JP2019041670A - 連続不活化方法、連続不活化装置および連続不活化装置用ユニット - Google Patents

連続不活化方法、連続不活化装置および連続不活化装置用ユニット Download PDF

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Abstract

【課題】目的物質が変性し難く、ウイルスや菌体の不活化を高い処理速度で行うことのできる連続不活化方法、連続不活化装置および連続不活化装置用ユニットを提供する。【解決手段】本発明に係る連続不活化方法は、目的物質を含む被処理液に含まれ得るウイルスおよび菌体を連続処理で不活化する方法であり、前段の工程から送液されてきた前記被処理液に圧力を印加して前記ウイルスおよび前記菌体を不活化する不活化工程S1と、前記不活化工程S1後、前記被処理液に印加された圧力を段階的または漸次的に大気圧まで減圧して後段の工程に前記被処理液を送液する減圧工程S2と、を含んでいる。【選択図】図1

Description

本発明は、目的物質を含む被処理液に含まれているウイルスおよび菌体を連続処理で不活化する連続不活化方法、連続不活化装置および連続不活化装置用ユニットに関する。
バイオ医薬品や飲料品、食料品の製造工程において、微生物、細胞、菌類等の生体細胞を培養する培養法が用いられている。バイオ医薬品の場合、ウイルスが培養に用いた生体細胞に内在していたり、ウイルスや菌体が製造工程において偶然混入したり、ウイルスや菌体が生体細胞の培養に使用する培地成分に由来して混入していたりするリスクがある。そのため、細胞を培養した培養液から抗体タンパク質等の培養生産物(目的物質)を精製するにあたって、培養生産物の安全性を確保するために、培養液に混入する可能性のあるウイルスや菌体を不活化する不活化処理が必要とされる。ここで、不活化処理とは、ウイルスや菌体の感染力を失わせる処理を意味する。菌体についての不活化処理には、菌体による影響が全く出ないよう、すべての菌体を死滅させる滅菌処理だけでなく、菌体による影響が出難くなる程度に菌体を死滅させる殺菌処理が含まれる。
現在、例えば、抗体タンパク質の精製には、一般的にアフィニティーリガンドとして微生物由来のFc受容体であるプロテインAを固定化したアフィニティークロマトグラフが用いられている。抗体タンパク質を精製する際は、中性条件下でプロテインAに抗体を吸着させて、非吸着成分を洗浄、除去した後、プロテインAに吸着させた抗体タンパク質をpH3以下の酸性条件でプロテインAから溶離させて回収する。このような低pH条件は、ウイルスの不活化処理も兼用できるため、一般的には、酸性の溶離液を低pH条件で数時間保持してウイルスを不活化処理(本明細書において「低pH処理」という)している。
しかし、低pH処理を行うと抗体の高次構造(タンパク質の2次構造、3次構造および4次構造)が変化して抗体が失活したり、凝集体を生成したりするため、抗体の品質が低下するおそれがあることが知られている。近年では、低pH処理による抗体の失活や凝集体の生成を回避するため、温度によって吸脱着特性が異なる温度応答性アフィニティークロマトグラフなどの機能性担体の開発も進められている。しかしながら、このような機能性担体を用いる場合、低pH処理に代わるウイルス不活化処理が必要となる。
低pH処理に代わるウイルス不活化処理として有望視される技術が、例えば、特許文献1、2に記載されている。
特許文献1には、不活化しようとする微生物(ウイルスを含む)が充填されたバッグ等を筐体(シリンダー状の高圧チャンバー)内に入れ、600MPa(6000バール)や200〜500MPa(2000〜5000バール)という高圧で処理し、前記微生物を不活化する高圧デバイスが記載されている。特許文献1には、高圧デバイスの一態様として、ピストンおよびシリンダで形成することが記載されている。つまり、特許文献1では、ウイルス不活化処理をバッチ処理で行う。
また、特許文献2には、エンベロープ構造を有するウイルスの感染者またはレトロウイルス様ウイルスの感染者から体外に血液を取り出す手段、取り出した血液を血漿成分と血漿成分以外の血液成分に分離する手段、血漿成分を超高圧処理する手段、超高圧処理した血漿成分を当該感染者の体内に戻す手段を少なくとも含むウイルスの不活化処理装置が記載されている。特許文献2における超高圧処理は、血漿成分を合成樹脂のフィルムなどで脱気包装した後に、高圧処理容器に圧力媒体である水その他の流体とともに収容し、急速加圧タイプまたはセルフバランスタイプと呼ばれる超高圧処理装置を用いて行う旨記載されている。つまり、特許文献2における超高圧処理(ウイルス不活化処理)も特許文献1と同様、バッチ処理で行われる。なお、特許文献2では、加える圧力を200〜800MPaとする旨記載されている。
特表2015−529462号公報 特開平10−5328号公報
前述したように、特許文献1、2のいずれも高圧処理を行うので、ウイルスおよび菌体を不活化することができる。
しかし、特許文献1、2いずれの高圧処理もバッチ処理で行われるため、処理速度が低いという問題がある。
処理速度を高めるために連続処理とすることも考えられるが、何の工夫もなしに特許文献1、2に記載されているような圧力で連続処理を行うと、処理装置内における弁などの隘路でせん断応力が発生し、抗体タンパク質や血漿成分などの目的物質が変性する可能性がある。
本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、目的物質が変性し難く、ウイルスや菌体の不活化を高い処理速度で行うことのできる連続不活化方法、連続不活化装置および連続不活化装置用ユニットを提供することを課題とする。
