添付図面を参照して、本発明による超音波水密検査システムおよび超音波水密検査方法を実施するための形態を以下に説明する。
(実施形態)
まず、図1Aおよび図1Bを参照して、超音波水密検査システム2および超音波水密検査方法で水密検査を行う対象の具体例について説明する。図1Aは、検査対象1の一構成例を示す俯瞰図である。図1Bは、検査対象1の一構成例を示す断面図である。なお、図1Bは、図1Aに示した断面線A−A’による断面図である。
図1Aおよび図1Bに示された検査対象1は、自動車を構成するトランクリッドである。ただし、これはあくまでも一例であって、本実施形態による超音波水密検査システム2および超音波水密検査方法で水密検査を行う対象は、別の構造物であっても良い。なお、本実施形態による超音波水密検査システム2および超音波水密検査方法の原理上、検査対象1はその表面に開口部を有する。
検査対象1は、アウターパネル11と、インナーパネル13と、接着剤12とを備えている。ここで、アウターパネル11は、自動車の外板の一部としても用いられる部材である。アウターパネル11を構成する素材に特に制約はないが、例えば、SPCC(冷間圧延鋼板)、アルミニウムなどの鋼板や、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂であっても良い。インナーパネル13は、自動車の室内側の内板の一部としても、強度部材としても用いられる部材である。インナーパネル13を構成する素材は、高剛性および高強度を有することが好ましく、例えば、SPCCまたはアルミニウムなどの鋼板や、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)などが好適である。ただし、アウターパネル11およびインナーパネル13の素材は、上記の例に限定されない。
アウターパネル11およびインナーパネル13は、接着剤12によって貼り付けられている。接着剤12は、アウターパネル11およびインナーパネル13の周辺部分に、かつ、環状に配置されている。図1Aに示した接着範囲121は、アウターパネル11およびインナーパネル13のうち、接着剤12が配置されている範囲を示している。
言い換えれば、アウターパネル11と、インナーパネル13とは、接着剤12を介して積層されている。ただし、アウターパネル11と、インナーパネル13との間には空間14があり、この空間14の周辺には接着剤12が環状に配置されている。
インナーパネル13は、多くの凹凸を含む複雑な形状を有している。これは、デザインの都合上、比較的シンプルな形状を有するアウターパネル11に代わって、トランクリッドとしての強度をインナーパネル13が補うためである。インナーパネル13は、さらに、開口部131A〜131Jを備えている。これらの開口部131A〜131Jは、例えば、トランクリッドに取り付けられる照明器具や、カメラ装置や、これらの電子部品を自動車の本体側に電気的に接続するケーブルなどを配置するために設けられている。これらの電子部品や、ケーブルなどは、水密検査を行う前に検査対象1に接続されていることが好ましいが、図1Aおよび図1Bでは図示を省略している。なお、開口部131A〜131Jを区別しない場合は、これらをまとめて開口部131と呼ぶ。
本実施形態による超音波水密検査システム2および超音波水密検査方法では、上記のように複雑な形状を有し、かつ、複数の開口部131を有する検査対象1の水密性を検査するために、超音波を用いる。詳細については後述する(図3A、図3B参照)が、検査対象1に対して相補的な形状を有する遮蔽冶具20を用意する。遮蔽冶具20を検査対象1に重ねることで、全ての開口部131を外部から遮蔽する。この状態において、一部または全ての開口部131に向けて超音波を送出する。送出された超音波を、検査対象の外部から検出する。このとき、検出された超音波の強度は、送出時の強度よりも減衰している。この減衰の度合いは、検査対象1が水密性の有無または度合いに応じて変化する。本実施形態では、超音波の検出結果を解析することで、検査対象1の水密性を判定する。
次に、図2を参照して、本実施形態による超音波水密検査システム2について説明する。図2は、一実施形態による超音波水密検査システム2の全体的な一構成例を示すブロック図である。
