JP2019059638A - ガラス物品の加傷方法及び耐傷性評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ディスプレイの視認性低下の原因となる太陽光下で光り易い傷をガラスの表面に精度よく再現することができるので、この再現によりガラスの太陽光下で光り易い傷に対する耐性を適正に評価する。【解決手段】本発明に係るガラス物品の加傷方法は、平坦面2を有するガラス物品1に所定の傷4を形成するに際し、平坦面2上に粒状物12を散布した後、粒状物12を平坦面2に擦り付ける。【選択図】図1
Description
本発明は、ガラス物品の加傷方法及び耐傷性評価方法に関する。
周知のように、携帯電話やスマートフォン、タブレットPC、デジタルカメラ、PDA(携帯端末)などの携帯型電子機器は年々普及の一途を辿っている。これら携帯型電子機器のカバーガラスには、耐傷性に優れた化学強化ガラス(例えば、特許文献1を参照)の適用が検討され、また実際に適用され始めている。
ところで、この種の携帯型電子機器においては、その性質上、屋内だけでなく屋外でも使用されることが多い。そのため、太陽光下においては、カバーガラスの表面に生じた特定の傷が反射し、当該反射光が使用者に視認される(キラキラ光って見える)ことによって、ディスプレイの視認性が低下する問題がある。この特定の傷(以下、太陽光下で光り易い傷と称する。)は、カバーガラスの破損につながるような大きな傷ではないものの、ディスプレイの視認性を低下させる原因となることから、できる限りカバーガラスの表面に形成されないことが望ましい。
一方で、従来の強化ガラスはあくまでカバーガラスの破損を防止する観点から開発されたものであり、視認性低下の原因となるサイズないし形態の傷(すなわち太陽光下で光り易い傷)に対する耐性を考慮したものではなかった。また、ガラスの破損には直接影響を与えないような類の傷に対する耐性を考慮したことがない以上、太陽光下で光り易い傷に対するガラスの耐性を評価するための手法も確立されていなかった。
以上の事情に鑑み、本明細書では、ディスプレイの視認性低下の原因となる太陽光下で光り易い傷をガラスの表面に精度よく再現すること、及びこの再現によりガラスの太陽光下で光り易い傷に対する耐性を適正に評価することを、解決すべき技術課題とする。
前記課題の解決は、本発明に係るガラス物品の加傷方法により達成される。すなわち、この方法は、平坦面を有するガラス物品に所定の傷を形成するための方法であって、平坦面上に粒状物を散布した後、粒状物を平坦面に擦り付ける点をもって特徴付けられる。なお、ここでいう「擦り付ける」とは、粒状物を平坦面に押し付けた状態で当該粒状物を平坦面に沿って相対移動させることをいうものとする。
本発明者は、実際に生じた傷を観察した結果(線状をなす比較的浅い傷であった)、上述した太陽光下で光り易い傷が、主に使用者の衣服に付着した砂粒や塵などの粒状物が日常生活の中で生じ得る比較的小さな力を伴う動作によりカバーガラスの表面に擦れて生じたものであると推察した。本発明に係る加傷方法はこのような推論に基づいて成されたもので、加傷対象となるガラス物品の平坦面上に粒状物を散布した後、粒状物を平坦面に擦り付けることで、平坦面には擦り付けの程度に応じた傷が擦り付けた方向に沿って発生する。よって、例えば予め太陽光下で光り易い傷についてそのサイズや形態(幅、長さ、深さ、傷全体の形状など)を評価しておき、同等のサイズや形態となるように擦り付けの条件を設定することにより、太陽光下で光り易い傷を試験片(ガラス物品の平坦面)に擬似的に再現することができる。従って、常に上述のように設定した条件下で加傷試験を行うことによって、太陽光下で光り易い傷に対するガラスの耐性を客観的に評価することができる。このように視認性低下の原因となる傷の定量的な評価手法が確立されれば、この種の傷に対する耐性に優れたガラスの開発に役立てることも可能となる。
また、本発明に係るガラス物品の加傷方法においては、粒状物の上にシート状部材を載置した後、シート状部材を平坦面に沿って移動させることで粒状物を平坦面に擦り付けてもよい。