前記課題を解決した本発明に係る連続不活化方法は、目的物質を含む被処理液に含まれ得るウイルスおよび菌体を連続処理で不活化する方法であり、前段の工程から送液されてきた前記被処理液に圧力を印加して前記ウイルスおよび前記菌体を不活化する不活化工程と、前記不活化工程後、前記被処理液に印加された圧力を段階的または漸次的に大気圧まで減圧して後段の工程に前記被処理液を送液する減圧工程と、を含んでいる。
前記課題を解決した本発明に係る連続不活化装置は、目的物質を含む被処理液に含まれ得るウイルスおよび菌体を連続処理で不活化する装置であり、内部に収められた前記被処理液に圧力が印加されて前記ウイルスおよび前記菌体を不活化する不活化手段と、前記不活化手段と接続され、前記被処理液に印加された圧力を段階的または漸次的に大気圧まで減圧して後段の手段に前記被処理液を送液する減圧手段と、前記不活化手段と接続され、前記不活化手段内に前記被処理液を送液するとともに、前記不活化手段内の前記被処理液に圧力を印加する圧力印加手段と、を有している。
前記課題を解決した本発明に係る連続不活化装置用交換ユニットは、目的物質を含む被処理液に含まれ得るウイルスおよび菌体を連続処理で不活化する装置に用いられる交換ユニットであり、前段の手段と接続可能な第1接続部を有し、内部に収められた前記被処理液に圧力が印加されて前記ウイルスおよび前記菌体を不活化する不活化手段と、前記不活化手段と接続され、前記被処理液に印加された圧力を段階的または漸次的に大気圧まで減圧するとともに、後段の手段と接続可能な第2接続部を有する減圧手段と、を有している。
本発明に係る連続不活化方法、連続不活化装置および連続不活化装置用ユニットは、目的物質が変性し難く、ウイルスや菌体の不活化を高い処理速度で行うことができる。
本実施形態に係る連続不活化方法の内容を説明するフローチャートである。 目的物質を生産する目的物質生産方法の一例を説明するフローチャートである。 本実施形態に係る連続不活化装置の一構成例を説明する概要図である。 目的物質を生産する目的物質生産装置の一例を説明する概要図である。 本実施形態に係る連続不活化装置の他の構成例を示す概要図である。 抗体水溶液に275MPaのウイルス不活化圧力を印加した後、各減圧条件で減圧したサンプルのGPC分析による分析結果を示すグラフである。 アルブミン水溶液に275MPaのウイルス不活化圧力を印加した後、各減圧条件で減圧したサンプルのGPC分析による分析結果を示すグラフである。
以下、適宜図面を参照して本発明に係る連続不活化方法、連続不活化装置および連続不活化装置用ユニットの一実施形態について詳細に説明する。
[連続不活化方法]
本実施形態に係る連続不活化方法は、目的物質を含む被処理液に含まれ得るウイルスおよび菌体を連続処理で不活化する方法である。
ここで、「被処理液に含まれ得るウイルスおよび菌体」とは、ウイルスおよび菌体のうちの少なくとも一方が被処理液に含まれている可能性があることを意味しており、被処理液がウイルスおよび菌体のうちの少なくとも一方を必ず含んでいることを意味するものではない。すなわち、被処理液はウイルスや菌体を含んでいなくてもよい。
「目的物質」とは、微生物、細胞、菌類等の生体細胞を培養して得られる、所望の生成物をいう。目的物質は、バイオ医薬品や飲料品、食料品などに用いられる。目的物質としては、例えば、抗体、酵素などのタンパク質や、低分子化合物、高分子化合物などの生理活性物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、目的物質としては、例えば、β−カロテンやアスタキサンチンなどのカロチノイド、クロロフィルやバクテリオクロロフィルなどの色素、食品や化粧品などの着色等に使用されるフィコシアニンなどのフィコビリンタンパク質、脂肪酸などの生理活性物質が挙げられる。
「被処理液」とは、含まれ得るウイルスおよび菌体(真菌を含む)を不活化するための処理が行われる液体をいう。被処理液は、目的物質を含んでいる液体であればどのようなものも対象となる。被処理液としては、例えば、培養細胞を含む培養液や、前記培養液に対して培養細胞の細胞膜や細胞壁を破砕したり、不要なタンパク質や核酸などを除去したりする所定の処理を行った処理液などが挙げられる。
本実施形態における「連続処理」とは、本実施形態に係る連続不活化方法が行われる被処理液を装置外に出すことなく、当該方法の前段の処理と、当該方法の処理と、当該方法の後段の処理とを連続的に行うことをいう。
図1は、本実施形態に係る連続不活化方法の内容を説明するフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態に係る連続不活化方法は、不活化工程S1と、減圧工程S2とを含んでいる。本実施形態に係る連続不活化方法は、培養細胞を含む培養液を培養槽から取り出した後、目的物質を精製して製品とするまでの任意の工程のうち少なくとも一つの工程の直後に、少なくとも一回行う。
ここで、図2は、目的物質を生産する目的物質生産方法の一例を説明するフローチャートである。
図2に示すように、目的物質生産方法は、微生物、細胞、菌類等の生体細胞を培養する培養法を用いて目的物質を生産するため、培養工程S10、精製工程S30、除去工程S40、ろ過工程S50および回収工程S60などを含んでいる。ここで、目的物質生産方法は、培養工程S10に続けて、必要に応じて破砕工程S20を行うこともできる。
