JP2018096710A - 血中タンパク質を測定することにより、ネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被験体におけるネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するための方法、及び試薬又はキットの提供。【解決手段】被験体におけるネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法であって、血中濃度が尿蛋白量と相関関係にあるタンパク質の血中濃度を指標として、ネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。アポリポプロテインC-I、マトリックスメタロプロテナーゼ-9、炭酸脱水酵素2及びShroom3タンパク質の4種類のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質の血中濃度を指標とする、ネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。【選択図】なし
Description
本発明はバイオマーカーを用いたネフローゼ症候群の診断に関する。
ネフローゼ症候群とは、高度の蛋白尿により低アルブミン血症や浮腫をもたらす腎臓疾患の総称である(非特許文献1を参照)。蛋白尿は腎・生命予後と関連する予後規定因子であるが、蛋白尿発症の詳細な機序は不明である。成人ネフローゼ症候群の診断基準として、尿中のタンパク質が1日3.5g以上であること、及び血清中のアルブミン濃度が3.0g/dL以下であること、が採用されている。
ネフローゼ症候群の治療法として、副腎皮質ステロイドの投与、免疫抑制薬の投与のほか、病型及び病態によっては、LDLアフェレシスや白血球除去療法(LCAP: Leukocytapheresis)などの併用も試みられている。
ネフローゼ症候群の治療中における病勢の診断において、ネフローゼ症候群が悪化に向かっているのか、寛解に向かっているかの判断は容易ではなく、治療方法の選択も容易でなかった。
疾患の進行度、症状、患者の機能障害の程度等を総合して疾患活動性と呼び、関節リウマチでは、特定のマーカーや血液検査による炎症の状態等を調べて、疾患活動性を評価、判定していた(特許文献1を参照)。
佐藤博、杉山斉、横山仁、日本におけるネフローゼ症候群の疫学、日腎会誌 2014:56(4): 464-470
本発明は、被験体におけるネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するための方法、及び試薬又はキットの提供を目的とする。さらに、本発明は、蛋白尿惹起因子や抗蛋白尿効果を有する保護的因子の探索を目的とする。
本発明者らは、血中の特定のタンパク質濃度を指標にしてネフローゼ症候群の疾患活動性を判定できる可能性があると考え、尿蛋白量と血中のタンパク質濃度との相関を多数のタンパク質について、プロテオーム解析により網羅的に統計学的に解析した。
その結果、尿蛋白量と相関するタンパク質及び逆相関するタンパク質の存在が明らかになった。これらのタンパク質をネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのバイオマーカーとして用い得ることを見出した。さらに、尿蛋白量と相関するタンパク質については、ネフローゼ症候群の原因となる糸球体透過性因子である可能性を見出し、尿蛋白量と逆相関するタンパク質については、腎臓において抗蛋白尿効果を有する保護的因子である可能性を見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 被験体におけるネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法であって、以下のA群の12種類のタンパク質及びB群の11種類のタンパク質の少なくとも1つのタンパク質の血中濃度を指標として、ネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法:
A群;
アポリポプロテインC-I、
ホスファチジルコリン-ステロール アシルトランスフェラーゼ、
マトリックスメタロプロテナーゼ-9、
免疫グロブリンμ鎖C領域、
炭酸脱水酵素2、
Shroom3タンパク質、
ラクトトランスフェリン、
ペリオスチン、
ペルオキシレドキシン2、
ヘモグロビンαサブユニット、
α2-マクログロブリン、
ホスファチジルイノシトール-グリカン特異的ホスホリパーゼD、
B群;
ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ、
GAPR-1(Golgi-associated plant pathogenesis-related protein 1)、
トランスケトラーゼ、
α1-アシッドグリコプロテイン2、
プラスチン2、
α1-アンチトリプシン、
プロテインS100-A12、
α1-アシッドグリコプロテイン1、
プロテインS100-A9、
プロテインS100-A8、
DNAプライマーゼ大サブユニット。
[2] A群のタンパク質のうち、アポリポプロテインC-I、マトリックスメタロプロテナーゼ-9、炭酸脱水酵素2及びShroom3タンパク質の4種類のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質の血中濃度を指標とする、[1]のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
[3] A群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質、及びB群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質の血中濃度を指標とする、[1]又は[2]のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
