以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、患者の血液を体外循環させつつ浄化するためのもので、血液透析治療で使用される血液透析装置に適用されたものである。かかる血液透析装置は、図1に示すように、患者の血液を体外循環させるための血液回路1と、血液浄化器としてのダイアライザ2と、濃度検出手段としての排液濃度センサ5と、ダイアライザ2に透析液を供給しつつ除水可能な透析装置本体6と、透析装置本体6に配設された透析液導入ライン7及び透析液排出ライン8と、制御手段11と、記憶手段12と、クリアランス算出手段13と、経時変化算出手段15と、補正手段16と、クリアランス変化検出手段20と、透析液流量選定手段21とから主に構成されている。
血液回路1は、同図に示すように、可撓性チューブから成る動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bから主に構成されており、これら動脈側血液回路1aと静脈側血液回路1bの間にダイアライザ2が接続されている。動脈側血液回路1aには、その先端に動脈(脱血又は採血)側穿刺針aが接続されるとともに、途中にしごき型の血液ポンプ3、除泡のためのエアトラップチャンバ4aが配設されている。一方、静脈側血液回路1bには、その先端に静脈側(返血側)穿刺針bが接続されるとともに、途中に除泡のためのエアトラップチャンバ4bが接続されている。
そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ3を駆動させると、患者の血液は、エアトラップチャンバ4aで除泡されつつ動脈側血液回路1aを通ってダイアライザ2に至り、該ダイアライザ2によって血液浄化及び除水が施された後、エアトラップチャンバ4bで除泡されつつ静脈側血液回路1bを通って患者の体内に戻る。このように、患者の血液を血液回路1にて体外循環させる過程でダイアライザ2にて浄化するのである。なお、本明細書においては、血液を脱血(採血)する穿刺針の側を「動脈側」と称し、血液を返血する穿刺針の側を「静脈側」と称しており、「動脈側」及び「静脈側」は、穿刺の対象となる血管が動脈及び静脈の何れかによって定義されるものではない。
ダイアライザ2(血液浄化器)は、その筐体部に、血液導入ポート2a、血液導出ポート2b、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dが形成されており、このうち血液導入ポート2aには動脈側血液回路1aの基端が、血液導出ポート2bには静脈側血液回路1bの基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dは、透析装置本体6から延設された透析液導入ライン7及び透析液排出ライン8の先端とそれぞれ接続されている。
ダイアライザ2内には、複数の中空糸が収容されており、該中空糸内部が血液の流路とされるとともに、中空糸外周面と筐体部の内周面との間が透析液の流路とされている。中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微少な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の老廃物や余剰水分等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
一方、透析装置本体6は、複式ポンプPと、透析液排出ライン8における複式ポンプPの排液側のポンプ室を迂回して接続されたバイパスライン9と、該バイパスライン9に接続された除水ポンプ10とを有して構成されている。複式ポンプPは、透析液導入ライン7及び透析液排出ライン8に跨って配設され、当該透析液導入ライン7からダイアライザ2に対して透析液を導入させるとともに、当該ダイアライザ2に導入された透析液を血液中の老廃物と共に透析液排出ライン8から排出させるためのものである。なお、かかる複式ポンプP以外の手段(例えば所謂バランシングチャンバ等を利用するもの)を用いてもよい。
透析液導入ライン7の一端は、ダイアライザ2(透析液導入ポート2c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置(不図示)に接続されているとともに、透析液排出ライン8の一端は、ダイアライザ2(透析液導出ポート2d)に接続されるとともに、他端が排液手段(不図示)と接続されている。しかして、透析液導入ライン7は、透析液供給装置から供給された透析液をダイアライザ2に導入するとともに、透析液排出ライン8は、ダイアライザ2による血液の浄化に伴って生じた透析液排液を当該ダイアライザ2から排液手段に向かって排出するよう構成されている。
除水ポンプ10は、ダイアライザ2中を流れる患者の血液から水分(余剰水分)を除去するためのものである。すなわち、かかる除水ポンプ10を駆動させると、透析液導入ライン7から導入される透析液量よりも透析液排出ライン8から排出される液体の容量が多くなり、その多い容量分だけ血液中から水分が除去されるのである。
排液濃度センサ5(濃度検出手段)は、透析装置本体6内における透析液排出ライン8に配設され、ダイアライザ2の血液浄化に伴って流れる液体中(本実施形態においては、血液浄化器としてのダイアライザ2から排出された透析液排液中)の所定物質の濃度(例えば、透析液排液に含まれる尿素、尿酸等の物質濃度)を検出し得るものであり、図2に示すように、発光手段17と、受光手段18と、検出手段19とから主に構成されている。なお、発光手段17と受光手段18とは、透析液排出ライン8を挟んで対向した位置にそれぞれ配設されている。
