(実施形態1)
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る土壌浄化システムSにおいては、有害金属等(有害金属及び/又はその化合物ないしはこれらのイオン)で汚染された地盤の掘削等により採取された土壌(汚染土壌)が、投入ホッパ1に受け入れられる。なお、有害金属としては、例えばクロム、鉛、カドミウム、セレン、水銀、金属砒素などが挙げられる。そして、投入ホッパ1内の土壌は連続的又は間欠的に混合器2に投入され、混合器2に連続的に供給される洗浄水と混合される。ここで、土壌は、礫(例えば、粒径2〜75mm)と、砂(例えば、粒径0.075〜2mm)と、細粒分(例えば、粒径0.075mm以下)とを含み、場合によっては石(例えば、粒径75mm以上)を含むものである。
混合器2で生成された土壌と洗浄水とを含む混合物(以下「土壌・水混合物」という。)は、湿式破砕機であるミルブレーカ3に移送される。ミルブレーカ3としては、例えばロッドミルを用いることができる。ロッドミルは、詳しくは図示していないが、ドラムの中に複数のロッド(例えば、10本の75mmφ×2mのスチールロッド)が配置された破砕装置であり、ドラムの回転によってロッドが互いに平行に転動して線接触し、その衝撃力、剪断力、摩擦力等により礫及び砂を(場合によっては石も)破砕して細粒分等の小径の土壌粒子を生成することができるものである。ミルブレーカ3として、ロッドミルのほかにボールミルなども用いることができる。なお、礫及び砂は、その一部が細粒分になるのであって、すべてが細粒分になる訳ではない。
かくして、ミルブレーカ3は、混合器2から排出された土壌・水混合物中の礫及び砂を(場合によっては石も)破砕して細粒分等の小径の土壌粒子を生成する。これにより、礫及び砂に吸着され(付着し)又は含まれていた有害金属等が水中に離脱する。このとき、基本的には(後記の鉄等による吸着はさておき)、水中に離脱した有害金属等は、礫及び砂にはほとんど吸着されず、ないしは付着せず、細粒分に集約して吸着され、ないしは付着する(例えば、非特許文献1参照)。
さらに、礫及び砂の内部に存在ないしは偏在又は点在していた鉄等(鉄及び/又は酸化鉄)の微小塊が表面に露出する多数の鉄系細粒分が生成される。一方、一般に鉄等は有害金属等を吸着する性質がある。このため、洗浄水中に存在する有害金属等の一部ないしは大部分が鉄系細粒分の鉄等の露出面に吸着され、ないしは付着する。その結果、鉄系細粒分の有害金属等の吸着量(付着量)は、非鉄系細粒分の有害金属等の吸着量(付着量)よりかなり多くなる。つまり、ミルブレーカ3から排出される細粒分は、有害金属等の吸着量(付着量)が多い鉄系細粒分と、有害金属等の吸着量(付着量)が少ない非鉄系細粒分とで構成される。なお、破砕以前から存在する鉄系細粒分も、非鉄系細粒分に比べてかなり多くの有害金属等を吸着しているのはもちろんである。
このように有害金属等を吸着している鉄系細粒分は、後で説明するように、鉄分除去装置12によって除去される。一方、鉄等(鉄及び/又は酸化鉄)が有害金属等を吸着する性質を有することは一般に知られており、この性質を利用して、有害金属等を含むスラッジに鉄粉ないしは酸化鉄の粉末を添加することにより、スラッジから有害金属等を除去するようした「鉄粉法」が種々提案されている(例えば、特許文献3〜4、非特許文献2参照)。しかしながら、本発明のように、礫及び砂を破砕することにより、表面にフレッシュな(まだ有害金属等を吸着していない)鉄等の微小塊が露出した鉄系細粒分を生成し、これらの露出した鉄等の微小塊(鉄系細粒分)に有害金属等を吸着させるようにした有害金属等の処理手法は提案されていない。
ミルブレーカ3から排出された土壌・水混合物はトロンメル4に導入される。トロンメル4は、詳しくは図示していないが、水を貯留することができる受槽と、水平面に対して傾斜して配置された略円筒形のドラムスクリーンとを有する篩分装置であって、ドラムスクリーンは、モータによりその中心軸(円筒の中心軸)まわりに回転することができるようになっている。また、ドラムスクリーン内に、洗浄水をスプレー状で噴射することができるようになっている。
トロンメル4の回転しているドラムスクリーンの内部を土壌・水混合物が流れる際に、ドラムスクリーンの網目より細かい土壌粒子は、洗浄水とともにドラムスクリーンの網目を通り抜け、ドラムスクリーン外に出て受槽内に入る。他方、ドラムスクリーンの網目より粗い土壌粒子は、ドラムスクリーンの網目を通り抜けることができないので、ドラムスクリーンの下側の開口端を経由して、ドラムスクリーン外に排出される。
このトロンメル4では、ドラムスクリーンの網目の分級径(目開き)は、粒径が2mm未満の土壌粒子、すなわち砂及び細粒分がドラムスクリーンの網目を通り抜けるように設定されている。したがって、このトロンメル4では、粒径が2mm以上の土壌粒子である礫が(場合によっては石も)土壌・水混合物から分離される。前記のとおり、水中に離脱した有害金属等は礫及び砂にはほとんど吸着されず、ないしは付着しないので、トロンメル4で分離された礫は清浄なものであり、例えばコンクリート用の骨材等として用いることができる。なお、トロンメル4のドラムスクリーンの網目の寸法(目開き)は前記のものに限定されるわけではなく、得ようとする土壌粒子の粒径に応じて、任意に設定することができるのはもちろんである。
トロンメル4の受槽内に収容された粒径が2mm未満の土壌粒子、すなわち砂及び細粒分と洗浄水とを含む土壌・水混合物はサイクロン5(液体サイクロン)に導入される。サイクロン5は、詳しくは図示していないが、下方に向かって狭まる略円錐状のシリンダ内に土壌・水混合物をポンプで圧送して旋回流を生じさせ、これによって生じる遠心力を利用して、土壌・水混合物を、比較的粒径が小さい細粒分(例えば、粒径0.075mm未満)と水の混合物と、比較的粒径が大きい砂(例えば、粒径0.075mm以上)と水の混合物とに分離する。
