JP2018096825A - 中性子発生装置及び中性子発生方法 - Google Patents

中性子発生装置及び中性子発生方法 Download PDF

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Abstract

【課題】加速させた荷電粒子を出力する加速装置側の構成を変更すること無く、高い中性子束を実現する中性子発生装置及び中性子発生方法を提供する。
【解決手段】中性子発生装置10は、荷電粒子を加速させて出力する荷電粒子加速装置11と、加速された荷電粒子を入射して、荷電粒子との核反応により中性子を発生するターゲット12と、発生した中性子を減速させる減速材と核分裂性物質とを内部に有して、減速された中性子による核分裂性物質の核分裂反応により中性子を増倍して出力する中性子増倍装置13と、を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明の実施形態は、放射線透過試験や構造測定等に用いる中性子を発生させる中性子発生装置及び中性子発生方法に関する。
中性子は、その透過性の高さから、中性子を測定対象となるサンプルに照射して、透過した中性子の強度分布に基づき対象の内部構造を非破壊で観察する放射線透過試験(ラジオグラフィ)や中性子回折などにより物質の微視的な構造測定に用いられており、非常に有用な放射線の1つである。
測定に利用される中性子は、自発核分裂により中性子を発するカリホルニウム252等の放射性同位体中性子源を用いるものがある。しかし、放射性同位体を用いる中性子源は、常時中性子が発生しているため、中性子の飛行時間を分析することで中性子のエネルギー情報を測定により取得することが困難であった。
このため、荷電粒子を所定のエネルギーまで加速させた粒子線(粒子ビーム)を、ベリリウムなどのターゲットに照射させて核反応により中性子を発生させる加速器駆動の中性子発生装置が広く利用されている。この中性子発生装置では、パルス状に粒子線をターゲットに入射させて、荷電粒子とターゲットとの核反応によりパルス的に中性子を発生させている。
特開2015−53187号公報
ところで、中性子を放射線透過試験などの測定に利用する場合、中性子束(単位時間に一定の空間を通過する中性子の数)が高いほど、統計精度を稼ぐことができるため、測定精度が向上する。
加速器駆動の中性子発生装置において中性子束を高める場合、加速器から出力される粒子線のビーム電流を高めることが直接的な方法となる。この場合、粒子線の入射を受けるターゲットで発生する熱量が増加して、これに対応するため高い冷却性能が必要となる。加えて、ターゲットの融点などの物性によっては高められる粒子線のビーム電流に限界が生じる。
さらに、一般的にターゲットと荷電粒子との核反応で中性子を発生させる場合、ターゲットに入射される粒子線のエネルギーが高いほど中性子発生率は高くなるものの、粒子線の入射エネルギーを高めるためには、加速器の規模が大きくなり、施設規模や必要な電力量などが大きくなるという問題がある。
また、ターゲットから発生した中性子は、数MeV程度のエネルギーを有することが多い。このエネルギー領域の中性子は波長が短く、結晶構造などを見るには不向きとなる。このため、通常、化学的なスケールと同程度のエネルギーに変換するために、中性子のエネルギーを減速させるための減速材がターゲットの下流側に配置される。しかし、エネルギーを失う減速の過程で中性子吸収や漏れなどが生じるため、減速材に入射した中性子の数より少ない中性子が出力されることになり、ターゲットより下流側で中性子束を高めることは困難であった。
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、高い中性子束を実現する中性子発生装置及び中性子発生方法を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る中性子発生装置において、荷電粒子を加速させて出力する荷電粒子加速装置と、加速された前記荷電粒子を入射して、前記荷電粒子との核反応により中性子を発生するターゲットと、発生した前記中性子を減速させる減速材と核分裂性物質とを内部に有して、減速された前記中性子による前記核分裂性物質の前記核分裂反応により中性子を増倍して出力する中性子増倍装置と、を備えることを特徴とする。
