JP2019018761A - 航走体の水中騒音推定方法、水中騒音推定プログラム及び水中騒音推定装置 - Google Patents
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Abstract
Description
ここで、特許文献1には、船体表面の変動圧力を算出するにあたって、キャビテーションの計算を粘性影響を考慮する数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)等の第1のシミュレーション計算モデルを用いて行い、このシミュレーション結果であるキャビテーション形状を用いて粘性影響を考慮しない第2のシミュレーション計算を行うことで、所定の精度を確保しながら処理の低減及び時間短縮を図ることが開示されている。
また、特許文献2には、ジェット流をCFDに基づく解析である定常RANSにより解析し、得られた定常流諸元を用いてジェット騒音を推定すること等によって音源モデルを生成し、この音源モデルを用いてジェット騒音の解析を行う方法が開示されている。
また、特許文献3には、実機計測で取得したプロペラの圧力変動データと模型試験で取得したプロペラの圧力変動データとに基づいて作成された実機計測と模型試験とのデータ相関情報を用いて、模型試験で取得したプロペラの圧力変動データに対応する実機におけるプロペラの圧力変動を推定する推定部を備えた装置が開示されている。
また、特許文献3は、実機計測と模型試験のみに基づいてプロペラの圧力変動を推定するものであり、CFDと試験結果を併用して水中における航走体による騒音を効率的かつ精度よく推定するものではない。
請求項1に記載の本発明によれば、航走体が発する水中騒音をCFD計算と試験結果を併用することにより、効率的かつ精度よく推定できる。
請求項2に記載の本発明によれば、船舶が発する水中騒音をCFD計算の結果を試験結果に基づいて補正することにより、効率的かつ精度よく推定できる。
請求項3に記載の本発明によれば、精度が得易いプロペラ水槽試験により求めたプロペラ単独性能に基づいてCFD計算の結果を補正するため、水中騒音の推定精度を高めることができる。
請求項4に記載の本発明によれば、船尾伴流水槽試験と船尾伴流実船試験の少なくとも一方により求めた船尾伴流に基づいてCFD計算の結果を補正するため、水中騒音の推定精度を高めることができる。
請求項5に記載の本発明によれば、機関出力試験とスラストトルク計測の少なくとも一方により求めた機関特性に基づいてCFD計算の結果を補正するため、水中騒音の推定精度を高めることができる。
請求項6に記載の本発明によれば、キャビテーション水槽試験と模型又は実船試験を通じた運航状態の推定の少なくともいずれかにより求めたキャビテーション数に基づいてCFD計算の結果を補正するため、水中騒音の推定精度を高めることができる。
請求項7に記載の本発明によれば、船尾伴流又はキャビテーション数の精度を高め、水中騒音をより正確に推定することができる。
請求項8に記載の本発明によれば、スラスト係数KTの精度を高め、水中騒音をより正確に推定することができる。
請求項9に記載の本発明によれば、流速を調整しスラスト係数KTの精度を高め、水中騒音をより正確に推定することができる。
請求項10に記載の本発明によれば、船尾変動圧の計算結果を基に水中騒音の音圧レベルを求めることができる。
請求項11に記載の本発明によれば、実船による騒音の音源レベルを求めることができる。
請求項12に記載の本発明によれば、水中騒音をより的確に精度よく推定することができる。
請求項13に記載の本発明によれば、船舶が発する水中騒音をCFD計算と試験結果を併用することにより、効率的かつ精度よく推定するプログラムを提供できる。
請求項14に記載の本発明によれば、船舶が発する水中騒音をCFD計算と試験結果を併用することにより、効率的かつ精度よく推定する装置を提供できる。
船舶による水中騒音の主たる原因はプロペラキャビテーションである。したがって、本実施形態ではプロペラキャビテーションにより発生する水中騒音を推定する。
まず、事前準備を行う。事前準備では、船体やプロペラ等の形状条件及び運航条件を入力し、水槽試験等により船舶についての試験を行った試験結果や計測結果として、プロペラ性能、船尾伴流、機関特性及びキャビテーション数に関するデータを取得し、取得したデータをHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置に記録する。本実施形態におけるプロペラ性能は、プロペラ単独性能であることが好ましい。また、本実施形態における機関特性は、機関出力試験及びスラストトルク計測により求めた機関出力及びスラストトルクであることが好ましい。
なお、試験結果として船尾伴流又はキャビテーション数を求めるに当たっては、船舶の船体姿勢と船尾波高を受け異なってくるところ、精度を高めるため、船舶の船体姿勢と船尾波高の少なくとも一方を考慮することが好ましい。
また、対象船舶の船体形状及び船速といった試験条件を、入力手段を用いてコンピュータに入力し(船体試験条件入力ステップS201)、CFD計算による解析を行い、又は上記の条件に基づいて、水槽試験、実船試験(計測)を実施し各種相関を用いることにより(船体試験ステップS202)、船体姿勢、船尾波高、船尾伴流、機関出力及びスラストトルクを取得する(船体試験結果取得ステップS203)。なお、船尾伴流は、船尾伴流実船試験により求めた実船スケール伴流であることが好ましいが、船尾伴流水槽試験により求めた模型スケール伴流であってもよい。
