JP2018064719A - 眼球の光計測装置 - Google Patents

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浩平 湯川
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純一朗 早川
佳則 白川
Yoshinori Shirakawa
佳則 白川
一隆 武田
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一隆 武田
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Abstract

【課題】補正部を備えない場合に比べ、眼房水に含まれる光学活性物質の濃度を精度よく測定する。【解決手段】眼球の光計測装置1は、被計測者の眼球10の前眼房13に向けて光を照射する光照射部20Aと、前眼房13を透過した光を偏光分離する偏光分離素子23と、偏光分離素子23により分離された偏光を受光する複数の検出器24A、24Bと、を有する光検出部20Bと、前眼房13と光検出部20Bとの間の光路25に退避可能に設けられ、偏光分離素子23に対して予め定められた角度の偏光を透過する補正用偏光子27を有する補正部20Cと、を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、眼球の光計測装置に関する。
特許文献1には、レーザー光を投光する手段と、投光部と同軸上に配置された受光部と、この光軸と所定の距離離れて光軸に平行に配置された鏡とからなり、この鏡がそのほぼ中央に立てた垂線が投光部と受光部を結ぶ直線とそのほぼ中央で交わる向きに配置される事を特徴とする、眼球の所定の部分に光を通す為に使用される眼球測定位置決め用具が記載されている。
特開2002−570号公報
被計測者の眼球の前眼房に光を出射し、前眼房を通過した光を偏光分離し複数の検出器を備えた光検出部にて受光して、眼房水に含まれる光学活性物質の濃度を測定する構成において、複数の検出器の特性の差、及び、被計測者の眼球の生体振動や角膜の状態変化により眼球と光検出部との間の位置関係が安定しないことから、測定精度が低下するおそれがある。
本発明は、補正部を備えない場合に比べ、眼房水に含まれる光学活性物質の濃度を精度よく測定することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、被計測者の眼球の前眼房に向けて光を照射する光照射部と、前記前眼房を透過した光を偏光分離する偏光分離素子と、当該偏光分離素子により分離された偏光を受光する複数の検出器と、を有する光検出部と、前記前眼房と前記光検出部との間の光路に退避可能に設けられ、前記偏光分離素子に対して予め定められた角度の偏光を透過する補正用偏光子を有する補正部とを備える眼球の光計測装置である。
請求項2に記載の発明は、前記前眼房と前記光検出部との間の光路に前記補正部を挿入し、当該光検出部における複数の前記検出器から第1の測定値組を取得し、前記前眼房と前記光検出部との間の光路から前記補正部を退避させ、当該光検出部における複数の前記検出器から第2の測定値組を取得し、前記第2の測定値組を、前記第1の測定値組で補正することを特徴とする請求項1に記載の眼球の光計測装置である。
請求項3に記載の発明は、前記第1の測定値組は、前記前眼房を通過した光に対して取得されることを特徴とする請求項2に記載の眼球の光計測装置である。
請求項4に記載の発明は、前記第2の測定値組は、前記第1の測定値組に含まれる複数の前記検出器のそれぞれにおける測定値の比に基づいて補正されることを特徴とする請求項2又は3に記載の眼球の光計測装置である。
請求項5に記載の発明は、前記補正部は、前記前眼房と前記補正用偏光子との間に、偏光を解消する偏光解消素子を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の眼球の光計測装置である。
請求項1の発明によれば、補正部を備えない場合に比べ、眼房水に含まれる光学活性物質の濃度を精度よく測定できる。
請求項2の発明によれば、第1の測定値組で第2の測定値組を補正しない場合に比べ、複数の誤差要因がまとめて補正される。
請求項3の発明によれば、第1の測定値組を前眼房を通過した光に対して取得しない場合に比べ、補正の精度が向上する。
請求項4の発明によれば、第1の測定値組に含まれる複数の測定値の比によって補正しない場合に比べ、補正値の算出が容易になる。
請求項5の発明によれば、偏光解消素子を有しない場合に比べて、補正の精度がより向上する。
眼球及び光路を説明する図である。(a)は、眼球の目頭側から目尻側に結んだ面での断面図、(b)は、眼球の正面図である。 本実施の形態が適用される眼球の光計測装置の概要を示す図である。 補正部の挿入状態と退避状態とにおける光信号電圧について説明する図である。(a)は、挿入状態、(b)は、退避状態である。 規格化された偏光状態の変化量と波長との関係を説明する図である。 図2に示した眼球の光計測装置の光学系及び被測定物である眼球の角膜及び前眼房の眼房水に対して、ミュラー行列及びストークスベクトルを記載した図である。 眼球の光計測方法を説明するフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態における眼球の光計測装置1は、被計測者(被験者)の眼球10における前眼房13の眼房水に含まれるグルコースなどの光学活性物質の濃度を、前眼房13を通過させた光の偏光状態の変化に基づいて算出する。
(眼球10及び光路25)
図1は、眼球10及び光路25を説明する図である。図1(a)は、眼球10の目頭側から目尻側に結んだ面での断面図、図1(b)は、眼球10の正面図である。
