JP2018140068A - 吸収性物品 - Google Patents
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ところが、吸収体が不規則に折れ曲がったり捩れたりすると、着用者に対する触感や吸液性の低下を招き、着用者の快適性を確保することができないおそれがある。たとえば、吸収体において着用者の股下に配置される部位は、液体が排泄される主な部位であることから着用者に密着させて装着すべきである。
例えば、特許文献1には、肌面側に配された表面シートと、非肌面側に配された裏面シートと、両シートの間に介在配置された吸収体とを備え、縦長に形成され、両側部に、何れも長手方向に延びた弾性部材によって形成された立体ギャザーとレッグギャザーと吸収体ギャザーとを有する吸収性物品(紙おむつ)が開示されている。
これらの各ギャザーの弾性部材による収縮等によって、吸収性物品が自然と立体的な形状に形成され、装着者へのフィット性が向上し、吸収性も向上する。
なお、ここでいう目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置づけることができる。
[1.紙おむつ]
[1−1.基本的な構成]
まず、図1及び図2を参照して、紙おむつ1の基本的な構成を説明する。この紙おむつ1は、幅方向の中心線Cを基準として左右対称に形成されている。なお、図2では、各部材における幅方向の中心線を示す符号について、各部材を示す符号を符号「C」に下付きで追記している。
紙おむつ1は、長手方向に沿って前身頃1A、股下部1B及び後身頃1Cの三つの領域に大別される。
また、股下部1Bの幅方向寸法は、一般的な着用者の両脚部の付け根間の寸法よりもやや大きく設定されている。そのため、装着状態では、幅方向に挟まれた股下部1Bが折り曲げられた状態となる。この状態では、長手方向に折れ目が延びる。
紙おむつ1には、前身頃1A、股下部1B及び後身頃1Cに亘って長手方向に延びる吸収体12(図1では太破線で示す)が設けられている。図1及び図2では、前身頃1A及び後身頃1Cよりも股下部1Bのほうが幅方向寸法の小さい、即ち、股下部1Bで幅方向両縁部が抉られた正面視形状の吸収体12を例示する。ただし、幅方向寸法が一定の吸収体12を用いてもよい。
たとえば、粉砕あるいは解繊されたパルプ(いわゆる「フラッフパルプ」)に高吸水性樹脂(いわゆるSAP〈Superabsorbent polymer〉、高吸水性高分子あるいは高吸水性ポリマーとも称される)が混合されたコアをラップシート(コアラップ)で被包(ラップ)したものがマット12に用いられる。ここでは、ラップシートにティッシュが用いられている。
マット12の肌面側には、肌面側シートの一つとしてトップシート11がマット12の幅方向両側縁部(耳部)を除いた広い領域に重なるように配置され積層されている。トップシート11がマット12の全域を覆ってもよい。
トップシート11は、紙おむつ1で最も肌面側に配置される。このトップシート11は、着用者から排泄された液体をマット12に吸収させるために、液体を透過させる性質(液透過性)をもつ。そして、トップシート11は、マット12の肌面側を被覆する。
サイドシート10は、トップシート11と同様に紙おむつ1で最も肌面側に配置される。このサイドシート10は、排泄された液体の漏れを防止するために、液体を透過させ難い性質(疎水性)をもつ。
バックシート13は、マット12からの液漏れを防ぐために、液不透過性をもつ。このバックシート13は、マット12を非肌面側から被覆する。たとえば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といった熱可塑性の樹脂シートがバックシート13に用いられる。
なお、カバーシート14は、単層構造に限らず、インナカバーシート及びアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
このフロントパッチ3は、ファスニング機構によって止着テープ2が結合されるものであり、止着テープ2は、後身頃1Cの幅方向両端部のそれぞれに設けられる。図1及び図2では、後身頃1Cの幅方向両側に二つずつ設けられた止着テープ2を例示する。ただし、少なくとも幅方向両側に一つずつの止着テープ2が設けられていればよく、個数は限定されない。これらの止着テープ2は、後身頃1Cの両縁部1Sのそれぞれから幅方向外側へ延設される。なお、フロントパッチは必須ではなく、例えば、カバーシート14がファスニングテープを引っかけられる素材であればよい。
面状ファスナーは、表面に多数の突起(たとえば鉤状やきのこ状など)が形成されたフック材と、表面にループ状の繊維が配置されたループ材との組み合わせにより構成される。すなわち、止着テープ2及びフロントパッチ3のうちの何れか一方にフック材が設けられ、他方にループ材が設けられる。面状ファスナーを用いることで、フック材及びループ材を剥離可能な状態としつつ強固に固着させることができ、繰り返しの使用も可能となる。
