JP2019023847A - 基板温度演算方法、基板温度演算装置、基板温度算出プログラム - Google Patents

基板温度演算方法、基板温度演算装置、基板温度算出プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】基板上に密集して実装された部品の温度上昇を簡易的に推定することで、設計の簡易化が可能な技術を提供する。【解決手段】複数の電子部品を密集させて搭載した場合におけるプリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算方法であって、複数の電子部品が搭載される実装パッドからその外部への熱抵抗を実装パッドの周長の関数として定義し、実装パッドから基板への熱流を実装パッド代表長さ(パッド面積/パッド周長)を用いた関数により定義することで、プリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算方法。【選択図】図1

Description

本発明は、基板温度演算技術に関する。
特許文献1に記載の技術は、多くの部品が搭載された基板の熱シミュレーションに要する時間を短縮する設計手法を開示する。
特開2006−072938号公報
上記特許文献1に記載の技術は、比較的複雑な全体パターン図などをもとに、簡易モデルを作成する手法を用いている。また、簡易化モデルも、ある程度の規模のものが想定されている。
しかしながら、これらの技術は、設計/解析を簡単化することを主眼としているが、設計の簡易化を目的とした技術ではない。
本発明は、基板上に密集して実装された部品の温度上昇を簡易的に推定することで、設計の簡易化が可能な技術を提供することを目的とする。
本発明の一観点によれば、複数の電子部品を密集させて搭載した場合におけるプリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算方法であって、複数の電子部品が搭載される実装パッドからその外部への熱抵抗を実装パッドの周長の関数として定義し、実装パッドから基板への熱流を実装パッド代表長さ(パッド面積/パッド周長)を用いた関数により定義することで、プリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算方法が提供される。
本発明は、上記の方法により、複数の電子部品を密集させて搭載した場合におけるプリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算装置であっても良く、コンピュータに、上記の方法を実行させるためのプログラムであっても良い。
本発明によれば、基板上に密集して実装された部品の温度上昇を簡易的に推定することで、設計の簡易化が可能となる。
図1は、本発明の第1の実施の形態においてモデルとして用いた密集実装基板の一構成例を示す斜視図(図1(a))、断面図(図1(b))、及び、それらに基づいてモデル化した詳細な熱ネットワークモデルの等価回路図(図1(c))である。 図1(c)を簡略化した等価回路図である。 本実施の形態において用いたシミュレーションモデルの概要を示す図である。 本実施の形態において用いたシミュレーションモデルの概要を示す図である。 表3に示すシミュレーション結果のうち、Sim No.1−4、9−12の温度分布を示す図である。 Rth_baと周長L=2P(n+n)との関係を示す図である。 パッド部の代表長さLとBipdの関係を示す図である。 実装数25個(5×5)の場合において、実装(マウント)ピッチPとRth_cbとの関係を示す図である。 Rth_cb/P 0.51と実装数n(=n)との関係を示す図である。 式(8)の推定式を用いて、P、q、n、nから算出されたT、Tをシミュレーション結果と比較した図である。 本発明の第2の実施の形態において実験に用いた基板の仕様とパッド形状を示す図である。 図11の基板の寸法等を示す図である。 基板の簡易化モデル(a)と詳細モデル(b)とを示す平面図である。 簡易化モデルと詳細モデルとの相違点を示す図である。 ΔTとΔT(ΔT=T−T)の推定値と実験から得られた測定結果比較を示す図である。 推定値と測定結果とを比較した図である。 基板の表面温度について、中心からx方向の温度分布をプロットした図である。 基板の表面温度について、中心からy方向の温度分布をプロットした図である。 =6mm(No.11〜14)及びL=12mm(No.9、15〜18)について、ΔT/QとLとの関係を示す図である。 修正推定式を用いて、P,q,n,nから算出されたTと実験結果からの測定値を比較した図である。 パッド端から周囲への熱抵抗Rth_baとパッド周長L=(n+n)×Pとの関係を示す図である。 図21と同じデータを横軸λxyとして表した図である。 式(17)の関係を用いて、Rth_baとλ,t,Lとの関係を整理した図である。 1/Rth_saとλ、Sの関係を示している。式(20)に関係式を示す。 CFDシミュレーション結果と推定式から得られたT,Tの相関を示す図であり、Lb=1.6mmの場合の図である。 CFDシミュレーション結果と推定式から得られたT,Tの相関を示す図であり、Lb=0.8mmの場合の図である。
