JP2019030272A - アトピー性皮膚炎の発症リスク判定方法、バイオマーカー、予防薬または治療薬のスクリーニング方法 - Google Patents

アトピー性皮膚炎の発症リスク判定方法、バイオマーカー、予防薬または治療薬のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】皮膚細菌叢における黄色ブドウ球菌を解析することにより、アトピー性皮膚炎の発症リスクを、簡便に判定することのできる発症リスク判定方法を提供する。【解決手段】皮膚細菌叢における黄色ブドウ球菌のagrC遺伝子座の変異解析、RNAIII遺伝子の発現量検出のいずれか、または両方を行うアトピー性皮膚炎の発症リスク判定方法。【選択図】図6

Description

本発明は、アトピー性皮膚炎の発症リスク判定方法、アトピー性皮膚炎のバイオマーカー、アトピー性皮膚炎の予防薬または治療薬のスクリーニング方法に関する。
アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis:以下ADともいう)は、先進国で小児の罹患率が15〜20%、成人の罹患率が2〜5%にも達し、遺伝的素因に加え環境要因が大きな役割を果たしていると考えられている疾患である。ADは、通常、幼少期に発症し、患者の約60%が生後12ヶ月までに発症する。
ADの治療としては、保湿剤、ステロイド外用、および抗アレルギー剤、免疫抑制剤の内服などが行われている。しかし、これら既存の治療では、症状のコントロールに難渋することも少なくない上に、コントロール可能であったとしても予防や治癒に結びつく治療法は確立されていない。
近年、16rRNA−DNA解析法を用いた皮膚細菌叢解析により、ADの病変部では健常者に比較し、ブドウ球菌属(Staphylococcus属)全体の分画の増大および、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:以下、S.aureusともいう)分画の増大が起こっていることが報告された。一方、2歳以上のAD非発症者では、黄色ブドウ球菌が皮膚から検出されることはまれである(非特許文献1)。ただし、ADの病態にS.aureusがどのような役割を果たしているのかは不明な点が多い。
本発明者らは、黄色ブドウ球菌産生毒素であるδ−toxinが、肥満細胞を刺激し、Th2型の皮膚炎症反応を惹起することを報告し(非特許文献2)、このδ−toxinの産生をブロックする薬剤スクリーニング、δ−toxin中和抗体開発を行い、皮膚の炎症を予防する方法を提案している(特許文献1)。ただし、現在、S.aureusをターゲットにしたAD予防法、治療法の臨床は行われていない。
国内外では現在、ADに対するB細胞、IgE、インターロイキン(IL)−4受容体、IL−31受容体、IL−12/23 p40、IL−5、tumor necrosis factor(TNF)−αなどに対する抗体療法についても治療薬としての可能性が検討段階に入るなど模索されているが、抗体療法は高価であることや、先進国において小児の多くがADに罹患し、かつ慢性疾患であるなどの観点から考えると、小児への生物学的製剤の使用は医学的、倫理的観点からその適応に制約があり、医療経済的に見ても大きな問題がある。
国際公開第2014/153241号
H.H.Kong et al.,Temporal shifts in the skin microbiome associated with disease flares and treatment in children with atopic dermatitis.Genome Res 22,850−859 (2012). Y.Nakamura et al.,Staphylococcus delta−toxin induces allergic skin disease by activating mast cells.Nature 503,397−401(2013).
