図1に、センサーを内蔵したボールを含むシステムの一例として、ユーザーの投球をデータ化してクラウドを経由して管理するシステムの概要を示している。このシステム1は、ユーザー2がマウンド3からキャッチャー4に向けて投げたボールの状態(投球)5を、ボール10に内蔵したセンサーによりデータ化し、ユーザーの携帯端末20を介してクラウド30から管理するシステムである。クラウド30は、インターネットなどのコンピュータネットワーク31と、コンピュータネットワーク31に接続されたサーバー35と、コンピュータネットワーク31に接続されたオンラインコーチシステム40とを含む。
サーバー(クラウドサーバー)35は、ユーザー管理機能36と、ユーザー毎のデータを蓄積するストレージ37と、データ管理ユニット38と、ランキング集計などを行うデータ分析ユニット39とを含む。オンラインコーチシステム40は、サーバー35に蓄積されたユーザー毎のデータを用いてユーザーの投球を再現するシミュレータ41と、再現されたユーザーの投球に対してコンピュータネットワーク31を介してコーチ42がアドバイスを送るユニット43とを含む。
図2に、センサーを内蔵したボール10の一例を示している。ボール10の一例は野球ボール(硬式ボール)である。ボール10は、内部にハードウェアを収めたカプセル13が収納された中心のゴム製またはコルク製のコア(コア体)11と、コア11の周囲を通常の野球ボールと同様に覆う糸巻の部分12aと、最も外側を覆う革製の外皮12bとを含む。コア11は、ハードウェアを収納した樹脂製で球状のカプセル13と、カプセル13を覆う弾性層、例えばゴム層11aとを含む。ハードウェアをカプセル13に収納し、さらにそれをボール本来のコアの材料11aで覆い、ハードウェアをコア11に収納することにより、センサーなどのハードウェアが含まれていても芯ずれを起こさない、あるいは大きな芯ずれを発生させないボール10を提供できる。
カプセル13は、ボール10の動きを検出するセンサー(第1のセンサー)80と、通信ユニットなどが搭載された制御基板(制御ユニット)17と、バッテリー18aおよび18bを予め設計された位置および姿勢で収納するように構成されており、カプセル13を覆うゴム層11aと協働で、全体の重量およびバランスが通常の野球ボール(硬式ボール)とほとんど変わりないように構成されている。カプセル13の内部は、各パーツが所定の場所に所定の姿勢で収納できるような多層構造であってもよく、収納した後にモールド樹脂などによりカプセル13の内部を封止してもよい。
図3に、カプセル13に収納されたセンサー80を含むハードウェアの概略構成を示している。センサー(第1のセンサー、センサー群)80は、多軸、例えば3軸の加速度センサー81、82a〜82cと、多軸、例えば3軸のジャイロセンサー85と、多軸、例えば3軸の磁気センサー86と、センサー基板88とを含む。制御基板17は、短距離無線通信ユニット(第1の通信ユニット、一例はBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy))17aと、制御用のマイコン17bと、メモリ17cとを含む。カプセル13には、上記のハードウェアに対し電力を供給する複数のバッテリー18aおよび18bと、電源のオンオフを制御するスイッチ16とを含む。本例においては、センサー内蔵のボール10の重量およびバランスを従来のボールとほぼ同一に保つため、カプセル13に収納されたハードウェアの構成はできるだけ簡略化されており、バッテリー18aおよび18bは内蔵型で使い捨てタイプとなっている。無線などにより間接的にバッテリーを充電する機能がコア11の内部に収納できる程度にコンパクトで軽量化されれば、使い捨てでないタイプのセンサー内蔵ボールを提供することも可能である。
第1のセンサー80は、本例では、加速度センサー81、82a〜82d、ジャイロセンサー85、地磁気センサー86をそれぞれ収納しているが、3軸加速度センサーと、3軸ジャイロセンサーと、3軸地磁気(磁気)センサーとを含む9軸センサーであってもよく、1チップ化されたセンサーであってもよい。センサー80は、カプセル13の内部の中心13cに配置されており、カプセル13の中心13cは、コア11の中心、すなわち、ボール10の重心10gとなる予定の位置である。2つのバッテリー18aおよび18bと、制御基板17とは、センサー80の周囲に、カプセル13の中心13cが質量中心(重心)となるように配置されている。例えば、バッテリー18aおよび18b、制御基板17さらにカウンターウェイト(不図示)が球形のカプセル13の内面に接するように、ほぼ正四面体を形成するように配置されている。カプセル13の内部の配置はこれに限定されず、センサー80が中心13cに配置され、バッテリー18aおよび18bなどの他のハードウェアの全体の重量バランスが中心13cに一致するように配置されていることが好ましい。さらに、慣性モーメントも一致していることが好ましい。