以下に、本発明の実施の形態によるプリント基板温度演算技術について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
実際の回路設計においては、部品への負荷電力が大きい場合、負荷を分散し温度上昇を低減するために、同一部品を並列または直列に複数接続して使用することがある。このような場合、機器の小型化の観点からは、部品同士を密集して実装することが求められる。しかしながら、過剰な密集は基板温度の過度な上昇を招いてしまうため、適切な配置が肝要となる。
本発明の第1の実施の形態では、このような密集実装時の部品配置及び実装パッド設計のための手法について説明する。より具体的には、基板上に格子状に配置された発熱部品についてシミュレーションを行い、密集実装部の温度と、実装間隔・パッドサイズなどとの関係を整理する。これにより、任意の配置における温度推定の方法を求める。
図1は、本実施の形態においてモデルとして用いた密集実装基板の一構成例を示す斜視図(図1(a))、断面図(図1(b))、及び、それらに基づいてモデル化した詳細な熱ネットワークモデルの等価回路図(図1(c))である。
基板1上にチップ発熱部品3を密集実装した際の温度上昇についてモデル化を行った。基板1上の発熱部品3は等間隔で実装されるものと仮定し、発熱部品3の周囲にはそれぞれ数mm〜10mm程度の実装パッド(放熱パッド)5を設ける。このような状態で発熱部品3当たりの発熱を一定とし、部品を2個、3個というように増やした場合に、部品実装部(実装パッド部)の温度は部品数の増加に従って上昇する。この場合、実装パッド5の発熱密度は変化していないが、発熱部品3の総発熱量の増加に対して、実装パッド5から周囲の基板1への熱コンダクタンス(熱抵抗の逆数)は比例的には増加せず、発熱部品数が増えるほど実装パッド5の温度は上昇する。
このように、発熱部品3の密集部の温度上昇は実装パッド5からの総熱流量とパッド実装部から周囲の基板1への熱抵抗によって決まる。
図1(b)に示すように、密集実装された発熱部品3からの発生した熱流は、それぞれの部品表面と実装パッド5表面から周囲の空間へと対流・放射により放熱される(白抜きの矢印参照)。また、パッド周囲の基板1に対しては伝導により放熱され、これらのバランスにより各部の温度が決まる。
尚、図1(c)は、これらの放熱経路と熱流を熱回路網で表現した等価回路図である。
図2は、図1(c)の等価回路図を簡略化した等価回路図である。図2の回路図に基づいて、基板1上に密集実装された部品から発生した熱流の収支は以下のような関係で示される。
=Qsa+Q (1)
ここで、Qは部品からの総発熱量、Qsaは実装パッド表面からの放射・対流による熱流、Qは周囲の基板への伝導による熱流である。
実装パッド部の温度上昇T−T(ΔT)は、実装パッド部から周囲基板への熱抵抗Rth_baとQにより定められる。
図2において、Rth_baは流入した熱流が周囲の基板へ伝導しつつその表面から対流・放射により放熱する過程で定まり、基板の厚みや熱伝導率にも依存する。Qsaはパッド部の表面積に依存し、QはQsaとのバランスにより定まる。また、パッド内の温度分布は、パッド内の熱抵抗Rth_cbとQを用いて表すことができる。
次に解析手法について説明する。
上記において提案したモデルを実際の基板に適用するためには、パッド部から流出するQやパッド部表面からの放熱Qsaなどを知る必要がある。しかしながら、実験により、こうした物理量を測定することは難しい。特に、Qのような基板内を流れる熱流を直接測定することが難しい。
また、密集度による熱伝導の傾向を知るためには、実装数や実装ピッチなどについて、多くの条件で実験を行い確認する必要がある。
そこで、以下において、シミュレーションを用いてそれぞれのパラメータの影響度を確認し、熱回路網モデルを導出した。その際、本実施の形態では、密集実装部付近での対流・放射による放熱が非常に重要であるため、熱流体シミュレーションを用いて理論解析を行った。
本実施の形態において、シミュレーションにはFloTHERM Ver. 11.2(Mentor Graphics社製、有限体積法ベース)を用いた。本検討の対象は、流速の低い低レイノルズ数の条件であるため、流れの対称性を考慮し1/4モデルを使用した定常解析を行った。
以下に、シミュレーションモデル及び条件について説明する。