本発明は、皮膚細菌叢における黄色ブドウ球菌を解析することにより、アトピー性皮膚炎の発症リスクを、簡便に判定することのできる発症リスク判定方法を提供することを課題とする。また、アトピー性皮膚炎のバイオマーカー、アトピー性皮膚炎の予防薬または治療薬のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.皮膚細菌叢における黄色ブドウ球菌のagrC遺伝子座の変異を解析することを特徴とするアトピー性皮膚炎の発症リスク判定方法。
2.皮膚細菌叢における黄色ブドウ球菌のRNAIII遺伝子の発現量を検出することを特徴とするアトピー性皮膚炎の発症リスク判定方法。
3.皮膚細菌叢における黄色ブドウ球菌のagrC遺伝子座の変異を解析し、
前記黄色ブドウ球菌のRNAIII遺伝子の発現量を検出することを特徴とするアトピー性皮膚炎の発症リスク判定方法。
4.RNAIII遺伝子からなるアトピー性皮膚炎の発症リスク判定用バイオマーカー。
5.候補化合物を黄色ブドウ球菌の培養液またはモデル動物に投与した際の、黄色ブドウ球菌のagrC変異依存性のRNAIII遺伝子発現量を指標とすることを特徴とするアトピー性皮膚炎の予防薬または治療薬のスクリーニング方法。
本発明により、被験者の皮膚細菌叢における黄色ブドウ球菌を分析するだけで、アトピー性皮膚炎の発症リスクを判定することができる。皮膚細菌叢は、容易に採取することができるため、本発明の判定方法は被験者への負担が少ない。本発明の判定方法は、特に生後3月以上1年以下の乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定に適している。
RNAIII遺伝子からなるアトピー性皮膚炎の発症リスク判定用バイオマーカーは、被験者への負担が少なく測定することができる。また、アトピー性皮膚炎発症前や発症直後から測定することができるため、発症予防、早期発見、早期治療に有用である。
黄色ブドウ球菌のagrC変異依存性のRNAIII遺伝子発現量は、皮膚生着性と関連しており、このRNAIII遺伝子発現量を指標として、容易にアトピー性皮膚炎の予防薬または治療薬をスクリーニングすることができる。
乳児から単離した全S.aureus株を、MLST(図1A)、agrタイプ(図1B)に基づいて分類した結果を示す図。 ADを発症しなかった乳児(Non−AD:n=86)とADを発症した乳児(AD:n=17)において、1ヶ月時と6ヶ月時に単離したS.aureus株における同一クローン、非クローンの割合を示す円グラフ(図2左)と、同一クローンのうちアミノ酸非同義置換(ノンシノニマス変異)とアミノ酸同義置換(シノニマス変異)の割合を示す円グラフ(図2右)。 AD非発症群のうちagr遺伝子座に変異を有する4つの同一クローンにおける変異を示す図。 ADを発症しなかった乳児の1ヶ月時(1M Non−AD)、6ヶ月時(6M Non−AD)、ADを発症した乳児の1ヶ月時(1M AD)、6ヶ月時(6M AD)のそれぞれで単離されたagrIタイプであるS.aureus株の各ポジションにおける、1塩基置換および塩基の挿入または欠損の変異の頻度解析結果を示す図。 ADを発症しなかった乳児の1ヶ月時(1M Non−AD)、6ヶ月時(6M Non−AD)、ADを発症した乳児の1ヶ月時(1M AD)、6ヶ月時(6M AD)のそれぞれで単離されたS.aureus株におけるagrC遺伝子座のコアゲノム数を示す図。 ADを発症しなかった乳児の1ヶ月時(1M Non−AD)、6ヶ月時(6M Non−AD)、ADを発症した乳児の1ヶ月時(1M AD)、6ヶ月時(6M AD)のそれぞれで単離されたS.aureus株と、SA113(ネガティブコントロール)、LAC(ポジティブコントロール)の、RNAIII発現量を示す図。 AD非発症群のうちagr遺伝子座に変異を有する4つの同一クローンにおける1ヶ月時と6ヶ月時のRNAIII発現量の変化を示す図。 ADを発症しなかった乳児(図8左:Non−AD:n=86)とADを発症した乳児(図8右:AD:n=17)において、生後1ヶ月と6ヶ月時に単離されたS.aureus株を培養した際のコロニー数を示す図。 マウスモデル試験におけるLAC株と欠損株(LAC Δagr)の生着7日後の皮膚写真(左)、ヘマトキシリンエオジン染色(中央左弱拡、中央右強拡)、蛍光顕微鏡画像(右)を示す図。
本発明のアトピー性皮膚炎の発症リスク判定方法は、被験者の体質、遺伝型等ではなく、被験者の皮膚細菌叢における黄色ブドウ球菌を解析することを特徴とする。
以下、本発明の詳細について説明する。
「出生コホートデータ」
ヒトは、胎児期というおおよそ無菌と考えられる状態から、出生後より様々な細菌に曝露し、皮膚細菌叢を形成していく。その過程において、半数近くの乳児がS.aureusを一時的に皮膚に保菌することが知られている。
