本発明の硬化性組成物は、重合開始剤と、重合性化合物と、親水性官能基を有する内添型離型剤と、を有する組成物である。ここで本発明の硬化性組成物に含まれる内添型離型剤は、本発明の硬化性組成物の気液界面に偏在しない材料である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。つまり、当業者の通常の知識に基づいて本発明の趣旨を逸脱しない範囲で以下に説明する実施形態に対して適宜変更、改良等を加えたものも本発明に当然に含まれる。
(1)硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は、少なくとも下記(1A)乃至(1C)を含む混合物である。
(1A)重合開始剤
(1B)重合性化合物
(1C)内添型離型剤
尚、内添型離型剤は、親水性官能基を有し気液界面に偏在しない化合物である。ここで、本発明において、親水性とは、硬化性組成物の主成分である重合性化合物よりも水に対する親和性が良好であることを意味する。以下、各成分について説明する。
(1A)重合開始剤
重合開始剤としては、光重合開始剤及び熱重合開始剤が含まれる。
光重合開始剤は、光刺激により、重合性化合物の重合反応を引き起こす反応種を発生させる物質である。具体的には、光刺激によりラジカルが発生する光ラジカル発生剤、光刺激によりプロトン(H+)が発生する光酸発生剤等が挙げられる。
光ラジカル発生剤は、光(赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の荷電粒子線等、放射線)によりラジカルを発生する重合開始剤であり、主に、重合性化合物がラジカル重合性化合物の場合に用いられる。一方、光酸発生剤は、光により酸(プロトン)を発生する重合開始剤であり、主に、重合性化合物がカチオン重合性化合物の場合に用いられる。
光ラジカル発生剤として、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−又はp−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等のような置換基を有してもよい2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパノン−1−オン等の芳香族ケトン誘導体;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾイン等のベンゾイン誘導体;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン誘導体;アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン誘導体:キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられるが、これらに限定されない。尚、これら光ラジカル発生剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
光ラジカル発生剤に該当する市販品として、例えば、Irgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI−1700、−1750、−1850、CG24−61、Darocur 1116、1173(以上、チバ・ジャパン製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF製)、ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において、好ましくは、オニウム塩化合物である。
オニウム塩化合物としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
オニウム塩化合物の具体例としては、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムピレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムn−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムピレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムn−オクタンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムピレンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムベンゼンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム10−カンファースルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムn−オクタンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムピレンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムベンゼンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム10−カンファースルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムn−オクタンスルホネート等が挙げられる。
スルホン化合物として、例えば、β−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンや、これらのα−ジアゾ化合物等が挙げられる。スルホン化合物の具体例として、例えば、フェナシルフェニルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン、4−トリスフェナシルスルホン等が挙げられるが、これらに限定されない。
スルホン酸エステル化合物として、例えば、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等を挙げることができる。スルホン酸エステル化合物の具体例としては、α−メチロールベンゾインパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、α−メチロールベンゾイントリフルオロメタンスルホネート、α−メチロールベンゾイン2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート等が挙げられるが、これらに限定されない。
スルホンイミド化合物の具体例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)フタルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニル)フタルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
ジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
熱重合開始剤は、熱刺激により、重合性化合物の重合反応を引き起こす反応種を発生させる物質である。具体的には、熱刺激によりラジカルが発生する熱ラジカル発生剤等が挙げられる。
熱ラジカル発生剤としては、アゾ化合物及び有機過酸化物等が含まれる。
アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル及び1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(メチルイソブチレート)及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドが挙げられる。
有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
本発明において、硬化性組成物に含まれる重合開始剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用して用いてもよい。ここで硬化性組成物を硬化する工程が光による場合では、開始剤として光重合開始剤が用いられ、熱による場合では、開始剤として熱重合開始剤が用いられる。これら開始剤のうち、半導体集積回路用等の微細構造体となる膜を製造する際には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤を用いると、硬化膜の製造プロセスにおいて、加熱や冷却の熱プロセスが不要となり、生産性が優れるからである。
本発明において、硬化性組成物に含まれる重合開始剤の含有量は、特に制限が無いが、好ましくは、硬化性組成物の重量(総重量)に対して、0.01重量%以上10重量%以下である。より好ましくは、0.1重量%以上7重量%以下であり、特に好ましくは、1重量%以上5重量%以下である。この範囲であると、硬化性組成物の硬化速度と膜(硬化膜)の強度(樹脂強度)が共に優れる。
(1B)重合性化合物
重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物が含まれる。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性を有する化合物であれば特に限定されないが、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する化合物が好ましい。
アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性p−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、PO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