本発明の実施形態に係る中性子発生方法において、荷電粒子を加速させて出力するステップと、加速された前記荷電粒子を入射して、前記荷電粒子との核反応により中性子を発生するステップと、発生した前記中性子を減速させる減速材と核分裂性物質とを内部に有する中性子増倍装置を用いて、減速された前記中性子による前記核分裂性物質の前記核分裂反応により中性子を増倍して出力するステップと、を含むことを特徴とする。
本発明の実施形態により、加速させた荷電粒子を出力する加速装置側の構成を変更すること無く、高い中性子束を実現する中性子発生装置及び中性子発生方法を提供する。
第1実施形態に係る中性子発生装置を用いて発生させた中性子を、測定対象のサンプルに照射して中性子検出器で検出する構成を示す模式図。 (A)、(B)第1実施形態における中性子増倍装置の変形例を示す構成図。 第2実施形態における中性子増倍装置の構成図。 (A)第3実施形態における中性子増倍装置の構成を示す水平断面図、(B)中性子増倍装置内に配置される燃料棒の構成図。 第3実施形態における中性子増倍装置の鉛直断面図。 第3実施形態における中性子増倍装置の変形例を示す鉛直断面図。 第4実施形態における中性子増倍装置の構成を示す鉛直断面図。 第4実施形態における中性子増倍装置の水平断面図。 第4実施形態における中性子増倍装置の変形例を示す鉛直断面図。 第4実施形態における中性子増倍装置の変形例を示す鉛直断面図。
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る中性子発生装置10を用いて発生させた中性子を、測定対象であるサンプル50に照射し、透過した中性子を中性子検出器51で検出する場合の構成例を示している。
本実施形態に係る中性子発生装置10は、荷電粒子を加速させた粒子線をターゲット12に入射して核反応により中性子を発生させ、減速材と核分裂性物質とで構成される中性子増倍部17をターゲット12の下流側(中性子の発生側)に設けることで、減速された中性子による核分裂性物質の核分裂反応により生じる中性子を利用して高い中性子束を実現する装置である。
第1実施形態に係る中性子発生装置10は、荷電粒子加速装置11と、ターゲット12と、中性子増倍装置13と、を少なくとも備えている。
荷電粒子加速装置11は、荷電粒子を発生させる荷電粒子源14と、発生させた荷電粒子を所定のエネルギーまで加速させた粒子線を出力する荷電粒子加速部15と、を備えている。使用する荷電粒子としては、電子、陽子、重陽子や重イオンが例示される。
荷電粒子源14は、使用する荷電粒子種に応じて公知の荷電粒子発生技術を用いることができ、例えば固体ターゲット(図示省略)に対してレーザ光を集光照射して、レーザ光のエネルギーにより固体ターゲットの元素が蒸発しイオン化することでプラズマを生成する装置を用いることができる。
荷電粒子加速部15は、荷電粒子源14から生成された荷電粒子を引き出して、引き出した荷電粒子を静的あるいは動的な電磁場により加速する加速器である。荷電粒子加速部15は、線形加速器やシンクロトロン等の加速器やこれらの加速器を組み合わせて構成される。
荷電粒子加速部15は、荷電粒子が加速されて、所定の電流値及びエネルギーに到達した粒子線をターゲット12に出力する。
ビーム路16は、荷電粒子加速部15から出力された粒子線を、ターゲット12に導くためのダクトである。ビーム路16を介して荷電粒子加速装置11と中性子増倍装置13とは接続されている。ビーム路16の終端部分にターゲット12が設けられており、ビーム路16内を通過した粒子線はターゲット12に入射する。
ターゲット12は、加速された荷電粒子を入射して、荷電粒子との核反応により中性子を発生するものである。ターゲット12の材料は、荷電粒子の種類に応じて適宜選択され、例えば荷電粒子が陽子である場合、ベリリウムやリチウムなどが用いられる。ターゲット12がベリリウムである場合、Be(p,n)反応によりターゲット12に入射した陽子ビームから中性子が発生する。
中性子増倍装置13は、ターゲット12での核反応により発生した中性子を減速させる減速材と核分裂性物質とを含んで形成された中性子増倍部17を内部に有しており、減速された中性子による核分裂性物質の核分裂反応により中性子を増倍して出力する装置である。
中性子増倍装置13は、中性子増倍部17と、反射体18と、コリメータ20と、を備えている。なお、第1実施形態では、中性子増倍部17において減速材と核分裂性物質とが一様に混合されているものとする。
