JP2019099547A - ピルフェニドンを含有するpark2発現促進剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤を提供する。【解決手段】 本発明に係るピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤は、PARK2発現促進作用によりオートファジー及びマイトファジー促進効果を有するため、細胞老化に関連する疾患や慢性閉塞性肺疾患などの治療剤として有用である。【選択図】なし
Description
本発明は、ピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤に関する。
ピルフェニドン(5−メチル−1−フェニル−1H−ピリジン−2−オン、PFD)は線維症に対して治療効果を有することが知られており(特許文献1)、特発性肺線維症に対して世界で初めて承認取得された抗線維化剤である。その作用機序は、炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカイン等の各種サイトカイン及び線維化形成に関与する増殖因子に対する産生調節作用であり、線維芽細胞増殖抑制作用やコラーゲン産生抑制作用等複合的な作用に基づき抗線維化作用を示す。ピルフェニドンとプレドニゾロンとの比較により、プレドニゾロンは抗炎症作用のみを示したのに対し、ピルフェニドンは抗炎症作用と抗線維化作用の両方を示し、ステロイドよりも有効な治療結果をもたらすことができると期待されている。
PARK2は若年性パーキンソン病の発症に関連することが知られており、若年性パーキンソン病患者においてPARK2遺伝子の変異が認められる患者が存在することが示されている(非特許文献1)。PARK2が関与する疾患として、パーキンソン病以外に、レビー小体型認知症など(非特許文献2)の神経変性疾患、慢性閉塞性肺疾患(非特許文献3)、線維症(非特許文献4)、統合失調症、双極性障害などの精神疾患(非特許文献5)などが知られている。
細胞老化は、細胞がある一定回数増殖した後、又は過度のストレス刺激によって、増殖が不可逆的に停止し老化関連分泌現象が亢進した状態を意味する。細胞老化に関するマーカーとしてp21、老化関連βガラクトシダーゼ(SA−BG)、ヒストンH2AXなどが知られている。
オートファジーは不要なタンパク質と小器官の細胞内分解機構であり、細胞内恒常性の維持と細胞老化の抑制に関与すると考えられている(非特許文献6及び7)。
マイトファジーはミトコンドリアに選択的なオートファジーであり、不必要なミトコンドリアをリソソームにおいて分解除去する作用である。オートファジーによる細胞老化の抑制において、マイトファジーが特に重要な役割を示すことが知られており、ヒト気管支上皮細胞において、PARK2がマイトファジーを促進することが非特許文献3に開示されている。
マイトファジーはミトコンドリアに選択的なオートファジーであり、不必要なミトコンドリアをリソソームにおいて分解除去する作用である。オートファジーによる細胞老化の抑制において、マイトファジーが特に重要な役割を示すことが知られており、ヒト気管支上皮細胞において、PARK2がマイトファジーを促進することが非特許文献3に開示されている。
特許文献2には、ピルフェニドンがMAPキナーゼの一つであるp38MAPキナーゼ(p38MAPK)阻害活性を有することが示され、対象疾患の例としてパーキンソン病や慢性閉塞性肺疾患が記載されている。しかし、ピルフェニドンがPARK2発現を促進することにより、細胞老化を抑制することは開示されていない。
特許文献3には、ピルフェニドンを含有する吸入剤が、呼吸器における局所的な炎症モデルである卵白由来オボアルブミン感作モデル動物に対し治療効果があり、光過敏症の副作用が軽減されていることが示されている。しかし、ピルフェニドンがPARK2発現を促進することにより、細胞老化を抑制することは開示されていない。
特許文献4には、ミネラルコルチコイド受容体阻害剤について、パーキンソン病など加齢に伴う疾患の予防、治療に有効であることが示されており、ミネラルコルチコイド受容体阻害剤の一例としてピルフェニドンが記載されている。しかし、ピルフェニドンがPARK2発現を促進することにより、細胞老化を抑制することは開示されていない。
非特許文献4には、ピルフェニドンによる、PARK2ノックダウン筋線維芽細胞の分化誘導抑制効果が示されている。しかし、ピルフェニドンがPARK2発現を促進することにより、細胞老化を抑制することは示唆されていない。
非特許文献8には、ピルフェニドンがPARK2を介して筋線維芽細胞の分化と肺線維化の進行を抑制することが開示されている。
Nature、1998年、392巻、605-8頁
American Journal of Pathology、2002年、160巻、5号、1655-67頁
Autophagy、2015年、11巻、3号、547-59頁
The Journal of Immunology、 2016年、197巻、2号、504-16頁
Molecular Brain、2013年、6:35
上原記念生命科学財団研究報告集、2011年、25巻、150
Cell、2011年、146巻、682-95頁
Respiratory Research、2017年、18:114
本発明の課題は、細胞老化に関連する疾患や慢性閉塞性肺疾患などの治療剤としてピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤を提供することにある。
本発明は、以下に関する。
(1)ピルフェニドンを含有する、PARK2発現促進剤(但し、肺線維症の治療に用いるものを除く。)。
(2)細胞老化抑制に用いるものである、上記(1)記載のPARK2発現促進剤。
(3)神経変性疾患の治療に用いるものである、上記(1)又は(2)記載のPARK2発現促進剤。
(4)神経変性疾患が、パーキンソン病である、上記(3)記載のPARK2発現促進剤。
(5)神経変性疾患が、レビー小体型認知症である、上記(3)記載のPARK2発現促進剤。
(6)慢性閉塞性肺疾患の治療に用いるものである、上記(1)記載のPARK2発現促進剤。