これら単官能(メタ)アクリル化合物に該当する市販品としては、アロニックスM101、M102、M110、M111、M113、M117、M5700、TO−1317、M120、M150、M156(以上、東亞合成製)、MEDOL10、MIBDOL10、CHDOL10、MMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30、LA、IBXA、2−MTA、HPA、ビスコート#150、#155、#158、#190、#192、#193、#220、#2000、#2100、#2150(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレートBO−A、EC−A、DMP−A、THF−A、HOP−A、HOA−MPE、HOA−MPL、PO−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、エポキシエステルM−600A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD TC110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬製)、NKエステルAMP−10G、AMP−20G(以上、新中村化学工業製)、FA−511A、512A、513A(以上、日立化成製)、PHE、CEA、PHE−2、PHE−4、BR−31、BR−31M、BR−32(以上、第一工業製薬製)、VP(BASF製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
アクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、PO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、EO,PO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。
多官能(メタ)アクリル化合物に該当する市販品としては、ユピマーUV SA1002、SA2007(以上、三菱化学製)、ビスコート #195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#360、#700、GPT、3PA(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレート 4EG−A、9EG−A、NP−A、DCP−A、BP−4EA、BP−4PA、TMP−A、PE−3A、PE−4A、DPE−6A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD PET−30、TMPTA、R−604、DPHA、DPCA−20、−30、−60、−120、HX−620、D−310、D−330(以上、日本化薬製)、アロニックス M208、M210、M215、M220、M240、M305、M309、M310、M315、M325、M400(以上、東亞合成製)、リポキシVR−77、VR−60、VR−90(以上、昭和高分子製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
以上列挙したラジカル重合性化合物は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルを意味する。(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。また(メタ)アクリロイルは、アクリロイル及びメタクリロイルを意味する。またEOは、エチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物とは、エチレンオキシ基を少なくとも1つ以上有することを意味する。またPOは、プロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物とは、プロピレンオキシ基を少なくとも1つ以上有することを意味する。
カチオン重合性化合物は、カチオン重合性を有する化合物であれば特に限定されないが、ビニルエーテル基、エポキシ基又はオキセタニル基を1つ以上有する化合物が好ましい。
ビニルエーテル基を1つ有する化合物として、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。
ビニルエーテル基を2つ以上有する化合物として、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテル等のジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類等が挙げられるが、これらに限定されない。
エポキシ基を1つ有する化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられるが、これらに限定されない。
エポキシ基を2つ以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
オキセタニル基を1つ有する化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。
オキセタニル基を2つ以上有する化合物としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらカチオン重合性化合物は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において、水添とは、ベンゼン環等が有する炭素−炭素二重結合に水素原子が付加されていることを意味する。
本発明において、硬化性組成物に含まれる重合性化合物の含有量は、特に制限が無いが、好ましくは、硬化性組成物の重量(総重量)に対して、80重量%以上99.99重量%以下である。より好ましくは、86重量%以上99.89重量%以下であり、特に好ましくは、90重量%以上98.9重量%以下である。この範囲であると、硬化性組成物の硬化速度と膜(硬化膜)の強度(樹脂強度)が共に優れる。
(1C)内添型離型剤
内添型離型剤は、親水性官能基を有する化合物である。親水性官能基としては、炭素数2乃至3のポリオキシアルキレン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、ピリジル基、チオール基、シラノール基等が挙げられる。本発明において、親水性官能基は、内添型離型剤となる化合物中に複数含まれていてもよい。本発明において、内添型離型剤に含まれる親水性官能基は、一種類であってもよいし、二種類以上であってもよい。
親水性官能基に該当する炭素数2乃至3のポリオキシアルキレン基として、具体的には、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基及びこれらの混合が挙げられる。本発明において、ポリオキシアルキレン基がポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基との混合である場合、置換基自体の構造は、ブロック構造であってもよいし、ランダム構造であってもよい。またブロック構造及とランダム構造との組み合わせでもよい。
これら親水性官能基のうち、離型性の観点から、好ましくは、ポリオキシエチレン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はアミノ基であり、より好ましくは、ポリオキシエチレン基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基である。
このような好ましい内添型離型剤としては、アルキルアルコールポリアルキレンオキシド付加物(メチルアルコールエチレンオキシド付加物、デシルアルコールエチレンオキシド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキシド付加物、セチルアルコールエチレンオキシド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキシド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキシド/プロピレンオキシド付加物等)、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等が挙げられる。尚、アルキルアルコールポリアルキレンオキシド付加物の末端基は、単純にアルキルアルコールにポリアルキレンオキシドを付加して製造できるヒドロキシル基に限定されない。このヒドロキシル基が他の置換基、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ピリジル基、チオール基、シラノール基等の極性官能基やアルキル基等の疎水性官能基に変換されていてもよい。
内添型離型剤は、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、青木油脂工業製のポリオキシエチレンメチルエーテル(メチルアルコールエチレンオキシド付加物)(BLAUNON MP−400、BLAUNON MP−550、BLAUNON MP−1000)、BASF製のポリオキシエチレンメチルエーテル(Pluriol A760E)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンデシルエーテル(デシルアルコールエチレンオキシド付加物)(FINESURF D−1303、FINESURF D−1305、FINESURF D−1307、FINESURF D−1310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ラウリルアルコールエチレンオキシド付加物)(BLAUNON EL−1505)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンセチルエーテル(セチルアルコールエチレンオキシド付加物)(BLAUNON CH−305、BLAUNON CH−310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンステアリルエーテル(ステアリルアルコールエチレンオキシド付加物)(BLAUNON SR−705、BLAUNON SR−707、BLAUNON SR−715、BLAUNON SR−720、BLAUNON SR−730、BLAUNON SR−750)、青木油脂工業製のポリエチレングリコール(PEG−200、PEG−300、PEG−400、PEG−600、PEG−1000)、青木油脂工業製のランダム重合型ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(BLAUNON SA−50/50 1000R,BLAUNON SA−30/70 2000R)等が挙げられる。