[4] A群のタンパク質の血中濃度が健常人の血中濃度よりも高い場合、又はB群のタンパク質の血中濃度が健常人の血中濃度よりも低い場合に、被験体のネフローゼ症候群の疾患活動性が高いと判定する、[1]〜[3]のいずれかのネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
[5] 被験体のネフローゼ症候群の疾患活動性により蛋白尿の極期を判定する、[1]〜[4]のいずれかのネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
[1] 被験体におけるネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法であって、以下のA群の12種類のタンパク質及びB群の11種類のタンパク質の少なくとも1つのタンパク質の血中濃度を指標として、ネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法:
A群;
アポリポプロテインC-I、
ホスファチジルコリン-ステロール アシルトランスフェラーゼ、
マトリックスメタロプロテナーゼ-9、
免疫グロブリンμ鎖C領域、
炭酸脱水酵素2、
Shroom3タンパク質、
ラクトトランスフェリン、
ペリオスチン、
ペルオキシレドキシン2、
ヘモグロビンαサブユニット、
α2-マクログロブリン、
ホスファチジルイノシトール-グリカン特異的ホスホリパーゼD、
B群;
ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ、
GAPR-1(Golgi-associated plant pathogenesis-related protein 1)、
トランスケトラーゼ、
α1-アシッドグリコプロテイン2、
プラスチン2、
α1-アンチトリプシン、
プロテインS100-A12、
α1-アシッドグリコプロテイン1、
プロテインS100-A9、
プロテインS100-A8、
DNAプライマーゼ大サブユニット。
[2] A群のタンパク質のうち、アポリポプロテインC-I、マトリックスメタロプロテナーゼ-9、炭酸脱水酵素2及びShroom3タンパク質の4種類のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質の血中濃度を指標とする、[1]のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
[3] A群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質、及びB群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質の血中濃度を指標とする、[1]又は[2]のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
[4] A群のタンパク質の血中濃度が健常人の血中濃度よりも高い場合、又はB群のタンパク質の血中濃度が健常人の血中濃度よりも低い場合に、被験体のネフローゼ症候群の疾患活動性が高いと判定する、[1]〜[3]のいずれかのネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
[5] 被験体のネフローゼ症候群の疾患活動性により蛋白尿の極期を判定する、[1]〜[4]のいずれかのネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
[6] 以下のA群の12種類のタンパク質及びB群の11種類のタンパク質の少なくとも1つのタンパク質に対する抗体を含む、該タンパク質の血中濃度を測定し、血中濃度を指標に、被験体におけるネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのキット:
A群;
アポリポプロテインC-I、
ホスファチジルコリン-ステロール アシルトランスフェラーゼ、
マトリックスメタロプロテナーゼ-9、
免疫グロブリンμ鎖C領域、
炭酸脱水酵素2、
Shroom3タンパク質、
ラクトトランスフェリン、
ペリオスチン、
ペルオキシレドキシン2、
ヘモグロビンαサブユニット、
α2-マクログロブリン、
ホスファチジルイノシトール-グリカン特異的ホスホリパーゼD、
B群;
ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ、
GAPR-1(Golgi-associated plant pathogenesis-related protein 1)、
トランスケトラーゼ、
α1-アシッドグリコプロテイン2、
プラスチン2、
α1-アンチトリプシン、
プロテインS100-A12、
α1-アシッドグリコプロテイン1、
プロテインS100-A9、
プロテインS100-A8、
DNAプライマーゼ大サブユニット。
[7] A群のタンパク質のうち、アポリポプロテインC-I、マトリックスメタロプロテナーゼ-9、炭酸脱水酵素2及びShroom3タンパク質の4種類のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質に対する抗体を含む、[6]のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのキット。
[8] A群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質に対する抗体、及びB群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質に対する抗体を含む、[6]又は[7]のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのキット。
A群;
アポリポプロテインC-I、
ホスファチジルコリン-ステロール アシルトランスフェラーゼ、
マトリックスメタロプロテナーゼ-9、
免疫グロブリンμ鎖C領域、
炭酸脱水酵素2、
Shroom3タンパク質、
ラクトトランスフェリン、
ペリオスチン、
ペルオキシレドキシン2、
ヘモグロビンαサブユニット、
α2-マクログロブリン、
ホスファチジルイノシトール-グリカン特異的ホスホリパーゼD、
B群;
ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ、
GAPR-1(Golgi-associated plant pathogenesis-related protein 1)、
トランスケトラーゼ、
α1-アシッドグリコプロテイン2、
プラスチン2、
α1-アンチトリプシン、
プロテインS100-A12、
α1-アシッドグリコプロテイン1、
プロテインS100-A9、
プロテインS100-A8、
DNAプライマーゼ大サブユニット。
[7] A群のタンパク質のうち、アポリポプロテインC-I、マトリックスメタロプロテナーゼ-9、炭酸脱水酵素2及びShroom3タンパク質の4種類のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質に対する抗体を含む、[6]のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのキット。
[8] A群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質に対する抗体、及びB群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質に対する抗体を含む、[6]又は[7]のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのキット。
蛋白尿とともに増加する血中タンパク質及び蛋白尿とともに減少する血中タンパク質は、ネフローゼ症候群の病勢と関連しており、ネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのバイオマーカーとして用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.ネフローゼ症候群の疾患活動性の判定
本発明は、特定の血中タンパク質の濃度を指標にして、被験体におけるネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法である。該血中タンパク質は、ネフローゼ症候群の疾患活動性のマーカーとして機能する。
本発明は、特定の血中タンパク質の濃度を指標にして、被験体におけるネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法である。該血中タンパク質は、ネフローゼ症候群の疾患活動性のマーカーとして機能する。
ネフローゼ症候群とは、高度の蛋白尿により低アルブミン血症や浮腫をもたらす腎臓疾患の総称である。ネフローゼ症候群は、種々の腎臓疾患により生じる。腎臓自体に疾患が生じネフローゼ症候群となる一次性ネフローゼ症候群と糖尿病腎症、アミロイドーシス、膠原病等の全身疾患の随伴症状として生じる二次性(続発性)ネフローゼ症候群とに分類される。
一次性ネフローゼ症候群の原疾患として、微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、膜性腎症、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、その他の糸球体腎炎等がある。また、二次性ネフローゼ症候群の原疾患として、糖尿病性腎炎やアミロイドーシス等の代謝性疾患、膠原病や紫斑病性腎炎等の全身性疾患、拘縮性心膜炎、心不全等の循環器疾患、非ステロイド性鎮痛薬やD-ペニシラミン等の薬物、ハチ毒やヘビ毒等による過敏症、肝硬変やウイルス性肝炎(B型、C型)等の肝疾患、HIV感染症や梅毒等の感染症、各種固形がんや白血病等の悪性腫瘍、先天性ネフローゼ症候群やアルポート症候群等の遺伝子疾患などが挙げられる。
本発明において、上記のすべてのネフローゼ症候群が対象となる。
本発明において、上記のすべてのネフローゼ症候群が対象となる。
疾患活動性は、疾患の進行度、症状、患者の機能障害の程度等を示す。炎症や症状が強く、疾患が憎悪しているか、又は疾患が憎悪傾向にあるときを疾患活動性が高いといい、一方、炎症や症状が軽く、疾患が緩解しているか、又は寛解傾向にあるときを疾患活動性が低いという。ネフローゼ症候群の場合、具体的には、蛋白尿が増加し極期になるまで、あるいは腎臓の炎症が強くなったときを疾患活動性が高いという。疾患活動性の判定を疾患活動性のモニタリングとも呼ぶ。また、本発明の疾患活動性を判定する方法により、蛋白尿の極期を判定することができる。さらに、疾患活動性を病勢や病態と言うこともあり、本発明の方法はネフローゼ症候群の病勢又は病態を評価、判定する方法でもある。また、ネフローゼ症候群の疾患活動性は腎臓の状態とも密接に関連しているので、本発明の方法により腎臓の状態も判定することができる。さらに、本発明の方法により、蛋白尿の極期を判断することができる。
本発明の方法は、上記判定を行うための補助的データを取得する方法でもある。
本発明の方法は、上記判定を行うための補助的データを取得する方法でもある。
本発明においては、ネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するために、ネフローゼ症候群の疾患活動性と関連したタンパク質を疾患活動性を判定するためのバイオマーカーとして選択し、用いる。このために、ネフローゼ症候群患者から経時的に採取した血中のタンパク質を質量分析計により網羅的に解析すればよい。経時的に採取した血中のタンパク質の増減とネフローゼ症候群患者における尿蛋白量の関連を統計学的に解析し、尿蛋白量と血中濃度の相関が高いタンパク質を選択すればよい。ここで、相関は正の相関も負の相関も含む。
このようにして、ネフローゼ症候群の疾患活動性の指標として、以下のA群に属するタンパク質とB群に属するタンパク質を選択した。
A群
アポリポプロテインC-I(Apolipoprotein C-I)
ホスファチジルコリン-ステロール アシルトランスフェラーゼ(Phosphatidylcholine-sterol acyltransferase)
マトリックスメタロプロテナーゼ-9(Matric metalloprotainese-9)
免疫グロブリンμ鎖C領域(Ig mu chain C region)
炭酸脱水酵素2(Carbonic anhydrase2)
