JP2019038037A - 低温靭性に優れたラインパイプ用溶接鋼管並びにその製造方法 - Google Patents

低温靭性に優れたラインパイプ用溶接鋼管並びにその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】UOE、JCO、ベンドロール、スパイラルいずれかの工程で管状に成形した、低温靭性に優れたラインパイプ用溶接鋼管並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】管状に成形された鋼板の突き合せ部をサブマージアーク溶接で内面外面の順に内外面それぞれ一層溶接する際、内面側の鋼板表層から内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L1(mm)と、外面側の鋼板表層から内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L2(mm)とが(1)式を満足するように設定する。0.1≦L2/L1≦0.86 ・・・ (1)
【選択図】図1

Description

本発明は、低温靭性に優れたラインパイプ用溶接鋼管並びにその製造方法に関する。特に、鋼材のサブマージアーク溶接方法に関し、UOE、JCO、ベンドロール、スパイラルいずれかの工程で管状に成形したラインパイプ用溶接鋼管の造管溶接に用いて好適なものに関する。
現在、原油および天然ガスの長距離輸送用幹線パイプライン素材として、米国石油協会(API)規格X70(引張強さ570MPa)以上、更にはX80(引張強さ625MPa以上)までのラインパイプ用溶接鋼管が実用化されている。
近年、更なる輸送効率向上のために、ラインパイプ用溶接鋼管の内圧の高圧化が検討されており、これに伴い、API規格X70(以下、X70という)以上、更にはAPI規格X80(以下、X80という)以上の高強度ラインパイプ用溶接鋼管の厚肉化が要求されている。また、今後の原油および天然ガスの掘削域は、北極圏などの極寒地まで及ぶことが予想され、高強度厚肉ラインパイプ用溶接鋼管には−40℃以下での低温靭性保証が要求されると予想される。特に鋼管を製造する際には、厚鋼板をUO、JCO、ベンドロールのいずれかの工程によって管状に成形した後、端部同士を突き合わせて、アーク溶接によるシーム部の溶接を行うが、板厚が厚肉化すると溶接による入熱が大入熱となり、溶接熱影響部(HAZ)の粒径が粗大化するため、低温靭性の低下が重要な問題となる。
ラインパイプ用溶接鋼管の造管溶接(シーム溶接)には二電極以上のサブマージアーク溶接が適用され、パイプ生産能率向上の観点から内面側を1パス、外面側を1パスで溶接する両面一層盛り溶接とする、高能率な溶接施工がなされている(例えば特許文献1,2)。
両面一層溶接では、内面溶接金属と外面溶接金属が重なり、未溶融部がないように十分な溶け込み深さを確保する必要があり、このような欠陥の抑制を重視すると内外面の溶接入熱が高くなり、溶接熱影響部の靭性が劣化する傾向にある。また、溶接能率や施工性を考慮すると、サブマージアーク溶接する際の溶融金属の溶け落ち(メルトダウン)を回避するために、先に溶接する内面溶接金属の溶け込み深さを外面溶接金属の溶け込み深さよりも短くし、外面側の溶接入熱が内面側の溶接入熱よりも高くなるのが一般的である。そのため、内面側よりも外面側の溶接熱影響部のほうが靭性の劣化が生じやすくなる。
溶接熱影響部の高靭性化には、溶接入熱を低減するのが有効であるが、通常行われているシーム溶接の入熱に対して大幅に入熱を低減させなければ、その靭性向上効果は明確とならない。しかしながら、大幅に入熱を低減させると溶着量も減少するため開先断面積を溶着量減少分に合わせて減らす必要が生じる。そのため、さらなる深溶け込み溶接を行わなければ内外面の溶接金属は重ならず、溶け込み不足が生じる危険性が増大する。
したがって、溶接熱影響部の高靭性化は、投入入熱の大幅な低減と溶け込み深さの増大を両立させなければならず、従来より種々の提案がなされているがその達成は極めて困難である。
例えば、上記特許文献2では電極径に応じて電流密度を高め、溶け込み深さを増大させるサブマージアーク溶接方法が提案されているが、最近の仕様に対しては、電流および電流密度が不十分で入熱の大幅な低減と溶け込み深さの増大の両立は困難である。
特許文献3には高電流で更なる高電流密度でのサブマージアーク溶接方法が提案されており、アークエネルギーをできるだけ板厚方向に投入することにより、必要な溶け込み深さだけを確保し、鋼材幅方向の母材の溶解を抑制することで過剰な溶接入熱を省いて、入熱低減と深溶け込みの両立が図られている。
