JP2019007961A - 低酸素領域可視化試薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】発光性能に優れた低酸素領域可視化試薬を提供する。【解決手段】下記式(I)で表される錯体を含む低酸素領域可視化試薬。ここで、環R1は単環又は多環式の含窒素芳香族環を示し、環R2は単環又は多環式の含硫黄芳香族環を示し、環R1及び環R2のいずれか一方又は両方が重水素を含み、L1はβ−ジケトネート構造を有する二座配位子を示す。[化1]【選択図】なし
Description
本発明は、イリジウム(III)錯体を含む低酸素領域可視化試薬に関する。
生体組織や細胞内の酸素濃度を非侵襲的にリアルタイムで検出する方法の開発は、細胞生物学や医療の分野において重要な課題となっている。
このような酸素濃度を定量するための方法として、btp(2−(2’−ベンゾチエニル)−ピリジナート−N,C3’)等のシクロメタル化配位子を有するイリジウム(III)錯体を用いる方法が提案されている(例えば特許文献1〜5)。このイリジウム(III)錯体は、酸素濃度が低いときほど強いりん光を発生する性質を有する。
このような酸素濃度を定量するための方法として、btp(2−(2’−ベンゾチエニル)−ピリジナート−N,C3’)等のシクロメタル化配位子を有するイリジウム(III)錯体を用いる方法が提案されている(例えば特許文献1〜5)。このイリジウム(III)錯体は、酸素濃度が低いときほど強いりん光を発生する性質を有する。
イリジウム(III)錯体の配位子を変化させると、発光色や発光寿命、量子収率が変化する。例えばIr(ppy)2(acac)とIr(fppy)2(pic)とIr(bоn)2(acac)とでは発光色が異なる。また、Ir(btp)2(acac)とIr(α−bsn)2(acac)とは、それぞれ赤色付近に発光を示すが発光寿命や量子収率が異なる。
非特許文献1〜3では、有機EL素子に使用されるイリジウム系錯体の配位子上の水素を重水素に置換することで、発光材料の分解劣化等を抑制し、有機EL素子の耐久性向上(長寿命化)を図ることが検討されている。
非特許文献4,5には、イリジウム系錯体の配位子として、フェナントロリン骨格を有する構造が記載されている。
非特許文献1〜3では、有機EL素子に使用されるイリジウム系錯体の配位子上の水素を重水素に置換することで、発光材料の分解劣化等を抑制し、有機EL素子の耐久性向上(長寿命化)を図ることが検討されている。
非特許文献4,5には、イリジウム系錯体の配位子として、フェナントロリン骨格を有する構造が記載されている。
Y.Kawanishi et al.,Chem.Phys.Lett.,2010,491,199−202
Y.Kawanishi et al.,Kobunshi Ronbunshu,2011,68,664.Y.Kawanihsi et al.,Organic Square,2011,2
S.Lamansky,P.Djurovich,D.Murphy,F.Abdel−Razzaq,H.E.Lee,C.Adachi,P.E.Burrows,S.R.Forrest,M.E.Thompson,:J.Am.Chem.Soc,123,4304−4312(2001)
T.Yoshihara et al.,Journal of Photochemistry and Photobiology A:Chemistry.,2015,299,172―182
N.Hasebe et al.,Journal of Photochemistry and Photobiology A:Chemistry .,2016,324,134―144
特許文献1〜5に記載の錯体は、りん光強度、りん光寿命等の発光性能が必ずしも充分ではなく、生体組織や細胞内の酸素濃度を高感度に検出することが難しい。
なお、非特許文献1〜3では、イリジウム系発光錯体を酸素濃度の測定や酸素濃度が低い領域を可視化するための試薬として用いることについては検討されていない。
なお、非特許文献1〜3では、イリジウム系発光錯体を酸素濃度の測定や酸素濃度が低い領域を可視化するための試薬として用いることについては検討されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、発光性能に優れた低酸素領域可視化試薬を提供することを目的とする。
既存の低酸素領域可視化試薬の発光強度又は発光寿命を向上させるために、シクロメタル化配位子の構造を変化させることが考えられる。しかし、シクロメタル化配位子の構造を変化させるための分子設計は手間がかかる。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、イリジウム(III)錯体のシクロメタル化配位子の水素原子を、天然存在比よりも高濃度の重水素に置き換えるだけで、骨格は変えずに発光性能を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、イリジウム(III)錯体のシクロメタル化配位子の水素原子を、天然存在比よりも高濃度の重水素に置き換えるだけで、骨格は変えずに発光性能を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕下記式(I)で表される錯体を含む低酸素領域可視化試薬。
ここで、環R1は単環又は多環式の含窒素芳香族環を示し、環R2は単環又は多環式の含硫黄芳香族環を示し、環R1及び環R2のいずれか一方又は両方が重水素を含み、L1はβ−ジケトネート構造を有する二座配位子を示す。
〔2〕前記式(I)中の環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合が天然存在比よりも高値である、〔1〕の低酸素領域可視化試薬。
〔3〕前記式(I)中の環R1の重水素化率が50原子%以上である、〔1〕又は〔2〕の低酸素領域可視化試薬。
〔4〕溶媒をさらに含む、〔1〕〜〔3〕のいずれかの低酸素領域可視化試薬。
〔5〕下記式(II)で表される錯体を含む低酸素領域可視化試薬。
式(II)中、環R1は単環又は多環式の含窒素芳香族環を示し、環R2は単環又は多環式の含硫黄芳香族環を示し、環R1及び環R2のいずれか一方又は両方が重水素を含み、L2はフェナントロリン骨格を有する二座配位子を示す。
〔6〕前記式(II)中の環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合が天然存在比よりも高値である、〔5〕の低酸素領域可視化試薬。
〔7〕前記式(II)中の環R1の重水素化率が50%以上である、〔5〕又は〔6〕の低酸素領域可視化試薬。
〔8〕溶媒をさらに含む、〔5〕〜〔7〕のいずれかの低酸素領域可視化試薬。
〔1〕下記式(I)で表される錯体を含む低酸素領域可視化試薬。
〔2〕前記式(I)中の環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合が天然存在比よりも高値である、〔1〕の低酸素領域可視化試薬。
〔3〕前記式(I)中の環R1の重水素化率が50原子%以上である、〔1〕又は〔2〕の低酸素領域可視化試薬。
〔4〕溶媒をさらに含む、〔1〕〜〔3〕のいずれかの低酸素領域可視化試薬。
〔5〕下記式(II)で表される錯体を含む低酸素領域可視化試薬。
〔6〕前記式(II)中の環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合が天然存在比よりも高値である、〔5〕の低酸素領域可視化試薬。
〔7〕前記式(II)中の環R1の重水素化率が50%以上である、〔5〕又は〔6〕の低酸素領域可視化試薬。
〔8〕溶媒をさらに含む、〔5〕〜〔7〕のいずれかの低酸素領域可視化試薬。
本発明によれば、発光性能に優れた低酸素領域可視化試薬を提供できる。
(第一の態様の低酸素領域可視化試薬)
本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬は、下記式(I)で表される錯体(以下、「錯体(I)」ともいう。)を含む。本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬に含まれる錯体(I)は1種でも2種以上でもよい。
本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬は、下記式(I)で表される錯体(以下、「錯体(I)」ともいう。)を含む。本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬に含まれる錯体(I)は1種でも2種以上でもよい。
ここで、環R1は単環又は多環式の含窒素芳香族環を示し、環R2は単環又は多環式の含硫黄芳香族環を示し、環R1及び環R2のいずれか一方又は両方が重水素を含み、L1はβ−ジケトネート構造を有する二座配位子を示す。
重水素を含むとは、芳香環(R1の含窒素芳香族環又はR2の含硫黄芳香族環)の環骨格を構成する炭素原子に重水素が結合していることを示す。
重水素を含むとは、芳香環(R1の含窒素芳香族環又はR2の含硫黄芳香族環)の環骨格を構成する炭素原子に重水素が結合していることを示す。
環R1としては、例えば、下記式(1−1)、(1−2)、(1−3)又は(1−4)で表される構造の含窒素芳香族環が挙げられる。
ここで、X1は水素又は重水素を示す。
各構造中の複数のX1は同一でもよく異なってもよい。環骨格を構成する炭素原子のうち、Nの隣の炭素原子から伸びる結合手はR2に結合している。NはIrに配位している。
各構造中の複数のX1は同一でもよく異なってもよい。環骨格を構成する炭素原子のうち、Nの隣の炭素原子から伸びる結合手はR2に結合している。NはIrに配位している。
環R1としては、環R2との組み合わせにおいて発光が近赤外に近づき、生体内での透過性がよい点で、多環式の含窒素芳香族環が好ましく、前記式(1−2)、(1−3)又は(1−4)で表される構造の含窒素芳香族環がより好ましい。
環R2としては、例えば、以下の式(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表される構造の含硫黄芳香族環が挙げられる。
ここで、X2は水素又は重水素を示す。