これらのうち、離型性が優れるという観点から、好ましくは、アルキルアルコールポリアルキレンオキシド付加物であり、より好ましくは、下記一般式(A)に示される化合物(アルキルアルコールポリアルキレンオキシド付加物)である。
R−(OR’)n−X (A)
式(A)において、Rは、アルキル基を表す。好ましくは、炭素数1乃至50のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数5乃至30のアルキル基であり、特に好ましくは、炭素数10乃至20のアルキル基である。この範囲であると、離型性がさらに優れる。
式(A)において、OR’は、オキシアルキレン基を表す。即ち、OR’は親水性官能基である。尚、nが2以上である場合、複数のR’は、それぞれ同じであってもよいし異なっていてもよい。モールドの親水性表面に吸着して離型性を向上させるという観点から、好ましくは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシエチレン基とオキシプロピレン基との混合であり、より好ましくは、オキシエチレン基又はオキシエチレン基とオキシプロピレン基との混合であり、特に好ましくは、オキシエチレン基である。
式(A)において、Xは、ヒドロキシル基又はオキシアルキル基を表す。好ましくはヒドロキシル基又は炭素数1乃至8のオキシアルキル基、さらに好ましくはヒドロキシル基である。この範囲であると、硬化性組成物の充填性がさらに優れる。
式(A)において、nは、オキシアルキレン基(OR’)の繰り返し数を表し、具体的には、1乃至100の整数であり、好ましくは、2乃至50であり、より好ましくは、3乃至30であり、特に好ましくは、5乃至20である。この範囲であると、硬化性組成物への溶解性と離型性が共に優れる。尚、nは、分布を有していてもよい。即ち、n以外の要素(R、R’及びXの種類)が同じである複数種類の内添型離型剤を含ませてもよい。nが分布を有する例として、分子量分布を有するアルキルアルコールポリアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
本発明の硬化性組成物に含まれる内添型離型剤は、硬化性組成物の気液界面に偏在しない。これは、内添型離型剤が硬化性組成物中に、実質的に均一溶解していることを意味する。言い換えると、内添型離型剤は、硬化性組成物の表面張力を変化させるものとして、実質的に作用しないことを意味する。硬化性組成物の表面張力については、後述する。さらに、本発明の硬化性組成物は、下記一般式(1)を満たしている。
−5%≦{(γ1−γ2)/γ1}≦5% (1)
式(1)において、γ1は、25℃における硬化性組成物の表面張力を表し、γ2は、25℃における評価用硬化性組成物の表面張力を表す。ここで、評価用硬化性組成物とは、内添型離型剤を含まない以外は硬化性組成物と同じ組成である組成物をいう。
以下、内添型離型剤の気液界面への偏在状態と、硬化性組成物の表面張力との関係について説明する。
硬化性組成物中に界面活性剤の様に気液界面に偏在する物質が少量でも含まれていると、硬化性組成物の表面張力は低下する。例えば、撥油性官能基と親水性官能基とを有するフッ素系界面活性剤においては、撥油性官能基が気液界面に現れる一方で、親水性官能基が組成物中に溶解している。この結果、硬化性組成物の表面が撥油性となり、表面張力が低下する。ここで重合性化合物が、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみで構成される(メタ)アクリル化合物の場合、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤のパーフルオロアルキル基は撥油性であるが、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物のアルキル基は撥油性ではない。これは、後述する実施例で実証されている。
一方、硬化物組成物中に気液界面に偏在しない物質(組成物中に均一に溶解する物質)を少量含めたとしても、硬化性組成物自体の表面張力は実質的に変化しない。
本発明において、一般式(1)に示される要件を求める理由は、内添型離型剤が気液界面に偏在しない場合であっても、内添型離型剤を添加すると内添型離型剤自体の疎水性(撥油性)や親水性が硬化性組成物の表面張力に反映されるためである。本発明者が鋭意検討した結果、内添型離型剤自体の親水性や疎水性(撥油性)が変化しても、硬化性組成物について一般式(1)の条件を満たせば、内添型離型剤が気液界面に偏在しないために充填速度が十分に速く、かつ離型力低減効果が優れることを見出した。さらに充填速度を向上させる観点から、一般式(1)中の(γ1−γ2)/γ1の下限は、好ましくは−4%以上であり、より好ましくは−3%以上であり、特に好ましくは−2%以上であり、最も好ましくは−1%以上である。
一方、一般式(1)中の(γ1−γ2)/γ1の上限が5%を超えると、充填性は優れるが、親水性が強くなるために親水性表面を有するモールドとの界面結合力が強くなる傾向があり、離型力低減効果が弱くなる傾向がある。従って、一般式(1)中の(γ1−γ2)/γ1の上限は、好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下であり、最も好ましくは1%以下である。
内添型離型剤が気液界面に偏在しない場合、充填性が優れる理由を説明する。
ナノインプリント技術において、充填速度は、下記一般式(i)で示されることが知られている(非特許文献1)。
(V:充填速度、γ:硬化性組成物の表面張力、θ1:モールド表面と硬化性組成物との接触角、θ2:基板と硬化性組成物との接触角、μ:硬化性組成物の粘度、h0及びL:インプリント装置に依存する装置定数)
式(1)から、気液界面に偏在する内添型離型剤を用いると、硬化性組成物の表面張力γが小さくなるため、充填速度が遅くなることが明らかである。さらに、本発明者が鋭意検討した結果、内添型離型剤が気液界面に偏在する場合、cosθ1及びcosθ2が小さくなる傾向にある一方で、μが大きくなる傾向にあることを見出した。これらの変化は、全て充填速度を小さくする方向に作用する。従って、硬化性組成物が気液界面に偏在する内添型離型剤を含むと充填性が悪くなるといえる。
一方、気液界面に偏在しない内添型離型剤を用いると、硬化性組成物の表面張力γは実質的に変化しない。さらに、本発明者は、気液界面に偏在しない内添型離型剤を用いると、気液界面に偏在する内添型離型剤を含む硬化性組成物を用いる場合に対して、充填速度が速いことを見出した。充填速度が速い理由は、式(i)中のμが気液界面に偏在する内添型離型剤と同等であり、また式(i)中のγ、cosθ1及びcosθ2が内添型離型剤を含まない場合と実質的に同等であるためと考えられる。
本発明において、好ましくは、一般式(1)だけでなく下記一般式(2)を満たす。
γ1cosθ≧30mJ/m2 (2)
式(2)において、γ1は、25℃における硬化性組成物の表面張力を表し、θは、モールドと硬化性組成物との接触角を表す。本発明において、θは、0°に近い方が好ましい。即ち、cosθが1に近い方が好ましい。一般式(1)だけでなく一般式(2)の要件を満たすと、ナノインプリント技術におけるモールドの凹部内への充填性がさらに優れるため好ましい。より好ましくは、γ1cosθは32mJ/m2以上、特に好ましくは、32.5mJ/m2以上である。尚、γ1cosθの上限は、γ1である。
内添型離型剤を含ませることによる硬化性組成物の離型力低減のメカニズムは、以下のように考えることができる。
接触工程において、硬化性組成物とモールドとが接触すると、内添型離型剤が熱運動により硬化性組成物中を移動する間に、内添型離型剤が有する親水性官能基とモールドの親水性表面とが水素結合等の分子間力で吸着する現象が起こる。この現象が繰り返されることで、時間の経過とともに、内添型離型剤が徐々にモールド表面に蓄積されて内添型離型剤層を形成する。この内添型離型剤層の形成は内添型離型剤の熱運動に影響されるため、硬化工程において促進される可能性がある。例えば、光硬化の場合は露光熱や硬化反応に伴う重合熱により促進される可能性があり、熱硬化の場合には加熱による温度上昇で促進される可能性がある。
離型工程において、離型工程前の硬化膜とモールドとの間には、内添型離型剤層が存在する。ここで内添型離型剤層は、硬化膜と接するモールドの親水性表面の少なくとも一部を覆っていればよい。つまり、内添型離型剤層は、モールドの親水性表面全体を覆っていてもよいし、モールドの親水性表面の一部を覆っていてもよい。
内添型離型剤層がモールド表面全体を覆う場合、モールドと硬化膜との間の界面は、硬化膜と内添型離型剤層との界面、及び内添型離型剤層とモールドとの界面で構成される。内添型離型剤層がモールドの親水性表面の一部を覆う場合、モールドと硬化膜との間の界面は、モールドと硬化膜との界面、硬化膜と内添型離型剤層との界面、及び内添型離型剤層とモールドとの界面で構成される。
離型工程において離型する界面は、モールドと硬化膜との界面、硬化膜と内添型離型剤層との界面、及び内添型離型剤層とモールドとの界面、並びに内添型離型剤層の内部が破壊されて新たに生成する界面、からなる群から選ばれる1種以上の界面と考えられる。これらの界面のうち、凝集力が弱い界面が離型しやすい傾向にあると考えられる。ここで凝集力が弱い界面としては、硬化膜と内添型離型剤層との界面及び内添型離型剤層の内部が破壊されて新たに生成する界面が挙げられる。ただし本発明において、離型する界面は特に限定されるものではない。
従って、本発明において、硬化膜と内添型離型剤層との界面、及び内添型離型剤層の内部が破壊されて新たに生成する界面、の凝集力はいずれも弱い方が好ましい。これらの界面の凝集力を弱くする観点から、内添型離型剤として、重合性官能基を有さない化合物が好ましい。内添型離型剤が重合性官能基を有する化合物である場合、内添型離型剤間で、又は内添型離型剤と硬化膜との間で共有結合が生成し、内添型離型剤間の凝集力及び内添型離型剤と硬化膜との凝集力が強くなる傾向がある。一方、内添型離型剤が重合性官能基を有さない場合、内添型離型剤間で、及び内添型離型剤と硬化膜との間で共有結合が生成されないため、内添型離型剤間の凝集力及び内添型離型剤と硬化膜との凝集力が弱くなり、結果として離型力が低くなる。
