本発明は、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換することによって発電を行う発電素子に関する。
従来、特許文献1の図24に開示されているように、互いに直交するXYZ軸から成るXYZ三次元座標系におけるXY平面に平行に配置された第1の板状可撓体(151)及び第2の板状可撓体(156)と、第1の板状可撓体の基端部を支持する台座と、第1の板状可撓体の先端部及び第2の板状可撓体の基端部に接続された第1の重錘体と、第2の板状可撓体の先端部に接続された第2の重錘体と、第1及び第2の板状可撓体の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子とを備えた発電素子があった。第1の重錘体は、第1の板状可撓体及び台座によって片持ち梁構造に支持され、第2の重錘体は、第2の板状可撓体及び第1の重錘体によって片持ち梁構造に支持されている。圧電素子は、X、Y及びZの3軸方向の振動を受けて発電できるように、第1及び第2の板状可撓体の表面の複数の箇所に配置されている。
この発電素子には、第1の板状可撓体の可撓性に基づいて形成される第1の振動系(共振系)と第2の板状可撓体の可撓性に基づいて形成される第2の振動系(共振系)とが形成され、各振動系の共振周波数を近づけることによって、発電可能な周波数帯域を広くすることができる。
特許文献1の図24に示された発電素子は、上記のような優れた特徴を有しているが、さらに発電効率を向上させることが求められている。発電効率を向上させるためには、発電素子に振動が加わった時、板状可撓体がもっと大きく変形するようにすればよい。
その一方で、変形量が大きくなり過ぎると、板状可撓体にストレスが蓄積して破損しやすくなる。また、この種の発電素子は、外部から過大な衝撃が加わった時に重錘体の最大変位量を制限する保護用のストッパ部材を設けるのが一般的であり、例えば特許文献1の図24の発電素子では、枠体状の台座や第1の重錘体等がストッパ部材の働きをしている。しかしながら、通常の振動が加わった状態(通常の使用状態)で既に板状可撓体の変形量が大きいと、当然、重錘体も大きく変位しているため、保護用のストッパ部材は、重錘体からかなり離れた位置にしか設けることができず、衝撃を受けた時に適切に保護するのが難しくなる。したがって、振動が加わった時の板状可撓体の変形量は一定以下に抑えなければならない。
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、発電に寄与する板状可撓体の変形量を一定以下に抑えつつ、高効率発電及び広周波数帯域発電を容易に実現できる発電素子を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明は、XYZ三次元座標系におけるXY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体と、前記第1の板状可撓体の基端部を支持する台座と、前記第1の板状可撓体の先端部及び前記第2の板状可撓体の基端部に接続された第1の重錘体と、前記第2の板状可撓体の先端部に接続された第2の重錘体と、前記第1及び第2の板状可撓体の変形、又は前記第2の板状可撓体の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子とを備え、前記第1の重錘体は、中心軸がZ軸と平行な枠体状に形成され、その内側に前記第2の重錘体を収容し、外周部が前記第1の板状可撓体の先端部に接続され、前記第1の板状可撓体及び前記台座によって片持ち梁構造に支持され、前記第2の板状可撓体は、板状に形成された複数の第2梁部材により構成され、前記第2梁部材は、基端部が前記第1の重錘体の内周部の異なる位置に各々接続され、先端部が前記第2の重錘体の側端部の異なる位置に各々接続され、前記台座にZ軸方向の加速度が作用した時、前記第2の重錘体は、前記複数の第2梁部材が変形することによって、Z軸方向に移動する発電素子である。
この場合、前記第2梁部材は、自己の長さ方向の軸が、前記第2の重錘体の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように各々配置されていてもよい(請求項2記載の発明)。
請求項3記載の発明は、XYZ三次元座標系におけるXY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体と、前記第1の板状可撓体の基端部を支持する台座と、前記第1の板状可撓体の先端部及び前記第2の板状可撓体の基端部に接続された第1の重錘体と、前記第2の板状可撓体の先端部に接続された第2の重錘体と、前記第1及び第2の板状可撓体の変形又は前記第2の板状可撓体の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子とを備え、前記台座は、中心軸がZ軸と平行な枠体状に形成され、その内側に前記第1及び第2の重錘体を収容し、前記第1の板状可撓体は、板状に形成された複数の第1梁部材により構成され、前記第1梁部材は、基端部が前記台座の内周部の異なる位置に各々接続され、先端部が前記第1の重錘体の側端部の異なる位置に各々接続され、自己の長さ方向の軸が、前記第1の重錘体の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように各々配置され、前記台座にZ軸方向の加速度が作用した時、前記第1の重錘体は、前記複数の第1梁部材が変形することによって、Z軸方向に移動する発電素子である。
この場合、前記第1の重錘体は、中心軸がZ軸と平行な枠体状に形成され、その内側に前記第2の重錘体を収容し、外周部が前記第1の板状可撓体の先端部に接続され、前記第2の板状可撓体は、板状に形成された複数の第2梁部材により構成され、前記第2梁部材は、基端部が前記第1の重錘体の内周部の異なる位置に各々接続され、先端部が前記第2の重錘体の側端部の異なる位置に各々接続され、前記台座にZ軸方向の加速度が作用した時、前記第2の重錘体は、前記複数の第2梁部材が変形することによって、Z軸方向に移動する構成にすることができる(請求項4記載の発明)。また、前記第2梁部材は、自己の長さ方向の軸が、前記第2の重錘体のZ軸方向の中心軸と交差しないように各々配置されていてもよい(請求項5記載の発明)。
また、本発明は、XYZ三次元座標系におけるXY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体と、前記第1の板状可撓体の基端部を支持する台座と、前記第1の板状可撓体の先端部及び前記第2の板状可撓体の基端部に接続された第1の重錘体と、前記第2の板状可撓体の先端部に接続された第2の重錘体と、前記第1及び第2の板状可撓体の変形、又は前記第2の板状可撓体の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子とを備え、前記第1の板状可撓体は、互いに逆向きに屈曲したL字形に形成された2つの第1梁部材により構成され、前記第1梁部材は、基端部が前記台座の互いに近接した位置に各々接続され、先端部が前記第1の重錘体の側端部の互いに近接した位置に各々接続され、前記2つの第1梁部材で囲んだ内側に前記第2の重錘体を収容している発電素子である。
この場合、前記第2の板状可撓体は、互いに逆向きに屈曲したL字形に形成された2つの第2梁部材により構成され、前記第2梁部材は、基端部が前記第1の重錘体の互いに近接した位置に各々接続され、先端部が前記第2の重錘体の側端部の互いに近接した位置に各々接続され、前記2つの第2梁部材で囲んだ内側に前記第2の重錘体を収容している構成にすることができる(請求項7記載の発明)。
あるいは、前記第1の重錘体は、中心軸がZ軸と平行な枠体状に形成され、その内側に前記第2の重錘体を収容し、外周部が前記第1の板状可撓体の先端部に接続され、前記第2の板状可撓体は、板状に形成された複数の第2梁部材により構成され、前記第2梁部材は、基端部が前記第1の重錘体の内周部の異なる位置に各々接続され、先端部が前記第2の重錘体の側端部の異なる位置に各々接続され、前記台座にZ軸方向の加速度が作用した時、前記第2の重錘体は、前記複数の第2梁部材が変形することによってZ軸方向に移動する構成にしてもよい(請求項8記載の発明)。さらに、前記第2梁部材は、自己の長さ方向の軸が、前記第2の重錘体の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように各々配置されている構成にしてもよい。
また、上記の各請求項に記載された発明において、前記第2の板状可撓体及び前記第2の重錘体が複数組設けられている構成にすることができる(請求項10記載の発明)。この場合、前記第2の板状可撓体の可撓性に基づいて形成される振動系の半値幅の周波数帯は、その全部又は一部が、前記第1の板状可撓体の可撓性に基づいて形成される振動系の半値幅の周波数帯と重なっている構成にしてもよい(請求項11記載の発明)。
また、上記の各請求項に記載された発明において、圧電素子は、前記第2の前記板状可撓体の表面、又は前記第1及び第2の板状可撓体の表面に順に積層された下層電極、圧電材料、及び上層電極により形成され、前記圧電材料は、面内方向に伸縮する応力が作用したとき、厚み方向に分極を生じる性質を有している構成にすることが好ましく(請求項12記載の発明)、前記圧電素子が複数設けられ、前記各圧電素子に発生した電荷に基づいて流れる電流を整流し、これらを合成して電力と取り出す発電回路が設けられていることが好ましい(請求項13記載の発明)。
この場合、前記圧電素子の数と配置は、前記台座にZ軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力が前記発電回路から出力されるように設定することができる(請求項14記載の発明)。また、前記第1の重錘体の重心位置は、前記第1の板状可撓体に対してZ軸方向にずれており、前記第2の重錘体の重心位置は、前記第2の板状可撓体に対してZ軸方向にずれており、前記複数の圧電素子の数及び配置は、前記台座にX軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力が前記発電回路から出力されるように設定することができる(請求項15記載の発明)。また、前記第1の重錘体の重心位置は、前記第1の板状可撓体に対してZ軸方向にずれており、前記第2の重錘体の重心位置は、前記第2の板状可撓体に対してZ軸方向にずれており、前記複数の圧電素子の数及び配置は、前記台座にY軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力が前記発電回路から出力されるように設定することができる(請求項16記載の発明)。
本発明の発電素子は、複数の板状可撓体と重錘体とを組み合わせた独特な構造を有しているので、発電素子に振動が加わった時の板状可撓体の変形量を容易に調節することができる。したがって、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、外形も非常にコンパクトにできる。
また、本発明の発電素子は複数の振動系を有しているので、各振動系の共振周波数を相互に合わせることによって、発電効率を従来よりも格段に高くすることができる。また、各振動系の共振周波数を相互にずらすことによって、広周波数帯域発電も行うことができる。
本発明の発電素子の第一の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図1のA1−A1断面の図(a)、A2−A2断面の図(b)である。
第一の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
梁部材に支持された重錘体にZ軸方向の振動が加わった時に梁部材の表層部に発生する応力分布を示す概念図であって、片持ち梁構造の場合の図(a)、両持ち梁構造の場合の図(b)である。
第一の実施形態の発電素子が備える発電回路を示す回路図である。
第一の実施形態の発電素子が有する2つの振動系に設定された共振特性(Z軸方向)の一例を示すグラフ(a)、発電特性を示すグラフ(b)である。
第一の実施形態の発電素子が有する2つの振動系に設定された共振特性(Z軸方向)の他の例を示すグラフ(a)、発電特性を示すグラフ(b)である。
発電素子にZ軸方向の振動が加わった時の動作を示す模式図であって、第一の実施形態の発電素子における第1及び第2の板状可撓体の変位量を示す図(a)、従来の発電素子における第1及び第2の板状可撓体の変位量を示す図(b)である。
梁部材に支持された重錘体にX軸方向の振動が加わった時に梁部材の表層部に発生する応力分布を示す概念図であって、片持ち梁構造の場合の図(a)、両持ち梁構造の場合の図(b)である。
梁部材に支持された重錘体にY軸方向の振動が加わった時に梁部材の表層部に発生する応力分布を示す概念図であって、片持ち梁構造の場合の図(a)、両持ち梁構造の場合の図(b)である。
本発明の発電素子の第二の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図11のB1−B1断面の図(a)、B2−B2断面の図(b)である。
第二の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
第二の実施形態の発電素子が有する3つの振動系に設定された共振特性(Z軸方向)の一例を示すグラフ(a)、発電特性を示すグラフ(b)である。
第二の実施形態の発電素子が有する3つの振動系に設定された共振特性(Z軸方向)の他の例を示すグラフ(a)、発電特性を示すグラフ(b)である。
本発明の発電素子の第三の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図16のC1−C1断面の図(a)、C2−C2断面の図(b)である。
第三の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
本発明の発電素子の第四の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図19のD1−D1断面の図(a)、D2−D2断面の図(b)である。
第四の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
本発明の発電素子の第五の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図22のE1−E1断面の図(a)、E2−E2断面の図(b)である。
第五の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
本発明の発電素子の第六の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図25のE1−E1断面の図(a)、E2−E2断面の図(b)である。
第六の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
本発明の発電素子の第七の実施形態の外観を示す平面図である。
第七の実施形態の発電素子が有する4つの振動系に設定された共振特性(Z軸方向)の一例を示すグラフ(a)、発電特性を示すグラフ(b)である。
以下、本発明の発電素子の第一の実施形態について、図1〜図10に基づいて説明する。この実施形態の発電素子10は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、図1、図2に示すように、XY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体12,14と、第1の板状可撓体12の基端部を支持する台座16と、第1の板状可撓体12の先端部及び第2の板状可撓体14の基端部に接続された第1の重錘体18と、第2の板状可撓体14の先端部に接続された第2の重錘体20とを備えている。さらに第1及び第2の板状可撓体12,14の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子22と、発電回路24(図1、図2では省略してある)とを備えている。発電素子10を振動源に取り付けて使用する時は、例えば、台座16の下端部が振動源の上面(XY平面と平行な面)に固定される。
圧電素子22と発電回路24以外の部分は、いわゆるMEMS技術を使用して製造され、Si基板又はSOI基板等で成る第1基板K1及び第2基板K2を互いに貼り合わせ、研磨、エッチング、切断等の加工を行うことによって形成されている。
第1の板状可撓体12は、薄い第1基板K1の一部として形成され、1つの梁部材(第1梁部材)により構成されている。第1の板状可撓体12は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。
第2の板状可撓体14は、薄い第1基板K1により設けられ、2つの梁部材である第2梁部材14(1),14(2)により構成されている。第2梁部材14(1)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。第2梁部材14(2)は、基端部が第1の重錘体18の別の位置に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。
台座16は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。そして、台座16の内周部から第1の板状可撓体12が内向きに伸び、台座16の内側に第1及び第2の重錘体18,20が隙間を空けて収容されている。
第1の重錘体18は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。第1の重錘体18の重心位置は、第1の板状可撓体12に対してZ軸負方向にずれており、第1の重錘体18の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第1の重錘体18の外周部から第1の板状可撓体12が外向きに伸び、内周部から第2梁部材14(1),14(2)が内向きに伸び、第1の重錘体18の内側に第2の重錘体20が隙間を空けて収容されている。
第2の重錘体20は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、略四角形に形成されている。第2の重錘体20の重心位置は、第2の板状可撓体14に対してZ軸負方向にずれており、第2の重錘体20の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第2の重錘体20の外周部から第2梁部材14(1),14(2)が外向きに伸びている。
以上の構成により、第1の重錘体18は、第1の板状可撓体12及び台座16によって片持ち梁構造に支持される。また、第2の重錘体20は、第2の板状可撓体14(第2梁部材14(1),14(2))及び第1の重錘体18によって支持され、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、第1の重錘体18の第1基板K1表面をXY平面として、これに直交するZ軸方向に移動する。このとき、第2の重錘体20の第1基板K1表面は、第1の重錘体18の第1基板K1表面に対して平行に移動する。
なお、本願発明でのZ軸方向は、梁の支持平面である第1基板K1表面に対して直交する方向を言うものとする。従って、片持ち梁である第1の板状可撓体12の先端側に支持された第1の重錘体18は、第1の板状可撓体12の撓みにより、第1の重錘体18の第1基板K1表面がY軸回りのX軸方向に僅かに揺動し、第1の重錘体18の第1基板K1表面と直交するZ軸方向が僅かに変化するが、本願発明においては影響しないので、無視するものとする。また、第2の重錘体20の両端固定梁の支持構造を両持ち梁構造と称する。
圧電素子22は、図3(b)に示すように、第1基板K1の上面全体を覆う下部電極G、下部電極Gの上面全体を覆う圧電材料P、圧電材料Pの上面の特定の領域に設けた上部電極Eによって構成されている。圧電材料Pは、面内方向に伸縮する応力が作用したとき、厚み方向に分極を生じる性質を有し、上部電極Eが設けられた領域が圧電素子22として動作する。発電素子10の場合、第1及び第2の板状可撓体12,14の上面の5箇所に上部電極Eが配置され、合計5つの圧電素子22(1)〜22(5)が設けられている。
片持ち梁構造の場合、図4(a)の模式図に示すように、梁部材Hの先端部に取り付けられた重錘WにZ軸負方向の加速度が生じ力Fzが作用すると、梁部材Hが厚み方向に撓み、梁部材Hの表層のほぼ全ての領域(エリアAR1)に縮み方向の応力が発生する。反対に、重錘体WにZ軸正方向の加速度が生じ力−Fzが作用すると、梁部材Hの表層のほぼ全ての領域(エリアAR1)に伸び方向の応力が発生する。