ただし、粘着剤や粘着テープなどをファスニング機構に用いてもよい。
つぎに、図1〜図3を参照して、紙おむつ1の詳細な構成を説明する。
ここでは、装着状態において、股下部1Bを所定形状に折り曲げて保持するための構造(以下「折曲保持構造」という)を述べる。なお、股下部1Bの不規則な折れ曲がりや捩れが着用者の快適性を低下させることから、股下部1Bを所定形状に折り曲げることで着用者の快適性を確保するために、折曲保持構造が紙おむつ1に設けられている。
エンボス部20は、股下部1Bにおいて長手方向に延びて凹設された、少なくとも一対(二本)の部位である。なお、前身頃1Aや後身頃1Cにはエンボス部20が設けられていない。
レッグギャザー31は、着用者の脚部への追従性を高めるために設けられている。このレッグギャザー31は、幅方向には、紙おむつ1の幅方向の外側の両縁部1Sに設けられている。レッグギャザー31は、長手方向には、股下部1Bの全域と、前身頃1Aの股下部1B寄りの部分及び後身頃1Cの股下部1B寄りの部分とに亘って長手方向に延びるように設けられている。また、レッグギャザー31は、股下部1Bにおいては、紙おむつ1の幅方向外側の両縁部1Sのマット12の配置されない領域に、前身頃1A及び後身頃1Cにおいては、マット12の外縁部やマット12と隣接する領域に、それぞれ形成される。
ズレ止めギャザー32は、装着状態において、マット12を肌面側に持ち上げて支持すると共にマット12がずれないようにするために設けられている。このズレ止めギャザー32は、幅方向には、レッグギャザー31よりも幅方向内側で且つエンボス部20よりも幅方向外側で、マット12の幅方向両縁部付近(縁部寄り)に対応するように配置されている。ズレ止めギャザー32は、長手方向には、股下部1Bを中心に、マット12の前身頃1Aの股下部1B寄りの部分から後身頃1Cの股下部1B寄りの部分に亘って、長手方向に延びるように配置されている。
立体ギャザー33は、排泄された液体が幅方向外側に漏れることを防ぐために設けられる。この立体ギャザー33の基端は、幅方向には、ズレ止めギャザー32よりも幅方向外側でレッグギャザー31よりも幅方向内側に配置されている。立体ギャザー33は、長手方向には、紙おむつ1の長手方向端部(この端部は、固定部とされ伸縮機能はない)を除くほぼ全長に亘って長手方向に延びるように配置されている。
紙おむつ1の実際の使用状態では、図4(b)に示すように、マット12の幅方向中央部よりも外側はエンボス部20よりも装着者の股下部に接近するので、図4(b)に示す状態であれば、立体ギャザー33の高さH2をここまで高く確保しなくても横漏れの発生は少ないと考えられるが、実際には着用が動くため、紙おむつ1は様々な形状に変化する。この着用の動きに伴ってしばしば横漏れが発生することが想定される。
立体ギャザー33の高さH2を、マット12の使用時の幅方向中央部の最大の突出高さH1[(1/2)D]以上に設定し、高さH2に余裕を持たせることによって、立体ギャザー33の先端部の幅面への追従範囲を大きくすることで、こうした横漏れをも抑制しようとしている。
レッグギャザー31,ズレ止めギャザー32,立体ギャザー33は、何れも弾性部材41,42,43によって長手方向に収縮して皴を付けられて形成される。これらの弾性部材41,42,43は、何れも装着されるシート間に伸長状態で連続的に接合されて装着される。これらの弾性部材41,42,43が収縮力を発揮する。
言い換えれば、同じ伸び(伸び率)を与えた場合には、幅方向の内側の弾性部材42よりも幅方向の外側の弾性部材41の方が強い弾性力を発揮するように構成されている。
E=σ/ε
σ:弾性部材の伸張による応力
ε:弾性部材の伸張による歪み
したがって、第1弾性部材41のヤング率(弾性率)をE1、第2弾性部材42のヤング率(弾性率)をE2とすると、E1,E2は次式(1)の関係となる。
E1>E2 ・・・(1)
E1=E1a+E1b ・・・(2A)
E2=E2a+E2b+E2c ・・・(2B)
つまり、線状弾性体41a,41bについては次式(3A)のように、線状弾性体42a〜42cについては次式(3B)のように、幅方向の外側に配設された線状弾性体ほど高い弾性率を有するものが適用されている。
E1a<E1b ・・・(3A)
E2a<E2b<E2c・・・(3B)
E2a=E2b<E2c・・・(3B1)
E2a<E2b=E2c・・・(3B2)
E3a<E3b ・・・(3C)
つぎに、図4(a),(b)を参照して、装着状態の股下部1Bを説明する。