本発明の硬化性組成物に含まれる内添型離型剤の含有量は、一般式(1)の条件を満たす範囲であれば特に制限は無いが、充填性に加えてさらに離型力低減効果が優れるという観点から、硬化性組成物の重量に対して、0.001重量%乃至10重量%が好ましい。より好ましくは、0.01重量%乃至7重量%であり、特に好ましくは、0.1重量%乃至5重量%である。
以上説明したように、本発明の硬化性組成物は、重合開始剤と、重合性化合物と、親水性官能基を有する内添型離型剤と、を含む。ただし、この三成分の他に、種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤を含んでもよい。例えば、後述する(1E)増感剤を、添加剤として本発明の硬化性組成物に含ませてもよい。
また増感剤と共に、あるいは増感剤に代えて、酸化防止剤、ポリマー成分等を添加剤として含ませてもよい。以下、これら添加剤について説明する。
(1E)増感剤
増感剤を含ませることにより、重合反応促進や反応転化率が向上する傾向がある。増感剤としては、水素供与体及び増感色素が含まれる。
水素供与体は、重合開始剤から発生した開始ラジカルや、重合生長末端のラジカルに水素を供与して、水素供与体自身がラジカルを発生する化合物である。重合開始剤が光ラジカル発生剤である場合に添加すると、重合速度が向上する場合がある。
水素供与体の具体例としては、N−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエタノールアミン、N−フェニルグリシン等のアミン化合物、2−メルカプト−N−フェニルベンゾイミダゾール、メルカプトプロピオン酸エステル等のメルカプト化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。尚、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンの具体例としては、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
増感色素は、特定の波長の光を吸収することにより励起され、光重合開始剤へ作用する化合物である。ここでいう作用とは、励起状態の増感色素から光重合開始剤へのエネルギー移動や電子移動等である。光重合開始剤が光ラジカル発生剤である場合に増感剤を添加すると、重合速度が向上する場合がある。
増感色素の具体例としては、アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、フェノチアジン誘導体、カンファキノン誘導体、アクリジン系色素、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が挙げられるが、これらに限定されない。
増感剤は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。
本発明の硬化性組成物に増感剤が含まれる場合、増感剤の含有量は、重合性化合物の重量に対して10重量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.1重量%乃至5重量%である。ここで増感剤の含有量を0.1重量%以上であると、増感剤の効果をより効果的に発現することができる。また増感剤の含有量を10重量%以下とすると、溶解性や保存安定性が優れる傾向がある。
本発明の硬化性組成物にはポリマー成分を含ませてもよい。ここでいうポリマー成分としては、上記重合性化合物を構成単位として含む(メタ)アクリルポリマー(例えば、ポリメタクリル酸メチル)、及びビニルポリマー(例えば、ポリスチレン)が含まれる。尚、ポリマー成分は共重合体でもよい。
次に、硬化性組成物を調製する際の好適な条件について説明する。
<硬化性組成物の配合時の温度>
開始剤、重合性化合物、内添型離型剤を混合・溶解させることによって硬化性組成物を調製する際には所定の温度条件下で行う。作業性等の観点から、好ましくは、0℃乃至100℃の範囲で行い、より好ましくは、10℃乃至50℃である。
<硬化性組成物の粘度>
本発明の硬化性組成物の粘度は、25℃での粘度が、好ましくは、1mPa・s乃至100mPa・sであり、より好ましくは、5mPa・s乃至50mPa・sであり、さらに好ましくは、6mPa・s乃至20mPa・sである。硬化性組成物の粘度が100mPa・sより高いと、ナノインプリントリソグラフィーに用いた場合、硬化性組成物がモールドに接触する際にモールド上の微細パターンのうち凹部に組成物が充填するのに長い時間が必要となったり、充填不良によるパターン欠陥が生じる場合がある。一方、粘度が1mPa・sより低いと、硬化性組成物を塗布する際に塗りムラを生じたり、硬化性組成物をモールドに接触する際に、モールドの端部から光硬化性組成物が流出する場合がある。
<硬化性組成物の表面張力>
本発明の硬化性組成物の表面張力は、25℃での表面張力が、好ましくは、5mN/m乃至70mN/mであり、より好ましくは、7mN/m乃至35mN/mであり、さらに好ましくは、10mN/m乃至35mN/m、特に好ましくは、30mN/m乃至35mN/m、最も好ましくは、32mN/m乃至35mN/mである。ここで表面張力が5mN/mより低いと、硬化性組成物をモールドに接触する際にモールド上の微細パターンのうち凹部に組成物が充填するのに長い時間が必要となる。一方、表面張力が70mN/mより高いと、表面平滑性が低くなる。
<硬化性組成物に混入しているパーティクル等の不純物>
本発明の硬化性組成物は、できる限りパーティクル等の不純物を取り除くのが望ましい。例えば、硬化性組成物に混入したパーティクルによって光硬化物に不用意に凹凸が生じてパターンの欠陥が発生するのを防止するためにパーティクル等の不純物を取り除くのが望ましい。具体的には、硬化性組成物に含まれる各成分を混合した後、例えば、孔径0.001μm乃至5.0μmのフィルタで濾過することが好ましい。フィルタを用いた濾過を行う際には、多段階で行ったり、多数回繰り返したりすることがさらに好ましい。また、濾過した液を再度濾過してもよい。濾過に使用するフィルタとしては、ポリエチレン樹脂製、ポリプロピレン樹脂製、フッ素樹脂製、ナイロン樹脂製等のフィルタを使用することができるが、特に限定されるものではない。
尚、本発明の硬化性組成物を、半導体集積回路を製造するために使用する場合、製品の動作を阻害しないようにするため、組成物中に金属不純物が混入するのを極力避けることが好ましい。このため、本発明の硬化性組成物において、組成物中に含まれる金属不純物の濃度としては、10ppm以下が好ましく、100ppb以下にすることがさらに好ましい。
(2)膜(硬化膜)の製造方法
次に、本発明の膜(硬化膜)の製造方法について説明する。尚、本発明でいう膜の形成方法には、インプリント方法が含まれている。インプリント方法には、光により硬化する光インプリント方法、及び熱により硬化する熱インプリント方法が含まれる。
インプリント方法とは、好ましくは、1nm乃至10mmのサイズのパターン形成方法であると定義される。より好ましくは、およそ10nm乃至100μmのサイズのパターン形成方法を意味する。一方、一般にナノサイズ(1nm乃至100nm)のパターン(凹凸構造)を有するパターン形成技術は、ナノインプリントと呼ばれるが、本発明の膜の製造方法にはナノインプリント法も当然に含まれる。
図1は、本発明の膜の製造方法における実施形態の例を示す断面模式図である。図1に示される製造プロセスは、下記[1]乃至[5]あるいは[6]に示される工程からなる製造プロセスである。
[1]配置工程(塗布工程、図1(a))
[2]型接触工程(図1(b1)、(b2))
[3]硬化工程(図1(c))
[4]離型工程(図1(d))
[5]残膜除去工程(図1(e))
[6]基板加工工程(図1(f))
以上[1]乃至[6]に示される工程(あるいは[1]乃至[5]に示される工程)を経ることで、硬化性組成物1から硬化物12、及び硬化物12を有する電子部品(電子デバイス)あるいは光学部品を得ることができる。以下、各工程の詳細について説明する。
<配置工程(図1(a))>
まず硬化性組成物1を基板2上に配置(塗布)して塗布膜を形成する(図1(a))。
ここでいう硬化性組成物とは、本発明の硬化性組成物である。
基板2に相当する被加工基板としては、通常、シリコンウエハが用いられるが、これに限定されるものではない。シリコンウエハ以外にも、アルミニウム、チタン−タングステン合金、アルミニウム−ケイ素合金、アルミニウム−銅−ケイ素合金、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の半導体デバイス用基板として知られているものの中からも任意に選んで用いることができる。尚、使用される基板(被加工基板)には、シランカップリング処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜、等の表面処理により硬化性組成物との密着性を向上させた基板を被加工基板として用いてもよい。
本発明の硬化性組成物を被加工基板上に配置する方法としては、例えば、インクジェット法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコード法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法等を用いることができる。尚、被形状転写層(塗布膜)の膜厚は、使用する用途によっても異なるが、例えば、0.01μm乃至100μmである。
<型接触工程(図1(b1)、(b2))>
次に、前工程(配置工程)で形成された硬化性組成物1からなる塗布膜にモールドを接触させる工程(型接触工程、図1(b1)、図1(b2))を行う。尚、モールド3は印章と見立てることができるので、この工程は、押印工程とも呼ばれる。本工程で、硬化性組成物1(被形状転写層)にモールド3を接触させる(図1(b1))と、モールド3上に形成された微細パターンの凹部に塗布膜(の一部)11が充填される(図1(b2))。
型接触工程で使用されるモールド3は、次の工程(硬化工程)が光による光硬化工程である場合、光透過性の材料で構成される必要がある。モールド3の構成材料として、具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂等の光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜、光硬化膜、金属膜等を挙げることができる。ただしモールド3の構成材料として光透明性樹脂を使用する場合は、光硬化性組成物1に溶解しない樹脂を選択する必要がある。一方、硬化工程が熱硬化工程である場合、材料の透明性に制限は無く、モールド3の構成材料として上述した材料が使用できる。