両持ち梁構造の場合、図4(b)の模式図に示すように、2つの梁部材Ha,Hbの先端部に取り付けられた重錘体WにZ軸負方向の加速度が生じ力Fzが作用すると、梁部材Haが厚み方向に撓み、梁部材Haの表層には、重錘体Wに近い約半分の領域(エリアAR2)に伸び方向の応力が発生し、重錘体Wから離れた約半分の領域(エリアAR3)に縮み方向の応力が発生する。同様に、梁部材Hbも厚み方向に撓み、梁部材Hbの表層には、重錘体Wに近い約半分の領域(エリアAR4)に伸び方向の応力が発生し、重錘体Wから離れた約半分の領域(エリアAR5)に縮み方向の応力が発生する。逆に、重錘体WにZ軸正方向の加速度が生じ力Fzが作用したときは、各領域の伸縮の方向が反転する。
このように、両持ち梁構造は、片持ち梁構造とは異なり、各梁部材の内部の応力分布が一様にはならない。圧電素子は、応力の方向が異なる領域に跨るように配置すると発生電荷が相殺されて発電できなくなるので、応力分布が一様な領域毎に設ける必要がある。そこで、発電素子10の場合、片持ち梁構造の第1の板状可撓体12には、第1の板状可撓体12のエリアAR1に相当する領域に圧電素子22(1)が配置されている。また、両持ち梁構造の第2の板状可撓体14には、第2梁部材14(1)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(2)と22(3)が各々配置され、第2梁部材14(2)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(4)と22(5)が各々配置されている。
発電回路24は、圧電素子22(1)〜22(5)に発生した電荷に基づいて流れる電流を整流し、これらを合成して電力を取り出す回路であり、図5に示すように、複数のダイオードで構成された全波整流回路24aと、全波整流回路24aの出力を平滑する平滑コンデンサ24bとで構成され、平滑コンデンサ24bの両端に接続された負荷Loに向けて電力を出力する。つまり、圧電素子22(1)〜22(5)に発電回路24を接続することによって、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力を取り出すことができる。
次に、発電素子10のZ軸方向の共振特性について説明する。上記の構造により、発電素子10には2つの振動系Re1,Re2が形成される。第1の振動系Re1は、第1の板状可撓体12の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz1は、第1の板状可撓体12のZ軸方向のバネ定数と、第1の板状可撓体12の先端部に接続された物体の質量(第1の重錘体18、第2の板状可撓体14及び第2の重錘体20の質量)とを調節することによって設定される。
第2の振動系Re2は、第2の板状可撓体14の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz2は、第2の板状可撓体14(第2梁部材14(1),14(2))のZ軸方向のバネ定数と、第2の板状可撓体14の先端部に接続された物体の質量(第2の重錘体20の質量)とを調節することによって設定される。
各振動系Re1,Re2のZ軸方向の共振特性は、例えば図6(a)のように設定することができる。なお、図6(a)に示す第2の振動系Re2の共振特性は、第2の板状可撓体14の基端部が台座16に直接接続された状態を仮想したものであり、第1の振動系Re1との相互作用は含んでいない。
第1の振動系Re1の共振特性は、共振周波数frz1付近に、台座16に作用した振動に共鳴して振幅A1が大きくなるピーキングが発生し、共振周波数frz1を中心とする半値幅hz1の周波数帯で、振幅A1がピーク値の1/2以上になっている。第2の振動系Re2の共振特性は、共振周波数frz2付近にピーキングが発生し、共振周波数frz2を中心とする半値幅hz2の周波数帯で、振幅A2がピーク値の1/2以上になっている。ここでは、共振周波数frz1とfrz2を意図的にずらしてあり、半値幅hz1の周波数帯と半値幅hz2の周波数帯は重なっていない。
台座16にZ軸方向の振動が加わると、この振動が第1の振動系Re1に伝わり、図6(b)に示すように、共振周波数frz1付近の周波数帯で発電量が大きくなる。また、この振動が第2の振動系Re2にも伝わり、共振周波数frz2付近の周波数帯でも発電量が大きくなる。したがって、周波数frz1〜frz2付近に跨る広い周波数帯で所定の発電量を得ることができる。
また、各振動系Re1,Re2のZ軸方向の共振特性は、図7(a)に示すように、共振周波数frz1とfrz2をほぼ同じ値に設定することも可能である。ほぼ同じ値とは、半値幅hz1の周波数帯と半値幅hz2の周波数帯が互いに重なる程度に近い値であることを言う。
例えば、第1及び第2の振動系Re1,Re2のQ値をQz1,Qz2(Qz1=QZ2>>1)、共振周波数frz1=frz2とし、台座16に共振周波数frz1,frz2と同じ周波数の振動が加わったときの動作を考える。台座16にこの振動が加わると、この振動が第1の振動系Re1に伝わり、第1の板状可撓体12が厚み方向に撓み、第1の重錘体18に、台座16が変位する加速度αのQz1倍の加速度(Qz1・α)が発生する。したがって、圧電素子20(1)には、概算で、第1の板状可撓体12の先端部と基端部の加速度の差(Qz1・α)に相当する電荷が発生する。例えば、Qz1=10とすれば、加速度(10α)に相当する電荷が発生することになる。
さらに、第1の重錘体18の振動が第2の振動系Re2に伝わり、第2の板状可撓体14(第2梁部材14(1),14(2))が厚み方向に撓む。そして、第2の重錘体20に、第1の重錘体18が変位する加速度のQz2倍の加速度(Qz2・Qz1・α)が発生する。したがって、圧電素子22(4)〜22(5)30には、概算で、第2の板状可撓体14の先端部と基端部の加速度の差(Qz2・Qz1・α)に相当する電荷が発生する。例えば、Qz2=Qz1=10とすれば、加速度(100α)に相当する電荷が発生することになる。
このように、第1の振動系Re1で(Qz1・α)に相当する電荷が発生し、第2の振動系Re2では(Qz2・Qz1・α)に相当する電荷が発生し、これらを合算することによって非常高い発電量を得ることができる。
なお、発電量を高くするには、共振周波数frz1とfrz2を一致させることが好ましいが、量産時は製造上のバラツキ等が生じるので、これらを正確に一致させることは難しい。そこで、発明者が実験やシミュレーションを行って検討した結果、第1の振動系Re1の半値幅hz1の周波数帯の一部と第2の振動系Re2の半値幅hz2の周波数帯の一部とが互いに重なっていれば、その重なっている周波数帯において、十分に高い発電量が得られることが分かった。つまり、振動系Re1,Re2の共振周波数frz1とfrz2をほぼ同じ値に設定することによって、図7(b)に示すように、半値幅hz1とhz2が重なる周波数帯で非常に高い発電量を得ることができる。
次に、発電素子10の第2の板状可撓体14の変形量について考える。図8(a)は、発電素子10を模式的に描いたものであり、図8(b)は、従来の発電素子26(特許文献1の図24の発電素子のような構造)を模式的に描いたものである。2つの発電素子10と26とを比較すると、第1の重錘体18が第1の可撓体12によって片持ち梁構造に支持されている部分は同様であるが、発電素子10は、第2の重錘体20が第2の板状可撓体14(14(1),14(2))によって両持ち梁構造に支持され、発電素子26は、第2の重錘体20が第2の板状可撓体27によって片持ち梁構造に支持されているという違いがある。
上記のように、2つの振動系の共振周波数frz1,frz2をほぼ同じ値に設定すると、第2の板状可撓体の変形量が格段に大きくなる。一般に、同じ加速度が重錘体に作用した場合、重錘体の変位量は、片持ち梁構造の方が両持ち梁構造よりも相対的に大きくなる。そのため、従来の発電素子26の場合、第2の板状可撓体27が片持ち梁構造なので、第2の板状可撓体27の変形量が大きくなり過ぎるおそれがあり、第2の板状可撓体27にストレスが蓄積して破損しやすくなり、製品寿命が短くなってしまう可能性がある。また、ストッパ部材の設計(例えば、ストッパ部材の働きをする第1の重錘体18等の設計)が難しくなる。
これに対して、発電素子10は、第2の板状可撓体14が両持ち梁構造なので、第2梁部材14(1),14(2)の変形量が相対的に抑えられ、第2梁部材14(1),14(2)に加わるストレスを軽減することができる。なお、両持ち梁構造の場合、各梁部材の変形量が小さくなるので、片持ち梁構造よりも発電量がやや低下するが、2つの梁部材に各々発電素子22を設けることによって、一定以上の発電量は確保することができる。
以上説明したように、発電素子10は、第1及び第2の板状可撓体12,14と第1及び第2の重錘体18,20とを組み合わせた独特な構造を有しているので、発電素子10に振動が加わった時の各板状可撓体12,14の変形量を容易に調節することができる。したがって、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、外形も非常にコンパクトにできる。
また、発電素子10は2つの振動系Re1,Re2を有しているので、振動系Re1,Re2の共振周波数frz1とfrz2を合わせることによって、発電効率を従来よりも格段に高くすることができ、共振周波数frz1とfrz2をずらすことによって、従来と同様の広周波数帯域発電も行うことができる。
次に、発電素子10の変形例について説明する。上述した発電素子10は、Z軸方向の発電を行う素子であり、Z軸方向の加速度が作用した時の第1及び第2の板状可撓体12,14の応力分布を考慮して、5つの圧電素子22が設けられている(22(1)〜22(5))。この圧電素子22の数及び配置を変更することによって、X軸方向の発電も可能になる。
片持ち梁構造の場合、図9(a)の模式図に示すように、梁部材Hの先端部に取り付けられた重錘WにX軸負方向の加速度が生じ力Fxが作用すると、重錘体Wの重心位置が梁部材Hよりも低い位置にあるため梁部材Hが厚み方向に撓み、梁部材Hには、表層のほぼ全ての領域(エリアAR1)に縮み方向の応力が発生する。反対に、重錘体WにX軸正方向の加速度が生じ力−Fxが作用すると、梁部材Hの表層のほぼ全ての領域(エリアAR1)に伸び方向の応力が発生する。また、両持ち梁構造の場合、図9(b)の模式図に示すように、梁部材Hの先端部に取り付けられた重錘WにX軸負方向の加速度が生じ力Fxが作用すると、重錘体Wの重心位置が梁部材Hよりも低い位置にあるため梁部材Ha,Hbが各々厚み方向に撓み、梁部材Haの表層の応力分布がエリアAR2,AR3に区分され、梁部材Hbの表層の応力分布がエリアAR4,AR5に区分される。
したがって、片持ち梁構造の第1の板状可撓体12は、エリアAR1に相当する領域に圧電素子22(1)を配置し、両持ち梁構造の第2の板状可撓体14(第2梁部材14(1),14(2))は、AR2〜AR5に相当する領域に圧電素子22(2)〜22(5)を各々配置し、各圧電素子に図5の発電回路24を接続することによって、X軸及びZ軸方向の発電が可能になる。
発電素子10の第1の振動系Re1は、Z軸方向の共振周波数frz1及び半値幅hz1の他に、X軸方向の共振周波数frx1及び半値幅hx1を有しており、第2の振動系Re2は、Z軸方向の共振周波数frz2及び半値幅hz2の他に、X軸方向の共振周波数frx2及び半値幅hx2を有している。したがって、Z軸方向の発電と同様に、2つの振動系の共振周波数frx1,frx2を相互に合わせることによって、X軸方向の発電効率を格段に高くすることができ、共振周波数frx1,frx2を相互にずらすことによって、X軸方向の広周波数帯域発電も行うことができる。
また、圧電素子22の数及び配置を変更することによって、Y軸方向の発電も可能になる。片持ち梁構造の場合、図10(a)の模式図に示すように、梁部材Hの先端部に取り付けられた重錘WにY軸正方向の加速度が作用すると、重錘体Wの重心位置が梁部材Hよりも低い位置にあるため梁部材Hが厚み方向に撓み、梁部材Hの表層の応力分布がエリアAR1、AR2に区分される。また、両持ち梁構造の場合、図10(b)の模式図に示すように、梁部材Hの先端部に取り付けられた重錘WにY軸負方向の加速度が生じ力Fyが作用すると、梁部材Ha,Hbが各々幅方向に撓み、梁部材Haの表層の応力分布がエリアAR3〜AR6に区分され、梁部材Hbの表層の応力分布がエリアAR7〜AR10に区分される。
したがって、片持ち梁構造の第1の板状可撓体12は、エリアAR1、AR2に相当する領域に圧電素子22(1),22(2)を各々配置し、両持ち梁構造の第2の板状可撓体14(第2梁部材14(1),14(2))は、AR3〜AR10に相当する領域に圧電素子22(3)〜22(10)を各々配置し、各圧電素子に図5の発電回路24を接続することによって、Y軸、X軸及びZ軸方向の発電が可能になる。
発電素子10の第1の振動系Re1は、Y軸方向の共振周波数fry1及び半値幅hry1を有し、第2の振動系Re2は、Y軸方向の共振周波数fry2及び半値幅hy2を有している。したがって、X軸及びZ軸方向の発電と同様に、2つの振動系の共振周波数fry1,fry2を相互に合わせることによって、Y軸方向の発電効率を格段に高くすることができ、共振周波数fry1,fry2を相互にずらすことによって、Y軸方向の広周波数帯域発電も行うことができる。
次に、本発明の発電素子の第二の実施形態について、図11〜図15に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子28は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、図11、図12に示すように、XY平面に平行に配置された第1の板状可撓体12と、第2の板状可撓体30,32と、第1の板状可撓体12の基端部を支持する台座16と、第1の板状可撓体12の先端部及び第2の板状可撓体30,32の基端部に接続された第1の重錘体18と、第2の板状可撓体30の先端部に接続された第2の重錘体34と、第2の板状可撓体32の先端部に接続された第2の重錘体36とを備えている。さらに第1及び第2の板状可撓体12,30,32の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子22と、発電回路24(図11、図12では省略してある)とを備えている。発電素子28を振動源に取り付けて使用する時は、例えば、台座16の下端部が振動源の上面(XY平面と平行な面)に固定される。
圧電素子22と発電回路24以外の部分は、いわゆるMEMS技術を使用して製造され、Si基板又はSOI基板等で成る第1基板K1及び第2基板K2を互いに貼り合わせ、研磨、エッチング、切断等の加工を行うことによって形成されている。
第1の板状可撓体12は、薄い第1基板K1の一部として形成され、1つの梁部材(第1梁部材)により構成されている。第1の板状可撓体12は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。
第2の板状可撓体30は、薄い第1基板K1により設けられ、2つの梁部材である第2梁部材30(1),30(2)により構成されている。第2梁部材30(1)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸負方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体34の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。第2梁部材30(2)は、基端部が第1の重錘体18の別の位置に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体34の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。
第2の板状可撓体32は、薄い第1基板K1により設けられ、2つの梁部材である第2梁部材32(1),32(2)により構成されている。第2梁部材32(1)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸負方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体36の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。第2梁部材32(2)は、基端部が第1の重錘体18の別の位置に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体36の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。
台座16は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。そして、台座16の内周部から第1の板状可撓体12が内向きに伸び、台座16の内側に第1及び第2の重錘体18,34,36が隙間を空けて収容されている。
第1の重錘体18は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。第1の重錘体18の重心位置は、第1の板状可撓体12に対してZ軸負方向にずれており、第1の重錘体18の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第1の重錘体18の外周部から第1の板状可撓体12が外向きに伸び、内周部から第2梁部材30(1),30(2),32(1),32(2)が内向きに伸び、第1の重錘体18の内側に第2の重錘体34,36が隙間を空けて収容されている。
第2の重錘体34は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、略四角形に形成されている。第2の重錘体34の重心位置は、第2の板状可撓体30に対してZ軸負方向にずれており、第2の重錘体34の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第2の重錘体34の外周部から第2梁部材30(1),30(2)が外向きに伸びている。
第2の重錘体36は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、略四角形に形成されている。第2の重錘体36の重心位置は、第2の板状可撓体32に対してZ軸負方向にずれており、第2の重錘体36の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第2の重錘体36の外周部から第2梁部材32(1),32(2)が外向きに伸びている。
以上の構成により、第1の重錘体18は、第1の板状可撓体12及び台座16によって片持ち梁構造に支持される。また、第2の重錘体34は、第2の板状可撓体30(第2梁部材30(1),30(2))及び第1の重錘体18によって支持され、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、第2の重錘体34はZ軸方向に移動する。同様に、第2の重錘体36は、第2の板状可撓体32(第2梁部材32(1),32(2))及び第1の重錘体18によって支持され、台座16にZ軸方向に加速度が作用した時、第2の重錘体36はZ軸方向に移動する。つまり、第2の重錘体34と36は、各々両持ち梁構造に支持される。
圧電素子22は、図13(b)に示すように、第1基板K1の上面全体を覆う下部電極G、下部電極Gの上面全体を覆う圧電材料P、圧電材料Pの上面の特定の領域に設けた上部電極Eによって構成されている。圧電材料Pは、面内方向に伸縮する応力が作用したとき、厚み方向に分極を生じる性質を有し、上部電極Eが設けられた領域が圧電素子22として動作する。発電素子28の場合、第1及び第2の板状可撓体12,30,32の上面の9箇所に上部電極Eが配置され、合計9つの圧電素子22(1)〜22(9)が設けられている。
先に説明したように、重錘体にZ軸方向の加速度が作用した時、梁部材の表層に発生する応力分布は、片持ち梁構造の場合は図4(a)のようになり、両持ち梁構造の場合は図4(b)のようになる。そこで、発電素子28の場合、片持ち梁構造の第1の板状可撓体12には、第1の板状可撓体12のエリアAR1に相当する領域に、圧電素子22(1)が配置されている。また、両持ち梁構造の第2の板状可撓体30には、第2梁部材30(1)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(2)と22(3)が各々配置され、第2梁部材30(2)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(4)と22(5)が各々配置されている。同様に、両持ち梁構造の第2の板状可撓体32には、第2梁部材32(1)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(6)と22(7)が各々配置され、第2梁部材32(2)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(8)と22(9)が各々配置されている。