中性子増倍部17は、ターゲット12で発生した中性子が中性子増倍部17に漏れなく入るように、ターゲット12の近傍、あるいはターゲット12の中性子発生面に接するように配置される。
減速材は、ターゲット12で発生した中性子を減速させる、つまり中性子のエネルギースペクトルを低エネルギー側に移行させるものである。減速材には、水素や炭素などの軽い元素を含む物質が用いられ、例えば軽水、ポリエチレンなどの樹脂が適用できる。なお、減速材によって熱エネルギー程度まで減速された、エネルギーの低い中性子は「熱中性子」と呼ばれる。
核分裂性物質は、熱中性子を吸収して核分裂しやすい核種を含む物質である。核分裂性物質としては、ウランを含む化合物、例えば二酸化ウラン(UO)、プルトニウムを含む化合物などを用いる。特にウラン235を多く含む物質は、核分裂の起こしやすさを示す指標である核分裂断面積が大きく好適となる。
なお、プルトニウムはプルトニウム239が核分裂をおこしやすいが、同時に含まれる他の同位体により崩壊熱を発生するなど取り扱いが容易ではない。中性子発生装置10を用いて測定を行う場合、頻繁に測定系の設定を変更することが考えられる。このため、装置へのアクセスは可能な限り簡単であることが望ましい。このため、核分裂性物質を、プルトニウムを含まないウランを主成分とすることで、比較的容易な取り扱いが可能となる。ウランは濃縮度の異なる複数種類のほか、天然組成のウランや劣化ウラン・回収ウランなどを適切に組み合わせて適用しても良い。
核分裂性物質は、1つの熱中性子を吸収して、核分裂することで複数の中性子を放出する。中性子増倍部17では、未臨界状態で、かつ中性子を増倍する増倍体系となるように、減速材と核分裂性物質との配合量や配置位置などのバランスが調整される。中性子の増倍体系となれば、ターゲット12で発生した中性子より多くの中性子を得ることができ、高い中性子束を実現できる。
増倍体系と中性子束との関係について具体的に説明する。ある体系における中性子の実効増倍率kは、単位時間内に消滅する中性子数に対して発生する中性子数の比率で表される。この実効増倍率kが1より小さい時が未臨界状態となる。未臨界状態において、核分裂反応に依らない外部の中性子源と、中性子束との関係は下記の式(1)で示される。
Figure 2018096825
上記の式(1)は、同じ中性子源強度であれば、kが1に近いほど高い中性子束を得ることができることを意味する。つまり、核分裂性物質を加えたことによる影響や中性子の吸収および体系外への漏れを補う、十分な大きさの実効増倍率を持つ増倍体系を、減速材と核分裂性物質とを有する中性子増倍部17で構成することで、高い中性子束を得ることができる。
反射体18は、中性子の出力口を除いて中性子増倍部17を囲むように設けられる。反射体18としては、中性子を散乱し、かつ中性子吸収の少ない材料、例えば水やグラファイトが用いられる。中性子増倍部17内で発生した中性子が、反射体18で反射されて中性子増倍部17内に戻ることで中性子を無駄なく利用することができる。
コリメータ20は、中性子の出力口を形成しており、出力される中性子の方向を一定の方向に揃えるためのものである。コリメータ20の材質として、リチウム、ホウ素、カドミウム等の中性子吸収材が用いられる。なお、中性子増倍部17に距離が近い箇所は、中性子吸収材により実効増倍率が低下することを防ぐため、アルミニウム合金などの中性子吸収断面積の小さい材質を適宜組み合わせることが望ましい。
コリメータ20を介して出力された中性子は、測定対象となるサンプル50に照射され、散乱や回折した中性子が中性子検出器51に入射されて測定データが取得される。中性子検出器51としては、放射線検出器の他、放射化箔や分光装置等を用いる。
なお、上述したようにターゲット12の材料としてベリリウムやリチウムを用いる場合がある。リチウムは中性子吸収断面積がベリリウムに対して大きい。中性子吸収断面積の大きいリチウムが、中性子増倍部17で形成される中性子の増倍体系の近傍にあると実効増倍率が低下する恐れがある。このため、ターゲット12に中性子吸収断面積の小さいベリリウムを用いることで、ターゲット12を核分裂性物質の近くに設置しても高い実効増倍率を実現できる。
図2(A)は、第1実施形態における中性子増倍装置13の変形例を示す構成図である。図2(A)に示す変形例では、中性子増倍部17の中心付近にターゲット12を配置して、コリメータ20を中性子増倍部17の中心方向に突出して設けている。