図2に示した超音波水密検査システム2の構成要素について説明する。超音波水密検査システム2は、固定装置60と、移動装置70と、制御装置80と、解析装置50と、遮蔽冶具20とを備えている。
固定装置60は、車輪61A、61Bと、角度調整装置62A、62Bとを備える。なお、図2では簡易的に図示したが、車輪61A、61Bおよび角度調整装置62A、62Bは、それぞれ、総数が異なっていても良いし、形状が異なっていても良い。車輪61A、61Bを区別しない場合には、これらをまとめて車輪61と呼ぶ。また、角度調整装置62A、62Bを区別しない場合は、これらをまとめて角度調整装置62と呼ぶ。
移動装置70は、高さ調整装置71A、71Bを備える。なお、図2では簡易的に図示したが、高さ調整装置71A、71Bは、総数が異なっていても良いし、形状が異なっていても良い。なお、高さ調整装置71A、71Bを区別しない場合は、これらをまとめて高さ調整装置71と呼ぶ。
解析装置50は、表示装置51を備える。
図2に示した構成要素の接続関係について説明する。制御装置80は、固定装置60と、移動装置70と、解析装置50とに、電気的に接続されている。移動装置70は、解析装置50に、電気的に接続されている。遮蔽冶具20は、高さ調整装置71を介して、移動装置70に接続されている。ここで、遮蔽冶具20のうち、高さ調整装置71に固定されている側の表面を、便宜上、上側表面と呼ぶ。また、遮蔽冶具20のうち、検査対象1に対面している側の表面を、便宜上、下側表面と呼ぶ。
図2に示した構成要素の動作について説明する。固定装置60は、検査対象1を所定の位置および所定の方向に固定する。移動装置70は、検査対象の表面に密着するように遮蔽冶具20を移動する。制御装置80は、固定装置60および移動装置70の動作と、後述する超音波発生装置30および超音波センサ40の動作とを制御する。解析装置50は、検出された超音波を解析して検査対象1の水密性を判定する。
次に、図3A、図3Bおよび図3Cを参照して、遮蔽冶具20について説明する。図3Aは、一実施形態による遮蔽冶具20の構成例を示す俯瞰図である。図3Bは、一実施形態による遮蔽冶具20の構成例を示す断面図である。なお、図3Aは、図2の遮蔽冶具20を下方向から上に向かってみた場合の俯瞰図である。また、図3Bは、図3Aに示した断面線A−A’による断面図である。図3Cは、一実施形態による超音波水密検査システム2のうち、超音波発生装置30Bおよび開口遮蔽部24Aの、一構成例を示す断面図である。
図3Aおよび図3Bに示した遮蔽冶具20の構成要素について説明する。遮蔽冶具20は、表面遮蔽部21と、周辺遮蔽部22と、端部遮蔽部23A、23B、23Cと、開口遮蔽部24A、24Bと、環状遮蔽部26と、超音波発生装置30Aと、超音波センサ40と、固定冶具33A、33B、43A、43Bとを備えている。遮蔽冶具20は、さらに、図3Cに示した超音波発生装置30Bを備えている。ただし、超音波発生装置30Bは、図3Aにおいては、開口遮蔽部24Aに隠れており、図示されていない。同様に、開口遮蔽部24Bに隠れて、別の超音波発生装置がさらに設けられていても良い。
これらの構成要素のうち、遮蔽冶具20の主要素は表面遮蔽部21であるとも言える。すなわち、遮蔽冶具20の上側表面および下側表面は、表面遮蔽部21の上側表面および下側表面に、それぞれ対応している。つまり、表面遮蔽部21の、図3Aで見える方の表面は、下側表面である。なお、端部遮蔽部23A、23B、23Cを区別しない場合は、これらをまとめて端部遮蔽部23と呼ぶ。開口遮蔽部24A、24Bを区別しない場合は、これらをまとめて開口遮蔽部24と呼ぶ。超音波発生装置30A、30Bを区別しない場合は、これらをまとめて超音波発生装置30と呼ぶ。