なお、培養工程S10は、培養槽で細胞培養を行う工程である。破砕工程S20は、培養細胞の細胞膜や細胞壁を破砕する工程である。精製工程S30は、培養液中の目的物質をアフィニティーカラムや温度応答性カラムを用いて精製する工程である。除去工程S40は、細胞が壊れて溶液中に溶出したタンパク質や核酸などを陽イオン交換カラムや陰イオン交換カラムを用いて除去する工程である。ろ過工程S50は、溶液中のウイルスや不純物を限外ろ過膜で除去する工程である。回収工程S60は、ろ過した被処理液を回収容器に回収する工程である。
前記した「任意の工程」としては、図2に示す工程のうち、培養工程S10、破砕工程S20、精製工程S30、除去工程S40、ろ過工程S50が挙げられる。
なお、「直後」とは、時間的に連続して速やかに行うということまでは要せず、前段の処理(工程)を行った後、他の処理を行わずに目的とする処理(すなわち、本実施形態に係る連続不活化方法の不活化工程S1および減圧工程S2)を行うことをいう。よって、低温環境下におくなど、目的物質の変性等を抑制できる条件下であれば前段の処理を行った後、所定時間だけ一時的に処理を中断し、その後、本実施形態に係る連続不活化方法の不活化工程S1および減圧工程S2を行ってもよい。ただし、目的物質の変性等を抑制する観点からは、前段の処理を行った後、本実施形態に係る連続不活化方法の不活化工程S1および減圧工程S2を時間的に連続して速やかに行うことが好ましい。
(不活化工程S1)
図1に戻って説明を続ける。不活化工程S1は、前段の工程から送液されてきた被処理液に圧力を印加してウイルスおよび菌体(以下、単に「ウイルスなど」ということがある)を不活化する工程である。なお、「前段の工程」としては、例えば、図2に示す工程のうち、培養工程S10、破砕工程S20、精製工程S30、除去工程S40、ろ過工程S50のうちの少なくとも一つが挙げられる。
被処理液に印加する圧力は、例えば、100〜400MPa(ゲージ圧、以下同じ)とすることが好ましい。被処理液に印加する圧力がこの範囲であると、目的物質の変性などを防止しつつ、被処理液に含まれるウイルス、菌体、真菌などを不活化できる。例えば、圧力が約100MPaになると脂質二重膜は脂質相転移を起こすため、脂質二重膜で構成されるエンベロープが核酸を覆っているウイルスや、脂質二重膜で覆われている菌などを不活化できる。また、圧力が約80〜100MPaになると細胞内タンパク質の一部が変性等するため、真菌も死滅(不活化)する。さらに、圧力が250MPaになると、カプシドが破壊されるので、カプシドで覆われているウイルスを不活化できる。従って、より確実にウイルスなどを不活化する観点から、被処理液に印加する圧力は、250MPa以上とするのが好ましく、275MPa以上とするのがより好ましい。なお、被処理液に印加する圧力は、被処理液に含まれる目的物質の変性などをより防止する観点から、390MPa以下とするのが好ましく、380MPa以下とするのがより好ましい。なお、不活化処理を行う際の好ましい温度は1〜50℃、より好ましくは4〜30℃である。
圧力を印加する手段としては、後記するようにポンプなどが挙げられる。圧力は、前記範囲内で設定された所定値とできればよく、瞬間的に昇圧してもよいし、段階的または漸次的に昇圧してもよい。段階的に昇圧する場合、後記する減圧工程S2と同様、被処理液に含まれる目的物質の変性などを防止する観点から、例えば、昇圧量を75MPa以下とするのが好ましい。漸次的に昇圧する場合も、後記する減圧工程S2と同様、被処理液に含まれる目的物質の変性などを防止する観点から、例えば、ポンプの狭隘部での昇圧速度を15000MPa/秒以下とするのが好ましい。
不活化工程S1における処理時間は、ウイルスなどの不活化を確実に行う観点から、例えば、5分以上行うのが好ましく、8分以上行うのがより好ましく、10分以上行うのがより好ましい。なお、不活化工程S1における処理時間は、生産性の観点から、20分以下とするのが好ましく、15分以下とするのがより好ましい。
また、圧力は、静水圧で印加するのが好ましい。このようにすると、被処理液に圧力を印加する際にせん断力等が働かないので、目的物質が変性等し難い。
圧力を印加する際における被処理液の通流は、層流条件で行うのが好ましい。このようにするとプラグフロー化できるので、被処理液の滞留時間の分布を低減することができる。そのため、不活化工程S1を安定して行うことができる。なお、プラグフロー化とは、押し出し流れとすること、つまり、不活化工程S1が行われる容器や配管の壁面に対して、被処理液が同じ速度分布で通流するようにすることをいう。層流条件としては、例えば、レイノルズ数が2000以下であることが挙げられる。このようにすると、不活化工程S1をより安定して行うことができる。
(減圧工程S2)
減圧工程S2は、不活化工程S1後、被処理液に印加された圧力を段階的または漸次的に大気圧(0MPa(ゲージ圧))まで減圧して後段の工程に被処理液を送液する工程である。このようにすると、不活化工程S1で印加された圧力によって圧縮されて変形等していた抗体などの目的物質の高次構造が元に戻り易く、目的物質が変性等し難い。なお、「後段の工程」としては、例えば、図2に示す工程のうち、破砕工程S20、精製工程S30、除去工程S40、ろ過工程S50、回収工程S60のうちの少なくとも一つが挙げられる。