発電回路24は、図5に示すように、各圧電素子22に発生した電荷に基づいて流れる電流を整流し、これらを合成して電力を取り出す回路である。したがって、圧電素子22(1)〜22(9)に発電回路24を接続することによって、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力を取り出すことができる。
次に、発電素子28のZ軸方向の共振特性について説明する。上記の構造により、発電素子28には3つの振動系Re1,Re2,Re3が形成される。第1の振動系Re1は、第1の板状可撓体12の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz1は、第1の板状可撓体12のZ軸方向のバネ定数と、第1の板状可撓体12の先端部に接続された物体の質量(第1の重錘体18、第2の板状可撓体30,32及び第2の重錘体34,36の質量)とを調節することによって設定される。
第2の振動系Re2は、第2の板状可撓体30の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz2は、第2の板状可撓体30(第2梁部材30(1),30(2))のZ軸方向のバネ定数と、第2の板状可撓体30の先端部に接続された物体の質量(第2の重錘体34の質量)とを調節することによって設定される。
第3の振動系Re3は、第2の板状可撓体32の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz3は、第2の板状可撓体32(第2梁部材32(1),32(2))のZ軸方向のバネ定数と、第2の板状可撓体32の先端部に接続された物体の質量(第2の重錘体36の質量)とを調節することによって設定される。
各振動系Re1,Re2,Re3のZ軸方向の共振特性は、例えば図14(a)のように設定することができる。なお、図14(a)に示す第2の振動系Re2の共振特性は、第2の板状可撓体30の基端部が台座16に直接接続された状態を仮想したものであり、第1の振動系Re1との相互作用は含んでいない。同様に、第3の振動系Re3の共振特性は、第2の板状可撓体32の基端部が台座16に直接接続された状態を仮想したものであり、第1の振動系Re1との相互作用は含んでいない。
第1の振動系Re1の共振特性は、共振周波数frz1付近に、台座16に作用した振動に共鳴して振幅A1が大きくなるピーキングが発生し、第2及び第3の振動系Re2,Re3の共振特性は、共振周波数frz2,frz3付近に各々ピーキングが発生している。ここでは、3つの共振周波数frz1とfrz2とfrz3は意図的にずらしてあり、各半値幅hz1,hz2,hz3の周波数帯は相互に重なっていない。
台座16にZ軸方向の振動が加わると、この振動が第1の振動系Re1に伝わり、図14(b)に示すように、共振周波数frz1付近の周波数帯で発電量が大きくなる。また、この振動が第2及び第3の振動系Re2,Re3にも伝わり、共振周波数frz2,frz3付近の周波数帯でも発電量が大きくなる。したがって、周波数frz1〜frz3付近に跨る広い周波数帯で所定の発電量を得ることができる。
また、各振動系Re1,Re2のZ軸方向の共振特性は、図15(a)に示すように、共振周波数frz1,frz2,frz3をほぼ同じ値に設定することも可能である。ここでは、半値幅hz2の周波数帯の一部が半値幅hz2の周波数帯の一部に重なり、Re3の半値幅hz3の周波数帯の一部も半値幅hz1の周波数帯の一部に重なるように設定されている。半値幅hz2とhz3の周波数帯は重なっていない。このように設定することによって、図15(b)に示すように、半値幅hz1とhz2とが重なる周波数帯、及び半値幅hz1とhz3とが重なる周波数帯で、非常に高い発電量を得ることができる。
上記の発電素子10は、第2の板状可撓体及び第2の重錘体を1組だけ備えているのに対し、発電素子28は、第2の板状可撓体及び第2の重錘体を2組備えているという特徴がある。第1板状可撓体と第2の板状可撓体とが互いに平行か直角かの違いは、発電特性にはあまり影響しない。
発電素子28の場合、第2の重錘体34,36が各々小形なので、これを支持する第2梁部材の変形量は、発電素子10の梁部材よりよりも相対的に小さくなり、第2梁部材に加わるストレスを軽減することができる。また、ストッパ部材による保護も容易になる。なお、発電素子28は、発電素子10よりも発電量がやや低下するが、第2の梁部材30(1),30(2),32(1),32(2)に各々発電素子22を設けることによって、一定以上の発電量は確保することができる。
以上説明したように、発電素子28は、第1及び第2の板状可撓体12,30,32と第1及び第2の重錘体34,36とを組み合わせた独特な構造を有しているので、発電素子28に振動が加わったときの各板状可撓体12,30,32の変形量を容易に調節することができる。したがって、上記発電素子10と同様に、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、外形も非常にコンパクトにできる。
さらに、3つの振動系Re1,Re2,Re3を有しているので、共振周波数frz1,frz2,frz3をずらすことによって、発電素子10以上の広周波数帯域発電が可能になる。また、先に説明した要領で圧電素子22の数及び配置を変更することによって、3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の発電を行うことも可能になる。
次に、本発明の発電素子の第三の実施形態について、図16〜図18に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子38は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、図16、図17に示すように、XY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体40,42と、第1の板状可撓体40の基端部を支持する台座16と、第1の板状可撓体40の先端部及び第2の板状可撓体42の基端部に接続された第1の重錘体18と、第2の板状可撓体42の先端部に接続された第2の重錘体20とを備えている。さらに第1及び第2の板状可撓体40,42の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子22と、発電回路24(図16、図17では省略してある)とを備えている。発電素子38を振動源に取り付けて使用する時は、例えば、台座16の下端部が振動源の上面(XY平面と平行な面)に固定される。
圧電素子22と発電回路24以外の部分は、いわゆるMEMS技術を使用して製造され、Si基板又はSOI基板等で成る第1基板K1及び第2基板K2を互いに貼り合わせ、研磨、エッチング、切断等の加工を行うことによって形成されている。
第1の板状可撓体40は、薄い第1基板K1の一部として形成され、4つの梁部材である第1梁部材40(1)〜40(4)により構成されている。第1梁部材40(1)は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向で、長さ方向の軸が、第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第1の重錘体18の外周部(第1梁部材40(2)の基端部に近い位置)に連続している。第1梁部材40(2)は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が、第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第1の重錘体18の外周部(第1梁部材40(3)の基端部に近い位置)に連続している。第1梁部材40(3)は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向で、長さ方向の軸が、第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第1の重錘体18の外周部(第1梁部材40(4)の基端部に近い位置)に連続している。第1梁部材40(4)は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸負方向で、長さ方向の軸が、第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第1の重錘体18の外周部(第1梁部材40(1)の基端部に近い位置)に連続している。
第2の板状可撓体42は、薄い第1基板K1の一部として形成され、4つの梁部材である第2梁部材42(1)〜42(4)により構成されている。第2梁部材42(1)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向で、長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第2の重錘体20の外周部(第2梁部材42(2)の基端部に近い位置)に連続している。第2梁部材42(2)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第2の重錘体20の外周部(第2梁部材42(3)の基端部に近い位置)に連続している。第2梁部材42(3)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向で、長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第2の重錘体20の外周部(第2梁部材42(4)の基端部に近い位置)に連続している。第2梁部材42(4)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸負方向で、長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第2の重錘体20の外周部(第2梁部材42(1)の基端部に近い位置)に連続している。
台座16は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。そして、台座16の内周部から第1の板状可撓体40が内向きに伸び、台座16の内側に第1及び第2の重錘体18,20が隙間を空けて収容されている。
第1の重錘体18は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。第1の重錘体18の重心位置は、第1の板状可撓体40に対してZ軸負方向にずれており、第1の重錘体18の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第1の重錘体18の外周部から第1梁部材40(1)〜40(4)が外向きに伸び、内周部から第2梁部材42(1)〜42(4)が内向きに伸び、第1の重錘体18の内側に第2の重錘体20が隙間を空けて収容されている。
第2の重錘体20は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、略四角形に形成されている。第2の重錘体20の重心位置は、第2の板状可撓体42に対してZ軸負方向にずれており、第2の重錘体20の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第2の重錘体20の外周部から第2梁部材42(1)〜42(4)が外向きに伸びている。
以上の構成により、第1の重錘体18は、第1の板状可撓体40(第1梁部材40(1)〜40(2))及び台座16によって外周部がほぼ均等に支持され、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、第1の重錘体18はZ軸方向に移動する。したがって、第1の重錘体18は、やや変則的ではあるが、4つの梁部材によって両持ち梁構造に支持されている。
同様に、第2の重錘体20は、第2の板状可撓体42(第2梁部材42(1)〜42(2))及び第1の重錘体18によって外周部がほぼ均等に支持され、台座16にZ軸方向に加速度が作用した時、第2の重錘体20はZ軸方向に移動する。つまり、第2の重錘体20も、4つの梁部材によって両持ち梁構造に支持されている。
圧電素子22は、図18(b)に示すように、第1基板K1の上面全体を覆う下部電極G、下部電極Gの上面全体を覆う圧電材料P、圧電材料Pの上面の特定の領域に設けた上部電極Eによって構成されている。圧電材料Pは、面内方向に伸縮する応力が作用したとき、厚み方向に分極を生じる性質を有し、上部電極Eが設けられた領域が圧電素子22として動作する。発電素子38の場合、第1及び第2の板状可撓体40,42の上面の16箇所に上部電極Eが配置され、合計16個の圧電素子22(1)〜22(16)が設けられている。
先に説明したように、重錘体にZ軸方向の加速度が作用した時、梁部材の表層に発生する応力分布は、両持ち梁構造の場合、図4(b)のようになる。そこで、発電素子38の場合、両持ち梁構造の第1の板状可撓体40には、第1梁部材40(1)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(1)と22(2)が各々配置され、第1梁部材40(2)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(3)と22(4)が各々配置され、第1梁部材40(3)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(5)と22(6)が各々配置され、第1梁部材40(4)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(7)と22(8)が各々配置されている。
同様に、両持ち梁構造の第2の板状可撓体42には、第2梁部材42(1)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(9)と22(10)が各々配置され、第2梁部材42(2)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(11)と22(12)が各々配置され、第2梁部材42(3)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(13)と22(14)が各々配置され、第2梁部材42(4)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(15)と22(16)が各々配置されている。
発電回路24は、図5に示すように、各圧電素子22に発生した電荷に基づいて流れる電流を整流し、これらを合成して電力を取り出す回路である。したがって、圧電素子22(1)〜22(16)に発電回路24を接続することによって、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力を取り出すことができる。
次に、発電素子38のZ軸方向の共振特性について説明する。上記の構造により、発電素子38には2つの振動系Re1,Re2が形成される。第1の振動系Re1は、第1の板状可撓体40の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz1は、第1の板状可撓体40(第1梁部材40(1)〜40(4))のZ軸方向のバネ定数と、第1の板状可撓体40の先端部に接続された物体の質量(第1の重錘体18、第2の板状可撓体42及び第2の重錘体20の質量)とを調節することによって設定される。
第2の振動系Re2は、第2の板状可撓体42の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz2は、第2の板状可撓体42(第2梁部材42(1)〜42(4))のZ軸方向のバネ定数と、第2の板状可撓体42の先端部に接続された物体の質量(第2の重錘体20の質量)とを調節することによって設定される。
各振動系Re1,Re2のZ軸方向の共振特性は、例えば図6(a)のように設定することによって、図6(b)に示すように、周波数frz1〜frz2付近に跨る広い周波数帯で所定の発電量を得ることができる。また、図7(a)のように設定することによって、図7(b)に示すように、半値幅hz1とhz2とが重なる周波数帯で、非常に高い発電量を得ることができる。
上記の発電素子10の両持ち梁構造(第2の振動系Re2)は、梁部材の数が2つであり、各梁部材の長さ方向の軸が重錘体の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されているので、各梁部材の長さが短い。
これに対して、発電素子38の両持ち梁構造(第1及び第2の振動系Re1,Re2)は、梁部材の数が4つであり、各梁部材の長さ方向の軸が重錘体の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差せず、重錘体の周囲を囲むように配置されているので、各梁部材の長さが長いという特徴がある。また、各梁部材の長さは、各梁部材の先端部を重錘体の外周部の異なる位置に連続させれば、容易に変更することができる。
梁部材の数が多いという特徴は、一定の加速度が作用した時、各梁部材の変位量が相対的に小さくなる方向に作用する。反対に、梁部材が長いという特徴は、一定の加速度が作用した時、各梁部材の変位量が相対的に大きくなる方向に作用し、その大きくなる度合いは、各梁部材の長さを変更することによって容易に調節することができる。したがって、発電素子38の両持ち梁構造の方が、各梁部材の変位量を最適化するためのパラメータの数が多い。
以上説明したように、発電素子38は、第1及び第2の板状可撓体40,42と第1及び第2の重錘体18,20とを組み合わせた独特な構造を有しているので、設計の自由度が非常に高く、発電素子38に振動が加わったときの各板状可撓体40,42の変形量をきめ細かく調節することができる。したがって、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、外形も非常にコンパクトにできる。さらに、先に説明した要領で圧電素子22の数及び配置を変更することによって、3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の発電を行うことも可能になる。
なお、発電素子38の場合、第1の振動系Re1は、第1梁部材40(2)と40(4)を省略した場合でも、第1梁部材40(1)と40(3)によって両持ち梁構造が成立し、第1梁部材40(1)と40(3)を省略した場合でも、第1梁部材40(2)と40(4)によって両持ち梁構造が成立するので、上記と同様の動作を行うことができる。また、第2の振動系Re2についても同様であり、第2梁部材42(2)と42(4)を省略した場合でも、第2梁部材42(1)と42(3)によって両持ち梁構造が成立し、第2梁部材42(1)と42(3)を省略した場合でも、第2梁部材42(2)と42(4)によって両持ち梁構造が成立するので、同様の上記と動作を行うことができる。
次に、本発明の発電素子の第四の実施形態について、図19〜図21に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子44は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、上記発電素子38(図16〜図18)の構成の一部を変更したものである。
発電素子44は、発電素子38とほぼ同じ構造の台座16、第1の板状可撓体40(第1梁部材40(1)〜40(4))及び第1の重錘体18を備えている。つまり、発電素子44の第1の振動系Re1は、発電素子38の振動系Re1と同様の両持ち梁構造に形成されている。
