JP2018191622A - ウイルス抵抗性を有する融合タンパク質、ポリヌクレオチドおよびそれらの用途 - Google Patents

ウイルス抵抗性を有する融合タンパク質、ポリヌクレオチドおよびそれらの用途 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、宿主にRNAウイルスに対する抵抗性を付与する用途等に関する。【解決手段】本発明は、(A)二本鎖リボヌクレオチド分解酵素活性タンパク質、および(B)宿主に由来するRNAウイルス複製複合体の構成タンパク質を含む融合タンパク質、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを有するベクター、形質転換体、宿主細胞のウイルス複製阻害剤、RNAウイルスの増殖を抑制する方法、および耐病性非ヒト生物の生産方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、ウイルス抵抗性を有する融合タンパク質、ポリヌクレオチドおよびそれらの用途等に関する。
植物ウイルス病は治療ができないため、ウイルスの防除は農業における重要な課題である。ウイルス抵抗性育種は最も効果的な手法であるが、利用可能なウイルス抵抗性遺伝子が存在するウイルスと作物の組み合わせが限られることや、抵抗性打破変異ウイルスの出現が問題となっている。
ウイルスの防除のために、ウイルス由来のタンパク質の植物での発現、ウイルス由来の核酸の植物での発現(RNAi、人工miRNA)などの人為的に植物にウイルス抵抗性を付与する手法がこれまでに開発、利用されてきた(非特許文献1)。これらの手法は、強力なウイルス抵抗性を示し、パパイヤ輪点ウイルス(PRSV)抵抗性パパイヤなど実用化されている例も多い。しかし、これらの手法は、標的とするウイルスと作物の組み合わせが限られる点、および、組換えウイルスの出現のリスクが存在する点等の問題を含む。また、遺伝子組換え植物の栽培が困難な国や地域においては、多くのウイルス病についてはなすすべなく、罹患植物を焼却するしかないのが現状である。
一方、ウイルス増殖に必須な宿主遺伝子の発現抑制も有効な手段と考えられている。近年、様々なウイルスにおいて増殖に関与する宿主因子の同定が進んでいるが、当該因子の発現抑制が植物の生長に影響する場合が多いため、実用的なウイルス抵抗性植物が作出された例は少ない(非特許文献2)。
RNAウイルスは相補鎖RNAを介して複製するため、複製の際には二本鎖RNAが生じる。この二本鎖RNAは真核生物からウイルス特異的分子パターンとして認識され、哺乳動物では自然免疫の、昆虫や植物ではRNAサイレンシングの標的となる(非特許文献3)。二本鎖RNA分解酵素(dsRNase)を植物の染色体中に組み込んで発現させることによるウイルス抵抗性植物の作製が試みられている(特許文献2)。
ダイズモザイクウイルス抵抗性遺伝子Rsv4は、広くポティウイルス属のウイルスに対して抵抗性を与えることが見出されている(特許文献1)。Rsv4の作用機構の解析から、Rsv4はdsRNaseであり、ポティウイルスの複製の場に入り込むことによりウイルス複製の際に生じた二本鎖RNAを分解することが明らかになっている。
特開2016−174568号公報 特許第3336307号公報
Galvez et al. Plant Science 228: 11−25 [2014] Hashimoto et al. Frontiers in Microbiology 7:1695[2016] DeWitte−Orr and Mossman Future Virology 5:325−341 [2010] den Boon and Ahlquist Annual Review of Microbiology 64:241−256 [2010] Watanabe et al. FEBS letter 372:165−168 [1995]
プラス鎖RNAウイルスは生体膜上に細胞質から隔離された小器官を形成し、その中でのみ複製を行うことにより、二本鎖RNAを宿主の監視機構から隠している(非特許文献4)。このため、dsRNaseを発現する形質転換植物も強いウイルス抵抗性は示さなかった(非特許文献5)。
発明者らは、ウイルス複製の場にdsRNaseを送り込むことさえできれば、任意のRNAウイルスに対して抵抗性を付与できるのではないかと着想した。RNAウイルスの複製複合体はウイルス由来の分子だけでなく、多くの特異的な宿主因子も含むと考えられている。そこで、ウイルス複製複合体の構成要素である宿主因子にdsRNaseを融合することにより、dsRNaseをウイルス複製の場に送り込めるのではないかと考えた。すなわち、各種ウイルスの複製への関与あるいはその可能性がある宿主因子と、dsRNaseの融合タンパク質を植物で発現させると、融合タンパク質が宿主因子由来部分を介してウイルス複製の場に送り込まれ、dsRNase活性によりウイルス複製中間体である二本鎖RNAを分解し、宿主細胞でのウイルス複製を阻害することができると考えられる。また、この機構は動物にも適用できると考えられる。これらの着想に基づき、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の各発明を提供する:
〔1〕(A)二本鎖リボヌクレオチド分解酵素活性タンパク質、および
(B)宿主に由来するRNAウイルス複製複合体の構成タンパク質
を含む融合タンパク質。
〔2〕前記(A)が、ダイズ属植物またはアラビドプシス属植物に由来する、〔1〕に記載の融合タンパク質。
〔3〕前記(A)が、RTL2またはRsv4である、〔2〕に記載の融合タンパク質。
〔4〕前記(B)が、アクアポリン、イオンチャンネル、翻訳開始因子、翻訳伸長因子、分子シャペロン、膜構成タンパク質、および膜輸送因子からなる群より選ばれる少なくとも1つである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の融合タンパク質。
〔5〕前記(B)が、TOM1、TIP1、およびeIF(iso)4Eからなる群より選ばれる少なくとも1つである、〔4〕に記載の融合タンパク質。
〔6〕前記RNAウイルスが、プラス鎖RNAウイルスである、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の融合タンパク質。