(7)オートファジーを促進するものである、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のPARK2発現促進剤。
(8)マイトファジーを促進するものである、上記(7)記載のPARK2発現促進剤。
(1)ピルフェニドンを含有する、PARK2発現促進剤(但し、肺線維症の治療に用いるものを除く。)。
(2)細胞老化抑制に用いるものである、上記(1)記載のPARK2発現促進剤。
(3)神経変性疾患の治療に用いるものである、上記(1)又は(2)記載のPARK2発現促進剤。
(4)神経変性疾患が、パーキンソン病である、上記(3)記載のPARK2発現促進剤。
(5)神経変性疾患が、レビー小体型認知症である、上記(3)記載のPARK2発現促進剤。
(6)慢性閉塞性肺疾患の治療に用いるものである、上記(1)記載のPARK2発現促進剤。
(7)オートファジーを促進するものである、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のPARK2発現促進剤。
(8)マイトファジーを促進するものである、上記(7)記載のPARK2発現促進剤。
(1−2)線維症の治療に用いるものを除く、上記(1)記載のPARK2発現促進剤。
(1−3)慢性閉塞性肺疾患の治療に用いるものを除く、上記(1)記載のPARK2発現促進剤。
(1−4)線維症及び/または慢性閉塞性肺疾患の治療に用いるものを除く、上記(1)記載のPARK2発現促進剤。
(1−3)慢性閉塞性肺疾患の治療に用いるものを除く、上記(1)記載のPARK2発現促進剤。
(1−4)線維症及び/または慢性閉塞性肺疾患の治療に用いるものを除く、上記(1)記載のPARK2発現促進剤。
(1’A)ピルフェニドンを投与することを特徴とする、PARK2関連疾患(但し、肺線維症を除く。)の治療又は予防方法。
(1’B)PARK2関連疾患(但し、肺線維症を除く)を治療又は予防するための、ピルフェニドン。
(1’C)PARK2関連疾患(但し、肺線維症を除く)の治療剤又は予防剤を製造するための、ピルフェニドンの使用。
(2’)細胞老化を抑制する、上記(1’A)記載の方法、上記(1’B)記載のピルフェニドン又は上記(1’C)記載の使用。
(3’)PARK2関連疾患が、神経変性疾患である、上記(1’A)記載の方法、上記(1’B)記載のピルフェニドン又は上記(1’C)記載の使用。
(4’)神経変性疾患が、パーキンソン病である、上記(3’)記載の方法、ピルフェニドン又は使用。
(5’)神経変性疾患が、レビー小体型認知症である、上記(3’)記載の方法、ピルフェニドン又は使用。
(6’)PARK2関連疾患が、慢性閉塞性肺疾患である、上記(1’A)記載の方法、上記(1’B)記載のピルフェニドン又は上記(1’C)記載の使用。
(7’)オートファジーを促進する、上記(1’A)記載の方法、上記(1’B)記載のピルフェニドン又は上記(1’C)記載の使用。
(8’)マイトファジーを促進する、上記(7’)記載の方法、ピルフェニドン又は使用。
(1’B)PARK2関連疾患(但し、肺線維症を除く)を治療又は予防するための、ピルフェニドン。
(1’C)PARK2関連疾患(但し、肺線維症を除く)の治療剤又は予防剤を製造するための、ピルフェニドンの使用。
(2’)細胞老化を抑制する、上記(1’A)記載の方法、上記(1’B)記載のピルフェニドン又は上記(1’C)記載の使用。
(3’)PARK2関連疾患が、神経変性疾患である、上記(1’A)記載の方法、上記(1’B)記載のピルフェニドン又は上記(1’C)記載の使用。
(4’)神経変性疾患が、パーキンソン病である、上記(3’)記載の方法、ピルフェニドン又は使用。
(5’)神経変性疾患が、レビー小体型認知症である、上記(3’)記載の方法、ピルフェニドン又は使用。
(6’)PARK2関連疾患が、慢性閉塞性肺疾患である、上記(1’A)記載の方法、上記(1’B)記載のピルフェニドン又は上記(1’C)記載の使用。
(7’)オートファジーを促進する、上記(1’A)記載の方法、上記(1’B)記載のピルフェニドン又は上記(1’C)記載の使用。
(8’)マイトファジーを促進する、上記(7’)記載の方法、ピルフェニドン又は使用。
本発明に係るピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤は、PARK2発現促進作用によりオートファジー及びマイトファジー促進効果を有するため、細胞老化に関連する疾患や慢性閉塞性肺疾患などの治療剤として有用である。
以下に本明細書において用いられる各用語の意味を説明する。各用語は特に断りのない限り、単独で用いられる場合も、または他の用語と組み合わせて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。
「ピルフェニドン」の一つ以上の水素、炭素、窒素及び/又は酸素は、それぞれ水素、炭素、窒素および/または酸素の同位体で置換され得る。そのような同位体の例としては、それぞれ2H、3H、11C、13C、14C、15N、18O及び17Oのように、水素、炭素、窒素及び酸素が包含される。「ピルフェニドン」は、そのような同位体で置換された化合物も包含する。該同位体で置換された化合物は、医薬品としても有用であり、ピルフェニドンのすべての放射性標識体を包含する。
ピルフェニドンの放射性標識体は、当該技術分野で周知の方法で調製できる。例えば、トリチウム標識されたピルフェニドンは、例えば、トリチウムを用いた触媒的脱ハロゲン化反応によって、ピルフェニドンにトリチウムを導入することで調製できる。この方法は、適切な触媒、例えばPd/Cの存在下、塩基の存在下または非存在下で、ピルフェニドンが適切にハロゲン置換された前駆体とトリチウムガスとを反応させることを包含する。他のトリチウム標識化合物を調製するための適切な方法としては、文書Isotopes in the Physical and Biomedical Sciences,Vol.1,Labeled Compounds (Part A),Chapter 6 (1987年)を参照にできる。14C−標識化合物は、14C炭素を有する原料を用いることによって調製できる。