第1のセンサー80は、複数の3軸の加速度センサー81、82a〜82dを含む。第1の加速度センサー81は、カプセル13の中心13c、すなわち、ボール10の重心予定位置10gに配置され、4つの第2の加速度センサー82a、82b、82cおよび82dは、第1の加速度センサー81の周囲に、第1の加速度センサー81にほぼ隣接するように配置されている。具体的には、4つの第2の加速度センサー82a〜82dは、第1の加速度センサー81、すなわち、中心13cを体心位置とする正四面体の頂点の位置またはそれに近い位置に配置されている。
第1の加速度センサー81は、カプセル13がボール10に対して予定通りに収納されカプセル13の中心13cがボール10の重心10gと一致する場合は、ボール10が飛翔中に回転してもほとんど遠心力による加速度を検知しない。したがって、ボール10の飛翔運動に対する加速度を検出できる。
一方、カプセル13がボール10に対して予定通りに収納されず、カプセル13の中心13cがボール10の重心10gに対してシフトしている場合は、第1の加速度センサー18と、その周囲に配置されている第2の加速度センサー82a〜82dのいずれか1つまたは複数との間に重心10gが位置したり、第2の加速度センサー82a〜82dのいずれかの近傍に重心10gが位置したり、あるいは第2の加速度センサー82a〜82dのいずれかの間に重心10gが位置している可能性が高い。したがって、第2の加速度センサー82a〜82dのいずれかから遠心力の加速度の影響の小さい加速度データを得ることができる可能性がある。さらに、第1の加速度センサー81および1または複数の第2の加速度センサー82a〜82dから得られたデータにより遠心力の加速度に関するデータをキャンセルでき、飛翔運動に関連する加速度データを得られる可能性がある。
第2の加速度センサー82a〜82dは、カプセル13の内部に余裕があれば、さらに数を増やすことが可能であり、例えば、カプセル13の中心13cを体心位置とする6面体の各頂点に配置することが可能である。
このボール10においては、電源スイッチ16が加速度センサー81、82a〜82dのいずれかに接続されており、ボール10が投げ上げられてフリーフォールになったことを検出するとバッテリー18aおよび18bから制御基板17およびセンサー80の他のセンサーへの電力供給を介してして計測状態に入る。電源スイッチ16をオンする動作はフリーフォールに限定されず、他の動き、例えば、ボール10が回転させられたり、ボール10を持って振り回されたことを他のセンサーで検出してもよい。電源スイッチ16は、センサー80からボール10が動いたデータが検出されない状態が所定の時間継続するとバッテリー18aおよび18bからの電力供給を停止する。
マイコン17bは、測定が開始されると、センサー80により検出されるデータ(センサーデータ)51、例えば、3軸方向の加速度と、3軸方向の角速度と、3軸方向の地磁気とを所定のサンプリングピッチでメモリ17cに格納する。マイコン17bは、測定が終了すると、格納されたセンサーデータ51を、無線通信ユニット17aを介して出力する。
図4に、携帯端末20の構成を示している。携帯端末20の一例はスマートホンであり、短距離無線通信ユニット(第2の通信ユニット、一例はBLE(Bluetooth(登録商標)Low Energy))21と、無線LANおよび/または携帯電話通信網を介してデータを
送受信するデータ通信ユニット22と、緯度および経度を測位するGPS23と、方位を判別できる電子コンパス24と、加速度センサー25と、種々の機能を実現するプロセッサ26と、メモリ27と、入出力ユニットであるディスプレイ28a、タッチセンサー28bおよび音声入出力ユニット29とを含む。
プロセッサ26は、メモリ27にダウンロードされたアプリケーションプログラム(アプリ、プログラム、プログラム製品)60に含まれる命令により、ボール移動データ生成用の端末および/またはボールの挙動(飛翔状態)を解析する端末としての機能を提供する。プロセッサ26は、プログラム60により、ボール10に内蔵された通信ユニット(第1の通信ユニット)17aと携帯端末20の通信ユニット(第2の通信ユニット)21とをペアリングするユニット61と、ペアリングされたボール10が単独で移動する環境を示す外部情報52を取得するユニット62と、通信ユニット17aおよび21を介して得られた、ペアリングされたボール10のセンサーデータ51を外部情報52と関連付けしてペアリングされたボール10のボール移動データ55を生成するユニット63として機能する。
