本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
<概要>
まず、本発明を実施するための形態において、前提となる遅延測定の概要について図1乃至図5を参照して説明する。
図1は、遅延測定の概要を説明するブロック構成図である。
本発明を実施するための形態は、フレームを用いた同期転送方式でデータが転送され、このフレームのヘッダ領域に収容される遅延測定用の情報を用いて遅延を測定する方式である。
図1(a)は、伝送装置間を転送するフレームのヘッダ領域に設定されたループバック情報が通常時に送受信される様子を示す。このように、通常時はループバック情報として変化のない信号が、各装置で受信された状態を保って対向装置に返送されている。
一方、図1(b)は、遅延測定時のループバックの様子を示す。
遅延測定は対向する伝送装置間での転送信号の遅延値を測るもので、伝送装置(送信側)1が、伝送路に送信した信号が対向する伝送装置(受信側)2で折り返されて伝送路から受信するまでの時間を計測する。
そのため、送信側の伝送装置1は、自装置のループバックを停止させ、ループバック情報に遅延測定用の情報として変化点エッジを設定してフレームを送信する。受信側の伝送装置2ではループバックが維持されているので、変化点エッジが設定されたループバック情報をそのまま載せ替えたフレームを生成して送信側の伝送装置1に送信する。つまり、送信側の伝送装置1がループバック情報に設定した変化点エッジが受信側の伝送装置2でそのまま折り返して送信側の伝送装置1で受信されることになる。
したがって、送信側の伝送装置1は、ループバック情報に変化点エッジを設定したフレームを送信してから、ループバック情報に変化点エッジが設定されたフレームを受信するまでの時間差を以て遅延時間とする。
このように、遅延測定に使用する信号は、伝送装置間を転送するフレームのヘッダ領域のループバック情報を使用するのでユーザデータ転送に影響を与えることなく遅延測定が行える。また、遅延測定時の制御は自装置でループバックを停止するだけでよいので、対向する伝送装置に対するループバックのための制御は必要としない。
なお、変化点エッジとは、所定領域の通常時の設定値が「0」である場合には「1」となり、通常時の設定値が「1」である場合には「0」となるように、設定値の「0/1」が逆転する箇所を云う。
また、遅延測定の測定結果が評価され、測定結果が異常と判定された場合には、その測定結果を廃棄して遅延測定異常を出力する。
次のような場合に、測定結果が異常と判定される。
・測定可能な最大遅延時間内に測定用信号が戻ってこない。
・測定可能な最大遅延時間内に複数のトリガが発生している。
・測定結果が遅延期待値の許容遅延時間をはずれている。
・伝送路エラーが発生している。
図2乃至図5は、上述した遅延測定の概要を説明するタイムチャートであって、正常に遅延測定が行われる場合と各種の測定異常の例を示している。
図2は、遅延測定が正常に実施される場合の、図1における伝送装置(送信側)1の遅延測定例を示すタイムチャートである。
図2は、遅延測定の開始トリガが与えられ、所定の待ち時間を経過した後の時刻T0に変化点エッジがフレームに設定されて伝送路に送信され、変化点エッジが設定されたフレームを時刻T1に伝送路から受信した様子を示している。
つまり、図中の「1.測定開始トリガ」で、伝送装置内部で遅延測定のための動作が開始する。図中の「2.変化点エッジ送信」で、所定の待ち時間を経過した後に変化点エッジがフレームに設定されて時刻T0で伝送路に送信される。そして、図中の「3.変化点エッジ受信」で、対向する図1における伝送装置(受信側)2でループバックした変化点エッジが設定されたフレームを時刻T1で伝送路から受信する。
したがって、図2の時刻T0と時刻T1の間の時間差が遅延値として測定される。
一方、測定された遅延値に対しては、伝送装置内での処理のばらつきや伝送路における遅延のばらつきが考慮されて、一定の測定許容誤差が定義されている。そして、その測定許容誤差に基づいて遅延測定値の正常性が判定される。
図2では、遅延期待値と受信時刻T1を同じ時刻として示しており、変化点エッジの受信測定時刻は時刻t0と時刻t1の間でばらつく例を示している。そして、変化点エッジの受信測定時刻が時刻taと時刻tbの測定許容誤差の範囲内であれば、その測定結果は正常と判定することを示している。
図3は、以下の測定異常の例を示している。
・測定可能な最大遅延時間内に測定用信号が戻ってこない。
・測定可能な最大遅延時間内に複数のトリガが発生している。
・測定結果が許容遅延誤差の範囲をはずれている。
なお、図3において、図中の「2.変化点エッジ送信」、「3.変化点エッジ受信」は、図2における正常な測定例を参考として示している。これは、以降の図4および図5においても同じである。
図3の「4.変化点エッジが戻らない」は、測定可能な最大遅延時間をタイムアウトして、測定可能な最大遅延時間内に変化点エッジが戻ってこない状態を示し、測定異常と判定される。
図3の「5.変化点エッジ多発」は、測定可能な最大遅延時間内に複数の変化点エッジが発生し、エッジ検出が異常な状態を示す。特に、最初の変化点エッジ検出までの時間が遅延値として識別されるが、このように変化点エッジが多発する状況に基づいて測定異常と判定される。例えば、伝送路でエラーが発生し、転送フレームの測定用信号に対応する所定領域のビットが書き換えられてしまったような場合が想定される。