〔7〕前記プラス鎖RNAウイルスが、トバモウイルス属、ククモウイルス属、ポティウイルス属、ルビウイルス属、ヘパシウイルス属、またはコロナウイルス属に属するウイルスである、〔6〕に記載の融合タンパク質。
〔8〕宿主細胞が植物である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の融合タンパク質。
〔9〕宿主細胞が、ダイズ属、タバコ属、ナス属、およびアブラナ属からなる群より選ばれる植物である、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の融合タンパク質。
〔10〕〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
〔11〕〔10〕に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
〔12〕〔10〕に記載のポリヌクレオチドまたは〔11〕に記載のベクターを含む形質転換体。
〔13〕植物である、〔12〕に記載の形質転換体。
〔14〕種子または苗である、〔12〕又は〔13〕に記載の形質転換体。
〔15〕〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の融合タンパク質、〔10〕に記載のポリヌクレオチド、〔11〕に記載のベクター、および〔12〕〜〔14〕のいずれかに記載の形質転換体からなる群より選ばれる1種以上を有効成分とする、宿主細胞のウイルス複製阻害剤。
〔16〕農薬である、〔15〕に記載の剤。
〔17〕ダイズ属、タバコ属、ナス属、およびアブラナ属からなる群より選ばれる植物用農薬である、〔16〕に記載の剤。
〔18〕〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の融合タンパク質を非ヒト宿主細胞内で発現させることを含む、RNAウイルスの増殖を抑制する方法。
〔19〕前記発現が、〔10〕に記載のポリヌクレオチドまたは〔11〕に記載のベクターを宿主細胞に導入することによる発現である、〔18〕に記載の方法。
〔20〕非ヒト宿主細胞が植物である、〔18〕又は〔19〕に記載の方法。
〔21〕〔18〕〜〔20〕のいずれかに記載の方法によりRNAウイルスの増殖を抑制することを含む、耐病性非ヒト生物の生産方法。
〔22〕非ヒト生物が植物である、〔21〕に記載の方法。
本発明によれば、ウイルス抵抗性を有する融合タンパク質、ポリヌクレオチドおよびそれらの用途等が提供される。
図1は、TOM1−RTL2融合タンパク質を発現するNicotiana benthamiana葉におけるToMVに対する増殖抑制効果を示す図であり、ToMV接種後5日目の接種葉の破砕物のSDS−PAGEの結果を示す。Mockは、アグロインフィルトレーションをしておらず、ToMVも非接種の葉を示す。 図2は、TIP1−RTL2融合タンパク質を発現するNicotiana benthamiana葉におけるCMVに対する増殖抑制効果を示す図であり、CMV接種後4日目の接種葉の破砕物のSDS−PAGEにおける、約24kDaの外被タンパク質(CP)のバンド強度を示す。 図3は、eIF(iso)4E−RTL2融合タンパク質を発現するNicotiana benthamiana葉におけるTuMVに対する増殖抑制効果を示す図であり、TuMV接種後4日目の接種葉の破砕物の抗TuMV CP抗体によるWestern解析の結果を示す。 図4は、本発明の融合タンパク質の作用機構モデルを示す図である。RNAウイルスが宿主細胞に感染した後、オルガネラ膜が陥入して膜胞(ウイルス複製の場)が形成され、膜胞中でRNAウイルスが複製する。TOM1(宿主因子)とRTL2(dsRNase)の融合タンパク質が、Pol(ウイルスRNAポリメラーゼ)を含むウイルス複製複合体に取り込まれ、融合タンパク質のdsRNase活性により、二本鎖RNA(ウイルス複製中間体)が分解され、ウイルスの増殖が抑制される。
本発明は、
(A)二本鎖リボヌクレオチド分解酵素活性タンパク質、および
(B)宿主に由来するRNAウイルス複製複合体の構成タンパク質
を含む融合タンパク質に関連しており、宿主(植物および動物)に前記ウイルスに対する抵抗性を付与する用途等に関する。
二本鎖リボヌクレオチド分解酵素活性タンパク質としては、例えば、dsRNaseの活性部位を含むタンパク質が挙げられる。dsRNaseとしては、例えば、RNaseIIIファミリーに属する酵素(例、RNaseIII、RNaseIII様タンパク質(RTL(RTL1、RTL2、RTL3))、Dicer、Dicer様タンパク質(DCL)、Drosha)、RNaseHファミリーに属する酵素(例、Rsv4、Sto−RNase HI、Rv2228c、Argonaute)が挙げられる。dsRNaseは、二本鎖リボヌクレオチド分解酵素活性を有する限りにおいて、変異を含んでいてもよい。dsRNaseは、対象とする宿主の種に由来するものであってもよく、対象とする宿主の種に由来しないものであってもよい。シスジェネシス、イントラジェネシス等のいわゆる新育種技術(NBT)を適用できるので、dsRNaseは、対象とする宿主の種に由来するものであることが好ましい。dsRNaseは、公知のものから適宜選択してもよい。対象とする宿主の種に由来するdsRNaseが公知でない場合は、他種dsRNase(例、RNaseIIIファミリー)に基づく相同性検索(例、BLAST等のアルゴリズム、BLASTN、BLASTX等のプログラムを用いたデータベース検索)または相同性探索実験(例、ハイブリダイゼーション)により得たdsRNaseを用いてもよい。対象とする宿主がシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)である場合は、シロイヌナズナRTL2(配列番号1;遺伝子座:AT3G20420;Kiyota et al. Journal of Plant Research 124:405−414 [2011])を用いることができる。対象とする宿主がダイズ(Glycine max)である場合は、ダイズRsv4を用いることができる。