型接触工程で使用されるモールド3は、親水性表面を有する。
親水性表面とは、モールド3の表面が重合性化合物よりも親水性であることを意味する。好ましくは、モールド3の表面がヒドロキシル基、カルボキシル基等の親水性官能基を有する表面であることをいう。
モールド3が石英、ガラス等の場合、そのままでもその表面は親水性表面であるが、表面に親水化処理を施すと親水性をさらに高めることができるため好ましい。親水化処理として、例えば、UV洗浄、UV/オゾン洗浄、ピラニア洗浄(硫酸と過酸化水素水とを混合した酸による洗浄等)等が挙げられる。尚、親水化処理は、上述した処理法から一種類選択して行う方法に限定されず、上述した処理法から二種類以上を組み合わせて行う方法も当然に含まれる。このように、基板の表面の親水性を高めることで、内添型離型剤がモールド界面に偏在し易くなるため、離型性がさらに向上する。
モールドがPMMA、ポリカーボネート樹脂等の光透明性樹脂である場合、UV洗浄又はUV/オゾン洗浄による洗浄処理等で表面を処理することで、親水性を有する表面を形成することができる。
これらのモールド3のうち、表面の親水性が高いという観点から、石英が好ましく、さらに好ましくは、表面について親水化処理をした石英である。また、モールドが石英であると、光透過性及び親水性が共に優れるため、硬化工程が光硬化工程である膜の製造方法、例えば、ナノインプリントリソグラフィーに好適である。
型接触工程において、図1(b1)に示されるように、モールド3を硬化性組成物1に接触する際に、硬化性組成物1に加わる圧力は特に限定されないが、通常、0.1MPa乃至100MPaである。その中でも0.1MPa乃至50MPaであることが好ましく、0.1MPa乃至30MPaであることがより好ましく、0.1MPa乃至20MPaであることがさらに好ましい。また型接触工程においてモールド3を被形状転写層1に接触させる時間は、特に限定されないが、通常、1秒乃至600秒であり、1秒乃至300秒であることが好ましく、1秒乃至180秒であることがより好ましく、1秒乃至120秒であることが特に好ましい。
また型接触工程を行う際の雰囲気としては、大気雰囲気、減圧雰囲気及び不活性ガス雰囲気が挙げられる。ここで型接触工程を行う際に、雰囲気の気圧については特に制限は無く、例えば、0.0001気圧乃至10気圧の範囲で適宜設定が可能である。
不活性ガス雰囲気下で型接触工程を行う場合、使用される不活性ガスとして、具体的には、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、各種フロンガス等、あるいはこれらの混合ガスが挙げられる。ナノインプリントに用いる場合、ヘリウムが好ましい。
不活性ガスをヘリウムにすることで、型接触工程においてモールド3上に形成された微細パターンの凹部に塗布膜11の一部と一緒に雰囲気中の当該不活性ガスが充填されたときに、当該不活性ガスはモールドを透過して抜けることができる。このため、モールド3の凹部への硬化性組成物1の充填性が優れる。
また、型接触工程を行う際の雰囲気としては、凝縮性ガス雰囲気も使用できる。本発明において、凝縮性ガス雰囲気とは、凝縮性ガスを含むガス雰囲気であるが、このガス雰囲気には凝縮性ガス以外のガスを含んでいてもよい。凝縮性ガスとは、下記(i)及び(ii)の要件を満たすガスをいう。
(i)型接触工程にて硬化性組成物1(被形状転写層)とモールド3とが接触する前(図1(b1))の段階で雰囲気中に気体として存在するガス
(ii)硬化性組成物1とモールド3とが接触して、モールド3上に形成された微細パターンの凹部、及びモールドと基板との間隙に塗布膜(の一部)11と一緒に雰囲気中のガスが充填されたときに、充填時の圧力により発生する毛細管圧力で凝縮して液化するガス
ここで、凝縮性ガス雰囲気下で型接触工程を行うと、微細パターンの凹部に充填されたガスが液化することで気泡が消滅する。このため、モールド3の凹部への硬化性組成物1の充填性が優れる。尚、凝縮性ガスは、硬化性組成物中に溶解してもよい。
凝縮性ガスの沸点は、型接触工程の雰囲気温度以下であれば制限がないが、−10℃乃至23℃が好ましく、さらに好ましくは10℃乃至23℃である。この温度範囲であれば、モールド3の凹部への硬化性組成物1の充填性がさらに優れる。
型接触工程において、雰囲気温度における凝縮性ガスの蒸気圧は、型接触工程で押印するときのモールド圧力以下であれば制限がないが、0.1MPa乃至0.4MPaが好ましい。この範囲であれば、モールド3の凹部への硬化性組成物1の充填性がさらに優れる。ここで、雰囲気温度での蒸気圧が0.4MPaより大きいと、気泡の消滅の効果を十分に得ることができない傾向がある。一方、雰囲気温度での蒸気圧が0.1MPaよりも小さいと、減圧が必要となり、装置が複雑になる傾向がある。
型接触工程において、雰囲気温度は、特に制限がないが、20℃乃至25℃が好ましい。
凝縮性ガスとして、具体的には、トリクロロフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン(CFC)、フルオロカーボン(FC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(CHF2CH2CF3、HFC−245fa、PFP)等のハイドロフルオロカーボン(HFC)、ペンタフルオロエチルメチルエーテル(CF3CF2OCH3、HFE−245mc)等のハイドロフルオロエーテル(HFE)等のフロン類が挙げられる。
これら凝縮性ガスのうち、型接触工程の雰囲気温度が20℃乃至25℃である場合にモールド3の凹部への硬化性組成物1の充填性が優れるという観点から、下記に列挙される化合物が好ましい。
・1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(23℃での蒸気圧0.14MPa、沸点15℃)
・トリクロロフルオロメタン(23℃での蒸気圧0.1056MPa、沸点24℃)
・ペンタフルオロエチルメチルエーテル
これらのうち、安全性が優れるという観点から、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンが特に好ましい。
凝縮性ガスは、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。またこれら凝縮性ガスは、空気、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の非凝縮性ガスと混合して用いてもよい。凝縮性ガスと混合する非凝縮性ガスとしては、充填性の観点から、ヘリウムが好ましい。ヘリウムであると、凝縮性ガスと非凝縮性ガス(ヘリウム)とを混合してなる混合気体として使用しても、ヘリウムがモールドを透過するため充填性が優れる。
これら雰囲気のうち、硬化工程が光硬化工程か熱硬化工程かに拠らず、酸素や水分による硬化反応への影響を防ぐことができるという理由から、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気又は凝縮性ガス雰囲気が好ましい。
<硬化工程(図1(c))>
次に、塗布膜を硬化する。具体的には、モールド3を介して塗布膜11に光を照射する(図1(c))、又は塗布膜11を加熱する。硬化工程において、塗布膜11を、光又は熱によって硬化させることで硬化膜12を形成する。
光によって塗布膜11を硬化させる場合、塗布膜11を構成する硬化性組成物1に照射する光は、硬化性組成物1の感度波長に応じて選択されるが、具体的には、150nm乃至400nm程度の波長の紫外光や、X線、電子線等を適宜選択して使用することが好ましい。ここで、光重合開始剤として市販されているものは、紫外光に感度を有する化合物が多い。このことから、硬化性組成物1に照射する光(照射光4)は、紫外光が特に好ましい。ここで紫外光を発する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep−UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2エキシマレーザ等が挙げられるが、超高圧水銀灯が特に好ましい。使用する光源の数は1つでもよいし又は複数であってもよい。また、光照射を行う際には、硬化性組成物1の全面に行ってもよく、一部領域にのみ行ってもよい。また、光重合開始剤と熱重合開始剤とを併用する場合、光照射に加えて、加熱硬化をさらに行ってもよい。光硬化と熱硬化の順序は制限されず、光硬化の後に熱硬化を行う場合、熱硬化の後に光硬化を行う場合、光硬化と熱硬化とを同時に行う場合、が含まれる。
熱により硬化する場合、加熱雰囲気及び加熱温度等は特に限定されない。例えば、不活性雰囲気下又は減圧下では、40℃乃至200℃の範囲で硬化性組成物1を加熱することができる。また被形状転写層(塗布膜11)を加熱する際には、ホットプレート、オーブン、ファーネス等を用いることができる。
<離型工程(図1(d))>
次に、硬化膜12からモールド3を離し、基板2上に所定のパターン形状を有する硬化膜を形成する工程(離型工程、図1(d))を行う。この工程(離型工程)は、硬化膜12からモールド3を剥離する工程であり、前の工程(硬化工程)において、モールド3上に形成された微細パターンの反転パターンが、硬化膜12のパターンとして得られる。尚、内添型離型剤は、モールドが硬化性組成物と接触してから硬化膜とモールドとを引き離すまでの間に、硬化性組成物又は硬化膜と、モールドとが接触する界面に吸着するものであってもよい。
また、凝縮性ガス雰囲気下で型接触工程を行った場合、離型工程にて硬化膜とモールドとを引き離す際に、硬化膜とモールドとが接触する界面の圧力が低下することに伴って凝縮性ガスが気化することで、離型力低減効果を奏する傾向がある。
硬化膜12からモールド3を剥離する方法としては、剥離の際に硬化膜12の一部が物理的に破損しなければ特に限定されず、各種条件等も特に限定されない。例えば、被加工基板(基板2)を固定してモールド3を被加工基板から遠ざかるように移動させて剥離してもよく、モールド3を固定して被加工基板をモールドから遠ざかるように移動させて剥離してもよく、これらの両方を正反対の方向へ引っ張って剥離してもよい。
