JP2018178805A - 内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】予混合圧縮自着火燃焼を行う内燃機関において、内燃機関の出力や燃焼への影響を小さく抑えつつ、混合気の自着火時期を適切に制御する。【解決手段】内燃機関は、燃料噴射弁31と、内燃機関のアクチュエータを制御する制御装置70とを備える。制御装置は、予混合気の目標自着火時期を算出する目標自着火時期算出処理と、混合気の予想自着火時期を算出する自着火時期算出処理と、予想自着火時期が目標自着火時期に一致するようにアクチュエータの操作パラメータの値を補正する補正処理と、を実行する。制御装置は、補正処理において、予想自着火時期と目標自着火時期との差が所定の基準値未満の場合には燃料噴射時期のみを補正し、基準値以上である場合には、燃料噴射時期以外の少なくとも一つの操作パラメータを補正する。【選択図】図9

Description

本発明は、内燃機関に関する。
従来から、拡散燃焼によって混合気を燃焼させる圧縮自着火式の内燃機関において、燃料の着火時期を制御するために、燃料の噴射時期を調整することが知られている(例えば、特許文献1)。例えば、特許文献1に記載の内燃機関では、噴射される燃料の目標自着火時期と、噴射される燃料の実際の自着火時期とを特定し、目標自着火時期と実際の自着火時期との差に基づいて、この差が無くなるように燃料の噴射時期及び吸気弁の閉弁時期を制御するようにしている。特に、特許文献1に記載の内燃機関では、補正前の燃料の噴射時期が所定の基準値よりも進角側であるか遅角側であるかに基づいて、燃料の噴射時期及び吸気弁の閉弁時期のいずれを制御するかを決めている。
特開2007−100653号公報
ところで、予混合気を自着火によって燃焼させる内燃機関が検討されている。斯かる内燃機関では、燃料の噴射時期以外にも様々なパラメータを変更することにより、混合気の自着火時期を制御することができると共に、燃料の噴射時期及び吸気弁の閉弁時期のみでは必ずしも適切に混合気の自着火時期を制御することができない。一方で、燃料の噴射時期以外のパラメータの中には変更すると内燃機関の出力トルクが変化してしまったり、応答性が遅かったりするパラメータがあり、これらパラメータの制御態様によっては出力変動や燃焼悪化等を招く虞がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、予混合気を自着火によって燃焼させる内燃機関において、内燃機関の出力や燃焼への影響を小さく抑えつつ、混合気の自着火時期を適切に制御することにある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1) 燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、該燃料噴射弁を含む内燃機関のアクチュエータを制御する制御装置とを備えた内燃機関であって、前記制御装置は、機関負荷及び機関回転数に基づいて前記燃料噴射弁を含む内燃機関のアクチュエータを制御すると共に、このときの目標自着火時期を算出する目標自着火時期算出処理と、前記燃焼室内の混合気の実自着火時期又は予想自着火時期を算出する自着火時期算出処理と、前記実自着火時期又は前記予想自着火時期が前記目標自着火時期に一致するように前記燃料噴射弁を含む内燃機関のアクチュエータの操作パラメータの値を補正する補正処理と、を実行するように構成され、前記制御装置は、前記補正処理において、前記実自着火時期又は前記予想自着火時期と前記目標自着火時期との差が所定の基準値未満の場合には前記操作パラメータのうち燃料噴射時期のみを補正すると共に、前記実自着火時期又は前記予想自着火時期と前記目標自着火時期との差が前記基準値以上である場合には、前記燃料噴射時期に加えて又は前記燃料噴射時期を補正せずに、前記操作パラメータのうち燃料噴射時期以外の少なくとも一つの操作パラメータを補正する、内燃機関。
(2)前記制御装置は、前記補正処理において、前記実自着火時期又は前記予想自着火時期と前記目標自着火時期との差が前記基準値以上であっても、前記基準値よりも大きい所定の第二基準値未満である場合には前記燃料噴射弁からの燃料噴射量は補正せず、且つ、前記実自着火時期又は前記予想自着火時期と前記目標自着火時期との差が前記第二基準値以上である場合には前記燃料噴射量も補正する、上記(1)に記載の内燃機関。
(3)前記制御装置は、当該内燃機関の定常運転中に前記燃料噴射時期の補正量が所定の閾値以上である場合には、前記燃料噴射時期の補正量を減少させると共に該燃料噴射時期の補正量の減少に伴って自着火時期が変化する方向とは逆方向に自着火時期が変化するように前記燃料噴射時期以外の少なくとも一つの操作パラメータの値を補正する、上記(1)又は(2)に記載の内燃機関。
本発明によれば、予混合気を自着火によって燃焼させる内燃機関において、内燃機関の出力や燃焼への影響を小さく抑えつつ、混合気の自着火時期を適切に制御することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関全体の概略図である。 図2は、機関本体の断面図である。 図3は、各運転モードでの運転が行われる運転領域を示す図である。 図4A及び図4Bは、吸気弁及び排気弁のリフト量の推移を示す図である。 図5は、燃料噴射率及び熱発生率のクランク角推移を示す図である。 図6は、制御装置における機能ブロック図である。 図7は、筒内圧力、吸気弁のリフト量及び燃料噴射率のクランク角推移を示す図である。 図8は、基本的な燃焼制御を行う基本燃焼制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。 図9は、各アクチュエータの補正量を算出する補正量算出制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。 図10は、各アクチュエータの補正量を算出する補正量算出制御の制御ルーチンを示す、図9と同様なフローチャートである。 図11は、燃焼噴射時期の補正量を他の操作パラメータの補正量に変換する学習補正制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。 図12は、第四実施形態に係る内燃機関の概略的な構成図である。 図13は、燃料噴射率及び熱発生率のクランク角推移を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
<第一実施形態>
≪内燃機関全体の説明≫
まず、図1及び図2を参照して第一実施形態に係る内燃機関1の構成について説明する。図1は、ガソリンを燃料とする内燃機関1の概略的な構成図である。図2は、内燃機関1の機関本体10の概略的な断面図である。
図1及び図2に示したように、内燃機関1は、機関本体10、可変動弁機構20、燃料供給装置30、吸気系40、排気系50、EGR機構60、及び制御装置70を備える。
機関本体10は、複数の気筒11が形成されたシリンダブロック12と、シリンダヘッド13とを備える。各気筒11内には、各気筒11内を往復運動するピストン14が配置されている。ピストン14とシリンダヘッド13との間の気筒11内には混合気が燃焼する燃焼室15が形成されている。
シリンダヘッド13には、吸気ポート17及び排気ポート18が形成されている。これら吸気ポート17及び排気ポート18は各気筒11の燃焼室15に連通している。燃焼室15と吸気ポート17との間には吸気弁21が配置されて、この吸気弁21が吸気ポート17を開閉する。同様に、燃焼室15と排気ポート18との間には排気弁22が配置されて、この排気弁22が排気ポート18を開閉する。