Shroom3タンパク質(Protein Shroom3)
ラクトトランスフェリン(Lactotransferin)
ペリオスチン(Periostin)
ペルオキシレドキシン2(Peroxiredoxin-2)
ヘモグロビンαサブユニット(Hemoglobin subunit alpha)
α2-マクログロブリン(Alpha-2-macrogloblin)
ホスファチジルイノシトール-グリカン特異的ホスホリパーゼD(Phosphatidylinositol-glycan-specific phospholipase D)
アポリポプロテインC-I(Apolipoprotein C-I)
ホスファチジルコリン-ステロール アシルトランスフェラーゼ(Phosphatidylcholine-sterol acyltransferase)
マトリックスメタロプロテナーゼ-9(Matric metalloprotainese-9)
免疫グロブリンμ鎖C領域(Ig mu chain C region)
炭酸脱水酵素2(Carbonic anhydrase2)
Shroom3タンパク質(Protein Shroom3)
ラクトトランスフェリン(Lactotransferin)
ペリオスチン(Periostin)
ペルオキシレドキシン2(Peroxiredoxin-2)
ヘモグロビンαサブユニット(Hemoglobin subunit alpha)
α2-マクログロブリン(Alpha-2-macrogloblin)
ホスファチジルイノシトール-グリカン特異的ホスホリパーゼD(Phosphatidylinositol-glycan-specific phospholipase D)
A群に属する12種類のタンパク質はネフローゼ症候群患者において、蛋白尿とともに血中濃度が増加するタンパク質、すなわち、尿蛋白が増加すると、それに相関して血中濃度が増加するタンパク質である。ネフローゼ極期に血中濃度が上昇するタンパク質でもある。これらのタンパク質は、ネフローゼ症候群発症時及び再発時に上昇する。上昇の程度は寛解時の2倍以上である。なお、寛解時のタンパク質の血中濃度は、健常人の血中濃度でもある。特に、12種類のタンパク質のうち、アポリポプロテインC-I、マトリックスメタロプロテナーゼ-9、炭酸脱水酵素2及びShroom3タンパク質の4種類のタンパク質は、寛解時と比較して発症時及び再燃時において3倍以上の発現が確認されており、蛋白尿との関連が高い。さらに、アポリポプロテインC-Iは、白血球除去療法(LCAP)を行った場合、施行後において、施行前よりも血中濃度が低下し、好ましくは施行後において施行前の0.5倍以下になる。一方、マトリックスメタロプロテナーゼ-9及びラクトトランスフェリンは、白血球除去療法(LCAP)を行った場合、施行後において、施行前よりも血中濃度が増加し、好ましくは施行後において施行前の2倍以上になる。A群に属するタンパク質のうち、他の9種類のタンパク質は白血球除去療法(LCAP)を行った場合でもその前後で大きな変動はなく、施行後において施行前の0.5倍以上であり、2倍以下である。
A群のタンパク質のうち、寛解時に比較して発症時及び再燃時において2倍以上、好ましくは3倍以上の発現するタンパク質は、本発明のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのマーカーとして用いることができる。
A群のタンパク質、特にアポリポプロテインC-I、マトリックスメタロプロテナーゼ-9、炭酸脱水酵素2及びShroom3タンパク質の4種類のタンパク質は、ネフローゼ症候群の原因となる糸球体透過性因子として作用している可能性がある。
B群
ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ(Leukotriene A-4 hydrolase)
GAPR-1(Golgi-associated plant pathogenesis-related protein 1)
トランスケトラーゼ(Transketolase)
α1-アシッドグリコプロテイン2(Alpha-1-acid glycoprotein 2)
プラスチン2(Plastin-2)
α1-アンチトリプシン(Alpha-1-antitrypsin)
プロテインS100-A12(Protein S100-A12)
α1-アシッドグリコプロテイン1(Alpha-1-acid glycoprotein 1)
プロテインS100-A9(Protein S100-A9)
プロテインS100-A8(Protein S100-A8)
DNAプライマーゼ大サブユニット(DNA primase large subunit)
ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ(Leukotriene A-4 hydrolase)
GAPR-1(Golgi-associated plant pathogenesis-related protein 1)
トランスケトラーゼ(Transketolase)
α1-アシッドグリコプロテイン2(Alpha-1-acid glycoprotein 2)
プラスチン2(Plastin-2)
α1-アンチトリプシン(Alpha-1-antitrypsin)
プロテインS100-A12(Protein S100-A12)
α1-アシッドグリコプロテイン1(Alpha-1-acid glycoprotein 1)
プロテインS100-A9(Protein S100-A9)
プロテインS100-A8(Protein S100-A8)
DNAプライマーゼ大サブユニット(DNA primase large subunit)
B群に属する11種類のタンパク質はネフローゼ症候群患者において、蛋白尿とともに血中濃度が減少するタンパク質、すなわち、尿蛋白が増加すると、それに相関して血中濃度が減少するタンパク質である。これらのタンパク質は、ネフローゼ症候群発症時及び再発時に低下する。低下の程度は寛解時の0.5倍以下である。さらに、トランスケトラーゼ、α1-アンチトリプシン、プロテインS100-A12、プロテインS100-A9、プロテインS100-A8及びDNAプライマーゼ大サブユニットの6種類のタンパク質は、白血球除去療法(LCAP)を行った場合、施行後において、施行前よりも血中濃度が上昇し、好ましくは施行後において施行前の2倍以上になる。
