JP2019068762A - 遺伝子改変不完全変態昆虫の作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】遺伝子改変不完全変態昆虫の作製のための改良方法を提供する。【解決手段】本開示は、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子改変不完全変態昆虫の作製方法であって、Cas9mRNA、gRNA、およびドナーベクターの量を低減した方法に関する。【選択図】なし

Description

本開示は、遺伝子改変不完全変態昆虫の作製方法に関する。
昆虫は発生様式の違いから、完全変態類と不完全変態類に大別される。ショウジョウバエ等の完全変態類はモデル動物として研究が進んでいるが、不完全変態類については遺伝子機能解析の技術が確立されておらず、それほど研究がなされてない。不完全変態昆虫の発生および再生の研究およびその商業的利用のため、不完全変態昆虫の遺伝子改変技術が求められている。
ゲノム編集は、人工ヌクレアーゼにより標的とするゲノム部位を特異的に改変する技術であり、不完全変態昆虫ではZFN、TALEN、CRISPR/Cas9システムを用いたノックアウトコオロギの作成が報告されている。しかしながら、遺伝子改変個体の応用を考えると、その効率や経済性は十分でなく、さらなる改善が求められている。また、不完全変態昆虫の内在遺伝子の解析やタンパク質生産システムとしての利用のため、ノックイン系統の作製が求められている。
Awata H, Watanabe T, Hamanaka Y, Mito T, Noji S, Mizunami M., Knockout crickets for the study of learning and memory: Dopamine receptor Dop1 mediates aversive but not appetitive reinforcement in crickets. Scientific Reports 5:15885, 2015 渡辺崇人,三戸太郎,大内淑代,野地澄晴,コオロギにおけるZFN,TALEN,CRISPR/Cas9を用いた遺伝子改変(今すぐ始めるゲノム編集 TALEN&CRISPR/Cas9の必須知識と実験プロトコール,山本卓編,実験医学(別冊),羊土社,2014,149〜158頁) 渡辺崇人,松岡佑児,野地澄晴,三戸太郎,フタホシコオロギにおけるゲノム編集(進化するゲノム編集技術,真下知士,城石俊彦監修,エヌ・ティー・エス,2015,201−207頁)
本発明は、遺伝子改変不完全変態昆虫の作製のための改良方法を提供することを目的とする。
本発明は、ある態様において、以下を提供する:
ノックアウト不完全変態昆虫を作製する方法であって、
不完全変態昆虫の卵に、Cas9mRNAおよびゲノム用gRNAを注入すること;および
前記卵から生じた昆虫から、所望の遺伝子改変を含む昆虫を選択すること
を含み、Cas9mRNAの濃度が約100pg/μl−約100ng/μl、および/またはゲノム用gRNAの濃度が約100pg/μl−約100ng/μlである、方法。
本発明は、さらなる態様において、以下を提供する:
ノックイン不完全変態昆虫を作製する方法であって、
不完全変態昆虫の卵に、
約2ng/μl−約30ng/μlのゲノム用gRNA、
約2ng/μl−約30ng/μlのドナーベクター用gRNA、
約4ng/μl−約60ng/μlのドナーベクター、および
約4ng/μl−約60ng/μlのCas9mRNA
を注入すること;および
前記卵から生じた昆虫から、所望の遺伝子改変を含む昆虫を選択すること
を含む方法。
CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子改変不完全変態昆虫の作製において、Cas9mRNA、gRNA、およびドナーベクターの量を低減することが可能となった。
図1は、Cas9mRNAまたはgRNAの導入量と変異導入効率との関係を示す。標的遺伝子はvermilion遺伝子である。 図2は、gRNAの導入量と細胞ノックアウト効率または孵化率との関係を示す。標的遺伝子はlaccase2遺伝子である。 図3は、gRNA濃度と体細胞ノックアウト範囲との関係を示す。標的遺伝子はlaccase2遺伝子である。 図4は、gRNAおよびCas9mRNAの注入時期と変異導入効率との関係を示す。標的遺伝子はUbx遺伝子またはabd−A遺伝子である。 図5は、Ubx遺伝子座を標的としたノックインの説明図である。「HD」は、遺伝子のホメオドメインを示す(以下の図において同じ)。 図6は、Ubx遺伝子座へのGFP遺伝子のノックイン実験の結果を示す。「bright」は明視野観察、「GFP」はGFP蛍光、「merge」は両者を重ね合わせた結果である(以下の図において同じ)。 図7は、GFP発現を指標にしたUbxホモ変異体単離の結果を示す。 図8は、abd−A遺伝子座を標的としたエンハンサートラップの説明図である。 図9は、abd−A遺伝子座を標的としたエンハンサートラップ実験の結果を示す。 図10は、abd−A遺伝子座を標的としたノックインにおいて、各種濃度の注入溶液の注入後7日目のG0個体のGFP蛍光を示す。TXRは赤色蛍光の結果を示す。#2、#3、#4、#5は、蛍光を発した個体の通し番号を示す。 図11は、注入溶液の濃度検討実験におけるG0幼虫のGFP蛍光を示す。 図12は、abd−A遺伝子座へのノックインにより生じたG0成虫の体節構造を示す。 図13は、abd−A遺伝子座へのノックインを行なったG0個体と野生型とを交配して得たG1胚1個体のGFP蛍光を示す。