<残膜除去工程(図1(e))>
上記離型工程を行ったときに得られる硬化膜は、特定のパターン形状を有するものの、このパターン形状が形成される領域以外の領域においても膜の一部が残膜として存在することがある。そこで上記パターン形状のうち、硬化物を除去すべき領域について残存する硬化膜(残膜)を除去する工程(残膜除去工程、図1(e))を行う。
ここで残膜を除去する方法としては、例えば、硬化膜12の凹部に残った膜(残膜)をエッチングにより取り除き、パターン凹部において基板2の表面を露出させる方法が挙げられる。
エッチングを利用する場合、その具体的な方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法、例えば、ドライエッチングを行うことで形成することができる。ドライエッチングには、従来公知のドライエッチング装置を用いることができる。そして、ドライエッチング時のソースガスは、被エッチ膜の元素組成によって適宜選択されるが、CF4、C2F6、C3F8、CCl2F2、CCl4、CBrF3、BCl3、PCl3、SF6、Cl2等のハロゲン系ガス、O2、CO、CO2等の酸素原子を含むガス、He、N2、Ar等の不活性ガス、H2、NH3のガス等を使用することができる。尚、これらのガスは混合して用いることもできる。
上記[1]乃至[5]の製造プロセスによって、所望の凹凸パターン形状(モールド3の凹凸形状に因むパターン形状)を有する硬化膜12を得ることができる。ここでこの硬化膜12を利用して、基板2を加工する場合は、さらに後述する基板の加工工程を行うことがある。
一方、得られた硬化膜12を光学部材(光学部材の一部材として用いる場合を含む。)として利用することもできる。係る場合、少なくとも、基板2と、この基板2の上に配置された硬化膜12と、を有する光学部材として提供することができる。
<基板加工工程(図1(f)>
本発明の製造方法によって得られる所望の凹凸パターン形状を有する硬化膜12は、例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体素子に代表される電子部品に含まれる層間絶縁膜用膜として利用可能である。一方、この硬化膜12は、半導体素子製造時におけるレジスト膜として利用することもできる。
硬化膜12をレジスト膜として利用する場合、具体的には、図1(f)で示すように、エッチング工程にて表面が露出した基板の一部分(符号20の領域)に対して、エッチング又はイオン注入等を行う。尚、このとき硬化膜12は、マスクとして機能する。これにより、硬化膜12のパターン形状に基づく回路構造(不図示)を基板2に形成することができる。これにより、半導体素子等で利用される回路付基板を製造することができる。尚、この回路付基板に電子部材を設けることにより電子部品が形成される。
尚、回路付基板や電子部品を作製する場合、最終的には、加工された基板から硬化膜のパターンを除去してもよいが、素子を構成する部材として残す構成も好ましい。
以上より、本発明の硬化性組成物は、充填速度と離型力低減効果が優れるために、インプリント用として優れている。特に、ナノサイズ(1nm乃至100nm)のパターンを形成するナノインプリント用として、著しく優れている。
本発明の膜の製造方法は、硬化性組成物の充填速度が優れる上に、硬化膜の離型力低減効果が優れる。従って、本発明の膜の製造方法は、例えば、ナノインプリントリソグラフィーに用いると、充填性が優れるために生産性が高く、さらに、内添型離型剤を含むために離型力が小さくなり、離型に伴うパターン欠陥が低減できる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。また以下の説明で使用される「部」は、特に示さない限り全て重量基準の単位(重量部)である。
実施例及び比較例のいずれかにて用いられ、硬化性組成物に含まれる試薬(重合開始剤、重合性化合物、内添型離型剤)を、以下に列挙する。
(A)重合開始剤
<A1>IRGACURE651(チバ・ジャパン製)
<A2>IRGACURE369(チバ・ジャパン製)
<A3>Lucirin TPO(BASF製)
(B)重合性化合物
<B1>イソボルニルアクリレート(共栄社化学製、商品名:IB−XA)
<B2>ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業製、商品名:V#160)
<B3>ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学製、商品名:NP−A)
(C)内添型離型剤
<C1>ポリオキシエチレンステアリルエーテル(EO5モル付加物)(青木油脂工業製、商品名:BLAUNON SR−705)
<C2>ポリオキシエチレンステアリルエーテル(EO30モル付加物)(青木油脂工業製、商品名:BLAUNON SR−730)
<C3>ポリオキシエチレンステアリルエーテル(EO15モル付加物)(青木油脂工業製、商品名:BLAUNON SR−715)
<C4>ペンタデカエチレングリコールモノ1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルエーテル(F(CF2)6CH2CH2(OCH2CH2)15OH)(DIC製)
<C5>ポリオキシエチレンステアリルエーテル(EO50モル付加物)(青木油脂工業製、商品名:BLAUNON SR−750)
<C6>ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(青木油脂工業製、商品名:BLAUNON SA−50/50 1000R、EO/PO=50/50)
<C7>ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(青木油脂工業製、商品名:BLAUNON SA−30/70 2000R、EO/PO=30/70)
<C8>ポリオキシエチレンメチルエーテル(BASF製、商品名:Pluriol A760E)
(E)増感剤
<E1>4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(東京化成工業製、純度98%以上)
[実施例1]硬化性組成物(D1)の製造
まず以下に列挙する試薬を混合した。
重合開始剤(A1):3部
重合性化合物(B1):9部
重合性化合物(B2):38部
重合性化合物(B3):47部
内添型離型剤(C1):0.5部
次に、得られた混合溶液を、フィルタの目の粗さが5nmの超高分子量ポリエチレン製フィルタにてろ過することにより、硬化性組成物(D1)を得た。
得られた硬化性組成物について、以下に説明する方法で組成物の物性を測定・評価した。
(1)表面張力
白金プレートを用いたプレート法により、25℃における硬化性組成物の表面張力を測定した。尚、測定は、自動表面張力計DY−300(協和界面化学製)を用いて、測定回数5回、白金プレートのプリウェット浸漬距離0.35mmの条件で行った。ここで、1回目の測定値を除いて、2回目から5回目の測定値の平均値を表面張力とした。
(2)粘度
円錐平板方式回転型粘度計RE−85L(東機産業製)を用いて、25℃における硬化性組成物の粘度を測定した。
(3)接触角
自動静的接触角測定装置Dropmaster300(協和界面化学製)を用いて、硬化性組成物と基板との接触角を測定した。接触角は、硬化性組成物を基板に滴下してから10秒後の値である。
この測定で使用する基板は、以下の通りである。尚、以下の説明において、モールド接触角は、モールドと硬化性組成物との接触角であり、基板接触角は、硬化性組成物を塗布する基板と硬化性組成物との接触角である。
(3−1)モールド接触角測定用基板
石英基板を使用した。尚、この基板の表面は、UV照射装置(UVE−110−1H)を用いて30分間、UV/オゾン洗浄されている。
(3−2)基板接触角測定用基板
厚さ60nmの密着促進層を表面に形成したシリコンウエハを使用した。
本実施例の硬化性組成物(D1)において、表面張力は33.16mN/mであり、粘度は3.78mPa・sであり、モールド接触角は6.4°であり、基板接触角は3.8°であった。
また、後述する比較例2の硬化性組成物(D6)の表面張力の値(33.37mN/m)を用いて(γ1−γ2)/γ1の値を求めたところ、以下に示す通りとなった。
(γ1−γ2)/γ1=(33.16−33.37)/33.16=−0.6%
[実施例2]硬化性組成物(D2)の製造
実施例1において、内添型離型剤として、(C1)を0.5部投入する代わりに、(C2)を1.6部投入したこと以外は、実施例1と同様の方法により、硬化性組成物(D2)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本実施例の硬化性組成物(D2)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は33.16mN/mであり、粘度は4.14mPa・sであり、モールド接触角は4.6°であり、基板接触角は4.7°であった。
また、後述する比較例2の硬化性組成物(D6)の表面張力の値(33.37mN/m)を用いて(γ1−γ2)/γ1の値を求めたところ、以下に示す通りとなった。
(γ1−γ2)/γ1=(33.16−33.37)/33.16=−0.6%
[実施例3]硬化性組成物(D3)の製造
実施例1において、内添型離型剤として、(C1)を0.5部投入する代わりに、(C3)を0.9部投入したこと以外は、実施例1と同様の方法により、硬化性組成物(D3)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本実施例の硬化性組成物(D3)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は34.42mN/mであり、粘度は3.86mPa・sであり、モールド接触角は5.9°であり、基板接触角は4.9°であった。
また、後述する比較例2の硬化性組成物(D6)の表面張力の値(33.37mN/m)を用いて(γ1−γ2)/γ1の値を求めたところ、以下に示す通りとなった。
(γ1−γ2)/γ1=(34.42−33.37)/34.42=3.1%
[実施例4]硬化性組成物(D4)の製造
