防衛関連の応用は通常、回折限界(XDL)の約1.3倍よりも良好なビーム品質を有する単一の高出力(たとえば10kW以上)の固体又はファイバレーザーの出力を許容できて、かつ、そのレーザービームを離れた位置へ供給可能なビーム供給手段を利用できることから利益を享受する。そのような防衛用途では、ビーム供給ファイバは、本来のレーザーと同程度のビーム品質を維持しながら、そのような高い出力レベルに適合できなければならない。上述の態様に加えて、そのような防衛用途は、ビーム供給ファイバが、高出力レーザービームをビームディレクタの内側ジンバルへ運び、かつ、予想される領域のシナリオにおいてジンバル集合体の予想された運動に適合するのに適切な長さを有するように、可撓性を有し、かつ、最大約10m以上の長さを有することを明記する。
レーザー波長が1μmで、かつ、約0.01nmよりも広いスペクトル幅では、この種類の応用における従来のファイバの原理上の限界の1つは、SRSを発生させることなく動作することである。たとえば10kWのファイバレーザーを用いる代表的な応用では、出力は十分大きいので、従来のビーム供給ファイバの長さは約2m未満に制限される。しかしある防衛用途では、この制限された長さは不適切でかつ制約が大きい。
一般的には、SRSは、効率、及び、蓋然的には伝送されたレーザービームのビーム品質を劣化させる。特にSRSは、逆伝播ビームを発生させることで、初期の信号強度の大部分が、意図した標的ではなくレーザーに戻ってしまう恐れがある。同時にSRSは、順方向に伝播し続ける信号強度の周波数帯域を広げてしまう。そのような広がりは、多くの応用で許容されない。SRSはまた、一般的に高次モードのみならず基本モードも含む順方向に伝播するビームをも生成し得る。この過程は、伝送された光のビーム品質を劣化させる。
連続波(CW)放射又は約100psよりも長いパルスでは、光ファイバ内においてSRSが起こる条件は次式で表される。
g(2P/A)L<25 (1)
ここで、gは媒質に依存するラマン利得、Pは信号強度、Aはコアの面積、及び、Lはファイバの長さである。式(1)の左辺の因子2は、伝播する基本光学横電磁モードの実効面積が、実際のコアの面積の約半分であるという近似である。
たとえば、g=0.01cm/GWである溶融シリカにおいては、P=10kWでは、長さLとコア面積Aとの間の関係式は以下のようにして決定され得る。
L<(25A/2gP)=1.25A (2)
ここで、SRSが起こる長さはL(単位cm)で、Aはファイバのコア面積(単位μm2)である。
一部の防衛応用はさらに、コヒーレントレーザー検出及び測距(LADAR)システムの一部として低出力ビームのファイバ供給を明記する。この応用の公称出力が1kWで低くても、スペクトル幅は10kHz未満では非常に狭い。この場合、制限となる非線形過程は誘導ブリルアン散乱(SBS)である。式(1)はSBSにも当てはまる。しかしSBSでは、溶融シリカの利得gは、5cm/GWで高くなる。たとえば1kWの信号強度では、長さの限界は式(3)を用いて判断される。
LB<0.025A (3)
ここで、LBはSBSの起こる長さ(単位cm)で、かつ、Aはファイバのコア面積(単位μm2)である。
約30μmの相対的に大きなコア直径を有する従来のLMAファイバでは、コア面積は約700μm2である。約700μm2のLMAファイバのコア面積を用いれば、限界長さLは、式(2)を用いることで約8.4mと計算することができる。しかしこの長さは、SRS閾値に到達する前の限界長さに相当することに留意して欲しい。安全な長さの値は、SRSの発生に対する2倍のマージンを供するようにこの長さの半分であって良い。しかもHELがファイバレーザーである場合、いずれのファイバもシリカから作られていると仮定すると、計算された長さの限界は、ファイバレーザー自身を含まなければならない。たとえば10kWの出力では、ファイバレーザー自身は、許容可能な長さのほとんどを使い果たす(たとえファイバレーザーのコアが30μmよりも長いときでさえも)。その結果、ビーム供給ファイバのさらなる長さに対する許容度は最小となる。従って従来のLMAファイバは、SRSを起こさない約10mのビーム供給長さの要求を満たすことができない。
ファイバは、従来のLMAファイバで利用可能な面積よりも大きな面積に変更された。原則としては、そのような大面積ファイバは、SRSを起こすことなくより長い長さに変更されて良い。しかし単一モード又は数モードのファイバコアの直径の変更は、コアの開口数(NA)を約0.03未満にさらに減少させることによって実現されなければならない。このNAの減少は、案内される横電磁モードの数を相対的に少ない数に制限する必要性によって進められる。さもなければ、高い出力での単一モード動作を維持するために用いられるモード識別機構は機能しなくなる。具体的には、所与のNAでコアのサイズが増大することで、すべてのコアのモードでの実効モード指数は非常に近接して離間する。その結果高次モードは最低次モードとほぼ縮退する。その結果、最低次モードと多くの高次モードとの間での曲がりが誘起するモード混合が非常に強くなり、最低次モードから高次モードへ出力が転換される。この意図しない結果を回避するため、大きなコアのファイバのたとえわずかな曲がりや変形も回避することが重要である。そのようなファイバの別な問題は、NAが減少することで、高次モードが漏出するようになり、許容不可能な伝送損失を誘起することなくファイバを撓ませることが、もはやできなくなる。コアを大きくすることで、ファイバは、屈折率の不均一性の影響を受けやすくなる。その結果、最先端のレーザーから望まれる優れたモード品質を維持することの困難さが増大する。
曲がらないファイバを設計することによって、大きなコアを有する低NAファイバの曲がり感受性を回避することができる。実際、コア直径が最大100μmで非常に低いNAを有する「ロッド状」ファイバレーザーは、印象的な出力のスケール変更を実現した。しかしこれらのファイバでは、コアは直径約2mmの石英ロッド内に埋め込まれることで、そのようなファイバは可撓性を有しなくなる。結論は、ビーム供給の応用に求められる可撓性を維持しながら従来のファイバのコア面積の大きさを現実的に変更することはできないということである。
これまで、SRS又はSBSを起こすことなく高出力動作を実現できる点でファイバのコア面積を増大させることに係る課題しか考慮してこなかった。しかしそのような誘導散乱を抑制する解決法が見つかったとしても、大きなコアの環状ビーム供給ファイバもまた、図1を参照することによって最も良く理解できる異なる基本的な制限に悩まされる。図1は、ビーム品質(XDL)に対する従来の環状コアファイバの(所与のNAの)コア面積のグラフを示している。この図のグラフは、レーザービームに適合するのに必要な(所与のNAの)コア面積をそのレーザービームのビーム品質の関数として概略的に表している。ビーム品質が一般的に2次元的ではなく1次元的に(つまりビーム直径がどの程度回折限界を超えるかで)表されるので、要求されるコア面積は大雑把にはビーム品質の2乗に対して変化する。図1の放物線は、ビーム品質の関数としてコア面積の変化を示している。
図1のグラフの左上では、ビーム供給ファイバの実際のコア面積が放物線によって予め決められたコア面積を超える状況が図示されている。従って入力ビームは、図1で概略的に示されているように、コアを満たしていない。たとえばビームが指定された10mのファイバを伝播するまで、そのファイバが、ビームディレクタが標的を追跡するように動く際に動的に撓むと仮定すると、出力ビームは、図1において概略的に示されているように、コア面積全体と全NAを満たす。それに対応して、コア面積全体と全NAはいずれも本来のビーム面積と発散を超える。結果はビーム品質の劣化である。放出されたビームでは、コア面積を満たすことはできるがNAを満たすことができない。しかしこれは問題の解決にはならないことに留意して欲しい。たとえNAの一部しか放出されたビームによって満たせないとしても、NAは不可避的に満たされる。従ってモードスクランブルが、ビームディレクタの運動に起因して必然的に起こるファイバの撓みによって誘起される。このようにして高いNAの帰結は、伝送されたビーム品質の劣化となる。
図1のグラフの右下では、コア面積がビームの断面積のサイズよりも小さい(たとえばビーム直径がファイバ直径よりも大きい)状況が示されている。具体的には、入力ビームは供給ファイバのコアを過剰に満たす。出力ビーム“out”がコアを満たし、クラッドへ放出される出力は失われる。そのため、サイズの小さなファイバを用いることで、顕著な効率の損失が生じる。入力ビームサイズがファイバの範囲内に適合するように減少する場合にも同様の損失が起こる。この結果発散は、ファイバ入力でNAを超える。
この例において唯一満足できる解決法は、図1の放物曲線上で厳密に操作することである。入力ビームの品質が向上することで、環状のファイバコアの面積はそれに比例して大きくならなければならない。逆も真である。これにより、レイセオン社で現在開発中の高出力レーザーシステムの放射線に適合し得る環状ファイバが存在しないという明白な問題が起こる。これらのレーザーは、2XDL未満の良好なビーム品質を有する。従ってファイバが放物線の底部で利用可能な小さいコア面積から選ばれる場合にのみ、ビーム品質は環状ビーム供給ファイバの外でも維持され得る。しかしその代わりに100kWを超える高出力レベルでは、光学損傷や非線形減少−たとえばSRS−を含む負の結果と共に効率の損失を抑制するように非常に大きなコア面積が要求される。
原則としては、誘導散乱又は他の強度依存過程に遭遇することなく高レーザー出力に適合できるほど十分大きなコア面積を有する高多モード供給ファイバを指定し、出力ビームを浄化して所望の良好なビーム品質を復元する方法を用いることができる。たとえばこれは、特許文献1に記載されている位相共役アーキテクチャを用いて実現され得る。この場合、レーザーアーキテクチャは、単純なファイバレーザーから、ビーム供給ファイバ及びファイバ増幅器が経路間の位相共役鏡(PCM)からの反射によって2回通過するように配置されている主発振出力増幅器(MOPA)へ修正されなければならない。約400μmのコア直径を有する受動的多モードファイバの歪みの位相共役補償が従来示されてきたが、大きなコアのファイバへの適用は、PCM補償機能の限界による問題があると考えられる。それに加えて、位相共役アーキテクチャの複雑さによってコストとリスクが加わる。
適切なファイバに基づく方法がなければ、高出力レーザーからビームディレクタータレットへ信号ビームを伝えるのに用いることができる2つの主なファイバによらない方法から選ぶことができる。第一の方法は、レーザービームをビームディレクタから離れた自由空間へ入り込むように結合して、そのビームをタレットへ向かわせて、(大きな光学顕微鏡で通常用いられている、タレット装置内部に設けられた一連の光学系を含む)肘型に曲がった経路(coude path)を用いることによって、そのタレットを通過するように光路を設定する方法である。他の方法は、ビームディレクタ装置上にレーザーヘッド自体を設けることで、レーザーヘッドの出力ファイバからビームディレクタータレットまでの距離を短くする方法である。この場合、標的にビームを向けるように迅速に動くことのできる必要のあるタレットが、レーザーデバイスのさらなる重量を保持しなければならない。これは重大なことだと考えられる。第1の方法では、タレットの設計は肘型に曲がった経路によって複雑になる。肘型に曲がった経路中の光学系は、高エネルギーレーザービームが様々な機構によって光学的に歪められる程度に損傷を受けたり加熱されたりせずに、その高エネルギーレーザービームに適合するのに十分なサイズである必要がある。光学系はまた、光路が時間及び環境にわたって変化することで位置合わせを維持しなければならない。この要求によって、システムのコストと複雑性が加わる。