特許文献4ではサブマージアーク溶接時に使用するワイヤと電極への給電方法、電流密度を制御することで溶け込み深さを確保しながら溶接入熱を低減し、溶接熱影響部での靭性向上が図られている。
特許文献5、6では板厚表層のビード幅と溶け込み先端近傍でのビード幅、鋼板板厚との比を制御することで、スラグ巻き込みを抑制しつつ、溶接熱影響部での靭性向上が図られている。
特許文献7、8では板厚に応じて内外面の溶接金属断面積を制御することで、十分な溶け込みを得ながら鋼板表面でのビード幅を広げ、溶接熱影響部での靭性向上が図られている。
特開平11−138266号公報 特開平10−109171号公報 特開2006−272377号公報 特開2007−260684号公報 特開2009−214127号公報 特開2010−274276号公報 特開2009−233679号公報 特開2010−274275号公報
しかしながら、特許文献3記載のサブマージアーク溶接方法では、入熱低減と深溶け込みが両立できるものの、鋼板表面でのビード幅が小さくなって鋼板表面から溶け込み先端までほぼ一様なビード幅になりやすく、即ち、溶融線(Fusion Line,FLともいう。)が板厚方向に向くため板厚方向への脆性破壊が進展しやすくなり、低入熱溶接にもかかわらず靭性値が低くなりやすいという問題があった。
また、特許文献4記載のサブマージアーク溶接方法では、入熱低減と深溶け込みが両立できるものの、内外面溶接金属の重なる位置近傍(会合部)でのビード幅が小さくなるため、内外面の溶接金属を重ねるためにはそれぞれの鋼管軸方向溶接位置が厳密に制御されなければならないという課題があった。
特許文献5〜8記載のサブマージアーク溶接方法では、板厚に対するビード幅、もしくは板厚に対するビード断面積については言及されているものの、内面側溶接部と外面側溶接部各々との相対的な形状関係については言及されておらず、さらに、主に溶接部全体の形状によって高靭性化を図っているため、特に外面溶接部では大幅な入熱低減効果が得られないという課題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、内外面の溶接金属における溶け込み深さの比を適正に制御することにより、内外面両方の溶接熱影響部において優れた靭性が得られるものである。
特に、本発明では、管状に成形された鋼板の突合せ部を内外面からサブマージアーク溶接するに際し、特に外面入熱を大幅に低減して外面溶接熱影響部の低温靭性を向上させ、内面溶接熱影響部の低温靭性を劣化させない範囲に内面入熱を制御することで、十分な溶け込みを得ながら内外面両方の溶接熱影響部で優れた低温靭性が得られるラインパイプ用溶接鋼管並びにその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、サブマージアーク溶接で種々の溶接条件を用いて、鋼板の内外面溶接継手を有する溶接鋼管を作製し、溶接金属断面形状、入熱および溶接熱影響部の靭性について調査した。
その結果、内外面側それぞれの溶接金属における溶け込み深さの比を適正に制御することで、外面溶接熱影響部の低温靭性が向上し、かつ内面溶接熱影響部の低温靭性が劣化せず、十分な溶け込みを得ながら内外面両方の溶接熱影響部で優れた低温靭性が得られることを見出した。
本発明は、得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
[1]管状に成形された鋼板を溶接した溶接鋼管であって、管状に成形された前記鋼板の突き合せ部をサブマージアーク溶接で内面外面の順に内外面それぞれ一層溶接され、溶接部において、内面側溶融線と外面側溶融線との会合部を内外面溶融線会合部とした際、内面側の前記鋼板表層から前記内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L1(mm)と、外面側の前記鋼板表層から前記内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L2(mm)とが(1)式を満足することを特徴とする低温靭性に優れたラインパイプ用溶接鋼管。
0.1≦L2/L1≦0.86 ・・・ (1)
(但し、外面側の溶接金属の余盛を含む板厚方向の厚さをW2、全溶接金属の余盛を含む板厚方向の厚さから前記W2を差し引いた厚さをW1とした時のW2/W1が、0.5である場合および0.6以上0.8以下である場合を除く)