実施例3において、重合開始剤(A1)を3部投入する代わりに、重合開始剤(A2)を3部投入したこと以外は、実施例3と同様の方法により、硬化性組成物(D4)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本実施例の硬化性組成物(D4)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は32.66mN/mであり、粘度は4.04mPa・sであり、モールド接触角は5.1°であり、基板接触角は3.7°であった。
後述する比較例4の硬化性組成物(D8)の表面張力の値(32.71mN/m)を用いて(γ1−γ2)/γ1の値を求めたところ、以下に示す通りとなった。
(γ1−γ2)/γ1=(32.66−32.71)/32.66=−0.2%
[比較例1]硬化性組成物(D5)の製造
実施例1において、内添型離型剤として、(C1)を0.5部投入する代わりに、(C4)を1.1部投入したこと以外は、実施例1と同様の方法により、硬化性組成物(D5)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本比較例の硬化性組成物(D5)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は27.7mN/mであり、粘度は3.86mPa・sであり、モールド接触角は24.2°であり、基板接触角は10.8°であった。
また、後述する比較例2の硬化性組成物(D6)の表面張力の値(33.37mN/m)を用いて(γ1−γ2)/γ1の値を求めたところ、以下に示す通りとなった。
(γ1−γ2)/γ1=(27.7−33.37)/27.7=−20.5%
[比較例2]硬化性組成物(D6)の製造
実施例1において、内添型離型剤を投入しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により、硬化性組成物(D6)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本比較例の硬化性組成物(D6)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は33.37mN/mであり、粘度は3.73mPa・sであり、モールド接触角は3.7°であり、基板接触角は3.5°であった。尚、本比較例の硬化性組成物(D6)は、実施例1乃至3にて製造された硬化性組成物((D1)乃至(D3))と比較すると、内添型離型剤が含まれていないこと以外は、組成が同じである硬化性組成物(評価用硬化性組成物)である。
[比較例3]硬化性組成物(D7)の製造
実施例4において、内添型離型剤として、(C3)を0.9部投入する代わりに、(C4)を1.1部投入したこと以外は、実施例4と同様の方法により、硬化性組成物(D7)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本比較例の硬化性組成物(D7)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は29.08mN/mであり、粘度は4.02mPa・sであり、モールド接触角は22.9°であり、基板接触角は6.1°であった。
また、後述する比較例4の硬化性組成物(D8)の表面張力の値(32.71mN/m)を用いて(γ1−γ2)/γ1の値を求めたところ、以下に示す通りとなった。
(γ1−γ2)/γ1=(29,08−32.71)/29.08=−12.5%
[比較例4]硬化性組成物(D8)の製造
実施例4において、内添型離型剤を投入しなかったこと以外は、実施例4と同様の方法により、硬化性組成物(D8)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本比較例の硬化性組成物(D8)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は32.71mN/mであり、粘度は3.86mPa・sであり、モールド接触角は3.3°であり、基板接触角は3.6°であった。尚、本比較例の硬化性組成物(D8)は、実施例4にて製造された硬化性組成物(D4)と比較すると、内添型離型剤が含まれていないこと以外は、組成が同じである硬化性組成物(評価用硬化性組成物)である。
[実施例5]硬化性組成物(D9)の製造
実施例2において、重合開始剤(A1)を3部投入する代わりに、重合開始剤(A3)3部及び増感剤(E1)0.5部を投入したこと以外は、実施例2と同様の方法により、硬化性組成物(D9)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本実施例の硬化性組成物(D9)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は33.27mN/mであり、粘度は4.31mPa・sであり、モールド接触角は3.3°であり、基板接触角は3.5°であった。
さらに、後述する比較例5の硬化性組成物(D10)の表面張力の値(32.66mN/m)を用いて(γ1−γ2)/γ1の値を求めたところ、以下に示す通りとなった。
(γ1−γ2)/γ1=(33.27−32.66)/33.27=1.8%
[比較例5]硬化性組成物(D10)の製造
実施例5において、内添型離型剤を投入しなかったこと以外は、実施例9と同様の方法により、硬化性組成物(D10)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本比較例の硬化性組成物(D10)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は32.66mN/mであり、粘度は3.90mPa・sであり、モールド接触角は3.3°であり、基板接触角は3.5°であった。尚、本比較例の硬化性組成物(D10)は、実施例5にて製造された硬化性組成物(D9)と比較すると、内添型離型剤が含まれていないこと以外は、組成が同じである硬化性組成物(評価用硬化性組成物)である。
以上、実施例1乃至5及び比較例1乃至5のいずれかにて製造された硬化性組成物の組成を下記表1に示す。
[実施例6]膜(硬化膜)の製造
実施例1で製造した硬化性組成物(D1)を用いて、図1に示される方法により膜(硬化膜)を作製した。また本実施例(実施例6)においては、配置工程、型接触工程、硬化工程及び離型工程は、全てヘリウム雰囲気下で行った。
(1)配置工程(図1(a))
インクジェット法により、シリコンウェハ(基板2)の上に、硬化性組成物1の液滴(液滴1個当たり11pL)を、合計1440滴滴下した(図1(a))。尚、基板2は、厚さが300mmであって、その表面に厚さ3nmの密着促進層(不図示)が形成されている。また各液滴をそれぞれ滴下する際には、縦26mm、横33mmの領域に各液滴の間隔がほぼ均等になるように滴下した。
(2)型接触工程(図1(b1)乃至(b2))
次に、基板2の上に設けられている硬化性組成物1に対して、28nmライン・アンド・スペース(L/S)パターンが形成され、表面に内添型離型剤処理がされていない石英モールド3(縦26mm、横33mm)を接触させた(図1(b1)乃至(b2))。
(3)硬化工程(図1(c))
次に、硬化性組成物1に石英モールド3を接触させてから30秒後に、200W水銀キセノンランプを備えたUV光源を用いて、石英モールド3越しにUV光4を硬化性組成物11に照射して、硬化膜12を作製した(図1(c))。尚、UV光4の光源(UV光源)として、EXECURE 3000(HOYA CANDEO OPTRONICS CORPORATION製)を用いた。また、UV光4を照射する際には、UV光源と石英モールド3との間に、波長313±5nmを選択的に透過する干渉フィルタ(VPF−50C−10−25−31300、シグマ光機製)を配した。さらに石英モールド3の直下におけるUV光4の照度は、波長313nmにおいて40mW/cm2であった。以上の条件下で、UV光の照射を0.75秒(露光量:30mJ/cm2)行った。
(4)離型工程(図1(d))
次に、石英モールド3を、0.5mm/sの条件で引き上げて硬化膜12から石英モールド3を離して、基板2の上に所定のパターン形状を有する硬化膜12を製造した。尚、硬化膜12からモールドを引き離すために必要な力は、74Nだった。
[実施例7]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D2)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本実施例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、79Nだった。
[実施例8]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D3)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本実施例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、84Nだった。
[実施例9]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D4)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本実施例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、79Nだった。
[比較例6]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D5)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本比較例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、63Nだった。
[比較例7]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D6)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本比較例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、95Nだった。
[比較例8]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D7)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本比較例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、74Nだった。