宿主に由来するRNAウイルス複製複合体の構成タンパク質(以下、本明細書中で「宿主因子」と呼ぶこともある)とは、ウイルスの感染、増殖の際に必要とされる因子のうち、宿主から供給される因子であり、特に、ウイルスの複製で機能するタンパク質複合体のうち、宿主から供給されるタンパク質成分を指すことが多い。宿主因子は、対象とするウイルスに特異的であることが多く、ウイルスと宿主因子の組合せ(例えば、非特許文献2;Hyodo and Okuno, J Gen Plant Pathol [2014] 80:123−135;Nagy and Pogany, Nat. Rev. Microbiol. 10:137−149 [2011];Wang, Anuu. Rev. Phytopathol. 53:45−66[2015]を参照)に基づいて適宜選択することができる。宿主因子としては、機能的には、例えば、アクアポリン(例、TIP1)、イオンチャンネル、翻訳開始因子(例、eIF(iso)4E)、翻訳伸長因子、複製複合体構成タンパク質(例、TOM1)、分子シャペロン、膜構成タンパク質、膜輸送因子であってもよく、構造的には、例えば、膜タンパク質であってもよい。
宿主因子のアミノ酸配列および塩基配列は、データベースから入手してもよい。例えば、シロイヌナズナTIP1;1(Tonoplast intrinsic protein 1−1)(遺伝子座:AT2G36830)(アミノ酸配列として配列番号3、塩基配列として配列番号8)、eIF(iso)4E (Eukaryotic translation initiation factor isoform 4E)(遺伝子座:AT5G35620)(アミノ酸配列として配列番号4、塩基配列として配列番号9)の配列情報は、シロイヌナズナのゲノムデータベース(The Arabidopsis Information Resource(TAIR))から入手可能である。タバコTOM1(Tobamovirus Multiplication 1)のアミノ酸配列(遺伝子座:LOC107774702)(アミノ酸配列として配列番号2、塩基配列として配列番号7)は、Genbankから入手可能である。
本発明の融合タンパク質において、二本鎖リボヌクレオチド分解酵素活性タンパク質、および宿主に由来するRNAウイルス複製複合体の構成タンパク質のアミノ酸配列は、由来となるタンパク質の全長アミノ酸配列であってもよく、本発明の目的の機能を失わない限りにおいて、部分アミノ酸配列であってもよく、変異アミノ酸配列であってもよい。変異アミノ酸配列としては、例えば、もとのアミノ酸配列と90%以上の相同性(例、同一性)を有するアミノ酸配列、もとのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列が挙げられる。アミノ酸配列の同一性は、アミノ酸配列全体又は機能発現に必要な領域で90%以上であり、例えば91%以上、92%以上、93%以上、94%以上または95%以上であり、好ましくは96%以上であり、より好ましくは97%以上であり、更に好ましくは98%以上であり、更により好ましくは99%以上である。アミノ酸配列の同一性の解析は、先述のBLAST等のアルゴリズム、BLASTN、BLASTX等のプログラムを用いて行えばよい。変異後のアミノ酸残基においては、変異前のアミノ酸側鎖の性質が保存されていることが好ましい。アミノ酸を側鎖の性質により分類すると、以下のとおりである:疎水性アミノ酸(アラニン(A)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、バリン(V)等);親水性アミノ酸(アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、リシン(K)、セリン(S)、トレオニン(T)等);脂肪族側鎖を有するアミノ酸(グリシン(G)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、バリン(V)、プロリン(P)等);水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)等);硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(システイン(C)、メチオニン(M)等);カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)等);塩基含有側鎖を有するアミノ酸(アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、リシン(K)等);酸含有側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)等);β位分岐側鎖を有するアミノ酸(トレオニン(T)、バリン(V)、イソロイシン(I)等);及び、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(ヒスチジン(H)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)等)。本発明の目的の機能とは、二本鎖リボヌクレオチド分解酵素活性を有し、かつウイルス複製の場に取り込まれる能力を有することを指す。本発明の融合タンパク質において、二本鎖リボヌクレオチド分解酵素活性タンパク質および宿主に由来するRNAウイルス複製複合体の構成タンパク質のアミノ酸配列は、いずれがN末端側であってもよく、いずれがC末端側であってもよい。
二本鎖リボヌクレオチド分解酵素活性タンパク質、および宿主に由来するRNAウイルス複製複合体の構成タンパク質は、それぞれ独立に、異種部分をさらに含んでいてもよい。異種部分としては、目的タンパク質の精製を容易にするペプチド成分、目的タンパク質の可溶性を向上させるペプチド成分(Nus−tagなど)、シャペロンとして働くペプチド成分(トリガーファクターなど)、他の機能を有するペプチド成分(全長タンパク質またはその一部など)およびリンカーが例示される。目的タンパク質の精製を容易にするペプチド成分としては、ヒスチジンタグ、Strep−tag IIなどのタグ部分;および、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質などの目的タンパク質の精製に利用されるタンパク質が例示される。異種部分の結合部位は特に限定されず、N末端側、C末端側のいずれでもよい。