このように、粒状物の上に載置したシート状部材を移動させることで粒状物を平坦面に擦り付けるようにすれば、シート状部材を介して粒状物を平坦面に擦り付けることができる。これにより、粒状物とシート状部材以外の物体で平坦面を直接傷付けることなく粒状物を擦り付けることができる。また、シート状部材を介して粒状物を平坦面に擦り付けるようにすれば、比較的容易に粒状物を漏れなく所定の方向(シート状部材の移動方向)に移動させることができるので、太陽光下で光り易い傷を安定して再現することが可能となる。
また、本発明に係るガラス物品の加傷方法においては、シート状部材は織布であってもよい。また、この場合、織布は撚糸からなるものであってもよい。
シート状部材に織布を使用することで、粒状物を織布に適度に引っ掛けた状態で一律に移動させることができる。また、織布だと、粒状物が目の中に入り込み難いので、粒状物を平坦面に対して確実に押当てながら移動させることが可能となる。すなわち、不織布だと糸(あるいは繊維)同士の結び付きが弱いために、目が広がって粒状物が深く入り込むおそれもあるが、織布だと糸同士の結び付きが強い(織った状態が維持され易い)ので、粒状物が目の中に深く入り込む事態を可及的に回避して、擦り付け動作を安定的に再現することが可能となる。また、織布が撚糸からなる場合には、糸同士の結び付きがより強くなるので、粒状物が織布の目の中に深く入り込む事態をより高確率で回避することができる。
また、シート状部材を用いる場合、本発明に係るガラス物品の加傷方法においては、 平坦面に沿った所定の向きにシート状部材を一回移動させることで、粒状物を平坦面に擦り付けてもよい。
このようにシート状部材を移動させることにより、粒状物の擦り付けにより平坦面に生じる傷が交わることなく一方向に並んだ形態とすることができる。よって、太陽光下で光り易い傷をより安定的に再現することができる。また、傷が一方向に並んだ形態とすることで、当該傷の個数のカウントやサイズの計測もし易い。
また、本発明に係るガラス物品の加傷方法においては、シート状部材の上に錘を載置した状態で、シート状部材を平坦面に沿って移動させることで粒状物を平坦面に擦り付けてもよい。
このように、シート状部材の上に錘を載置した状態で、シート状部材を移動させることにより、粒状物を均等な荷重で平坦面に押し付けながら、これら粒状物を平坦面に擦り付けることができる。従って、傷のサイズないし形態のばらつきを抑えて、より安定した傷の再現を図ることが可能となる。
また、本発明に係るガラス物品の加傷方法においては、粒状物の平均粒径が1000μm以下であってもよい。
使用する粒状物の平均粒径を上述の範囲内に設定することによって、実際に再現を狙う太陽光下で光り易いサイズ、態様の傷を付け易くなる。従って、上記平均粒径の粒状物を使用することで、再現性の高い加傷試験が可能になる。
また、本発明に係るガラス物品の加傷方法においては、粒状物の比表面積が0.1m2/g以上でかつ10m2/g以下であってもよく、好ましくは0.3m2/g以上でかつ5m2/g以下であってもよい。
本発明者が行った実験結果によれば、粒状物の平均粒径、硬度、表面形状のうち最も傷のサイズないし形態に影響を及ぼすであろうと推察されるパラメータは表面形状であった。従い、粒状物の表面形状を例えば比表面積で表した場合、比表面積が0.1m2/g以上となるような粒状物を使用することにより、再現を狙うサイズないし形態の傷(太陽光下で光り易い傷)を効果的に形成することが可能となる。
また、本発明に係るガラス物品の加傷方法においては、粒状物を平坦面に0.0098N以上でかつ98N以下の荷重で押し付けた状態で、粒状物を平坦面に擦り付けてもよい。
粒状物を平坦面に押し付けるための荷重を上述の範囲内に設定することにより、再現を狙うサイズないし形態の傷を効果的に形成することが可能となる。特に、シート状部材の上に錘を載置して粒状物を所定の荷重で平坦面に押し付けた状態で、シート状部材を移動させることで、粒状物を平坦面に擦り付ける場合に、当該荷重を上記範囲に設定することにより、比較的容易に錘をずれなくシート状部材と一体的に移動させることができる。これにより、移動の間、常に均等な荷重を粒状物に付与した状態で粒状物を移動させることができるので、平坦面に生じた傷のサイズないし形態のばらつきをより一層抑えて、非常に安定した傷の再現を図ることが可能となる。
また、本発明に係るガラス物品の加傷方法においては、ガラス物品が、平坦面を含む表層部に圧縮応力層を有する強化板ガラスであってもよい。