なお、CFD計算による解析結果を水槽試験結果、実船計測結果をもって合わせ込むことを繰り返すことにより、CFD計算だけでも水槽試験結果、実船計測結果と同等の船体姿勢、船尾波高、船尾伴流、機関出力及びスラストトルク結果を取得することが可能になる。これらのCFD計算で得られる船体姿勢、船尾波高、船尾伴流、機関出力及びスラストトルクもここでは試験結果として扱う。
ここで、図3はプロペラ単独性能曲線の例を示す図である。図3において、KTはスラスト係数、KQはトルク係数、η0はプロペラ単独効率、Jは前進常数である。
また、図4は船尾伴流の例を示す図である。
まず、入力手段を用いて、船舶の騒音推定条件をコンピュータに入力する(条件入力ステップS10)。騒音推定条件は、船体及びプロペラの形状等に関する形状条件、並びに船速、波浪、機関出力、又はプロペラ回転数等の運航条件である。コンピュータには、本実施形態による水中騒音推定方法を実行するプログラムがインストールされている。
コンピュータは、条件入力ステップS10で取得した騒音推定条件に基づいて、数値流体力学(CFD)計算によるプロペラキャビテーションシミュレーションを行う(CFD計算ステップS20)。CFD計算ステップS20は、第1のCFD計算ステップS21と、第2のCFD計算ステップS22と、第3のCFD計算ステップS23とからなる。
CFD計算の過程では、事前準備で取得した試験結果を抽出し(試験結果抽出ステップS30)、CFD計算へ反映して補正を行う(補正ステップS40)。試験結果抽出ステップS30は、第1の試験結果抽出ステップS31と、第2の試験結果抽出ステップS32と、第3の試験結果抽出ステップS33とからなる。また、補正ステップS40は、第1の補正ステップS41と、第2の補正ステップS42とからなる。
また、船体試験結果取得ステップS203で取得した試験結果から船尾伴流のデータを抽出する(第1の試験結果抽出ステップS31)。
また、船体試験結果取得ステップS203で取得した試験結果から機関出力及びスラストトルクのデータを抽出する(第2の試験結果抽出ステップS32)。
なお、船速馬力曲線が与えられていない場合は、CFD計算又は水槽試験によって制動馬力(BHP)を推定する。
スラスト係数判断ステップS50において、スラスト係数KTが目標値の範囲内にないと判断した場合は、スラスト係数KTを目標値に合わせるために、プロペラ試験結果取得ステップS103で取得した試験結果としてのプロペラ単独性能曲線を基に前進常数Jを調整し(第1の補正ステップS41)、第1のCFD計算ステップS21に戻り、再度船尾伴流を算出する。
ここで、図6(a)はスラスト係数KTを目標値に収めるために使用するプロペラ単独性能曲線の例であり、図6(b)は、図6(a)を用いて再現したスラスト係数KTの例である。プロペラキャビテーションシミュレーションを行う上で、スラスト係数KTは、目標値である所定のスラスト係数(Target KT)に対し、4%以内の精度で再現することが好ましく、3%以内の精度で再現することがより好ましい。
このように、スラスト係数KTを目標値に収束させるために、プロペラ性能としてのプロペラ単独性能曲線を基に第1のCFD計算ステップS21及び第2のCFD計算ステップS22を繰り返すことで、流速を調整しスラスト係数KTを精度よく再現し、プロペラキャビテーションシミュレーションを正確に行うことができる。特にプロペラ試験結果取得ステップS103において取得したプロペラ性能が、プロペラ水槽試験により求めたプロペラ単独性能である場合には、精度が得易いプロペラ水槽試験により求めたプロペラ単独性能に基づいてCFD計算の結果を補正するため、水中騒音の推定精度を高めることができる。
なお、キャビテーション数は、キャビテーション水槽試験、模型試験を通じた運航状態の推定、及び実船試験を通じた運航状態の推定の少なくとも一つによりキャビテーション数を求め、第3のCFD計算ステップS23で算出したキャビテーション数を補正してもよい。これにより、水中騒音の推定精度を高めることができる。
船尾変動圧計算ステップS24において水中音圧としての船尾変動圧を推定する際には、プロペラの直上(プロペラ上端と船体との隙間であるチップクリアランス位置)の船尾変動圧が最も大きい位置を特定し、その位置においてシミュレーション結果を使用して水中音圧を推定することが好ましい。これにより、水中音圧を的確に精度よく推定できる。なお、水中音圧は、船尾変動圧が最大となる点からプロペラ半径に相当する距離までの所定範囲内の位置で推定することが好ましく、プロペラの直上の船尾変動圧が最大となる点において推定することがより好ましい。船尾変動圧が最大となる点からプロペラ半径に相当する距離よりも離れた位置で推定した場合は、水中音圧を的確に精度よく推定することが困難となる。
本実施形態におけるCFD計算は、模型スケールで行っているため、音圧レベル計算ステップS61の後、得られた音圧レベルを、尺度影響を考慮して修正を行う(尺度影響修正ステップS70)。これにより、実船による騒音のプロペラキャビテーション音源レベルが推定できる(実船音源レベル推定ステップS71)。なお、模型−実船の尺度影響修正は、ITTC(国際試験水槽委員会)で定められている方法やLevkovskiiの方法など、公知の方法を用いて行うことができる。
