JP2018072168A - 化学物質濃縮器および化学物質検出装置 - Google Patents

化学物質濃縮器および化学物質検出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本開示は、吸着した化学物質を、効率よく脱離することができる化学物質濃縮器および化学物質検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係る化学物質濃縮器は、化学物質を含む気体試料が流れる流路と、流路の第一の内壁に設けられる第一の電極と、第一の電極と離間して第一の内壁に設けられる第二の電極と、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極との間の第一の内壁のそれぞれに接触して設けられる導電層と、導電層上に設けられる吸着材と、導電層の第一の部分を第一の電極との間で挟む第三の電極と、導電層の第二の部分を第二の電極との間で挟む第四の電極とを備える。
【選択図】図2

Description

本開示は、気体中の化学物質を分析および検出する技術に関する。
気体中の化学物質を分析する技術は、例えば、特許文献1と特許文献2に開示されている。特許文献1は、電力機器内部ガス中の有機物質を分析する装置を開示している。この装置では、トラップの温度を一定に保持しながら配管にガスを通過させ、ガス中の有機物質を吸着材に吸着させた後、トラップを加熱して、吸着した有機物質を検出器に導入する。また特許文献2は、分析物を吸着する能力と濃縮された分析物を脱着する能力を持つ吸着材物質を用いた、極微量の分析物の検出装置を開示している。
特開2001−296218号公報 特表2002−518668号公報
上述したような従来の構成によると、吸着した化学物質を検出器へ導入する際、外部ヒーターのような外付けの加熱手段を用いる必要がある。もし加熱手段を用いずに化学物質を脱離させる場合には、脱離が不十分となる場合がある。
しかしながら、外部ヒーターを用いて吸着材を加熱する際、外部ヒーターが発する熱の一部は、周囲に拡散してしまい吸着材に伝わらない。つまり、外部ヒーターを用いる従来の構成は、外部ヒーターの熱損失が大きいため、効率よく吸着材を加熱することができない。吸着材の加熱効率は、吸着した物質の脱離のしやすさに影響する。
上記の課題に鑑み、本開示は、吸着した化学物質を、効率よく脱離することができる化学物質濃縮器および化学物質検出装置を提供することを目的とする。
本開示に係る化学物質濃縮器は、化学物質を含む気体試料が流れる流路と、流路の第一の内壁に設けられる第一の電極と、第一の電極と離間して第一の内壁に設けられる第二の電極と、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極との間の第一の内壁のそれぞれに接触して設けられる導電層と、導電層上に設けられる吸着材と、導電層の第一の部分を第一の電極との間で挟む第三の電極と、導電層の第二の部分を第二の電極との間で挟む第四の電極とを備える。
本開示に係る化学物質濃縮器は、吸着した化学物質を効率よく脱離することができる。
本実施の形態における化学物質濃縮器を模式的に示す斜視図 本実施の形態における化学物質濃縮器を模式的に示す断面図 本実施の形態における化学物質濃縮器の別の例を示す断面図 本実施の形態における化学物質濃縮器の別の例を示す断面図 本実施の形態における吸着材の配置例を示す上面図 本実施の形態における吸着材の別の配置例を示す上面図 本実施の形態における吸着材の別の配置例を示す上面図 本実施の形態における化学物質検出装置を模式的に示す上面斜視図
以下では、本開示の実施の形態に係る化学物質濃縮器および化学物質検出装置について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構造については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化している。
(実施の形態)
本開示の一態様にかかる化学物質濃縮器および化学物質検出装置について、図1および図2を参照して説明する。
図1は、化学物質濃縮器20を模式的に示す上面斜視図である。図2は、図1における化学物質濃縮器20の2−2断面を模式的に示す断面図である。
化学物質濃縮器20は、流入される気体試料に含まれる化学物質の濃縮を行う。化学物質濃縮器20で濃縮された化学物質は、例えば、化学物質濃縮器20の下流に設けられる検出部21で検出される。