本発明の融合タンパク質は、翻訳後修飾タンパク質、または翻訳後非修飾タンパク質であってもよい。これにより、宿主細胞の種類に応じて該タンパク質の産生を効率よく行うことができる。本発明のタンパク質は、真核生物である宿主に由来してもよいので、天然では翻訳後修飾(グリコシル化など)される可能性があると考えられる。原核生物ではタンパク質が翻訳後修飾されないこと、および、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、下等真核生物などの生物では、タンパク質の翻訳後修飾が大きく異なることが一般に知られている。したがって、天然で植物細胞に由来するタンパク質を、このような異種宿主細胞で産生させた場合、天然では生じ得ない、翻訳後非修飾タンパク質、または異なる翻訳後修飾を有するタンパク質を入手し得ると考えられる。
二本鎖リボヌクレオチド分解酵素活性タンパク質および宿主に由来するRNAウイルス複製複合体の構成タンパク質とは直接連結されていてもよいし、架橋ドメインを介して連結されていてもよい。架橋ドメインとしては例えば、中性アミノ酸残基(例、グリシン、セリン、スレオニン、プロリン、アスパラギン酸、アスパラギン)を含むペプチドが挙げられる。このようなペプチドとしては例えば、ポリグリシンが挙げられ、10個のグリシンからなるポリグリシンが好ましい。
本発明の融合タンパク質は、宿主におけるRNAウイルスの増殖を抑制させることにより、前記ウイルスに対する抵抗性を宿主に付与するために用いることができる。宿主としては、植物および動物が挙げられる。植物としては、例えば、ナス科、アブラナ科、ウリ科、マメ科、バラ科(ダイズ属、タバコ属、ナス属、およびアブラナ属)の植物が挙げられる。動物としては、例えば、ヒト、およびヒト以外の動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ等の家畜;ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ等の家禽;マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等の実験動物;イヌ、ネコ、インコ、オウム等の愛玩動物)が挙げられる。
RNAウイルスは、宿主に感染するものから適宜選択できる。RNAウイルスは、複製時に二本鎖RNAを形成するRNAウイルスであればよく、例えば、一本鎖RNAウイルス(例、プラス鎖RNAウイルス、マイナス鎖RNAウイルス)、二本鎖RNAウイルスが挙げられる。これらのうち、一本鎖RNAウイルスが好ましく、プラス鎖RNAウイルスがより好ましい。プラス鎖RNAウイルスとしては、例えば、トバモウイルス属、ククモウイルス属、ポティウイルス属、ルビウイルス属、ヘパシウイルス属、またはコロナウイルス属に属するウイルスが挙げられる。
本発明はまた、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドとは、通常、ヌクレオチドの重合体を意味する場合があり、通常は単離されたポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNA(mRNAなど)であってもよい。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、cDNA、cDNAライブラリー、合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターに特に制限はなく、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどが例示される。DNAおよびRNAは、特に断らない限り、2本鎖及び1本鎖のいずれでもよい。1本鎖DNAおよびRNAは、特に断らない限り、コード鎖(センス鎖)でも、非コード鎖(アンチセンス鎖)でもよい。
本発明において、タンパク質をコードするポリヌクレオチドとは、例えば以下を意味する。該ポリヌクレオチドがDNAである場合には、該DNA又は該DNAを含む発現ベクターを原核細胞又は真核細胞、好ましくは植物細胞に導入したときに、該DNAが転写された結果提供されるmRNAが、又は該RNAの細胞内でのスプライシングの結果提供される成熟mRNAが翻訳されることにより、該タンパク質が生産されるようなDNAを意味する。また、該ポリヌクレオチドがRNAである場合には、該RNAを細胞内に導入したときに、該RNAが、又は細胞内でのスプライシングの結果提供されたRNAが翻訳されることにより該タンパク質が生産されるようなRNAを意味する。
本発明において、「単離された」ポリヌクレオチドとは、天然において該ポリヌクレオチドと共存している他の細胞内構成成分、たとえば、リボゾーム、ポリメラーゼや他のゲノムDNAと実質的に分離されたポリヌクレオチドをいう。また、「単離された」ポリヌクレオチドには、天然から分離されたポリヌクレオチドばかりでなく、組換えポリヌクレオチドや化学的に合成されたポリヌクレオチドが含まれる。
ポリヌクレオチドは、化学的に合成されたポリヌクレオチドであってもよい。化学的な合成方法としては、リン酸トリエステル法を利用する化学的合成法、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を利用する方法が例示される。市販のポリヌクレオチド改変キットとしては、QuikChange Multi Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)、KOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit(東洋紡)、Transformer Site−Directed Mutagenesis Kit(Clontech)などが例示される。
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。ベクターは例えば、宿主に導入して本発明の融合タンパク質を宿主で発現させるために、または、各種生物種(例、微生物)に導入してウイルス複製阻害剤となる形質転換体を作成するために利用することができる。
