JP2018134042A - チーズ及びその製造方法、原料乳の製造方法、並びに食品汚染微生物の発育阻止方法 - Google Patents

チーズ及びその製造方法、原料乳の製造方法、並びに食品汚染微生物の発育阻止方法 Download PDF

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Abstract

【課題】合成食品保存料などの添加物を使用しなくても食品汚染微生物に対して抗菌性を示し、安全性に優れ、長期間の保存が可能なチーズ及びその製造方法、前記チーズの製造に好適な原料乳の製造方法、並びに食品汚染微生物の発育阻止方法を提供する。【解決手段】918mg/kg以上のブタン酸、908mg/kg以上のヘキサン酸、626mg/kg以上のオクタン酸、1,795mg/kg以上のデカン酸、及び443mg/kg以上の9−デセン酸の少なくとも1つを含むチーズである。【選択図】なし

Description

本発明は、チーズ及びその製造方法、原料乳の製造方法、並びに食品汚染微生物の発育阻止方法に関する。
我が国のナチュラルチーズは、消費期限の限られた輸入品に依存し、保存安定性に欠けるという問題がある。このため、保存性に優れたチーズの開発が望まれている。
また、チーズの表面に生育する雑菌などの食品汚染微生物は、製造上、食品衛生上、流通上の問題である。
雑菌汚染を防ぐための技術として、ソルビン酸カリウムなどの保存料が使用されているが、その使用には制限が設けられている。また、消費者の健康志向の高まりにより、合成食品保存料の使用が敬遠される傾向にある(例えば、非特許文献1参照)。
以上から、生物由来の安全な抗菌作用を有する天然抗菌物質を活用して、微生物の生育を制御することが期待されている。
抗菌作用については、遊離脂肪酸やモノアシルグリセリドが、グラム陽性及び陰性細菌、エンベロープウイルスなどに抗微生物作用を示す報告がある(例えば、非特許文献2参照)。また、市販のチーズのピロリ菌に対する抗菌効果が示され、ブルータイプチーズでは、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸のC12以上の脂肪酸が抗菌活性を示すことが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。
しかしながら、これらの報告では、抗カビ作用については報告されていない。
また、前記非特許文献1では、C16及びC14の遊離脂肪酸並びにモノグリセリドが、カビ類の増殖抑制に効果を示すことを報告している。
しかしながら、C10以下の短鎖脂肪酸が、カビ類の増殖抑制に効果を示すことは記載されていない。
したがって、合成食品保存料などの添加物を使用しなくても食品汚染微生物に対して抗菌性を示し、安全性に優れ、長期間の保存が可能なチーズの速やかな提供が強く望まれている。
なお、酪酸を100〜1,000ppm、及びカプロン酸を50〜300ppm含有するナチュラルチーズが提案されている(例えば、特許文献1参照)が、前記提案では、風味食感において優れたナチュラルチーズとするために酪酸等が使用されており、食品汚染微生物に対する抗菌性については、何ら記載されていない。
特開2012−50361号公報
J. Food Protection, 70, 1206−1212(2007) Ann. N. Y. Acad. Sci., 724, 465−471(1994) 畜産の情報、8、58−67(2008)
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、合成食品保存料などの添加物を使用しなくても食品汚染微生物に対して抗菌性を示し、安全性に優れ、長期間の保存が可能なチーズ及びその製造方法、前記チーズの製造に好適な原料乳の製造方法、並びに食品汚染微生物の発育阻止方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 918mg/kg以上のブタン酸、908mg/kg以上のヘキサン酸、626mg/kg以上のオクタン酸、1,795mg/kg以上のデカン酸、及び443mg/kg以上の9−デセン酸の少なくとも1つを含むことを特徴とするチーズである。
<2> 918mg/kg以上のブタン酸、908mg/kg以上のヘキサン酸、及び626mg/kg以上のオクタン酸を含有する前記<1>に記載のチーズである。
<3> 食品汚染微生物に対して抗菌性を有する前記<1>から<2>のいずれかに記載のチーズである。
<4> 前記<1>から<3>のいずれかに記載のチーズの製造方法であって、
温度20℃以上でチーズを熟成する工程を含むことを特徴とするチーズの製造方法である。
<5> 熟成温度が、25℃〜30℃である前記<4>に記載のチーズの製造方法である。
<6> 前記<1>から<3>のいずれかに記載のチーズの製造に用いられる原料乳の製造方法であって、
原料乳中の乳脂肪球皮膜の少なくとも一部を除去する工程、及び原料乳に脂肪を配合する工程の少なくともいずれかの工程を含むことを特徴とする原料乳の製造方法である。
<7> 乳脂肪球皮膜の除去が、原料乳の均質化処理により行われる前記<6>に記載の原料乳の製造方法である。
<8> 凝乳酵素として、ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)由来の凝乳酵素を用いて製造したチーズを用いることを特徴とする飲食品又はその原料における食品汚染微生物の発育阻止方法である。