可変動弁機構20は、各気筒の吸気弁21を開閉駆動する吸気可変動弁機構23と、各気筒の排気弁22を開閉駆動する排気可変動弁機構24とを備える。吸気可変動弁機構23は、吸気弁21の開弁時期、閉弁時期やリフト量を制御可能である。同様に、排気可変動弁機構24は、排気弁22の開弁時期、閉弁時期やリフト量を制御可能である。これら可変動弁機構23、24は、電磁アクチュエータによって吸気弁21や排気弁22を開閉駆動することで開弁時期等を変更するように構成されている。或いは、これら可変動弁機構23、24は、油圧等によって、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対位相を変更したり、カムプロフィールを変更したりすることで開弁時期等を変更するように構成されてもよい。
燃料供給装置30は、燃料噴射弁31、デリバリパイプ32、燃料供給管33、燃料ポンプ34、及び燃料タンク35を備える。燃料噴射弁31は、各気筒11の燃焼室15内に燃料を直接噴射するようにシリンダヘッド13に配置されている。
燃料噴射弁31は、デリバリパイプ32及び燃料供給管33を介して燃料タンク35に連結されている。燃料供給管33には、燃料タンク35内の燃料を圧送する燃料ポンプ34が配置される。燃料ポンプ34によって圧送された燃料は、燃料供給管33を介してデリバリパイプ32に供給され、燃料噴射弁31が開弁されるのに伴って燃料噴射弁31から燃焼室15内に直接噴射される。
吸気系40は、吸気枝管41、サージタンク42、吸気管43、エアクリーナ44、排気ターボチャージャ5のコンプレッサ5a、インタークーラ45、及びスロットル弁46を備える。各気筒11の吸気ポート17はそれぞれ対応する吸気枝管41を介してサージタンク42に連通しており、サージタンク42は吸気管43を介してエアクリーナ44に連通している。吸気管43には、吸気管43内を流通する吸入空気を圧縮して吐出する排気ターボチャージャ5のコンプレッサ5aと、コンプレッサ5aによって圧縮された空気を冷却するインタークーラ45とが設けられている。インタークーラ45は、吸入空気の流れ方向においてコンプレッサ5aの下流側に配置されている。スロットル弁46は、インタークーラ45とサージタンク42との間の吸気管43内に配置されている。スロットル弁46は、スロットル弁駆動アクチュエータ47によって回動せしめられることで、吸気通路の開口面積を変更することができる。なお、吸気ポート17、吸気枝管41、サージタンク42、及び吸気管43は、燃焼室15に吸気ガスを供給する吸気通路を形成する。
排気系50は、排気マニホルド51、排気管52、排気ターボチャージャ5のタービン5b、及び排気後処理装置53を備える。各気筒11の排気ポート18は、排気マニホルド51に連通しており、排気マニホルド51は排気管52に連通している。排気管52には、排気ターボチャージャ5のタービン5bが設けられている。タービン5bは、排気ガスのエネルギによって回転駆動せしめられる。排気ターボチャージャ5のコンプレッサ5aとタービン5bとは回転軸によって接続されており、タービン5bが回転駆動せしめられると、これに伴ってコンプレッサ5aが回転し、よって吸入空気が圧縮せしめられる。また、排気管52にはタービン5bの排気流れ方向下流側において排気後処理装置53が設けられている。排気後処理装置53は、排気ガスを浄化した上で外気中に排出するための装置であって、有害物質を浄化する各種の排気浄化触媒や有害物質を捕集するフィルタなどを備える。なお、排気ポート18、排気マニホルド51、及び排気管52は、燃焼室15から排気ガスを排出する排気通路を形成する。
EGR機構60は、EGR管61と、EGR制御弁62と、EGRクーラ63とを備える。EGR管61は、排気マニホルド51とサージタンク42とに連結され、これらを互いに連通させる。EGR管61には、EGR管61内を流れるEGRガスを冷却するEGRクーラ63が設けられている。加えて、EGR管61には、EGR管61によって形成されるEGR通路の開口面積を変更することができるEGR制御弁62が設けられている。EGR制御弁62の開度を制御することによって、排気マニホルド51からサージタンク42へ還流させるEGRガスの流量が調整される。
制御装置70は、電子制御ユニット(ECU)71及び各種センサを備える。ECU71は、デジタルコンピュータから構成され、双方向性バス72を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)73、ROM(リードオンリメモリ)74、CPU(マイクロプロセッサ)75、入力ポート76、及び出力ポート77を備える。
シリンダヘッド13には、各気筒11内の圧力(筒内圧力)を検出するための筒内圧センサ81が配置される。また、デリバリパイプ32には、デリバリパイプ32内の燃料の圧力、すなわち燃料噴射弁31から気筒11内に噴射される燃料の圧力(噴射圧)を検出するための燃圧センサ82が設けられている。吸気管43には、排気ターボチャージャ5のコンプレッサ5aの吸気流れ方向上流側に、吸気管43内を流れる空気の流量を検出するエアフロメータ83が設けられている。スロットル弁46には、その開度(スロットル開度)を検出するためのスロットル開度センサ84が設けられている。加えて、サージタンク42には、サージタンク42内の吸気ガスの圧力、すなわち気筒11内に吸入される吸気ガスの圧力(吸気圧)を検出するための吸気圧センサ85が設けられている。さらに、サージタンク42には、サージタンク42内の吸気ガスの温度、すなわち気筒11内に吸入される吸気ガスの温度(吸気温)を検出するための吸気温センサ86が設けられている。これら、筒内圧センサ81、燃圧センサ82、エアフロメータ83、スロットル開度センサ84、吸気圧センサ85及び吸気温センサ86の出力は、対応するAD変換器78を介して入力ポート76に入力される。
また、アクセルペダル87にはアクセルペダル87の踏み込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ88が接続され、負荷センサ88の出力電圧は対応するAD変換器78を介して入力ポート76に入力される。したがって、本実施形態では、アクセルペダル87の踏み込み量が機関負荷として用いられる。クランク角センサ89は例えば機関本体10のクランクシャフトが例えば15度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート76に入力される。CPU75ではこのクランク角センサ89の出力パルスから機関回転速度が計算される。
一方、ECU71の出力ポート77は、対応する駆動回路79を介して、内燃機関1の運転を制御する各アクチュエータに接続される。図1及び図2に示した例では、出力ポート77は、点火プラグ16、吸気可変動弁機構23、排気可変動弁機構24、燃料噴射弁31、燃料ポンプ34、スロットル弁駆動アクチュエータ47、及びEGR制御弁62に接続されている。ECU71は、これらアクチュエータを制御する制御信号を出力ポート77から出力して、内燃機関1の運転を制御する。
≪基本的な燃焼制御≫
次に、図3〜図5を参照して、本実施形態の制御装置70の制御部による基本的な燃焼制御について説明する。本実施形態では、制御装置70の制御部は、火花点火運転モード(以下、「SI運転モード」という)と圧縮自着火運転モード(以下、「CI運転モード」という)との二つの運転モードにて内燃機関の運転を行う。
制御装置70の制御部は、SI運転モードでは、基本的に燃焼室15内に理論空燃比又は理論空燃比近傍の予混合気を形成し、この予混合気に点火プラグ16による点火を行う。これにより、予混合気が燃焼室15内で火炎伝播燃焼する。