そして、細粒分と水の混合物(以下「細粒分含有水」という。)はサイクロン5の上端部から排出され、比較的粒径が大きい砂と水の混合物はサイクロン5の下端部から排出される。ここで、サイクロン5の下端部から排出された砂と水の混合物は、前記のとおり有害金属等をほとんど含んでいないので、水切りないしは乾燥処理を施して再生砂として使用される。他方、細粒分含有水はPH調整槽6に移送される。
PH調整槽6では、細粒分含有水のpHが、酸液(例えば、硫酸、塩酸)及びアルカリ液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)を用いて、ほぼ中性となるように調整される。なお、図示していないが、PH調整槽6では、細粒分含有水のpHは、pHメータ等を備えたpH自動制御装置により自動的に調整される。
PH調整槽6でpHが調整された細粒分含有水は凝集槽7に導入される。凝集槽7では、細粒分含有水にポリ塩化アルミニウム液(PAC)と、高分子凝集剤と、pH調整剤(酸性液又はアルカリ性液)とが添加される。これにより、凝集槽7内に非水溶性の金属水酸化物と細粒分とが混在する多数のフロックが生成される。
凝集槽7内の細粒分含有水はシックナ8に導入される。シックナ8は、詳しくは図示していないが、細粒分含有水がほぼ静止している状態で非水溶性のフロックないしは細粒分を重力により沈降させ、下部に位置するスラッジ層(例えば、固形分の比率が5〜10%)と、上部に位置しほとんどフロックないしは細粒分を含まない上澄水(洗浄水)とを形成する。なお、上澄水の表面に浮上油が浮遊している場合、この浮上油は、少量の上澄水をシックナ8の上部から溢流させることにより除去される。
シックナ8内の上澄水は、洗浄水槽10に導入され、一時的に貯留される。洗浄水槽10が満杯になったときには予備水槽11が使用される。洗浄水層10ないしは予備水槽11に貯留されている洗浄水は、循環水として混合器2及びトロンメル4に供給される。なお、洗浄水槽10に貯留されている洗浄水が、蒸発等により減少したときには、適宜に水道水が補給される。他方、シックナ8の下部に堆積しているスラッジは、中間タンク9に移送され、一時的に貯留される。そして、中間タンク9内のスラッジは、連続的に鉄分除去装置12に移送される。
図2(a)及び図2(b)に示すように、鉄分除去装置12は、スラッジ槽16と、磁石装着ドラム17とを備えている。ここで、スラッジ槽16は、中間タンク9から管路18を介して移送されてくる細粒分(鉄系細粒分及び非鉄系細粒分)と水とからなるスラッジを受け入れて一時的に保留する。そして、スラッジ槽16内のスラッジは、後で説明するように鉄系細粒分が除去された後、管路19を介してフィルタプレス13(図1参照)に移送(圧送)される。なお、スラッジ槽16内には、細粒分の底部への沈殿を阻止するために攪拌機20が設けられている。
磁石装着ドラム17は、回転シャフト21と、回転シャフト21に同軸に取り付けられた円筒状のドラム本体22と、ドラム本体22の円周部(外縁部)にドラム円周方向に互いに隣接して環状に装着ないしは配列された複数の永久磁石23と、環状に配列された永久磁石群の外周面を覆う円筒状カバー24とを備えている。ここで、ドラム本体22は、その回転中心軸が水平方向を向きかつドラム下部がスラッジ槽16内のスラッジに浸漬されるように配置されている。
複数の永久磁石23は、それぞれ、磁極がドラム径方向外方に向くように(外向き)配設されている。永久磁石23は、N極又はS極がすべて外向きとなるように配置してもよく、また、N極とS極が交互に外向きとなるように配置してもよい。円筒状カバー24は、厚さが比較的薄い(例えば、5〜10mm)軟磁性金属材料(例えば、鉄又は鉄合金)で形成するのが好ましいが、反磁性金属材料(例えば、銅もしくはアルミニウム又はこれらの合金)で形成してもよい。
回転シャフト21ひいてはドラム本体22は、モータ25(電動機)によって減速機26を介して回転駆動され、図2(a)中における位置関係において時計回り方向に緩速(例えば、0.5〜2.0r.p.m.)で回転する。そして、ドラム本体22がスラッジ槽16内のスラッジに浸漬されているときには、スラッジ中の鉄系細粒分が永久磁石23の磁力により円筒状カバー24の外周面に引き寄せられて吸着される。かくして、ドラム本体22がスラッジの外に出たときには、円筒状カバー24の外周面に、鉄系細粒分層が形成されている。円筒状カバー24の外周面に形成された鉄系細粒分層は、スクレーパ27によって掻き取られ、ドラム本体22から除去される。なお、除去された鉄系細粒分は、例えば製鉄原料として用いることができる。
鉄系細粒分は、礫及び砂を湿式破砕機であるミルブレーカ3(図1参照)により破砕することにより生成されたもの、あるいは礫及び砂の破砕以前から存在するものであり、いずれもその表面に鉄等の微小塊が露出し、露出している鉄等の微小塊にかなり多量の有害金属等が吸着されている。一般に、礫中及び砂中には、鉄等の小塊が偏在又は点在しており、このような小塊の割合は2〜5質量%程度である。このため、礫及び砂の破砕により生成された細粒分の一部は、表面にフレッシュな鉄等が露出する鉄系細粒分となる。
鉄は強磁性体(軟磁性体)であり、磁石に吸着される。また、土壌中に存在する鉄酸化物は、実質的に四酸化三鉄(Fe3O4)と、γ型三酸化二鉄(γ−Fe2O3)と、α型三酸化二鉄(α−Fe2O3)とからなり、四酸化三鉄及びγ型三酸化二鉄は強磁性体(軟磁性体)であり、磁石に吸着される。なお、α型三酸化二鉄は磁化せず磁石には吸着されない。このため、表面に鉄等の微小塊が露出している鉄系細粒分は、鉄、四酸化三鉄又はγ型三酸化二鉄の強磁性(軟磁性)により永久磁石23に引き付けられ、円筒状カバー24の外周面に吸着される。
