JP2018118739A - 表面に油膜を有する構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】粘稠な含水物に対する滑り性を向上するためのゲル被覆が形成されている構造体において、その滑り性向上効果がさらに持続して安定に発揮されるばかりか、ゲル状被覆の透明性も改善されている構造体を提供する。
【解決手段】基材1と、その表面に形成された油膜3とを有する構造体において、該油膜は、油性液体の均質なゲルにより形成されていることを特徴とする構造体。
【選択図】 図1

Description

本発明は、表面に油膜が形成されている構造体に関するものであり、特に容器として好適に使用される構造体に関する。
流動性内容物が収容される容器では、容器の材質を問わず、内容物に対する排出性が要求される。水のように粘性の低い液体を収容する場合では、このような排出性はほとんど問題とならないが、例えば、マヨネーズやケチャップのように粘度の高い粘稠な物質では、プラスチック容器であろうがガラス製容器であろうが、この排出性はかなり深刻な問題である。即ち、このような内容物は、容器を傾けて速やかに排出されないし、また、容器壁に付着してしまうため、最後まで使い切ることができず、特に容器の底部にはかなりの量の内容物が排出されずに残ってしまう。
最近になって、容器等の成形体の表面に油膜を形成することによって、粘稠な物質に対する滑り性を高める技術が種々提案されている(例えば特許文献1,2)。
かかる技術によれば、成形体表面を形成する合成樹脂に滑剤などの添加剤を加える場合と比して、滑り性を飛躍的に高めることができるため、現在注目されている。
しかしながら、上記のように基材表面に油膜を形成して表面特性を改質する手段においては、該油膜により発揮される滑り性の有効寿命が短く、長期間経過後には、その滑り性が低下し、場合によっては、表面に内容物などが貼り付いてしまうなどの問題が生じていた。特に、表面を滑落する物質が、乳化物、特に油分の少ないマヨネーズ様食品であるとき、この傾向が顕著である。
例えば、本出願人は、先に、マヨネーズ様食品に代表される水中油型乳化物が収容された包装容器であって、該水中油型乳化物が接触する容器内面に油膜が形成されている包装容器を提案している(特許文献3)。
また、本出願人は、内容物と接触する内面に液膜が形成されており、該液膜には、粒子径が300μm以下の固体粒子が分散されていることを特徴とする包装材も先に提案している(特許文献4〜6)。
しかるに、本出願人が先に提案したこれらの技術においても、滑り性の経時的低下という問題は有効に解決されていない。
また、本出願人は、上記のように液膜による滑り性の経時的低下が改善された構造体として、油性のゲル状被覆により液膜が形成されている構造体も提案している(特許文献7)。
このような油性ゲルの被覆が形成されている構造体は、滑り性の経時的低下がかなり改善されているものの、経時的低下がより向上している構造体が求められている。さらに、かかる構造体では、ゲル被覆の下地となっている基体が、ガラスのように透明性を有している場合、ゲル被覆によって透明性が損なわれるという問題もあり、さらなる改善が求められている。
WO2012/100099 WO2013/022467 特開2015−151131号公報 WO2015/194251 WO2015/194625 WO2015/194626 特許第6001726号
従って、本発明の目的は、粘稠な含水物に対する滑り性を向上するためのゲル被覆が形成されている構造体において、その滑り性向上効果がさらに持続して安定に発揮されるばかりか、ゲル状被覆の透明性も改善されている構造体を提供することにある。
本発明者等は、粘稠な物質に対しての滑り性について多くの実験を行い、検討した結果、油性液体に相溶するゲル化剤を用いてゲル状被覆を表面に形成したときには、固体状粒子をゲル化剤として用いた場合に比して、滑り性の持続性がより向上し、またゲル状被覆の透明性も向上しているという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、基材と、その表面に形成された油膜とを有する構造体において、該油膜は、油性液体の均質なゲルにより形成されていることを特徴とする構造体が提供される。
本発明の構造体において、
(1)前記ゲルは、前記油性液体に相溶するゲル化剤を含んでいること、
