関連出願の相互参照
本出願は、2011年12月10日に出願された同時係属中の米国仮出願第61/569,245号の優先権を主張するものであり、この内容は、この全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本開示は、悪性黒色腫の診断、悪性黒色腫の転移の予後予測、遺伝子および/または染色体領域のコピー数の決定、in situハイブリダイゼーション、ならびに悪性黒色腫の診断およびこの転移の予後予測に有用な1つ以上のプローブのセットおよびキットに関する。
黒色腫の発生率および死亡率は、過去数十年間にわたって増加している(Balch et al.,J.Clin.Oncol.27(36):6199−6206(December 20,2009))。American Cancer Society(ACS)は、黒色腫を発症する生涯リスクが、およそ、白人では50人に1人、アフリカ系アメリカ人では1,000人に1人、およびラテンアメリカ系では200人に1人であると推定している。全体的には、黒色腫は、男性では6番目に多い癌であり、女性では7番目に多い癌である(American Cancer Society(ACS),Melanoma,www.cancer.org/docroot/CRI/content/CRI_2_4_1x_What_are_the_key_statistics_for_melanoma_50.asp?sitearea=(2009))。2009年には、68,720例の新たな浸潤性黒色腫症例、および8,650件の死亡が米国で報告されている(ACS(2009)、前掲)。
現在のところ、組織学が、黒色腫診断のゴールドスタンダードであると認識されているので、これが、臨床的挙動を予測するための現在のゴールドスタンダードである。組織学は、本質的には、臨床転帰を予測するための代理マーカーである。しかしながら、組織学はデフォルトで選択される方法であり、十分に検証されていなかった。多数の疫学的および臨床的研究が、組織学の限界を例証している。例えば、組織学的には悪性のように見える病変の大部分が良性的に振る舞うことが十分に認識されている;このような病変は、「緩慢性黒色腫」と称される。対照的に、浅いブレスローの深さまで皮膚に浸潤する黒色腫のごく一部は、非常に悪性的におよび侵襲的に振る舞って転移および死亡をもたらす。
センチネルリンパ節生検は、黒色腫転移病変についてリンパ節を評価するために、高い転移リスクを有する黒色腫患者で実施される。一般に、ブレスローの深さが約0.75mm超の黒色腫を有する患者に生検を行う。このような患者は、高い有糸分裂速度、潰瘍形成、またはクラークレベルIVもしくはVなどの組織学的因子によれば予後不良である。センチネルリンパ節が黒色腫に関与している場合、患者が転移疾患を発症する可能性は80から90%である。従って、センチネルリンパ節の状態は、最強の黒色腫予後指標である。センチネルリンパ節が黒色腫に関与していない患者は、センチネルリンパ節が黒色腫に関与している患者と比較して有意に予後良好な患者のコホートであると判断される。
黒色腫癌関連の死亡数は増加し続けており、進行性黒色腫の処置は惨憺たる結果を示し続けているが、過去10年で幾つかのブレイクスルーがあった。これらのブレイクスルーとしては、黒色腫を、予後と相関する分子サブタイプに層別化すること(Viros et al.,PLoS Med 5(6):el20(June 3,2008))、および特定の活性化癌遺伝子経路に合わせることができる標的療法(Hodi et al.,J.Clin.Oncol.26(12):2046−2051(April 20,2008);およびJiang et al.,Clin.Cancer Res.14(23):7726−7732(December 1,2008))が挙げられる。例えば、BRAF阻害剤またはCKIT阻害剤、例えば、イマチニブメシレートなどの特定の標的阻害剤は、進行性黒色腫を有する患者を処置するのに使用されて成功している(Hodi et al.(2008)、前掲;およびLutzky et al.,Pigment Cell Melanoma Res.21(4):492−493(August 2008))。従って、黒色腫における特定の癌遺伝子経路を同定することは、黒色腫患者を予後的に層別化するのに役立ち得、治療結果を予測するのに役立ち得る。
体細胞突然変異に加えて、特定の癌遺伝子の増加または特定の腫瘍抑制遺伝子の減少によるコピー数異常が、黒色腫に非常に特徴的である。遺伝子コピー数異常のパターンに基づいて、悪性黒色腫をゲノム分類することが提案されている;このような分類は、報告によれば、処置のための合理的な患者選択を可能にする(米国特許出願公開第2010/0145897号明細書および国際公開第2010/051319号)。比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)研究は、黒色腫の95%が染色体コピー数異常を有することを示している(Bastian et al.,Cancer Res.58(10):2170−2175(May 15,1998))。頻繁な染色体コピー数の減少としては、9p(82%)、10q(63%)、6q(28%)および8p(22%)における欠失が挙げられる。頻繁なコピー数の増加は、とりわけ、7q(50%)、8q(34%)、6p(28%)および1q(25%)で起こり得る(Bastian et al.(1998)、前掲)。末端部の黒色腫は、報告によれば、染色体5p、11q、12qおよび15が関与する有意により多くの異常ならびに集中的な遺伝子増幅を有する(Bastian et al.,Amer.J.Path.163:1765−1770(2003))。染色体6p25、6セントロメア、6q23および11q13を標的とする4個の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)プローブの組み合わせからのシグナル数を使用するアルゴリズムは、86.7%の感度および95.4%の特異性で、黒色腫と母斑との間の最高の診断判別を提供する(Gerami et al.,Am.J.Surgical Path.33:1146−1156(2009));Gerami et al.,Arch.Dermatol.144(9):1235−1236(September 2008)およびPouryazdanparast et al.,Amer.J.Dermatopathol.31(4):402−403(June 2009)も参照のこと。)。野生型BRAFまたはN−RASを有する黒色腫は、報告によれば、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)およびサイクリンD1(CCND1)の遺伝子コピー数が頻繁に増加している(Curtin et al.,New England J.of Med.353:2135−2147(November 17,2005))。スピッツ母斑の一部のサブセットは、報告によれば、染色体11p短腕の個別増加を示すが、これは黒色腫では観察されていない(Bastian,Recent Results Cancer Res.160:92−99(2002);およびBastian et al.(2003)、前掲)。しかしながら、コピー数の増加は黒色腫診断と関連しているが、これまでは予後との関連性はなかった。遺伝子異常を黒色腫の予後と関連付ける能力は、従来の治療による患者の予後予測および管理を改善するのに役立ち、治療標的の同定に役立つであろう。
特定の癌遺伝子のコピー数の増加は、幾つかの癌では予後に関連している。例えば、Her−2/neuの増幅は、乳癌では予後不良に関連しており(Tovey et al.,Br.J.Cancer 100(5):680−683(March 10,2009))、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子のコピー数の上昇は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤で処置した非小細胞肺癌の予想される反応および生存利益に非常に関連している(Dahabreh et al.,Clin.Cancer Res.16(1):291−303(January 1,2010))。
本開示は、患者における、非定型スピッツ腫瘍を含む悪性黒色腫を予後予測するための方法を提供しようとするものである。このおよび他の目的および利点ならびにさらなる特徴は、本明細書で提供される詳細な説明から明らかになるであろう。
上記に加えて、本開示は、患者における悪性黒色腫を診断するための方法を提供しようとするものである。病理学者の間では、良性または悪性のいずれかに明確に分類することが困難であり得る幾つかのサブセットのメラニン細胞腫瘍が存在することが広く受け入れられている(Barnhill et al.,Hum.Pathol.30(5):513−520(1999);Corona et al.,J.Clin.Oncol.14(4):1218−1223(1996);およびMcGinnis et al.,Arch.Dermatol.138(5):617−621(2002))。多くの場合、鑑別診断は、スピッツ様の形態的特徴を有する黒色腫などの致死率が高い悪性病変とは対照的に、スピッツ母斑などの全く良性な病変を含んでいる。黒色腫の新たな生物学的療法の開発を考えると、黒色腫と良性病変を区別することができることが望ましい。鑑別診断のさらなる利点としては、誤診断から生じる過度の精神的負担の回避、センチネルリンパ節生検の有無にかかわらない適切な外科的管理の決定、および適切な全身療法の決定が挙げられる。
従来の顕微鏡検査に加えて、分子診断技術が新たに登場し、診断補助として有望である。6p25(RREB1)、6q23(MYB)、Cep6(セントロメア6)および11q13(CCND1)を標的とする4個のプローブの蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイは、86.7%の感度および95.4%の特異性で、明らかな黒色腫と良性母斑を組織学的に区別することが示されている(Gerami et al.,Am.J.Surg.Pathol.33(8):1146−56(2009))。このプローブセットおよび所定の基準を、経過観察が公知の曖昧なメラニン細胞性新生物のセットに適用した場合、転移群(6/6が陽性)対非転移群(6/21が陽性)では、結果に有意差があった。転移群対非転移群における陽性結果の可能性の差を示すp値は、非常に有意、即ち、フィッシャーの直接確率検定によれば.003未満であった。上記プローブセットはまた、母斑性黒色腫と有糸分裂が活発な母斑(Gerami et al.,Am.J.Surg.Pathol.33(12):1783−1788(2009))、青色母斑様転移と類上皮青色母斑(Pouryazdanparast et al.,Am.J.Surg.Pathol.33(9):1396−400(2009))および結膜黒色腫と結膜母斑(Busam et al.,J.Cutan.Pathol.37(2):196−203(2010))を区別するのに有用であった。しかしながら、一連のスピッツ様黒色腫の個別分析により、このサブセットの病変では感度が70%であることが示された(Gammon et al.,Am.J.Surg.Pathol.,「Enhanced Detection of Spitzoid Melanomas Using Fluorescence In Situ Hybridization With 9p21 as an Adjunctive Probe」(Epub ahead of print,October 10,2011))。従って、上記プローブセットの開発は、メラニン細胞性新生物の分子診断についての大きな進歩であったが、特にスピッツ様黒色腫に対するアッセイ感度については改善余地がある。上記プローブセットは、比較的高い特異性であったが、スピッツ様新生物における四倍体細胞の存在が、時として、FISH結果の解釈が困難な原因となり得る(Isaac et al.,Am.J.Dermatopathol.32(2):144−148(2010))。患者における悪性黒色腫を診断するための方法についての他の目的および利点、ならびにさらなる特徴は、本明細書で提供される詳細な説明から明らかになるであろう。
米国特許出願公開第2010/0145897号明細書
国際公開第2010/051319号
Balch et al.,J.Clin.Oncol.27(36):6199−6206(December 20,2009)
American Cancer Society(ACS),Melanoma,www.cancer.org/docroot/CRI/content/CRI_2_4_1x_What_are_the_key_statistics_for_melanoma_50.asp?sitearea=(2009)
Viros et al.,PLoS Med 5(6):el20(June 3,2008)
Hodi et al.,J.Clin.Oncol.26(12):2046−2051(April 20,2008)
Jiang et al.,Clin.Cancer Res.14(23):7726−7732(December 1,2008)
Lutzky et al.,Pigment Cell Melanoma Res.21(4):492−493(August 2008)
Bastian et al.,Cancer Res.58(10):2170−2175(May 15,1998)
Bastian et al.,Amer.J.Path.163:1765−1770(2003)
Gerami et al.,Am.J.Surgical Path.33:1146−1156(2009))
Gerami et al.,Arch.Dermatol.144(9):1235−1236(September 2008)
Pouryazdanparast et al.,Amer.J.Dermatopathol.31(4):402−403(June 2009)
Curtin et al.,New England J.of Med.353:2135−2147(November 17,2005)
Bastian,Recent Results Cancer Res.160:92−99(2002)
Tovey et al.,Br.J.Cancer 100(5):680−683(March 10,2009)
Dahabreh et al.,Clin.Cancer Res.16(1):291−303(January 1,2010)
Barnhill et al.,Hum.Pathol.30(5):513−520(1999)
Corona et al.,J.Clin.Oncol.14(4):1218−1223(1996)
McGinnis et al.,Arch.Dermatol.138(5):617−621(2002)
Gerami et al.,Am.J.Surg.Pathol.33(8):1146−56(2009)
Gerami et al.,Am.J.Surg.Pathol.33(12):1783−1788(2009)
Pouryazdanparast et al.,Am.J.Surg.Pathol.33(9):1396−400(2009)
Busam et al.,J.Cutan.Pathol.37(2):196−203(2010)
Gammon et al.,Am.J.Surg.Pathol.,「Enhanced Detection of Spitzoid Melanomas Using Fluorescence In Situ Hybridization With 9p21 as an Adjunctive Probe」(Epub ahead of print,October 10,2011)
Isaac et al.,Am.J.Dermatopathol.32(2):144−148(2010)
患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法が提供される。前記方法は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料における(i)(a)および/もしくは(b)、(ii)(c)および/もしくは(d)、(iii)(a)および/もしくは(d)、または(iv)(b)および/もしくは(c)を決定することを含み、
(a)は、CCND1/対照セントロメアのコピー数比またはCCND1のコピー数であり、CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.55超/細胞であるか、またはCCND1のコピー数が約2.81超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(b)は、MYCのコピー数であり、MYCのコピー数が約2.48超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(c)は、CCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合、またはCCND1が増加している細胞の割合であり、CCND1が増加している細胞の割合が約30%以上であるか、またはCCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合が約54%以上である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(d)は、MYCが増加している細胞の割合であり、MYCが増加している細胞の割合が約20%超である場合、転移が起こる可能性があることを示す。
ブレスローの深さが約1mm未満の黒色腫を有する患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法も提供される。前記方法は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料におけるCCND1/対照セントロメアのコピー数比およびMYCのコピー数を決定することを含む。CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.55超/細胞であるか、またはMYCのコピー数が約2.48超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示す。
ブレスローの深さが2mm以下の黒色腫を有する患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法も提供される。前記方法は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料におけるCCND1/対照セントロメアのコピー数比およびMYCのコピー数を決定することを含む。CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.38超/細胞であり、およびMYCのコピー数が約2.36超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示す。
ブレスローの深さが1mm以上約4mm未満の黒色腫を有する患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法がさらに提供される。前記方法は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料におけるCCND1/対照セントロメアのコピー数比を決定することを含む。CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.55超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示す。前記方法は、前記患者におけるMYCのコピー数を検出することをさらに含むことができ、MYCのコピー数が約2.60超/細胞であることもまた、転移が起こる可能性があることを示す。
ブレスローの深さが約2.0mm超の黒色腫を有する患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法もさらに提供される。前記方法は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料におけるCCND1/対照セントロメアのコピー数比またはMYCのコピー数を決定することを含む。CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.55超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示す。MYCのコピー数が約2.22超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示す。
上記方法は、in situハイブリダイゼーションによって、前記CCND1/対照セントロメアのコピー数比および/または前記MYCのコピー数を決定することを含むことができる。前記in situハイブリダイゼーションは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)であり得る。
また、上記を考慮して、(a)患者における悪性黒色腫の転移の予後予測を可能にする1つ以上のプローブのセットと、(b)前記患者における悪性黒色腫の転移を予後予測するための説明書とを含むキットが提供される。前記1つ以上のプローブのセットは、(i’)CCND1に対するプローブ単独、もしくはこれを、対照セントロメアに対するプローブとさらに組み合わせたもの、および/または(ii’)MYCに対するプローブを含む。前記説明書は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料における(i)(a)および/もしくは(b)、(ii)(c)および/もしくは(d)、(iii)(a)および/もしくは(d)、または(iv)(b)および/もしくは(c)を決定することを含むことができ、