図1(a)に示すように、眼球10は、外形がほぼ球形であって、中央にガラス体11がある。そして、レンズの役割をする水晶体12が、ガラス体11の一部に埋め込まれている。水晶体12の外側に、前眼房13があり、その外側に角膜14がある。水晶体12の周辺部は虹彩に囲まれ、その中心が瞳孔15である。水晶体12に接する部分を除いて、ガラス体11は、網膜16で覆われている。
すなわち、前眼房13は、角膜14と水晶体12とで囲まれた領域であって、眼球10の球形からは、凸状に飛び出している。そして、前眼房13は、眼房水で満たされている。
ここでは、一例として、光路25は、目尻側(耳側)から目頭側(鼻側)に向かうように設定され、入射側角膜14A、前眼房13、出射側角膜14Bの順に通過するように設けられている。
なお、入射側角膜14Aは、光が入射する側の角膜14の部分、出射側角膜14Bは、光が出射する側の角膜14の部分である。
図1(b)に示すように、眼球10の正面図において、光路25は、目尻側(耳側)から目頭側(鼻側)に向かうように設定されている。
なお、光路25に沿って進む光は、ビーム状である。
次に、眼球10の前眼房13に含まれる眼房水から、グルコースなどの光学活性物質の濃度を算出する背景について説明する。
糖尿病患者は、血液内のグルコース濃度により、投与するインスリンの量が制御される。よって、糖尿病患者は、血液内のグルコース濃度を常に把握することが求められる。血液中のグルコース濃度は、血糖値と呼ばれ、糖尿病などの指標として広く用いられている。そして、血液中のグルコース濃度の計測は、指先などを注射針で穿刺し、微量な血液を採取する方法によるのが主流である。しかし、微量の血液でも採血時の痛みによる苦痛が伴う。そこで、穿刺などの侵襲式検査法に代わる非侵襲式検査法の要求が高まっている。
眼球10における前眼房13の眼房水は、血清とほぼ同じ成分であって、タンパク質、グルコース、アスコルビン酸等が含まれている。そして、血液中のグルコース濃度と眼房水中のグルコース濃度とに相関関係があることが知られている。さらに、眼房水中には、血液中の細胞物質が存在せず、光散乱の影響が小さい。そして、眼房水に含まれるタンパク質、グルコース、アスコルビン酸等は光学活性物質であって、旋光性を有している。よって、眼房水は、旋光性を利用して光学的にグルコースなどの濃度を計測する部位として有利である。そして、光学的にグルコースなどの濃度が計測できれば、非侵襲式検査法となりうる。
光学的に眼房水に含まれる光学活性物質の濃度などを得る手法において、設定しうる光路として、上記した眼球10の前眼房13を横切る光路25の他に、眼球10に対して垂直に近い角度で光を入射する光路が考えられる。眼球10に対して垂直に近い角度で光を入射する光路では、前眼房13における眼房水と虹彩との界面又は眼房水と水晶体12との界面で光を反射させ、反射した光を受光する。この光路は、網膜16に光が到達するおそれがある。特に、光源21(後述する図2参照)にコヒーレント性が高く、エネルギ密度が高いレーザを用いる場合、網膜16に光が到達すると、光が照射される時間の長さによっては網膜16に悪影響を与える可能性がある。
よって、ここでは、眼球10の前眼房13を横切るように光路25を設定している。
ただし、以下で説明する眼球の光計測装置1は、眼球10に対して垂直に近い角度で光を入射する光路に対しても適用しうる。
また、眼球10の前眼房13を横切るように光路25を設定する場合において、図1(a)、(b)では、光路25は、目尻側(耳側)から目頭側(鼻側)に向かうように設定されている。光路25は、目頭側(鼻側)から目尻側(耳側)に向かうように設定されてもよい。また、光路25は、上側から下側又は下側から上側に向かうように設定されてもよく、上側斜め方向から下側斜め方向又は下側斜め方向から上側斜め方向などに設定されてもよい。
(眼球の光計測装置1)
図2は、本実施の形態が適用される眼球の光計測装置1の概要を示す図である。
光学活性物質は、照射された直線偏光の偏光面を回転させる旋光性を備えている。本明細書においては、偏光面とは、直線偏光において電界が振動する面をいう。
図2に示す眼球の光計測装置1は、被測定物2(ここでは、眼球10の前眼房13)に直線偏光を照射し、通過した後に観察される偏光状態の変化量から、被測定物2に含まれる光学活性物質を計測対象物として、その光学活性物質の濃度を算出する。つまり、眼球の光計測装置1は、光学活性物質が含まれる眼球10の前眼房13に角膜14(入射側角膜14A)を介して直線偏光を照射し、角膜14(出射側角膜14B)を通過した後に観察される偏光状態の変化量から、前眼房13の眼房水に含まれる光学活性物質の濃度を算出する。
なお、前眼房13の眼房水には、複数の光学活性物質が含まれているが、求めたい光学活性物質、例えばグルコースを計測対象物として、その濃度が分かればよい。求めたい光学活性物質の濃度とは、前眼房13の眼房水に複数の光学活性物質が含まれている場合において、ユーザが知りたい光学活性物質の濃度であり、表示などの対象となる光学活性物質の濃度である。
次に、眼球の光計測装置1の構成を説明する。
眼球の光計測装置1は、光学系20、信号処理部30、濃度算出部40、ユーザインターフェース(UI:User Interface)部50及びこれらを制御する制御部60を備えている。光学系20は、信号処理部30に接続され、信号処理部30は濃度算出部40に接続され、濃度算出部40は、UI部50に接続されている。そして、制御部60は、光学系20、信号処理部30、濃度算出部40及びUI部に接続されている。接続は有線でも無線でもよい。
以下において、光学系20、信号処理部30、濃度算出部40、UI部50及び制御部60を順に説明する。
<光学系20>
光学系20は、眼球10の前眼房13に直線偏光を照射する光照射部20Aと、前眼房13を通過して出射された光を受光する光検出部20Bと、光検出部20Bが検出する光強度を補正するための補正部20Cとを備えている。
