以下、実施形態の情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それらの構成の重複する説明は省略する場合がある。
実施形態に示す接続率シミュレーション装置1は、情報処理装置の一例である。なお、本願でいう「接続」とは、電気通信が可能な状態になることを含む。また、接続率シミュレーション装置1は、無線通信により直接的に接続される装置同士を跨ぐ通信経路の接続の可能性を解析する。無線通信による接続の可能性について解析される通信経路(任意の二つの集約装置または通信ノードの間の区間)を単に「対象区間」と呼ぶ。
接続率シミュレーション装置1の説明に先だち、実施形態における通信の「接続確率」について説明する。実施形態における「接続確率」には、「相互接続確率」と「ノード接続確率」の2つの定義が含まれており、それぞれを以下のように定義する。図14と図15は、実施形態の接続確率について説明するための図である。
「相互接続確率」とは、「対象区間」の通信ノード相互間の接続のしやすさを示す指標値のことである。また、「ノード接続確率」とは、通信ノードの通信が集約装置を経由して通信システムに接続する際の接続のしやすさを示す指標値である。
ノード接続確率は、例えば、上記の経路上の対象区間ごとの相互接続確率に基づいて算出される。以下に計算例を示すが、本願では相互接続確率からノード接続確率を算出する方法は問わない。数値計算を用いて算出しても良いし、後述する様なノードの密度から間接的に求める方法でも良い。
[相互接続確率からノード接続確率を計算する例]
マルチホップ型の通信システムにおいては、通信ノードが集約装置を経由して通信システム(センターサーバー23)に接続する経路は複数存在する。
存在する複数経路のうち特定の経路に着目すると、例えば、通信ノードからセンターサーバー23までの通信経路を図14に示すようにモデル化できる。図14に示すモデルでは、その特定の経路上に複数の通信ノードが対象区間を挟み直列に連結され、最終的に集約装置を経由してセンターサーバー23に接続されている。例えば、SM1とSM2は通信ノードであり、CRは集約装置である。
例えば、各「対象区間」の通信の接続のしやすさが確率的に定まるものと仮定して、その特定の経路を用いて通信ノードがセンターサーバー23と接続できるノード接続確率の算定を下記のように定義してもよい。通信ノードであるSM1がセンターサーバー23と中継段数を1段とし、2個の「対象区間」を経た通信のノード接続確率をp1で示し、SM2がセンターサーバー23と中継段数を2段とし、3個の「対象区間」を経た通信のノード接続確率をp2で示すと、それぞれ下記の式で表すことができる。
p1=f2(d0、d1) ・・・(1)
p2=f3(d0、d1、d2) ・・・(2)
上記の式(1)と式(2)における変数d0、d1、d2のそれぞれは、センターサーバー23からCRまで、CRからSM1まで、SM1からSM2までの各対象区間の相互接続確率である。式(1)における関数f2は、変数d0とd1の2個の変数をとり、式(2)における関数f3は、変数d0とd1とd2の3個の変数をとる。上記と同様に、センターサーバー23までの中継段数を(N−1)段とし、N個の「対象区間」を経た通信のノード接続確率をpNで示す。式(3)はpNを算出するための演算式である。
pN=fN(d0、d1、d2、・・・、d(N−1)) ・・・(3)
式(3)に示す関数fNは、変数d0からd(N−1)のN個の変数をとる。例えば、Nは、2以上の自然数である。なお、式(3)のように規定することにより、上記の関数は、中継段数に応じた「対象区間」の個数によって変数の数を変更できる。
例えば、上記の各式に示すノード接続確率を、経路上に直列に配置される各「対象区間」の相互接続確率の積で表してもよい。なお、上記の演算式の各関数として、数値解析的な算定方法を利用することに制限はなく、論理的な算定手法を利用して積み上げた結果から相互接続確率を算定するものであってもよい。例えば、上記の式(1)を下記の式(4)のように定義してもよい。
p1=d0∧d1 ・・・(4)
上記の式(4)は、特定の経路を用いて通信ノード(SM1)がセンターサーバー23と接続できる確率p1を、経路上に直列に配置される各「対象区間」の相互接続確率の論理積で表したものである。
また、通信ノードからセンターサーバー23までの間に複数経路が並列的に存在する場合には、例えば、その通信経路を図15に示すようにモデル化できる。
この場合には、複数の経路のうち何れかの経路が利用できれば通信が可能であることは、各経路の通信がそれぞれ可能であることの論理和(OR)が有意であることに等価である。そこで、センターサーバー23までの複数の経路それぞれの接続のしやすさを、論理和(OR)が有意である経路のそれぞれのノード接続確率の和で表してもよい。
図15に示すSM2は、2つの通信経路を利用してセンターサーバー23と通信することができる。第1の経路は、SM1とCRを経由してセンターサーバーと通信する経路であり、第2の経路は、CRを経由してセンターサーバーと通信する経路である。
第1の経路を利用してSM2がセンターサーバー23と中継段数を2段で接続できるノード接続確率は、前述の式(2)に示した通りp2である。
また、第2の経路を利用してSM2がセンターサーバー23と中継段数を1段で接続できるノード接続確率は、前述の式(1)と同様の式(5)に示すようにp2BPである。
p2BP=f2(d0、d3) ・・・(5)
この場合、解析対象の通信ノードであるSM2のノード接続確率は、第1の経路のp2と第2経路のp2BPの和で表すことができる。また、上記の関数は、数値解析的な算定方法を利用することに制限はなく、論理的な算定手法を利用して積み上げた結果から相互接続確率を算定するものであってもよい。上記のような演算により算定された結果を、「論理和」と呼ぶ。
[相互接続確率からノード接続確率をノード密度から間接的に求める例]
前記のとおり解析対象のノード接続確率は、存在するセンターサーバー23までの複数の経路それぞれの接続のしやすさの論理和をとったものである。上記のように遂次論理和を算出してもよいが、これに代えて下記の方法でノード接続確率を算出してもよい。
例えば、解析対象ノードの周りのノード密度が高くなるに従いセンターサーバーまでの経路が多くなり、論理和として積み上げられる経路が増える。つまり、解析対象ノードの周りのノード密度が高い程、ノード接続確率は高くなる傾向が見られる。