図3、図4は、本実施の形態において用いたシミュレーションモデルの概要を示す図である。また、基板1は、図3(a)のような分割された銅パッド7を、図3(b)のように簡略化し、銅パッドは符号7aのような非分割のパッド形状とした。発熱部品3は1.6mm×0.8mmのチップ部品3を想定し、部品および実装パッドの大きさの包絡面積をフットプリントとする1.3mm×1.3mm×0.5mmのセラミックとして簡略化した。基板1は地面と水平方向に設置し、自然対流条件とした。
発熱部品3及び基板1の表面の放射率は0.9(銅パッド7にはソルダレジストが塗布されることを想定)とした。基板1は一般的なガラスエポキシ基板とした。
シミュレーション結果として取得する中央部品温度Tは、最高温となるパッド中央部の温度とした。
本シミュレーションでは、分割された銅パッド7内の温度分布を考慮するため、発熱部品3の温度ではなく、発熱部品3の位置の銅パッド7の温度を評価した。
は実装パッドの端部温度であり、図3(c)に示した位置とする。部品配置が正方でない場合(n≠nの場合)は、高温となる長辺側の中央部とする。また、パッド外周を境界として、パッド内エリアから流出する熱流束(パッド下の基板部分から流出する熱流束を含む)の総量をQとして取得した。また、温度分布は図3(c)の破線L1で示すように、銅パッド7a中央からx方向に水平な経路で取得した。
尚、上記のように、実際の使用時は一定の負荷を複数の部品で分割することを考えることが多いが、本実施の形態における検討としては、形状と各部熱抵抗の関係が導出されれば良いため、整理の容易さから単独部品の発熱qを一定値(2水準)とした。
本シミュレーションで用いた各種物性値を表1に示し、形状及び解析条件の一覧を表2に示す。
Figure 2019023847
Figure 2019023847
表3に、全条件のシミュレーション結果を示す。
Figure 2019023847
また、図5にその結果のうちの、Sim No.1−4、9−12の温度分布を示す。部品は一定ピッチで正方に実装されており、実装数n*nは、それぞれ、1個、9個(3×3)、25個(5×5)、49個(7×7)である。
図5において高温域で温度がほぼ一定(平坦)になっている領域は、パッド部に相当する。No.9−12の条件は、1個当たりの発熱をP=5mmの場合の半分にしており、結果としてほぼ同等の温度上昇となった。
図5より、いずれのピッチにおいても実装数の増加(横軸の値が小さくなる)に伴い、中央のパッド温度が似たような傾向で上昇していることがわかる。また、いずれのピッチにおいてもパッド端部から概ね30mm程度離れると、周囲温度に近い温度となっていることがわかる。尚、パッド部より外側の領域で温度分布が階段状に見えるのは、解析で設定されたグリッドと一定間隔(0.2mm)に設定されたデータ取得点との整合が取れないためである。
次に、モデル各部の熱抵抗と形状との関係について説明する。シミュレーションの結果を図2で示したモデルを用いて整理する。Rth_baは、パッド部温度上昇ΔT(=T−T)とパッド部からの流出する熱流Qから求められる。
図6は、Rth_baと周長L=2P(n+n)との関係を示す図である。図6に示すように、Rth_baは概ね周長Lに反比例する傾向がある。
図6に示す関係は、部品の配置が正方でない場合も含んでいる。図6に示す傾向を物理的に説明すると、パッドの周囲に十分にスペースがある場合には、周囲基板への熱伝導は周長に比例して大きくなることを意味する。
図6に示す関係からRth_baをパッドの周長Lにより推定することが可能であることがわかる。この条件においては、下記の(2)式で表される。Rth_baは熱伝導に依存するため、基板の厚み、熱伝導率の影響が大きいと予想される。
Rth_ba=3539・L−0.84 (2)
パッド部の温度上昇ΔTを推定するためには、さらにQの値の推定が必要である。Qは、総発熱量Q=n・n・qに対して、パッド表面からの空気中への熱流Qsaとの割合により決まる。ここで、QとQsaとの比をとり、下記の(3)式の通りビオ数として無次元化して、パッド形状との関係を導出した。
Bipd=Qsa/Q (3)
図7は、パッド部の代表長さLとBipdの関係を示す図である。ここで、Lは地面と水平に配置された平面からの自然対流の計算時などに用いる4×パッド面積÷Lを用いた。図7より、LとBipdとの間には高い相関を示しており、Bipdと代表長さLは(4)式の関係で表すことができる。
Bipd=0.0476・L 1.01 (4)
Bipdの分子にあたるQsaはパッドの表面積に依存して放熱量が増加する。一方で、図1の熱回路網に示されるように、QはRth_baに概ね反比例する。前述のとおりRth_baはLに反比例するため、結局QはLに比例する。
これらより、QとQsaが表面積/周長で与えられる代表長さLに比例することは物理的な蓋然性が高い。
上記(1)、(3)、(4)式からQを推定する(5)式が得られる。このQを用いてTは(6)式によって計算することができる。