また、制御装置70の制御部は、CI運転モードでは、基本的に燃焼室15内に理論空燃比よりもリーンな空燃比(例えば、30〜40程度)の予混合気を形成し、その予混合気を圧縮自着火燃焼させる。特に、本実施形態では、予混合気として、燃焼室15の中央部に可燃層を有すると共に気筒11の内壁面周りに空気層を有する成層予混合気を形成している。
予混合圧縮自着火燃焼は、火炎伝播燃焼と比べて空燃比をリーンにしても実施することができ、また圧縮比を高くしても実施することができる。そのため、予混合圧縮自着火燃焼を実施することで、燃料消費量を低減させられると共に熱効率を向上させることができ、結果として燃費性能を向上させることができる。また、予混合圧縮自着火燃焼は、火炎伝播燃焼と比べて燃焼温度が低くなるため、NOxの発生を抑制することができる。さらに燃料の周りには十分な酸素が存在するため、未燃HCの発生も抑制することができる。
また、予混合圧縮自着火燃焼では、燃焼室15内で混合気が自着火するまでには反応時間が必要であり、機関回転速度が高くなると、混合気が自着火するのに必要な反応時間を確保することができなくなると共に単位時間当たりの圧力上昇が高くなり過ぎて燃焼騒音が大きくなる。このため、機関回転速度が高い領域ではSI運転モードでの運転が行われる。また、機関負荷が高くなって内燃機関による発生トルクが大きくなるとノッキングが発生することになり、良好な自着火燃焼を行うことができなくなる。また、この場合にも、単位時間当たりの圧力上昇が高くなり過ぎて燃焼騒音が大きくなる。このため、機関負荷が高い領域でもSI運転モードでの運転が行われる。この結果、本実施形態では、機関負荷及び機関回転速度から把握される機関運転状態が図3において実線で囲まれた自着火運転領域RR内にあれば、CI運転モードにより内燃機関が運転され、自着火運転領域RR外の領域にあれば、SI運転モードにより内燃機関が運転される。
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態のCI運転モードにおける可変動弁機構20及び燃料噴射弁31の制御について説明する。
予混合圧縮自着火燃焼を実施するには、予混合気を自着火させることが可能な温度まで各気筒11内の温度(筒内温度)を上昇させる必要があり、SI運転モード中のように予混合気を燃焼室15内で全て火炎伝播燃焼させるときよりも筒内温度を高温にする必要がある。そのため本実施形態では、例えば図4A及び図4Bに示すように、CI運転モード中は、必要に応じて排気弁22が排気行程の他に吸気行程でも開弁するように排気可変動弁機構24を制御している。このように、排気弁22を吸気行程中に再度開弁する排気弁2度開き動作を実施することで、排気行程中に或る気筒から排出された高温の排気ガスを直後の吸気行程中にその気筒に吸い戻させることができる。これにより筒内温度を上昇させて、各気筒11の筒内温度を、予混合圧縮自着火燃焼を実施可能な温度に維持している。
図4Aに示すように、吸気弁21のリフト量が小さいときに排気弁22を開弁すれば、多量の排気ガスを自気筒に吸い戻すことができるので、筒内温度を大きく上昇させることができる。一方で図4Bに示すように、吸気弁21のリフト量がある程度大きくなった後に排気弁22を開弁すれば、筒内にある程度空気(新気)が吸入された後に排気ガスが吸い戻されることになるので、自気筒に吸い戻される排気ガスの量を抑えて筒内温度の上昇幅を抑えることができる。このように、排気弁2度開き動作を実施する時期に応じて、筒内温度の上昇幅を制御することができる。
加えて、CI運転モードでは、図5に示したように、吸気弁21の閉弁後の比較的早い時期に、燃料噴射弁31からの燃料噴射が行われる。図5は、吸気弁21の閉弁後の圧縮行程中の任意の時期(例えば、−50[deg.ATDC])に、燃料噴射弁31から機関負荷に応じた量の燃料を1回だけ噴射して予混合気を自着火燃焼させた場合の燃料噴射率及び熱発生率のクランク角推移を示す図である。ここで、熱発生率は、予混合気の燃焼によって生じる単位クランク角あたりの熱量、すなわち単位クランク角あたりの熱発生量を意味する。
図5に示したように、時期Tijにおいて燃料噴射弁31からの燃料噴射が行われる。このように燃料噴射弁31から噴射された燃料は時間の経過に伴って燃焼室15内に拡散して予混合気を形成する。また、圧縮上死点に向かってピストンが上昇するため、筒内温度及び筒内圧力は時間の経過に伴って徐々に上昇していく。そして、燃焼室15内に予混合気が形成されると共に筒内温度及び筒内圧力が十分に上がると、時期Tigにおいて予混合気が自着火する。このような自着火は、燃焼室15内で一斉に生じることから、図5に示したように、時期Tig以降、熱発生率は急激に上昇する。
≪CI運転モードにおける燃焼制御≫
次に、図6及び図7を参照して、CI運転モードにおける燃焼制御について説明する。図6は、制御装置70における機能ブロック図である。
図6に示したように、制御装置70は、筒内状態量算出部A10、予想自着火時期算出部A20、目標自着火時期算出部A30、着火時期差分算出部A40、補正量算出部A50、及び操作量演算部A60と、を備える。
筒内状態量算出部A10は、燃焼室15内の状態量を算出する状態量算出処理を行う。燃焼室15内の状態量としては、例えば、燃焼室15内の混合気の当量比、筒内温度、筒内圧力、混合気中の酸素濃度等が挙げられる。これら各状態量に対応して、筒内状態量算出部A10は、当量比算出部A11、圧力算出部A12、温度算出部A13及び酸素濃度算出部A14を備える。なお、燃焼室15内の状態量としては、この他にも、例えば、オクタン価等、他の状態量が算出されてもよく、この場合、筒内状態量算出部は、当該他の状態量を算出するための算出部を更に備える。
当量比算出部A11は、燃焼室15内に供給される吸入空気量Mc、及び燃料噴射弁31から噴射される燃料噴射量Qij等に基づいて燃焼室15内の混合気の当量比φcの推移が算出される。吸入空気量Mcは、エアフロメータ83によって計測されてもよいし、モデル等を用いて算出されてもよい。また、燃料噴射量Qijは、ECU71から燃料噴射弁31の指令値に基づいて算出される。
圧力算出部A12は、吸入空気量Mc、燃焼室15内に供給されるEGRガス量Megr、吸気通路(サージタンク42)内の圧力Pm、吸気弁21の閉弁時期IVC、吸気ガスの温度(サージタンク内の温度)、及び機関冷却水の温度等に基づいて、筒内圧力Pcの推移を算出する。EGRガス量Megrは、例えば、EGR制御弁62の開度、排気弁22の開閉弁時期等に基づいて算出される。また、吸気通路内の圧力Pmは、吸気圧センサ85によって測定されてもよいし、モデル等を用いて算出されてもよい。
温度算出部A13は、吸入空気量Mc、EGRガス量Megr、排気弁22の閉弁時期EVC、吸気ガスの温度(サージタンク内の温度)、及び機関冷却水の温度等に基づいて、筒内温度Tcの推移を算出する。なお、EGRガスについては、EGR機構60を介して燃焼室15に導入されたEGRガスの温度はそれほど高くないのに対して、排気弁2度開き動作によって燃焼室15に導入されたEGRガスの温度は高い。したがって、EGR機構60を介して導入されたEGRガス量と排気弁2度開き動作によって導入されたEGRガス量とを別々に算出し、別々に算出されたEGRガス量に基づいて筒内温度Tcを算出するようにしてもよい。
酸素濃度算出部A14は、吸入空気量Mc、EGRガス量Megr及び吸気ガスの温度(サージタンク内の温度)等に基づいて燃焼室15内に供給された吸気ガスの酸素濃度を算出する。EGRガス中にはほとんど酸素が含まれていないことから、EGRガス量Megrが多くなるほど酸素濃度が低くなるように酸素濃度の算出が行われる。