「PARK2関連疾患」とは、PARK2の発現が促進されることにより症状が軽減される疾患を意味する。より具体的には、PARK2の発現が促進されることにより、オートファジー及びマイトファジーが促進され、その結果として症状が軽減される疾患を意味する。前記PARK2の発現が促進されることにより症状が軽減される疾患には、PARK2の発現が促進されることにより症状が軽減されることが示唆されている疾患も含む。例えば、PARK2発現促進により細胞老化に関するマーカー(例えば、p21、老化関連βガラクトシダーゼ、ヒストンH2AXなど)が減少するため、PARK2の発現が促進されることにより症状が軽減されることが示唆されている疾患としては、細胞老化に関連する疾患が含まれる。
PARK2の発現が促進されることにより症状が軽減される「PARK2関連疾患」の例として、パーキンソン病、レビー小体型認知症などの神経変性疾患、統合失調症、双極性障害などの精神疾患、線維症、慢性閉塞性肺疾患、加齢性黄斑変性症、尋常性白斑、糖尿病性腎症、動脈硬化、骨関節炎、椎間板ヘルニア、肝硬変、慢性膵炎が挙げられる。好ましくは、パーキンソン病、レビー小体型認知症などの神経変性疾患及び慢性閉塞性肺疾患、さらに好ましくはパーキンソン病、レビー小体型認知症などの神経変性疾患、特に好ましくはパーキンソン病及びレビー小体型認知症、最も好ましくはパーキンソン病が挙げられる。
細胞老化に関連する疾患は、p21、老化関連βガラクトシダーゼ、ヒストンH2AXなどの細胞老化に関するマーカーの発現の亢進、オートファジー又はマイトファジーの低下、酸化ストレスの促進などを特徴としている。細胞老化に関連する疾患の例としては、パーキンソン病、レビー小体型認知症などの神経変性疾患、線維症、加齢性黄斑変性症、尋常性白斑、糖尿病性腎症、動脈硬化、骨関節炎、椎間板ヘルニア、肝硬変、慢性膵炎が挙げられる。
神経変性疾患は、中枢神経系に発症し、特定の神経細胞群の減少などを特徴としている。神経変性疾患の例としては、パーキンソン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋委縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症が挙げられる。
精神疾患は、脳の機能的な障害などを特徴としている。精神疾患の例としては、統合失調症、双極性障害、うつ病、アルコール依存症、解離性障害、強迫性障害、睡眠障害、摂食障害、適応障害、パーソナリティ障害、発達障害、パニック障害、PTSD、薬物依存症、性同一性障害、てんかんが挙げられる。
線維症は、様々な組織における炎症の慢性化の結果として起こる、過修復によるコラーゲンなどの異常蓄積などを特徴としている。線維症の例としては、特発性肺線維症などの肺線維症、肝硬変などの肝線維症、糸球体腎炎などの腎線維症、強皮症、ケロイドなどの皮膚線維症、膵嚢胞性線維症、心筋線維症、筋骨格系線維症が挙げられる。
本発明の特徴は、ピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤が、ERK、p38MAPKなどのMAPキナーゼ阻害を介さずに、細胞老化に関連する疾患や慢性閉塞性肺疾患などのPARK2関連疾患に対して治療効果を示すことである。
本発明の特徴は、ピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤が、オートファジー促進効果を有することである。
本発明の特徴は、ピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤が、マイトファジー促進効果を有することである。
本発明の特徴は、ピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤が、細胞老化抑制効果を有するため、細胞老化関連疾患の治療に用いるものであることである。
本発明の特徴は、ピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤が、神経変性疾患の治療に用いるものであることである。
本発明の特徴は、ピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤が、慢性閉塞性肺疾患の治療に用いるものであることである。
本発明に係るピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤は、PARK2発現促進作用を有し、オートファジー/マイトファジー促進効果及び細胞老化の抑制効果を示すため、パーキンソン病、レビー小体型認知症などの神経変性疾患、統合失調症、双極性障害などの精神疾患、線維症、慢性閉塞性肺疾患、加齢性黄斑変性症、尋常性白斑、糖尿病性腎症、動脈硬化、骨関節炎、椎間板ヘルニア、肝硬変、慢性膵炎などのPARK2関連疾患に対する治療剤及び/又は予防剤として有用である。
本発明に係るピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤を投与する場合、経口的、非経口的のいずれの方法でも投与することができる。経口投与は常法に従って錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の通常用いられる剤型に調製して投与すればよい。非経口投与は、注射剤、吸入剤等の通常用いられるいずれの剤型でも好適に投与することができる。ピルフェニドンを含有する治療用医薬組成物は経口吸収性が高いため、経口剤として好適に使用できる。また、吸入剤として使用することにより、光過敏症などの副作用を軽減することができる。
本発明に係るピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬組成物とすることができる。
本発明に係るピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤の投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路等を考慮した上で設定することが望ましいが、成人に経口投与する場合、通常0.05〜100mg/kg/日であり、好ましくは0.1〜10mg/kg/日の範囲内である。非経口投与の場合には投与経路により大きく異なるが、通常0.005〜10mg/kg/日であり、好ましくは0.01〜1mg/kg/日の範囲内である。これを1日1回〜数回に分けて投与すれば良い。
