JP2019038807A - 新規抗菌薬群としての四分岐ペプチドおよびその類似体ならびにそれらの製造 - Google Patents

新規抗菌薬群としての四分岐ペプチドおよびその類似体ならびにそれらの製造 Download PDF

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Abstract

【課題】抗菌スペクトルが広く、様々な用途、特に眼感染症の治療に好適であり、かつ好ましくは耐性真菌が発生しにくい、抗真菌薬として特に好適な抗菌薬を提供する。【解決手段】抗菌性(抗細菌性、抗真菌性および/または抗原虫性)を有する式[(RGRKVVRR)2K]2KKを含む単離ペプチドテトラマーおよびその誘導体を開示する。前記誘導体は、少なくとも1つのペプチドモノマー中に、少なくとも1つのアミノ酸置換、少なくとも1つのアミノ酸欠失、ペプチドモノマー内における再配列および/または少なくとも1つの非タンパク質構成アミノ酸による修飾を含んでいてもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、抗菌性、特に抗真菌性を有するテトラマー型ペプチドに関する。さらに本発明は、該テトラマーペプチドの製造方法に関する。また本発明は、微生物、特に真菌の増殖を抑制するための、該多量体の使用に関する。本発明はさらに、該テトラマーペプチドを含む組成物に関する。
抗真菌薬は、真菌の増殖抑制および/または真菌の殺傷(殺真菌薬)に使用される。例えば、抗真菌薬は、真菌による感染症の治療や、患者(特に免疫が低下した患者)における真菌感染症の発症を予防するために用いられる。病原性真菌感染症は、米国における感染症関連死因の第7位を占める。実際に最近の調査では、真菌性疾患が地球上の生物の脅威となりつつあることが示唆されている。
真菌類における一般的な創薬ターゲットは、ヒトの同種分子種とよく似ており、ヒトにおいても抑制作用を及ぼす恐れがあるため、利用可能な抗真菌薬の種類は抗細菌薬と比べて限られている。抗真菌薬としては、ポリエン類、アゾール類、アリルアミン類、フルシトシンおよびエキノキャンディン類が挙げられる(図9)。さらに最近の報告では、既存の抗真菌薬に対する耐性真菌の発生の増加が指摘されている。
真菌性角膜炎や角膜真菌症などの眼の真菌感染症は、熱帯地域では一般的に見られる。先進国では、コンタクトレンズやコンタクトレンズケア液の使用が真菌性角膜炎の主な危険因子となっている。コンタクトレンズによる真菌性角膜炎が初めて確認されて以来、複数の国で眼の病原性真菌感染症の発生が報告されている(図10)。しかし、真菌性角膜炎に対して米国FDAで認可されている眼科用抗真菌薬はナタマイシンのみである。
薬剤耐性真菌の出現は免疫不全患者の増加と相まって、臨床医による治療の選択の幅を狭めており、新しいタイプの抗真菌薬の必要性が強調されている。
従って、抗菌スペクトルが広く、様々な用途、特に眼感染症の治療に好適であり、かつ好ましくは耐性真菌が発生しにくい、抗真菌薬として特に好適な抗菌薬の開発が望まれている。
第1態様において本発明は、ペプチドモノマー(RGRKVVRR)を出発物質とした、式[(RGRKVVRR)K]KK(式中i=0または1である)を含む単離ペプチドテトラマー、または該ペプチドテトラマー[(RGRKVVRR)K]KKの単離ペプチドテトラマー誘導体であって、出発物質である該ペプチドモノマーと比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換、少なくとも1つのアミノ酸欠失、少なくとも1つのペプチドモノマー内における再配列、および/または少なくとも1つのペプチドモノマーにおける少なくとも1つの非タンパク質構成アミノ酸による修飾を含む、単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体に関する。
また、本発明は上記の単離ペプチドテトラマー誘導体または単離ペプチドテトラマーの使用に関する。
さらに、本発明は上記の単離ペプチド誘導体または単離ペプチドテトラマーの製造方法を包含する。
モノマー、直鎖状レトロダイマー、ペプチドダイマーB2088、ペプチドテトラマーB4010、スクランブルB4010およびナタマイシンの構造を示す図である。 B4010によるC.albicansの殺菌動態を示したグラフであり、(A)はATCC10231株における結果、(B)はDF2672R臨床分離株における結果を示す。グラフに記載の濃度のB4010、アムホテリシンBおよびナタマイシンとともに2×10個の細胞をインキュベートした。グラフに記載の時点において試料の一部をSDAに播種し、細胞生存率を測定した。 金属イオンおよび複合生体液の存在下におけるB4010の抗真菌性を示すグラフである。(A)は一価金属イオンまたは二価金属イオンの存在下で測定したMIC値を示す。バー上の数字はMICの測定値を示す。(B)は金属イオン存在下でのB4010の殺カンジダ性を示す。B4010の濃度は5.5μMであった。(C)はトリプシン存在下での抗真菌活性を示す(トリプシン:B4010=1:100)。(D)は50%ウサギ涙液存在下でのB4010の殺カンジダ活性を示す。 B4010の毒性と角膜上皮再生速度を示すグラフである。(A)は、4%ウサギ赤血球に対するB4010およびポリエン系抗真菌薬(ナタマイシンおよびアムホテリシンB)の溶血活性を示す。(B)は、ヒト角膜上皮(HCE)細胞に対するB4010およびポリエン系抗真菌薬の細胞毒性を示す。(C)は、フルオレセイン染色により測定した、ニュージーランドホワイトウサギの角膜上皮再生に対するB4010の影響を示す。ペプチドの濃度は22μMであった。 B4010がC.albicansの細胞膜電位、膜透過性および形態に及ぼす影響を示すグラフである。(A)は、真菌の細胞壁多糖であるβ−キチンに対するB4010のアフィニティ欠如を示すSDS−PAGEである。(B)は、様々な濃度のB4010により誘導された、C.albicansによるSYTOX Greenの取り込みを示す。(C)は、diSC35アッセイによりB4010媒介性膜脱分極を観察した結果である。(D)は、B4010により誘導された、C.albicansの細胞外へのATP放出を示す。挿入図はATP放出の動態を示す。B4010の濃度は5.5μMであった。(E)は、未処理のC.albicansのSEMであり、スケールバーは2μm(挿入図のスケールバー=200nm)である。(F)は、5.5μMのB4010で処理したC.albicansのSEM像であり、スケールバーは1μm(挿入図のスケールバー=100nm)である。 種々の添加物がB4010の殺カンジダ性および膜透過化性に及ぼす影響を示すグラフである。(A)は膜電位に対するCCCPとNaNの影響を示す。(B)は生存率に対する種々の添加物の影響を示し、(C)はATP放出に対する種々の添加物の影響を示す。(D)は膜電位に対するイオンチャネル阻害剤の影響を示す。矢印は添加物を加えた時点を示す。 B4010と哺乳類モデル膜または真菌モデル膜との相互作用を示すグラフである。(A)は、B4010またはスクランブルB4010を添加後の、PC:PE:PS:エルゴステロールSUVからのカルセイン放出の経時変化を示す。(B)は、PC:コレステロールSUVからのカルセイン放出の経時変化を示す。ペプチドと脂質の比率はグラフに示す。 PBS(pH=7.0)中のB4010およびスクランブルB4010のCDスペクトルである。 現在使用されている抗真菌薬の例を示した図である。 2007年〜2012年の眼の病原性真菌類を調査した結果である。
定義
「非タンパク質構成アミノ酸」は、20種の標準アミノ酸が様々な数および組合せで配列されることによって通常構成される天然のタンパク質には通常見いだされないアミノ酸を指す。
「保護されたアミノ酸」は、カルボキシ基またはアミン基に保護基が付加されていることでこれらのいずれかの基が保護されており、これらのカルボキシ基とアミン基の両方ではなく、いずれか一方のみがペプチド結合を形成できるアミノ酸を意味する。アミン基が保護されている場合、カルボキシ基のみが別のアミン基とペプチド結合を形成できる。また、カルボキシ基が保護されている場合、アミン基のみが別のカルボキシ基とペプチド結合を形成できる。ポリペプチドの末端アミン基または末端カルボキシ基を同様に保護して、カルボキシ末端またはアミン末端のいずれか一方のみがペプチド結合を形成できるようにしてもよい。
本発明は、ペプチドモノマー(RGRKVVRR)を出発物質とした、式[(RGRKVVRR)K]KK(式中i=0または1である)を含む単離ペプチドテトラマー、または該ペプチドテトラマー[(RGRKVVRR)K]KKの単離ペプチドテトラマー誘導体であって、出発物質である該ペプチドモノマーと比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換、少なくとも1つのアミノ酸欠失、少なくとも1つのペプチドモノマー内における再配列、および/または少なくとも1つのペプチドモノマーにおける少なくとも1つの非タンパク質構成アミノ酸による修飾を含む、単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体に関する。さらに、任意の2つのペプチドモノマー、任意の3つのペプチドモノマーまたはすべてのペプチドモノマーが、少なくとも1つのアミノ酸置換、少なくとも1つのアミノ酸欠失、ペプチドモノマー内における再配列および/または少なくとも1つの非タンパク質構成アミノ酸による修飾によって改変されていてもよい。出発物質であるペプチドモノマーの配列はRGRKVVRRである(配列番号1)。
i=0の場合、単離ペプチドテトラマーは[(RGRKVVRR)K]Kである。
i=1の場合、単離ペプチドテトラマーは[(RGRKVVRR)K]KKである。
単離ペプチドテトラマーは[(RGRKVVRR)K]Kに由来していてもよく、あるいは、単離ペプチドテトラマーは[(RGRKVVRR)K]KKである。
単離ペプチドテトラマー誘導体は式[(ペプチド)K]KKを有する。
具体的には、単離ペプチドテトラマー誘導体は以下の分岐構造を有する。
単離ペプチドテトラマー誘導体も同様に、以下の分岐構造を有する。
ペプチド1、ペプチド2、ペプチド3およびペプチド4はそれぞれ、出発物質としての上記のペプチドモノマーに由来している。ペプチド1、ペプチド2、ペプチド3およびペプチド4は同じ配列を有していてもよく、異なる配列を有していてもよい。
ペプチド1、ペプチド2、ペプチド3およびペプチド4は、それぞれ独立して、配列番号2〜26のいずれか1つを含んでいてもよい。
上記のアミノ酸置換は、出発物質であるペプチドモノマーに含まれる1つ以上のアミノ酸残基の任意の適切なアミノ酸による置換であってもよい。また、上記の置換は、出発物質であるペプチドモノマーに含まれる1つのアミノ酸の任意の適切なアミノ酸による置換であってもよい。例えば、上記のアミノ酸置換は少なくとも1つのアラニン置換であってもよい。上記のアミノ酸置換は、出発物質である少なくとも1つのペプチドモノマー(RGRKVVRR)に含まれる1つのアミノ酸を任意の適切なアミノ酸で順次置換することを含んでいてもよい。