予想自着火時期算出部A20は、筒内状態量算出部A10で算出された各状態量に基づいて、予想自着火時期Tigfを算出する自着火時期算出処理を行う。予想自着火時期Tigfの算出は、例えば、Livengood-Wuの積分式に基づく下記式(1)を用いて行われる。
Figure 2018178805
上記式(1)のτは、燃焼室15内に噴射された燃料が自着火に至るまでの時間(以下「着火遅れ時間」という。)である。Pは筒内圧力、Tは筒内温度、φは当量比、ONはオクタン価、RESは残留ガス割合(EGR率)、Eは活性化エネルギ、Rは一般ガス定数である。A、α、β、γ、δ(A、α、β、δ>0、γ<0)は、それぞれ同定定数である。
式(1)において、燃料を噴射してからの着火遅れ時間の逆数(1/τ)を時間積分したときに、積分値が1となる時間teが着火遅れ時間τとなる。したがって、筒内圧力P及び筒内温度Tにおける着火遅れ時間の逆数(1/τ)を、目標噴射時期Tijtから時間積分したときに、積分値が1となる時間teに相当するクランク角度量を目標噴射時期Tijtに加えた時期が、予混合気の予想自着火時期となる。筒内状態量算出部A10によって算出された各状態量を式(1)に代入することで予想自着火時期Tigfが算出される。
なお、本実施形態では、予想自着火時期算出部A20は、各状態量に基づいて予想自着火時期を算出している。しかしながら、予想自着火時期算出部A20は、予想自着火時期の代わりに、例えば筒内圧力を検出する筒内圧センサ81の出力に基づいて燃焼室15内での燃焼終了後に熱発生率の推移を算出し、これに基づいて実際の自着火時期(以下、「実自着火時期」という)を算出するようにしてもよい。この場合には、後述する計算において、予想自着火時期の代わりに、実自着火時期が用いられることになる。
目標自着火時期算出部A30は、機関負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて目標自着火時期Tigtを算出する目標自着火時期算出処理を行う。本実施形態では、機関負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて、内燃機関の運転に関するアクチュエータの各操作パラメータの基本的な操作量が設定される。斯かるアクチュエータには、燃料噴射弁31、吸気弁21、排気弁22、スロットル弁46、排気ターボチャージャ5のウェイストゲートバルブ(図示せず)、EGR制御弁62等が含まれる。また、例えば、燃焼室15内にオゾンを供給するオゾン供給装置が設けられている場合、EGRクーラ63に供給する冷却水の流量を制御する水量制御装置が設けられている場合、燃料噴射弁31から噴射する燃料の性状を変更する燃料性状変更装置が設けられている場合には、これらオゾン供給装置、水量制御装置及び燃料性状変更装置は上記アクチュエータに含まれる。
斯かるアクチュエータの操作パラメータの基本的な操作量は、例えば、機関負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて、これら機関負荷KL及び機関回転速度NEと各操作パラメータの基本的な操作量との関係を表すマップを用いて算出される。なお、各操作パラメータの基本的な操作量は、機関負荷KL及び機関回転速度NEに加えて、他のパラメータ(例えば、機関冷却水の温度等)に基づいて設定されてもよい。
このように機関負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて、各アクチュエータの各操作パラメータの基本的な操作量を設定すると、各操作パラメータの操作量をこのような基本的な操作量に設定したときに予混合気が自着火するであろう時期が予混合気の目標自着火時期Tigtとして算出される。
着火時期差分算出部A40は、予想自着火時期算出部A20によって算出された予想自着火時期Tigfから目標自着火時期算出部A30によって算出された目標自着火時期Tigtを減算することによって差分ΔTigを算出する差分算出処理を行う。
補正量算出部A50は、着火時期差分算出部A40において算出された差分ΔTigに基づいて、この差分ΔTigがゼロになるように各アクチュエータの各操作パラメータの補正量を算出する補正量算出処理を行う。換言すると、補正量算出部A50は、差分ΔTigがゼロになるように各アクチュエータの各操作パラメータを補正しているといえる。
例えば、アクチュエータとして燃料噴射弁31を考えた場合、補正量としては、燃料噴射弁31からの燃料噴射時期Tijの補正量ΔTij、燃料噴射弁31からの燃料噴射量Qijの補正量ΔQij等が挙げられる。アクチュエータとして可変動弁機構20を考えた場合、補正量としては、吸気弁21の開弁時期IVOの補正量ΔIVO、閉弁時期IVCの補正量ΔIVC、排気弁22の開弁時期EVOの補正量ΔEVO、閉弁時期EVCの補正量ΔEVC等が挙げられる。アクチュエータとしてEGR制御弁62を考えた場合、補正量としてはEGR制御弁62の開度Degrの補正量ΔDegrが挙げられる。さらに、アクチュエータとしてスロットル弁46を考えた場合、補正量としてはスロットル弁46の開度Dslの補正量ΔDslが挙げられる。
なお、操作量の補正対象となるアクチュエータは、これら燃料噴射弁31等に限らず、ウェイストゲートバルブ等、他のアクチュエータが含まれてもよい。同様に、補正対象となる制御パラメータも、上述した燃料噴射時期Tijに限らず、他の制御パラメータが含まれてもよい。
差分ΔTigに基づく各アクチュエータの操作パラメータの補正量の算出方法ついては、以下で詳述する。いずれにせよ、操作パラメータの補正量の算出にあたっては、差分ΔTigに基づいて、上述した様々なアクチュエータの様々な操作パラメータのうち、少なくとも一つの操作パラメータの補正量が算出される。
操作量演算部A60は、各アクチュエータの操作パラメータの操作量を算出する操作量算出処理を行う。本実施形態では、各アクチュエータ毎に、操作量の演算部を備える。したがって、操作量演算部A60は、例えば、噴射演算部A61、バルブタイミング演算部A62、EGR開度演算部A63、及びスロットル開度演算部A64を備える。なお、操作量演算部A60は、例えばウェイストゲートバルブの開度を演算する演算部等、他のアクチュエータ用の演算部を備えてもよい。
噴射演算部A61は、燃料噴射弁31の操作パラメータ(燃料噴射時期Tij及び燃料噴射量Qij等)を演算する。具体的には、例えば、機関負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて算出される基本燃料噴射時期及び基本燃料噴射量並びに燃料噴射時期の補正量ΔTij及び燃料噴射量の補正量ΔQijに基づいて燃料噴射時期Tij及び燃料噴射量Qijが算出される。
バルブタイミング演算部A62は、吸気弁21及び排気弁22の開閉弁時期を演算する。具体的には、例えば、機関負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて算出される基本開弁時期及び基本閉弁時期並びに開弁時期の補正量及び閉弁時期の補正量に基づいて吸気弁21及び排気弁22の開閉弁時期が算出される。