表面遮蔽部21は、他の構成要素を支持するために、変形しにくい硬質素材で形成されていることが好ましい。遮蔽冶具20のうち、硬質素材で形成された部分をまとめて硬質部分と呼ぶ。その一方で、周辺遮蔽部22と、端部遮蔽部23と、開口遮蔽部24と、環状遮蔽部26とは、それぞれ、弾性を有する軟質素材で形成されている。この軟質素材は、検査対象1に密着する観点から、検査対象1を傷つけず、かつ、検査対象1の形状に合わせて変形するに十分な柔軟性を有する。また、この軟質素材は、後述する超音波スピーカ31A、31Bおよび超音波マイクロフォン41の間で超音波32を伝達させる観点から、超音波32が伝搬する空間14を外部からなるべく完全に遮蔽することが望ましい。言い換えれば、この軟質素材は、音響の透過損失をデシベルで表す数値がなるべく大きい方が望ましい。ここで、音響の透過損失は、例えば、音源としての超音波スピーカから出力される超音波の強度から、外部に漏れる超音波の強度を差し引いた値として定義される。このような軟質素材としては、例えば、ゴムや、ゴムの発泡体や、ウレタンフォームなどが利用可能である。ただし、軟質素材はこれらの例に限定されない。遮蔽冶具20のうち、軟質素材で形成されている部分をまとめて軟質部分と呼ぶ。
開口遮蔽部24Aには、穴25Aが空いている。同様に、開口遮蔽部24Bには、穴25Bが空いている。
超音波発生装置30Aは、超音波スピーカ31A、31Bを内蔵し、さらにケーブル34Aと、コネクタ35Aとを備えている。同様に、超音波発生装置30Bも図示しない超音波スピーカを内蔵し、さらにケーブル34Bと、コネクタ35Bとを備えている。
超音波センサ40は、超音波マイクロフォン41を内蔵し、受信口42と、ケーブル44Aと、コネクタ45Aとをさらに備えている。
図3Aおよび図3Bに示した構成要素の接続関係について説明する。まず、上述のとおり、表面遮蔽部21は、その上側表面が、図示しない固定冶具を介して、図2の高さ調整装置71に固定されている。
超音波発生装置30Aは、固定冶具33A、33Bを介して、表面遮蔽部21の上側表面に固定されている。ただし、超音波発生装置30Aは、表面遮蔽部21を貫通していることが好ましい。すなわち、超音波発生装置30Aの、超音波スピーカ31A、31Bを含む先端部分は、表面遮蔽部21の下側表面の側に配置されている。その一方で、超音波発生装置30Aは、ケーブル34A、コネクタ35A、36Aおよびケーブル37Aを介して、移動装置70に電気的に接続されている。詳細は後述する(図6B参照)が、超音波発生装置30Aは、遮蔽冶具20が検査対象1に重なった状態において、その先端部が開口部131Aから空間14に入る位置に配置されている。
同様に、超音波発生装置30Bは、図示しない固定冶具を介して、表面遮蔽部21の上側表面に固定されている。そして、超音波発生装置30Bの先端部分は、表面遮蔽部21を貫通していても良い。ただし、超音波発生装置30Bの先端に固定されている開口遮蔽部24Aだけが表面遮蔽部21を貫通していても良い。開口遮蔽部24Aの穴25Aは、超音波発生装置30Bが発する超音波32Cの、検査対象1の内側の空間14への送出を妨げない位置に配置されている。同時に、開口遮蔽部24Aの穴25Aは、開口部131Iを塞がない位置に配置されている。超音波発生装置30Bは、ケーブル34B、コネクタ35B、36Bおよびケーブル37Bを介して、移動装置70に電気的に接続されている。
なお、本実施形態による遮蔽冶具20は、超音波発生装置30A、30B以外の超音波発生装置30をさらに有していても良い。より具体的には、その先端部分が開口部131Aから空間14に入る超音波発生装置30Aと同様に、その先端部分が開口部131C〜131Hのいずれかから空間14に入る位置に配置された超音波発生装置30があっても良い。また、開口部131Iに対応する位置に配置されている超音波発生装置30Bと同様に、開口部131Jに対応する位置に配置された超音波発生装置30があっても良い。
超音波センサ40は、固定冶具43A、43Bを介して、表面遮蔽部21の上側表面に固定されている。ただし、超音波センサ40は、表面遮蔽部21を貫通していることが好ましい。すなわち、受信口42の先端部分は、表面遮蔽部21の下側表面の側に配置されている。その一方で、超音波センサ40は、ケーブル44A、コネクタ45A、46Aおよびケーブル47Aを介して、移動装置70に電気的に接続されている。なお、超音波センサ40は、その先端部分が周辺遮蔽部22および端部遮蔽部23Aの間の状空間15Aに配置されていることに注目されたい。
なお、本実施形態による遮蔽冶具20は、さらなる超音波センサ40を有していても良い。より具体的には、その先端部分が周辺遮蔽部22および端部遮蔽部23Bの間のトンネル状空間15Bに配置されている別の超音波センサ40があっても良い。また、その先端部分が周辺遮蔽部22および端部遮蔽部23Cの間のトンネル状空間15Cに配置されているさらに別の超音波センサ40があっても良い。また、遮蔽冶具20ではなく、固定装置60に設けられた超音波センサ40があっても良い。