各構造中の複数のX2は同一でもよく異なってもよい。環骨格を構成する炭素原子のうち、Sの隣の炭素原子から伸びる結合手はR2に結合し、この炭素原子の隣の炭素原子はIrに配位している。
各構造中の複数のX2は同一でもよく異なってもよい。環骨格を構成する炭素原子のうち、Sの隣の炭素原子から伸びる結合手はR2に結合し、この炭素原子の隣の炭素原子はIrに配位している。
環R1及び環R2で構成される配位子は、シクロメタル化配位子であり、錯体(I)の発光性能に寄与する。
環R1及び環R2のいずれか一方又は両方が重水素を含むことで、環R1及び環R2が重水素を含まない場合に比べて、錯体のりん光強度、りん光寿命等の発光性能が優れる。
重水素を含むのは、環R1及び環R2のいずれか一方のみでもよく両方でもよい。発光性能の向上効果に優れる点から、少なくとも環R1が重水素を含むことが好ましい。
環R1及び環R2のいずれか一方又は両方が重水素を含むことで、環R1及び環R2が重水素を含まない場合に比べて、錯体のりん光強度、りん光寿命等の発光性能が優れる。
重水素を含むのは、環R1及び環R2のいずれか一方のみでもよく両方でもよい。発光性能の向上効果に優れる点から、少なくとも環R1が重水素を含むことが好ましい。
環R1の重水素化率は、天然存在比よりも高値であればよく、50原子%以上が好ましく、70原子%以上がより好ましく、90原子%以上がさらに好ましく、97原子%以上が特に好ましい。環R1の重水素化率が前記下限値以上であれば、より優れた発光性能が得られる。例えば環R2が重水素を含まない場合でも、環R1及び環R2全体での重水素化率が97原子%以上である場合と同等の発光性能が得られる。
環R1が重水素を含まない場合、環R2の重水素化率は、70原子%以上が好ましく、90原子%以上がより好ましく、97原子%以上が特に好ましい。
環R1が重水素を含む場合、環R2が重水素を含まなくても優れた発光性能が得られるため、環R2の重水素化率は0原子%であってもよい。環R2の重水素化率が0原子%であれば、原料費、製造工程数等を削減し、低酸素領域可視化試薬の低価格化が可能である。
環R1が重水素を含む場合、環R2が重水素を含まなくても優れた発光性能が得られるため、環R2の重水素化率は0原子%であってもよい。環R2の重水素化率が0原子%であれば、原料費、製造工程数等を削減し、低酸素領域可視化試薬の低価格化が可能である。
重水素化率とは、環R1及び環R2のうち、重水素を含む原料を用いた環、つまり重水素を含む環(環R1及び環R2のいずれか一方でもよく両方でもよい。)についての、重水素及び水素の合計に対する重水素の割合(原子%)を示す。例えば、環R1が前記式(1−1)、(1−2)、(1−3)又は(1−4)で表される構造であり、環R1に対応する材料として重水素を含む原料を用いた場合、重水素化率は、X1の総数のうち、重水素であるX1の数の割合を示す。環R1が前記式(1−1)、(1−2)、(1−3)又は(1−4)で表される構造であり、環R2が前記式(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表される構造であり、環R1及び環R2の両方に対応する原料として重水素を含む原料を用いた場合、重水素化率は、X1とX2の総数のうち重水素であるものの数の割合を示す。重水素化率は、1H−核磁気共鳴法(NMR)により測定できる。
環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合は、天然存在比よりも高値であればよく、10原子%以上が好ましく、30原子%以上がより好ましく、90原子%以上が特に好ましい。環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合が前記下限値以上であれば、より優れた発光性能が得られる。
L1は、β−ジケトネート構造を有する二座配位子を示す。L1は発光性能には影響しないが、L1を有することで、生体親和性が高まり、錯体(I)が生体組織や細胞内に取り込まれやすくなる。
L1としては、例えば下記式(L−1)で表される構造の二座配位子が挙げられる。この場合、錯体(I)は、下記式(I−1)で表される。
L1としては、例えば下記式(L−1)で表される構造の二座配位子が挙げられる。この場合、錯体(I)は、下記式(I−1)で表される。
ここで、R3は、置換又は無置換のアルキル基を示す。
構造中の2つの酸素原子はそれぞれIrに配位している。
構造中の2つの酸素原子はそれぞれIrに配位している。
R3のアルキル基としては、例えば炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。
アルキル基が置換基を有する場合、置換基としては、例えばハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、置換又は無置換のアミノ基、置換又は無置換のアミド基、置換又は無置換のアシル基、アミノ酸残基、ペプチド残基等が挙げられる。
アルキル基が置換基を有する場合、置換基としては、例えばハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、置換又は無置換のアミノ基、置換又は無置換のアミド基、置換又は無置換のアシル基、アミノ酸残基、ペプチド残基等が挙げられる。
式(L−1)で表される構造の例として、下記式(L−11)、(L−12)、(L−13)、(L−14)又は(L−15)で表される構造が挙げられる。これらはそれぞれ、前記式(L−1)において、R3が−CH2CH2COCH2NH(CH2)mCH2NR4R5、−CH2CH2CONHCH2CH2N(CH3)2、−CH2CH2COOH、−(CH2)nCOR6、又は−CH3である構造である。
ここで、mは1〜5の整数を示し、R4は水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R5は水素又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、nは1〜5の整数を示し、R6はアミノ酸残基又はペプチド残基を示す。
前記式(L−11)中、mは1〜3の整数が好ましく、2が特に好ましい。
R4のハロゲンとしては、Cl、Br又はFが好ましい。
アミノ基は、−NH2でもよいし、アルキルアミノ基でもよい。
炭素数1〜20の炭化水素基は、直鎖でもよいし分岐鎖でもよいし環状でもよい。また、飽和でもよく不飽和結合を含んでいてもよい。1以上の水素原子がハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の置換基で置換されていてもよい。炭素数は好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5であり、さらに好ましくは1〜3である。
R5の炭素数1〜6の炭化水素基は、直鎖でもよいし分岐鎖でもよいし環状でもよい。
また、飽和でもよく不飽和結合を含んでいてもよい。1以上の水素原子がハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の置換基で置換されていてもよい。炭素数は好ましくは1〜3である。
前記式(L−11)においては、R4及びR5がいずれもメチル基であり、nが2であることが好ましい。
R4のハロゲンとしては、Cl、Br又はFが好ましい。
アミノ基は、−NH2でもよいし、アルキルアミノ基でもよい。
炭素数1〜20の炭化水素基は、直鎖でもよいし分岐鎖でもよいし環状でもよい。また、飽和でもよく不飽和結合を含んでいてもよい。1以上の水素原子がハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の置換基で置換されていてもよい。炭素数は好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5であり、さらに好ましくは1〜3である。
R5の炭素数1〜6の炭化水素基は、直鎖でもよいし分岐鎖でもよいし環状でもよい。
また、飽和でもよく不飽和結合を含んでいてもよい。1以上の水素原子がハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の置換基で置換されていてもよい。炭素数は好ましくは1〜3である。
前記式(L−11)においては、R4及びR5がいずれもメチル基であり、nが2であることが好ましい。
前記式(L−14)中、nは1〜3の整数が好ましく、2が特に好ましい。
「アミノ酸残基及びペプチド残基」とは、アミノ酸またはペプチドがそのアミノ基を介してアミド結合したときの残基をいう。
R6としては、側鎖に水酸基、カルボキシ基又はアミノ基を有するアミノ酸の残基又は該アミノ酸からなるペプチドの残基であることが好ましい。 側鎖に水酸基を有するアミノ酸としては、チロシン、セリン、スレオニン等が挙げられ、チロシンがより好ましい。
側鎖にカルボキシ基を有するアミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。側鎖にアミノ基を有するアミノ酸としては、リシン、アルギニン等が挙げられる。なお、アミノ酸はL体でもD体でもよく、非天然のアミノ酸でもよい。
ペプチド残基としては、上記アミノ酸の1種又は複数種からなるペプチド残基が挙げられ、その長さは好ましくは2〜10、より好ましくは2〜5である。
R6としては、アスパラギン酸残基である−NH−CH(COOH)2、又はアスパラギン酸ジペプチド残基である−NH−CH(COOH)−CO−NH−CH(COOH)2が好ましい。
「アミノ酸残基及びペプチド残基」とは、アミノ酸またはペプチドがそのアミノ基を介してアミド結合したときの残基をいう。
R6としては、側鎖に水酸基、カルボキシ基又はアミノ基を有するアミノ酸の残基又は該アミノ酸からなるペプチドの残基であることが好ましい。 側鎖に水酸基を有するアミノ酸としては、チロシン、セリン、スレオニン等が挙げられ、チロシンがより好ましい。
側鎖にカルボキシ基を有するアミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。側鎖にアミノ基を有するアミノ酸としては、リシン、アルギニン等が挙げられる。なお、アミノ酸はL体でもD体でもよく、非天然のアミノ酸でもよい。