発電素子44の第2の振動系Re2は、新規な第2の板状可撓体46で第2の重錘体20を支持している。第2の板状可撓体46は、薄い第1基板K1の一部として形成され、4つの梁部材である第2梁部材46(1)〜46(4)により構成されている。第2梁部材46(1)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置され、先端部が第2の重錘体20に連続している。第2梁部材46(2)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置され、先端部が第2の重錘体20に連続している。第2梁部材46(3)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸負方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置され、先端部が第2の重錘体20に連続している。第2梁部材46(4)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置され、先端部が第2の重錘体20に連続している。
発電素子44の圧電素子22は、図21に示すように、16個の圧電素子22(1)〜22(16)により構成され、上記発電素子38の圧電素子22(1)〜22(16)と同様の考え方で、第1及び第2の板状可撓体40,46の上面に配置されている。
その他、発電素子44の場合、第1の重錘体18の4つの端部(第1梁部材40(1)〜40(4)の各先端部が連続している端部)に、第1基板K1を短く延長することによって、4つの庇部48(1)〜48(4)が設けられているという特徴がある。庇部48(1)は、第1梁部材40(1)の、第1の重錘部との境界に近い部分の応力分布を適正化する働きをする。また、庇部48(1)を設けることによって、圧電素子22(1)の上部電極Eの配置が容易になる。その他の庇部48(2)〜48(4)についても同様である。
発電素子44は、上記発電素子38と同様に、設計の自由度が非常に高く、一定の加速度が加わったときの各板状可撓体40,46の変形量をきめ細かく調節することができる。したがって、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、発電素子38と同じ要領で圧電素子22の数及び配置を変更することによって、3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の発電を行うことも可能になる。
なお、先に説明した発電素子38の第2の振動系Re2は、各梁部材の長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差せず、第2の重錘体20の周囲を囲むように配置されているので、各梁部材の長さを、第2の重錘体20の1辺と同程度の長さにすることができる。これに対して、発電素子44の第2の振動系Re2は、各梁部材の長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置しているので、各梁部材の長さは、第2の重錘体20の1辺の長さの1/3〜2/5程度に制限される。したがって、第2の振動系Reの発電量を高くしたいときは、発電素子38の方が有利である。
しかしながら、発電素子44は、第2の重錘体20の外周部に対して非常に近い位置にストッパ部材(第1の重錘体18)を配置できるので、衝撃に対する保護が容易になるという利点がある。
次に、本発明の発電素子の第五の実施形態について、図22〜図24に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子50は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、上記発電素子28の構成の一部を変更したものである。
発電素子50は、図22、図23に示すように、発電素子38とほぼ同じ構造の台座16、第1の板状可撓体40(第1梁部材40(1)〜40(4))及び第1の重錘体18を備え、第1の振動系Re1が、発電素子38と同様の両持ち梁構造に形成されている。
また、発電素子50は、発電素子28の第2の板状可撓体30及び第2の重錘体34とほぼ同じ構造の第2の板状可撓体52(第2梁部材52(1),52(2))及び第2の重錘体56を備え、第2の振動系Re2が両持ち梁構造に形成されている。また、発電素子28の第3の板状可撓体32及び第2の重錘体36とほぼ同じ構造の第2の板状可撓体54(第2梁部材54(1),54(2))及び第2の重錘体58を備え、第3の振動系Re3が両持ち梁構造に形成されている。
つまり、発電素子50は、上述の発電素子28の第1の共振系Re1を、発電素子38の第1の共振系Re1に置き換えたような構成になっている。第2の板状可撓体の方向がX軸に対して平行か直角かという違いはあるが、発電特性にはあまり影響しない。
発電素子50の圧電素子22は、図24に示すように、16個の圧電素子22(1)〜22(16)により構成され、図4(a)、(b)に示す応力分布を考慮して、第1及び第2の板状可撓体40,52,54の上面に配置されている。
各振動系Re1,Re2,Re3のZ軸方向の共振特性は、例えば図14(a)のように設定することによって、図14(b)に示すように、周波数frz1〜frz3付近に跨る広い周波数帯で所定の発電量を得ることができる。また、図15(a)のように設定することによって、図15(b)に示すように、半値幅hz1,hz2,hz3が重なる周波数帯で、非常に高い発電量を得ることができる。
上記発電素子28は、第1の振動系Re1が片持ち梁構造なので、第1の重錘体18の変位量が大きくなり、特に共振周波数frz1,frz2,frz3をほぼ同じ値に設定した場合、第2の板状可撓体52,54の変形量も非常に大きくなる。
これに対して、発電素子50は、第1の振動系Re1が、上記発電素子38と同様の両持ち梁構造なので、第1の板状可撓体40の変形量を小さくすることができ、その結果、発電素子50の第2の板状可撓体52,54の変形量も小さくなり、第2梁部材52(1),52(2),54(1),54(2)に加わるストレスを容易に軽減することができる。
以上説明したように、発電素子50によれば、上記発電素子28と同様の機能を実現することができる。しかも、設計の自由度が非常に高く、発電素子50に振動が加わったときの各板状可撓体40,52,54の変形量をきめ細かく調節することができるので、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、先に説明した要領で圧電素子22の数及び配置を変更することによって、3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の発電を行うことも可能になる。
次に、本発明の発電素子の第六の実施形態について、図25〜図27に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子60は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、図25、図26に示すように、XY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体62,64と、第1の板状可撓体62の基端部を支持する台座16と、第1の板状可撓体62の先端部及び第2の板状可撓体64の基端部に接続された第1の重錘体66と、第2の板状可撓体64の先端部に接続された第2の重錘体68とを備えている。さらに第1及び第2の板状可撓体62,64の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子22と、発電回路24(図25、図27では省略してある)とを備えている。発電素子60を振動源に取り付けて使用する時は、例えば、台座16の下端部が振動源の上面(XY平面と平行な面)に固定される。
圧電素子22と発電回路24以外の部分は、いわゆるMEMS技術を使用して製造され、Si基板又はSOI基板等で成る第1基板K1及び第2基板K2を互いに貼り合わせ、研磨、エッチング、切断等の加工を行うことによって形成されている。
第1の板状可撓体62は、薄い第1基板K1の一部として形成され、2つの梁部材である第1梁部材62(1),62(2)により構成されている。第1梁部材62(1),62(2)は、互いに逆向きに屈曲したL字形に形成され、基端部が台座16の互いに近接した位置に各々連続し、先端部が第1の重錘体66の側端部の互いに近接した位置に各々連続し、第1梁部材62(1)と62(2)で囲んだ内側に第2の重錘体68を収容している。
第2の板状可撓体64は、薄い第1基板K1により設けられ、2つの梁部材である第2梁部材64(1),64(2)により構成されている。第2梁部材64(1),64(2)は、互いに逆向きに屈曲したL字形に形成され、第2梁部材64(1)が第1梁部材62(1)の内側にほぼ平行に配置され、第2梁部材64(2)が第1梁部材62(2)の内側に略平行になるように配置されている。そして、基端部が第1の重錘体66の互いに近接した位置に各々連続し、先端部が第2の重錘体68の側端部の互いに近接した位置に各々連続し、第2梁部材64(1)と64(2)で囲んだ内側に第2の重錘体68を収容している。
台座16は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。そして、台座16の内周部から第1の板状可撓体62が内向きに伸び、台座16の内側に第1及び第2の重錘体66,68が隙間を空けて収容されている。
第1の重錘体66は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、小形の略四角形に形成されている。第1の重錘体66の重心位置は、第1の板状可撓体62に対してZ軸負方向にずれており、第1の重錘体66の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第1の重錘体66の、第2の重錘体68側の側端部から、第1梁部材62(1),62(2)及び第2梁部材64(1),64(2)が伸びている。
第2の重錘体20は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、第1の重錘体66よりも少し大きい略四角形に形成されている。第2の重錘体68の重心位置は、第2の板状可撓体64に対してZ軸負方向にずれており、第2の重錘体68の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第2の重錘体68の、第1の重錘体66と反対側の側端部から、第2梁部材62(1),62(2)が伸びている。
以上の構成により、第1の重錘体66は、第1の板状可撓体62(第1梁部材62(1),62(2))及び台座16によって片持ち梁構造に支持される。同様に、第2の重錘体68は、第2の板状可撓体64(第2梁部材64(1),64(2))及び第1の重錘体66によって片持ち梁構造に支持される。
圧電素子22は、図27(b)に示すように、第1基板K1の上面全体を覆う下部電極G、下部電極Gの上面全体を覆う圧電材料P、圧電材料Pの上面の特定の領域に設けた上部電極Eによって構成されている。圧電材料Pは、面内方向に伸縮する応力が作用したとき、厚み方向に分極を生じる性質を有し、上部電極Eが設けられた領域が圧電素子22として動作する。発電素子60の場合、第1及び第2の板状可撓体62,64の上面の4箇所に上部電極Eが配置され、合計4つの圧電素子22(1)〜22(4)が設けられている。
先に説明したように、重錘体にZ軸方向の加速度が作用した時、梁部材の表層に発生する応力分布は、片持ち梁構造の場合は図4(a)のようになる。梁部材がL字状に屈曲していても同様である。そこで、発電素子60の場合、片持ち梁構造の第1の板状可撓体62には、第1梁部材62(1)と62(2)のエリアAR1に相当する領域に圧電素子22(1),22(2)が各々配置され、片持ち梁構造の第2の板状可撓体64にも、第2梁部材64(1)と64(2)のエリアAR1に相当する領域に圧電素子22(3),22(4)が各々配置されている。
発電回路24は、図5に示すように、各圧電素子22に発生した電荷に基づいて流れる電流を整流し、これらを合成して電力を取り出す回路である。したがって、圧電素子22(1)〜22(4)に発電回路24を接続することによって、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力を取り出すことができる。
次に、発電素子60のZ軸方向の共振特性について説明する。上記の構造により、発電素子60には2つの振動系Re1,Re2が形成される。第1の振動系Re1は、第1の板状可撓体62の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz1は、第1の板状可撓体62(第1梁部材62(1),62(2))のZ軸方向のバネ定数と、第1の板状可撓体62の先端部に接続された物体の質量(第1の重錘体66、第2の板状可撓体64及び第2の重錘体68の質量)とを調節することによって設定される。
第2の振動系Re2は、第2の板状可撓体64の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz2は、第2の板状可撓体64(第2梁部材64(1),64(2))のZ軸方向のバネ定数と、第2の板状可撓体64の先端部に接続された物体の質量(第2の重錘体68の質量)とを調節することによって設定される。
各振動系Re1,Re2のZ軸方向の共振特性は、例えば図6(a)のように設定することによって、図6(b)に示すように、周波数frz1〜frz2付近に跨る広い周波数帯で所定の発電量を得ることができる。また、図7(a)のように設定することによって、図7(b)に示すように、半値幅hz1とhz2とが重なる周波数帯で、非常に高い発電量を得ることができる。
上記の発電素子10,38,44は、発電素子60と同様に2つの振動系Re1,Re2を備えているが、少なくとも一方の振動系が両持ち梁構造なので、発電量がある程度制限される。これに対して、発電素子60は、2つの振動系が共に片持ち梁構造なので、非常に高い発電量を得ることができる。また、第1梁部材62(1),62(2)及び第2梁部材64(1),64(2)がL字形に屈曲した形状であり、各梁部材を非常に長くできるという特徴があり、その分、各梁部材の変形量が大きくなり、各振動系Re1,Re2の発電量をさらに高くすることができる。
なお、片持ち梁構造の場合、板状可撓体の変形量が大きくなり、板状可撓体に加わるストレスが大きくなり過ぎるおそれがある。しかし、発電素子60の場合、第1の板状可撓体62が、互いに並列に配置された2つの梁部材(第1梁部材62(1),62(2))により構成されているので、その分、第1の板状可撓体62の変形量が一定以下に抑えられる。同様に、第2の板状可撓体62が、互いに並列に配置された2つの梁部材(第2梁部材64(1),64(2))により構成されているので、その分、第2の板状可撓体64の変形量も一定以下に抑えられる。
以上説明したように、発電素子60は、第1及び第2の板状可撓体62,64と第1及び第2の重錘体66,68とを組み合わせた独特な構造を有しているので、発電素子60に振動が加わった時の各板状可撓体62,64の変形量を容易に調節することができる。したがって、上記発電素子10,38,44と同様に、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、外形も非常にコンパクトにできる。さらに、先に説明した要領で圧電素子22の数及び配置を変更することによって、3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の発電を行うことも可能になる。
次に、本発明の発電素子の第七の実施形態について、図28、図29に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子70は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、2台の発電素子10(図1〜図7)を組み合わせて1台の発電素子にしたものである。具体的には、図28に示すように、2台の台座16を縦に並べて一体化した形状の台座72が設けられ、台座72を利用して2つの発電素子部10a,10bが設けられている。発電素子部10a,10bの各構成は、上記発電素子10と同様である。
発電素子70には、4つの振動系Re1〜Re4が形成される。第1及び第2の振動系Re1,Re2は、発電素子部10aが有する2つの振動系であり、第3及び第4の振動系Re3,Re4は、発電素子部10bが有する2つの振動系である。
各振動系Re1〜Re4のZ軸方向の共振特性は、例えば図29(a)のように設定することができる。なお、図29(a)に示す第2の振動系Re2の共振特性は、第2の板状可撓体30の基端部が台座72に直接接続された状態を仮想したものであり、第1の振動系Re1,との相互作用は含んでいない。同様に、第4の振動系Re3の共振特性は、第2の板状可撓体30の基端部が台座72に直接接続された状態を仮想したものであり、第3の振動系Re3との相互作用は含んでいない。
ここでは、共振周波数frz1とfrz2がほぼ同じ値に設定され、第2の振動系Re2の半値幅hz2の周波数帯の一部が第1の振動系Re1の半値幅hz2の周波数帯の一部に重なっている。同様に、共振周波数frz3とfrz3がほぼ同じ値に設定され、第2の振動系Re2の半値幅hz2の周波数帯の一部が第1の振動系Re1の半値幅hz2の周波数帯の一部に重なっている。共振周波数frz1,frz2とfrz3,frz4は意図的にずらしてあり、半値幅hz1,hz2とhz3,hz4の周波数帯は相互に重なっていない。
発電素子70は、共振周波数frz1とfrz2がほぼ同じ値に設定されているので、半値幅hz1とhz2とが重なる周波数帯で非常に高い発電量を得ることができる。さらに、共振周波数frz3とfrz4がほぼ同じ値に設定されているので、半値幅hz1とhz2とが重なる周波数帯でも非常に高い発電量を得ることができる。つまり、図29(b)に示すように、異なる2つの周波数帯で、非常に高い発電量を得ることができる。
図29(a)に示す共振周波数の設定は適宜変更することができ、例えば、共振周波数frz1,frz2とfrz3,frz4とをもっと近い値に設定すれば、周波数frz1〜frz4付近に跨る広い周波数帯で所定の高い発電量を得ることができる。また、4つの共振周波数frz1〜frz4をほぼ同じ値に設定すれば、半値幅hz1〜hz4が重なる周波数帯で非常に高い発電量を得ることができる。
なお、本発明の発電素子は、上記の実施形態及び変形例に限定されるものではない。上記実施形態が有する個々の振動系の構造は、それぞれ、(a)片持ち梁構造で梁部材が短い、(b)片持ち梁構造で梁部材が長い、(c)2つ以上の梁部材で片持ち梁構造が構成されている、(d)両持ち梁構造で梁部材が短い、(e)両持ち梁構造で梁部材が長い、(f)両持ち梁構造が3つ以上の梁部材で構成されている、等の特徴を有しており、上記の発電素子10,28,38,44,50,60,70は、(a)〜(f)のどれかに該当する振動系を適宜組み合わせることによって、梁部材の変形量を適切な値に調節している。組み合わせ方は、上記実施形態の組み合わせに限定されず、発電素子の用途や仕様に合わせて自由に変更することができる。また、上記実施形態では、1つの発電素子に設ける振動系の数が2〜4つであるが、5つ以上の振動系を設けてもよい
その他、発電素子の製造プロセスは、MEMS技術を用いたプロセスに限定されず、個々の構造に合わせて自由に変更することができる。また、圧電素子の構造は、圧電素子22の構造(図3(b)等に示す構造)に限定されず、同様の機能を実現できる他の構造に変更してもよい。
10,28,38,44,50,60,70 発電素子
12,40,62 第1の板状可撓体
40(1)〜40(4),62(1),62(2) 第1梁部材
14,27,30,32,40,42,46,52,54,62,64 第2の板状可撓体
14(1),14(2),30(1),30(2),32(1),32(2),42(1)〜42(4),46(1)〜46(4),52(1),52(2),54(1),54(2),64(1),64(2) 第2梁部材
16,72 台座
18,66第1の重錘体
20,34,36,56,58,68 第2の重錘体
22,22(1)〜22(16) 圧電素子
24 発電回路
frx1,fry1,frz1 X、Y及びZ軸方向の共振周波数(第1の振動系)
frx2,fry2,frz2 X、Y及びZ軸方向の共振周波数(第2の振動系)
frx3,fry3,frz3 X、Y及びZ軸方向の共振周波数(第3の振動系)
hx1,hy1,hz1 X、Y及びZ軸方向の半値幅(第1の振動系)
hx2,hy2,hz2 X、Y及びZ軸方向の半値幅(第2の振動系)
hx3,hy3,hz3 X、Y及びZ軸方向の半値幅(第2の振動系)
Re1 第1の振動系
Re2 第2の振動系
Re3 第3の振動系
E 上部電極
G 下部電極
P 圧電材料
本発明は、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換することによって発電を行う発電素子に関する。