日本人乳児268人について、生後1ヶ月時、および6ヶ月時に、頬から採取した皮膚細菌叢の解析を行い、細菌叢中の黄色ブドウ球菌の有無と、1歳時におけるAD発症の有無との関連を調査して出生コホートデータを得た。この出生コホートデータをもとにした1ヶ月及び6ヶ月の乳児皮膚のS.aureus生着の頻度、および1歳時のAD発症の有無について表1に示す。
1ヶ月時には38.4%、6ヶ月時には49.6%の乳児に、S.aureusが正着していた。1年後には41人の乳児がADを発症したが、1ヶ月時のS.aureusの生着は、1歳時のAD発生リスクと相関が認められなかった(オッズ比1.056、p=0.882)。一方、6ヶ月時の黄色ブドウ球菌の生着は、1歳時のAD発症リスクを増加させた(オッズ比5.433、p<0.001)。
「S.aureusの解析」
1ヶ月時、6ヶ月時に、乳児の頬から単離したS.aureus全243株を系統解析した。結果を図1に示す。なお、図1中、1Mは1ヶ月時に単離された株、6Mは6ヶ月時に単離された株を表し、Non−ADは1歳時にADを発症しなかった乳児から単離された株、ADは1歳時にADを発症した乳児から単離された株を意味する。
マルチシーケンス配列タイピング(MLST)に基づいて分類したところ、乳児の皮膚細菌叢中のS.aureusとして、多くのタイプが存在し、特にST8、ST188、ST15が多く見られた。しかし、STタイプと1歳時のAD発症の有無について相関は見られなかった(図1A)。
また、S. aureusは、accessory gene regulatory(agr)系の対立遺伝子変異に基づいて、異なる自己誘導ペプチドを分泌する4つのクラスター(agrI〜IV)に分類することができるが、S.aureusのagrタイプについてもAD発症の有無について相関は見られなかった(図1B)。
このことから、皮膚に生着する黄色ブドウ球菌の系統は、アトピー性皮膚炎を発症する乳児と発症しない乳児との間で差異がないことが確認できた。
「ゲノム解析」
単離したS.aureus全243株について全ゲノム解析を行い、S.aureus Newman株のゲノムを基準とした全てのゲノムワイドコア一塩基多型(SNPs)に基づいて、近隣結合法で系統樹を作成した。
この系統樹に基づき、5ヶ月間(1ヶ月時から6ヶ月時まで)の皮膚定着中における遺伝子変異を評価するために、同一乳児の1ヶ月時と6ヶ月時において同一株のクローンであると認められる菌株を同定した。なお、S.aureusの変異は、既報によると、概算で1サイトあたり10−6/年以下であるため、5ヶ月間の皮膚定着中における変異数が100以下である菌株を、同一株のクローンとして同定した。また、5ヶ月間の生着中のS.aureusの進化を調べるために、同一クローンの6ヶ月での単離時のゲノムと、1ヶ月での単離時のゲノムとを比較して、SNPsをさらに分析した。結果を図2に示す。
1ヶ月時に、S.aureusが定着していた乳児は103人であり、ADを発症しなかった乳児86人から24株(以下、AD非発症群という)、ADを発症した乳児は17人から9株(以下、AD発症群という)が同一クローンとして同定でき、ADを発症した乳児の皮膚上では、ADを発症しなかった乳児の皮膚上よりも、S.aureusの遺伝子変異が起こりにくいことが確かめられた((p<0.05、χ二乗検定)(図2左)。
また、AD発症の有無に関わらず、5ヶ月間の生着中に、アミノ酸非同義置換(ノンシノニマス変異)がアミノ酸同義置換(シノニマス変異)よりも多く起こっており、S.aureusは、皮膚に生着中に、いわゆるダーウィン進化における正の選択過程にあることが示唆された(図2右)。
ここで、S.aureusのagrシステムは、細胞密度依存性のシグナルトランスダクション経路により活性化されるagrA、agrB、agrC、agrD、hld遺伝子を含み、RNAIIIはそれ自体ノンコーディングRNAとして働き、複数の病原性遺伝子の発現を制御している。
AD発症群では、全63のSNPsのうち、agr遺伝子座における変異はなかったが、AD非発症群では、全252のSNPsのうち4つの変異(sample ID:K051、K155、C056、C059)がagr遺伝子座で起こっていた。また、AD非発症群では、黄色ブドウ球菌の他の遺伝子座と比べて、agr遺伝子座において高い頻度で変異が起きていることが確認できた(p<0.001、χ二乗検定)(表2)。
図3に、AD非発症群で確認されたagr遺伝子座の4つの変異を示す。
K051、K155は、agrC遺伝子座における核酸挿入によるナンセンス変異、C056は、RNAIIIにおける核酸置換、C059は、agrB遺伝子上流での核酸挿入であった。