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
実施例1 オートファジー誘導評価
細胞内のオートファジーを反映するマーカーであるLC3B−IIをウエスタンブロット法で検出することにより、オートファジー誘導を評価した。
評価に用いるヒト気道上皮細胞(HBEC)は、Araya et al, The Journal of Clinical Investigation、117巻、11号、3551-62頁(2007年)、The lung: Scientific Foundations、Lippincott Williams & Wilkins(1997年)などに記載された方法で得た。気道検体を抗生物質含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、プロテアーゼで一晩処理した後、10%ウシ胎児血清(FCS)含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を添加して振盪した。気道から剥離したHBECが含まれた培地を遠心し、上清を除去した。沈殿物をトリプシン処理し、10%FCS含有DMEMを添加して遠心し、上清を除去してHBECを得た。
得られたHBECを1%喫煙刺激(CSE)/無刺激のBronchial epithelial cell growth medium(BEGM)(Lonza)により、ピルフェニドン(PFD)(50 μg/ml)添加/無添加条件下で24時間培養し、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採集した。なお、100%CSE培地としては、一本のタバコの煙をシリンジで40 mlずつ引き、10 mlの無血清培地に添加し、0.22 μmフィルター(Milipore)により不溶成分を除去したものを使用した。LC3B−IIはプロテアーゼで分解されやすいため、Protease inhibitor処理群には、E−64−d(10 μg/ml)(ペプチド研究所)及びぺプスタチンA(10 μg/ml)(ペプチド研究所)を含有するProtease inhibitorをタンパク検体採集の6時間前に培地に添加した。得られたタンパク検体を用い、抗LC3B抗体(Novus, 600-1384)及び抗β−アクチン抗体(Sigma-Aldrich, A5316)を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて発現量を検討した。
結果を図1に示す。Protease inhibitor処理群は未処理群に比べ、LC3B−IIが増加し、オートファジー活性が確認された。加えて、喫煙刺激がオートファジーを誘導し、ピルフェニドンがオートファジーをさらに促進することが示された。
細胞内のオートファジーを反映するマーカーであるLC3B−IIをウエスタンブロット法で検出することにより、オートファジー誘導を評価した。
評価に用いるヒト気道上皮細胞(HBEC)は、Araya et al, The Journal of Clinical Investigation、117巻、11号、3551-62頁(2007年)、The lung: Scientific Foundations、Lippincott Williams & Wilkins(1997年)などに記載された方法で得た。気道検体を抗生物質含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、プロテアーゼで一晩処理した後、10%ウシ胎児血清(FCS)含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を添加して振盪した。気道から剥離したHBECが含まれた培地を遠心し、上清を除去した。沈殿物をトリプシン処理し、10%FCS含有DMEMを添加して遠心し、上清を除去してHBECを得た。
得られたHBECを1%喫煙刺激(CSE)/無刺激のBronchial epithelial cell growth medium(BEGM)(Lonza)により、ピルフェニドン(PFD)(50 μg/ml)添加/無添加条件下で24時間培養し、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採集した。なお、100%CSE培地としては、一本のタバコの煙をシリンジで40 mlずつ引き、10 mlの無血清培地に添加し、0.22 μmフィルター(Milipore)により不溶成分を除去したものを使用した。LC3B−IIはプロテアーゼで分解されやすいため、Protease inhibitor処理群には、E−64−d(10 μg/ml)(ペプチド研究所)及びぺプスタチンA(10 μg/ml)(ペプチド研究所)を含有するProtease inhibitorをタンパク検体採集の6時間前に培地に添加した。得られたタンパク検体を用い、抗LC3B抗体(Novus, 600-1384)及び抗β−アクチン抗体(Sigma-Aldrich, A5316)を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて発現量を検討した。
結果を図1に示す。Protease inhibitor処理群は未処理群に比べ、LC3B−IIが増加し、オートファジー活性が確認された。加えて、喫煙刺激がオートファジーを誘導し、ピルフェニドンがオートファジーをさらに促進することが示された。
実施例2 PARK2発現評価
HBECを、ピルフェニドン(0.5〜50 μg/ml)添加/無添加のBEGMにより24時間培養し、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採集した。得られたタンパク検体を用い、抗PARK2抗体(Cell Signaling technology, 2132)及び抗β−アクチン抗体を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて、PARK2の発現量を検討した。
結果を図2に示す。ピルフェニドンがPARK2発現を濃度依存的に促進することが示された。