図3の「6.許容誤差範囲外」は、変化点エッジが期待する測定結果に対し測定許容誤差範囲を外れている状態を示す。図中の(1)および(2)のいずれも誤った遅延値と判定される。
図4の「7.障害警報発生」は、伝送路障害または対向装置障害の警報が通知されている状態を示す。このような障害警報が発生している間は遅延測定不可時間とみなし、正常な遅延値が測定されても、それを測定異常と判定する。
図5の「8.ルート切り替え」は、伝送装置(送信側)1と伝送装置(受信側)2の間に存在するネットワーク内で、障害の発生等に起因して伝送装置(送信側)1と伝送装置(受信側)2の間の経路が変わってしまった場合の測定結果を示す。この場合は、明らかに測定許容誤差範囲を外れているが、測定結果は正常な遅延値として判定される。詳細は後述する。
<第1の実施形態>
上述した遅延測定の概要を前提として、本発明の第1の実施形態を説明する。
図6は本発明の第1の実施形態の伝送装置の構成を示すブロック図である。
尚、実施の形態は例示であり、開示の装置及びシステムは、以下の実施の形態の構成には限定されない。
第1の実施形態の伝送装置10は、受信フレーム終端手段11、送信フレーム生成手段12、遅延測定手段13および測定制御手段14を含む構成になっている。
なお、対向装置の構成は図示しないが、図6と同じ構成を備えるものとする。つまり、伝送装置10が送信する送信フレームが対向装置において受信フレームとして受信され、対向装置が送信する送信フレームが伝送装置10において受信フレームとして受信される。
受信フレーム終端手段11は、対向装置から受信した受信フレームを終端する機能を有する。受信フレーム終端手段11は、受信フレームから取り出したループバック情報を出力し、該受信フレームを解体して受信データとして出力する。
送信フレーム生成手段12は、送信データを送信フレームとして構築して対向装置に送信する機能を有する。送信フレーム生成手段12は、送信フレームの所定位置に、受信フレーム終端手段11が出力したループバック情報を挿入するループバック処理を実行した送信フレームを生成する。
測定制御手段14は、対向装置との間の信号遅延を測定する遅延測定に関わる制御を実行する機能を有する。測定制御手段14は、遅延測定時に、送信フレーム生成手段12に対して、ループバック処理の実行停止と、送信フレームのループバック情報を挿入する所定位置に変化点エッジの挿入を指示する制御情報を出力する。
遅延測定手段13は遅延測定を実行する機能を有する。遅延測定手段13は、送信フレーム生成手段12が出力する変化点エッジ挿入開始情報の受信から、受信フレーム終端手段が出力するループバック情報に変化点エッジの挿入を検出するまでの時間を遅延測定の測定値として出力する。
また、測定制御手段14は、予め記憶する第1の判定基準値に基づいて遅延測定手段13が出力する測定値の正常性を判定する機能も有する。測定制御手段14は、第1の判定基準値が規定する範囲を外れる測定値の異常を識別した場合には、接続されるネットワークを管理するネットワーク管理手段に対して対向装置までの経路の変更有無を問合せる。そして、測定制御手段14は、該問合せ結果に基づいて取得した第2の判定基準値に基づいて測定値の正常性を再度判定する。
次に第1の実施形態の遅延測定方法の動作を説明する。
図7は、第1の実施形態の遅延測定方法の動作を示すフロー図である。
対向装置との間の信号遅延を測定する遅延測定時に、測定制御手段が送信フレーム生成手段に対して、ループバック処理の実行停止と、送信フレームのループバック情報を挿入する所定位置に変化点エッジを挿入することを指示する(S101)。ループバック処理とは、送信データに基づいて構築される送信フレームの所定位置に、対向装置から受信した受信フレームから取り出されたループバック情報を挿入する処理である。ステップS101の処理は、測定制御手段が測定開始トリガとなる変化点エッジの挿入を送信フレーム生成手段に指示するものである。
ループバック処理の実行停止にともない、ループバック情報は遅延測定手段に引き込まれる。そして、送信フレーム生成手段が出力する変化点エッジ挿入開始情報の受信(S102)から、ループバック情報に変化点エッジの挿入を検出するまでの時間を、遅延測定手段が遅延測定の測定値として出力する(S103)。
予め記憶する第1の判定基準値に基づいて測定値の正常性を測定制御手段が判定する(S104)。
第1の判定基準値が規定する範囲を外れる測定値の異常を識別した場合には、測定制御手段が、接続されるネットワークを管理するネットワーク管理手段に対して対向装置までの経路の変更有無を問合せる(S105)。
該問合せ結果に基づいて取得した第2の判定基準値に基づいて、測定制御手段が測定値の正常性を再度判定する(S106)。
以上のように、本実施形態では、遅延測定時に遅延測定を実施する装置側でループバック処理を停止するだけで、対向装置では何の処理を行うこともなく遅延測定のための経路が形成される。
また、ネットワーク内で対向装置との間の経路変更が行われたような場合には、第1の判定基準値が規定する範囲を外れる測定値の異常を識別することがある。
そのような場合でも本実施形態では、ネットワーク管理手段に対して対向装置までの経路の変更有無を問合せ、該問合せ結果に基づいて取得した第2の判定基準値に基づいて測定値の正常性を再度判定する。
このような構成を備えることにより、本実施形態は、遅延測定対象とするネットワーク内の経路が異なる経路に変更された場合に、遅延測定結果に基づいて新たな判定基準値を求め、該遅延測定結果を再度評価することができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態を説明する。
