが指摘される。これは、第1PIDコントローラ77が主蒸気温度E3を制限メタル温度E2に保持するようにしたことの効果であり、本実施形態が比較例に優越する点の1つである。
このウォーム起動においては、蒸気タービン31のメタル温度「400℃」に対して主蒸気温度E3が400℃という理想的な起動方法が実現されていることが指摘される。これは、第1PIDコントローラ77が主蒸気温度E3を制限メタル温度E2に保持するようにしたことの効果であり、本実施形態が比較例に優越する点の1つである。
本実施形態がこのような温度制御を採用可能な理由は、本実施形態の発電プラント1で使用される商用のガスタービン12は排ガスA2をウォーム起動に適した低温(400℃近傍)にすることが可能であり、よって400℃程度の主蒸気温度E3を実現できるからである。一方、排ガスA2の温度と主蒸気温度E3との間に偏差を生じ、排ガスA2の温度をどのように制御しても主蒸気温度E3を精度よく400℃に維持することが難しいことから、このような温度制御の採用は従来難しかった。このような温度制御は理想的であるが、過熱度の問題がその採用を難しくしていた。
しかし、本実施形態によれば、この過熱度の問題を、第1操作量E7と第2操作量C7の低値選択を行うことで解決することができる。上記のviii)におけるE7とC7の逆転の作用が、この例に該当する。
上述のように、2次過熱器27による加熱温度ΔT(その最終値であるΔT’も含む)は、発電プラント1の運転条件や時間経過によって変動し、その取扱いに困難さがある。加熱温度ΔTは、過熱度の問題に大きく影響する数量である。本実施形態では、第1操作量E7と第2操作量C7の低値選択を行うことで、時間経過と共に変化していくΔTに応じて冷却水A3の注入量を適切に制御することができ、これにより過熱度の問題を解決することができる。
以上のように、本実施形態では、第1操作量E7と第2操作量C7とに基づいて、冷却水A3の注入量を制御する。よって、本実施形態によれば、過熱度に関する制約を考慮しつつ、主蒸気温度を適切に制御することが可能となる。
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態の発電プラント1とプラント制御装置2の構成を示す図である。
図2は、第2実施形態の発電プラント1とプラント制御装置2の構成を示す図である。
図2の発電プラント1は、図1に示す構成要素に加えて、温度センサTS4を備えている。また、図2のプラント制御装置2は、図1に示す構成要素に加えて、設定器81と、加算器82と、比較器83と、設定器84と、減算器85と、比較器86と、NOTゲート87と、ORゲート88と、変化率制限器89とを備えている。これらの構成要素は、切替器61、設定器62、低値選択器63と共に、第3制御部や第4制御部の例を構成している。
本実施形態では、建設敷地等の制約や特殊性により、蒸気タービン31と排熱回収ボイラ16が大きく離間して配置されている。よって、主蒸気A6を蒸気タービン31に送気する蒸気配管(蒸気配管から分岐した主配管も含む)が長くなっている。この場合、主蒸気A6は、排熱回収ボイラ16の出口(温度センサTS2を設置場所の近傍)では高温だが、送気される間に冷たい蒸気配管により冷やされて、蒸気タービン31の入口(加減弁33の設置場所の近傍)では上記出口に比べて低温になる。もし蒸気配管が短かければ、最初は蒸気配管が冷たくても、主蒸気A6が比較的短時間に蒸気配管を温めるため、主蒸気A6の温度減少量は短時間で縮小する。しかしながら、本実施形態の蒸気配管は長いため、熱容量が大きく温まりにくい。よって、本実施形態では、排熱回収ボイラ16の出口は比較的迅速に昇温して高温であるのに、蒸気タービン31の入口の蒸気は低温のままとなり、この状態が長時間継続することになる。
本実施形態の主蒸気A6による蒸気配管のウォーミングについて補足する。排熱回収ボイラ16に近い蒸気配管内の主蒸気A6は、比較的早く高温化する。通気前には、バイパス調節弁34が開弁されて主蒸気A6は復水器35に排出されるが、この主蒸気A6は、蒸気配管を暖めることで冷やされる。この際、主蒸気A6は、主配管とバイパス配管とに分岐する前の蒸気配管と、バイパス配管とを暖める。時間の経緯とともに蒸気配管は暖まり主蒸気A6の温度も上昇していくが、蒸気配管が長いため蒸気配管の温度上昇は緩慢である。