さらに、プロセッサ26は、アプリケーションプログラム60に含まれる命令により、ボール10の加速度データを解析するユニット64と、ボール10の回転を解析するユニット65と、ボール10の加速度、回転軸の角度、球速および回転数に基づいて球種を出力するユニット66と、ボール10の移動中の状態を外から見た状態で表示するシミュレータ67と、投球モーションを解析するユニット68と、センサーデータ51および外部情報52とを一体にしたボール移動データ55をインターネット31を介してクラウドサーバ35に格納する(アップロードする)ユニット69と、クラウドサーバ35から供給されるコンテンツを表示するユニット70として機能する。
図5に、アプリケーション60を起動させて、携帯端末20によりペアリングされたボール10からセンサーデータ51を取得してペアリングされたボール10のボール移動データ55を生成するとともに、ペアリングされたボール10の動きを解析するプロセス(方法)の概要をフローチャートにより示している。ステップ101において、センサー内蔵のボール10と携帯端末20とをペアリングする。具体的には、携帯端末20のペアリングするユニット61がボール10に内蔵されている第1の通信ユニット17aと、携帯端末20の第2の通信ユニット21とをペアリングする。これにより、特定のボール10と、特定の携帯端末20との対応が一義的に決まり、ペアリングされた携帯端末20に入力された外部情報52が、ペアリングされたボール10のセンサーデータ51と一対一で関連づけられる。1つの携帯端末20に複数のボール10をペアリングすることが可能であり、その場合は、ステップ102において、ペアリングされているボール10の中から投球するボール10を選択する。
携帯端末20とボール10との関係がペアリングにより一対一に設定されると、ステップ103において、ボール10が単独で移動する環境を示す外部情報52を取得する。外部情報を取得するユニット62が、携帯端末20の画面、GPS23などから、外部情報52として投球距離、投球方向、位置情報(緯度経度)を取得する。投球に関わる位置情報は、投球位置(マウンド)であっても、捕球位置(ホーム)であっても、その途中であってもよく、さらに、ボール10の飛翔経路から大きく外れない位置であればよい。「投球方向」は、携帯端末20の電子コンパス24を用いて携帯端末20が向いている方位を表示させて、携帯端末20の方向と投球方向とを合致させることによりユニット62が自動的に取得するようにしてもよい。
外部情報52が携帯端末20にセットされると、ステップ104において、携帯端末20に表示される「投球開始」ボタンをクリックする。この操作により、携帯端末20からペアリングされているボール10に対し、第2の通信ユニット21および第1の通信ユニット17aを介して、センサーデータ51を取得してメモリ16cに格納を開始するコマンドが送信される。ユーザー2は投球が終了すると、ステップ105において、携帯端末20の画面に表示される「投球終了」をクリックする。この操作により、携帯端末20からペアリングされているボール10に対し、第2の通信ユニット21および第1の通信ユニット17aを介して、センサーデータ51の取得を終了するコマンドが送信される。同時に、メモリ16cに格納されたセンサーデータ51を携帯端末20に送信するコマンドが送信され、携帯端末20にアプリケーションプログラム60により実装された機能である、生成するユニット63がボール10からセンサーデータ51を取得する。なお、以降においては、アプリケーションプログラム(プログラム製品)60により実装された機能は携帯端末20の機能として説明する。
ステップ106において、携帯端末20の生成するユニット63は、ボール10から取得したセンサーデータ51と、携帯端末20に入力された外部情報52とを関連付けして、ペアリングされたボール10のボール移動データ(移動データ)55を生成する。センサーデータ51は、3軸方向の加速度データと、3軸方向のジャイロ(角速度)データと、3軸方向の地磁気データとを含む。外部情報52は、ボール10が移動する投球距離、すなわちマウンド3からキャッチャー4までの距離と、投球方向と、緯度経度情報とを含む。ボール移動データ55は、センサーデータ51を生データとして含んでいてもよく、外部情報52により企画化または標準化したデータとして含んでいてもよい。
