JP2019003007A - 痛覚再現装置及び疑似体験提供システム - Google Patents

痛覚再現装置及び疑似体験提供システム Download PDF

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Abstract

【課題】簡便かつ安全に痛覚を提示するための技術を提供する。【解決手段】痛覚再現装置3は、回転軸32と、回転軸32の回動と連動して回動することにより、痛覚再現装置3を装着した利用者に冷感を提示する冷感提示部35aと、冷感提示部35aの回動に対して所定の位相差で回転軸32の回動と連動して回動することにより、利用者に温感を提示する温感提示部35bと、回転軸32を回動させる駆動部33と、を備える。駆動部33は、温感提示部35bより先に冷感提示部35aが利用者に触れるように回転軸32を回動してもよい。【選択図】図3

Description

本発明は痛覚再現装置及び疑似体験提供システムに関し、特にVR(Virtual Reality;バーチャルリアリティ)技術を用いた訓練を提供するための技術に関する。
近年、ゲームや訓練を目的とするVR技術が急速に発達してきている。例えば特許文献1には、VRの中でリアルタイムで模擬訓練を行うことができる仮想現実シミュレータが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2000−122520号公報
模擬訓練の対象となるような危険な環境におかれる者は、例えば四肢の切断等が起こり得るような危険性に身をさらすことになる。VRを用いることにより、危険な環境や再現が難しい環境を訓練のために簡便かつ安全に再現することができるが、一方で、VRは主に訓練者の視覚及び聴覚に対する刺激を提供するものである。このため、模擬訓練を行うための仮想現実シミュレータにおいても、簡便かつ安全に痛覚を提示することができれば、訓練効果をより高めることができると考えられる。
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、簡便かつ安全に痛覚を提示するための技術を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様は、痛覚再現装置である。この装置は、回転軸と、前記回転軸の回動と連動して回動することにより、前記痛覚再現装置を装着した利用者に冷感を提示する冷感提示部と、前記冷感提示部の回動に対して所定の位相差で前記回転軸の回動と連動して回動することにより、前記利用者に温感を提示する温感提示部と、前記回転軸を回動させる駆動部と、を備える。
前記駆動部は、前記温感提示部より先に前記冷感提示部が前記利用者に触れるように前記回転軸を回動してもよい。
前記駆動部は、前記温感提示部が前記利用者に接触している間に、所定の時間が経過するまで前記回転軸の回動を停止してもよい。
前記温感提示部は、前記回転軸の回動によって前記冷感提示部が前記利用者に接触した後に前記利用者から離れる前に、前記利用者に接触するような位相差で前記回転軸と結合していてもよい。
本発明の第2の態様は、上述の痛覚再現装置と、前記痛覚再現装置の利用者に疑似体験を提供する疑似体験提供装置と、前記利用者が装着したときに前記疑似体験提供装置が出力する映像を前記利用者に提示するヘッドマウントディスプレイと、を備える疑似体験提示システムである。この疑似体験提示システムにおいて、前記痛覚再現装置は、前記ヘッドマウントディスプレイが前記利用者に提示する映像と連動して、前記疑似体験提供装置から取得した制御信号に基づいて前記利用者に温感及び冷感を提示する。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、簡便かつ安全に痛覚を提示するための技術を提供できる。
実施の形態に係る疑似体験提供システムの外観構成を模式的に示す図である。 実施の形態に係る痛覚再現装置の外観を模式的に示す図である。 実施の形態に係る痛覚再現装置の内部構成を模式的に示す図である。 実施の形態に係る冷感提示部と温感提示部との回動を説明するための図である。 冷感提示部による冷感提示と温感提示部による温感提示とのタイミングを示すタイミングチャートである。 実施の形態に係る疑似体験提供装置が再現する模擬訓練のシナリオと、痛覚再現装置の動作のタイミングとの関係を表形式で示す図である。 実施の形態の第1の変形例に係る痛覚再現装置における、冷感提示部と温感提示部との動作を説明するための図である。