B群のタンパク質は、腎臓において抗蛋白尿効果を有する保護的因子として作用している可能性がある。
ネフローゼ症候群の疾患活動性は、上記のA群とB群の23種類のタンパク質のいずれかの濃度を測定することによっても判定することができる。ただし、好ましくは複数のタンパク質を測定する。さらに、A群のタンパク質の少なくとも1つを測定し、かつB群のタンパク質の少なくとも1つを測定することが好ましい。
また、測定は経時的に複数回行うことが好ましい。
また、測定は経時的に複数回行うことが好ましい。
このようにして得られた複数のタンパク質の経時的な測定値をパネル化して用いればよい。ここで、バイオマーカーのパネル化とは、複数のバイオマーカーを組合せて、継続的に測定し、記録したデータに基づいて評価することをいう。
例えば、蛋白尿とともに血中濃度が上昇するA群のタンパク質の濃度が寛解時の濃度よりも高い場合、好ましくは寛解時の濃度の2倍以上、さらに好ましくは寛解時の濃度の3倍以上の場合、ネフローゼ症候群の疾患活動性は高いと判定することができる。
一方、A群のタンパク質の血中濃度が寛解時の濃度と同等の場合、ネフローゼ症候群の疾患活動性は低いと判定することができる。
また、蛋白尿とともに血中濃度が減少するB群のタンパク質の濃度が寛解時の濃度よりも低い場合、好ましくは寛解時の濃度の0.5倍以下の場合、ネフローゼ症候群の疾患活動性は高いと判定することができる。
一方、B群のタンパク質の血中濃度が寛解時の濃度と同等の場合、ネフローゼ症候群の疾患活動性は低いと判定することができる。
また、上記のようにA群のタンパク質とB群のタンパク質を組合せて測定してもよい。この場合、A群のタンパク質の濃度が寛解時の濃度よりも高い場合、好ましくは寛解時の濃度の2倍以上、さらに好ましくは寛解時の濃度の3倍以上であり、かつB群のタンパク質の濃度が寛解時の濃度よりも低い場合、好ましくは寛解時の濃度の0.5倍以下の場合、ネフローゼ症候群の疾患活動性は高いと判定することができる。
一方、A群のタンパク質の濃度が寛解時の濃度と同等であり、かつB群のタンパク質の血中濃度が寛解時の濃度と同等の場合、ネフローゼ症候群の疾患活動性は低いと判定することができる。
12種類のA群のタンパク質のうち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個又は12個の血中濃度を測定すればよく、好ましくは、アポリポプロテインC-I、マトリックスメタロプロテナーゼ-9、炭酸脱水酵素2及びShroom3タンパク質の4種類のタンパク質のうち、1個、2個、3個又は4個の血中濃度を測定すればよい。また、11種類のB群のタンパク質のうち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個の血中濃度を測定すればよい。
測定した濃度を寛解時の濃度と比較してスコア化して判定に用いてもよい。
測定した濃度を寛解時の濃度と比較してスコア化して判定に用いてもよい。
また、経時的に採取した血液試料中の濃度を測定し、先に採取した血液試料中の濃度と比較することにより、ネフローゼ症候群の疾患活動性の経時的変化を判定することもできる。
2.血中タンパク質の測定方法
ネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのタンパク質の血中濃度を測定する方法は限定されず、あらゆるタンパク質測定法を採用し得るが、好適には質量分析法や免疫学的測定法を採用することができる。
ネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのタンパク質の血中濃度を測定する方法は限定されず、あらゆるタンパク質測定法を採用し得るが、好適には質量分析法や免疫学的測定法を採用することができる。
タンパク質を測定する試料としては、血清、血漿等の血液試料を用いればよい。被験体より経時的に試料を採取し、試料中のタンパク質を測定すればよい。
質量分析法による測定に用いる質量分析計は、試料導入部、イオン化室、分析部、検出部、記録部等を含む。イオン化法としては、化学イオン化法、フィールドデソープション(FD)法、高速原子衝突(FAB)法、表面エンハンス型レーザー脱離イオン化(SELDI)法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法等を用いることができる。分析部は、飛行時間型質量分析計(TOF-MS)、飛行時間二次イオン質量分析計(TOF-SIMS)、二重収束質量分析計、四重極型質量分析計(Q-MS)、フーリエ変換イオンサクロトロン共鳴質量分析計(FT-ICRーMS)等が用いられる。好ましくは、表面エンハンス型レーザー脱離イオン化(SELDI)方式を備える質量分析計、具体的にはSELDI-TOF型、SELDI-FT-ICR型、SELDI Q-TOF型、SELDI-QIT-TOF型、SELDI-TOF/TOF型などが利用できる。
測定手法は1種でもよく、また複数種を組み合わせてもよい。従って、質量分析法による測定は、各種クロマトグラフィー分離手法と各種質量分析との組合せ、例えばガスクロマトグラフィー−質量分析(GC-MS)、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC-MS)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR-MS)、キャピラリー電気泳動分析−質量分析(CE-MS)、高速液体クロマトグラフィー−質量分析(HPLC-MS)、誘導結合プラズマ−質量分析(ICP-MS)、熱分解質量分析(Py-MS)、さらにはMS-MSやこれらの組合せを包含する。