(2)前記ゲル化剤として、12ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール、デヒドロアビエチン酸カルシウム塩、アミノ酸誘導体、アルキルリン酸塩、コレステロール誘導体、フェノール系環オリゴマー、アントラセン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、四級アンモニウム塩誘導体、ビタミンH誘導体、コール酸誘導体ブチロラクトン誘導体、尿素誘導体、糖脂肪酸エステル、フッ化アルキル、変性シリコーン、金属石けん、ワックスの何れかが使用されていること、
(3)前記ゲルの油膜が、0.1〜100g/mの量で基材表面に形成されていること、
(4)前記油性液体が食用油であること、
(5)前記基材が透明性を有すること、
(6)前記基材がガラスであること、
が好適である。
本発明の構造体は、油性液体のゲル(油性ゲル)により油膜が表面に設けられているため、種々の粘稠な含水物質、例えばジャム、ケチャップ、マヨネーズ、蜂蜜、各種ドレッシングなどのような粘度(25℃)が100mPa・s以上の粘稠な含水物質に対して優れた滑り性を示す。
上記のような粘稠な物質に対して優れた滑り性を示すという点では、前述した特許文献7に開示されている構造体と同様であるが、本発明では、上記の油性ゲルが均質であるため、上記の滑り性の持続性がより向上している。即ち、本発明の構造体において、油膜を形成している油性ゲルが均質であるということは、ゲル化剤として、油性液体に相溶する物質が使用されており、特許文献7の構造体のように固体粒子をゲル化剤として使用しているものではないことを意味している。要するに、本発明では、ゲル化剤自体が油性液体に相溶している状態で水素結合によるネットワークを形成し、このようなネットワークによって油性液体が保持されることによりゲルが構成されている。
このような均質な油性ゲルにより形成されている油膜は、内部に粒状物が分布していないため、粒状物の分離あるいは凝集によるゲルの崩壊を生じないばかりか、基材表面に対する密着性も高く、且つより変形しにくいものとなっている。例えば、固体粒状物をゲル化剤として得られた油性ゲルは、回転粘度計により粘度を測定し得るが、油性液体に相溶するゲル化剤を用いて形成された均質な油性ゲルは、回転粘度計により粘度が測定できない程度に固体に近いものであり、従って、本発明における油性ゲルによる油膜は、粘稠な含水物質が油膜上を移動した場合においても、移動する粘稠な物質と共に排出されず、基材表面に安定に保持され、この結果として、滑り性がより長期にわたって安定に維持されることとなる。
また、本発明において、油膜を形成している油性ゲルが均質であり、固体粒状物を含有していないということは、透明性にも優れていることを意味する。即ち、油膜中に固体粒子が分散している場合には、光の散乱、多重反射などにより油膜は白濁した状態となるが、均質な油性ゲルにより形成されている油膜では、このような光の散乱、多重反射が生じないからである。
このように、本発明の構造体においては、油膜の透明性が高いため、基材がガラスのような透明性のものであった場合にも、その透明性が維持され、例えば、粘稠な含水物質が収容されるガラス容器にも本発明を適用することができ、これは、本発明の大きな利点である。
本発明の構造体は、粘稠な含水物質に対して優れた滑り性を示し、しかも、その持続性にも優れていることから、このような含水物質、マヨネーズ、ケチャップ、蜂蜜、ジャムなど、粘度(25℃)が100mPa・s以上の粘稠な内容物が収容される容器として、特に好適に使用される。
本発明の構造体の表面形態を説明するための概略側断面図。
図1を参照して、本発明の構造体は、用途に応じた形状に成形されている基材1と、その表面に形成された油膜3とからなる。
<基材1>
基材1は、その表面に油膜3を保持することが可能である限り、その材質は特に制限されず、樹脂製、ガラス製、金属製等の任意の材質により用途に応じた形態を有していればよい。
特に、本発明の構造体は、油膜3により、粘稠な含水物質に対して優れた滑り性を示すという観点から、基材1は、このような含水物質と接触する部材、例えば、粘稠な含水物質を収容する容器や該容器に使用される蓋材、含水物質を流すための配管などであることが好適である。特に、粘稠な内容物の絞り出しに好適に使用されるダイレクトブローボトルばかりか、後述する油膜3の特性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートなどの透明性に優れたポリエステル製容器やガラス容器も好適である。勿論、合成樹脂製の容器等においては、多層構造を有するものであってもよい。