図16は、実施形態のノード密度とノード接続確率の関係について示す図である。図16に示すグラフの横軸は、ノード密度であり、縦軸がノード接続確率である。図16に示すノード密度とノード接続確率の相関関係は、通信ノードの接続実績や上記の理論計算等を用いて予め作成することが可能である。この図16に示すような相関関係を利用すれば、解析対象の通信ノードより上位の通信ノードのノード密度の値からノード接続確率を間接的に求めることが可能である。
(第1の実施形態)
図1は、実施形態の接続率シミュレーション装置1の構成を示す図である。接続率シミュレーション装置1は、「マルチホップ型」の通信システム2において、通信ノード21ごとの通信の接続確率などについて解析する。
[通信システム]
まず、解析対象の通信システム2の一例について説明する。通信システム2は、複数の通信ノード21と、集約装置22と、センターサーバー23とを備える。
複数の通信ノード21について説明する。複数の通信ノード21のそれぞれは、無線通信モジュールと、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、各種回路などを有する。通信ノード21は、無線信号を利用して通信する。
例えば、通信ノード21は、それぞれ集約装置22宛に情報を送信する。通信ノード21が集約装置22宛に送信する情報には、少なくとも自通信ノード21のノード情報が含まれる。上記のノード情報には、自通信ノード21の識別情報、電波受信強度、各種計測値などのデータが含まれる。電波受信強度には、他の装置から受信した電波の電界強度又は信号強度に関するデータが含まれる。通信ノード21は、他の通信ノード21又は集約装置22との間で、所定の無線通信方式により通信する。
集約装置22について説明する。集約装置22は、無線通信モジュールと、CPUなどのプロセッサと、各種回路などを有する。集約装置22は、所定の範囲内にある少なくとも1つの通信ノード21からのノード情報を取得して、そのノード情報を集約(収集)する。
集約装置22には、1又は複数の通信ノード21が接続され、集約装置22を起点とするツリー型のネットワークが形成される。複数の通信ノード21は、ツリー型のネットワークによって階層的に構成されている。集約装置22とその集約装置22に直接的に接続される1又は複数の通信ノード21との間は、無線通信により接続される。
例えば、集約装置22に直接的に接続される第1層には、通信ノード21−1と通信ノード21−2とが含まれる。第2層には、通信ノード21−11と通信ノード21−21と通信ノード21−22とが含まれる。通信ノード21−1と、通信ノード21−2と、通信ノード21−11と、通信ノード21−21と、通信ノード21−22のそれぞれは、通信ノード21の一例である。以下、通信ノードを他の通信ノードと区別しない場合、単に通信ノード21又は複数の通信ノード21という。
上記の場合、通信ノード21−11が通信ノード21−1に対して通信ノード21−11のノード情報を送信し、通信ノード21−1が集約装置22に対して通信ノード21−11のノード情報を中継して送信する。通信ノード21−21が通信ノード21−2に対して通信ノード21−21のノード情報を送信し、通信ノード21−2が集約装置22に対して通信ノード21−21のノード情報を中継して送信する。通信ノード21−22の場合も、上記の通信ノード21−21と同様である。
なお、図1に示す範囲は第2層までであるが、これに制限されることはなく、第3層以上の階層が含まれていてもよい。上記のように、1つの階層に少なくとも1つの通信ノード21を割り付けて、多段で中継する構成をとる場合には、各通信ノード21において隣接する階層の通信ノード21との接続性を高めることで、通信システム2の接続性を高めることができる。
集約装置22は、階層的な接続関係の下で無線信号を用いて通信する通信ノード21と通信する。集約装置22と、階層的な接続関係の下で無線信号を用いて通信する通信ノード21とが通信する無線通信ネットワーク20−1が形成される。
通信ノード21が特定の集約装置22の階層的な接続関係の下で無線信号を用いて通信する範囲を超えて広範囲に設置されている場合には、複数の集約装置22を設置して、通信ノード21のそれぞれが、複数の集約装置22のうちの何れかの集約装置22の無線通信範囲内になるように通信経路を設定するとよい。前述の無線通信ネットワーク20−1と同様に、複数の集約装置22のそれぞれに対応する無線通信ネットワーク20−Nなどが形成される。
集約装置22は、通信ノード21から取得したノード情報を、広域ネットワーク24を通してセンターサーバー23に送信する。この広域ネットワーク24は、例えば光ケーブルネットワーク網や携帯電話ネットワーク網などである。
センターサーバー23は、集約装置22から送られてきた各通信ノード21の情報を、記憶装置に記憶させる。センターサーバー23は、接続率シミュレーション装置1からの要求に応じて、各通信ノード21の情報を提供する。例えば、各通信ノード21の情報は、集約装置22が集約した各通信ノード21のノード情報、ノード接続実績に関する情報等の情報である。
[接続率シミュレーション装置]
前述の図1に示すように、接続率シミュレーション装置1は、シミュレーション条件取得部11と、ノード接続確率算出部12と、システム全体接続率算出部13と、結果出力部14と、電波伝搬モデル取得部15と、記憶部16とを備える。
シミュレーション条件取得部11と、ノード接続確率算出部12と、システム全体接続率算出部13と、結果出力部14と、電波伝搬モデル取得部15は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
シミュレーション条件取得部11は、通信システム2の全体の接続率を計算する条件を取得する。条件には、例えば、ノード接続確率算出部12が接続確率の算出に用いるパラメータの設定値などが含まれる。
ノード接続確率算出部12は、解析対象の通信ノード21を配置する位置を、対象通信ノードTNの位置として定める。ここで、解析対象の通信ノード21すなわち対象通信ノードTNとは、現実にはまだ設置されていない通信ノードである。ノード接続確率算出部12は、仮に、上記定めた位置に通信ノード21を設置した場合の「ノード接続確率」を求める。以下、これを前提とする。