<実施の形態の概要>
図1を参照して、本発明の実施の形態の概要を述べる。
図1は、実施の形態に係る疑似体験提供システムSの外観構成を模式的に示す図である。実施の形態に係る疑似体験提供システムSは、疑似体験提供装置1、ヘッドマウントディスプレイ2、痛覚再現装置3、姿勢検知センサ4、カメラ5、及びモニタ6を備える。
実施の形態に係る疑似体験提供システムSは、建設現場における事故の状況等の危険な環境をVR技術を用いて仮想的に再現し、被験者である利用者Uに提示するためのシステムである。映像や音声等を用いて状況を再現するため、利用者Uの安全を確保しつつ種々の状況を追体験させることができる。特に、ヘッドマウントディスプレイ2(Head Mounted Display;以下、「HMD2」と記載する。)等を用いて映像を提示することによって利用者Uに強い没入感を与えることができるので、危険な状況の学習や回避の訓練効果を高めることが期待できる。
疑似体験提供装置1は、利用者Uに疑似体験を提示するための装置である。疑似体験提供装置1は、例えばPC(Personal Computer)やサーバ等であり、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサやメモリ等の各種計算リソースを備える電子機器である。
疑似体験提供装置1は、まず、利用者U毎に提供する模擬訓練を選択する。疑似体験提供装置1は、選択した模擬訓練に基づく疑似体験を利用者Uに提示する。具体的には、疑似体験提供装置1は、利用者Uが装着するHMD2と有線又は無線で接続しており、疑似体験を表現する映像及び音声をHMD2に再生させる。HMD2は、利用者Uが装着したときに疑似体験提供装置1が出力する映像を利用者Uに提示する。疑似体験提供装置1は、HMD2が利用者Uに提示する映像と連動して痛覚再現装置3を制御することにより、利用者Uに温感及び冷感を提示する。
実施の形態に係る痛覚再現装置3は、「サーマルグリル錯覚」として知られる錯覚を利用して、利用者Uに疑似的な痛覚を提示する装置である。既知の現象であるため詳細な説明は省略するが、利用者Uが温感と冷感とを交互かつ同時に提示されると、利用者Uは火傷のような灼熱感を伴う痛みを感じることが知られており、サーマルグリル錯覚と呼ばれている。
サーマルグリル錯覚はあくまでも「錯覚」であり、痛覚再現装置3による刺激によって利用者Uが実際に火傷や傷を負うわけではない。このため、痛覚再現装置3を用いることにより、疑似体験提供システムSは、利用者Uに対して簡便かつ安全に痛覚を提示することができ、結果として利用者Uにより再現性の高い疑似体験を提供することができる。
図1は、利用者Uにグラインダーの操作ミスによる事故の疑似体験を提示する場合の例を示している。HMD2及び痛覚再現装置3を装着する利用者Uは、グラインダーによって自身の腕にけがを負う状況を体験することができる。
上述したように、図1に示す疑似体験提供システムSの例では、HMD2を用いて利用者Uに疑似体験を提示する。そこで、疑似体験提供システムSは、利用者Uの姿勢を検知するための姿勢検知センサ4と、利用者Uを撮影するカメラ5とも備えている。疑似体験提供システムSは、姿勢検知センサ4が検出した利用者Uの姿勢に応じて、利用者Uに提示する映像を変更することができる。すなわち、利用者Uのリアクションに応じて利用者Uに提示する映像自体やその提示順序を変更することができる。
また、HMD2を装着した利用者Uは視界が遮蔽されるため、物体が接近しても利用者Uは気づくことが難しい。そこで、疑似体験提供システムSは、カメラ5が撮像した映像を解析し、利用者Uが物体に接近した場合にそのことを利用者Uに通知することができる。結果として、疑似体験提供システムSによる訓練の安全性をより高めることができる。
疑似体験提供システムSはさらに、利用者Uに提示している映像を表示するためのモニタ6も備えている。モニタ6はまた、疑似体験提供装置1が提示する疑似体験を制御するためのGUI(Graphical User Interface)も表示することができる。疑似体験提供装置1のオペレータはモニタ6を見ながら手動で利用者Uに提供する疑似体験の刺激強度を変更したり、疑似体験を変更したり、疑似体験を中断したりすることができる。これにより、万が一利用者Uの体調が悪化したような場合に、迅速に疑似体験を中止することができる。