遮蔽冶具20の軟質部分、すなわち周辺遮蔽部22、端部遮蔽部23、開口遮蔽部24および環状遮蔽部26は、いずれも、遮蔽冶具20の下側表面、すなわち表面遮蔽部21の下側表面に接着されている。これらの軟質部分は、検査対象1のインナーパネル13側表面に対して相補的な形状を有していることが好ましい。すなわち、遮蔽冶具20の下側表面が、検査対象1のインナーパネル13側表面に重なることで、全ての開口部131が外部から遮蔽されるように、軟質部分は検査対象1に密着する形状を備えることが好ましい。
周辺遮蔽部22は、検査対象1の周辺形状と同じ形状を有していることが好ましい。より具体的には、検査対象1の接着範囲121と同等の環状形状を、周辺遮蔽部22が有していることが好ましい。この条件が満たされることで、全ての開口部131を、表面遮蔽部21および周辺遮蔽部22によって外部から遮蔽することが可能となる。また、周辺遮蔽部22の表面のうち、検査対象1の表面に接触する接触面221には、検査対象1との密着性を高め、かつ、検査対象1の表面を傷つけないための樹脂層などが形成されていても良い。
環状遮蔽部26は、環状形状を有しており、かつ、周辺遮蔽部22の内側に配置されている。環状遮蔽部26は、周辺遮蔽部22とともに、遮蔽冶具20が検査対象1に密着する際に発生し得る負荷を分散し、かつ、開口部131のうち、環状遮蔽部26の内側にあるものについて、外部から遮蔽する性能を補う。また、環状遮蔽部26は、開口部131Bなど一部の開口部131の直上に重なることで、これら一部の開口部131を直接的に遮蔽する。また、環状遮蔽部26の表面のうち、検査対象1の表面に接触する接触面261には、検査対象1との密着性を高め、かつ、検査対象1の表面を傷つけないための樹脂層などが形成されていても良い。
端部遮蔽部23は、周辺遮蔽部22の外側を部分的に覆うように、周辺遮蔽部22の外側に沿って配置されている。詳細は後述する(図6B参照)が、遮蔽冶具20が検査対象1に重なっている状態において、周辺遮蔽部22と、端部遮蔽部23A、23B、23Cとの間の隙間は、表面遮蔽部21および検査対象1にも挟まれた閉空間となる。これらの閉空間を、それぞれ、トンネル状空間14A、14B、14Cと呼ぶ。また、端部遮蔽部23の表面のうち、検査対象1の表面に接触する接触面321Aには、検査対象1との密着性を高め、かつ、検査対象1の表面を傷つけないための樹脂層などが形成されていても良い。
開口遮蔽部24A、24Bは、遮蔽冶具20が検査対象1に重なった状態において、それぞれ、開口部131I、131Jを遮蔽する位置に配置されている。ただし、開口遮蔽部24A、24Bは、開口部131Bを直接的に遮蔽する環状遮蔽部26とは異なり、それぞれ、開口部131I、131Jの周囲に密着することで間接的に遮蔽する。詳細は後述する(図7参照)が、開口遮蔽部24A、24Bの上側表面には、超音波発生装置30が固定されている。言い換えれば、開口遮蔽部24A、24Bは、超音波発生装置30と、開口部131I、131Jとの間の空間を遮蔽する。
次に、図4Aを参照して、制御装置80について説明する。図4Aは、一実施形態による制御装置80の構成例を示すブロック回路図である。
図4Aに示した制御装置80の構成要素について説明する。制御装置80の構成は、一種の計算機として説明することが出来る。制御装置80は、増幅器81A、81B、…、81nと、バス82と、入出力インタフェース83と、演算装置84と、記憶装置85と、外部記憶装置86とを備えている。なお、増幅器81A、81B、…、81nを区別しない場合は、これらをまとめて増幅器81と呼ぶ。
図4Aに示した構成要素の接続関係について説明する。増幅器81と、入出力インタフェース83と、演算装置84と、記憶装置85と、外部記憶装置86とは、バス82を介して相互に通信可能に、電気的に接続されている。その他、外部記憶装置86は、外部の記憶媒体87に接続可能である。