ペプチド残基としては、上記アミノ酸の1種又は複数種からなるペプチド残基が挙げられ、その長さは好ましくは2〜10、より好ましくは2〜5である。
R6としては、アスパラギン酸残基である−NH−CH(COOH)2、又はアスパラギン酸ジペプチド残基である−NH−CH(COOH)−CO−NH−CH(COOH)2が好ましい。
式(L−1)で表される構造としては、上記の中でも、生体親和性の点で、前記式(L−11)、(L−12)、(L−13)又は(L−14)で表される構造が好ましい。これらの構造は、式(L−15)で表される構造(アセチルアセトナート(acac))に官能基が導入された構造である。官能基が導入されていることで、生体親和性がより優れる。
錯体(I)としては、下記式(Ia)、(Ib)、(Ic)又は(Id)で表される構造の錯体が好ましい。
ここで、X1及びX2はそれぞれ独立に水素又は重水素を示し、構造中の複数のX1及び複数のX2の一部又は全部は重水素であり、L11〜L14はそれぞれ前記式(L−11)、(L−12)、(L−13)、(L−14)又は(L−15)で表される構造の二座配位子を示す。
各構造の好ましい重水素化率は前記と同様である。
各構造において、複数のX1の一部又は全部が重水素であることが好ましく、複数のX1の全てが重水素であることが特に好ましい。
L11〜L14は、前記式(L−11)、(L−12)、(L−13)又は(L−14)で表される構造の二座配位子であることが好ましい。
各構造において、複数のX1の一部又は全部が重水素であることが好ましく、複数のX1の全てが重水素であることが特に好ましい。
L11〜L14は、前記式(L−11)、(L−12)、(L−13)又は(L−14)で表される構造の二座配位子であることが好ましい。
錯体(I)は、環R1及び環R2のいずれか一方又は両方に対応する原料として重水素を含む原料(例えば重水素化ピリジン、重水素化ベンゾ[b]チオフェン等)を用いる以外は、公知の製造方法に従って合成できる。例えば後述の実施例に記載の方法に従って合成できる。重水素を含む原料は、市販品を用いてもよく、公知の方法により重水素化したものを用いてもよい。
本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬は、溶媒をさらに含んでもよい。溶媒を含むと、低酸素領域可視化試薬をそのまま細胞や組織に添加して酸素濃度測定を実施できる。
溶媒としては、錯体(I)を溶解可能であればよく、例えばテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒、水、これらの混合溶媒等のなかから適宜選択できる。細胞へ添加するときの溶媒としては、ジメチルスルホキシドと水の混合溶媒が好ましい。
溶媒としては、錯体(I)を溶解可能であればよく、例えばテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒、水、これらの混合溶媒等のなかから適宜選択できる。細胞へ添加するときの溶媒としては、ジメチルスルホキシドと水の混合溶媒が好ましい。
本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬が、錯体(I)と溶媒とを含む液状組成物である場合、低酸素領域可視化試薬中の錯体(I)の濃度は、錯体(I)の種類にもよるが、5〜500μMが好ましく、25〜75μMが特に好ましい。
本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬は、必要に応じて、錯体(I)及び溶媒以外の他の成分をさらに含んでもよい。
本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬は、低酸素領域の可視化に用いられる。特に生体組織や細胞内の低酸素領域の可視化に有用である。
錯体(I)は、生体組織や細胞が存在する環境下においたときに、生体組織や細胞の生体膜に集積する。また、錯体(I)の周囲の酸素濃度が低いときに、より強いりん光を発する。そのため、りん光の強度に基づいて低酸素領域を可視化でき、酸素濃度を測定することも可能である。すなわち、りん光が強い領域が、相対的に酸素濃度の低い低酸素領域であるというような判定ができる。また、あらかじめ酸素濃度とりん光強度との関係を求めておくことにより、酸素濃度を定量的に測定することもできる。
測定対象としての生体組織や細胞の種類は特に制限されず、例えば株化培養細胞、初代培養細胞等が挙げられる。
また、本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬をマウス、ラット等の実験動物やヒトに投与し、酸素濃度が低下している部位の検出等を行うこともできる。癌組織では酸素供給が不足しているので、酸素濃度が低下している部位の検出を行うことにより、癌組織を特異的に染色し、癌の診断薬として使用することもできる。
りん光は画像化できるため、本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬は、細胞内酸素濃度の画像化試薬、癌等の低酸素細胞の画像化試薬等としても使用できる。
錯体(I)は、生体組織や細胞が存在する環境下においたときに、生体組織や細胞の生体膜に集積する。また、錯体(I)の周囲の酸素濃度が低いときに、より強いりん光を発する。そのため、りん光の強度に基づいて低酸素領域を可視化でき、酸素濃度を測定することも可能である。すなわち、りん光が強い領域が、相対的に酸素濃度の低い低酸素領域であるというような判定ができる。また、あらかじめ酸素濃度とりん光強度との関係を求めておくことにより、酸素濃度を定量的に測定することもできる。
測定対象としての生体組織や細胞の種類は特に制限されず、例えば株化培養細胞、初代培養細胞等が挙げられる。
また、本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬をマウス、ラット等の実験動物やヒトに投与し、酸素濃度が低下している部位の検出等を行うこともできる。癌組織では酸素供給が不足しているので、酸素濃度が低下している部位の検出を行うことにより、癌組織を特異的に染色し、癌の診断薬として使用することもできる。
りん光は画像化できるため、本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬は、細胞内酸素濃度の画像化試薬、癌等の低酸素細胞の画像化試薬等としても使用できる。
本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬を用いた低酸素領域の検出は、例えば以下の手順で実施できる。
低酸素領域可視化試薬を検体(生体組織又は細胞)に添加してインキュベートし、その後、検体に取り込まれた錯体(I)を励起してりん光を観察する。
錯体(I)の励起は、検体に可視光を照射することにより行うことができる。
りん光の観察は、例えば蛍光顕微鏡、蛍光測定装置、蛍光イメージング装置等の公知の装置を用いて行うことができる。
低酸素領域可視化試薬を検体(生体組織又は細胞)に添加してインキュベートし、その後、検体に取り込まれた錯体(I)を励起してりん光を観察する。
錯体(I)の励起は、検体に可視光を照射することにより行うことができる。
りん光の観察は、例えば蛍光顕微鏡、蛍光測定装置、蛍光イメージング装置等の公知の装置を用いて行うことができる。
本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬にあっては、錯体(I)を含むため、発光性能に優れる。例えば、環R1及び環R2のいずれも重水素を含まない錯体に比べて、りん光量子収率が高く、りん光寿命が長く、無放射速度定数に対する放射速度定数の比率が高い。そのため、本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬を用いることで、生体組織や細胞内の低酸素領域を非侵襲的にリアルタイムで可視化できる。高感度での定量も可能である。
従来、発光性能を向上させる手法としては、配位子の構造自体を変化させる手法が一般的であるが、分子設計に手間がかかる。本発明にあっては、既存の配位子の骨格を変えることなく、水素原子を天然存在比よりも高濃度の重水素に置き換えるだけで、発光性能を向上させることができる。
従来、発光性能を向上させる手法としては、配位子の構造自体を変化させる手法が一般的であるが、分子設計に手間がかかる。本発明にあっては、既存の配位子の骨格を変えることなく、水素原子を天然存在比よりも高濃度の重水素に置き換えるだけで、発光性能を向上させることができる。
(第二の態様の低酸素領域可視化試薬)
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬は、下記式(II)で表される錯体(以下、「錯体(II)」ともいう。)を含む。本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬に含まれる錯体(II)は1種でも2種以上でもよい。
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬は、下記式(II)で表される錯体(以下、「錯体(II)」ともいう。)を含む。本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬に含まれる錯体(II)は1種でも2種以上でもよい。
本発明の第二の態様における錯体(II)は、L1がL2である点以外は、第一の態様における錯体(I)と同様である。すなわち、錯体(II)における環R1及び環R2は、錯体(I)における環R1及び環R2と同様であり、錯体(II)の発光性能に寄与する。錯体(II)における環R1及び環R2の好ましい態様は、錯体(I)における環R1及び環R2と同様である。
L2は、フェナントロリン骨格を有する二座配位子を示す。L2は発光性能には影響しないが、L2を有することで、L1を有する場合よりさらに生体親和性がさらに高まり、錯体(II)が生体組織や細胞内にさらに取り込まれやすくなる。
L2としては、例えば下記式(L−2)で表される構造の二座配位子が挙げられる。この場合、錯体(II)は、下記式(II−1)で表される。