このように、実施の形態に係る疑似体験提供システムSは、HMD2に加えて痛覚再現装置3を用いて利用者Uに疑似体験を提供することにより、より再現性の高い疑似体験を利用者Uに提供することができる。
以下、実施の形態に係る痛覚再現装置3についてより詳細に説明する。
<痛覚再現装置3の外観>
図2は、実施の形態に係る痛覚再現装置3の外観を模式的に示す図である。実施の形態に係る痛覚再現装置3は、グローブ30とともに用いられる。疑似体験提供システムSの利用者Uがグローブ30を装着すると、痛覚再現装置3の温感提示部及び冷感提示部が、利用者Uの手の甲に接触できるように構成されている。
詳細は後述するが、痛覚再現装置3の温感提示部及び冷感提示部は、ともにペルチェ素子で実現されている。このため、痛覚再現装置3は、ペルチェ素子を空冷するためのファン(不図示)を備えている。それゆえ、痛覚再現装置3は、空気の流路の出入り口となる吸気口31aと排気口31bとを備えている。ファンにより、空気は図2中のX軸の方向に流れ、ペルチェ素子が空冷される。
図2は利用者Uの右手用のグローブ30及び痛覚再現装置3を図示しているが、利用者Uが同様の左手用のグローブ30(不図示)を装着することにより、利用者Uは、左手にも痛覚の提示を受けることができる。
以下本明細書において、痛覚再現装置3の手首から指先に向かう方向をZ軸、右手用の痛覚再現装置3を手の甲側から見た場合において、親指から小指に向かう方向をX軸とする右手座標系Cに基づいて方向を定める。したがって、Y軸は、図2において痛覚再現装置3の手の甲から手のひらに向かう方向となる。
<痛覚再現装置3の内部構成>
図3は、実施の形態に係る痛覚再現装置3の内部構成を模式的に示す図である。実施の形態に係る痛覚再現装置3は、吸気口31a、排気口31b、回転軸32、駆動部33、軸受34、冷感提示部35a、温感提示部35b、熱遮断シート36、及び筐体37を備える。
回転軸32は、長手方向がZ軸に対して平行となるように、痛覚再現装置3の中央部に配置される。駆動部33は、モータ等の電力で駆動する動力発生装置であり、回転軸32の長手方向を回転軸として回転軸32を回動させる。軸受34は回転軸32の回動を支持する。
冷感提示部35aはペルチェ素子を備えており、回転軸32の回動と連動して回動することにより、痛覚再現装置3を装着した利用者Uの手の甲に冷感を提示する。温感提示部35bも冷感提示部35aと同様にペルチェ素子を備えており、冷感提示部35aの回動に対して所定の位相差をもって回転軸32の回動と連動して回動することにより、利用者Uに温感を提示する。
限定はしないが、冷感提示部35aは、摂氏10度前後の冷感を利用者Uに提示する。これに対し、温感提示部35bは、摂氏35度前後の温感を利用者Uに提示する。
冷感提示部35aは冷感を提示し、一方温感提示部35bは温感を提示するため、両者の温度差は大きい。このため、痛覚再現装置3は、冷感提示部35aと温感提示部35bとの間に熱の伝導を遮断するための熱遮断シート36を備える。これにより、痛覚再現装置3の電力消費の効率を上げることができる。
回転軸32、駆動部33、軸受34、冷感提示部35a、温感提示部35b、及び熱遮断シート36は、筐体37に収納されている。筐体37の長手方向中央部の両側面に、吸気口31aと排気口31bとが配置されている。また、符号38で示す一点鎖線38は、筐体37の長手方向の中央線である。回転軸32の回転軸は、一点鎖線38と一致している。
冷感提示部35aと温感提示部35bとは、ともに回転軸32の回動と連動して回動する。このため、冷感提示部35aと温感提示部35bとの回転面は、X軸とY軸とが張る平面であるXY平面に対して平行な面となる。冷感提示部35aと温感提示部35bとは、位相差をもって回転することによって利用者Uの手の甲に触れるタイミングが異なるように構成されている。これにより、痛覚再現装置3は、サーマルグリル錯覚を利用して利用者Uに痛覚を提示することができる。
<冷感提示部35aと温感提示部35bとの回動>
図4は、実施の形態に係る冷感提示部35aと温感提示部35bとの回動を説明するための図である。図4は、冷感提示部35aと温感提示部35bとを、図3におけるZ軸の正の方向から見た場合の様子を示している。