図4Aに示した構成要素の動作について説明する。増幅器81は、超音波発生装置30が超音波32を発するために必要な電気信号を生成して供給する。ここで、増幅器81と、超音波発生装置30とは、一対一対応することが好ましい。例えば、増幅器81Aは超音波発生装置30Aに接続されており、増幅器81Bは超音波発生装置30Bに接続されている。このように構成することで、複数の超音波発生装置30がそれぞれ個別に超音波32を発することが可能となる。
入出力インタフェース83は、制御装置80と、他の構成要素との間で各種電気信号の送受信を行う。ここで、送受信される電気信号には、制御装置80が固定装置60、移動装置70および解析装置50を制御するために生成出力する各種制御信号が含まれても良い。また、送受信される電気信号には、固定装置60、移動装置70および解析装置50から制御装置80に戻される各種のフィードバック信号が含まれても良い。入出力インタフェース83には、利用者が制御装置80を操作するための各種入力装置や、制御装置80が出力する情報を表示する表示装置などが含まれても良い。ここで、各種入力装置には、利用者が増幅器81の動作を個別に制御するためのスイッチが含まれても良い。
演算装置84は、記憶装置85から読み込むプログラムを実行する。このとき、演算装置84は記憶装置85からデータを読み込み、また、記憶装置85にデータを書き込んでも良い。さらに、演算装置84は、外部記憶装置86を介して記憶媒体87からプログラムまたはデータを読み込み、また、記憶媒体87にデータを書き込んでも良い。
次に、図4Bを参照して、解析装置50について説明する。図4Bは、一実施形態による解析装置50の構成例を示すブロック回路図である。
図4Bに示した解析装置50の構成要素について説明する。解析装置50の構成は、一種の計算機として説明することが出来る。解析装置50は、表示装置51と、バス52と、入出力インタフェース53と、演算装置54と、記憶装置55と、外部記憶装置56とを備えている。記憶装置55は、閾値を示すテーブル551を格納している。この閾値は、検出した超音波32の強度に基づいて検査対象1の水密性を判定するための基準として、超音波発生装置30および超音波センサ40の組み合わせごとに予め用意されることが好ましい。
図4Bに示した構成要素の接続関係について説明する。表示装置51と、入出力インタフェース53と、演算装置54と、記憶装置55と、外部記憶装置56とは、バス52を介して相互に通信可能に、電気的に接続されている。その他、外部記憶装置56は、外部の記憶媒体57に接続可能である。
図4Bに示した構成要素の動作について説明する。入出力インタフェース53は、制御装置80との間で各種電気信号の送受信を行う。ここで、送受信される電気信号には、制御装置80が解析装置50を制御するために送信される各種制御信号や、制御装置80に向けて送信されるフィードバック信号などが含まれても良い。入出力インタフェース53には、利用者が解析装置50を操作するための各種入力装置や、解析装置50が出力する情報を表示する表示装置などが含まれても良い。
演算装置54は、記憶装置55から読み込むプログラムを実行する。このとき、演算装置54は記憶装置55からデータを読み込み、また、記憶装置55にデータを書き込んでも良い。ここで、演算装置54が記憶装置55から読み込むデータには、テーブル551の内容が含まれる。さらに、演算装置54は、外部記憶装置56を介して記憶媒体57からプログラムまたはデータを読み込み、また、記憶媒体57にデータを書き込んでも良い。表示装置51は、解析装置50が出力する情報を表示する。
以上を踏まえて、本実施形態による超音波水密検査システム2の動作について、すなわち本実施形態による超音波水密検査方法について、図5、図6Aおよび図6Bを参照して説明する。図5は、一実施形態による超音波水密検査方法の一構成例を示すフローチャートである。図6Aは、一実施形態による超音波水密検査方法の一ステップにおける、超音波水密検査システム2の全体的な一構成例を示すブロック図である。図6Bは、一実施形態による超音波水密検査方法の別のステップにおける、検査対象1に遮蔽冶具20が設置された状態の一例を示す断面図である。
図5に示したフローチャートは、第0ステップS0〜第7ステップS7の、合計8つのステップを含んでいる。図5のフローチャートは、第0ステップS0において開始すると、その次に第1ステップS1が実行される。