L2としては、例えば下記式(L−2)で表される構造の二座配位子が挙げられる。この場合、錯体(II)は、下記式(II−1)で表される。
ここで、R7は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する置換基を示し、X3は水素を示す。
フェナントロリン骨格を構成する2つの窒素原子(N)は、それぞれIrに配位している。
フェナントロリン骨格を構成する2つの窒素原子(N)は、それぞれIrに配位している。
R7の具体例としては、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、シアノ基、アセチル基、カルボキシル基、ピペリジル基、ピペラジル基が挙げられる。
錯体(II)としては、下記式(IIa)、(IIb)、(IIc)又は(IId)で表される構造の錯体が好ましい。
ここで、X1及びX2はそれぞれ独立に水素又は重水素を示し、構造中の複数のX1及び複数のX2の一部又は全部は重水素であり、L2は前記式(L−2)で表される構造の二座配位子を示す。
錯体(II)における環R1及び環R2のそれぞれの重水素化率は、錯体(I)における環R1及び環R2のそれぞれの重水素化率と同様であり、その好ましい態様も同様である。
錯体(II)における環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合は、錯体(I)における環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合と同様であり、その好ましい態様も同様である。
錯体(II)における環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合は、錯体(I)における環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合と同様であり、その好ましい態様も同様である。
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬は、溶媒をさらに含んでもよい。溶媒を含むと、低酸素領域可視化試薬をそのまま細胞や組織に添加して酸素濃度測定を実施できる。溶媒は、第一の態様で挙げたものと同様であり、好ましい態様も同様である。
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬が、錯体(II)と溶媒とを含む液状組成物である場合、低酸素領域可視化試薬中の錯体(II)の濃度は、第一の態様における錯体(I)の濃度と同様であり、好ましい態様も同様である。
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬は、必要に応じて、錯体(II)及び溶媒以外の他の成分をさらに含んでもよい。
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬は、低酸素領域の可視化に用いられる。特に生体組織や細胞内の低酸素領域の可視化に有用である。
錯体(II)は、生体組織や細胞が存在する環境下においたときに、生体組織や細胞の生体膜に集積する。また、錯体(II)の周囲の酸素濃度が低いときに、より強いりん光を発する。そのため、りん光の強度に基づいて低酸素領域を可視化でき、酸素濃度を測定することも可能である。すなわち、りん光が強い領域が、相対的に酸素濃度の低い低酸素領域であるというような判定ができる。また、あらかじめ酸素濃度とりん光強度との関係を求めておくことにより、酸素濃度を定量的に測定することもできる。
測定対象としての生体組織や細胞の種類は特に制限されず、例えば株化培養細胞、初代培養細胞等が挙げられる。
また、本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬をマウス、ラット等の実験動物やヒトに投与し、酸素濃度が低下している部位の検出等を行うこともできる。本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬を用いる場合でも、酸素濃度が低下している部位の検出を行うことにより、癌組織を特異的に染色し、癌の診断薬として使用できる。
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬も、第一の態様と同様に、細胞内酸素濃度の画像化試薬、癌等の低酸素細胞の画像化試薬等としても使用できる。
錯体(II)は、生体組織や細胞が存在する環境下においたときに、生体組織や細胞の生体膜に集積する。また、錯体(II)の周囲の酸素濃度が低いときに、より強いりん光を発する。そのため、りん光の強度に基づいて低酸素領域を可視化でき、酸素濃度を測定することも可能である。すなわち、りん光が強い領域が、相対的に酸素濃度の低い低酸素領域であるというような判定ができる。また、あらかじめ酸素濃度とりん光強度との関係を求めておくことにより、酸素濃度を定量的に測定することもできる。
測定対象としての生体組織や細胞の種類は特に制限されず、例えば株化培養細胞、初代培養細胞等が挙げられる。
また、本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬をマウス、ラット等の実験動物やヒトに投与し、酸素濃度が低下している部位の検出等を行うこともできる。本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬を用いる場合でも、酸素濃度が低下している部位の検出を行うことにより、癌組織を特異的に染色し、癌の診断薬として使用できる。
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬も、第一の態様と同様に、細胞内酸素濃度の画像化試薬、癌等の低酸素細胞の画像化試薬等としても使用できる。
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬を用いた低酸素領域の検出の手順は、第一の態様で説明した低酸素領域の検出の手順と同様である。錯体(II)の励起は、検体に可視光を照射することにより行うことができ、りん光の観察は、第一の態様で挙げた装置と同様の装置を用いて行うことができる。
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬にあっては、上述の本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬と同様の効果を奏するほか、さらに下記の効果を奏する。
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬は錯体(II)を含むため、例えば、L2を有さない錯体を含む低酸素領域可視化試薬に比べて、細胞内に取り込まれる際の効率がさらに向上し、かつ、生体親和性がさらに向上する。
本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬は錯体(II)を含むため、例えば、L2を有さない錯体を含む低酸素領域可視化試薬に比べて、細胞内に取り込まれる際の効率がさらに向上し、かつ、生体親和性がさらに向上する。
<実施例>
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本実施例で用いた測定方法を以下に示す。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本実施例で用いた測定方法を以下に示す。
<重水素化率>
重水素化率は、1H−NMRにより測定した。
重水素化率は、1H−NMRにより測定した。
<りん光量子収率>
りん光量子収率は、積分球型絶対発光量子収率測定装置を用いて測定した。
りん光量子収率は、積分球型絶対発光量子収率測定装置を用いて測定した。
<りん光寿命>
りん光寿命は、時間相関単一光子計数法を用いたりん光寿命計を用いて測定した。
りん光寿命は、時間相関単一光子計数法を用いたりん光寿命計を用いて測定した。
<放射速度定数、無放射速度定数>
放射速度定数(kp)、無放射速度定数(knr)は、りん光量子収率(Φp)、りん光寿命(τp)を用いて公式であるkp=Φp/τp、knr=1−Φp/τpにより算出した。
放射速度定数(kp)、無放射速度定数(knr)は、りん光量子収率(Φp)、りん光寿命(τp)を用いて公式であるkp=Φp/τp、knr=1−Φp/τpにより算出した。
<実験1>
実験1では、各種の錯体を合成し、溶液中での発光性能を評価した。
以下の合成例において、Ir(btp)2(acac)、Ir(btq)2(SA)、Ir(btq)2(acac)、Ir(btph)2(acac)それぞれのシクロメタル化配位子(btp、btq、btph)の水素原子の一部又は全部が重水素化されたイリジウム(III)錯体を合成した。合成方法は特許第5392746号公報、特許第5353509号公報、特開2015−101567号公報を参照した。
なお、各略称は以下の意味である。
btp:[2−(2’−ベンゾチエニル)−ピリジナート−N,C3’ ]。
btq:[2−(2’−ベンゾチエニル)−キノリナート−N,C3’]。
btph:[9−(2’−ベンゾチエニル)−フェナンスリナート−N,C3’]。
acac:アセチルアセトナート。
SA:サクシニルアセトネート(前記式(L−1)においてR3が−CH2CH2COOHである二座配位子)。
phenpipe:5−piperazinyl−1,10−phenanthroline。
以下において、配位子の略号の後のdに付された数値は、その配位子が有する重水素の数を示す。
実験1では、各種の錯体を合成し、溶液中での発光性能を評価した。
以下の合成例において、Ir(btp)2(acac)、Ir(btq)2(SA)、Ir(btq)2(acac)、Ir(btph)2(acac)それぞれのシクロメタル化配位子(btp、btq、btph)の水素原子の一部又は全部が重水素化されたイリジウム(III)錯体を合成した。合成方法は特許第5392746号公報、特許第5353509号公報、特開2015−101567号公報を参照した。
なお、各略称は以下の意味である。
btp:[2−(2’−ベンゾチエニル)−ピリジナート−N,C3’ ]。
btq:[2−(2’−ベンゾチエニル)−キノリナート−N,C3’]。