本発明に係る加傷方法によれば、上述の如き強化板ガラスを加傷対象とすることで、より再現性の高い加傷試験を行うことが可能となる。
また、以上の説明に係るガラス物品の加傷方法によれば、ディスプレイの視認性低下の原因となる太陽光下で光り易い傷をガラスの表面に精度よく再現することができるので、この加傷方法をガラス物品の平坦面に施した後、平坦面に生じた傷の数及びサイズを測定することにより、ガラス物品の耐傷性、特に太陽光下で光り易い傷に対する耐性を適正に評価することが可能となる。
以上に述べたように、本発明によれば、ディスプレイの視認性低下の原因となる太陽光下で光り易い傷をガラスの表面に精度よく再現することができるので、この再現によりガラスの太陽光下で光り易い傷に対する耐性を適正に評価することが可能となる。
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図5を参照して説明する。なお、本実施形態では加傷対象となるガラス物品をガラス板とし、このガラス板の一方の主表面に所定の傷を形成する場合を例にとって、加傷方法の内容を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガラス物品の加傷装置10を示している。この加傷装置10は、ガラス物品としてのガラス板1を支持する支持台11と、支持台11で支持された状態のガラス板1上に供給される粒状物12と、粒状物12の上から載置されるシート状部材13と、シート状部材13の上に載置される錘14とを備える。
ここで、ガラス板1は、図2に示すように矩形状をなすもので、用途に応じて適当なガラス組成を有する。ガラス板1の第一及び第二の主表面2,3は共にその全域にわたって平坦な形状をなしている。本実施形態では、第一の主表面2が、加傷対象となる平坦面となっている(図1を参照)。
支持台11は、加傷対象となるガラス物品(ガラス板1)を支持するもので、本実施形態では、ガラス板1の下面となる第二の主表面3をその全面で支持している。また、ガラス板1の上面となる第一の主表面2が水平となるように支持台11の支持面15が構成されている。
粒状物12としては、例えば平均粒径が1000μm以下のものが使用される。材質については任意であり、例えば石英、長石などを主成分とする岩石(砂)の構成鉱物、アルミナ、ガラスなどのセラミック系粒状物が使用可能である。また、硬度についても任意であり、例えばビッカース硬さでいえば、300〜3000HV(100gf)のものが使用可能である。表面形状については、相対的に粗いほうがよい(言い換えると凹凸が多く又は/及び大きいほうがよい)。例えば表面形状の凹凸度合いを比表面積で表した場合、0.1m2/g以上でかつ10m2/g以下のものが粒状物12として好適に使用される。あるいは、表面形状の度合いをWadellの球形度ψで表した場合、ψ≦0.5を示すものが粒状物12として好適に使用される。ここで、Wadellの球形度ψは、以下の数式1で表される。
[数式1]
ψ=(実際の粒子と同じ体積を有する球の表面積)/(実際の粒子の表面積)
数式1は、以下の数式2の形に書き直すことができる。
[数式2]
ψ=(単位体積当たりの球の比表面積)/(実際の粒子の単位体積当たりの比表面積)
従って、Wadellの球形度ψは、単位質量当たりの比表面積をSw、密度をρ、平均粒子径をDとし、Sv(sphere)=(6/D)とした場合に、以下の数式3の形で表される。
[数式3]
ψ=Sv(sphere)/(Sw・ρ)=(6/D)/(Sw・ρ)
なお、ある体積を持った粒子は、通常、球形の形状を持った粒子の表面積が最も小さい値となる。よって、Wadellの球形度ψは、通常の粒子では1以下であり、粒子形状が球形になるほど1に近づいていく。
[数式1]
ψ=(実際の粒子と同じ体積を有する球の表面積)/(実際の粒子の表面積)
数式1は、以下の数式2の形に書き直すことができる。
[数式2]
ψ=(単位体積当たりの球の比表面積)/(実際の粒子の単位体積当たりの比表面積)
従って、Wadellの球形度ψは、単位質量当たりの比表面積をSw、密度をρ、平均粒子径をDとし、Sv(sphere)=(6/D)とした場合に、以下の数式3の形で表される。
[数式3]
ψ=Sv(sphere)/(Sw・ρ)=(6/D)/(Sw・ρ)