免疫学的測定法(イムノアッセイ)は、抗タンパク質モノクローナル抗体を用いた抗原抗体反応を利用した方法であり、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)、イムノドットブロット、イムノクロマトグラフィー、ラテックス等の粒子を利用した凝集法、ウエスタンブロット等が挙げられるがこれらには限定されない。例えば、ELISAは、以下の工程で行うことができる。試料を原液又は緩衝液で段階希釈後、抗体を結合させたマイクロタイタープレートに適当量加え、インキュベーションする。その後洗浄し、捕捉されなかったタンパク質を除く。次に蛍光若しくは化学発光物質、又は酵素を結合させた2次抗体を加えインキュベーションする。検出はそれぞれの基質を加えた後、蛍光若しくは化学発光物質、又は酵素反応による可視光を計測することによって行う。
本発明は、被験体におけるネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するための試薬又はキットを包含する。該キットは、少なくともA群の12種類のタンパク質及びB群の11種類のタンパク質の少なくとも1つのタンパク質に対する抗体を含む、免疫学的方法によりタンパク質を測定するためのキットである。
該キットは、その他、酵素標識2次抗体、プレート、緩衝液、標準物質、説明書等を含む。該キットは、例えば、ELISA用キットである。
3.ネフローゼ症候群の疾患活動性に応じた治療方針の決定
ネフローゼ症候群の疾患活動性に応じて適切な治療方針を決定することができる。
治療方針には、治療の継続や入院による治療を含む。また、ネフローゼ症候群の治療には、ブレドニン等の副腎皮質ステロイド薬が投与され、又はシクロスポリン製剤、エンドキサン、イムラン、プレデイニン等の免疫抑制薬が投与される。あるいは、副腎皮質ステロイド薬と免疫抑制薬が併用される。また、副腎皮質ステロイド薬の静注パルス療法も行われ得る。本発明の方法で疾患活動性を判定し、疾患活動性が高いときに、投薬量を増やし、疾患活動性が低いときに投薬量を減らす等することができる。上記の薬剤は副作用が強いため、長期間、大量に投与することは好ましくない。疾患活動性を指標に適量を投与することにより、副作用も制御することが可能になる。
ネフローゼ症候群の疾患活動性に応じて適切な治療方針を決定することができる。
治療方針には、治療の継続や入院による治療を含む。また、ネフローゼ症候群の治療には、ブレドニン等の副腎皮質ステロイド薬が投与され、又はシクロスポリン製剤、エンドキサン、イムラン、プレデイニン等の免疫抑制薬が投与される。あるいは、副腎皮質ステロイド薬と免疫抑制薬が併用される。また、副腎皮質ステロイド薬の静注パルス療法も行われ得る。本発明の方法で疾患活動性を判定し、疾患活動性が高いときに、投薬量を増やし、疾患活動性が低いときに投薬量を減らす等することができる。上記の薬剤は副作用が強いため、長期間、大量に投与することは好ましくない。疾患活動性を指標に適量を投与することにより、副作用も制御することが可能になる。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
1.方法
1.1 対象患者
ネフローゼ症候群のうち、白血球(リンパ球)由来の蛋白尿透過性因子の存在がこれまで推測されている微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)を対象とした。加えて、白血球除去療法(LCAP)が有用である症例あるいは腎移植直後に再発し、その後のLCAPを含む治療で寛解に至った症例を解析対象とした。
1.1 対象患者
ネフローゼ症候群のうち、白血球(リンパ球)由来の蛋白尿透過性因子の存在がこれまで推測されている微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)を対象とした。加えて、白血球除去療法(LCAP)が有用である症例あるいは腎移植直後に再発し、その後のLCAPを含む治療で寛解に至った症例を解析対象とした。
1.2 解析方法
1.2.1 試料
金沢大学附属病院腎臓内科で診療を行った対象患者より末梢血を採取した。LCAPを施行した患者については、治療開始直前及び直後に静脈血を採取した。また、ネフローゼ症候群の極期、寛解期及び再発時の各時点で採血を行い、経時的な評価を可能とした。検体採取後、遠心を行って血清を分離・採取し、本研究に使用するまで凍結保管した。
1.2.1 試料
金沢大学附属病院腎臓内科で診療を行った対象患者より末梢血を採取した。LCAPを施行した患者については、治療開始直前及び直後に静脈血を採取した。また、ネフローゼ症候群の極期、寛解期及び再発時の各時点で採血を行い、経時的な評価を可能とした。検体採取後、遠心を行って血清を分離・採取し、本研究に使用するまで凍結保管した。
1.2.2 試験方法
(1)SELDI-TOF-MS分析
飛行時間質量分析計(time-of-flight mass spectrometer; TOF-MS)を組み合わせた表面エンハンス型レーザー脱離イオン化法(surface-enhanced laser desorption / ionization; SELDI)法(SELDI-TOF-MS)システムを使用した。本システムはタンパク質解析に適した様々な化学的性質を表面に持たせたプロテインチップIMAC30-Cuに試料(血清)をのせ、飛行時間質量分析計であるプロテインチップリーダーを用いて測定する方法である。この方法により、各症例の血清中における経時的なタンパク質発現の挙動を検討した。
次に、得られた発現タンパク質とネフローゼ症候群の病勢との関連を検討するため、経過中における尿蛋白量と各タンパク質発現量との相関について統計学的に解析した。相関の高いタンパク質を蛋白尿関連因子として絞り込んだ。
(1)SELDI-TOF-MS分析
飛行時間質量分析計(time-of-flight mass spectrometer; TOF-MS)を組み合わせた表面エンハンス型レーザー脱離イオン化法(surface-enhanced laser desorption / ionization; SELDI)法(SELDI-TOF-MS)システムを使用した。本システムはタンパク質解析に適した様々な化学的性質を表面に持たせたプロテインチップIMAC30-Cuに試料(血清)をのせ、飛行時間質量分析計であるプロテインチップリーダーを用いて測定する方法である。この方法により、各症例の血清中における経時的なタンパク質発現の挙動を検討した。