具体的には、上記のアミノ酸置換は、出発物質である少なくとも1つのペプチドモノマー(RGRKVVRR)に含まれる1つのアミノ酸をアラニンで順次置換することを含む。
従って、単離ペプチドテトラマー誘導体は、[(AGRKVVRR)K]KK、[(RARKVVRR)K]KK、[(RGAKVVRR)K]KK、[(RGRAVVRR)K]KK、[(RGRKAVRR)K]KK、[(RGRKVARR)K]KK、[(RGRKVVAR)K]KKおよび[(RGRKVVRA)K]KK(式中i=0または1である)からなる群から選択されてもよい。
AGRKVVRR=配列番号2
RARKVVRR=配列番号3
RGAKVVRR=配列番号4
RGRAVVRR=配列番号5
RGRKVARR=配列番号6
RGRKVARR=配列番号7
RGRKVVAR=配列番号8
RGRKVVRA=配列番号9
i=0の場合、単離ペプチドテトラマー誘導体は、[(AGRKVVRR)K]K、[(RARKVVRR)K]K、[(RGAKVVRR)K]K、[(RGRAVVRR)K]K、[(RGRKAVRR)K]K、[(RGRKVARR)K]K、[(RGRKVVAR)K]Kおよび[(RGRKVVRA)K]Kからなる群から選択される。
i=1の場合、単離ペプチドテトラマー誘導体は、[(AGRKVVRR)K]K、[(RARKVVRR)K]KK、[(RGAKVVRR)K]KK、[(RGRAVVRR)K]KK、[(RGRKAVRR)K]KK、[(RGRKVARR)K]KK、[(RGRKVVAR)K]KKおよび[(RGRKVVRA)K]KKからなる群から選択される。
別の実施形態においては、出発物質であるペプチドモノマーに含まれる2つ以上のアミノ酸がアラニン残基で置換されていてもよい。
例えば、単離ペプチドテトラマー誘導体は、[(RGAAVVRR)K]KK、[(RGRKVVAA)K]KK、[(RGAKAVRR)K]KK、[(RGRKAARR)K]KK、[(RGAAAVRR)K]KK、[(RGAKAARR)K]KK、[(RGRAAARR)K]KK、[(RGAAAARR)K]KK、および[(RGRKAAAA)K]KK(式中i=0または1である)からなる群から選択されてもよい。
RGAAVVRR=配列番号10
RGRKVVAA=配列番号11
RGAKAVRR=配列番号12
RGRKAARR=配列番号13
RGAAAVRR=配列番号14
RGAKAARR=配列番号15
RGRAAARR=配列番号16
RGAAAARR=配列番号17
RGRKAAAA=配列番号18
i=0の場合、単離ペプチドテトラマー誘導体は、[(RGAAVVRR)K]K、[(RGRKVVAA)K]K、[(RGAKAVRR)K]KK、[(RGRKAARR)K]K、[(RGAAAVRR)K]K、[(RGAKAARR)K]、[(RGRAAARR)K]K、[(RGAAAARR)K]K、および[(RGRKAAAA)K]Kからなる群から選択される。
i=1の場合、単離ペプチドテトラマー誘導体は、[(RGAAVVRR)K]KK、[(RGRKVVAA)K]KK、[(RGAKAVRR)K]KK、[(RGRKAARR)K]KK、[(RGAAAVRR)K]KK、[(RGAKAARR)K]KK、[(RGRAAARR)K]KK、[(RGAAAARR)K]KK、および[(RGRKAAAA)K]KKからなる群から選択される。
別の実施形態において、単離ペプチドテトラマー誘導体は[(VRGRVRKR)K]KK(式中i=0または1である)を含んでいてもよい。この実施形態においては、出発物質であるペプチドモノマー(RGRKVVRR)内においてアミノ酸が再配列されており、すなわち出発物質であるペプチドモノマーの配列がスクランブルされている。i=0の場合、単離ペプチドテトラマー誘導体は[(VRGRVRKR)K]Kである。i=1の場合、単離ペプチドテトラマー誘導体は[(VRGRVRKR)K]KKである。
VRGRVRKR=配列番号19
別の例では、上記のアミノ酸欠失は、出発物質である少なくとも1つのペプチドモノマーのN末端からアミノ酸を順次欠失させることを含んでいてもよい。従って、単離ペプチドテトラマー誘導体は、[(GRKVVRR)K]KK、[(RKVVRR)K]KK、[(KVVRR)K]KK、[(VVRR)K]KK、[(VRR)K]KK、[(RR)K]KKおよび[(R)K]KK(式中i=0または1である)からなる群から選択されてもよい。
GRKVVRR=配列番号20
RKVVRR=配列番号21
KVVRR=配列番号22
VVRR=配列番号23
VRR=配列番号24
RR=配列番号25
R=配列番号26
i=0の場合、単離ペプチドテトラマー誘導体は、[(GRKVVRR)K]K、[(RKVVRR)K]K、[(KVVRR)K]K、[(VVRR)K]K、[(VRR)K]K、[(RR)K]Kおよび[(R)K]Kからなる群から選択される。
i=1の場合、単離ペプチド誘導体は、[(GRKVVRR)K]KK、[(RKVVRR)K]KK、[(KVVRR)K]KK、[(VVRR)K]KK、[(VRR)K]KK、[(RR)K]KKおよび[(R)K]KKからなる群から選択される。
単離ペプチドテトラマーにおける非タンパク質構成アミノ酸による修飾は、(i)少なくとも1つのペプチドモノマー内の任意の位置に少なくとも1つの非タンパク質構成アミノ酸を付加すること、および/または(ii)少なくとも1つのペプチドモノマーに含まれる少なくとも1つのアミノ酸残基を非タンパク質構成アミノ酸で置換することを含んでいてもよい。
具体的には、非タンパク質構成アミノ酸は、少なくとも1つのペプチドモノマーのいずれの位置に付加されていてもよい。
本発明の上記いずれかの態様による単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体は、薬剤、医薬組成物および/もしくは抗菌性組成物として使用するためのものであってもよく、かつ/または治療において使用するためのものであってもよい。抗菌性組成物は、抗細菌性組成物、抗真菌性組成物、抗原虫性組成物のいずれであってもよい。特に、抗菌性組成物は抗真菌性組成物を包含する。
本発明は、少なくとも1種の微生物感染症を予防および/または治療するための薬剤の製造における、本発明の上記いずれかの態様による単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体の使用を包含する。微生物感染症は、細菌感染症、真菌感染症および原虫感染症からなる群から選択されてもよい。特に、微生物感染症は真菌感染症を包含する。
本発明はまた、少なくとも1種の微生物の増殖を阻害および/または抑制する方法であって、本発明の上記いずれかの態様による少なくとも1つの単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体を該微生物と接触させることを含む方法を包含する。この方法はインビトロ法であってもよい。該微生物は細菌、真菌および原虫からなる群から選択されてもよい。特に、該微生物は真菌を包含する。
本発明はまた、少なくとも1種の微生物感染症を予防および/または治療する方法であって、本発明の上記いずれかの態様による少なくとも1つの単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体を投与することを含む方法を包含する。
本発明はさらに、本発明の上記いずれかの態様による単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体を含む、コンタクトレンズ用液剤および/もしくは点眼液、医薬組成物および/もしくは抗菌性組成物、器具のコーティングのための組成物ならびに/またはキットを包含する。
単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体の製造方法も本発明の一部として包含される。
一例において、4つの同一のペプチドモノマーを含むペプチドテトラマーまたは4つの同一のペプチドモノマーを含む単離ペプチドテトラマー誘導体を製造するための上記の方法は、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に第1の保護されたK残基を結合させる工程;
(iii)第1のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
(iv)第1のK残基に第2の保護されたK残基を連結する工程;
(v)第2のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
(vi)第2のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
(vii)連結させた2つのK残基から保護基を除去する工程;
(viiii)各ペプチドモノマーの配列に従って、保護されたアミノ酸残基をC末端からN末端の方向へ連結し、連結の都度、次の連結のために保護基を除去することによって、さらに鎖を伸長させる工程;
(ix)加える残基の数に応じて、アミノ酸残基の連結を終了する工程;および
(x)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
を含む。
別の例において、4つの同一のペプチドモノマーを含むペプチドテトラマーまたは4つの同一のペプチドモノマーを含む単離ペプチドテトラマー誘導体を製造するための上記の方法は、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に第1の保護されたK残基を結合させる工程;
(iii)第1のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
(iv)第1のK残基に第2の保護されたK残基を連結する工程;
(v)第2のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
(vi)第2のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
(vii)連結させた2つのK残基から保護基を除去する工程;
(viii)2つのK残基の各アミン基に、保護された末端アミン基を有するペプチドモノマーを1つずつ連結する工程;および
(iv)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
を含む。
別の態様によれば、4つの同一のペプチドモノマーを含むペプチドテトラマーまたは4つの同一のペプチドモノマーを含む単離ペプチドテトラマー誘導体を製造するための上記の方法は、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に第1のK残基を結合させる工程;
(iii)結合させた第1のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
(iv)連結させたK残基から保護基を除去する工程;