補正部20Cは、光照射部20Aと光検出部20Bとの間の光路25上に退避可能に設けられている。以下では、補正部20Cが光路25上から退避した状態を補正部20Cの退避状態、補正部20Cが光路25上に挿入された状態(退避していない状態)を補正部20Cの挿入状態と表記する。
なお、図2の光学系20には、補正部20Cの退避状態における、光源21、偏光子22、眼球10、偏光分離素子23、検出器24A、検出器24Bのそれぞれの間において、光の進行方向から見た偏光の様子を円内の矢印で示している。
光照射部20Aは、予め定められた波長λの光を出射する光源21と、光源21の出射した光から予め定められた偏光面の直線偏光を取り出す偏光子22とを備えている。
そして、光源21は、レーザのような波長(スペクトル)幅が狭い光源であってもよく、発光ダイオード(LED)やランプのような波長(スペクトル)幅が広い光源であってもよい。なお、レーザのような波長(スペクトル)幅が狭い方がよい。
そして、光源21は、少なくとも2以上の波長λ(複数の波長λを用いる場合には、波長λ、λ、λ、…と表記する。)の光を出射するものを使用する。以下では、一つの波長λで説明する。
光源21には、後述するように、前眼房13における眼房水に含まれる光学活性物質による旋光度φAHが後述するドルーデ単項式で近似できる領域に含まれる波長範囲のものを使用するのがよい。例えば、波長範囲は、400〜900nmである。
ここでは、光源21から出射される光は、図2中に示すように、ランダムな偏光面を持つ光を含んでいるとする。なお、光源21は、直線偏光を出射するものであってもよい。光源21が直線偏光を出射する場合には、次に説明する偏光子22を用いなくてもよい。
偏光子22は、例えば全反射型のグラントムソンプリズム、グランテーラプリズム、グランレーザプリズムなどであって、光源21が出射したランダムな偏光面を持つ光から、予め定められた偏光面の直線偏光を透過させる。図2においては、例として、紙面に対して平行な偏光面の直線偏光が透過するとする。
偏光子22を通過した直線偏光は、眼球10における入射側角膜14A、前眼房13の眼房水及び出射側角膜14Bを通過すると、楕円偏光になる(図2参照)。
光検出部20Bは、入射した光を直交する二つの偏光に分離する偏光分離素子23と、偏光分離素子23を透過した二つの偏光をそれぞれ受信する検出器24A及び検出器24Bとを備えている。
偏光分離素子23は、入射された光を直交する二つの直線偏光に分離して出射する。偏光分離素子23から出射される一方の直線偏光の光強度を光強度PA、他方の直線偏光の光強度を光強度PBとする。
偏光分離素子23は、例えばウォラストンプリズム、ローションプリズムなどである。
検出器24Aは、偏光分離素子23から出射される一方の直線偏光が入射され、光強度PAに対応した電気信号である電圧VAを出力する。検出器24Bは、偏光分離素子23から出射される他方の直線偏光が入射され、光強度PBに対応した電気信号である電圧VBを出力する。なお、電圧VAを光強度電圧VA、電圧VBを光強度電圧VBと表記する。
ここでは、検出器24A、24Bの受光面は、10mm×10mmなどであって、入射するビーム状の光(光ビーム)の径に比べて大きいとする。つまり、検出器24A、24Bの受光面の一部に光が入射することになる。
検出器24A、24Bは、例えばシリコンフォトダイオードなどのフォトディテクタである。
なお、補正部20Cの挿入状態における光強度PA、PBを光強度PAin、PBin、光強度電圧VA、VBを光強度電圧VAin、VBinと表記する。補正部20Cの退避状態における光強度PA、PBを光強度PAout、PBout、光強度電圧VA、VBを光強度電圧VAout、VBoutと表記する。
ここで、光強度電圧VAin、VBinが第1の測定値組の一例であり、光強度電圧VAout、VBoutが第2の測定値組の一例である。
補正部20Cは、入射した光の偏光状態を解消する偏光解消素子26と、偏光分離素子23に対して予め定められた角度の偏光を透過させる補正用偏光子27とを備えている。
まず、補正用偏光子27を説明する。補正用偏光子27は、透過軸(偏光面が透過する電界の振動方向)が偏光分離素子23の速軸に対して予め定められた角度に設定されている。例えば、偏光面が偏光分離素子23の速軸に対して45°に設定されている。45°に設定されていると、偏光分離素子23から出射する直交する二つの直線偏光に対する光強度PA、PBの比率が1:1(同じ)になる。
すなわち、補正用偏光子27は、後述するように、補正部20Cの退避状態において、検出器24Aが出力する光強度電圧VAと検出器24Bが出力する光強度電圧VBとを補正するために用いられる。
補正用偏光子27は、例えば全反射型のグラントムソンプリズム、グランテーラプリズム、グランレーザプリズムなどである。
なお、補正用偏光子27の透過軸の偏光面が偏光分離素子23の速軸に対する角度は、45°でなくてもよく、偏光分離素子23から出射する直交する二つの直線偏光の光強度PA、PBが予め定められた比率になるように設定されればよい。すなわち、補正用偏光子27の透過軸の偏光面が偏光分離素子23の速軸に対する角度は、予め定められた角度に設定されればよい。
次に、偏光解消素子26を説明する。偏光解消素子26は、補正部20Cが挿入された状態において、入射した光の偏光状態を解消し、補正用偏光子27を透過する光量が小さくなり過ぎないように設けられている。
偏光解消素子26を用いない場合、補正用偏光子27に入射する光が、補正用偏光子27の透過軸と直交又は直交に近い直線偏光などである場合、補正用偏光子27を透過する光量が小さくなる。このため、検出器24A、24Bのそれぞれが出力する光強度電圧VA、VBも小さくなって、後述する補正の精度が低下するおそれがある。