(a)は、CCND1/対照セントロメアのコピー数比またはCCND1のコピー数であり、CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.55超/細胞であるか、またはCCND1のコピー数が約2.81超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(b)は、MYCのコピー数であり、MYCのコピー数が約2.48超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(c)は、CCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合、またはCCND1が増加している細胞の割合であり、CCND1が増加している細胞の割合が約30%以上であるか、またはCCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合が約54%以上である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(d)は、MYCが増加している細胞の割合であり、MYCが増加している細胞の割合が約20%超である場合、転移が起こる可能性があることを示す。
患者における悪性黒色腫を診断する方法も提供される。前記方法は、前記患者から得られた有核細胞を含む診断試料中の幾つかの核におけるRREB1のコピー数、MYCのコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCのコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、前記試料が悪性黒色腫を含むことを示す。前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCおよびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が前記核の27%以上で検出される場合、前記試料は悪性黒色腫を含む。または、前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCおよびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が8個以上の核で検出される場合、前記試料は悪性黒色腫を含む。
悪性黒色腫の診断および予後予測を可能にするプローブのセットがさらに提供される。前記セットは、RREB1に対するプローブ、MYCに対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含む。
キットもさらに提供される。前記キットは、(a)患者における悪性黒色腫の診断および予後予測を可能にするプローブのセットであって、RREB1に対するプローブ、MYCに対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含むプローブのセットと、(b)前記患者における悪性黒色腫を診断するための説明書であって、前記患者から得られた診断試料におけるRREB1のコピー数、MYCのコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCのコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、前記患者が悪性黒色腫を有することを示す説明書、および/または前記患者における悪性黒色腫の転移を予後予測するための説明書であって、前記患者から得られた悪性黒色腫試料におけるRREB1のコピー数、MYCのコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCのコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、転移が起こる可能性があることを示す説明書とを含む。
患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法も提供される。前記方法は、前記患者から得られた有核細胞を含む試料中の幾つかの核におけるRREB1のコピー数、MYCまたはZNF217のコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCまたはZNF217のコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、転移が起こる可能性があることを示す。前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCまたはZNF217、およびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が前記核の27%以上で検出される場合、転移が起こる可能性がある。または、前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCまたはZNF217、およびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が8個以上の核で検出される場合、転移が起こる可能性がある。
悪性黒色腫の転移の予後予測を可能にするプローブのセットも提供される。前記セットは、RREB1に対するプローブ、MYCまたはZNF217に対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含む。
キットも提供される。前記キットは、(a)患者における悪性黒色腫の転移の予後予測を可能にするプローブのセットであって、RREB1に対するプローブ、MYCまたはZNF217に対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含むプローブのセットと、(b)前記患者における悪性黒色腫を予後予測するための説明書であって、前記患者から得られた試料におけるRREB1のコピー数、MYCまたはZNF217のコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCまたはZNF217のコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、転移が起こる可能性があることを示す説明書とを含む。
加えて、患者における非定型スピッツ腫瘍の転移を予後予測する方法が提供される。前記方法は、前記患者由来の腫瘍試料におけるRREB1、CCND1および/またはCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、RREB1のコピー数が増加しているか、またはCCND1のコピー数が増加しているか、またはCDKN2Aがホモ接合性欠失である場合、悪性の転移が起こる可能性があることを示し、およびCDKN2Aがホモ接合性欠失である場合、さらにより悪性の転移が起こる可能性があることを示す。
これに関して、非定型スピッツ腫瘍の転移の予後予測を可能にするプローブのセットがさらに提供される。前記セットは、RREB1に対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含む。
キットもさらに提供される。前記キットは、(a)患者における非定型スピッツ腫瘍の転移の予後予測を可能にするプローブのセットであって、RREB1に対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含むプローブのセットと、(b)前記患者における非定型スピッツ腫瘍の転移を予後予測するための説明書であって、前記患者由来の腫瘍試料におけるRREB1、CCND1および/またはCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、RREB1のコピー数が増加しているか、またはCCND1のコピー数が増加しているか、またはCDKN2Aがホモ接合性欠失である場合、悪性の転移が起こる可能性があることを示し、およびCDKN2Aがホモ接合性欠失である場合、さらにより悪性の転移が起こる可能性があることを示す説明書とを含む。
図1aは、CCND1/第6染色体、CCND1/細胞およびMYC/細胞の感度対1−特異性のグラフである。
図1bは、CCND1/第6染色体が1.55以下であるもの、患者全員およびCCND1/第6染色体が1.55超であるものについての、累積無転移生存確率対時間(月)のグラフである。
図1cは、MYC/細胞が2.48以下であるもの、患者全員およびMYC/細胞が2.48超であるものについての、累積無転移生存確率対時間(月)のグラフである。
図1dは、CCND1/第6染色体が1.55以下でありMYC/細胞が2.48以下であるもの、患者全員、ならびにCCND1/第6染色体が1.55超またはMYC/細胞が2.48超であるものについての、累積無転移生存確率対時間(月)のグラフである。
図2aは、CCND1/第6染色体が1.55以下であるもの、患者全員およびCCND1/第6染色体が1.55超であるものについての、累積生存確率対時間(月)のグラフである。
図2bは、MYC/細胞が2.48以下であるもの、患者全員およびMYC/細胞が2.48超であるものについての、累積生存確率対時間(月)のグラフである。
図3aは、ブレスローの深さが1.0mm以下でありCCND1/第6染色体が1.55以下であるもの、すべてのブレスローの深さが1.0mm以下であるもの、ブレスローの深さが1.0mm超でありCCND1/第6染色体が1.55以下であるもの、すべてのブレスローの深さが1.0mm超であるもの、すべてのブレスローの深さが1.0mm超でありCCND1/第6染色体が1.55超であるもの、ならびにブレスローの深さが1.0mm以下でありCCND1/第6染色体が1.55超であるものについての、累積無転移生存確率対時間(月)のグラフである。
図3bは、ブレスローの深さが1.0mm以下でありMYC/細胞が2.48以下であるもの、すべてのブレスローの深さが1.0mm以下であるもの、ブレスローの深さが1.0mm超でありMYC/細胞が2.48以下であるもの、すべてのブレスローの深さが1.0mm超であるもの、すべてのブレスローの深さが1.0mm超でありMYC/細胞が2.48超であるもの、ならびにブレスローの深さが1.0mm以下でありMYC/細胞が2.48超であるものについての、累積無転移生存確率対時間(月)のグラフである。
図3cは、ブレスローの深さが2.0mm以下でありCCND1/第6染色体が1.55以下であるもの、すべてのブレスローの深さが2.0mm以下であるもの、ブレスローの深さが2.0mm超でありCCND1/第6染色体が1.55以下であるもの、すべてのブレスローの深さが2.0mm超であるもの、ブレスローの深さが2.0mm以下でありCCND1/第6染色体が1.55超であるもの、ならびにすべてのブレスローの深さが2.0mm超でありCCND1/第6染色体が1.55超であるものについての、累積無転移生存確率対時間(月)のグラフである。
図3dは、ブレスローの深さが2.0mm以下でありMYC/細胞が2.48以下であるもの、すべてのブレスローの深さが2.0mm以下であるもの、ブレスローの深さが2.0mm以下でありMYC/細胞が2.48超であるもの、すべてのブレスローの深さが2.0mm超でありMYC/細胞が2.48以下であるもの、すべてのブレスローの深さが2.0mm超であるもの、ならびにブレスローの深さが2.0mm超でありMYC/細胞が2.48超であるものについての、累積無転移生存確率対時間(月)のグラフである。
図4aは、ブレスローの深さが1から4mmでありCCND1/第6染色体(cen6)が1.55以下であるもの、すべてのブレスローの深さが1から4mmであるもの、ならびにブレスローの深さが1から4mmでありCCND1/第6染色体(cen6)が1.55超であるものについての、累積無転移生存確率対時間(月(mo))のグラフである。
図4bは、CCND1/第6染色体(cen6)が1.55以下であるもの、患者全員およびCCND1/第6染色体(cen6)が1.55超であるものについての、累積生存確率対時間(月(mo))のグラフである。
図5は、検体カテゴリの平均対パラメータの棒グラフであり、プローブCDKN2A、MYC、CEP9、ZNF217、Cox2、BRAFおよびCEP10のそれぞれについて計算した代表的なパラメータについて、黒色腫群および母斑群における染色体異常(増加または減少)を有する細胞の割合を示す。
図6は、CDKN2Aの%ホモ接合性欠失(△)、CCND1の%増加(○)、RREB1の%増加(□)、MYCの%増加(◇)およびすべてのプローブ(●)の感度対1−特異性のグラフである。
図7は、CCND1/CEP6(◆)、CCND1/CEP6の%増加(■)、CCND1の%増加(▲)、CCND1/細胞(×)、MYC/細胞(*)およびMYCの%増加(●)の感度対1−特異性のグラフである。
図8は、CDKN2Aの%ホモ接合性減少、RREB1の%増加、MYCの%増加およびCCND1の%増加の感度対1−特異性のグラフである。
詳細な説明
本開示は、(i)患者から得られた悪性黒色腫試料におけるCCND1/対照セントロメアのコピー数比、もしくはCCND1のコピー数および/もしくはMYCのコピー数の決定、または(ii)CCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合、もしくはCCND1が増加している細胞の割合および/もしくはMYCが増加している細胞の割合の決定に基づいて、患者における悪性黒色腫の予後予測を行うことができるという驚くべきおよび予想外の発見に基づくものである。(i)CCND1/対照セントロメアのコピー数比を所定のカットオフと比較し、および/もしくはMYCのコピー数を所定のカットオフと比較し、または(ii)CCND1が増加している細胞の割合を所定のカットオフと比較し、および/もしくはMYCが増加している細胞の割合を所定のカットオフと比較することによって、患者において転移が起こる可能性を予測することができる。上記を考慮して、本開示は、患者における悪性黒色腫の転移などの疾患進行を予後予測する方法、悪性黒色腫の転移などの疾患進行の予後予測を可能にする1つ以上のプローブのセット、および1つ以上のこのようなプローブのセットと、患者における悪性黒色腫の転移などの疾患進行を予後予測するための説明書とを含むキットを提供する。
本開示はまた、RREB1、MYCのコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数の決定に基づいて、患者における悪性黒色腫の診断を行うことができるという驚くべきおよび予想外の発見に基づくものである。上記を考慮して、本開示は、患者における悪性黒色腫を診断する方法、悪性黒色腫の診断を可能にするプローブのセット、およびこのようなプローブのセットと、患者における黒色腫を診断するための説明書とを含むキットを提供する。前記方法は、組織学的に曖昧なメラニン細胞腫瘍をより良く分類するために、および遠隔転移または患者の死亡をもたらす可能性が最も高い組織学的に曖昧なメラニン細胞腫瘍をより選択的に同定するために使用することができる。これに関して、前記方法はまた、悪性黒色腫の転移などの疾患進行を予測するのに使用することができる。従って、本開示はまた、RREB1、MYCまたはZNF217のコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数の決定に基づいて、患者における悪性黒色腫の転移の予後予測を行うことができるという発見に基づくものである。これに関して、本開示は、患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法、悪性黒色腫の転移の予後予測を可能にするプローブのセット、およびこのようなプローブのセットと、悪性黒色腫の転移を予後予測するための説明書とを含むキットを提供する。
以下の用語は、本開示に関するものである:
「約」は、表示されている値からおよそ+/−10%の変動を指す。このような変動は、常に、これについて具体的な言及がなされているか否かにかかわらず、本明細書で提供される任意の所定の値に含まれると理解するべきである。
「ブレスローの深さ」は、3つの最も重要な黒色腫予後因子の1つであると考えられている。他の因子は、T期および潰瘍形成である。ブレスローの深さは、皮膚に対して直角に接眼マイクロメーターを使用することによって決定される。表皮顆粒層から、腫瘍細胞が皮膚に浸潤した最深浸潤点までの深さを直接測定する。
「癌の診断」は、一般に、癌の種類の同定を指す。診断は、本質的にディファレンシャルなもの、例えば、組織学的に曖昧なメラニン細胞腫瘍を区別すること、例えば、母斑性黒色腫と有糸分裂が活発な母斑を区別すること、青色母斑様転移と類上皮青色母斑を区別すること、または結膜黒色腫と結膜母斑を区別することであり得る。
「癌の予後予測」は、一般に、癌の予想される経過(例えば、疾患進行)または転帰(例えば、転移または死亡)の予想または予測を指す。本明細書で使用される場合、癌の予後予測は、悪性黒色腫の転移および死亡を含む黒色腫の進行の予想または予測を含む。
「染色体計数プローブ(Chromosome enumeration probe)(CEP)」は、細胞中の特定の染色体の数を計数することを可能にする任意のプローブである。染色体計数プローブは、典型的には、特定の染色体のセントロメア付近の(「ペリセントロメアの」と称される。)または前記セントロメアの領域、典型的には反復DNA配列(例えば、αサテライトDNA)を認識して結合する。染色体のセントロメアは、典型的には、細胞分裂時の忠実な分離に必要であるので、この染色体を表すと考えられる。特定の染色体領域の欠失または増幅は、特定の遺伝子座に対応するシグナル数(コピー数)をセントロメアに対応するシグナル数と比較することによって、これが通常存在する染色体全体の減少または増加(異数染色体性(aneusomy))と区別することができる。この比較を行う方法の1つは、遺伝子座を表すシグナル数を、セントロメアを表すシグナル数で割ることである。1未満の比は、遺伝子座の相対的な減少または欠失を示し、1超の比は、遺伝子座の相対的な増加または増幅を示す。同様に、染色体内のアンバランスな増加または減少を示すために、同じ染色体上、例えば、染色体の2つの異なる腕上の2つの異なる遺伝子座間で比較を行うことができる。染色体に対するセントロメアプローブの代わりに、当業者であれば、染色体全体の減少または増加を概算するために、染色体腕プローブを代替的に使用してもよいことを認識するであろう。しかしながら、このようなプローブのシグナルの減少は、染色体全体の減少を常に示し得ないので、このようなプローブは染色体の計数ほど正確ではない。染色体計数プローブの例としては、Abbott Molecular,Inc.,Des Plaines,IL(以前は、Vysis,Inc.,Downers Grove,IL)から市販されているCEP(登録商標)プローブが挙げられる。
「クラークレベル」は、黒色腫に関与する皮膚層の尺度である。例えば、レベルIは、表皮を含む。レベルIIは、表皮および真皮上層を含む。レベルIIIは、表皮、真皮上層および真皮深部を含む。レベルIVは、表皮、真皮上層、真皮深部および皮下組織を含む。
「コピー数」は、単一遺伝子座、1つ以上の遺伝子座、またはゲノム全体にかかわらず、DNAの測定である。2の「コピー数」は、ヒトでは(性染色体を除いて二倍性であるので)「野生型」である。ヒトにおける2以外の「コピー数」(性染色体を除く)は、野生型から逸脱している。このような逸脱としては、コピー数の増幅、即ち増加、コピー数の欠失、即ち減少、およびさらにはコピー数の欠如が挙げられる。
「固定剤」としては、限定されないが、アルコール溶液、酸性アセトン溶液、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド)、メタノール/酢酸およびホルマリンが挙げられる。
「標識された」、「検出可能な標識で標識された」および「検出可能に標識された」は、本明細書では、実体(例えば、プローブ)を検出することができることを示すのに互換的に使用される。「標識」および「検出可能な標識」は、実体を検出可能にするために実体に結合される部分、例えば、標的配列への結合の際にプローブを検出可能にするためにプローブに結合される部分を意味する。部分これ自体は検出可能ではなくてもよいが、さらに別の部分と反応すると検出可能になり得る。「検出可能に標識された」という用語の使用は、このような標識を包含することを意図する。検出可能な標識は、この標識が測定可能なシグナルを発生し、この強度が結合実体の量に比例するように選択することができる。核酸などの分子を標識および/または検出するための多種多様なシステム、例えば、プローブが周知である。標識された核酸は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、化学的または他の手段によって直接的または間接的に検出可能な標識を組み込むか、またはこれをコンジュゲートすることによって調製することができる。適切な検出可能な標識としては、放射性同位体、フルオロフォア、発色団、化学発光剤、微粒子、酵素、磁気粒子、高電子密度粒子、質量標識、スピン標識、ハプテンなどが挙げられる。本明細書では、フルオロフォアおよび化学発光剤が好ましい。
「遺伝子座特異的プローブ」は、染色体上の領域の特定の遺伝子座、例えば、転移で増加/減少すると決定された遺伝子座に選択的に結合するプローブを指す。プローブは、エクソン、イントロンおよび/または調節配列、例えば、プロモーター配列などを含むコード領域もしくは非コード領域またはこれら両方を標的とすることができる。
「核酸試料」は、プローブとのハイブリダイゼーションに適切な形態の核酸を含む試料、例えば、核またはこのような核から単離もしくは精製された核酸を含む試料を指す。核酸試料は、全部または一部(例えば、特定の染色体)のゲノムDNA、全部または一部のmRNA(例えば、特定の染色体または遺伝子)、または選択された配列を含んでもよい。凝縮染色体(例えば、間期または中期に存在するもの)は、FISHなどのin situハイブリダイゼーションの標的として使用するのに適切である。
「増加割合」および「%増加」は、一般に、特定遺伝子のコピー数が増加している細胞の割合を指すのに対して、「減少割合」および「%減少」は、一般に、特定遺伝子のコピー数が減少している細胞の割合を指す。例えば、正常細胞または野生型細胞は、各遺伝子の2コピーを含有する。増加/減少割合は、以下のように決定することができる:
(遺伝子のコピー数が増加または減少している細胞の数/細胞の総数)×100=%増加/減少
「所定のカットオフ」および「所定のレベル」は、一般に、種々の臨床パラメータ(例えば、疾患の重症度、進行/非進行/改善など)と既にリンクされているかまたはこれらに関連付けられている所定のカットオフ/レベルに対してアッセイの結果を比較することによって、診断/予後/治療有効性の結果を評価するのに使用されるカットオフ値を指す。本開示は、悪性黒色腫を有する患者における転移を予後予測するための例示的な所定のレベルを提供する。カットオフ値はアッセイの様式により変化し得るが、本明細書に記載される相関関係は、依然として一般に適用可能なはずである。