本発明のベクターは、宿主においてタンパク質を発現させる細胞系ベクター、およびタンパク質翻訳系を利用する無細胞系ベクターのいずれであってもよく、プラスミド、ウイルスベクター、ファージ、組込み型(integrative)ベクターおよび人工染色体のいずれであってもよい。組込み型ベクターは、全体が宿主細胞のゲノムに組み込まれるタイプのベクターであってもよく、その一部(本発明のポリヌクレオチドが発現するために必要な部分など)のみが宿主細胞のゲノムに組み込まれるタイプのベクターであってもよい。発現ベクターは、DNAベクターまたはRNAベクターであってもよい。
細胞系ベクターは、宿主に適した公知の発現ベクターであればよい。例えば、アグロバクテリウムのプラスミド(TiプラスミドまたはRiプラスミド)由来のバイナリーベクター、pRI(pRI101、pRI201など)、pUC(pUC19、pUC18など)、pSTV、pBR(pBR322など)、pHSG(pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398など)、RSF(RSF1010など)、pACYC(pACYC177、pACYC184など)、pMW(pMW119、pMW118、pMW219、pMW218など)、pQE(pQE30など)およびそれらの誘導体が挙げられる。
無細胞系ベクターとしては、T7またはT3プロモーターを有する発現ベクター、SP6プロモーターなどを有するpEU系プラスミド等の小麦無細胞タンパク質合成用ベクターなどが例示される。
ベクターには、転写を進める要素(プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、分泌シグナル配列、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)など)、選択マーカーなどの、本発明のポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドが含まれていてもよい。転写に必要な要素は、宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であればよく、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。転写に必要な要素は、本発明のポリヌクレオチドに作動可能に連結されていればよい。
プロモーターとしては、植物ウイルス由来プロモーター(カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35sプロモーターなど)、植物由来プロモーター(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)アクチン2プロモーターなど)が挙げられる。プロモーターは、形質転換の対象となる生物以外の生物(微生物、動物、昆虫、植物、ウイルスなど)に由来するプロモーターであってもよい。このようなプロモーターとしては、PhoAプロモーター、PhoCプロモーター、T7プロモーター、T5プロモーター、T3プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、PRプロモーター、PLプロモーター、SP6プロモーター、アラビノース誘導プロモーター、コールドショックプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーターなどが例示される。
ターミネーターとしては、T7ターミネーター、fdファージターミネーター、T4ターミネーター、テトラサイクリン耐性遺伝子のターミネーター、エシェリヒア・コリtrpA遺伝子のターミネーターなどが例示される。
ポリアデニル化シグナルとしては、アグロバクテリウムTiプラスミド由来のノパリン合成酵素遺伝子のポリAシグナル、カリフラワーモザイクウイルスのポリAシグナル配列などが例示される。
選択マーカーとしては、薬剤耐性遺伝子(アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ヒグロマイシン、ビアラフォス、ビスピリバックソディウムなど)、蛍光タンパク質遺伝子(Ds−Red、EGFPなど)などが例示される。本発明のベクターは、これらのポリヌクレオチドのうち1種有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
本発明のベクターの作成方法は特に限定されない。例えば、挿入前のベクターに本発明のポリヌクレオチドおよび本発明のポリヌクレオチド以外の所望のポリヌクレオチドを作動可能に連結し挿入することにより得ればよい。例えば、ポリヌクレオチドを制限酵素で切断し、ベクターの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに連結または挿入することによりベクターを得る方法が挙げられる。また、Gateway system(インビトロジェン社)による組換えシステムを用いて所望のポリヌクレオチドが挿入されたベクターを得る方法が挙げられる。
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターを含む形質転換体を提供する。形質転換体の例としては、上記で宿主として述べた植物および動物、ならびに微生物(例、菌類)が挙げられる。形質転換体が植物である場合、例えば、種子または苗の形態であってもよい。
本発明の形質転換体は、本発明のポリヌクレオチドを発現してタンパク質を産生できる宿主又は宿主細胞であればよく、例えば、本発明のポリヌクレオチドおよびそれに作動可能に連結された本発明のポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドを含む宿主、または宿主細胞が挙げられる。本発明のポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドの例および好ましい例は、本発明のベクターの説明にて示した例および好ましい例と同様である。
本発明はまた、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、および本発明の形質転換体からなる群より選ばれる1種以上を有効成分とする、宿主細胞のウイルス複製阻害剤を提供する。この場合、形質転換体は、微生物であることが好ましい。本発明のウイルス複製阻害剤は、農薬として用いてもよく、特に、植物(例、ダイズ属、タバコ属、ナス属、およびアブラナ属)用農薬として用いてもよい。