従来、特許文献1の図24に開示されているように、互いに直交するXYZ軸から成るXYZ三次元座標系におけるXY平面に平行に配置された第1の板状可撓体(151)及び第2の板状可撓体(156)と、第1の板状可撓体の基端部を支持する台座と、第1の板状可撓体の先端部及び第2の板状可撓体の基端部に接続された第1の重錘体と、第2の板状可撓体の先端部に接続された第2の重錘体と、第1及び第2の板状可撓体の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子とを備えた発電素子があった。第1の重錘体は、第1の板状可撓体及び台座によって片持ち梁構造に支持され、第2の重錘体は、第2の板状可撓体及び第1の重錘体によって片持ち梁構造に支持されている。圧電素子は、X、Y及びZの3軸方向の振動を受けて発電できるように、第1及び第2の板状可撓体の表面の複数の箇所に配置されている。
この発電素子には、第1の板状可撓体の可撓性に基づいて形成される第1の振動系(共振系)と第2の板状可撓体の可撓性に基づいて形成される第2の振動系(共振系)とが形成され、各振動系の共振周波数を近づけることによって、発電可能な周波数帯域を広くすることができる。
特許文献1の図24に示された発電素子は、上記のような優れた特徴を有しているが、さらに発電効率を向上させることが求められている。発電効率を向上させるためには、発電素子に振動が加わった時、板状可撓体がもっと大きく変形するようにすればよい。
その一方で、変形量が大きくなり過ぎると、板状可撓体にストレスが蓄積して破損しやすくなる。また、この種の発電素子は、外部から過大な衝撃が加わった時に重錘体の最大変位量を制限する保護用のストッパ部材を設けるのが一般的であり、例えば特許文献1の図24の発電素子では、枠体状の台座や第1の重錘体等がストッパ部材の働きをしている。しかしながら、通常の振動が加わった状態(通常の使用状態)で既に板状可撓体の変形量が大きいと、当然、重錘体も大きく変位しているため、保護用のストッパ部材は、重錘体からかなり離れた位置にしか設けることができず、衝撃を受けた時に適切に保護するのが難しくなる。したがって、振動が加わった時の板状可撓体の変形量は一定以下に抑えなければならない。
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、発電に寄与する板状可撓体の変形量を一定以下に抑えつつ、高効率発電及び広周波数帯域発電を容易に実現できる発電素子を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明は、XYZ三次元座標系におけるXY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体と、前記第1の板状可撓体の基端部を支持する台座と、前記第1の板状可撓体の先端部及び前記第2の板状可撓体の基端部に接続された第1の重錘体と、前記第2の板状可撓体の先端部に接続された第2の重錘体と、前記第1及び第2の板状可撓体の変形、又は前記第2の板状可撓体の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子とを備え、前記第1の重錘体は、中心軸がZ軸と平行な枠体状に形成され、その内側に前記第2の重錘体を収容し、外周部が前記第1の板状可撓体の先端部に接続され、前記第1の板状可撓体及び前記台座によって片持ち梁構造に支持され、前記第2の板状可撓体は、板状に形成された複数の第2梁部材により構成され、前記第2梁部材は、基端部が前記第1の重錘体の内周部の異なる位置に各々接続され、先端部が前記第2の重錘体の側端部の異なる位置に各々接続されて、複数の前記第2梁部材により、前記第2の重錘体を両端固定梁の支持構造である両持ち梁構造に支持し、前記台座にZ軸方向の加速度が作用した時、前記第2の重錘体は、前記複数の第2梁部材が変形することによって、Z軸方向に移動する発電素子である。
この場合、前記第2梁部材は、自己の長さ方向の軸が、前記第2の重錘体の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように各々配置されていてもよい(請求項2記載の発明)。
請求項3記載の発明は、XYZ三次元座標系におけるXY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体と、前記第1の板状可撓体の基端部を支持する台座と、前記第1の板状可撓体の先端部及び前記第2の板状可撓体の基端部に接続された第1の重錘体と、前記第2の板状可撓体の先端部に接続された第2の重錘体と、前記第1及び第2の板状可撓体の変形又は前記第2の板状可撓体の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子とを備え、前記台座は、中心軸がZ軸と平行な枠体状に形成され、その内側に前記第1及び第2の重錘体を収容し、前記第1の板状可撓体は、板状に形成された複数の第1梁部材により構成され、前記第1梁部材は、基端部が前記台座の内周部の異なる位置に各々接続され、先端部が前記第1の重錘体の側端部の異なる位置に各々接続され、自己の長さ方向の軸が、前記第1の重錘体の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように各々配置されて、複数の前記第1梁部材により、前記第1の重錘体を両端固定梁の支持構造である両持ち梁構造に支持し、前記台座にZ軸方向の加速度が作用した時、前記第1の重錘体は、前記複数の第1梁部材が変形することによって、Z軸方向に移動する発電素子である。
この場合、前記第1の重錘体は、中心軸がZ軸と平行な枠体状に形成され、その内側に前記第2の重錘体を収容し、外周部が前記第1の板状可撓体の先端部に接続され、前記第2の板状可撓体は、板状に形成された複数の第2梁部材により構成され、前記第2梁部材は、基端部が前記第1の重錘体の内周部の異なる位置に各々接続され、先端部が前記第2の重錘体の側端部の異なる位置に各々接続されて、複数の前記第2梁部材により、前記第2の重錘体を両端固定梁の支持構造である両持ち梁構造に支持し、前記台座にZ軸方向の加速度が作用した時、前記第2の重錘体は、前記複数の第2梁部材が変形することによって、Z軸方向に移動する構成にすることができる(請求項4記載の発明)。また、前記第2梁部材は、自己の長さ方向の軸が、前記第2の重錘体のZ軸方向の中心軸と交差しないように各々配置されていてもよい(請求項5記載の発明)。
また、本発明は、XYZ三次元座標系におけるXY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体と、前記第1の板状可撓体の基端部を支持する台座と、前記第1の板状可撓体の先端部及び前記第2の板状可撓体の基端部に接続された第1の重錘体と、前記第2の板状可撓体の先端部に接続された第2の重錘体と、前記第1及び第2の板状可撓体の変形、又は前記第2の板状可撓体の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子とを備え、前記第1の板状可撓体は、互いに逆向きに屈曲したL字形に形成された2つの第1梁部材により構成され、前記第1梁部材は、基端部が前記台座の互いに近接した位置に各々接続され、先端部が前記第1の重錘体の側端部の互いに近接した位置に各々接続され、前記2つの第1梁部材で囲んだ内側に前記第2の重錘体を収容している発電素子である。
この場合、前記第2の板状可撓体は、互いに逆向きに屈曲したL字形に形成された2つの第2梁部材により構成され、前記第2梁部材は、基端部が前記第1の重錘体の互いに近接した位置に各々接続され、先端部が前記第2の重錘体の側端部の互いに近接した位置に各々接続され、前記2つの第2梁部材で囲んだ内側に前記第2の重錘体を収容している構成にすることができる(請求項7記載の発明)。
あるいは、前記第1の重錘体は、中心軸がZ軸と平行な枠体状に形成され、その内側に前記第2の重錘体を収容し、外周部が前記第1の板状可撓体の先端部に接続され、前記第2の板状可撓体は、板状に形成された複数の第2梁部材により構成され、前記第2梁部材は、基端部が前記第1の重錘体の内周部の異なる位置に各々接続され、先端部が前記第2の重錘体の側端部の異なる位置に各々接続され、前記台座にZ軸方向の加速度が作用した時、前記第2の重錘体は、前記複数の第2梁部材が変形することによってZ軸方向に移動する構成にしてもよい(請求項8記載の発明)。さらに、前記第2梁部材は、自己の長さ方向の軸が、前記第2の重錘体の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように各々配置されている構成にしてもよい。
また、上記の各請求項に記載された発明において、前記第2の板状可撓体及び前記第2の重錘体が複数組設けられている構成にすることができる(請求項10記載の発明)。この場合、前記第2の板状可撓体の可撓性に基づいて形成される振動系の半値幅の周波数帯は、その全部又は一部が、前記第1の板状可撓体の可撓性に基づいて形成される振動系の半値幅の周波数帯と重なっている構成にしてもよい(請求項11記載の発明)。
また、上記の各請求項に記載された発明において、圧電素子は、前記第2の前記板状可撓体の表面、又は前記第1及び第2の板状可撓体の表面に順に積層された下層電極、圧電材料、及び上層電極により形成され、前記圧電材料は、面内方向に伸縮する応力が作用したとき、厚み方向に分極を生じる性質を有している構成にすることが好ましく(請求項12記載の発明)、前記圧電素子が複数設けられ、前記各圧電素子に発生した電荷に基づいて流れる電流を整流し、これらを合成して電力と取り出す発電回路が設けられていることが好ましい(請求項13記載の発明)。
この場合、前記圧電素子の数と配置は、前記台座にZ軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力が前記発電回路から出力されるように設定することができる(請求項14記載の発明)。また、前記第1の重錘体の重心位置は、前記第1の板状可撓体に対してZ軸方向にずれており、前記第2の重錘体の重心位置は、前記第2の板状可撓体に対してZ軸方向にずれており、前記複数の圧電素子の数及び配置は、前記台座にX軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力が前記発電回路から出力されるように設定することができる(請求項15記載の発明)。また、前記第1の重錘体の重心位置は、前記第1の板状可撓体に対してZ軸方向にずれており、前記第2の重錘体の重心位置は、前記第2の板状可撓体に対してZ軸方向にずれており、前記複数の圧電素子の数及び配置は、前記台座にY軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力が前記発電回路から出力されるように設定することができる(請求項16記載の発明)。
本発明の発電素子は、複数の板状可撓体と重錘体とを組み合わせた独特な構造を有しているので、発電素子に振動が加わった時の板状可撓体の変形量を容易に調節することができる。したがって、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、外形も非常にコンパクトにできる。
また、本発明の発電素子は複数の振動系を有しているので、各振動系の共振周波数を相互に合わせることによって、発電効率を従来よりも格段に高くすることができる。また、各振動系の共振周波数を相互にずらすことによって、広周波数帯域発電も行うことができる。
本発明の発電素子の第一の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図1のA1−A1断面の図(a)、A2−A2断面の図(b)である。
第一の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
梁部材に支持された重錘体にZ軸方向の振動が加わった時に梁部材の表層部に発生する応力分布を示す概念図であって、片持ち梁構造の場合の図(a)、両持ち梁構造の場合の図(b)である。
第一の実施形態の発電素子が備える発電回路を示す回路図である。
第一の実施形態の発電素子が有する2つの振動系に設定された共振特性(Z軸方向)の一例を示すグラフ(a)、発電特性を示すグラフ(b)である。
第一の実施形態の発電素子が有する2つの振動系に設定された共振特性(Z軸方向)の他の例を示すグラフ(a)、発電特性を示すグラフ(b)である。
発電素子にZ軸方向の振動が加わった時の動作を示す模式図であって、第一の実施形態の発電素子における第1及び第2の板状可撓体の変位量を示す図(a)、従来の発電素子における第1及び第2の板状可撓体の変位量を示す図(b)である。
梁部材に支持された重錘体にX軸方向の振動が加わった時に梁部材の表層部に発生する応力分布を示す概念図であって、片持ち梁構造の場合の図(a)、両持ち梁構造の場合の図(b)である。
梁部材に支持された重錘体にY軸方向の振動が加わった時に梁部材の表層部に発生する応力分布を示す概念図であって、片持ち梁構造の場合の図(a)、両持ち梁構造の場合の図(b)である。
本発明の発電素子の第二の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図11のB1−B1断面の図(a)、B2−B2断面の図(b)である。
第二の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
第二の実施形態の発電素子が有する3つの振動系に設定された共振特性(Z軸方向)の一例を示すグラフ(a)、発電特性を示すグラフ(b)である。
第二の実施形態の発電素子が有する3つの振動系に設定された共振特性(Z軸方向)の他の例を示すグラフ(a)、発電特性を示すグラフ(b)である。
本発明の発電素子の第三の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図16のC1−C1断面の図(a)、C2−C2断面の図(b)である。
第三の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
本発明の発電素子の第四の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図19のD1−D1断面の図(a)、D2−D2断面の図(b)である。
第四の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
本発明の発電素子の第五の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図22のE1−E1断面の図(a)、E2−E2断面の図(b)である。
第五の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
本発明の発電素子の第六の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)である。
図25のE1−E1断面の図(a)、E2−E2断面の図(b)である。
第六の実施形態の発電素子を構成する第1基板及び圧電素子を示す平面図(a)、正面図(b)である。
本発明の発電素子の第七の実施形態の外観を示す平面図である。
第七の実施形態の発電素子が有する4つの振動系に設定された共振特性(Z軸方向)の一例を示すグラフ(a)、発電特性を示すグラフ(b)である。
以下、本発明の発電素子の第一の実施形態について、図1〜図10に基づいて説明する。この実施形態の発電素子10は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、図1、図2に示すように、XY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体12,14と、第1の板状可撓体12の基端部を支持する台座16と、第1の板状可撓体12の先端部及び第2の板状可撓体14の基端部に接続された第1の重錘体18と、第2の板状可撓体14の先端部に接続された第2の重錘体20とを備えている。さらに第1及び第2の板状可撓体12,14の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子22と、発電回路24(図1、図2では省略してある)とを備えている。発電素子10を振動源に取り付けて使用する時は、例えば、台座16の下端部が振動源の上面(XY平面と平行な面)に固定される。
圧電素子22と発電回路24以外の部分は、いわゆるMEMS技術を使用して製造され、Si基板又はSOI基板等で成る第1基板K1及び第2基板K2を互いに貼り合わせ、研磨、エッチング、切断等の加工を行うことによって形成されている。
第1の板状可撓体12は、薄い第1基板K1の一部として形成され、1つの梁部材(第1梁部材)により構成されている。第1の板状可撓体12は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。
第2の板状可撓体14は、薄い第1基板K1により設けられ、2つの梁部材である第2梁部材14(1),14(2)により構成されている。第2梁部材14(1)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。第2梁部材14(2)は、基端部が第1の重錘体18の別の位置に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。
台座16は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。そして、台座16の内周部から第1の板状可撓体12が内向きに伸び、台座16の内側に第1及び第2の重錘体18,20が隙間を空けて収容されている。
第1の重錘体18は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。第1の重錘体18の重心位置は、第1の板状可撓体12に対してZ軸負方向にずれており、第1の重錘体18の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第1の重錘体18の外周部から第1の板状可撓体12が外向きに伸び、内周部から第2梁部材14(1),14(2)が内向きに伸び、第1の重錘体18の内側に第2の重錘体20が隙間を空けて収容されている。
第2の重錘体20は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、略四角形に形成されている。第2の重錘体20の重心位置は、第2の板状可撓体14に対してZ軸負方向にずれており、第2の重錘体20の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第2の重錘体20の外周部から第2梁部材14(1),14(2)が外向きに伸びている。
以上の構成により、第1の重錘体18は、第1の板状可撓体12及び台座16によって片持ち梁構造に支持される。また、第2の重錘体20は、第2の板状可撓体14(第2梁部材14(1),14(2))及び第1の重錘体18によって支持され、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、第1の重錘体18の第1基板K1表面をXY平面として、これに直交するZ軸方向に移動する。このとき、第2の重錘体20の第1基板K1表面は、第1の重錘体18の第1基板K1表面に対して平行に移動する。
なお、本願発明でのZ軸方向は、梁の支持平面である第1基板K1表面に対して直交する方向を言うものとする。従って、片持ち梁である第1の板状可撓体12の先端側に支持された第1の重錘体18は、第1の板状可撓体12の撓みにより、第1の重錘体18の第1基板K1表面がY軸回りのX軸方向に僅かに揺動し、第1の重錘体18の第1基板K1表面と直交するZ軸方向が僅かに変化するが、本願発明においては影響しないので、無視するものとする。また、第2の重錘体20の両端固定梁の支持構造を両持ち梁構造と称する。
圧電素子22は、図3(b)に示すように、第1基板K1の上面全体を覆う下部電極G、下部電極Gの上面全体を覆う圧電材料P、圧電材料Pの上面の特定の領域に設けた上部電極Eによって構成されている。圧電材料Pは、面内方向に伸縮する応力が作用したとき、厚み方向に分極を生じる性質を有し、上部電極Eが設けられた領域が圧電素子22として動作する。発電素子10の場合、第1及び第2の板状可撓体12,14の上面の5箇所に上部電極Eが配置され、合計5つの圧電素子22(1)〜22(5)が設けられている。
片持ち梁構造の場合、図4(a)の模式図に示すように、梁部材Hの先端部に取り付けられた重錘WにZ軸負方向の加速度が生じ力Fzが作用すると、梁部材Hが厚み方向に撓み、梁部材Hの表層のほぼ全ての領域(エリアAR1)に圧縮応力が発生する。反対に、重錘体WにZ軸正方向の加速度が生じ力−Fzが作用すると、梁部材Hの表層のほぼ全ての領域(エリアAR1)に引張り応力が発生する。
