JP2018064561A - ラクダ科動物由来の抗原結合ポリペプチド - Google Patents

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ドレイエル トルステン
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フレデリク ジェロメ ブルアンクヘトト クフリストプヘ
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Abstract

【課題】ラクダ科ファミリーの種の通常型抗体レパトアを基にした所望の標的抗原に対する特異性を有する抗原結合ポリペプチドを作製法の提供。【解決手段】VHドメイン又はVLドメイン中の少なくとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)が、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られる、VHドメイン及びVLドメインを含む抗原結合ポリペプチドの提供。【選択図】なし

Description

(発明の分野)
本発明は、ヒト抗体の可変ドメインと高度の配列相同性及び構造相同性を共有する、モ
ノクローナル抗体を含む、抗原結合ポリペプチドを作製するための新規プラットフォーム
に関する。
(発明の背景)
モノクローナル抗体は、研究ツールとしての、及び次第に治療用又は診断用の物質とし
ての多くの適用を有する。現在20種を超える様々なモノクローナル抗体が、癌、炎症、自
己免疫障害、感染症、喘息、心臓血管疾患及び移植拒絶反応を含む多種多様な疾患を治療
するために、規制当局の認可を受けており、かつ開発ライン上にあるモノクローナル抗体
医薬の数は、対前年比で増加しつつある。
ヒト療法における齧歯類(具体的にはマウス)モノクローナル抗体の有用性は、それらの
非-ヒト起源に関連した問題点、特にヒト宿主におけるそれらの免疫原性のために、限定
されている。治療用抗体医薬に対するヒト免疫応答を最小化するために、モノクローナル
抗体技術は、完全マウス抗体から、キメラ抗体(ヒトIgG骨格にグラフティング(grafting)
されたマウス可変ドメイン)へ、ヒト化抗体(ヒトIgG骨格にグラフティングされたマウスC
DR)へ、ヒトIgGレパトアの一部を発現している合成ライブラリー又は免疫化されたトラン
スジェニックマウス由来の「完全ヒト」抗体へと発展している。
治療上関心のある標的抗原に対する完全ヒト又は「ヒト化された」モノクローナル抗体
の産生を可能にする、多くの技術のプラットフォームが開発されている。これらのプラッ
トフォームの各々は、それ自身に特有な特徴及び潜在的短所を有する。
マウスモノクローナル抗体のヒト化は、マウス可変ドメインをヒト定常ドメインと組合
せ、約70%のヒト内容物(content)を有するいわゆるキメラ抗体を作製することにより最
初に達成された。更なるヒト化度は、引き続き、マウスモノクローナル抗体の相補性決定
領域(CDR)を、ヒト抗体の可変抗体ドメインのヒトフレームワーク領域にグラフティング
することにより達成された。加えて、それらのフレームワーク領域に存在するいくつかの
アミノ酸残基は、CDR又は抗原との相互作用として同定され、かつ結合を改善するように
ヒト化抗体において復帰変異された。(Almagroらの論文、Frontiers in Bioscience. 13:
1619-1633 (2008))。このアプローチを用いて操作されたモノクローナル抗体は、ヒト化
後に、ヒトVH及びVLドメイン配列と比較的高度な一次配列相同性を有するが、欠点は、全
てではないマウス-コードされたCDRが、ヒト抗体において認められないカノニカルフォー
ルド(canonical fold)、及びカノニカルフォールド組合せを使用するので、ヒト様構造を
有さない超可変ループで終わる可能性があることである。(Almagroらの論文、Mol. Immun
ol. 34:1199-1214 (1997);Almagroらの論文、Immunogen, 47:355-63 (1998))。更なる欠
点は、そのような抗体をヒト化するために典型的に必要とされる非常に多数の変異であり
(そのための手順は複雑で時間のかかるものである)、これはヒト化に必要な数多くの変化
の結果として親和性及び効力を失うという当然のリスク、並びにVκドメインはマウスの
レパトアにおいて主に使用されるのに対し、ヒト抗体全体のおよそ半分はVλドメインを
有するという事実を伴う。
ヒト化されたマウスモノクローナル抗体に対する可能性のある改善として、「完全ヒト