EGR開度演算部A63は、EGR開度Degrを演算する。具体的には、例えば、機関負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて算出される基本EGR開度及びEGR開度の補正量ΔDegrに基づいてEGR開度が算出される。スロットル開度演算部A64は、EGR開度Dslを演算する。具体的には、例えば、機関負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて算出される基本スロットル開度及びスロットル開度の補正量ΔDslに基づいてスロットル開度が算出される。
次に、図7を参照して、各アクチュエータの操作パラメータに対する補正量の算出時期について説明する。図7は、筒内圧力、吸気弁のリフト量、燃料噴射率のクランク角推移を示す図である。なお、図7の筒内圧力における破線は、燃焼室15内で混合気の燃焼が生じなかった場合(モータリング時)の筒内圧力の推移を表している。
図7に示した例では、時刻t1において、吸気弁21が閉弁せしめられる。このとき、燃焼室15内に供給された吸気ガスの量及び温度が確定するため、時刻t1から筒内状態量算出部A10による筒内状態量の算出が開始される(図中の期間A)。なお、吸気弁21の閉弁時期(時刻t1)を待たずに算出可能な状態量については、吸気弁21の閉弁前に算出される。また、目標自着火時期Tigtも、図中の期間Aにおいて、目標自着火時期算出部A30によって算出される。
筒内状態量算出部A10による筒内状態量の算出が完了すると、その後、予想自着火時期算出部A20によって予想自着火時期Tigfの算出が行われる(図中の期間B)。予想自着火時期Tigfの算出には、期間Aにおいて筒内状態量算出部A10によって算出された筒内状態量が用いられる。
予想自着火時期算出部A20による予想自着火時期Tigfの算出が完了すると、その後、補正量算出部A50によって各アクチュエータの操作パラメータに関する補正量が算出される(図中の期間C)。本実施形態では、補正量算出部A50による補正量の算出は、燃料噴射時期(図中のt2)よりも前に完了する。したがって、燃料噴射時期Tij及び燃料噴射量Qijは、同一のサイクル中に補正量算出部A50によって算出された補正量を考慮して算出される。
図7に示した例では、その後時刻t2において燃料噴射弁31からの燃料噴射が開始され、時刻t3において、圧縮上死点前に、燃料噴射によって形成された予混合気が自着火する。これに伴って筒内圧が上昇する。
<各操作パラメータの補正>
次に、自着火時期の差分ΔTigに対する各操作パラメータの補正について説明する。目標自着火時期Tigtと予想自着火時期Tigfとの間に差があるときには、上述したようにこの差が無くなるようにアクチュエータの操作パラメータの値を補正することが必要である。このとき補正対象となる操作パラメータとしては、上述したように、燃料噴射時期及び燃料噴射量、吸気弁21及び排気弁22の開閉弁時期、並びにEGR制御弁62及びスロットル弁46の開度等が挙げられる。加えて、オゾン供給装置からのオゾン供給量、EGRクーラ63供給される冷却水量、燃料性状等も操作パラメータに含まれる。
このうち、上述したように、燃料噴射時期及び燃料噴射量については、補正量算出部A50による補正量の算出後、同一のサイクル中に又は遅くとも次のサイクルまでに補正を行うことができる。したがって、補正量算出部A50による補正量の算出直後における燃焼室15内での予混合気の燃焼にその補正量を反映させることができる。一方で、上述した補正対象となる補正量のうち、燃料噴射時期及び燃料噴射量以外の操作パラメータについては、補正量を算出してから、実際にその補正を予混合気の燃焼に反映させるまでには時間がかかる。例えば、吸気弁21及び排気弁22の開閉弁時期については、アクチュエータによって吸気弁21及び排気弁22の開閉弁時期を変化させること自体に時間がかかる。また、スロットル弁46の開度については、スロットル弁46の開度を変化させてから、この開度の変化に応じて燃焼室15内に供給される吸気ガスの圧力が変化するまでには時間がかかる。
したがって、補正量算出部A50によって補正量を算出してから、その補正に伴って実際に予混合気の自着火時期が変化するまでの応答速度を考慮すると、目標自着火時期Tigtと予想自着火時期Tigfとの間に差があるときには、燃料噴射時期及び燃料噴射量を補正することが好ましい。しかしながら、このうち燃料噴射弁31からの燃料噴射量を変更すると、内燃機関の出力トルクが変化してしまい、ドライバに違和感を与える。したがって、アクチュエータの操作パラメータを補正するにあたっては、燃料噴射時期を補正することが最も好ましい。
その一方で、燃料噴射時期の補正量には限界がある。進角側の補正量が大きくなりすぎると、補正量算出部A50による補正量の算出の前に燃料噴射を行わなければならなくなり、その結果、補正量算出部A50によって算出された補正量を迅速に燃料噴射時期に反映させることができなくなる。加えて、進角側の補正量が大きくなり過ぎると、燃料噴射時期が吸気弁21の閉弁時期IVCよりも進角側の時期となってしまう。
そこで、目標自着火時期Tigtと予想自着火時期Tigfとの間の差分ΔTigに応じて、補正を行う操作パラメータを変更するようにしている。具体的には、本実施形態では、差分ΔTigが予め定められた基準値Tigref未満の場合には、操作パラメータのうち燃料噴射時期のみを補正し、差分ΔTigが基準値Tigref以上である場合には、燃料噴射時期に加えて或いは燃料噴射時期の補正を行うことなく、操作パラメータのうち燃料噴射時期以外の少なく一つの操作パラメータを補正するようにしている。
<フローチャートの説明>
以下では、図8及び図9を参照して、本実施形態における操作パラメータの補正について説明する。図8は、基本的な燃焼制御を行う基本燃焼制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは、各サイクルにおいて燃料噴射弁31からの燃料噴射前に行われる。
図8に示したように、まず、ステップS11では、機関運転状態が検出される。具体的には、例えば、負荷センサ88によって機関負荷が検出され、クランク角センサ89に基づいて機関回転速度NEが算出される。
次いで、ステップS12において、ステップS11で算出された現在の機関運転状態が自着火運転領域RR内にあるか否かが判定される。現在の機関運転状態が自着火運転領域RR内にあると判定された場合には、ステップS13へと進む。ステップS13では、機関負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて各アクチュエータの各操作パラメータの基本操作量Xbaseが算出される。ここで、各操作パラメータの基本操作量Xbaseは、各アクチュエータの各操作パラメータの基準となる操作量を意味し、予混合気の燃焼に関与する全ての操作パラメータの基本操作量を含む。したがって、基本操作量Xbaseは、例えば、基本燃料噴射時期Tijbase、基本燃料噴射量Qijbase、吸気弁21の基本開弁時期IVObase、吸気弁21の基本閉弁時期IVCbase及び基本スロットル開度Dslbase等を含むものである。
その後、ステップS14では、各操作パラメータの最終補正量KXnが算出される。各操作パラメータの最終補正量KXnの算出は、操作量演算部A60によって行われる。最終補正量KXnは、後述する補正量算出制御によって算出される各操作パラメータの補正量に基づいて算出される補正量であり、それまでの目標自着火時期と予想自着火時期との差分を反映した補正量である。操作パラメータの最終補正量KXnも、予混合気の燃焼に関与する全ての操作パラメータの最終補正量を含む。したがって、最終補正量KXnは、例えば、燃料噴射時期の最終補正量KTijn、基本燃料噴射量の最終補正量KQijn、吸気弁21の開弁時期の最終補正量KIVOn、吸気弁21の閉弁時期の最終補正量KIVCn及びスロットル開度の最終補正量KDsln等を含むものである。