両持ち梁構造の場合、図4(b)の模式図に示すように、2つの梁部材Ha,Hbの先端部に取り付けられた重錘体WにZ軸負方向の加速度が生じ力Fzが作用すると、梁部材Haが厚み方向に撓み、梁部材Haの表層には、重錘体Wに近い約半分の領域(エリアAR2)に引張り応力が発生し、重錘体Wから離れた約半分の領域(エリアAR3)に圧縮応力が発生する。同様に、梁部材Hbも厚み方向に撓み、梁部材Hbの表層には、重錘体Wに近い約半分の領域(エリアAR4)に引張り応力が発生し、重錘体Wから離れた約半分の領域(エリアAR5)に圧縮応力が発生する。逆に、重錘体WにZ軸正方向の加速度が生じ力Fzが作用したときは、各領域の伸縮の方向が反転する。
このように、両持ち梁構造は、片持ち梁構造とは異なり、各梁部材の内部の応力分布が一様にはならない。圧電素子は、応力の方向が異なる領域に跨るように配置すると発生電荷が相殺されて発電できなくなるので、応力分布が一様な領域毎に設ける必要がある。そこで、発電素子10の場合、片持ち梁構造の第1の板状可撓体12には、第1の板状可撓体12のエリアAR1に相当する領域に圧電素子22(1)が配置されている。また、両持ち梁構造の第2の板状可撓体14には、第2梁部材14(1)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(2)と22(3)が各々配置され、第2梁部材14(2)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(4)と22(5)が各々配置されている。
発電回路24は、圧電素子22(1)〜22(5)に発生した電荷に基づいて流れる電流を整流し、これらを合成して電力を取り出す回路であり、図5に示すように、複数のダイオードで構成された全波整流回路24aと、全波整流回路24aの出力を平滑する平滑コンデンサ24bとで構成され、平滑コンデンサ24bの両端に接続された負荷Loに向けて電力を出力する。つまり、圧電素子22(1)〜22(5)に発電回路24を接続することによって、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力を取り出すことができる。
次に、発電素子10のZ軸方向の共振特性について説明する。上記の構造により、発電素子10には2つの振動系Re1,Re2が形成される。第1の振動系Re1は、第1の板状可撓体12の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz1は、第1の板状可撓体12のZ軸方向のバネ定数と、第1の板状可撓体12の先端部に接続された物体の質量(第1の重錘体18、第2の板状可撓体14及び第2の重錘体20の質量)とを調節することによって設定される。
第2の振動系Re2は、第2の板状可撓体14の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz2は、第2の板状可撓体14(第2梁部材14(1),14(2))のZ軸方向のバネ定数と、第2の板状可撓体14の先端部に接続された物体の質量(第2の重錘体20の質量)とを調節することによって設定される。
各振動系Re1,Re2のZ軸方向の共振特性は、例えば図6(a)のように設定することができる。なお、図6(a)に示す第2の振動系Re2の共振特性は、第2の板状可撓体14の基端部が台座16に直接接続された状態を仮想したものであり、第1の振動系Re1との相互作用は含んでいない。
第1の振動系Re1の共振特性は、共振周波数frz1付近に、台座16に作用した振動に共鳴して振幅A1が大きくなるピーキングが発生し、共振周波数frz1を中心とする半値幅hz1の周波数帯で、振幅A1がピーク値の1/2以上になっている。第2の振動系Re2の共振特性は、共振周波数frz2付近にピーキングが発生し、共振周波数frz2を中心とする半値幅hz2の周波数帯で、振幅A2がピーク値の1/2以上になっている。ここでは、共振周波数frz1とfrz2を意図的にずらしてあり、半値幅hz1の周波数帯と半値幅hz2の周波数帯は重なっていない。
台座16にZ軸方向の振動が加わると、この振動が第1の振動系Re1に伝わり、図6(b)に示すように、共振周波数frz1付近の周波数帯で発電量が大きくなる。また、この振動が第2の振動系Re2にも伝わり、共振周波数frz2付近の周波数帯でも発電量が大きくなる。したがって、周波数frz1〜frz2付近に跨る広い周波数帯で所定の発電量を得ることができる。
また、各振動系Re1,Re2のZ軸方向の共振特性は、図7(a)に示すように、共振周波数frz1とfrz2をほぼ同じ値に設定することも可能である。ほぼ同じ値とは、半値幅hz1の周波数帯と半値幅hz2の周波数帯が互いに重なる程度に近い値であることを言う。
例えば、第1及び第2の振動系Re1,Re2のQ値をQz1,Qz2(Qz1=QZ2>>1)、共振周波数frz1=frz2とし、台座16に共振周波数frz1,frz2と同じ周波数の振動が加わったときの動作を考える。台座16にこの振動が加わると、この振動が第1の振動系Re1に伝わり、第1の板状可撓体12が厚み方向に撓み、第1の重錘体18に、台座16が変位する加速度αのQz1倍の加速度(Qz1・α)が発生する。したがって、圧電素子20(1)には、概算で、第1の板状可撓体12の先端部と基端部の加速度の差(Qz1・α)に相当する電荷が発生する。例えば、Qz1=10とすれば、加速度(10α)に相当する電荷が発生することになる。
さらに、第1の重錘体18の振動が第2の振動系Re2に伝わり、第2の板状可撓体14(第2梁部材14(1),14(2))が厚み方向に撓む。そして、第2の重錘体20に、第1の重錘体18が変位する加速度のQz2倍の加速度(Qz2・Qz1・α)が発生する。したがって、圧電素子22(4)〜22(5)30には、概算で、第2の板状可撓体14の先端部と基端部の加速度の差(Qz2・Qz1・α)に相当する電荷が発生する。例えば、Qz2=Qz1=10とすれば、加速度(100α)に相当する電荷が発生することになる。
このように、第1の振動系Re1で(Qz1・α)に相当する電荷が発生し、第2の振動系Re2では(Qz2・Qz1・α)に相当する電荷が発生し、これらを合算することによって非常高い発電量を得ることができる。
なお、発電量を高くするには、共振周波数frz1とfrz2を一致させることが好ましいが、量産時は製造上のバラツキ等が生じるので、これらを正確に一致させることは難しい。そこで、発明者が実験やシミュレーションを行って検討した結果、第1の振動系Re1の半値幅hz1の周波数帯の一部と第2の振動系Re2の半値幅hz2の周波数帯の一部とが互いに重なっていれば、その重なっている周波数帯において、十分に高い発電量が得られることが分かった。つまり、振動系Re1,Re2の共振周波数frz1とfrz2をほぼ同じ値に設定することによって、図7(b)に示すように、半値幅hz1とhz2が重なる周波数帯で非常に高い発電量を得ることができる。
次に、発電素子10の第2の板状可撓体14の変形量について考える。図8(a)は、発電素子10を模式的に描いたものであり、図8(b)は、従来の発電素子26(特許文献1の図24の発電素子のような構造)を模式的に描いたものである。2つの発電素子10と26とを比較すると、第1の重錘体18が第1の可撓体12によって片持ち梁構造に支持されている部分は同様であるが、発電素子10は、第2の重錘体20が第2の板状可撓体14(14(1),14(2))によって両持ち梁構造に支持され、発電素子26は、第2の重錘体20が第2の板状可撓体27によって片持ち梁構造に支持されているという違いがある。
上記のように、2つの振動系の共振周波数frz1,frz2をほぼ同じ値に設定すると、第2の板状可撓体の変形量が格段に大きくなる。一般に、同じ加速度が重錘体に作用した場合、重錘体の変位量は、片持ち梁構造の方が両持ち梁構造よりも相対的に大きくなる。そのため、従来の発電素子26の場合、第2の板状可撓体27が片持ち梁構造なので、第2の板状可撓体27の変形量が大きくなり過ぎるおそれがあり、第2の板状可撓体27に疲労が蓄積して破損しやすくなり、製品寿命が短くなってしまう可能性がある。また、ストッパ部材の設計(例えば、ストッパ部材の働きをする第1の重錘体18等の設計)が難しくなる。
これに対して、発電素子10は、第2の板状可撓体14が両持ち梁構造なので、第2梁部材14(1),14(2)の変形量が相対的に抑えられ、第2梁部材14(1),14(2)に加わるストレスを軽減することができる。なお、両持ち梁構造の場合、各梁部材の変形量が小さくなるので、片持ち梁構造よりも発電量がやや低下するが、2つの梁部材に各々発電素子22を設けることによって、一定以上の発電量は確保することができる。
以上説明したように、発電素子10は、第1及び第2の板状可撓体12,14と第1及び第2の重錘体18,20とを組み合わせた独特な構造を有しているので、発電素子10に振動が加わった時の各板状可撓体12,14の変形量を容易に調節することができる。したがって、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、外形も非常にコンパクトにできる。
また、発電素子10は2つの振動系Re1,Re2を有しているので、振動系Re1,Re2の共振周波数frz1とfrz2を合わせることによって、発電効率を従来よりも格段に高くすることができ、共振周波数frz1とfrz2をずらすことによって、従来と同様の広周波数帯域発電も行うことができる。
次に、発電素子10の変形例について説明する。上述した発電素子10は、Z軸方向の発電を行う素子であり、Z軸方向の加速度が作用した時の第1及び第2の板状可撓体12,14の応力分布を考慮して、5つの圧電素子22が設けられている(22(1)〜22(5))。この圧電素子22の数及び配置を変更することによって、X軸方向の発電も可能になる。
片持ち梁構造の場合、図9(a)の模式図に示すように、梁部材Hの先端部に取り付けられた重錘WにX軸負方向の加速度が生じ力Fxが作用すると、重錘体Wの重心位置が梁部材Hよりも低い位置にあるため梁部材Hが厚み方向に撓み、梁部材Hには、表層のほぼ全ての領域(エリアAR1)に圧縮応力が発生する。反対に、重錘体WにX軸正方向の加速度が生じ力−Fxが作用すると、梁部材Hの表層のほぼ全ての領域(エリアAR1)に引張り応力が発生する。また、両持ち梁構造の場合、図9(b)の模式図に示すように、梁部材Hの先端部に取り付けられた重錘WにX軸負方向の加速度が生じ力Fxが作用すると、重錘体Wの重心位置が梁部材Hよりも低い位置にあるため梁部材Ha,Hbが各々厚み方向に撓み、梁部材Haの表層の応力分布がエリアAR2,AR3に区分され、梁部材Hbの表層の応力分布がエリアAR4,AR5に区分される。
したがって、片持ち梁構造の第1の板状可撓体12は、エリアAR1に相当する領域に圧電素子22(1)を配置し、両持ち梁構造の第2の板状可撓体14(第2梁部材14(1),14(2))は、AR2〜AR5に相当する領域に圧電素子22(2)〜22(5)を各々配置し、各圧電素子に図5の発電回路24を接続することによって、X軸及びZ軸方向の発電が可能になる。
発電素子10の第1の振動系Re1は、Z軸方向の共振周波数frz1及び半値幅hz1の他に、X軸方向の共振周波数frx1及び半値幅hx1を有しており、第2の振動系Re2は、Z軸方向の共振周波数frz2及び半値幅hz2の他に、X軸方向の共振周波数frx2及び半値幅hx2を有している。したがって、Z軸方向の発電と同様に、2つの振動系の共振周波数frx1,frx2を相互に合わせることによって、X軸方向の発電効率を格段に高くすることができ、共振周波数frx1,frx2を相互にずらすことによって、X軸方向の広周波数帯域発電も行うことができる。
また、圧電素子22の数及び配置を変更することによって、Y軸方向の発電も可能になる。片持ち梁構造の場合、図10(a)の模式図に示すように、梁部材Hの先端部に取り付けられた重錘WにY軸正方向の加速度が作用すると、重錘体Wの重心位置が梁部材Hよりも低い位置にあるため梁部材Hが厚み方向に撓み、梁部材Hの表層の応力分布がエリアAR1、AR2に区分される。また、両持ち梁構造の場合、図10(b)の模式図に示すように、梁部材Hの先端部に取り付けられた重錘WにY軸負方向の加速度が生じ力Fyが作用すると、梁部材Ha,Hbが各々幅方向に撓み、梁部材Haの表層の応力分布がエリアAR3〜AR6に区分され、梁部材Hbの表層の応力分布がエリアAR7〜AR10に区分される。
したがって、片持ち梁構造の第1の板状可撓体12は、エリアAR1、AR2に相当する領域に圧電素子22(1),22(2)を各々配置し、両持ち梁構造の第2の板状可撓体14(第2梁部材14(1),14(2))は、AR3〜AR10に相当する領域に圧電素子22(3)〜22(10)を各々配置し、各圧電素子に図5の発電回路24を接続することによって、Y軸、X軸及びZ軸方向の発電が可能になる。
発電素子10の第1の振動系Re1は、Y軸方向の共振周波数fry1及び半値幅hry1を有し、第2の振動系Re2は、Y軸方向の共振周波数fry2及び半値幅hy2を有している。したがって、X軸及びZ軸方向の発電と同様に、2つの振動系の共振周波数fry1,fry2を相互に合わせることによって、Y軸方向の発電効率を格段に高くすることができ、共振周波数fry1,fry2を相互にずらすことによって、Y軸方向の広周波数帯域発電も行うことができる。
次に、本発明の発電素子の第二の実施形態について、図11〜図15に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子28は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、図11、図12に示すように、XY平面に平行に配置された第1の板状可撓体12と、第2の板状可撓体30,32と、第1の板状可撓体12の基端部を支持する台座16と、第1の板状可撓体12の先端部及び第2の板状可撓体30,32の基端部に接続された第1の重錘体18と、第2の板状可撓体30の先端部に接続された第2の重錘体34と、第2の板状可撓体32の先端部に接続された第2の重錘体36とを備えている。さらに第1及び第2の板状可撓体12,30,32の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子22と、発電回路24(図11、図12では省略してある)とを備えている。発電素子28を振動源に取り付けて使用する時は、例えば、台座16の下端部が振動源の上面(XY平面と平行な面)に固定される。
圧電素子22と発電回路24以外の部分は、いわゆるMEMS技術を使用して製造され、Si基板又はSOI基板等で成る第1基板K1及び第2基板K2を互いに貼り合わせ、研磨、エッチング、切断等の加工を行うことによって形成されている。
第1の板状可撓体12は、薄い第1基板K1の一部として形成され、1つの梁部材(第1梁部材)により構成されている。第1の板状可撓体12は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。
第2の板状可撓体30は、薄い第1基板K1により設けられ、2つの梁部材である第2梁部材30(1),30(2)により構成されている。第2梁部材30(1)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸負方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体34の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。第2梁部材30(2)は、基端部が第1の重錘体18の別の位置に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体34の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。
第2の板状可撓体32は、薄い第1基板K1により設けられ、2つの梁部材である第2梁部材32(1),32(2)により構成されている。第2梁部材32(1)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸負方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体36の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。第2梁部材32(2)は、基端部が第1の重錘体18の別の位置に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体36の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されている。
台座16は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。そして、台座16の内周部から第1の板状可撓体12が内向きに伸び、台座16の内側に第1及び第2の重錘体18,34,36が隙間を空けて収容されている。
第1の重錘体18は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。第1の重錘体18の重心位置は、第1の板状可撓体12に対してZ軸負方向にずれており、第1の重錘体18の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第1の重錘体18の外周部から第1の板状可撓体12が外向きに伸び、内周部から第2梁部材30(1),30(2),32(1),32(2)が内向きに伸び、第1の重錘体18の内側に第2の重錘体34,36が隙間を空けて収容されている。
第2の重錘体34は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、略四角形に形成されている。第2の重錘体34の重心位置は、第2の板状可撓体30に対してZ軸負方向にずれており、第2の重錘体34の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第2の重錘体34の外周部から第2梁部材30(1),30(2)が外向きに伸びている。
第2の重錘体36は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、略四角形に形成されている。第2の重錘体36の重心位置は、第2の板状可撓体32に対してZ軸負方向にずれており、第2の重錘体36の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第2の重錘体36の外周部から第2梁部材32(1),32(2)が外向きに伸びている。
以上の構成により、第1の重錘体18は、第1の板状可撓体12及び台座16によって片持ち梁構造に支持される。また、第2の重錘体34は、第2の板状可撓体30(第2梁部材30(1),30(2))及び第1の重錘体18によって支持され、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、第2の重錘体34はZ軸方向に移動する。同様に、第2の重錘体36は、第2の板状可撓体32(第2梁部材32(1),32(2))及び第1の重錘体18によって支持され、台座16にZ軸方向に加速度が作用した時、第2の重錘体36はZ軸方向に移動する。つまり、第2の重錘体34と36は、各々両持ち梁構造に支持される。
圧電素子22は、図13(b)に示すように、第1基板K1の上面全体を覆う下部電極G、下部電極Gの上面全体を覆う圧電材料P、圧電材料Pの上面の特定の領域に設けた上部電極Eによって構成されている。圧電材料Pは、面内方向に伸縮する応力が作用したとき、厚み方向に分極を生じる性質を有し、上部電極Eが設けられた領域が圧電素子22として動作する。発電素子28の場合、第1及び第2の板状可撓体12,30,32の上面の9箇所に上部電極Eが配置され、合計9つの圧電素子22(1)〜22(9)が設けられている。