<9> 前記チーズと、前記飲食品又はその原料とを同一空間に配置する前記<8>に記載の食品汚染微生物の発育阻止方法である。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、合成食品保存料などの添加物を使用しなくても食品汚染微生物に対して抗菌性を示し、安全性に優れ、長期間の保存が可能なチーズ及びその製造方法、前記チーズの製造に好適な原料乳の製造方法、並びに食品汚染微生物の発育阻止方法を提供することができる。
図1Aは、試験例1におけるチーズの各抽出画分のA.nigerに対する抗菌性を調べた結果を示す図である。 図1Bは、試験例1における各チーズのA.nigerに対する抗菌性を調べた結果を示す図である。 図2Aは、試験例2におけるヤマブシタケチーズのA.nigerに対する抗菌性を調べた結果を示す図である。「○」は熟成温度13℃、「●」は熟成温度25℃、「△」は熟成温度30℃の結果を示す。 図2Bは、試験例2におけるレンネットチーズのA.nigerに対する抗菌性を調べた結果を示す図である。「○」は熟成温度13℃、「●」は熟成温度25℃、「△」は熟成温度30℃の結果を示す。 図2Cは、試験例2における熟成温度13℃で製造したヤマブシタケチーズにおける短鎖脂肪酸の含有量を測定した結果を示す図である。 図2Dは、試験例2における熟成温度25℃で製造したヤマブシタケチーズにおける短鎖脂肪酸の含有量を測定した結果を示す図である。
(チーズ)
本発明のチーズは、短鎖脂肪酸として、918mg/kg以上のブタン酸、908mg/kg以上のヘキサン酸、626mg/kg以上のオクタン酸、1,795mg/kg以上のデカン酸、及び443mg/kg以上の9−デセン酸の少なくとも1つを含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
<短鎖脂肪酸>
前記短鎖脂肪酸のチーズにおける含有量としては、918mg/kg以上のブタン酸、908mg/kg以上のヘキサン酸、626mg/kg以上のオクタン酸、1,795mg/kg以上のデカン酸、及び443mg/kg以上の9−デセン酸の少なくとも1つを含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、クロコウジカビ(Aspergillus niger)などの食品汚染微生物に対する抗菌性がより優れる点で、918mg/kg以上のブタン酸、908mg/kg以上のヘキサン酸、及び626mg/kg以上のオクタン酸を含むことが好ましく、前記3種の短鎖脂肪酸に加えて、デカン酸及び9−デセン酸を含むことが好ましい。
−ブタン酸−
前記ブタン酸のチーズにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、918mg/kg以上が好ましく、1,000mg/kg以上がより好ましく、2,000mg/kg以上が更に好ましく、3,000mg/kg以上が特に好ましい。前記含有量が、前記好ましい範囲内であると、食品汚染微生物に対する抗菌性がより優れる点で、有利である。
−ヘキサン酸−
前記ヘキサン酸のチーズにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、908mg/kg以上が好ましく、1,000mg/kg以上がより好ましく、2,000mg/kg以上が更に好ましく、3,000mg/kg以上が特に好ましい。前記含有量が、前記好ましい範囲内であると、食品汚染微生物に対する抗菌性がより優れる点で、有利である。
−オクタン酸−
前記オクタン酸のチーズにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、626mg/kg以上が好ましく、650mg/kg以上がより好ましく、700mg/kg以上が特に好ましい。前記含有量が、前記好ましい範囲内であると、食品汚染微生物に対する抗菌性がより優れる点で、有利である。
−デカン酸−
前記デカン酸のチーズにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,795mg/kg以上が好ましく、これ以上の含有量を有すればよい。例えば2,000mg/kg以上がより好ましく、2,200mg/kg以上が特に好ましい。前記含有量が、前記好ましい範囲内であると、食品汚染微生物に対する抗菌性がより優れる点で、有利である。
−9−デセン酸−
前記9−デセン酸のチーズにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、443mg/kg以上が好ましく、これ以上の含有量を有すればよい。例えば500mg/kg以上がより好ましく、600mg/kg以上が特に好ましい。前記含有量が、前記好ましい範囲内であると、食品汚染微生物に対する抗菌性がより優れる点で、有利である。
前記チーズにおける前記短鎖脂肪酸の含有量を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する試験例1の−短鎖脂肪酸含有量の測定−の項目に記載の方法などにより測定することができる。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、従来のチーズに含まれる成分中から、目的に応じて適宜選択することができる。