気体試料としては、例えば、ヒトや動物の呼気、車や工場の排気ガス等がある。化学物質としては、例えば、ケトン類、アミン類、アルコール類、芳香族炭化水素類、アルデヒド類、エステル類、有機酸、硫化水素、メチルメルカプタン、ジスルフィドなどの揮発性有機化合物がある。
化学物質濃縮器20は、化学物質を含む気体試料が流れる流路11と、流路11の第一の内壁111Aに設けられる第一の電極12と、第一の電極12と離間して第一の内壁111Aに設けられる第二の電極13と、第一の電極12、第二の電極13、および第一の電極12と第二の電極13との間の第一の内壁111Aのそれぞれに接触して設けられる導電層17と、導電層17上に設けられる吸着材14と、導電層17の一部分を第一の電極12との間で挟む第三の電極18と、導電層17の別の一部分を第二の電極13との間で挟む第四の電極19と、吸着材14を冷却する冷却部15とを有する。
流路11は、例えば、溝が設けられた下基板111と上基板112とで形成される。下基板111および上基板112は、例えば、樹脂や金属等からなる基板である。流路11に面する第一の内壁111Aは、下基板111に形成された溝の底面である。第2の内壁111Bは溝の一方の側面である。第3の内壁111Cは溝の他方の側面である。第4の内壁112Aは溝の上端を塞ぐ上基板112の下面である。なお、流路11は、流路11の延伸方向に沿った第一の内壁111A、第二の内壁111B、第三の内壁111C、第四の内壁112Aで囲まれた四角柱形状であるが、さらなる内壁面を加えた多角柱形状としてもよい。また、円柱形状の流路でもよい。円柱形状の流路の場合、内壁面は、一連の内側曲面である。
第一の電極12は、流路11内の第一の内壁111Aに設けられる。第一の電極12の材料は、例えば、金、銅、白金、カーボン等が用いられる。
第二の電極13は、流路11内の第一の内壁111Aに設けられる。第二の電極13の材料は、例えば、金、銅、白金、カーボン等が用いられる。第一の電極12と第二の電極13とは、同じ材料としてもよい。
第一の電極12と第二の電極13とは、流路11内の同一面上に設けられる。第二の電極13は、第一の電極12は、直接接触しないように離間して配置される。また、第一の電極12と第二の電極13とは、気体試料の流れる方向に沿って並ぶように配置されている。
なお、第一の電極12および第二の電極13は、気体試料の流れに対して垂直な方向に並ぶように配置されていてもよい。
導電層17は、第一の電極12、第二の電極13および第一の電極12と第二の電極13の間の第一の内壁111A上に形成される。導電層17は、第一の電極12、第二の電極13および第一の電極12と第二の電極13の間の第一の内壁111Aのそれぞれと接触している。導電層17は、第一の電極12と第二の電極13との間の導電経路となる。
導電層17は、例えば、SnO2,ZnO,In23,In2-xSnx3(例えば、0.1≦x≦0.2),NiO,CuO,TiO2,SiO2などの金属酸化物である。また導電層17は、Al,Ag,Au,Pd,Ptなどの金属、カーボン、または、シリコンなどの材料を用いてもよい。導電層17は、例えば、吸着材14のシード層としての役割を有する。つまり、吸着材14は、導電層17上に形成される。
導電層17上には、第三の電極18と第四の電極19がさらに形成されている。
第三の電極18は、導電層17を介して、第一の電極12と対向する位置に設けられている。つまり、導電層17の一部は、第一の電極12と第三の電極18とに挟まれている。図2において、第三の電極18は、導電層17の第一の端部17Aの上面および側面を覆っている。第三の電極18は、第一の電極12と接触している。このような構成とすることにより、導電層17の端部17Aが、第一の電極12から剥離することを抑制することができる。そのため、導電層17と第一の電極12との電気的な接続を確実に行うことができる。
第四の電極19は、導電層17を介して、第二の電極13と対向する位置に設けられている。つまり、導電層17の一部は、第二の電極13と第四の電極19とに挟まれている。図2において、第四の電極19は、導電層17の第一の端部17Bの上面および側面を覆っている。第四の電極19は、第二の電極13と接触している。このような構成とすることにより、導電層17の端部17Bが、第二の電極13から剥離することを抑制することができる。そのため、導電層17と第二の電極13との電気的な接続を確実に行うことができる。
吸着材14は、気体試料に含まれる化学物質を吸着する。
吸着材14は、第一の電極12、第二の電極13および第一の内壁111Aに形成された導電層17に設けられる。吸着材14は、導電層17を介して第一の電極12および第二の電極13に接続されている。