第1ステップS1において、固定装置60が検査対象1を所定の位置および所定の角度に固定する。このとき、検査対象1の位置は、移動装置70によって支持された遮蔽冶具20の直下に固定されることが好ましい。そのためには、車輪61を用いて固定装置60ごと検査対象1の位置を調整しても良い。また、検査対象1の角度は、遮蔽冶具20の方向に対応するように固定されることが好ましい。その為には、角度調整装置62を用いて検査対象1の角度を調整しても良い。なお、車輪61および角度調整装置62の動作は、制御装置80によって自動的に制御されても良いし、利用者が手動で補っても良い。検査対象1が所定の位置および所定の角度に固定された状態は、例えば、図2に示したとおりである。第1ステップS1の次には、第2ステップS2が実行される。
第2ステップS2において、移動装置70の高さ調整装置71が遮蔽冶具20を移動して検査対象1に重ねる。その結果、検査対象1の開口部131は遮蔽冶具20によって遮蔽される。このとき、遮蔽冶具20の位置は、軟質部分が検査対象1に密着しながら、検査対象1に過度の負荷をかけない程度の高さに調整されることが好ましい。そのためには、高さ調整装置71には、遮蔽冶具20から検査対象1までの距離を測る距離センサや、軟質部分にかかる圧力を測定する圧力センサなどが設けられていても良い。なお、高さ調整装置71の動作は、制御装置80によって自動的に制御されても良いし、利用者が手動で補っても良い。
検査対象1が遮蔽冶具20によって遮蔽された状態は、例えば、図6Aおよび図6Bに示したとおりである。図6Aに示した超音波水密検査システム2は、図2に示した超音波水密検査システム2と、以下の点で異なる。すなわち、高さ調整装置71の長さが伸びており、その結果として遮蔽冶具20が検査対象1に重なっている。また、図6Bに示した検査対象1と、遮蔽冶具20とは、それぞれ、図1Bに示した検査対象1と、図3Bに示した遮蔽冶具20とに対応している。
ここで、図6Bに示した超音波発生装置30Aのうち、超音波スピーカ31A、31Bが配置されている先端部分が、開口部131Aを介して空間14まで差し込まれていることに注目されたい。こうすることで、超音波発生装置30Aが発する超音波32は、空間14をより効率よく伝搬する。また、超音波発生装置30Aの先端に、2つの超音波スピーカ31A、31Bを、それぞれ異なる方向に向けて配置することによって、超音波32が空間14の全体に届きやすくなる効果が期待される。ここで、超音波発生装置30毎に設ける超音波スピーカ31の総数はさらに多くても良いし、超音波発生装置30自体の総数がさらに多くても良い。
また、端部遮蔽部23Aおよび周辺遮蔽部22の間に挟まれているトンネル状空間15が、検査対象1および遮蔽冶具20の間にも挟まれることによって、閉じた空間になることに注目されたい。さらに、端部遮蔽部23Aおよび周辺遮蔽部22の間にも挟まれているトンネル状空間15に、超音波センサ40の先端部分、すなわち受信口42の開口部が差し込まれていることにも注目されたい。このように構成することで、空間14および接着剤12を介して伝搬した超音波32は、閉じたトンネル状空間15の内部で反響し、超音波センサ40による検出がより効率よく行える。ここで、トンネル状空間15の内部で超音波32が吸収されないように、超音波32を反響させる部材をトンネル状空間15の内部壁面に予め貼り付けておいても良い。なお、このような部材としては、例えば、プラスチックや、ゴム材などが利用可能であるが、これらの例に限定されない。同様の理由から、超音波発生装置30Bが発する超音波32Cを空間14に効率よく入れるために、開口遮蔽部24Aの穴25Aの内部壁面に反響部材を予め貼り付けておいても良い。第2ステップS2の次には、第3ステップS3が実行される。
第3ステップS3において、増幅器81が超音波発生装置30に所定の信号を送信する。超音波発生装置30は、この信号を受信すると、超音波32を発生させる。発生した超音波32は、いずれかの開口部131を通り、超音波32を検査対象1の内側の空間14に向けて送出される。このとき、全ての超音波発生装置30が同時に超音波32を送出しても良いし、超音波発生装置30の一部だけが超音波32を送出しても良い。なお、増幅器81および超音波発生装置30の動作は、制御装置80が自動的に制御しても良いし、利用者が手動で補っても良い。