減圧工程S2における段階的な減圧は、例えば、複数の減圧弁を順次開くことによって行われることが好ましい。このように複数の減圧弁を順次開くようにすると、段階的な減圧を容易に行うことができる。また、この場合、減圧弁での減圧量は、前記減圧弁一つあたり75MPa以下であることが好ましい。このようにすると、目的物質が抗体などのタンパク質である場合、当該タンパク質の変性や凝集体の形成などが生じ難くなる。なお、段階的な圧力の減圧量は目的物質の種類に応じて適宜変更できる。すなわち、圧力の減圧量を大きくしても高次構造が壊れ難い目的物質であれば、前記減圧量を75MPa超とすることができる。これとは反対に、目的物質の高次構造が壊れ易い場合は前記減圧量を50MPa以下や30MPa以下などとすることもできる。
減圧工程S2における漸次的な減圧は、例えば、配管の内径を漸次的に大きくすることで行われることが好ましい。このようにすると、減圧の際にせん断力等を生じることなく圧力を徐々に減じることができる。よって、目的物質が抗体などのタンパク質である場合、当該タンパク質の変性や凝集体の形成などを生じ難くすることができる。
また、減圧工程S2における漸次的な減圧の減圧速度は、15000MPa/秒以下となるように行われること、つまり、減圧速度が前記所定値以下となるように配管の内径を漸次的に大きくすることが好ましい。このようにした場合もタンパク質の変性や凝集体の形成などが生じ難くなる。漸次的な減圧の減圧速度も段階的な減圧と同様、目的物質の種類に応じて適宜変更できる。例えば、漸次的な減圧の減圧速度は、目的物質の高次構造が壊れ難い場合は45000MPa/秒超とすることができ、目的物質の高次構造が壊れ易い場合は3000MPa/秒以下とすることができる。
以上に述べた本実施形態に係る連続不活化方法は、減圧工程S2で被処理液に印加された圧力を段階的または漸次的に大気圧(0MPa(ゲージ圧))まで下げることができる。そのため、不活化工程S1で印加された圧力によって圧縮されて変形等していた抗体などの目的物質の高次構造が元に戻り易く、目的物質が変性等し難い。本実施形態に係る連続不活化方法は、不活化工程S1および減圧工程S2を所定容量に達するまで、または所定回数に達するまで、被処理液を装置外に取り出すことなく、被処理液に圧力を印加した後に段階的または漸次的に減圧するという操作を連続して行うことができる。つまり、本実施形態に係る連続不活化方法では、減圧工程S2を終えた被処理液を後段の処理に送液すると同時に、不活化工程S1を行う装置内に新たな被処理液を送液して当該新たな被処理液に対して不活化処理を行う。従って、本実施形態に係る連続不活化方法は、装置外からのウイルスなどによる汚染を防止しつつ、ウイルスなどの不活化を高い処理速度で行うことができる。
[連続不活化装置]
次に、本実施形態に係る連続不活化装置について説明する。本実施形態に係る連続不活化装置は、前述した本実施形態に係る連続不活化方法を実施するものであり、目的物質を含む被処理液に含まれ得るウイルスおよび菌体を連続処理で不活化する装置である。以下の説明において、前述した本実施形態に係る連続不活化方法で説明した要素と同じ要素については詳細な説明を省略する。
図3は、本実施形態に係る連続不活化装置1の一構成例を説明する概要図である。
図3に示すように、本実施形態に係る連続不活化装置1は、不活化手段31と、減圧手段60と、圧力印加手段30とを有している。不活化手段31は前述した不活化工程S1を実施するものであり、減圧手段60は前述した減圧工程S2を実施するものである。
なお、この図3の下方には、不活化手段31、および減圧手段60である第1減圧弁61〜第4減圧弁64における圧力の推移を示すグラフも併記しているが、このグラフについては後述する。
本実施形態に係る連続不活化装置1は、連続不活化方法でも述べたように、培養細胞を含む培養液を培養槽から取り出した後、目的物質を精製して製品とするまでの任意の手段(任意の工程)のうちの少なくとも一つの手段の直後に、少なくとも一つ設ける。
ここで、図4は、目的物質を生産する目的物質生産装置100の一例を説明する概要図である。
図4に示すように、目的物質生産装置100は、微生物、細胞、菌類等の生体細胞を培養する培養法を用いて目的物質を生産するため、培養手段110、精製手段130、除去手段140、ろ過手段150および回収手段160などを有している。ここで、目的物質生産装置100は、培養手段110に続けて、必要に応じて培養細胞の細胞膜や細胞壁を破砕する破砕手段120を設けることもできる。
培養手段110では、培養槽で細胞培養を行う。破砕手段120では、培養細胞の細胞膜や細胞壁の破砕を行う。精製手段130では、培養液中の目的物質をアフィニティーカラムや温度応答性カラムを用いて精製する。除去手段140では、細胞が壊れて溶液中に溶出したタンパク質や核酸などを陽イオン交換カラムや陰イオン交換カラムを用いて除去する。ろ過手段150では、溶液中のウイルスや不純物を限外ろ過膜で除去する。回収手段160では、ろ過した被処理液を回収容器に回収する。
前記した「任意の手段」としては、図4に示す手段のうち、例えば、培養手段110、破壊手段120、精製手段130、除去手段140、ろ過手段150が挙げられる。
(不活化手段31)
図3に戻って説明を続ける。不活化手段31は、前段の手段から送液されてきた被処理液に圧力を印加してウイルスなどを不活化する。「前段の手段」としては、例えば、図4に示す手段のうち、培養手段110、破砕手段120、精製手段130、除去手段140、ろ過手段150のうちの少なくとも一つが挙げられる。