図8から分かるように、ステップS14では、下記式(2)により最終補正量KXnが算出される。
KXn=KXn-1+a・ΔX…(2)
式(2)において、aは操作パラメータ毎に異なる定数である。ここで、nは基本燃焼制御の制御ルーチンにおける計算回数を表しており、n−1は前回の制御ルーチンにおける計算時に算出されたものであることを示している。したがって、KXn-1は、前回の制御ルーチンで算出された最終補正量を意味する。また、ΔXは、後述する補正量算出制御によって算出される各操作パラメータの補正量である。補正量ΔXも、予混合気の燃焼に関与する全ての操作パラメータの補正量を含む。したがって、補正量ΔXは、燃料噴射時期の補正量ΔTij、燃料噴射量の補正量ΔQij、吸気弁21の開弁時期の補正量ΔIVO、吸気弁21の閉弁時期の補正量ΔIVC、及びスロットル開度の補正量ΔDsl等を含むものである。
その後、ステップS15において、ステップS13で算出された基本操作量XbaseにステップS14で算出された最終補正量KXnを加算することによって、実操作量Xが算出される。実操作量Xの算出は、操作量演算部A60によって行われる。各アクチュエータは、このようにして算出された実操作量Xに合わせて操作される。実操作量Xも、予混合気の燃焼に関与する全ての操作パラメータの実際の操作量を含む。したがって、実操作量Xは、実際の燃料噴射時期Tij、実際の燃料噴射量Qij、実際の吸気弁21の開弁時期IVO、実際の吸気弁21の閉弁時期IVC、及び実際のスロットル開度Dsl等を含むものである。
一方、ステップS12において、ステップS11で算出された現在の機関運転状態が自着火運転領域RR内にないと判定された場合には、ステップS16へと進む。ステップS16では、SI運転モードにおける各各アクチュエータの各操作パラメータの制御が行われ、制御ルーチンが終了せしめられる。
図9は、各アクチュエータの補正量を算出する補正量算出制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは、各サイクルにおいて基本燃焼制御の実行前に行われる。
図9に示したように、ステップS21では、図8のステップS11と同様に現在の機関運転状態が検出される。次いで、ステップS22では、ステップS12と同様に、現在の機関運転状態が自着火運転領域RR内にあるか否かが判定される。現在の機関運転状態が自着火運転領域RR内にないと判定された場合には、制御ルーチンが終了せしめられる。一方、ステップS22において、現在の機関運転状態が自着火運転領域RR内にあると判定された場合ステップS23へと進む。
ステップS23では、目標自着火時期Tigtが取得される。上述したように、目標自着火時期Tigtは、目標自着火時期算出部A30によって、予め求められたマップや計算式を用いて、機関負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて算出される。
次いで、ステップS24では、予想自着火時期Tigfが取得される。上述したように、予想自着火時期Tigfは、予想自着火時期算出部A20によって、筒内状態量算出部A10で算出された各状態量に基づいて算出される。
次いで、ステップS25では、ステップS24で取得された予想自着火時期Tigfから目標自着火時期Tigtを減算したものが差分ΔTigとして算出される。差分ΔTigは、着火時期差分算出部A40により算出される。
次いで、ステップS26では、差分ΔTigが基準値Tigref未満であるか否かが判定される。このような判定は、補正量算出部A50によって行われる。ここで、基準値Tigrefは、それ以上噴射時期が進角されると補正量算出部A50による補正量の算出時期の前に燃料噴射が行われることになってしまうような時期とされる。或いは、基準値Tigrefは、それ以上燃料噴射時期が進角されると、燃料噴射時期が吸気弁21の閉弁時期よりも進角側となってしまうような時期とされる。
ステップS26において、差分ΔTigが基準値Tigref未満であると判定された場合には、ステップS27へと進む。ステップS27では、差分ΔTigだけ予想自着火時期Tigfが変化するように、燃料噴射時期の補正量ΔTijが算出される。すなわち、燃料噴射弁31からの燃料噴射時期Tijの補正のみで差分ΔTigがゼロになるように燃料噴射時期の補正量ΔTijが算出される。したがって、噴射時期以外の操作パラメータ、例えば、燃料噴射量や吸気弁の閉弁時期等は補正されない。したがって、燃料噴射時期の補正量ΔTij以外の操作パラメータの補正量はゼロとして算出される。このようにして算出された燃料噴射時期の補正量ΔTijは、図8に示した制御ルーチンのステップS14にて用いられる。
一方、ステップS26において、差分ΔTigが基準値Tigref以上であると判定された場合には、ステップS28へと進む。ステップS28では、差分ΔTigだけ予想自着火時期Tigfが変化するように、吸気弁閉弁時期の補正量ΔIVCが算出される。すなわち、吸気弁閉弁時期の補正量ΔIVCの補正のみで差分ΔTigがゼロになるように吸気弁閉弁時期の補正量ΔIVCが算出される。このようにして算出された吸気弁閉弁時期の補正量ΔIVCは、図8に示した制御ルーチンのステップS14にて用いられる。
なお、上記実施形態では、ステップS28において、吸気弁閉弁時期の補正量ΔIVCが算出され、よって自着火時期の差分ΔTigが小さくなるように吸気弁21の閉弁時期が補正されている。しかしながら、ステップS28では、他の操作パラメータ(燃料噴射時期を含む)の補正量を算出してもよく、よって自着火時期の差分ΔTigが小さくなるように他の操作パラメータを補正してもよい。
以上説明したように、本実施形態では予想自着火時期と目標自着火時期との差分ΔTigが基準値未満の小さい値であるときには、差分ΔTigに応じて燃料噴射弁31の燃料噴射時期を補正する。このため、高い応答速度で差分ΔTigを小さくすることができる。一方、本実施形態では予想自着火時期と目標自着火時期との差分ΔTigが基準値未満の大きい値であるときには、差分ΔTigに応じて、燃料噴射時期以外の他の操作パラメータも補正される。このため、差分ΔTigが大きくても燃料噴射時期を過度に補正する必要がなくなり、差分ΔTigを適切に低下させることができる。
<第二実施形態>
次に、図10を参照して、第二実施形態に係る内燃機関について説明する。第二実施形態に係る内燃機関の構成及び制御は基本的に第一実施形態に係る内燃機関の構成及び制御と同様である。したがって、以下では、第一実施形態に係る内燃機関と異なる点を中心に説明する。
ところで、上記実施形態では、自着火時期の差分ΔTigが基準値以上に大きいときには、この差分ΔTigが小さくなるように燃料噴射時期以外の他の操作パラメータも補正される。このような操作パラメータには、燃料噴射弁31からの燃料噴射量も含まれる。しかしながら、燃料噴射量は燃料噴射時期と同様にその補正に伴って実際に予混合気の自着火時期が変化するまでの応答速度は速いものの、燃料噴射量を変化させると内燃機関の出力トルクも変化してしまう。この結果、ドライバの所望するトルクを適切に出力することができなくなってしまう。
そこで、第二実施形態に係る内燃機関では、自着火時期の差分ΔTigが基準値(以下、「第一基準値」という)Tigref1以上になっても、操作パラメータのうち燃料噴射量は補正しないようにしている。したがって、本実施形態では、自着火時期の差分ΔTigが第一基準値Tigref1以上になったときには、この差分ΔTigが小さくなるように、燃料噴射時期に加えて或いは燃料噴射時期の補正を行うことなく、操作パラメータのうち燃料噴射時期及び燃料噴射量以外の少なく一つの操作パラメータを補正するようにしている。