図8は第2の実施形態の伝送装置の構成を示すブロック図である。
第2の実施形態の伝送装置20は、フレームの送受信に関する構成として、受信フレーム終端部21、送信フレーム生成部22、ループバック実行部23、フレーム送信部24および遅延測定開始トリガ生成部25を含む。
受信フレーム終端部21は、第1の実施形態の受信フレーム終端手段11に対応する。受信フレーム終端部21は、対向装置から受信した受信フレームを終端して、受信フレームから取り出したループバック情報を出力し、該受信フレームを解体して受信データとして出力する。なお、受信フレーム終端部21は、伝送路障害を検出する機能も有しており、伝送路障害を検出した場合には障害警報を出力する。
そして、第1の実施形態の送信フレーム生成手段12に対応する構成として、送信フレーム生成部22、ループバック実行部23、フレーム送信部24および遅延測定開始トリガ生成部25を含む。
送信フレーム生成部22は、送信データを送信フレームとして構築する。
ループバック実行部23は、ループバックの制御情報を受けて、送信フレームの該制御情報で指示された位置に、受信フレーム終端部21が出力したループバック情報を挿入する。また、該制御情報がループバック停止を指示する内容の場合には、このループバックの処理を停止する。
遅延測定開始トリガ生成部25は、トリガ挿入の制御情報を受けて、所定タイミングの後に、送信フレームに変化点エッジを設定する測定開始トリガを出力する。
フレーム送信部24は、トリガ挿入の制御情報と遅延測定開始トリガ生成部25が出力する測定開始トリガを受けて、該制御情報で指示された送信フレームのループバック情報を挿入する位置に変化点エッジを設定して伝送路に出力する。
第1の実施形態の遅延測定手段13に対応する構成として、変化点エッジ検出部26と遅延測定カウンタ27を備える。
変化点エッジ検出部26は、受信フレーム終端部21が出力したループバック情報に変化点エッジが含まれているか否かを判定し、変化点エッジが含まれている場合に測定停止トリガを出力する。
つまり、受信フレームから取り出されたループバック情報は、ループバック実行部23および変化点エッジ検出部26に出力されている。遅延測定を行っていない場合、このループバック情報はループバック実行部23でループバックされる。また、遅延測定を行っていないので、変化点エッジ検出部26に入力されたループバック情報に対しては何も処理されない。遅延測定が開始されると変化点エッジ検出部26は、上記の処理を行う。
遅延測定カウンタ27は、遅延測定開始トリガ生成部25が出力する測定開始トリガを受けて遅延測定を開始し、変化点エッジ検出部26が出力する測定停止トリガを受けて遅延測定を停止する。そして、遅延測定開始から遅延測定停止までのカウンタ値が遅延測定結果(測定値)として出力される。
第1の実施形態の測定制御手段14に対応する構成として、測定制御部28と経路情報データベース(DB)29を備える。
測定制御部28は、受信フレーム終端部21が出力する同期情報に基づいてフレーム位置を識別し、ループバックの制御情報およびトリガ挿入の制御情報を出力して遅延測定に関わる制御を実行する。
経路情報データベース29は、当該伝送装置に関わる伝送経路と各伝送経路に接続されている伝送装置(中継装置)の情報および各伝送経路や各伝送装置の遅延値およびその遅延のばらつきを考慮した遅延誤差情報を記憶している。
測定制御部28は、経路情報データベース29に記憶されている遅延値や遅延誤差情報に基づいて判定基準値を計算し、該判定基準値に基づいて遅延測定カウンタ27が出力する測定値の正常性を判定する。
測定制御部28は、図示しないネットワーク管理装置に接続され、装置の制御や警報の有無の監視を行い、遅延測定結果を通知する。
測定制御部28は、判定基準値が規定する範囲を外れる測定値の異常を識別した場合には、ネットワーク管理装置に対して対向装置までの伝送経路の変更有無を問合せる。問合せの結果、経路切り替えが発生している場合には新たな経路に関する伝送装置、遅延値および遅延誤差情報をネットワーク管理装置から取得する。そして、取得した新たな経路に関する情報に基づいて新たな判定基準値を計算し、該新たな判定基準値に基づいて測定値の正常性を再度判定する。
経路情報データベース29が記憶する情報は、ネットワーク管理装置から取得した新たな経路に関する情報で更新される。
以降は、ITU-TのG.709/Y.1331勧告「Interfaces for the Optical Transport Network (OTN)」で規定されているOTUk(Optical channel transport unit-k)(k=1,2,3,4)フレームを使った例を用いて説明する。なお、ITU-Tは、「International Telecommunication Union-Telecom standardization」の略称である。
また、以降の説明において伝送装置に付す参照番号は、説明の便宜上で図面により異なった番号を使用するが、いずれの伝送装置も図8を参照して説明した第2の実施形態の伝送装置20である。
図9は、同期フレームのヘッダ部の構造を示す図である。
同図は、4×16バイトのOTUkヘッダ(k=1,2,3,4)を示しており、図示しないColumn#17以降にユーザデータを格納するペイロードが配置される。