(v)各ペプチドモノマーの配列に従って、保護されたアミノ酸残基をC末端からN末端の方向へ連結し、連結の都度、次の連結のために保護基を除去することによって、さらに鎖を伸長させる工程;
(vi)加える残基の数に応じて、アミノ酸残基の連結を終了する工程;および
(vii)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
を含む。
また、4つの同一のペプチドモノマーを含むペプチドテトラマーまたは4つの同一のペプチドモノマーを含む単離ペプチドテトラマー誘導体を製造するための上記の方法は、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に第1のK残基を結合させる工程;
(iii)結合させた第1のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
(iv)連結させたK残基から保護基を除去する工程;
(v)2つのK残基の各アミン基に、保護された末端アミン基を有するペプチドモノマーを1つずつ連結する工程;および
(vi)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
を含む。
本発明の概略を説明したが、以下の実施例を参照することにより本発明をより容易に理解することができるであろう。ただし、以下の実施例は例示を目的として記載されており、本発明を何ら限定するものではない。
具体的な記載のない、当技術分野において公知の標準的な分子生物学的手法については、概して、Green, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New York (2012)に記載の手法に従った。
実施例1:B4010テトラマーペプチドおよびスクランブルB4010
ペプチドモノマーRGRKVVRRKK(配列番号27)、直鎖状レトロダイマーRGRKVVRRKKKRRVVKRGR(配列番号28)、ペプチドダイマーB2088(RGRKVVRR)KK、ペプチドテトラマーB4010[(RGRKVVRR)K]KKおよびスクランブルB4010[(VRGRVRKR)K]KKを図1に示す。ナタマイシンの構造も同時に図1に示す。
修飾ペプチド
この方法においては、B4010の配列(RGRKVVRR)中の各アミノ酸をアラニン残基で置換し、抗菌活性と溶血活性とをハイスループットスクリーニング(HTS)法で評価する。第2の方法では、B4010の配列中の各アミノ酸残基を順次欠失させ、活性−毒性プロファイルを上記と同様に評価する。すべてのペプチドのMICを少なくとも3種の菌株に対して評価した後、成績の最も良かったペプチドを複数選択し、50%ウサギ涙液、25%血清、またはトリプシン(酵素:ペプチド=約1:100)中においてこれらのペプチドの活性を評価する。表1に修飾ペプチドとそれらの特性を示す。
複合生体液中において優れた活性を示すペプチドを確認後、表2に例示した非タンパク質構成アミノ酸残基による以下の修飾を選択する。
実施例2:試薬およびペプチド
試薬とペプチド:サブローデキストロース寒天はAcumedia社(ミシガン、ミシガン州、米国)から購入した。ペプチドはEZBiolabs社(カーメル、インディアナ州、米国)から購入した。L−α−ホスファチジルコリン(PC)、L−α−ホスファチジルエタノールアミン(PE)、L−α−ホスファチジルセリン(PS)、L−α−ホスファチジルイノシトール(PI)などの脂質は、Avanti Polar Lipids社(アラバマ州、米国)から購入した。エルゴステロール、アジ化ナトリウム(NaN)、カルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)、4−アミノピリジン(4−AP)、5−ニトロ−2−(3−フェニルプロピルアミノ)安息香酸(NPPB)、ガドリニウム(III)クロリド、塩化テトラエチルアンモニウム(TEA)および3’,3’−ジプロピルチアジカルボシアニン(diS−C3−5)色素は、Sigma-Aldrich社(ミズーリ州、米国)から購入した。ATP生物発光キットはMolecular Probes社(オレゴン州、米国)から購入した。アムホテリシンBおよびナタマイシンはSigma-Aldrich (S) Pte社(シンガポール)から粉末の形態で入手した。
実施例3:円偏光二色性(CD)スペクトル測定
ペプチド(0.6mg/mL)の遠紫外CDスペクトルを、光路長0.1cmの石英キュベットを用い、10mMPBS(pH7.0)中25℃でJASCO J810分光偏光計(JASCO、東京、日本)により測定した。260nm〜190nmのスペクトルを0.1nm間隔、走査速度50nm/分で記録した。最終的なスペクトルは、4回走査の平均である。CDデータは平均残基楕円率((θ)mrw、degcm dmol−1)として表した。
実施例4:多価ペプチドの抗真菌活性
最小発育阻止濃度(MIC)の測定
酵母菌株を培養し、平底マイクロタイタープレートにおいて、6倍希釈したサブローデキストロース(SD)ブロス中に初期OD600=約0.08で懸濁した。同じブロスで段階希釈したペプチドを上記酵母液と混合し、最終ペプチド濃度を0.4〜22μMとした。インフィニットM200マイクロプレートリーダー(Tecan Group社、スイス)を用いて、100rpm、37℃で24/48時間オービタル振とうしながら、30分間隔でOD600を測定することにより抗真菌活性を評価した。ペプチドを含まない培養物を陽性対照とし、ブロスのみまたは22μMのペプチドを加えたブロスを陰性対照とした。完全な阻害に必要な最小濃度を目視とOD600測定により求め、MICとした。実験は3連で行った。
結果:ペプチドモノマーRGRKVVRRKK(配列番号27)と直鎖状レトロダイマーRGRKVVRRKKKRRVVKRGR(配列番号28)は、C.albicans株とフザリウム菌株に弱い抗真菌活性を示した(表3)。しかしながら、分岐リシンを介して上記モノマー配列を2つ連結すると(B2088、図1)、モノマーと比較してMIC値は大幅に低下した(約1/14)(表3)。さらに、分岐リシンを介して上記分岐ダイマーを2つ組み合わせて四分岐ペプチド(B4010)を作製した。四分岐ペプチド(B4010)のMICは、上記共有結合ダイマーと比較してさらに1/4〜1/10に低下した(表3)。また、2種のC.albicans臨床分離株に対するB4010(0.34μM)のMIC値は、アムホテリシンB(1.4μM)のMIC値および米国FDAで認可されている唯一の眼科用抗真菌薬であるナタマイシン(15μM)のMIC値より低かった。興味深いことに、B4010の配列をスクランブルしたSc_B4010のMIC値は2〜4倍上昇したが、十分な効力を有していた。上記2種の四分岐ペプチドのCDスペクトルは、200nm付近に強い負のピークを示し、これらのペプチドが不規則な立体配座を有していることが示唆された(図8)。
ペプチドB4010はATCC標準株および臨床分離株に対して広い抗真菌活性スペクトルを示した(表3)。その活性は、米国FDAで認可されている唯一の眼科用薬物であるナタマイシンより2〜4倍優れていた。表4は、設計した他のペプチドのMICおよび細胞毒性を示す。
実施例5:Time−Kill動態分析
Time−Kill動態は、2種のC.albicans株(ATCC10231およびDF2672R)において測定した。菌株をSDブロス中で一晩培養し、細胞濃度をリン酸緩衝液で10〜10CFU/mLに調節した。それぞれの培養物にペプチドまたは抗真菌薬を加えた。培養物に加えたペプチドまたは抗真菌薬はそれぞれ適切な最終濃度となるように調節した(B4010(ATCC株では1.4〜11μM、CA2672R株では0.37〜3.7μM)、アムホテリシンB(CA2672R株において0.55μM〜11μM)およびナタマイシン(ATCC株では4.7μM〜75μM、CA2672R株では30μM))。試験溶液を一定振とうしながら37℃でインキュベートした。真菌懸濁液100μLを所定の時点で採取し、段階希釈(10倍または10倍)してSDA平板培地に入れた。この平板培地を37℃で48時間インキュベートし、コロニー数を計数した。データは、陽性対照に対する細胞生存率(%)として表した。
図2Aおよび図2Bは、C.albicansをB4010またはポリエン系抗真菌薬に接触させて行なった濃度依存的Time−Kill実験の結果を示す。ATCC株では、B4010は1×MICの濃度において1時間で約91%の殺菌を誘導し、濃度を2×MICに上げると約97%の殺菌が観察された。B4010の濃度を4×MICおよび8×MICに上げると、それぞれ20分および10分において生存細胞の対数減少値が4Log(99.99%)となった。一方、ナタマイシンは、16×MICの濃度でも同様のエンドポイントに到達するのに24時間かかった。また、臨床分離株C.albicansDF2672Rに対するB4010、ナタマイシンおよびアムホテリシンBの殺菌動態も比較した。B4010は2×MICの濃度において1時間で完全に殺菌することができたのに対し、アムホテリシンBは16×MICの濃度において最大の効果を発揮するのに8時間弱を要した。しかしながら、2×MICの濃度のナタマイシンでは24時間接触させた後でも殺真菌作用は観察されなかった。
実施例6:一価カチオンおよび二価カチオンがB4010の抗真菌活性に及ぼす影響
金属イオンによる影響を検討するため、SDブロスを適切な濃度の塩で調節した。塩の最終濃度は、NaClおよびKClでは100mMおよび135mMとし、CaClおよびMgClでは0.5〜2mMとした。上記と同様にMICの測定を行った。ブロスにC.albicansATCC10231細胞と塩とを加えたものを陽性対照とした。ブロスに塩のみ(NaCl、KCl、CaCl、またはMgCl)を加えたもの、またはブロスに塩と22μMのペプチドとを加えたものを陰性対照とした。
生存率に対する金属イオンの影響を検討するため、金属イオンの最終濃度が適切な濃度となるように、C.albicansを含むブロス溶液(OD600=0.4〜0.6)を調節し、5.5μMのB4010とともに6時間インキュベートし、48時間後に上記と同様にして細胞生存率を測定した。
結果:生理学的濃度の金属イオン(NaCl、CaClおよびMgCl)がB4010の抗真菌活性に及ぼす影響を検討した。生理学的条件に近い(涙液中の濃度に近い)濃度の一価カチオンまたは二価カチオンの存在下、様々な濃度のペプチドを用いてC.albicans ATCC10231の増殖を観察した(図3A、図3B)。100mMまたは135mMのNaClを添加するとB4010の抗真菌活性は上昇し、3.125μg/mLにおいて増殖は目視で観察されなかった(図3A)。135mMのNaClを添加することによって抗真菌活性は上昇しMICは半減したが、生理学的濃度の二価カチオンはMIC値を2倍に上昇させるに至った(図3A)。高濃度のCa2+イオンまたはMg2+イオンは、MIC値を2倍に上昇させた。カリウムはB4010の抗真菌活性にさらに劇的な影響を与え、25mMのKClが存在すると、MIC値は8倍上昇することが観察された(図3B)。100mMのKClを添加すると、KClを培地に加えなかった場合と比較して、MICの上昇は16倍を超えた。また、B4010の殺カンジダ活性のカチオン感受性も測定した。一価カチオンまたは二価カチオンの存在下でB4010(5.5μM)を添加すると、生存細胞は完全に見られなくなった(図3B)。しかし、高濃度のKClの存在下では、殺カンジダ活性がやや低下することが観察された。