なお、ある体積を持った粒子は、通常、球形の形状を持った粒子の表面積が最も小さい値となる。よって、Wadellの球形度ψは、通常の粒子では1以下であり、粒子形状が球形になるほど1に近づいていく。
シート状部材13としては、例えば織布が好適に使用され、撚糸からなる織布がより好適に使用される。この場合、目の大きさは、使用する粒状物12の平均粒径に応じて適宜設定するのがよい。織布の好適な一例としてデニム生地を挙げることができる。上記構成のシート状部材13の大きさ(面積)は任意であるが、少なくとも散布した粒状物12全体を覆う大きさであることが望ましい(図1及び後述する図3を参照)。
錘14の材質、形状について特に制限はないが、例えば錘14をシート状部材13の上に載置した状態で、全ての粒状物12に対して錘14による荷重が作用している状態が好ましい。言い換えると、図1及び図3に示すように、第一の主表面2を平面視した状態で、錘14の中に全ての粒状物12が含まれるように、粒状物12の散布領域と錘14の大きさを設定するのがよい。
錘14の質量について、粒状物12を第一の主表面2に効果的に押し付けることができる限りにおいてその大きさは任意であるが、例えばシート状部材13と錘14をずれなく(かつできれば粒状物12も)一体的に移動させ得る観点から、0.001kg以上でかつ10kg以下に設定するのがよい。これは、錘14により粒状物12を第一の主表面2に押し付ける荷重で表すと、0.0098N以上でかつ98N以下となる。なお、確実に粒状物12を第一の主表面2に擦り付ける観点から、錘14の質量は、好ましくは0.01kg以上に設定され、より好ましくは0.05kg以上に設定される。
上記構成の加傷装置10を用いたガラス板1への加傷工程S1は、例えば以下のようにして行われる。
まず図2に示すように、支持台11上に載置されたガラス板1上(すなわち第一の主表面2上)に粒状物12を散布する(散布ステップS11)。なお、この際、好ましくは粒状物12をなす粒子同士がガラス板1の厚み方向(図1の上下方向)になるべく重なり合わないように、粒状物12を第一の主表面2上に散布する。言い換えると、なるべく薄く広げるように粒状物12を第一の主表面2上に散布する。
次に、散布された粒状物12の上からシート状部材13を載置する(第一載置ステップS12)。この際、第一の主表面2上に散布された粒状物12が全てシート状部材13で覆われるようにシート状部材13を載置する(図3を参照)。
続いて、シート状部材13の上に錘14を載置する(第二載置ステップS13)。この際、第一の主表面2上に散布された粒状物12が全て錘14の直下に位置するように、錘14を載置する(図3を参照)。
以上のように粒状物12、シート状部材13、及び錘14を配置した後、シート状部材13を第一の主表面2に沿った所定の向き(図4でいえば下方)に所定の距離だけ移動させることで、粒状物12を第一の主表面2に擦り付ける。本実施形態では、シート状部材13と共に錘14を所定の向きに移動させることで、粒状物12を第一の主表面2に擦り付ける。これにより、第一の主表面2には、粒状物12が擦り付けられた跡としての傷4が形成される(図5を参照)。なお、シート状部材13の移動距離について特に制限はなく、例えば0.3〜3mmに設定される。また、シート状部材13の移動手段は任意であり、実施者が手でシート状部材13の端部を把持して引っ張ってもよいし、機械が把持して引っ張ってもよい。
以上のようにして第一の主表面2上の所定領域に粒状物12の擦り付けによる傷4を形成した後、傷4の数及びサイズを測定する(測定工程S2)。そして、測定した傷4の数及びサイズの値に基づき、第一の主表面2を有するガラス板1の耐傷性、特に太陽光下で光り易い傷に対する耐性を評価する(耐傷性評価工程S3)。
このように、本発明に係るガラス物品の加傷方法によれば、加傷対象となるガラス板1の第一の主表面2上に粒状物12を散布した後、粒状物12を第一の主表面2に擦り付けることで、第一の主表面2には擦り付けの程度に応じた傷4が擦り付けた方向に沿って発生する。よって、例えば予め太陽光下で光り易い傷についてそのサイズや形態(一例として、幅寸法が0.75〜5μm、深さ寸法が25〜450nm)を評価しておき、同等のサイズや形態となるように擦り付けの条件を上述のように設定することにより、太陽光下で光り易い傷をガラス板1の第一の主表面2上に擬似的に再現することができる。従って、常に上述のように設定した条件下で加傷試験を行うことによって、太陽光下で光り易い傷に対するガラス板1の耐性を客観的に評価することができる。