なお、k=1,2,3,4は、規定されたビットレート(2.67Gb/s、10.71Gb/s、43.02Gb/s、111.81Gb/s)の違いを意味する。以降は単にOTUkヘッダと称する。
本実施形態では、OTUkヘッダのColumn#3、Row #2に配置されているPM&TCMを用いて遅延測定を行う。PM&TCMは図9に示すように1バイト構成で、第1乃至第 6ビットがそれぞれDMt1乃至DMt6として使用される。第7ビットはDMpとして使用され、第8ビットは未使用である。DMは「Delay Measurement」の略称である。PM&TCMのDMt1乃至DMt6およびDMpの7ビットの使い方について図10を参照して説明する。
図10は、PM&TCMによるループバックを説明する図である。
ここでは、伝送装置1乃至伝送装置5が伝送路で直列に接続された伝送経路を想定する。
この伝送経路を部分的に分割して管理することがある。図10は、伝送装置1と伝送装置5の間であるA1−A2の区間、伝送装置2と伝送装置3の間であるB1−B2の区間、そして、伝送装置3と伝送装置4の間であるC1−C2の3区間を管理する例を示している。
それぞれの区間をループバックさせる場合に、DMt1乃至DMt6およびDMpの7ビットのいずれかのビットが使用される。
伝送経路の最遠端の伝送装置間でループバックさせる場合にはDMpが使用される。DMt1乃至DMt6は、各ビットとループバックさせる区間との対応をネットワーク構築時に予め決めておき、その条件に基づいて各ビットを使用する。
図10では、伝送装置2と伝送装置3の間であるB1−B2の区間でのループバックにはDMt1を使用し、伝送装置3と伝送装置4の間であるC1−C2の区間でのループバックにはDMt2を使用する例を示している。
つまり、A1−A2の区間ではDMpビットにループバック情報を設定し、B1−B2の区間ではDMt1ビットにループバック情報を設定し、C1−C2の区間ではDMt2ビットにループバック情報を設定したフレームが転送される。伝送経路において最大で同時に7種類の区間でのループバックが可能である。
どのように、ネットワークを管理するかはネットワーク構築時に決められ、この管理形態に依存してループバックさせる区間を何処にするかを決める。そして、DMt1乃至DMt6およびDMpのいずれかのビットで規定される任意の2点以外はループバックをしない設定とする。
本実施形態では、DMt1乃至DMt6およびDMpの7ビットのいずれかのビットに変化点エッジを設定して遅延測定を行う。
伝送装置は、対向装置とは1つの伝送路を介して直接接続される場合もあるが、ネットワークを介して接続される場合が多い。ネットワークを介して接続される場合には、多数の伝送装置が中継装置として介在しており、伝送路障害または装置障害に起因して伝送経路が切り替えられることがある。
図11は、ネットワーク内の伝送経路の変化を示す図である。
図11(1)は、ネットワーク内に障害が発生していない場合の伝送経路を示す。この場合は、太線で経路を示すように、伝送装置5−1と伝送装置5−9との間には伝送装置5−2、伝送装置5−7および伝送装置5−8が介在する。
一方、図(2)は、ネットワーク内に伝送路障害が発生して、経路が迂回経路に切り替えられた場合の伝送経路を示す。この場合も太線で経路を示すように、伝送装置5−1と伝送装置5−9との間には伝送装置5−2、伝送装置5−3乃至伝送装置5−6および伝送装置5−8が介在する。
このように、伝送路障害が発生していない場合と伝送路障害が発生している場合とで、中継する伝送装置の数と経路が異なる為、伝送遅延値は異なる。中継する伝送装置の数が増えれば遅延も大きくなり、伝送路障害時の迂回経路では、伝送路障害が発生していない状態の判定基準値に基づいて比較してしまうと、該判定基準値が規定する範囲外として判定されてしまう。
しかし、ネットワークを管理するネットワーク管理装置では、ネットワーク内の伝送経路の変化を把握しており、伝送装置からの問合せに応じて伝送経路の変更有無や経路変更後の中継装置に関する情報を提供する。
図12は、経路情報データベース29の内容例を示す図である。
当該伝送装置が関わる伝送経路の情報(ルート情報)や、その伝送経路に関連する伝送装置、該伝送装置の遅延値および遅延誤差情報等が記憶されている。
図12では、上部に、当該伝送装置が関わる伝送経路に含まれる伝送装置に関して、各装置の遅延値および許容最大誤差がネットワーク管理装置から取得して登録した時刻とともに登録されている。
また、図12の下部には、当該伝送装置が関わる伝送経路に含まれる伝送装置に関する情報が、その経路における許容最大誤差がネットワーク管理装置から取得して登録更新した時刻とともに登録されている。経路における許容最大誤差は、各装置の遅延値とその許容最大誤差から算出され、遅延値とその許容最大誤差にマージンを加えて定義される。
図12では、伝送装置1と伝送装置5との間に関して2種類の伝送経路が登録されている。伝送装置1から伝送装置2乃至伝送装置4を経由して伝送装置5に至る第1の伝送経路と、伝送装置1と伝送装置5を直接接続する第2の伝送経路が登録されている。第1の伝送経路よりも第2の伝送経路の方が後に登録更新されているので、現時点では第2の伝送経路が有効経路として扱われる。
図1の遅延測定の概要を説明するブロック構成図および図8の第2の実施形態の伝送装置20のブロック構成図を参照して、伝送装置20がどのように動作するかを説明する。なお、伝送装置20と同じ構成を有する対向装置が図11を参照して説明したようなネットワークを介して接続されているものとする。