本開示との関連では、「プローブ」は、選択的なハイブリダイゼーションを可能にするか、またはこれを促進する条件下で、標的配列(例えば、CCND1遺伝子、MYC遺伝子、または第6染色体のセントロメア、例えば、第6染色体のセントロメアに位置するαサテライトDNA)の少なくとも一部に選択的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである。一般に、プローブは、DNAのコード鎖またはセンス(+)鎖に相補的でもよいし、またはDNAの非コード鎖またはアンチセンス(−)鎖に相補的(「逆相補的」と称されることもある。)でもよい。プローブは、長さが大きく変化し得る。好ましくは、約10から約100ヌクレオチド、例えば、約15から約75ヌクレオチド、例えば、約15から約50ヌクレオチドの長さであり得る。
組織試料の「切片」は、組織試料の一部分または一片、例えば、組織の薄片または組織試料由来の細胞片である。組織試料の2つ以上の切片を採取および分析してもよい。所望により、種々のレベルで、例えば、形態的および分子的(例えば、核酸およびタンパク質)に、単一切片を分析することができる。
本開示との関連では、「に選択的にハイブリダイズする」(ならびに、「選択的なハイブリダイゼーション」、「に特異的にハイブリダイズする」および「特異的なハイブリダイゼーション」)は、核酸分子が、ストリンジェントな条件下で、特定のヌクレオチド配列に選択的に結合するか、これと選択的に二重鎖形成するか、またはこれに選択的にハイブリダイズすることを指す。「ストリンジェントな条件」という用語は、プローブが、この標的配列に選択的にハイブリダイズし、および他の非標的配列にはより弱くハイブリダイズするかまたはこれには全くハイブリダイズしない条件を指す。核酸ハイブリダイゼーション(例えば、アレイ、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーションまたはFISH)との関連では、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は配列依存的であり、異なる条件下では異なる。核酸ハイブリダイゼーションについての広範な指針は、例えば、Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes,Part I,Ch.2,「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」,Elsevier,NY(1993)(「Tijssen」)に見られる。一般に、高ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、規定のイオン強度およびpHにおける特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低くあるように選択される。Tmは、標的配列の50%が、パーフェクトマッチプローブにハイブリダイズする(規定のイオン強度およびpHにおける)温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブのTmと等しいように選択される。サザンブロットまたはノーザンブロットのアレイまたはフィルタでは、100超の相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、標準的なハイブリダイゼーション溶液を使用して42℃である(例えば、Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Press,NY(2001)を参照のこと。)。
「標的配列」、「標的領域」および「核酸標的」は、この減少および/または増加を決定する特定の染色体位置に存在するヌクレオチド配列を指す。
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定的であることを意図するものではない。
悪性黒色腫を診断する方法および悪性黒色腫の転移を予後予測する方法
上記を考慮して、患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法が提供される。前記方法は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料における(i)(a)および/もしくは(b)、(ii)(c)および/もしくは(d)、(iii)(a)および/もしくは(d)、または(iv)(b)および/もしくは(c)を決定することを含み、
(a)は、CCND1/対照セントロメアのコピー数比またはCCND1のコピー数であり、CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.55超/細胞であるか、またはCCND1のコピー数が約2.81超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(b)は、MYCのコピー数であり、MYCのコピー数が約2.48超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(c)は、CCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合、またはCCND1が増加している細胞の割合であり、CCND1が増加している細胞の割合が約30%以上であるか、またはCCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合が約54%以上である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(d)は、MYCが増加している細胞の割合であり、MYCが増加している細胞の割合が約20%超である場合、転移が起こる可能性があることを示す。
ブレスローの深さが約1mm未満、例えば、1mm未満の黒色腫を有する患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法も提供される。前記方法は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料におけるCCND1/対照セントロメアのコピー数比およびMYCのコピー数を決定することを含む。CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.55超、例えば、1.55超であり、およびMYCのコピー数が約2.48超、例えば、2.48超である場合、転移が起こる可能性があることを示す。
ブレスローの深さが2mm以下の黒色腫を有する患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法も提供される。前記方法は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料におけるCCND1/対照セントロメアのコピー数比およびMYCのコピー数を決定することを含む。CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.38超、例えば、1.38超であり、およびMYCのコピー数が約2.36超、例えば、2.36超である場合、転移が起こる可能性があることを示す。
ブレスローの深さが1mm以上約4mm未満、例えば、約4mm未満の黒色腫を有する患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法がさらに提供される。前記方法は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料におけるCCND1/対照セントロメアのコピー数比を決定することを含む。CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.55超、例えば、1.55超である場合、転移が起こる可能性があることを示す。前記方法は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料におけるMYCのコピー数を決定することをさらに含むことができ、MYCのコピー数が約2.60超、例えば、2.60超であることもまた、転移が起こる可能性があることを示す。
ブレスローの深さが約2.0mm超、例えば、2.0mm超の黒色腫を有する患者における悪性黒色腫の転移を予後予測する方法もさらに提供される。前記方法は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料におけるCCND1/対照セントロメアのコピー数比またはMYCのコピー数を決定することを含む。CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.55超、例えば、1.55超である場合、転移が起こる可能性があることを示す。MYCのコピー数が約2.22超、例えば、2.22超である場合、転移が起こる可能性があることを示す。
さらに、患者における悪性黒色腫を診断する方法もさらに提供される。前記方法は、前記患者から得られた有核細胞を含む診断試料中の幾つかの核におけるRREB1のコピー数、MYCのコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCのコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、前記試料が悪性黒色腫を含むことを示す。前記診断試料は、核を含む細胞を含むことができ、幾つかの核において、前記RREB1のコピー数、前記MYCのコピー数、前記CCND1のコピー数および前記CDKN2Aのコピー数を決定する。前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCおよびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が前記核の27%以上で検出される場合、前記試料は悪性黒色腫を含む。または、前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCおよびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が8個以上の核で検出される場合、前記試料は悪性黒色腫を含む。
ブレスローの深さによる特性決定を使用しない、悪性黒色腫の転移を予後予測する方法も提供される。前記方法は、前記患者から得られた有核細胞を含む試料中の幾つかの核におけるRREB1のコピー数、MYCまたはZNF217のコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCまたはZNF217のコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、転移が起こる可能性があることを示す。前記試料は、核を含む細胞を含むことができ、幾つかの核において、前記RREB1のコピー数、前記MYCまたはZNF217のコピー数、前記CCND1のコピー数および前記CDKN2Aのコピー数を決定する。前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCまたはZNF217、およびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が前記核の27%以上で検出される場合、転移が起こる可能性がある。または、前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCまたはZNF217、およびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が8個以上の核で検出される場合、転移が起こる可能性がある。
さらに、患者における非定型スピッツ腫瘍の転移を予後予測する方法もさらに提供される。前記方法は、前記患者由来の腫瘍試料におけるRREB1、CCND1および/またはCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、RREB1のコピー数が増加しているか、またはCCND1のコピー数が増加しているか、またはCDKN2Aがホモ接合性欠失である場合、悪性の転移が起こる可能性があることを示し、およびCDKN2Aがホモ接合性欠失である場合、さらにより悪性の転移が起こる可能性があることを示す。
ブレスローの深さによる特性決定を使用する上記予後予測方法は、各プローブを検出可能に標識し、2つ以上のプローブを同じ試料に同時にまたは連続してハイブリダイズさせる場合には、各プローブを異なる標識で検出可能に標識するin situハイブリダイゼーションによって、CCND1/対照セントロメアのコピー数比および/またはMYCのコピー数を決定することを含むことができる。in situハイブリダイゼーションは、各プローブを検出可能に標識し、2つ以上のプローブを同じ試料に同時にまたは連続してハイブリダイズさせる場合には、各プローブを異なるフルオロフォアで検出可能に標識する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)であり得る。CCND1遺伝子のコピー数は、プローブVysis Locus Specific Identifier(LSI)CCND1を使用することによって決定することができる。対照セントロメアのコピー数は、染色体のセントロメアに位置するαサテライトDNAにハイブリダイズするプローブを使用することによって決定することができる。このプローブは対照として機能し、これにより必要に応じて、試料間のハイブリダイゼーション効率の差を説明することが可能になる。染色体のセントロメアに位置するαサテライトDNAにハイブリダイズするプローブの例は、染色体計数プローブ(Cep)である。第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22染色体のセントロメアに位置するαサテライトDNAにハイブリダイズするプローブを使用することができる。好ましい対照セントロメアプローブは、第11染色体のαサテライトDNAにハイブリダイズするもの、例えば、Cep11である。MYCのコピー数は、プローブVysis LSI MYCを使用することによって決定することができる。
上記診断方法は、各プローブを検出可能に標識し、2つ以上のプローブを同じ試料に同時にまたは連続してハイブリダイズさせる場合には、各プローブを異なる標識で検出可能に標識するin situハイブリダイゼーションによって、RREB1、MYC、CCND1およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含むことができる。in situハイブリダイゼーションは、各プローブを検出可能に標識し、2つ以上のプローブを同じ試料に同時にまたは連続してハイブリダイズさせる場合には、各プローブを異なるフルオロフォアで検出可能に標識する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)であり得る。RREB1遺伝子のコピー数は、プローブVysis LSI RREB1を使用することによって決定することができる。MYC遺伝子のコピー数は、プローブVysis LSI MYCを使用することによって決定することができる。CCND1遺伝子のコピー数は、プローブVysis LSI CCND1を使用することによって決定することができる。CDKN2A遺伝子のコピー数は、プローブVysis LSI CDKN2Aを使用することによって決定することができる。
ブレスローの深さによる特性決定を使用しない上記予後予測方法は、各プローブを検出可能に標識し、2つ以上のプローブを同じ試料に同時にまたは連続してハイブリダイズさせる場合には、各プローブを異なる標識で検出可能に標識するin situハイブリダイゼーションによって、RREB1、MYCまたはZNF217、CCND1およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含むことができる。in situハイブリダイゼーションは、各プローブを検出可能に標識し、2つ以上のプローブを同じ試料に同時にまたは連続してハイブリダイズさせる場合には、各プローブを異なるフルオロフォアで検出可能に標識する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)であり得る。RREB1遺伝子のコピー数は、プローブVysis LSI RREB1を使用することによって決定することができる。MYC遺伝子のコピー数は、プローブVysis LSI MYCを使用することによって決定することができる。ZNF217遺伝子のコピー数は、プローブVysis LSI ZNF217を使用することによって決定することができる。CCND1遺伝子のコピー数は、プローブVysis LSI CCND1を使用することによって決定することができる。CDKN2A遺伝子のコピー数は、プローブVysis LSI CDKN2Aを使用することによって決定することができる。
上記方法のすべてに関して、プローブの性質/サイズは、少なくとも部分的には、特定のパラメータ、例えば、関心対象の遺伝子のコピー数、コピー数比、または増加割合を決定するのに使用される方法に依存するであろう。FISHなどのin situハイブリダイゼーションによって上記診断/予後予測方法を行う場合、例えば、プローブは、比較的大きなものであり得る。別の方法によって上記診断/予後予測方法を行う場合、プローブは、FISHなどのin situハイブリダイゼーションに使用されるプローブよりも小さなもの、さらには実質的に小さなものであり得、この場合、プローブは、好ましくは、関心対象の遺伝子内の配列にハイブリダイズする。
上記を考慮して、FISHなどのin situハイブリダイゼーションによって、CCND1に関連するパラメータ、例えば、CCND1のコピー数、CCND1に関連するコピー数比、またはCCND1の増加割合を検出するためのプローブは、好ましくは、CCND1遺伝子を含む第11染色体の11q13領域にハイブリダイズする。前記プローブはまた、隣接領域、例えば、セントロメア部位上に位置するSTS(配列タグ付部位)マーカーD11S1076、テロメア部位上に位置するFGF4遺伝子、またはD11S1076およびFGF4の両方にハイブリダイズすることができる。別の方法によって、CCND1に関連するパラメータを検出するためのプローブは、FISHなどのin situハイブリダイゼーションに使用されるプローブよりも小さなもの、さらには実質的に小さなものであり得、この場合、プローブは、好ましくは、CCND1遺伝子(配列情報は、GenBank(www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank)およびGeneCards(登録商標)(www.genecards.org)などのソースからオンラインで入手可能である。)内の配列にハイブリダイズする。「CCND1」は、本明細書では、コピー数、コピー数比、増加割合などにかかわらず、パラメータを決定するのに使用される特定の方法に関係なく、CCND1に関連するパラメータを決定するのに使用することができる任意のおよびすべてのプローブを指すのに使用される。
同様に、FISHなどのin situハイブリダイゼーションによって、MYCに関連するパラメータ、例えば、MYCのコピー数、MYCに関連するコピー数比、またはMYCの増加割合を検出するためのプローブは、好ましくは、MYC遺伝子を含む第8染色体の8q24領域にハイブリダイズする。前記プローブはまた、8q24のセントロメア部位上に位置する隣接領域、8q24のテロメア部位上に位置する隣接領域、またはこれらの両方にハイブリダイズすることができる。好ましいプローブは、8q24の約820kb、例えば、821kbにおよび、MYC遺伝子の中心部に配置される。別の方法によって、MYCに関連するパラメータを検出するためのプローブは、FISHなどのin situハイブリダイゼーションに使用されるプローブよりも小さなもの、さらには実質的に小さなものであり得、この場合、プローブは、好ましくは、MYC遺伝子(配列情報は、GenBank(www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank)およびGeneCards(登録商標)(www.genecards.org)などのソースからオンラインで入手可能である。)内の配列にハイブリダイズする。「MYC」は、本明細書では、コピー数、コピー数比、増加割合などにかかわらず、パラメータを決定するのに使用される特定の方法に関係なく、MYCに関連するパラメータを決定するのに使用することができる任意のおよびすべてのプローブを指すのに使用される。
同様に、FISHなどのin situハイブリダイゼーションによって、CDKN2Aに関連するパラメータ、例えば、CDKN2Aのコピー数、CDKN2Aに関連するコピー数比、またはCDKN2Aの増加割合を検出するためのプローブは、好ましくは、CDKN2A遺伝子を含む第9染色体の9p21領域にハイブリダイズする。前記プローブはまた、隣接領域、例えば、9p21のセントロメア部位上に位置するSTSマーカーD9S1749、およびテロメア部位上に位置するSTSマーカーD9S1752、またはD9S1749およびD9S1752の両方にハイブリダイズすることができる。好ましいプローブは、9p21の約190kbに及ぶ。別の方法によって、CDKN2Aに関連するパラメータを検出するためのプローブは、FISHなどのin situハイブリダイゼーションに使用されるプローブよりも小さなもの、さらには実質的に小さなものであり得、この場合、プローブは、好ましくは、CDKN2A遺伝子(配列情報は、GenBank(www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank)およびGeneCards(登録商標)(www.genecards.org)などのソースからオンラインで入手可能である。)内の配列にハイブリダイズする。「CDKN2A」は、本明細書では、コピー数、コピー数比、増加割合などにかかわらず、パラメータを決定するのに使用される特定の方法に関係なく、CDKN2Aに関連するパラメータを決定するのに使用することができる任意のおよびすべてのプローブを指すのに使用される。