ノード接続確率算出部12は、対象通信ノードTNの位置に関する次の各種情報に基づいて、対象通信ノードTNの「ノード接続確率」を算出する。上記の各種情報には、センターサーバー23から取得した通信ノード接続実績情報、後述するノード設計情報DB161から取得した通信ノード設計情報、および、後述する電波伝搬モデルDB162から取得した電波伝搬モデル情報が含まれる。
図2は、実施形態の電波伝搬モデルDB162について説明するための図である。図2に示すように、電波伝搬モデルDB162は、環境条件ごとの電波伝搬モデルを集めたものである。電波伝搬モデル情報は、環境条件ごとの電波伝搬モデルを示す情報である。電波伝搬モデル情報は、基本的には、通信ノード間の距離(以下、通信距離)と、受信電界強度とを互いに対応付けた情報である。
また、電波伝搬モデル情報は、受信電界強度の分散などが更に付加されたものであってよい。例えば、電波伝搬モデルDB162は、電波伝搬モデルDB162Aから電波伝搬モデルDB162Zの複数のモデルを含む。
第1環境条件は、例えば、通信ノード21が配置される位置の特徴を示すものであり、その地点の周囲の土地利用に関する属性情報に関する条件である。他の環境条件も同様に、それぞれ特定の事情に関する条件である。
上記の電波伝搬モデルDB162は、環境条件ごとの電波伝搬モデルを集めたものであるが、「環境条件ごと」に限らない。例えば、行政区間ごとでもよいし、単に地域を区分したものであってもよい。
ノード接続確率算出部12は、対象区間の通信距離と電波伝搬モデルとを用いて対象区間の「相互接続確率」を算出し、これを元に各通信ノードの「ノード接続確率」を算出する。ノード接続確率算出部12は、「相互接続確率」を算出する際、ノード設計情報に基づいて、複数の電波伝搬モデルから一つを選択する。なお、ノード接続確率算出部12は、電波伝搬モデルが一つしかない場合、単にそれを選択する。そして、ノード接続確率算出部12は前記の様な方法で、「相互接続確率」を元に「ノード接続確率」を算出する。
図1に戻り説明を続ける。システム全体接続率算出部13は、ノード接続確率算出部12の算出結果に基づいて、通信システム2の全体又は一部の範囲の「全体接続率(接続率)」を算出する。例えば、システム全体接続率算出部13は、通信システム2における設置済みの通信ノード21のノード数に占める“一定以上の通信品質を有する通信ノードのノード数”の割合を通信システム2の「全体接続率」として算出する。
或いは、システム全体接続率算出部13は、通信システム2における設置済みの通信ノード21の接続確率の平均値、中央値などの統計的に導出される値を通信システム2の「全体接続率」として算出してもよい。
結果出力部14は、各対象通信ノードTNのノード接続確率、通信システム2の全体接続率などの算出結果を表示したり、電子ファイルとして出力したりする。
電波伝搬モデル取得部15は、通信ノード21間の電波受信強度を用いて、その通信ノード21が該当する環境条件の電波伝搬モデルを演算処理によって作成し、その環境条件の電波伝搬モデル情報を電波伝搬モデルDB162に格納する。
或いは、電波伝搬モデル取得部15は、電波伝搬モデル情報を、シミュレーション条件取得部11を経て外部装置から取得してもよい。なお、電波伝搬モデル取得部15は、作成した電波伝搬モデルを用いて、既存の電波伝搬モデルを補正してもよい。これらの結果、電波伝搬モデル取得部15は、電波伝搬モデルを取得する。
記憶部16は、ノード設計情報DB161と、電波伝搬モデルDB162とを格納する。
図3は、実施形態のノード設計情報DB161について説明するための図である。この図3に示すノード設計情報DB161は、通信ノード21の識別情報、設置位置情報、設置環境情報、設置時期に関する情報等を、「ノード設計情報」として格納する。通信ノード識別情報は、通信ノード21のそれぞれに対応させて付与されたものであり、少なくとも1つの集約装置22の配下の通信ノード21を識別するための情報である。設置位置情報には、2次元平面、又は3次元空間における通信ノード21の位置を特定可能な情報が含まれる。例えば、設置位置情報は、緯度経度情報或いは別の座標系で表された情報の何れであってもよく、それらに高度情報を組み合わせたものであってもよい。また、設置環境情報には、通信ノード21が設置された位置の周囲の環境の特徴を特定するための情報が含まれてもよい。この設置環境情報には、例えば、通信ノード21が設置された位置の土地利用に関する属性情報が含まれる。設置時期に関する情報には、通信ノード21が設置された年月日、または将来の計画として通信ノード21の設置が予定されている年月日が含まれる。接続率シミュレーション装置1は、この設置時期情報を元に、将来を含めた任意の時期の接続率シミュレーションを実施することができる。
以下、実施形態に係る処理について説明する。実施形態に係る処理は、電波伝搬モデルの取得に係る処理と、解析処理とを含む。これらの処理は、例えば、互いに非同期で実施される。
まず、図4から図6を参照して、電波伝搬モデルの取得に係る処理について説明する。図4は、実施形態の通信ノードの接続実績と電波受信強度とについて説明するための図である。
図4は、通信ノード識別番号により識別される通信ノード21が、集約装置22と他の通信ノード21との中で何れの装置に接続したかの実績を示す情報と、その接続により通信ノード21が受信した無線信号の電波受信強度の値とを示している。集約装置22は、集約装置識別番号CRにより識別される。この表における通信ノード識別情報は、図1に示す通信システム2に対応するものである。
例えば、表中の△印は、上層側の装置に対する接続実績があることを示す。表中の▽印は、下層側の装置に対する接続実績があることを示す。表中に、(−)で示す欄は、他の装置に対する接続がなかったことを示す。例えば、通信ノード識別番号に(N2)が付与された通信ノード21−2は、その上層側の装置の集約装置22に接続され、その下層側の装置の通信ノード21−21と通信ノード21−22に接続されている。通信ノード識別番号に(N1−11)が付与された通信ノード21−11は、通信システム2には接続されていない状況にある。
また、△印又は▽印に続く記載は、無線信号の電波受信強度を示す。例えば、通信ノード21−2の無線信号の電波受信強度は、下記の値をとる。集約装置22からの無線信号の電波受信強度がP2(CR)であり、通信ノード21−21からの無線信号の電波受信強度がP2(N21)であり、通信ノード21−22からの無線信号の電波受信強度がP2(N22)である。P2(CR)、P2(N21)、P2(N22)等の値は、受信した無線信号の強度による。