まず、遅延測定をしていない状態では、図1(a)に示すように当該伝送装置(送信側の伝送装置1)においても対向する伝送装置(受信側の伝送装置2)においてもループバックの状態となっている。
つまり、図8の伝送装置20の受信フレーム終端部21が取り出したループバック情報は、ループバック実行部23に入力される。一方、送信データが送信フレーム生成部22においてOTUフレームとして構築されてループバック実行部23に入力される。ここで、伝送装置20と対向装置とは、図10に示すPMでの管理と想定する。
なお、測定制御部28には、ネットワーク構成から判断してPM&TCMバイト領域内のどのビットをループバックさせるかという基礎情報となるPM&TCM測定条件が登録されている。この場合は、図10に示すPMでの管理なので、PM&TCMバイト領域内のDMpビットが使用される。
受信フレーム終端部21は、測定制御部28がPM&TCM測定条件により出力するループバック位置情報に基づいてPM&TCMバイト領域内のDMpビットを取り出してループバック情報として出力する。
ループバック実行部23はセレクタとして機能して、測定制御部28が出力する制御情報のループバック位置指定により、送信フレーム生成部22から入力するOTUフレームのPM&TCMバイト領域内のDMpビットのみをループバックさせる。つまり、ループバック実行部23は、受信フレーム終端部21が取り出したループバック情報のDMpビットを、OTUフレームのPM&TCMバイト領域内のDMpビット位置に挿入して出力する制御を行う。
フレーム送信部24はセレクタとして機能し、遅延測定をしていない状態では測定制御部28が出力する制御情報のトリガ挿入信号がOFFとなっており、ループバック実行部23からの入力を選択して伝送路に出力する。
このように、遅延測定をしていない状態では、送信フレーム生成部22で生成されたOTUフレームに、ループバック実行部23でループバック情報のDMpビットが対応する位置に挿入され、そのOTUフレームが出力される。
このようにして出力されたOTUフレームを受信した対向装置においても同様の処理が実行され、双方の伝送装置においてPM&TCM内のDMpビット位置でループバックがされた状態になる。
次に、遅延測定を開始するときの動作を説明する。なお、以降の説明においては図13の、第2の実施形態の遅延測定方法の動作を示すフロー図も適宜参照して説明する。
まず、遅延測定に先立ち、準備設定が行われる(図13のステップS201)。
前述した測定制御部28へのPM&TCM測定条件登録も準備設定の一つである。さらに、測定の正常性を判定するための伝送路遅延タイマ遅延測定可能最大値設定および測定値の正常性を判定するための第1の判定基準値の設定がある。
伝送路遅延タイマ遅延測定可能最大値は、変化点エッジが戻らない場合のタイムアウト判定に使う時間と、後述するトリガ挿入から実際に測定開始トリガを出力するまでの待ち合わせ時間として使用される。
第1の判定基準値は、ここでは測定対象の伝送経路の遅延期待値および許容遅延誤差を使用する。経路情報データベース29に登録されている各伝送装置の遅延値およびその許容誤差を、測定対象とする伝送経路に関わる伝送装置について加算して遅延期待値および許容遅延誤差を求める。
上記の情報は、測定制御部28に設定される。
まず、遅延測定を開始するときは、図1に示す送信側の伝送装置1においてループバックを停止させる必要がある。
そして、ループバック停止前の不要な信号が伝送路上から消えるのを一定時間待ってから変化点エッジの挿入を行う。この待ち時間は、上述した伝送路遅延タイマ遅延測定可能最大値である。伝送路遅延タイマ遅延測定可能最大値は、例えば、当該伝送経路における遅延測定可能な最大値に基づいて決められる。遅延測定可能な最大値は、当該伝送経路を構成する伝送路や各伝送装置の遅延値等に基づいて決まる。
ループバックの停止(図13のステップS202)は、測定制御部28がループバック実行部23に対してループバック停止の制御情報を送ることにより実施される。ループバック停止の制御情報を受信したループバック実行部23は、受信フレーム終端部21から取り出されたループバック情報のDMpビットの選択を中止する。そのため、送信フレーム生成部22が生成した状態のOTUフレームがフレーム送信部24に入力する。
ループバック停止の制御を行ってから上述した伝送路遅延タイマ遅延測定可能最大値による一定時間の待ち時間の後に、測定開始トリガを与える(図13のステップS203)。この制御は、測定制御部28がループバック停止の制御を行ってから一定時間の待ち時間の後にトリガ挿入信号を遅延測定開始トリガ生成部25に送り、該トリガ挿入信号に基づいて遅延測定開始トリガ生成部25が測定開始トリガを出力する。
遅延測定の動作を説明する。
フレーム送信部24は、ループバック実行部23が出力するOTUフレームと遅延測定開始トリガ生成部25が出力する測定開始トリガをそれぞれ入力する。そして、測定制御部28から入力するトリガ挿入信号により、該当するPM&TCMビット位置(DMpビット)に測定開始トリガを挿入したOTUフレームを伝送路に出力する。
測定開始トリガは、遅延測定開始時の論理に依存し、「0」であれは、「0から1へ」の変化点エッジ、「1」であれば「1から0」への変化点エッジでそれぞれ定義される。
この測定開始トリガは、遅延測定カウンタ27にも同時に入力されて遅延測定カウンタ27でのカウントを開始するための制御に使われる。また、測定開始トリガによりタイムアウトカウンタも伝送路遅延タイマ遅延測定可能最大値のカウントを開始する。