=Q/(1+0.0476・L 1.01) (5)
ΔT=Rth_ba・Q (6)
上記の(5)、(6)式により、総発熱量Q、周長L、代表長さL(いずれもP、q、n、nから算出することができる)を与えることで、Tを推定することができる。
次に、パッド内部の温度分布に関するRth_cbについても、同様に関係を求める。Rth_cbは(7)式で与えられる。
Rth_cb=(T−T)/Q (7)
図8は実装数25個(5×5)の場合における、実装ピッチPとRth_cbとの関係を示す図である。図8に示すように、Rth_cbはP 0.51に対して強い相関がみられるため、Rth_cb/P 0.51についてn(x方向の実装数)での整理を試みた。
図9は、Rth_cb/P 0.51と実装数n(=n)との関係を示す図である。ここではまず、正方に配置された結果について整理している。ここから得られた関係からRth_cbはPとnとを用いて(8)式で表される。
Rth_cb=6.13・P 0.51・n×0.61 (8)
しかしながら、図9からもわかるように、実装数nとの相関係数(R値)は0.8程度と相関性は高いとは言い難い。また、正方でない配列についてはこの関係は相関が殆どない。Rth_cbについては、形状や、実装数(n及びn)との関連を適切に表す関係性の導出をさらに探求することが望ましい。
次に、推定式の確認結果について説明する。
図10は、上記で得られた推定式を用いて、P,q,n,nから算出されたT,Tをシミュレーション結果と比較した図である。比較した結果には、推定式導出に用いていない条件(白抜きの系列)を含んでいる。図10からわかるように、100℃以下程度については、ほぼシミュレーション結果と等しい推定値が得られている。
一方、100℃以上の高温側ではシミュレーション結果との間に推定誤差が表れている。この結果は、Bipdの推定式を導いたデータの多くがT<100℃であることに起因するものと推測される。
高温下では、Qsaに含まれる放射の影響が大きくなり、(4)式の推定精度低下につながる。ただし、基板設計を想定した場合には、Tが100℃を大きく上回るような条件では設計としての成立が難しいため、本推定式の導出には、Tは100℃程度までのデータを基にすることが適当である。
また、図10より、本実施の形態で示した範囲では、温度Tに対して、Tによる温度上昇の影響が大きいことが分かる。
すなわち、T−Tについては前述のとおり推定精度が低いが、結果として全体の温度推定に対する影響は限定的であると言える。
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態においては、以下のようにまとめることができる。
本実施の形態により、基板上に密集実装されたチップ部品の温度上昇について熱回路網モデルを提案し、シミュレーション結果を整理することで、温度推定式を導出することができる。そして、以下のような知見が得られた。
1)実装パッドから周囲の基板への熱抵抗Rth_baはパッド周長に略反比例する。
2)パッド部の表面からの放熱量Qsaと、周囲の基板への熱流量Qとの比Bipdは、パッド部の代表長に比例する。
3)導出された温度推定式を用いて、100℃以下程度のTについて概ね妥当な推定ができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。まず、第1の実施の形態で説明した密集実装部品の熱回路網による表現について確認する。
実装パッド部の温度上昇:ΔTはパッド部から周囲への熱抵抗:Rth_baと、基板への伝導による熱流:Qにより、式(9)のように表される。Qは式(10)によって与えられる。
ΔT=Rth_ba・Q (9)
=Qsa+Q (10)
ここで、ΔT=T−T、T:実装パッドの端部温度、T:周囲温度、Q:部品総発熱量、Qsa:実装パッド表面からの放射・対流による熱流、Q:パッドから周囲の基板への伝導による熱流、Rth_ba:パッド部から周囲基板への熱抵抗である。
Rth_ba及びQは、パッド周長L及びパッド代表長さLを用いて式(11)、(12)、(13)のように整理される。
Figure 2019023847
=Q/(1+Bipd) (12)
Figure 2019023847
ここで、L:パッド周長、L:代表長さ=4S/L、S:パッド部面積である。
パッド中央部の温度Tは式(14)で示され、Rth_cbはPとnxによって式(14)で整理される。ただし、式(15)は、パッド内の部品配置が正方でない場合には推定精度が低いため注意が必要である。
=T+Rth_cb・Q (14)
Figure 2019023847
:x方向実装数、P:部品実装ピッチであり、これらの形状の詳細は後述する。
ここで、α、α、β、β、γ、γ、γは基板形状及び材料の熱伝導率によって定まる定数であり、第1の実施の形態における検討条件においては、α=3539、α=0.844、β=0.0476、β=1.01、γ=6.13、γ=0.51、γ=0.61が得られている。