前記その他の成分のチーズにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のチーズは、後述する試験例に示すように、カビ類、細菌などの食品汚染微生物に対して抗菌性を有する。特に、従来、カビ類の発生を防ぐ手段は、細菌汚染に対する抗菌法に比べて少なく、乳製品などの食品製造産業における微生物制御の簡便化、長期食品保存の展開及び食品流通における安定化に有効になると期待される。
したがって、本発明のチーズは、従来のチーズと異なり、長期間保存することが可能である。よって、本発明は、918mg/kg以上のブタン酸、908mg/kg以上のヘキサン酸、626mg/kg以上のオクタン酸、1,795mg/kg以上のデカン酸、及び443mg/kg以上の9−デセン酸の少なくとも1つを含むことを特徴とする長期間保存用チーズにも関する。
本発明のチーズは、保存料なしで、熟成型チーズでは10℃以下で12ヶ月間以上、フレッシュ型チーズでは4℃以下で1ヶ月間以上の長期間食品汚染微生物が生じることを抑制できた。
なお、前記ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、及び9−デセン酸は、乳製品のみならず食品中の有機酸として普遍的にみられる物質のため、安全な抗菌物質である。
前記チーズの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、後述する本発明のチーズの製造方法により、好適に製造することができる。
(原料乳の製造方法)
本発明の原料乳の製造方法は、上記した本発明のチーズの製造に用いられる原料乳の製造方法であって、乳脂肪球皮膜除去工程及び脂肪配合工程の少なくともいずれかの工程を含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記乳脂肪球皮膜除去工程及び脂肪配合工程は、いずれか一方のみを行ってもよいし、両方を行ってもよい。
<乳脂肪球皮膜除去工程及び/又は脂肪配合工程>
−乳脂肪球皮膜除去工程−
前記乳脂肪球皮膜除去工程は、原料乳中の乳脂肪球皮膜の少なくとも一部を除去する工程である。
前記乳脂肪球皮膜の除去の度合いとしては、少なくとも一部が除去されていれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、乳脂肪球皮膜が完全に除去されていてもよいし、部分的に除去されていてもよい。
前記乳脂肪球皮膜の少なくとも一部が除去されることにより、ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)由来の凝乳酵素の活性が上がり、チーズ中における前記短鎖脂肪酸の含有量を高めることができると考えられる。
前記乳脂肪球皮膜を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、原料乳の均質化(ホモ化)処理などが挙げられる。
前記ホモ化の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
前記乳脂肪球の粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3μm以下などが挙げられる。
前記乳脂肪球の粒子径を小さくすることにより、乳脂肪球の表面積が増大し、乳脂肪球を覆っている膜(乳脂肪球皮膜)が脂肪球を覆えなくなることで、乳脂肪球皮膜の少なくとも一部が除去された状態になると考えられる。
−脂肪配合工程−
前記脂肪配合工程は、原料乳に脂肪を配合する工程である。
前記脂肪としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バターオイル、ギー(ghee)、生クリームなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記脂肪の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記原料乳に対して、1%(w/w)〜5%(w/w)などが挙げられる。
前記脂肪は、前記脂肪球皮膜を有さないため、ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)由来の凝乳酵素が機能することができ、チーズ中における前記短鎖脂肪酸の含有量を高めることができると考えられる。
前記原料乳の製造方法に用いる原料乳としては、特に制限はなく、チーズの製造に用いることができる原料乳の中から適宜選択することができ、例えば、生乳、低温殺菌乳、高温殺菌乳、超高温殺菌乳、脱脂乳などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<その他の工程>
前記原料乳の製造方法におけるその他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の原料乳の製造方法に用いる原料乳を準備する工程などが挙げられる。
後述する試験例3に示すように、乳脂肪球皮膜除去工程及び脂肪配合工程の少なくともいずれかの工程を含む方法により製造された原料乳を用いることで、上記した本発明のチーズを効率良く製造することができる。
(チーズの製造方法)
本発明のチーズの製造方法は、上記した本発明のチーズの製造方法であって、熟成工程を少なくとも含み、必要に応じて更に、原料乳の調製工程、凝固工程、ホエイ排出工程、圧搾工程、加塩工程、水分除去工程などのその他の工程を含む。
<原料乳の調製工程>
前記原料乳の調製工程は、チーズの原料となる乳を調製する工程である。