先に説明したように、重錘体にZ軸方向の加速度が作用した時、梁部材の表層に発生する応力分布は、片持ち梁構造の場合は図4(a)のようになり、両持ち梁構造の場合は図4(b)のようになる。そこで、発電素子28の場合、片持ち梁構造の第1の板状可撓体12には、第1の板状可撓体12のエリアAR1に相当する領域に、圧電素子22(1)が配置されている。また、両持ち梁構造の第2の板状可撓体30には、第2梁部材30(1)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(2)と22(3)が各々配置され、第2梁部材30(2)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(4)と22(5)が各々配置されている。同様に、両持ち梁構造の第2の板状可撓体32には、第2梁部材32(1)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(6)と22(7)が各々配置され、第2梁部材32(2)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(8)と22(9)が各々配置されている。
発電回路24は、図5に示すように、各圧電素子22に発生した電荷に基づいて流れる電流を整流し、これらを合成して電力を取り出す回路である。したがって、圧電素子22(1)〜22(9)に発電回路24を接続することによって、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力を取り出すことができる。
次に、発電素子28のZ軸方向の共振特性について説明する。上記の構造により、発電素子28には3つの振動系Re1,Re2,Re3が形成される。第1の振動系Re1は、第1の板状可撓体12の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz1は、第1の板状可撓体12のZ軸方向のバネ定数と、第1の板状可撓体12の先端部に接続された物体の質量(第1の重錘体18、第2の板状可撓体30,32及び第2の重錘体34,36の質量)とを調節することによって設定される。
第2の振動系Re2は、第2の板状可撓体30の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz2は、第2の板状可撓体30(第2梁部材30(1),30(2))のZ軸方向のバネ定数と、第2の板状可撓体30の先端部に接続された物体の質量(第2の重錘体34の質量)とを調節することによって設定される。
第3の振動系Re3は、第2の板状可撓体32の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz3は、第2の板状可撓体32(第2梁部材32(1),32(2))のZ軸方向のバネ定数と、第2の板状可撓体32の先端部に接続された物体の質量(第2の重錘体36の質量)とを調節することによって設定される。
各振動系Re1,Re2,Re3のZ軸方向の共振特性は、例えば図14(a)のように設定することができる。なお、図14(a)に示す第2の振動系Re2の共振特性は、第2の板状可撓体30の基端部が台座16に直接接続された状態を仮想したものであり、第1の振動系Re1との相互作用は含んでいない。同様に、第3の振動系Re3の共振特性は、第2の板状可撓体32の基端部が台座16に直接接続された状態を仮想したものであり、第1の振動系Re1との相互作用は含んでいない。
第1の振動系Re1の共振特性は、共振周波数frz1付近に、台座16に作用した振動に共鳴して振幅A1が大きくなるピーキングが発生し、第2及び第3の振動系Re2,Re3の共振特性は、共振周波数frz2,frz3付近に各々ピーキングが発生している。ここでは、3つの共振周波数frz1とfrz2とfrz3は意図的にずらしてあり、各半値幅hz1,hz2,hz3の周波数帯は相互に重なっていない。
台座16にZ軸方向の振動が加わると、この振動が第1の振動系Re1に伝わり、図14(b)に示すように、共振周波数frz1付近の周波数帯で発電量が大きくなる。また、この振動が第2及び第3の振動系Re2,Re3にも伝わり、共振周波数frz2,frz3付近の周波数帯でも発電量が大きくなる。したがって、周波数frz1〜frz3付近に跨る広い周波数帯で所定の発電量を得ることができる。
また、各振動系Re1,Re2のZ軸方向の共振特性は、図15(a)に示すように、共振周波数frz1,frz2,frz3をほぼ同じ値に設定することも可能である。ここでは、半値幅hz2の周波数帯の一部が半値幅hz2の周波数帯の一部に重なり、Re3の半値幅hz3の周波数帯の一部も半値幅hz1の周波数帯の一部に重なるように設定されている。半値幅hz2とhz3の周波数帯は重なっていない。このように設定することによって、図15(b)に示すように、半値幅hz1とhz2とが重なる周波数帯、及び半値幅hz1とhz3とが重なる周波数帯で、非常に高い発電量を得ることができる。
上記の発電素子10は、第2の板状可撓体及び第2の重錘体を1組だけ備えているのに対し、発電素子28は、第2の板状可撓体及び第2の重錘体を2組備えているという特徴がある。第1板状可撓体と第2の板状可撓体とが互いに平行か直角かの違いは、発電特性にはあまり影響しない。
発電素子28の場合、第2の重錘体34,36が各々小形なので、これを支持する第2梁部材の変形量は、発電素子10の梁部材よりよりも相対的に小さくなり、第2梁部材に加わるストレスを軽減することができる。また、ストッパ部材による保護も容易になる。なお、発電素子28は、発電素子10よりも発電量がやや低下するが、第2の梁部材30(1),30(2),32(1),32(2)に各々発電素子22を設けることによって、一定以上の発電量は確保することができる。
以上説明したように、発電素子28は、第1及び第2の板状可撓体12,30,32と第1及び第2の重錘体34,36とを組み合わせた独特な構造を有しているので、発電素子28に振動が加わったときの各板状可撓体12,30,32の変形量を容易に調節することができる。したがって、上記発電素子10と同様に、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、外形も非常にコンパクトにできる。
さらに、3つの振動系Re1,Re2,Re3を有しているので、共振周波数frz1,frz2,frz3をずらすことによって、発電素子10以上の広周波数帯域発電が可能になる。また、先に説明した要領で圧電素子22の数及び配置を変更することによって、3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の発電を行うことも可能になる。
次に、本発明の発電素子の第三の実施形態について、図16〜図18に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子38は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、図16、図17に示すように、XY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体40,42と、第1の板状可撓体40の基端部を支持する台座16と、第1の板状可撓体40の先端部及び第2の板状可撓体42の基端部に接続された第1の重錘体18と、第2の板状可撓体42の先端部に接続された第2の重錘体20とを備えている。さらに第1及び第2の板状可撓体40,42の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子22と、発電回路24(図16、図17では省略してある)とを備えている。発電素子38を振動源に取り付けて使用する時は、例えば、台座16の下端部が振動源の上面(XY平面と平行な面)に固定される。
圧電素子22と発電回路24以外の部分は、いわゆるMEMS技術を使用して製造され、Si基板又はSOI基板等で成る第1基板K1及び第2基板K2を互いに貼り合わせ、研磨、エッチング、切断等の加工を行うことによって形成されている。
第1の板状可撓体40は、薄い第1基板K1の一部として形成され、4つの梁部材である第1梁部材40(1)〜40(4)により構成されている。第1梁部材40(1)は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向で、長さ方向の軸が、第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第1の重錘体18の外周部(第1梁部材40(2)の基端部に近い位置)に連続している。第1梁部材40(2)は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が、第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第1の重錘体18の外周部(第1梁部材40(3)の基端部に近い位置)に連続している。第1梁部材40(3)は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向で、長さ方向の軸が、第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第1の重錘体18の外周部(第1梁部材40(4)の基端部に近い位置)に連続している。第1梁部材40(4)は、基端部が台座16に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸負方向で、長さ方向の軸が、第1の重錘体18の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第1の重錘体18の外周部(第1梁部材40(1)の基端部に近い位置)に連続している。
第2の板状可撓体42は、薄い第1基板K1の一部として形成され、4つの梁部材である第2梁部材42(1)〜42(4)により構成されている。第2梁部材42(1)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向で、長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第2の重錘体20の外周部(第2梁部材42(2)の基端部に近い位置)に連続している。第2梁部材42(2)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第2の重錘体20の外周部(第2梁部材42(3)の基端部に近い位置)に連続している。第2梁部材42(3)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向で、長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第2の重錘体20の外周部(第2梁部材42(4)の基端部に近い位置)に連続している。第2梁部材42(4)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸負方向で、長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差しないように配置され、先端部が第2の重錘体20の外周部(第2梁部材42(1)の基端部に近い位置)に連続している。
台座16は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。そして、台座16の内周部から第1の板状可撓体40が内向きに伸び、台座16の内側に第1及び第2の重錘体18,20が隙間を空けて収容されている。
第1の重錘体18は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。第1の重錘体18の重心位置は、第1の板状可撓体40に対してZ軸負方向にずれており、第1の重錘体18の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第1の重錘体18の外周部から第1梁部材40(1)〜40(4)が外向きに伸び、内周部から第2梁部材42(1)〜42(4)が内向きに伸び、第1の重錘体18の内側に第2の重錘体20が隙間を空けて収容されている。
第2の重錘体20は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、略四角形に形成されている。第2の重錘体20の重心位置は、第2の板状可撓体42に対してZ軸負方向にずれており、第2の重錘体20の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第2の重錘体20の外周部から第2梁部材42(1)〜42(4)が外向きに伸びている。
以上の構成により、第1の重錘体18は、第1の板状可撓体40(第1梁部材40(1)〜40(2))及び台座16によって外周部がほぼ均等に支持され、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、第1の重錘体18はZ軸方向に移動する。したがって、第1の重錘体18は、4つの梁部材によって両持ち梁構造に支持されている。
同様に、第2の重錘体20は、第2の板状可撓体42(第2梁部材42(1)〜42(2))及び第1の重錘体18によって外周部がほぼ均等に支持され、台座16にZ軸方向に加速度が作用した時、第2の重錘体20はZ軸方向に移動する。つまり、第2の重錘体20も、4つの梁部材によって両持ち梁構造に支持されている。
圧電素子22は、図18(b)に示すように、第1基板K1の上面全体を覆う下部電極G、下部電極Gの上面全体を覆う圧電材料P、圧電材料Pの上面の特定の領域に設けた上部電極Eによって構成されている。圧電材料Pは、面内方向に伸縮する応力が作用したとき、厚み方向に分極を生じる性質を有し、上部電極Eが設けられた領域が圧電素子22として動作する。発電素子38の場合、第1及び第2の板状可撓体40,42の上面の16箇所に上部電極Eが配置され、合計16個の圧電素子22(1)〜22(16)が設けられている。
先に説明したように、重錘体にZ軸方向の加速度が作用した時、梁部材の表層に発生する応力分布は、両持ち梁構造の場合、図4(b)のようになる。そこで、発電素子38の場合、両持ち梁構造の第1の板状可撓体40には、第1梁部材40(1)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(1)と22(2)が各々配置され、第1梁部材40(2)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(3)と22(4)が各々配置され、第1梁部材40(3)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(5)と22(6)が各々配置され、第1梁部材40(4)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(7)と22(8)が各々配置されている。
同様に、両持ち梁構造の第2の板状可撓体42には、第2梁部材42(1)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(9)と22(10)が各々配置され、第2梁部材42(2)のエリアAR2とAR3に相当する領域に圧電素子22(11)と22(12)が各々配置され、第2梁部材42(3)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(13)と22(14)が各々配置され、第2梁部材42(4)のエリアAR4とAR5に相当する領域に圧電素子22(15)と22(16)が各々配置されている。
発電回路24は、図5に示すように、各圧電素子22に発生した電荷に基づいて流れる電流を整流し、これらを合成して電力を取り出す回路である。したがって、圧電素子22(1)〜22(16)に発電回路24を接続することによって、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力を取り出すことができる。
次に、発電素子38のZ軸方向の共振特性について説明する。上記の構造により、発電素子38には2つの振動系Re1,Re2が形成される。第1の振動系Re1は、第1の板状可撓体40の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz1は、第1の板状可撓体40(第1梁部材40(1)〜40(4))のZ軸方向のバネ定数と、第1の板状可撓体40の先端部に接続された物体の質量(第1の重錘体18、第2の板状可撓体42及び第2の重錘体20の質量)とを調節することによって設定される。
第2の振動系Re2は、第2の板状可撓体42の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz2は、第2の板状可撓体42(第2梁部材42(1)〜42(4))のZ軸方向のバネ定数と、第2の板状可撓体42の先端部に接続された物体の質量(第2の重錘体20の質量)とを調節することによって設定される。
各振動系Re1,Re2のZ軸方向の共振特性は、例えば図6(a)のように設定することによって、図6(b)に示すように、周波数frz1〜frz2付近に跨る広い周波数帯で所定の発電量を得ることができる。また、図7(a)のように設定することによって、図7(b)に示すように、半値幅hz1とhz2とが重なる周波数帯で、非常に高い発電量を得ることができる。
上記の発電素子10の両持ち梁構造(第2の振動系Re2)は、梁部材の数が2つであり、各梁部材の長さ方向の軸が重錘体の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置されているので、各梁部材の長さが短い。
これに対して、発電素子38の両持ち梁構造(第1及び第2の振動系Re1,Re2)は、梁部材の数が4つであり、各梁部材の長さ方向の軸が重錘体の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差せず、重錘体の周囲を囲むように配置されているので、各梁部材の長さが長いという特徴がある。また、各梁部材の長さは、各梁部材の先端部を重錘体の外周部の異なる位置に連続させれば、容易に変更することができる。
梁部材の数が多いという特徴は、一定の加速度が作用した時、各梁部材の変位量が相対的に小さくなる方向に作用する。反対に、梁部材が長いという特徴は、一定の加速度が作用した時、各梁部材の変位量が相対的に大きくなる方向に作用し、その大きくなる度合いは、各梁部材の長さを変更することによって容易に調節することができる。したがって、発電素子38の両持ち梁構造の方が、各梁部材の変位量を最適化するためのパラメータの数が多い。
以上説明したように、発電素子38は、第1及び第2の板状可撓体40,42と第1及び第2の重錘体18,20とを組み合わせた独特な構造を有しているので、設計の自由度が非常に高く、発電素子38に振動が加わったときの各板状可撓体40,42の変形量をきめ細かく調節することができる。したがって、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、外形も非常にコンパクトにできる。さらに、先に説明した要領で圧電素子22の数及び配置を変更することによって、3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の発電を行うことも可能になる。
なお、発電素子38の場合、第1の振動系Re1は、第1梁部材40(2)と40(4)を省略した場合でも、第1梁部材40(1)と40(3)によって両持ち梁構造が成立し、第1梁部材40(1)と40(3)を省略した場合でも、第1梁部材40(2)と40(4)によって両持ち梁構造が成立するので、上記と同様の動作を行うことができる。また、第2の振動系Re2についても同様であり、第2梁部材42(2)と42(4)を省略した場合でも、第2梁部材42(1)と42(3)によって両持ち梁構造が成立し、第2梁部材42(1)と42(3)を省略した場合でも、第2梁部材42(2)と42(4)によって両持ち梁構造が成立するので、同様の上記と動作を行うことができる。
次に、本発明の発電素子の第四の実施形態について、図19〜図21に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子44は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、上記発電素子38(図16〜図18)の構成の一部を変更したものである。
発電素子44は、発電素子38とほぼ同じ構造の台座16、第1の板状可撓体40(第1梁部材40(1)〜40(4))及び第1の重錘体18を備えている。つまり、発電素子44の第1の振動系Re1は、発電素子38の振動系Re1と同様の両持ち梁構造に形成されている。