図5は、実施形態の電波伝搬モデルを取得する処理を説明するための図である。
図5(a)から(d)における横軸は、通信距離(図では距離)であり、縦軸は、電波受信強度である。図中の「x」印は、通信距離と電波受信強度の実績データの位置を示す。
図5(a)に全通信ノード21の接続実績を示す。全通信ノード21の接続実績のデータが、領域ZAの中に分布している。グラフLAは、この全通信ノード21のデータに基づいて作成した電波伝搬モデル情報の代表値を連ねた曲線である。この全通信ノード21は、第1環境条件を満たすものと第2環境条件を満たすものとを含む。
図5(b)に第1環境条件を満たす通信ノード21の接続実績を示す。第1環境条件を満たす通信ノード21の接続実績が、領域Z1の中に分布している。グラフL1は、第1環境条件を満たす通信ノード21のデータに基づいて作成した電波伝搬モデル情報の代表値を連ねた曲線である。図5(c)に第2環境条件を満たす通信ノード21の接続実績を示す。第2環境条件を満たす通信ノード21の接続実績が、領域Z2の中に分布している。グラフL2は、第2環境条件を満たす通信ノード21のデータに基づいて作成した電波伝搬モデル情報の代表値を連ねた曲線である。
図5(d)に図5(b)のグラフL1と図5(c)のグラフL2を抽出して、それらを対比して示す。このグラフに示すように、環境条件が異なると作成された電波伝搬モデルの代表値を連ねた曲線は異なるものになる。
図6は、実施形態の電波伝搬モデルを取得する処理の流れを示すフローチャートである。
まず、電波伝搬モデル取得部15は、所望の条件に適した電波伝搬モデルの作成が必要か否かを判定する(ステップSA10)。上記の電波伝搬モデルの作成が必要な場合とは、例えば、所望の条件に適した電波伝搬モデルが電波伝搬モデルDB162に格納されていない場合、所望の条件に寄らない初期状態を定める場合、所望の条件に基づいて予め作成された電波伝搬モデルを流用する場合などである。例えば、電波伝搬モデル取得部15は、所望の環境条件に適した電波伝搬モデルが電波伝搬モデルDB162に格納されていない場合、電波伝搬モデルの作成が必要な場合と判定する。
電波伝搬モデルの作成が必要な場合には、電波伝搬モデル取得部15は、ノード設計情報DB161のノード設計情報を読み出して取得する(ステップSA20)。
電波伝搬モデル取得部15は、ノード設計情報に基づいて特定された位置の周囲の環境と同様の環境に設けられている通信ノード21を、通信システム2において稼働中の通信ノード21のなかから抽出し、抽出した通信ノード21の電波受信強度の実績値を通信システム2から取得する(ステップSA30)。
次に、電波伝搬モデル取得部15は、それらの実測値の分布について統計解析することにより、上記と同様の環境における通信距離ごとの無線信号の到達性を示す代表値を算出する(ステップSA40)。上記の実測値の分布とは、通信距離と電波受信強度を軸に持つ平面に、通信距離に対する電波受信強度が一致する位置に配置された点の分布である。
例えば、電波伝搬モデル取得部15は、通信距離ごとに、各通信ノード21の電波受信強度の分布の平均値、中央値などを、その通信距離における代表値として算出する。次に、電波伝搬モデル取得部15は、通信距離ごとの無線信号の到達性を示す代表値に基づいた近似式から電波伝搬モデルを作成し、その電波伝搬モデル情報を電波伝搬モデルDB162に書き込み(ステップSA50)、図に示す一連の処理を終える。
一方、電波伝搬モデルの作成が必要ではない場合には、電波伝搬モデル取得部15は、外部装置から電波伝搬モデルを取得して(ステップSA60)、電波伝搬モデルDB162に書き込み、図に示す一連の処理を終える。
次に、図7から図10を参照して、実施形態の解析処理について説明する。図7は、実施形態の通信ノードの配置の一例を説明するための図である。図8は、実施形態の通信ノード間距離と相互接続確率との関係をグラフで示す図である。
図7に示すように中心APの位置を、基準にする接続先に合わせる。基準にする接続先は、例えば、集約装置22である。中心APを基準にした同心円状の境界によって、内側から順に領域Z1から領域Z5までの5つの領域と、その外側の領域に分割されている。例えば、領域Z1内のSM1の位置に通信ノード21−1が配置され、領域Z2内のSM2の位置に通信ノード21−2が配置され、領域Z3内のSM3の位置に通信ノード21−11の配置が予定され、領域Z4内のSM4の位置に通信ノード21−21が配置され、領域Z5内のSM5の位置に通信ノード21−22が配置される。
上記の図7に示す各範囲(領域)における相互接続確率の関係を図8のグラフに整理する。図8における横軸は、通信ノード21間距離であり、縦軸は相互接続確率である。曲線は、各距離における相互接続確率の期待値を示す。通信ノード21間距離が長くなるほど受信電波強度が低下するため、それに伴い相互接続確率も低下する。領域Z1から領域Z5の各領域の範囲内に配置されていれば、各領域の最遠点の期待値より高い相互接続確率が見込まれる。例えば、領域Z1から領域Z3までが、集約装置22から直接通信可能な領域であるとすれば、領域Z4と領域Z5とそれらより外側の領域が集約装置22から直接通信することが困難な領域になる。図8におけるAからEは、上記領域Z1から領域Z5までの境界の位置を示す。
なお、上記の各通信ノード21の配置要求があった場合には、ノード接続確率算出部12は、領域Z4と領域Z5に位置する通信ノード21−21と通信ノード21−22については、集約装置22と直接通信させずに他の通信経路を設定する。例えば、ノード接続確率算出部12は、通信ノード21−21と通信ノード21−22については、通信ノード21−2を経由する通信経路を設定し、その結果を出力するとよい。
なお、接続率シミュレーション装置1は、通信可否の判定処理において、電波受信強度の値を直接利用して解析してもよく、電波受信強度の値を直接利用することなく、上記の相互接続確率を条件判断の指標に用いてもよい。上記の実施形態のように相互接続確率を条件判断の指標に用いることにより、接続率シミュレーション装置1は、異なる無線通信方式を組み合わせる通信区間についても同じ指標を用いて解析することができる。