不活化手段31は、内部に被処理液を保持することができ、かつ圧力印加手段30によって圧力が印加されても損壊しない強度を持つ容器であればどのようなものも用いることができる。なお、当該容器は、前段の手段から送液されてきた被処理液を内部に導入する導入口と、不活化処理した被処理液を外部に排出して後段の手段に送液する排出口とを有する。不活化手段31として用いることのできるそのような容器として、例えば、内径が一定であるステンレスなどの金属製の円筒管が挙げられる。内径が一定である円筒管とすると、被処理液に対して均一に圧力を印加できるとともに、プラグフロー化もできる。また、形状が単純なため製造が容易で低コスト化が図れるとともに、管内の洗浄も容易である。さらに、不活化手段31として内径が一定である円筒管を用いた場合、管内を流れる被処理液を層流条件で送液すれば、円筒管の内径と、流速や圧力印加手段30の駆動時間などとから被処理液の送液量を正確に把握することができる。従って、不活化手段31におけるウイルスなどの不活化を適切に行うことができる。
(減圧手段60)
減圧手段60は、不活化手段31と接続され、被処理液に印加された圧力を段階的または漸次的に大気圧まで減圧して後段の手段に被処理液を送液する。「後段の手段」としては、例えば、図4に示す手段のうち、破砕手段120、精製手段130、除去手段140、ろ過手段150、回収手段160のうちの少なくとも一つが挙げられる。
減圧手段60の一態様として、ステンレスなどの金属製の円筒管の任意の箇所に複数の減圧弁を有することが挙げられる。例えば、図3に示すように、減圧手段60の一態様である複数の減圧弁として、第1減圧弁61〜第4減圧弁64の4つを直列で設けることができる。この態様では、減圧手段60における段階的な減圧が、この複数の減圧弁(第1減圧弁61〜第4減圧弁64)を順次開くことによって行われる。このように複数の減圧弁を順次開くようにすると、段階的な減圧を容易に行うことができる。また、この場合、減圧弁での減圧量は、前記減圧弁一つあたり75MPa以下であることが好ましい。このようにすると、目的物質が抗体などのタンパク質である場合、当該タンパク質の変性や凝集体の形成などが生じ難くなる。なお、段階的な圧力の減圧量は目的物質の種類に応じて適宜変更できる。すなわち、圧力の減圧量を大きくしても高次構造が壊れ難い目的物質であれば、前記減圧量を75MPa超とすることができる。これとは反対に、目的物質の高次構造が壊れ易い場合は前記減圧量を50MPa以下や30MPa以下などとすることもできる。
図3に示すように、第1減圧弁61〜第4減圧弁64の各弁の前後には圧力を検出する圧力センサ51〜55が設けられている。具体的には、不活化手段31側から、圧力センサ51、第1減圧弁61、圧力センサ52、第2減圧弁62、圧力センサ53、第3減圧弁63、圧力センサ54、第4減圧弁64、圧力センサ55の順に設けられている。
圧力センサ51、52は圧力指示調節警報計PICA1と接続されている。圧力センサ52、53は圧力指示調節警報計PICA2と接続されている。圧力センサ53、54は圧力指示調節警報計PICA3と接続されている。圧力センサ54、55は圧力指示調節警報計PICA4と接続されている。また、圧力指示調節警報計PICA1は第1減圧弁61と接続されている。圧力指示調節警報計PICA2は第2減圧弁62と接続されている。圧力指示調節警報計PICA3は第3減圧弁63と接続されている。圧力指示調節警報計PICA4は第4減圧弁64と接続されている。なお、第1減圧弁61〜第4減圧弁64には、圧力指示調節警報計PICA1〜PICA4の指示を受けて弁の開度を調節する電動モータなどのアクチュエータ(図示せず)が設けられている。
圧力指示調節警報計PICA1〜PICA4はそれぞれが接続されている第1減圧弁61〜第4減圧弁64に対して、圧力センサ51〜55によって検出された各弁の前後の圧力差が所定の範囲(例えば、75MPa以下)になるようアクチュエータに指示して動作させ、弁の開度を調整する。圧力指示調節警報計PICA1〜PICA4はそれぞれが接続されている第1減圧弁61〜第4減圧弁64の開度を調整しても圧力差が所定の範囲とならない場合は警告を発する。これにより、第1減圧弁61〜第4減圧弁64はそれぞれ所定の範囲で安全かつ確実に減圧できる。
次に、図5を参照して、減圧手段60の他の一態様について説明する。
図5は、本実施形態に係る連続不活化装置1の他の構成例を示す概要図である。
図5に示すように、減圧手段60の他の一態様では、図3に示す第1減圧弁61〜第4減圧弁64に替えて、ばね式の減圧弁を4つ設けている点で前記した態様と相違している(第1ばね式減圧弁61a〜第4ばね式減圧弁64a)。また、それに伴い、減圧手段60の他の一態様では、圧力指示調節警報計(PICA)を圧力指示警報計(PIA)に変更している点で前記した態様と相違している。
なお、その他の構成については前記した減圧手段60の一態様と同様であるので詳細な説明は省略し、相違点について説明する。
図5に示すように、第1ばね式減圧弁61a〜第4ばね式減圧弁64aの各弁の前後には圧力を検出する圧力センサ51〜55が設けられている。具体的には、不活化手段31側から、圧力センサ51、第1ばね式減圧弁61a、圧力センサ52、第2ばね式減圧弁62a、圧力センサ53、第3ばね式減圧弁63a、圧力センサ54、第4ばね式減圧弁64a、圧力センサ55の順に設けられている。圧力センサ51〜55はそれぞれ圧力指示警報計PIA1〜PIA5と接続されている。圧力センサ51〜55によって検出された圧力が所定値を超えた場合、圧力指示警報計PIA1〜PIA5は警告を発する。
この態様では、第1ばね式減圧弁61a〜第4ばね式減圧弁64aはそれぞればねによる抑止力で被処理液に印加される圧力が所定の値になったときに開くことができるようになっている。