図4に示す例では、時刻t1から時刻t5に向かって時間が進んでいる。図4に示すように、冷感提示部35aと温感提示部35bとは、それぞれ時間の経過とともに回転軸32を回転軸として回動する。図4において、符号350で示す部材はペルチェ素子の発熱又は吸熱を利用者Uに伝える接触部350である。回転軸32の中心と接触部350とを結ぶ線分(以下、「角度基準線」と記載する。)がY軸となす角度が0度のとき、接触部350が利用者Uに接触する部分の面積が最も広くなる。図4では、温感提示部35bが時刻t3のとき、角度基準線とY軸とがなす角度は0度となっている。
図4において、拡大図351は、時刻t1における冷感提示部35aと温感提示部35bとを拡大して示している。2点鎖線352aは冷感提示部35aの角度基準線であり、2点鎖線352bは温感提示部35bの角度基準線である。
なお、煩雑となることによってかえって不明りょうとなることを避けるために、図4においては、時刻t3及び拡大図351における冷感提示部35aと温感提示部35bとについてのみ各部の符号を付し、その他は省略している。
拡大図351に示すように、冷感提示部35aの角度基準線とY軸とのなす角度はαであり、温感提示部35bの角度基準線とY軸とのなす角度はα+δである。すなわち、冷感提示部35aと温感提示部35bとの回動の位相差はδとなる。より具体的には、冷感提示部35aの回動は、温感提示部35bの回動よりも位相差δだけ進んでいる。
このため、時刻t1における状況から駆動部33が回転軸32を回動させると、温感提示部35bより先に冷感提示部35aが利用者Uに触れることになる。冷感提示部35aが利用者Uに触れるタイミングと温感提示部35bが利用者Uに触れるタイミングとに時間差を生じさせることにより、痛覚再現装置3は、サーマルグリル錯覚を利用して利用者Uに痛覚を提示することができる。
図5は、冷感提示部35aによる冷感提示と温感提示部35bによる温感提示とのタイミングを示すタイミングチャートである。図5に示すタイミングチャートにおいて、横軸は時間の経過を表す。
図5において、時刻t6は冷感提示部35aが利用者Uと接触し始めた時刻であり、時刻t7は冷感提示部35aの接触面積が最大となった時刻である。冷感提示部35aは、時刻t7から時刻t10に至るまで最大面積で利用者Uと接触している。その後、時刻t11になると、冷感提示部35aは利用者Uから離れる。すなわち、冷感提示部35aは、時刻t6から時刻t11に至るまでの期間D1の間、利用者Uと接触している。
温感提示部35bは、時刻t6よりも遅れた時刻t8において、利用者Uとの接触が始まる。すなわち、温感提示部35bは、時刻t6から時刻t8までの期間D3だけ、冷感提示部35aに遅れて利用者Uと接触する。その後時刻t9において温感提示部35bの接触面積が最大となり、時刻t12に至るまで最大面積で利用者Uと接触している。時刻t13になると、温感提示部35bは利用者Uから離れる。したがって、温感提示部35bは、時刻t8から時刻t13に至るまでの期間D2において、利用者Uと接触していることになる。
限定はしないが、冷感提示部35aの接触部350と温感提示部35bの接触部350とは同一形状である。このため、駆動部33が回転軸32を一定速度で回動すると、冷感提示部35aが利用者Uに接触している期間D1と、温感提示部35bが利用者Uと接触している期間D2とは同じ長さになる。しかしながら、図5に示すように、温感提示部35bが利用者Uと接触している期間D2は、冷感提示部35aが利用者Uと接触している期間D1よりも長い。
これはすなわち、駆動部33は、冷感提示部35aが利用者Uから離れるタイミングである時刻t11が経過した後であり、かつ温感提示部35bが利用者Uに接触している間、所定の時間が経過するまで回転軸32の回動を停止することを意味する。「所定の時間」は、痛覚再現装置3が利用者Uにサーマルグリル錯覚を起こさせるために回転軸32の回動を停止する「錯覚提示用停止期間」である。所定の時間の具体的な長さは、冷感提示部35a及び温感提示部35bの温度や駆動部33の性能等を考慮して実験により定めればよいが、例えば1秒間である。
錯覚提示用停止期間を設けることにより、利用者Uは温感提示部35bによる温感提示のみがなされる期間が長くなる。この結果、利用者Uは傷を負う際に感ずる灼熱感と似た感覚を受けるため、痛覚再現装置3は、より再現性の高い疑似体験を利用者Uに提供することができる。