btph:[9−(2’−ベンゾチエニル)−フェナンスリナート−N,C3’]。
acac:アセチルアセトナート。
SA:サクシニルアセトネート(前記式(L−1)においてR3が−CH2CH2COOHである二座配位子)。
phenpipe:5−piperazinyl−1,10−phenanthroline。
以下において、配位子の略号の後のdに付された数値は、その配位子が有する重水素の数を示す。
「合成例1:Ir(btp−d8)2(acac)の合成)」
重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(ISOTEC社製)と、重水素化2−ブロモピリジン(ISOTEC社製)を、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(pph3)4)、2M炭酸ナトリウム水溶液、ベンゼン、エタノールに溶解させ、窒素雰囲気下で12時間加熱還流した。生成した重水素化ベンゾチエニルピリジンをクロロホルムで抽出し、減圧乾固後、シリカクロマトグラフィーで精製した。
精製した重水素化ベンゾチエニルピリジンに、イリジウム三水和物、2−エトキシエタノール、水を加え、12時間加熱還流した後室温まで冷却し、生成した固体をろ取した。ろ物に2−メトキシエタノール、アセチルアセトン、炭酸ナトリウムを加え、3時間加熱還流をした。溶媒を減圧乾固し、シリカクロマトグラフィーで精製し、Ir(btp−d8)2(acac)を得た。MS(質量分析)で生成物の同定をした。また、錯体形成前の配位子及び錯体化後の配位子それぞれについて、1H−NMRで重水素濃縮度を測定し、重水素化率(原子%)を求めた。結果を表1に示した。錯体形成前の配位子の重水素化率を「配位子 重水素化率」、錯体形成後の配位子の重水素化率を「錯体 重水素化率」と表記した(以下同様)。
重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(ISOTEC社製)と、重水素化2−ブロモピリジン(ISOTEC社製)を、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(pph3)4)、2M炭酸ナトリウム水溶液、ベンゼン、エタノールに溶解させ、窒素雰囲気下で12時間加熱還流した。生成した重水素化ベンゾチエニルピリジンをクロロホルムで抽出し、減圧乾固後、シリカクロマトグラフィーで精製した。
精製した重水素化ベンゾチエニルピリジンに、イリジウム三水和物、2−エトキシエタノール、水を加え、12時間加熱還流した後室温まで冷却し、生成した固体をろ取した。ろ物に2−メトキシエタノール、アセチルアセトン、炭酸ナトリウムを加え、3時間加熱還流をした。溶媒を減圧乾固し、シリカクロマトグラフィーで精製し、Ir(btp−d8)2(acac)を得た。MS(質量分析)で生成物の同定をした。また、錯体形成前の配位子及び錯体化後の配位子それぞれについて、1H−NMRで重水素濃縮度を測定し、重水素化率(原子%)を求めた。結果を表1に示した。錯体形成前の配位子の重水素化率を「配位子 重水素化率」、錯体形成後の配位子の重水素化率を「錯体 重水素化率」と表記した(以下同様)。
「合成例2:Ir(btp−d4py)2(acac)の合成」
重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりにベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(TCI社製)を用いた以外は合成例1と同様の条件で(btp−d4py)2Ir(acac)を合成した。
重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりにベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(TCI社製)を用いた以外は合成例1と同様の条件で(btp−d4py)2Ir(acac)を合成した。
「合成例3:Ir(btp−d4bt)2(acac)の合成」
重水素化2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモピリジン(TCI社製)を用いた以外は合成例1と同様の条件でIr(btp−d4bt)2(acac)を合成した。
重水素化2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモピリジン(TCI社製)を用いた以外は合成例1と同様の条件でIr(btp−d4bt)2(acac)を合成した。
Ir(btp)2(acac)、合成例1〜3で得たイリジウム(III)錯体をそれぞれテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、錯体濃度20μMの溶液とし、吸収波長、りん光波長、りん光量子収率、りん光寿命を測定、放射速度定数、無放射速度定数を算出した。結果を表1に示す。表中、各イリジウム錯体の欄にはシクロメタル化配位子の構造のみを示した(以下同様)。
表1中、Ir(btp−d4py)2(acac)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R1における重水素化率である。また、Ir(btp−d4bt)2(acac)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R2における重水素化率である。
「配位子 重水素化率」と「錯体 重水素化率」との対比から、錯体化後も重水素化率が維持されたことが確認できた。
表1中、Ir(btp−d4py)2(acac)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R1における重水素化率である。また、Ir(btp−d4bt)2(acac)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R2における重水素化率である。
「配位子 重水素化率」と「錯体 重水素化率」との対比から、錯体化後も重水素化率が維持されたことが確認できた。
「合成例4:Ir(btq−d6qu)2(SA)の合成」
重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりにベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(TCI社製)を、重水素化2−ブロモピリジンの代わりに重水素化2−ブロモキノリン(ISOTEC社製)用いた以外は合成例1と同様の条件で重水素化ベンゾチエニルキノリンを得た。
この重水素化ベンゾチエニルキノリンにイリジウム三水和物、2−エトキシエタノール、水を加え15時間加熱還流した。生成した固体を2−エトキシエタノール、水で洗浄し、ろ取した。ろ物に2−メトキシエタノール、サクシニルアセトン、トリエチルアミンを加え、80℃で15時間加熱還流をした。溶媒を減圧乾固し、シリカクロマトグラフィーで精製し、Ir(btq−d6qu)2(SA)を得た。
MSで生成物の同定をし、実施例1と同様に1H−NMRで重水素濃縮度を測定し、重水素化率(原子%)を求めた。結果を表2に示した。
重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりにベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(TCI社製)を、重水素化2−ブロモピリジンの代わりに重水素化2−ブロモキノリン(ISOTEC社製)用いた以外は合成例1と同様の条件で重水素化ベンゾチエニルキノリンを得た。
この重水素化ベンゾチエニルキノリンにイリジウム三水和物、2−エトキシエタノール、水を加え15時間加熱還流した。生成した固体を2−エトキシエタノール、水で洗浄し、ろ取した。ろ物に2−メトキシエタノール、サクシニルアセトン、トリエチルアミンを加え、80℃で15時間加熱還流をした。溶媒を減圧乾固し、シリカクロマトグラフィーで精製し、Ir(btq−d6qu)2(SA)を得た。
MSで生成物の同定をし、実施例1と同様に1H−NMRで重水素濃縮度を測定し、重水素化率(原子%)を求めた。結果を表2に示した。
「合成例5:Ir(btq−d10)2(SA)の合成」
ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりに重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸を用いた以外は合成例4と同様の条件でIr(btq−d10)2(SA)を合成した。
ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりに重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸を用いた以外は合成例4と同様の条件でIr(btq−d10)2(SA)を合成した。
「合成例6:Ir(btq−d4bt)2(SA)の合成」
ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりに重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸を、重水素化2−ブロモキノリンの代わりに2−ブロモキノリン(TCI社製)を用いた以外は合成例4と同様の条件でIr(btq−d4bt)2(SA)を合成した。
ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりに重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸を、重水素化2−ブロモキノリンの代わりに2−ブロモキノリン(TCI社製)を用いた以外は合成例4と同様の条件でIr(btq−d4bt)2(SA)を合成した。
Ir(btq)2(SA)、Ir(btq−d6qu)2(SA)、Ir(btq−d10)2(SA)、Ir(btq−d4bt)2(SA)をそれぞれテトラヒドロフランに溶解し、錯体濃度20μMの溶液とし、吸収波長、りん光波長、りん光量子収率、りん光寿命を測定、放射速度定数、無放射速度定数を算出した。これらの結果を表2に示す。