[2]管状に成形された鋼板の突き合せ部をサブマージアーク溶接する際に、開先形状が、内面開先深さd1と外面開先深さd2が(2)式を満足するX開先となるよう加工を施し、得られた前記X開先を内面外面の順にサブマージアーク溶接することを特徴とする、管状に成形された鋼板を溶接したラインパイプ用溶接鋼管の製造方法であって、前記ラインパイプ用溶接鋼管は、管状に成形された前記鋼板の突き合せ部をサブマージアーク溶接で内外面それぞれ一層溶接され、溶接部において、内面側溶融線と外面側溶融線との会合部を内外面溶融線会合部とした際、内面側の前記鋼板表層から前記内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L1(mm)と、外面側の前記鋼板表層から前記内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L2(mm)とが(1)式を満足する、低温靭性に優れたラインパイプ用溶接鋼管の製造方法。
0.1≦L2/L1≦0.86 ・・・ (1)
(但し、外面側の溶接金属の余盛を含む板厚方向の厚さをW2、全溶接金属の余盛を含む板厚方向の厚さから前記W2を差し引いた厚さをW1としたときのW2/W1が、0.5である場合を除く)
d2/d1≦1.0 ・・・ (2)
[3]前記サブマージアーク溶接において、内面側の入熱λ1が3.5〜16.0kJ/mm、外面側の入熱λ2が2.5〜11.0kJ/mmであり、さらに、(3)式を満足することを特徴とする上記[2]に記載の低温靭性に優れたラインパイプ用溶接鋼管の製造方法。
0.1≦λ2/λ1≦2.5 ・・・ (3)
本発明によれば、内外面の溶接金属における溶け込み深さの比を適正に制御することで、特に外面入熱を大幅に低減して外面溶接熱影響部の低温靭性を向上させ、内面溶接熱影響部の低温靭性を劣化させない範囲に内面入熱を制御することで、十分な溶け込みを得ながら内外面両方の溶接熱影響部で優れた低温靭性を有する溶接鋼管が得られるため、産業上極めて有用である。
本実施形態における溶接部形状を説明する図である。 本実施形態における開先形状を説明する図である。 本実施例におけるシャルピー衝撃試験片の採取位置を説明する図である。
以下、本発明のラインパイプ用溶接鋼管並びにその製造方法について説明する。
本発明に係るラインパイプ用溶接鋼管は、管状に成形された鋼板を溶接した溶接鋼管であって、管状に成形された前記鋼板の突き合せ部をサブマージアーク溶接で、内面外面の順に内外面それぞれ一層溶接され、溶接部において、内面側溶融線と外面側溶融線との会合部を内外面溶融線会合部とした際、内面側の前記鋼板表層から前記内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L1(mm)と、外面側の前記鋼板表層から前記内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L2(mm)とが(1)式を満足することを特徴とする。
0.1≦L2/L1≦0.86 ・・・ (1)
前述したように、鋼板の突合せ部をサブマージアーク溶接する場合、溶接能率や施工性を考慮して、溶融金属の溶け落ち(メルトダウン)を回避するために、先に溶接する内面側の溶接金属の溶け込み深さを外面側の溶接金属の溶け込み深さよりも小さくし、外面側の溶接入熱を内面側の溶接入熱よりも高くするのが一般的である。
しかしながら、高靭性化を図るためには、溶接時に投入する入熱量の大幅な低減を達成しなければならないが、同時に、内外面それぞれの溶接金属が重なり、未溶融部が生じないように十分な溶け込み深さも確保しなければ健全な溶接継手と有する鋼管を得ることができなかった。
そこで本発明者らは、溶接鋼管の溶接部のうち外面側の溶接金属(外面側溶接金属)に着目し、内外面それぞれの溶接金属における溶け込み深さの比を適正に制御することにより、内外面両方の溶接熱影響部の低温靭性を向上させうることを見出した。
つまり、本発明によれば、従来では困難とされていた外面側の溶接入熱の大幅な低減を実現させて外面側溶接熱影響部の低温靭性を向上させるとともに、内面側溶接熱影響部の低温靭性を劣化させない範囲に内面入熱を制御することで、十分な溶け込みを確保し、溶接欠陥を生じさせることなく優れた低温靭性を得ることか可能となる。
以下、上記式(1)を限定した理由について詳細に説明する。
外面側の鋼板表層から内外面溶融線会合部までの板厚方向距離をL2(mm)、内面側の鋼板表層から内外面溶融線会合部までの板厚方向距離をL1(mm)とした際、L2をL1で除した値(L2/L1)が大きくなる、つまり、外面側の溶接金属の溶け込み深さが、内面側の溶接金属の溶け込み深さよりも相対的に大きくなると、外面入熱の大幅な低減効果が得られないため、L2/L1の上限を0.86とする。