その一方で、自着火時期の差分ΔTigが非常に大きい場合には、燃料噴射量以外の操作パラメータを補正するだけでは自着火時期の差分ΔTigをゼロにすることができないことがある。したがって、自着火時期の差分ΔTigが上記第一基準値Tigref1よりも大きい所定の第二基準値Tigref2以上である場合には、この差分ΔTigが小さくなるように、上記燃料噴射量以外の操作パラメータに加えて、燃料噴射量も補正するようにしている。
換言すると、本実施形態では、自着火時期の差分ΔTigが第一基準値以上であっても第二基準値未満である場合には、燃料噴射時期の補正は行わず、自着火時期の差分ΔTigが第二基準値以上である場合には燃料噴射時期も補正するようにしている。
図10は、各アクチュエータの補正量を算出する補正量算出制御の制御ルーチンを示す、図9と同様なフローチャートである。図示した制御ルーチンは、各サイクルにおいて基本燃焼制御の実行前に行われる。なお、図10のステップS31〜S35は図9のステップS21〜S25と同様であるため、説明を省略する。
ステップS36では、ステップS35において算出された差分ΔTigが第一基準値Tigref1未満であるか否かが判定される。このような判定は、補正量算出部A50によって行われる。第一基準値Tigref1は、上述した第一実施形態における基準値Tigrefと同様な値とされる。
ステップS36において、差分ΔTigが第一基準値Tigref1未満であると判定された場合には、ステップS37へと進む。ステップS37では、差分ΔTigだけ予想自着火時期Tigfが変化するように、燃料噴射時期の補正量ΔTijが算出される。このようにして算出された燃料噴射時期の補正量ΔTijは、図8に示した制御ルーチンのステップS14にて用いられる。
一方、ステップS36において、差分ΔTigが第二基準値Tigref1以上であると判定された場合には、ステップS38へと進む。ステップS38では、ステップS35において算出された差分ΔTigが第二基準値Tigref2未満であるか否かが判定される。このような判定も、補正量算出部A50によって行われる。第二基準値Tigref2は第一基準値Tigref1よりも大きな値に設定される。第二基準値Tigref2は、例えば、燃料噴射量以外の操作パラメータを補正しても予想自着火時期を目標自着火時期に十分に近づけることができないほど大きな値、又は燃料噴射量以外の操作パラメータを補正すると予想自着火時期を目標自着火時期に十分に近づけるのに所定の限界時間以上に時間がかかるような値とされる。
ステップS38において、差分ΔTigが第二基準値Tigref2未満であると判定された場合には、ステップS39へと進む。ステップS39では、差分ΔTigだけ予想自着火時期Tigfが変化するように、燃料噴射弁31の燃料噴射時期の補正量ΔTij、吸気弁閉弁時期の補正量ΔIVCが算出される。このようにして算出された燃料噴射時期の補正量ΔTij及び吸気弁閉弁時期の補正量ΔIVCは、図8に示した制御ルーチンのステップS14にて用いられる。
一方、ステップS38において、差分ΔTigが第二基準値Tigref1以上であると判定された場合には、ステップS40へと進む。ステップS40では、差分ΔTigだけ予想自着火時期Tigfが変化するように、燃料噴射時期の補正量ΔTij、吸気弁閉弁時期の補正量ΔIVCに加えて、燃料噴射弁31の燃料噴射量の補正量ΔQijが算出される。このようにして算出された燃料噴射時期の補正量ΔTij、吸気弁閉弁時期の補正量ΔIVC及び燃料噴射量の補正量ΔQijは、図8に示した制御ルーチンのステップS14にて用いられる。
なお、上記実施形態では、ステップS39において、燃料噴射時期の補正量ΔTij及び吸気弁閉弁時期の補正量ΔIVCが算出され、よって自着火時期の差分ΔTigが小さくなるように燃料噴射時期及び吸気弁21の閉弁時期が補正されている。しかしながら、ステップS39では、他の操作パラメータの補正量を算出してもよく、また、燃料噴射時期を算出しなくてもよい。よって自着火時期の差分ΔTigが小さくなるように他の操作パラメータを補正してもよく、また燃料噴射時期を補正しなくてもよい。
同様に、上記実施形態では、ステップS40において、燃料噴射時期の補正量ΔTij、吸気弁閉弁時期の補正量ΔIVC及び燃料噴射量の補正量ΔQijが算出されている。しかしながら、燃料噴射量の補正量ΔQijが算出されていれば他の操作パラメータの補正量は算出されなくてもよい。すなわち、燃料噴射量が補正されれば、他の操作パラメータは補正されなくてもよい。
<第三実施形態>
次に、図11を参照して、第三実施形態に係る内燃機関について説明する。第三実施形態に係る内燃機関の構成及び制御は基本的に第一実施形態及び第二実施形態に係る内燃機関の構成及び制御と同様である。したがって、以下では、第一実施形態及び第二実施形態に係る内燃機関と異なる点を中心に説明する。
ところで、目標自着火時期と予想自着火時期との間に定常的なズレがあると、燃料噴射時期の最終補正量KTijはそのズレに応じた値付近に維持されることになる。しかしながら、このように燃料噴射時期の最終補正量KTijが或る程度大きな値に維持されると、例えば機関過渡運転時のように目標自着火時期と予想自着火時期との偏差が大きくなるようなときに燃料噴射時期を補正する余地が小さくなる。この結果、機関過渡運転時のように自着火時期の差分が大きくなったときには燃料噴射時期によってこの差分を小さくする余地が小さくなる。この結果、この差分を小さくするために、応答速度の速い燃料噴射時期ではなく、他の操作パラメータを補正することになってしまう。
そこで、本実施形態では、内燃機関の定常運転中に燃料噴射時期の最終補正量KTijが所定の閾値以上である場合には、燃料噴射時期の最終補正量KTijを減少させると共に燃料噴射時期の最終補正量KTijの減少に伴って自着火時期が変化する方向とは逆方向に自着火時期が変化するように燃料噴射時期以外の少なくとも一つの操作パラメータの値を補正するようにしている。
図11は、燃焼噴射時期の補正量を他の操作パラメータの補正量に変換する学習補正制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは一定時間間隔で実行される。図11のステップS61及びS62は、図8のステップS11及びS12と同様であるため、説明を省略する。
図11に示したように、ステップS63では、内燃機関が定常運転中であるか否かが判定される。内燃機関が定常運転中であるか否かの判定は様々な手法を採用可能である。例えば、機関回転速度、吸入空気量、スロットル開度等の単位時間当たりの変化量が予め定められた所定量以下である場合には内燃機関は定常運転中であると判定され、予め定められた所定値よりも大きいときには内燃機関は過渡運転中であると判定される。ステップS63において、内燃機関が過渡運転中であると判定された場合には制御ルーチンが終了せしめられる。一方、ステップS63において、内燃機関が定常運転中であると判定された場合にはステップS64へと進む。