図9は、実施形態の解析処理の流れを示すフローチャートである。以下の処理が実行される前に、通信ノード21の配置を予定する地点の電波伝搬モデルが決定されているものとする。
まず、シミュレーション条件取得部11は、配置を予定する通信ノード21を特定し、解析処理を実施するための条件を取得する(ステップSB10)。例えば、解析処理の条件には、通信ノード21の識別番号、配置を予定する位置に関する情報、設置時期情報、解析処理におけるシミュレーションによりノード接続確率を求める対象時期、対象エリア、そのほか、シミュレーションを行う際のパラメータ類などである。
次に、ノード接続確率算出部12は、上記の解析処理の条件に基づいて対象通信ノードTNの位置情報を取得する(ステップSB20)。なお、ノード接続確率算出部12は、設置時期情報に基づいて解析処理の対象の通信ノード21と、同通信ノード21と通信する他の通信ノード21とを特定してもよい。この場合の対象の通信ノード21は、対象通信ノードTNである。
次に、ノード接続確率算出部12は、対象通信ノードTNの位置の属性情報に基づいて電波伝搬モデルDB162から対象通信ノードTNに係る対象区間が該当する環境条件の電波伝搬モデル情報を取得する(ステップSB30)。
次に、ノード接続確率算出部12は、対象通信ノードTNの位置に関連する通信ノード21の接続実績を、通信システム2から取得する(ステップSB40)。
次に、ノード接続確率算出部12は、電波伝搬モデル情報と対象通信ノードTNの位置情報と対象通信ノードTNの位置に関連する通信ノード21の接続実績に基づいて、対象通信ノードTNにおける相互接続確率及びノード接続確率を算出する(ステップSB50)。なお、ノード接続確率算出部12は、このノード接続確率の算出に当たり、周辺に配置された通信ノード21の密度情報(ノード配置密度)に基づいて、ノード接続確率を算出してもよい。
次に、システム全体接続率算出部13は、通信システム2における所定の範囲に含まれた複数の通信ノード21のノード接続確率に基づいて通信システム2における全体接続率を算出する(ステップSB60)。
なお、システム全体接続率算出部13は、特定の時点の各通信ノード21の「ノード接続確率」の算出値と通信システム2の「全体接続率」の実績値との相関関係を用いて、通信システム2における「全体接続率」を補正してもよい。システム全体接続率算出部13によるステップSB60の処理を終えることにより、図に示す一連の処理を終える。
図10を参照して、図9に示した解析処理のより具体的な一例について説明する。図10は、実施形態の解析処理の具体的な一例を示すフローチャートである。前述の図9のフローチャートとの相違点を中心に説明する。
例えば、電波伝搬モデルDB162には、互いに異なる代表的な周辺環境の条件にそれぞれ対応付けられた複数種類の電波伝搬モデルがそれぞれ格納される。代表的な周辺環境の条件として、通信ノード21を設置する建物が戸建であるか、集合住宅であるか、または、設置する周辺に建物が多いか否かなどの諸条件が含まれる。上記の諸条件を、例えば、国土地理院が定めた土地利用種別(農用地、森林、建物用地、など)の情報を利用して規定してもよい。なお、国土地理院が定めた土地利用種別は、土地利用に関する属性情報の一例である。
上記のように代表的な周辺環境として、高層住宅エリア、低層住宅エリア、森林、山間部などが挙げられる。以下の説明では、上記の代表的な周辺環境を利用した場合について例示する。
ステップSB10、ステップSB20の処理を終えた後、電波伝搬モデル取得部15は、以下に示す手順で、通信ノード21を配置する対象通信ノードTNに係る対象区間が該当する環境条件の電波伝搬モデルを取得する。
例えば、電波伝搬モデル取得部15は、まず、住所、緯度経度情報等の位置情報に基づいて、対象通信ノードTNの位置Pの土地利用種別を含むノード設計情報DB161の設置環境情報(図では土地利用区分情報)を取得する(ステップSB31)。
次に、電波伝搬モデル取得部15は、対象通信ノードTNの位置Pの土地利用種別に基づいて、その位置Pが建物用地に分類されているか否かを判定する(ステップSB32)。その位置Pが建物用地に分類されている場合、電波伝搬モデル取得部15は、ノード設計情報DB161の設置環境情報に基づいて、その位置Pの建物が高層建物であるか否かを判定する(ステップSB33)。その位置Pの建物が高層建物である場合には、電波伝搬モデル取得部15は、高層建物用の設計情報を選択し(ステップSB34)、ステップSB40の処理に進める。その位置Pの建物が高層建物ではない場合には、電波伝搬モデル取得部15は、低層建物用の設計情報を選択し(ステップSB35)、ステップSB40の処理に進める。
その位置Pが建物用地ではない場合、電波伝搬モデル取得部15は、ノード設計情報DB161の設置環境情報に基づいて、その位置Pが森林に分類されているか否かを判定する(ステップSB36)。その位置Pが森林に分類されている場合には、電波伝搬モデル取得部15は、森林用の設計情報を選択し(ステップSB37)、ステップSB40の処理に進める。
その位置Pが森林ではない場合、電波伝搬モデル取得部15は、ノード設計情報DB161の設置環境情報に基づいて、その位置Pが山間部に分類されているか否かを判定する(ステップSB38)。その位置Pが山間部に分類されている場合には、電波伝搬モデル取得部15は、山間部用の設計情報を選択し(ステップSB39)、ステップSB40の処理に進める。
その位置Pが山間部ではない場合、電波伝搬モデル取得部15は、その位置Pの解析処理が適用範囲外であることを示す警告を入出力装置1Eなどに表示して(ステップSB70)、図に示す一連の処理を終える。
上記のステップSB34、ステップSB35、ステップSB37、ステップSB39の何れかの処理を終えた後、ステップSB40からステップSB60の処理を実施して、一連の処理を終える。
上記の処理により、接続率シミュレーション装置1は、通信ノード21間の距離に対する相互接続確率を算出する際に、高層住宅エリア、低層住宅エリア、森林、山間部などの代表的な周辺環境にそれぞれ対応させた電波伝搬モデルを利用する。この場合、ステップSB50において、ノード接続確率算出部12は、ノード設計情報と、対象通信ノードTNの位置Pの周辺環境に対応する電波伝搬モデルとに基づいて、通信ノード21を配置する対象通信ノードTNとその通信相手との間の対象区間における相互接続確率を算出する。