実施例7:トリプシン、血清および涙液がB4010の抗真菌活性に及ぼす影響
トリプシンまたは50%涙液の存在下におけるB4010の抗真菌活性
特に明記しない限り、すべての実験においてATCC10231株を使用した。B4010(1mg/mL)をトリプシンとともに(酵素:ペプチド=1:100)37℃でインキュベートした。様々な時間間隔(0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間)でこの混合物から20μLを採取し、1μLのトリプシン阻害剤と混合した。この混合物を180μLの酵母液に加え、OD600で増殖を24時間観察することでペプチドの抗真菌活性を測定した。トリプシン/トリプシン阻害剤の存在下(B4010は添加せず)で行った同様の実験を陽性対照とした。涙液(TF)中での抗真菌活性の評価では、新たに採取したウサギTFにペプチドを溶解し、37℃で6時間インキュベートした。インキュベーション後、涙液中ペプチドを、一晩培養した等量のC.albicans(約10CFU/mL)と混合し、37℃で24時間インキュベートした。ペプチドの最終濃度は、4.4μM、8.8μM、および22μMとした。インキュベートした混合物を段階希釈(10倍または10倍)し、そこから100μLをSD寒天平板培地に播種後、37℃で48時間インキュベートした。培養物のみおよび50%涙液との培養物を陽性対照とした。データは、涙液を加えなかった培養物に対する殺菌率(%)で表した。50%涙液の存在下において約6〜10%の殺菌率が観察された。
5%ヒト血清中におけるMICの測定
5%ヒト血清が2種のC.albicans臨床分離株に対するB4010の活性に及ぼす影響を検討した。ヒト男性血清を13,000rpmで10分間遠心分離して脂質を除去し、上清を回収した。臨床分離株C.albicans2672RおよびC.albicans1976Rに対するMIC値は、標準培地(SDブロス)中および上記の5%血清上清を含む標準培地中で測定した。
3種の複合的な生物学的環境においてペプチドの抗真菌性を検討した。
トリプシン
ペプチドB4010をトリプシンとともに(トリプシン:ペプチド=1:100)37℃でインキュベートした。様々な時間間隔でこの混合物から一部を採取し、C.albicans酵母液に加え、増殖を観察した(図3C)。トリプシンとともにインキュベーションを行っても6時間まで抗真菌活性の低下は観察されず、四分岐ペプチドが改善されたタンパク分解抵抗性を有していることが示唆された。
涙液およびヒト血清
また、涙液やヒト血清などの複合生体液の存在下においてB4010の抗真菌効果を観察した。
涙液
B4010の抗真菌活性を50%涙液中で測定した。涙液の非存在下では、ペプチド濃度5.5μMで生存細胞の約98±2%の死滅が観察された。しかしながら、50%涙液の存在下では、低濃度(4.4μMおよび8.8μMのB4010)において殺カンジダ活性が中程度抑制された(図3D)。しかし、22μMでは活性低下は観察されず、涙液の存在下でC.albicansの対数減少値を3Logより大きくするには、高濃度のペプチドが必要であることが示唆された。
血清
B4010の抗真菌効果に対する血清の影響は、5%ヒト血清の存在下で、2種のC.albicans臨床分離株に対するB4010のMICの変化を測定することにより検討した。いずれの菌株においても、MIC値は血清の非存在下での0.34μMから、血清の存在下で5.5μMに上昇し、5%血清中でMICは16倍上昇することが示唆された。
実施例8:溶血、細胞毒性、角膜上皮再生速度およびインビボ毒性に対するB4010の影響
溶血アッセイ
ペプチドおよび抗真菌薬の溶血活性は、ウサギ赤血球に対して測定した(Orenら、1997)。すなわち、ペプチドまたは抗真菌薬をPBSで段階希釈してrRBC(最終濃度4%v/v)と混合し、37℃で1時間インキュベート後、3000rpmで10分間遠心分離した。上清に放出されたヘモグロビンを576nmの吸光度で測定することにより、ヘモグロビンの放出を観察した。PBS(何も添加せず)中の細胞懸濁液の測定値を0%溶血とし、1%トリトン−X100中の細胞懸濁液の測定値を100%溶血とした。
溶血アッセイの結果:B4010が哺乳類細胞の細胞膜の完全性を破壊する能力を、ウサギ赤血球を用いた溶血アッセイにより評価した。ペプチドは440μMの濃度でもウサギ赤血球に対して有意な溶血活性(<1%溶血)を示さなかった(図4A)。一方、アムホテリシンBおよびナタマイシンは低濃度で有意な溶血活性を示し、HC50値はそれぞれ59.4±7.8μMと139.6±0.18μMであった。
表5に種々のペプチドテトラマーの溶血アッセイの結果をまとめた。
ヒト結膜上皮細胞に対する細胞毒性
IOBA−NHC細胞を標準的な条件(5%CO、37℃の加湿雰囲気)で、1μg/mLウシ膵臓インスリン、2ng/mLマウス上皮増殖因子、0.1μg/mLコレラ毒素、5μg/mLヒドロコルチゾン、10%ウシ胎仔血清(FBS)、50UI/mLペニシリンおよび50UI/mLストレプトマイシンを添加したDMEM/F12中で培養した。すべての実験において、50〜80代継代した細胞を使用した。正常な培養成長を位相差顕微鏡法により毎日観察した。コンフルエントとなった細胞を緩やかな条件でトリプシンとともにインキュベートすることで剥がし、計数した。フローサイトメトリーによる細胞毒性アッセイのマイクロタイター分析を行うため、細胞を96ウェル培養プレート(コーニング、スキポール−レイク、オランダ)に播種した(約10,000個/ウェル)。培養を37℃で24時間継続した。その後、サブコンフルエントとなった細胞(培養面が70%近くを覆う状態)を種々の濃度(0.22μM〜225μM)のペプチドに接触させた。MultiTox-Fluor Multiplexアッセイキット(プロメガ、ウィスコンシン州、米国)を用いてAFC蛍光(λex=485nm、λem=520nm)を測定することにより、細胞毒性を一定時間ごとに測定した。8時間インキュベートした後でも検出可能な毒性は認められなかったため、ペプチドとともに細胞を24時間インキュベートした後に細胞生存率を測定し、EC50(生存細胞を50%減少させるのに有効なペプチド濃度)を求めた。
インビボ細胞毒性
C57BL6野生型マウス(6〜8週齢)を用いてB4010の急性毒性を評価した。投与経路ごとに健常野生型マウスを2匹ずつ選択した。B4010を腹腔内投与(200mg/kg)または静脈内投与(100mg/kg)した。投与経路ごとに2匹のマウスを使用し、24/48時間観察して死亡率または毒性の徴候を測定した。
細胞毒性アッセイの結果:220μMのB4010を接触させることによって細胞生存率は50%低下した(図4B)。B4010のEC50値はナタマイシン(211.7±20.5μM)と同程度であり、アムホテリシンB(134±16μM)よりも良好であった(図4B)。
ウサギモデルの角膜創傷治癒
B4010の局所投与がインビボでの角膜創傷治癒に影響を与えるかどうかをさらに検討した。すべての動物実験は、眼科および視覚研究における動物の使用(実験動物のケアおよび使用に関するガイドライン)についてのARVO宣言(the ARVO statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Research, the guide for the Care and Use of laboratory animals)(National Research Council)に従い、Singhealth Experimental Medical Centre(SEMC)の監督下で行った。4匹のニュージーランドホワイトウサギを2群に分け、2匹を対照群(生理食塩水)、2匹をB4010を用いた試験群とした。ウサギに1mLのケタミン(100mg/mL)と0.5mLのキシラジル(20mg/mL)を筋肉内注射して鎮静した。1%キシロカインを局所投与し角膜を麻酔した。既報(Crossonら、1986)に従い、5mmトレフィンを用いて創縁の切り込みを入れ、滅菌した小さなメス(BD-Beaver)で上皮細胞を物理的に除去し、基底膜はそのまま残した。22μMのB4010を1日3回局所投与することによってウサギを処置した。角膜創傷を確認するために眼科医院で用いられている無毒色素であるフルオレセインナトリウムで角膜創傷を染色して可視化し、コバルトブルーフィルターを用いた細隙灯生体顕微鏡で観察した。上皮再生される過程の残留創傷範囲をImage-J1.440によって測定した。
結果:1日3回のB4010(22μM)の局所投与による上皮創傷治癒速度は、対照群と変わらなかった(図4C)。角膜上皮の創傷が治癒することは眼の自然免疫の回復に必須であることから、この結果は重要である。マウスにおけるインビボ毒性についての予備試験では、IP投与(200mg/kg)、IV投与(100mg/kg)のいずれでも、死亡、罹患または毒性の徴候は認められなかった。
実施例9:ergΔ株に対するB4010の抗真菌活性
野生型(WT)および変異型S.cerevisiae株に対するMICの測定
変化したステロール構造およびステロール組成を有するS.cerevisiae ergΔ変異株に対してもB4010の抗真菌活性を試験した。
WT株または変異株から得た同一形状の数個のコロニーを0.1mg/mLアンピシリンを含むSDブロスに直接播種し、30℃で一晩培養した。遠心分離により細胞を回収し、滅菌水で洗浄後、凍結した。細胞をSD寒天平板培地に再度播種し、37℃で48時間インキュベートした。変異株の同一形状のコロニーを2つまたは3つ回収し、SDブロスに播種した。ペプチドを滅菌水に溶解し、WT株または変異株と混合し、試験管中37℃で48時間または72時間インキュベートした。酵母菌株の増殖を抑制したペプチドの最小濃度を目視により決定した。
結果:耐性病原体の発生は、真菌感染症を管理する上で大きな脅威である。ステロールの変化がB4010の抗真菌活性に影響を及ぼすかどうかを調べるために、エルゴステロール(ergΔ)経路に特定の変異を有するS.cerevisiae株を用いて実験を行った。表6に、変化したステロール構造およびステロール組成を有する種々のergΔ変異株と野生型とに対するB4010のMIC値をまとめた。興味深いことに、ergΔ変異株はいずれもB4010に対して高い感受性を示し、そのMIC値は野生型と比較して1/2〜1/4に低下した。