[比較例9]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D8)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本比較例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、95Nだった。
[実施例10]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D9)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本実施例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、69Nだった。
[比較例10]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D10)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本比較例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は測定していないが、内添型離型剤を含まない硬化膜を用いた比較例7及び比較例9の結果から、95N程度と推定できる。
以上の結果を、下記表2に示す。
[実施例11(参考例)]硬化性組成物(D11)の製造
実施例1において、内添型離型剤として、(C1)を0.5部投入する代わりに、(C5)を2.5部投入したこと以外は、実施例1と同様の方法により、硬化性組成物(D11)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本実施例の硬化性組成物(D11)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は32.96mN/mであり、粘度は4.44mPa・sであり、モールド接触角は4.9°であり、基板接触角は5.0°であった。
さらに、前述した比較例2の硬化性組成物(D6)の表面張力の値(33.37mN/m)を用いて(γ1−γ2)/γ1の値を求めたところ、以下に示す通りとなった。
(γ1−γ2)/γ1=(32.96−33.37)/32.96=−1.2%
[実施例12(参考例)]硬化性組成物(D12)の製造
実施例1において、内添型離型剤として、(C1)を0.5部投入する代わりに、(C6)を1.0部投入したこと以外は、実施例1と同様の方法により、硬化性組成物(D12)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本実施例の硬化性組成物(D12)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は33.03mN/mであり、粘度は3.61mPa・sであり、モールド接触角は5.0°であり、基板接触角は4.5°であった。
さらに、前述した比較例2の硬化性組成物(D6)の表面張力の値(33.37mN/m)を用いて(γ1−γ2)/γ1の値を求めたところ、以下に示す通りとなった。
(γ1−γ2)/γ1=(33.03−33.37)/33.03=−1.0%
[実施例13(参考例)]硬化性組成物(D13)の製造
実施例1において、内添型離型剤として、(C1)を0.5部投入する代わりに、(C7)を2.0部投入したこと以外は、実施例1と同様の方法により、硬化性組成物(D13)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本実施例の硬化性組成物(D13)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は33.31mN/mであり、粘度は4.16mPa・sであり、モールド接触角は4.9°であり、基板接触角は4.4°であった。
さらに、前述した比較例2の硬化性組成物(D6)の表面張力の値(33.37mN/m)を用いて(γ1−γ2)/γ1の値を求めたところ、以下に示す通りとなった。
(γ1−γ2)/γ1=(33.31−33.37)/33.31=−0.1%
[実施例14(参考例)]硬化性組成物(D14)の製造
実施例1において、内添型離型剤として、(C1)を0.5部投入する代わりに、(C8)を0.8部投入したこと以外は、実施例1と同様の方法により、硬化性組成物(D14)を得た。
また実施例1と同様の方法により、本実施例の硬化性組成物(D14)の物性の測定・評価を行った。その結果、表面張力は32.97mN/mであり、粘度は3.65mPa・sであり、モールド接触角は5.2°であり、基板接触角は5.2°であった。
さらに、前述した比較例2の硬化性組成物(D6)の表面張力の値(33.37mN/m)を用いて(γ1−γ2)/γ1の値を求めたところ、以下に示す通りとなった。
(γ1−γ2)/γ1=(32.97−33.37)/33.31=−1.2%
以上、実施例11乃至14のいずれかにて製造された硬化性組成物の組成を下記表3に示す。
[実施例15(参考例)]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D11)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本実施例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、63Nだった。
[実施例16(参考例)]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D12)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本実施例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、65Nだっ
[実施例17(参考例)]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D13)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本実施例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、62Nだった。
[実施例18(参考例)]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D14)を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本実施例では、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、62Nだった。
以上の結果を、下記表4に示す。
表2及び表4から、本発明の硬化性組成物は、充填性が優れると共に、内添型離型剤による離型力低減効果を奏していることが分かる。
例えば、実施例6乃至10から、実施例1乃至5で製造された硬化性組成物(D1乃至D4及びD9)は、(γ1−γ2)/γ1が−5%以上5%以下の範囲内にあるため、内添型離型剤が気液界面に偏在することがないことが分かる。またγ1cosθが30以上であり、比較例7、9及び10の内添型離型剤を含まない硬化性組成物(D6、D8、D10)と同等であるため、充填速度が速いことが分かる。さらに、実施例6乃至10で、実施例1乃至5で製造された硬化性組成物を用いて膜を製造すると、膜にかかる離型力は、内添型離型剤を含まない硬化性組成物で製造した膜(比較例7及び9)よりもかなり小さく、離型性が優れていることが実証されている。
同様に、実施例15乃至18から、実施例11乃至14で製造された硬化性組成物(D11乃至14)は、(γ1−γ2)/γ1が−5%以上5%以下の範囲内にあるため、内添型離型剤が気液界面に偏在することがないことが分かる。またγ1cosθが30以上であり、比較例7の内添型離型剤を含まない硬化性組成物(D6)と同等であるため、充填速度が速いことが分かる。さらに、実施例15乃至18で、実施例11乃至14で製造された硬化性組成物を用いて膜を製造すると、膜にかかる離型力は、内添型離型剤を含まない硬化性組成物で製造した膜(比較例7)よりもかなり小さく、離型性が優れていることが実証されている。
一方、比較例6から、フッ素系界面活性剤を含む比較例1の硬化性組成物(D5)を用いて膜を製造した場合、膜にかかる離型力が63Nと小さい値となっている。しかし、(γ1−γ2)/γ1が−20.5%と負に大きく、内添型離型剤が気液界面に偏在していることが分かる。また、γ1cosθが25.27と小さいことから、充填速度が遅いことが分かる。同様に、フッ素系界面活性剤を含む比較例3の硬化性組成物(D7)を用いて膜を製造した比較例8は、離型力が74Nと小さい値となっている。しかし、(γ1−γ2)/γ1が−12.5%と負に大きく、内添型離型剤が気液界面に偏在していることが分かる。また、γ1cosθが26.79と小さいことから、充填速度が遅いことが分かる。
従って、気液界面に偏在しない内添型離型剤を用いる本発明の硬化性組成物は、充填モールドへの充填速度が速く、かつ離型性に優れた膜が製造できることが実証されている。
[実施例19]
実施例6において、硬化性組成物(D1)の代わりに硬化性組成物(D9)を用いた。また実施例6において、型接触工程の雰囲気として、ヘリウムの代わりにヘリウムと凝縮性ガスである1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンとを、流量比1:4で混合した混合ガスを用いた。さらに、硬化工程においてUV光の照射時間を0.75秒から5秒に変更した。これらを除いては、実施例6と同様の方法により、硬化膜を製造した。尚、本実施例では、型接触工程において、硬化性組成物(D9)をヘリウム雰囲気下で充填した実施例10よりも速やかに充填される様子が観察された。また、離型工程において、硬化膜12から石英モールド3を引き離すために必要な力は、59Nだった。
実施例19の結果から、凝縮性ガスを含む雰囲気中で型接触工程を行うと、充填性が向上すること、及び離型力が低減することが実証された。即ち、実施例19において、離型力が69Nである実施例10に対して、10Nの離型力低減効果が認められた。