前記原料乳の調製の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記した本発明の原料乳の製造方法と同様の方法が好ましい。
<凝固工程>
前記凝固工程は、原料乳に凝乳酵素を加え、攪拌し、原料乳を凝固させ、固形物(カード)を形成する工程である。
前記凝固の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができるが、凝乳酵素として、食用きのこであるヤマブシタケ(Hericium erinaceum)由来の凝乳酵素を用いる方法が、チーズ中に前記短鎖脂肪酸を効率良く生産することができる点で、好ましい。
前記凝乳酵素の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記カードは、任意の大きさに切断してもよい。
前記ヤマブシタケ由来の凝乳酵素の調製方法としては、特に制限はなく、例えば、後述する試験例1の<ヤマブシタケ由来凝乳酵素の調製>の項目に記載の方法などにより調製することができる。
前記ヤマブシタケ由来の凝乳酵素の態様としては、ヤマブシタケを培養して得られた培養物であってもよいし、前記培養物を粗精製したものであってもよいし、凝乳酵素まで精製したものであってもよい。
前記ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)は、自然に生育しているものを使用してもよいし、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農業生物資源ジーンバンクなどから入手したものを使用してもよい。
前記ヤマブシタケとしては、例えば、MAFF435060、MAFF430234、NBRC100328、MAFF430233、MAFF420247などが挙げられる。
前記凝乳酵素を産生するヤマブシタケは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<ホエイ排出工程>
前記ホエイ排出工程は、前記カードからホエイを排出する工程である。
前記ホエイを排出する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、前記カードを攪拌しながら加温し、ホエイを排出する方法などが挙げられる。
前記加温の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カードが50℃程度になる温度までなどが挙げられる。
<圧搾工程>
前記圧搾工程は、前記ホエイと分離したカードを圧搾する工程である。
前記圧搾の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、カードの上に重しを置く方法などが挙げられる。
前記圧搾の温度、時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4℃程度で、4時間〜8時間程度とするなどが挙げられる。
<加塩工程>
前記加塩工程は、前記圧搾したカードに加塩する工程である。
前記加塩の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、食塩水中に前記カードを浸漬する方法などが挙げられる。
前記食塩水の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、25%(w/w)程度などが挙げられる。
前記浸漬の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1時間程度などが挙げられる。
<水分除去工程>
前記水分除去工程は、前記加塩工程後のカードの水分を除去する工程である。
前記水分を除去する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
<熟成工程>
前記熟成工程は、前記カード(チーズ)を温度20℃以上で熟成する工程である。
前記熟成工程における温度は、一定であってもよいし、変化させてもよい。
前記熟成工程は、温度20℃以上でチーズを熟成する工程を含む限り、20℃未満の温度でチーズを熟成する工程を含んでもよい。
前記温度20℃以上でチーズを熟成する工程における温度としては、20℃以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃以上が好ましく、25℃〜30℃がより好ましい。前記好ましい温度であると、チーズにおける前記短鎖脂肪酸の含有量を速やかに高めることができ、食品汚染微生物に対して抗菌性を示すチーズを短期間で製造することができる点で、有利である。
前記温度20℃以上でチーズを熟成する期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2週間〜3週間程度などが挙げられる。
前記20℃未満の温度でチーズを熟成する工程における温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、7℃〜15℃などが挙げられる。
前記20℃未満の温度でチーズを熟成する期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記熟成工程の温度調整としては、例えば、熟成温度を20℃以上として一定期間熟成した後、20℃未満で熟成する方法などが挙げられる。