(実験によるモデル妥当性の確認)
上記の推定式はシミュレーション結果を基に導出された式であるため、実際の基板においてこれらの関係が成立するか否かを、実験によりその妥当性を確認した。
実験条件は基本的には第1の実施の形態のシミュレーション条件に準ずるものとする。実験に用いた基板の仕様とパッド形状は図11に示す。発熱素子としては1.6mm×0.8mmサイズのチップ抵抗器を用い、プリント基板にはガラスエポキシ材(FR−4グレード)を用いた。基板は地面と水平方向に設置し、スペーサを用いて測定台から40mm程度の間隔を空け、外部からは風速を与えない自然対流状態とした。
図12は、図11に示した実験に用いた基板の寸法等を示す図である。
図11に示すように、チップ抵抗器はパッド内に等間隔に密集実装される。それぞれの部品は、図12に示すような同一形状のパッドを持ち、これらがx,y方向に配置される。x,y方向の部品数n、n及び、P(実装ピッチ=パッド寸法)がパッド形状のパラメータとなる。また、温度測定箇所はパッド外周部の代表点及びパッド中央部分とする。パッド外周部の代表点は、パッドの分断が無く温度が最も高くなると推測されるy方向の端部とした(図11(a),(b)のT)。パッド中央部分は、最高温度と予想される中央部の抵抗器の端子部温度を代表点とした。端子部とは、チップ抵抗器の電極と基板の接続部分を指す。
(実験及び解析条件)
Figure 2019023847
表4に実験条件を示す。実験条件を決めるにあたっては以下を考慮した。式(11)及び(13)に示されるRth_baのLに関する依存性及びBipdのLに関する依存性については、実験においても同様の傾向が得られることが予想される。しかし、解析で入力された簡略化モデルと実物とのパッド形状の違い、シミュレーションに使用した基板基材の物性値(熱伝導率)の不確かさ、銅箔及び基材の厚みなどの製造に起因する形状の不確かさなど、不確定要因が多く係数α、β、γは上記に示された値とは異なることが予想される。
そこで、実験結果を基にした係数同定のための条件を実験条件に含める。具体的にはBipd(式(12)によりQを決定する)に影響を及ぼすLを一定値とし、異なるLを持つ条件を複数用意した(L=6:No.11〜14、L=12:No.9,15−18)。
(シミュレーションモデル簡略化の影響確認)
上記式(11)、(13)、(15)を導出する際に使用し、第1の実施の形態において説明したシミュレーションモデルは、詳細を省き一般的な形状とした図13(a)に示すような簡略化モデルである。
実験を行うにあたり、部品及び銅箔パッドは図12に示したものを用いるが、細部の形状は簡略化モデルとは異なる。
そこで、図13(b)に示すような実際の形状を反映した詳細モデルと、上記の簡略化モデルとで、モデル化による差異について確認する。具体的には、表4の実験No.4及び15の条件について熱流体シミュレーションを行い、図13(a)、(b)の双方のモデルでのT,Tの差異を確認する。図14は、簡易化モデルと詳細モデルの相違点を示す図である。
詳細モデルでは、チップ抵抗器は実際の形状を模してモデル化され、発熱はチップ上の抵抗体で生じる(尚、簡易化モデルでは、チップ全体が均一発熱する)。
また、部品と基板の接続部においては、はんだフィレット形状を有する(簡易モデルでははんだはモデル化されない)。シミュレーションに用いた物性値及び条件を表5に示す。
Figure 2019023847
(実験結果及び考察)
1)実験結果
図15は、ΔTとΔT(ΔT=T−T)の推定値と実験から得られた測定結果比較を示す図である。図16は、推定値と測定結果とを比較した図である。推定値と測定結果が一致している場合、図15中の破線上にプロットされる。図16は各推定値に対する推定誤差を示している。推定値の算出には、パラメータL,L,P,n及び上記において示したα、α、β、β、γ、γ、γを用いた。測定結果は10数℃から80℃程度の温度上昇であり、その推定誤差は最大約10℃程度、温度上昇に対する割合としては最大約22%程度である。
2)誤差要因の検討 モデル簡略化による影響の確認
上記の誤差要因を検討するため、推定式の導出に用いたシミュレーションモデルの簡略化の影響について説明する。
検討条件は上記に示したとおりである。図17、図18は基板の表面温度について、中心からx,y方向の温度分布をプロットした図である。簡略化モデルと詳細モデルとを比較している。x方向に関しては、途中でパッドの分割部があることなどから、中央部付近で簡略化モデルとの温度差が数℃程度あるが、概ねパッド端部より外側では同程度の温度となっている。y方向については、基板中央部で詳細モデルとの差が比較的小さい。温度の代表点としているy方向のパッド端での温度差は概ね1〜1.5℃前後であり、簡略化モデルの方が温度が低下する傾向にある。