したがって、測定開始トリガによりカウントを開始したタイムアウトカウンタのタイムアウトの有無が監視される(図13のステップS204)。そして、タイムアウトカウンタがタイムアウトしても変化点エッジが検出できない場合は、測定タイムアウトとなり測定異常が出力される(図13のステップS204:有、ステップS213)。これは、図3を参照して説明した「4.変化点エッジが戻らない(タイムアウト)」に相当する。
測定開始トリガの変化点エッジを挿入したOTUフレームは伝送経路を転送して対向装置に達し、対向装置でPM&TCMバイトのみのループバックにより再度伝送経路を転送して測定を開始した伝送装置に戻ってくる。
伝送装置20に戻ってきた測定開始トリガの変化点エッジを挿入したOTUフレームは、受信フレーム終端部21で終端されてフレーム同期が取られ、測定制御部28で同期情報によりフレームの先頭が判定されてフレーム位置情報が生成される。測定制御部28では設定されているネットワーク構成情報(PM&TCM測定条件)に基づきループバック位置情報を受信フレーム終端部21に出力する。
受信フレーム終端部21は、このループバック位置情報に基づいてPM&TCMバイト領域内のDMpビットを取り出してループバック情報として出力する。このDMpビットには変化点エッジが設定されている。
受信フレーム終端部21から取り出されたループバック情報(DMpビット)は、変化点エッジ検出部26に入力される。
変化点エッジ検出部26は、ループバック情報に変化点エッジを検出すると(図13のステップS204:無、ステップS205)、遅延測定カウンタ27に測定停止トリガを出力する。
測定停止トリガを受信した遅延測定カウンタ27は、測定開始トリガで開始したカウントを停止する。遅延測定カウンタ27は、このカウント値を遅延測定値として測定制御部28に出力する(図13のステップS206)。
なお、測定停止トリガにより、前述したタイムアウトカウンタも伝送路遅延タイマ遅延測定可能最大値のカウントを停止する。
以上のようにして測定された遅延測定値の正常性の判定動作を説明する。この判定動作は、測定制御部28により実行される(図13のステップS207)。
測定制御部28は、遅延測定カウンタ27が遅延測定値として出力した測定値を、図13のステップS201の準備設定で設定した測定対象の伝送経路の第1の判定基準値である遅延期待値および許容遅延誤差と比較する。
このとき、測定制御部28は、伝送路や装置の障害の有無も確認する。例えば、対向装置や直接接続されている伝送路に障害があれば受信フレーム終端部21で検出されて障害警報が出力されている。また、ネットワーク管理装置から報告される障害警報を参照してもよい。
障害警報の発生もなく、測定値も遅延期待値を基準とした許容遅延誤差の範囲内であれば測定値は正常と判断して、その測定値を測定判定結果として出力する(図13のステップS207:正常、ステップS212)。
障害が発生している場合にはいかなる測定値も異常として、測定異常を測定判定結果として出力する(図13のステップS207:異常1、ステップS213)。これは、図4を参照して説明した「7.障害警報発生」に相当する。
また、図3を参照して説明した「5.変化点エッジ多発(エッジ検出異常)」の場合にも測定異常が測定判定結果として出力される(図13のステップS207:異常1、ステップS213)。
一方、測定値が遅延期待値を基準とした許容遅延誤差の範囲を外れていた場合には、図3を参照して説明した「6.許容誤差範囲外」に相当し、測定異常が測定判定結果として出力されるべきである。しかし、図5を参照して説明した「8.ルート切り替え」の場合もあり得る。そのため、測定値が遅延期待値を基準とした許容遅延誤差の範囲を外れていた場合には、測定制御部28は、判定に使用した第1の判定基準値の妥当性を確認する(図13のステップS207:異常2)。
なお、ここでは、経路情報データベース29の内容は運用開始時の経路情報が登録されており、測定制御部28の制御で登録内容が更新されるものとする。
測定制御部28は、経路情報データベース29に登録されている基準データの内容に基づいて測定対象の伝送経路に対する第1の判定基準値を算出しているので、その妥当性をネットワーク管理装置に問合せる(図13のステップS208)。ネットワーク管理装置は、測定制御部28の問合せに基づいて、測定対象とした伝送経路の切り替えの有無、切り替えがあった場合は、切り替え後の経路に関連する装置、伝送経路に関する基準データを回答する。
問合せの結果による経路変更有無が判定される(図13のステップS209)。
問合せの結果、測定対象とした伝送経路に切り替えが無かった場合には(図13のステップS209:無)、測定に使用した第1の判定基準値が妥当であったと判定し、測定異常が測定判定結果として出力される(図13のステップS213)。
一方、問合せの結果、測定対象とした伝送経路に切り替えが有った場合には(図13のステップS209:有)、測定に使用した第1の判定基準値を更新すべきと判定する。この場合、測定制御部28は、ネットワーク管理装置から回答された切り替え後の経路に関連する装置、伝送経路の情報に基づいて、切り替え後の経路に使用すべき第2の判定基準値を算出する(図13のステップS210)。
測定制御部28は、第2の判定基準値を用いて遅延測定カウンタ27が遅延測定値として出力した測定値を再度判定する(図13のステップS211)。