上述した方法のすべてからの劇的な新たな新機軸は、導波路を使い続けるが、コアの形状を変化させることである。この方法は、環状コアファイバを用いることは、高出力でほぼ回折限界のレーザービームでは不可能であるという図1の基本的な結論を認識することによって始まる。しかしこの新たな方法はまた、図2で概略的に示されているように、高アスペクト比(HARC)のファイバでは状況がかなり異なることも認識している。図2は、レーザーのビーム品質(XDL)の関数としてファイバのコアの面積を表すグラフを示している。HARCファイバは長方形の断面を有する。長方形のコアでは、コア寸法の1つである「速い軸」方向が狭い。一の実施例では、ファイバコアは、速い軸方向において単一の速い軸モードだけ又はおそらくはわずかな低次の速い軸モードを案内するのに十分な程度狭くして良い。速い軸のクラッドの長さもまた、この方向においてファイバの機械的可撓性を供するように十分狭くされて良い。このようにして、ファイバは速い軸方向において曲がることが可能となる。ファイバはこの長さにおいては単一モードであり得るので、そのファイバはビーム品質を歪めることなく曲げられることができる。他方、コアの断面積は、直交する「遅い軸」の長さに沿ってコアの長さを拡張することで非常に大きくなり得る。特にコア面積は、非常に高いレーザー出力がSRS閾値を超えることなく放出され得るのに十分な程度大きくて良い。
HARCの特徴の一部は、図1のグラフと図2のグラフとを比較することによって評価することができる。最初に、図1のプロットと比較して、縦軸のスケールの重大な変化が図2のプロットにおいて存在することに留意して欲しい。HARCファイバは、コアを特定する合計2つの自由度を供することがわかる。2つの自由度とは面積とアスペクト比である。これにより、各々が所与のコアのアスペクト比(遅い軸方向でのコアの長さを速い軸方向でのコアの長さで除した値)を表す曲線の一群を生成することが可能となる。1:1のアスペクト比は環状コアファイバと同じ制限に悩まされる。しかしアスペクト比が高くなると、速い軸の長さを入力ビームのビーム品質に適合させ(回折限界であるのか否かにかかわらず)、かつ、コアが、損傷を生じさせることも、SRS閾値を超えることもなく全体のレーザー出力に適合できるように、遅い軸の長さを特定することを同時に行うこと可能となる。たとえ如何なるビーム品質及び出力レベルが要求されているのかにかかわらず、HARCファイバは適切なコアアスペクト比を備えるように特定されて良い。
中空コアのビーム供給導波路に、高エネルギー短パルスから生じるレーザー損傷への耐性を増大させるため、HARC法は特許文献2において提案された。長方形形状のコアの自己結像特性は、長方形のコア導波路を介してビームを輸送することで、導波路の出力面を入力面の像とするのに用いられる。しかしこの方法は、導波路のコア形状の変形のみならず供給路の撓みにも極端に敏感である。自己結像は、非常に厳格な1ラジアン未満の許容度のレベルでのすべてのモードの相対位相の追跡に基づく。導波路製造中でのコア形状におけるわずかな不完全性、自己結像距離からの伝播距離のずれ、及び、単純な導波路の撓みのすべては、モード間での相対位相を破壊してしまう恐れがある。それにより、自己結像現象及びそれに関連する利点が得られなくなる。所望の自己結像をも破壊することなくこの方法を用いてコヒーレントビームを輸送する現実的な方法は存在しない。
一の実施例によるさらに他のHARC法は、自己結像に依拠することによって課される制限なしに実装されて良い。この代替法は、高アスペクト比のクラッド内に埋め込まれる同様に高アスペクト比のコアを有するガラス又は他の透明材料から作られ得るファイバを利用する。図3は、ビーム供給応用において要求されると思われる曲率を有する経路に従うHARCファイバ11の概略図である。HARCファイバ11がリボンのような幾何学形状を有するので、HARCファイバ11は薄い長さでしか曲がらないことに留意して欲しい。このことは図3で概略的に示されている。図4aは、一の実施例によるファイバ11の横方向断面4の概略図である。ファイバ11はコア42とクラッド44を有する。コーティング46はクラッド44を覆う。一の実施例では、コーティング46はポリマーコーティング又は任意の他の可撓性コーティングであって良い。HARCファイバ11は、図4aに図示されているように長方形断面を有する。一の実施例では、HARCファイバ11の長方形コア42は、ファイバ11を透過するレーザー出力及び用途にも依存して、一般的には約30:1〜100:1以上の範囲をとり得るアスペクト比を有する。遅い軸と速い軸は図4aに図示されている。遅い軸は、ファイバ11の長方形断面の長い寸法の方向である。速い軸は、ファイバ11の長方形断面の小さい寸法の方向である。
図4aに図示されているように、コア42はファイバ11内で中心をとる。その際、垂直軸AAはファイバ11を2つの実質的に同一で対称性を有する半分にわけ、かつ、水平軸BBはファイバ11を2つの実質的に同一で対称性を有する半分にわける。しかしすぐにわかるように、コア42はファイバ11内で中心をとる必要はない。たとえば一の実施例では、コア42はファイバ11の対称軸BBからオフセットされて良い(たとえばコア42は、コーティング46の上部又は下部に近づくようにファイバ11の「上部」又は「下部」に設けられて良い)。あるいはその代わりに又はそれに加えて、コア42はファイバ11の対称軸AAからオフセットされて良い(たとえばコア42は、コーティング46の左側部又は右側部に近づくようにファイバ11の左側又は右側に設けられて良い)。
HARCファイバ11は、非常に大きな面積(たとえば最大30000μm2以上)を有する高アスペクト比の長方形コア42を特定することによって、従来のLMAファイバから区別される。コア42の面積は、他の寸法(速い軸方向)をLMAコアの本来の半径と略同一に維持しながら、一の寸法(遅い軸方向)のみでコア42を伸張することによって増大する。速い軸のコアの厚さと開口数は、LMAファイバに類似して、コアの速い軸方向が単一モード又はわずかな低次モードのいずれかを案内するように選ばれて良い。一の実施例では、速い軸の厚さは、速い軸に対して入力ビーム品質を適合させるように選ばれて良い。その結果、結合光は、クラッドへ入射する際に大きな出力損失をすることなくコアの速い軸の寸法とNAを実質的に満たす。この方法によると、コアを取り囲むクラッドもまた、ファイバを速い軸方向において機械的に可撓性を有するように、速い軸方向において相対的に薄い状態に保たれる。一の実施例では、レーザービームがコアの速い軸の寸法とNAに適合し、かつ、クラッドは薄いので、ファイバは、同一の入力発散を維持しながら、つまり速い軸のビーム品質について妥協することなく、速い軸の曲がりを含む任意の軌跡にわたってレーザー放射線を輸送することができる。
従って速い軸のコアのパラメータは、速い軸方向での曲がりが存在する状態で入力ビームの品質を維持するように特定されて良い。遅い軸のコアのパラメータは、ファイバが誘導ラマン散乱又はブリルアン散乱又は光学損傷の制限を受けることなく高レーザー出力に適合可能となるように、相補的に特定される。たとえばHARCファイバ11のコア42の寸法が約10μm(これは速い軸方向において単一モードである)かつ0.5mm(遅い軸方向において)で、コア42の面積が約5000μm2であると仮定すると、SRSの閾値の長さLは、式(2)を用いることによって、10kWの信号では約62.5mと決定され得る。従って、2倍のマージンを許容することで、HARCファイバ11は、SRSを起こすことなく約30mの長さ(つまり62.5mの約半分)だけ高出力レーザービームを運ぶことができる。SBSによって制限される狭帯域の応用については、式(3)は、コアの寸法が20μm×2mmでコアの面積が40000μm2であれば、10mの長さが可能になることを示唆している。従って2倍のマージンを許容することで、このファイバは、SBSを起こすことなく、約5mの長さだけ1kWの狭帯域レーザービームを運ぶことができる。その結果、ファイバ11のコア42について適切な寸法を選ぶことによって、SRS、SBS、又はそれら両方の発生の閾値を上昇し得る。
適切に設計されたHARCファイバが、SRS又はSBSに遭遇することなく高出力レーザービームを運ぶとすると、コアのサイズ及び形状がファイバに沿って伝播するレーザービームの出力ビームの品質に及ぼす影響を判断することは価値がある。HARCファイバのコア端部が、クラッド材料からの全内部反射に起因して反射性となり、かつ、入力放射線がコアの寸法とNAを満たすとすると、結果として得られるビーム品質は不十分であると考えられる。それに加えて、たとえ放出されたビームが良好なビーム品質を有していても不適切に放出される場合には、そのようなガイドからの出力ビーム品質は不十分となり得る恐れがある。前述したように、一の実施例による以下の手順が利用される場合には、出力である遅い軸のビームの品質は実際には、入力ビームの品質と同程度であり得る。
第一に、一の実施例では、ビームはファイバ軸に沿って直接放出される。そのように放出することで、全経路を通じた入力光の発散が保存される。この理由は、遅い軸のコアの端部(ファイバ軸とビームの伝播方向に対して平行である)からの任意の反射が、遅い軸に対する光線の角度傾斜を反転させるが、反射は傾斜角の大きさを増大させないからである。ファイバの高アスペクト比の長方形形状が、遅い軸方向での曲がりに耐えるので、速い軸方向で曲げられるHARCファイバは、遅い軸方向に沿って実効的にまっすぐなままとなる。この事実と特定された放出条件によって、レーザー放射線の入力角度スペクトルは、ファイバ軸に対して対称性を有することが可能となる。従って遅い軸の端部による反射はビームの発散を増大させ得ない。
第二に、一の実施例では、ビームは、コアの遅い軸の寸法を完全に満たすようにHARCファイバへ入り込むように放出される。良好な入力ビーム品質のため、放出されたビームは、低次の遅い軸のモードのみを励起する。これらの条件下では、回折は入力ビームのスポットサイズを広げず、かつ、実効的なビームサイズは全ファイバ経路を通じて略一定で、コアの幅によってしか制約されない。上述したように、速い軸方向に曲げられるHARCファイバは、複雑な可撓性を有する経路でさえも、遅い軸の曲がりに悩まされない。従って、ファイバの出力端への入力ビームの発散は保存される。このことは、遅い軸のビーム品質(ビーム寸法とビーム発散との積によって表される)は、ファイバの入力端部と出力端部で同一であることを意味する。
たとえHARCファイバの形状によって、速い軸方向でしか曲がりが起こらないとしても、高出力レーザービームを供給する際に複雑な経路に従うファイバは、速い軸の曲がりだけではなく、ファイバのねじりを必要とする可能性がある。HARCファイバの一部をねじることで、光の焦点をぼかし、かつ、遅い軸の面内でのビーム発散を増大させ得る実効的な負の平板レンズを生成することができる。ファイバ軸が遅い軸方向において実効的にまっすぐである場合でさえも、ねじりは遅い軸のビーム品質について妥協する恐れがある。
上述の状況では、良好なビーム品質を維持するため、さらなる段階が実装されて良い。第一に、全伝播経路は、純粋に速い軸で曲がりが生じているか、又は、曲がらずに純粋にねじれているかの2種類のファイバリボンの変形の列として設計されて良い。2種類の変形の各々を有する部分は互いに継がれて良い。しかしファイバの任意の所与の部分は1種類の変形しか有してはならない。これらの条件下では、ファイバが実効的にまっすぐで、かつ、ねじれレンズ効果が存在しない純粋に曲がっている領域を介して伝播する間、遅い軸のビーム品質は自動的に保存される。