発光手段17は、液体(本実施形態においてはダイアライザ2から排出された透析液排液)に対して光(紫外線(UV))を照射し得るLED等から成る光源であり、その液体を透過した透過光を受光手段18にて受け得るようになっている。本実施形態に係る受光手段18は、受光した光の強度に応じた電圧を生じさせ得る受光素子から成るものとされており、その受光強度に応じた電圧に基づき、検出手段19にて透析液排液の濃度を検出し得るよう構成されている。検出手段19は、受光手段18による受光強度から吸光度を検出し得るもので、かかる吸光度に基づいて透析液排液中の所定物質の濃度(尿素等の濃度)を検出し得るようになっている。
すなわち、透析液排出ライン8に透析液排液が流れた状態において発光手段17から光を照射させれば、その照射された光が透析液排出ライン8にて流れる透析液排液を透過することとなるので、透析液排液の濃度に応じて光の吸収が図られた後、受光手段18にて受光することとなる。そして、受光手段18による受光強度(即ち、受光強度に応じて生じた電圧)の信号が検出手段19に送信されるとともに、当該検出手段19で測定された受光強度に基づいて吸光度が算出され、透析液排出ライン8を流れる透析液排液の濃度が検出されることとなる。
なお、本実施形態に係る排液濃度センサ5は、波長が300nm程度(280〜320nm)の紫外線(UV)を発光手段17から発光させる光学センサを用いているが、赤外線等の他の光を発光させる光学センサを用いてもよく、或いは酵素センサ等の光学センサとは別個の形態のセンサを用いるようにしてもよい。また、本実施形態に係る排液濃度センサ5は、透析液排出ライン8における複式ポンプPより上流側(ダイアライザ2と接続する側)に配設されているが、当該複式ポンプPより下流側に配設してもよい。
制御手段11は、透析装置本体6に配設されたマイコン等から成るもので、透析液排出ライン8を流れる透析液排液中の所定物質の濃度(尿素等の老廃物の濃度)と血液回路1(ダイアライザ2の入口)を流れる血液中の所定物質の濃度(尿素等の老廃物の濃度)とが略同一又は近似となる平衡状態を形成し得るものである。具体的には、図4に示すように、透析液流量(Qd)を徐々に低下させつつA〜D点にて排液濃度センサ5により濃度(Cd)又は吸光度(Abs)を検出することにより、透析液流量(Qd)と濃度(Cd)又は吸光度(Abs)との関係を示すグラフを得ることができる。なお、透析液排出ライン8を流れる透析液排液中の所定物質の濃度と血液回路1を流れる血液中の所定物質の濃度とが近似するとは、両者の濃度の比が、0.7〜1.3の範囲内にあることを意味する。当該両者の濃度の比は、0.8〜1.2の範囲内にあることが好ましく、0.9〜1.1の範囲内にあることが更に好ましい。
この場合、D点から更に透析液流量(Qd)を低下させても濃度(Cd)又は吸光度(Abs)が一定値(かかる一定値を平衡値(平衡濃度Cdeq又は平衡吸光度Abseq)と称する)となっているため、透析液排出ライン8を流れる透析液排液中の所定物質の濃度(尿素等の老廃物の濃度)と血液回路1を流れる血液中の所定物質の濃度(尿素等の老廃物の濃度)とが略同一又は近似となる「平衡状態」が形成されていることが分かる。
記憶手段12は、制御手段11及び排液濃度センサ5と電気的に接続され、平衡状態のときの排液濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値(平衡状態のときの所定物質の濃度(Cdeq)又は吸光度(Abseq))を「平衡値」として記憶可能なものである。すなわち、制御手段11にて平衡状態が形成されるとともに、かかる平衡状態のときに排液濃度センサ5にて検出された検出値は、平衡値(平衡濃度(Cdeq)又は平衡吸光度(Abseq))として記憶手段12に記憶されるのである。
クリアランス算出手段13は、排液濃度センサ5の検出値と、記憶手段12で記憶された平衡値(平衡濃度(Cdeq)又は平衡吸光度(Abseq))とに基づき、ダイアライザ2における溶質除去の程度を表す性能指数として示される「クリアランス(CL)」を算出可能なものである。本実施形態に係るクリアランス算出手段13は、以下のようにクリアランス(CL)を求めるようになっている。
クリアランス(CL)は、血流量(Qb)、透析液流量(Qd)及び総括物質移動係数(K0A)のみの関数であり、透析液流量(Qd)が血流量(Qb)及び総括物質移動係数(K0A)に対して十分小さいとき、透析液流量(Qd)が律速となり、血流量(Qb)及び総括物質移動係数(K0A)に関係なくCL=Qdとなることが知られている(例えば、山下明泰著、「血液浄化の基礎・臨床透析」、1999年、Vol.15、No.8、P.101〜105 参照)。
一方、ダイアライザ2の浄化膜に対する吸着量を0と過程すると、血液濃度を基準とした血液濃度基準クリアランス(CLb)と透析液排液濃度を基準とした排液濃度基準クリアランス(CLd)は同一(同意)であり、クリアランスCL(CLb、CLd)は、透析液排液中の所定物質(尿素)の濃度(Cd)及び血液回路1におけるダイアライザ2の入口の所定物質(尿素)の濃度(Cbi)の比率と、透析液流量(Qd)との積(CL=(Cd/Cbi)×Qd … 式(a))により求めることができる(例えば、峰島三千男著、「ダイアライザの性能とその評価」、「Clinical Engineering」、2011年、Vol.22、No.5、P.407〜411 参照)。