センサーデータ51は、センサー80により、ボール10の内部で取得できる情報(内部情報)であり、ボール10自身の動きを再現するために必要な情報である。外界に対してボール10の動きを再現するためには、投球距離、投球方向、緯度経度情報といった情報を取得できることが望ましい。一方、本例のボール10においては、回転の影響を除いて、ボールの重心の質点としての運動に関する加速度(ベクトル量)が測定できるようになることで、飛翔運動の加速度(方向を含めたベクトル量としての加速度)が精度よく求められる。このため、加速度を用いて飛翔距離を求めたり、飛翔運動の変化(変位量、方向及び量を含めたベクトル量)を求めたりすることが可能である。また、地磁気の情報もボール10に内蔵されている地磁気センサー86により取得することが可能である。したがって、センサーデータ51により、ボール10が外界に対してどのように運動しているかを再現できる。一方、ボール10のセンサー80により得られる情報を、携帯端末20により得られた情報で検証したり、なんらかの条件によりボール10のセンサー80で得られない情報を端末20により得られた情報で補完することは、情報の評価およびシステム1の安定性を確保するために重要である。
携帯端末20のアップロードユニット69は、ステップ107において、移動データ55を、データ通信ユニット22を介してクラウドサーバ35にアップロードする。本例の移動データ55には、投球を解析するための外部情報52と、センサーデータ51としてセンサー80から取得される生データ(RawData)がそのまま含まれている。したがって、移動データ55をクラウドサーバ35にアップロードしておくことにより、移動データ55を様々な方法により解析でき、移動データ55を多種多用な用途に用いることができる。また、解析方法が進歩した場合、移動データ55を進歩した方法で再解析することも可能となる。
この携帯端末20においては、移動データ55をアップロードするとともに、ステップ108において、センサーデータ51により得られた情報と、外部情報52とに基づいて、その場で投球の評価を行うことができる。センサーデータ51および外部情報52を含み、メモリ27に蓄積された移動データ55に基づいて投球を解析・評価してもよく、その時に得られたセンサーデータ51および外部情報52に基づいて投球を解析・評価してもよい。評価するステップ108は、加速度を解析するステップ108aと、回転を解析するステップ108bと、球種を求めるステップ108cとを含む。
加速度を解析するステップ108aにおいては、加速度を解析するユニット64がセンサーデータ51に含まれる加速度センサー81、82a〜82dのデータを評価して解析する。ボール10の重心10gの予定位置に配置されている第1の加速度センサー81のデータに遠心力によりノイズ(リップル)が小さく、飛翔中の空気抵抗などにより加速度のデータが得られると判断すると、その加速度のデータを用いて、飛翔中のボール10の飛翔距離に対する速度変化を求める。また、加速度のデータに、飛翔運動が変化する方向の加速度のデータが含まれている場合は、そのデータを積分することにより飛翔運動の変位(変位量)を求める。
一方、加速度を解析するユニット64が、第1の加速度センサー81のデータに含まれる、遠心力によりノイズ(リップル)が大きいと判断すると、第2の加速度センサー82a〜82dのデータを評価する。ユニット64は、複数の加速度センサー82a〜82dの中の、最もノイズの小さい加速度センサーのデータを採用するか、または、複数の加速度センサーのデータを用いて、遠心力によるノイズ(加速度成分)をキャンセルする処理を行い、ボール10の飛翔運動の加速度データを生成する。
回転を解析するステップ108bにおいては、回転を解析するユニット65が、ボール10が移動期間にどれだけ(何回)回転したかを求める。具体的には、センサーデータ51の地磁気データの振幅の数により回転数Prを算出する。地磁気に対し垂直にボール10が回転した場合は回転数Prを取得できないが、ピッチャーの投球を対象とした場合には、ほとんど起きえないケースである。
球種を求めるステップ108cにおいては、球種を求めるユニット66が、ボール10が水平面、ボール10の進行方向に対し、どの角度で回転しているかを求める。さらに、ボール10の飛翔中の加速度変化および変位量を参照して球種を求める。例えば、ピッチャーの手からボールが離れた後、キャッチャーにボールが到達するまでに、真空中での自由落下運動と比較して、どれだけ左右・上下にボールが変化したかの度合いをキャッチャーの手元での変位量で表すことが可能となる。また、ボール10の飛翔方向の加速度も測定できるようになるので、ボールの減速なども計算でき、「初速」と「終速」を含む速度の変化も観測できる。飛翔運動の加速度が正確に測定できれば、飛翔中のボールの速度が分かるので、飛距離を外部入力しなくてもボール10の飛距離と速度の測定ができる。このため、自由な距離で速度測定が可能となる。
地磁気センサー86または外部情報52に含まれる位置情報から地磁気伏角を求めて、地磁気センサー86のデータを解析し、回転数および回転軸の方向を求めるためには、特許文献1に記載されている方法を使用できる。球種判定ユニット66は、球速Pv、回転数Prおよび回転軸の角度により投球したボール10の球種を特定する。