後述する試験例2に示すように、温度20℃以上でチーズを熟成する熟成工程を含むことで、上記した本発明のチーズを効率良く製造することができる。
(飲食品又はその原料における食品汚染微生物の発育阻止方法)
本発明の飲食品又はその原料における食品汚染微生物の発育阻止方法(以下、「発育阻止方法」と称することがある)は、凝乳酵素として、ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)由来の凝乳酵素を用いて製造したチーズを用いる。
<チーズ>
前記ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)由来の凝乳酵素を用いて製造したチーズの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した本発明のチーズの製造方法と同様にして製造することができる。
前記チーズは、カードからホエイを少なくとも部分的に除去したものであってもよいし、加塩工程を経たものであってもよいし、熟成工程を経たものであってもよい。
<飲食品又はその原料>
前記飲食品又はその原料としては、特に制限はなく、通常の飲食品又はその原料の中から適宜選択することができる。
<方法>
前記発育阻止方法としては、前記チーズを用いる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記チーズと、前記飲食品又はその原料とを同一空間(以下、「同一雰囲気下」と称することがある)に配置する方法が好ましい。
前記同一空間に配置する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1つの密閉容器内に、前記チーズと、前記飲食品又はその原料とを収容する方法などが挙げられる。
前記発育阻止方法の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、7℃〜35℃などが挙げられる。
前記発育阻止方法の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1ヶ月間程度以上などが挙げられる。
<食品汚染微生物>
本発明における食品汚染微生物とは、食品に発生する微生物全般をいい、例えば、カビ類、細菌などが挙げられる。
後述する試験例4に示すように、凝乳酵素として、ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)由来の凝乳酵素を用いて製造したチーズを用いることで、飲食品又はその原料に食品汚染微生物が生じることを阻止することができる。
以下、試験例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の試験例に制限されるものではない。
(試験例1)
<ヤマブシタケ由来凝乳酵素の調製>
MYS平板培地(麦芽エキス1%、酵母エキス0.4%、ショ糖1%、寒天1.5%を含む培地(pH5.6))を用い、ヤマブシタケ菌株(MAFF435060、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農業生物資源ジーンバンク)を前培養した。
100mL容三角フラスコにフスマ5gを入れ、水分含量が60%(w/w)となるように蒸留水を加え混合し、オートクレーブ殺菌(115℃、20分間)し、フスマ固体培地を作製した。前記前培養した平板培地から、直径7mmのコルクボーラーを用いて菌糸体を5ディスクくり抜いた。前記菌糸体を、前記フスマ固体培地に接種し、25℃で2週間培養した。
前記培養後、前記培地に50mLの0.05M McIlvaine緩衝液(pH6.0)を加え、前記培地を解し、4℃で一晩放置した。
その後、抽出液を遠心分離(10,000×g、15分間、7℃)し、上清をNo.2のろ紙を用いてろ過し、得られたものをヤマブシタケ由来凝乳酵素とした。
前記ヤマブシタケ由来凝乳酵素は、使用するまで−25℃で保存した。
<ヤマブシタケ由来凝乳酵素を使用したチーズの製造>
牛乳(低温殺菌牛乳(タカナシ乳業社製(岩手工場、66℃で30分間殺菌))、ホモ化されている)100mLを35℃に加温し、これに前記ヤマブシタケ由来凝乳酵素5mLを加えて攪拌後静置し、凝固したことを確認して、6mmの賽の目に切断してカードとした。
前記カードを50℃になるまで攪拌しながら加温し、ホエイを排出した。
ホエイとカードを分離し、回収したカードの上に重しを置いて、4℃で4時間〜8時間圧搾した。
圧搾後のカードは、25%(w/w)の食塩水中に1時間浸漬し、加塩した。
その後、13℃で1ヶ月間熟成し、ヤマブシタケ由来凝乳酵素を使用して製造したチーズ(以下、「ヤマブシタケチーズ」と称することがある)を得た。
<チーズ画分の抽出>
前記ヤマブシタケチーズについて、以下の処理を行い、各チーズ画分を抽出した。
−グリセリド画分の抽出−
前記チーズ6gに、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、及び蒸留水の各100mLを加え、5,000rpmで2分間ホモジナイズした。次に、NaCl 100g及び2.4N HCl 100mLを加えて激しく振とうした後、遠心分離(25℃、3,000rpm、10分間)し、上層のn−ヘキサン−ジエチルエーテル層を回収した。下層にn−ヘキサン及びジエチルエーテルの各100mLを加えて再度抽出して上層のn−ヘキサン−ジエチルエーテル層を回収し、前記回収物と合わせた。これに、1.2N NaOH水溶液200mLを加えて抽出した上層を回収し、更に下層にn−ヘキサン及びジエチルエーテルの各100mLを加えて抽出した上層を合わせて濃縮したものをグリセリド画分とした。