本明細書において、数値が「約」の用語を伴う場合、その値の±10%の範囲を含むことを意図する。数値の範囲は、両端点の間の全ての数値および両端点の数値を含む。範囲に関する「約」は、その範囲の両端点に適用される。すなわち、例えば、「約20〜30」は、「20±10%〜30±10%」を含むものとする。
本発明の方法は、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集により遺伝子改変不完全変態昆虫を作製するものである。本発明の方法は、エンドヌクレアーゼであるCas9タンパク質をコードするCas9mRNAと、Cas9タンパク質を標的配列へ動員するガイドRNA(gRNA)とを使用する。本明細書における「遺伝子改変」には、遺伝子のノックアウトおよびノックインが含まれる。
不完全変態昆虫とは、蛹を経ずに幼虫が直接成虫に変態する昆虫を意味する。不完全変態昆虫としては、限定はされないが、コオロギ、バッタ、イナゴ(バッタ目)、カマキリ(カマキリ目)、ゴキブリ、シロアリ(ゴキブリ目)、セミ、サシガメ、トコジラミ(カメムシ目)、トンボ(トンボ目)、アザミウマ(アザミウマ目)等が挙げられる。好ましくは、不完全変態昆虫は、バッタ目に属する昆虫である。バッタ目に属する昆虫としては、キリギリス亜目、好ましくはコオロギ上科、より好ましくはコオロギ科、さらにより好ましくはコオロギ亜科、さらにより好ましくはコオロギ属に属する昆虫;および、バッタ亜目、好ましくはバッタ上科、より好ましくはバッタ科またはイナゴ科に属する昆虫が例示される。ある態様において、不完全変態昆虫は、バッタ目キリギリス亜目、好ましくはコオロギ上科、より好ましくはコオロギ科、さらにより好ましくはコオロギ亜科、さらにより好ましくはコオロギ属に属する昆虫である。
Cas9タンパク質は、例えば、CRISPR系を有する細菌に由来するものである。CRISPR系を有する細菌には、アエロピュルム属(Aeropyrum)、ピュロバクルム属(Pyrobaculum)、スルフォロブス属(Sulfolobus)、アルカエオグロブス属(Archaeoglobus)、ハロアーキュラ属(Halocarcula)、メタノバクテリウム属(Methanobacteriumn)、メタノコックス属(Methanococcus)、メタノサルキナ属(Methanosarcina)、メタノピュルス属(Methanopyrus)、ピュロコックス属(Pyrococcus)、ピクロフィルス属(Picrophilus)、テルモプラズマ属(Thermoplasma)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、アクウィフェクス属(Aquifex)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、クロロビウム属(Chlorobium)、サーマス属(Thermus)、バシラス属(Bacillus)、リステリア属(Listeria)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、サーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、アゾアルカス属(Azoarcus)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium)、ナイセリア属(Neisseria)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、デスルフォビブリオ属(Desulfovibrio)、ジオバクター属(Geobacter)、マイクロコッカス属(Micrococcus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ウォリネラ属(Wolinella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、エスケリキア属(Escherichia)、レジオネラ属(Legionella)、メチロコッカス属(Methylococcus)、パスツレラ属(Pasteurella)、フォトバクテリウム属(Photobacterium)、サルモネラ属(Salmonella)、ザントモナス属(Xanthomonas)、エルシニア属(Yersinia)、トレポネーマ属(Treponema)およびテルモトガ属(Thermotoga)などに属する細菌が含まれる。好ましくは、Cas9タンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲニス(Streptococcus pyogenes)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)、より好ましくはストレプトコッカス・ピオゲニスに由来するものである。
ある実施形態において、Cas9タンパク質は、配列番号1の配列に約80%、85%、90%、または95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、gRNA依存的DNA結合活性とヌクレアーゼ活性とを有するタンパク質である。好ましくは、Cas9タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、または、配列番号1のアミノ酸配列からなる。
Cas9mRNAは、前記Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列を有していればよく、その具体的配列は特に限定されない。Cas9mRNAは、通常、2500bp〜4000bp程度である。ある実施形態において、Cas9mRNAは、配列番号2の配列に約80%、85%、90%、または95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、かつ、gRNA依存的DNA結合活性とヌクレアーゼ活性とを有するCas9タンパク質をコードする。好ましくは、Cas9mRNAは、配列番号2のヌクレオチド配列を含むか、または、配列番号2のヌクレオチド配列からなる。