吸着材14は、導電性を有するナノワイヤ141の集合体である。つまり、吸着材14は、導電性を有する複数のナノワイヤ141の群として構成される。ナノワイヤ141は、例えば、導電性の金属酸化物で形成される。ナノワイヤの間には、空隙143が設けられている。気体試料に含まれる化学物質は、空隙143を通過する間に、ナノワイヤ141に吸着する。
導電性を有するナノワイヤ141としては、例えば、SnO2,ZnO,In23,In2-xSnx3(例えば、0.1≦x≦0.2),NiO,CuO,TiO2,SiO2などの金属酸化物、Al,Ag,Au,Pd,Ptなどの金属、カーボン、または、シリコンなどの材料を用いればよい。カーボンからなるナノワイヤとしては、例えばカーボンナノチューブを用いてもよい。すなわち、吸着材14は、導電性があり、かつ、ジュール効果による自己加熱が効果的に生じる程度の抵抗値を有している材料であればよい。
また、ナノワイヤ141は、表面が導電性の金属酸化物で覆われた樹脂等からなるワイヤでもよい。このように、導電性の金属酸化物で被覆することにより、吸着材14は導電性を有する。
なお、吸着材14は、導電層17と同じ材料であることが好ましい。吸着材14と導電層17とで同じ材料を用いることにより、吸着材14と導電層17との接着強度を高めることができる。これにより、吸着材14が、導電層17から剥離することを抑制することができる。
第一の電極12と第二の電極13を用いて吸着材14に電流を流すことにより、吸着材14はジュール熱を発する。吸着材14は、ジュール熱により自己加熱を生じる。吸着材14に吸着した化学物質は、吸着材14の発する熱により、吸着材14より脱離する。導電性の吸着材14は、化学物質を吸着する役割と同時に、加熱手段としての役割を有している。
また、吸着材14ではなく、導電層17がジュール熱を発生させる構成としてもよい。このとき、導電層17が発したジュール熱が、吸着材14に伝わり、吸着材14は加熱される。吸着材14に吸着した化学物質は、ジュール熱により、吸着材14より脱離する。なお、吸着材14および導電層17の両方が、ジュール熱を発生させる構成としてもよい。
吸着材14が加熱手段としての役割を有することにより、化学物質濃縮器20は、消費電力の大きい外部ヒーターを用いずに、吸着された化学物質を脱離させることができる。
吸着材14および導電層17の少なくとも一方が発する熱は、直接、吸着材14に吸着した化学物質の脱離に利用される。つまり、化学物質濃縮器20は、外部ヒーターを用いるデバイスに比べて、熱効率が良い。
一般的に、外部ヒーターを用いる場合、外部ヒーターが発する熱は、周囲に拡散するため、効率よく吸着材14に伝わらない。また、熱効率が悪いと、吸着材14を加熱するために余分な電力が必要となる。そのため、デバイスの消費電力が大きくなるという課題がある。
本実施の形態にかかる化学物質濃縮器20は、吸着材14および導電層17の少なくとも一方が発する熱を化学物質の脱離に用いるため、吸着材14の加熱に対する熱損失が小さい。したがって、化学物質濃縮器20は、効率よく化学物質を濃縮することができる。
外部ヒーターを用いる場合、数十〜数百mW程度の電力が必要である。また、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術において、例えばPt線抵抗加熱ヒーターを用いる場合、数mW以上の消費電力が必要になる。一方、本実施の形態にかかる化学物質濃縮器20では、例えば、10μW以下の電力で、化学物質を脱離させることができる。
したがって、化学物質濃縮器20は、低消費電力で化学物質の濃縮を行うことができる。さらに、外部ヒーターを用いる必要がないため、化学物質濃縮器20を小型化することができる。
第一の電極12および第二の電極13には、吸着材14および導電層17に電流を供給する電流供給部22が接続されている。また、吸着材14に流れる電流を制御する制御部23が、電流供給部22に接続されている。
冷却部15は、吸着材14を冷却する。吸着材14は、冷却されることにより、化学物質をより効率よく吸着できる。
冷却部15は、下基板111の第一の内壁111Aに背向する面に設けられる。冷却部15は、例えば、ペルチェ素子等である。このとき、冷却部15に接続される制御部23は、吸着材14の冷却を制御する。
なお、冷却部15は、吸着材14を冷却することができれば、どこに設けられていてもよい。例えば、冷却部15は、流路11の内部に設けられていてもよい。また、冷却部15は、第一の電極12または第二の電極13上に設けてもよい。各電極は、熱伝導の良い金属であるため効率良く吸着材14を冷却することができる。冷却部15を第一の電極12上に設ける場合は、冷却部15と第一の電極12の間に絶縁層を設けてもよい。同様に、冷却部15を第二の電極13上に設ける場合は、冷却部15と第二の電極13の間に絶縁層を設けてもよい。