」モノクローナル抗体が、ふたつの非常に異なるアプローチにより作製されることができ
る。第一のアプローチは、完全な合成ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、H
uCAL(登録商標)、MorphoSys社)からの選択である。このアプローチの潜在的欠点は、この
合成ライブラリーは、ヒト生殖系列に天然に存在する機能的多様性を近似するのみであり
、従ってその多様性は若干制限されていることである。同じくこのアプローチを用いて作
出された抗体は、能動免疫化を介したCDRのインビボ選択に由来せず、かつ典型的には標
的抗原に対する親和性を改善するために、親和性成熟がなされなければならない。親和性
成熟は、抗体発見プロセスにかなりの時間をかけることがある冗長なプロセスである。同
じく親和性成熟のプロセスにおいて、ある種のアミノ酸残基は、生じる抗体の結合特異性
又は安定性に負の影響を及ぼし得るよう変更されることがある。(Wuらの論文、J. Mol. B
iol. 368:652-65 (2007))。
代わりの「完全ヒト」プラットフォームは、マウス免疫グロブリンのコード領域を、ヒ
ト生殖系列由来の抗体をコードしている配列(例えば、HuMab、Medarex社)と交換するよう
操作されているトランスジェニックマウスを基にしている。これらのシステムは、抗体は
、標的抗原に対する能動免疫化により生じる、すなわち抗体は抗原に対する高い出発親和
性を有すること、並びにそれらをよりヒト様とするための当初の抗体の抗体操作が必要な
いか又は必要であってもごくわずかであるという利点を有する。しかしこのトランスジェ
ニックマウス系統は、定義により高度に近交系であり、かつこれは抗体反応の強度及び多
様性に関して良くない帰結をもたらす。このプラットフォームによる別の欠点は、一部の
トランスジェニックマウスシステムにおけるヒトFc/マウスFc受容体相互作用に起因した
、損なわれたB細胞成熟であろう。
更なるプラットフォームは、非ヒト霊長類、具体的にはカニクイザルの免疫化を基にし
ている。サルとヒトの免疫グロブリン間の高度なアミノ酸配列同一性のために、サルにお
いて生じた抗体をヒト治療薬として有用にするためには、抗体は、それらの可変ドメイン
における追加の「ヒト化」をほとんど又は全く必要としないことが前提とされる(WO 93/0
2108参照されたい)。
(発明の概要)
本発明者らは、先行技術のヒト化された又は完全にヒトの抗体プラットフォームにより
認められる短所の一部又は全てを避け、かつヒト宿主における免疫原性を最小化する一方
で、治療上重要な広範な標的抗原に対し高度に特異性及び親和性の抗体を産生することが
可能である、「ヒト化された」モノクローナル抗体(抗原結合ポリペプチド)プラットフォ
ームの必要性を認めている。
本発明者らは、ラクダ科ファミリー(family Camelidae)由来の通常型(conventional)抗
体のVH及びVLの両ドメインが、フレームワーク領域にわたり、ヒト抗体のVH及びVLドメイ
ンと高度なアミノ酸配列同一性を示すことを認めている。実際に、ラクダ科動物(camelid
)の通常型VHドメインとヒトVHドメインの間の、及びラクダ科動物の通常型VLドメインと
ヒトVLドメインの間の配列同一性の程度は、ヒトと他の霊長類種、例えばカニクイザルと
の間で認められるものに近づくことができ、かつヒトとラクダ科動物の系統学的な距離を
考え予想されるものよりもはるかに高い。この知見は、重鎖ラクダ科動物抗体の可変ドメ
イン(VHH)は、ヒト可変ドメインと高度な配列相同性を示さないことを考えると、驚くべ
きことである。
加えて、本発明者らは、ラクダ科動物VH及びVLドメインの超可変ループ(H1、H2、L1、L
2及びL3)は、ヒトVH及びVLドメインの超可変ループと高度な構造相同性を示すことが多い
ことを認め、このこともヒトとラクダ科動物の間の進化的距離を考えると予想外である。
重鎖ラクダ科動物抗体の超可変ループは、ヒト及びマウスVHの対応するループとは、コン
ホメーション及び長さにおいて実質的に異なることが報告されているので、ラクダ科動物
の通常型抗体(又はむしろそのような抗体の超可変ループ)とヒト抗体の間の高度な構造相
同性も、驚くべきことである(De Genstらの総説、Develop Comp. Immunol. 30:187-98 (2
006)を参照されたい)。
ヒト抗体の結合部位とこの超可変ループを含む抗原結合部位の高度の構造相同性と組み
合わされた、ヒト抗体のフレームワーク領域と高度の一次アミノ酸配列の相同性、及びラ
クダ科(Camelidae)通常型抗体がヒトから系統学的に極めて遠い非近交系動物集団の能動