なお、本願発明者が、滋賀県大津市の株式会社山▲崎▼砂利商店途中工場の汚染土壌処理場において、2017年7月に複数回(10回)、ミルブレーカで礫及び砂を破砕して生成した細粒分と水の混合物であるスラッジ(細粒分1〜3質量%)について、直径約1mの磁石装着ドラム(永久磁石としてネオジム磁石を使用)を用いて鉄系細粒分の吸着実験を行ったところ、平均的にはスラッジ10m3あたり3.4kgの鉄系細粒分が採取された。
礫及び砂をミルブレーカ3で破砕することにより生成された鉄系細粒分の表面に露出している鉄等の微小塊は、礫中又は砂中に偏在又は点在していた有害金属等を吸着していないフレッシュな鉄等の小塊から生じたものであり、破砕後に表面に露出してその周囲の洗浄水から有害金属等を吸着する。かくして、ミルブレーカ3から排出され、最終的には鉄分除去装置12に導入される細粒分は、有害金属等の吸着量が比較的(ないしはかなり)多い鉄系細粒分と、有害金属等の吸着量が比較的(ないしはかなり)少ない非鉄系細粒分とで構成される。
そして、前記のとおり、鉄分除去装置12ではスラッジから鉄系細粒分が除去されるので、鉄分除去装置12から排出されるスラッジに含まれる細粒分は、有害金属等の吸着量が比較的(ないしはかなり)少ない非鉄系細粒分が大半となる。したがって、土壌浄化システムSに導入された汚染土壌に含まれていた有害金属等の大半ないしはかなりの部分は、鉄分除去装置12によって除去される。このため、土壌浄化システムSに導入される汚染土壌の性状によっては、鉄分除去装置12から排出されるスラッジないしは細粒分は、脱水するだけで埋立て等により処分することが可能である。
また、後で説明するように、鉄分除去装置12から排出されるスラッジないしは細粒分に対してキレート洗浄液でキレート洗浄処理を行う場合、鉄分除去装置12を設けない場合に比べて、キレート洗浄処理における有害金属等の負荷が軽減されるので、キレート洗浄処理における処理コストを低減することができる。この場合、鉄分除去装置12は、キレート洗浄処理における負荷を軽減する前処理装置と位置付けることも可能である。なお、鉄分除去装置12から排出されるスラッジないしは細粒分に対して、キレート洗浄処理以外の化学的処理を行う場合も、鉄分除去装置12を前処理装置と位置付けることが可能である。
再び図1に示すように、鉄分除去装置12から排出されたスラッジは、フィルタプレス13に導入されて脱水され、濾液とケーク(濾過ケーク)とが生成される。そして、濾液はシックナ8に戻される。他方、ケークは、キレート洗浄装置14に移送され、細粒分(非鉄系細粒分)に残留している有害金属等が除去される。なお、ケークに含まれる細粒分の有害金属等の含有率が基準内であれば、ケークはキレート洗浄装置14に移送されることなく、埋立て等により処分される。
以下、図3(a)、(b)を参照しつつ、図2(a)、(b)に示す鉄分除去装置12とは構成が異なるもう1つの鉄分除去装置12Aの構成及び機能を説明する。ただし、図3(a)、(b)に示す鉄分除去装置12Aの構成要素の大部分は、図2(a)、(b)に示す鉄分除去装置12の構成要素と共通であるので、説明の重複を避けるため、以下では主として鉄分除去装置12と異なる点を説明する。なお、図3(a)、(b)に示す鉄分除去装置12Aの構成要素において、図2(a)、(b)に示す鉄分除去装置12の構成要素と共通なものには、同一の参照番号を付している。
図3(a)、(b)に示すように、鉄分除去装置12Aでは、スラッジ槽16の上方に、ドラム本体17Aとは別に円柱形の駆動ローラ28が設けられ、この駆動ローラ28は駆動シャフト29に同軸に取り付けられている。駆動ローラ28及び駆動シャフト29は、その回転中心軸がドラム本体17Aの回転中心軸と平行となるように配置され、モータ25によって減速機26を介して回転駆動されるようになっている。駆動ローラ28はドラム本体17Aよりも小径(例えば、1/5〜1/10)である。
ドラム本体17Aには、図2(a)に示す鉄分除去装置12と同様の仕様で複数の永久磁石23が装着ないしは配設されている。なお、ドラム本体17Aの回転シャフト21は、スラッジ槽16に固定された軸受によって、回転自在に支持されている。そして、円周部に複数の永久磁石23が環状に装着ないしは配列されたドラム本体17Aと駆動ローラ28とにわたって、軟磁性金属材料(例えば、鉄又は鉄合金)からなる無端ベルト30(例えば、スチールベルト)が巻き掛けられている。なお、無端ベルト30を反磁性金属材料(例えば、銅もしくはアルミニウム又はこれらの合金)で形成してもよい。
駆動ローラ28が、モータ25によって減速機26を介して、図3(a)中における位置関係において時計回り方向に回転駆動されると、ドラム本体17Aは時計回り方向に従動回転し、無端ベルト30は駆動ローラ28とドラム本体17Aとの間を時計回り方向に周回走行する。なお、モータ25ないしは駆動ローラ28の回転数は、ドラム本体17Aが緩速(例えば、0.5〜2.0r.p.m.)で回転するように設定されている。
駆動ローラ28とドラム本体17Aとの間を、図3(a)中における位置関係において時計回り方向に周回走行する無端ベルト30が、ドラム本体17Aの円周面に環状に配列された永久磁石群の外周面に当接し、かつスラッジ槽16内のスラッジに浸漬されているときには、スラッジ中の鉄系細粒分が永久磁石23の磁力により無端ベルト30の外面に引き寄せられて吸着される。かくして、無端ベルト30がスラッジの外に出たときには、無端ベルト30の外面に鉄系細粒分層が形成されている。無端ベルト30の外面に形成された鉄系細粒分層は、駆動ローラ28近傍でスクレーパ27によって掻き取られ、無端ベルト30から除去される。