一方、主配管は、加減弁33に加えて、不図示のドレン弁(弁座前ドレン弁)を備えている。ドレン弁は復水器35に接続されており、主配管内の主蒸気A6の一部はドレン弁を通じて復水器35に送気される。従って、主配管内の主蒸気A6は、通気前にも加減弁33の前の主配管内で滞ることはない。主配管では、古い主蒸気A6が少しずつ復水器35に排出され、新しい主蒸気A6が蒸気配管の分岐点から少しずつ流入し、主配管を暖めていく。しかしながら、分岐点における主蒸気A6の温度上昇が緩慢なため、主配管内の主蒸気A6の温度上昇も緩慢である。
ここで、第1実施形態の蒸気タービン31の通気は、主配管内の主蒸気A6ではなく、蒸気配管の分岐点より上流の主蒸気A6が所定温度に達したときに開始される。よって、もし第1実施形態の制御をそのまま長い蒸気配管を有する本実施形態の発電プラント1に対して適用すると、蒸気タービン31の通気が遅れ、発電プラント1の起動時間が長期化してしまう。なぜなら、第1実施形態の制御では温度センサTS2が計測する主蒸気温度E3が昇温すると、未だ主配管内の主蒸気A6が低温にもかかわらず、冷却水A3の注入が開始されるからである。それ以後は、主蒸気A6が蒸気配管を暖める作用が減殺されてしまう。
そこで、本実施形態では、蒸気タービン31の通気遅れを解消または緩和するために、主配管内の主蒸気A6の温度が上昇してから冷却水A3を注入する。理由は、通気遅れの原因は主蒸気A6が蒸気配管により冷やされることにあるため、なるべく高温の主蒸気A6で蒸気配管を暖めることにある。これは、以下のような構成の発電プラント1により実現される。
本実施形態の温度センサTS4は、主配管に設けられており、具体的には、加減弁33より上流に設けられている。これにより、温度センサTS4は、蒸気タービン31の入口の主蒸気A6の温度、すなわち、主配管内の主蒸気A6の温度を計測することができる。温度センサTS4は、主配管内の主蒸気A6の温度の検出結果をプラント制御装置2に出力する。
次に、本実施形態のプラント制御装置2の詳細を説明する。
第1実施形態と同様に、メタル温度E1の下限値(327℃)が設定器71に設定されている。高値選択器72は、メタル温度E1と327℃の高値を選択し、選択した温度を制限メタル温度E2として出力する。
設定器81は、設定値として30℃を保持している。加算器82は、制限メタル温度E2に30℃を加算して、起動時目標温度E8を出力する。そして、低値選択器75は、起動時目標温度E8と620℃の低値を選択し、選択した温度を主蒸気温度の設定値(SV値)E5として出力する。
このように、本実施形態では、加算器82が制限メタル温度E2に30℃を加算するので、主蒸気温度の設定値E5が第1実施形態の場合より30℃だけ高温となる。これは、主配管内の主蒸気A6が分岐点前の主蒸気A6より温度低下することを見越して、分岐点前の主蒸気A6を目標温度よりも30℃だけ温度を高めに保つための措置である。
そして、第1実施形態と同様に、減算器76は、主蒸気温度E3とその設定値E5との偏差E6を出力し、第1PIDコントローラ77は、偏差E6に基づいて第1操作量E7を算出する。また、第2PIDコントローラ57は第2操作量C7を算出し、低値選択器63はE7とC7のうち低い方を選択し、選択した方を弁操作量D2として出力する。
設定器84は、設定値として20℃を保持する。減算器85は、制限メタル温度E2からこの20℃を減算して、制御開始温度F3を出力する。比較器86は、温度センサTS4が計測した主配管内の主蒸気A6の温度(以下「ST入口温度」と呼称する)F1を受信する。そして比較器86は、ST入口温度F1と制御開始温度F3とを比較し、ST入口温度F1が制御開始温度F3以上のときスイッチ信号F4をオンに設定する。ST入口温度F1が制御開始温度F3未満のときは、スイッチ信号F4はオフに設定される。制御開始温度F3は、第1閾値の例である。
NOTゲート87は、スイッチ信号F4のオン/オフを反転させたスイッチ信号F5を出力する。ORゲート88は、スイッチ信号F5とスイッチ信号C5の少なくともいずれかがオンのときに、スイッチ信号F6をオンに設定する。本実施形態でも、第1実施形態と同様にスイッチ信号C5による過注入防止機能が設けられている。
切替器61は、スイッチ信号F6に応じて動作する。切替器61は、スイッチ信号F6がオンになると、弁開度指令D1を設定器62が保持している0%に切り替える。また、切替器61は、スイッチ信号F6がオフになると、弁開度指令D1を弁操作量D2に切り替える。