そして、透析液流量(Qd)が律速のとき、上述のようにクリアランス(CL)=透析液流量(Qd)となっていることから、式(a)から以下の式(b)が求められ、その式(b)から式(c)を求めることができる。なお、「Cdeq」は、透析液流量(Qd)を十分に低下させて律速となったときの透析液排液中の所定物質(尿素)の濃度を示している。
CL/Qd=Cdeq/Cbi=1 … 式(b)
Cbi=Cdeq … 式(c)
すなわち、透析液流量(Qd)を十分に低下させて律速となったとき、透析液排液中の所定物質(尿素)の濃度(Cdeq)は、血液回路1におけるダイアライザ2の入口の所定物質(尿素)の濃度(Cbi)と略同一又は近似(Cdeq=Cbi)となり、本発明の「平衡状態」になっているのである。よって、式(c)を式(a)に代入することにより、以下の式(d)を得ることができる。
CL=(Cd/Cdeq)×Qd 式(d)
しかして、本実施形態に係るクリアランス算出手段13は、CL=(Cd/Cdeq)×Qd(但し、CL:クリアランス、Cd:濃度検出手段で検出された所定物質の濃度、Cdeq:記憶手段で記憶された平衡値、Qd:透析液流量とする。)なる演算式(上記式(d))にてクリアランスを算出している。このように算出したクリアランス(CL)は、例えば血流量や透析液流量等の治療条件を変更しても、求められたクリアランス(CL)に影響がほとんど及ぼされず、治療条件の変更毎にクリアランスを求める必要がない。
さらに、所定物質の濃度(Cd)の比率(Cd/Cdeq)は、排液濃度センサ5(濃度検出手段)における吸光度(Abs)の比率(Abs/Abseq)と相関することが分かっている(例えば、F. Uhlin, I. Fridolin, L. G. Lindberg et al.,「Estimation of Delivered Dialysis Dose by On-Line Monitoring of the Ultraviolet Absorbance in the Spent Dialysate」,American journal of Kidney Diseases,2003年,Volume41,Issue5,P.1026〜1036 参照)。
したがって、クリアランス(CL)は、上記式(d)における所定物質の濃度(Cd)の比率(Cd/Cdeq)に代え、吸光度(Abs)の比率(Abs/Abseq)とすることができ、以下の式(e)にて求めることができる。
CL=(Abs/Abseq)×Qd … 式(e)
この場合、記憶手段12は、平衡状態のときの検出手段19(濃度検出手段)で検出される吸光度を平衡値(平衡吸光度Abseq)として記憶可能とされ、クリアランス算出手段13は、検出手段19で検出された吸光度(Abs)と、記憶手段12で記憶された平衡値(Abseq)とに基づき、クリアランスを算出可能とされている。
しかして、この場合のクリアランス算出手段13は、CL=(Abs/Abseq)×Qd(但し、CL:クリアランス、Abs:検出手段で検出された吸光度、Abseq:記憶手段で記憶された平衡値、Qd:透析液流量とする。)なる演算式(上記式(e))にてクリアランスを算出している。このように算出したクリアランス(CL)は、例えば血流量や透析液流量等の治療条件を変更しても、求められたクリアランス(CL)に影響がほとんど及ぼされず、治療条件の変更毎にクリアランスを求める必要がない。
表示手段14は、クリアランス算出手段13で求められたクリアランス(CL)を表示可能なもので、例えば透析装置本体6に設けられた表示画面や透析装置本体6と接続されたモニタ等から成る。この表示手段14によりクリアランス算出手段13で求められたクリアランス(CL)を表示することにより、医師等医療従事者がクリアランスを正確に把握することができ、血液浄化治療(透析治療)を円滑に行わせることができる。
なお、血液浄化治療が進行して血液回路1における血液中の所定物質の濃度(Cb)が変化(経過時間に伴って低下)すると、図6の実線に示すように、排液濃度センサ5の検出手段19の検出値とされる吸光度(Abs)は、Abt0(時間t=t0)、Abt1(時間t=t1)、Abt2(時間t=t2)、Abt3(時間t=t3)の如く変化(低下)するとともに、同図の破線に示すように、平衡値(平衡吸光度Abs)も、Abst0、Abst1、Abst2、Abst3の如く変化(低下)する。これは、排液濃度センサ5で検出される所定物質の濃度(Cd)についても同様である。
よって、血液浄化治療の過程において所定時間毎(例えば、時間t1、t2、t3、t4毎)に、制御手段11による平衡状態の形成、記憶手段12による平衡値(平衡濃度Cdeq又は平衡吸光度Abseq)の記憶を行い、クリアランス算出手段13で算出されるクリアランス(CL)を逐次求めて変更することにより、求められたクリアランスの精度を向上させることができる。
経時変化算出手段15は、クリアランス算出手段13で算出されたクリアランス(CL)に基づいて、血液回路1を流れる血液中に含まれる所定物質の濃度(Cb)の経時変化(Cb(t)/Cb(0))を算出し得るものである。すなわち、1コンパートメントモデルが適用できる溶質と仮定すると、Cbの経時変化は、以下の式(f)に示すように、CLと総体液量(V)から求める得ることが分かっている(例えば、峰島三千男著、「血液浄化器性能評価の基礎」、株式会社日本メディカルセンター(東京)、2002年、P.14〜17参照)。なお、「t」は、血液浄化治療における任意の透析時間を示している。