ErgΔ変異株はB4010に対して高い感受性を示す。変異の結果、これらの変異株は、エルゴステロールのB環またはC環と側鎖とが変化した構造のステロールを蓄積する。菌株に与えた主なステロールを表5に簡単に示す。全体として、変異株のMIC値は野生型と比較して1/2〜1/4に低下した。変異株erg2Δ、erg3Δ、erg3Δerg6Δおよびerg4Δerg5Δは、B4010に対して高い感受性を示した(野生型と比較してMICが1/4に低下した)。変異株erg2Δerg6Δおよびerg6Δは、B4010に2倍高い感受性を示した。
実施例10:細胞壁成分との相互作用
SDS−PAGEプルダウンアッセイ
作用機序を調べる別の研究において、真菌の細胞壁の主成分であるキチンやβ−D−グルカンなどの不溶性多糖類に対するB4010のアフィニティを検討した。B4010(5.5〜22μM)をキチン(エビの殻由来)またはβ−D−グルカンと37℃で2時間インキュベートした。この混合物を10,000gで遠心分離し、上清をSDS−PAGE(4〜20%)で分析した。キチンやβ−D−グルカンを用いない対照実験も行い、これらの糖質ポリマーに対するペプチドの結合を定量した。
キチン、β−D−グルカンのいずれにおいても沈降は認められず、ペプチドは細胞壁多糖類に対してアフィニティを示さなかった(図5A)。
実施例11:B4010の膜破壊活性
2種の相補的な蛍光光度分析を行い、B4010が膜標的化作用を有するかどうかを検討した。
SYTOXGreen(SG)取り込みアッセイ
ペプチドが細胞膜を透過性にするかどうかを調べるために、SGの取り込みを分析した。SGは、無傷の細胞膜を有する細胞とインキュベートしても蛍光を発しない膜非透過性の色素である。SGは、細胞膜に損傷を有する細胞では細胞内の核酸と結合して強い蛍光を発する。
SG取り込みアッセイを実施するため、一晩培養したカンジダ(ATCC10231)を遠心分離により採取し、HEPES緩衝液で3回洗浄後、HEPES緩衝液に再懸濁した。ペプチドを添加する前に、細胞を1μMのSGとともに暗所でインキュベートした。様々な濃度のペプチドを加え、520nmで発光強度の増大を観察した(λex=485nm)。実験終了時に1%トリトン−X100を加え、取り込み率(%)を求めた。
結果:B4010が細胞膜を透過性にする能力をSYTOX Green取り込みアッセイにより検討した。この蛍光色素は、損傷した細胞膜を有する細胞を染色し、細胞内の核酸と結合して強い蛍光を発する。B4010を添加すると、C.albicansの蛍光強度が急激に増加することが観察され、細胞膜溶解作用が確認された(図5B)。
1μMのSGとインキュベートしたC.albicansにB4010を加えると、色素は急速に取り込まれ、それと同時に蛍光強度が濃度依存的に上昇した(図5B)。1/2×MIC値(13%)および1×MIC値(24%)では、弱い透過性が観察された。2×MICのB4010を添加すると、10分で約70%の細胞に膜損傷が起こった。B4010濃度を4×MICに上昇させると、25分以内により高いレベルの色素取り込み(>90%)が観察された。
diS−C3−5細胞膜脱分極
B4010の添加によるC.albicansの膜電位の変化を、膜電位感受性プローブdiS−C3−5色素の放出により観察した。すなわち、一晩培養した中間対数増殖期のカンジダ細胞を5m MHEPES緩衝液(pH7.0)に懸濁し、この懸濁液1mLを10μMのdiS−C3−5色素と混合し、サーモシェーカーにおいて37℃で1〜2時間インキュベートした。色素を取り込んだ細胞の懸濁液800μLを石英キュベットに移し、懸濁液をキュベット内で攪拌しながら、Quanta Master分光蛍光計(Photon Technology International、ニュージャージー州、米国)を用いて蛍光強度の変化を発光波長(λem)670nm(励起波長622nm)で観察した。励起バンド幅と発光バンド幅をそれぞれ1nmと2nmに設定した。蛍光レベルが一定となった後、ペプチドの最終濃度が0.22〜22μMになるようにHEPES緩衝液中濃縮ペプチド溶液10μLを加えた。蛍光強度の変化を1時間または2時間連続して測定した。また、エネルギー毒素およびイオンチャネル阻害剤の影響を調べるために、これらの添加物を先に加えてから5.5μMのB4010を加えた。蛍光強度の変化を上記と同様に観察した。
酵母は細胞内が負の静止膜電位に維持されていることから、B4010の殺カンジダ作用が膜全体の電気化学勾配の消失によるものかどうかを調べるために電位感受性プローブであるdiS−C3−5を用いた。図5Cは、電位感受性プローブを取り込んだC.albicansを用いた、B4010の添加による膜電位の濃度依存的消失を示す。脱分極はB4010の添加により瞬時に起こり、この脱分極の経時変化は細胞からのプローブの放出を示している。しかし、MICの2倍を超えるペプチドを添加しても、最終的な膜電位消失に有意な差は見られなかった。
膜電位の消失と殺カンジダ活性との関連性を確認するために、同一条件下で細胞生存率試験を行った。ペプチドの濃度を4×MICよりも高くすると、生存能が完全に消失することが観察された。SG取り込みアッセイを合わせたこれらの結果から、B4010は急速な膜電位の消失を引き起こし、かつ濃度依存的にC.albicansの細胞膜を透過性にすることが確認された。
C.albicansをB4010に暴露させた後の金属イオンとATPの細胞外放出を分析することによって、膜摂動が膜のバリア機能に影響を及ぼすかどうかを検討した。
細胞外カチオンの測定
一晩培養した後期対数増殖期のC.albicansを遠心分離により採取し、10mMのHEPES(pH7.0)で5回洗浄後、HEPES緩衝液に再懸濁し、OD600=0.4に調節した。この懸濁液5mLにB4010(最終濃度5.5μM)を加え、37℃で2時間インキュベートした。この混合物を3,000gで遠心分離し、上清中のK、Ca2+およびMg2+の存在を、CMMAC施設(シンガポール国立大学、化学学部)で利用可能なPerkin Elmer Dual-view Optima 5300 DV誘導結合プラズマ発光分光計(ICP-OCS、マサチューセッツ、米国)により推算した。
ATP生物発光アッセイ
C.albicansをB4010に暴露させた後の細胞外ATPレベルを既報の方法(Koshlukovaら、1999)で測定した。細胞(OD600=約0.6)を37℃で1.5時間インキュベートし、種々の添加物の存在下または非存在下においてオービタル振とうしながら37℃で2時間インキュベートした。B4010(5.5μM)を加え、振とうしながら37℃で1.5時間さらにインキュベートした。各チューブを5000gで5分間遠心分離した。その後、上清25μLに225μLの沸騰TE緩衝液(50mMTris、2mM EDTA、pH7.8)を加え、よく混合した。この混合物を再度さらに2分間沸騰させ、試験を行うまで4℃で保存した。100μLのルシフェリン−ルシフェラーゼATPアッセイ混合物を上清100μLに加え、インフィニットM200マイクロプレートリーダー(Tecan Group社、スイス)を用いて発光を観察した。経時変化実験では、様々な時間間隔で細胞(OD600=0.4)を5.5μMのペプチドで処理した。用量依存試験では、ペプチドの濃度を0.4〜44μMの範囲で変動させた。細胞外ATP濃度は、メーカーの説明書に従い、ATPアッセイキット(Molecular Probes、オレゴン州、米国)により得た検量線を用いて決定した。
結果:上清中のKとCa2+のバックグラウンド濃度はそれぞれ43.4±2μMおよび2.5±0.5μMであった。C.albicansをB4010(5.5μM)とともに2時間インキュベーション後、2倍を超えるカリウム濃度の上昇(104±4.2μM)およびカルシウム濃度の上昇(5.8±1.3μM)が見られたが、NaイオンレベルおよびMg2+イオンレベルには有意な変化は認められなかった。ATP生物発光アッセイでは、B4010添加によるC.albicansからの急速なATPの放出が示された(図5D挿入図)。ATPの放出もペプチド濃度に依存しており、約4×MICのB4010で最大となった(図5D)。B4010で処理したC.albicansの形態学的変化を走査型電子顕微鏡法により観察した。未処理の細胞は滑らかな表面を有する丸いドーム型であった(図5E)。一方、B4010とともに30分間インキュベートしたC.albicansの細胞表面はかなり損傷し、表面に出芽痕を有していた(図5F)。いくつかの細胞では異常物質の放出も認められ(図5F挿入図)、B4010の膜溶解作用が示唆された。
エネルギー毒素またはイオンチャネル阻害剤の存在下でのB4010の殺カンジダ活性
エネルギー毒素およびイオンチャネル阻害剤の影響を見るために、酵母細胞(10〜10CFU/mL)を添加物の存在下または非存在下において37℃で2時間インキュベートした。最終濃度5.5μMのB4010ペプチドを細胞懸濁液に加え、37℃で1.5時間さらにインキュベートした。各細胞懸濁液を希釈後、細胞100μLを播種し、37℃でインキュベートした。添加物を含む(ペプチドは含まない)SDA平板培地を陽性対照とした。37℃で48時間インキュベーション後、各平板培地に形成されたコロニーの数を数えることで細胞生存率を求めた。添加物の最終濃度は、CCCP(5μM)、NaN(5mM)、4−AP(1mM)、NPPB(0.5mM)、ガドリニウム(II)クロリド(1mM)、塩化テトラエチルアンモニウム(15mM)であった。独立した2連の実験の平均値を報告した。それぞれの添加物を使用した対照実験も行い、C.albicansに対する添加物の毒性を評価した。
結果:
C.albicansの代謝作用がB4010に対する感受性に及ぼす影響を検討するため、diS−C3−5を取り込んだ細胞を5μMのCCCP(プロトン勾配の脱共役剤)または5mMのNaN(ミトコンドリア阻害の古典経路と代替経路に対する遮断剤)とともにインキュベートし、B4010添加後の蛍光強度の変化を観察した。CCCPの添加により蛍光強度は大幅に低下し、膜電位の崩壊が示された。次にB4010を加えると、膜電位差はわずかに変化した(図6A)。既にVeermanらによって明らかにされているように、色素を取り込んだ細胞にNaNを添加すると弱い脱分極が起こった。次にB4010を加えると、蛍光強度は上昇した(図6A)。一方、アジド処理細胞では対照細胞と比較して蛍光強度が約1/25に低下したが、遠心分離によりNaNを除くと強度変化は回復し、このエネルギー毒素が殺カンジダ活性を可逆的に阻害することが示された。これらの結果から、プロトン脱共役剤およびエネルギー毒素はいずれも、B4010によって誘導された細胞膜の脱分極を著しく低下させたことが示唆された。CCCPとあらかじめインキュベートしたC.albicans細胞はB4010による殺傷から部分的に保護されるが、NaNの存在下では完全に保護されることが観察された(図6B)。
CCCPおよびNaNがB4010によるATP放出に及ぼす影響も検討した。細胞生存率アッセイの結果と一致して、ATP生物発光アッセイでは、B4010で処理した細胞の細胞外ATPレベルが有意に増加することが示された(図6C)。一方、CCCPまたはNaNであらかじめ処理した後、B4010を添加した細胞では、B4010処理細胞と比較してATP放出が有意に低下した(図6C)。