同様に、FISHなどのin situハイブリダイゼーションによって、RREB1に関連するパラメータ、例えば、RREB1のコピー数、RREB1に関連するコピー数比、またはRREB1の増加割合を検出するためのプローブは、好ましくは、RREB1遺伝子を含む第6染色体の6q25領域にハイブリダイズする。前記プローブはまた、隣接領域、例えば、セントロメア部位上に位置するSTSマーカーSHGC−140278、およびテロメア部位上に位置するSTSマーカーRH61070、またはSHGC−140278およびRH61070の両方にハイブリダイズすることができる。別の方法によって、RREB1に関連するパラメータを検出するためのプローブは、FISHなどのin situハイブリダイゼーションに使用されるプローブよりも小さなもの、さらには実質的に小さなものであり得、この場合、プローブは、好ましくは、RREB1遺伝子(配列情報は、GenBank(www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank)およびGeneCards(登録商標)(www.genecards.org)などのソースからオンラインで入手可能である。)内の配列にハイブリダイズする。「RREB1」は、本明細書では、コピー数、コピー数比、増加割合などにかかわらず、パラメータを決定するのに使用される特定の方法に関係なく、RREB1に関連するパラメータを決定するのに使用することができる任意のおよびすべてのプローブを指すのに使用される。
同様に、FISHなどのin situハイブリダイゼーションによって、ZNF217に関連するパラメータ、例えば、ZNF217のコピー数、ZNF217に関連するコピー数比、またはZNF217の増加割合を検出するためのプローブは、好ましくは、ZNF217遺伝子を含む第20染色体の20q13領域にハイブリダイズする。前記プローブはまた、隣接領域、例えば、セントロメア部位上に位置するSTSマーカーRI−29727、およびテロメア部位上に位置するSTSマーカーSHGC−83153、またはRI−29727およびSHGC−83153の両方にハイブリダイズすることができる。別の方法によって、ZNF217に関連するパラメータを検出するためのプローブは、FISHなどのin situハイブリダイゼーションに使用されるプローブよりも小さなもの、さらには実質的に小さなものであり得、この場合、プローブは、好ましくは、ZNF217遺伝子(配列情報は、GenBank(www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank)およびGeneCards(登録商標)(www.genecards.org)などのソースからオンラインで入手可能である。)内の配列にハイブリダイズする。「ZNF217」は、本明細書では、コピー数、コピー数比、増加割合などにかかわらず、パラメータを決定するのに使用される特定の方法に関係なく、ZNF217に関連するパラメータを決定するのに使用することができる任意のおよびすべてのプローブを指すのに使用される。
各プローブを検出可能に(2つ以上のプローブを同じ試料で同時にまたは連続して使用する場合には、さらに区別可能に)標識するin situハイブリダイゼーションによって、例えば、各プローブをフルオロフォアで検出可能に(2つ以上のプローブを同じ試料で同時にまたは連続して使用する場合には、さらに区別可能に)標識するFISHによって、上記方法を行う場合、典型的には、前記方法を新鮮な(新鮮細胞は1から3日間培養することができ、コルセミドなどのブロッキング剤を培養液に追加して、染色体が高凝縮している時期である中期の細胞を遮断することができ、および可視化することができる。)、凍結されたまたは固定された(例えば、ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。)黒色腫試料で行い、(例えば、RNaseおよびペプシンで)処理して、標的核酸(例えば、DNA)の接触性を増加させ、非特異的結合を減少させ、次いで、1つ以上のプローブとハイブリダイズさせ、洗浄して任意の未結合のプローブを除去し、ハイブリダイズしたプローブを検出することができる。例えば、細胞懸濁液を単層としてスライド上にアプライすることができ、光学顕微鏡または位相差顕微鏡によって、細胞密度を測定することができる。ホルマリン固定してパラフィン包埋した黒色腫試料の切片(厚さ約5μm)をスライド、例えば、SuperFrost Plus正帯電スライド(ThermoShandon,Pittsburgh,PAから入手可能)上に載せ、56℃で一晩ベークし、脱パラフィン処理し、1xクエン酸ナトリウム生理食塩水、pH6.3に80℃で35分間浸漬し、水で3分間洗浄することができる。37℃で15分間プロテアーゼ消化(4mgペプシン/mLおよび0.2N HCl)した後、切片を水で3分間洗浄し、勾配エタノールに通して乾燥することができる。好ましくは、上記1つ以上のプローブによるハイブリダイゼーションは、製造業者の説明書に従って、automated co−denaturation oven(HYBriteまたはThermoBrite Denaturation/Hybridization System,Abbot Molecular,Inc.,Des Plaines,IL)において、37℃で16から18時間行う(このような方法は、典型的には、プローブおよび標的核酸の変性を含む。)。ハイブリダイゼーション後、好ましくは、切片を洗浄緩衝液(2xクエン酸ナトリウム生理食塩水/0.3%NP40;Abbott Molecular,Inc.から入手可能)に室温で2から10分間入れてカバースリップを取り除き、次いで、73℃の洗浄緩衝液に2分間浸漬し、乾燥し、4’6’−ジアミジノ−2−フェニルインドール二塩酸塩水和物(DAPI)I抗退色溶液(Abbott Molecular,Inc.)でマウントする。好ましくは、単一帯域フィルタを備える落射蛍光顕微鏡(Abbott Molecular,Inc.)を用いて、スライドを分析する。
検出に先立ち、見かけの細胞学的異常に基づいて場合により細胞試料を予備選択してもよい。予備選択は疑わしい細胞を識別することによって、スクリーニングをこれらの細胞に絞ることができる。予備選択はスクリーニングを迅速にすることができ、陽性結果を見落とさない確率が増加する。予備選択中には、生体試料からの細胞を顕微鏡スライドに載せ、一般に形成異常細胞および新生細胞に関連する細胞学的異常を目視検査する。このような異常としては、核寸法、核形状、および核染色の異常が挙げられ、通常はプローブとこの標的DNAのハイブリダイゼーション後にヨウ化プロピジウムや4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)などの核酸染色試薬または色素による核の対比染色によって評価される。典型的には、新生細胞は核が拡大し、不規則形状となり、および/または斑状染色パターンを示す。ヨウ化プロピジウムは、典型的には、約0.4μg/mlから約5μg/mlの濃度で使用され、614nmの発光ピーク波長で観測可能な赤色蛍光DNA特異的色素である。DAPIは、典型的には、約125ng/mlから約1,000ng/mlの濃度で使用され、低倍率のDAPIフィルタを用いて452nmの発光ピーク波長で観測可能な青色蛍光DNA特異的染色試薬である。この場合には、検出に予備選択された細胞のみの染色体減少および/または増加を計数する。染色体減少および/または増加を評価するためには、数字上では約少なくとも20個、より好ましくは少なくとも30から40個の予備選択細胞を選択することが好ましい。
または、低倍率のDAPIフィルタを使用して担腫瘍領域を局在化し、任意のプローブの異常コピー数を持つ核の存在について徹底的に検査することができる。正常細胞では、所定のプローブの2コピーが検出されるであろう。異常細胞では、所定のプローブのより多いまたはより少ないコピーが検出されるであろう。計数のためには、好ましくは、最も有意なコピー数変化を有する領域を選択する。可能な限り、3つの異常領域を選択し、各異常領域内で、10個の核を高倍率(64xまたは100x対物レンズ)で無作為に分析する。好ましくは、核はオーバーラップしておらず、十分に明るいシグナルを持つ。
または、細胞学的または組織学的特徴とは無関係に検出用細胞を選択してもよい。例えば、顕微鏡スライド上の1つまたは複数の領域内のオーバーラップしない全細胞を染色体減少および/または増加について評価することができる。さらなる例として、顕微鏡スライド上に連続して出現する、数字上では約少なくとも約50個、より好ましくは少なくとも約100個のスライド上の細胞、例えば、形態変化を示す細胞を、染色体の減少および/または増加について評価するために選択してもよい。
予後予測方法、例えば、ブレスローの深さによる特性決定を使用する予後予測方法の場合、CCND1のコピーを単独で、または対照セントロメアのコピーとさらに組み合わせて計数し、CCND1のコピー数またはCCND1/対照セントロメアの比を決定する。または、もしくは加えて、MYCのコピーを計数する。次いで、(i)CCND1のコピー数もしくはCCND1/対照セントロメアのコピー数比、および/または(ii)MYCのコピー数を、本明細書に示される適切な所定のカットオフと比較する。CCND1のコピー数またはCCND1/対照セントロメアのコピー数比が所定のカットオフを超える場合、転移が起こる可能性があることを示す。同様に、MYCのコピー数が所定のカットオフを超える場合、転移が起こる可能性があることを示す。
または、予後予測方法、例えば、ブレスローの深さによる特性決定を使用する予後予測方法の場合、CCND1のコピーを単独で、または対照セントロメアのコピーとさらに組み合わせて計数し、CCND1が増加している細胞の割合、またはCCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合を決定する。または、もしくは加えて、MYCが増加している細胞の割合を決定する。次いで、CCND1が増加している細胞の割合、またはCCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合を、本明細書に示される適切な所定のカットオフと比較する。CCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合、またはCCND1が増加している細胞の割合が所定のカットオフを超える場合、転移が起こる可能性があることを示す。同様に、MYCが増加している細胞の割合が所定のカットオフを超える場合、転移が起こる可能性があることを示す。
診断方法の場合、RREB1、MYC、CCND1およびCDKN2Aのコピーを計数する。前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCのコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、前記試料が悪性黒色腫を含むことを示す。前記診断試料は、核を含む細胞を含むことができ、幾つかの核において、前記RREB1のコピー数、前記MYCのコピー数、前記CCND1のコピー数および前記CDKN2Aのコピー数を決定する。前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCおよびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が前記核の27%以上で検出される場合、前記試料は悪性黒色腫を含む。または、前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCおよびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が8個以上の核で検出される場合、前記試料は悪性黒色腫を含む。
他の予後予測方法、例えば、ブレスローの深さによる特性決定を使用しない予後予測方法の場合、RREB1、MYCまたはZNF217、CCND1およびCDKN2Aのコピーを計数する。前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCまたはZNF217のコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、前記試料が悪性黒色腫を含むことを示す。前記診断試料は、核を含む細胞を含むことができ、幾つかの核において、前記RREB1のコピー数、前記MYCまたはZNF217のコピー数、前記CCND1のコピー数および前記CDKN2Aのコピー数を決定する。前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCまたはZNF217、およびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が前記核の27%以上で検出される場合、転移が起こる可能性がある。または、前記核数は約30個であり得、RREB1、MYCまたはZNF217、およびCCND1のコピー数の増加、ならびにCDKN2Aのホモ接合性欠失が8個以上の核で検出される場合、転移が起こる可能性がある。
従って、このような方法は、患者由来の悪性黒色腫試料、例えば、核酸試料を、標的核酸配列(即ち、予後予測方法、例えば、ブレスローの深さによる特性決定を使用する予後予測方法の場合にはCCND1であり、これは単独でもよいし、または対照セントロメアとさらに組み合わせてもよく、および、またはもしくは加えて、同時にまたはいずれかの順序で連続してMYC;診断方法の場合にはRREB1、MYC、CCND1およびCDKN2A;ならびに、他の予後予測方法、例えば、ブレスローの深さによる特性決定を使用しない予後予測方法の場合にはRREB1、MYCまたはZNF217、CCND1およびCDKN2A)に選択的に結合する少なくとも1つのプローブと、前記プローブがこの標的核酸配列に選択的に結合して安定ハイブリダイゼーション複合体を形成することを可能にする(または、促進する)条件下で接触させることを含む。このような方法は、ハイブリダイゼーション複合体の形成を検出すること、およびハイブリダイゼーション複合体の数を計数することをさらに含む。
CCND1を含むハイブリダイゼーション複合体の数を単独で、または対照セントロメアを含むハイブリダイゼーション複合体の数とさらに組み合わせて考慮して、前記予後予測方法は、CCND1のコピー数またはCCND1/対照セントロメアのコピー数比を決定すること、および前記コピー数または前記コピー数比を適切な所定のカットオフと比較することをさらに含み、コピー数またはコピー数比が適切な所定のカットオフを超える場合、転移が起こる可能性があることを示す。MYCを含むハイブリダイゼーション複合体の数を考慮して、前記予後予測方法は、MYCのコピー数を決定すること、および前記コピー数を適切な所定のカットオフと比較することをさらに含み、コピー数が所定のカットオフを超える場合、転移が起こる可能性があることを示す。
また、CCND1を含むハイブリダイゼーション複合体の数を単独で、または対照セントロメアを含むハイブリダイゼーション複合体の数とさらに組み合わせて考慮して、または前記予後予測方法は、CCND1またはCCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合を決定すること、および前記増加している細胞の割合を適切な所定のカットオフと比較することをさらに含み、増加している細胞の割合が適切な所定のカットオフを超える場合、転移が起こる可能性があることを示す。MYCを含むハイブリダイゼーション複合体の数を考慮して、前記予後予測方法は、MYCが増加している細胞の割合を決定すること、および前記増加している細胞の割合を所定のカットオフと比較することをさらに含み、増加している細胞の割合が適切な所定のカットオフを超える場合、転移が起こる可能性があることを示す。
RREB1、MYC、CCND1およびCDKN2Aを含むハイブリダイゼーション複合体の数を考慮して、前記診断方法は、RREB1、MYC、CCND1およびCDKN2Aのコピー数を決定することをさらに含み、前記RREB1、MYC、CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、前記試料が悪性黒色腫を含むことを示す。RREB1、MYCまたはZNF217、CCND1およびCDKN2Aを含むハイブリダイゼーション複合体の数を考慮して、ブレスローの深さによる特性決定を使用しない前記予後予測方法は、RREB1、MYCまたはZNF217、CCND1およびCDKN2Aのコピー数を決定することをさらに含み、前記RREB1、MYCまたはZNF217、CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、転移が起こる可能性があることを示す。
上記方法が好ましいが、当技術分野において既知のまたは現在開発中の他の方法に従って、遺伝子のコピー数または(例えば、2つの遺伝子の、2つの染色体の、または遺伝子および染色体の)コピー数比を決定することが可能である。このような方法は、ホルマリン固定してパラフィン包埋した悪性黒色腫切片以外の悪性黒色腫試料、例えば、悪性黒色腫の新鮮切片または凍結切片、悪性黒色腫由来の細胞ホモジネート、悪性黒色腫由来の細胞溶解物、または悪性黒色腫から単離もしくは精製された核酸(例えば、DNAなどの「核酸試料」)の使用を必要としてもよい(本明細書で使用される場合、「悪性黒色腫試料」は、コピー数比の決定を可能にする悪性黒色腫試料のすべての形態を包含することを意図する。)。これに関して、未培養の原発性腫瘍から調製されたタッチ調製物(touch preparation)(新鮮組織または凍結組織をスライドに押し付けることによって得られる単層細胞)を使用することができる(例えば、Kallioniemi et al.,Cytogenet.Cell Genet.60:190−193(1992)を参照のこと。)。タッチ調製物は、インタクトな核を含有し、切片化によるトランケーションアーチファクトを受けていない。タッチ調製物中の単層細胞は、例えば、エタノールなどのアルコール、または3:1メタノール:酢酸などのアルコール溶液で固定してもよい。パラフィン包埋検体の厚い切片から核を抽出し、トランケーションアーチファクトを減らし、外部包埋材料をなくすこともできる。典型的には、生体試料が得られたら直ぐに回収および処理してから、当技術分野において公知の標準方法を使用してハイブリダイゼーションする。このような処理は、典型的には、プロテアーゼ処理、およびホルムアルデヒドなどのアルデヒド溶液中でのさらなる固定を含む。
本明細書で使用することができる方法の例としては、限定されないが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)、リアルタイムQ−PCR(Applied Biosystems,Foster City,CA)、PCR産物の比重走査、コピー数を決定するべき遺伝子および/または染色体領域を場合により前増幅するデジタルPCR(例えば、Vogelstein et al.,PNAS USA 96:9236−9241(1999);米国特許出願公開第2005/0252773号明細書;および米国特許出願公開第2009/0069194号明細書を参照のこと。)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH;例えば、Kallioniemi et al.,Science 258:818−821(1992);および国際公開第93/18186号を参照のこと。)、マイクロサテライトまたはサザンアレロタイプ解析、ドットブロット、アレイ、マイクロアレイ(Carter,Nature Genetics Supplement 39:S16−S21(July 2007))、多重増幅プローブハイブリダイゼーション(MAPH)、多重ライゲーション依存的プローブ増幅(MLPA;例えば、Schouten et al.,Nucleic Acids Res.30:e 57(2002)を参照のこと。)、変性高速液体クロマトグラフィー(dHPLC;Kumar et al.,J.Biochem.Biophys.Methods 64(3):226−234(2005))、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)、コーム状ゲノムDNA上の蛍光プローブ長の測定(Herrick et al.,PNAS 97(1):222−227(2000))、リファレンスクエリパイロシーケンシング(RQPS;Liu et al.,Cold Spring Harb.Protoc.doi:10.1101/pdb.prot5491(2010))、フォスミド末端から参照配列までのマッピング(キャピラリーベースの技術)、微小電気泳動シーケンシングおよびナノポアシーケンシング(例えば、Service,Science 311:1544−1546(2006);およびShendure et al.,Nat.Rev.Genet.5:335−344(2004)を参照のこと。)などが挙げられる。
in situハイブリダイゼーションおよび類似方法による分析のための核酸標的の変性は、典型的には、細胞形態を保存するような様式で行う。例えば、染色体DNAは、高pH、熱(例えば、約70から95℃の温度)、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)およびこれらの組み合わせによって変性させることができる。一方、プローブは、数分間の加熱によって変性させることができる。
変性後、ハイブリダイゼーションを行う。プローブをこの核酸標的に特異的にハイブリダイズさせるための条件は、典型的には、特定ハイブリッドを作製するための所与ハイブリダイゼーション法で利用可能な条件の組み合わせを含み、当業者であればこの条件を容易に決定することができる。このような条件は、典型的には、制御下の温度、液相、およびプローブと標的の接触を含む。ハイブリダイゼーション条件は、プローブ濃度、標的長、標的およびプローブG−C含量、溶媒組成、温度、ならびにインキュベーション時間などの多くの要因に応じて変化する。少なくとも1つの変性工程は、プローブを標的と接触させる前に行われ得る。または、プローブおよび標的は、相互接触中に変性条件に供してもよいし、またはプローブを生体試料と接触させた後に変性条件に供してもよい。この後、例えば、2から4×SSCとホルムアミドの約50:50容量比混合物の液相中で、約25から約55℃の温度で、例えば、約0.5から約96時間、またはより好ましくは約32から約40℃の温度で、約2から約16時間、プローブ/試料をインキュベートすることによってハイブリダイゼーションを実施することができる。特異性を増加させるために、米国特許第5,756,696号明細書(この内容は、この全体が、および具体的にはブロッキング核酸の使用の説明について、参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されている未標識ブロッキング核酸などのブロッキング剤を使用してもよい。当業者には容易に明らかであるように、プローブを試料中に存在するこの核酸標的と特異的にハイブリダイズさせるために、他の条件も容易に利用することができる。ハイブリダイゼーションのプロトコールは、例えば、Pinket et al.,PNAS USA 85:9138−9142(1988);In situ Hybridization Protocols,Methods in Molecular Biology,Vol.33,Choo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ(1994);およびKallioniemi et al.,PNAS USA 89:5321−5325(1992)に記載されている。