図3(a)、(b)に示す鉄分除去装置12Aにおいても、図2(a)、(b)に示す鉄分除去装置12と同様に、スラッジから鉄系細粒分が除去されるので、鉄分除去装置12Aから排出されるスラッジに含まれる細粒分は、有害金属等の吸着量が非常に(ないしはかなり)少ない非鉄系細粒分が大半となる。鉄分除去装置12Aから排出されたスラッジは、フィルタプレス13に導入されて脱水され、濾液とケーク(濾過ケーク)とが生成される。そして、濾液はシックナ8に戻される。他方、ケークは、キレート洗浄装置14に移送され、細粒分(非鉄系細粒分)に残留している有害金属等が除去される。
以下、キレート洗浄装置14の構成及び機能を説明する。なお、フィルタプレス13から排出されるケークの有害金属等の含有率が、埋立てや再利用などにより処分する場合における所定の規制値より低いときには、キレート洗浄装置14を用いる必要ないしは設ける必要はない。
まず、図4を参照しつつ、キレー洗浄装置14の概括的な構成及び機能を説明する。キレート洗浄装置14においては、まず混合分散装置31に、フィルタプレス13から排出されたケーク(濾過ケーク)と、洗浄液貯槽36内のキレート剤を含むキレート洗浄液とが連続的に供給される。そして、混合分散装置31は、ケークとキレート洗浄液とを混合し、キレート洗浄液中に細粒分ないしは細粒分の小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)がほぼ均一に分散(懸濁)されてなる細粒分スラリーを生成する。
混合分散装置31により生成された細粒分スラリーは、細粒分洗浄装置32に移送される。細粒分洗浄装置32は、細粒分スラリーを、攪拌しつつ予め設定された滞留時間(例えば、0.5〜2時間)を確保できるようにおおむねプラグフロー(栓流)で流すことにより、細粒分に付着している有害金属等を離脱させてキレート洗浄液中のキレート剤に捕捉させる。これにより、細粒分スラリー中の細粒分の表面に吸着(付着)されている有害金属等が除去される。
ここで、キレート洗浄液に用いられるキレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、あるいはHIDS(3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸)、IDS(2,2’−イミノジコハク酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、EDDS(エチレンジアミンジ酢酸)又はGLDA(L−グルタミン酸ジ酢酸)のナトリウム塩などが挙げられる。これらのキレート剤は、いずれも細粒分スラリーないしは細粒分に含まれている有害金属等を有効に捕捉する(キレートする)ことができものである。なお、細粒分に含まれる有害金属等の種類に応じて、その処理に適したキレート剤が選択され、又は複数種のキレート剤が用いられるのはもちろんである。
細粒分洗浄装置32から排出された細粒分スラリーは濾過装置33に移送される。濾過装置33は、細粒分スラリーを濾過し、含水率が30〜40パーセントのケーク(濾過ケーク)と濾液とを生成する。なお、このような濾過装置33としては、フィルタプレスや真空濾過機などを用いることができる。濾過装置33から排出された濾過ケーク(細粒分)は、有害金属等をほとんど含まない。
濾過装置33から排出された濾液すなわちキレート洗浄液は、洗浄液再生部34に導入される。洗浄液再生部34は、洗浄液再生装置35と、洗浄液貯槽36と、酸液貯槽37と、水貯槽38とを備えている。ここで、洗浄液再生装置35は、キレート剤よりも錯生成力が高く濾過装置33から排出されたキレート洗浄液(濾液)と接触したときにキレート洗浄液中の有害金属等を吸着又は抽出する固相吸着材又は該固相吸着材が固定された小片ないしは粒状物をその内部に有し、キレート洗浄液中のキレート剤から有害金属等を除去し、キレート洗浄液を再生する装置である。
洗浄液再生装置35では、有害金属等を捕捉しているキレート剤を含むキレート洗浄液が、キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材と接触させられる。固相吸着材は、担体に環状分子を担持させ、環状分子にキレート配位子を修飾した配位結合及び水素結合による多点相互作用を有するとともに有害金属等のイオンを選択的に取り込むものである。これにより、キレート剤に捕捉されている有害金属等はキレート剤から離脱させられ、固相吸着材に吸着又は抽出される。これにより、キレート洗浄液(キレート剤)から有害金属等が除去・回収され、キレート洗浄液(キレート剤)は再び有害金属等を捕捉することができる状態となる。
このように再生されたキレート洗浄液は、洗浄液貯槽36に一時的に貯留された後、洗浄液還流機構(後記のポンプ81、管路82等)により、混合分散装置31に還流させられる。つまり、キレート洗浄液は、細粒分の浄化とキレート剤の再生とを繰り返しつつ、キレート洗浄装置14内を循環する。なお、キレート剤の目減り分は適宜に補充される。
キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材は、例えばゲル等の固体状のものであり、一般に、金属を捕捉しているキレート剤を含む水溶液と接触したときに、キレート剤と配位結合している金属イオンをキレート剤から離脱させて該固相吸着材に移動させることができる程度の共有結合以外の強い結合力を有しているものである。このような固相吸着材は、例えばキレート剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を用いる場合、濃度が10mM/lであるEDTA水溶液から、ほぼ100%の金属イオンを回収することができる強い結合力を有するものである。