また、本実施形態では、粒状物12の上にシート状部材13を載置した後、シート状部材13を第一の主表面2に沿って移動させることで粒状物12を第一の主表面2に擦り付けるようにし、かつシート状部材13として織布を用いた。シート状部材13に織布を使用することで、粒状物12を織布に適度に引っ掛けた状態で一律に移動させることができる(この場合、粒状物12がとり得る動きとして滑り又は転動が考えられる)。また、織布だと、粒状物12が織布の目の中に入り込み難いので、粒状物12を第一の主表面2に対して確実に押当てながら移動させる(すなわち擦り付ける)ことが可能となる。従って、擦り付け動作を安定的に再現することが可能となる。
また、本実施形態では、シート状部材13の上に錘14を載置した状態で、シート状部材13を第一の主表面2に沿って移動させるようにし、その際の第一の主表面2に対する粒状物12の押し付け荷重を0.0098N以上でかつ98N以下に設定すると共に、比表面積が0.1m2/g以上でかつ10m2/g以下の粒状物12を使用した。このように、粒状物12の表面形状並びに押し付け荷重を設定することによって、再現を狙うサイズないし形態の傷4を効果的に形成することが可能となる。また、シート状部材13と錘14をずれなく一体的に移動させながらも粒状物12を効果的に第一の主表面2に擦り付けることができる。これにより、移動の間、常に均等な荷重を粒状物12に付与した状態で粒状物12を移動させることができるので、第一の主表面2に生じた傷4のサイズないし形態のばらつきをより一層抑えて、非常に安定した傷4の再現を図ることが可能となる。
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明に係るガラス物品の加傷方法及び耐傷性評価方法は、上記実施形態には限定されることなく、本発明の範囲内で種々の形態を採ることが可能である。
例えばシート状部材13に関し、上記実施形態では織布を用いた場合を例示したが、もちろんこれに限定される必要はない。粒状物12を第一の主表面2に押し付けた状態でシート状部材13と同じ向きに移動させ得る限りにおいて、その材質、構造は任意である。
また、粒状物12の擦り付け態様に関し、上記実施形態では、粒状物12の上にシート状部材13を載置し、さらにシート状部材13の上に錘14を載置した状態で、シート状部材13を所定の向きに移動させるようにしたが、もちろんこれには限られない。例えば錘14の代わりに実施者の手でシート状部材13を第一の主表面2に押し付けた状態でシート状部材13をスライドさせることによって、粒状物12を第一の主表面2に擦り付けてもよい。あるいは、シート状部材13を介することなく粒状物12の上に直接錘14を載置して、機械等により粒状物12の押し付け荷重を制御しながら錘14を第一の主表面2に沿って移動させることによって、粒状物12を第一の主表面2に擦り付けてもよい。
また、加傷対象となるガラス物品に関し、上記実施形態ではガラス板1の第一の主表面2に本発明に係る加傷方法を適用する場合を例示したが、もちろんこれには限られない。平坦面を有するガラス物品であれば、任意の種類、構造のガラス物品に本発明を適用することが可能である。
以下、本発明の有用性を実証するための実験について説明する。
まず粒状物として、三種類の粒子を使用した。具体的には、アルミナ粒子A−210GL(実施例1)と、アルミナ粒子A−210GLを38μmメッシュで篩掛けして得た微細アルミナ粒子(実施例2)と、シリカ系砂粒子(実施例3)をそれぞれ使用した。各粒子の硬度、平均粒径、密度、及び表面形状の凹凸度合いを示す比表面積並びにWadellの球形度の値を表1に示す。また、アルミナ粒子A−210GLの全体SEM画像を図6に、要部拡大SEM画像を図7にそれぞれ示す。
シート状部材として、織布、具体的にはデニム生地を使用した。錘には100g分銅を使用した。また、加傷対象となるガラス物品には、質量%で、SiO2:47.2%、Al2O3:23.0%、Na2O:14.7%、MgO:1.5%、P2O5:13.2%、SnO2:0.1%含有するガラス組成を有するガラス板を使用した。