配列同一性は、配列を最適にアライメントした場合に、2つの配列において同一である残基の割合を意味する。従って、例えば、90%の同一性とは、最適にアライメントされた2つの配列において90%の残基が同一であることを意味する。配列のアライメントおよび同一性の計算の方法は当業者に周知であり、例えば、BLAST等のプログラムを利用することができる。
Cas9mRNAは、所望のCas9タンパク質のアミノ酸配列をコードするDNAをインビトロ転写用ベクターにクローニングし、インビトロで転写することにより、得ることができる。Cas9タンパク質をコードするDNAがクローニングされているインビトロ転写用ベクターは市販されており、例えば、ストレプトコッカス・ピオゲニスのCas9タンパク質を発現するpMLM3613、pMJ920(Addgene社)などが挙げられる。インビトロ転写の方法は、当業者に公知である。
Cas9タンパク質は直後にPAM(Proto-spacer Adjacent Motif)配列を有するDNA配列に結合する。ゲノム上の標的配列は、その配列の直後にPAM配列を有する配列であればよく、特に限定されない。PAM配列はCas9タンパク質に依存し、例えば、ストレプトコッカス・ピオゲニス由来のCas9タンパク質のPAM配列はNGGである。その他の例として、ナイセリア・メニンギティディス:NNNNGATT、ストレプトコッカス・サーモフィラス:NNAGAA、トレポネーマ・デンティコラ:NAAAACなどが挙げられる。これらの配列において、Nは、A、T、GおよびCのいずれかの塩基を示す。標的配列は、ゲノムDNAのいずれの鎖にあってもよい。標的配列の選択および/またはgRNAの設計に利用できる数々のツール、および、バイオインフォマティックスにより予想された様々な種の様々な遺伝子についての標的配列のリストを利用することができ、例えば、引用により本明細書の一部とするFeng Zhang lab's Target Finder、Michael Boutros lab's Target Finder (E-CRISP)、RGEN Tools: Cas-OFFinder、CasFinder: Flexible algorithm for identifying specific Cas9 targets in genomes、CRISPR Optimal Target Finder などが挙げられる。
gRNAは、Cas9タンパク質を標的配列に動員する役割を果たす。本明細書において、gRNAとは、crRNA(CRISPR RNA)とtracrRNA(Trans-activating crRNA)が融合した人工1本鎖RNAを意味する。crRNAとtracrRNAの間にリンカー配列が存在してもよい。
crRNAは、gRNAの配列特異性を担い、標的配列またはそれに相補的な配列を含む。tracrRNAは、gRNAのCas9タンパク質結合能力を担い、crRNAの一部と相補的に結合してヘアピン構造を形成し、この構造がCas9に認識され、crRNA、tracrRNAおよびCas9タンパク質の複合体が形成される。tracrRNAの配列は細菌の種によって異なるが、上記のCRISPR系を有する細菌のものであってよい。例えば、ストレプトコッカス・ピオゲニス、ナイセリア・メニンギティディス、ストレプトコッカス・サーモフィラス、トレポネーマ・デンティコラのtracrRNAを使用できる。好ましくは、tracrRNAはCas9タンパク質と同じ細菌の種に由来する。
gRNAは、通常、100bp程度である。gRNAは、所望のgRNAの配列を有するDNAをインビトロ転写用ベクターにクローニングし、インビトロで転写することにより、得ることができる。適するインビトロ転写用ベクターは、当業者に公知である。また、gRNAの標的配列以外の配列を含むインビトロ転写用ベクターが利用可能であり、これに標的配列のオリゴヌクレオチドを合成して挿入し、インビトロ転写することによっても、得ることができる。そのようなベクターには、例えば、Addgene社から購入できる、pDR274、pUC57-sgRNA expression vector、pCFD1-dU6:1gRNA、pCFD2-dU6:2gRNA pCFD3-dU6:3gRNA、pCFD4-U6:1_U6:3tandemgRNAs、pRB17、pMB60、SP6-sgRNA-scaffold、pT7-gRNA、DR274、pUC57-Simple-gRNA backbone、および、Origene社から購入できるpT7-Guide-IVTが含まれる。インビトロ転写の方法は、当業者に公知である。
ゲノム上の標的配列に対するgRNA(本明細書中、ゲノム用gRNAと称する)とCas9mRNAとを卵に注入すると、Cas9mRNAから発現したCas9タンパク質によるゲノムの二本鎖切断が誘導される。この二本鎖切断が非相同性末端結合(本明細書中、NHEJとも記載する)により修復される際に数塩基の欠失または追加が生じると、標的遺伝子がノックアウトされる。
ゲノムに導入する所望の配列とCas9タンパク質の標的配列とを含むドナーベクターと、ドナーベクター中の標的配列に対するgRNA(本明細書中、ドナーベクター用gRNAと称する)とを、Cas9mRNAおよびゲノム用gRNAに加えて用いることにより、所望の配列をゲノムに導入することができる。Cas9mRNA、ゲノム用gRNA、ドナーベクター、ドナーベクター用gRNAを卵に注入すると、Cas9タンパク質によりゲノムとドナーベクターが切断され、ゲノムとドナーベクターの間で生じる非相同性末端結合により、ドナーベクターがゲノム上の二本鎖切断部位に導入される。