このような固相吸着材としては、例えばシリカゲルや樹脂等の担体に環状分子を密に担持させ、この環状分子にキレート配位子を修飾させたものなどが挙げられる。このような固相吸着材を用いる場合、隣り合う環状分子及びキレート配位子により、配位結合、水素結合などの複数の様々な結合や相互作用が生じて多点相互作用が生じ、金属イオンに対してキレート剤よりも強い化学結合が生じるとともに環状分子の性状により金属イオンを選択的に取り込むことができる。
キレート洗浄液の再生に伴って、固相吸着材における有害金属等の吸着量は経時的に増加してゆくが、固相吸着材の有害金属等の吸着量には上限がある。このため、固相吸着材における有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したときには、固相吸着材は、固相吸着材再生機構(後記の酸液貯槽37、ポンプ83、管路84、78、79、85等)によって再生される。すなわち、固相吸着材再生機構は、キレート洗浄液が排除された状態で洗浄液再生装置35に酸液を流し、固相吸着材に吸着された有害金属等を酸液により除去して固相吸着材を再生する。かくして、有害金属等が酸液によって回収される一方、固相吸着材は再生されて再び有害金属等を吸着することが可能な状態となる。なお、固相吸着材は、酸液によって再生された後、水洗浄機構(後記の水貯槽38、ポンプ86、管路87、78、79、88等)により水洗され、固相吸着材に付着している酸液が除去される。
以下、キレート洗浄装置14の具体的な構成及び機能を説明する。
まず、図5を参照しつつ、キレート洗浄装置14の構成要素である混合分散装置31の具体的な構成及び機能を説明する。混合分散装置31は、フィルタプレス13から排出されたケーク(細粒分)とキレート洗浄液とを連続的に混合し、キレート洗浄液中に細粒分が分散されてなる細粒分スラリーを生成する。具体的には、混合分散装置31は、フィルタプレス13から排出されたケーク(細粒分)を解砕する解砕機41と、解砕機41によって解砕されたケーク小片とキレート洗浄液とを予混合する予混合槽42と、予混合槽42によって生成された混合物を攪拌してケーク小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)をキレート洗浄液中に分散ないしは懸濁させるラインミキサ43とを有している。
そして、混合分散装置31においては、フィルタプレス13から排出されたケークが解砕機41に供給され、ケークは高速回転するブレード41aによって、例えば粒径が数mm(例えば、1〜5mm)の多数のケーク小片に解砕される。他方、解砕機41へは、キレート洗浄液貯槽44内のキレート洗浄液が、ポンプ45により管路46を介して供給される。なお、キレート洗浄液貯槽44へは、洗浄液貯槽36(図4参照)から適宜にキレート洗浄液が供給される。詳しくは図示していないが、キレート洗浄液は、ブレード41aにより解砕された直後の多数のケーク小片に対して噴射ないしは供給され、ケーク小片同士が互いに付着し合うのを防止する。なお、このような解砕機41としては、例えば大平洋機工株式会社に係る「脱水ケーキ解砕機」あるいは株式会社氣工社に係る「脱水ケーキリサイクル装置」などを用いることができるが、このような市販の解砕機を用いる場合は、解砕された直後の多数のケーク小片に対してキレート洗浄液を噴射ないしは供給する機構を付設する必要がある。
解砕機41内のキレート浄液及びケーク小片は予混合槽42に移送される。予混合槽42内のキレート洗浄液とケーク小片とは、モータによって回転駆動される攪拌機47によって攪拌され予混合される。そして、予混合槽42内のキレート洗浄液とケーク小片の混合物は、ポンプ48により管路49を介してラインミキサ43に移送される。ラインミキサ43は、横置き型の略円筒形の攪拌室内に、モータによって非常に高速で回転駆動されるブレードが配置された流通式混合器であり、キレート洗浄液とケーク小片とを非常に激しく攪拌し、キレート洗浄液中にケークないしは細粒分の微小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)がほぼ均一に分散(懸濁)されてなる細粒分スラリーを生成する。この細粒分スラリーは細粒分洗浄装置32(図4参照)に移送される。このようなラインミキサ43としては、例えば、佐竹化学機械工業株式会社に係る「サタケマルチラインミキサー」などを用いることができる。
次に、図6(a)〜(c)を参照しつつ、キレート洗浄装置14の構成要素である細粒分洗浄装置32の具体的な構成及び機能を説明する。細粒分洗浄装置32は、混合分散装置31によって生成された細粒分スラリーを、攪拌しつつ予め設定された滞留時間を確保するようにプラグフローで流すことにより、細粒分に吸着(付着)されている有害金属等を細粒分から離脱させてキレート剤に捕捉させる。
細粒分洗浄装置32は、4つの平板状の仕切り壁51〜54で仕切ることにより形成された互いに平行に伸びる5つの細長い直方体状ないしは角柱状のスラリー通路55〜59を備えた貯槽50を有している。貯槽50は、例えば地上に設置した鉄製の直方体状の角型タンクであってもよく、またコンクリート製の直方体状のピットであってもよい。また、仕切り壁51〜54は、例えば複数の鉄板又はプラスチック板をスラリー通路の伸びる方向に連結することにより形成したものであってもよい。