そして、上記ガラス板を支持台で支持した状態で、ガラス板の上に上記何れか一種類の粒状物を散布し、粒状物の上にデニム生地を載置し、さらにデニム生地の上に分銅を載置した。然る後、デニム生地の端部を把持して所定の速度(0.5mm/sec)でガラス板の表面に沿った一定の向きにデニム生地を引くことで、粒状物をガラス板の表面に擦り付けた。なお、この際のデニム生地の移動距離は10mmとした。
擦り付けが終了した後、分銅とデニム生地を除き、エアガンで粒状物をガラス板の表面から除去した。この状態で、ガラス板の表面に形成された傷のサイズ(幅寸法、深さ寸法)を測定した。図8(a)〜(c)に、実施例1〜3で得られた傷の要部拡大画像をそれぞれ示す。また、測定して得られた傷の幅寸法と深さ寸法の分布状態を代表して、実施例1の場合に得られた傷の幅寸法と深さ寸法の分布状態を示すグラフを図9に示す。
図8(a)〜(c)に示すように、本実施例(実施例1〜3)に係る粒状物を用いて加傷試験を行った場合、ガラス板の表面には、太陽光下で光り易い傷と同じように、線状をなす比較的浅い傷が形成されていることが分かった。また、これらの傷の幅寸法や深さ寸法の測定値の分布範囲(図9を参照)が、詳細は割愛するが、実際に太陽光下で光り易い傷の幅寸法や深さ寸法を測定して得た値の分布範囲(幅寸法が0.75〜5μm、深さ寸法が25〜450nm)とほぼ重複していることが分かった。以上より、本実施例(実施例1〜3)によれば、実際に太陽光下で光り易い傷をガラス板の表面に再現できていることが分かった。
1 ガラス板
2,3 主表面
4 傷
10 加傷装置
11 支持台
12 粒状物
13 シート状部材
14 錘
15 支持面
2,3 主表面
4 傷
10 加傷装置
11 支持台
12 粒状物
13 シート状部材
14 錘
15 支持面
Claims (11)
- 平坦面を有するガラス物品に所定の傷を形成するための方法であって、
前記平坦面上に粒状物を散布した後、前記粒状物を前記平坦面に擦り付ける、ガラス物品の加傷方法。 - 前記粒状物の上にシート状部材を載置した後、前記シート状部材を前記平坦面に沿って移動させることで前記粒状物を前記平坦面に擦り付ける請求項1に記載のガラス物品の加傷方法。
- 前記シート状部材は織布である請求項2に記載のガラス物品の加傷方法。
- 前記織布は織り糸からなる請求項3に記載のガラス物品の加傷方法。
- 前記平坦面に沿った所定の向きに前記シート状部材を一回移動させることで、前記粒状物を前記平坦面に擦り付ける請求項2〜4の何れか一項に記載のガラス物品の加傷方法。
- 前記シート状部材の上に錘を載置した状態で、前記シート状部材を前記平坦面に沿って移動させることで前記粒状物を前記平坦面に擦り付ける請求項2〜5の何れか一項に記載のガラス物品の加傷方法。
- 前記粒状物の平均粒径が1000μm以下である請求項1〜6の何れか一項に記載のガラス物品の加傷方法。
- 前記粒状物の比表面積が0.1m2/g以上でかつ10m2/g以下である請求項1〜7の何れか一項に記載のガラス物品の加傷方法。
- 前記粒状物を前記平坦面に0.0098N以上でかつ98N以下の荷重で押し付けた状態で、前記粒状物を平坦面に擦り付ける請求項1〜8の何れか一項に記載のガラス物品の加傷方法。
- 前記ガラス物品は、前記平坦面を含む表層部に圧縮応力層を有する強化板ガラスである請求項1〜9の何れか一項に記載のガラス物品の加傷方法。
- 請求項1〜10の何れか一項に記載の加傷方法を前記ガラス物品の前記平坦面に施した後、前記平坦面に生じた傷の数及びサイズを測定することで、前記ガラス物品の耐傷性を評価するガラス物品の耐傷性評価方法。
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CN112903501A (zh) * | 2021-02-03 | 2021-06-04 | 河源市龙鑫光学科技有限公司 | 一种超薄耐磨型触屏玻璃加工工艺 |
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WO2024018817A1 (ja) * | 2022-07-20 | 2024-01-25 | 日本電気硝子株式会社 | 保護シートの評価方法、ガラス板梱包体及びガラス板梱包体の製造方法 |
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