本明細書において、「ノックイン不完全変態昆虫」とは、ドナーベクターにより所望の配列がゲノムに導入された不完全変態昆虫をいう。本明細書において、「ノックアウト不完全変態昆虫」とは、ゲノム上の標的遺伝子が破壊された不完全変態昆虫を意味するが、ドナーベクターにより所望の配列がゲノムに導入された不完全変態昆虫、すなわちドナーベクターにより所望の配列がゲノムに導入された結果ゲノム上の遺伝子が破壊された昆虫は含まれない。よって、本発明のノックアウト不完全変態昆虫の作製方法は、卵にドナーベクターおよびドナーベクター用gRNAを注入することは含まない。
ドナーベクターは、通常、3,000bp〜100,000bp、好ましくは3,000bp〜50,000、より好ましくは3,000bp〜10,000bpである。ドナーベクターは、ゲノムに導入する所望の配列と、Cas9タンパク質の標的配列とを含む。標的配列は、所望の配列を導入する昆虫のゲノム上に存在しない配列であればよく、使用するCas9タンパク質に応じて適宜選択される。
ある実施形態において、ドナーベクターはレポーター遺伝子の配列を含む。レポーター遺伝子としては、GFP、DsRed等の蛍光遺伝子やGal4、Tet等の誘導遺伝子が挙げられる。ドナーベクターは、コオロギの細胞質に特異的に発現するコオロギアクチンプロモーター(Gb’act)、コオロギの眼に特異的に発現する3xP3プロモーター、高温処理により遺伝子発現の制御が可能になるheat shock protein プロモーター等のプロモーターを含みうる。レポーター遺伝子を導入することにより、ノックイン個体を容易に選別することができる。また、発現を観察したい遺伝子のイントロン領域にレポーター遺伝子を導入すると、不完全変態昆虫のエンハンサートラップ系統を作製することができる。
ノックアウト不完全変態昆虫の作製方法において、Cas9mRNAおよび/またはゲノム用gRNAの濃度は、約100pg/μl−約100ng/μl、好ましくは約300pg/μl−約70ng/μl、より好ましくは約400pg/μl−約60ng/μl、さらにより好ましくは約500pg/μl−約50ng/μlである。
ノックアウト不完全変態昆虫の作製方法の一実施形態においては、Cas9mRNAの濃度が、約100pg/μl−約100ng/μl、好ましくは約300pg/μl−約70ng/μl、より好ましくは約400pg/μl−約60ng/μl、さらにより好ましくは約500pg/μl−約50ng/μlである。この実施形態において、ゲノム用gRNAの濃度は任意に決定でき、例えば、約100pg/μl−約500ng/μl(例えば、約500ng/μl)、約100pg/μl−約300ng/μl、約100pg/μl−約100ng/μl、約300pg/μl−約70ng/μl、約400pg/μl−約60ng/μl、または約500pg/μl−約50ng/μlである。
ノックアウト不完全変態昆虫の作製方法の一実施形態においては、ゲノム用gRNAの濃度が、約100pg/μl−約100ng/μl、好ましくは約300pg/μl−約70ng/μl、より好ましくは約400pg/μl−約60ng/μl、さらにより好ましくは約500pg/μl−約50ng/μlである。この実施形態において、Cas9mRNAの濃度は任意に決定でき、例えば、約100pg/μl−約500ng/μl(例えば、約500ng/μl)、約100pg/μl−約300ng/μl、約100pg/μl−約100ng/μl、約300pg/μl−約70ng/μl、約400pg/μl−約60ng/μl、または約500pg/μl−約50ng/μlである。
ノックアウト不完全変態昆虫の作製方法のある好ましい実施形態においては、Cas9mRNAの濃度およびゲノム用gRNAの濃度がいずれも、約100pg/μl−約100ng/μl、好ましくは約300pg/μl−約70ng/μl、より好ましくは約400pg/μl−約60ng/μl、さらにより好ましくは約500pg/μl−約50ng/μlである。
ノックイン不完全変態昆虫の作製方法では、
約2ng/μl−約30ng/μl、好ましくは約2.5ng/μl−約25ng/μlのゲノム用gRNA、
約2ng/μl−約30ng/μl、好ましくは約2.5ng/μl−約25ng/μlのドナーベクター用gRNA、
約4ng/μl−約60ng/μl、好ましくは約5ng/μl−約50ng/μlのドナーベクター、および
約4ng/μl−約60ng/μl、好ましくは約5ng/μl−約50ng/μlのCas9mRNA
を不完全変態昆虫の卵に注入する。
ノックイン不完全変態昆虫の作製方法の一実施形態においては、約2.5ng/μlのゲノム用gRNA、約2.5ng/μlのドナーベクター用gRNA、約5ng/μlのドナーベクター、および約5ng/μlのCas9mRNAを注入する。別の実施形態においては、約25ng/μlのゲノム用gRNA、約25ng/μlのドナーベクター用gRNA、約50ng/μlのドナーベクター、および約50ng/μlのCas9mRNAを注入する。
不完全変態昆虫の卵への注入は、当業界で知られる方法により行うことができる。例えば、注入するCas9mRNAおよびゲノム用gRNA、並びに場合によりドナーベクターおよびドナーベクター用gRNAを、水またはTEバッファー(10 mM Tris-HCl, pH8.0, 1 mM EDTA)などの溶媒に溶解し、この溶液をガラスキャピラリーに充填して、スライドグラス上に並べミネラルオイル等のオイルで覆った卵、あるいはアガロースゲル上に並べPBS等の緩衝液で覆った卵に注入する。注入は、アガロースゲル上で行うことが好ましい。注入される溶液の量は、通常、約2〜5μlである。