免疫化により生じることができるという事実は、ラクダ科ファミリー由来の通常型抗体が
ヒト治療薬としての潜在的有用性を有するモノクローナル抗体を操作するための魅力的な
出発点であるという推量を本発明者らにもたらした。
従って本発明の第一の態様に従い、VHドメイン又はVLドメイン中の少なくとも1個の超
可変ループ又は相補性決定領域(CDR)が、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインか
ら得られる、VHドメイン及びVLドメインを含む抗原結合ポリペプチドが提供される。
一実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドは、標的抗原と免疫反応性である
ことができる。別の実施態様において、本抗原結合ポリペプチドは、標的抗原へ特異的に
結合することができる。
非限定的実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドは、組換えポリペプチドで
あることができる。
非限定的実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドは、キメラポリペプチドで
あることができる。
非限定的実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドは、モノクローナル抗体で
あることができる。
非限定的実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドは、組換えにより発現され
たキメラモノクローナル抗体であることができる。
非限定的実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドは、ラクダ科ファミリーの
種の能動免疫化により得られた超可変ループ又は相補性決定領域を含むことができる。
第二の態様において、本発明は、標的抗原と免疫反応性である抗原結合ポリペプチドを
調製する方法を提供し、該方法は:
(a)該標的抗原と免疫反応性であるラクダ科通常型抗体のVH及び/又はVLドメインの少な
くとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)をコードしているヌクレオチド配列を
決定すること;並びに
(b)該標的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプチドを発現することであり、該抗原結
合ポリペプチドが、VH及びVLドメインを含み、ここでこのVHドメイン又はVLドメインの少
なくとも1個の超可変ループ若しくは相補性決定領域(CDR)は、パート(a)において決定さ
れたヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列を有すること:を含む。
第三の態様において、本発明は、標的抗原と免疫反応性である(又は特異的に結合する)
組換え抗原結合ポリペプチドを調製する方法を提供し、該抗原結合ポリペプチドは、VHド
メイン及びVLドメインを含み、ここでVHドメイン又はVLドメインの少なくとも1個の超可
変ループ又は相補性決定領域(CDR)が、ラクダ科ファミリーの種から得られ、該方法は:
(a)該標的抗原と免疫反応性のラクダ科通常型抗体のVH及び/又はVLドメインの少なくと
も1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)をコードしているラクダ科核酸を単離する
工程;
(b)工程(a)において単離された核酸によりコードされた超可変ループ又は相補性決定領
域と同一のアミノ酸配列を有する超可変ループ又は相補性決定領域をコードしているヌク
レオチド配列を含むポリヌクレオチドを調製する工程であり、このポリヌクレオチドが、
該標的抗原と免疫反応性である(又は特異的に結合する)VHドメイン及びVLドメインを含む
抗原結合ポリペプチドをコードしている、前記工程;並びに
(c)工程(b)の組換えポリヌクレオチドから該抗原結合ポリペプチドを発現する工程:を
含む。
工程(b)において調製されたポリヌクレオチドは、好ましくは組換え体である。
本発明は、本発明の第一の態様に従う抗原結合ポリペプチドをコードしているヌクレオ
チド配列、又はラクダ科ファミリーの種のVH若しくはVLドメインから得られた少なくとも
1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)を含む該抗原結合ポリペプチドの断片をコー
ドしているヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドを更に提供する。