また、吸着材14に対して化学物質が十分吸着する場合、冷却部15を設けなくてもよい。
本実施の形態において吸着材14としてナノワイヤ141を用いた理由は、吸着材14の比表面積が大きく、高い濃縮(吸着)効率を得られるためである。また、ナノワイヤ141は、熱容量が非常に小さいため、低消費電力で大きな温度変化が生じるからである。
なお、吸着材14は、ナノワイヤ141に限られない。吸着材14は、図3の化学物質濃縮器20Aに示すように、気体試料が通過できる空隙143を有する多孔質体142であってもよい。多孔質体142は、導電性を有する金属酸化物などといったナノワイヤ141と同じ材料で構成される。なお、多孔質体142は、多数の空隙143がランダムに配置された構造である。したがって、第一の電極12と第二の電極13の間の導電経路は、第一の内壁111Aと接触する部分で形成される導電経路の他にも多くの導電経路を有する。多孔質体142は、多くの導電経路を有するので、加熱時における多孔質体142の場所による温度ばらつきが小さい。
また、多孔質体142は、カーボンや樹脂で形成した多孔質の構造体の表面を導電性の金属酸化物等で被覆したものでもよい。化学物質が吸着する多孔質体の表面を加熱する構造となるため、効率よく化学物質を脱離させることができる。また、導電性の材料を被覆した多孔質体142とすることにより、多孔質体142が有する導電性の材料の体積は、
小さくなる。これにより、多孔質体142は、ジュール効果による自己加熱で消費する電力を抑えることができる。
次に、化学物質濃縮器20の製造方法について説明する。
はじめに、Si基板にエッチング等により溝を形成して、下基板111を作成する。その後、Si基板上に設けた溝の底面である流路11に面する第一の内壁111Aに、第一の電極12および第二の電極13を形成する。このとき、第一の電極12は、第二の電極13と離間した位置に形成される。第一の電極12および第二の電極13は、マスクを用いた蒸着あるいはスパッタリングにより形成される。第一の電極12および第二の電極13は、Auである。
次に、マスクを用いた蒸着あるいはスパッタリングにより第一の電極12、第一の内壁111A、第二の電極13のそれぞれに接触したZnO膜のパターンを形成する。ここで、ZnO膜は、導電層17である。
その後、マスクを用いた蒸着あるいはスパッタリングにより第一の電極12および第二の電極13と対向する位置に第三の電極18および第四の電極19をそれぞれ形成する。第三の電極18および第四の電極19は、Auである。
上記工程により、Si基板に設けた溝部の底面において、ZnO膜の一部がAu電極で上下を挟まれた構造を得ることができる。
続いて、ZnO膜をシード層とし、液相成長あるいは気相成長によりナノワイヤを形成する。ナノワイヤの材料は、シード層の材料と同じZnOである。ナノワイヤは、ZnO膜上に複数形成され、集合体を形成する。吸着材14は、例えば、ナノワイヤの集合体である。ナノワイヤは、電極で挟まれていないシード層上にのみ形成される。
最後に、上基板112としてSi基板をナノワイヤの集合体の上部に空隙が形成されるように下基板111に貼り合わせる。流路11は上基板112と下基板111の間に形成される。
さらに、下基板111の下側に冷却部15を設ける。冷却部15は、例えば、ペルチェ素子である。冷却部15は、吸着材14の直下に設けられることが好ましい。
以上の方法により、本実施の形態における化学物質濃縮器20を得ることができる。
なお、導電層17は、吸着材14とは別途形成されるシード層に限られない。例えば、吸着材14の成長にシード層を必要としない場合、導電層17は、例えば、吸着材14の形成過程で第一の内壁111Aに形成される吸着材の層の一部である。具体的には、吸着材14を形成するナノワイヤ141は、第一の内壁111A側の根元の部分で隣接するナノワイヤ141と接合している。このように、ナノワイヤ141同士の接合により形成される層が、導電層17を構成してもよい。導電層17は、第一の電極12と第二の電極13との間の第一の内壁111Aに沿って形成されている。
このように、吸着材14と導電層17は、一体として形成される構成の部分であっても、別体として形成される構成であってもよい。化学物質濃縮器20において、電流は、吸着材14および導電層17を介して、第一の電極12と第二の電極13との間に流れる。両方の場合において、導電層17は、第一の電極12および第二の電極13の上面に形成されている。また、導電層17の一部17Aは、第一の電極12と第三の電極18とに挟