また、制御装置80は、超音波発生装置30が発生させた超音波32のパラメータを示す送出データ信号を生成し、解析装置50に向けて送信することが好ましい。この送出データ信号は、制御装置80が増幅器81を制御するために生成した制御信号に基づいて生成されても良いし、増幅器81が超音波発生装置30に送信した信号に基づいて生成されても良い。この送出データ信号が示す超音波32のパラメータは、送出された超音波32の強度を含んでいることが好ましく、さらに周波数や波形などを含んでいても良い。ただし、超音波32のパラメータが所定の値に固定されている場合には、送出データ信号の生成および送信は省略可能である。第3ステップS3の次には、第4ステップS4が実行される。
第4ステップS4において、検査対象1の外側に配置されている超音波センサ40が、第3ステップS3で送出された超音波32を、検査対象1の外部から検出する。このとき、全ての超音波センサ40が同時に検出動作を行っても良いし、一部の超音波センサ40だけが検出動作を行っても良い。超音波センサ40は、超音波32の検出結果を示す検出データ信号を生成し、解析装置50に向けて送信する。第4ステップS4の次には、第5ステップS5が実行される。
第5ステップS5において、解析装置50は、第4ステップS4で超音波センサ40から送信された検出データ信号を受信し、この検出データ信号が示す超音波32の検出結果を解析する。より具体的には、解析装置50は、検出データ信号を解析して、超音波センサ40が検出した超音波32のパラメータを得る。このパラメータは、検出された超音波32の強度を含んでいることが好ましく、さらに周波数や波形などを含んでいても良い。解析装置50の動作は、制御装置80が自動的に制御しても良いし、利用者が手動で補っても良い。第5ステップS5の次には、第6ステップS6が実行される。
第6ステップS6において、解析装置50は、第5ステップS5で得た解析結果、すなわち検出された超音波32のパラメータに基づいて、検査対象1の水密性を判定する。より具体的には、記憶装置55に格納されているテーブル551から所定の閾値を読み出し、検出された超音波32のパラメータのうち、主にその強度との比較を行う。この閾値は、例えば、検査対象1が良品であった場合に、同じ超音波発生装置30および同じ超音波センサ40の組み合わせで検出されたはずの超音波32の強度を示す値である。
もし、実際に検出された超音波32の強度が、閾値よりも高ければ、検査対象1にはその内部から外部へと超音波32を伝搬しやすくする通り道、即ち欠陥があると考えられ、したがって水密性が担保されないと考えられる。この場合に、解析装置50は検査対象1に水密性が無いと判定する。反対に、もし、実際に検出された超音波32の強度が、閾値以下であれば、解析装置50は検査対象1に水密性があると判定する。解析装置50は、この判定結果を表示装置51に表示することが好ましい。解析装置50は、この判定結果を、その他の方法、例えば音声などを用いて表しても良い。第6ステップS6の次には、第7ステップS7が実行される。
第7ステップS7において、超音波水密検査システム2は、本実施形態による超音波水密検査方法を終了する。このとき、移動装置70は、第2ステップS2とは反対の方向に遮蔽冶具20を移動するなどして、検査対象1から引き離すことが好ましい。
以上、第0ステップS0〜第7ステップS7の各工程を実行することによって、本実施形態による超音波水密検査システム2は、検査対象1の水密性を検査することが出来る。ここで、本実施形態によれば、検査対象1が水で濡れることはないので、乾燥する工程が不要となることに注目されたい。また、超音波はその送出および検出を電気的に制御出来るので、検査結果の変動は流水を用いる場合よりも小さくなることにも注目されたい。したがって、本実施形態による超音波水密検査システム2および超音波水密検査方法によれば、検査対象1の水密検査をより効率よく行うことが出来る。
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、前記実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。