適切なインキュベーション時間の完了後、染色体プローブと試料DNAの非特異的結合を一連の洗浄によって除去することができる。温度および塩濃度は所望ストリンジェンシーに合わせて適切に選択される。必要なストリンジェンシーレベルは、遺伝子配列に対する特定プローブ配列の複雑さに依存し、公知遺伝子組成の試料とプローブを系統的にハイブリダイズさせることによって決定することができる。一般に、約65から約80℃の温度で約0.2×から約2×SSCおよび約0.1%から約1%の非イオン性界面活性剤、例えば、Nonidet P−40(NP40)を使用して高ストリンジェンシー洗浄を行うことができる。低ストリンジェンシー洗浄が必要な場合には、より低温で塩濃度を増加して洗浄を行うことができる。
フルオロフォアで標識したプローブまたはプローブ組成物を使用する場合、検出法は、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、またはプローブハイブリダイゼーションを測定するための他の手段を利用することができる。複数フルオロフォアを観察するために、任意の適切な顕微鏡撮像法を、本明細書に記載される方法と併用することができる。蛍光顕微鏡を使用する場合には、各フルオロフォアの励起に適切な光線下で適切な1つまたは複数のフィルタを使用して、ハイブリダイズした試料を観察することができる。MetaSystems、Bio ViewまたはApplied Imaging systemsなどの自動デジタルイメージングシステムを使用してもよい。
結果の表示を容易にし、蛍光強度のわずかな差を検出する感度を改善するために、用いる方法に応じてデジタル画像分析システムを使用することができる。例示的なシステムはQUIPS(定量的画像処理システム(quantitative image processing system)の頭字語)であり、これは自動化ステージ、焦点制御およびフィルタホイールを備えた標準の蛍光顕微鏡をベースとする自動化画像分析システム(Ludl Electronic Products,Ltd.,Hawthorne,NY)である。フィルタホイールは、励起波長の選択のために顕微鏡の蛍光励起通路に取り付けられている。ダイクロイックブロック中の特別なフィルタ(Chroma Technology,Brattleboro,VT)が、画像レジストレーションシフトを伴わずに多種色素の励起を可能にする。顕微鏡は2つのカメラポートを有し、この1つが、スライド上の関心領域の発見およびフォーカシングに使用される高感度高速ビデオ画像ディスプレイ用の増感CCDカメラ(Quantex Corp.,Sunnyvale,CA)を有する。他のカメラポートは、高解像度および高感度で実際の画像取得に使用される冷却CCDカメラ(Photometrics Ltd.,Tucson,AZ製のモデル200)を有する。冷却CCDカメラは、VMEバスによってSUN4/330ワークステーション(SUN Microsystems,Inc.,Mountain View,CA)にインターフェースされる。画像処理ソフトウェアパッケージSCIL−Image(Delft Centre fpr Image Processing,Delft,オランダ)を使用して、多色画像の完全取得を制御する。
アレイCGH(aCGH)では、プローブを基板上の異なる位置に固定化し、標識しない(例えば、国際公開第96/17958号を参照のこと。)。この代わりに、標的核酸を含む試料核酸を標識する。ハイブリダイゼーション前に試料核酸を標識するか、またはハイブリダイゼーション複合体を検出可能に標識する。二色または多色aCGHでは、プローブアレイを、異なる方法で標識した標的核酸の2つ以上の集合物に同時にまたは連続してハイブリダイズさせる。
プローブ
上記を考慮して、悪性黒色腫の転移の予後予測を可能にする1つ以上のプローブのセットが提供される。前記セットは、(a)CCND1に対するプローブ単独、もしくはこれを、対照セントロメアに対するプローブとさらに組み合わせたもの、および/または(b)MYCに対するプローブを含むか、またはこれらからなる。前記CCND1に対するプローブは、Vysis LSI CCND1であり得る。前記対照セントロメアに対するプローブは、染色体のセントロメアに位置するαサテライトDNAにハイブリダイズする。対照セントロメアに対するプローブの例は、染色体計数プローブ(Cep)である。このプローブは対照として機能し、これにより必要に応じて、試料間のハイブリダイゼーション効率の差を説明することが可能になる。第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22染色体のセントロメアに位置するαサテライトDNAにハイブリダイズするプローブを使用することができる。好ましい対照セントロメアプローブは、第11染色体のαサテライトDNAにハイブリダイズするもの、例えば、Cep11である。MYCに対するプローブは、Vysis LSI MYCであり得る。
さらに上記を考慮して、悪性黒色腫の診断および予後予測を可能にするプローブのセットが提供される。前記セットは、RREB1に対するプローブ、MYCに対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含むか、またはこれらからなる。前記RREB1に対するプローブは、Vysis LSI RREB1であり得る。前記MYCに対するプローブは、Vysis LSI MYCであり得る。前記CCND1に対するプローブは、Vysis LSI CCND1であり得る。前記CDKN2Aに対するプローブは、Vysis LSI CDKN2Aであり得る。
またさらに上記を考慮して、悪性黒色腫の転移の予後予測を可能にするプローブのセットが提供される。前記セットは、RREB1に対するプローブ、MYCまたはZNF217に対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含むか、またはこれらからなる。前記RREB1に対するプローブは、Vysis LSI RREB1であり得る。前記MYCに対するプローブは、Vysis LSI MYCであり得る。前記ZNF217に対するプローブは、Vysis LSI ZNF217であり得る。前記CCND1に対するプローブは、Vysis LSI CCND1であり得る。前記CDKN2Aに対するプローブは、Vysis LSI CDKN2Aであり得る。
さらにまた上記を考慮して、非定型スピッツ腫瘍の転移の予後予測を可能にするプローブのセットが提供される。前記セットは、RREB1に対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含むか、またはこれらからなる。前記RREB1に対するプローブは、Vysis LSI RREB1であり得る。前記CCND1に対するプローブは、Vysis LSI CCND1であり得る。前記CDKN2Aに対するプローブは、Vysis LSI CDKN2Aであり得る。
染色体計数プローブ(CEP)および、染色体領域またはサブ領域を標的とする遺伝子座特異的プローブは商業的に入手することもできるし、または当業者であれば容易に調製することもできる。このようなプローブは、Abbott Molecular,Inc.(Des Plaines,IL),Molecular Probes,Inc.(Eugene,OR)、またはCytocell(Oxfordshire,UK)から商業的に入手することができる。染色体プローブは、例えば、タンパク質核酸(PNA)、クローニングしたヒトDNA、例えば、ヒトDNA配列インサートを含有するプラスミド、細菌人工染色体(BAC)およびP1人工染色体(PAC))から調製することができる。関心対象の領域は、PCR増幅またはクローニングによって得ることができる。または、染色体プローブは、当技術分野において公知の方法に従って合成的に調製することができる。
特定の遺伝子座を標的とすることを所望する場合、標的遺伝子の全長に沿ってハイブリダイズするプローブが好ましいものであり得るが、必須ではない。遺伝子座特異的プローブは、この遺伝子異常が転移と相関する癌遺伝子または腫瘍抑制遺伝子、例えば、CCND1またはMYCにハイブリダイズするように設計することができる。
好ましくは、プローブを検出可能に標識し、2つ以上のプローブを同じ試料で同時にまたは連続して使用する場合には、各プローブを区別可能に標識する。好ましくは、プローブをフルオロフォアで検出可能に標識し、2つ以上のプローブを同じ試料で同時にまたは連続して使用する場合には、各プローブを区別可能に標識する。好ましいフルオロフォアの例としては、限定されないが、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン、リサミンローダミンB、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン−5−イソチオシアネート(FITC)、7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸、テトラメチルローダミン−5−イソチオシアネート、テトラメチルローダミン−6−イソチオシアネート、5−カルボキシルテトラメチルローダミン、6−カルボキシテトラメチルローダミン、7−ヒドロキシクマリン−3−カルボン酸、N−4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル(dimethy)−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−3−インダセンプロピオン酸、エオシン−5−イソチオシアネート、エリトロシン−5−イソチオシアネート、SpectrumRed(Abbott Molecular,Inc.)、SpectrumGold(Abbott Molecular,Inc.)、SpectrumGreen(Abbott Molecular,Inc.)、SpectrumAqua(Abbott Molecular,Inc.)、TEXAS RED(Molecular Probes,Inc.)およびCASCADE blueアセチルアジド(Molecular Probes,Inc.)が挙げられる。使用する特定の標識は、重要ではない;しかしながら、望ましくは、特定の標識は、プローブのin situハイブリダイゼーションを妨げない。アッセイの感度を最大化し、任意のバックグラウンドシグナルを超えて検出可能であるために、標識は、望ましくは、可能な限り少ないコピー数で検出可能である。また、望ましくは、標識は、高度に局在化したシグナルを提供し、これにより、高度の空間分解能を提供する。
フルオロフォアと核酸プローブの結合は当技術分野において周知であり、任意の利用可能な手段によって達成することができる。フルオロフォアを例えば特定ヌクレオチドと共有結合させ、ニック翻訳、ランダムプライミング(Rigby et al.,J.Mol.Biol.113:237(1997))、PCR標識、シトシン残基などの特定の残基の化学的修飾による直接的な標識(米国特許第5,491,224号明細書)などの標準技術を使用して標識ヌクレオチドをプローブに組み込むことができる。または、トランスアミノ化したプローブのデオキシシチジンヌクレオチドにリンカーを介してフルオロフォアを共有結合させることができる。プローブの標識方法は、米国特許第5,491,224号明細書およびMorrison et al.,Molecular Cytogenetics:Protocols and Applications,Chapter 2,「Labeling Fluorescence In Situ Hybridization Probes for Genomic Targets」,pp.21−40,Fan,Ed.,Humana Press(2002)に記載されており、これらは両方とも、プローブの標識に関するこれらの説明について、参照により本明細書に組み込まれる。
当業者であれば、標識含有部分としてフルオロフォアの代わりに他の薬剤または色素を使用することができることを認識するであろう。発光剤としては、例えば、放射性発光、化学発光、生物発光およびリン発光標識含有部分が挙げられる。または、間接手段によって可視化される検出部分を使用することができる。例えば、当技術分野において公知の日常的方法を使用してプローブをビオチンまたはジゴキシゲニンで標識し、次いで、検出のためにさらに処理することができる。続いて、検出可能なマーカーとコンジュゲートしたアビジンの結合によって、ビオチン含有プローブの可視化を達成することができる。検出可能なマーカーはフルオロフォアであり得、この場合、プローブの可視化および判別は、下記のように達成することができる。
または、不溶性呈色物の生成に適切な基質と標識部分の酵素反応によって、標的領域にハイブリダイズした染色体プローブを可視化することができる。異なる標識部分を選択することによって、各プローブとセット内の他のプローブを判別することができる。続いて、アルカリホスファターゼ(AP)または西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたアビジンおよび適切な基質と共にインキュベーションすることによって、セット内のビオチン含有プローブを検出することができる。5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェートおよびニトロブルーテトラゾリウム(NBT)はアルカリホスファターゼの基質として機能し、ジアミノベンゾエートはHRPの基質として機能する。
キット
また、上記を考慮して、(a)患者における悪性黒色腫の転移の予後予測を可能にする1つ以上のプローブのセットと、(b)前記患者における悪性黒色腫の転移を予後予測するための説明書とを含むか、またはこれらからなるキットが提供される。前記1つ以上のプローブのセットは、(i’)CCND1に対するプローブ単独、もしくはこれを、対照セントロメアに対するプローブとさらに組み合わせたもの、および/または(ii’)MYCに対するプローブを含む。前記説明書は、(i’)前記患者から得られた悪性黒色腫試料における(i)(a)および/もしくは(b)、(ii)(c)および/もしくは(d)、(iii)(a)および/もしくは(d)、または(iv)(b)および/もしくは(c)を決定することを含み、
(a)は、CCND1/対照セントロメアのコピー数比またはCCND1のコピー数であり、CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.55超/細胞であるか、またはCCND1のコピー数が約2.81超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(b)は、MYCのコピー数であり、MYCのコピー数が約2.48超/細胞である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(c)は、CCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合、またはCCND1が増加している細胞の割合であり、CCND1が増加している細胞の割合が約30%以上であるか、またはCCND1/対照セントロメアが増加している細胞の割合が約54%以上である場合、転移が起こる可能性があることを示し、
(d)は、MYCが増加している細胞の割合であり、MYCが増加している細胞の割合が約20%超である場合、転移が起こる可能性があることを示す。CCND1に対するプローブは、Vysis LSI CCND1であり得る。セントロメア対照に対するプローブは、染色体のセントロメアに位置するαサテライトDNAにハイブリダイズする。セントロメア対照プローブの例は、染色体計数プローブ(Cep)である。このプローブは対照として機能し、これにより必要に応じて、試料間のハイブリダイゼーション効率の差を説明することが可能になる。第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、l3、14、15、16、17、18、19、20、21、または22染色体のセントロメアに位置するαサテライトDNAにハイブリダイズするプローブを使用することができる。好ましい対照セントロメアプローブは、第11染色体のαサテライトDNAにハイブリダイズするもの、例えば、Cep11である。MYCに対するプローブは、Vysis LSI MYCであり得る。前記キットは、ブロッキング剤またはプローブ、プローブの検出を容易にするための種々の標識または標識剤、ハイブリダイゼーション用試薬(例えば、緩衝液)、中期スプレッドなどをさらに含み得るか、またはこれらからなり得る。
(a)患者における悪性黒色腫の診断および予後予測を可能にする1つ以上のプローブのセットと、(b)患者における悪性黒色腫を診断するための説明書、および/または患者における悪性黒色腫の転移を予後予測するための説明書とを含むか、またはこれらからなるキットも提供される。前記プローブのセットは、RREB1に対するプローブ、MYCに対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含み、(b)前記患者における悪性黒色腫を診断するための説明書は、前記患者から得られた診断試料におけるRREB1のコピー数、MYCのコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCのコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、前記患者が悪性黒色腫を有することを示し、および/または前記患者における悪性黒色腫の転移を予後予測するための説明書は、前記患者から得られた悪性黒色腫試料におけるRREB1のコピー数、MYCのコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCのコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、転移が起こる可能性があることを示す。前記RREB1に対するプローブは、Vysis LSI RREB1であり得る。前記MYCに対するプローブは、Vysis LSI MYCであり得る。前記CCND1に対するプローブは、Vysis LSI CCND1であり得る。前記CDKN2Aに対するプローブは、Vysis LSI CDKN2Aであり得る。前記キットは、ブロッキング剤またはプローブ、プローブの検出を容易にするための種々の標識または標識剤、ハイブリダイゼーション用試薬(例えば、緩衝液)、中期スプレッドなどをさらに含み得るか、またはこれらからなり得る。
(a)患者における悪性黒色腫の転移の予後予測を可能にするプローブのセットであって、RREB1に対するプローブ、MYCまたはZNF217に対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含むプローブのセットと、(b)前記患者における悪性黒色腫を予後予測するための説明書であって、前記患者から得られた試料におけるRREB1のコピー数、MYCまたはZNF217のコピー数、CCND1のコピー数およびCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、前記RREB1のコピー数が増加しており、前記MYCまたはZNF217のコピー数が増加しており、前記CCND1のコピー数が増加しており、および前記CDKN2Aのコピー数が減少している場合、転移が起こる可能性があることを示す説明書とを含むか、またはこれらからなるキットがさらに提供される。前記RREB1に対するプローブは、Vysis LSI RREB1であり得る。前記MYCに対するプローブは、Vysis LSI MYCであり得る。前記CCND1に対するプローブは、Vysis LSI CCND1であり得る。前記CDKN2Aに対するプローブは、Vysis LSI CDKN2Aであり得る。前記ZNF217に対するプローブは、Vysis LSI ZNF217であり得る。前記キットは、ブロッキング剤またはプローブ、プローブの検出を容易にするための種々の標識または標識剤、ハイブリダイゼーション用試薬(例えば、緩衝液)、中期スプレッドなどをさらに含み得るか、またはこれらからなり得る。
(a)患者における非定型スピッツ腫瘍の転移の予後予測を可能にするプローブのセットであって、RREB1に対するプローブ、CCND1に対するプローブおよびCDKN2Aに対するプローブを含むプローブのセットと、(b)前記患者における非定型スピッツ腫瘍の転移を予後予測するための説明書であって、前記患者由来の腫瘍試料におけるRREB1、CCND1および/またはCDKN2Aのコピー数を決定することを含み、RREB1のコピー数が増加しているか、またはCCND1のコピー数が増加しているか、またはCDKN2Aがホモ接合性欠失である場合、悪性の転移が起こる可能性があることを示し、およびCDKN2Aがホモ接合性欠失である場合、さらにより悪性の転移が起こる可能性があることを示す説明書とを含むか、またはこれらからなるキットもさらに提供される。前記RREB1に対するプローブは、Vysis LSI RREB1であり得る。前記CCND1に対するプローブは、Vysis LSI CCND1であり得る。前記CDKN2Aに対するプローブは、Vysis LSI CDKN2Aであり得る。前記キットは、ブロッキング剤またはプローブ、プローブの検出を容易にするための種々の標識または標識剤、ハイブリダイゼーション用試薬(例えば、緩衝液)、中期スプレッドなどをさらに含み得るか、またはこれらからなり得る。
以下の実施例は、本開示を例証するのに役立つ。実施例は、何ら特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