Cb(t)/Cb(0)=exp(−(CL×t)/V) … 式(f)
したがって、血液回路1を流れる血液中に含まれる所定物質の濃度(Cb(0))が時間t経過した後の濃度(Cb(t))は、クリアランス算出手段13で求められたクリアランス(CL)と、患者の総体液量(V)と、時間(t)とをパラメータとして用いた上記式(f)にて求めることができ、現時点或いはそれ以降の時点の血液回路1における血液中に含まれる所定物質の濃度を予測することができる。
補正手段16は、経時変化算出手段15で算出された所定物質の濃度の経時変化(Vb(t)/Cb(0))に基づいて、クリアランス算出手段13で算出されるクリアランス(CL)を補正し得るものであり、具体的には、以下の式(g)にて補正されたクリアランスCL(t)を求めることができる。
CL(t)=(Abs(t)/(Abseq(0)×(Cb(t)/Cb(0)))×Qd(t) … 式(g)
このように、経時変化算出手段15で算出された所定物質の濃度の経時変化(Cb(t)/Cb(0))に基づいて、クリアランス算出手段13で算出されるクリアランス(CL)を補正し得るので、血液浄化治療が進行して血液回路1における血液中の所定物質の濃度(Cb)が変化しても、その変化後の濃度を予測してクリアランス(CL)を逐次補正することができる。したがって、血液浄化治療が進行して、血液回路1を流れる血液中に含まれる所定物質の濃度(Cb)が時々刻々と変化しても、平衡状態の形成及び平衡値の記憶を繰り返し行うことなく、クリアランス(CL)を精度よく求めることができる。
またさらに、本実施形態においては、クリアランス算出手段13で算出されたクリアランス(CL)に基づいて、ダイアライザ2による標準化透析量を示すKt/Vなる指標の総体液量を示すVにて標準化しない透析量Ktを求めることが可能とされている。すなわち、V(総体液量)にて標準化しない「Kt(te)」は、以下の式(h)に示すように、経時的に求められたCL(t)を積分して求めることができるのである。なお、「te」は、血液浄化治療終了時間を示している。
このように、クリアランス算出手段13で算出されたクリアランス(CL)に基づいて、ダイアライザ2による標準化透析量を示すKt/Vなる指標の総体液量を示すVにて標準化しないKt(すなわち、上記式(h)のKt(te))を求めることが可能とされたので、医師等医療従事者の意向に応じてVにて標準化しないKt(Kt(te))なる指標を例えば表示手段14に表示させることによって把握させることができる。
加えて、本実施形態においては、クリアランス算出手段13で算出されたクリアランス(CL)に基づいて、ダイアライザ2の再利用回数を定量評価可能とされている。すなわち、同一の患者に同一のダイアライザ2を繰り返し使用して治療する場合、例えば、治療開始時又は治療終了時にクリアランス算出手段13にてクリアランス(CL)を算出して表示手段14にて表示又は記憶手段12にて記憶することにより、そのダイアライザ2の再利用可能な回数(リユース可能な回数)を客観的且つ適切に評価することができるのである。
ここで、本実施形態に係る制御手段11は、透析液流量(Qd)を低下又は増加させて平衡状態を形成し得るとともに、当該透析液流量(Qd)を低下又は増加させる過程において、クリアランス算出手段13にて算出されたクリアランスと透析液流量(Qd)との関係を記憶させ得るようになっている。クリアランス算出手段13にて算出されたクリアランスと透析液流量(Qd)との関係は、図4の下のグラフに示されている。
クリアランス変化検出手段20は、クリアランス算出手段にて算出されたクリアランスと透析液流量との関係(図4参照)に基づき、透析液流量(Qd)が所定値変化した場合のクリアランスの変化量又は変化率を求めることが可能なものである。具体的には、クリアランス変化検出手段20は、図4に示すように、クリアランス算出手段にて算出されたクリアランスと透析液流量との関係において、透析液流量(Qd)を所定値(例えば、100(mL/min)毎に区切り、各区間Tのクリアランスの変化量又は変化率(ΔCL/Qd)をそれぞれ求めるようになっている。なお、透析液流量(Qd)とクリアランス(CL)の関係を所定の関係式で定義することができる場合、各区間Tにおける接線の傾きを導出することにより、クリアランスの変化量又は変化率(ΔCL/Qd)をそれぞれ求めるようにしてもよい。
透析液流量選定手段21は、クリアランス変化検出手段20にて求められたクリアランスの変化量又は変化率が予め定められた所定値以上となる透析液流量(Qd)を選定可能なものである。具体的には、クリアランス変化検出手段20により求められた各区間Tのクリアランスの変化量又は変化率(ΔCL/Qd)のうち、予め定められた所定値以上の透析液流量(Qd)であって最低の透析液流量(Qd)を求め、その透析液流量(Qd)を設定値として選定し得るよう構成されている。
しかして、透析液流量選定手段21にて選定された透析液流量(Qd)は、表示手段14にて表示されるとともに、透析液流量選定手段21にて選定された透析液流量(Qd)となるよう複式ポンプPの駆動を制御することにより、クリアランスの変化量又は変化率を所定値以上とする透析液流量(Qd)による血液浄化治療が行われることとなる。なお、透析液流量選定手段21にて選定された透析液流量(Qd)を表示手段14にて表示するとともに、操作者が手動にて透析液流量(Qd)を設定するようにしてもよい。