核分裂反応が発生して増倍体系となる中性子増倍部17の中心近くに中性子発生源であるターゲット12を配置することで、ターゲット12から発生した中性子が体系外に逃げること無く核分裂を生じさせることができる。中心付近で発生した中性子をコリメータ20から直接取り出すことで高い中性子束を得ることができる。
図2(B)は、第1実施形態における中性子増倍装置13のその他の変形例を示す構成図である。図2(B)に示す変形例では、中性子増倍部17と中性子の出力口となるコリメータ20との間に核分裂性物質を含まない減速材23を設けている。これにより、出力される中性子のエネルギースペクトルを減速材23により調整することができる。
以上のように、減速材と核分裂性物質とで形成される中性子増倍部17をターゲット12の下流側に設けることで、荷電粒子を出力する荷電粒子加速装置11側の構成を変更すること無く、高い中性子束を実現できる。
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態における中性子増倍装置13の構成図である。なお、荷電粒子加速装置11の構成は、第1実施形態(図1)と同一となるため図示を省略して、第1実施形態と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
第2実施形態における中性子増倍装置13が第1実施形態と異なる点は、中性子増倍部17において、減速材23中に核分裂性物質24が非均質に配置される点にある。
非均質に配置する方法として、例えば核分裂性物質24を径の異なる粒子状に複数成形する。そして、これらの核分裂性物質24を水溶液や樹脂などの減速材23中に分散させて配置させる。
減速材23中に核分裂性物質24が非均質に分散していると、中性子束の強さやエネルギースペクトルが空間の各点毎に異なるものとなる。この場合、自己遮蔽効果により、均質で構成した増倍体系よりも実効増倍率は高くなる。
このため、同量の核分裂性物質を減速材中に配置する場合、核分裂性物質24を減速材23中に非均質に配置することでより高い中性子束を実現できる。
(第3実施形態)
図4(A)は、第3実施形態における中性子増倍装置13の水平断面図であり、図4(B)は中性子増倍装置13内に配置される燃料棒25の構成を示している。そして、図5は中性子増倍装置13の鉛直断面図(図4(A)のI−I断面)を示している。
第3実施形態における中性子増倍装置13は、核分裂性物質を含有する燃料要素が被覆管27に装荷された燃料棒25を内部に有している。複数の燃料棒25は、減速材23中に正方格子状に配列されている。ターゲット12は、燃料棒25に近接して配置されることが望ましく、ターゲット12が中性子増倍部17の中心近くに配置されるように燃料棒25の配置を調整しても良い。
ここでは、核分裂性物質を含有する燃料要素として、核分裂性物質を含有させて円柱状に成形されたペレット28を用いる。
図4(B)に示すように、燃料棒25は、中空円筒状の被覆管27内に複数のペレット28が積層して装荷されている。被覆管27の上端及び下端には、上端端栓及び下端端栓が設けられており、両端栓によりペレット28は被覆管27内に封止される。
被覆管27内の上端には、係止部材29が設けられており、係止部材29の一端は上端端栓に接続され、他端はペレット28に係止されることで、ペレット28は被覆管27内で固定されている。燃料棒25は格子板26に上下で固定され、燃料棒25相互の間隔が保持されている。
被覆管27の材料としては、中性子吸収が少なく使用環境下で安定性を有する物質が選ばれ、ジルカロイ合金やステンレス合金などを用いる。また、低出力で発熱量が小さい場合はアルミニウム合金などを用いる。
ペレット28を用いることで、同位体組成や濃縮度の異なる複数種の燃料要素を、1つの燃料棒25内に積層して装荷することができる。
ペレット28が装荷された燃料棒25を減速材23中に配置することで、減速材23中で核分裂性物質は非均質な配置となるため、第2実施形態の効果と同様に実効増倍率を高くすることができ、高い中性子束を実現できる。
また、減速材として液体の水を用いることで、燃料棒25の配置を容易に変更することが可能となる。さらに、減速材を排水する構成を中性子増倍装置13に設けて、中性子増倍装置13の破損等の緊急時に急速に排水することで、事故的に臨界になることを防止でき、装置の安全性を高めることができる。