[実施例1]
本実施例では、悪性黒色腫を有する患者における転移の予後予測において、CCND1単独、またはこれを対照セントロメアとさらに組み合わせたもの、およびMYCを評価することを説明する。
Northwestern University Dermatology Archivesにおいて、黒色腫および確認された転移を有する患者(n=55)を特定した。患者には、リンパ節に限定された転移(n=15)、in−transit疾患(n=8)および遠隔転移(n=32)を有する者が含まれていた。患者55人のうちの27人(27)は、疾患の結果死亡した。ブレスローの深さが1mm以下の患者数は4人であり、ブレスローの深さが1mm超4mm以下の患者数は37人であり、ブレスローの深さが4mm超の患者数は14人であった。最低5年間の経過観察後に転移を有しない患者42人が有していたブレスローの深さは、転移を有する患者のものとほぼマッチしていた。ブレスローの深さが1mm以下の患者数は12人であり、ブレスローの深さが1mm超4mm以下の患者数は24人であり、ブレスローの深さが4mm超の患者数は6人であった。スライド、組織塊および臨床経過がすべて利用可能であった症例のみが研究に含まれていた。全症例の病理組織は、皮膚病理学者が検証した。臨床経過に沿って、ブレスローの深さ、年齢、性別、部位、潰瘍形成の有無、有糸分裂数およびクラークレベルを記録した。
研究の開始時点において、黒色腫データベースの分析により、6p25、Cen6(セントロメア6)、6q23および11q13を標的とする黒色腫用臨床診断プローブセットを用いたFISHによって研究された黒色腫182例が明らかになった。黒色腫31例は、標的領域におけるコピー数異常の証拠を示さなかった(コホート1)。明らかな良性母斑35例を対照として選択した。次いで、8個のさらなる遺伝子座、即ち、9p21(CDKN2A)、Cen9(セントロメア9)、8q24(MYC)、7q34(BRAF)、Cen17(セントロメア17)、Cen10(セントロメア10)、20q13(ZNF217)および1q25(Cox2)に対するプローブを用いて、黒色腫31例および母斑対照35例を評価した。これら8個の遺伝子座は、6p25、6q23、Cen6および11q13と共に、黒色腫における最も頻繁な異常遺伝子座についてのCGHデータの組み合わせ分析によって最初に同定された上位12個に入る遺伝子座であった(Gerami et al.(2009)、前掲)。これらのプローブを2つのパネルに配置した。第1のパネルは、9p21、Cen9、1q25およびCen17を含んでいた。第2のパネルは、8q24、7q34、Cen10および20q13を含んでいた。ハイブリダイゼーションはすべて、以前に記載されているように(Gerami et al.(2009)、前掲)、ホルマリン固定パラフィン包埋切片で実施した。症例診断を把握していないレビュアーが、下記プロトコールを使用して症例を計数した。最も相補的および付加的なさらなる標的を同定するために、黒色腫群における最も頻繁な異常遺伝子座を母斑対照群と比べて調査する判別分析を実施した。
転移を有する55例および転移を有しない42例を含む黒色腫97例(コホート2)を、2つのプローブパネルを用いてFISHによって分析した。第1のパネルは、6p25(RREB1)、6q23(MYB)、cen6および11q13(CCND1)を標的とする黒色腫用インデックスプローブセットを含んでいた。第2のパネルは、コホート1の判別分析で同定した4個の標的、即ち、9p21(CDKN2A)、cen9、8q24(MYC)および20q13(ZNF217)を含んでいた。症例の状態が転移性または非転移性であると把握していないレビュアーが、全検体を計数した。第1のパネルでは97症例のうちの97症例、および第2のパネルでは97症例のうちの91症例において、ハイブリダイゼーションの質が高い計数に十分な組織を得た。
ハイブリダイゼーションの手順は、以前に記載されているように実施した(Gerami et al.(2009)、前掲)。単一帯域フィルタを備える落射蛍光顕微鏡(Abbott Molecular,Inc.,Des Plaines,IL)を用いて、スライドを分析した。分析は、熟練の技術者および皮膚病理学者が実施した。すべての分析は、検体の診断を伏せて実施した。低倍率のDAPIフィルタを使用して、担腫瘍領域を局在化した。次いで、任意のプローブの異常コピー数を持つ核の存在について、腫瘍領域を徹底的に検査した。計数のために、最も有意なコピー数変化を有する領域を選択した。可能な限り、3つの異常領域を選択し、各領域内で、10個の核を高倍率(60x対物レンズ)で無作為に分析した。核はオーバーラップしておらず、十分に明るいシグナルを持たなければならなかった。2個以上のプローブについてのシグナルを示さなかった核は分析しなかった。各検体において、30個の細胞を計数した。
各検体の各プローブについて、以下のパラメータを計算した:核1個あたりの平均シグナル数、2シグナル超のシグナル数(%増加)、2シグナル未満のシグナル数(%減少)または2シグナルとは異なるシグナル数(%異常)を有する核の割合。あるプローブのシグナルが別のものと比較して多かったかまたは少なかった核の割合(それぞれ%相対増加および%相対減少)、および2個のプローブの比(あるプローブの全シグナルの合計を別のプローブの全シグナルの合計で割ったもの)も計算した。転移症例および非転移症例について、幅広い数のパラメータを別々に計算し、スチューデントt検定によって比較した。転移症例対非転移症例を判別した最良の組み合わせをもたらした個々のカットオフおよびパラメータの組み合わせを、「理想からの距離」(DFI)パラメータ(DFI=[(1−感度)2+(1−特異性)2]−1/2)およびAUC、即ち、受信者動作特性(ROC)曲線下面積を計算することによって決定した(図1aから図1dを参照のこと。)。各パラメータについて閾値を独立に変化させて、点領域をグラフ上に作成し、各特異性値において最高感度値を有する点を使用して、曲線を定義した。転移症例対非転移症例を区別するための最適な基準を特定し、次いで、この基準を満たす症例対この基準を満たさない症例のカプランマイヤー曲線、および群全体のカプランマイヤー曲線をプロットした。
また、ブレスローの深さ、および他の統計的に有意なFISHパラメータと組み合わせた深さに従って、ROC曲線を計算した。次いで、ブレスローの深さおよびFISHを組み合わせた最適な判別基準のカプランマイヤー曲線をプロットした。ブレスローの深さが1mm以下の症例、ブレスローの深さが1mm超4mm以下の症例、およびブレスローの深さが4mm超の症例を含むブレスローサブグループ内で、この分析を繰り返した。2mm以下の全症例および2mm超の全症例についての個別分析も実施した。ログランク検定を使用して、カプランマイヤー曲線の差のp値を計算した。
ブレスローの深さ、年齢、性別、部位、有糸分裂数、潰瘍形成の有無およびクラークレベルを含む最新のAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)基準すべて、ならびに連続型変数としてCCND1/Cep6およびMYC値の最適な単一パラメータFISH基準を使用したロジスティック回帰分析を実施した。
コホート1のデータセットでは、遺伝子座9p21、8q24および20q13を最も頻繁に変化する遺伝子座として、およびそれ故に最も相補的な標的として同定した。コホート2のデータセットでは、約1.55超の平均CCND1/第6染色体、および約2.48超の平均MYCコピー数を、転移に最も高度に関連する2つのパラメータであると同定した(図1aを参照のこと。)。CCND1/第6染色体の基準は、転移に対して95%の特異性および38%の感度であった。陽性予測値(PPV)は91%であり、陰性予測値(NPV)は54%であった。この基準を満たす症例対この基準を満たさなかった症例、および群全体について、カプランマイヤー曲線をプロットした(図1bを参照のこと。)。ログランク検定を使用すると、転移群と非転移群との間の差は、6.48×10−6のp値になった。MYCの基準は、転移に対して90%の特異性および32%の感度であり、PPVは80%であり、NPVは53%であった。カプランマイヤー曲線により、MYC基準を満たす症例と、MYC基準を満たさなかった症例と、群全体との間の差も実証された(図1cを参照のこと。)。ログランク検定によると、転移群と非転移群との間の差は、5.61×10−3のp値になり、これもまた有意に達した。従って、2つの基準のいずれかを満たす場合、患者は、転移群に属する可能性が高かった。
特定のCCND1/第6染色体の値またはMYC平均コピー数の値を満たせばよい組み合わせ基準も、転移に高度に関連していた。CCND1/第6染色体の値が1.59超であるか、またはMYC平均コピー数が2.48超の症例対これらの基準のいずれも満たさない症例のカプランマイヤー曲線の差のp値は、8.9×10−7であった(図1dを参照のこと。)。
ブレスローの深さが1mm以下の患者計16人が、この研究に含まれていた;これらの患者のうちの4人は、転移を有していた。MYCコピーおよび/またはCCND1/第6染色体の増加も、この群の転移患者に特徴的であった。CCND1/第6染色体の値について、患者16人全員を分析し、MYC平均コピー数について、患者16人のうちの15人を分析した。ブレスローの深さが1mm以下の患者では、1.55のCCND1/第6染色体カットオフ値は、転移に対して100%の特異性であり、この基準を満たす患者2人のうちの2人が転移を有していた。CCND1/第6染色体のカットオフ基準は50%の感度であり、この群の転移患者4人のうちの2人を特定した。ブレスローの深さが1mm以下の患者では、2.48のMYCカットオフ値も、転移に対して100%の特異性であり、この基準を満たす患者2人のうちの2人が転移を有していた。MYCのカットオフ基準は67%の感度であり、この群の転移患者3人のうちの2人を特定した。CCND1/第6染色体の値が1.55超であるか、またはMYC平均コピー数が2.48超の患者の組み合わせ基準を使用すると、ブレスローの深さが1mm以下の患者に対して100%の感度および100%の特異性であった。これらの数は、より詳細な統計分析には少なすぎるが、これらの予備的結果は、これらのマーカーが、薄い黒色腫を有する患者の中から高リスク患者を特定することができることを示唆している。
ブレスローの深さが2mm以下の患者計57人が、この研究に含まれていた。CCND1/第6染色体の値のデータは、患者57人全員について利用可能であったが、平均MYCの値のデータは、患者57人のうちの53人について利用可能であった。患者57人のうち、26人で転移事象が起こった。ブレスローの深さが2mm以下の患者では、約1.55超のCCND1/第6染色体の値は、転移に対して94%の特異性および42%の感度であった。図2aは、ブレスローの深さが2mm以下の患者全員、CCND1/第6染色体が1.55超のもの、およびCCND1/第6染色体が1.55未満のもののカプランマイヤー曲線を示す。1.55超および1.55未満の患者の曲線を比較する際のp値は、4.8×10−5で非常に有意であった。ブレスローの深さが2mm以下の患者では、2.48超の平均細胞数のMYC基準は、転移と最も強い関連性を示した。1.55のカットオフ値は、87%の特異性および39%の感度であった。図2bは、ブレスローの深さが2mm以下の患者全員、ならびにMYC基準を満たすもの、およびMYC基準を満たさないもののカプランマイヤー曲線を示す。この基準を満たす患者およびこの基準を満たさない患者の曲線の差は、8.24×10−3のp値で非常に統計的に有意であった。2.36の平均MYCコピー数および1.38のCCND1/第6染色体を要求するカットオフは、93%の特異性および48%の感度をもたらした。この基準を満たす症例対この基準を満たさない症例のカプランマイヤー曲線の差は、4.16×10−5であった。
ブレスローの深さが1mm以上4mm未満の患者では、1.55超のCCND1/第6染色体のカットオフが、最大判別値を保持した。このブレスローカテゴリでは、CCND1/第6染色体の値は患者61人で利用可能であり、このブレスローカテゴリでは、MYC平均コピー数は患者58人で利用可能であった。このブレスロー群では、CCND1/第6染色体の値は、転移に対して92%の特異性および43%の感度であった。この基準を満たす患者対この基準を満たさない患者のカプランマイヤー曲線の差のp値は、ログランク検定によれば5.57×10−4であった(図3aを参照のこと。)。2.60超のMYC平均コピー数のカットオフは、91%の特異性および17%の感度であった。この値を超える症例は転移傾向が高かったが、この基準を満たす患者とこの基準を満たさない患者との間のカプランマイヤー曲線の差のp値は、感度が低いため統計的な有意に達しなかった(図3bを参照のこと。)。
ブレスローの深さが2.0mm超の患者では、CCND1/第6染色体およびMYCのパラメータは、最も高リスクな症例と強い関連性を示し続けた。CCND1/第6染色体のカットオフ値が1.55超の10症例のうちの10症例が転移を有していたが(100%の特異性)、ブレスローの深さが2.0mm超でありCCND1/第6染色体の値が1.55未満の患者は30人のうちの19人のみが転移を有していた。図4aでは、カプランマイヤー曲線は、CCND1/第6染色体の値が1.55超でありブレスローの深さが2.0mm以上の症例対CCND1/第6染色体が1.55未満でありブレスローの深さが2.0超の症例、CCND1/第6染色体が1.55超でありブレスローの深さが2.0以下の症例、およびCCND1/第6染色体の値が1.55未満でありブレスローの深さが2.0未満の症例の曲線の差を示す。CCND1/第6染色体の値が2.0以上でありCCND1/第6染色体が1.55超の患者では、転移の可能性が、CCND1/第6染色体が1.55以下の患者よりも有意に高かった。ログランク検定によれば、これらの症例のカプランマイヤー曲線の差のp値は.001未満であり、非常に統計的に有意であった。平均MYC値が2.22超でありブレスローの深さが2.0超の患者21人のうちの19人(90%)が、転移を発症した。平均MYC値が2.22以下でありブレスローの深さが2.0超の患者9人のうちの6人(66%)が、転移を発症した。これらの2群のカプランマイヤー曲線の差は、ログランクおよびウィルコクスン検定によれば.0001未満のp値で統計的に有意であった(図4bを参照のこと。)。
独立した予後パラメータとして、平均MYC値、CCND1/第6染色体の値、潰瘍形成の有無、クラークレベル、ブレスローの深さ、性別、年齢、部位、有糸分裂数、特定した平均MYC値、およびCCND1/第6染色体の値を含むロジスティック回帰分析(図5aを参照のこと。)を実施した。多変量分析により、CCND1/第6染色体が、すべての変数の中で最高の予後予測力を有し、MYC平均値が2番目に高い予後予測力を有することが示された。
従って、2個の癌遺伝子CCND1およびMYCのコピー数増加は、転移に高度に関連することが分かった。約1.55超のCCND1/第6染色体の平均値をもたらすCCND1のコピー数増加は、転移を有する症例と転移を有しない症例とを判別した。Cep6は参照プローブとして機能し、四倍性の効果をなくすことによって、CCND1特異的な増加の過剰推定を回避するのに役立つ(Isaac et al.,Am.J.Dermatopathol.32(2):144−148(2010))。この知見は非常に特異的(95%)であり、転移のPPVが91%であった。同様に、約2.48超の平均コピー数を有するMYC基準は非常に特異的(90%)であり、PPVが80%であった。カプランマイヤー分析およびロジスティック回帰分析を含む幾つかのさらなる統計分析により、これらのパラメータの転移との強い関連性が確認された。実際、多変量分析では、CCND1/第6染色体およびMYC平均コピー数は、現在認められている他のAJCC予後因子、例えば、ブレスローの深さ、クラークレベル、潰瘍形成の状態、性別、部位および年齢よりも統計的に有力であった。
CCND1およびMYCの増加の有意性は、種々のブレスローの深さのカテゴリを通して明白であり続けた。種々のブレスローの深さのカテゴリでは、このことは、CCND1/第6染色体の基準を満たす患者対この基準を満たさない患者のカプランマイヤー曲線を比較することによって明白であった。全体的には、CCND1/第6染色体の陽性値(即ち、約1.55超)を有していた、データセット全体からの患者21人のうち、20人が、1mm超4mm以下のブレスローの深さを有していた。従って、これらの患者の大部分は、転帰に大きなばらつきがあり得るグループである第II病期または第III病期であろう。従って、これらの患者における予後予測の改善は、明らかに妥当であり有益である。平均MYCコピー数が約2.6超の患者8人のうち、7人が、1mm超4mm以下のブレスローの深さを有していた。このブレスローの深さの群における患者60人のコホート全体と比較すると、CCND1基準またはMYC基準のいずれかを満たす患者は、転移群である可能性が有意に高かった。従って、これらのマーカーは、これらの癌遺伝子に対して特異的な標的化阻害剤に反応する、伝統的分類の中間段階の高リスク患者、および疾患の初期段階の患者を特定することができる。
上記マーカーを伝統的なマーカー、例えば、ブレスローの深さと組み合わせると、付加的な情報を得ることができる。例えば、ブレスローの深さが2mm超の患者のサブグループの分析では、CCND1/第6染色体が1.55超の患者は、CCND1/第6染色体が1.55以下の患者よりも有意に予後不良であった。図4aは、ブレスローの深さおよびCCND1/第6染色体の値の組み合わせが、4つの潜在的に異なる曲線をもたらすことを示しており、ブレスローの深さが2mm超でありCCND1/第6染色体が1.55以下の患者は予後最良であり、ブレスローの深さが2mm超でありCCND1/第6染色体が1.55超の患者は予後不良であった。同様に、ブレスローの深さが2mm超であり平均MYCコピー数が2.48超の患者は、ブレスローの深さが2mm超でありMYCのコピー数が2.48以下の患者よりも有意に予後不良であった。図4bは、ブレスローの深さおよびMYCのコピー数に応じた4つの異なるKM曲線を実証しており、ブレスローの深さが2mm超であり平均MYCコピー数が2.22超の患者は予後不良であり、ブレスローの深さが2mm未満であり平均MYCコピー数が2.22以下の患者は予後最良である。
CCND1/第6染色体およびMYC、ならびにブレスローの深さ、クラークレベル、潰瘍形成の有無、性別、年齢、部位および有糸分裂数を調べるロジスティック回帰分析(表1および2を参照のこと。)は、これらのFISHパラメータが独立した予後因子であることをさらに裏付けている。加えて、多変量分析は、AJCCによって現在使用されている上記他の予後因子と比較して、CCND1/第6染色体およびMYCが、予後予測力においてそれぞれ第1位および第2位であることを示している。
上記データは、2個の癌遺伝子、即ち、CCND1およびMYCの特異的なコピー数増加を予後不良と高度に関連付けるものであり、これらが黒色腫における駆動遺伝子であることをさらに暗示している。従って、これらの遺伝子の両方が、治療標的候補であり得る。
上記に加えて、悪性黒色腫を有する患者における転移の予後予測では、CCND1コピー数/細胞の増加、CCND1が増加している細胞の割合、MYCが増加している細胞の割合およびCCND1/対照セントロメア(例えば、第6染色体のセントロメア)が増加している細胞の割合も評価した。このようなパラメータは、ロジスティック回帰分析では統計的有意性で、転移に進行する患者と、転移に進行しない患者とを判別することが示された。カットオフを定義するために、受信者動作特性(ROC)曲線を作成した(図7を参照のこと;表4も参照のこと。)。最適なカットオフは、約90%超の特異性および約30%超の感度をもたらすものであると考え、特異性を優先して、即ち、転移を有しない患者を「陽性」と判定する可能性を最小限にするように、カットオフを選択した。このような割合は予後的であったことが発見された。生存分析において、このカットオフを確認した(p<0.05)。MYCのコピー数が約2.48超/細胞(約2.07から約2.53の範囲)である場合、転移が起こる可能性があることを示す(感度/特異性(%)=32/90(84/44(ROCで最良)から32/90(選択したカットオフで最低))に対応する。)。CCND1/対照セントロメアのコピー数比が約1.55超/細胞(約1.33から約1.56の範囲)である場合、転移が起こる可能性があることを示す(感度/特異性(%)=34/93(68/68(ROCで最良)から32/95)に対応する。)。CCND1のコピー数/細胞が約2.81超(約2.23から約2.96の範囲)に増加している場合、転移が起こる可能性があることを示す(感度/特異性(%)=24/90(68/66(ROCで最良)から24/93)に対応する。)。CCND1が増加している細胞の割合が約51%超(約30%から約53%の範囲)である場合、転移が起こる可能性があることを示す(感度/特異性(%)=26/90(74/66(ROCで最良)から26/90)に対応する。)。MYCが増加している細胞の割合が約51%超(約20%から約53%の範囲)である場合、転移が起こる可能性があることを示す(感度/特異性(%)=26/93(90/46(ROCで最良)から26/93)に対応する。)。CCND1/対照セントロメア(例えば、第6染色体のセントロメア)が増加している細胞の割合が約61%超(約54%から約63%の範囲)である場合、感度/特異性(%)=32/90(58/81(ROCで最良)から32/90)に対応する。CCND1が増加している細胞の割合が約30%以上(カイ二乗=5.10296791、カイ二乗=0.0239よりも大きい確率)であり、および/またはMYCが増加している細胞の割合が約20%超(カイ二乗=6.12580207、カイ二乗=0.0133よりも大きい確率)である場合、転移が起こる可能性があることを示した。
[実施例2]
本実施例では、悪性黒色腫の診断において有用なプローブセットの決定について説明する。