卵への注入は、通常、産卵後15時間以内、好ましくは10時間以内に行う。例えば、注入は、産卵直後〜産卵後10時間、産卵直後〜産卵後6時間、または産卵直後〜産卵後4時間の時点で行う。ある実施形態において、注入は、産卵後1〜2時間、3〜4時間、5〜6時間、または9〜10時間の時点で行う。
注入溶液を注入後、卵を適切な温度(例えば、約28〜30℃)でインキュベートして孵化させ、幼虫を適切な温度(例えば、約28〜30℃)で所望の発育段階まで飼育する。このようにして生じた不完全変態昆虫から、任意の選択方法により、所望の遺伝子改変を含む不完全変態昆虫を選択することができる。例えば、終齢幼虫の段階で雄と雌にわけ、それぞれの幼虫から生じた成虫を野生型の成虫と交配させることにより、ヘテロ変異体(G1)を得ることができる。次いで、ヘテロ変異体同士を交配すると、所望の遺伝子改変を含むホモ個体およびヘテロ個体(G2)を得ることができる。所望の遺伝子改変を含むことは、例えば、体色や形態などの標的遺伝子に対応する幼虫または成虫の表現型により、確認することができる。また、導入遺伝子の発現を確認することにより、例えば、GFP等の蛍光タンパク質をコードする遺伝子を導入した場合は蛍光を観察することにより、確認することができる。
本発明の方法によれば、効率よく遺伝子改変不完全変態昆虫を得ることができる。本発明の方法により得られた遺伝子改変不完全変態昆虫は、内在遺伝子発現のリアルタイムモニターや、有用タンパク質のin vivo生産システムの構築に応用可能である。
本発明の例示的態様を以下に示す。
1.ノックアウト不完全変態昆虫を作製する方法であって、
不完全変態昆虫の卵に、Cas9mRNAおよびゲノム用gRNAを注入すること;および
前記卵から生じた昆虫から、所望の遺伝子改変を含む昆虫を選択すること
を含み、Cas9mRNAの濃度が約100pg/μl−約100ng/μl、および/またはゲノム用gRNAの濃度が約100pg/μl−約100ng/μlである、方法。
2.Cas9mRNAの濃度が約100pg/μl−約100ng/μlであり、ゲノム用gRNAの濃度が約100pg/μl−約100ng/μlである、請求項1に記載の方法。
3.Cas9mRNAの濃度が約500pg/μl−約50ng/μlであり、ゲノム用gRNAの濃度が約500pg/μl−約50ng/μlである、前記1に記載の方法。
4.ノックイン不完全変態昆虫を作製する方法であって、
不完全変態昆虫の卵に、
約2ng/μl−約30ng/μlのゲノム用gRNA、
約2ng/μl−約30ng/μlのドナーベクター用gRNA、
約4ng/μl−約60ng/μlのドナーベクター、および
約4ng/μl−約60ng/μlのCas9mRNA
を注入すること;および
前記卵から生じた昆虫から、所望の遺伝子改変を含む昆虫を選択すること
を含む方法。
5.約2.5ng/μl−約25ng/μlのゲノム用gRNA、
約2.5ng/μl−約25ng/μlのドナーベクター用gRNA、
約5ng/μl−約50ng/μlのドナーベクター、および
約5ng/μl−約50ng/μlのCas9mRNA
を注入する、前記4に記載の方法。
6.ドナーベクターがレポーター遺伝子を含む、前記5に記載の方法。
以下の実施例は、如何なる意味においても本発明を限定するものではない。
1.ノックアウト不完全変態昆虫の作製
(1)gRNAおよびCas9mRNAの導入量と変異導入効率との関係
不完全変態昆虫においてCRISPR/Cas9システムによりゲノム編集を行うための実験条件を評価するため、G0における変異導入効率に対するgRNAおよびCas9mRNAの濃度の影響を検討した。
Cas9mRNAは、pMLM3613プラスミド(Addgene社)を制限酵素PmeIで直鎖化した産物を鋳型として、mMessage mMachine(Thermo Fisher社)を用いて合成した。Cas9mRNAの配列を配列番号2に示す。gRNAは、vermilion遺伝子を標的として作製した(標的配列:GGTGCCGGGCGCCCAGGACG(配列番号3))。gRNA転写用ベクターは、pDR274プラスミド(Addgene社)をBsaIで直鎖化し、Oligo1:TAGGTGCCGGGCGCCCAGGACG(配列番号4)とOligo2:AAACCGTCCTGGGCGCCCGGCA(配列番号5)のアニーリング産物を組み込み作製した。作製したベクターをDraIにより直鎖化した産物を鋳型として、mMessage mMachine(Thermo Fisher社)を用いて、gRNAを合成した。
濃度は、500ng/μlから希釈して、gRNAは50pg/μl、Cas9mRNAは5pg/μlを下限とした。gRNAの濃度検討の際に用いるCas9mRNA、およびCas9mRNAの濃度検討の際に用いるgRNAは、それぞれ500ng/μlとした。溶媒はTris-EDTAバッファーを用いた。
gRNAおよびCas9mRNAは、フタホシコオロギの卵(産卵後5時間以内)に、以下の方法によりインジェクションした。
(1)フィラメント入りガラスキャピラリーをMicropipette puller (P-1000IVF, Sutter Instruments)を用いてインジェクション針とした。
(2)できた針をMicropipette grinder (EG-44, Narishige)を用いて針先が20度となるように削った。
(3)0.7mm幅X0.5mm深さの突起が付いたプラスチック板を、9cmシャーレ中の20mLの熱した1%アガロース液に浮かべ、その後冷まして、コオロギ卵を並べる溝をもったアガロース板を作成した。