装着状態では、股下部1Bが所定形状に折り曲がった状態となる。具体的には、股下部1Bの幅方向断面が、図4(a)に示すように、エンボス部20の相互間が幅方向中心を頂点に肌面側に盛り上がって、更に、エンボス部20の外側も肌面側に盛り上がるため、図4(b)に示すように、「W」字状の所定形状に折り曲げられる。この「W」字状をなす部分を二つの並んだV字に準えて、一方のV字部分及び他方のV字部分をV字部51,52と呼ぶ。また、折れ目の位置が肌面側であれば山折りと呼び、非肌面側であれば谷折れと呼ぶ。
上述したように紙おむつが構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
紙おむつ1の装着時には、エンボス部20でマット12が折り曲げられて、マット12の幅方向中央部が装着者の股下部に向けて突出するためマット12が股下部にフィットし、吸収性が高まる。
よって、装着状態において紙おむつ1の股下部1Bが所定形状に折り曲げて保持され、触感や吸液性を確保して着用者の快適性を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態を以下のように変形して実施してもよい。
例えば上記実施形態では、レッグギャザー31とズレ止めギャザー32と立体ギャザー33の3つのギャザーを装備しているが、本発明では、立体ギャザー3を装備すればよく、レッグギャザー31とズレ止めギャザー32とは必須ではない。
そのうえ、エンボス部20に替えてまたは加えて、対応する部分のマット12が肉抜きされあるいは貫通した溝状部がマット12に凹設されてもよい。また、エンボス部20は、マット12の非肌面側に設けられていてもよく、マット12の肌面側と非肌面側とに設けられていてもよい。
1A 前身頃
1B 股下部
1C 後身頃
1S 紙おむつ(吸収性物品)1の幅方向の外側の縁部
2 止着テープ
3 フロントパッチ
10 サイドシート(肌面側シート)
10S サイドシート10の内側延設部
11 トップシート(肌面側シート)
12 マット(吸収体)
13 バックシート(第1非肌面側シート)
14 カバーシート(第2非肌面側シート)
20 エンボス部(溝状部)
31 レッグギャザー
41 第1弾性部材
41a,41b 第1線状弾性体
32 内側ギャザーとしてのズレ止めギャザー(サポートギャザー)
42 第2弾性部材
42a,42b,42c 第2線状弾性体
33 立体ギャザー
43 第3弾性部材
43a,43b 第3線状弾性体
51,52 V字部
C 幅方向の中心線
D エンボス部20の最も外側の縁の相互間距離
H1 マット(吸収体)12の幅方向中央部の突出高さ
H2 立体ギャザー33の高さ
Claims (6)
- 吸収体と、前記吸収体を肌面側から覆う肌面側シートと、前記吸収体を非肌面側から覆う非肌面側シートとを有し、着用者の股下に、長手方向が前記股下の前後方向に沿うように装着される吸収性物品であって、
前記肌面側シート側に、前記長手方向に収縮力を発揮する弾性部材によって、前記肌面側シートから肌面側に向けて立体的に形成される立体ギャザーと、
前記吸収体の前記立体ギャザーよりも前記幅方向の内側寄りにそれぞれ前記長手方向に延びるように形成され、着用者の股下への装着時に谷折れ状態になって前記吸収体の前記幅方向の中央部を前記股下へ向けて突出させる一対の溝状部と、を有し、
前記立体ギャザーの高さは、前記吸収体の前記幅方向中央部の突出高さ以上に設定されている
ことを特徴とする吸収性物品。 - 前記一対の溝状部は、それぞれ1本の溝によって構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。 - 前記一対の溝状部は、それぞれ直線状の溝によって構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収性物品。 - 前記立体ギャザーの高さは、前記一対の溝状部の距離の二分の一以上に設定されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の吸収性物品。 - 前記肌面側シートは、前記吸収体の全面又は幅方向両側縁部を除いた領域に重なるように配置されたトップシートと、前記トップシートよりも幅方向外側に配置されたサイドシートとを有し、
前記サイドシートの幅方向内側には、前記肌面側シートから肌面側に離隔可能に延設された内側延設部を有し、
前記内側延設部に前記立体ギャザーが設けられている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品。 - 前記立体ギャザーを形成する前記弾性部材は、前記長手方向に延びる複数の線状弾性体によって構成され、
前記複数の線状弾性体は、前記立体ギャザーの基端側のものよりも先端側のものの方が高い弾性率を有している
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の吸収性物品。
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