本発明は、宿主細胞又は無細胞発現システムにおける本抗原結合ポリペプチドの発現を
可能にする調節配列に機能的に連結されている先に定義されたポリヌクレオチドを含む発
現ベクター、この発現ベクターを含む宿主細胞又は無細胞発現システム、並びに前記抗原
結合ポリペプチドの発現を可能にする条件下で宿主細胞若しくは無細胞発現システムを培
養すること、及び発現された抗原結合ポリペプチドを回収することを含む、組換え抗原結
合ポリペプチドを作製する方法も提供する。
また更に本発明は、本発明の第一の態様の抗原結合ポリペプチドを備える試験キット、
並びに本発明の第一の態様の抗原結合ポリペプチド及び少なくとも1種の医薬として許容
し得る希釈剤、賦形剤又は担体を含有する医薬製剤を提供する。
(図面の簡単な説明)
図1は、IL1-βで免疫化されたラマ由来の血清を、免疫化後0日目及び28日目に、IL1-βに対する抗体の存在について試験した、ELISAの結果を示す。 図2は、1E2及び1F2をコードする、IL-1βと免疫反応性であるふたつのFabの「ヒト化された」変異型のアミノ酸配列を図示している。最も近いヒト生殖系列に対するアラインメントを基に、1E2及び1F2のVH及びVλフレームワーク領域における変異が提唱された。完全にヒト化されたV領域(hum)及び野生型V領域(wt)に加え、わずか3個の野生型残基が残存している「安全変異型」(safe)も提唱されている。 図3は、組換えにより発現されたFabが、biot-IL-1βに結合するそれらの能力について試験されたELISAの結果を示す。これに関して、これらのFabは、抗-mycコートされたMaxisorpプレート上に捕獲された。ビオチン化されたヒトIL-1βが添加され、かつ結合したサイトカインが、HRP-複合されたストレプトアビジンを用いて検出された。 図4は、Fab 1E2及び1F2のヒト化された変異型を提示しているファージが、IL-1βへの結合に関して試験された、ファージELISAの結果を示す。 図5は、キメラ1E2が、IL-1βへの結合に関して試験されたELISAの結果を示す。
(発明の詳細な説明)
本発明は、ラクダ科ファミリーの種の通常型抗体レパトアを基にした所望の標的抗原に
対する特異性を有する抗原結合ポリペプチドを作製するための新規プラットフォーム技術
、及びこの技術プラットフォームを使用し得られた抗原結合ポリペプチドに関する。
従って第一の態様において、本発明は、VHドメイン又はVLドメイン中の少なくとも1個
の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)が、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメイ
ンから得られる、VHドメイン及びVLドメインを含む抗原結合ポリペプチドを提供する。
以下の節において、本発明の様々な態様が、より詳細に定義されている。そのように定
義された各態様は、相容れないことが明確に指摘されない限りは、いずれか他のひとつの
態様又は複数の態様と組合されることができる。特に好ましい又は有利であると指摘され
たいずれかの特徴は、好ましい又は有利であると指摘されたいずれか他のひとつの特徴又
は複数の特徴と組合されることができる。
(定義)
用語「抗原結合ポリペプチド」とは、標的抗原と免疫反応性であり、標的抗原と特異的
結合を示す、VHドメイン及びVLドメインを含む任意のポリペプチドをいう。例証的抗原結
合ポリペプチドは、本明細書の別所において考察されたような、抗体及び免疫グロブリン
、並びに抗体断片も含む。
用語「抗原」は、抗原結合ポリペプチドが免疫反応性である「標的抗原」に関して言及
される場合、当業者にとってその通常の意味を持ち、かつとりわけ、ポリペプチド、ペプ
チド、多糖、糖タンパク質、ポリヌクレオチド(例えばDNA)、又は合成化学的抗原を含む
用語「抗原」は、本発明の抗原結合ポリペプチドの製造時に、動物(例えばラクダ科動
物)の免疫化に利用される物質を説明するために使用されることもできる。この文脈にお
いて、用語「抗原」は、より広範な意味を有してよく、かつ抗原の精製された型、及び同
じく例として細胞、細胞溶解液又は上清、細胞画分、例えば細胞膜などのような、抗原の
精製されない又は半精製された調製品、加えて好適な担体タンパク質と複合されたハプテ
ンも包含することができる。免疫化プロトコールにおいて使用される「抗原」は、それと
得られる抗原結合ポリペプチドが免疫反応性である「標的抗原」と必ずしも構造的に同一
ではない。典型的には、免疫化に使用される「抗原」は、「標的抗原」の切断型、例えば