表2中、Ir(btq−d6qu)2(SA)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R1における重水素化率である。また、Ir(btq−d4bt)2(SA)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R2における重水素化率である。
「配位子 重水素化率」と「錯体 重水素化率」との対比から、錯体化前後で重水素化率にほぼ変化がなく、錯体化後も重水素化率が維持されたことが確認できた。
表2中、Ir(btq−d6qu)2(SA)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R1における重水素化率である。また、Ir(btq−d4bt)2(SA)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R2における重水素化率である。
「配位子 重水素化率」と「錯体 重水素化率」との対比から、錯体化前後で重水素化率にほぼ変化がなく、錯体化後も重水素化率が維持されたことが確認できた。
「合成例7:Ir(btq−d10)2(acac)の合成」
重水素化2−ブロモピリジンの代わりに重水素化2−ブロモキノリン(ISOTEC社製)を用いた以外は合成例1と同様の条件でIr(btp−d8)2(acac)を合成した。
重水素化2−ブロモピリジンの代わりに重水素化2−ブロモキノリン(ISOTEC社製)を用いた以外は合成例1と同様の条件でIr(btp−d8)2(acac)を合成した。
「合成例8:Ir(btq−d6qu)2(acac)の合成」
重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりにベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(TCI社製)を用い、重水素化2−ブロモピリジンの代わりに重水素化2−ブロモキノリン(ISOTEC社製)を用いた以外は合成例1と同様の条件でIr(btp−d6qu)2(acac)を合成した。
重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりにベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(TCI社製)を用い、重水素化2−ブロモピリジンの代わりに重水素化2−ブロモキノリン(ISOTEC社製)を用いた以外は合成例1と同様の条件でIr(btp−d6qu)2(acac)を合成した。
「合成例9:Ir(btq−d4bt)2(acac)の合成」
重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりにベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(TCI社製)を用い、重水素化2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモキノリン(TCI社製)を用いた以外は合成例1と同様の条件でIr(btq−d4bt)2(acac)を合成した。
重水素化ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸の代わりにベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(TCI社製)を用い、重水素化2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモキノリン(TCI社製)を用いた以外は合成例1と同様の条件でIr(btq−d4bt)2(acac)を合成した。
Ir(btq)2(acac)、合成例7〜9で得たイリジウム(III)錯体をそれぞれテトラヒドロフランに溶解し、錯体濃度20μMの溶液とし、吸収波長、りん光波長、りん光量子収率、りん光寿命を測定、放射速度定数、無放射速度定数を算出した。結果を表3に示す。
表3中、Ir(btq−d6qu)2(acac)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R1における重水素化率である。またIr(btq−d4bt)2(acac)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R2における重水素化率である。
「配位子 重水素化率」と「錯体 重水素化率」との対比から、錯体化前後で重水素化率にほぼ変化がなく、錯体化後も重水素化率が維持されたことが確認できた。
表3中、Ir(btq−d6qu)2(acac)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R1における重水素化率である。またIr(btq−d4bt)2(acac)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R2における重水素化率である。
「配位子 重水素化率」と「錯体 重水素化率」との対比から、錯体化前後で重水素化率にほぼ変化がなく、錯体化後も重水素化率が維持されたことが確認できた。
「合成例10:Ir(btph−d8ph)2(acac)の合成」
フェナンスリジノン、重水、白金炭素触媒を高圧反応容器にいれ,N2+H2(3.05%)ガスを2.5MPa充填した。180℃に加熱し24時間反応させた。濃縮乾固し白色粉末を得た。合成確認と同定を薄層クロマトグラフィー(TLC)と1H−NMRで行った。
重水素化2−ブロモピリジンの代わりに上記重水素化フェナンスリジリンを用いた以外は合成例1と同様の条件でIr(btph−d8ph)2(acac)を合成した。
フェナンスリジノン、重水、白金炭素触媒を高圧反応容器にいれ,N2+H2(3.05%)ガスを2.5MPa充填した。180℃に加熱し24時間反応させた。濃縮乾固し白色粉末を得た。合成確認と同定を薄層クロマトグラフィー(TLC)と1H−NMRで行った。
重水素化2−ブロモピリジンの代わりに上記重水素化フェナンスリジリンを用いた以外は合成例1と同様の条件でIr(btph−d8ph)2(acac)を合成した。
Ir(btph)2(acac)、Ir(btph−d8ph)2(acac)をそれぞれテトラヒドロフランに溶解し、錯体濃度20μMの溶液とし、吸収波長、りん光波長、りん光量子収率、りん光寿命を測定、放射速度定数、無放射速度定数を算出した。結果を表4に示す。
表4中、Ir(btph−d8ph)2(acac)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R1における重水素化率である。
「配位子 重水素化率」と「錯体 重水素化率」との対比から、錯体化前後で重水素化率にほぼ変化がなく、錯体化後も重水素化率が維持されたことが確認できた。
表4中、Ir(btph−d8ph)2(acac)の重水素化率は、重水素化原料を用いた環R1における重水素化率である。
「配位子 重水素化率」と「錯体 重水素化率」との対比から、錯体化前後で重水素化率にほぼ変化がなく、錯体化後も重水素化率が維持されたことが確認できた。
上記結果に示すとおり、シクロメタル配位子(環R1−環R2)が重水素化されているイリジウム錯体は、シクロメタル配位子が重水素化されていない場合に比べて、発光性能に優れていた。溶液内の評価では、酸素濃度がゼロの時最大1.4倍の発光効率、発光寿命の向上が確認された。
シクロメタル配位子が全て重水素化されている場合と、環R1のみが重水素化されている場合に、重水素化による効果が大きかった。
シクロメタル配位子が全て重水素化されている場合と、環R1のみが重水素化されている場合に、重水素化による効果が大きかった。
<実験2>
実験2では、本発明の低酸素領域可視化試薬について、細胞に取り込まれたときの発光性能を評価した。具体的には、Ir(btq)2(SA)、Ir(btq−d6qu)2(SA)(合成例4)、Ir(btq−d10)2(SA)(合成例5)を用いて、以下の手順で、酸素分圧21%、2.5%中のりん光強度、及びりん光寿命の測定を実施した。
実験2では、本発明の低酸素領域可視化試薬について、細胞に取り込まれたときの発光性能を評価した。具体的には、Ir(btq)2(SA)、Ir(btq−d6qu)2(SA)(合成例4)、Ir(btq−d10)2(SA)(合成例5)を用いて、以下の手順で、酸素分圧21%、2.5%中のりん光強度、及びりん光寿命の測定を実施した。
「りん光強度の測定」
HeLa細胞をコンフルになるように96ウェルプレートに撒き2日間培養した。そこにIr(btq)2(SA)、Ir(btq−d6qu)2(SA)、Ir(btq−d10)2(SA)を5μMで添加し、その後、2時間、37℃のインキュベーターで培養した。培養条件は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(10%ウシ胎仔血清(FBS),ペニシリン(50unit/mL)−ストレプトマイシン(50μg/mL))とした。次いで、DMEM(FBS+)×2回、DMEM(FBS−)×3回の条件でウォッシングした。次いで、酸素分圧21%にて細胞中に取り込まれた各プローブのりん光強度は、マイクロプレートリーダー「Infinite 200Pro(Tecan)」を用いて測定した。
HeLa細胞をコンフルになるように96ウェルプレートに撒き2日間培養した。そこにIr(btq)2(SA)、Ir(btq−d6qu)2(SA)、Ir(btq−d10)2(SA)を5μMで添加し、その後、2時間、37℃のインキュベーターで培養した。培養条件は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(10%ウシ胎仔血清(FBS),ペニシリン(50unit/mL)−ストレプトマイシン(50μg/mL))とした。次いで、DMEM(FBS+)×2回、DMEM(FBS−)×3回の条件でウォッシングした。次いで、酸素分圧21%にて細胞中に取り込まれた各プローブのりん光強度は、マイクロプレートリーダー「Infinite 200Pro(Tecan)」を用いて測定した。
「りん光寿命の測定」