図8において、横軸は1/3オクターブバンド中心周波数、縦軸は音圧レベルであり、実線でCFD計算の結果を示し、四角記号を連ねる実線で実船計測の結果を示している。何れの結果も、CFD計算の結果と実測値が近似していることが分かる。
また、水中騒音推定方法の各ステップをコンピュータに実行させるための水中騒音推定プログラムを提供できる。
また、船舶の騒音推定条件を入力する条件入力手段と、コンピュータと、船尾変動圧の計算結果を出力する出力手段とを備え、水中騒音推定プログラムを利用した水中騒音推定装置を提供できる。
S20 CFD計算ステップ
S24 船尾変動圧計算ステップ
S30 試験結果抽出ステップ
S40 補正ステップ
S61 音圧レベル計算ステップ
S70 尺度影響修正ステップ
Claims (14)
- 水中における航走体による騒音を推定する水中騒音推定方法であって、前記航走体の騒音推定条件を入力し、前記航走体の前記騒音推定条件に基づいて数値流体力学(CFD)計算を行ない、前記数値流体力学(CFD)計算の過程で前記航走体に関する試験結果を抽出して前記数値流体力学(CFD)計算へ反映して補正を行い、前記航走体による水中音圧としての変動圧を前記数値流体力学(CFD)計算と前記試験結果を併用して求めることを特徴とする航走体の水中騒音推定方法。
- 前記航走体は船舶であり、
前記船舶の前記騒音推定条件として形状及び運航条件を入力する条件入力ステップと、前記条件入力ステップで入力された各条件に基づいて前記数値流体力学(CFD)計算を行なうCFD計算ステップと、前記船舶に関する前記試験結果としてプロペラ性能、船尾伴流、機関特性、又はキャビテーション数の少なくとも一つを前記CFD計算ステップの途中段階で抽出する試験結果抽出ステップと、前記CFD計算ステップの計算結果を前記試験結果抽出ステップで得た前記試験結果に基づいて補正する補正ステップと、前記補正ステップの補正結果に基づいて前記変動圧として船尾変動圧を計算する船尾変動圧計算ステップとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の航走体の水中騒音推定方法。 - 前記プロペラ性能は、プロペラ水槽試験により求めたプロペラ単独性能であることを特徴とする請求項2に記載の航走体の水中騒音推定方法。
- 前記船尾伴流は、船尾伴流水槽試験及び/又は船尾伴流実船試験により求めた船尾伴流であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の航走体の水中騒音推定方法。
- 前記機関特性は、機関出力試験及び/又はスラストトルク計測により求めた機関出力及び/又はスラストトルクであることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の航走体の水中騒音推定方法。
- 前記キャビテーション数は、キャビテーション水槽試験及び/又は模型あるいは実船試験を通じた運航状態の推定により求めたキャビテーション数であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の航走体の水中騒音推定方法。
- 前記試験結果を求めるに当たっては、前記船舶の船体姿勢及び/又は船尾波高を考慮したことを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の航走体の水中騒音推定方法。
- 前記CFD計算ステップで、前記機関特性に基づいてスラスト係数KTを求めることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の航走体の水中騒音推定方法。
- 前記スラスト係数KTを目標値に収束させるために、前記プロペラ性能としてのプロペラ単独性能特性を基に前記前記CFD計算ステップを繰り返すことを特徴とする請求項8に記載の航走体の水中騒音推定方法。
- 前記船尾変動圧計算ステップの計算結果に周波数解析を含む後処理を行い、音圧レベルを計算する音圧レベル計算ステップをさらに備えたことを特徴とする請求項2から請求項9のいずれか1項に記載の航走体の水中騒音推定方法。
- 前記音圧レベル計算ステップで得られた音圧レベルを、尺度影響を考慮して修正を行う尺度影響修正ステップをさらに備えたことを特徴とする請求項10に記載の航走体の水中騒音推定方法。
- 前記船尾変動圧計算ステップで前記船尾変動圧を求めるに当たり、前記プロペラの直上の前記船尾変動圧が最も大きい位置で求めることを特徴とする請求項2から請求項11のいずれか1項に記載の航走体の水中騒音推定方法。
- 請求項2から請求項12のいずれか1項に記載の航走体の水中騒音推定方法の各ステップをコンピュータに実行させるための水中騒音推定プログラム。
- 請求項13に記載の水中騒音推定プログラムを利用した水中騒音推定装置であって、前記船舶の騒音推定条件を入力する条件入力手段と、前記コンピュータと、前記船尾変動圧の計算結果を出力する出力手段とを備えたことを特徴とする水中騒音推定装置。
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