Northwestern University Lurie Cancer Center(Chicago,IL)およびNorthwestern University Internal Review Board(IRB)(Chicago,IL)からの承認後に、FISHによる研究のために、黒色腫207例および母斑218例を含む検体計425例を、Archives of the Northwestern University Department of Dermatologyから特定した。全検体は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織から構成されていた。全症例を評価し、皮膚病理学者が診断を確認した。4つの個別のコホートで、検体を研究した。黒色腫であると明らかに組織学的診断されたが、プローブセット1(RREB1(ras−応答因子結合タンパク質1;6p25)、MYB(6q23)、Cep6(セントロメア6)およびCCND1(11q13))によるFISHでは陰性結果の症例について黒色腫データベースを検索することによって特定した31症例から、コホート1は構成されていた。また、軽度、中度および重度の異型性を含む様々な程度の異型性を有する明らかな良性母斑34症例を選択した。さらなる分析のための最良のプローブの組み合わせを開発するために、このコホートを使用した。コホート2、3および4の症例は、FISHによって過去に研究されていなかった。コホート2は、黒色腫49例および母斑51例から構成されていた。プローブの組み合わせをさらに絞り込むために、このコホートを使用した。コホート3は、さらなる黒色腫72例および母斑85例から構成されており、「最良の」プローブの組み合わせのためのカットオフを開発するのに使用した。第4のコホートは、黒色腫51例および母斑51例から構成されており、先のコホートを使用して開発した組み合わせおよびカットオフを検証するのに使用した。
下記多色プローブセットによるFISHは、以前に記載されているように実施した(Busam et al.,J.Cutan.Pathol 37(2):196−203(2010))。単一帯域フィルタを備える落射蛍光顕微鏡(Abbott Molecular,Inc.,Des Plaines,IL)を用いて、スライドを分析した。分析は、熟練の技術者および皮膚病理学者が実施した。すべての分析は、検体の診断を伏せて実施した。低倍率のDAPIフィルタを使用して、担腫瘍領域を局在化した。次いで、任意のプローブの異常コピー数を持つ核の存在について、腫瘍領域を徹底的に検査した。計数のために、最も有意なコピー数変化を有する領域を選択した。可能な限り、3つ以下の異常領域を選択し、各領域内で、最低10個の核を高倍率(60x対物レンズ)で無作為に分析した。定量するために、核はオーバーラップしておらず、十分に明るいシグナルを持たなければならなかった。3個以上のプローブについてのシグナルを示さなかった核は分析しなかった。各検体において、30個の細胞を計数した。FISHの計数および組織病理学について非常に経験豊富な技術者が計数した。
データは、各検体の個々の細胞における各プローブのシグナル数の形で得られた(1検体あたり30個の細胞を計数した。)。次いで、各プローブについて、1検体ごとに以下のパラメータを計算するために、データを縮小した:
−%増加:プローブシグナルが2超の細胞の割合(シグナルが2超の細胞の数を、計数した細胞の数で割って100を乗じたもの)、および
−%減少:プローブシグナルが2未満の細胞の割合(シグナルが2未満の細胞の数を、計数した細胞の数で割って100を乗じたもの)
CDKN2A(9p21)の場合、CDKN2A遺伝子座のホモ接合性欠失の割合(または、細胞1個あたりのゼロシグナル)をさらに計算した。加えて、幾つかの場合、2個のプローブの比を作成し、細胞1個あたりの比の増加を1超、および細胞1個あたりの比の減少を1未満であると考え、これらの比の%増加、%減少および%アンバランスを計算した。
一般に、2つの分析方法を使用した。第1の方法は、黒色腫または母斑として分類されるものの確率を分類するために、ロジスティック回帰モデルを使用することを含んでいた。第2の方法は、黒色腫対母斑を判別する感度および特異性を計算するために、各FISHパラメータの様々なカットオフ値を使用することを含んでいた。複数のプローブの組み合わせでは、各パラメータについてカットオフを独立に変化させて、点領域をグラフ上に作成し、各特異性値において最高感度値を有する点を使用して、受信者動作特性(ROC)曲線を定義する。ROC曲線から、理想からの距離(DFI)およびROC曲線下面積(AUC)を計算した。
DFIパラメータは、以下のように計算した:
DFIは、ROC曲線から感度1および偽陽性率(1−特異性)0までの最小距離を表す。DFIは0から1の範囲であり、0が理想的である。
可能な組み合わせおよびカットオフ値を作成するためには、統計的方法を使用したが、カットオフ値およびプローブの組み合わせの最終決定につながる種々のトレードオフを検討するためには、科学的判断を使用した。具体的には、各検体コホートについて、プローブの選択、プローブセットの定義および検証のために、以下の分析を行った。
コホート1
Bastianらによる黒色腫の比較ゲノムハイブリダイゼーションデータの組み合わせ分析における過去の研究では、14個の遺伝子座が、最も頻繁に変化するものとして同定された。これには、プローブセット1に使用したプローブが含まれている(Busam et al.(2009)、前掲)。このリストの残りのプローブのうち、以下の8個のさらなるプローブ:CDKN2A(9p21)、セントロメア9(Cep9)、MYC(8q24)、BRAF(7q34)、セントロメア17(Cep17)、セントロメア10(Cep10)、ZNF217(ジンクフィンガータンパク質17;20q13)およびCox2(1q25)を選択し、2個のプローブセットに配置した。これには、CDKN2A(9p21)、セントロメア9(Cep9)、Cox2(1q25)およびセントロメア17(Cep17)が第1のプローブセットに含まれており、MYC(8q24)、BRAF(7q34)、セントロメア10(Cep10)およびZNF217(20q13)が第2のプローブセットに含まれていた。両方のプローブセットを、コホート1の黒色腫31例および母斑35例に適用した。黒色腫検体では、どの遺伝子座が、母斑検体と比較して最も頻繁に増加または減少したかを決定するために分析を行って、さらなる評価のために、上位の性能のプローブ4個を選択した(プローブセット2と称される。)。各コホートの良性症例および悪性症例について、各FISHパラメータの平均および標準偏差を個別に計算し、スチューデントt検定によって比較した。さらなる分析のために、2群間で有意差を示すパラメータ(p<0.05)を選択した。この情報を、癌検出のための異なる遺伝子座の感度および特異性として表した。各プローブパラメータ−%増加および%減少−について、個々の陽性閾値を一定範囲でシフトさせて、ROC曲線を作成した。感度および特異性についての理想からの最小距離(DFI)およびAUCを計算した。
コホート2
コホート2では、最良の感度および特異性の組み合わせをもたらしたパラメータの組み合わせを決定した。プローブパラメータをすべての可能な2個、3個および4個の組み合わせにグループ分けし、次いで、ロジスティック回帰モデルを使用して分析した。個々のカットオフ値の計算を可能にするものではないが、ロジスティック回帰は、ROC曲線およびこの面積ならびに最小DFIの推定を可能にする。この分析に基づいて、9p21内のホモ接合性欠失および第9染色体外側にある3個の他の標的を含む上位の性能のプローブの組み合わせ4個を同定した。
コホート3
コホート3は、RREB1(6p25)、p16(9p21)、CCND1(11q13)およびMYC(8q24)を標的とする最終選択プローブセットを使用して評価した黒色腫72例および母斑85例を含む検体157例から構成されていた。最終プローブセットの最適な陽性カットオフを選択するために、コホート2の分析に基づいて、コホート3のデータセットを使用してプローブパラメータの種々のカットオフを調べた。4個のプローブの組み合わせ内では個々のプローブに基づいてカットオフを計算し、4個のプローブ全体の固定値としても計算した。四倍体細胞および準最適なハイブリダイゼーションの細胞の影響を軽減するために、2つのさらなるルールをシグナル計数に適用した。四倍体細胞の影響を軽減するために、CDKN2A、RREB1、CCND1およびMYCが3から4シグナルの細胞は、割合(減少、増加、アンバランスまたはホモ接合性)を計算するのに使用する分子に含めなかったが、分母には含めた。不十分なハイブリダイゼーションの影響を軽減するために、4個のプローブうちの任意の3個以上のシグナルがゼロの細胞は、割合(減少、増加、アンバランスまたはホモ接合性)の計算から除外した。ROC曲線を作成し、DFIおよびAUCの値を計算した。
コホート4
検証コホートとして、黒色腫検体51例および母斑検体51例から構成される独立したコホートを、新たに決定したプローブセット3および所定の基準で評価した。公開されている元のカットオフ(Busam et al.(2009)、前掲)を使用して、このコホートをプローブセット1でも評価した。このデータセットのプローブは、プローブセット1ではRREB1、MYB、CCND1およびCep6であり、プローブセット3ではRREB1、CDKN2A、CCND1およびMYCであった。
図5は、CDKN2A(9p21)、Cep9(セントロメア9)、MYC(8q24)、BRAF(7q34)、Cep17、Cep10、ZNF217(20q13)およびCox2(1q25)を標的とするプローブを用いて、黒色腫31例および母斑35例を含むコホート1を分析した評価結果を示す。8個のプローブそれぞれについて計算した代表的なパラメータについて、プロットは、黒色腫群および母斑群における染色体異常(増加または減少)を有する細胞の平均の割合を示す。母斑検体では、染色体が増加している細胞はゼロまたは非常に少数であり、細胞の約18から30%は、主にFFPE検体での核トランケーションにより染色体が明らかに減少していることが示された。黒色腫検体では、有意な染色体コピー数の増加、およびCDKN2A(9p21)遺伝子座に欠失を有する細胞数の上昇が実証された。
表5は、最高AUCおよびDFIによって判断した場合の、上記遺伝子座の判別分析の結果として選択した上位10個の最良のパラメータを示す。判別分析により、CDKN2A(9p21)、Cep9、ZNF217(20q13)およびMYC(8q24)が、プローブセット1と最も相補的なプローブセットとして同定された。黒色腫群と母斑群との間で平均計数値を比較すると、このセットのプローブはそれぞれ、非常に有意なp値を示した。
加えて、ROC分析では、さらなる研究のために選択したプローブに基づくパラメータが、最高AUCおよびDFIを示した。DFI値は、プローブの優先順位決定のみに使用した。RREB1、MYB、CCND1、Cep6、CDKN2A、ZNF217、Cep9およびMYCに対するプローブで分析したコホート2を使用して、最適なプローブの組み合わせを選択した。さらなる調査のために、ロジスティック回帰分析を使用して、最高AUCおよび最低DFIを有する4個のプローブパラメータの4個の組み合わせを選択した(表6)。
コホート2のDFI分析により、上位4個のプローブの組み合わせから、プローブ標的の潜在的なセット2個が同定された。これら2個の組み合わせには、第1のセットではCDKN2A(9p21)、RREB1(6p25)、MYC(8q24)およびCCND1(11q13)が含まれており、第2のセットではCDKN2A(9p21)、RREB1(6p25)、MYC(8q24)およびZNF217(20q13)が含まれていた。両セットは、それぞれ0.145対0.113の優れたDFIを有しており、差はごくわずかであった。過去の予後研究では、8q24(Barnhill et al.(1999)、前掲)および11q13遺伝子座の有意な予後価値が示されたので、アッセイの予後ポテンシャルを最大限にするために、第1の組み合わせを選択した。従って、選択した最終プローブセットには、CDKN2A(9p21)、RREB1(6p24.3)、MYC(8q24)およびCCND1(11q13.3)が含まれていた。これをプローブセット3と名付けた。
コホート3を使用して、カットオフを決定した。プローブセット3で試験したコホート3の検体157例のROC曲線を図6に示す。個々の各プローブパラメータ(CDKN2Aの%ホモ接合性、RREB1の%増加、MYCの%増加、およびCCND1の%増加)および4個のパラメータの組み合わせのプロットを示す。特異性が95%以上である領域の目的曲線領域では、4個のプローブの幾つかのカットオフの組み合わせが利用可能であり、プロット上ではこれらを薄黒丸によって表した。
図6は、個々のFISHパラメータ(CDKN2Aの%ホモ接合性、RREB1の%増加、MYCの%増加およびCCND1の%増加)および4個のパラメータの組み合わせのROCプロットである。黒色腫検体72例および母斑検体85例(コホート3)のFISH評価から、パラメータを計算した。最高感度および特異性は、最小DFIの点で示されている。保守的に選択したカットオフセットの性能を矢印によって示す。プロット上では、各プローブについて選択した27%のカットオフをエラーとして示す。黒丸によって強調されているAUCは、感度および特異性の目的領域を示す。
本発明者らの実際的経験では、8/30未満のカットオフは、四倍体の結果としての偽陽性に対していくらか影響を受けやすいので、検体を陽性と判定するためには、細胞30個のうちの8個以上が異常でなければならないという条件を使用して、最も保守的なカットオフを選択した。図6から明らかなように、この条件を満たすカットオフは、4個のパラメータすべてについて同じ(CDKN2Aの%ホモ接合性、RREB1の%増加、MYCの%増加およびCCND1の%増加について、それぞれ27、27、27、27)であり、83.33%の感度および100.00%の特異性をもたらした。つまり、このコホートでは、陽性予測値が1.0であり、陰性予測値が0.88であるということになる。また図6から明らかなように、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失は、スピッツ母斑とスピッツ様黒色腫との区別について高い判別価値を示した。
カットオフの選択に加えて、新たなプローブセットの性能をプローブセット1の性能と比較した。表7は、公開されている評価基準および陽性カットオフ(Gerami et al.,Am.J.Surg.Pathol.33(12):1783−1788(2009))を使用したプローブセット1の性能を、2つの異なるカットオフセット:ROC曲線で最高感度および特異性をもたらすものおよび保守的に選択したものを用いた新たなプローブセットの性能と比較して示す。プローブセット1は、72%の感度および98%の特異性をもたらしたが、保守的に選択したカットオフを用いた、プローブセット3として知られる新たなプローブセットは、83%の感度および100%の特異性を実証した。
CDKN2A(9p21)、RREB1(6p24.3)、MYC(8q24)およびCCND1(11q13.3)から構成されるプローブセットの検証研究では、コホート3で確立した所定のカットオフを使用して、黒色腫検体51例および母斑検体51例の独立したコホートを分析した。細胞を陽性と判定するための以下のルールを適用した:
−−ある細胞が、3個のプローブ(MYC、CCND1およびRREB1)すべてについて細胞が四倍体である場合、この細胞は、MYC、CCND1およびRREB1について異常であるとして計数しない。
−−ある細胞が、3個のプローブ(MYC、CCND1およびRREB1)すべてについて細胞が四倍体である場合であって、これが9p21欠失についてホモ接合性である場合、この細胞は、異常であるとして計数する。
この検証コホートにおいて、各プローブについて27%のカットオフ(計数した核の27%以上が異常である場合、検体は陽性である。)を使用して、感度が94%であると決定し、特異性が98%であると決定し、新たなプローブセットの優れた性能を確認した(表8)。細胞30個の27%は細胞8.1個であるので、カットオフとして8個の細胞も使用して分析を行ったところ(計数した核30個のうちの8個以上の核が異常である場合、検体は陽性である。)、さらにより高い感度が得られた(表9)。
9p21の頻繁な減少、および4個の異なる染色体の遺伝子座を標的とすることにより、このアッセイは、四倍体の結果としての偽陽性に対して有意に影響を受けにくくなる。スピッツ様新生物中の四倍体細胞の存在は、プローブセット1による偽陽性の主要原因である。特に切片化で核をトランケーションする場合に、経験不足の計数者が、アンバランスな染色体の増加についての間違った印象を与え得る以外は、四倍体細胞は、良性スピッツ母斑、スピッツ腫瘍およびスピッツ様黒色腫で見られ得るので診断に用いることができない。プローブセット1は、第6染色体の3個の遺伝子座および第11染色体の1個の遺伝子座を標的とするので、四倍体細胞と、第6染色体全体が増加している細胞を区別することは、困難であることが分かる。反対に、プローブセット4が標的とする4個の遺伝子座は、4個の異なる遺伝子座に由来しており、通常は欠失している9p21を標的として含む。従って、9p21を含む4個のプローブすべてについてバランスの取れた増加を示す細胞が四倍体細胞である確率が非常に高い。また、四倍体細胞をより高い信頼性で認識することができるので、偽陽性の原因である四倍性を除外するために、ある手続きを使用することができる。この手続きは、異常細胞の割合を計算する場合に、分子に含まれているものから四倍体細胞を除外するが、分母にはこれらを維持する。これにより、アッセイの感度を減少させずに陽性結果を得るために、クローン異常細胞が計数細胞の中に存在する必要性が本質的に増加する。このルールを適用する場合、感度を有意に減少させることなく、偽陽性の原因としての四倍性が除外される。
コホート2から同定した上位4個の性能のプローブセットの組み合わせのうち、2個のプローブセットが、予後ポテンシャルを示した(表6)。一方のプローブセットは、6p25、9p21、11q13および20q13を標的とするものであり、他方のプローブセットは、6p25、9p21、11q13および8q24を標的とするものであった。DFI値は、20q13を含むプローブセットがわずかに優れていた(8q24および11q13を含むプローブセットの0.145と比較して0.113)。しかしながら、8q24および11q13の予後価値が過去に実証されており、DFIの差がわずかなので、8q24および11q13を含むプローブセットは、曖昧なスピッツ腫瘍では、最大の予後ポテンシャルを有すると予想される。
コホート3について、CDKN2A(9p21)、RREB1(6p25)、MYC(8q24)およびCCND1(11q13)のカットオフを定義するために、受信者動作特性(ROC)曲線を作成した(図8を参照のこと;表10も参照のこと。)。1検体あたり計30個の細胞を分析し、異常細胞の割合を計算した。CDKN2Aを除くすべてのプローブについて3または4のFISHシグナルを有していたが、CDKN2A(9p21)欠失を有していなかった細胞を四倍体であると判断し、異常細胞として計数しなかった;この代わりに、異常細胞の割合を計算するために、これらを正常細胞として計数した。CDKN2A(9p21)を除くすべてのプローブについて3または4のFISHシグナルを有しており、CDKN2A(9p21)欠失を有していた細胞を異常細胞として計数した。上記ルール(「四倍性ルール」)の適用により、良性四倍体母斑(これの細胞は、ゲノム中のすべての染色体が2倍増加していた。)と、黒色腫(これの細胞は、遺伝子座特異的な染色体異常を有していた。)を判別する特異性が増加した。最適なカットオフは、約90%超の特異性および約80%超の感度をもたらすものであると考え、特異性を優先して、即ち、転移を有しない患者を「陽性」と判定する可能性を最小限にするように、カットオフを選択した。このような割合は診断的であったことが発見された。
以下に列挙されているCDKN2A、RREB1、MYCおよびCCND1のFISHパラメータのカットオフの複数の組み合わせは、少なくとも約80%の感度および少なくとも約90%の特異性をもたらした(目的の性能によって定義した場合):
−−CDKN2Aの%ホモ接合性欠失は約20から約33、
−−RREB1の%増加は約20から約33、
−−MYCの%増加は約1から約48、および
−−CCND1の%増加は約11から約46。
各プローブについて約27%の選択カットオフ前後の許容可能範囲内、例えば、27%の選択カットオフにおいて、最低性能および最高性能を定義した具体的なカットオフの組み合わせを表10に示す。
コホート2について、CDKN2A(9p21)、RREB1(6p25)、MYC(8q24)またはCCND1(11q13)のいずれか、およびZNF217のカットオフを定義するために、受信者動作特性(ROC)曲線を作成した(表11を参照のこと。)。1検体あたり計30個の細胞を分析し、異常細胞の割合を計算した。CDKN2Aを除くすべてのプローブについて3または4のFISHシグナルを有していたが、CDKN2A(9p21)欠失を有していなかった細胞を四倍体であると判断し、異常細胞として計数しなかった;この代わりに、異常細胞の割合を計算するために、これらを正常細胞として計数した。CDKN2A(9p21)を除くすべてのプローブについて3または4のFISHシグナルを有しており、CDKN2A(9p21)欠失を有していた細胞を異常細胞として計数した。四倍性ルールの適用により、良性四倍体母斑(これの細胞は、ゲノム中のすべての染色体が2倍増加していた。)と、黒色腫(これの細胞は、遺伝子座特異的な染色体異常を有していた。)を判別する特異性が増加した。最適なカットオフは、約90%超の特異性および約80%超の感度をもたらすものであると考え、特異性を優先して、即ち、転移を有しない患者を「陽性」と判定する可能性を最小限にするように、カットオフを選択した。このような割合は診断的であったことが発見された。
以下に列挙されているCDKN2A、RREB1、ZNF217およびCCND1のFISHパラメータのカットオフの複数の組み合わせは、少なくとも約80%の感度および少なくとも約90%の特異性をもたらした(目的の性能によって定義した場合):
−−CDKN2Aの%ホモ接合性欠失は約20から約30、
−−RREB1の%増加は約27から約30、
−−ZNF217の%増加は約14から約33、および
−−CCND1の%増加は約24から約29。
各プローブについて約27%の選択カットオフ前後の許容可能範囲内、例えば、27%の選択カットオフにおいて、最低性能および最高性能を定義した具体的なカットオフの組み合わせを表11に示す。
以下に列挙されているCDKN2A、RREB1、MYCおよびZNF217のFISHパラメータのカットオフの複数の組み合わせは、少なくとも約80%の感度および少なくとも約90%の特異性をもたらした(目的の性能によって定義した場合):