発電素子44の第2の振動系Re2は、新規な第2の板状可撓体46で第2の重錘体20を支持している。第2の板状可撓体46は、薄い第1基板K1の一部として形成され、4つの梁部材である第2梁部材46(1)〜46(4)により構成されている。第2梁部材46(1)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸正方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置され、先端部が第2の重錘体20に連続している。第2梁部材46(2)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置され、先端部が第2の重錘体20に連続している。第2梁部材46(3)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がX軸負方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置され、先端部が第2の重錘体20に連続している。第2梁部材46(4)は、基端部が第1の重錘体18に連続し、基端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向で、長さ方向の軸が第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置され、先端部が第2の重錘体20に連続している。
発電素子44の圧電素子22は、図21に示すように、16個の圧電素子22(1)〜22(16)により構成され、上記発電素子38の圧電素子22(1)〜22(16)と同様の考え方で、第1及び第2の板状可撓体40,46の上面に配置されている。
その他、発電素子44の場合、第1の重錘体18の4つの端部(第1梁部材40(1)〜40(4)の各先端部が連続している端部)に、第1基板K1を短く延長することによって、4つの庇部48(1)〜48(4)が設けられているという特徴がある。庇部48(1)は、第1梁部材40(1)の、第1の重錘部との境界に近い部分の応力分布を適正化する働きをする。また、庇部48(1)を設けることによって、圧電素子22(1)の上部電極Eの配置が容易になる。その他の庇部48(2)〜48(4)についても同様である。
発電素子44は、上記発電素子38と同様に、設計の自由度が非常に高く、一定の加速度が加わったときの各板状可撓体40,46の変形量をきめ細かく調節することができる。したがって、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、発電素子38と同じ要領で圧電素子22の数及び配置を変更することによって、3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の発電を行うことも可能になる。
なお、先に説明した発電素子38の第2の振動系Re2は、各梁部材の長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差せず、第2の重錘体20の周囲を囲むように配置されているので、各梁部材の長さを、第2の重錘体20の1辺と同程度の長さにすることができる。これに対して、発電素子44の第2の振動系Re2は、各梁部材の長さ方向の軸が、第2の重錘体20の中心を通るZ軸方向の中心軸と交差するように配置しているので、各梁部材の長さは、第2の重錘体20の1辺の長さの1/3〜2/5程度に制限される。したがって、第2の振動系Reの発電量を高くしたいときは、発電素子38の方が有利である。
しかしながら、発電素子44は、第2の重錘体20の外周部に対して非常に近い位置にストッパ部材(第1の重錘体18)を配置できるので、衝撃に対する保護が容易になるという利点がある。
次に、本発明の発電素子の第五の実施形態について、図22〜図24に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子50は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、上記発電素子28の構成の一部を変更したものである。
発電素子50は、図22、図23に示すように、発電素子38とほぼ同じ構造の台座16、第1の板状可撓体40(第1梁部材40(1)〜40(4))及び第1の重錘体18を備え、第1の振動系Re1が、発電素子38と同様の両持ち梁構造に形成されている。
また、発電素子50は、発電素子28の第2の板状可撓体30及び第2の重錘体34とほぼ同じ構造の第2の板状可撓体52(第2梁部材52(1),52(2))及び第2の重錘体56を備え、第2の振動系Re2が両持ち梁構造に形成されている。また、発電素子28の第3の板状可撓体32及び第2の重錘体36とほぼ同じ構造の第2の板状可撓体54(第2梁部材54(1),54(2))及び第2の重錘体58を備え、第3の振動系Re3が両持ち梁構造に形成されている。
つまり、発電素子50は、上述の発電素子28の第1の共振系Re1を、発電素子38の第1の共振系Re1に置き換えたような構成になっている。第2の板状可撓体の方向がX軸に対して平行か直角かという違いはあるが、発電特性にはあまり影響しない。
発電素子50の圧電素子22は、図24に示すように、16個の圧電素子22(1)〜22(16)により構成され、図4(a)、(b)に示す応力分布を考慮して、第1及び第2の板状可撓体40,52,54の上面に配置されている。
各振動系Re1,Re2,Re3のZ軸方向の共振特性は、例えば図14(a)のように設定することによって、図14(b)に示すように、周波数frz1〜frz3付近に跨る広い周波数帯で所定の発電量を得ることができる。また、図15(a)のように設定することによって、図15(b)に示すように、半値幅hz1,hz2,hz3が重なる周波数帯で、非常に高い発電量を得ることができる。
上記発電素子28は、第1の振動系Re1が片持ち梁構造なので、第1の重錘体18の変位量が大きくなり、特に共振周波数frz1,frz2,frz3をほぼ同じ値に設定した場合、第2の板状可撓体52,54の変形量も非常に大きくなる。
これに対して、発電素子50は、第1の振動系Re1が、上記発電素子38と同様の両持ち梁構造なので、第1の板状可撓体40の変形量を小さくすることができ、その結果、発電素子50の第2の板状可撓体52,54の変形量も小さくなり、第2梁部材52(1),52(2),54(1),54(2)に加わるストレスを容易に軽減することができる。
以上説明したように、発電素子50によれば、上記発電素子28と同様の機能を実現することができる。しかも、設計の自由度が非常に高く、発電素子50に振動が加わったときの各板状可撓体40,52,54の変形量をきめ細かく調節することができるので、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、先に説明した要領で圧電素子22の数及び配置を変更することによって、3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の発電を行うことも可能になる。
次に、本発明の発電素子の第六の実施形態について、図25〜図27に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子60は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、図25、図26に示すように、XY平面に平行に配置された第1及び第2の板状可撓体62,64と、第1の板状可撓体62の基端部を支持する台座16と、第1の板状可撓体62の先端部及び第2の板状可撓体64の基端部に接続された第1の重錘体66と、第2の板状可撓体64の先端部に接続された第2の重錘体68とを備えている。さらに第1及び第2の板状可撓体62,64の変形に基づいて電荷を発生させる圧電素子22と、発電回路24(図25、図27では省略してある)とを備えている。発電素子60を振動源に取り付けて使用する時は、例えば、台座16の下端部が振動源の上面(XY平面と平行な面)に固定される。
圧電素子22と発電回路24以外の部分は、いわゆるMEMS技術を使用して製造され、Si基板又はSOI基板等で成る第1基板K1及び第2基板K2を互いに貼り合わせ、研磨、エッチング、切断等の加工を行うことによって形成されている。
第1の板状可撓体62は、薄い第1基板K1の一部として形成され、2つの梁部材である第1梁部材62(1),62(2)により構成されている。第1梁部材62(1),62(2)は、互いに逆向きに屈曲したL字形に形成され、基端部が台座16の互いに近接した位置に各々連続し、先端部が第1の重錘体66の側端部の互いに近接した位置に各々連続し、第1梁部材62(1)と62(2)で囲んだ内側に第2の重錘体68を収容している。
第2の板状可撓体64は、薄い第1基板K1により設けられ、2つの梁部材である第2梁部材64(1),64(2)により構成されている。第2梁部材64(1),64(2)は、互いに逆向きに屈曲したL字形に形成され、第2梁部材64(1)が第1梁部材62(1)の内側にほぼ平行に配置され、第2梁部材64(2)が第1梁部材62(2)の内側に略平行になるように配置されている。そして、基端部が第1の重錘体66の互いに近接した位置に各々連続し、先端部が第2の重錘体68の側端部の互いに近接した位置に各々連続し、第2梁部材64(1)と64(2)で囲んだ内側に第2の重錘体68を収容している。
台座16は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、矩形の枠体状に形成され、その中心軸がZ軸と平行に配置されている。そして、台座16の内周部から第1の板状可撓体62が内向きに伸び、台座16の内側に第1及び第2の重錘体66,68が隙間を空けて収容されている。
第1の重錘体66は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、小形の略四角形に形成されている。第1の重錘体66の重心位置は、第1の板状可撓体62に対してZ軸負方向にずれており、第1の重錘体66の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第1の重錘体66の、第2の重錘体68側の側端部から、第1梁部材62(1),62(2)及び第2梁部材64(1),64(2)が伸びている。
第2の重錘体20は、薄い第1基板K1と厚い第2基板K2とが重なっている部分に設けられ、第1の重錘体66よりも少し大きい略四角形に形成されている。第2の重錘体68の重心位置は、第2の板状可撓体64に対してZ軸負方向にずれており、第2の重錘体68の下面は、台座16の下面よりも高い位置にある。そして、第2の重錘体68の、第1の重錘体66と反対側の側端部から、第2梁部材64(1),64(2)が伸びている。
以上の構成により、第1の重錘体66は、第1の板状可撓体62(第1梁部材62(1),62(2))及び台座16によって片持ち梁構造に支持される。同様に、第2の重錘体68は、第2の板状可撓体64(第2梁部材64(1),64(2))及び第1の重錘体66によって片持ち梁構造に支持される。
圧電素子22は、図27(b)に示すように、第1基板K1の上面全体を覆う下部電極G、下部電極Gの上面全体を覆う圧電材料P、圧電材料Pの上面の特定の領域に設けた上部電極Eによって構成されている。圧電材料Pは、面内方向に伸縮する応力が作用したとき、厚み方向に分極を生じる性質を有し、上部電極Eが設けられた領域が圧電素子22として動作する。発電素子60の場合、第1及び第2の板状可撓体62,64の上面の4箇所に上部電極Eが配置され、合計4つの圧電素子22(1)〜22(4)が設けられている。
先に説明したように、重錘体にZ軸方向の加速度が作用した時、梁部材の表層に発生する応力分布は、片持ち梁構造の場合は図4(a)のようになる。梁部材がL字状に屈曲していても同様である。そこで、発電素子60の場合、片持ち梁構造の第1の板状可撓体62には、第1梁部材62(1)と62(2)のエリアAR1に相当する領域に圧電素子22(1),22(2)が各々配置され、片持ち梁構造の第2の板状可撓体64にも、第2梁部材64(1)と64(2)のエリアAR1に相当する領域に圧電素子22(3),22(4)が各々配置されている。
発電回路24は、図5に示すように、各圧電素子22に発生した電荷に基づいて流れる電流を整流し、これらを合成して電力を取り出す回路である。したがって、圧電素子22(1)〜22(4)に発電回路24を接続することによって、台座16にZ軸方向の加速度が作用した時、この加速度に応じた電力を取り出すことができる。
次に、発電素子60のZ軸方向の共振特性について説明する。上記の構造により、発電素子60には2つの振動系Re1,Re2が形成される。第1の振動系Re1は、第1の板状可撓体62の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz1は、第1の板状可撓体62(第1梁部材62(1),62(2))のZ軸方向のバネ定数と、第1の板状可撓体62の先端部に接続された物体の質量(第1の重錘体66、第2の板状可撓体64及び第2の重錘体68の質量)とを調節することによって設定される。
第2の振動系Re2は、第2の板状可撓体64の可撓性に基づいて形成される振動系であり、Z軸方向の共振周波数frz2は、第2の板状可撓体64(第2梁部材64(1),64(2))のZ軸方向のバネ定数と、第2の板状可撓体64の先端部に接続された物体の質量(第2の重錘体68の質量)とを調節することによって設定される。
各振動系Re1,Re2のZ軸方向の共振特性は、例えば図6(a)のように設定することによって、図6(b)に示すように、周波数frz1〜frz2付近に跨る広い周波数帯で所定の発電量を得ることができる。また、図7(a)のように設定することによって、図7(b)に示すように、半値幅hz1とhz2とが重なる周波数帯で、非常に高い発電量を得ることができる。
上記の発電素子10,38,44は、発電素子60と同様に2つの振動系Re1,Re2を備えているが、少なくとも一方の振動系が両持ち梁構造なので、発電量がある程度制限される。これに対して、発電素子60は、2つの振動系が共に片持ち梁構造なので、非常に高い発電量を得ることができる。また、第1梁部材62(1),62(2)及び第2梁部材64(1),64(2)がL字形に屈曲した形状であり、各梁部材を非常に長くできるという特徴があり、その分、各梁部材の変形量が大きくなり、各振動系Re1,Re2の発電量をさらに高くすることができる。
なお、片持ち梁構造の場合、板状可撓体の変形量が大きくなり、板状可撓体に加わるストレスが大きくなり過ぎるおそれがある。しかし、発電素子60の場合、第1の板状可撓体62が、互いに並列に配置された2つの梁部材(第1梁部材62(1),62(2))により構成されているので、その分、第1の板状可撓体62の変形量が一定以下に抑えられる。同様に、第2の板状可撓体64が、互いに並列に配置された2つの梁部材(第2梁部材64(1),64(2))により構成されているので、その分、第2の板状可撓体64の変形量も一定以下に抑えられる。
以上説明したように、発電素子60は、第1及び第2の板状可撓体62,64と第1及び第2の重錘体66,68とを組み合わせた独特な構造を有しているので、発電素子60に振動が加わった時の各板状可撓体62,64の変形量を容易に調節することができる。したがって、上記発電素子10,38,44と同様に、発電効率を向上させるという課題と、板状可撓体の変形量を一定以下に抑えるという課題を、発電素子の用途や仕様に応じてバランスよく達成することができる。また、外形も非常にコンパクトにできる。さらに、先に説明した要領で圧電素子22の数及び配置を変更することによって、3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の発電を行うことも可能になる。
次に、本発明の発電素子の第七の実施形態について、図28、図29に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
この実施形態の発電素子70は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の振動を受けて発電を行う素子であり、2台の発電素子10(図1〜図7)を組み合わせて1台の発電素子にしたものである。具体的には、図28に示すように、2台の台座16を縦に並べて一体化した形状の台座72が設けられ、台座72を利用して2つの発電素子部10a,10bが設けられている。発電素子部10a,10bの各構成は、上記発電素子10と同様である。
発電素子70には、4つの振動系Re1〜Re4が形成される。第1及び第2の振動系Re1,Re2は、発電素子部10aが有する2つの振動系であり、第3及び第4の振動系Re3,Re4は、発電素子部10bが有する2つの振動系である。
各振動系Re1〜Re4のZ軸方向の共振特性は、例えば図29(a)のように設定することができる。なお、図29(a)に示す第2の振動系Re2の共振特性は、第2の板状可撓体30の基端部が台座72に直接接続された状態を仮想したものであり、第1の振動系Re1,との相互作用は含んでいない。同様に、第4の振動系Re3の共振特性は、第2の板状可撓体30の基端部が台座72に直接接続された状態を仮想したものであり、第3の振動系Re3との相互作用は含んでいない。
ここでは、共振周波数frz1とfrz2がほぼ同じ値に設定され、第2の振動系Re2の半値幅hz2の周波数帯の一部が第1の振動系Re1の半値幅hz2の周波数帯の一部に重なっている。同様に、共振周波数frz3とfrz3がほぼ同じ値に設定され、第2の振動系Re2の半値幅hz2の周波数帯の一部が第1の振動系Re1の半値幅hz2の周波数帯の一部に重なっている。共振周波数frz1,frz2とfrz3,frz4は意図的にずらしてあり、半値幅hz1,hz2とhz3,hz4の周波数帯は相互に重なっていない。
発電素子70は、共振周波数frz1とfrz2がほぼ同じ値に設定されているので、半値幅hz1とhz2とが重なる周波数帯で非常に高い発電量を得ることができる。さらに、共振周波数frz3とfrz4がほぼ同じ値に設定されているので、半値幅hz1とhz2とが重なる周波数帯でも非常に高い発電量を得ることができる。つまり、図29(b)に示すように、異なる2つの周波数帯で、非常に高い発電量を得ることができる。
図29(a)に示す共振周波数の設定は適宜変更することができ、例えば、共振周波数frz1,frz2とfrz3,frz4とをもっと近い値に設定すれば、周波数frz1〜frz4付近に跨る広い周波数帯で所定の高い発電量を得ることができる。また、4つの共振周波数frz1〜frz4をほぼ同じ値に設定すれば、半値幅hz1〜hz4が重なる周波数帯で非常に高い発電量を得ることができる。
なお、本発明の発電素子は、上記の実施形態及び変形例に限定されるものではない。上記実施形態が有する個々の振動系の構造は、それぞれ、(a)片持ち梁構造で梁部材が短い、(b)片持ち梁構造で梁部材が長い、(c)2つ以上の梁部材で片持ち梁構造が構成されている、(d)両持ち梁構造で梁部材が短い、(e)両持ち梁構造で梁部材が長い、(f)両持ち梁構造が3つ以上の梁部材で構成されている、等の特徴を有しており、上記の発電素子10,28,38,44,50,60,70は、(a)〜(f)のどれかに該当する振動系を適宜組み合わせることによって、梁部材の変形量を適切な値に調節している。組み合わせ方は、上記実施形態の組み合わせに限定されず、発電素子の用途や仕様に合わせて自由に変更することができる。また、上記実施形態では、1つの発電素子に設ける振動系の数が2〜4つであるが、5つ以上の振動系を設けてもよい。
その他、発電素子の製造プロセスは、MEMS技術を用いたプロセスに限定されず、個々の構造に合わせて自由に変更することができる。また、圧電素子の構造は、圧電素子22の構造(図3(b)等に示す構造)に限定されず、同様の機能を実現できる他の構造に変更してもよい。
10,28,38,44,50,60,70 発電素子
12,40,62 第1の板状可撓体
40(1)〜40(4),62(1),62(2) 第1梁部材
14,27,30,32,42,46,52,54,64 第2の板状可撓体
14(1),14(2),30(1),30(2),32(1),32(2),42(1)〜42(4),46(1)〜46(4),52(1),52(2),54(1),54(2),64(1),64(2) 第2梁部材
16,72 台座
18,66第1の重錘体
20,34,36,56,58,68 第2の重錘体
22,22(1)〜22(16) 圧電素子
24 発電回路
frx1,fry1,frz1 X、Y及びZ軸方向の共振周波数(第1の振動系)
frx2,fry2,frz2 X、Y及びZ軸方向の共振周波数(第2の振動系)
frx3,fry3,frz3 X、Y及びZ軸方向の共振周波数(第3の振動系)
hx1,hy1,hz1 X、Y及びZ軸方向の半値幅(第1の振動系)
hx2,hy2,hz2 X、Y及びZ軸方向の半値幅(第2の振動系)
hx3,hy3,hz3 X、Y及びZ軸方向の半値幅(第2の振動系)
Re1 第1の振動系
Re2 第2の振動系
Re3 第3の振動系
E 上部電極
G 下部電極
P 圧電材料