スラリー通路55〜59において隣り合う2つのスラリー通路はスラリー通路長手方向(図6(a)、(b)における位置関係では左右方向)の一端の連通部(図6(a)中に4つの曲線状の矢印で示された部位)で互いに連通している。すなわち、これらの連通部には仕切り壁51〜54が存在せず、隣り合うスラリー通路同士が連通している。
各スラリー通路55〜59の底部には、それぞれ、細粒分スラリー中に空気を放出して細粒分スラリーを攪拌する空気放出管61〜65が配設されている。各空気放出管61〜65はスラリー通路長手方向に伸び、周壁の底部(下側)においてスラリー通路長手方向に並ぶ複数の空気放出孔が形成された多孔管であり、その中空部は、詳しくは図示していないが、圧縮空気を供給するコンプレッサないしは送風機に接続されている。空気放出管61〜65に加圧された空気が供給されたときには、この空気が空気放出孔から気泡となって細粒分スラリー中に放出されて浮上し、この気泡によって細粒分スラリーが攪拌される。
図6(c)は、細粒分スラリーの流れ方向(図6(a)中に曲線状の矢印及び直線状の矢印で示す方向)にみて最も上流側のスラリー通路55の断面を示している。図6(c)から明らかなとおり、空気放出管61は、スラリー通路55の一方の側面の近傍においてスラリー通路底部近傍に配置されている。このため、空気放出管61から放出された気泡はこの側面の近傍で上昇する。その結果、スラリー通路55内には、スラリー通路長手方向と垂直な平面内において矢印Pで示す方向に流れる循環流が形成され、細粒分スラリーが攪拌される。貯槽50及び各スラリー通路55〜59の形状、寸法、容量等、並びに空気放出管61〜65への加圧空気の供給量等は、細粒分洗浄装置32において予め設定される細粒分スラリーの、含水率、流量、滞留時間、流速、流れの乱流度(例えば、レイノルズ数)等に対応して好ましく設定される。
以下、図7を参照しつつ、キレート洗浄装置14の構成要素である洗浄液再生部34の具体的な構成及び機能を説明する。洗浄液再生部34には、キレート洗浄液ないしはキレート剤を再生する手段として、その内部に固相吸着材粒子、又は固相吸着材が固定された充填物(パッキング)が充填された充填塔形式の洗浄液再生装置35が設けられている。また、洗浄液再生部34には、再生すべきキレート洗浄液を貯留する中間貯槽72と、再生されたキレート洗浄液を貯留する洗浄液貯槽36と、酸液を貯留する酸液貯槽37と、水を貯留する水貯槽38とが設けられている。
中間貯槽72には、濾過装置33(図4参照)から排出された濾液すなわちキレート洗浄液が一時的に貯留される。そして、キレート洗浄液を再生するときに、中間貯槽72に貯留されたキレート洗浄液を洗浄液再生装置35に移送する一方、洗浄液再生装置35で再生されたキレート洗浄液を洗浄液貯槽36に移送するためのポンプ76及び一連の管路77〜80が設けられている。また、洗浄液貯槽36に貯留されたキレート洗浄液を、キレート洗浄液貯槽44ひいては混合分散装置31(図5参照)に供給するためのポンプ81及び管路82が設けられている。
さらに、洗浄液再生部34には、固相吸着材を再生する際に、酸液貯槽37に貯留された酸液を洗浄液再生装置35に移送する一方、洗浄液再生装置35から排出された酸液を酸液貯槽37に戻すためのポンプ83及び複数の管路84、85が設けられている。また、洗浄液再生部34には、酸液で再生された固相吸着材を水洗する際に、水貯槽38に貯留された水を洗浄液再生装置35に移送する一方、洗浄液再生装置35から排出された水を水貯槽38に戻すためのポンプ86及び複数の管路87、88が設けられている。
洗浄液再生装置35にキレート洗浄液、酸液又は水を移送するための管路77、78、84、87には、それぞれ、対応する管路を開閉するバルブ91、92、93、94が介設されている。他方、洗浄液再生装置35からキレート洗浄液、酸液又は水を排出するための管路79、80、85、88には、それぞれ、対応する管路を開閉するバルブ95、96、97、98が介設されている。これらのバルブ91〜98の開閉状態を切り換えることにより、洗浄液再生装置35に対して、キレート洗浄液、酸液又は水のいずれかを給排することができる。なお、これらのバルブ91〜98の開閉は、図示していないコントローラによって自動的に制御される。
以下、洗浄液再生部34の運転手法の一例を説明する。なお、以下で説明する運転手法は単なる例示であって、本発明に係る洗浄液再生部34の運転手法が以下のものに限定されるものではないのはもちろんである。キレート洗浄液(キレート剤)を再生する際には、管路77〜80に介設されたバルブ91、92、95、96が開かれる一方、他のバルブ93、94、97、98が閉じられ、ポンプ76が運転される。これにより、中間貯槽72内のキレート洗浄液が、洗浄液再生装置35内を流通して洗浄液貯槽36に移送される。
洗浄液再生装置35内では、有害金属等を捕捉しているキレート剤を含むキレート洗浄液が、キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材(固相吸着材粒子)と接触させられる。その結果、キレート剤に捕捉されている有害金属等がキレート剤から離脱させられ、固相吸着材に吸着ないしは抽出される。これにより、キレート洗浄液から有害金属等が除去・回収され、キレート剤は再び有害金属等を捕捉することができる状態となり、キレート洗浄液は再生される。洗浄液貯槽36に貯留されたキレート洗浄液は、ポンプ81によって管路82を介してキレート洗浄液貯槽44ひいては混合分散装置31(図5参照)に返送される。
キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材は、例えばゲル等の固体状のものであり、一般に、金属を捕捉しているキレート剤を含む水溶液と接触したときに、キレート剤と配位結合している金属イオンをキレート剤から離脱させて該固相吸着材に移動させることができる程度の共有結合以外の強い結合力を有しているものである。このような固相吸着材としては、例えばシリカゲルや樹脂等の担体に環状分子を密に担持させ、この環状分子にキレート配位子を修飾させたものなどが挙げられる。このような固相吸着材を用いる場合、隣り合う環状分子及びキレート配位子により、配位結合、水素結合などの複数の様々な結合や相互作用が生じて多点相互作用が生じ、金属イオンに対してキレート剤よりも強い化学結合が生じるとともに環状分子の性状により金属イオンを選択的に取り込むことができる。
キレート洗浄液の再生に伴って、固相吸着材における有害金属等の吸着量は経時的に増加してゆくが、前記のとおり固相吸着材の吸着能力には上限がある。このため、固相吸着材における有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したときには、固相吸着材は再生される。すなわち、キレート洗浄液が排除された状態で洗浄液再生装置35内に酸液を流し、固相吸着材に吸着された有害金属等を酸液により除去して固相吸着材を再生する。かくして、有害金属等が酸液によって回収される一方、固相吸着材は再生されて再び有害金属等ないしはこれらのイオンを吸着又は抽出することが可能な状態となる。なお、後で説明するとおり、固相吸着材は、酸液によって再生された後に水洗され、固相吸着材に付着している酸液が除去される。
洗浄液再生装置35内の固相吸着材の有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達して固相吸着材を酸液で再生する際には、管路84、78、79、85に介設されたバルブ93、92、95、97が開かれる一方、他のバルブ91、94、96、98が閉じられ、ポンプ83が運転される。これにより、酸液貯槽37内の酸液が、洗浄液再生装置35内を流通して酸液貯槽37に還流する。固相吸着材の再生操作を開始する前には、洗浄液再生装置35内のキレート洗浄液は排除される。なお、複数の洗浄液再生装置35を並列に配設すれば、一部の洗浄液再生装置35へのキレート洗浄液の供給が停止されているときでも、キレート洗浄液を連続的に再生することができる。固相吸着材の有害金属吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したか否かは、洗浄液再生装置35から排出されたキレート洗浄液中の有害金属等の含有量を検出することにより判定することができる。
洗浄液再生装置35内に酸液を流す時間は、洗浄液再生装置35の寸法ないしは形状、固相吸着材粒子の寸法等に応じて好ましく設定される。酸液は、酸液貯槽37と洗浄液再生装置35との間を循環して流れる。その際、洗浄液再生装置35内の固相吸着材は酸液と接触し、固相吸着材に吸着されている有害金属等が酸液中に離脱させられる。すなわち、有害金属等が酸液によって回収され、固相吸着材は再生されて再び有害金属等を吸着することが可能な状態となる。
酸液による固相吸着材の再生が終了した後に固相吸着材を水洗する際には、管路87、78、79、88に介設されたバルブ94、92、95、98が開かれる一方、他のバルブ91、93、96、97が閉じられ、ポンプ86が運転される。これにより、水貯槽38内の水が、洗浄液再生装置35内を流通して水貯槽38に還流する。このような固相吸着材の水洗操作を開始する前には、洗浄液再生装置35内の酸液は排除される。水は、水貯槽38と洗浄液再生装置35との間を循環して流れる。その際、洗浄液再生装置35内の固相吸着材は水と接触し、固相吸着材に付着している酸液が洗浄される。この後、キレート洗浄液の再生が再開される。
実施形態1に係る土壌浄化システムSでは、洗浄水による汚染土壌の洗浄・分級の過程で、有害金属等は礫及び砂にはほとんど吸着されず、細粒分に集約して吸着されるので、清浄で再利用可能な礫及び砂を得ることができる。そして、土壌浄化システムSでは、ミルブレーカ3で礫及び砂が破砕されて鉄系細粒分と非鉄系細粒分とが生成される。したがって、鉄分除去装置12には、破砕以前に存在した鉄系細粒分と、破砕によって生成された鉄系細粒分とが導入され、これらの鉄系細粒分はいずれもはかなり多量(非鉄系細粒分と比べて)の有害金属等を吸着している。
そして、鉄分除去装置12で磁石装着ドラム17によって有害金属等の吸着量が多い鉄系細粒分がスラッジから除去されるので、該スラッジないしは残留する細粒分(非鉄系細粒分)の有害金属等の含有率を大幅に低下させることができ、土壌の性状によっては投棄ないしは埋立処理が可能な程度まで有害金属等の含有率を低下させることができる。
このように鉄分除去装置12から排出されるスラッジの有害金属等の含有率が大幅に低減されているので、このスラッジを濾過するフィルタプレス13から排出されたケークをキレート洗浄装置14でキレート洗浄する場合でも、キレート剤の使用量ないしは必要量を大幅に低減することができ、土壌の処理コストを低減することができる。なお、ミルブレーカ3及び鉄分除去装置12は、物理的な処理を施す簡素な機械構造のものであり、有害金属等を処理するための格別の化学薬品を使用しないので、その運転コストは非常に低い。
(実施形態2)
以下、図8を参照しつつ本発明の実施形態2に係る土壌浄化システムSAを説明する。しかしながら、実施形態2に係る土壌浄化システムSAと、図1〜図7に示す実施形態1に係る土壌浄化システムSとは多くの点で共通である。そこで、以下では説明の重複を避けるため、主として土壌浄化システムSAにおける土壌浄化システムSとの相違点を説明する。なお、実施形態2に係る土壌浄化システムSAの構成要素において、実施形態1に係る土壌浄化システムSの構成要素と共通なものには、実施形態1と同一の参照番号を付している。