第二に、ねじれが誘起するレンズ効果の補償が、ねじれ領域の各々において、負のねじれレンズによってビーム品質の歪みを排除するように実施されて良い。レンズ補償の様々な方法が実施されて良い。たとえば、本願において以降で説明されている2つのレンズ補償方法はいずれも、特許文献3で開示されているように、ファイバコア内に埋め込まれて良い。特許文献3の内容は本願に援用される。補償方法はすべて、ねじれレンズが光学的には、ねじれ領域とねじれ角の両方に依存する焦点距離を有する実効的な負の1D屈折率分布(GRIN)レンズとして動作するという事実に基づいている。補償は、ファイバのねじれた部分を起源とする負のレンズのパワーに等しくて、かつ、反対のレンズパワーを有する正のGRINレンズをねじれた領域のコア内に構築することによって行われて良い。正のレンズ効果は、市販の2DのGRINレンズを生成するのに通常行われているように、遅い軸の屈折率変化をコア内に生成することによって生成されて良い。同様の集束効果もまた、遅い軸方向に沿ってコアの厚さのプロファイルを形成する−具体的にはファイバ軸に沿って中間部ではコアを厚くして、端部付近では狭くする−ことによって生成されて良い。さらに他の補償方法は、ねじれ領域の各端部に1つ以上のシリンドリカルレンズを設けることである。ここでレンズは、ねじれ誘起レンズの焦点外しパワーに等価な正味で正のレンズ効果を生成するように設計される。
上で提案した方法は、入力ビーム品質を犠牲にすることなく複雑で動的に可撓性を有する軌跡を介して多モード入力放射線を輸送するのに有効となり得る。この場合、補償のための極端な許容度は必要ない。その結果、横モード間でのわずかな光学結合が許容される。なぜならわずかな光学結合は光の発散を顕著に増大させず、単純に多くの励起したファイバモード間の位相を最分布させるからである。
一部のファイバ供給の応用は、最高の単一横モードの高出力放射線を供給することを要求すると考えられる。上の段落で説明した動作は、単一横モードの入力放射線にとっては不十分であると思われる。ファイバを撓ませることは依然としてモード混合を伴い得る。なぜなら完全なスケールのシステムにおいてこの効果を排除するための許容度は高すぎて実用的ではないと考えられるからである。従ってたとえ単一の横モードだけがHARCファイバコア入力で結合されるとしても、経路を撓ませることで、高次モードの出力の再分布が誘起される。HARCファイバが損失することなくすべてのモードを案内するので、高次モードは、基本モードと共に出力に存在し、かつ、モード間での干渉が生じる結果、出力ビームの品質について妥協することになる。従って、真に単一モードの放射線を撓んだ多モードファイバを介して供給するには、根本的に異なる方法が必要になると考えられる。
高出力レーザービームのファイバビーム供給へのこの根本的に異なる方法は、他の新規な型のファイバ−具体的には半導波性高アスペクト比のコア(SHARC)ファイバ−に基づく。SHARCファイバは、高出力レーザーを生成する増幅器として提案された。SHARCファイバレーザーの例は特許文献4と5で説明されている。特許文献4,5の内容のすべては本願において援用される。
図4bは、一の実施例によるSHARCファイバ10の横方向断面の概略図である。ファイバ10は、コア12、信号又は速い軸のクラッド14、モード屈折率整合(NIM)クラッド16、及びコーティング18を有する。コア12は2つの信号クラッド14の間に設けられ、すなわち挟まれる。コア12と信号クラッド14はNIMクラッド16によって取り囲まれる。コーティング18はポンプクラッド16を覆う。一の実施例では、コーティング18はポリマーコーティング又は任意の他の可撓性コーティングであって良い。SHARCファイバ10は、図4bに図示されているように長方形断面を有する。一の実施例では、SHARCファイバ10の長方形コア12は、ファイバ10を透過するレーザー出力及び用途にも依存して、一般的には約30:1〜100:1以上の範囲をとり得るアスペクト比を有する。遅い軸と速い軸は図4bに図示されている。遅い軸は、ファイバ10の長方形断面の長い寸法の方向である。速い軸は、ファイバ10の長方形断面の小さい寸法の方向である。
図4bに図示されているように、コア12はファイバ10内で中心をとる。その際、垂直軸AAはファイバ10を2つの実質的に同一で対称性を有する半分にわけ、かつ、水平軸BBはファイバ10を2つの実質的に同一で対称性を有する半分にわける。しかしすぐにわかるように、コア12及び/又はクラッド14はファイバ10内で中心をとる必要はない。たとえば一の実施例では、コア12とクラッド14はファイバ10の対称軸BBからオフセットされて良い(たとえばコア12とクラッド14は、コーティング18の上部又は下部に近づくようにファイバ10の「上部」又は「下部」に設けられて良い)。あるいはその代わりに又はそれに加えて、コア12はファイバ10の対称軸AAからオフセットされて良い(たとえばコア12とクラッド14は、コーティング18の左側部又は右側部に近づくようにファイバ10の左側又は右側に設けられて良い)。
HARCファイバ11の場合ように、SHARCファイバ10は、非常に大きな面積(たとえば最大30000μm2以上)を有する高アスペクト比の長方形コア12を特定することによって、従来のLMAファイバから区別される。コア12の面積は、他の寸法(速い軸方向)をLMAコアの本来の半径と略同一に維持しながら、一の寸法(遅い軸方向)のみでコア12を伸張することによって増大する。コア12は、半導波性となるように設計される。そのため、全内部反射(TIR)による従来の屈折率導波が、クラッド14とコア12との間の界面で長方形コアの2つの大きな表面に沿って起こる。その一方で、遅い軸方向の狭いコアの端部13はTIRを支援しないように設計される。一の実施例では、コア−端部の境界13での屈折率のステップは十分小さい−たとえば500ppm未満(たとえば10―4)−ので、その結果、高次のコアモードは、(遅い軸方向に沿って)コア外部で自由に回折する。よってすべての広い軸の横電磁モード(つまり遅い軸に沿ったモード)はコア端部13を介した放射線の損失に悩まされる。半導波性コアを生成するために特定のファイバ構造を参照しながらSHARCファイバ10が説明されているが、他の構造も、同一の半導波性特性を生成するのに用いられ得ることは容易にわかる。
SHARCファイバ10がHARCファイバ11と共有する一の特性は、たとえコア12の面積が非常に大きく(>30000μm2)なりえても、速い軸に沿ったファイバの外部寸法は相対的に小さい(たとえば約500μmを超えない)ことである。それに加えて、一の実施例では、速い軸に沿ったコア12の開口数NAは、相対的に小さい。たとえば約15〜25μmのコアの厚さでは約0.06である。この値は、妥当な曲がり半径の下で速い軸のクラッドを介して信号が外へ漏れるのを防止するのに十分である。これらの条件下では、SHARCファイバ10は速い軸方向において機械的に可撓性を有し、かつ、SHARCファイバ10は本質的に、基本モードの損失を生じさせることなくこの方向において撓み、又は、コイルを構成し得る。対照的に、前段落で説明したように、直径が非常に大きくて低NAの環状コアを有する「ロッド状」ファイバは、曲がりに対して極端に敏感で、かつ、ビーム品質を犠牲にせず、かつ、大きな回折損失に悩まされることなく低損失コイルを構成し得る。従って、適切に整合した速い軸のコアの厚さとNAを供しながら、曲がり可能にして、かつ、機械的可撓性を有することによって、SHARCファイバ10は、高出力レーザーのファイバ供給の候補となる基準の少なくとも一部を満足する。
これらの基準に加えて、HARCファイバについて前述したように、SHARCファイバ10は、誘導ラマン散乱又は誘導ブリルアン散乱の閾値を上昇させることによって、SRS又はSBSを実質的に起こすことなくレーザー出力供給の要求を満たすのに十分なサイズのコア面積を供する。
さらなる基準は、SHARCファイバ10が、入力レーザービームの出力とビーム品質を劣化させることなく相対的に高出力のレーザービームを供給することができるか否かを判断することである。SHARCファイバ10は本質的に、その独自のコア設計のため確かな動作をすることができる。従来の波長に基づくモード除去−これは多モード波長では有効ではないため、深刻な劣化を起こした出力ビームを得ることになる−に依拠する代わりに、SHARCファイバ10は、コア端部13による影響を受けないビーム伝播を当然可能にする遅い軸方向において十分広いコアを有することに依拠している。
コリメートされた入力ビームが、フレネル長さLFr〜Wb 2n/λがファイバ長さL(ここでnはコア12の屈折率で、かつ、λはレーザーの波長)を超える程度に十分大きな遅い軸のビーム幅wbをコア12の内部で有する場合で、かつ、コア12の材料が光学的に均一である場合、ビームは、コア端部からの反射を受けない。その結果、コリメートされた出力ビームは入力ビームの品質を保持する。それに加えて、モデルが示し、かつ、実験が保証しているように、速い軸方向においてSHARCファイバ10を曲げても、遅い軸方向でのビームの品質は影響を受けない。この事実の一の理由は、コアのアスペクト比が非常に高いために、遅い軸方向と速い軸方向に沿った回折過程の分離が容易になるためである。任意の生じ得る不完全性が波面歪を誘起する場合、又は、他の過程が、本来のレーザービームプロファイルからより発散した光線となるように放射線を散乱させる場合、「損失フィルタリング(loss filtering)」による浄化が、ビーム品質の低下を防止するのを助ける。損失フィルタリングは、発散光を表す高次横電磁モードが、所望である本来の最低次横電磁モードよりも、より強く回折して半導波性コア領域の外部へ漏れることを利用する。この漏れは、コア端部13の各側部での発散する3つの矢印として図4において概略的に示されている。SHARCファイバ増幅器とレーザーにおけるモード制御への損失フィルタリングの適用は、特許文献5において詳細に説明されている。特許文献5の内容は本願に援用される。
SHARCファイバ10は、薄い速い軸方向に沿って単一モードとなるか、又は、LMAファイバの箇所で前述した方法と同一のコイルを構成する方法を用いることによってこの速い軸において実効的に単一モードなるように構成される。後者の場合、平板コア12の厚さは、相対的に小さくなり、同時に速い軸方向に沿ったコア12の開口数NAを減少させることで、多数の案内された速い軸のモードを1〜数個のモードに減少させる。速い軸方向においてコイルを形成することに固有なファイバの曲がりによって、モードは浄化する。つまり高次の速い軸モードは除去され、かつ、本質的には、基本横電磁モードだけが放射損失せずに伝播する。しかし、コイルを構成することは、ファイバが静的コイルを構成する場合には単一モードを維持する十分な能力を有するが、ビーム供給応用では、適切なコイル直径が動的動作中常に維持されるのは容易ではない。従って速い軸方向において単一モードとなるようにファイバを設計することが好ましい。