このように、接続率シミュレーション装置1は、土地利用に関する属性情報ごとに対応付けられた電波伝搬モデルであって、土地利用に関する属性情報に基づいた分類に従って選択可能な複数の電波伝搬モデルを利用できる。
上記の実施形態によれば、接続率シミュレーション装置1は、ノード接続確率算出部12と、電波伝搬モデル取得部15と、を備える。ノード接続確率算出部12は、複数の通信ノード21の位置情報を含むノード設計情報と、電波伝搬モデル取得部15によって取得された無線信号の到達性を示す電波伝搬モデルと、解析対象の通信ノード21に関連する通信ノードのノード接続実績情報とに基づいて、解析対象の通信ノード21から通信システム2における所定の通信ノードに対するノード接続確率を算出する。
これにより、接続率シミュレーション装置1は、通信システム2に新たに追加される通信ノード21がその通信システム2に接続できる可能性をより精度よく導出することができる。
また、接続率シミュレーション装置1は、各通信ノード21の通信システム2へのノード接続確率を、通信ノード21毎に得ることができる。接続率シミュレーション装置1は、この各通信ノード21のノード接続確率を、各通信ノード21の監視や設置計画の作成に用いるように他の装置に出力してもよく、接続率シミュレーション装置1自身が上記のノード接続確率を用いて、監視や設置計画の作成の処理を実施してもよい。
特に、「マルチホップ型」の通信システム2の構築にあたり、接続率シミュレーション装置1は、通信ノード21、集約装置22等の設置過程における「接続性推定」を精度良く予測することができる。この結果、接続率シミュレーション装置1は、通信品質とコストに優れた通信システム2になるように、その設計を支援するとともに、「接続性推定」に基づく運用設計の精度も高めることができる。
また、接続率シミュレーション装置1は、システム全体接続率算出部13を更に備えてもよい。システム全体接続率算出部13は、全部の通信ノード21に基づいて、通信システム2全体の全体接続率を算出することにより、通信システム2の全体又は部分エリア毎の接続率を算出できる。
なお、この全体接続率の値は、単に、通信ノード21毎の状態を示すものではなく、通信システム2の全体又は部分エリア毎の状態を示すものである。接続率シミュレーション装置1は、上記の全体接続率の値を、通信システム2の全体のネットワーク化計画を作成する際や、日々の通信システム2の状態の監視、あるいは、将来の通信状態の予測に用いることができる。
また、電波伝搬モデル取得部15は、対象区間に関する無線信号の電波受信強度の実績情報と、対象区間に関する少なくとも1つの通信ノード21の位置情報を含むノード設計情報とに基づいて、対象区間の電波伝搬モデルを導出してもよい。
なお、対象区間が、1つの通信ノード21と集約装置22との間に対応付けられる場合と、2つの通信ノード21間に対応付けられる場合とがある。
前者の場合、電波伝搬モデル取得部15は、1つの通信ノード21と集約装置22との間に対応する対象区間に関する無線信号の電波受信強度の実績情報と、その対象区間に関する1つの通信ノード21の位置情報を含むノード設計情報と、その対象区間に関する集約装置22と位置情報とに基づいて、その対象区間の電波伝搬モデルを導出する。
後者の場合、電波伝搬モデル取得部15は、2つの通信ノード21の間に対応する対象区間に関する無線信号の電波受信強度の実績情報と、その対象区間に関する2つの通信ノード21の位置情報を含むノード設計情報とに基づいて、その対象区間の電波伝搬モデルを導出する。
なお、解析対象の通信ノード21と通信システム2における所定の通信ノード21との間の対象区間には複数の電波伝搬モデルが対応付けられていてもよい。この場合、電波伝搬モデル取得部15は、異なる条件のもとで、特徴が異なる電波伝搬モデルを、対象区間の電波伝搬モデルとして導出してもよい。
なお、実施形態の通信システム2は、無線信号を用いて通信する複数の通信ノード21と、複数の通信ノード21の内の2つの通信ノード21から無線信号を用いて送信されたデータを集約する集約装置22とを含む。その少なくとも1つの通信ノード21は、集約装置22と直接的に通信してよい。又は、少なくとも1つの通信ノード21は、複数の通信ノード21の内の他の通信ノード21を介して集約装置22と間接的に通信してよい。
なお、電波伝搬モデル取得部15は、対象区間に関する無線信号の電波受信強度の実績情報と、対象区間に関する少なくとも1つの通信ノード21の位置情報を含むノード設計情報と、に基づいて、対象区間の電波伝搬モデルを導出してもよい。接続率シミュレーション装置1は、電波伝搬モデルを実際の通信ノード21間の電波受信強度の実績を元に作成するので、高い精度で電波伝搬モデルを構築できる。前述したとおり、電波伝搬モデルは、通信ノード間の距離に対する電波受信強度に対応付けられる。なお、電波受信強度は、その平均値、分散などによって特徴づけられる。
また、電波伝搬モデル取得部15は、対象区間の電波の到達性に基づいて、対象区間に該当する複数の電波伝搬モデルの中から対象区間の電波伝搬モデルを決定してもよい。これにより、電波伝搬モデル取得部15は、複数種類の電波伝搬モデルを、国土地理院が提供する土地利用区分によって切り替えることができる。
また、電波伝搬モデル取得部15は、センターサーバー23から取得した通信ノード21間の電波受信強度の実績情報とノード設計情報DB161のノード設計情報とに基づいて、電波伝搬モデルを補正し、補正した電波伝搬モデルを電波伝搬モデルDB162に追加する。これにより、電波伝搬モデル取得部15は、補正した電波伝搬モデルを電波伝搬モデルDB162に書き込んで、更新させることができる。
(第1の実施形態の第1変形例)
この変形例に、適用される電波伝搬モデルを補正する事例を示す。
前述の図9に示すステップSA40の段階で、電波伝搬モデル取得部15は、その通信距離における代表値が無線信号の到達性を示す電波伝搬モデルから求めた値に対して所定量以上異なるか否かを判定する(ステップSA42:不図示)。
その代表値が、無線信号の到達性を示す電波伝搬モデルから求めた値に対して所定量以上異なる場合、電波伝搬モデル取得部15は、その無線信号の到達性を示す電波伝搬モデルを補正しても良い(ステップSA44:不図示)。