次に、本実施形態に係る血液浄化装置によってクリアランスを求める工程について、図3のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で血液ポンプ3及び複式ポンプPを駆動させて、ダイアライザ2を介して血液回路1にて血液を流動させるとともに、透析液導入ライン7及び透析液排出ライン8にて透析液を流動させる。その状態において、S1にて透析液流量(Qd)を所定値だけ低下させた後、S2にて排液濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値(所定物質の濃度Cd又は吸光度(Abs))が安定するまで待ち、安定したと判断されると、S3に進んで、透析液流量(Qd)と検出値(所定物質の濃度Cd又は吸光度(Abs))の関係を記憶手段12にて記憶する。
そして、S4にて排液濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値が所定の閾値以上変化したか否かを判断し、所定の閾値以上の変化がある場合はS1に戻って透析液流量(Qd)を所定値だけ低下させ、S2〜S4の工程を順次行う。一方、S4にて排液濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値が所定の閾値以上変化しない(検出値が一定)と判断されると、S5に進み、その検出値を平衡値(平衡濃度(Cdeq)又は平衡吸光度(Abseq)として記憶手段12にて記憶させる。
すなわち、図4に示すように、透析液流量(Qd)をA点〜D点まで順次低下させ、D点から透析液流量(Qd)を更に低下させると、排液濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値(所定物質の濃度(Cd)又は吸光度(Abs))が一定となる「平衡状態」に達するので、その平衡状態(D点)における検出値を平衡値(平衡濃度(Cdeq)又は平衡吸光度(Abseq)として記憶するのである。
その後、S6に進み、クリアランス算出手段13によって、CL=(Cd/Cdeq)×Qd(但し、CL:クリアランス、Cd:濃度検出手段で検出された所定物質の濃度、Cdeq:記憶手段で記憶された平衡値、Qd:透析液流量とする。)なる演算式、又はCL=(Abs/Abseq)×Qd(但し、CL:クリアランス、Abs:検出手段で検出された吸光度、Abseq:記憶手段で記憶された平衡値、Qd:透析液流量とする。)なる演算式にてクリアランス(CL)が求められる。
S6にてクリアランス(CL)が求められると、図4に示すように、平衡値(Cdeq又はAbseq)、及び透析液流量(Qd)と排液濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値(Cd又はAbs)の関係(同図中、上図参照)に加え、透析液流量(Qd)とクリアランス(CL)との関係(同図中、下図参照)を記憶手段12にて記憶させるようになっている。この記憶された透析液流量(Qd)とクリアランス(CL)との関係は、クリアランス変化検出手段20による「クリアランスの変化量又は変化率」を求める際に用いられることとなる。
また、本実施形態においては、透析液流量(Qd)を低下させて平衡状態を形成しているが、血流量(Qb)を増加させて平衡状態を形成するようにしてもよい。この場合、S1にて血流量(Qb)を所定値だけ増加させた後、S2にて排液濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値(所定物質の濃度Cd又は吸光度(Abs))が安定するまで待ち、安定したと判断されると、S3に進んで、血流量(Qb)と検出値(所定物質の濃度Cd又は吸光度(Abs))の関係を記憶手段12にて記憶することとなる。
すなわち、図5に示すように、血流量(Qb)をA点〜D点まで順次増加させ、D点から血流量(Qb)を更に増加させると、排液濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値(所定物質の濃度(Cd)又は吸光度(Abs))が一定となる「平衡状態」に達するので、その平衡状態(D点)における検出値を平衡値(平衡濃度(Cdeq)又は平衡吸光度(Abseq)として記憶するのである。
この場合も、図5に示すように、平衡値(Cdeq又はAbseq)、及び透析液流量(Qd)と排液濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値(Cd又はAbs)の関係(同図中、上図参照)に加え、透析液流量(Qd)とクリアランス(CL)との関係(同図中、下図参照)を記憶手段12にて記憶させるようになっている。この記憶された透析液流量(Qd)とクリアランス(CL)との関係は、クリアランス変化検出手段20による「クリアランスの変化量又は変化率」を求める際に用いられることとなる。
本実施形態に係る制御手段11は、上記の如く透析液流量(Qd)の低下又は血流量(Qb)の増加によって「平衡状態」を形成しているが、透析液流量(Qd)を停止させて平衡状態を形成するようにしてもよく、或いはダイアライザ1(血液浄化器)を介して透析液を循環させることにより平衡状態を形成するようにしてもよい。このように、制御手段11は、透析液流量(Qd)を低下若しくは停止、血流量(Qb)を増加、又はダイアライザ1を介して透析液を循環させることにより平衡状態を形成し得るので、平衡状態を簡易且つ容易に形成することができる。