よって、偏光解消素子26により補正用偏光子27に入射させる光の偏光を解消させ、偏光解消素子26を用いない場合に、補正用偏光子27に入射する光が補正用偏光子27の透過軸と直交又は直交に近い直線偏光などであっても、補正用偏光子27を透過する光量が大きくなるようにしている。
なお、偏光解消素子26は、補正用偏光子27を透過する光量が小さくなり過ぎないようにするものであるので、偏光の解消が不完全であってもよい。
偏光解消素子26は、例えば、偏光をランダム化して空間的に多様な偏光状態にする疑似ランダム偏光に変換するデポラライザや光拡散による拡散デポラライザなどである。
なお、検出器24A及び検出器24Bのそれぞれから十分な光強度電圧VA、VBが得られる場合には、偏光解消素子26を用いなくてもよい。
補正部20Cは、例えば、光路25と平行な軸に固定され、軸の周りに移動させることで、光路25上に挿入させたり(挿入状態)、光路25上から退避させたり(退避状態)すればよい。また、補正部20Cは、光路25に直交する方向に移動させることで、光路25上に挿入させたり(挿入状態)、光路25上から退避させたり(退避状態)してもよい。
<信号処理部30>
信号処理部30は、補正部20Cの挿入状態における光強度電圧VAin、VBinに基づいて算出した補正値Kにより、補正部20Cの退避状態における光強度電圧VAout、VBoutを補正する。そして、信号処理部30は、規格化された偏光状態の変化量Rを算出し、濃度算出部40に出力する。
なお、補正値Kの算出方法など、補正の方法及び規格化された偏光状態の変化量Rについては後述する。
<濃度算出部40>
濃度算出部40は、信号処理部30が出力する複数の波長λのそれぞれに対する規格化された偏光状態の変化量Rから、数値計算処理により、前眼房13の眼房水に含まれる特定の光学活性物質の濃度Cを算出し、UI部50に出力する。
<UI部50>
UI部50は、ユーザからの指示やデータを入力するキーボードなどの入力デバイスと、ユーザに処理結果等を表示するディスプレイなどの出力デバイスとを備えている。
ユーザは、UI部50のキーボードなどの入力デバイスを介して、濃度算出部40が用いる数式や固有値などを入力する。
また、ユーザは、UI部50のディスプレイなどの出力デバイスを介して、濃度算出部40において算出された求めたい光学活性物質の濃度Cを得る。
<制御部60>
制御部60は、光学系20、信号処理部30、濃度算出部40及びUI部50に接続され、光学系20、信号処理部30、濃度算出部40及びUI部50を制御する。例えば、制御部60は、光学系20における光照射部20Aの光源21のオン/オフ、補正部20Cの退避状態と挿入状態との切り替え(退避/挿入)、信号処理部30が算出した規格化された偏光状態の変化量Rの濃度算出部40への送信、UI部50において入力された数式や固有値などの濃度算出部40への送信、濃度算出部40が算出した求めたい光学活性物質の濃度CのUI部50への送信などを行う。
以上説明した光学系20は、一例であって、ミラー、レンズ、波長板、プリズムなどの他の光学素子をさらに含んでいてもよい。
信号処理部30、濃度算出部40、制御部60は、CPU、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読み出し専用メモリ)、HDD(ハードディスクドライブ)、I/Oポート(入出力ポート)などを備えたコンピュータとして構成され、ソフトウェアにより動作するものであってもよく、アナログ電子回路などのハードウェアで構成されていてもよい。
また、制御部60が、信号処理部30又は/及び濃度算出部40を兼ねてもよい。
(光信号電圧VA、VB)
図3は、補正部20Cの挿入状態と退避状態とにおける光信号電圧VA、VBについて説明する図である。図3(a)は、挿入状態、図3(b)は、退避状態である。なお、図3(a)、(b)には、眼球10の出射側角膜14Bから出射した光路25として、3つの場合をα、β、γとして示している。αが、予め定められた光路であり、β、γは、予め定められた光路からずれた場合である。
まず、図3(a)を説明する。
図3(a)に示すように、補正部20Cの挿入状態において、光強度電圧VAinと光強度電圧VBinとに差電圧ΔVinが生じたとする。
ここでは、偏光分離素子23の前に偏光分離素子23の速軸と透過軸が45°の補正用偏光子27を設けている。そして、光が、偏光解消素子26、補正用偏光子27及び偏光分離素子23を予め定められた光路(α)で透過する場合には、偏光分離素子23から出射される二つの偏光の光強度PAin、PBinは1:1、すなわち同じになるはずである。
よって、光が、偏光解消素子26、補正用偏光子27及び偏光分離素子23を予め定められた光路(α)で透過したとすると、電圧差ΔVinは、検出器24Aと検出器24Bとの受光特性の差によって生じたことになる。
なお、受光特性の差は、検出器24A、24Bの個体差(製品ばらつき)のみならず、受光状態によっても生じる。例えば、検出器24A及び検出器24Bは、受光面の面積が入射するビーム状の光の径より大きい。そして、光強度電圧VA及び光強度電圧VBは、受光面内における入射位置、入射角度、ビーム径(スポット径)などに依存する。
したがって、光が、偏光解消素子26、補正用偏光子27及び偏光分離素子23を予め定められた光路(α)で透過したとすると、電圧差ΔVinは、検出器24A及び検出器24Bにおける個体差、及び、受光面内における入射位置、入射角度、ビーム径(スポット径)などの違いを含む受光特性の差(誤差、ノイズ成分)に起因するといえる。