図5において、時刻t8から時刻t11に至るまでの期間D4は、冷感提示部35aと温感提示部35bとが同時に利用者Uに接触している期間である。このように、温感提示部35bは、回転軸32の回動によって冷感提示部35aが利用者Uに接触した後に利用者Uから離れる前に、利用者Uに接触するような位相差δで回転軸32結合している。これにより、冷感提示部35aと温感提示部35bとが同時に利用者Uに接触している期間ができるため、痛覚再現装置3は、サーマルグリル錯覚による疑似的な痛覚をより効果的に利用者Uに提示することができる。
<映像と痛覚提示との同期>
以上、実施の形態に係る痛覚再現装置3単体としての機能構成について説明した。上述したように、実施の形態に係る痛覚再現装置3は疑似体験提供システムSの一部であり、疑似体験提供装置1による制御の下、HMD2と連動して動作することもできる。
図6は、実施の形態に係る疑似体験提供装置1が再現する模擬訓練のシナリオと、痛覚再現装置3の動作のタイミングとの関係を表形式で示す図である。実施の形態に係る疑似体験提供装置1は、例えば交通事故、グラインダー事故、仮設分電盤撤去中の感電事故、暗闇での開口部転落事故等、種々の事故を想定した模擬訓練シナリオを提供することができる。図6に示すように、疑似体験提供装置1は、これらのシナリオについてシナリオ1からシナリオNまでの番号を割り当てて管理している。
図6に示すように、疑似体験提供装置1が再現する模擬訓練の各シナリオには、痛覚再現装置3を動作させるタイミングが、シナリオ開始からの経過時間として対応付けられている。
例えば、疑似体験提供装置1は、シナリオ1を再現するための映像及び音声をHMD2に提示させることを開始してから182秒後に、痛覚再現装置3を動作させるための制御信号を痛覚再現装置3に出力する。また、疑似体験提供装置1は、シナリオ2を再現するための映像及び音声をHMD2に提示させることを開始してから64秒後及び115秒後に、痛覚再現装置3を動作させるための制御信号を痛覚再現装置3に出力する。
このように、痛覚再現装置3は、HMD2が利用者Uに提示する映像と連動して、疑似体験提供装置1から取得した制御信号に基づいて利用者Uに温感及び冷感を提示する。これにより、利用者Uは事故発生を模した映像及び音声とともに痛覚刺激を受けるため、より臨場感のある模擬訓練を体験することができる。
<実施の形態に係る痛覚再現装置3の奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る痛覚再現装置3によれば、サーマルグリル錯覚を利用した疑似的な痛覚を利用者Uに提示することができる。サーマルグリル錯覚はあくまでも錯覚であり利用者Uは実際に傷を負うことはないため、痛覚再現装置3は簡便かつ安全に利用者Uに対して痛覚を提示することができる。
実施の形態に係る痛覚再現装置3は、HMD2が利用者Uに提示する映像と連動して、利用者Uに痛覚を提示することもできる。これにより、痛覚再現装置3は、より臨場感のある模擬訓練を利用者Uに提供することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせもつ。
<第1の変形例>
上記では、冷感提示部35aと温感提示部35bとが異なる回転面において回動する場合について説明したが、冷感提示部35aと温感提示部35bとは同一の回転面で回動してもよい。これは、冷感提示部35aと温感提示部35bとを、回転軸32に対して垂直な同一平面上に配置することで実現できる。以下この場合について説明する。
図7(a)―(c)は、実施の形態の第1の変形例に係る痛覚再現装置3における、冷感提示部と温感提示部との動作を説明するための図であり、右手座標系CのY軸方向から原点に向かって痛覚再現装置3を眺めた場合の模式図である。
具体的には、図7(a)は、実施の形態に係る冷感提示部35aの接触部である冷感接触部350aと温感提示部35bの接触部である温感接触部350bとの動作を説明するための図である。図7(b)及び図7(c)は、第1の変形例に係る冷感接触部350aと温感接触部350bとの動作を説明するための図である。
図7(a)―(c)において、白抜きの矢印Aは、冷感接触部350a及び温感接触部350bの移動方向を示している。なお、煩雑となることを防ぐため、図7(a)―(c)では、冷感接触部350a及び温感接触部350bのみを図示し、他の構成の図示は省略している。
図7(a)に示すように、実施の形態に係る痛覚再現装置3においては、冷感接触部350aと温感接触部350bとは異なる軌道を動く。このため、実施の形態に係る痛覚再現装置3においては、冷感接触部350aと温感接触部350bとが利用者Uの手の甲において異なる領域で接触する。