イオンチャネル阻害剤がB4010の抗真菌活性に及ぼす影響:
B4010がKとATPを急速に放出させること、および外部からのKの添加により細胞死が減少し、高いイオン濃度ではMICが16倍上昇することから、イオンチャネル阻害剤によってC.albicansをB4010から保護できるのではないかという疑問がもたらされた。非特異的有機カチオン性阻害剤(TEAおよび4−AP)ならびに酵母伸展活性化イオンチャネル遮断剤であるGd3+がB4010の殺カンジダ活性に及ぼす影響を検討した。ペプチドは、TEAまたは4−APで前処理した細胞の生存率を有意に低下させた(図6B)。生存率の低下と一致して、TEAまたは4−APで前処理後にB4010を添加した細胞では、これらの阻害剤を用いなかった細胞と同程度の量のATPの放出が観察された(図6C)。一方、Gd3+とともにインキュベートした細胞では、B4010の誘導による殺傷から部分的に保護された(54±6%の生存率低下)。C.albicans細胞をアニオンチャネル阻害剤であるNPPBで前処理した後にB4010を添加すると、C.albicansはB4010から有意に保護された(12±4%の殺菌率)(図6B)。さらに、完全または部分的な保護を提供する添加物によって、ATPの流出が完全に消失または減少することがATP放出アッセイから確認された(図6C)。
B4010活性の欠失と膜電位変化との関係性を調べるために、diS−C3−5色素を取り込んだ細胞の強度変化に添加物が及ぼす影響をB4010の添加前と添加後とで測定した。TEAおよび4−APは膜電位を変化させなかったが、B4010を次いで添加すると、膜電位は完全に消失し、強度変化の大きさは、4−APまたはTEAをあらかじめ添加しなかった細胞で観察されたものと同等であった(図6D)。色素を取り込んだC.albicansにGd3+を加えると、有意な脱分極が観察された。次いでB4010を添加すると膜電位の弱い消失が起こり、細胞生存率およびATP放出アッセイが増強された。NPPBとインキュベートした細胞では、膜電位の崩壊が起こったが細胞生存率には影響を及ぼさなかった。次いでNPPB処理細胞にB4010を加えると、膜電位の消失が妨げられ(図6D)、B4010の殺カンジダ性が消失した。種々の添加物の存在下での色素放出アッセイから、負の静止膜電位と代謝活動とがB4010の殺カンジダ活性に極めて重要であることが示唆された。
15重量%エルゴステロールを含むPC/PE/PIもしくはPS脂質(5:2.5:2.5)またはPC/コレステロール(10:1)を用いて小さな一枚膜リポソーム(Small unilamellar vesicle:SUV)を調製した(Makovitzkiら、2006)。PC/PE/PIもしくはPS/Erg SUVは以下のようにして調製した。ガラス管中で脂質をクロロホルム/メタノール(2:1、v/v)に溶解した。エルゴステロールを同じ溶媒に溶解し、脂質混合物に加えて、エルゴステロールの最終含量を15重量%とした。脂質−エルゴステロール混合物を窒素ガスで乾燥し、脂質層を形成させた。このフィルムを20mMのPBSを含む緩衝液(pH7)中で水和し、ボルテックスし、超音波処理した。超音波処理(5秒間、40℃)の都度、液体窒素で凍結し、37℃の水浴で解凍した。この手順を透明な分散物が目視できるまで5〜6回繰り返した。得られたSUVを2つに分けた。一方には50mMのカルセインを加え、1時間インキュベートした。カルセインを添加したSUV100μLを、20mM PBS(pH7.0)で平衡化したUltrahydrogel(登録商標)250カラム(7.8mm×300mm)に注入し、カラム容量の1.5倍を流速1mL/分で通液してイソクラティック溶出することによって、過剰なカルセインを除去した。得られたカルセイン添加リポソームと、カルセインを含まないリポソームとを混合し(1:1)、リポソーム最終濃度を調整した。ペプチド濃縮物を加えて、ペプチド:リポソーム比を1:30または1:15とした。ペプチドまたはトリトンX−100を添加した後の蛍光シグナルの変化を、PTI分光蛍光計を用いて励起波長480nm、発光波長512nmで測定した。各時点において放出されたカルセインのパーセンテージを下記の式により算出した。
式中、Aはペプチド添加後に観察された蛍光強度、Aminはベースラインの平均強度(ペプチド添加前)、Amaxは1%トリトンX−100添加後の飽和相の平均強度である。
同様の手順によりPC/コレステロールSUVを調製した。
結果:図7Aは、ペプチド:脂質比が1:30および1:15の場合のSUVからのカルセインの急速な放出を示す。ペプチド濃度を高くするとカルセインの放出量が増加した。B4010によりカルセインの放出は約68%となったのに対し、スクランブルペプチドでのカルセインの放出は約41%であったが、これは後者のペプチドのMIC値が高かったことと一致する。一方、ナタマイシンではカルセインの放出は観察されず、ナタマイシンはエルゴステロールと複合体を形成し、大きな膜貫通孔を形成しなかった(図7A)。哺乳類モデル膜(PC:コレステロール)では、B4010はわずかな量のカルセインの放出しか誘導せず(図7B)、真菌モデル膜に高い選択性があることが示唆された。
考察
熱帯の国々では、真菌症の発症率は高く、健康的にも経済的にも大きな問題となっている。免疫不全患者の増加、食品における抗真菌薬の多用、医療器具やインプラントの使用の増加などによって、真菌感染症の発症はますます増加している。全身性カンジダ症による死亡率は40%であり、米国における院内血流感染の原因の第4位となっている。現在使用されている抗真菌薬とそれらの特性を表7に例示する。以下のような抗真菌薬が使用されているものの、耐性真菌の増加と抗真菌薬の選択肢が限られているという問題が残されている。
本研究から、弱い抗真菌性を持つペプチドを多量体化することで、抗真菌性や膜透過活性がモノマーと比較して大幅に増強されることが明らかとなった。上記の一連のB4010ペプチドは以下の特徴を有する。
1.様々なタイプの真菌や酵母を速やかに殺菌する(1時間未満)。
2.膜のステロール組成が変化した変異型酵母を殺菌できる。
3.分解されにくい。
4.生理学的濃度の一価イオンおよび二価イオンに抵抗性がある。
モノマーを4つ有する最も活性なペプチド(B4010)は、カンジダ株およびフザリウム菌株に対して優れた抗真菌活性を示した。配列のスクランブル化により抗真菌活性が1/2〜1/4に低下したことから、アミノ酸配列の重要性が示された。
また、B4010の殺カンジダ活性動態をポリエン系抗真菌薬と比較した。ATCC株、臨床分離株のいずれに対しても、B4010は2×MIC値または4×MIC値の濃度で1時間未満に生存細胞の3Logの減少を認めたが、ポリエン系抗真菌薬では同様のエンドポイントに到達するのに高濃度と長時間とを要した。さらに、B4010の抗真菌性を、一価カチオンまたは二価カチオンの存在下と複合生体液中とで検討した。その結果、B4010の抗真菌活性は、高濃度のKイオンでは活性の低下が観察されたものの、生理学的なイオン強度では変化は見られなかった。高濃度のKが酵母細胞に及ぼす強い脱分極作用が、抗真菌活性の低下の原因であると考えられる。
トリプシンまたは涙液と6時間インキュベートしても、B4010は有意な抗真菌活性を維持した。これらの結果から、複合的な生物環境におけるB4010の高い安定性が示唆される。ヒト血清の存在下では、2種の臨床分離株に対するペプチドのMIC値は約16倍上昇した。B4010とアルブミンまたは他のタンパク質との相互作用がMIC値の上昇の原因であると考えられる。これらの結果を総合すれば、複合生体液中でのB4010の抗真菌効果が高いことが注目される。
アゾール系抗真菌薬およびポリエン系抗真菌薬に対するC.albicansの耐性発現についてはいくつかのメカニズムが報告されている。公知のアゾール耐性およびポリエン耐性のうち最も重要視されているメカニズムは、エルゴステロール生合成経路の特定のステップが変化することによってステロール構造やステロール組成が定性的または定量的に変化することである。AIDS患者や白血病患者から単離されたアゾール耐性C.albicans株中のステロール組成を分析すると、エルゴスタ−7,22−ジエノールが蓄積していた。S.cerevisiaeのERG4、ERG6およびERG3の変異によりポリエン系抗真菌薬およびアゾール系抗真菌薬に対する耐性が増強することが明らかにされている。しかし、変化したステロール構造やステロール組成を有する酵母変異株はいずれもB4010に対して高い感受性を示す。アゾール系抗真菌薬およびポリエン系抗真菌薬に対して本質的に耐性を有するerg3Δ変異株が、erg2D変異株やerg2D6D変異株よりも、B4010に対して高い感受性を示すことは注目に値する。ステロールの変化によって膜流動性が高まり、このことによってB4010の透過性が増加したことが、変異株で観察された高い感受性の原因かもしれない。
生体防御ペプチドの治療有効性は、高い細胞毒性や溶血活性によっても制限される。ナタマイシンやアムホテリシンBと比較して、本発明のペプチドはより高い濃度でもウサギ赤血球に対して溶血を起こさなかった。しかし、本発明のペプチドのHCE細胞に対する細胞毒性はナタマイシンと同程度であり、アムホテリシンBよりも高かった。B4010はウサギの角膜上皮再生速度に影響を及ぼさず、マウスに対しても急性毒性を示さなかったことから、本発明のペプチドは外科的用途で安全であることが示された。
多くの抗真菌性ペプチドは抗真菌作用の発揮に無傷な細胞壁を必要とすることから、B4010の細胞壁多糖類に対するアフィニティを試験した。B4010は、プルダウン実験において共沈が観察されなかったことから、β−D−グルカンやキチンにアフィニティを示さなかった。膜標的化特性を精査し、急速な殺カンジダ活性と関連づけるために、膜透過性化動態にB4010の濃度が及ぼす影響をSG取り込みアッセイとdiS−C3−5放出アッセイにより検討した。いずれの濃度においても、急速なSGの取り込みが観察され、最大の取り込みは4×MICの濃度で認められた。この結果は、4×MICにおいて30分間で完全に殺菌されるというTime−Kill動態アッセイの結果を支持するものである。diS−C3−5色素放出実験からは、低濃度で弱い膜電位の消失が示唆され、最大の消失は2×MICを超えて観察された。同じ条件下において4×MICのB4010に接触させた酵母細胞の生存率が低下することから、膜電位の消失が殺カンジダ活性と関連していることが示唆される。膜電位の急速な消失とSG取り込みは、ペプチドと細胞膜の直接的な相互作用を示すものだと考えられる。
C.albicansをB4010に暴露させるとKイオンおよびCa2+イオンが2倍増加することから、細胞膜の損傷が示された。B4010で処理した酵母細胞からのATPの細胞外放出は濃度依存的であり、最大流出は4×MICで認められた。ATP流出動態は4×MICにおいて30分以内に最大になり、殺カンジダ活性動態と一致していた。SEM実験では、B4010で処理したC.albicansの形態は損傷して表面が粗くなり、広範囲に出芽痕を有していた。この観察によっても、ペプチドの主要かつ不可欠な標的が恐らく細胞膜であることが示唆される。