また、被計測者の眼球10と光検出部20B及び補正部20Cとの位置関係は、被計測者の呼吸や脈動などの生体振動や角膜14の状態変化によって変動する。よって、光路25が予め設定されたαから、βやγにずれることがある。すると、補正用偏光子27で分離された二つの偏光のそれぞれが、検出器24A、24Bに入射する位置や角度がずれる。このため、例え、光路25がαの場合に、検出器24A、24Bのそれぞれから出力される光強度電圧VAin、VBin間に差がなかった(電圧差ΔVin=0)としても、光路25がβやγの場合には、電圧差ΔVinが生じることになる。
すなわち、電圧差ΔVinは、検出器24A、24Bの受光特性の差に加えて、被計測者の眼球10と光検出部20B及び補正部20Cとの位置関係に起因して生じる差(誤差、ノイズ成分)であると考えられる。
次に、図3(b)を説明する。
図3(b)に示すように、補正部20Cの退避状態において、光強度電圧VAoutと光強度電圧VBoutとに差電圧ΔVoutが生じたとする。
ここでは、補正用偏光子27を含んでいない。よって、差電圧ΔVoutは、被計測者の眼球10の角膜14(入射側角膜14A及び出射側角膜14B)及び前眼房13を通過したことにより偏光状態が変化したことに起因する偏光情報と、上記の電圧差ΔVinを生じた誤差とを含むと考えられる。
このため、差電圧ΔVoutに基づいて、前眼房13に含まれる光学活性物質の濃度Cを算出すると、電圧差ΔVinを生じた誤差を含むことになり、光学活性物質の濃度Cの精度が低下してしまう。
(光強度電圧VAout、VBoutの補正方法)
光強度電圧VAout、VBoutの補正方法について説明する。
本実施の形態では、補正部20Cの挿入状態における光強度電圧VAin、VBinに基づいて、補正部20Cの退避状態における光強度電圧VAout、VBoutを補正している。
すなわち、補正部20Cの挿入状態における電圧差ΔVinの光強度電圧VAinに対する比の値を補正計数Kとする(K=ΔVin/VAin)。ここで、電圧差ΔVin(VAin−VBin)であるとする。すなわち、補正計数Kは、光強度電圧VBinの光強度電圧VAinより大きい部分又は小さい部分の光強度電圧VAinに対する割合である。なお、補正計数Kは、電圧差ΔVinが正の場合(VAin>VBin)に正(+)になり、電圧差ΔVinが負の場合(VAin<VBin)に負(−)となる。
すると、補正部20Cの退避状態における光強度電圧VAoutに補正計数KをかけたK×VAoutが光強度電圧VBoutの補正値になる。すなわち、VBout−K×VAoutが補正後の光強度電圧VBout′となる(VBout′=VBout−K×VAout)。すなわち、補正計数Kが正(+)の場合、光強度電圧VBout′が光強度電圧VBoutより小さくなり、補正計数Kが負(−)の場合、光強度電圧VBout′が光強度電圧VBoutより大きくなる。
以上説明したように、信号処理部30は、補正部20Cの挿入状態における光強度電圧VAin、光強度電圧VBinから補正計数Kを算出し、補正部20Cの退避状態における光強度電圧VAout、光強度電圧VBoutを補正した光強度電圧VBout′を算出する。そして、信号処理部30は、光強度電圧VAoutと光強度電圧VBout′との和(VAout+VBout′)及び差(VAout−VBout′)を求め、式(1)で定義される、規格化された偏光状態の変化量Rを濃度算出部40に送信する。
このように、補正部20Cの挿入状態における光強度電圧VAin、VBinの比の値から算出される補正計数Kを用いることで、補正された光強度電圧VBout′(補正値)の算出が容易になる。
Figure 2018064719
なお、検出器24Aからの光強度電圧VAin、VAoutと、検出器24Bからの光強度電圧VBin、VBoutとの関係を逆にして、補正した光強度電圧VAout′を求め、と光強度電圧VBoutとから、規格化された偏光状態の変化量Rを算出してもよい。
以上説明したように、補正部20Cの挿入状態(図3(b))における電圧差ΔVinは、検出器24A、24Bの個体差や受光面内における入射位置、入射角度、ビーム径(スポット径)などの差(誤差、ノイズ成分)に加えて、被計測者の呼吸や脈動などの生体振動や角膜14の状態変化によって生じる眼球10と補正部20C及び光検出部20Bとの位置関係の変動によって生じる差(誤差、ノイズ成分)を示している。
(光学活性物質の濃度Cの算出方法)
次に、光学活性物質の濃度Cの算出方法の一例について説明する。
図4は、規格化された偏光状態の変化量Rと波長λとの関係を説明する図である。なお、図4では、規格化された偏光状態の変化量Rを、変化量Rと表記する。そして、以下においても、規格化された偏光状態の変化量Rを、変化量Rと表記する。
これまでは、一つの波長λで説明した。前述したように、光源21は、複数の波長λ、λ、λ、…の光を出射する。よって、検出器24Aは、それぞれの波長λ、λ、λ、…に対応して、補正部20Cの挿入状態における光強度電圧VAin、VAin、VAin、…と、補正部20Cの退避状態における光強度電圧VAout、VAout、VAout、…とを出力する。検出器24Bは、それぞれの波長λ、λ、λ、…に対応して、補正部20Cの挿入状態における光強度電圧VBin、VBin、VBin、…と、補正部20Cの退避状態における光強度電圧VBout、VBout、VBout、…とを出力する。
すると、信号処理部30は、それぞれの波長λ、λ、λ、…に対応した補正計数K、K、K、…を求め、補正された光強度電圧VBout′、VBout′、VBout′、…を算出する。そして、信号処理部30は、それぞれの波長λ、λ、λ、…に対応した変化量R1、R2、R3、…を算出して、濃度算出部40に送信する。
濃度算出部40は、信号処理部30から、複数の波長λ、λ、λ、…のそれぞれに対応する変化量R、R、R、…を受信する。
濃度算出部40は、波長λの関数である関数(理論値)R(λ)を用いる。そして、非線形最小二乗法にて、入力された規格化された偏光状態の変化量Rと関数R(λ)との差(R(λ)−R)の二乗和を目的関数とし、目的関数が他の値の場合に比べて小さく(最小に)なる場合における関数R(λ)の未知数の値を算出する。なお、iは1以上の整数である。