温度上昇への割合では3%程度の差である。本件の条件においては、簡略化モデルと詳細モデルとの差は小さく、形状の一般性や解析コスト(計算時間)を考えると、簡略化モデルを用いた解析は有効であることがわかった。しかしながら、代表点の温度については若干低めの温度を推定する可能性があるため、簡略化モデルにより導出された推定式についても同程度の影響を考慮する必要があることがわかる。
(実験結果に基づく修正係数の導出)
上記において説明したように、実験結果と推定値には誤差があるため、推定式の修正が必要である。式(10)の係数α,αを実験結果から導出する。式(9)、(11)、(12)式から式(16)の関係が得られる。
Figure 2019023847
上記の式(13)より、Lが同一な条件においてはBidpが一定であると考えると、同一のLを持つ条件の測定結果から、式(16)のαを推定することが可能である。
図19は、L=6mm(表4のNo.11〜14)及びL=12mm(表4のNo.9、15〜18)について、ΔT/QとLとの関係を示す図である。
図19においてΔT/QをLの累乗として整理すると、Lの指数部に示される値は式(11)との比較から、αそのものである。両条件の平均値を取ってα=0.742を得る。αの値は、第1の実施の形態で与えられた値に対して小さく、熱抵抗Rth_baに対して、Lの影響度が低いことを示している。この傾向の要因は、シミュレーションで与えた条件に対して実際の基板の形状や熱伝導率などの物性値の差異が影響していることが考えられる。
ここで、上記αの値を前提としてαを仮定することで、式(9)〜(13)と測定結果ΔTから各条件でのBipdを算出することができる。BipdとLは式(13)のような関係になると考えると、係数β,βは最小二乗近似により求めることができる。このようにしてαの仮定値に対して、係数β,βを求めることができる。ただし、αは任意に仮定できるため、αの妥当性の指標として、BipdとLとの相関係数を評価した。係数α及びα(0.742で固定)から導出されるβ,βの値とその際のBipdとLとの相関係数(R値)を表6に示す。
Figure 2019023847
表6において、Case1から3はαの仮定値に対する各係数の傾向と相関係数を示している。αの値が過小な場合、条件によっては実験結果から計算されるQの値が負値を取ってしまい物理的に不適切となるため、αは事実上の下限値を持っている。Case1におけるαは本実施の形態の試験結果において概ね下限の値である。表6のCase1に対してαの値を増加させるに従い、相関係数は向上し、Case2付近で概ね最高となる。Case3のようにαをより高い値とすると相関係数は徐々に低下する。これらより、実験結果から導出された修正後の係数としてCase2を採用し、α=0.2832,α=0.742、β=0.0808,β=0.857とした。
(修正係数を用いた推定式の検証)
上記において導出された修正後の係数を用いた温度推定式について、実験結果との整合を検証した。図20は修正推定式を用いて、P,q,n,nから算出されたTと実験結果からの測定値を比較した図である。Tが80℃以下程度までの点において、推定値と測定値は概ね一致しており、最高で2℃以下程度の誤差となっている。90℃以上の条件では、測定値に対して最高で7℃程度(約8%程度)高めの推定値を示している。ガラスエポキシ基板の設計上限は、概ね100℃以下程度の場合が多いため、上記の推定式は多くのケースにおいて精度良く温度上昇を推定可能である。
以上のように、熱回路網モデルを用いた推定式の有効性が実験結果についても確認された。
(第3の実施の形態)
(本実施の形態におけるCFDシミュレーションモデル)
上記において、図1,図2,図4等を参照して提案した基板モデルの各部熱抵抗を詳細に調査するために、CFD(数値流体力学)シミュレーションによる数値実験を行った。本実施の形態における検討においては、シミュレーションにFloTHERM Ver. 11.2(Mentor Graphics社製、有限体積法ベース)を用いた。
本実施の形態における検討の対象は、流速の低い低レイノルズ数の条件であるため、流れの対称性を考慮し1/4モデルを使用した定常解析を行った。
図4にシミュレーションモデルの概要を示す。
基板1は、地面と水平方向に設置し、自然対流条件とした。また、基板1に関しては、図4に示すように簡略化を行い、銅箔パターン3は全面にベタで形成したベタパターンとした。その他、モデルの形状の詳細については、第1の実施の形態、第2の実施の形態で検討に用いたものと共通である。多層基板での内層のパターンの影響を考慮して、基板基材のxy方向の熱伝導率の条件を0.6から100の条件とした。基板厚みLは、ガラスエポキシ基板で一般に良く用いられる0.8及び1.6mmとした。シミュレーション結果として取得する中央部品温度Tcは、最高温となるパッド中央部の温度である。本実施の形態では、部品の構造は省略され均一な熱源として扱われるため、部品の温度ではなく実装パッド5の温度が評価される。Tbは実装パッド5の端部温度であり、部品配置が正方でない場合(nx≠nyの場合)は、高温となる長辺側の中央部(図4に示した位置)とする。Qbは、パッド部(実際には銅パッド下の基板部から流出する熱の流束)外側に流れる熱流束の総量として求めた。シミュレーションで用いた、各種物性値(固体材料の物性)を表7に、形状及び解析条件の一覧(空気の物性)を表8に示す。