まれている。導電層17の一部17Bは、第二の電極13と第四の電極19とに挟まれている。
図4は、化学物質濃縮器20の別の例を模式的に示す断面図である。
化学物質濃縮器20Bは、流路11の第一の内壁111Aと導電層17との間に、断熱層16を有する。断熱層16は、吸着材14および導電層17で生じる熱が下基板111を介して外部に逃げることを抑制することができる。断熱層16は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの樹脂材料が用いられる。また、断熱層16は、例えば、ZrO2、Al2TiO5などの金属酸化物材料、ガラス材料、または、シリカエアロゲル、発泡性ポリマーなどの多孔質材料が用いられてもよい。
さらに、化学物質濃縮器20は、吸着材14と上基板112との間に隙間を有する。吸着材14と上基板112との間に隙間を設けることにより、吸着材14で生じる熱が上基板112に逃げることを抑制することができる。
なお、吸着材14は、上基板112と接触していてもよい。このとき、吸着材14と接触する上基板112の表面の層に断熱層が形成されてもよい。これにより、吸着材14と上基板112とが接触していても、吸着材14で生じる熱が上基板112に逃げることを抑制することができる。
図5は、吸着材14の配置例を模式的に示す図である。
化学物質濃縮器20Cは、複数の流路11a、11b、11cを有する。複数の流路11a、11b、11cのそれぞれの内部に吸着材14a、14b、14cが配置されている。吸着材14aには、第一の電極12aおよび第二の電極13aが接続されている。吸着材14bには、第一の電極12bおよび第二の電極13bが接続されている。吸着材14cには、第一の電極12cおよび第二の電極13cが接続されている。
図6は、吸着材14の別の配置例を模式的に示す図である。
化学物質濃縮器20Dは、複数の吸着材14d、14e、14f、14gを有する。複数の吸着材14d〜14gは、それぞれ第一の電極12d〜12gおよび第二の電極13d〜13gに接続されている。
つまり、吸着材14d〜14gは、一つの流路11内において互いに分かれて配置されている。吸着材14d〜14gは、気体試料の流れる方向に沿って並んで配置されている。
図7は、吸着材14のさらに別の配置例を模式的に示す図である。
化学物質濃縮器20Eは、複数の吸着材14h、14i、14jを有する。複数の吸着材14h〜14jは、それぞれ第一の電極12h〜12jおよび第二の電極13h〜13jに接続されている。
つまり、吸着材14h〜14jは、一つの流路11内において互いに分かれて配置されている。吸着材14h〜14jは、気体試料の流れる方向に対して垂直な方向に並んで配置されている。
吸着材14a〜14jに接続される第一の電極12a〜12jおよび第二の電極13a〜13jは、それぞれ、電流供給部22に電気的に接続されている。電流供給部22は、吸着材14a〜14jのそれぞれに接続された第一の電極12a〜12jおよび前記第二の電極13a〜13jに対して選択的に電流を供給することができる。
ここで、図6に示すように、複数の吸着材14d〜14gが互いに分かれて一つの流路11内に設けられている場合には、複数の吸着材14d〜14gが、互いに異なる材料または互いに異なる表面の修飾状態であってもよい。これにより、それぞれの吸着材14d〜14gは、異なる化学物質を吸着することができる。したがって、化学物質濃縮器20Dは、気体試料に含まれる化学物質を選択的に、吸着し濃縮することができる。また、図7に示すように、複数の吸着材14h〜14jが互いに分かれて一つの流路11内に設けられている場合には、複数の吸着材14h〜14jが、互いに異なる材料または互いに異なる表面の修飾状態であってもよい。これにより、それぞれの吸着材14h〜14jは、異なる化学物質を吸着することができる。したがって、化学物質濃縮器20Eは、気体試料に含まれる化学物質を選択的に、吸着し濃縮することができる。
例えば、化学物質は、同じ極性を有するものに対して吸着しやすいという特徴を有する。したがって、高極性分子の化学物質は、高極性の表面を有する吸着材14に吸着しやすい。また、無極性分子の化学物質は、無極性の表面を有する吸着材14に吸着しやすい。このように、吸着材14は、材料によって、化学物質の吸着し易さが異なる。
材料や表面修飾等により吸着材14の性質を変えることで、化学物質濃縮器20Cは、複数の化学物質を複数の吸着材14a〜14cに分けて選択的に吸着させることができる。化学物質濃縮器20Dは、複数の化学物質を複数の吸着材14d〜14gに分けて選択的に吸着させることができる。化学物質濃縮器20Eは、複数の化学物質を複数の吸着材14h〜14jに分けて選択的に吸着させることができる。