HBECを、ピルフェニドン(0.5〜50 μg/ml)添加/無添加のBEGMにより24時間培養し、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採集した。得られたタンパク検体を用い、抗PARK2抗体(Cell Signaling technology, 2132)及び抗β−アクチン抗体を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて、PARK2の発現量を検討した。
結果を図2に示す。ピルフェニドンがPARK2発現を濃度依存的に促進することが示された。
実施例3 マイトファジー誘導評価
ミトコンドリア外膜に発現するTOMM20及びオートファジーを反映するマーカーであるLC3Bの各細胞内局在及び共局在を共焦点顕微鏡(Carl Zeiss, LSM880)により検出し、マイトファジー誘導を評価した。
ミトコンドリア外膜に発現するTOMM20及びオートファジーを反映するマーカーであるLC3Bの各細胞内局在及び共局在を共焦点顕微鏡(Carl Zeiss, LSM880)により検出し、マイトファジー誘導を評価した。
(1)ピルフェニドンによるマイトファジー誘導評価
HBECの株化細胞であるBEAS−2B細胞(ATCC, CRL-9609)を、10%FCS及び抗生物質含有RPMI1640培地により、ピルフェニドン(10, 50 μg/ml)添加/無添加条件下で24時間培養し、メタノールを用いて細胞を培養プレートに固定した。細胞固定の6時間前に、20 nMのバフィロマイシンA1(BafA1)(Sigma-Aldrich)を添加した。固定化細胞について、抗TOMM20抗体(Santa Cruz Biotechnology, sc-17764)及び抗LC3B抗体(Cell Signaling technology, 3868)を用いて、それぞれの細胞内局在及び共局在を共焦点顕微鏡により検出した。
結果を図3に示す。ピルフェニドンがマイトファジーを促進することが示された。
HBECの株化細胞であるBEAS−2B細胞(ATCC, CRL-9609)を、10%FCS及び抗生物質含有RPMI1640培地により、ピルフェニドン(10, 50 μg/ml)添加/無添加条件下で24時間培養し、メタノールを用いて細胞を培養プレートに固定した。細胞固定の6時間前に、20 nMのバフィロマイシンA1(BafA1)(Sigma-Aldrich)を添加した。固定化細胞について、抗TOMM20抗体(Santa Cruz Biotechnology, sc-17764)及び抗LC3B抗体(Cell Signaling technology, 3868)を用いて、それぞれの細胞内局在及び共局在を共焦点顕微鏡により検出した。
結果を図3に示す。ピルフェニドンがマイトファジーを促進することが示された。
(2)ピルフェニドンのマイトファジー促進におけるPARK2の影響
negative control siRNAs (Applied Biosystems Life Technologies, AM4635 and AM4641) 又はPARK2 siRNA(UniGene IDHs. 132954)(Applied Biosystems Life Technologies, 4392420)を遺伝子導入したBEAS−2B細胞を、1%CSE/無刺激の10%FCS及び抗生物質含有RPMI1640培地により、ピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で24時間培養し、メタノールを用いて細胞を培養プレートに固定した。なお、100%CSE培地は実施例1の方法に準じて作製した。細胞固定の6時間前に、20 nMのBafA1を添加した。固定化細胞について、抗TOMM20抗体及び抗LC3B抗体を用いて、それぞれの細胞内局在及び共局在を共焦点顕微鏡により検出した。
結果を図4に示す。喫煙刺激によるマイトファジー誘導はピルフェニドンにより促進され、該マイトファジー誘導はPARK2のノックダウンにより抑制された。つまり、喫煙刺激の際にピルフェニドンにより促進されるマイトファジーはPARK2発現促進に依存することが示された。
negative control siRNAs (Applied Biosystems Life Technologies, AM4635 and AM4641) 又はPARK2 siRNA(UniGene IDHs. 132954)(Applied Biosystems Life Technologies, 4392420)を遺伝子導入したBEAS−2B細胞を、1%CSE/無刺激の10%FCS及び抗生物質含有RPMI1640培地により、ピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で24時間培養し、メタノールを用いて細胞を培養プレートに固定した。なお、100%CSE培地は実施例1の方法に準じて作製した。細胞固定の6時間前に、20 nMのBafA1を添加した。固定化細胞について、抗TOMM20抗体及び抗LC3B抗体を用いて、それぞれの細胞内局在及び共局在を共焦点顕微鏡により検出した。
結果を図4に示す。喫煙刺激によるマイトファジー誘導はピルフェニドンにより促進され、該マイトファジー誘導はPARK2のノックダウンにより抑制された。つまり、喫煙刺激の際にピルフェニドンにより促進されるマイトファジーはPARK2発現促進に依存することが示された。
実施例4 活性酸素種(ROS)産生評価
ミトコンドリア由来のROS産生を評価できるMitoSOX Redを用いて、細胞内ROS産生を蛍光顕微鏡により検出した。
control siRNA又はPARK2 siRNAを遺伝子導入したHBECを、1%CSE/無刺激のBEGMにより、ピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で24時間培養し、4%パラホルムアルデヒドを用いて細胞を培養プレートに固定した。なお、100%CSE培地は実施例1の方法に準じて作製した。固定化細胞について、Hoechst33258(Sigma-Aldrich)及びMitoSOX Red(Molecular Probes)を用いて、細胞内ROS産生を蛍光顕微鏡(キーエンス、BZ-X700)により検出した。