Figure 2019023847
Figure 2019023847
また、表9,表10は、シミュレーションの条件を示す表であり、表9は、基板のパラメータ、表10はパッドのパラメータを示す。
Figure 2019023847
Figure 2019023847
(結果と考察)
以下では、得られたCFDシミュレーションの結果(T,T,Q,Qsa)から、各部熱抵抗の値を求める。これらの熱抵抗の値と、各種設計パラメータ(q,P,n,n,L,λxy)との関係を導出する。
(A)Rth_baと設計パラメータとの関係
図21は、パッド端から周囲への熱抵抗Rth_baとパッド周長L=(nx+ny)×Pcとの関係を示す図である。図21に示すように、いずれの熱伝導率においても、パッド周長の増加に従い、Rth_baが低下していく傾向が分かる。Rth_baは周長に対して略0.7〜0.8乗に反比例する。図22は、図21と同じデータを横軸λxyとして表した図である。Rth_baは殆どのLについて、λの略0.5乗に反比例して低下することがわかる。同様に、基板厚みLbについても傾向を求めると、Rth_baは、Lbの略0.5乗に反比例することがわかる。式(17)は前述の関係を用いてRth_baを設計パラメータで記述した式である。
Figure 2019023847
図23は、式(17)の関係を用いて、Rth_baとλ,t,Lとの関係を整理した図である。(ここでは、各パラメータ値の単位はSI単位系に統一している。)
Rth_baが、パッド幅の和に略反比例することは直感的に理解しやすい。一方、パッドから外部の基板を放熱フィンとみなすと、λ及びLtとの関係については理解しやすい。平板フィンにおけるフィン効率ηの理論式は、式(18)で与えられる。
Figure 2019023847
フィンの奥行がフィン厚みに対して十分に大きいとした場合、式(19)の関係が与えられる。
Figure 2019023847
ここで、Hはフィン長さ,hはフィン表面の熱伝達率、λは、フィン材料の熱伝導率、Ltfはフィン厚みである。
平板フィンの熱抵抗は、式(18)の逆数に比例するため、λft及びLftの−0.5乗に比例する。つまり、λft及びLftの−0.5乗に比例する。
(B)Rtb_saと設計パラメータとの関係
上記(A)と同様に、Rth_saについても、設計パラメータとの関係を導出した。既に求められた、Bipd(=Qsa/Qb)よりもシンプルな取扱いが可能となるRth_saについての関係式を導出した。図24は、1/Rth_saとλ、Sの関係を示している。式(20)に関係式を示す。
Figure 2019023847
ここで、Sはパッド面積であり、S=Pc・nx・nyである。
これをRth_sa=の形に変形し、式(21)を得る。
Figure 2019023847
1/Rth_saは、パッド表面から周囲温度Taへの熱コンダクタンスを示す。パッドから周囲への熱コンダクタンスを求める場合、熱伝達係数とその作用する面積を用いるのが一般的である。つまり、熱コンダクタンスは、パッド面積Sに比例すると予想される。このような傾向が式(20)、(21)で確認される。また、λの影響度は小さいが、これは、銅パッド部分の熱抵抗が低く、基材の熱伝導率の影響が相対的に低いことを反映しているものと推定される。また、Lt=0.8mmから1.6mmの範囲では、厚みの影響は殆どない。
(C)得られた推定式の確認
前項までで求められたRth_ba、Rth_sa(及びRth_cb)の算出式を用いて、I,Iを算出する推定式が得られた。
,T、部品発熱(qc)、基板パッド形状(実装ピッチ:Pc、実装数nx,ny)、基板厚み(L)、基板熱伝導率(λxy)から計算することが可能である。
図25,図26は、前述のCFDシミュレーション結果と推定式から得られたT,Tの相関を示す図である。図25は、Lb=1.6mm,図26は、Lb=0.8mmの場合の図である。シミュレーション結果に対して推定式による計算値はT,Tが略120℃以下となる条件において概ね良い相関を示している。しかしながら、それ以上の温度では、両者の差が増加する傾向が見られる。これは、放射及び対流による熱伝達の温度依存性の影響によるものと考えられる。従って、本実施の形態による推定式の適用温度範囲には注意が必要である。但し、回路基板設計への適用を考える上では、100℃程度が基板温度の上限というケースが多いため、実用上の問題は無い。