一方、L2/L1が小さいほど、外面入熱の低減効果が大きくなるが、0.1を下回ると外面側溶接金属の溶け込み深さが短いために内面側溶接金属を十分重ねることが困難となり、突合せ部において未溶融部が生じて健全な溶接継手が得られなくなるとともに、内面側の溶接金属の溶け込み深さが過大になり過ぎて内面溶接時にメルトダウンが生じる可能性が高くなるため、下限を0.1とする。また、L2/L1が小さくなるほど過大な内面入熱を必要とし、溶接速度が低下するため、下限は0.15とすることが好ましい。 なおここで、上記内外面溶融線会合部とは、図1に示すように、内面側溶融線5aと外面側溶融線5bとの会合部のことを表す。
また、本発明に係る鋼管の周方向を引張方向とした際、母材とする鋼板の引張強度が570〜825MPaであることが好ましい。
また、本発明は、上述したような溶接継手を含むラインパイプ用溶接鋼管であり、溶接部において、内外面それぞれの溶接金属における溶け込み深さの比を適正に制御することにより内外面両方の溶接熱影響部の低温靭性を向上させることができる。
次に、本発明に係るラインパイプ用溶接鋼管の製造方法について説明する。
本発明の溶接鋼管の製造方法は、管状に成形された鋼板の突き合せ部をサブマージアーク溶接で内外面一層溶接する際、開先形状は、図2に示すようなX開先とする。X開先の形状は、内面開先深さd1と外面開先深さd2が下記(2)式を満足する形状とすることが好ましい。なお、内面開先深さとは内面側の鋼板表層から溶接会合部までの板厚方向距離であり、外面開先深さとは外面側の鋼板表層から溶接会合部までの板厚方向距離である。本発明では外面開先深さd2よりも内面開先深さd1を長くするために、X開先の形状において、内面開先深さd1と外面開先深さd2が(2)式を満足する形状を採用してもよい。
d2/d1≦1.0 ・・・ (2)
このように、外面開先深さd2よりも内面開先深さd1が長いX開先をサブマージアーク溶接することにより、上述したようなL2/L1の関係を満足する溶接部を有する溶接鋼管を製造することができる。
なお、d2/d1の下限値については特に限定しないが、0.2以上とすることが好ましい。
また、本発明において、鋼板を管状に成形した後に突合せ部を内外面からサブマージアーク溶接し溶接鋼管とするが、管状に成形する際の工程は、鋼板をCプレス、Uプレス、OプレスするUOE工程、JCO工程又はベンドロールのいずれかの工程としても良い。 また、本発明における上記サブマージアーク溶接において、内面側の入熱を3.5〜16.0kJ/mm、外面側の入熱が2.5〜11.0kJ/mmとすることが好ましく、さらに下記式(3)を満たすことがより好ましい。
0.1≦λ2/λ1≦2.5 ・・・ (3)
また、鋼板板厚から内面開先深さd1および外面開先深さd2を差し引いた長さdn(ルート)は特に規定しないが、内面溶接時にメルトダウンを生じさせないためには、dnの下限を3mm、より好ましくは5mmとすることが好ましい。また、dnの上限については、10mmとすることが好ましく、8mmとすることがより好ましい。
以下、実施例により本発明の効果を説明するが、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
本実施例においてサブマージアーク溶接する母材鋼板は、引張強さ570〜625MPaの強度を有する板厚26mmのラインパイプ用鋼板を用いた。鋼板は、下記(式3)によって求められる炭素等量Ceqが0.39である。
次に、溶接する母材鋼板の突き合せ部に図2に示す開先形状の開先加工を施した後、管状に成形し、表2に示す溶接条件で内外面1層溶接の多電極サブマージアーク溶接を施して溶接継手を作製した。表1に開先寸法を示す。なお、管状に成形する際の工程は、UOE工程を採用した。
なお、表1中における母材鋼板の引張強度は、鋼管の周方向を引張方向とした際の引張強度である。製造No.1〜4いずれにおいても、引張強さ570〜625MPaであった。
Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5
・・・(式3)
ここで、C、Mn、Ni、Cu、Cr、Mo、Vは各元素の含有量[質量%]である。
Figure 2019038037
Figure 2019038037
作製した継手からシャルピー衝撃試験片2を採取し、JIS Z 2242の金属材料衝撃試験方法に準拠してシャルピー衝撃試験(切欠き位置:溶融線,試験温度:−40℃)を行い、HAZ部における吸収エネルギー(vE−40)を求めた。なお、表3中のHAZ靭性vE−40は、3本の試験片における吸収エネルギーの平均値である。また、HAZにおける低温靭性の評価については、HAZ靭性vE−40が100J以上を良好として評価した。