次いで、乳児から単離した株のうちagr領域の核酸配列が一致している最大のグループであったagrIタイプであるS.aureusについて、agrI遺伝子座内のSNPs、塩基の挿入と欠損(INDEL:insertion、deletion)の頻度を5塩基での移動平均で平滑化して分析した。なお、分析した菌株は、AD非発症乳児の1ヶ月時より単離された54株(以下、1M Non−AD群)、AD発症乳児の1ヶ月時より単離された8株(以下、1M AD群)、AD非発症乳児の6ヶ月時より単離された68株(以下、6M Non−AD群)、AD発症乳児の6ヶ月時より単離された20株(以下、6M AD群)である。結果を図4に示す。
6M Non−AD群は、agrC遺伝子座におけるSNPsとINDELの頻度が他の遺伝子座と比較して高く、agrC遺伝子座において変異が起こりやすいことが確かめられた(p<0.01、χ二乗検定)。それに対し、その他の群は、SNPsとINDELの頻度が低く、また、特定の遺伝子座への偏りも認められなかった。
このことから、1歳時にADを発症しない乳児は、6ヶ月時の皮膚に生着している黄色ブドウ球菌がagrC遺伝子座において変異が起きている傾向が高いことが確認できた。
さらに、6M Non−AD群におけるagrC遺伝子座における変異の特異性を評価するために、agrIタイプ全株でのコアゲノムのヌクレオチド多様性を評価した。コアゲノムは、解析株のうち99%以上が保有する遺伝子で、95%以上の相同性を持つものとして定義した。
同定された1786個の遺伝子内で、コアゲノムは1809同定され、このうち6M Non−AD群に特徴的な多様性が高い遺伝子は239個同定され、agrCも6M Non−AD群に特徴的な多様性が高まった遺伝子として同定された。すなわち、6M Non−AD群においてagrC遺伝子座において多くの変異が起こっていることが確認できた(図5)。
「リアルタイムPCR」
乳児から単離したS.aureus全243株について、in vitroでの増殖期におけるmRNA遺伝子の発現を、リアルタイムPCRにより確認した。agr領域の発現を反映する遺伝子として、RNAIIIの発現量を、ハウスキーピング遺伝子であるgyrBとの相対発現量(RNAIII/gyrB)として評価した。また、RNAIII発現のネガティブコントロールとしてSA113株、ポジティブコントロールとしてLAC株においても、同様にリアルタイムPCRを行った。RNAIII/gyrBが10以下を、ウエスタンブロット法でRNAIII領域から転写されるδ−toxin蛋白が検出されないラインとして確認し、agr欠損株として定義した。結果を図6に示す。なお、図6において、1M、6M、Non−AD、ADは図1と同様である。
1歳時にADを発症しない乳児は、6ヶ月時に単離したS.aureus株のRNAIIIの発現量が低下していた。また、1歳時にADを発症しない乳児は、1ヶ月時に比較して、6ヶ月時にagr欠損株の増加が認められた。1歳時にADを発症した乳児では、RNAIIIの発現量に変化は見られなかった。
さらに、上記ゲノム解析で同定したAD非発症群のうち、agr遺伝子座における変異が起きた4株の、生後1ヶ月で単離したクローンと生後6ヶ月で単離したクローンのRNAIIIの発現量を図7に示す。
生後1ヶ月時のクローンと生後6ヶ月時のクローンでは、agr遺伝子座で変異が起きているが、変異後には、RNAIIIの発現が大幅に低下していた。さらに、この4株のうち、変異によりagrC遺伝子座に終止コドンが生じたK051とK155は、RNAIIIの発現が認められないagr欠損株であった。
さらに、図6において、1歳時にADを発症しない乳児の6ヶ月時に単離したS.aureus株のうち、agr欠損株13株(6M、NonADのドットラインより下方の株)について、agrI座における遺伝子配列を調べたところ、2株がagrAに、8株がagrCに突然変異を有し、大きなアミノ酸配列の欠損または一アミノ酸の置換を生じていた。その他の群においてagr欠損株9株について、agrI座における遺伝子配列を調べたところ、agrAで変異が認められた株は2株であり、agrCでは突然変異は認められなかった。
このことから、1歳時にADを発症しない乳児は、6ヶ月時の皮膚に生着している黄色ブドウ球菌のRNAIII発現量が小さい傾向にあることが確認できた。6ヶ月時の皮膚に生着している黄色ブドウ球菌のRNAIII遺伝子の発現量が小さいほど、ADが発症しにくいため、RNAIII遺伝子の発現量を検出することによりアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定できることが確かめられた。また、黄色ブドウ球菌のRNAIII遺伝子は、アトピー性皮膚炎の発症リスク判定用バイオマーカーとして利用できることが確かめられた。さらに、agrC変異依存性のRNAIII遺伝子発現量は、アトピー性皮膚炎の予防薬または治療薬をスクリーニングする際の指標となることが確かめられた。