例えば、電波伝搬モデル取得部15は、所定の条件に基づいて通信ノード21を分類し、分類ごとに電波伝搬モデルを作成する。このような分類ごとに作成された電波伝搬モデルの方が、分類しない場合の電波伝搬モデルに対して実際の伝搬特性に対する近似性が高くなる場合がある。電波伝搬モデル取得部15は、上記の所定の条件に従って適用する範囲を分割することによって、適用される電波伝搬モデルを補正するとよい。
その代表値が、無線信号の到達性を示す電波伝搬モデルから求めた値に対して所定量以上異ならない場合、電波伝搬モデル取得部15は、その無線信号の到達性を示す電波伝搬モデルを利用する(ステップSA46:不図示)。
上記のステップSA42からSA46までの処理を、前述の図9のフローチャートのステップSA40に続いて実施してもよい。
(第1の実施形態の第2変形例)
この変形例に、土地利用に関する属性情報を利用すること無く構成する事例を示す。
解析対象の通信ノード21と通信システム2における所定の通信ノード21との間の対象区間の電波伝搬モデルとして、選択可能な複数の電波伝搬モデルを用意してもよい。例えば、電波伝搬モデル取得部15は、その対象区間に関する無線信号の電波受信強度の実績情報に基づいて、その対象区間の電波伝搬モデルを導出することにより、必ずしも土地利用に関する属性情報に対応付けて分類することなく、電波受信強度の実績情報の分布の特徴に基づいた分類に従って、選択可能な複数の電波伝搬モデルを利用できる。
(第2の実施形態)
図11から図13を参照して、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、建物BL内部に複数の通信ノード21が配置され、建物BLを代表する位置に対象通信ノードTNが配置されたと仮定して、対象通信ノードTNを用いて解析処理を実施することについて説明する。
ここで、建物BL内部に積算電力計等の複数の通信ノード21を配置する場合に生じ得る要件について整理する。以下、複数の通信ノードを収容する建物BLを「集合住宅」を呼ぶ。
・建物BL内部に通信ノード21を配置する位置を明確に特定するために3次元座標のデータを用いてもよい。ただし、既存の建物の場合には、3次元座標のデータを得ることは容易ではないことがある。3次元座標のデータが得られない場合にも、3次元座標のデータを用いる場合と同様の手法を適用できることが望まれる。
・建物BL内部に配置する通信ノード21の個数が比較的多いこともあり、簡易な処理によりノード接続確率を算出できることが望まれる。この場合のノード接続確率には、建物BL内部の通信ノード21相互間の相互接続確率と、建物BL内部の通信ノード21とその外部の通信ノード21相互間の相互接続確率の少なくとも何れかが含まれる。例えば、この場合のノード接続確率を、建物BL内部の通信ノード21相互間の相互接続確率と、建物BL内部の通信ノード21とその外部の通信ノード21相互間の相互接続確率のうちの何れかを用いて計算することができる。
・規模が比較的大きな建物BLの場合、ノード数が少ないと通信ノード間の距離や壁床等の遮蔽の影響により、接続性が落ち、建物BL内部の通信ノード21相互間の接続確率が低下する傾向がある。このような傾向がみられる建物BLに適用できることが望まれる。
本実施形態は、建物BL内部に複数の通信ノード21が配置される場合において、上記の各要件に対して、通信ノード21のノード接続確率の算出を簡易な処理により可能にする。
例えば、実施形態の接続率シミュレーション装置1は、典型的には2次元情報に基づいて通信ノード21の相互接続確率及びノード接続確率を算出する。3次元情報を利用できる場合には、接続率シミュレーション装置1は、3次元情報に基づいて通信ノード21の相互接続確率及びノード接続確率を算出してもよい。
建物BLの位置を、地図のように2次元座標で示すことは比較的容易である。例えば、建物BLの緯度経度情報は、建物BLの住所等を用いて容易に得ることができる。建物BLの中心点をその建物BLの位置に定めてもよい。以下、建物BLの中心点を示す2次元座標を「集約点座標」と呼ぶ。この建物BLの中心点は、前述の対象通信ノードTNの位置に対応させて、所定の解析処理を適用してもよい。
そこで、本実施形態は、複数の通信ノード21を建物BL内部に3次元的に配置する場合であっても、これらの通信ノード21の位置を、建物BLの中心点の2次元平面における位置で近似することで、これらの通信ノード21の位置を集約点座標で示す。これにより、各通信ノード21の位置を示す3次元座標のデータを作成することを不要にする。
以下、より具体的な処理について説明する。図11は、実施形態のノード設計情報DB161Aについて説明するための図である。この図11に示すノード設計情報DB161Aは、前述のノード設計情報DB161(図2)に代わるものとして利用される。ノード設計情報DB161Aは、建物BLの識別情報、建物位置情報、建物BLに設置予定の通信ノードの総数、建物BLに既設の通信ノードのノード数、建物BLにおける通信ノード配置密度等を、「ノード設計情報」として格納する。
なお、建物BLの識別情報は、建物BLのそれぞれに対応させて付与されたものである。その建物BLには集約装置22の配下の少なくとも1つの通信ノード21が設けられる。建物BLの識別情報は、各通信ノード21のそれぞれに対応させて付与されたものではないが、建物BLに設けられた複数の通信ノード21を代表する識別情報として利用する。
建物位置情報には、2次元平面における建物BLの位置を特定可能な情報が含まれる。例えば、建物位置情報は、緯度・経度等で示される位置情報である。建物BLに設置予定の通信ノードの総数は、建物BLに設置される通信ノードの総数である。この総数には、建物BLにまだ設置されていない通信ノードのノード数も含まれる。建物BLに既設の通信ノード数は、当該建物BLに既に設置されている通信ノード21のノード数である。建物BLにおける通信ノード配置密度は、建物BLに設置されている通信ノード21の密度を示す。その詳細については後述する。
接続率シミュレーション装置1は、下記の処理により、接続率の精度を高めている。建物BL内部に設置する通信ノード21が少ないことにより、建物BL内部の通信ノード21相互間の相互接続確率が低下する傾向がみられることについて、上記において説明した。これに対し、本実施形態の接続率シミュレーション装置1は、建物BL内部の通信ノード21の配置密度(通信ノード配置密度)を変数に加えて、上記の傾向による影響を補正する。