関数R(λ)の未知数には、後述するように光学活性物質の濃度Cが含まれているので、濃度が算出される。
目的関数を式(2)に示す。
Figure 2018064719
非線形最小二乗法では、関数R(λ)と測定値である規格化された偏光状態の変化量Rとの差の二乗和が最小になるように、未知数(変数)を可変しながら(変化させながら)関数R(λ)に当てはめていく。この方法には、レーベンバーグ・マルカート法、準ニュートン法、共役勾配法などのアルゴリズムが用いられる。
ここでは、レーベンバーグ・マルカート法を用いて、求めたい光学活性物質の濃度Cを算出する。レーベンバーグ・マルカート法は、ガウス・ニュートン法の解の収束不安定性を改善するために開発され、非線形最小二乗法のアルゴリズムとして広く使われている。レーベンバーグ・マルカート法はよく知られた方法であるので、説明を省略する。
また、測定値としては、複数の規格化された偏光状態の変化量R、すなわち、2以上の波長λに対する規格化された偏光状態の変化量Rを用いる。波長λの数が多いほど、求められる未知数の精度が向上する。しかし、波長λの数が多いと数値計算に時間がかかる。よって、状況に応じて波長λの数を選択すればよい。
ここでは、レーベンバーグ・マルカート法を用いたが、他のアルゴリズムを適用してもよい。
上記に示した非線形最小二乗法にて求めたい光学活性物質の濃度Cを算出する代わりに、複数の波長λについての複数の関数R(λ)を連立させた連立方程式を解くことで、求めたい光学活性物質の濃度Cを算出してもよい。ただし、連立方程式を解く場合、測定に用いる波長λの数と未知数の数とが一致していることが必要となる。
一方、レーベンバーグ・マルカート法などを用いた非線形最小二乗法による関数当てはめでは、波長λの数と未知数の数とが一致しなくとも求めたい光学活性物質の濃度Cを算出しうる。すなわち、非線形最小二乗法を採用すれば、測定に用いる波長λの数は、未知数の数より多くても、少なくてもよい。
以下では、非線形最小二乗法を最小二乗法と表記する。
関数R(λ)を説明する。
眼球の光計測装置1における光学系20及び被測定物2である眼球10の角膜14及び前眼房13の眼房水の偏光特性は、それぞれの偏光特性を表すミュラー行列Mの積で記述される。以下では、それぞれの偏光特性を表すミュラー行列Mを区別するための添え字を付記するが、区別しない場合はミュラー行列Mと表記する。
図5は、図2に示した眼球の光計測装置1の光学系20及び被測定物2である眼球10の角膜14及び前眼房13の眼房水に対して、ミュラー行列M及びストークスベクトルSを記載した図である。ストークスベクトルSは、ストークスパラメータと呼ばれることがある。
なお、図5は、光学活性物質の濃度Cの算出方法を説明するために、補正部20Cを用いて補正された状態を示す。すなわち、検出器24Aは光強度電圧VAoutを出力し、検出器24Bの光強度電圧VBout′を出力するとする。これに伴い、偏光分離素子23が出射する光に対するストークスベクトルSBも、光強度電圧VBout′に基づいて補正されているとする。
後述するように、偏光子22のミュラー行列M(θ)(L:Linear Polarizer)は、回転角度θの関数で表せる。
入射側角膜14Aのミュラー行列MAC(θAC、δAC)(AC:Anterior Cornea)は、角膜14が複屈折性を有するため、速軸の傾きθACと、速軸と遅軸との間の位相差δACとの関数で表せる。
前眼房13の眼房水のミュラー行列MAH(φAH)(AH:Aqueous Humor)は、眼房水が旋光性を有するため、旋光度φAHの関数で表せる。
出射側角膜14Bのミュラー行列MPC(θPC、δPC)(PC:Posterior Cornea)は、入射側角膜14Aと同様に、速軸の傾きθPCと、速軸と遅軸との間の位相差δPCとの関数で表せる。
偏光分離素子23のミュラー行列M(θ)(A:Analyzer)は、偏光子22のミュラー行列M(θ)と同様に、回転角度θの関数で表せる。
すると、検出器24A側のミュラー行列Mは、式(3)で表され、検出器24B側のミュラー行列Mは、式(4)で表される。
Figure 2018064719
ここでは、光源21から出射する光を、ストークスベクトルSIで表す。
そして、偏光分離素子23で直交する二つの直線偏光に分離され、検出器24Aに入射する一方の直線偏光をストークスベクトルSAで表記し、検出器24Bに入射する他方の直線偏光をストークスベクトルSBで表記するとする。すると、式(3)、(4)を用いて、ストークスベクトルSAは、式(5)で表され、ストークスベクトルSBは、式(6)で表される。
Figure 2018064719
ストークスベクトルSは、いずれも強度の次元をもつ4つの量S、S、S、Sを要素とする4行1列の行列であって、式(7)で表される。
Figure 2018064719
ここで、ストークスベクトルSのS成分が光強度に対応する。よって、光強度電圧VAout、VBout′は、ストークスベクトルSA、SBのそれぞれのS成分に対応する。ここでは、式(8)、(9)のように表記する。
よって、規格化された偏光状態の変化量Rは、式(10)で表される。
Figure 2018064719
ここで、偏光子22のミュラー行列M(θ)、入射側角膜14Aのミュラー行列MAC(θAC、δAC)、前眼房13の眼房水のミュラー行列MAH(φAH)について説明する。
偏光子22のミュラー行列M(θ)は、式(11)で表される。偏光分離素子23のミュラー行列M(θ)は、偏光子22のミュラー行列M(θ)における“L”を“A”に置き換えたものである。よって、偏光分離素子23のミュラー行列M(θ)については、説明を省略する。