(4)コオロギ卵を1時間かけて採卵し、20mlの1XPBS(50U/mlペニシリン,50μg/mストレプトマイシン含有)で満たしたアガロース板の溝に並べた。
(5)条件をinjection pressure; 5-10 psi、injection time; 0.1 sec に設定し,コオロギ卵の後方にインジェクションした。
1週間後、インジェクションした卵1個ずつからゲノム抽出を行い,SURVEYOR nuclease assayにより変異導入された卵の割合を算出した。
図1に示すように、gRNAは、500pg/μl−500ng/μlで高い変異導入が見られた。Cas9mRNAでも、500pg/μl−500ng/μlで高い変異導入が見られ、50pg/μlにおいても変異を検出することができた。
(2)gRNAの導入量と体細胞ノックアウト効率及び孵化率との関係
G0におけるlaccase2遺伝子の表現型であるクチクラの白色化を指標として、体細胞ノックアウト効率および孵化率に対するgRNAの導入量の影響を調べた。
laccase2遺伝子を標的としてgRNAを作製した。Cas9mRNAは、上記1(1)と同じものを用いた。gRNAは、laccase2遺伝子を標的として作製した(標的配列:GGGGTCCTGGCCCGGGTTGA(配列番号6))。gRNA転写用ベクターは、pDR274プラスミド(Addgene社)をBsaIで直鎖化し、Oligo1:TAGGGGTCCTGGCCCGGGTTGA(配列番号7)とOligo2:AAACTCAACCCGGGCCAGGACC(配列番号8)のアニーリング産物を組み込み作製した。作製したベクターをDraIにより直鎖化した産物を鋳型として、mMessage mMachine(Thermo Fisher社)を用いて、gRNAを合成した。gRNAの導入量は、50pg/μl、500pg/μl、50ng/μlまたは500ng/μl、Cas9mRNAの導入量は500ng/μlとした。
図2の左のグラフはgRNAの導入量と体細胞ノックアウトを示す個体の割合を示し、右のグラフはgRNAの導入量と孵化率との関係を示す。体細胞ノックアウトを示す個体の割合は、500ng/μlの個体群で85%と最も高く、濃度が減少するにつれて低下したが、500pg/μlまで濃度を下げても変異個体が得られることが分かった。孵化はいずれの濃度でも見られ、特に5ng/μlと500pg/μlでそれぞれ67%、63%と高い孵化率を示した。
(3)gRNA濃度と体細胞ノックアウト範囲との関係
上記1(2)の各gRNAの濃度での体細胞ノックアウトの生じた範囲を比較するために、画像解析ソフトウェアImageJにより、クチクラが白色化した領域の割合を算出した。
まず、個体の画像を白黒化し、胴体を枠線で囲み、白黒化画像の黒色の部分を赤色に表示して、枠線内の赤色の面積を測定した。その後、枠線内の全体の面積を測定し、計算により白色化領域の割合を算出した。
図3に示すように、500ng/μl、50ng/μlではそれぞれで27.9%、32.6%で、高効率で変異が導入されていた。5ng/μl、500pg/μlでは12.0%、4.0%であった。
(4)gRNAおよびCas9導入の時期と変異導入効率との関係
gRNAおよびCas9mRNAをコオロギ卵へ導入する時期の検討を行った。
gRNAは、Ubx遺伝子またはabd−A遺伝子を標的として作製した(Ubx標的配列:GGGTAGAAGGTGTGGTTGGC(配列番号9)、abd−A標的配列:GGGCAAGGCTCACCCGTGA(配列番号10))。Cas9mRNAは、上記1(1)と同じものを用いた。それぞれのgRNA転写用ベクターは、pDR274プラスミド(Addgene社)をBsaIで直鎖化し、UbxOligo1:TAGGGTAGAAGGTGTGGTTGGC(配列番号11)とUbxOligo2:AAACGCCAACCACACCTTCTAC(配列番号12)、abd−AOligo1:TAGGGCAAGGCTCACCCGTGA(配列番号13)とabd−AOligo2:AAACTCACGGGTGAGCCTTGC(配列番号14)のアニーリング産物を組み込み作製した。作製したベクターをDraIにより直鎖化した産物を鋳型として、mMessage mMachine(Thermo Fisher社)を用いて、gRNAを合成した。gRNAおよびCas9mRNAの濃度はそれぞれ、500ng/μlおよび1000ng/μlとした。
コオロギ卵を1時間かけて採集したのち、1時間後(1h)、3時間後(3h)、5時間後(5h)、9時間後(9h)に、gRNAおよびCas9mRNAをコオロギ卵へ注入した。その後、採卵から48時間後の時点でゲノムDNAを抽出し、それぞれの標的(オンターゲット)およびオフターゲット領域をPCR増幅し、次世代シークエンサー MiSeq(イルミナ社)を用いたアンプリコンシークエンス解析を行って、それぞれのPCR増幅断片中の変異導入されたDNAの割合をCRISPRessoにより解析した。
図4に示すように、どちらの遺伝子においても1hにおける変異導入割合が最も高く、9hへかけて段階的に効率が低下するという傾向を示した。また、オフターゲット領域では、いずれのサンプルでもほとんど変異導入が確認されなかった。増幅断片中の変異導入された部位を解析したところ、遺伝子間で傾向は異なるものの、それぞれの遺伝子で導入時期による変異導入の傾向の差はなかった。
2.ノックイン不完全変態昆虫の作製
(1)NHEJによるノックイン