ステップS64では、予想自着火時期と目標自着火時期との差分ΔTigが所定の限界基準値Tigref0未満であるか否かが判定される。限界基準値Tigref0は、上述した第一基準値Tigref1よりも小さい値とされる。したがって、ステップS64では、差分ΔTigがほぼゼロとなっていて実質的に予想自着火時期が目標自着火時期に収束しているか否かが判定される。予想自着火時期が目標自着火時期に収束していない状態で燃料噴射時期の最終補正量KTijを他の操作パラメータに取り込んでしまうと、その後に最終補正量KTijが再度変化することになる。このため、ステップS64において差分ΔTigが所定の限界基準値Tigref0以上であると判定された場合には、燃料噴射時期の最終補正量KTijを他の操作パラメータに取り込むことなく制御ルーチンが終了せしめられる。一方、ステップS64において、差分ΔTigが所定の限界基準値Tigref0未満であると判定された場合には、ステップS65へと進む。
ステップS65では、現在の燃料噴射時期の最終補正量KTijが所定の閾値Kref以上であるか否かが判定される。閾値Krefは、誤差程度の値とされ、燃料噴射時期の最終補正量KTijを他の操作パラメータに不必要に頻繁に取り込んでしまうことが抑制されるように設定される。ステップS65において、燃料噴射時期の最終補正量KTij未満であると判定された場合には制御ルーチンが終了せしめられる。一方、ステップS65において、燃料噴射時期の最終補正量KTij未満であると判定された場合にはステップS66へと進む。
ステップS66では、最終補正量KTijに相当する学習値GXが算出される。例えば、学習値GXは、最終補正量KTijだけ燃料噴射時期を補正した場合における自着火時期の変化量に相当する値になるように算出される。
次いで、ステップS67では、燃料噴射時期以外の操作パラメータ(本実施形態では、吸気弁21の閉弁時期)の補正量KIVCが、学習値GXに対応する量だけ増大せしめられる。上述したように、学習値GXを最終補正量KTijだけ燃料噴射時期を補正した場合における変化量に相当する値に設定している場合には、学習値GXだけ自着火時期を変化させるのに必要な量だけ吸気弁閉弁時期の最終補正量KIVCが増大せしめられる。一方、燃料噴射時期の最終補正量KTij及び学習値GXはゼロにリセットされ、制御ルーチンが終了せしめられる。
<第四実施形態>
次に、図12及び図13を参照して、第四実施形態に係る内燃機関について説明する。第四実施形態に係る内燃機関の構成及び制御は基本的に第一実施形態から第三実施形態に係る内燃機関の構成及び制御と同様である。したがって、以下では、第一実施形態から第三実施形態に係る内燃機関と異なる点を中心に説明する。
図12は、第四実施形態に係る内燃機関1の概略的な構成図である。本実施形態に係る内燃機関では、図12に示したように、シリンダヘッド13の各気筒11の中央付近において、燃焼室15内の混合気に点火するための点火プラグ16が設けられている。特に、本実施形態では、点火プラグ16は、点火プラグ16の電極部が燃料噴射弁31からの燃料噴射領域F又はその近傍に位置するように、燃料噴射弁31に隣接して各気筒11の中央近傍に配置されている。
本実施形態に係る内燃機関では、燃焼室15内の予混合気を自着火燃焼させるにあたって、燃焼室15内の混合気に点火する点火プラグ16によって着火アシストを行う。より詳細には、予混合気を燃焼室15内で圧縮自着火燃焼させるにあたって、点火プラグ16による着火アシストを行って燃料の一部を火炎伝播燃焼させ、この火炎伝播燃焼によって生じる熱を用いて筒内温度を強制的に上昇させることで、残りの燃料を予混合圧縮自着火燃焼させる着火アシスト自着火燃焼を実施している。したがって、本実施形態では、図13に示したように、最初に燃料噴射弁31からメイン燃料の噴射が行われると共に、その後、圧縮上死点近傍において燃料噴射弁31から着火アシスト燃料の噴射が行われ、その直後に点火プラグ16による点火が行われる。
本実施形態においても、上記第一実施形態から第三実施形態と同様に、目標自着火時期算出部A30により機関負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて目標自着火時期が算出される。加えて、本実施形態においても、予想自着火時期算出部A20により、筒内状態量算出部A10で算出された各状態量に基づいて予想自着火時期Tigfが算出される。
本実施形態においては、着火アシストを実施することから、筒内状態の推定にあたっては、着火アシストを実施しない場合と比べて、着火アシストによって生じる熱量分だけ点火時期からの筒内圧力及び筒内温度の推移が変化する。そこで、本実施形態では、圧力算出部A12及び温度算出部A13は、着火アシスト用の燃料の目標噴射時期及び目標噴射量及び点火プラグによる目標点火時期に基づいて点火時期からの筒内圧力及び筒内温度を補正する。予想自着火時期算出部A20では、このようにして圧力算出部A12及び温度算出部A13によって求められた筒内圧力及び筒内温度に基づいて予想自着火時期Tigfを算出する。
このように着火アシストを実施する場合には、メイン燃料の自着火時期は、着火アシスト燃料の噴射時期及び点火時期の影響を大きく受ける。従って、本実施形態では、自着火時期の差分ΔTigが第一基準値未満の場合には、着火アシスト燃料の噴射時期を補正することになる。
なお、本実施形態においても、予想自着火時期算出部A20は、予想自着火時期の代わりに、実自着火時期を算出してもよい。この場合、図13に示したように、熱発生率に基づいて、熱発生率の上昇率が最も高いときの延長線が熱発生率0の直線と交差するがを実自着火時期として算出される。
1 内燃機関
10 機関本体
15 燃焼室
31 燃料噴射弁
71 電子制御ユニット(ECU)

Claims (3)

  1. 燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、該燃料噴射弁を含む内燃機関のアクチュエータを制御する制御装置とを備えた内燃機関であって、
    前記制御装置は、機関負荷及び機関回転数に基づいて前記燃料噴射弁を含む内燃機関のアクチュエータを制御すると共に、このときの目標自着火時期を算出する目標自着火時期算出処理と、
    前記燃焼室内の混合気の実自着火時期又は予想自着火時期を算出する自着火時期算出処理と、
    前記実自着火時期又は前記予想自着火時期が前記目標自着火時期に一致するように前記燃料噴射弁を含む内燃機関のアクチュエータの操作パラメータの値を補正する補正処理と、を実行するように構成され、
    前記制御装置は、前記補正処理において、前記実自着火時期又は前記予想自着火時期と前記目標自着火時期との差が所定の基準値未満の場合には前記操作パラメータのうち燃料噴射時期のみを補正すると共に、前記実自着火時期又は前記予想自着火時期と前記目標自着火時期との差が前記基準値以上である場合には、前記燃料噴射時期に加えて又は前記燃料噴射時期を補正せずに、前記操作パラメータのうち燃料噴射時期以外の少なくとも一つの操作パラメータを補正する、内燃機関。
  2. 前記制御装置は、前記補正処理において、前記実自着火時期又は前記予想自着火時期と前記目標自着火時期との差が前記基準値以上であっても、前記基準値よりも大きい所定の第二基準値未満である場合には前記燃料噴射弁からの燃料噴射量は補正せず、且つ、前記実自着火時期又は前記予想自着火時期と前記目標自着火時期との差が前記第二基準値以上である場合には前記燃料噴射量も補正する、請求項1に記載の内燃機関。
  3. 前記制御装置は、当該内燃機関の定常運転中に前記燃料噴射時期の補正量が所定の閾値以上である場合には、前記燃料噴射時期の補正量を減少させると共に該燃料噴射時期の補正量の減少に伴って自着火時期が変化する方向とは逆方向に自着火時期が変化するように前記燃料噴射時期以外の少なくとも一つの操作パラメータの値を補正する、請求項1又は2に記載の内燃機関。
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