実施形態2に係る土壌浄化システムSAは、図8中ではその一部の記載を省略しているが、実施形態1に係る土壌浄化システムSと同様に、投入ホッパ1から中間タンク9に至る一連の装置1〜9と、洗浄水貯槽10と、予備水槽11と、鉄分除去装置12とを備えている。しかしながら、土壌浄化システムSAは、実施形態1におけるフィルタプレス13及びキレート洗浄装置14は備えていない。そして、土壌浄化システムSAは、細粒分洗浄装置101と、濾過装置102と、清澄濾過器103と、逆浸透膜分離装置104(RO分離装置)と、キレート剤再生装置105とを備えている。
細粒分洗浄装置101は、詳しくは図示していないが、鉄分除去装置12から排出された非鉄系細粒分と洗浄水とを含むスラッジと、キレート剤と水とを含むキレート洗浄液とを受け入れ、これらを混合・攪拌して細粒分スラリーを生成し、予め設定された滞留時間を確保するように連続的に流すことにより、非鉄系細粒分に吸着されている(付着している)有害金属等を離脱させてキレート剤に捕捉させ、あるいは水中に存在する有害金属等をキレート剤に捕捉させる。このような細粒分洗浄装置101としては、例えば実施形態1における細粒分洗浄装置32(図6(a)〜(c)参照)を用いることができる。細粒分洗浄装置101に供給するスラッジの流量とキレート洗浄液の流量の比は、例えば1:1に設定される。なお、使用するキレート剤は実施形態1と同様である。
細粒分洗浄装置101から排出された細粒分スラリーは濾過装置102に移送される。濾過装置102は、細粒分スラリーを濾過し、含水率が30〜40パーセントのケーク(濾過ケーク)と濾液とを生成する。なお、濾過装置102としては、フィルタプレスや真空濾過機などを用いることができる。濾過装置102から排出されたケーク(細粒分)は有害金属等をほとんど含まない。
濾過装置102から排出された濾液すなわちキレート洗浄液は、清澄濾過器103(例えば、砂濾過器)で懸濁物質ないしは浮遊物質(SS)が除去された後、逆浸透膜分離装置104に圧送される。詳しくは図示していないが、逆浸透膜分離装置104は、清澄濾過器103から排出されたキレート洗浄液を受け入れて、逆浸透膜により、キレート剤が濃縮された濃縮水と、キレート剤を含まない透過水とに分離する。
逆浸透膜分離装置104の逆浸透膜としては、例えばポリエステル不織布(厚さ100〜120μm)の表面に、ポリスルホン支持層と架橋芳香族ポリアミド緻密層とが積層されてなる三層構造のものなどを用いることができる。なお、架橋芳香族ポリアミド緻密層は、孔径がおおむね0.5〜1.5nmである多数の細孔を有し、水は透過させるがキレート剤は透過させない非常に薄い(例えば、0.2〜0.25μm)半透膜である。また、ポリスルホン支持層は、非常に薄い架橋芳香族ポリアミド緻密層を支持ないしは保護してその破損を防止するための比較的厚い(例えば、40〜50μm)多孔質膜である。
逆浸透膜分離装置104はスパイラル型のものであり、スパイラル状に巻かれた逆浸透膜が円筒状の容器内に収容されてなる逆浸透膜エレメントを複数有している。各逆浸透膜エレメントは、例えば全長を1〜2m程度とし、外径を0.2〜0.4m程度とするのが実用的である。例えば、全長が約1mであり、外径が約0.2mである市販のこの種の逆浸透膜エレメント(例えば、岐阜県中津川市の株式会社オーセンテック製)における逆浸透膜の有効膜面積は約40m2である。この逆浸透膜エレメントの場合、キレート剤濃度が1質量%程度のキレート洗浄液を1MPa程度の圧力で供給するときの、キレート洗浄液の処理量は約1.5m3/hrと推定される。したがって、例えば毎時60m3のキレート洗浄液を処理する場合は、この逆浸透膜エレメントを40本並列に接続すればよい。
逆浸透膜分離装置104は連続式であり、キレート洗浄液の供給量及び供給圧力(操作圧力)、濃縮水及び透過水の排出量、濃縮水のキレート剤濃縮比等の運転条件は、細粒分洗浄装置101に供給すべきキレート洗浄液の量及びキレート剤濃度に応じて適切に設定される。例えば、細粒分洗浄装置101に供給するスラッジの流量とキレート洗浄液の流量の比を1:1に設定し、細粒分洗浄装置101における細粒分スラリーのキレート剤濃度を1質量%に設定した場合、逆浸透膜分離装置104はキレート洗浄液の供給量の50%程度の透過水(キレート剤濃度0)と50%程度の濃縮水(キレート剤濃度2質量%程度)とが生成されるように設定される。したがって、細粒分洗浄装置101では、キレート剤を含まないスラッジとキレート剤濃度が2質量%程度のキレート洗浄液とが1:1で混合され、細粒分洗浄装置101におけるキレート剤濃度は1質量%程度に維持される。
逆浸透膜分離装置104から排出された濃縮水すなわちキレート洗浄液は、キレート剤再生装置105に導入されて再生される。すなわち、キレート洗浄液(キレート剤)から有害金属等が除去・回収され、キレート洗浄液(キレート剤)は再び有害金属等を捕捉することができる状態となる。このようなキレート剤再生装置105としては、例えば実施形態1における洗浄液再生部34(図7参照)を用いることができる。
実施形態2に係る土壌浄化システムSAによれば、実施形態1に係る土壌浄化システムSと同様に、清浄で再利用可能な礫及び砂を得ることができ、鉄分除去装置12から排出されるスラッジの有害金属等の含有率を大幅に低下させることができる。このように、鉄分除去装置12から排出されるスラッジの有害金属等の含有率が大幅に低減されているので、このスラッジをキレート洗浄する場合でも、キレート剤の使用量ないしは必要量を大幅に低減することができ、土壌の処理コストを低減することができる。