SHARCファイバ10の能動的なバージョンでは、遅い軸のモード制御は、(i)損失フィルタリング、及び、(ii)利得フィルタリングの2つの相補的な機構の組み合わせを利用することによって実現される。損失フィルタリング機構は、すべての遅い軸のモードが、「開放された」コア端部13を介してクラッド16へ入射する放射線の損失を受けるという事実に基づく。低次横電磁モード伝播の損失よりも大きな高次横電磁モードの損失を与えることで、SHARCファイバ10内において遅い軸に沿った高次横電磁モードを実質的に除去するように、屈折率ステップ(クラッド16の屈折率とコア12の屈折率との間の屈折率差)は、略ゼロに設計される。放射線損失はモードに強く依存し、他よりも損失の少ない基本モードを好む。利得フィルタリング機構は、遅い軸方向において利得ストライプ幅をコアの幅よりも狭くなるように設計することによって実現される。係る利得ストライプによるモードの重なりは、任意の高次の遅い軸モードよりも基本モードではるかに大きくなる。その結果、基本の遅い軸モードで顕著に利得が改善される。SHARCファイバ10の伝播についての詳細な研究によって、複数の最低次横電磁モードについて前述したモード依存損失及び利得識別又はフィルタリングが定量化された。これらの研究は、損失識別が、能動ファイバの所望のモード制御を実現するのに適切であることを保証する。
SHARCファイバ10が受動的−レーザーの伝播と供給の場合−となるように構成される場合、SHARCファイバ10内には利得媒体が存在しないので、利得フィルタリングモード制御機構は全体として有効ではなくなる。しかし損失フィルタリングは、コア12を介して伝播する間に生成され得る任意の高次の遅い軸のモードを除去するのに用いられて良い。
しかし損失フィルタリング機構は限られた機能しか供さない。損失フィルタリングは、SHARCファイバ10内で伝播する高次横電磁モードを除去するのに用いられ得るが、ある限度内でしか用いられ得ない。たとえば、遅い軸のコアの幅が約2mmの場合では、最低次のモードは、約0.004m−1の伝播損失率α0を有する。これは10mの供給長さでは約4%に達する。モードmの損失率αmは、遅い軸のモード数の2乗に対して変化する、つまりαmはα0(m+1)2に比例する(m=0,1,2,3...)ので、モード1と2の損失率をそれぞれ表すα1とα2は、それぞれ0.016m−1と0.036m−1である。それらの値はそれぞれ10mのファイバ長での約15%と約30%に損失に相当する。そのような損失は無視できないものではないが、90%を超える重大な損失つまりは最も有効な横電磁モード識別は、m>5の高次モードでしか起こらない。従って、基本横電磁モードがコア12を介して伝播する際に歪められる場合、高次の遅い軸の収差は実効的にフィルタリングされるが、低次収差は出力ビーム中に残ることで、伝送されたビームの品質が低下する。
伝送されたビームにおける低次収差を緩和又は実質的に除去するための多数の方法が特定されている。以降の段落で説明されるこれらの方法は、所望の効果を実現するために別個に用いられても良いし、又は、組み合わせて用いられて良い。
第一に、一の実施例では、遅い軸方向におけるコア12の幅は、損失因子がm=1のモード(つまり第1の高次モード)で十分高くなる最適値にまで減少し得る。モデルは、コアの遅い軸の端部13を介する放射損失率αmが幅wの3乗に対して変化する、つまりαmが1/w3に比例することを示している。この理由のため、2mmではなく1.2mmのコア幅wが用いられる場合、損失率αmは、すべてのモードで4.6倍増大する。その結果、10mの伝播後での高次横電磁モードの伝送損失は、m=1では約53%増大し、かつ、m=2では約82%増大する。損失は、m=2では95%を超えて非常に強くなる。係る損失の識別はモードの「浄化」(つまり高次モードの識別)にとっては十分となり得る。それにより、基本横電磁モードのみがSHARCファイバ10へ放出され、その一方で、基本横電磁モードがコア12内の光学不完全性を介して伝播する場合には、その基本横電磁モードをきっかけとして高次横電磁モードが生じるという事実が考慮される。しかしこの方法の一の課題は、ビーム品質を改善するためのコストが、低次基本横電磁モードの放射損失の増大となることである。たとえば約1.2mmの幅を有するコア12と、約10mの長さを有するファイバ10では、クラッド16への基本横電磁モードの損失は約18%にも達する。
第二に、伝播損失は、信号ビームが損失を生じさせやすいコア端部へ入射するときに起こるので、損失は、ビームがコア端部13に到達しない程度に十分コア12を広くすることによって除去され得る。この状況は、以下の条件が満たされる場合に実現され得る。
(a) コア12内部の入力ビーム幅wbでは、ファイバ長さLは、フレネル範囲LFr〜wb 2n/λ未満に特定される。
(b) コア材料は実質的に光学的に均一である。
(c) コアの幅wは、ファイバの出力端での回折信号の幅を超える。
(d) 任意のねじれが誘起する遅い軸のレンズ効果の焦点外し効果は、特定のモードサイズに対応する回折効果と比較して弱い。この条件は、ねじり角が小さいためか、又は、負のねじれレンズが正確に補償されるために生じ得る。
たとえば約10mの長さを有するSHARCファイバ10では、上述の条件を満たすように、入力ビーム幅wbは2.2mmを超えるように選ばれ、かつ、コア12の幅は3mmを超えるように選ばれる。光学均一性は、モード歪みが最小の高性能ファイバを実現するための一般的な条件であるため、条件(b)はSHARCファイバ10にとって固有ではない。
以降の段落において(S)HARCファイバと総称するHARCファイバとSHARCファイバのいずれについても、2つの別個のモード歪み源が制御される必要がある。第1の歪み源はコアの光学不完全性である。そのような不完全性は、コアを構成するガラス(たとえばシリカ)の不均一性又はコアの不正確な形状−特にコアの厚さのゆらぎ−のいずれかに起因して生じ得る。コアのガラス材料の正確な選択と精製は、線引き処理中での温度均一性の正確な制御と共に、最高のコア−ガラス均一性を実現するために通常用いられる。しかし任意のコア不完全性が波面歪みを誘起する場合、又は、他の過程が、本来のビームプロファイルからより発散した光線となるように放射線を散乱させる場合、SHARCファイバ内での損失フィルタリングによる浄化という選択肢は、出力ビーム中でのビーム品質の低下を防止することを助ける。
第2の光学歪み源はファイバの変形である。ファイバの変形は以下のようにして抑制することができる。第一に、ファイバ10,11の平板ファイバコア12,42はそれぞれ、速い軸方向において純粋に単一モードとなり得る。これにより、速い軸のモードのプロファイルは、その速い軸方向に沿った任意の曲がりに対して感受性を有しなくなり得る。第二に、モデルが示し、かつ、実験が保証しているように、速い軸方向において(S)HARCファイバを曲げても、遅い軸のビーム品質に有害な影響は生じない。上述したように、この事実の一の理由は、アスペクト比が非常に大きくなることで、遅い軸方向に沿った回折過程と速い軸方向に沿った回折過程の完全な分離が促進されるからである。しかし遅い軸方向においてコア12,42を曲げることで、遅い軸のビーム品質が損なわれる恐れはある。この理由のため、ファイバ10,11が遅い軸で曲がらないようにする別な手当がとられてよい。一の実施例では、これはたとえば、ファイバ10,11が、長方形コア12,42(たとえば図4a及び図4bに図示されているように)及び長方形の外形を有することを特定することによって実現され得る。一の実施例では、この目的のためには、ファイバ10,11の外形のアスペクト比(つまりファイバ10,11の幅と高さとの比)は3以上で十分となり得る。これにより、ファイバ10,11の全体はリボンとして振る舞う。その結果ファイバ10,11の全体は、速い軸方向での曲がりとねじれに対して容易に適合するが、遅い軸方向での変形には強く抵抗する。
モデルと実験は一貫して、(S)HARCファイバ10、11が実質的に遅い軸のビーム品質に影響を及ぼさない一方で、ねじれは、レーザービームにさらなる発散を誘起させることで、ファイバ10,11は、遅い軸方向のみに影響を及ぼす実効的な負レンズとして機能することを示している。一の実施例では、実効的な負レンズの焦点長Fは、F=−ΔL/φ2で変化する。ここで、ΔLはねじれ長さで、かつ、φは長さΔLにわたって積分されたねじれ角である。ファイバ10,11の別個の領域内で生成されるねじれが誘起するレンズは、ねじれが同一方向であるのか否かにかかわらず、個々のレンズの総和である結合レンズを与えることができる。従って一の実施例では、リボンファイバ10,11が、ファイバの全長Lに沿って均一なねじれを受ける場合、積分されたねじれ角は、ファイバ長よりもはるかに長い焦点長(つまりF>>L)を維持するため、及び、レンズ効果に基づく信号ビームの焦点外しを抑制するため、約0.3ラジアン未満でなければならない。同一の表式は、大きい全体的なねじれに適合するようにファイバの短い部分にわたってねじれを局在化すること、ΔL<<L、は、強い負の平板レンズを生成するため、望ましくないことを示している。
従って、高品質のレーザービームの伝送を保証する他の方法は、ビーム供給が欠陥を有するまっすぐではない経路を介してなされる場合に、ファイバ10,11の軌跡とねじれを最適化することである。すべての用途について普遍的に最適なファイバの軌跡を定めることはできない。なぜなら軌跡は、特定の経路の形状と入力マウントと出力マウントの位置に依存するからである。最適化の目的は、軌跡が一連の曲がりを含むようにファイバ10,11を調節することによって局所的なねじれを緩和するように、ファイバ10,11に沿って変形を分配することである。ファイバ10,11に沿って変形を分配することによって、全体的なねじれは抑制され、かつ、ねじれ率は可能な限り滑らかになるようにファイバ10,11に沿って分配され得る。
さらに他の方法が、ねじれ誘起レンズに対処するように特別に用いられて良い。供給ファイバのねじれが不可避である場合、設計は、ファイバのねじれた部分が、ファイバの出力端付近のファイバ長δLにわたって生じるように改良されて良い。続いてこの長さは、ねじれ誘起焦点長Fに関連づけられる固有歪み長さLdistよりも短くなるように指定される。具体的には、δL<Ldist〜wcore/δθFである。ここで、δθF=(wb/2F)はねじれ誘起発散角で、wcoreとwbはコアの幅とビームの幅を表し、かつ、F=δL/φ2は、ねじれ角φに係る負レンズの焦点距離である。δLに関する後者の条件は、コアがビームサイズと比較して十分広い場合、wcore>wbφ2、に満たされる。これは、ねじれ角φが0.5ラジアン未満で小さい場合には容易に満たされるが、ねじれ角が45°を超える場合には、拡張されたコアの幅、wcore>wb、を必要とする。係る幾何学形状の出力ビームは歪められないが、曲率を有する波面を伝える。よって、ビームのコリメーションを保持するさらなる光学系が必要となる。(静的な供給ファイバ経路用の)位置が固定された又は(動的な供給ファイバ経路用の)位置が調節可能な外部の円筒形を有する遅い軸のレンズが、ねじれレンズの残留効果を除去するためにファイバ出力で加えられて良い。
前段落において、(S)HARCビーム供給ファイバ10,11が、入力信号に匹敵するビーム品質を有する出力ビームを与えるように構成される様々な方法が説明された。しかしSHARCファイバの選択肢については、これらの方法の一部は、信号又は放射線出力の一部の損失を引き起こす恐れがある。これらの放射線損失は単純に、コア内部よりもむしろクラッド内部に残る出力を表す。これらの放射線損失は、放散されなければならないファイバ内部の熱を表さない。従ってクラッド内部で「失われる」光学出力はファイバから取り出されて良い。
クラッドから信号出力を除去する複数の方法が存在する。一の実施例ではたとえば、外側表面でのクラッド16の開口数NAは低く設計される。それによりコアから失われる出力のほとんどは、完全にファイバ10を飛び出すことが可能となる。あるいはその代わりに、他の実施例では、シリカ製の継ぎ輪が、ファイバ10の長さに沿って周期的にファイバ10の周りに取り付けられ、又は、ファイバ10に結合されて良い。一の実施例では、継ぎ輪は、クラッド16から出力を取り出し、かつ、その出力を適切な吸収体へ案内するため、SHARCファイバ10のクラッド16に対して屈折率整合して良い。換言すると、継ぎ輪の屈折率は、クラッド16の屈折率と実質的に等しい。