入射側角膜14Aのミュラー行列MAC(θAC、δAC)と出射側角膜14Bのミュラー行列MPC(θPC、δPC)とは、“A”と“P”とを置き換えたものである。ここでは、入射側角膜14Aと出射側角膜14Bとを区別せず、角膜14のミュラー行列M(θ、δ)とする。角膜14のミュラー行列M(θ、δ)は、式(12)で表される。
前眼房13の眼房水のミュラー行列MAH(φAH)は、式(13)で表される。
Figure 2018064719
ある単一の光学活性物質を含む被測定物2において、波長λに対する旋光度φは、光路長L、濃度Cの積で表される。ここでは、前眼房13における眼房水に限らないため、旋光度φと表記する。
そして、旋光度φは、極大点・極小点より長い波長領域において単調減少又は単調増加となる非線形関数であるドルーデ単項式で表される。ドルーデ単項式は、光学活性物質の旋光分散を表す関数の一例である。
そして、被測定物が複数の光学活性物質を含む場合、観測される旋光度φは、ドルーデ単項式で表される各光学活性物質の旋光度φの足し合わせによって記述される。言い換えると、観測される旋光度φは、各光学活性物質の旋光度φの波長依存性を表す関数の和によって表される。なお、jは1以上の整数である。
一例として、前眼房13の眼房水による旋光度φAHは、式(14)に示す二つのドルーデの単項式の和で表されるとする。右辺第1項は、求めたい光学活性物質をグルコースとした場合にグルコースが寄与する項である。右辺第2項は、グルコースを除くその他の光学活性物質が寄与する項である。
そして、グルコースの濃度をグルコース濃度Cとする。A、λは、光学活性物質(グルコース)に固有の定数(光学活性物質(グルコース)の旋光分散の特性を規定する固有値)である。
さらに、A、λは、その他の光学活性物質をまとめた場合の固有値である。
また、Lは光路長である。
よって、前眼房13の眼房水による旋光度φAHは、グルコース濃度C及び他の光学活性物質をまとめた場合の固有値であるA、λの関数として表される。
Figure 2018064719
なお、式(14)では、前眼房の眼房水に含まれるグルコース以外の他の光学活性物質をまとめたが、他の光学活性物質に対する複数の項で表してもよい。例えば、グルコースの項に加えて、アルブミンやグロブリンなどの項を設けてもよい。このとき、項を設けた光学活性物質(グルコース、アルブミン、グロブリンなど)以外を他の光学活性物質の項とすればよい。
さらに、他の光学活性物質の寄与が小さい場合などにおいては、他の光学活性物質の項を設けなくともよい。
すなわち、求めたい光学活性物質及び前眼房13の眼房水による旋光度φAHに対する影響の度合いなどを勘案して、項を設定すればよい。
また、角膜14における位相差δ(λ)は、式(15)で表される。ここで、位相差δ(λ)は、角膜14の厚さdと、速軸と遅軸との屈折率差Δnとで表される。
Figure 2018064719
以上説明したように、規格化された偏光状態の変化量Rは、光学系20及び眼球10の角膜14(入射側角膜14A,出射側角膜14B)及び前眼房13の眼房水の偏光特性を表すミュラー行列Mの積と光源21のストークスベクトルSIとで表される。
よって、濃度算出部40は、複数の波長λと、これらに対する規格化された偏光状態の変化量Rとが入力されると、式(14)、(15)が代入された式(10)に最小二乗法を適用して、グルコース濃度Cを含む複数の未知数を算出する。
図6は、眼球10の光計測方法を説明するフローチャートである。
眼球10の光計測は、制御部60の制御によって行われる。
ここでは、光源21から出射されるn個(nは1以上の整数)の異なる波長λの光を用いて眼球10の光計測を行うとする。そして、補正部20Cは光路25上から退避されているとする。なお、補正部20Cが光路25上に挿入されていてもよい。
まず、変数iに1がセットされる(ステップ11。図6では、S11と表記する。以下同様とする。)。
すると、光源21から、波長λ(ここでは、波長λ)の光が出射される(波長λの光出射)(ステップ12)。この段階で、光学系20が調整され、眼球10の前眼房13を横切るように光路25が設定される。
光路25が前眼房13を横切るように設定された状態で、補正部20Cが光路25上に挿入される(補正部挿入)(ステップ13)。なお、上記した光学系20の調整は、ステップ13の後に行ってもよい。また、上述したように、補正部20Cが既に光路25上に挿入されている場合には、ステップ13をスキップすればよい。
補正部20Cの挿入状態において、検出器24A、24Bから光強度電圧VAin、VBinが取得される(信号処理部30に出力される)(ステップ14)。
次に、補正部20Cが光路25上から退避される(補正部退避)(ステップ15)。そして、補正部20Cの退避状態において、検出器24A、24Bにより光強度電圧VAout、VBoutが取得される(信号処理部30に出力される)(ステップ16)。
そして、波長λについて計測された光強度電圧VAin、VBin、VAout、VBoutから、信号処理部30により規格化された偏光状態の変化量Rが算出され、濃度算出部40に送信される(ステップ17)。
次に、変数iがnであるか否かが判断される(ステップ18)。
ステップ18において、否定(No)の判断がされた場合、すなわち、変数iがnより小さい場合、変数iに1が加えられる(ステップ19)。
そして、ステップ12からステップ18まで繰り返される。
ステップ18において、肯定(Yes)の判断がされた場合、すなわち、変数iがnである場合、すなわち、すべての波長λについて規格化された偏光状態の変化量Rが算出された場合には、濃度算出部40により、計測対象物である求めたい光学活性物質の濃度Cが算出される(計測対象物の濃度測定)(ステップ20)。