免疫原性エピトープを含む断片であることができる。能動免疫化に使用される「抗原」の
更なる特徴は、本明細書の別所に説明されており、かつこれは当業者に一般に公知であろ
う。
抗原結合ポリペプチドと標的抗原の間の「特異的結合」とは、免疫学的特異性をいう。
抗原結合ポリペプチドが、その標的抗原上のエピトープに他のエピトープよりも優先して
結合する場合に、抗原結合ポリペプチドはその標的抗原と「特異的に」結合する。「特異
的結合」とは、類似した抗原エピトープを生じる他の抗原との交差反応性を排除するもの
ではない。
「抗体」(Ab)及び「免疫グロブリン」(Ig)は、(標的)抗原に対する結合特異性を示す糖
タンパク質である。
ラクダ科動物の種は、以下のふたつの異なる抗体型を有することがわかっている;古典
的又は「通常型」抗体、及び同じく重鎖抗体。
本明細書において使用される用語「通常型抗体」とは、IgA、IgG、IgD、IgE又はIgMを
含むいずれかのアイソタイプの抗体をいう。未変性の又は天然の「通常型」ラクダ科動物
の抗体は、通常、2本の同一の軽(L)鎖及び2本の同一の重(H)鎖で構成される、ヘテロ四量
体糖タンパク質である。各軽鎖は、1個の共有ジスルフィド結合により、重鎖に連結され
ているが、このジスルフィド連結の数は、様々な免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間
で変動する。各重鎖及び軽鎖は、規則的に配置された鎖内ジスルフィド橋も有する。各重
鎖は、一端(N-末端)に可変ドメイン(VH)を、それに続きいくつかの定常ドメインを有する
。各軽鎖は、一端(N-末端)に可変ドメイン(VL)及びその他端に定常ドメイン(CL)を有し;
軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第一の定常ドメインと並置され、かつ軽鎖可変ドメインは
、重鎖の可変ドメインと並置されている。特定のアミノ酸残基は、軽鎖及び重鎖の可変ド
メイン間の境界面を形成すると考えられる。
用語「重鎖抗体」は、軽鎖を自然に欠いている抗体のような、ラクダ科動物の種の天然
に生じることがわかっている抗体の第二の型をいう(Hamers-Castermanらの論文、Nature,
363: 446-8 (1993))。重鎖抗体(HCAbと略される)は、共有ジスルフィド結合により連結
された2本の重鎖で構成される。HCAb中の各重鎖は、一端に可変ドメインを有する。HCAb
の可変ドメインは、「通常型」ラクダ科動物抗体の重鎖の可変ドメイン(VH)からこれらを
区別するために、「VHH」と称される。VHHドメインとVHドメインは、完全に異質であり、
かつラクダ科動物ゲノムの異なる遺伝子セグメントによりコードされている。
本発明のポリペプチド中のVLドメインは、Vλ型又はVκ型であることができる。従って
用語「VLドメイン」は、ラクダ科由来のVκ及びVλ両アイソタイプ、並びにラクダ科VLド
メインと比べ1つ以上のアミノ酸の置換、挿入又は欠失を含むそれらの操作された変異型
をいう。
用語「VHドメイン」とは、γ、ε、δ、α又はμアイソタイプを含むラクダ科のいずれ
か公知の重鎖アイソタイプのVHドメイン、並びにラクダ科のVHドメインと比べ1つ以上の
アミノ酸の置換、挿入又は欠失を含むそれらの操作された変異型をいう。用語「VHドメイ
ン」とは、ラクダ科動物の通常型抗体のVHドメインのみをいい、かつラクダ科動物のVHH
ドメインは包含しない
用語「可変」とは、可変ドメインVH及びVLのある部分は、抗体間で配列が大きく異なる
という事実をいい、かつ特定の抗体の各々のその標的抗原に対する結合及び特異性におい
て使用される。しかしその可変性は、抗体の可変ドメインを通じて均等には分散していな
い。これは、抗原結合部位の一部を形成しているVLドメイン及びVHドメインの各々におい
て「超可変ループ」と称される3つのセグメントに集中されている。Vλ軽鎖ドメインの第
一、第二及び第三の超可変ループは、本明細書においてL1(λ)、L2(λ)及びL3(λ)と称さ
れ、かつVLドメインにおいて残基24-33(9、10又は11個のアミノ酸残基からなる、L1(λ))
、49-53(3個の残基からなる、L2(λ))及び90-96(5個の残基からなる、L3(λ))を含むと定
義され得る(Moreaらの論文、Methods, 20:267-279 (2000))。Vκ軽鎖ドメインの第一、第
二及び第三の超可変ループは、本明細書において、L1(κ)、L2(κ)及びL3(κ)と称され、
かつVLドメインにおいて残基25-33(6、7、8、11、12又は13個の残基からなる、L1(κ))、