次に、得られた発現タンパク質とネフローゼ症候群の病勢との関連を検討するため、経過中における尿蛋白量と各タンパク質発現量との相関について統計学的に解析した。相関の高いタンパク質を蛋白尿関連因子として絞り込んだ。
(2)LC-MS-MS分析
続いて、抽出したタンパク質を同定するため、LC-MS-MS分析を行った。
前処理後の各サンプルをiTRAQ試薬でラベル化した後、精製・脱塩処理を行った上でLC-MS/MS分析を行った。各サンプルにおけるタンパク質発現の定量には、寛解時におけるタンパク質発現を基準とした相対定量を行った。
タンパク質の同定には、SWISS-Protをデータベースとして、生物種限定(human)で検索を行った。
得られた蛋白情報から蛋白尿関連因子を抽出するため、ネフローゼ極期と再発時に共通した挙動を示すタンパク質に対象を絞り込んだ。また、絞り込んだタンパク質の再現性・妥当性については、SELDI-TOF-MSで得られた分子量情報も参考とした。
続いて、抽出したタンパク質を同定するため、LC-MS-MS分析を行った。
前処理後の各サンプルをiTRAQ試薬でラベル化した後、精製・脱塩処理を行った上でLC-MS/MS分析を行った。各サンプルにおけるタンパク質発現の定量には、寛解時におけるタンパク質発現を基準とした相対定量を行った。
タンパク質の同定には、SWISS-Protをデータベースとして、生物種限定(human)で検索を行った。
得られた蛋白情報から蛋白尿関連因子を抽出するため、ネフローゼ極期と再発時に共通した挙動を示すタンパク質に対象を絞り込んだ。また、絞り込んだタンパク質の再現性・妥当性については、SELDI-TOF-MSで得られた分子量情報も参考とした。
2.結果
以下、LCAPを施行したFSGS患者の血清を用いた解析結果を示す。
(1)SELDI-TOF-MS分析
FSGS患者の血清をプロテインチップIMAC30-Cuで分析した結果、82個のタンパク質発現が確認された。これら82個のタンパク質発現量と尿蛋白量をはじめとする臨床検査所見との相関を統計学的に検討したところ、相関係数0.8以上を呈したタンパク質が数個みられた。ここでは、尿蛋白量との相関係数-0.8以下、すなわち蛋白尿と逆相関するタンパク質もみられた。抽出した各タンパク質の発現と尿蛋白量を含む臨床的指標との相関係数は表1の通りである。
以下、LCAPを施行したFSGS患者の血清を用いた解析結果を示す。
(1)SELDI-TOF-MS分析
FSGS患者の血清をプロテインチップIMAC30-Cuで分析した結果、82個のタンパク質発現が確認された。これら82個のタンパク質発現量と尿蛋白量をはじめとする臨床検査所見との相関を統計学的に検討したところ、相関係数0.8以上を呈したタンパク質が数個みられた。ここでは、尿蛋白量との相関係数-0.8以下、すなわち蛋白尿と逆相関するタンパク質もみられた。抽出した各タンパク質の発現と尿蛋白量を含む臨床的指標との相関係数は表1の通りである。
(2)LC-MS-MS分析
FSGS患者の血清において、発症時及び再発時に上昇し、LCAPで低下するタンパク質、逆に蛋白尿と逆相関するタンパク質もそれぞれ数個特定した。寛解時に比較して発症時及び再燃時において2倍以上の発現が確認されたタンパク質として、12種類のタンパク質が抽出された(図1)。また、寛解時に比較して発症時及び再燃時において3倍以上の発現が確認されたタンパク質として、アポリポプロテインC-I(Apolipoprotein C-I)、マトリックスメタロプロテナーゼ-9(Matric metalloprotainese-9)、炭酸脱水酵素2(Carbonic anhydrase2)及びShroom3タンパク質(Protein Shroom3)の4つが抽出された(図1)。このうち、LCAPで低下するタンパク質としてapolipoprotein C-Iが抽出された(斜線矢印)。特に、アポリポプロテインC-I(Apolipoprotein C-I)(分子量:約9,000)及び炭酸脱水酵素2(Carbonic anhydrase2) (分子量:約29,000)については、SELDI-TOF-MS分析において抽出された蛋白群と分子量(表1)が類似していた。以上4つのタンパク質は、上記ネフローゼ症候群の原因となる糸球体透過性因子又は蛋白尿の極期を診断するマーカー候補となる可能性がある。
FSGS患者の血清において、発症時及び再発時に上昇し、LCAPで低下するタンパク質、逆に蛋白尿と逆相関するタンパク質もそれぞれ数個特定した。寛解時に比較して発症時及び再燃時において2倍以上の発現が確認されたタンパク質として、12種類のタンパク質が抽出された(図1)。また、寛解時に比較して発症時及び再燃時において3倍以上の発現が確認されたタンパク質として、アポリポプロテインC-I(Apolipoprotein C-I)、マトリックスメタロプロテナーゼ-9(Matric metalloprotainese-9)、炭酸脱水酵素2(Carbonic anhydrase2)及びShroom3タンパク質(Protein Shroom3)の4つが抽出された(図1)。このうち、LCAPで低下するタンパク質としてapolipoprotein C-Iが抽出された(斜線矢印)。特に、アポリポプロテインC-I(Apolipoprotein C-I)(分子量:約9,000)及び炭酸脱水酵素2(Carbonic anhydrase2) (分子量:約29,000)については、SELDI-TOF-MS分析において抽出された蛋白群と分子量(表1)が類似していた。以上4つのタンパク質は、上記ネフローゼ症候群の原因となる糸球体透過性因子又は蛋白尿の極期を診断するマーカー候補となる可能性がある。
一方、寛解時に比較して発症時及び再発時において0.5倍以下に低下する因子がロイコトリエンA4ヒドロラーゼ(Leukotriene A-4 hydrolase)はじめ11種類のタンパク質が抽出された(図2)。これらのうち、トランスケトラーゼ(Transketolase)はじめ、LCAPにより相対的発現量が増加するタンパク質が6つ抽出された(図2白矢印)。これらについては、腎臓において抗蛋白尿効果を有する保護的因子としての可能性がある。
3.考察