−短鎖脂肪酸画分の抽出−
前記グリセリド画分の抽出における下層に、更にn−ヘキサン及びジエチルエーテルの各100mLを加えて抽出し、遠心分離(3,000rpm、10分間)した後の下層を回収した。更に、上層に1.2N NaOH水溶液200mLを加えて抽出した下層を回収し、前記回収物と合わせた。回収した下層は、n−ヘキサン及びジエチルエーテルの各100mL、NaCl 100g、及び6N HCl水溶液200mLを加え抽出した。遠心分離(3,000rpm、10分間)した後の上層を回収し、濃縮したものを短鎖脂肪酸画分とした。
−中長鎖脂肪酸画分の抽出−
前記短鎖脂肪酸画分の抽出において、下層を回収した後の上層に、1.2N HCl水溶液200mLを加えて抽出し、遠心分離(3,000rpm、10分間)した後の上層を回収して濃縮したものを中長鎖脂肪酸画分とした。
<A.nigerに対する抗菌性>
前記各抽出画分を200mg/mLの濃度になるようにジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、乾熱滅菌済みのペーパーディスク(ペーパーディスク抗菌物質検定用、厚手8mm、ADVANTEC社製)に50μL滴下した後、検定菌(クロコウジカビ(Aspergillus niger NBRC105649))の胞子が約1×10個になるように混和したMYS平板培地上に置き、検定菌が生育するまで25℃で培養した。
各抽出画分の抗菌活性は、増殖阻止円の有無により判定した。結果を図1Aに示す。
図1Aの結果から、短鎖脂肪酸画分に増殖阻止円が検出され、A.nigerに対する抗菌活性が認められた。一方、中長鎖脂肪酸画分、グリセリド画分、DMSO(溶媒)には、増殖阻止円が検出されなかった。
<短鎖脂肪酸画分及び中長鎖脂肪酸画分に含まれる成分の分析>
前記短鎖脂肪酸画分及び中長鎖脂肪酸画分に含まれる成分の分析を、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS−QP2010Ultra、島津製作所製)により行った。分析条件は、以下のとおりである。
なお、分析は、メチル化キット(ナカライテスク社製)を用いて前記各画分をメチル化したものをサンプルとして行った。
結果を表1−1に示す。
[分析条件]
分析カラム : Inert Cap Pure Wax(0.25mm i.d. ×60m、0.25μm df;GLサイエンス社製)
サンプル注入量 : 3μL
スプリット比 : 1:50
キャリアガスHe流量 : 1.0mL/分間
注入口温度 : 250℃
インターフェイス温度 : 260℃
イオン源温度 : 200℃
カラム温度 : 40℃で5分間保持後、10℃/分間の割合で240℃まで昇温して20分間保持。
表1−1の結果から、A.nigerに対する抗菌活性を示した短鎖脂肪酸画分には、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、及び9−デセン酸が含まれていた。一方、A.nigerに対する抗菌活性が認められなかった中長鎖脂肪酸画分には、これらの脂肪酸は検出されなかった。
<最小生育阻止濃度の測定>
前記ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、及び9−デセン酸のA.nigerに対する最小生育阻止濃度を以下のようにして測定した。結果を表1−2に示す。
[測定]
マイクロプレート(滅菌済マイクロプレート、フタ付丸底、AS ONE社製)を用い、検定菌(Aspergillus niger NBRC105649)の胞子が約1×10個、前記各脂肪酸の濃度が296mg/kg〜1,795mg/kgになるように適宜混和したMYS培地をウエルに分注し、菌が生育するまで25℃で培養した。
最小生育阻止濃度の評価は、検定菌の生育が阻止された最小濃度で示した。
表1−2の結果から、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、及び9−デセン酸の全てにA.nigerに対する生育抑制が認められた。
以上の結果から、前記ヤマブシタケチーズのA.nigerに対する抗菌活性は、短鎖脂肪酸画分に含まれるブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、及び9−デセン酸によることが示された。
<各種チーズにおける短鎖脂肪酸含有量及びA.nigerに対する抗菌活性の比較>
上記したヤマブシタケチーズ、下記レンネットを使用して製造したチーズ、及び下記市販チーズにおける短鎖脂肪酸含有量を比較した。
−レンネットを使用したチーズの製造−
前記ヤマブシタケ由来凝乳酵素を使用したチーズの製造において、ヤマブシタケ由来凝乳酵素5mLを使用していた点を、市販のレンネット(CHY−MAX Powder−Extra,CHR.HANSEN社、2mg/mL)1mLを使用に変えた以外は、同様にして、レンネットを使用して製造したチーズ(以下、「レンネットチーズ」と称することがある)を得た。
−市販チーズ−
・ ブルー・ド・オーベリュニュ AOP(株式会社サン・ブリッジ製)
・ ロックフォールAOPソシエテ(東京ヨーロッパ貿易株式会社製)
・ ゴルゴンゾーラ ピカンテ DOP(株式会社クオレ・サルド製)