図7(b)に示すように、第1の変形例に係る痛覚再現装置3においては、第1連結部351aと第2連結部351bとを用いることにより、冷感接触部350aと温感接触部350bとの少なくとも一部が同一の軌道を描くように構成されている。これにより、第1の変形例に係る痛覚再現装置3においては、冷感接触部350aと温感接触部350bとの少なくとも一部が、利用者Uの手の甲において同じ領域で接触する。
図7(c)に示す例は、図7(b)に示す例と同様に、第1連結部351aと第2連結部351bとを用いることにより、冷感接触部350aと温感接触部350bとの少なくとも一部が同一の軌道を描くように構成されている。図7(c)に示す例では、さらに、冷感接触部350aと温感接触部350bとのうち、同一の軌道を描く部分が、利用者Uの手の甲において同時に接触するように構成されている。
このように、第1の変形例に係る痛覚再現装置3は、冷感接触部350aと温感接触部350bとの少なくとも一部が同一の軌道を描くように構成されている。これにより、第1の変形例に係る痛覚再現装置3は、利用者Uにサーマルグリル錯覚を与えるための条件をより厳密に再現するため、より臨場感のある模擬訓練を利用者Uに提供することができる。
<第2の変形例>
上記では、痛覚再現装置3はペルチェ素子を用いて利用者Uに温感及び冷感を提示したが、温感及び冷感の提示手段はペルチェ素子に限られない。例えば、ヒートパイプ等を用いて痛覚再現装置3の外部から冷気又は暖気を導入して利用者Uに提示してもよい。
<第3の変形例>
上記では、疑似体験提供装置1は、模擬訓練のシナリオと痛覚再現装置3の動作のタイミングとを関連付けて管理することにより、HMD2と痛覚再現装置3との協働を実現した。これに替えて、HMD2に再現させる映像信号の中に、痛覚再現装置3の動作のタイミングを埋め込んでもよい。これは、例えばHMD2の再現させる映像信号を構成する各フレームのタグ情報として、痛覚再現装置3の動作のタイミングを埋め込むことで実現できる。
1・・・疑似体験提供装置
2・・・HMD
3・・・痛覚再現装置
4・・・姿勢検知センサ
5・・・カメラ
6・・・モニタ
30・・・グローブ
31a・・・吸気口
31b・・・排気口
32・・・回転軸
33・・・駆動部
34・・・軸受
35a・・・冷感提示部
35b・・・温感提示部
36・・・熱遮断シート
37・・・筐体
350・・・接触部
S・・・疑似体験提供システム

Claims (5)

  1. 痛覚再現装置であって、
    回転軸と、
    前記回転軸の回動と連動して回動することにより、前記痛覚再現装置を装着した利用者に冷感を提示する冷感提示部と、
    前記冷感提示部の回動に対して所定の位相差で前記回転軸の回動と連動して回動することにより、前記利用者に温感を提示する温感提示部と、
    前記回転軸を回動させる駆動部と、
    を備える痛覚再現装置。
  2. 前記駆動部は、前記温感提示部より先に前記冷感提示部が前記利用者に触れるように前記回転軸を回動する、
    請求項1に記載の痛覚再現装置。
  3. 前記駆動部は、前記温感提示部が前記利用者に接触している間に、所定の時間が経過するまで前記回転軸の回動を停止する、
    請求項1又は2に記載の痛覚再現装置。
  4. 前記温感提示部は、前記回転軸の回動によって前記冷感提示部が前記利用者に接触した後に前記利用者から離れる前に、前記利用者に接触するような位相差で前記回転軸と結合している、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の痛覚再現装置。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の痛覚再現装置と、
    前記痛覚再現装置の利用者に疑似体験を提供する疑似体験提供装置と、
    前記利用者が装着したときに前記疑似体験提供装置が出力する映像を前記利用者に提示するヘッドマウントディスプレイと、
    を備える疑似体験提示システムであって、
    前記痛覚再現装置は、前記ヘッドマウントディスプレイが前記利用者に提示する映像と連動して、前記疑似体験提供装置から取得した制御信号に基づいて前記利用者に温感及び冷感を提示する、
    疑似体験提供システム。

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