複数の吸着材14a〜14cが互いに分かれて設けられている化学物質濃縮器20Cでは、吸着材14a〜14cに電流を供給する電流供給部22は、各吸着材14a〜14cに設けられた第一の電極12a〜12cおよび第二の電極13a〜13cに対して、選択的に電流を供給してもよい。同様に、化学物質濃縮器20Dでは、吸着材14d〜14gに電流を供給する電流供給部22は、各吸着材14d〜14gに設けられた第一の電極12d〜12gおよび第二の電極13d〜13gに対して、選択的に電流を供給してもよい。同様に、化学物質濃縮器20Eでは、吸着材14h〜14jに電流を供給する電流供給部22は、各吸着材14h〜14jに設けられた第一の電極12h〜12jおよび第二の電極13h〜13jに対して、選択的に電流を供給してもよい。
これにより、各吸着材14a〜14c、14d〜14g、14h〜14jに吸着した化学物質を脱離するタイミングを、吸着材毎に制御することができる。したがって、化学物質濃縮器20C〜Eは、検出対象の化学物質のみを吸着材14a〜14c、14d〜14g、14h〜14jから脱離させ、検出部21に送ることが可能になる。
また、吸着材14は、化学物質の吸着により電気抵抗が変化する。したがって、この電気抵抗の変化を検出することで化学物質を特定することができる。そして、吸着材14に吸着された化学物質が特定される場合には、後段の検出部21として精密な分析装置を用いる必要がない。したがって、より一層の装置の小型化を実現することができる。
なお、複数の吸着材14a〜14c、14d〜14g、14h〜14jに接続される第一の電極12a〜12c、12d〜12g、12h〜12jおよび第二の電極13a〜13c、13d〜13g、13h〜13jは、別々の電極でなくてもよい。例えば、1つの
第一の電極12および1つの第二の電極13に、複数の吸着材14a〜14c、14d〜14g、14h〜14jを分けて接続するように配置してもよい。
図8は、本実施の形態における化学物質検出装置40を模式的に示す上面斜視図である。気体試料は矢印の方向に流れる。
化学物質検出装置40は、化学物質濃縮器20の後段、つまり下流側に検出部21を備える。検出部21は、流路11内に検出素子211を備える。
検出素子211は、例えば、半導体式センサ、電気化学式センサ、表面弾性波素子または電界効果トランジスタを用いたバイオセンサ、または、光学センサなどを用いることができる。
化学物質検出装置40は、化学物質濃縮器20で気体試料中の化学物質を濃縮し、この濃縮された化学物質を検出部21で検出する。したがって、化学物質検出装置40は、感度良く化学物質を検出することができる。
また、本実施の形態における化学物質濃縮器20を用いて、化学物質を検出することもできる。
本実施の形態の化学物質濃縮器20において、電流供給部22は、吸着材14および導電層17の少なくとも一方に電流を流す。そのため、第一の電極12と第二の電極13との間の吸着材14および導電層17の電気抵抗をモニタリングすることが可能である。吸着材14は、化学物質が吸着することによって電気抵抗が変化すると考えられる。例えば、吸着材14が金属酸化物によって形成されている場合、その表面に存在する酸素の量が化学物質の吸着に応じて変化する。これにより、吸着材14の電気抵抗が変化する。あるいは、吸着材14がシリコンなどの金属酸化物以外の材料によって形成されている場合であっても、吸着する化学物質が極性を有している場合、化学物質の吸着量に応じて電気抵抗が変化する。したがって、本実施の形態における化学物質濃縮器20は、吸着材14に吸着した化学物質を検出することができる。
また、化学物質濃縮器20は、吸着材14に吸着した化学物質の量を、吸着材14および導電層17の電気抵抗値の変化に基づいて推定する吸着量推定部を備えていてもよい。例えば、図1の電流供給部22は、吸着材14および導電層17に流れる電流値を計測する計測部としての機能を有してもよい。また、制御部23は、吸着量推定部として動作してもよい。
このとき、制御部23は、予め学習した化学物質の吸着量と吸着材14および導電層17の電気抵抗の変化との関係を記憶している。そして、吸着材14の電気抵抗の変化は、計測部で計測した吸着材14に流れる電流値から求められる。制御部23は、電気抵抗の変化に基づいて、予め記憶している化学物質の吸着量と電気抵抗の変化との関係を参照して、吸着材14に吸着された化学物質の量を推定する。吸着量推定部を設けることにより、例えば、吸着した化学物質を脱離させるタイミングをより的確に制御することができる。