変化率制限器89は、弁開度指令D1を取得して、変化率制限付の弁開度指令D3を出力する。変化率制限器89は、弁開度指令D1が0%から弁操作量D2に切替わった瞬間に、減温調節弁22aの開度が大きく変化することを防ぐために設けられている。
比較器83は、ST入口温度F1と制限メタル温度E2とを比較し、ST入口温度F1が制限メタル温度E2以上のときには、蒸気タービン31の通気許可条件としてスイッチ信号F2を成立させ、スイッチ信号F2をオンに設定する。一般に、圧力条件や流量条件等のその他通気許可条件は温度条件より早く成立しているので、スイッチ信号F2の成立と同時に蒸気タービン31の通気は開始される。制限メタル温度E2は、第2閾値の例である。
本実施形態の制御を上記のように実行することで、ST入口温度F1が制御開始温度F3に昇温する前には、過注入防止機能が動作した場合と同様に、減温調節弁22aが強制的に全閉され、冷却水A3は注入されない。減温調節弁22aが全閉されている間にも主蒸気A6は加熱され、メタル温度E1よりも遥かに高温となる。しかし、未だ蒸気タービン31の通気が開始されていないため、主蒸気A6が高温になっても何ら問題はない。むしろ、主蒸気A6が蒸気配管を効果的に暖め、ST入口温度F1を迅速に昇温させることができる。
このようにして、ST入口温度F1が制御開始温度F3に到達したときに、変化率制限付の弁開度指令D3は弁操作量D2に切り替わり、その後は第1実施形態と同様に冷却水A3が注入される。
そしてさらに、ST入口温度F1が昇温して制限メタル温度E2に到達したときに、蒸気タービン31の通気は開始される。上述の通り、制御開始温度F3と制限メタル温度E2との間にはF3=E2−20℃の関係が成り立つので、蒸気タービン31の通気が間もなく開始されるというタイミングで、冷却水A3の注入が開始される。通気開始に先立ち冷却水A3の注入が開始されることで、メタル温度より遥かに高温のST入口温度F1が蒸気タービン31の通気時に流入することを回避できる。
以上のように、本実施形態によれば、主蒸気A6を高温に加熱し、ST入口温度F1を迅速に昇温させることで、蒸気タービン31の通気遅れを解消または緩和することが可能となる。
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態の発電プラント1とプラント制御装置2の構成を示す図である。
図3は、第3実施形態の発電プラント1とプラント制御装置2の構成を示す図である。
図3のプラント制御装置2は、図1に示す構成要素に加え、加算器91を備えている。
第1実施形態の第2PIDコントローラ57は、減温器出口の過熱度を設定値(SV)とし、減温器出口の過熱度を制御している。一方、本実施形態の第2PIDコントローラ57は、減温器出口の温度を設定値(SV)とし、減温器出口の温度を制御している。これにより、本実施形態でも第1実施形態と同様の制御を実現することができる。
以下、第1実施形態と第3実施形態との関係を説明する。
第1実施形態の第2PIDコントローラ57に入力される偏差C6を、減温器出口過熱度C4と設定器55の40℃とを用いて表すと、式4のようになる。
C6=C4−40℃ ・・・ 式4
この減温器出口過熱度C4は、飽和温度C2と減温器出口温度C3を用いて、式5のように表される。
C4=C3−C2 ・・・ 式5
式5を式4に代入すると、式6が得られる。
C6=C3−C2−40℃ ・・・式6
式7を変形すると、式7が得られる。
C6=C3−(C2+40℃) ・・・式7
C6=C4−40℃ ・・・ 式4
この減温器出口過熱度C4は、飽和温度C2と減温器出口温度C3を用いて、式5のように表される。
C4=C3−C2 ・・・ 式5
式5を式4に代入すると、式6が得られる。
C6=C3−C2−40℃ ・・・式6
式7を変形すると、式7が得られる。
C6=C3−(C2+40℃) ・・・式7
第3実施形態の第2PIDコントローラ57は、この式7を実現するように構成されている。すなわち、設定器55には40℃が設定されており、加算器91は飽和温度C2と40℃を加算した加算値G1(SV値)を出力する。減算器56は、減温器出口温度C3から加算値G1を減算して偏差C6=C3−(C2+40℃)を出力する。
第2PIDコントローラ57は、この偏差C6を受信する。説明の便宜上、図3は、過注入防止機能に関する構成要素の図示を省略しているが、本実施形態の第2PIDコントローラ57よりも後段の構成要素による処理は、第1実施形態の場合と同様に実行することができる。