高出力の応用では、クラッド16内の光学出力を取り出す一の方法は以下である。第一には、SHARCファイバ10は、ガラスファイバ表面を保護するコーティング18(たとえばポリマーコーティング)を有する。一の実施例では、ポリマーコーティングは、信号波長で高い透過率となるように選ばれて良い。その結果、クラッド16内での出力は、コーティング18によって吸収されることなくファイバ10を飛び出すことが可能となる。
第二の方法は、対流によって出力を除去するように構成され得る水冷被筒内部にファイバ10を含めることである。上述の方法が、たとえば0.016m−1のような高い損失率の場合にも適切であることを保証するために解析が実行された。ファイバコア12から失われる光学出力は、ファイバから冷却被筒を介して対流によって輸送される出力qcoolantと等しくなるように設定された。ファイバコア12から失われる光学出力は式(4)によって与えられる。冷却被筒を介してファイバ10から対流によって輸送される出力は式(5)によって与えられる。
ここで、P
inは入力放射出力に対応し、P
outは出力放射出力に対応し、αはファイバ10の放散率で、Lはファイバ10の長さで、C
pはファイバ10の周辺の流体の熱容量で、dm/dtは流体の質量流で、ΔTは入力での流体と出力での流体との温度差に対応し、ρは冷却流体の密度で、Aは流体流の断面積で、かつ、Uは流体の流速である。
従って一の実施例においては、約0.016m−1のコア損失率を有する約10mのファイバ長では、コア12から失われる光学出力qopticalは約1.5kWと計算される。1cm2の水流断面積を備えるファイバ10の周りで冷却被筒を用い、かつ、入力マニホールドと出力マニホールドとの間で10℃の許容可能な温度上昇ΔTを用いることによって、必要とされる水の質量流は約37.4g/sと計算される。ただし水の熱容量Cpは4.186J/(g・℃)であることがわかっている。水の密度ρは1g/cm3なので、この質量流は流速U=9.36cm/s及び体積流2.25l/minにも等しい。これは中程度の水ポンプによって容易に維持できる。この例では水が用いられているが、任意の他の適切な冷却材が用いられても良い。
レーザー源からの高出力レーザービームを使用地点へ供給するための(S)HARCファイバ10、11の一体化は、以下のようにして実施されて良い。(S)HARCファイバ10、11の入力端部は、レーザー源に接続されて良い。レーザー源はたとえば、図3を参照する以降の段落で説明される光カプラ20を介するLMAファイバレーザー(たとえば10kWのLMAファイバレーザー)だが、これに限定されない。
図5は、一の実施例による光カプラ20を概略的に示している。一の実施例では、光カプラ20は、レーザーエネルギーを所望の使用地点へ供給するため、ファイバレーザー(図示されていない)の出力を(S)HARCファイバ10、11に結合するように構成される。一の実施例では、ファイバレーザー(信号ファイバ)と(S)HARCファイバ(供給ファイバ)10、11のいずれも、自由空間光通信を必要とすることなく、レーザー信号24を(S)HARCファイバ10、11へ伝えるモノリシックデバイスを構成するように、光カプラ20の対向する端部21と22に溶融接続される。(S)HARCファイバ10、11の出力端は、図7に図示されている端部キャップに溶融接続されて良い。端部キャップによって、(S)HARCファイバ10、11による高出力ビーム出力は、自由空間光通信を用いることなく拡張及び再整形することが可能となる。一旦出力ビームが端部キャップを飛び出すと、信号は、内側ジンバルでの任意の他の自由空間ビームと同様に処理されて良い。端部キャップの詳細な説明は、カプラについて説明した後で与えられる。
光カプラ20は、(S)HARCファイバ10、11へ注入するため、(たとえば約20μm〜30μmの直径を有する)回折限界の環状入力レーザービーム24をコリメートされた高アスペクト比の楕円ビームに再整形する。再整形されたビームの狭い寸法は、初期ビーム24のサイズに匹敵したままである。しかしビームは、必要に応じて、直交する幅の寸法を最大2mm以上に拡張及びコリメートされる。一の実施例では、光カプラ20は一体化された部材として実装されて良い。一の実施例では、光カプラ20は、小さなサイズを有するように構成され、かつ、2つの非常に異なる光ファイバ(入力ファイバレーザーと(S)HARCファイバ10、11)を、端部21と22上で光カプラ20へ接続することを可能にするように構成される。一の実施例では、入力端部21は商用の環状コアファイバを受けるように構成され、かつ、出力端22は(S)HARCファイバ10、11を受けるように構成される。しかし、容易に理解できるように、入力端部21と出力端部22はそれぞれ、(S)HARCファイバ−たとえば入力端部21での(S)HARCファイバレーザーからの(S)HARCファイバ、及び、入力端部22での(S)HARCファイバレーザーからの(S)HARCビーム供給ファイバ10,11−を受けるように構成されても良い。ビーム供給ファイバが、(S)HARCファイバレーザーコアの寸法とは異なるコア寸法を有する状況で適用されるこの後者の場合、カプラ20は、2つの(S)HARCファイバのそれぞれのコア寸法と接続するように設計される。
(図5の面に対して垂直な)速い軸方向では、光カプラ20は、一定の速い軸の寸法を維持するように通常の屈折率に基づく導波を利用する。ここで環状コア直径は長方形コアの薄い寸法と同一であると仮定する。用途が、速い軸の寸法が異なることを要求する場合、速い軸の屈折率に基づく導波は、環状ビームをコア12、42の長方形の薄い寸法に合わせる必要に応じて、光カプラ20の長さに沿って先細り又は拡張されて良い。
遅い軸方向では、環状開口部を飛び出すビームは自由に回折することが許される。しかし一の実施例では、光カプラ21の媒体は、一次元(1D)屈折率分布(GRIN)レンズとして機能する傾斜屈折率プロファイルを有するように選ばれる。一の実施例では、遅い軸のGRINレンズが、環状コアの入力ファイバを飛び出す発散ビームを基本的にコリメートする1/4ピッチ長さとなるように、光カプラ20の長さは特定される。信号ビームの1/4ピッチ長さと最終的な遅い軸の寸法のいずれも、GRIN部分内の屈折率プロファイルを適切に特定することによって制御されて良い。
光カプラ20の性能を確認するため、LMA入力ファイバの相対的に小さなコア直径(たとえば20μm)から、たとえば20μm×1mmのコアを有する(S)HARCファイバ10,11への結合を示す3D伝播シミュレーションが実行された。図6は、一の実施例による3D伝播シミュレーションの結果をグレースケールで表している。縦軸(y)は、LMAファイバと光カプラ20の内部でレーザーが伝播する距離を表す。横軸(x)は、遅い軸方向に沿ったLMAファイバと光カプラ20の寸法を表す。図6に図示されているように、入力ファイバ(たとえばLMAファイバ)を飛び出す際、レーザービームは、白の矢印の方向に、平板GRINレンズを有する光カプラ20を介して伝播する。レーザービームがy軸に沿って伝播することで、レーザービームは、図4aと図4bの面に対して垂直な速い軸方向に案内されたままである。しかしレーザービームは、光カプラ20内の平板GRINレンズの影響下で遅い軸方向(図6に図示されているようにx軸方向)において伝播する際に回折し始める。図6に図示されているように、平板GRINレンズの影響は、ビームが光カプラ20内で1/4ピッチ長さ(たとえば20mm)伝播した後にコリメートされるまで、遅い軸でのビーム発散を系統的に変化させることである。1/4ピッチ長さの端部では、レーザービームは、光カプラ20の端部で(S)HARCファイバ10,11の幅(たとえば1mm)を満たすように拡張される。特定の寸法のレーザービームとファイバを参照しながら光カプラ20が説明されているが、光カプラ20は、他のサイズ入力ファイバ及び出力ファイバに適合するように設計及び構成されて良いことがわかるだろう。
図7は、一の実施例による出力端キャップ50の概略図である。端部キャップ50の機能は、(S)HARCファイバ10,11内の信号ビームが、速い軸方向においては大きく発散し、かつ、遅い軸方向においては小さく発散して出力端キャップ50へ入射するという事実に基づいている。一の実施例では、端部キャップ50はバルクの溶融シリカから作られる。この発散角の差異によって、速い軸方向でのビームサイズと遅い軸方向でのビームサイズが実質的に等しくなる伝播距離が端部キャップ50内に存在する。端部キャップ50はこの位置で終端する。この位置は、端部キャップ50の射出面52に対応する。射出面52は、一の実施例では、遅い軸方向の発散を変化させることなく、速い軸方向での発散を緩和して遅い軸方向の値に整合させるように成形される。従って射出ビームは、略1のアスペクト比を有し、かつ、2つの直交する横方向において本質的に同一の発散を有する。たとえば(S)HARCファイバ10,11のコア12、42が10μm×2mmのサイズを有する場合、解析結果は、速い軸での上述の発散制御を実現するため、端部キャップ50の長さは約30mmで、かつ、射出面52の曲率半径は約25mmであることを示している。容易に理解できるように、単純にビームのアスペクト比を減少させたいが、最終アスペクト比を1にすることを望んでいない場合、端部キャップの長さは、そのような所望の最終アスペクト比を与えるような長さに特定されて良い。
一の実施例では、第2端部キャップが(S)HARCファイバ10,11に供されても良い。第2端部キャップは、(S)HARCファイバ10,11の入力端部に接続されて良い。第2端部キャップは、自由空間レーザービームを(S)HARCファイバ10,11へ入力させるように、固体レーザー又は他の種類のレーザーから自由空間レーザービームを受けるように構成されて良い。一の実施例では、第2端部キャップは上述の端部キャップ50と類似して良い。
前段落から理解できるように、高出力レーザービームをファイバ供給する方法は、ファイバ(ファイバ11)を供する段階を有する。前記ファイバ(ファイバ11)は、該ファイバ(ファイバ11)の遅い軸方向に沿って高アスペクト比となるように細長く延びた断面を有するコア(コア42)を有する。前記コア(コア42)は第1屈折率を有する。前記ファイバ(ファイバ11)は第2屈折率を有するクラッドを含む。当該方法は、レーザービーム(たとえば約10kW以上の出力を有するレーザービーム)を前記ファイバ(ファイバ11)へ放出する段階をさらに有する。前記レーザービームは、前記遅い軸方向に沿って前記コア(コア42)の幅wよりも小さい幅wbを有する。当該方法は、SRS及び/又はSBSの発生を緩和しながら前記ファイバ(ファイバ11)を介して前記レーザービームを伝播させる段階をさらに有する。
前段落から理解できるように、高出力レーザービームをファイバ供給する方法は、ファイバ(ファイバ10)を供する段階を有する。前記ファイバ(ファイバ10)は、該ファイバ(ファイバ10)の遅い軸方向に沿って高アスペクト比となるように細長く延びた断面を有して第1屈折率を有するコア(コア12)と、前記コア(コア12)と接触するように設けられて前記コア(コア12)を挟んで第2屈折率を有する第1信号クラッド及び第2信号クラッド(クラッド14)と、前記コア(コア12)の少なくとも側部端(端部13)を実質的に取り囲んで第3屈折率を有する第3クラッド(クラッド16)を有する。前記コア(コア12)の第1屈折率と前記第3クラッドの第3屈折率との差は小さい(たとえば500ppm未満(たとえば10―4))。当該方法は、レーザービーム(たとえば約10kW以上の出力を有するレーザービーム)を前記ファイバ(ファイバ10)へ放出する段階をさらに有する。前記レーザービームは、前記遅い軸方向に沿って前記コア(コア12)の幅wよりも小さい幅wbを有する。当該方法は、SRS及び/又はSBSの発生を緩和しながら、前記ファイバ(ファイバ10)に沿って伝播する高次の横方向の遅い軸モードを実質的に除去するため、低次の横方向の遅い軸の電磁モードの損失よりも大きな高次の横方向の遅い軸の電磁モードの損失を供するように、前記ファイバ(ファイバ10)を介して前記レーザービームを伝播させる段階をさらに有する。