図5に示す例では、第1ばね式減圧弁61aは、不活化手段31における圧力が275MPaになると弁が開くようばねの抑止力が設定されている。
第2ばね式減圧弁62aは、第1ばね式減圧弁61aと第2ばね式減圧弁62aの間における圧力が200MPaになると弁が開くようばねの抑止力が設定されている。
第3ばね式減圧弁63aは、第2ばね式減圧弁62aと第3ばね式減圧弁63aの間における圧力が125MPaになると弁が開くようばねの抑止力が設定されている。
第4ばね式減圧弁64aは、第3ばね式減圧弁63aと第4ばね式減圧弁64aの間における圧力が50MPaになると弁が開くようばねの抑止力が設定されている。第4ばね式減圧弁64aが開くと、被処理液に印加していた圧力はなくなり、大気圧と等しくなる。そして、被処理液は後段の手段に送液される。
また、減圧手段60の更なる他の一態様として、前述したように、被処理液に印加された圧力を漸次的に大気圧まで減圧する例について説明する。
減圧手段60における漸次的な減圧は、例えば、ステンレスなどの金属製の円筒管の内径を漸次的に大きくし、当該円筒管内に不活化した被処理液を通流させることにより行われることが好ましい(図示せず)。このようにすると、減圧の際にせん断力等を生じることなく圧力を徐々に減じることができる。よって、目的物質が抗体などのタンパク質である場合、当該タンパク質の変性や凝集体の形成などを生じ難くすることができる。
なお、この場合、例えば、図3において不活化手段31を具現するため第1減圧弁61は必要であるが、第2減圧弁62〜第4減圧弁64の替わりに、内径が漸次的に大きくなる金属製の円筒管を用いることになるので、第2減圧弁62〜第4減圧弁64は設けなくてもよい。
減圧手段60における漸次的な減圧の減圧速度は、15000MPa/秒以下で行われることが好ましい。このようにすると、タンパク質の変性や凝集体の形成などが生じ難くなる。漸次的な減圧の減圧速度も段階的な減圧と同様、目的物質の種類に応じて適宜変更できる。例えば、漸次的な減圧の減圧速度は、目的物質の高次構造が壊れ難い場合は45000MPa/秒超とすることもできるし、目的物質の高次構造が壊れ易い場合は3000MPa/秒以下とすることもできる。
(圧力印加手段30)
図3および図5に示すように、圧力印加手段30は、不活化手段31と接続され、不活化手段31内に被処理液を送液するとともに、不活化手段31内の被処理液に圧力を印加する。
圧力印加手段30としては、ポンプが挙げられる。ポンプは、せん断力が発生しないものを用いるのが好ましい。そのようなポンプとして、例えば、プランジャーポンプやダイヤフラムポンプなどが挙げられる。プランジャーポンプを用いた場合、チェック弁(逆止弁)があり、当該チェック弁により昇圧時に被処理液にかかるせん断力を低減できるので好ましい。圧力印加手段30は、必要とする圧力を得るためにポンプを複数台連ねて設けたものであってもよい。
図3および図5に示すように、圧力印加手段30は流量指示調節警報計FICAと接続されている。流量指示調節警報計FICAは不活化手段31に設けられている流量を検出する流量センサ40と接続されている。流量指示調節警報計FICAは、流量センサ40によって検出される流量が所定の範囲となるよう指示して圧力印加手段30を動作させる。流量指示調節警報計FICAは圧力印加手段30の動作を調整しても流量が所定の範囲とならない場合は警告を発する。これにより、圧力印加手段30は不活化手段31内に被処理液を送液したり、不活化手段31内の被処理液に圧力を印加したりすることができる。
圧力印加手段30によって印加される圧力は、前述したように、例えば、100〜400MPaとすることが好ましい。なお、当該圧力は、250MPa以上とするのが好ましく、275MPa以上とするのがより好ましい。また、当該圧力は、390MPa以下とするのが好ましく、380MPa以下とするのがより好ましい。
なお、圧力印加手段30は、チェック弁21、22、23、24のそれぞれを介して、培養液を導入する培養液ヘッダー11、洗浄液を導入する洗浄液ヘッダー12、無菌水を導入する無菌水ヘッダー13、およびスチームを導入するスチームヘッダー14と接続されている。洗浄液、無菌水およびスチームは、本実施形態に係る連続不活化装置1の内部を滅菌して洗浄する際に用いられる。
連続不活化装置1は前記した構成を有しているので、例えば、図3や図5の下方に併記するグラフに示すように、不活化手段31から減圧手段60(第1減圧弁61)の間で被処理液に対して所定の圧力(275MPa)を印加してウイルスなどを不活化することができる。
また、連続不活化装置1は、被処理液に印加された圧力を減圧手段60(図3の第1減圧弁61〜第4減圧弁64、図5の第1ばね式減圧弁61a〜第4ばね式減圧弁64a)で段階的(図3や図5の下方のグラフにおいて実線Aで示す)または漸次的(図3や図5の下方のグラフにおいて破線Bで示す)に大気圧まで下げることができる。そのため、不活化手段31で印加された圧力によって圧縮されて変形等していた抗体などの目的物質の高次構造が元に戻り易く、目的物質が変性等し難い。連続不活化装置1は不活化手段31および減圧手段60を用いて、所定容量に達するまで、または所定回数に達するまで、被処理液を装置外に取り出すことなく、被処理液に圧力を印加した後に段階的または漸次的に減圧するという操作を連続して行うことができる。つまり、連続不活化装置1では、減圧手段60を終えた被処理液を後段の処理に送液すると同時に、不活化手段31を行う装置内に新たな被処理液を送液して当該新たな被処理液に対して不活化処理を行う。従って、連続不活化装置1は装置外からのウイルスなどによる汚染を防止しつつ、ウイルスなどの不活化を高い処理速度で行うことができる。