次に、本実施形態に係るクリアランス変化検出手段による変化量又は変化率の算出及び透析液流量選定手段21による透析液流量の選定について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、S1にて、クリアランス変化検出手段20によって、クリアランスと透析液流量との関係(図4、5参照)に基づき、各区間Tにおいて透析液流量(Qd)が所定値変化した場合のクリアランスの変化量又は変化率を求める。かかるクリアランスと透析液流量との関係は、制御手段11によって平衡状態を形成する際、クリアランス算出手段で算出されて記憶手段12にて記憶されている。
そして、S2にて、透析液流量選定手段21によって、クリアランスと透析液流量との関係における各区間Tのクリアランスの変化量又は変化率をそれぞれ比較し、S3にて、各区間Tのクリアランスの変化量又は変化率(ΔCL/Qd)のうち、予め定められた所定値以上の透析液流量(Qd)であって最低の透析液流量(Qd)を求め、その透析液流量(Qd)を設定値として選定する。
以上で透析液流量(Qd)の選定が終了する。しかして、透析液流量選定手段21にて選定された透析液流量(Qd)となるよう複式ポンプPの駆動を制御することにより、クリアランスの変化量又は変化率を所定値以上とする透析液流量(Qd)による血液浄化治療が行われる。なお、透析液流量選定手段21にて選定された透析液流量(Qd)を表示手段14にて表示するとともに、操作者が手動にて透析液流量(Qd)を設定するようにしてもよい。
上記実施形態によれば、排液濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値に基づいて、ダイアライザ2における溶質除去の程度を表す性能指数として示されるクリアランス(CL)を算出可能なクリアランス算出手段13と、クリアランス算出手段13にて算出されたクリアランスと透析液流量との関係に基づき、透析液流量(Qd)が所定値変化した場合のクリアランスの変化量又は変化率を求めることが可能なクリアランス変化検出手段20と、クリアランス変化検出手段20にて求められたクリアランスの変化量又は変化率が予め定められた所定値以上となる透析液流量を求めることが可能な透析液流量選定手段21とを具備したので、クリアランスに基づいて最適且つ効率的な透析液流量(Qd)を求めることができる。
すなわち、クリアランスの変化量又は変化率が小さい場合、透析液流量(Qd)を大きく設定しても治療効果があまり認められず、透析液の消費量が大きくなってしまうので、透析液流量選定手段によって、クリアランスの変化量又は変化率が小さい範囲と大きい範囲との境界(クリアランスの変化量又は変化率が予め定められた所定値以上)を求め、透析液の消費量を抑制しつつ治療効果を維持できる透析液流量(Qd)とすることが可能とされているのである。
また、透析液排出ライン8を流れる透析液排液中の所定物質の濃度と血液回路1を流れる血液中の所定物質の濃度とが略同一又は近似となる平衡状態を形成し得る制御手段11と、平衡状態のときの排液濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値を平衡値として記憶可能な記憶手段12とを具備するとともに、クリアランス算出手段13は、排液濃度センサ5の検出値と、記憶手段12で記憶された平衡値とに基づきクリアランスを算出可能とされたので、侵襲を回避して患者の負担を低減させることができるとともに、リアルタイムにクリアランスを求めることができる。
さらに、本実施形態に係る制御手段11は、透析液流量(Qd)を低下又は増加させて平衡状態を形成し得るとともに、当該透析液流量(Qd)を低下又は増加させる過程において、クリアランス算出手段13にて算出されたクリアランスと透析液流量(Qd)との関係を記憶させ得るので、平衡状態を形成する際に記憶したクリアランスと透析液流量との関係を用いて、クリアランス変化検出手段20によるクリアランスの変化量又は変化率を求めることができる。
また、クリアランス算出手段13で算出されたクリアランスに基づいて、血液回路1を流れる血液中に含まれる所定物質の濃度の経時変化を算出し得る経時変化算出手段15を具備したので、現時点或いはそれ以降の時点の血液回路における血液中に含まれる所定物質の濃度を予測することができる。
さらに、経時変化算出手段15で算出された所定物質の濃度の経時変化に基づいて、クリアランス算出手段13で算出されるクリアランスを補正し得る補正手段16を具備したので、血液浄化治療が進行して血液回路1における血液中の所定物質の濃度が変化しても、その変化後の濃度を予測してクリアランスを逐次補正することができる。