本開示の実施例には様々な応用が存在する。たとえば、戦艦用レーザーシステムでは、(S)HARCファイバ10,11は、デッキ後方に(複数の)レーザー光源を設置することを可能にする。(複数の)レーザー光源からビームは、肘型に曲がった経路を必要とすることなく、(S)HARCファイバ10,11を介して、ビームディレクタ装置へ直接向かうように経路の再設定がなされ得る。たとえば航空機系のレーザー兵器システムでは、SHARCファイバ10,11は、航空機の重心と飛行特性を最適化することを可能にする乗物上の位置で(複数の)レーザー光源をパッケージングすることを可能にする。これらの位置から、レーザーは、(S)HARCファイバ10,11を用いることによって所望の地点へ供給され得る。
従って本願で説明した(S)HARCファイバ10,11は、効率的なパッケージングを可能にしながら、所望の位置への任意のレーザービームの供給を含む広範な用途を有する。(S)HARCファイバ10,11によって与えられる複数の利点のうちの1つは、レーザー光源からの出力ファイバがわずか数メートルの長さとなるように構築されるときに生じる軍事プラットフォームでのパッケージングの困難を解決することである。(S)HARCファイバ10,11は、ファイバレーザー光源からビームディレクタータレット装置への(複数の)レーザービームの伝送を可能にする。ビームディレクタータレット装置では、(複数の)ファイバからの(複数の)ビームは自由空間へ放出されて結合して良い。
ビーム供給中、ファイバ10,11はたとえば、レーザー発生装置からビーム制御システムの内側ジンバルへHELビームを伝播させるのに用いられて良い。それにより、より典型的な肘型に曲がった経路は置き換えられる。ファイバ10,11は、不規則な変形によって不規則な回数撓むことができなければならない。なぜならビームディレクタは、2つの角度の自由度で(ときには迅速に)動くことがあり得るからである。つまりファイバ10,11は、仮定された2軸のジンバル集合体のいずれの角度の自由度にも適合できなければならない。一の実施例では、ファイバ10,11が一貫して、一の方向にのみ曲がり、かつ、ファイバを90℃ねじることによって必要となるときにその方向を変化させるように、ファイバは2つの各対応する変位方向の各々に沿って位置合わせされて良い。この方法によって、ファイバ10,11は、2つの直交する方向に沿った角度方向の変位に適合することが可能となる。しかし上述したように、HARCファイバの長方形コアをねじることで、その長方形コアの遅い軸の面内で負の屈折率分布(GRIN)レンズが生成され得る。よってファイバ10,11を90°ねじることによる歪みが生じる恐れがある。
図8は、ねじり角の関数としてのねじりが誘起する焦点距離を表す理論モデルの計算結果と、0〜0.35ラジアンの範囲のねじり角の範囲にわたって測定されたねじりが誘起する焦点距離を示している。図8に図示されているように、約30cmのねじれ長さに沿って一定のねじれ率で、ねじれレンズは単調増加して0.35ラジアンで0.4ジオプターに到達した。少なくとも0〜0.35ラジアンのねじれ角の範囲では、モデルはデータと一致する。モデルは以下の式に基づいている。
FT=LT/φ2 (6)
ここで、ねじれレンズの焦点長FTは、ねじれ角φとねじれが課されるファイバ長LTの関数である。
供給ファイバの長さが約10m以上であって良いので、ねじれレンズは、単純にビーム供給ファイバ10,11のいずれかの端部に補正光学系を用いることによっては十分に補償できないほどに強くなる恐れがある。よって一部の実施例では、ビーム供給ファイバ中でのねじれは、全体のファイバ長に沿った所定の一でしか起こらなくて良い。たとえばこれは、ビーム供給ファイバ10,11に沿った適切な位置でビーム供給ファイバ10,11に接続され得る光ファイバねじれモジュール100を用いて実現され得る。
図9に図示された実施例では、光学ねじれモジュール100は、第1端部102、第2端部104、及び、第1端部102と第2端部104との間のねじれ部分106を有する光ファイバ101を有する。ねじれ部分106は歪み効果を生じさせる。光学ねじれモジュール100は、歪み効果を補償する補償装置108を有し、さらにねじれ部分106を含む光ファイバ101の少なくとも一部を格納するように構成される筐体110を有する。一の実施例では、筐体110は密閉封止された筐体である。ファイバ101の第1端部102は、動作するように入力ファイバ112へ接続するように構成される。第2端部104は、動作するように出力ファイバ114へ接続するように構成される。一部の実施例では、入力ファイバ112と出力ファイバ114はファイバ101と一体化されて良い。他の実施例では、入力ファイバ112と出力ファイバ114とファイバ101は、互いに動作するように接続される別個の部品であって良い。ファイバ101、102及び/又は114はHARCファイバ又はSHARCファイバのいずれかであり得ることが予想される。
図9の実施例では、歪み補償装置108は、ねじれ部分106から生じる歪み効果を補償するように構成されたレンズ装置を含む。図8と式(6)によると、約90°のねじれ角では、ねじれレンズの焦点長は、ファイバのねじれ領域の長さの約半分でなければならない。従ってねじれレンズの補償は、1つ以上の自由空間シリンドリカルレンズを用いることによって実現されて良い。シリンドリカルレンズは、レンズの画像平面の焦点に位置する平板導波路へ入射する環状ビームを自由空間結合させるのに用いられて良い。
一の実施例では、ねじれモジュール100は、複数のシリンドリカルレンズ116a−116fが直列に結合したものを含む歪み補償装置108と、任意で入力端部及び/又は出力端部に設けられた少なくとも1つの偏光部材(図示されていない)をも有する。レンズ116a−116fは従来の屈折レンズであって良い。とはいえ他の種類のレンズ−たとえば平板GRINレンズ−が用いられても良い。レンズ116a−116f及びファイバ101は、各々の端部に入力ファイバ112と出力ファイバ114を有する筐体110内に含まれて良い。モジュール100は、様々な遠隔通信部品−たとえばアイソレータ又は誘電フィルタ−と似たような方法で実装されて良い。たとえばアイソレータと誘電フィルタはすべて、モジュールをファイバ系システムへ単純に結合することを可能にするファイバピグテイルを有するモジュール内に含まれる自由空間部品を具現化する。具体的にはモジュール100は、これらの部品がファイバ系システムへ結合することを可能にするそれぞれの端部に入力ファイバ112と出力ファイバ114を有する。モジュール100は、ある範囲の環境の条件にわたって光学素子間での光学的位置合わせを維持するように設計されて良い。
入力ファイバ112の入力端部は、入り込むHARCファイバ又はSHARCファイバ(図9には図示されていない)に結合されて良い。出力ファイバ114の出力端部は、出て行くHARCファイバ又はSHARCファイバ(図9には図示されていない)に結合されて良い。シリンドリカルレンズ116a、116bは、ビームをコリメートして、そのビームをファイバ101のねじれ部分106へ案内するように構成されて良い。ファイバの広い寸法は、基本的に回折広がりがこの寸法において起こらないように十分広くて良い。しかしさらなるレンズが、遅い軸方向におけるビームをコリメートするように供され得ることも予想される。レンズ116cは、ファイバ101のねじれ部分106から生じる平板状の負のねじれレンズを少なくとも部分的に補償する「事前の歪み(pre−distortion)」として遅い軸方向のビームを収束させるように構成されて良い。図9に図示されているように、ねじれ部分106において90°ねじれた後のファイバ101の遅い軸方向は、ねじれ部分106の前のファイバ101の遅い軸方向に対して垂直である。レンズ116dは、遅い軸方向のビームを出力ファイバ114へ結像することによってねじれレンズの補償を完了させるように構成されて良い。レンズ116e、116fは、速い軸方向のビームをコリメートし、かつ、そのビームを出力ファイバ114へ向かうように案内するように構成されて良い。出力ファイバ114は続いて、他のHARC供給ファイバ(図9には図示されていない)に結合されて良い。上述したように、レンズ116a−116f、ねじれ部分106を有するファイバ101、及び入力ファイバ112と出力ファイバ114の一部は筐体110内に含まれて良い。
他の実施例では、光ファイバねじれモジュール100(図10参照)は、光ビームがファイバ114の出力端部に到達するまでファイバ媒体を飛び出さない全ファイバモジュール又は全ガラスモジュール(図10には図示されていない)を用いて良い。ここでファイバ114の出力端部は、自由空間へ遷移するか、又は、他のファイバに結合される。他のファイバはHARCファイバ又はSHARCファイバであって良い。ファイバ101とファイバの入力端部112と出力端部114は図10には図示されていないが、モジュール100が筐体110内に含まれるそのような特徴部を有することには留意して欲しい。係る実施例では、ファイバ101と入力端部112と出力端部114のすべては、単一のファイバの一体となった長さであって良い。係る実施例では、上述の自由空間レンズ装置を用いるのではなく、モジュール100は、他の形態の歪み補償装置を有して良い。補償装置又は方法は、ねじれレンズが、焦点距離がねじれ領域の長さとねじれ角の両方に依存する、実効的な負の1D屈折率分布(GRIN)レンズとして光学的には動作するという事実に基づく。よって一の実施例では、歪み補償装置は、ねじれ部分106から生じる負のGRINレンズ効果のパワーとは反対でかつ実質的には等しいレンズパワーを有する正のレンズ効果を有する。つまり補償装置は、ファイバのねじれ部分を起源とする負のレンズのパワーに等しくて反対のレンズパワーを有する正のGRINレンズをねじれ領域のコア内に構築する段階を有して良い。一の実施例では、正のレンズ効果は、市販の2DGRINレンズを生成するのに通常行われているように、コア内に遅い軸の屈折率変化を生成することによって発生する。あるいはその代わりに又はそれに加えて、正のレンズ効果は、遅い軸方向に沿ってファイバ101のコアの厚さプロファイルを形成することによって発生し得る。
上述の組み込みGRINレンズ補償装置のいずれか一が用いられて良い。一の実施例では、モジュール100は、ねじれ部分106の長さを調節するのに用いられ得る端部マウント120,122を含む端部マウント装置をも有して良い。端部マウント120,122は、ねじれレンズの補償を微調整することで、モジュール100内で用いられているねじれ部分106又は補償装置のいずれかから任意の残留レンズパワーを軽減又は除去するのに用いられて良い。式(6)に示されているように、所与のねじれ角では、ねじれレンズは、ねじれ長さを変化させることによって調節されて良い。よって、長さLにわたって90°のねじれ部分を含むモジュール100を有する実施例では、任意の正味の光学歪みを除去するように、組立中にモジュール100は調節されて良い。