以上のように、本実施形態によれば、減温器出口の温度を設定値とするPID制御によって、第1実施形態と同様の制御を実現することが可能となる。なお、本実施形態の制御は、第2実施形態に適用することも可能である。
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置およびプラントは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置およびプラントの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
1:発電プラント、2:プラント制御装置、
11:圧縮機、12:ガスタービン、13:GT発電機、
14:燃焼器、15:燃料調節弁、16:排熱回収ボイラ、
21:給水ポンプ、22:減温装置、22a:減温調節弁、
22b:減温器、23:節炭器、24:ドラム、
25:蒸発器、26:1次過熱器、27:2次過熱器、
31:蒸気タービン、32:ST発電機、33:加減弁、
34:バイパス調節弁、35:復水器、36:循環水ポンプ、
41:設定器、42:減算器、43:PIDコントローラ、
51:関数発生器、52:減算器、53:設定器、54:比較器、
55:設定器、56:減算器、57:第2PIDコントローラ、
58:上限器、59:設定器、60:加算器、
61:切替器、62:設定器、63:低値選択器、
71:設定器、72:高値選択器、73:比較器、74:設定器、
75:低値選択器、76:減算器、77:第1PIDコントローラ、
78:上限器、79:設定器、80:加算器、
81:設定器、82:加算器、83:比較器、84:設定器、
85:減算器、86:比較器、87:NOTゲート、
88:ORゲート、89:変化率制限器、91:加算器
11:圧縮機、12:ガスタービン、13:GT発電機、
14:燃焼器、15:燃料調節弁、16:排熱回収ボイラ、
21:給水ポンプ、22:減温装置、22a:減温調節弁、
22b:減温器、23:節炭器、24:ドラム、
25:蒸発器、26:1次過熱器、27:2次過熱器、
31:蒸気タービン、32:ST発電機、33:加減弁、
34:バイパス調節弁、35:復水器、36:循環水ポンプ、
41:設定器、42:減算器、43:PIDコントローラ、
51:関数発生器、52:減算器、53:設定器、54:比較器、
55:設定器、56:減算器、57:第2PIDコントローラ、
58:上限器、59:設定器、60:加算器、
61:切替器、62:設定器、63:低値選択器、
71:設定器、72:高値選択器、73:比較器、74:設定器、
75:低値選択器、76:減算器、77:第1PIDコントローラ、
78:上限器、79:設定器、80:加算器、
81:設定器、82:加算器、83:比較器、84:設定器、
85:減算器、86:比較器、87:NOTゲート、
88:ORゲート、89:変化率制限器、91:加算器
Claims (12)
- ガスタービンと、
前記ガスタービンの排ガスから熱回収して第1蒸気を生成する排熱回収ボイラと、
前記第1蒸気に冷却水を注入して第2蒸気を排出する減温装置と、
前記第2蒸気を過熱して第3蒸気を排出する過熱器と、
前記第3蒸気により駆動される蒸気タービンと、
を備える発電プラントを制御するプラント制御装置であって、
前記第3蒸気の温度に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する第1制御量を算出する第1制御部と、
前記第2蒸気の過熱度または温度に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する第2制御量を算出する第2制御部と、
前記第1制御量と前記第2制御量の低い方に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する第3制御部と、
を備えるプラント制御装置。 - 前記第1制御量および前記第2制御量は、前記減温装置が前記第1蒸気に前記冷却水を注入する弁の開度である、請求項1に記載のプラント制御装置。
- 前記第1制御部は、前記第3蒸気の温度をフィードバック制御により調整するよう前記第1制御量を算出し、
前記第2制御部は、前記第2蒸気の過熱度または温度をフィードバック制御により調整するよう前記第2制御量を算出する、