なお、上記のフローチャートは一例であって、補正部20Cの挿入のステップ13及びそれに引き続く光強度電圧VAin、VBinを計測するステップ14と、補正部20Cの退避のステップ15及びそれに引き続く光強度電圧VAout、VBoutを計測するステップ16と、を入れ替えてもよい。
また、規格化された偏光状態の変化量Rの出力のステップ17では、変化量Rを算出する毎に、変化量Rを信号処理部30から濃度算出部40へ送信しているが、ステップ20の前において、すべての波長λ、…、λに対する変化量R、…、Rを送信してもよい。
また、上記では、波長λ毎に補正値Kを求めているが、眼球10と補正部20C及び光検出部20Bとの位置関係の変動が少ない場合には、眼球10と一つの波長λ(例えばλ)に対して補正値K(この場合、補正値K)を求めて、他の波長λ(この場合、iは2〜n)に、補正値Kを適用してもよい。この場合、図6において、iが2〜nの場合に、ステップ13からステップ15をスキップすればよい。
上記のように、補正部20Cの挿入状態における光強度電圧VAin、VBinと、補正部20Cの退避状態における光強度電圧VAout、VBoutとを、経時的に連続して取得することで、光強度電圧VAin、VBinから求められる直近の補正値Kiが光強度電圧VAout、VBoutの補正に適用される。
なお、補正値Kを眼球10がない状態で求めることが考えられるが、眼球10の前眼房13で光路25がどのように曲がるかは事前に予測されない。そこで、眼球10の前眼房13を横切るように光路25を設定した状態において、補正部20Cの挿入状態における光強度電圧VAin、VBinを求めている。
よって、補正値Kには、検出器24A、24Bの個体差や受光面内における入射位置、入射角度、ビーム径(スポット径)などの差(誤差、ノイズ成分)に加えて、被計測者の呼吸や脈動などの生体振動や角膜14の状態変化によって生じる眼球10と補正部20C及び光検出部20Bとの位置関係の変動によって生じる差(誤差、ノイズ成分)に対する補正が含まれる。すなわち、補正部20Cの挿入状態と補正部20Cの退避状態とを用いることにより、複数の誤差要因(ノイズ成分)がまとめて補正される。
このようにすることで、眼房水に含まれる光学活性物質の濃度の測定における精度が向上する。
本実施の形態では、偏光状態を表すために、ミュラー行列MとストークスベクトルSを用いた。ミュラー行列MとストークスベクトルSの代わりに、偏光状態を電界で表現するジョーンズ行列(ジョーンズマトリクス)JとジョーンズベクトルEを用いてもよい。
式の変換を行うことで、同様に適用しうる。
また、本実施の形態では、最小二乗法を適用したが、未知数の数と同じ数の波長λに対する関数(規格化された偏光状態の変化量Rなど)の値を用いることで、未知数である光学活性物質の濃度Cを算出してもよい。
さらに、本実施の形態における眼球の光計測装置1では、眼球10の角膜14(入射側角膜14A、出射側角膜14B)を介して前眼房13の眼房水に光を通過させて、眼房水に含まれる光学活性物質であるグルコースの濃度(グルコース濃度)Cを算出するとした。
この眼球の光計測装置1は、眼房水に含まれる他の光学活性物質を計測対象物として、他の光学活性物質の濃度の算出に適用しうる。さらに、眼房水に含まれる複数の光学活性物質の濃度を分離して算出しうる。
また、眼球の光計測装置1は、複屈折性や旋光性などの光学特性が異なる複数の部材に光を通過させて、含まれる光学活性物質を計測対象物として、その光学活性物質の濃度を算出する場合にも適用しうる。
1…眼球の光計測装置、2…被測定物、10…眼球、11…ガラス体、12…水晶体、13…前眼房、14…角膜、14A…入射側角膜、14B…出射側角膜、15…瞳孔、16…網膜、20…光学系、20A…光照射部、20B…光検出部、20C…補正部、21…光源、22…偏光子、23…偏光分離素子、24A、24B…検出器、25…光路、26…偏光解消素子、27…補正用偏光子、30…信号処理部、40…濃度算出部、50…ユーザインターフェース(UI)部、60…制御部、Δn…屈折率差、δ、δAC、δPC…位相差、θ、θ…回転角度、λ、λ…波長、φ、φAH…旋光度、C…濃度、L…光路長、M、M、MAC、MAH、M、M、MPC…ミュラー行列、PA、PB…光強度、S…ストークスベクトル、V、VA、VB、…光強度電圧

Claims (5)

  1. 被計測者の眼球の前眼房に向けて光を照射する光照射部と、
    前記前眼房を透過した光を偏光分離する偏光分離素子と、当該偏光分離素子により分離された偏光を受光する複数の検出器と、を有する光検出部と、
    前記前眼房と前記光検出部との間の光路に退避可能に設けられ、前記偏光分離素子に対して予め定められた角度の偏光を透過する補正用偏光子を有する補正部と
    を備える眼球の光計測装置。
  2. 前記前眼房と前記光検出部との間の光路に前記補正部を挿入し、当該光検出部における複数の前記検出器から第1の測定値組を取得し、
    前記前眼房と前記光検出部との間の光路から前記補正部を退避させ、当該光検出部における複数の前記検出器から第2の測定値組を取得し、
    前記第2の測定値組を、前記第1の測定値組で補正することを特徴とする請求項1に記載の眼球の光計測装置。
  3. 前記第1の測定値組は、前記前眼房を通過した光に対して取得されることを特徴とする請求項2に記載の眼球の光計測装置。
  4. 前記第2の測定値組は、前記第1の測定値組に含まれる複数の前記検出器のそれぞれにおける測定値の比に基づいて補正されることを特徴とする請求項2又は3に記載の眼球の光計測装置。
  5. 前記補正部は、前記前眼房と前記補正用偏光子との間に、偏光を解消する偏光解消素子を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の眼球の光計測装置。
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