結果を図5に示す。ピルフェニドンは喫煙刺激によるミトコンドリアROS産生を抑制した。一方、PARK2をノックダウンすると該抑制が認められなくなり、PARK2発現促進によるマイトファジーがROS産生制御に関与する可能性が示された。
ミトコンドリア由来のROS産生を評価できるMitoSOX Redを用いて、細胞内ROS産生を蛍光顕微鏡により検出した。
control siRNA又はPARK2 siRNAを遺伝子導入したHBECを、1%CSE/無刺激のBEGMにより、ピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で24時間培養し、4%パラホルムアルデヒドを用いて細胞を培養プレートに固定した。なお、100%CSE培地は実施例1の方法に準じて作製した。固定化細胞について、Hoechst33258(Sigma-Aldrich)及びMitoSOX Red(Molecular Probes)を用いて、細胞内ROS産生を蛍光顕微鏡(キーエンス、BZ-X700)により検出した。
結果を図5に示す。ピルフェニドンは喫煙刺激によるミトコンドリアROS産生を抑制した。一方、PARK2をノックダウンすると該抑制が認められなくなり、PARK2発現促進によるマイトファジーがROS産生制御に関与する可能性が示された。
実施例5 抗老化作用の評価
(1)細胞内のp21発現
細胞老化のマーカーであるp21をウエスタンブロット法で検出することにより、ピルフェニドンの抗老化作用を評価した。
control siRNA又はPARK2 siRNAを遺伝子導入したHBECを、1%CSE/無刺激のBEGMにより、ピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で48時間培養し、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採集した。なお、100%CSE培地は実施例1の方法に準じて作製した。得られたタンパク検体を用い、抗p21抗体(Cell Signaling Technology, 2947)、抗TOMM20抗体及び抗β−アクチン抗体を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて発現量を検討した。
結果を図6に示す。喫煙刺激によりp21発現が誘導されたが、ピルフェニドンを添加することにより抑制が認められた。一方、PARK2をノックダウンすることで該抑制が認められなくなった。
(1)細胞内のp21発現
細胞老化のマーカーであるp21をウエスタンブロット法で検出することにより、ピルフェニドンの抗老化作用を評価した。
control siRNA又はPARK2 siRNAを遺伝子導入したHBECを、1%CSE/無刺激のBEGMにより、ピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で48時間培養し、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採集した。なお、100%CSE培地は実施例1の方法に準じて作製した。得られたタンパク検体を用い、抗p21抗体(Cell Signaling Technology, 2947)、抗TOMM20抗体及び抗β−アクチン抗体を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて発現量を検討した。
結果を図6に示す。喫煙刺激によりp21発現が誘導されたが、ピルフェニドンを添加することにより抑制が認められた。一方、PARK2をノックダウンすることで該抑制が認められなくなった。
(2)老化関連βガラクトシダーゼ(SA−BG)陽性細胞
細胞老化のマーカーであるSA−BGの陽性細胞を検出することにより、ピルフェニドンの抗老化作用を評価した。
control siRNA又はPARK2 siRNAを遺伝子導入したHBECを、1%CSE/無刺激のBEGMにより、ピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で48時間培養した。なお、100%CSE培地は実施例1の方法に準じて作製した。SA−BG陽性細胞の検出は、β-Galactosidase Staining Kit(BioVision, K802-250)を用いて行った。
結果を図7に示す。喫煙刺激によりSA−BG陽性細胞の増加が認められたが、ピルフェニドンを添加することにより減少した。一方、PARK2をノックダウンすることで該作用が認められなくなった。
細胞老化のマーカーであるSA−BGの陽性細胞を検出することにより、ピルフェニドンの抗老化作用を評価した。
control siRNA又はPARK2 siRNAを遺伝子導入したHBECを、1%CSE/無刺激のBEGMにより、ピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で48時間培養した。なお、100%CSE培地は実施例1の方法に準じて作製した。SA−BG陽性細胞の検出は、β-Galactosidase Staining Kit(BioVision, K802-250)を用いて行った。
結果を図7に示す。喫煙刺激によりSA−BG陽性細胞の増加が認められたが、ピルフェニドンを添加することにより減少した。一方、PARK2をノックダウンすることで該作用が認められなくなった。
(3)ヒストンH2AX陽性細胞
細胞老化のマーカーであるヒストンH2AXの陽性細胞を検出することにより、ピルフェニドンの抗老化作用を評価した。
control siRNA又はPARK2 siRNAを遺伝子導入したHBECを、1%CSE/無刺激のBEGMにより、ピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で48時間培養し、4%パラホルムアルデヒドを用いて細胞を培養プレートに固定した。なお、100%CSE培地は実施例1の方法に準じて作製した。固定化細胞について、Hoechst33258及び抗リン酸化ヒストンH2AX(Phospho-Histone H2A.X)抗体(Cell Signaling Technology, 2577)を用いて、ヒストンH2AX陽性細胞を蛍光顕微鏡(キーエンス、BZ-X700)により検出した。