図10に図示された実施例では、端部マウント120,122の各々には、ファイバ101の薄い寸法と同程度の厚さと幅を有するように構築及び配置されたスロット124が供される。ファイバ101の少なくとも一部はスロット124内に含まれる。筐体110−この実施例では管の形態をとる−は、内部に供された長手方向スロット126と127を有する。一の実施例では、スロット126は筐体の全長に及ぶ。スロット126の一の機能は、ファイバを側部から筐体へ挿入可能にすることである。スロット127(この斜視図では一部が図示されていない)は、端部マウント120,122の長さよりも数倍長い。スロット126と127は、端部マウント120,122が筐体110に接続されるときに端部マウント120,122のフランジ128を受けるように構築及び配置される。一の実施例では、端部マウント120,122は相互に90°をなすように回転し、それぞれ筐体110の第1端部130と第2端部132上でスロット126内に入り込むように設けられる。スロット126と127は、端部マウント120,122の長さよりも長くなるように構築及び配置されて良い。それにより端部マウント120,122は、筐体110に沿って長手方向にスライドし、その結果端部マウント120と122との間の間隔を変化させることが可能となる。端部マウント120と122との間の間隔を変化させることによって、ねじれ長さつまりはねじれレンズの強度は、一定のねじれ角を維持しながら調節されて良い。参照光ビームはモジュール100へ放出されて良い。伝送されたビームの品質は、ねじれレンズの証拠が残っているのか否かを判断するためにモニタリングされて良い。歪みが検出される場合、ねじれ長さは、端部マウント120と122との間の間隔を調節することによって調節されて良い。端部マウント120,122が、参照ビーム中での任意の正味の光学歪みを除去又は緩和するように、ねじれ長さを調節するように調節される間、伝送されたビームの品質は、連続的にモニタリングされて良い。
他の実施例では、モジュール100は、その場での長さ調節を可能にするように構築及び配置されて良い。係る実施例では、ビーム供給ファイバシステムの最終システム一体化後に、端部間試験中に最終の最適調節が可能となるように、通り抜ける部位又はスライドする部位が、筐体110と端部マウント120,122に加えられて良い。一の実施例は、スロット126による筐体110内に固有な適合性の利点を利用し、かつ、機械ショップで見かける標準的なコレットクランプに似た端部マウント120と122に筐体110を圧搾するように小さなバンドクランプを用いることである。これにより、設置後の微細な位置合わせが可能となり、かつ、永続的又は繰り返し調節のために、位置を固定する相対的に単純な方法が供される。
さらに他の実施例では、光ファイバモジュールは、それぞれ長さL1、L2、及びL3を有する3つの部分(第1部分、第2部分、及び第3部分)に分割されて良い。第1部分と第3部分はそれぞれファイバの45°ねじれ部分を有して良い。45°ねじれ部分は一緒になると、90°ねじれ部分に等しい。係る実施例では、歪み補償装置は、上述の2つの全ガラス歪み補償方法及び装置のうちの一を有して良い。しかし製造許容度のため、補償は十分ではなく、歪みが残る恐れがある。ねじれ長さL1とL3を調節することによって、ねじれ角が一定のままである一方、2つの端部でのねじれ長さは変化して良い。よって参照レーザービームはモジュールへ放出されて良い。伝送ビームの品質は、残留ねじれレンズ効果が存在するのか否かを判断するためにモニタリングされて良い。歪みが検出される場合、参照ビームにおける正味の光学歪みを緩和又は除去することのできるねじれ長さとL3の値を判断するため、ビーム品質が連続的にモニタリングされている間に、ねじれ長さL1とL3が調節されて良い。
さらに他の実施例では、光ファイバねじれモジュールは、それぞれ長さL1、L2、及びL3を有する3つの部分(第1部分、第2部分、及び第3部分)に分割されて良い。第1部分と第3部分はそれぞれ、最初はファイバの45°ねじれ部分を有して良い。45°ねじれ部分は一緒になると、90°ねじれ部分に等しい。しかしこの実施例では、歪み補償装置は、ねじれ部分から生じる歪みを補償するように構成されて良い。この過補償は、第2部分にさらなるねじれを与えて、そのねじれを45°よりも増大させることによって排除されて良い。選ばれた角を有するねじれが第2部分に供されている間、参照ビームはモジュールへ放出されて良く、かつ、伝送ビームの品質はモニタリングされて良い。よって正味の歪みを除去又は緩和する第2部分での十分なねじれを判断するために伝送ビームの品質をモニタリングする間に、第2部分でのねじれは調節されて良い。第2部分のファイバがねじられることで、ファイバ光学モジュールの対向する端部は、第3部分でのねじれ角が、45°未満で、かつ、第1部分でのねじれ角に対して相補的であることを保証するように確実に保持すなわち固定されなければならないことに留意して欲しい。
上述の実施例では、一旦、正味の歪みが緩和又は除去されるようにねじれモジュールが調節されると、機械的構造物は、補償がモジュールの使用中に変化しないように、すべての長さとねじれの値を固定するように永続的に保持するのに用いられて良い。一の実施例では、端部マウント120と122はたとえば、最適位置合わせ状態への補償を永続的に固定するように、筐体100に結合されて良い。従ってモジュールは、ファイバ系システムで必要とされるときにすぐに用いることができる。
図8でプロットされたデータとモデルは、ねじれ部分の影響下でのコア端部の線形伸張以外の歪みを説明しない。よって図8でプロットされたデータを生じさせた実験において印加されたねじれ角では、単純なGRINレンズ以外の歪みは存在しなかった。しかし少なくとも一部の実施例、及び、少なくとも一部の状況では、大きなねじれ角から生じるねじれレンズは、単純な平板GRINレンズだけではなく、偏光ゆがみをも含み得る。そのような偏光歪みが生成される場合、そのような偏光歪みは、少なくとも1つの偏光素子を用いて、ねじれモジュールを飛び出すビームの偏光状態を入力ビームの偏光状態と実質的に同一だが、ねじれ角によって回転するように調整することによって補償されて良い。たとえば、直線偏光ビームの向きは、光学軸が初期の偏光に対して角度θをなす半波長板にビームを通過させることによって、角度2θだけ回転されて良いことが、当技術分野において周知である。それに加えて、分数波長板が、直線偏光を楕円偏光へ又はその逆に変更して良い。
一部の実施例及び一部の状況では、大きなねじれ角から生じるねじれレンズはさらなる高次歪みをも含み得る。そのような歪みが生成される場合、ねじれ長さは、高次歪みが緩和又は除去されるねじれ率を生成するように増大されて良い。しかしねじれ長さがモジュールの許容可能な長さを超える場合、ねじれの全長は、合計の必要とされるねじれに加えられる一連の小さなねじれに分割され、かつ、ファイバは、より小型のモジュールサイズを供するようにねじれ間で折り曲げられて良い。たとえば20°のねじれがさらなる歪みなしで実現され得る場合、90°のねじれは、4回の20°のねじれと1回の10°のねじれで構成されて良い。代替例には、5回の18°のねじれ又は6回の15°のねじれが含まれて良い。従ってモジュールは多数の部分に分割されて良く、かつ、各部分は合計の必要とされるねじれに加えられるねじれ部分を含んで良い。
ねじれモードのさらに別な実施例は、ねじれファイバ101の代わりに、図13に示されているように、ねじれた中空コア導波路を含む。この方法は、ガラス又は他の固体材料で構成される長方形コアにおいて生じる恐れのある高次歪みを回避する。中空導波路は、間を伝播する光を反射させる2つの薄い平行な可撓性の板151,153で作られて良い。薄い板151,153は、金属、未加工(bare)のガラス、コーティングされていないガラス、金属でコーティングされたガラス、又は、わずかな光学損失で光を透過させる他の材料で作られて良い。この実施例は複数の利点を供する。まず第1に、中空導波路はレーザー損失に対して高い耐性を有する。板間の空間を満たす空気又は真空は非常に高い損傷閾値を有する。光放射線は大きな入射角で反射面へ入射することで、それらの面の損傷閾値も高くなる。第2に、板は、伝播するビーム自身よりもはるかに広くなるように特定されて良い。それにより導波路の遅い軸の端部からのビームの反射が回避される。第3に、薄い板151,153は、遅い軸方向で成形され得る。その結果、中空コアの断面形状は凹型又は凸型のいずれかに修正される。この設計の自由度は、ねじれレンズを補償する正のレンズ効果を微調整するのに利用され得る。補正器108は、ねじれモジュール入力でビームサイズの伸張及びコリメーションを行い、かつ、モジュール出力で光ファイバの遅い軸の幅と一致するように再度ビームを収縮させるのに用いられて良い。一の実施例では、中空コアの寸法は、HARCの入力及び出力ファイバのそれぞれのコア寸法と略一致して良い。この構成では、倍率が〜1の相対的に単純なインターフェース光学系の利用が可能となる。しかし中空コアの伝播損失が許容可能な値よりも大きい場合、導波路の伝播損失が導波路の寸法の3乗に反比例するという利点を生かすため、ビームは中空コアへ入射する前に伸張されて良い。たとえば速い軸の寸法が2倍になることで、伝播損失は8倍減少する。
一部のビーム供給システムは、静止した底部に対して回転可能な部分を有する。つまりファイバ10,11は、静止物体と回転物体の両方に接続されて良い。そのような状況では、ビーム供給ファイバ10,11は、ビーム供給ファイバ10,11をねじることなく、静止物体から回転物体へ遷移可能でなければならない。ファイバ10,11のねじれを防止するため、ファイバ10,11は、たとえば図12aに図示されているような光ファイバ装置又は構造134を構成するように平坦なテープ状構造上にまとめられて良い。図12aの実施例では、6つのファイバが、2層のポリイミドの間にまとめられ、又は、配置されている(図12b参照)。さらなる層が、ファイバ構造134を強化するために追加されて良い。少ない層がファイバ構造134内に供されても良いことにも留意して欲しい。たとえば一部の実施例では、光ファイバ装置構造134は、1層のファイバ10を有して良い。中心のファイバは、曲がり応力を抑制するように構成されて良い。ファイバ構造134は、「回転ループ(rolling loop)」を供するように十分な可撓性を有して良い。回転ループについては以降で詳述する。このファイバ構造134はまた、長方形ファイバの速い軸についてのみ曲がることで、ファイバ内での意図しないねじれを防止することをも可能にする。
図11a−図11cは、ファイバ構造134又は(S)HARCファイバ10,11を用いる「回転ループ」方法の実施例を示している。たとえば図11aに図示されているようなファイバ構造134の場合では、回転する曲率を有する内側部分が、ビームディレクターハードウエアの固定された曲率を有する外側部分と同心円をなすように供される。図11aの実施例では、内側部分の半径は6インチで、かつ、外側部分の半径は12インチである。これらの半径は、特定の実施例を支持するように変化して良い。これらの半径は、結果として生じる曲がり応力がファイバ内において損失及び/又はモード結合を誘起する曲がりの大きさによってのみ制限される。そのような曲がりが誘起する損失及びモード結合に対する許容度は、内側筐体と外側筐体との間及び内側ハブ自身の「回転ループ」部分での最小の許容可能な曲がりを設定する。ファイバ構造134は、2つの同心円部分138と140の間で機械的に制約される。ファイバ構造134は、地点Aで内側部分138に接続され、かつ、地点Bで外側ループに接続されて良い。ファイバ構造134は、地点AとBとの間に形成されるループ142を有して良い。ループ142の位置は、内側部分138の回転中、地点AとBとの間でファイバ構造134の長さを一定に維持するように変化して良い。一の実施例では、ファイバ構造134は、地点AとBとの間で1mの長さを有する。一の実施例では、システムは、視線の中心(線C)に対して約±150°の方位方向の範囲を有する。図11aは、反時計回りの方向に内側部分138の方位を+150°回転させるファイバ構造134によって構成される「回転ループ」を示している。図11aに図示されているように、ループ142の位置は、ビームディレクタの回転を供するように図11bに示された位置から約50°移動した。図11cは、図11bに示された位置から時計回りに内側部分138を−150°方位方向に回転させるように、図11bに図示された位置から−50°移動した。ファイバ構造134とファイバ構造134を用いた「回転ループ」法は、ファイバ10をねじることなく、ファイバ10に、ファイバの回転自由度を供することを可能にする。