(第3の実施の形態のまとめ)
以上に示すように、第3の実施の形態によれば、基板上に部品を密集実装された場合の温度上昇について、一般的な基板設計条件で使用可能な簡易的な推定式が得られた。得られた主な知見は下記の通りである。
1)Rth_baは、Lの略0.7乗λxy及びLの−0.5乗に比例する。
2)Rth_saはSの略−0.8乗、基板熱伝導率の略−0.14乗に比例する。
3)得られた推定式によるT,Tの計算値は、略120℃以下の範囲でCFDシミュレーション結果と概ね良い一致を得ることができた。
(まとめ)
以下に本実施の形態による密集実装時の部品の温度上昇に関して提案された熱回路網モデル及び温度推定式について実験結果との比較を行い、その有効性を確認することができた。以下にその結果をまとめる。
1)第1の実施の形態で与えられた係数を用いた推定式による推定値は、実験結果に対して最大20%程度の推定誤差を持つ。
2)αの修正値を実験結果から導出した。修正後のαは修正前に比較して値が小さくなっている。
3)修正係数αを用いてその他の係数α,β,βについても修正値を導出することができた。
4)修正係数を用いた推定式は90℃未満のTについて高い推定精度を持つ。
以上に説明したように、基板上に密集して実装された部品の温度上昇を簡易的に推定することで、設計の簡易化が可能な技術を提供することができた。
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
本発明は、基板温度演算装置に利用可能である。
1…基板
3…発熱部品
5…実装パッド
7…銅パッド

Claims (5)

  1. 複数の電子部品を密集させて搭載した場合におけるプリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算方法であって、
    複数の電子部品が搭載される実装パッドからその外部への熱抵抗を実装パッドの周長の関数として定義し、
    実装パッドから基板への熱流を実装パッド代表長さ(パッド面積/パッド周長)を用いた関数により定義することで、
    プリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算方法。
  2. 前記実装パッドの周長の関数は、以下の通りであり、
    Figure 2019023847
    前記実装パッド代表長さ(パッド面積/パッド周長)を用いた関数は,以下の通りであり、
    Figure 2019023847
    前記プリント基板の温度上昇の推定値は、以下の通りである請求項1に記載の基板温度演算方法。
    Figure 2019023847
    Figure 2019023847
    但し、
    Figure 2019023847
    ここで、Qsaは実装パッド熱流であり、Qbは周囲への熱流であり、Qcは総発熱量であり、Rth_baは熱抵抗である。
  3. 複数の電子部品を密集させて搭載した場合におけるプリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算装置であって、
    複数の電子部品が搭載される実装パッドからその外部への熱抵抗を実装パッドの周長の関数として定義し、
    実装パッドから基板への熱流を実装パッド代表長さ(パッド面積/パッド周長)を用いた関数により定義することで、
    プリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算装置。
  4. コンピュータに、
    複数の電子部品を密集させて搭載した場合におけるプリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算方法を実行させるためのプログラムであって、
    複数の電子部品が搭載される実装パッドからその外部への熱抵抗を実装パッドの周長の関数として定義し、
    実装パッドから基板への熱流を実装パッド代表長さ(パッド面積/パッド周長)を用いた関数により定義することで、
    プリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算方法を実行させるためのプログラム。
  5. 請求項1に記載の基板温度演算方法であって、
    基板上に部品を密集実装された場合の温度上昇について、以下の関係に基づいた推定式によりプリント基板の温度上昇の推定値を演算する基板温度演算方法。
    1)Rth_baは、Lの略0.7乗λxy及びLの−0.5乗に比例する。
    2)Rth_saはSの略−0.8乗、基板熱伝導率の略−0.14乗に比例する。
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