HeLa細胞をコンフルになるようにシャーレに撒き2日間培養した。そこにIr(btq)2(SA)、Ir(btq−d6qu)2(SA)、Ir(btq−d10)2(SA)を1μMで添加し、その後、1.5時間、37℃のインキュベーターで培養した。培養条件は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(10%ウシ胎仔血清(FBS),ペニシリン(50unit/mL)−ストレプトマイシン(50μg/mL))とした。次いで、DMEM(FBS+)×2回、DMEM(FBS−)×3回の条件でウォッシングした。次いで、酸素分圧21%にて細胞中に取り込まれた各プローブのりん光強度、倒立型顕微鏡像及びりん光寿命(各3回)を測定した。
りん光寿命は、パルスレーザー(波長:532nm、パルス幅:1ns、繰り返し:20kHz)でプローブ分子を励起し、得られたりん光(観測波長:670nm)を時間相関単一光子計数法に基づく装置(Quantaurus−Tau、浜松ホトニクス社製)で取得した。
続いて、酸素分圧を2.5%に落とし、同様に測定した。倒立型顕微鏡としては、IX71(OLYMPUS社製)を使用し、倍率を40倍とした。結果を表5に示す。
HeLa細胞をコンフルになるようにシャーレに撒き2日間培養した。そこにIr(btq)2(SA)、Ir(btq−d6qu)2(SA)、Ir(btq−d10)2(SA)を1μMで添加し、その後、1.5時間、37℃のインキュベーターで培養した。培養条件は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(10%ウシ胎仔血清(FBS),ペニシリン(50unit/mL)−ストレプトマイシン(50μg/mL))とした。次いで、DMEM(FBS+)×2回、DMEM(FBS−)×3回の条件でウォッシングした。次いで、酸素分圧21%にて細胞中に取り込まれた各プローブのりん光強度、倒立型顕微鏡像及びりん光寿命(各3回)を測定した。
りん光寿命は、パルスレーザー(波長:532nm、パルス幅:1ns、繰り返し:20kHz)でプローブ分子を励起し、得られたりん光(観測波長:670nm)を時間相関単一光子計数法に基づく装置(Quantaurus−Tau、浜松ホトニクス社製)で取得した。
続いて、酸素分圧を2.5%に落とし、同様に測定した。倒立型顕微鏡としては、IX71(OLYMPUS社製)を使用し、倍率を40倍とした。結果を表5に示す。
表5に示すように、りん光強度については、Ir(btq−d6qu)2(SA)の方が、酸素分圧2.5%と酸素分圧21%の比を比較すると非標識対比1.1倍のりん光強度が得られた。Ir(btq−d10)2(SA)についても同様の結果(非標識対比1.1倍)が得られた。
なお、表5には示していないが、Ir(btq−d6qu)2(SA)及びIr(btq−d10)2(SA)をそれぞれHT−29細胞、MCF−7細胞に添加し、HeLa細胞と同様の実験を行ったところ、HT−29細胞では、それぞれりん光強度は非標識対比で1.3倍、1.3倍であり、MCF−7細胞では、非標識対比で1.2倍、1.3倍高いりん光強度が観察された。
なお、表5には示していないが、Ir(btq−d6qu)2(SA)及びIr(btq−d10)2(SA)をそれぞれHT−29細胞、MCF−7細胞に添加し、HeLa細胞と同様の実験を行ったところ、HT−29細胞では、それぞれりん光強度は非標識対比で1.3倍、1.3倍であり、MCF−7細胞では、非標識対比で1.2倍、1.3倍高いりん光強度が観察された。
りん光寿命については、Ir(btq−d6qu)2(SA)の方が、酸素分圧2.5%と酸素分圧21%の比を比較すると、長いりん光寿命(非標識対比1.1倍)が観察された。Ir(btq−d10)2(SA)についても同様の結果(非標識対比1.2倍)が得られた。
図1に、酸素分圧21%、2.5%それぞれにおける倒立型顕微鏡像を示す。図1中、上段の3つの画像は各々酸素分圧21%の場合の倒立型顕微鏡像を示し、下段の3つの画像は各々酸素分圧2.5%の場合の倒立型顕微鏡像を示す。また、上段、下段各々の3つの画像のうち、左側の画像は、Ir(btq)2(SA)を用いた場合の倒立型顕微鏡像を示し、中央の画像は、Ir(btq−d6qu)2(SA)を用いた場合の倒立型顕微鏡像を示し、右側の画像はIr(btq−d10)2(SA)を用いた場合の倒立型顕微鏡像を示す。
上記結果に示すように、Ir(btq)2(SA)、Ir(btq−d6qu)2(SA)、Ir(btq−d10)2(SA)は、共に細胞内に集積した。
なお、Ir(btq−d6qu)2(SA)及びIr(btq−d10)2(SA)をそれぞれHT−29細胞、MCF−7細胞に添加し、HeLa細胞と同様の実験を行った。
その結果、酸素分圧2.5%と酸素分圧21%の比をそれぞれ比較すると、HT−29細胞では、非標識対比でそれぞれ1.1倍、1.1倍長いりん光寿命が観察された。同様に、MCF−7細胞では、非標識対比でそれぞれ1.1倍、1.1倍長いりん光寿命が観察された。
なお、Ir(btq−d6qu)2(SA)及びIr(btq−d10)2(SA)をそれぞれHT−29細胞、MCF−7細胞に添加し、HeLa細胞と同様の実験を行った。
その結果、酸素分圧2.5%と酸素分圧21%の比をそれぞれ比較すると、HT−29細胞では、非標識対比でそれぞれ1.1倍、1.1倍長いりん光寿命が観察された。同様に、MCF−7細胞では、非標識対比でそれぞれ1.1倍、1.1倍長いりん光寿命が観察された。
<実験3>
「合成例11:Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)の合成」
ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(TCI社製)と、重水素化2−ブロモキノリン(ISOTEC社製)を、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(pph3)4)、2M炭酸ナトリウム水溶液、ベンゼン、エタノールに溶解させ、窒素雰囲気下で加熱還流した。生成した2−(2−キノリル−d6)ベンゾ[b]チオフェンをクロロホルムで抽出し、減圧乾固後、シリカクロマトグラフィーで精製した。
精製した2−(2−キノリル−d6)ベンゾ[b]チオフェン及び塩化イリジウム・3水和物を2−エトキシエタノールと水の混合液に懸濁させ、還流を行った。室温に冷却後、溶媒を留去し、生成物を少量のクロロホルムに溶解させ、ヘキサンを加えて固体を析出させた。生成した固体をろ過し、塩素架橋2核錯体を得た。塩素架橋2核錯体及びt−ブチル4−(1,10−フェナントロリン−5−イル)ピペラジン−1−カルボキシレートをテトラヒドロフラン、メタノールに溶解させ、窒素雰囲気下、4時間還流した。室温に冷却後、ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)を加え1時間撹拌した。溶媒を留去し、アミノシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成したIr(btq−d6qu)2(phenpipe)を精製した。
精製物を水とトリフルオロ酢酸とトリイソプロピルシランとの混合液に加え、1時間静置した。混合液に冷ジエチルエーテルを加え固体を析出させ、遠心分離により固体を沈殿させた。次いで、冷ジエチルエーテルを除き、再び冷ジエチルエーテルを加え、遠心分離により固体を沈殿させた。この操作をさらに2回行いIr(btq−d6qu)2(phenpipe)を得た。MS(質量分析)で生成物の同定をした。
「合成例11:Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)の合成」
ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(TCI社製)と、重水素化2−ブロモキノリン(ISOTEC社製)を、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(pph3)4)、2M炭酸ナトリウム水溶液、ベンゼン、エタノールに溶解させ、窒素雰囲気下で加熱還流した。生成した2−(2−キノリル−d6)ベンゾ[b]チオフェンをクロロホルムで抽出し、減圧乾固後、シリカクロマトグラフィーで精製した。
精製した2−(2−キノリル−d6)ベンゾ[b]チオフェン及び塩化イリジウム・3水和物を2−エトキシエタノールと水の混合液に懸濁させ、還流を行った。室温に冷却後、溶媒を留去し、生成物を少量のクロロホルムに溶解させ、ヘキサンを加えて固体を析出させた。生成した固体をろ過し、塩素架橋2核錯体を得た。塩素架橋2核錯体及びt−ブチル4−(1,10−フェナントロリン−5−イル)ピペラジン−1−カルボキシレートをテトラヒドロフラン、メタノールに溶解させ、窒素雰囲気下、4時間還流した。室温に冷却後、ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)を加え1時間撹拌した。溶媒を留去し、アミノシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成したIr(btq−d6qu)2(phenpipe)を精製した。
精製物を水とトリフルオロ酢酸とトリイソプロピルシランとの混合液に加え、1時間静置した。混合液に冷ジエチルエーテルを加え固体を析出させ、遠心分離により固体を沈殿させた。次いで、冷ジエチルエーテルを除き、再び冷ジエチルエーテルを加え、遠心分離により固体を沈殿させた。この操作をさらに2回行いIr(btq−d6qu)2(phenpipe)を得た。MS(質量分析)で生成物の同定をした。
「合成例12:Ir(btq)2(phenpipe)の合成」
重水素化2−ブロモキノリン(ISOTEC社製)の代わりに2−ブロモキノリン(TCI社製)を用いた以外は、合成例11と同様の条件でIr(btq)2(phenpipe)を合成した。
重水素化2−ブロモキノリン(ISOTEC社製)の代わりに2−ブロモキノリン(TCI社製)を用いた以外は、合成例11と同様の条件でIr(btq)2(phenpipe)を合成した。
合成例11,12で得たイリジウム(III)錯体をそれぞれアセトニトリルに溶解し、錯体濃度20μMの溶液とし、りん光量子収率、りん光寿命を測定、放射速度定数、無放射速度定数を算出した。結果を表6に示す。
Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)では、Ir(btq)2(phenpipe)と比較して、りん光量子収率及びりん光寿命がともに1.5倍ほど向上することが確認できた。また、放射速度定数は、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)とIr(btq)2(phenpipe)との間で、ほぼ変化しなかった。一方、無放射速度定数は、Ir(btq)2(phenpipe)と比較してIr(btq−d6qu)2(phenpipe)では低い値であった。この結果から、無放射速度定数が相対的に低い値に抑制されることで、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)のりん光量子収率及びりん光寿命が向上していることが確認できた。
<実験4>
実験4では、本発明の低酸素領域可視化試薬について、培養細胞に取り込まれたときの発光性能を評価した。具体的には、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)(合成例11)、Ir(btq)2(phenpipe)(合成例12)を用いて、以下の手順で、酸素分圧が21%、2.5%である場合について、倒立型顕微鏡像を取得し、りん光強度及びりん光寿命を測定した。
倒立型顕微鏡像の取得は上述の実験2と同様にして行った。
実験4では、本発明の低酸素領域可視化試薬について、培養細胞に取り込まれたときの発光性能を評価した。具体的には、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)(合成例11)、Ir(btq)2(phenpipe)(合成例12)を用いて、以下の手順で、酸素分圧が21%、2.5%である場合について、倒立型顕微鏡像を取得し、りん光強度及びりん光寿命を測定した。
倒立型顕微鏡像の取得は上述の実験2と同様にして行った。
HeLa細胞におけるりん光強度の測定は、Ir(btq)2(SA)、Ir(btq−d6qu)2(SA)を5μMでHeLa細胞に添加する代わりに、Ir(btq)2(phenpipe)、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)のそれぞれを1μMでHeLa細胞に添加した以外は、実験2と同様の条件で行った。結果を表7に示す。
次いで、HeLa細胞の代わりに、Ir(btq)2(phenpipe)、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)をHT−29細胞、MCF−7細胞にそれぞれ添加し、それぞれの細胞におけるりん光強度の測定を行った。MCF−7細胞におけるりん光強度の測定結果を表8に示し、HT−29細胞におけるりん光強度の測定結果を表9に示す。
次いで、HeLa細胞の代わりに、Ir(btq)2(phenpipe)、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)をHT−29細胞、MCF−7細胞にそれぞれ添加し、それぞれの細胞におけるりん光強度の測定を行った。MCF−7細胞におけるりん光強度の測定結果を表8に示し、HT−29細胞におけるりん光強度の測定結果を表9に示す。
HeLa細胞におけるりん光寿命の測定は、Ir(btq)2(SA)、Ir(btq−d6qu)2(SA)をHeLa細胞に添加する代わりに、Ir(btq)2(phenpipe)、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)のそれぞれをHeLa細胞に添加した以外は、実験2と同様の条件で行った。結果を表10に示す。
次いで、HeLa細胞の代わりに、Ir(btq)2(phenpipe)、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)をHT−29細胞、MCF−7細胞にそれぞれ添加し、それぞれの細胞におけるりん光寿命の測定を行った。MCF−7細胞におけるりん光寿命の測定結果を表11に示し、HT−29細胞におけるりん光寿命の測定結果を表12に示す。
次いで、HeLa細胞の代わりに、Ir(btq)2(phenpipe)、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)をHT−29細胞、MCF−7細胞にそれぞれ添加し、それぞれの細胞におけるりん光寿命の測定を行った。MCF−7細胞におけるりん光寿命の測定結果を表11に示し、HT−29細胞におけるりん光寿命の測定結果を表12に示す。
図2は、HeLa細胞を用いた場合における倒立型顕微鏡像であり、図3はHT−29細胞を用いた場合における倒立型顕微鏡像である。図2、3中、上段の2つの画像は各々酸素分圧21%の場合の倒立型顕微鏡像であり、下段の2つの画像は各々酸素分圧2.5%の場合の倒立型顕微鏡像である。また、上段、下段各々の2つの画像のうち、左側の画像は、Ir(btq)2(phenpipe)を用いた場合の倒立型顕微鏡像であり、右側の画像はIr(btq−d6qu)2(phenpipe)を用いた場合の倒立型顕微鏡像である。
図2、3に示すように、Ir(btq)2(phenpipe)、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)は、共に細胞内に集積することが確認された。
表7〜9に示すように、りん光強度は、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)の方がIr(btq)2(phenpipe)より高かった。また、酸素分圧2.5%と酸素分圧21%の比(I21/I2.5)/を比較するとHeLa細胞では非標識対比で1.2倍のりん光強度が確認され(表7)、MCF−7細胞では非標識対比で1.1倍の高いりん光強度が確認され(表8)、HT−29細胞では、非標識対比で1.2倍のりん光強度が確認された(表9)。
表10〜12に示すように、りん光寿命は、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)の方がIr(btq)2(phenpipe)より高かった。また、酸素分圧2.5%と酸素分圧21%の比(μ21/μ2.5)を比較すると、HeLa細胞では非標識対比で1.1倍のりん光寿命が確認され(表10)、MCF−7細胞では、非標識対比で1.2倍のりん光寿命が確認され(表11)、HT−29細胞では、非標識対比で1.2倍のりん光寿命が確認された(表12)。
以上表7〜12で示した結果から、Ir(btq−d6qu)2(phenpipe)は、Ir(btq)2(phenpipe)と比較して低酸素濃度下におけるりん光強度が高く、かつ、りん光寿命が長くなることが確認できた。
錯体(I)及び錯体(II)は、酸素濃度が低いほど強い発光(りん光)を示す性質がある。そのため、錯体(I)を含む本発明の第一の態様の低酸素領域可視化試薬及び錯体(II)を含む本発明の第二の態様の低酸素領域可視化試薬は、生体内で発生する低酸素領域(癌細胞や虚血性疾患)のイメージングに利用できる。
本発明の低酸素領域可視化試薬を用いることで、生きた細胞や組織の酸素濃度を非侵襲的に高感度リアルタイムで可視化でき、定量も可能である。そのため、本発明の低酸素領域可視化試薬は、細胞内酸素濃度画像化試薬、低酸素細胞画像化薬として有効である。
本発明の低酸素領域可視化試薬は、ガン組織の診断にも利用できる。例えば低酸素腫瘍診断試薬等に有効である。
本発明の低酸素領域可視化試薬によれば、感度を従来の低酸素領域可視化試薬より最大30%高め、低酸素領域を検出することが可能である。そのため、試薬投与量を最大30%減量することが可能である。
本発明の低酸素領域可視化試薬を用いることで、生きた細胞や組織の酸素濃度を非侵襲的に高感度リアルタイムで可視化でき、定量も可能である。そのため、本発明の低酸素領域可視化試薬は、細胞内酸素濃度画像化試薬、低酸素細胞画像化薬として有効である。
本発明の低酸素領域可視化試薬は、ガン組織の診断にも利用できる。例えば低酸素腫瘍診断試薬等に有効である。
本発明の低酸素領域可視化試薬によれば、感度を従来の低酸素領域可視化試薬より最大30%高め、低酸素領域を検出することが可能である。そのため、試薬投与量を最大30%減量することが可能である。
Claims (8)
- 下記式(I)で表される錯体を含む低酸素領域可視化試薬。
- 前記式(I)中の環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合が天然存在比よりも高値である、請求項1に記載の低酸素領域可視化試薬。
- 前記式(I)中の環R1の重水素化率が50%以上である、請求項1又は2に記載の低酸素領域可視化試薬。
- 溶媒をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の低酸素領域可視化試薬。
- 下記式(II)で表される錯体を含む低酸素領域可視化試薬。
- 前記式(II)中の環R1及び環R2全体での重水素及び水素の合計数に対する重水素の数の割合が天然存在比よりも高値である、請求項5に記載の低酸素領域可視化試薬。
- 前記式(II)中の環R1の重水素化率が50%以上である、請求項5又は6に記載の低酸素領域可視化試薬。
- 溶媒をさらに含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載の低酸素領域可視化試薬。
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Cited By (1)
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2018
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JP2020183372A (ja) * | 2019-04-29 | 2020-11-12 | 寧波盧米藍新材料有限公司 | 縮合多環化合物及びその製造方法と用途 |
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