以上、一つまたは複数の態様に係る化学物質濃縮器および化学物質検出装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
本開示における化学物質濃縮器は、例えば、身の回りの揮発性有機化合物を検出可能な超小型化学センサを実現するのに有用である。
11 流路
111 下基板
111A 第一の内壁
112 上基板
12、12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12h、12i 第一の電極
13、13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13h、13i 第二の電極
14、14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g、14h、14i 吸着材
141 ナノワイヤ
142 多孔質体
143 空隙
15 冷却部
16 断熱層
17 導電層
18 第三の電極
19 第四の電極
20、20A、20B、20C、20D、20E 化学物質濃縮器
21 検出部
211 検出素子
22 電流供給部
23 制御部
40 化学物質検出装置

Claims (14)

  1. 化学物質を含む気体試料が流れる流路と、
    前記流路の第一の内壁に設けられる第一の電極と、
    前記第一の電極と離間して前記第一の内壁に設けられる第二の電極と、
    前記第一の電極、前記第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極との間の前記第一の内壁のそれぞれに接触して設けられる導電層と、
    前記導電層上に設けられる吸着材と、
    前記導電層の第一の部分を前記第一の電極との間で挟む第三の電極と、
    前記導電層の第二の部分を前記第二の電極との間で挟む第四の電極と、を備える、
    化学物質濃縮器。
  2. 前記吸着材は導電性のナノワイヤである、
    請求項1に記載の化学物質濃縮器。
  3. 前記ナノワイヤおよび前記導電層は、同じ金属酸化物を含む、
    請求項1に記載の化学物質濃縮器。
  4. 前記ナノワイヤは、金属酸化物で覆われたカーボンナノチューブである、
    請求項2に記載の化学物質濃縮器。
  5. 前記吸着材は導電性の多孔質体である、
    請求項1に記載の化学物質濃縮器。
  6. 前記第三の電極は、前記導電層の第一の端部の上面および側面を覆うとともに、前記第一の電極と前記第三の電極は接触し、
    前記第四の電極は、前記導電層の第二の端部の上面および側面を覆うとともに、前記第二の電極と前記第四の電極は接触している、
    請求項1に記載の化学物質濃縮器。
  7. 前記吸着材を冷却する冷却部と、をさらに備える、
    請求項1に記載の化学物質濃縮器。
  8. 前記第一の内壁と前記導電層との間に設けられる断熱層と、をさらに備える、
    請求項1に記載の化学物質濃縮器。
  9. 前記流路は、複数の内壁により形成され、前記第一の内壁は前記複数の内壁のうちの一つである、
    請求項1に記載の化学物質濃縮器。
  10. 前記吸着材は、前記流路内に複数分かれて配置されている複数の吸着材であり、
    前記複数の吸着材は、複数の導電層のそれぞれに形成されている、
    請求項1に記載の化学物質濃縮器。
  11. 前記複数の吸着材は、材料または表面の修飾状態が、互いに異なる、
    請求項10に記載の化学物質濃縮器。
  12. 前記第一の電極および前記第二の電極は、前記複数の吸着材および前記複数の導電層のそれぞれに設けられており、
    前記複数の吸着材およびに前記複数の導電層に設けられる前記第一の電極および前記第
    二の電極のそれぞれに対して選択的に電流を供給する電流供給部をさらに備える、
    請求項10または11に記載の化学物質濃縮器。
  13. 前記吸着材および前記導電層に流れる電流値を計測する計測部と、
    前記電流値から前記吸着材および前記導電層の電気抵抗値の変化を求めることにより、前記吸着材に吸着された前記化学物質の吸着量を推定する吸着量推定部と、をさらに備える、
    請求項1に記載の化学物質濃縮器。
  14. 請求項1に記載の化学物質濃縮器と、
    前記化学物質濃縮器によって濃縮された前記化学物質を検出する検出部と、を備える、
    化学物質検出装置。
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