図3に上記シャルピー衝撃試験片2の採取位置を示す。溶接部4の溶融線5を切欠き位置として、ノッチ3が板厚方向と平行でかつ内面溶接および外面溶接のそれぞれについて、母材鋼板1の表面下7mmの位置がシャルピー衝撃試験片2の中心となるように採取した。表3に上記シャルピー衝撃試験の結果得られたHAZ靭性vE−40(上段:内面側、下段:外面側)、および溶接金属断面形状の観察結果、開先寸法を示す。
Figure 2019038037
本発明例(製造No.1〜3)は、外面溶接金属の鋼板表層から内外面溶融線会合部までの板厚方向距離を内面溶接金属の鋼板表層から内外面溶融線会合部までの板厚方向距離で除した値(L2/L1)が0.1〜1.0の範囲であり、外面側の鋼板表層から溶接会合部までの板厚方向距離L2を短くしたことで外面入熱は大幅に低減され、特に外面側のHAZ靭性が大幅に改善し、−40℃でも100J以上の高いシャルピー吸収エネルギーを示した。また、内面側の鋼板表層から溶接会合部までの板厚方向距離L1を長くすることで内外面の溶接金属は十分重なり、健全な溶接継手が得られている。さらに、内面側のHAZ靭性は入熱を大きくしたものの、−40℃でも100J以上の高いシャルピー吸収エネルギーを保持しており、内外面両方の溶接熱影響部において優れた靭性を得ることが出来た。
なお、内面入熱を大幅に増大させた際、外面溶接熱影響部の靭性ほど内面溶接熱影響部の靭性が低下しない理由は外面溶接時の焼きなましによるものと考えられる。
一方、比較例(製造No.4)は内面側の鋼板表層から溶接会合部までの板厚方向距離L1が外面側の鋼板表層から溶接会合部までの板厚方向距離L2よりも短く、内外面の溶接金属を十分重ねる外面溶接を行うと外面入熱を低減することができず優れたHAZ靭性が得られなかった。
1 母材鋼板
2 シャルピー衝撃試験片
3 ノッチ
4 溶接部
5 溶融線

Claims (3)

  1. 管状に成形された鋼板を溶接した溶接鋼管であって、
    管状に成形された前記鋼板の突き合せ部をサブマージアーク溶接で内面外面の順に内外面それぞれ一層溶接され、
    溶接部において、内面側溶融線と外面側溶融線との会合部を内外面溶融線会合部とした際、内面側の前記鋼板表層から前記内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L1(mm)と、外面側の前記鋼板表層から前記内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L2(mm)とが(1)式を満足することを特徴とする低温靭性に優れたラインパイプ用溶接鋼管。
    0.1≦L2/L1≦0.86 ・・・ (1)
    (但し、外面側の溶接金属の余盛を含む板厚方向の厚さをW2、全溶接金属の余盛を含む板厚方向の厚さから前記W2を差し引いた厚さをW1としたときのW2/W1が、0.5である場合および0.6以上0.8以下である場合を除く)
  2. 管状に成形された鋼板の突き合せ部をサブマージアーク溶接する際に、開先形状が、内面開先深さd1と外面開先深さd2が(2)式を満足するX開先となるよう加工を施し、得られた前記X開先を内面外面の順にサブマージアーク溶接することを特徴とする、
    管状に成形された鋼板を溶接したラインパイプ用溶接鋼管の製造方法であって、
    前記ラインパイプ用溶接鋼管は、管状に成形された前記鋼板の突き合せ部をサブマージアーク溶接で内外面それぞれ一層溶接され、
    溶接部において、内面側溶融線と外面側溶融線との会合部を内外面溶融線会合部とした際、内面側の前記鋼板表層から前記内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L1(mm)と、外面側の前記鋼板表層から前記内外面溶融線会合部までの板厚方向距離L2(mm)とが(1)式を満足する、
    低温靭性に優れたラインパイプ用溶接鋼管の製造方法。
    0.1≦L2/L1≦0.86 ・・・ (1)
    (但し、外面側の溶接金属の余盛を含む板厚方向の厚さをW2、全溶接金属の余盛を含む板厚方向の厚さから前記W2を差し引いた厚さをW1としたときのW2/W1が、0.5である場合を除く)
    d2/d1≦1.0 ・・・ (2)
  3. 前記サブマージアーク溶接において、内面側の入熱λ1が3.5〜16.0kJ/mm、外面側の入熱λ2が2.5〜11.0kJ/mmであり、さらに、(3)式を満足することを特徴とする請求項2に記載の低温靭性に優れたラインパイプ用溶接鋼管の製造方法。
    0.1≦λ2/λ1≦2.5 ・・・ (3)
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