ファイバ構造134は、上述の第1回転自由度によるファイバの遷移を可能にする。「回転ループ」法を用いた遷移の後、光ファイバねじれモジュール100は、ビーム供給ファイバに結合されて良い。これにより、ビーム供給ファイバは、第2自由度において要求される任意の曲がりを供することが可能となる。さらなる光ファイバモジュール100及び/又はファイバ構造134を用いた回転ループの構成は、さらなる回転及び/又は曲がりを供するようにファイバの他の部分に供されて良い。上述の実施例はファイバ構造134を参照しながら説明されているが、(S)HARCファイバ10,11について同様の実施例が供されても良い。
本開示では、「光ファイバ」という用語は、可視、紫外、及び赤外を含む任意の波長範囲の放射線を伝送又は運搬することの可能な任意のファイバを含むものとして広義に用いられる。たとえばファイバは溶融シリカで作られて良いが、所望の可撓性及び所望の伝送特性を与える他のファイバ材料で作られても良い。たとえばファイバは、中赤外範囲で所望の伝送特性を有するカルコゲナイド材料で作られて良い。
上記の説明は、現時点で最も実用的な実施例と考えられるものに基づいた例示目的で与えられた。しかし、係る詳細は単にその目的のためであり、かつ、本発明の基本概念は開示された実施例に限定されず、対照的に、特許請求の範囲に記載された発明の思想及び範囲に属する修正型及び均等な構成を網羅することを意図していることに留意して欲しい。たとえば本開示は、可能である限り、任意の実施例の1つ以上の特徴が他の実施例の1つ以上の特徴と組み合わせられて良いことに留意して欲しい。
さらに多数の修正型及び変化型が、当業者には容易に思いつくので、本発明の基本概念を、本願明細書で説明された厳密な構成及び動作に限定することは望ましくない。従って全ての適切な修正型及び均等型は、本発明の基本概念の思想及び範囲に属するものとして考慮されなければならない。
本発明の実施例に関し、更に、以下の項目を開示する。
(1)第1端部、第2端部、及び、前記第1端部と前記第2端部との間にねじれ部分、を有する光ファイバであって、前記ねじれ部分は前記光ファイバに2つの直交する横方向の曲げ自由度を供させることを可能にし、前記ねじれ部分は光学歪みを有する、光ファイバ;
前記光学歪みを少なくとも部分的に補償するように構成される歪み補償装置;並びに、
前記ねじれ部分を含む前記光ファイバの少なくとも一部を格納するように構成される筐体、
を有する光ファイバモジュール。
(2)前記第1端部が、動作するように入力ファイバへ接続するように構成され、かつ、
前記第2端部は、動作するように出力ファイバへ接続するように構成される、(1)に記載の光ファイバモジュール。
(3)前記歪み補償装置が、前記ねじれ部分から生じる前記光学歪みを補償するように構成されるレンズ装置を有する、(2)に記載の光ファイバモジュール。
(4)前記レンズ装置が、レーザービームをコリメートして、前記レーザービームを前記ねじれ部分へ案内するように構成される少なくとも1つのシリンドリカルレンズを含む、(3)に記載の光ファイバモジュール。
(5)前記レンズ装置が、前記出力ファイバへ向かう遅い軸方向においてビームエネルギーを収束させるように構成される1つのシリンドリカルレンズを含む、(3)に記載の光ファイバモジュール。
(6)前記歪みが偏光状態の歪みとして現れ、かつ、
前記補償装置は、前記ねじれ部分から生じる偏光歪みを補償するように構成される少なくとも1つの偏光部材を有する、(2)に記載の光ファイバモジュール。
(7)前記少なくとも1つの偏光部材が波長板を含む、(6)に記載の光ファイバモジュール。
(8)前記筐体が密閉封止された筐体である、(1)に記載の光ファイバモジュール。
(9)前記ねじれ部分が90°のねじれを有する、(1)に記載の光ファイバモジュール。
(10)前記光学歪みが負のレンズ効果によって供される、(1)に記載の光ファイバモジュール。
(11)前記歪み補償装置が、前記負のレンズ効果のパワーとは反対で、かつ、実質的に等しいレンズパワーを有する正のレンズ効果を有する、(10)に記載の光ファイバモジュール。
(12)前記光ファイバがコアを有し、かつ、
前記正のレンズ効果は、前記コアの内部に遅い軸の屈折率変化を生成することによって発生する、(11)に記載の光ファイバモジュール。
(13)前記光ファイバがコアを有し、かつ、
前記正のレンズ効果は、前記遅い軸方向に沿って前記コアの厚さのプロファイルを、前記光ファイバの軸に沿って中間部では前記コアを厚くして、前記コアの端部付近では狭くするように形成することによって発生する、(11)に記載の光ファイバモジュール。
(14)前記ねじれ部分の長さを調節するように構成される端部マウント装置をさらに有する、(1)に記載の光ファイバモジュール。
(15)前記端部マウント装置が、前記ねじれ部分の長さを調節するように、互いにスライド可能に構成される2つの端部マウントを有する、(14)に記載の光ファイバモジュール。
(16)前記端部マウントが、前記ねじれ部分の長さを固定するように互いに固定されて構築及び配置される、(15)に記載の光ファイバモジュール。
(17)前記端部マウントが、前記ねじれ部分の長さを固定するように前記筐体に結合される、(16)に記載の光ファイバモジュール。
(18)前記光ファイバモジュールは、各々が選ばれた長さを有する複数の部分に分割される、(1)に記載の光ファイバモジュール。
(19)前記複数の部分のうちの少なくとも1つが、前記光ファイバのねじれ部分を含む、(18)に記載の光ファイバモジュール。
(20)前記複数の部分のうちの2つは、各々が45°のねじれを有するねじれ部分を含み、その結果合計で90°のねじれを供する、(19)に記載の光ファイバモジュール。
(21)前記ねじれ部分の長さを調節するように構成される端部マウント装置をさらに有する、(20)に記載の光ファイバモジュール。
(22)前記端部マウント装置が、前記ねじれ部分の長さを調節するように、互いにスライド可能に構成される2つの端部マウントを有する、(21)に記載の光ファイバモジュール。
(23)前記端部マウントが、前記ねじれ部分の長さを固定するように互いに固定されて構築及び配置される、(22)に記載の光ファイバモジュール。
(24)前記複数の部分の各々が、ねじられ、かつ、ねじれ部分を有し、
前記複数の部分の各々の各ねじれ部分は、前記のねじれた複数の部分でのねじれの合計が90°に等しくなるようなねじれの大きさを有する、(19)に記載の光ファイバモジュール。
(25)前記ねじれ部分の長さを調節するように構成される端部マウント装置をさらに有する、(24)に記載の光ファイバモジュール。
(26)前記端部マウント装置が、前記ねじれ部分の長さを調節するように、互いにスライド可能に構成される2つの端部マウントを有する、(25)に記載の光ファイバモジュール。
(27)前記端部マウントが、前記ねじれ部分の長さを固定するように互いに固定されて構築及び配置される、(26)に記載の光ファイバモジュール。
(28)2つの直交する横方向の曲げ自由度を供する長方形コアのレーザービーム供給ファイバを実装する方法であって:
第1端部、第2端部、及びコアを有するファイバを供する段階;
前記第1端部と前記第2端部との間の部分で前記ファイバをねじる段階;並びに、
前記ねじれ部分から生じる光学歪みを補償する段階、
を有する方法。
(29)前記ねじれ部分の長さを調節することによって前記補償を微調整する段階をさらに有する、(28)に記載の方法。
(30)前記光学歪みが負のレンズ効果で、かつ、
前記負のレンズ効果を補償する段階は、前記遅い軸方向に沿って前記コアの厚さのプロファイルを、前記ファイバの軸に沿って中間部では前記コアを厚くして、前記コアの端部付近では狭くするように形成する段階を含む、(28)に記載の方法。
(31)前記光学歪みが負のレンズ効果で、かつ、
前記負のレンズ効果を補償する段階は、前記コアの内部に遅い軸の屈折率変化を生成する段階を含む、(28)に記載の方法。
(32)前記光学歪みが負のレンズ効果で、かつ、
前記負のレンズ効果を補償する段階は、エネルギービームをコリメートして、前記エネルギービームを前記ねじれ部分へ案内して、前記第2端部へ向かって遅い軸方向において前記エネルギービームを収束させるように構成される複数のシリンドリカルレンズを供する段階を含む、(28)に記載の方法。
(33)前記歪みが偏光状態の歪みとして現れ、かつ、
補償装置は、前記ねじれ部分から生じる偏光歪みを補償するように構成される少なくとも1つの偏光部材を有する、(28)に記載の方法。
(34)前記少なくとも1つの偏光部材が波長板を含む、(33)に記載の方法。
(35)第1ポリマー層と第2ポリマー層、
前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との間に配置された光ファイバ、
を有する光ファイバ装置であって、
前記光ファイバは、速い軸方向における前記光ファイバの曲がりが許容され、かつ、前記光ファイバのねじれが防止されるように、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との間に配置される、
光ファイバ装置。
(36)ビームディレクタの回転部に接続されるように構築及び配置される第1端部と前記回転部に対して同心円の静止部に接続されるように構築及び配置される第2端部をさらに有する(35)に記載の光ファイバ装置であって、
前記光ファイバは、前記回転部から前記静止部への遷移中に前記速い軸方向において曲がる、光ファイバ装置。
(37)前記光ファイバに対して平行に配置される少なくとも1つの他の光ファイバをさらに有する(35)に記載の光ファイバ装置であって、
前記少なくとも1つの他の光ファイバと前記光ファイバは、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との間に配置される、光ファイバ装置。
(38)前記ポリマー層がポリイミドを有する、(35)に記載の光ファイバ装置。
(39)第1端部と第2端部を有する光ファイバを含む光ファイバ装置であって、
前記第1端部は、ビームディレクタの回転部に接続されるように構築及び配置され、
前記第2端部は、前記回転部に対して同心円の静止部に接続されるように構築及び配置され、かつ、
前記光ファイバは、前記回転部から前記静止部へ遷移する間、速い軸方向において曲がる、
光ファイバ装置。
(40)第1ポリマー層と第2ポリマー層をさらに有する(39)に記載の光ファイバ装置であって、
前記光ファイバは、前記速い軸方向における前記光ファイバの曲がりが許容され、かつ、前記光ファイバのねじれが防止されるように、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との間に配置される、光ファイバ装置。