なお、本発明のマーカーを用いるに際し、コントロール値は、被験者のRNAIII遺伝子の発現量が、健常者の発現量よりも高いか否かを判断するための指標値であればよく、特に制限されない。例えば、コントロール値として、RNAIIIを発現しない汎用される標準株であるSA113株の値を1として用いて標準化した値を用いることができる。この場合、図6に示したように、RNAIII/gyrBが<10であれば、AD発症に関与しない株であると考えることができる。また、本発明と同様にして、生後3ヶ月〜1年の乳児から採取したS.aureus株を、採取した乳児の生後1年〜2年におけるAD発症の有無に応じてADグループと健常者グループとに分け、これらのRNAIII遺伝子の発現量を市販の統計解析ソフトウェアを用いてROC曲線を求め、このROC曲線から算出した閾値を用いることができる。
「培養試験」
乳児の頬部皮膚にS.aureus選択培地(X−SA寒天培地、日水製薬)を直接スタンプし、37℃で48時間培養して生後1ヶ月および6ヶ月時の菌の生着数を、コロニー数をカウントし確認した。結果を図8に示す。
ADを発症しなかった乳児(Non−AD)は、1ヶ月時に単離された菌株と比較して、6ヶ月時に単離された菌株の生着性が低下していた。一方、ADを発症した乳児(AD)は、1ヶ月時に単離された菌株と6ヶ月時に単離された菌株との間に、生着性の有意差は確認できなかった。このことから、agrC遺伝子座に変異が生じることにより、皮膚への生着性が低下することが確認できた。
「マウスモデル試験」
RNA表現型であるLAC株、agr領域を欠損させたLAC株(以下、欠損株という)を、それぞれ37℃のTSB培地で培養したところ、両者ともに増殖し、有意差は認められなかった。
C57/BL6マウスの皮膚に、皮膚表面上のagr系の活性化を誘導するプロトコルを用いて、上記LAC株、または欠損株を生着させた。
生着7日後の皮膚写真(左)と、ヘマトキシリンエオジン染色(中央左弱拡、中央右強拡)と、蛍光顕微鏡画像(右)を図9に示す。
生着7日後、LAC株は、顕著な角化症、表皮肥厚、真皮炎症性細胞浸潤に関連する堅牢な炎症性疾患を引き起こした。一方、欠損株は、皮膚の炎症が起こらなかった(図9中央左右)。
また、免疫蛍光染色により、LAC株は、皮膚への生着が認められたが、欠損株は、皮膚へほとんど生着していなかった(図9右)。
このことから、agr遺伝子座における変異が、皮膚への生着性を低下させ、アトピー性皮膚炎の発症を抑制できることが確認できた。
「まとめ」
本発明のリスク判定方法により、早期にかつ精度よくアトピー性皮膚炎の発症リスクを予測することができる。そのため、本発明のリスク判定方法により「発症リスクあり」と判定された被験者に対し、発症予防、早期発見、早期治療を適切に行うことができる。特に、本発明のリスク判定方法は、その後のアトピー性皮膚炎の発症の有無に関わらず、皮膚に黄色ブドウ球菌が付着している可能性が高い生後3月以上1年以下の乳児に対して有用である。
本発明のバイオマーカーは、アトピー性皮膚炎の発症と密接に関連しており、アトピー性皮膚炎の発症リスク判定、病名確定に用いることができる。
本発明のスクリーニング方法は、アトピー性皮膚炎の予防薬または治療薬の開発に資するものである。

Claims (5)

  1. 皮膚細菌叢における黄色ブドウ球菌のagrC遺伝子座の変異を解析することを特徴とするアトピー性皮膚炎の発症リスク判定方法。
  2. 皮膚細菌叢における黄色ブドウ球菌のRNAIII遺伝子の発現量を検出することを特徴とするアトピー性皮膚炎の発症リスク判定方法。
  3. 皮膚細菌叢における黄色ブドウ球菌のagrC遺伝子座の変異を解析し、
    前記黄色ブドウ球菌のRNAIII遺伝子の発現量を検出することを特徴とするアトピー性皮膚炎の発症リスク判定方法。
  4. RNAIII遺伝子からなるアトピー性皮膚炎の発症リスク判定用バイオマーカー。
  5. 候補化合物を黄色ブドウ球菌の培養液またはモデル動物に投与した際の、黄色ブドウ球菌のagrC変異依存性のRNAIII遺伝子発現量を指標とすることを特徴とするアトピー性皮膚炎の予防薬または治療薬のスクリーニング方法。
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WO2021221138A1 (ja) 2020-05-01 2021-11-04 花王株式会社 アトピー性皮膚炎の検出方法

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