投球を評価するステップ108においては、直前の投球の評価のみならず、携帯端末20に蓄積された投球の評価を行ったり、クラウドサーバ35から過去の投球のデータをダウンロードして、上記と同様の処理により投球の評価を行うことが可能である。さらに、ステップ109において、シミュレータ67が、ボール移動データ55に基づき、ボール10の外から見た動きをシミュレーションし、表示する。さらに、ステップ110において、投球モーションを解析するユニット68がセンサーデータ51の内の、ボール10がリリースされる前の部分の情報を利用して、投球モーションを評価することができる。
さらに、アプリケーション60(携帯端末20)は、コンテンツを供給するユニット70を含む。このユニット70は、クラウドサーバ35に集められたユーザー毎の移動データ55を分析した結果や、全ユーザーを対象としたランキング集計結果や、プロ野球選手の投球との比較結果などを、携帯端末20を介してユーザー2に提供する。
高速回転が予定されるボール、例えば、プロ野球対応の硬球の場合、最高回転数が3500rpm程度と予想され、加速度センサー81は、現状の加速度センサーの測定レンジを考慮すると重心10gからの誤差は1mm程度あるいはそれ以下に設定する必要がある。また、加速度センサーのサイズが2mm程度であると、複数の加速度センサーを重心10gの予定領域またはその周囲に配置することは難しい。重心10gに加速度センサー81を配置して微小な変位がありボール10が回転したときに遠心力が検出されたとしても、加速度センサー81の測定範囲に収まれば、数値処理で遠心力はキャンセルできる。
さらに、実際のプロ野球の硬球の球芯と同じ物理的特性を実現することも重要である。このため、加速度センサー81を重心10gに置き、重心10gとコア11の中心13cが一致し、重心10g周りのカプセル13を含めたカプセル13内のハードウェアの慣性モーメントを各軸で等しくし、かつカプセル13を含めたコア11の質量を規定値(現状では20g)にすることが重要である。さらに、コア11の硬さ、弾性、振動の減衰率などもプロ野球仕様の硬球と同じ、または規定範囲にすることが望ましい。
このため、加速度センサー81を搭載する基板88を、重心10gを通る平面に配置すること、基板88の部品面(加速度センサー等の配置面)を電池18aまたは18bに向けてできるだけ重心10gの近くに配置すること、あるいは、基板88に穴を開けて加速度センサー81を穴の中に設置し、できるだけ重心10gの近くに配置すること、加速度センサー81のみフレキシブル基板に配置して、できるだけ重心10gの近くに配置することなどを考慮することが好ましい。センサデバイスとしては、加速度センサー81以外のセンサーとしてジャイロセンサー85、地磁気センサー86も搭載していることがあるので、これらのセンサデバイスの中心ではなく、センサデバイスの中にある加速度センサー81が重心10gに配置される設計する必要がある。
また、バッテリーは1つであってもよく、この場合は加速度センサー81に干渉しない範囲で、できる限り重心10gの近く(重心周りの慣性モーメントが小さくなるよう)にバッテリーを配置することが好ましい。2つのバッテリー18aおよび18bを用いる場合は、重心10gに配置された加速度センサー81を挟むようにして、できる限り重心10gの近く(重心周りの慣性モーメントが小さくなるよう)に配置することが好ましい。
さらに、カプセルケース13の外側を覆う外殻ゴム11aの厚みを成型で、3次元で調整し、重心10g回りの慣性モーメントのバランスが取れるようにすることも好ましい。さらに、カプセルケース13の肉厚を強度に影響が出ない範囲で、3次元で調整し、慣性モーメントのバランスが取れるようにすることも可能である。カウンターウェイトを1つ、ないしは複数使用して重心周りの慣性モーメントが等しくなるように配置することも好ましい。
製造後に、コア11の位置を動かしたり、カウンターウェイトを配置したり、カウンターウェイトの位置を動かすなどの方法により重心の調整が可能なボールにおいては、ボールを回転させて重心予定位置10gに配置される加速度センサー81の出力を検証して重心の位置を調整してもよい。また、加速度センサーなどのハードウェアを収納したカプセル13の位置を調整できるボールにおいては、ボールを回転させて重心予定位置10gに配置される加速度センサー81の出力を検証してカプセル13の位置を微調整してもよい。
なお、以上ではセンサーを内蔵した野球ボールを例に説明しているが、野球ボールは硬式でも軟式でもよく、また、ソフトボールであってもよい。さらに、クリケット用のボール、ボーリング用のボール、ゴルフボール、サッカーボール、バレーボールなどの他のスポーツのボールの中心(重心)にセンサーを内蔵させることにより本発明を適用できる。ゴルフボールにおいては、例えば、ボールに加わる衝撃が低いパッティングの練習に使用することが可能である。