ドナーベクターとして、pUC57ベクター(2710bp)にeGFP遺伝子をコオロギアクチンプロモーターの下流に組み込んだもの(5625bp(配列番号15))を作製した。前記プロモーターの上流には、DsRed由来の短い配列をベイト(bait)として組み込んだ。また、Ubx遺伝子、abd−A遺伝子、および前記ベイトを標的とするgRNAをそれぞれ作製した。Cas9mRNAは、上記1(1)と同じものを用いた。ベイトのgRNAはDsRed遺伝子を標的とした(DsRed標的配列;GCCCTTCGCCTGGGACATCC(配列番号16))。ベイトgRNA転写用ベクターは、pDR274プラスミド(Addgene社)をBsaIで直鎖化し、DsRedOligo1;TAGGATGTCCCAGGCGAAGGGC(配列番号17)、DsRedOligo2;AAACGCCCTTCGCCTGGGACAT(配列番号18)のアニーリング産物を組み込み作製した。作製したベクターをDraIにより直鎖化した産物を鋳型として、mMessage mMachine(Thermo Fisher社)を用いて、gRNAを合成した。Ubx遺伝子およびabd−A遺伝子に対するそれぞれのgRNAは上記1(4)と同じものを用いた。
ゲノム用gRNA(50ng/μl)、ドナーベクター用gRNA(50ng/μl)、ドナーベクター(100ng/μl)、およびCas9mRNA(100ng/μl)を混合し、コオロギの卵(採卵後5時間以内)に注入した。
図5に、ノックイン実験の概略を示す。Cas9タンパク質によりドナーベクターと標的ゲノムDNAが同時に切断される。切断された断面は細胞内修復経路のNHEJにより結合するが、その際、一定の割合で標的ゲノムDNAとドナーベクターの断面の結合が起こり、標的ゲノム中にドナーベクターがノックインされる。NHEJにより修復される際には、どの断面が結合するかはランダムであるため、ドナーベクターは2種類の方向でノックインされうる。
得られたG0世代の成虫を野生型と交配し、G1世代の卵を得た。図6は、Ubx遺伝子を標的とするgRNAを用いた実験の結果を示す。Ubx発現領域でGFP発現を示す系統が得られた。
前記のG1世代で得られた蛍光を発する個体(ヘテロ接合体)同士を掛け合わせ、G2世代の卵を得た。その結果、約25%のG2個体において強いGFP発現が観察され,約50%の個体でG1個体と同程度のGFP発現が観察された。約25%の個体では蛍光は観察されなかった。図7は、G2世代の卵のGFP発現を示す。強いGFP発現が観察された個体では、Ubxノックアウトのホモ接合体の表現型を示しており、ノックインによりUbx遺伝子が破壊されたと考えられる。
表1は、遺伝子ノックイン効率を示す。生殖細胞への変異伝搬効率は、abd−Aでは25%および50%、Ubxでは約5%であった。他の遺伝子座に対するgRNAも作製し、同様に実験したところ、ノックインに成功した(データ提示せず)。変異伝搬効率は様々であったが、実用上十分な効率であった。
(2)標的特異的エンハンサートラップ法
abd−A遺伝子のイントロンを標的とするgRNAを設計し、標的特異的エンハンサートラップ法を行った。
図8に、標的特異的エンハンサートラップ法の概要を示す。この方法では、上記と同様に、ドナーベクター、Cas9mRNA、ドナーベクター用gRNA、およびゲノム用gRNAを用いるが、ゲノム用gRNAを標的遺伝子の上流およびイントロンに対して作製する。これにより、ドナーベクターがノックインされても標的遺伝子には影響がなく、その機能を破壊することなく、エンハンサー活性をドナーベクターのGFP蛍光により可視化することができる。
abd−A遺伝子のイントロンを標的とする2種類のgRNA(標的配列#1:GCTCGCGGTGTTTTACGGCT(配列番号19)、#2:GGCCTATTTCGAGGAGCGGC(配列番号20))を用いて得たG0個体の表現型を、上記1(4)で使用したabd−A遺伝子のエクソンを標的とするgRNAを用いて得たG0個体と比較した。それぞれのgRNA転写用ベクターは、pDR274改変プラスミド(直鎖化したpDR274プラスミド(Addgene社)に改変oligo1:AAACTGAGACCAGATCTCGGTCTCCCTATAGTGAGTCGTATTAG(配列番号21)、改変oligo2:CTAGCTAATACGACTCACTATAGGGAGACCGAGATCTGGTCTCA(配列番号22)を組み込んだもの)をBsaIで直鎖化し、#1Oligo1:ATAGCTCGCGGTGTTTTACGGCT(配列番号23)と#1Oligo2:AAACAGCCGTAAAACACCGCGAG(配列番号24)、#2Oligo1:ATAGGCCTATTTCGAGGAGCGGC(配列番号25)と#2Oligo2:AAACGCCGCTCCTCGAAATAGGC(配列番号26)のアニーリング産物を組み込み作製した。作製したベクターをDraIにより直鎖化した産物を鋳型として、mMessage mMachine(Thermo Fisher社)を用いて転写し、gRNAを合成した。ドナーベクター、ドナーベクター用gRNAおよびCas9mRNAは、上記2(1)と同じものを用いた。
ゲノム用gRNA(50ng/μl)、ドナーベクター用gRNA(50ng/μl)、ドナーベクター(100ng/μl)、およびCas9mRNA(100ng/μl)を混合し、コオロギの卵(採卵後5時間以内)に注入した。
その結果、いずれのgRNAによっても、G0個体においてabd−A発現領域にGFP蛍光が観察された。図9に代表例を示す。表現型を観察したところ、エクソンに対するgRNAでは蛍光を発する領域でノックアウト様の表現型を示した(図9、矢頭)が、イントロンに対するgRNAでは表現型が現れず、遺伝子機能が破壊されていないことが分かった。
(3)ドナーベクター、Cas9mRNA、およびgRNAの濃度の検討
abd−A遺伝子を標的として、ノックイン実験における注入溶液の濃度検討を行った。