この研究では、細胞膜電位やエネルギー代謝に影響を及ぼす添加物が、B4010による殺菌からC.albicansを実質的に保護することが示された。CCCPは5μMで細胞膜を脱分極させることが示されているが、ミトコンドリアの脱分極には高濃度(>50μM)が必要である。細胞生存率アッセイでは、5μMのCCCPで細胞を前処理すると、B4010から細胞を部分的に保護することができることが確認された(細胞の生存率:45%)。diS−C3−5アッセイでは、5μMのCCCP存在下で膜電位が崩壊することが示された。同様の効果がアニオンチャネル阻害剤であるDIDSの存在下でも観察された。これらの結果は、負の電気化学勾配の変化が、B4010からC.albicansを保護するメカニズムの根幹をなしている可能性を示唆している。S.cerevisiaeの膜電位は−76±5mVであり、C.albicansの膜電位は−120mVであることが明らかにされている(55,56)。S.cerevisiaeの膜電位が低いことは、S.cerevisiaeにおいて観察されたMIC値(5.5μM)がC.albicansのMIC値(0.37〜1.4μM)よりも高いことと関連すると考えられる。
上記を裏付けるものとして、高濃度の細胞外Kは細胞生存率に影響を与えることなく酵母細胞を強く脱分極させ、次いでB4010を添加すると膜電位はほとんど変化せず、B4010から部分的に保護された(細胞の生存率:40%)。さらに、膜電位を変化させないイオンチャネル阻害剤は、B4010から酵母細胞を保護することができなかった。しかし、NaNの存在下ではB4010の殺カンジダ活性は完全に消失した。NaNは膜電位に影響を与えることなく酵母の形質膜の流動性を変化させることが明らかにされている。このことと一致して、膜流動化剤を添加するとB4010の抗真菌活性は回復した。従って、上記から、B4010の殺カンジダ作用が形質膜電位および膜流動性に関連があることが示唆される。
精製脂質とエルゴステロールとを含むカルセイン担持SUVにB4010が及ぼす影響から、本発明のペプチドの膜溶解作用が明確に示された。この実験の結果では、B2088ペプチドまたはSc_B4010ペプチドの存在下でカルセイン放出の低下が観察されたことから、四分岐化とアミノ酸配列とが細胞膜の損傷に重要であることがさらに示された。しかし、コレステロールを含む両性イオン性SUVでは、B4010によるカルセインの放出は低下し、哺乳類モデル膜との相互作用は弱いことが示唆された。エルゴステロールを含む混合リポソームにおける高いカルセイン放出率(%)および伸長されたペプチド立体配座の維持は、MDシミュレーションにおいて得られた結果を支持するものであった。さらに、酵母に対するMICが低く、HCE細胞に対するEC50値が高かったことから、B4010が真菌細胞膜を選択的に損傷することが確認された。
結論として、この研究から、分岐リシンコアを用いて活性の弱い4つのペプチドを1つのペプチドとして構築することによってその特性が増強され、さらに直鎖状抗菌ペプチドが有する制限の一部を克服できることが明らかとなった。さらに、本発明のペプチドは、ステロール構造やステロール組成が変化した複数種の酵母菌株に対して高い効力を示すことから、耐性菌に対する有効性が示唆される。本発明のペプチドはインビトロ試験およびインビボ試験において毒性を示さなかった。B4010は細胞膜を標的とし、膜電位を急速に消失させ細胞内成分を失わせる。膜電位や代謝活動を変化させる添加物は抗真菌性に大きく影響する。SUVを用いた実験により、本発明のペプチドは哺乳類モデル膜よりも真菌モデル膜により選択的であることが示された。推定配列の1番目のアルギニン残基は、負に帯電した真菌モデル膜との相互作用の媒介に重要な役割を果たした。これを裏付けるものとして、1番目のアルギニンを置換すると抗真菌活性が約1/2〜1/4に低下した。生体内での状態をシミュレートすることは難しいが、本研究では広範囲な実験とコンピュータシミュレーション研究とを組み合わせて、抗真菌ペプチドとモデル脂質との相互作用をさらに解明した。本研究は、治療において重要でありかつ耐性菌に対する有効性が期待される新規抗真菌薬を合理的に設計するための指針となる。
この出願には以下の発明[1]〜[27]が含まれる。
[1]ペプチドモノマー(RGRKVVRR)を出発物質とした、式[(RGRKVVRR)K]KK(式中i=0または1である)を含む単離ペプチドテトラマー、または該ペプチドテトラマー[(RGRKVVRR)K]KKの単離ペプチドテトラマー誘導体であって、
出発物質である該ペプチドモノマーと比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換、少なくとも1つのアミノ酸欠失、少なくとも1つのペプチドモノマー内における再配列、および/または少なくとも1つのペプチドモノマーにおける少なくとも1つの非タンパク質構成アミノ酸による修飾を含む、単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体。
[2]前記アミノ酸置換が少なくとも1つのアラニン置換を含む、前記[1]に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体。
[3]出発物質である少なくとも1つの前記ペプチドモノマー(RGRKVVRR)に含まれる1つのアミノ酸がアラニンで順次置換されている、前記[2]に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体。
[4][(AGRKVVRR)K]KK、[(RARKVVRR)K]KK、[(RGAKVVRR)K]KK、[(RGRAVVRR)K]KK、[(RGRKAVRR)K]KK、[(RGRKVARR)K]KK、[(RGRKVVAR)K]KKおよび[(RGRKVVRA)K]KK(式中i=0または1である)からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体。
[5]出発物質である前記ペプチドモノマーに含まれる2つ以上のアミノ酸がアラニン残基で置換されていてもよい、前記[1]に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体。
[6][(RGAAVVRR)K]KK、[(RGRKVVAA)K]KK、[(RGAKAVRR)K]KK、[(RGRKAARR)K]KK、[(RGAAAVRR)K]KK、[(RGAKAARR)K]KK、[(RGRAAARR)K]KK、[(RGAAAARR)K]KKおよび[(RGRKAAAA)K]KK(式中i=0または1である)からなる群から選択される、前記[1]または[5]に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体。
[7]前記アミノ酸欠失が、出発物質である少なくとも1つの前記ペプチドモノマーのN末端からアミノ酸を順次欠失させることを含む、前記[1]に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体。
[8][(GRKVVRR)K]KK、[(RKVVRR)K]KK、[(KVVRR)K]KK、[(VVRR)K]KK、[(VRR)K]KK、[(RR)K]KKおよび[(R)K]KK(式中i=0または1である)からなる群から選択される、前記[1]または[7]に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体。
[9]前記単離ペプチドテトラマーにおける非タンパク質構成アミノ酸による修飾が、(i)少なくとも1つの前記ペプチドモノマー内の任意の位置に非タンパク質構成アミノ酸を付加すること、および/または(ii)少なくとも1つの前記ペプチドモノマーに含まれる少なくとも1つのアミノ酸残基を非タンパク質構成アミノ酸で置換することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体。
[10]式[(VRGRVRKR)K]KK(式中i=0または1である)を含む、前記[1]に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体。
[11]薬剤、医薬組成物および/もしくは抗菌性組成物として使用するための、ならびに/または治療において使用するための、前記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体。
[12]少なくとも1種の微生物感染症を予防および/または治療するための薬剤の製造における、前記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体の使用。
[13]前記微生物感染症が、細菌感染症、真菌感染症および原虫感染症からなる群から選択される、前記[12]に記載の使用。
[14]前記微生物感染症が真菌感染症である、前記[12]または[13]に記載の使用。
[15]少なくとも1種の微生物の増殖を阻害および/または抑制する方法であって、
前記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の少なくとも1つの単離ペプチドテトラマー誘導体または単離ペプチドテトラマーを該微生物と接触させることを含む方法。
[16]前記微生物が、細菌、真菌および原虫からなる群から選択される、前記[15]に記載の方法。
[17]前記微生物が真菌である、前記[15]または[16]に記載の方法。
[18]インビトロ法である、前記[15]〜[17]のいずれか一項に記載の方法。
[19]少なくとも1種の微生物感染症を予防および/または治療する方法であって、
前記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の少なくとも1つの単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体を対象に投与することを含む方法。
[20]前記微生物感染症が、細菌感染症、真菌感染症および原虫感染症からなる群から選択される、前記[19]に記載の方法。
[21]前記微生物感染症が真菌感染症である、前記[19]または[20]に記載の方法。
[22]前記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体を含む、コンタクトレンズ用液剤および/もしくは点眼液、医薬組成物および/もしくは抗菌性組成物、器具のコーティングのための組成物ならびに/またはキット。
[23]前記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の単離ペプチドテトラマーまたは単離ペプチドテトラマー誘導体の製造方法。