本発明のウイルス複製阻害剤を農薬として用いる場合、有効成分の含有量は、有効成分の種類、施用植物の種類、剤形、及び施用(接触)方法等の諸条件によって適宜定め得る。通常は、本発明のウイルス複製阻害剤を施用する際に、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターが施用植物体内に侵入する上で十分な量を含んでいることが好ましい。必要に応じて施用時には、水、食塩水、5%以下のマンニトール水、バッファー等でさらに10〜1000倍に希釈してもよい。
本発明のウイルス複製阻害剤を農薬として用いる場合、農薬は、農薬製剤上許容可能な担体を含むことができる。
本明細書において「農薬製剤上許容可能な担体」とは、微生物農薬の施用を容易にし、有効成分である微生物の生存性及び植物感染性を維持又は/及び微生物農薬の作用速度を制御する物質であって、植物の栽培に施用しても土壌及び水質等の環境に対する有害な影響がないか又は小さい、又は動物、特にヒトに対する有害性がないか又は低い物質をいう。例えば、溶媒及び補助剤が挙げられる。
溶媒としては、例えば、水(滅菌水、脱イオン水、超純水を含む)、バッファー(リン酸緩衝液、炭酸緩衝液を含む)、生理的食塩水、有効成分である微生物の培地又はそれらの混合溶媒が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、粉砕天然鉱物、粉砕合成鉱物、乳化剤、分散剤及び界面活性剤等が挙げられる。
粉砕天然鉱物には、例えば、カオリン、クレイ、タルク及びチョークが挙げられる。
粉砕合成鉱物には、例えば、高分散シリカ及びシリケートが挙げられる。乳化剤としては、非イオン性乳化剤やアニオン性乳化剤(例えば、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、アルキルスルホネート及びアリールスルホネート)が挙げられる。
分散剤としては、例えば、リグノ亜硫酸廃液及びメチルセルロースが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、リグノスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、脂肪アルコールスルフェート、脂肪酸及び硫酸化脂肪アルコールグリコールエーテル、さらに、スルホン化ナフタレン及びナフタレン誘導体とホルムアルデヒドの縮合物、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリステアリルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、アルコール及び脂肪アルコール/エチレンオキシドの縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エトキシル化ポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル、リグノ亜硫酸廃液、及びメチルセルロースが挙げられる。
本発明のウイルス複製阻害剤を農薬として用いる場合、農薬は、前記農薬製剤上許容可能な担体を1以上包含することが可能である。また、この他に、有効成分である微生物の生存性、および植物感染性に影響しない範囲において、他の薬理作用を有する有効成分、すなわち、殺虫剤、除草剤、肥料(例えば、尿素、硝酸アンモニウム、過リン酸塩)を包含することもできる。
本発明のウイルス複製阻害剤を農薬として用いる場合、農薬の剤形は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターが施用植物体内に侵入し得る状態であれば、いかなる状態であってもよく、例えば、液体状態の液剤、固体状態の固形剤とすることができる。液剤の場合、有効成分を適当な溶液に懸濁した溶液剤、油性分散液剤、エマルション剤、懸濁剤が挙げられる。固形剤の場合、有効成分が、施用植物に作用し得る状態であれば、特に制限はない。例えば、粉剤、散剤、ペースト剤、ゲル剤が挙げられる。
本発明はまた、本発明の融合タンパク質を非ヒト宿主細胞(例、植物および動物)内で発現させることを含む、RNAウイルスの増殖を抑制する方法を提供する。本発明の融合タンパク質は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターを宿主細胞に導入することにより発現させてもよい。
本発明はまた、上述した方法によりRNAウイルスの増殖を抑制することを含む、耐病性非ヒト生物(例、植物および動物)の生産方法を提供する。
本発明において、宿主を形質転換する方法は特に限定されず、当該分野で公知のいずれの方法を用いてもよい。宿主を形質転換する方法としては、安定的遺伝子導入法(例、遺伝子改変法、ゲノム編集技術)、一過的遺伝子導入法(例、ベクターの一過的導入)、いわゆる新育種技術(NBT:例、シスジェネシス、イントラジェネシス)が挙げられる。シスジェネシス/イントラジェネシスにより、GM規制を受けないウイルス抵抗性植物をRNAウイルスに対し分子設計できるようになる可能性がある。
本発明は、宿主遺伝子を発現抑制する必要がないため、宿主の生育への悪影響がほとんど生じないことが期待できる。ウイルスが増殖に利用している宿主因子は、翻訳伸長因子、分子シャペロン、膜輸送関係因子など保存性の高い因子が含まれていることから、これらの宿主因子に本発明を適用可能であり、多くのウイルスに対して抵抗性を示すスーパー植物も作製可能となり得る。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。下記実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
実施例1:TOM1−RTL2融合タンパク質によるToMVの増殖抑制
(1)実験の目的
タバコモザイクウイルス(TMV)やトマトモザイクウイルス(ToMV)を含むトバモウイルス属のウイルスの複製には宿主膜タンパク質TOM1が必須であり、TOM1は複製複合体の構成因子と考えられている(Ishibashi et al. Current Opinion in Virology 2:1−6 [2012])。そこで、TOM1−RTL2融合タンパク質発現植物がToMVの増殖を抑制するかどうかを検討した。
(2)融合タンパク質発現植物の作成