この再度の判定の結果、第2の判定基準値である遅延期待値を基準とした許容遅延誤差の範囲内であれば測定値は正常と判断して、その測定値を測定判定結果として出力する(図13のステップS211:正常、ステップS212)。一方、再度の判定の結果でも遅延期待値を基準とした許容遅延誤差の範囲外であれば、測定異常が測定判定結果として出力される(図13のステップS211:異常、ステップS213)。
また、測定制御部28は、ネットワーク管理装置の回答に切り替え後の経路に関連する装置、伝送経路の情報があった場合は、それらを経路情報データベース29に更新登録する。
以上に説明したように、本実施形態では、遅延測定時には、測定制御部がループバック実行部に対して、ループバックの実行停止を指示する。このループバック実行部におけるループバック停止に伴い、受信フレームから取り出されたループバック情報は変化点エッジ検出部に入力されるようになる。つまり、対向装置では何の処理を行うこともなく、遅延測定を実施する装置側でループバックを停止することにより、遅延測定のための経路が形成される。
さらに、ネットワーク内で測定対象とする伝送経路において経路変更が行われたような場合、測定制御部が予め記憶する第1の判定基準値に基づいて測定値の正常性を判定したとき、その基準範囲を外れる測定値の異常を識別することがある。
そのような場合、測定制御部は、ネットワーク管理装置に対して測定対象とする伝送経路における経路変更の有無を問合せ、該問合せ結果に基づいて取得した第2の判定基準値に基づいて測定値の正常性を再度判定する。
このような構成を備えることにより、遅延測定対象とするネットワーク内の経路が異なる経路に変更された場合に、遅延測定結果に基づいて新たな判定基準値を求め、該遅延測定結果を再度評価することができる。
<第3の実施形態>
第3の実施形態を説明する。
第3の実施形態の伝送装置の構成は、図8を参照して説明した第2の実施形態の伝送装置20と同じ構成を備える。そして、測定制御部28が図14に示す遅延測定方法を実行する。図14は、第3の実施形態の遅延測定方法を示すフロー図である。
第3の実施形態では、測定制御部28が遅延測定を複数回実施してすべての測定値が第1の判定基準値に基づいて正常と判定された場合に正常と判定する。この場合は、例えば、各回の測定値の平均値または中間値となる値を測定結果とする。
これは、伝送路を介して変化点エッジ検出により遅延測定を行う為、伝送路上にノイズが入ると予期しない変化点エッジが現れて、実際の遅延値と異なる結果が得られてしまう。第3の実施形態は、すべての回の測定結果の正常性を確認することで測定の精度を向上させることを目的とする。
また、第3の実施形態では、測定の途中で測定異常となっても所定の回数の測定を継続実施して、所定の回数の測定終了後に測定異常の発生頻度や発生傾向から測定の正常性の評価をする。
例えば、複数回の遅延測定において、測定値が第1の判定基準値の範囲を外れる異常の発生状況がランダムな場合は測定異常と判定する。また、すべての回の測定結果が第1の判定基準値の範囲を外れる場合には、経路切り替えが行われていて、使用している第1の判定基準値が適正でないことが疑える。この場合には、ネットワーク管理装置に問合せを行い、経路変更後の第2の判定基準値を取得して、当該第2の判定基準値に基づく遅延測定を再度実行する。さらに、ある時間以降に実施した測定結果のみが第1の判定基準値の範囲を外れるような場合には、測定の途中で経路切り替えが発生したことが疑える。この場合も、ネットワーク管理装置に問合せを行い、経路変更後の第2の判定基準値を取得して、当該第2の判定基準値に基づく遅延測定を再度実行する。
図14を参照して第3の実施形態の遅延測定方法を説明する。なお、図13で説明した第2の実施形態の遅延測定方法と類似する動作は、適宜図13で説明したステップも参照する。
まず、遅延測定に先立ち、測定制御部28への準備設定が行われる(図14のステップS301)。
ここでは、図13のステップS201での準備(PM&TCM測定条件登録、伝送路遅延タイマ遅延測定可能最大値設定、測定対象の伝送経路毎の遅延期待値および許容遅延誤差の設定)に加え、遅延測定の実施回数の最大値も規定される。
そして、遅延測定の実施回数のカウンタに初期値の1を設定して遅延測定を実施する(図14のステップS302とステップS303)。
ここで、図14のステップS303の遅延測定実施の動作は、図13のステップ202からステップS206の動作に相当する。
上記の動作により遅延測定カウンタ27が遅延測定値として出力した測定結果は図示しないメモリ等に記録される(図14のステップS304)。
遅延測定の実施回数が確認され、最大数に達していない場合には、遅延測定の実施回数カウンタを1加算して、再度の遅延測定を実施する(図14のステップS305:No、ステップS306、ステップS303)。
遅延測定の実施回数が最大数に達した場合には、それまでに実施した遅延測定の結果が評価される(図14のステップS305:Yes、ステップS307)。
測定制御部28は、各回の遅延測定の結果を、測定対象の伝送経路の遅延期待値と許容遅延誤差である第1の判定基準値と比較する。
また、このとき、測定制御部28は、遅延測定を実施した時間帯における伝送路や装置の障害警報の有無も確認する。
障害警報の発生もなく、各回の測定値が遅延期待値を中心に許容遅延誤差の範囲内であれば測定値は正常と判断して、その測定値を測定判定結果として出力する(図14のステップS307:正常、ステップS312)。
なお、障害警報が発生している場合にはいかなる測定値も異常として、測定異常を測定判定結果として出力する(図14のステップS307:異常1、ステップS313)。