結果を図8に示す。喫煙刺激によりヒストンH2AX陽性細胞の増加が認められたが、ピルフェニドンを添加することにより減少した。一方、PARK2をノックダウンすることで該作用が認められなくなった。
細胞老化のマーカーであるヒストンH2AXの陽性細胞を検出することにより、ピルフェニドンの抗老化作用を評価した。
control siRNA又はPARK2 siRNAを遺伝子導入したHBECを、1%CSE/無刺激のBEGMにより、ピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で48時間培養し、4%パラホルムアルデヒドを用いて細胞を培養プレートに固定した。なお、100%CSE培地は実施例1の方法に準じて作製した。固定化細胞について、Hoechst33258及び抗リン酸化ヒストンH2AX(Phospho-Histone H2A.X)抗体(Cell Signaling Technology, 2577)を用いて、ヒストンH2AX陽性細胞を蛍光顕微鏡(キーエンス、BZ-X700)により検出した。
結果を図8に示す。喫煙刺激によりヒストンH2AX陽性細胞の増加が認められたが、ピルフェニドンを添加することにより減少した。一方、PARK2をノックダウンすることで該作用が認められなくなった。
実施例6 PARK2発現促進へのMAPキナーゼの影響
ピルフェニドンによるPARK2発現促進における、ERK及びp38MAPKの影響有無を評価した。
HBECを、ピルフェニドン(50μg/ml)、ERK阻害剤のPD98059(20μM)(Sigma-Aldrich)、またはp38MAPK阻害剤であるSB203580(1μM)(Sigma-Aldrich)を含有するBEGMで24時間培養後、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採取した。得られたタンパク検体を用い、抗ERK抗体(Cell Signaling Technology, 4695)、抗リン酸化ERK(p−ERK)抗体(Thr202/Tyr204)(Cell Signaling Technology, 4370)、抗p38MAPK抗体(Cell Signaling Technology,8690)、抗リン酸化p38MAPK(p−p38MAPK)抗体(Thr180/Tyr182)(Cell Signaling Technology, 4511)、抗PARK2抗体及び抗β−アクチン抗体を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて発現量を検討した。
結果を図9及び図10に示す。HBECにおいて、PARK2発現促進活性を示す濃度(50μg/ml)のピルフェニドンはERK及びp38MAPKのキナーゼ活性に対し阻害作用を示したが、ERK阻害剤およびp38MAPK阻害剤によりPARK2発現は促進されなかった。以上の結果により、ピルフェニドンによるPARK2発現促進には、ERK及びp38MAPK阻害作用は関与していないことが示された。
ピルフェニドンによるPARK2発現促進における、ERK及びp38MAPKの影響有無を評価した。
HBECを、ピルフェニドン(50μg/ml)、ERK阻害剤のPD98059(20μM)(Sigma-Aldrich)、またはp38MAPK阻害剤であるSB203580(1μM)(Sigma-Aldrich)を含有するBEGMで24時間培養後、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採取した。得られたタンパク検体を用い、抗ERK抗体(Cell Signaling Technology, 4695)、抗リン酸化ERK(p−ERK)抗体(Thr202/Tyr204)(Cell Signaling Technology, 4370)、抗p38MAPK抗体(Cell Signaling Technology,8690)、抗リン酸化p38MAPK(p−p38MAPK)抗体(Thr180/Tyr182)(Cell Signaling Technology, 4511)、抗PARK2抗体及び抗β−アクチン抗体を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて発現量を検討した。
結果を図9及び図10に示す。HBECにおいて、PARK2発現促進活性を示す濃度(50μg/ml)のピルフェニドンはERK及びp38MAPKのキナーゼ活性に対し阻害作用を示したが、ERK阻害剤およびp38MAPK阻害剤によりPARK2発現は促進されなかった。以上の結果により、ピルフェニドンによるPARK2発現促進には、ERK及びp38MAPK阻害作用は関与していないことが示された。
実施例7 神経細胞におけるPARK2発現評価
神経細胞としてアストロサイトを用い、ピルフェニドンのPARK2発現に対する影響を評価した。
アストロサイト(Lonza, CC-2565)をAstrocyte growth medium(AGM)(Lonza)を用いて培養し、6穴プレートで80%コンフルエント程度に増殖した段階で検討に使用した。0.5〜100 μg/mlのピルフェニドンを含むAGMで24時間培養し、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採取した。抗PARK2抗体及び抗β−アクチン抗体を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて、PARK2の発現量を検討した。
結果を図11に示す。ピルフェニドンが神経細胞においてもPARK2発現を濃度依存的に促進することが示された。
神経細胞としてアストロサイトを用い、ピルフェニドンのPARK2発現に対する影響を評価した。
アストロサイト(Lonza, CC-2565)をAstrocyte growth medium(AGM)(Lonza)を用いて培養し、6穴プレートで80%コンフルエント程度に増殖した段階で検討に使用した。0.5〜100 μg/mlのピルフェニドンを含むAGMで24時間培養し、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採取した。抗PARK2抗体及び抗β−アクチン抗体を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて、PARK2の発現量を検討した。