<油膜3>
本発明において、上記のような基材1の表面に設けられる油膜3は、油性液体の均質なゲル(油性ゲル)により形成される。
この油性ゲルの形成に使用される油性液体は、含水物質に対して滑り性を示すものであり、潤滑剤として機能する。
このような油性液体は、当然、大気圧下での蒸気圧が小さい不揮発性の液体、例えば沸点が200℃以上の高沸点液体でなければならない。揮発性液体を用いた場合には、容易に揮散して経時と共に消失し、ゲル状被覆3を形成することが困難となってしまうからである。
また、上記のような高沸点液体であると共に、基材1の表面に対して高い濡れ性を示し、この表面上にムラなく密着した油性ゲルを形成できるという観点から、基材1の表面に対する接触角(20℃)が45度以下、且つ粘度(25℃)が100mPa・s以下であることが好適である。即ち、基材1の表面素材が、合成樹脂製、ガラス製或いは金属製の何れであっても、上記のような物性を満足する油性液体を用いて油性ゲルによる油膜3を形成すればよい。
さらに、上記のような物性を満足する油性液体の中でも、特に表面張力が、滑り性の対象となる物質(例えば、容器においては容器内容物)と大きく異なるものほど、潤滑効果が高く、本発明には好適である。
即ち、粘稠な含水物質に対する滑り性を高めるという点で、表面張力が10乃至40mN/m、特に16乃至35mN/mの範囲にある油性液体を用いるのが良く、このような油性液体としては、流動パラフィン、合成パラフィン、フッ素系液体、フッ素系界面活性剤、シリコーンオイル、脂肪酸トリグリセライド、各種の植物油などが代表的である。特に滑り性の対象となる物質が食品類(例えばマヨネーズやケチャップ)である場合には、食用油や脂肪酸トリグリセライドが好適である。
かかる食用油の具体例としては、大豆油、菜種油、オリーブオイル、米油、コーン油、べに花油、ごま油、パーム油、ひまし油、アボガド油、ココナッツ油、アーモンド油、クルミ油、はしばみ油、サラダ油などを例示することができる。
本発明において、上記油性液体によるゲルは、ゲル化剤として油性液体に相溶する物質(以下、油溶性ゲル化剤と呼ぶ)を使用する。このような油溶性ゲル化剤は、それ自体で水素結合や配位結合を形成し、油性液体中でネットワークを形成するものである。具体的には、水素結合を形成し得る官能基(例えば、水酸基やカルボキシル基)を有している化合物、例えば、配位結合を形成し得るアルミニウムや亜鉛、マグネシウムなどの多価イオンを有する金属塩である。
具体的には、12ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール、デヒドロアビエチン酸カルシウム塩、アミノ酸誘導体、アルキルリン酸塩、コレステロール誘導体、フェノール系環オリゴマー、アントラセン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、四級アンモニウム塩誘導体、ビタミンH誘導体、コール酸誘導体ブチロラクトン誘導体、尿素誘導体、糖脂肪酸エステル、フッ化アルキル、変性シリコーン、金属石けん、ワックスが挙げられる。
以下これに限定されるものではないが、アミノ酸誘導体としては、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、変性シリコーンとしては、側鎖アルキル変性シリコーン、金属石けんとしては、ステアリン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸と、アルミニウムや亜鉛などの多価イオンで構成される脂肪酸の金属塩、ワックスとしては、直鎖パラフィンやポリエチレンなどの炭化水素系、セタノールやステアリルアルコールなどの高級アルコール、ステアリン酸などの脂肪酸、硬化ヒマシ油、水添ホホバ油が代表的である。
このようなゲル化剤は、油性液体に対する溶解度以下の量で使用されるが、一般的には、油性液体100質量部当り、0.1〜50質量部、特に1〜10質量部の量で使用される。