なお、連続不活化装置1は被処理液排出口70を有しており、ここから不活化処理を行って大気圧まで減圧した被処理液を装置の外部に排出する(後段の手段に送液する)。
(連続不活化装置用交換ユニット)
本実施形態に係る交換ユニットは、前述した連続不活化装置1において、不活化手段31および減圧手段60を1つのユニットとして交換するために用いられる。
本実施形態に係る交換ユニットは、不活化手段と、減圧手段とを有して構成されている。交換ユニットの不活化手段と減圧手段とは、前述した連続不活化装置1の不活化手段31と減圧手段60とにそれぞれ対応しており、それぞれ同様の構成を有している。従って、交換ユニットの不活化手段と減圧手段とについての詳細な説明と図示は省略する。なお、本実施形態に係る交換ユニットも連続不活化装置1と前述と同様、前記した減圧手段が、複数の減圧弁を有するか、または、不活化手段から離れるにつれて内径が漸次的に大きくなる配管を有しているのが好ましい。
なお、交換ユニットにおける不活化手段および減圧手段は、ユニットとしての交換を可能とするため、以下のようにしている。すなわち、交換ユニットにおける不活化手段は、前段の手段と接続可能な第1接続部を導入口に有しており、減圧手段は、後段の手段と接続可能な第2接続部を排出口に有している。第1接続部および第2接続部は、圧力が印加された場合であっても他の手段(前段の手段、後段の手段)との接続状態を維持することができれば、どのような態様でも採用することができる。例えば、第1接続部および第2接続部として、雌ねじ部または雄ねじ部を形成する。そして、第1接続部や第2接続部と接続される対象物(他の手段)に、これと対応する雄ねじ部または雌ねじ部を形成する。そして、それぞれのねじ部同士をねじ込むことで着脱自在にかつ堅固に固定できる。また例えば、第1接続部および第2接続部としては、第1接続部および第2接続部と、他の手段(前段の手段、後段の手段)とにフランジ部を設け、フランジ部同士を突き合わせてボルトおよびナットで着脱自在にかつ堅固に固定できる。
このようにすると、目的物質の種類に応じて適切な圧力で減圧できる交換ユニットを選択して自在に着脱できる。また、交換ユニットの不活化手段や減圧手段が損壊したり、汚れが付着したり、動作しなくなったりした場合に、新しい交換ユニットに簡単に交換できる。
次に、本発明の効果を確認した確認実験について説明する。
〔1〕抗体水溶液の調製
モノクローナル抗体に対して連続不活化処理を行った。試験に用いた抗体などの条件を表1に示す。まず、50mL遠沈管(Code No.ECK−50ML、アズワン製)に14mLのリン酸緩衝生理食塩水(10×PBS Buffer、ニッポンジーン製、Cat.No.314−90185の10倍希釈液)を入れた。そして、そこにモノクローナル抗体(セクキヌマブ、150mg抗体含有)を1mL添加し、混合して10mg/mLの抗体水溶液を調製した。
そして、この抗体水溶液を図3に示す連続不活化装置1を用いて連続送液し、275MPaのウイルス不活化圧力からそれぞれ20MPa、40MPa、60MPa、75MPa、80MPaずつ大気圧まで減圧し、それぞれの減圧条件のサンプルを回収した。
Figure 2019041670
〔2〕抗体以外のタンパク質水溶液(アルブミン水溶液)の調製
抗体以外のタンパク質としてアルブミン(分子量約66000)を用い、連続不活化処理を行った。試験に用いたタンパク質などの条件を表2に示す。まず、50mL遠沈管(Code No.ECK−50ML、アズワン製)に10mLのリン酸緩衝生理食塩水(10×PBS Buffer、ニッポンジーン製、Cat.No.314−90185の10倍希釈液)を入れた。そして、そこにアルブミン(Paesel+Lorei GmbH&Co.製、Cat.No.04−100−900)を100mg添加し、混合して10mg/mLのアルブミン水溶液を調製した。
そして、このアルブミン水溶液を図3に示す連続不活化装置1を用いて連続送液し、275MPaのウイルス不活化圧力からそれぞれ20MPa、50MPa、70MPa、75MPa、80MPaずつ大気圧まで減圧し、それぞれの減圧条件のサンプルを回収した。
Figure 2019041670
〔3〕ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析
まず、〔1〕および〔2〕で得られた各減圧条件のサンプル0.3mLをリン酸緩衝生理食塩水(10×PBS Buffer、ニッポンジーン製、Cat.No.314−90185の10倍希釈液)が2.7mL入った15mL遠沈管(Code No.ECK−15ML、アズワン製)に添加し、混合してGPC分析試料を作製した。
GPC分析の条件を表3に示す。GPC分析には、HPLC(Lachrom Elite、日立ハイテクノロジーズ製)を使用した。カラム前段には、脈流や圧力変化に伴う分離カラムの充填剤形状変化を防止するGPCガードカラム(TSKgel guardcolumn SWXL、東ソー製)を用い、カラム後段には、分離カラム(TSKgel G3000 SWXL、東ソー製)を用いてGPC分析を行った。GPC分析試料を50μL注入した後、溶離液を1mL/minの速度で流し、280nmの吸光度を測定することで、タンパクの分子量分布を評価した。