なお、水は反射体18として用いることができるため、燃料棒25が配列された領域は減速材として機能する一方、その周囲に燃料棒25が無い領域の水は反射体として機能する。
図6は、第2実施形態における中性子増倍装置13の変形例を示す鉛直断面図である。本変例では、複数の燃料棒25が減速材23中に三角格子状に配置されている。
三角格子状に燃料棒25を配置することで、減速材と核分裂性物質との比率を正方格子とは異なるものとすることができる。また、核分裂により発生する中性子は一定の方向のみに飛行しないため、複数の方向から中性子を出力することができる。図6では、2方向から中性子を出力するために、2つのコリメータ20、20を設けている。
なお、燃料棒25の配置は、正方格子状や三角格子状に限定されるものでは無く、出力される中性子が測定上望ましいエネルギースペクトルを有するとともに有効な実効増倍率を得ることができる配置に調整する。
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態における中性子増倍装置13の鉛直断面を示し、図8は中性子増倍装置13の水平断面を示す説明図である。
第4実施形態に係る中性子増倍装置13では、減速材23と燃料棒25とを配置する空間が少なくとも2つ以上の領域に区別される。そして、区別された領域ごとに、燃料棒25に装荷されるペレット28に含まれる核分裂性物質の種類が異なる。なお、核種、同位体組成や濃縮度が異なるものは、核分裂性物質の種類が異なるものとする。
なお、区別された領域ごとに核分裂生成物の種類を変える方法として、図7では、領域それぞれに対して、核分裂生成物の種類が異なるペレット28が装荷された燃料棒25を配置する構成を示しているが、この構成に限定されるものでは無く、例えば、種類の異なる核分裂生成物を粒子状に成形して、領域ごとに核分裂生成物の種類を変えて配置しても良い。
ターゲット12は、中性子増倍部17の中心付近に配置することが望ましい。ターゲット12を中心付近に配置するとき、燃料棒25とターゲット12に荷電粒子ビームを導くビーム路16との干渉を避けるため、干渉する部分の燃料棒25はビーム路16の軸方向全体に亘って除外する。
中性子増倍部17の中心部分を含む空間を内部領域(図中、二点鎖線で囲まれた領域)とし、その他の空間を外部領域として2つの領域に区別する。内部領域に配置される燃料棒25に装荷されるペレット28(図4参照)には、U235を濃縮した高濃縮ウランが含まれる。一方、外部領域に配置される燃料棒25に装荷されるペレット28には、天然ウランが含まれる。
内部領域だけに濃縮ウランを用い、その他の領域には天然ウランを用いる構成とすることで、必要な濃縮ウランの量を抑制しつつ、高い実効増倍率を得ることができ、高い中性子束を得ることができる。天然ウランは、濃縮を行わないためその分安価であり、また管理上も濃縮ウランより容易であるという利点がある。
また、核分裂性物質は、その種類ごとに最も高い実効増倍率が得られる最適な減速材(水)に対する比率が異なる。
そこで、区別された領域のそれぞれについて、核分裂性物質の種類に応じて減速材23に対する核分裂性物質の比率を調整する。
具体的には、図7に示すように内部領域に配置された燃料棒25の間隔(ピッチ)をLとした場合、高濃縮ウランに対して最適な減速材の量となるようにLを調整する。
一方、外部領域に配置された燃料棒25の間隔をLとした場合、天然ウランに対して最適な減速材の量となるようにLを調整する。
このように、領域ごとに燃料棒25の配置間隔を変えて、減速材23に対する核分裂性物質の比率を調整する。これにより、各領域で効率よく核分裂を起こすことができ、少ない濃縮ウラン量で高い実効増倍率を得ることができる。なお、減速材23に対する核分裂性物質の比率を調整する方法として、燃料棒25の配置間隔を変えるのでは無く、減速材に対して最適な核分裂性物質の比率となるようにペレット28に含有される核分裂性物質の濃縮度などを調整して良い。
図9は、第4実施形態における中性子増倍装置13の変形例を示す鉛直断面図である。この変形例では、装荷されるペレット28について、上下部分に天然ウラン含有のペレット28を配置して、中心領域に高濃縮ウラン含有のペレット28を配置する。燃料棒25に装荷されるペレット28の配置を利用して中心部分のみに濃縮ウランを配置することで、必要な濃縮ウランの量を最低限に抑制することができる。