図12は、実施形態のノード接続確率に関する補正係数について説明するための図である。この図12に示すグラフは、建物BLにおける通信ノード配置密度(横軸)に対する、接続確率の補正係数(縦軸)の関係を示す。
建物BLにおける通信ノード配置密度は、建物BLに設置されている通信ノード21の配置密度である。ノード接続確率算出部12は、建物BLにおける通信ノード配置密度を、同一の建物BLに配置される通信ノードの総数と、その総数に係る通信ノードのなかで通信可能な状態にある通信ノードのノード数に基づいて算出する。例えば、ノード接続確率算出部12は、建物BLにおける通信ノード配置密度を、同一の建物BLに配置される通信ノードの総数に対し、その総数に係る通信ノードのなかで通信可能な状態にある通信ノードのノード数の比として算出する。通信可能な状態にある通信ノードとは、建物BLに既設の通信ノードとしてもよい。この値は、通信ノードが未設置の状態を0にして、予定の全数が設置された状態を1にする。
ここで、「集合住宅」に対する集約点座標を用いた接続確率の解析処理について説明する。
まず、ノード接続確率算出部12は、全ての「集合住宅」について、その集合住宅の集約点座標に、1つの通信ノード21を配置したものとして、その位置のノード接続確率を算出する。ノード接続確率算出部12は、この過程で得られたノード接続確率を、集合住宅の接続確率xとする。
なお、ノード接続確率算出部12は、補正係数aを用いた式(6)により、当該集合住宅全体の平均接続確率yを算出する。
y=a×x ・・・(6)
なお、ノード接続確率算出部12は、式(6)における補正係数aを、建物BL内部のノード配置密度に基づいて決定してもよい。
例えば、補正係数aは、図12に示すように、建物BL内部のノード配置密度が0から1まで増加するのに伴い、補正係数aの値が0から増加して1に漸近するように変化する。この図12に示す曲線は、上に凸である。このような補正係数aを用いることにより、建物BLに設けられている通信ノード21のノード数によるノード接続確率に生じる誤差の影響を低減できる。
例えば、ノード接続確率算出部12は、建物BL内部のノード配置密度を、次の式(7)によって近似する。
建物BL内部のノード配置密度=n/m ・・・(7)
ただし、式(7)において、建物BL内部に設置予定の通信ノードの総数をmで示し、現在設置されている通信ノードのノード数をnで示す。
上記の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏すると共に、複数の通信ノード21には、同一の建物BLに配置された複数の通信ノード21が含まれている。ノード設計情報には、解析対象の通信ノード21が配置される建物BLを識別するための情報が含まれている。ノード接続確率算出部12は、上記の複数の通信ノード21のノード接続確率を、建物BLにおける複数の通信ノード21の配置密度を用いて算出する。これにより、接続率シミュレーション装置1は、通信ノード21のノード接続確率を、建物BLにおける複数の通信ノード21の配置密度を用いて算出することで、その精度を比較的簡易な方法で高めることができる。なお、通信ノード21の配置密度に基づいた補正は、建物BL内に制限されることなく、建物BL外における解析処理に適用してもよい。
ノード接続確率算出部12は、複数の通信ノードの配置密度を、同一の建物BLに配置される複数の通信ノード21の総数と、通信可能な状態にある複数の通信ノード21のノード数とに基づいて算出する。これにより、接続率シミュレーション装置1は、通信ノード21のノード接続確率を、同一の建物BLに配置される通信ノードの総数と、通信可能な状態にある通信ノードのノード数を用いて算出することで、その精度を比較的簡易な方法で高めることができる。
(接続率シミュレーション装置1のハードウェア構成例)
図13を参照して、第1と第2の実施形態の接続率シミュレーション装置1のハードウェア構成について説明する。図13は、実施形態の接続率シミュレーション装置1のハードウェア構成例を示す図である。接続率シミュレーション装置1は、例えば、CPU1Aと、RAM1Bと、不揮発性記憶装置1Cと、可搬型記憶媒体ドライブ装置1Dと、入出力装置1Eと、通信インターフェース1Fとを備えるコンピュータである。接続率シミュレーション装置1は、CPU1Aに代えて、GPUなどの任意のプロセッサを備えてもよい。また、図2に示した各構成要素のうち一部は、省略されてもよい。
CPU1Aは、不揮発性記憶装置1Cに格納されたプログラム、または可搬型記憶媒体ドライブ装置1Dに装着された可搬型記憶媒体に格納されたプログラムをRAM1Bに展開して実行することで、以下に説明する種々の処理を行う。RAM1Bは、CPU1Aによってワーキングエリアとして使用される。不揮発性記憶装置1Cは、例えば、HDDやフラッシュメモリ、ROMなどである。可搬型記憶媒体ドライブ装置1Dには、DVDやCD(Compact Disc)、SD(登録商標)カードなどの可搬型記憶媒体が装着される。入出力装置1Eは、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル、表示デバイスなどを含む。通信インターフェース1Fは、接続率シミュレーション装置1が他装置と通信を行う場合のインターフェースとして機能する。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、接続率シミュレーション装置1は、電波伝搬モデル取得部15と、ノード接続確率算出部12と、を持つ。電波伝搬モデル取得部15は、複数の通信ノード21が階層的な接続関係の下で無線信号を用いて通信する通信システム2における、距離に依存する無線信号の到達性を示す電波伝搬モデルを取得する。ノード接続確率算出部12は、複数の通信ノード21の位置情報を含むノード設計情報と、電波伝搬モデル取得部15によって取得された無線信号の到達性を示す電波伝搬モデルと、対象の通信ノードに関連する通信ノードのノード接続実績情報とに基づいて、前記対象の通信ノードの通信が少なくとも前記解析対象の通信ノードの集約装置を経由して前記通信ノードの通信先であるセンターサーバーに接続される接続確率を算出する。このような構成によれば、通信システムに新たに追加される通信ノードがその通信システムに接続できる可能性をより精度よく導出することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。