なお、溶離液は、PBSタブレット1錠(Phosphate Buffered Saline (PBS) Tablets without Potassium、pH7.4、タカラバイオ製、Code No.T9182)を溶解し、1Lに調整したものを用いた。
Figure 2019041670
〔4〕分析結果
図6は、〔1〕の抗体水溶液に275MPaのウイルス不活化圧力を印加した後、各減圧条件で減圧したサンプルのGPC分析による分析結果を示すグラフである。
図7は、〔2〕のアルブミン水溶液に275MPaのウイルス不活化圧力を印加した後、各減圧条件で減圧したサンプルのGPC分析による分析結果を示すグラフである。
図6に示すように、減圧量が80MPaのサンプルには、抗体の溶出ピークの前に二量体のピークが確認され、抗体の溶出ピークの後ろに劣化物のピークが確認され、目的物質が変性していることが確認された。
その一方で、減圧量が75MPa以下のサンプルには、二量体や劣化物のピークは確認されず、目的物質が変性し難いことが確認された。
また、図7に示すように、減圧量が80MPaのサンプルには、アルブミンの溶出ピークの後ろに劣化物のピークが確認され、目的物質が変性していることが確認された。
その一方で、減圧量が75MPa以下のサンプルには、劣化物のピークは確認されず、目的物質が変性し難いことが確認された。
なお、〔1〕および〔2〕ではいずれも図3に示す連続不活化装置1を用いて連続送液したので、同じ容量をバッチ処理でウイルスを不活化する場合と比較して高い処理速度で処理することができた。これは、同一体積でバッチ処理と連続処理をする場合、バッチでは液の昇圧工程、不活化工程(5min)、降圧工程、処理液交換工程をした後、次のバッチに移行するが、連続処理の場合、上記の工程が同時に行われるためである。
1 連続不活化装置
30 圧力印加手段
31 不活化手段
60 減圧手段
S1 不活化工程
S2 減圧工程

Claims (12)

  1. 目的物質を含む被処理液に含まれ得るウイルスおよび菌体を連続処理で不活化する方法であり、
    前段の工程から送液されてきた前記被処理液に圧力を印加して前記ウイルスおよび前記菌体を不活化する不活化工程と、
    前記不活化工程後、前記被処理液に印加された圧力を段階的または漸次的に大気圧まで減圧して後段の工程に前記被処理液を送液する減圧工程と、
    を含むことを特徴とする連続不活化方法。
  2. 請求項1において、
    前記減圧工程における前記段階的な減圧が、複数の減圧弁を順次開くことによって行われることを特徴とする連続不活化方法。
  3. 請求項2において、
    前記減圧弁での減圧量が、前記減圧弁一つあたり75MPa以下であることを特徴とする連続不活化方法。
  4. 請求項1において、
    前記減圧工程における前記漸次的な減圧が、配管の内径を漸次的に大きくすることで行われることを特徴とする連続不活化方法。
  5. 請求項1において、
    前記減圧工程における前記漸次的な減圧の減圧速度が、15000MPa/秒以下で行われることを特徴とする連続不活化方法。
  6. 目的物質を含む被処理液に含まれ得るウイルスおよび菌体を連続処理で不活化する装置であり、
    前段の手段から送液されてきた前記被処理液に圧力を印加して前記ウイルスおよび前記菌体を不活化する不活化手段と、
    前記不活化手段と接続され、前記被処理液に印加された圧力を段階的または漸次的に大気圧まで減圧して後段の手段に前記被処理液を送液する減圧手段と、
    前記不活化手段と接続され、前記不活化手段内に前記被処理液を送液するとともに、前記不活化手段内の前記被処理液に圧力を印加する圧力印加手段と、
    を有することを特徴とする連続不活化装置。
  7. 請求項6において、
    前記減圧手段が、複数の減圧弁を有しており、
    前記減圧手段における前記段階的な減圧が、前記複数の減圧弁を順次開くことによって行われることを特徴とする連続不活化装置。
  8. 請求項7において、
    前記減圧弁での減圧量が、前記減圧弁一つあたり75MPa以下であることを特徴とする連続不活化装置。
  9. 請求項6において、
    前記減圧手段が、前記不活化手段から離れるにつれて内径が漸次的に大きくなる配管を有しており、
    前記減圧手段における前記漸次的な減圧が、前記配管内に不活化した前記被処理液を通流させることにより行われることを特徴とする連続不活化装置。
  10. 請求項6において、
    前記減圧手段における前記漸次的な減圧の減圧速度が、15000MPa/秒以下で行われることを特徴とする連続不活化装置。
  11. 目的物質を含む被処理液に含まれ得るウイルスおよび菌体を連続処理で不活化する装置に用いられる交換ユニットであり、
    前段の手段と接続可能な第1接続部を有し、内部に収められた前記被処理液に圧力が印加されて前記ウイルスおよび前記菌体を不活化する不活化手段と、
    前記不活化手段と接続され、前記被処理液に印加された圧力を段階的または漸次的に大気圧まで減圧するとともに、後段の手段と接続可能な第2接続部を有する減圧手段と、
    を有することを特徴とする連続不活化装置用交換ユニット。
  12. 請求項11において、
    前記減圧手段が、複数の減圧弁を有するか、または、前記不活化手段から離れるにつれて内径が漸次的に大きくなる配管を有することを特徴とする連続不活化装置用交換ユニット。
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