ドナーベクター、ベイトgRNAおよびCas9mRNAは、上記2(1)と同じものを用いた。abd−A遺伝子に対するgRNAは、上記1(4)と同じものを用いた。
ゲノム用gRNA:1μg/μl、ドナーベクター用gRNA:1μg/μl、ドナーベクター:2μg/μl、Cas9mRNA:2μg/μlのストック溶液1μlを4μlに希釈して、注入溶液(ゲノム用gRNA:250ng/μl、ドナーベクター用gRNA:250ng/μl、ドナーベクター:500ng/μl、Cas9mRNA:500ng/μl)を調製した。この注入溶液を、1倍、5倍、10倍、または100倍希釈して、実験に用いた。ノックインのネガティブコントロールとして、ドナーベクターのみ、注入のネガティブコントロールとして注入なし(No inj.)の実験も行った。
表2に産卵後7日目における結果を示す。表2において、「生(奇)」は全生存個体数を示し、正常発生した個体数を括弧外に、形態異常が見られた個体数を括弧内に示す。「光」は正常発生した個体のうち蛍光を発する個体数を、「死」は死んだ個体数を示す。正常発生した個体のうち蛍光が観察された個体は原液で28%、5倍希釈で33%、10倍希釈で8%、100倍希釈で6%であった。蛍光を発する代表的な個体を図11に示す。孵化した個体数を表3に示す。表3において、「生」は産卵後7日目の時点で正常発生した生存個体のうち孵化した個体数を、「光」は産卵後15日目の時点で蛍光を発した個体のうち孵化した個体数を示す。産卵後7日目に生存していた個体のうち孵化した割合は、原液を注入した場合57%であり、5倍希釈で60%、10倍希釈で65%、100倍希釈で87%であった。孵化後20日で個体の形態を観察した結果を表4に示す。原液を注入した個体群では、形態異常は観察されなかったが、5倍希釈では25%、10倍希釈では14%、100倍希釈では35%で形態異常が観察された。これらの結果から、10倍希釈および100倍希釈でも遺伝子改変可能であることがわかった。
図12に5倍希釈で得られた形態異常が観察された幼虫の写真を示す。注入なしの個体と比較して、腹部体節の一部が融合している状態が観察された。その後成虫まで育て、野生型の成虫と掛け合わせ、次世代の卵の蛍光を観察した。結果を表5に示す。1日ごとにわけて採卵を行い観察したところ、2日目までに採卵した卵では蛍光は観察されなかったが、3日目以降に採卵した卵では11%、13%で蛍光を発する卵が得られた。図13に5倍希釈から得られた次世代の蛍光を発する卵の写真を示す。胚反転が終了した卵で、胚の腹部において蛍光が観察された。この腹部における蛍光は、abd−Aの発現領域と一致していることから、ドナーベクターは標的ゲノム領域に組み込まれていると考えられる。




配列番号3:vermilion遺伝子中の標的配列
配列番号4:Oligo1
配列番号5:Oligo2
配列番号6:laccase2遺伝子中の標的配列
配列番号7:Oligo1
配列番号8:Oligo2
配列番号9:Ubx遺伝子中の標的配列
配列番号10:abd−A遺伝子中の標的配列
配列番号11:UbxOligo1
配列番号12:UbxOligo2
配列番号13:abd−AOligo1
配列番号14:abd−AOligo2
配列番号15:ドナーベクター
配列番号16:DsRed遺伝子中の標的配列
配列番号17:DsRedOligo1
配列番号18:DsRedOligo2
配列番号19:abd−A遺伝子中の標的配列
配列番号20:abd−A遺伝子中の標的配列
配列番号21:改変Oligo1
配列番号22:改変Oligo2
配列番号23:#1Oligo1
配列番号24:#1Oligo2
配列番号25:#2Oligo1
配列番号26:#2Oligo2

Claims (6)

  1. ノックアウト不完全変態昆虫を作製する方法であって、
    不完全変態昆虫の卵に、Cas9mRNAおよびゲノム用gRNAを注入すること;および
    前記卵から生じた昆虫から、所望の遺伝子改変を含む昆虫を選択すること
    を含み、Cas9mRNAの濃度が約100pg/μl−約100ng/μl、および/またはゲノム用gRNAの濃度が約100pg/μl−約100ng/μlである、方法。
  2. Cas9mRNAの濃度が約100pg/μl−約100ng/μlであり、ゲノム用gRNAの濃度が約100pg/μl−約100ng/μlである、請求項1に記載の方法。
  3. Cas9mRNAの濃度が約500pg/μl−約50ng/μlであり、ゲノム用gRNAの濃度が約500pg/μl−約50ng/μlである、請求項1に記載の方法。
  4. ノックイン不完全変態昆虫を作製する方法であって、
    不完全変態昆虫の卵に、
    約2ng/μl−約30ng/μlのゲノム用gRNA、
    約2ng/μl−約30ng/μlのドナーベクター用gRNA、
    約4ng/μl−約60ng/μlのドナーベクター、および
    約4ng/μl−約60ng/μlのCas9mRNA
    を注入すること;および
    前記卵から生じた昆虫から、所望の遺伝子改変を含む昆虫を選択すること
    を含む方法。
  5. 約2.5ng/μl−約25ng/μlのゲノム用gRNA、
    約2.5ng/μl−約25ng/μlのドナーベクター用gRNA、
    約5ng/μl−約50ng/μlのドナーベクター、および
    約5ng/μl−約50ng/μlのCas9mRNA
    を注入する、請求項4に記載の方法。
  6. ドナーベクターがレポーター遺伝子を含む、請求項5に記載の方法。
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