また、複数回の遅延測定において、測定値が第1の判定基準値の範囲を外れる異常の発生状況がランダムな場合も上記の異常1と判定する。
ただし、すべての回の測定結果が第1の判定基準値の範囲を外れる場合や、ある時間以降に実施した測定結果のみが第1の判定基準値の範囲を外れるような場合には、経路切り替えの発生が疑える。したがって、そのような場合には、ネットワーク管理装置に問合せを行う制御を行うため異常2を出力する(図14のステップS307:異常2)。
異常2が出力された場合は、図14のステップS308以降の動作が実行される。図14のステップS308以降の動作は、図13のステップS208以降の動作と同じなので、説明を省略する。
本実施形態においても、伝送経路において経路変更の発生が想定される場合に、ネットワーク管理装置に対して経路変更の変更有無を問合せ、該問合せ結果に基づいて取得した第2の判定基準値に基づいて測定値の正常性を再度判定する。
このような構成を備えることにより、遅延測定対象とするネットワーク内の経路が異なる経路に変更された場合に、遅延測定結果に基づいて新たな判定基準値を求め、該遅延測定結果を再度評価することができる。
<実施形態の変形例>
上述した実施形態の変形例を説明する。
第1の変形例は、第3の実施形態において判定基準値を、複数の測定結果における許容最大誤差として定義するものである。この場合は、複数回実施した測定結果の最大値と最小値の差が判定基準値である許容最大誤差の範囲内に入っているか否かで測定の正常性を判定する。つまり、遅延期待値を基準とした許容遅延誤差の範囲に各測定値が入っているかを比較する代わりに、測定値の最大値と最小値の差が判定基準値である許容最大誤差の範囲内に入っているかを比較する。
そして、複数回実施した測定結果の最大値と最小値の差が第1の判定基準値の範囲内に入っていない場合に、最大値または最小値を与える測定結果がランダムに発生したような場合は測定異常と判定する。しかし、ある時間以降に実施した測定結果のみに起因して第1の判定基準値の範囲を外れるような場合には、測定の途中で経路切り替えが発生したことが疑える。この場合も、ネットワーク管理装置に問合せを行い、経路変更後の第2の判定基準値を取得して、当該第2の判定基準値に基づく遅延測定を再度実行する。
このような第1の変形例は、経路情報データベース29における基準値データの定義を変えることと、測定制御部28の機能として実現できる。
第2の変形例は、判定基準値の持ち方を変えた構成である。
第2の実施形態の遅延測定方法では、予め記憶している第1の判定基準値として経路情報データベース29の登録情報を用いた。つまり、判定に用いる測定対象の伝送経路の遅延期待値と許容遅延誤差の値を測定開始時に算出して測定制御部28に第1の判定基準値として設定しておき、遅延測定カウンタ27から出力される測定値を、設定してある第1の判定基準値に基づいて評価した。そして、経路切り替えの場合の処理においては、ネットワーク管理装置に問合せを行い、その回答から第2の判定基準値を取得し、さらに回答内容の情報で経路情報データベース29の更新登録を行った。
第2の変形例は、ネットワーク内で障害が発生し伝送経路が変わった場合、ネットワーク管理装置がネットワーク内の各伝送装置の経路情報データベース29の内容を書き換える構成をとる。
したがって、第2の変形例の場合、測定制御部28は、経路切り替えが発生したことが疑える場合に、ネットワーク管理装置まで問合せることなく、自装置に設備されている経路情報データベース29を参照すればよい。そして、測定制御部28は、経路情報データベース29の登録情報から第2の判定基準値を生成して測定値の再判定を行う。さらに、測定制御部28は、生成した第2の判定基準値を次回の測定で使用する第1の判定基準値として更新設定する。
第2の変形例は、第2の実施形態および第3の実施形態に共通して適用できるものである。
また、第2の実施形態の伝送装置20の構成の変形例について説明する。
前述したように、伝送路を介して変化点エッジ検出により遅延測定を行う為、伝送路上にノイズが入ると予期しない変化点エッジが現れて、実際の遅延値と異なる結果が得られてしまう。第2の実施形態の伝送装置20の構成の変形例は、このノイズが変化点エッジとして検出されないように、変化点エッジ検出部26の前段にパルス幅判定回路を設ける。そして、ある一定のパルス幅以下で変化する信号をノイズと判定して、その信号は受け付けないように制御する。
なお、パルス幅とは変化点エッジが出現する間隔を云う。変化点エッジはOTUフレームに設定されて転送されるので、その転送周期はフレーム単位となる。そのため、現在使用しているOTUフレームのフレーム単位より短い間隔で現れる変化点エッジはノイズと判定する。
以上の各実施形態や変形例に説明したように、本実施形態では、遅延測定を実施する装置側でループバックを停止することにより、対向装置では何の処理を行うこともなく、遅延測定のための経路が形成される。
さらに、ネットワーク内で測定対象の伝送経路において経路変更が行われたような場合に、すぐに異常を出力することなくネットワーク管理装置に対して経路変更の変更有無を問合せる。そして、該問合せ結果に基づいて取得した新たな判定基準値に基づいて測定値の正常性を再度判定する。
このような構成を備えることにより、遅延測定対象とするネットワーク内の経路が異なる経路に変更された場合に、遅延測定結果に基づいて新たな判定基準値を求め、該遅延測定結果を再度評価することができる。