またさらに、クリアランス算出手段13で算出されたクリアランスに基づいて、ダイアライザ2による標準化透析量を示すKt/Vなる指標の総体液量を示すVにて標準化しない透析量Ktを求めることが可能とされたので、医師等医療従事者の意向に応じてVにて標準化しないKtなる指標を把握させることができる。すなわち、標準化透析量(Kt/V)は、血液透析治療開始時と現時点の透析液排液中における尿素窒素の濃度変化と、該血液透析治療(血液浄化治療)における除水量と、該血液透析治療の治療時間とを、所定の演算式に代入して算出することにより得られる指標であり、−ln(C(e)/C(s)−0.008t)+(4−3.5×C(e)/C(s))×(VUF/DW)なる演算式(但し、C(s)は、血液透析治療開始時における尿素窒素濃度(初期値)、C(e)は、透析終了時における尿素窒素濃度、VUFは、除水量、DWは、患者のドライウェイトを示している。)より求められることから、Vで標準化しないKtのみの指標を求めるのは困難となっていた。それに対し、本実施形態においては、クリアランスをパラメータとした上記式(h)に基づいて求められるので、Vで標準化しないKtのみの指標を容易に求めることができるのである。
加えて、本実施形態においては、クリアランス算出手段13で算出されたクリアランスに基づいて、ダイアライザ2の再利用可能な回数を定量評価可能とされたので、同一の患者に同一のダイアライザ2を繰り返し使用して治療する場合、そのダイアライザ2の再利用可能な回数(リユース可能な回数)を客観的且つ適切に評価することができる。
なお、本実施形態に係るクリアランス算出手段13は、CL=(Cd/Cdeq)×Qd(但し、CL:クリアランス、Cd:濃度検出手段で検出された所定物質の濃度、Cdeq:記憶手段で記憶された平衡値、Qd:透析液流量とする。)なる演算式にてクリアランスを算出可能とされたので、透析液排液中の所定物質の濃度を検出し得る排液濃度センサ5(濃度検出手段)を用いることによって、正確且つ容易にクリアランスを求めることができる。
さらに、本実施形態に係る排液濃度センサ5(濃度検出手段)は、透析液排液に対して光を照射し得る発光手段17と、透析液排液を透過した発光手段17からの透過光を受け得る受光手段18と、受光手段18による受光強度から吸光度を検出し得る検出手段19とを具備し、検出手段19により検出された吸光度に基づき透析液排液中の所定物質の濃度を検出し得るので、透析液排液をセンサ等に接触させることなく透析液排液中の所定物質の濃度を精度よく検出することができる。
またさらに、本実施形態に係る記憶手段12は、平衡状態のときの検出手段19で検出される吸光度を平衡値(Abseq)として記憶可能とされ、クリアランス算出手段13は、検出手段19で検出された吸光度(Abs)と、記憶手段12で記憶された平衡値(Abseq)とに基づき、クリアランスを算出可能とされたので、所定物質の濃度の比率と相関する吸光度の比率を利用して、リアルタイムにクリアランスを求めることができる。
特に、本実施形態に係るクリアランス算出手段13は、CL=(Abs/Abseq)×Qd(但し、CL:クリアランス、Abs:検出手段で検出された吸光度、Abseq:記憶手段で記憶された平衡値、Qd:透析液流量とする。)なる演算式にてクリアランスを算出可能とされたので、所定物質の濃度の比率と相関する吸光度の比率を利用して、正確且つ容易にクリアランスを求めることができる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、先の実施形態と同様、患者の血液を体外循環させつつ浄化するためのもので、血液透析治療で使用される血液透析装置に適用されたものである。かかる血液透析装置は、図8に示すように、患者の血液を体外循環させるための血液回路1と、血液浄化器としてのダイアライザ2と、濃度検出手段としての濃度センサ5と、ダイアライザ2に透析液を供給しつつ除水可能な透析装置本体6と、透析装置本体6に配設された透析液導入ライン7及び透析液排出ライン8と、制御手段11と、記憶手段12と、クリアランス算出手段13と、経時変化算出手段15と、補正手段16と、クリアランス変化検出手段20と、透析液流量選定手段21とから主に構成されている。なお、先の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
濃度センサ5(濃度検出手段)は、先の実施形態における排液濃度センサ5と機能上同様のものであり、血液回路1の静脈側血液回路1b(ダイアライザ2の出口側)に配設され、ダイアライザ2で浄化された後の血液中の所定物質の濃度(例えば、透析液排液に含まれる尿素、尿酸等の物質濃度)を検出し得るものであり、図2に示すように、血液に対して光を照射し得る発光手段17と、血液を透過した発光手段17からの透過光を受け得る受光手段18と、受光手段18による受光強度から吸光度を検出し得る検出手段19とから主に構成されている。なお、発光手段17と受光手段18とは、静脈側血液回路1bを挟んで対向した位置にそれぞれ配設されている。
次に、本実施形態に係る血液浄化装置によってクリアランスを求める工程について、図9のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、S1にて、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で血液ポンプ3を駆動させつつ複式ポンプPを停止させ、ECUM運転(Qd=0)を行わせる。このように、透析液流量を停止しつつダイアライザ2を介して血液回路1にて血液を流動させることにより、ダイアライザ2の入口側と出口側の所定物質の濃度(透析液排出ライン8と血液回路1との所定物質の濃度も同様)が略同一又は近似となる平衡状態を形成する。
その後、S2にて濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値(所定物質の濃度Cd又は吸光度(Abs))が安定するまで待ち、安定したと判断されると、S3に進んで、検出値(所定物質の濃度Cd又は吸光度(Abs))を平衡値として記憶手段12にて記憶する。なお、吸光度(Abs)をパラメータとする場合、以下の関係式が成り立つ。