[24]前記ペプチドテトラマーまたはペプチドテトラマー誘導体が4つの同一のペプチドモノマーを含む前記方法であって、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に第1の保護されたK残基を結合させる工程;
(iii)第1のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
(iv)第1のK残基に第2の保護されたK残基を連結する工程;
(v)第2のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
(vi)第2のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
(vii)連結させた2つのK残基から保護基を除去する工程;
(viiii)各ペプチドモノマーの配列に従って、保護されたアミノ酸残基をC末端からN末端の方向へ連結し、連結の都度、次の連結のために保護基を除去することによって、さらに鎖を伸長させる工程;
(ix)加える残基の数に応じて、アミノ酸残基の連結を終了する工程;および
(x)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
を含む、前記[23]に記載の方法。
[25]前記ペプチドテトラマーまたはペプチドテトラマー誘導体が4つの同一のペプチドモノマーを含む前記方法であって、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に第1の保護されたK残基を結合させる工程;
(iii)第1のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
(iv)第1のK残基に第2の保護されたK残基を連結する工程;
(v)第2のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
(vi)第2のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
(vii)連結させた2つのK残基から保護基を除去する工程;
(viii)2つのK残基の各アミン基に、保護された末端アミン基を有するペプチドモノマーを1つずつ連結する工程;および
(iv)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
を含む、前記[23]に記載の方法。
[26]前記ペプチドテトラマーまたはペプチドテトラマー誘導体が4つの同一のペプチドモノマーを含む前記方法であって、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に第1のK残基を結合させる工程;
(iii)結合させた第1のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
(iv)連結させたK残基から保護基を除去する工程;
(v)各ペプチドモノマーの配列に従って、保護されたアミノ酸残基をC末端からN末端の方向へ連結し、連結の都度、次の連結のために保護基を除去することによって、さらに鎖を伸長させる工程;
(vi)加える残基の数に応じて、アミノ酸残基の連結を終了する工程;および
(vii)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
を含む、前記[23]に記載の方法。
[27]前記ペプチドテトラマーまたはペプチドテトラマー誘導体が4つの同一のペプチドモノマーを含む前記方法であって、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に第1のK残基を結合させる工程;
(iii)結合させた第1のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
(iv)連結させたK残基から保護基を除去する工程;
(v)2つのK残基の各アミン基に、保護された末端アミン基を有するペプチドモノマーを1つずつ連結する工程;および
(vi)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
を含む、前記[23]に記載の方法。
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Claims (12)

  1. ペプチドモノマー(RGRKVVRR)を出発物質とした、式[(RGRKVVRR)K]KK(式中i=0または1である)の単離ペプチドテトラマー誘導体であって、
    出発物質である該ペプチドモノマーに含まれる2つ以上のアミノ酸がアラニン残基で置換されている単離ペプチドテトラマー誘導体。
  2. [(RGAAVVRR)K]KK、[(RGRKVVAA)K]KK、[(RGAKAVRR)K]KK、[(RGRKAARR)K]KK、[(RGAAAVRR)K]KK、[(RGAKAARR)K]KK、[(RGRAAARR)K]KK、[(RGAAAARR)K]KKおよび[(RGRKAAAA)K]KK(式中i=0または1である)からなる群から選択される、請求項1に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体。
  3. 薬剤、医薬組成物および/もしくは抗菌性組成物として使用するための、ならびに/または治療において使用するための、請求項1または2に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体。
  4. 少なくとも1種の微生物感染症を予防および/または治療するための薬剤の製造における、請求項1または2に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体の使用。
  5. 前記微生物感染症が、細菌感染症、真菌感染症および原虫感染症からなる群から選択される、請求項4に記載の使用。
  6. 前記微生物感染症が真菌感染症である、請求項4または5に記載の使用。
  7. 請求項1または2に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体を含む、コンタクトレンズ用液剤および/もしくは点眼液、医薬組成物および/もしくは抗菌性組成物、器具のコーティングのための組成物ならびに/またはキット。
  8. 請求項1または2に記載の単離ペプチドテトラマー誘導体の製造方法。
  9. 前記ペプチドテトラマーまたはペプチドテトラマー誘導体が4つの同一のペプチドモノマーを含む前記方法であって、
    (i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
    (ii)固相に第1の保護されたK残基を結合させる工程;
    (iii)第1のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
    (iv)第1のK残基に第2の保護されたK残基を連結する工程;
    (v)第2のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
    (vi)第2のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
    (vii)連結させた2つのK残基から保護基を除去する工程;
    (viiii)各ペプチドモノマーの配列に従って、保護されたアミノ酸残基をC末端からN末端の方向へ連結し、連結の都度、次の連結のために保護基を除去することによって、さらに鎖を伸長させる工程;
    (ix)加える残基の数に応じて、アミノ酸残基の連結を終了する工程;および
    (x)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
    を含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記ペプチドテトラマーまたはペプチドテトラマー誘導体が4つの同一のペプチドモノマーを含む前記方法であって、
    (i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
    (ii)固相に第1の保護されたK残基を結合させる工程;
    (iii)第1のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
    (iv)第1のK残基に第2の保護されたK残基を連結する工程;
    (v)第2のK残基中の1つのアミン基から保護基を除去する工程;
    (vi)第2のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
    (vii)連結させた2つのK残基から保護基を除去する工程;
    (viii)2つのK残基の各アミン基に、保護された末端アミン基を有するペプチドモノマーを1つずつ連結する工程;および
    (iv)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
    を含む、請求項8に記載の方法。
  11. 前記ペプチドテトラマーまたはペプチドテトラマー誘導体が4つの同一のペプチドモノマーを含む前記方法であって、
    (i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
    (ii)固相に第1のK残基を結合させる工程;
    (iii)結合させた第1のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
    (iv)連結させたK残基から保護基を除去する工程;
    (v)各ペプチドモノマーの配列に従って、保護されたアミノ酸残基をC末端からN末端の方向へ連結し、連結の都度、次の連結のために保護基を除去することによって、さらに鎖を伸長させる工程;
    (vi)加える残基の数に応じて、アミノ酸残基の連結を終了する工程;および
    (vii)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
    を含む、請求項8に記載の方法。
  12. 前記ペプチドテトラマーまたはペプチドテトラマー誘導体が4つの同一のペプチドモノマーを含む前記方法であって、
    (i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
    (ii)固相に第1のK残基を結合させる工程;
    (iii)結合させた第1のK残基に2つの保護されたK残基を連結する工程;
    (iv)連結させたK残基から保護基を除去する工程;
    (v)2つのK残基の各アミン基に、保護された末端アミン基を有するペプチドモノマーを1つずつ連結する工程;および
    (vi)任意で、得られた多量体を固相から遊離させる工程
    を含む、請求項8に記載の方法。
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