本実施例では、タバコTOM1(配列番号:2)およびシロイヌナズナRTL2(配列番号:1)を10残基のグリシンからなるリンカー(配列番号:5)を介して融合したタンパク質を、TOM1−RTL2融合タンパク質として用いた。ネガティブコントロールとして、TOM1−RTL2融合タンパク質の代わりに、RTL2のみ、あるいはRTL2のdsRNase活性中心に変異(D100A)をもつTOM1−RTL2(D100A)融合タンパク質を用いた。各タンパク質をコードするポリヌクレオチドをpMLH7133(Mochizuki et al.(1999)Entomologia Experimentalis et Applicata 93,173−178)にクローニングして発現ベクターを得た。得られた発現ベクターを用いたアグロインフィルトレーション法により、各タンパク質をNicotiana benthamiana葉に発現させた。
(3)植物へのウイルス接種
アグロインフィルトレーション後2日目の葉にToMVを機械的に接種した。ToMV接種源としては、MluIで切断したプラスミドpTLW3(Kubota et al.(2003)J.Virol.77:11016−11026)を鋳型にAmpliCap−MaxTM T7High Yield Message Maker Kits(CELLSCRIPT社)を用いて試験管内転写した反応液を水で5倍希釈したものを使用した。ToMV接種後5日目の接種葉を破砕してSDS−PAGEに供し、CBB染色により約17.5kDaの外被タンパク質(CP)の蓄積を検出した。Mockとして、アグロインフィルトレーションをしていないToMV非接種の葉より同様に抽出したサンプルを用いた。結果を図1に示す。
(4)結果の考察
結果から、TOM1−RTL2融合タンパク質発現葉にToMVを接種したところ、ネガティブコントロールとして用いたRTL2のみあるいは活性中心に変異をもつTOM1−RTL2(D100A)発現葉と比較してToMV増殖が顕著に抑制されたことが示された。期待通りTOM1との融合によってRTL2がウイルス複製の場に潜り込み、生じた二本鎖RNAを分解して増殖を抑制したと考えられる。
実施例2:TIP1−RTL2融合タンパク質によるCMVの増殖抑制
(1)実験の目的
キュウリモザイクウイルス(CMV)はククモウイルス属のウイルスで、ウリ科植物の他、ナス科やアブラナ科など広範な作物に大きな被害を与える重要病原体であるが、ほとんどの作物には抵抗性遺伝資源がない。CMVの複製タンパク質と相互作用する宿主タンパク質として、液胞膜に局在するアクアポリンであるTIP1が報告されている(Kim et al. J Gen Virol 87:3425−31 [2006])。しかしTIP1は発現抑制により植物の生育が阻害されるため、TIP1が実際にウイルスの複製に関与しているという遺伝学的証拠はない。TIP1−RTL2融合タンパク質発現植物がCMVの増殖を抑制するかどうかを検討した。
(2)融合タンパク質発現植物の作成
本実施例では、シロイヌナズナTIP1;1(配列番号:3)およびシロイヌナズナRTL2(配列番号:1)を10残基のグリシンからなるリンカー(配列番号:5)を介して融合したタンパク質を、TIP1−RTL2融合タンパク質として用いた。ネガティブコントロールとして、TIP1−RTL2融合タンパク質の代わりに、RTL2のみ、あるいはRTL2のdsRNase活性中心に変異(D100A)をもつTIP1−RTL2(D100A)融合タンパク質を用いた。各タンパク質をコードするポリヌクレオチドをpMLH7133(Mochizuki et al. (1999) Entomologia Experimentalis et Applicata 93, 173−178)にクローニングして発現ベクターを得た。得られた発現ベクターを用いたアグロインフィルトレーション法により、各タンパク質をNicotiana benthamiana葉に発現させた。
(3)植物へのウイルス接種
アグロインフィルトレーション後2日目の葉にCMVを機械的に接種した。CMV接種源としては、精製ウイルス粒子より抽出したRNAを使用した。CMV接種後4日目の接種葉を破砕してSDS−PAGEに供し、CBB染色により約24kDaの外被タンパク質(CP)の蓄積を検出した。バンドの強度をImage Jを用いて定量した。結果を図2に示す。
(4)結果の考察
結果から、TIP1−RTL2融合タンパク質発現葉にCMVを接種したところ、ネガティブコントロールとして用いたRTL2のみあるいは活性中心に変異をもつTIP1−RTL2(D100A)発現葉と比較してCMV増殖が顕著に抑制されたことが示された。したがって、本発明はCMVにも有効であることとともに、TIP1は確かにウイルス複製の場に存在することが示唆された。
実施例3:eIF(iso)4E−RTL2融合タンパク質によるTuMVの増殖抑制
(1)実験の目的
カブモザイクウイルス(TuMV)はポティウイルス属のウイルスである。ポティウイルス属は162種が正式に登録されており、種々の作物において被害が報告されている。ポティウイルス属ウイルスに対する劣性抵抗性遺伝子が多くの植物から同定されており、その多くは翻訳開始因子eIF4E/eIF(iso)4Eをコードしていることが知られている(Sanfacon Viruses 7:3392−3419 [2015])。シロイヌナズナのeIF(iso)4E変異株はTuMVに対して抵抗性を示すことから、TuMVはeIF(iso)4Eを利用して増殖すると考えられている(Lellis et al. Curr Biol 12:1046−1051 [2002])。eIF(iso)4EはウイルスゲノムRNAの翻訳に関わっていると推測されるが、ウイルス複製の場にも存在し、複製にも関わっている可能性が指摘されている(Beauchemin et al. J Virol 81: 775−782 [2007])。eIF(iso)4E−RTL2融合タンパク質発現植物がTuMVの増殖を抑制するかどうかを検討した。
(2)融合タンパク質発現植物の作成