請求項1または2に記載のプラント制御装置。 - 前記第2制御量が前記第1制御量より大きい場合に、前記第2制御量が前記第1制御量と第1所定値との和以下になるように前記第2制御量を制限する制限部を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のプラント制御装置。
- 前記第1制御量が前記第2制御量より大きい場合に、前記第1制御量が前記第2制御量と第2所定値との和以下になるように前記第1制御量を制限する制限部を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載のプラント制御装置。
- 前記第1制御部は、前記第3蒸気の温度を設定値に調整するように前記第1制御値を算出し、前記発電プラントはさらに、前記蒸気タービンのメタル温度を計測するメタル温度計測器を備え、前記設定値は、前記メタル温度に依存する値である、請求項1から5のいずれか1項に記載のプラント制御装置。
- 前記第2制御部は、前記第2蒸気の過熱度を設定値に調整するように前記第2制御値を算出し、前記設定値は、前記過熱器が許容する最小の過熱度に依存する値である、請求項1から5のいずれか1項に記載のプラント制御装置。
- 前記発電プラントはさらに、
前記第3蒸気の温度を計測する第1温度計測器と、
前記第2蒸気の温度を計測する第2温度計測器とを備え、
前記第1制御部は、前記第1温度計測器により計測された温度に基づいて、前記第1制御量を算出し、
前記第2制御部は、前記第2温度計測器により計測された温度に基づいて前記第2蒸気の過熱度を算出する算出部を備え、前記算出部により算出された過熱度に基づいて、前記第2制御量を算出する、
請求項1から7のいずれか1項に記載のプラント制御装置。 - 前記発電プラントはさらに、前記第3蒸気の温度を前記蒸気タービンの入口で計測する入口温度計測器を備え、
前記第3制御部は、前記入口温度計測器により計測された温度が第1閾値より低い場合には、前記減温装置により前記冷却水を注入せず、前記入口温度計測器により計測された温度が前記第1閾値より高い場合には、前記減温装置により前記冷却水を注入する、
請求項1から8のいずれか1項に記載のプラント制御装置。 - 前記入口温度計測器により計測された温度が第2閾値より高いときに前記蒸気タービンを起動する第4制御部をさらに備える、請求項9に記載のプラント制御装置。
- 前記発電プラントはさらに、
前記第2蒸気の温度を計測する温度計測器と、
前記第2蒸気の圧力を計測する圧力計測器と、
前記第2蒸気の圧力に基づいて、前記第2蒸気の飽和温度を算出する算出部とを備え、
前記第2制御部は、前記第2蒸気の温度を設定値に調整するように前記第2制御値を算出し、前記設定値は、前記第2蒸気の飽和温度に依存する値である、請求項1から5のいずれか1項に記載のプラント制御装置。 - ガスタービンと、
前記ガスタービンの排ガスから熱回収して第1蒸気を生成する排熱回収ボイラと、
前記第1蒸気に冷却水を注入して第2蒸気を排出する減温装置と、
前記第2蒸気を過熱して第3蒸気を排出する過熱器と、
前記第3蒸気により駆動される蒸気タービンと、
前記第3蒸気の温度に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する第1制御量を算出する第1制御部と、
前記第2蒸気の過熱度または温度に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する第2制御量を算出する第2制御部と、
前記第1制御量と前記第2制御量の低い方に基づいて、前記減温装置により注入する前記冷却水の量を制御する第3制御部と、
を備える発電プラント。
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JP2017239902A JP2019105260A (ja) | 2017-12-14 | 2017-12-14 | プラント制御装置および発電プラント |
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- 2017-12-14 JP JP2017239902A patent/JP2019105260A/ja active Pending
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