・ モッツアレラ(森永乳業株式会社製)
・ チェダークラッシュ(雪印メグミルク株式会社製)
・ パルミジャーノ・レッジャーノ(株式会社デーリー製)
・ ルスティック・プチ・マンステール(株式会社エフ アール マーケティング製)
−短鎖脂肪酸含有量の測定−
上記<チーズ画分の抽出>の項目に記載した抽出方法に準じて、各チーズ1gから、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、及び蒸留水の各20mLを加えて抽出した上層を基に短鎖脂肪酸画分を得た。
前記短鎖脂肪酸画分は、メチル化キット(ナカライテスク社製)を用いてメチル化し、<短鎖脂肪酸画分及び中長鎖脂肪酸画分に含まれる成分の分析>の項目に記載した分析と同様に、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて短鎖脂肪酸を定量した。なお、内部標準物質にはジメチル吉草酸を用いた。
結果を表1−3に示す。
−A.nigerに対する抗菌活性の測定−1−
検定菌(Aspergillus niger NBRC105649)の胞子が約1×10個になるように混和したMYS平板培地に、乾熱殺菌済みの直径7mmのコルクボーラーを用いて試料穴をつくり、各チーズ0.1gを埋め込んだ後に、菌が発育するまで25℃で培養した。各チーズの抗菌活性の有無は、生育阻止円の有無により判定した。
結果を表1−3に示す。なお、表1−3中、「+」は「抗菌活性あり」を示し、「−」は「抗菌活性なし」を示す。
表1−3の結果から、ヤマブシタケチーズでは、ブタン酸、ヘキサン酸、及びオクタン酸の含有量が、前記最小生育阻止濃度を大きく上回っていた。また、デカン酸及び9−デセン酸も、レンネットチーズや市販チーズと比較して多く含有していた。一方、レンネットチーズ及び市販チーズでは、いずれも、前記短鎖脂肪酸の含有量が、前記最小生育阻止濃度を下回っていた。
また、ヤマブシタケチーズでは、A. nigerに対する生育阻止が認められたが、レンネットチーズ及び市販チーズには、A. nigerに対する生育阻止は認められなかった。
−A.nigerに対する抗菌活性の測定−2−
更に、各チーズを0.1g採取し、検定菌(Aspergillus niger NBRC105649)の胞子が約1×10個になるように混和したMYS平板培地に、乾熱殺菌済みの直径7mmのコルクボーラーを用いて試料穴をつくり、各チーズを埋め込んだ後に菌が生育するまで25℃で培養した。各チーズの抗菌活性は、増殖阻止円の有無により判定した。
その結果、ヤマブシタケチーズでは、A. nigerに対する生育阻止が認められたが、レンネットチーズ及び市販チーズには、A. nigerに対する生育阻止は認められなかった。
図1Bに、ヤマブシタケチーズ(ヤマブシタケ)、ロックフォールAOPソシエテ(ロックフォール)、ルスティック・プチ・マンステール(マンステール)、モッツアレラ(モッツアレラ)、チェダークラッシュ(チェダー)、パルミジャーノ・レッジャーノ(パルミジャーノ・レッジャーノ)の結果を示す。なお、()内の記載は、図1B中の表記を示す。
(試験例2:チーズの熟成温度が抗菌性の発現に与える影響)
試験例1の<ヤマブシタケ由来凝乳酵素を使用したチーズの製造>の項目における熟成温度を13℃、25℃、又は30℃とした以外は、同様にして、ヤマブシタケチーズを製造した。
また、試験例1の−レンネットを使用したチーズの製造−の項目における熟成温度を13℃、25℃、又は30℃とした以外は、同様にして、レンネットチーズを製造した。
<A.nigerに対する抗菌活性の測定>
熟成開始日、熟成開始7日間後、熟成開始14日間後の各チーズについて、試験例1の−A.nigerに対する抗菌活性の測定−2−の項目に記載の方法と同様にして抗菌活性を測定した。
結果を図2A及び図2Bに示す。図2Aはヤマブシタケチーズの結果を示し、図2Bはレンネットチーズの結果を示す。図2A及び図2B中、縦軸(生育阻止)は増殖阻止円の幅(mm)を示し、横軸は熟成日数を示す。
<短鎖脂肪酸含有量の測定>
熟成温度を13℃又は25℃として製造した、熟成開始日、熟成開始7日間後、熟成開始14日間後の各ヤマブシタケチーズにおける短鎖脂肪酸(ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、及び9−デセン酸)の含有量を、試験例1の−短鎖脂肪酸含有量の測定−の項目に記載の方法と同様にして測定した。
結果を図2C及び図2Dに示す。図2Cは熟成温度が13℃の場合の結果を示し、図2Dは熟成温度が25℃の場合の結果を示す。図2C及び図2D中、縦軸(FFA)は前記短鎖脂肪酸の含有量(mg/kg)を示し、横軸は熟成日数を示す。
これらの結果から、ヤマブシタケチーズでは、一般的なチーズの熟成温度である13℃においてA.nigerに対する抗菌性の発現及び短鎖脂肪酸の生成に1ヶ月間程度の熟成期間を要するのに対し、熟成温度が25℃及び30℃では2週間程度でA.nigerに対する抗菌性の発現と短鎖脂肪酸の増加が認められた。
したがって、チーズ(カード)作製後に25℃〜30℃の温度で熟成することにより、短時間でA.nigerに対する抗菌性を発現させることが可能であることが示された。
なお、レンネットチーズではいずれの熟成温度においてもA.nigerに対する抗菌性は認められなかった。
(試験例3:原料乳が抗菌性の発現に与える影響)