本実施例では、シロイヌナズナeIF(iso)4E(配列番号:4)およびシロイヌナズナRTL2(配列番号:1)を10残基のグリシンからなるリンカー(配列番号:5)を介して融合したタンパク質を、eIF(iso)4E−RTL2融合タンパク質として用いた。ネガティブコントロールとして、TOM1−RTL2融合タンパク質の代わりに、RTL2のみ、あるいはRTL2のdsRNase活性中心に変異(D100A)をもつeIF(iso)4E−RTL2(D100A)融合タンパク質を用いた。各タンパク質をコードするポリヌクレオチドをpMLH7133(Mochizuki et al. (1999) Entomologia Experimentalis et Applicata 93, 173−178)にクローニングして発現ベクターを得た。得られた発現ベクターを用いたアグロインフィルトレーション法により、各タンパク質をNicotiana benthamiana葉に発現させた。
(3)植物へのウイルス接種
アグロインフィルトレーション後2日目の葉にTuMVを機械的に接種した。TuMV接種源としては、ウイルス感染葉破砕液を使用した。TuMV接種後4日目の接種葉を破砕してWestern解析により外被タンパク質(CP)を検出した。抗TuMV CP抗体は、日本植物防疫協会より購入した。結果を図3に示す。
(4)結果の考察
結果から、eIF(iso)4E−RTL2融合タンパク質発現葉にTuMVを接種したところ、ネガティブコントロールとして用いたRTL2のみあるいは活性中心に変異をもつeIF(iso)4E−RTL2(D100A)発現葉と比較してTuMV増殖が顕著に抑制されたことが示された。
配列番号 1 シロイヌナズナRTL2(RNAse THREE−like protein 2)のアミノ酸配列:AT3G20420
配列番号 2 タバコTOM1(Tobamovirus Multiplication 1)のアミノ酸配列:LOC107774702
配列番号 3 シロイヌナズナTIP1;1(Tonoplast intrinsic protein 1−1)のアミノ酸配列:AT2G36830
配列番号 4 eIF(iso)4E (Eukaryotic translation initiation factor isoform 4E)のアミノ酸配列:AT5G35620
配列番号 5 10残基のグリシンからなるリンカーのアミノ酸配列
配列番号 6 シロイヌナズナRTL2(RNAse THREE−like protein 2)をコードする塩基配列:AT3G20420
配列番号 7 タバコTOM1(Tobamovirus Multiplication 1)をコードする塩基配列:LOC107774702
配列番号 8 シロイヌナズナTIP1;1(Tonoplast intrinsic protein 1−1)をコードする塩基配列:AT2G36830
配列番号 9 eIF(iso)4E (Eukaryotic translation initiation factor isoform 4E)をコードする塩基配列:AT5G35620
配列番号 10 10残基のグリシンからなるリンカーをコードする塩基配列

Claims (22)

  1. (A)二本鎖リボヌクレオチド分解酵素活性タンパク質、および
    (B)宿主に由来するRNAウイルス複製複合体の構成タンパク質
    を含む融合タンパク質。
  2. 前記(A)が、ダイズ属植物またはアラビドプシス属植物に由来する、請求項1に記載の融合タンパク質。
  3. 前記(A)が、RTL2またはRsv4である、請求項2に記載の融合タンパク質。
  4. 前記(B)が、アクアポリン、イオンチャンネル、翻訳開始因子、翻訳伸長因子、分子シャペロン、膜構成タンパク質、および膜輸送因子からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
  5. 前記(B)が、TOM1、TIP1、およびeIF(iso)4Eからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項4に記載の融合タンパク質。
  6. 前記RNAウイルスが、プラス鎖RNAウイルスである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
  7. 前記プラス鎖RNAウイルスが、トバモウイルス属、ククモウイルス属、ポティウイルス属、ルビウイルス属、ヘパシウイルス属、またはコロナウイルス属に属するウイルスである、請求項6に記載の融合タンパク質。
  8. 宿主細胞が植物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
  9. 宿主細胞が、ダイズ属、タバコ属、ナス属、およびアブラナ属からなる群より選ばれる植物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  11. 請求項10に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  12. 請求項10に記載のポリヌクレオチドまたは請求項11に記載のベクターを含む形質転換体。
  13. 植物である、請求項12に記載の形質転換体。
  14. 種子または苗である、請求項12又は13に記載の形質転換体。
  15. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項10に記載のポリヌクレオチド、請求項11に記載のベクター、および請求項12〜14のいずれか1項に記載の形質転換体からなる群より選ばれる1種以上を有効成分とする、宿主細胞のウイルス複製阻害剤。
  16. 農薬である、請求項15に記載の剤。
  17. ダイズ属、タバコ属、ナス属、およびアブラナ属からなる群より選ばれる植物用農薬である、請求項16に記載の剤。
  18. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の融合タンパク質を非ヒト宿主細胞内で発現させることを含む、RNAウイルスの増殖を抑制する方法。
  19. 前記発現が、請求項10に記載のポリヌクレオチドまたは請求項11に記載のベクターを宿主細胞に導入することによる発現である、請求項18に記載の方法。
  20. 非ヒト宿主細胞が植物である、請求項18又は19に記載の方法。
  21. 請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法によりRNAウイルスの増殖を抑制することを含む、耐病性非ヒト生物の生産方法。
  22. 非ヒト生物が植物である、請求項21に記載の方法。
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