結果を図11に示す。ピルフェニドンが神経細胞においてもPARK2発現を濃度依存的に促進することが示された。
実施例8 神経細胞における抗老化作用の評価
(1)細胞内のp21発現
実施例5と同様に、細胞老化のマーカーであるp21をウエスタンブロット法で検出することにより、神経細胞におけるピルフェニドンの抗老化作用を評価した。
アストロサイトをAGMを用いて培養し、6穴プレートで80%コンフルエント程度に増殖した段階で検討に使用した。0.5〜100 μg/mlのピルフェニドンを含むAGMで48時間培養し、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採取した。抗PARK2抗体、抗p21抗体及び抗β−アクチン抗体を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて、PARK2の発現量を検討した。
結果を図12に示す。神経細胞においても、ピルフェニドンが濃度依存的にPARK2発現を促進するのに対し、p21発現を抑制することが示された。
(1)細胞内のp21発現
実施例5と同様に、細胞老化のマーカーであるp21をウエスタンブロット法で検出することにより、神経細胞におけるピルフェニドンの抗老化作用を評価した。
アストロサイトをAGMを用いて培養し、6穴プレートで80%コンフルエント程度に増殖した段階で検討に使用した。0.5〜100 μg/mlのピルフェニドンを含むAGMで48時間培養し、トリス塩酸、グリセロール及び2−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーでタンパク検体を採取した。抗PARK2抗体、抗p21抗体及び抗β−アクチン抗体を用いて、それぞれウエスタンブロット法にて、PARK2の発現量を検討した。
結果を図12に示す。神経細胞においても、ピルフェニドンが濃度依存的にPARK2発現を促進するのに対し、p21発現を抑制することが示された。
(2)老化関連βガラクトシダーゼ(SA−BG)陽性細胞
実施例5と同様に、細胞老化のマーカーであるSA−BGの陽性細胞を検出することにより、神経細胞におけるピルフェニドンの抗老化作用を評価した。
アストロサイトをAGMによりピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で48時間培養した。SA−BG陽性細胞の検出は、老化細胞組織化学染色キット(Sigma-Aldrich, CS0030)を用いて行った。
結果を図13に示す。ピルフェニドンが神経細胞においてもSA−BG陽性細胞を減少させることが示された。
実施例5と同様に、細胞老化のマーカーであるSA−BGの陽性細胞を検出することにより、神経細胞におけるピルフェニドンの抗老化作用を評価した。
アストロサイトをAGMによりピルフェニドン(50 μg/ml)添加/無添加条件下で48時間培養した。SA−BG陽性細胞の検出は、老化細胞組織化学染色キット(Sigma-Aldrich, CS0030)を用いて行った。
結果を図13に示す。ピルフェニドンが神経細胞においてもSA−BG陽性細胞を減少させることが示された。
本発明に係るピルフェニドンを含有するPARK2発現促進剤は、PARK2発現促進作用によりオートファジー及びマイトファジー促進効果を有するため、細胞老化に関連する疾患や慢性閉塞性肺疾患などの治療剤として有用である。
Claims (8)
- ピルフェニドンを含有する、PARK2発現促進剤(但し、肺線維症の治療に用いるものを除く。)。
- 細胞老化抑制に用いるものである、請求項1記載のPARK2発現促進剤。
- 神経変性疾患の治療に用いるものである、請求項1又は2記載のPARK2発現促進剤。
- 神経変性疾患が、パーキンソン病である、請求項3記載のPARK2発現促進剤。
- 神経変性疾患が、レビー小体型認知症である、請求項3記載のPARK2発現促進剤。
- 慢性閉塞性肺疾患の治療に用いるものである、請求項1記載のPARK2発現促進剤。
- オートファジーを促進するものである、請求項1〜6のいずれかに記載のPARK2発現促進剤。
- マイトファジーを促進するものである、請求項7記載のPARK2発現促進剤。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017231313 | 2017-12-01 | ||
JP2017231313 | 2017-12-01 |
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---|---|
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2018032941A Pending JP2019099547A (ja) | 2017-12-01 | 2018-02-27 | ピルフェニドンを含有するpark2発現促進剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2019099547A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115778953A (zh) * | 2022-12-19 | 2023-03-14 | 中国人民解放军海军军医大学第一附属医院 | 吡非尼酮在治疗胰腺疾病的药物中的应用 |
-
2018
- 2018-02-27 JP JP2018032941A patent/JP2019099547A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115778953A (zh) * | 2022-12-19 | 2023-03-14 | 中国人民解放军海军军医大学第一附属医院 | 吡非尼酮在治疗胰腺疾病的药物中的应用 |
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