試験例1の<ヤマブシタケ由来凝乳酵素を使用したチーズの製造>の項目における牛乳を下記のいずれかの原料に代えた以外は、同様にして、ヤマブシタケチーズを製造した。
[原料]
・ ノンホモ化乳
生乳を63℃で30分間低温殺菌し、冷却したもの。
・ ホモ化乳
生乳を63℃で30分間低温殺菌し、冷却した後、脂肪球が2μm以下の大きさになるように機械的に均質化したもの。
・ バターオイル混合脱脂乳
前記ノンホモ化乳を遠心分離(6,000rpm、25℃、30分間)して脂肪を分離し、脱脂乳とした。前記脱脂乳に、バターオイル(ミヨシ油脂社製)を3.7%(w/w)の割合で添加し、ホモジナイズ(5,000rpm、50℃、20分間)したもの。
<短鎖脂肪酸含有量の測定>
13℃で1ヶ月間熟成後の各チーズにおける短鎖脂肪酸(ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、及び9−デセン酸)の含有量を、試験例1の−短鎖脂肪酸含有量の測定−の項目に記載の方法と同様にして測定した。
結果を表2に示す。
<A.nigerに対する抗菌活性の測定>
13℃で1ヶ月間熟成後の各チーズについて、試験例1の<A.nigerに対する抗菌性>の項目に記載のペーパーディスク法と同様にして抗菌活性を測定した。
結果を表2に示す。なお、表2中、「+」は「抗菌活性あり」を示し、「−」は「抗菌活性なし」を示す。
表2の結果から、ノンホモ化乳を原料乳とし、凝乳酵素としてヤマブシタケ由来凝乳酵素を用いたチーズでは、熟成後にも短鎖脂肪酸の増加が少なく、A. nigerに対する抗菌性が認められなかった。一方、ホモ化乳又はバターオイル混合脱脂乳を原料乳とし、凝乳酵素としてヤマブシタケ由来凝乳酵素を用いたチーズでは、短鎖脂肪酸の含有量が著しく増加し、A. nigerに対する抗菌性が認められた。
以上の結果から、ヤマブシタケ由来凝乳酵素中のリパーゼが、乳脂肪球皮膜の少なくとも一部が除去された乳脂肪球、又は皮膜を有さない脂肪に作用して短鎖脂肪酸を生成すると考えられ、短鎖脂肪酸の含有量を増加させ、A. nigerに抗菌性を高めるためには、乳脂肪の均質化(ホモ化)又はバターオイル等の脂肪の添加が効果的であることがわかった。
前記原料乳の均質化により、短鎖脂肪酸の含有量が増加するメカニズムは、均質化処理することにより乳脂肪球の粒子径が小さくなり、その結果、乳脂肪球の表面積が増大し、乳脂肪球を覆っている膜(乳脂肪球皮膜)が脂肪球を覆えなくなることで、ヤマブシタケ由来凝乳酵素の活性が上がったためと考えられる。
(試験例4:保存耐久性)
試験例1の<ヤマブシタケ由来凝乳酵素を使用したチーズの製造>の項目と同様にして、圧搾後のカードに加塩したものをヤマブシタケチーズとした。
また、試験例1の−レンネットを使用したチーズの製造−の項目と同様にして、圧搾後のカードに加塩したものをレンネットチーズとした。
<保存試験>
縦20cm×横20cm×深さ5cmの密閉容器を用いて、(1)レンネットチーズのみを前記容器に入れた場合、(2)レンネットチーズと、ヤマブシタケチーズとを双方が接触しないように前記容器に入れた場合のレンネットチーズの保存性に及ぼす影響について、13℃で1ヶ月間熟成後に、チーズ表面の雑菌汚染の状況を比較して調べた。
その結果、(1)レンネットチーズのみ容器に入れて熟成した場合には、カビ及び細菌といった食品汚染微生物による汚染が認められた。一方、(2)レンネットチーズと、ヤマブシタケチーズとを容器に入れて熟成した場合には、レンネットチーズ表面の食品汚染微生物による汚染が認められなかった。
したがって、ヤマブシタケチーズと同一雰囲気下で熟成することは、レンネットチーズの保存耐久性向上に効果的であることが示された。

Claims (9)

  1. 918mg/kg以上のブタン酸、908mg/kg以上のヘキサン酸、626mg/kg以上のオクタン酸、1,795mg/kg以上のデカン酸、及び443mg/kg以上の9−デセン酸の少なくとも1つを含むことを特徴とするチーズ。
  2. 918mg/kg以上のブタン酸、908mg/kg以上のヘキサン酸、及び626mg/kg以上のオクタン酸を含有する請求項1に記載のチーズ。
  3. 食品汚染微生物に対して抗菌性を有する請求項1から2のいずれかに記載のチーズ。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のチーズの製造方法であって、
    温度20℃以上でチーズを熟成する工程を含むことを特徴とするチーズの製造方法。
  5. 熟成温度が、25℃〜30℃である請求項4に記載のチーズの製造方法。
  6. 請求項1から3のいずれかに記載のチーズの製造に用いられる原料乳の製造方法であって、
    原料乳中の乳脂肪球皮膜の少なくとも一部を除去する工程、及び原料乳に脂肪を配合する工程の少なくともいずれかの工程を含むことを特徴とする原料乳の製造方法。
  7. 乳脂肪球皮膜の除去が、原料乳の均質化処理により行われる請求項6に記載の原料乳の製造方法。
  8. 凝乳酵素として、ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)由来の凝乳酵素を用いて製造したチーズを用いることを特徴とする飲食品又はその原料における食品汚染微生物の発育阻止方法。
  9. 前記チーズと、前記飲食品又はその原料とを同一空間に配置する請求項8に記載の食品汚染微生物の発育阻止方法。
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