以上の結果から、1)ネフローゼ症候群の発症・進展に関連する可能性のあるタンパク質が末梢血液中において同定され、蛋白尿・病勢とともに変動すること、2)既知タンパク質のパネル化測定を行うことにより、ネフローゼ症候群の診断及び予後を反映する有用な新規臨床検査診断法が確立できる可能性が示された。
以上の結果から、1)ネフローゼ症候群の発症・進展に関連する可能性のあるタンパク質が末梢血液中において同定され、蛋白尿・病勢とともに変動すること、2)既知タンパク質のパネル化測定を行うことにより、ネフローゼ症候群の診断及び予後を反映する有用な新規臨床検査診断法が確立できる可能性が示された。
本発明の方法により、ネフローゼ症候群の疾患活動性を判定することができ、適切な治療も行うことができる。
Claims (8)
- 被験体におけるネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法であって、以下のA群の12種類のタンパク質及びB群の11種類のタンパク質の少なくとも1つのタンパク質の血中濃度を指標として、ネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法:
A群;
アポリポプロテインC-I、
ホスファチジルコリン-ステロール アシルトランスフェラーゼ、
マトリックスメタロプロテナーゼ-9、
免疫グロブリンμ鎖C領域、
炭酸脱水酵素2、
Shroom3タンパク質、
ラクトトランスフェリン、
ペリオスチン、
ペルオキシレドキシン2、
ヘモグロビンαサブユニット、
α2-マクログロブリン、
ホスファチジルイノシトール-グリカン特異的ホスホリパーゼD、
B群;
ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ、
GAPR-1(Golgi-associated plant pathogenesis-related protein 1)、
トランスケトラーゼ、
α1-アシッドグリコプロテイン2、
プラスチン2、
α1-アンチトリプシン、
プロテインS100-A12、
α1-アシッドグリコプロテイン1、
プロテインS100-A9、
プロテインS100-A8、
DNAプライマーゼ大サブユニット。 - A群のタンパク質のうち、アポリポプロテインC-I、マトリックスメタロプロテナーゼ-9、炭酸脱水酵素2及びShroom3タンパク質の4種類のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質の血中濃度を指標とする、請求項1記載のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
- A群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質、及びB群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質の血中濃度を指標とする、請求項1又は2に記載のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
- A群のタンパク質の血中濃度が健常人の血中濃度よりも高い場合、又はB群のタンパク質の血中濃度が健常人の血中濃度よりも低い場合に、被験体のネフローゼ症候群の疾患活動性が高いと判定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
- 被験体のネフローゼ症候群の疾患活動性により蛋白尿の極期を判定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定する方法。
- 以下のA群の12種類のタンパク質及びB群の11種類のタンパク質の少なくとも1つのタンパク質に対する抗体を含む、該タンパク質の血中濃度を測定し、血中濃度を指標に、被験体におけるネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのキット:
A群;
アポリポプロテインC-I、
ホスファチジルコリン-ステロール アシルトランスフェラーゼ、
マトリックスメタロプロテナーゼ-9、
免疫グロブリンμ鎖C領域、
炭酸脱水酵素2、
Shroom3タンパク質、
ラクトトランスフェリン、
ペリオスチン、
ペルオキシレドキシン2、
ヘモグロビンαサブユニット、
α2-マクログロブリン、
ホスファチジルイノシトール-グリカン特異的ホスホリパーゼD、
B群;
ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ、
GAPR-1(Golgi-associated plant pathogenesis-related protein 1)、
トランスケトラーゼ、
α1-アシッドグリコプロテイン2、
プラスチン2、
α1-アンチトリプシン、
プロテインS100-A12、
α1-アシッドグリコプロテイン1、
プロテインS100-A9、
プロテインS100-A8、
DNAプライマーゼ大サブユニット。 - A群のタンパク質のうち、アポリポプロテインC-I、マトリックスメタロプロテナーゼ-9、炭酸脱水酵素2及びShroom3タンパク質の4種類のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質に対する抗体を含む、請求項6記載のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのキット。
- A群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質に対する抗体、及びB群のタンパク質の少なくとも1種類のタンパク質に対する抗体を含む、請求項6又は7に記載のネフローゼ症候群の疾患活動性を判定するためのキット。
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2016
- 2016-12-08 JP JP2016238588A patent/JP2018096710A/ja active Pending
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