−−CDKN2Aの%ホモ接合性欠失は約20から約30、
−−RREB1の%増加は約27から約33、
−−MYCの%増加は約14から約33、および
−−ZNF217の%増加は約24から約33。
各プローブについて約27%の選択カットオフ前後の許容可能範囲内、例えば、27%の選択カットオフにおいて、最低性能および最高性能を定義した具体的なカットオフの組み合わせを表12に示す。
[実施例3]
本実施例では、非定型スピッツ腫瘍を有する患者における転移の予後予測において、RREB1、CCND1、CDKN2AおよびMYCを評価することを説明する。
Northwestern University Lurie Cancer CenterおよびNorthwestern University Internal Review Board(IRB)およびInstitutional review boards of Memorial Sloan Kettering、University of Pennsylvania、MD Anderson、University of MichiganおよびMelanoma Institute Australiaからの承認後に、組み入れ基準を満たした計75症例を特定した。これには、病理学者による非定型スピッツ腫瘍の診断が含まれていた。次いで、診断に同意した最低3人の熟練の皮膚病理学者が、全症例を再検討した。病変を非定型スピッツ腫瘍とみなすのに使用した組織学特徴には、限定されないが、通常よりも高い核異型度(nuclear atypia)、膨脹性結節性増殖もしくはシート状増殖、頻繁な、深いもしくは非定型の有糸分裂、成熟の欠如、表皮破壊もしくは潰瘍形成もしくは壊死、大きなサイズ(1cm超)、または皮下脂肪深くへの広がりが含まれていた。加えて、全症例は、センチネルリンパ節を越える腫瘍拡大の証拠がない場合には最低5年間の経過観察を有し、または症例が、進行性局所領域転移または遠隔転移および死亡をもたらすセンチネルリンパ節を越える腫瘍拡大の証拠を有していた場合にはより短い経過観察期間を有していた。組み入れ基準を満たす75症例を特定した。American Joint Committee on Cancer(AJCC)melanoma taskforce(Balch et al.,J.Clin.Oncol.27:6199−6206(2009))によって特定された7個の重要な黒色腫予後因子すべて:原発性腫瘍の解剖学的部位、性別、年齢、潰瘍形成の状態、有糸分裂速度、ブレスローの深さおよびクラークレベルを含む臨床的および組織学的パラメータを、全75症例について得た。また、表皮破壊、膨脹性結節性増殖、Kamino体の存在および細胞形態(主に、類上皮、紡錘体またはこの両方)を、全症例について得た。「表皮破壊」という用語は、本明細書では、基底層および間隙の剥離に伴うことが多い乳頭間隆起パターンの喪失によって、表皮が有意に薄くなる過程を指すのに使用され、すべてが、メラニン細胞の厳密には反対の根本的膨脹性増殖の結果である。症例をこれらの転帰によって4群に分類した。第1群は、3個のカテゴリ、即ち、1x、1aおよび1bを有していた。再切除後に疾患の証拠がなく、センチネルリンパ節生検を実施しなかった症例は、1xであった。再切除後に疾患の証拠がなく、陰性センチネルリンパ節を有していた症例は、1aであり、陽性センチネルリンパ節を有していた症例は、1bであった。センチネルリンパ節の顕微鏡的病変の他に局所領域疾患を有するが、遠隔転移を有しない患者は、第2群として分類した。これには、臨床的に触知可能なリンパ節腫脹、完全切除の際に非センチネルリンパ節中に存在する腫瘍、およびin−transit転移を有する患者が含まれていた。第3群は、遠隔転移を有する患者であり、第4群は、遠隔転移を有する、および疾患により死亡した患者であった。各患者のグループステータスを表13に列挙し、より詳細な病歴を表14に示す。
以下に概説されている多色FISHプローブセットによるハイブリダイゼーションの手順は、以前に記載されているように実施した(Gerami et al.,Am.J.Surg.Pathol.33:1146−1156(2009))。2回のハイブリダイゼーションを個別に実施した−−1回目は、RREB1(6p25)、MYB(6q23)、CCND1(11q13)および第6染色体(Cep6を使用)を標的とする4プローブFISHアッセイを使用し、2回目は、RREB1(6p25)、CDKN2A(9p21)、CCND1(11q13)およびMYC(8q24)を標的とする4プローブFISHアッセイを用いた(Gerami et al.(2009)、前掲;およびGerami et al.,Am.J.Surg.Pathol.36:808−817(2012))。単一帯域フィルタを備える落射蛍光顕微鏡(Abbott Molecular,Inc.,Des Plaines,IL)を用いて、スライドを分析した。分子診断およびFISH試験について経験豊富な熟練の技術者、および症例の臨床データまたは転帰をいずれも把握していない皮膚病理学者が分析を実施した。低倍率のDAPIフィルタを使用して、担腫瘍領域を局在化した。次いで、各プローブの異常コピー数を持つ核の存在について、腫瘍領域を徹底的に検査した。計数のために、最も有意なコピー数変化を有する領域を選択した。可能な限り、3つ以下の異常領域を選択し、各領域内で、最低10個の核を高倍率(60x対物レンズ)で無作為に分析した。定量するために、核はオーバーラップしておらず、十分に明るいシグナルを持たなければならなかった。3個以上のプローブについてのシグナルを示さなかった核は分析しなかった。各検体において、30個の細胞を計数した。
FISH陽性の基準は、各プローブセットについて以前に発表されているとおりであった(Gerami et al.(2009)、前掲;およびGerami et al.(2012)、前掲)。元の黒色腫FISHアッセイでは、陽性基準は、2コピー超のRREB1(6p25)を有する細胞が29%超であること、またはRREB1(6p25)のコピーが第6染色体(Cep6)よりも多い細胞が55%超であること、または2コピー超のCCND1(11q13)を有する細胞が38%超であること、またはMYB(6q23)のコピーが第6染色体(Cep6)と比較して少ない細胞が42%超であることであった。第2のプローブセットでは、陽性基準は、CDKN2A(9p21)のホモ接合性欠失を有する計数細胞が29%超であること、または2コピー超のRREB1(6p25)、MYC(8q24)またはCCND1(11q13)を有する細胞が29%超であることであった。また、コピー数異常を有する細胞の割合を計算する場合、四倍性の結果としての偽陽性を回避するために、四倍性の結果であると判断したコピー数の増加を有する細胞を分子から除外したが、分母には残した(Isaac et al.,「Polyploidy in Spitz Nevi:A Not Uncommon Karyotypic Abnormality Identifiable by Fluorescence In Situ Hybridization」,Am.J.Dermatopathol.32(2):144−148(2010))。いずれかのプローブセットの任意の一基準が陽性である場合、症例をFISH陽性と判断した。第1群の症例対第2群から第4群の症例におけるFISH陽性頻度を比較するために、フィッシャーの直接確率検定を使用した。第1群、第2群および第3群対第4群を比較するのにも、同じ分析を実施した。第1群対第2群から第4群における個々の各プローブの陽性頻度を調べるためにも、フィッシャーの直接確率検定を使用し、p値を計算した。AJCC確認黒色腫予後因子:原発性腫瘍の解剖学的部位、性別、年齢、ブレスローの深さ、クラークレベル、潰瘍形成の状態および有糸分裂速度のすべて、ならびに他の組織学的特徴、例えば、表皮破壊、Kamino体の存在、膨脹性結節性増殖および細胞形態を含む得られたすべての変数について第1群対第2群から第4群を比較する際、p値を評価するために、ロジスティック回帰分析も使用した。単変量分析で有意な(p<0.05)関連性を有するすべての変数を用いて、多変量分析を実施した。
2個のプローブセットを使用して、患者75人に由来する臨床経過観察が公知の非定型スピッツ腫瘍計75例を分析した。患者の年齢は2から58歳の範囲であり、平均年齢は20歳であった。患者75人のうち、11人が、センチネルリンパ節を越える腫瘍拡大の証拠を有しており、これらの症例のうち3例では、患者は、遠隔転移および死亡に発展した(第4群)(表14)。遠隔転移を有しないが、センチネルリンパ節を越える疾患を有する患者は8人であった。これには、センチネルリンパ節内にin−transit転移および腫瘍を有する患者4人が含まれていた。これらのセンチネルリンパ節陽性患者のうち4人は、リンパ節の完全切除の際に非センチネルリンパ節内にも腫瘍を有していたが、2歳患者1人は、完全切除を受けなかった。in−transit疾患を有しない残りの患者4人のうち、3人が陽性センチネル節を有しており、完全切除の際に非センチネル節内にさらなる腫瘍が検出され、2人が、肉眼で触知可能なリンパ節疾患を発症した(表14)。進行性局所領域疾患、遠隔転移を有するかまたは死亡した患者11人全員(第2群から第4群)が、陽性FISH結果を有しており、試験した遺伝子座の少なくとも1つにコピー数異常があった(表14)。残りの64症例のうち、15症例(23.4%)が陽性FISH結果を有していた。フィッシャーの直接確率検定によって、第1群対第2群から第4群におけるFISH陽性の頻度を比較するp値は、<0.0001であった。
疾患により死亡した患者3人全員、およびセンチネルリンパ節を越える進行性局所領域疾患を有する患者8人のうちの6人が、CDKN2A(9p21)のホモ接合性欠失の証拠を有していた(表14)。疾患により死亡したか、または進行性局所領域疾患を有しており、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失を有する細胞の割合が陽性FISH結果のカットオフを超えていた患者9人うち、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失を有する計数細胞の平均数は80%であった。反対に、5年後の経過観察では良性であった残りの患者64人のうちのわずか3人が、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失の証拠を有していた。フィッシャーの直接確率検定によって、第1群対第2群および第4群におけるホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失の頻度を比較すると、p値は、<0.0001で非常に有意であった。第1群対第2群および第4群において、先に決定したカットオフを使用して、RREB1(6p25)の増加、MYB(6q23)/第6染色体(Cep6)の減少、RREB1(6p25)/第6染色体6(Cep6)の増加、CCND1(11q13)の増加、CDKN2A(9p21)ホモ接合性の減少およびMYC(8q24)の増加について、個々のプローブパラメータそれぞれの陽性頻度を評価すると、それぞれ.02、.02および<.0001のp値で、RREB1(6p25)、CCND1(11q13)およびCDKN2A(9p21)について、統計的有意性が見られた(表15)。
個々の各FISHパラメータ、ならびに年齢、性別、原発性腫瘍の部位、潰瘍形成の状態、ブレスローの深さ、クラークレベルおよび有糸分裂速度を含むすべてのAJCC予後パラメータ、ならびにスピッツ腫瘍で評価されることが多い他の因子、例えば、表皮破壊の有無、Kamino体、膨脹性結節性増殖および類上皮対紡錘体の形態を分析する多変量ロジスティック回帰分析では、有糸分裂速度(p=0.03)およびホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失(p<0.0001)のみが、センチネルリンパ節を越える腫瘍進行との統計的に有意な関連性を示した。さらに、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失のみが、疾患による死亡との統計的に有意な関連性を示した(p=0.01)(表16)。
重要なことに、MYB(6q23)が個別に減少している6個の非定型スピッツ腫瘍サブセットの中では、60から96カ月の範囲の経過観察期間で、進行性局所領域疾患、遠隔転移または死亡に発展したものはなかった。これらの患者6人のうちの4人にセンチネルリンパ節生検(sentinel node biopsy)を行ったところ、患者4人全員が、センチネルリンパ節内に腫瘍を有していた。すべてのプローブパラメータによるFISH結果が陰性であり、進行性局所領域疾患、遠隔転移または死亡をもたらす非定型スピッツ腫瘍はなかった。
本研究は、RREB1(6p25)またはCCND1(11q13)の増加およびCDKN2A(9p21)のホモ接合性減少などの特定の染色体異常の存在が、悪性の挙動の可能性が高いメラニン細胞腫瘍を明らかに特定することを実証している。加えて、個々のプローブパラメータのロジスティック回帰分析および多変量分析は、中悪性度のメラニン細胞腫瘍では、すべてのコピー数異常が同等の価値を有するわけではないという有力な証拠を提供している。具体的には、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失は、悪性の疾患経過との関連では非常に有意であり、センチネルリンパ節を越える腫瘍拡大を有する患者11人のうちの9人が、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失の証拠を示した。患者9人のこのグループ内では、ホモ接合性欠失を示す計数細胞の平均割合が80%であったことも重要であった。従って、明らかな良性腫瘍および悪性腫瘍で決定した陽性結果のカットオフ閾値は、ホモ接合性欠失を有する細胞の29%超であるが、臨床診療で非定型スピッツ腫瘍を評価する場合、真に有意な結果は全く劇的であり、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失を有する細胞の割合が有意に高い可能性がある。
研究における非定型スピッツ腫瘍患者75人のうち、12人が、所定のカットオフ値を超えるホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失を有していた。これらの患者12人のうち、9人が、進行性局所領域疾患、遠隔転移または死亡に発展した。これらの患者のうち、3人が遠隔転移を有しており、疾患により死亡した。悪性の挙動群対非悪性の挙動群において、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失の頻度を比較するフィッシャーの直接確率検定によるp値は<0.0001であった。
興味深いことに、全員が別個の機関に由来する患者4人(子供3人および成人1人、それぞれ表14の症例7、症例37、症例48および症例66)が、多くのホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失を有する非定型スピッツ様メラニン細胞性新生物、および原発性腫瘍部位周辺の持続性in−transit疾患/サテリトーシスの存在を伴う著しく類似する経過を示し、4症例のうちの4症例が、センチネルリンパ節の病変も示した。これらの患者4人のうちの3人に完全切除を行ったところ、3人全員が、非センチネルリンパ節の腫瘍病変の証拠も有していた。従って、従来の黒色腫よりも低悪性度の可能性があり、成人よりも子供で頻繁に見られ、細胞の大部分にホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失を有するスピッツ様細胞形態を有し、in−transit転移を頻繁にもたらし、非センチネルリンパ節を含むリンパ節の病変を有することが多いこのサブタイプの黒色腫を説明するために、本発明者らは、「ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失を有するスピッツ様黒色腫」という用語を提案する。8年間以上の臨床経過観察を行っている患者7は、手術およびインターフェロン処置後において依然として無病である。残りの患者3人は、より限定的な経過観察期間を有する。遠隔転移および死亡に発展する可能性、頻度および時期を決定するためには、これらの患者についてのさらなる経過観察研究が必要である。
6p25および11q13の両方のコピー数増加が、悪性の非定型スピッツ腫瘍群において、両パラメータとも.02のp値で統計的に有意により頻繁に見られた。これは、これらの変化を有する非定型スピッツ様メラニン細胞腫瘍が、FISH陰性であるものと比較して、悪性の挙動についてより高リスクであると判断するべきものであるが、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失を有する症例ほどではないことを示唆している。暫定的に、「RREB1(6p25)が増加しているかまたはCCND1(11q13)が増加しているスピッツ様黒色腫」という用語を、後者の2つが、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失を有する症例よりも極めて低リスクであるという理解のもとで用いることができる。
最低5年間の経過観察にもかかわらず、MYB(6q23)が個別に減少している6個の非定型スピッツ腫瘍はいずれも、進行性局所領域疾患、遠隔転移または死亡の証拠を示さなかった。従って、FISHがMYB(6q23)の個別減少を示す非定型スピッツ腫瘍の状況では、本発明者らは、黒色腫の診断を控え、少なくとも暫定的にこれを「MYB(6q23)欠失を有する非定型スピッツ腫瘍」と称することを提案する。これは、陽性センチネルリンパ節生検を頻繁にもたらすが、これを越えて進行することはごくまれであるスピッツ様メラニン細胞性新生物のサブセットであると思われるが、このデータは限定的なものであり、さらなる経過観察研究が必要である。従来の黒色腫では、明らかに有意な予後効果を有することが示されているMYC(8q24)に関して(Gerami et al.,J.Mol.Diagn.13:352−358(2011))、本研究では陽性症例が非常に少ないため統計的有意性がなかった。本発明者らは、8q24がメラニン欠乏性結節型黒色腫または母斑性黒色腫に最も典型的であることを以前に示したので(Pouryazdanparast et al.,Am.J.Surg.Pathol.36:253−264(2012);Pouryazdanparast et al.,「The Role of 8q24 Copy Number Gains and c−MYC Expression in Amelanotic Cutaneous Melanoma」,Mod.Pathol.25(9):1221−1226(2012))、これは驚くべきものではないがスピッツ様新生物では低頻度のコピー数異常である。
要約すると、RREB1(6p25)またはCCND1(11q13)の増加およびホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失は、それぞれ0.02、0.02および<0.0001のp値で、悪性の臨床的挙動との統計的に有意な関連性を有していた。多変量分析では、ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失は、悪性の臨床的挙動(p<0.0001)および疾患による死亡(p=0.003)と非常に関連していた。ホモ接合性CDKN2A(9p21)欠失を有する症例は、進行性局所領域疾患およびさらには遠隔転移および死亡に発展する最大リスクを有する。RREB1(6p25)またはCCND1(11q13)が増加している症例も、悪性の臨床的挙動について、FISH陰性の非定型スピッツ腫瘍またはMYB(6q23)欠失を有する症例よりも高いリスクを有する。従って、限られた数の染色体コピー数異常を検出するFISHにより、非定型スピッツ腫瘍の臨床的に有用で統計的に有意なリスク評価を提供することができる。
明細書中において挙げられたすべての特許、特許出願刊行物、雑誌論文、教科書および他の刊行物は、本開示が関係する当業者の熟練度を示す。すべてのこのような刊行物は、各個別の刊行物が具体的におよび個別に参照により組み込まれていることが示されているのと同じように、同程度に参照により本明細書に組み込まれている。
本明細書において例示的に記載されている本発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の要素または限定の非存在下で、適切に実施され得る。従って、例えば、「含む」、「から実質的になる」および「からなる」という用語のいずれかの本明細書における各例は、他の2つの用語のいずれかと置き換えることができる。同様に、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、文脈によって明らかに表されない限り、複数の参照を含む。従って、例えば、「方法(the method)」に対する参照は、(本明細書において記載され、および/または、本開示を読んだ際に当業者に明らかとなる)この型の1つ以上の方法および/または工程を含む。
用いられた用語および表現は、説明の用語として用いられるものであって、限定の用語として用いられるものではない。この点に関して、ある種の用語は、「定義」の下で定義され、これ以外の場合、「詳細な説明」における他の場所で定義、記載または考察され、すべてのこのような定義、記載および考察は、このような用語に帰することが意図される。また、このような用語および表現の使用において、示されたおよび記載された特徴またはこれらの一部のいかなる均等物も除外することを意図するものでもない。さらに、小見出し、例えば「定義」が「詳細な説明」において使用されているが、このような使用は、参照を容易にするためのものに過ぎず、ある見出し内において行われた任意の開示をこの見出しのみに限定することを意図するものではなく、1つの小見出しの下に為された任意の開示は、それぞれのおよびすべての他の小見出し下における開示を構成することが意図される。
主張された本発明の範囲内で、様々な修飾が可能であることが認識される。従って、本発明は好ましい実施形態および任意の特徴の状況において具体的に開示されているが、本明細書に開示されている概念の修飾および変更を当業者が行使し得ることを理解すべきである。このような修飾および変更は、添付の特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲内にあると考えられる。