油性液体と油溶性ゲル化剤との混合液を用いての塗布は、基材の形態に応じて例えば、バーコート、グラビアコート、スプレーコート、スピンコート、浸漬コート等から適宜の手段を採用することができるが、通常は、スプレー噴霧により行われる。スプレー噴霧であれば、基材1の表面がフィルムのようにフラットな面であっても容器内面のように立体的な形態であっても容易に塗布することができる。
このようにして形成される均質な油性ゲルによる油膜3は、0.1〜100g/mの量で基材1の表面に形成されていることが望ましい。即ち、この量が少なすぎると、油膜3による滑り性やその持続性が不満足となり、必要以上に多く形成しても、それ以上の滑り性や持続性は得られず、コストが増大するばかりである。
また、かかる油膜3は、微細な固体粒子をゲル化剤として得られる不均質な油性ゲルによる油膜に比して、非常に変形し難いため、この油膜3は、基材1の表面にしっかりと保持され、この油膜3上を粘稠な物質が流れた場合にも、粘稠な物質と共に脱落するという不都合を有効に回避することができ、粘稠な含水物質に対する滑り性は、より持続して安定に発揮される。
さらに、かかる油膜3は、均質であり、光の散乱や多重反射の要因となる粒子を含んでいないため、透明性に優れている。
上述した本発明の構造体は、粘稠な含水物質に対して優れた滑り性及びその持続性を示す。従って、本発明は、特に、粘度(25℃)が100mPa・s以上の粘稠な含水物質、例えば、マヨネーズ、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、マスタード、ドレッシング、ジャム、チョコレートシロップ、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンス等を収容するボトルやパウチなどの容器に好適に適用される。
また、この構造体表面に形成される油膜は高い透明性を示すことから、本発明をガラス容器にも好適に適用することができる。
本発明を次の実験例にて説明する。
油性液体として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)を用意し、MCT100質量部当り4質量部の量で12−ヒドロキシステアリン酸(油溶性ゲル化剤)を混合し、ホモジナイザーで撹拌した後、ガラス板上にスプレーにより塗布した。塗布後、数十秒でゲル化し、均質な油性ゲルの油膜が形成された。
この油膜は、高い透明性を示した。
上記の油膜が表面に形成されているガラス板の表面にジャムを付け、このガラス板を傾けたところ、僅かの傾斜角度でジャムが滑り落ち、ガラス板表面にジャムは残存していなかった。さらに、この実験を行った後、24時間後、再び、ジャムを付け、同様にガラス板を傾けたところ、1回目と同様、ジャムは速やかに滑り落ち、ガラス板表面にジャムは残存していなかった。
比較のため、油膜を形成していないガラス板の表面にジャムを付け、ガラス板を傾斜させところ、ジャムはなかなか落下せず、ガラス板を垂直に立てたとき、ジャムは落下したが、ガラス板上には、少量ではあるが、ジャムが残存していた。
1:基材
3:油膜

Claims (7)

  1. 基材と、その表面に形成された油膜とを有する構造体において、該油膜は、油性液体の均質なゲルにより形成されていることを特徴とする構造体。
  2. 前記ゲルは、前記油性液体に相溶するゲル化剤を含んでいる請求項1に記載の構造体。
  3. 前記ゲル化剤として、12ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール、デヒドロアビエチン酸カルシウム塩、アミノ酸誘導体、アルキルリン酸塩、コレステロール誘導体、フェノール系環オリゴマー、アントラセン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、四級アンモニウム塩誘導体、ビタミンH誘導体、コール酸誘導体ブチロラクトン誘導体、尿素誘導体、糖脂肪酸エステル、フッ化アルキル、変性シリコーン、金属石けん、ワックスの何れかが使用されている請求項2に記載の構造体。
  4. 前記ゲルの油膜が、0.1〜100g/mの量で基材表面に形成されている請求項1〜3の何れかに記載の構造体。
  5. 前記油性液体が食用油である請求項1〜4の何れかに記載の構造体。
  6. 前記基材が透明性を有する請求項1〜5の何れかの構造体。
  7. 前記基材がガラスである請求項6に記載の構造体。
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