CL=(Cbi−Cbo)/Cbi×Qb=(Absq0−Absqb)/Absq0×Qb(但し、CL:クリアランス、Cbi:血液回路1におけるダイアライザ2の入口側の濃度、Cbo:血液回路1におけるダイアライザ2の出口側の濃度、Qb:血流量、Absqb:記憶手段で記憶された平衡値、Absq0:検出手段で検出された吸光度とする。)
そして、S4にて、クリアランス算出手段13により、濃度センサ5の検出値(Abspb)と、記憶手段12で記憶された平衡値(Absq0)とに基づきクリアランス(CL)を上記演算式に代入して算出する。これにより、クリアランスを算出することができたので、その後、HD治療に移行し、任意の透析液流量(Qd)にて治療が行われることとなる。
ここで、本実施形態においては、先の実施形態と同様、上記のように算出されたクリアランスと透析液流量(Qd)との関係に基づき、透析液流量(Qd)が所定値変化した場合のクリアランスの変化量又は変化率を求めるとともに、クリアランス変化検出手段20にて求められたクリアランスの変化量又は変化率が予め定められた所定値以上となる透析液流量を透析液流量選定手段21にて求めることが可能とされている。
上記実施形態によれば、濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値に基づいて、ダイアライザ2における溶質除去の程度を表す性能指数として示されるクリアランス(CL)を算出可能なクリアランス算出手段13と、クリアランス算出手段13にて算出されたクリアランスと透析液流量との関係に基づき、透析液流量(Qd)が所定値変化した場合のクリアランスの変化量又は変化率を求めることが可能なクリアランス変化検出手段20と、クリアランス変化検出手段20にて求められたクリアランスの変化量又は変化率が予め定められた所定値以上となる透析液流量を求めることが可能な透析液流量選定手段21とを具備したので、クリアランスに基づいて最適且つ効率的な透析液流量(Qd)を求めることができる。
また、血液回路1におけるダイアライザ2の入口側及び出口側における血液中の所定物質の濃度とが略同一又は近似となる平衡状態を形成し得る制御手段11と、平衡状態のときの濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値を平衡値として記憶可能な記憶手段12とを具備するとともに、クリアランス算出手段13は、濃度センサ5の検出値と、記憶手段12で記憶された平衡値とに基づきクリアランスを算出可能とされたので、侵襲を回避して患者の負担を低減させることができるとともに、リアルタイムにクリアランスを求めることができる。
さらに、本実施形態に係る制御手段11は、透析液流量(Qd)を低下又は増加させて平衡状態を形成し得るとともに、当該透析液流量(Qd)を低下又は増加させる過程において、クリアランス算出手段13にて算出されたクリアランスと透析液流量(Qd)との関係を記憶させ得るので、平衡状態を形成する際に記憶したクリアランスと透析液流量との関係を用いて、クリアランス変化検出手段20によるクリアランスの変化量又は変化率を求めることができる。
加えて、本実施形態に係る制御手段11は、透析液流量又は血流量を低下又は増加させて平衡状態を形成し得るとともに、当該透析液流量又は血流量を低下又は増加させる過程において、クリアランス算出手段13にて算出されたクリアランスと透析液流量又は血流量との関係を記憶可能とされたので、平衡状態を形成する過程で記憶されたクリアランスと透析液流量又は血流量との関係を、種々の算出に利用することができる。また、クリアランス算出手段にて算出されたクリアランスと透析液流量又は血流量との関係は、記憶手段12に記憶されるので、平衡値を記憶させる機能と、クリアランスと透析液流量又は血流量との関係を記憶させる機能とを記憶手段12にて兼用させることができる。
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばクリアランス算出手段13によるクリアランスの算出方法は、他の種々の方法としてもよく、例えば所定物質の濃度の絶対値を検出してクリアランスを算出するようにしてもよい。さらに、クリアランスを算出するための排液濃度センサ5又は濃度センサ5(濃度検出手段)の検出値及び平衡値は、所定物質の濃度に相関するパラメータであれば他のパラメータを用いてもよく、例えば吸光度の他、排液濃度センサ5の出力電圧や出力電流等であってもよい。また、クリアランス算出手段13においてクリアランスを算出するための演算式は、上述のものに限らず、他の演算式から得られるものであってもよい。
さらに、本実施形態においては、算出されたクリアランスを表示手段14にて表示させているが、スピーカ等の他の手段によって医師等医療従事者に報知するようにしてもよく、或いは表示を含む報知を行わせず、例えば、クリアランス算出手段13にて求められたクリアランスをクリアランス変化検出手段20及び透析液流量選定手段21による算出等、治療時の設定のための内部処理に専ら用いるようにしてもよい。なお、本実施形態においては血液透析装置に適用されているが、体外循環させつつ血液浄化を行う他の治療(血液濾過療法や血液濾過透析療法など)で使用される血液浄化装置に適用するようにしてもよい。