図10は、第4実施形態における中性子増倍装置13の変形例を示す鉛直断面図である。この変形例では、短尺の燃料棒25を用いてビーム路16の上下も燃料棒25で囲む。ターゲット12の周囲が高濃縮ウランを含有する燃料棒25で囲まれることで、中性子吸収反応や核分裂反応を無駄なく起こすことができる。
以上述べた各実施形態の中性子発生装置によれば、減速材と核分裂性物質とで形成される中性子増倍部をターゲットの下流側に設けることで、荷電粒子を出力する荷電粒子加速装置側の構成を変更すること無く、高い中性子束を実現できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10…中性子発生装置、11…荷電粒子加速装置、12…ターゲット、13…中性子増倍装置、14…荷電粒子源、15…荷電粒子加速部、16…ビーム路、17…中性子増倍部、18…反射体、20(20,20)…コリメータ、23…減速材、24…核分裂性物質、25…燃料棒、26…格子板、27…被覆管、28…ペレット、29…係止部材、50…サンプル(測定対象)、51…中性子検出器。

Claims (12)

  1. 荷電粒子を加速させて出力する荷電粒子加速装置と、
    加速された前記荷電粒子を入射して、前記荷電粒子との核反応により中性子を発生するターゲットと、
    発生した前記中性子を減速させる減速材と核分裂性物質とを内部に有して、減速された前記中性子による前記核分裂性物質の核分裂反応により前記中性子を増倍して出力する中性子増倍装置と、を備えることを特徴とする中性子発生装置。
  2. 前記中性子増倍装置は、前記減速材中に前記核分裂性物質が非均質に配置されることを特徴とする請求項1に記載の中性子発生装置。
  3. 前記中性子増倍装置は、前記減速材と前記核分裂性物質とが配置される空間が少なくとも2つ以上の領域に区別されて、
    前記核分裂性物質の種類が、区別された前記領域ごとに異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の中性子発生装置。
  4. 前記中性子増倍装置は、前記核分裂性物質を含有する燃料要素が被覆管に装荷された燃料棒を内部に有して、
    複数の前記燃料棒が前記減速材中に配列されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
  5. 区別された前記領域のそれぞれについて、前記減速材に対する前記核分裂性物質の比率が前記核分裂性物質の種類に応じて調整されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の中性子発生装置。
  6. 前記核分裂性物質を含有する燃料要素が被覆管に装荷された燃料棒の配置間隔を変えることで、前記減速材に対する前記核分裂性物質の比率が調整されることを特徴とする請求項5に記載の中性子発生装置。
  7. 区別された前記領域の少なくとも1つには、前記核分裂性物質として天然ウランを含むことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
  8. 前記核分裂性物質は、ウラン235を含む物質であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
  9. 前記減速材は、軽水であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
  10. 前記ターゲットは、ベリリウムを含む物質であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
  11. 前記ターゲットは、前記減速材と前記核分裂性物質とで形成される中性子増倍部の中心付近に配置されることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
  12. 荷電粒子を加速させて出力するステップと、
    加速された前記荷電粒子を入射して、前記荷電粒子との核反応により中性子を発生するステップと、
    発生した前記中性子を減速させる減速材と核分裂性物質とを内部に有する中性子増倍装置を用いて、減速された前記中性子による核分裂性物質の核分裂反応により前記中性子を増倍して出力するステップと、を含むことを特徴とする中性子発生方法。
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