49-53(3個の残基からなる、L2(κ))及び90-97(6個の残基からなる、L3(κ))を含むと定義
され得る(Moreaらの論文、Methods, 20:267-279 (2000))。VHドメインの第一、第二及び
第三の超可変ループは、本明細書において、H1、H2及びH3と称され、かつVHドメインにお
いて残基25-33(7、8又は9個の残基からなる、H1)、52-56(3又は4個の残基からなる、H2)
及び91-105(長さが高度に変動する、H3)を含むと定義され得る(Moreaらの論文、Methods,
20:267-279 (2000))。
用語L1、L2及びL3は、別に指摘されない限りは、各々、VLドメインの第一、第二及び第
三の超可変ループを意味し、かつラクダ科由来のVκ及びVλアイソタイプの両方から得ら
れた超可変ループを包含している。用語H1、H2及びH3は、各々、VHドメインの第一、第二
及び第三の超可変ループを意味し、かつγ、ε、δ、α又はμを含む、ラクダ科由来の公
知の重鎖アイソタイプのいずれかから得られた超可変ループを包含している。
前述の超可変ループL1、L2、L3、H1、H2及びH3は、各々、「相補性決定領域」又は「CD
R」の一部を含むことができる。超可変ループ(HV)は構造を基に規定されるのに対し、相
補性決定領域(CDR)は配列可変性を基に規定されるので、用語「超可変ループ」及び「相
補性決定領域」は、厳密に同義語ではなく(Kabatらの文献、「免疫学的関心のあるタンパ
ク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、第5版、Public Hea
lth Service、米国国立衛生研究所(NIH)、ベセスダ、MD.、1983)、かつHVとCDRの境界は
、一部のVH及びVLドメインにおいて異なることができる。
前記VL及びVHドメインのCDRは、典型的には、下記のアミノ酸を含むと定義されること
ができる:軽鎖可変ドメイン中の残基24-34(CDRL1)、50-56(CDRL2)及び89-97(CDRL3)、並
びに重鎖可変ドメイン中の残基31-35又は31-35b(CDRH1)、50-65(CDRH2)及び95-102(CDRH3
);Kabatらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列」、第5版、Public Health S
ervice、NIH、ベセスダ、MD.、(1991))。従ってこれらのHVは、対応するCDR内に含まれる
ことができ、かつ別に指摘されない限りは、本明細書におけるVH及びVLドメインの「超可
変ループ」の言及は、対応するCDRも包含すると解釈されなけばならず、その逆もまた同
様である。
可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と称される。未
変性の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、各々、3つの超可変ループにより接続された、β-
シート立体配置を主として採用している4つのFR(各々、FR1、FR2、FR3及びFR4)を含む。
各鎖内の超可変ループは、これらのFRにより密に近接して保持され、かつ他方の鎖由来の
超可変ループと一緒に、抗体の抗原-結合部位の形成に貢献する。抗体の構造解析は、相
補性決定領域により形成された結合部位の配列と形状の関係を明らかにした(Chothiaらの
論文、J. Mol. Biol., 227:799-817 (1992));Tramontanoらの論文、J. Mol. Biol., 215
:175-182 (1990))。それらの高度な配列可変性にもかかわらず、これら6つのループの5つ
は、「カノニカル構造」と称される、主鎖コンホメーションの小さいレパトアのみを採用
する。これらのコンホメーションは、まず第一にループの長さにより決定され、かつ第二
に、それらのパッキング、水素結合又は通常の主鎖コンホメーションを推定する能力を通
じコンホメーションを決定するループ内及びフレームワーク領域内のある位置での重要残
基の存在により決定される。
前記定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接は関与しないが、抗体-依存性細胞傷
害性(ADCC)又は補体-依存性細胞傷害性(CDC)における抗体の参加などの、様々なエフェク
ター機能を発揮する。
本発明の全ての態様及び実施態様において、ラクダ科(又はラクダ科動物)の種(それか
ら本発明の抗原結合ポリペプチドの超可変ループ又はCDRが得られる)は、フタコブラクダ
、リャマ、ヒトコブラクダ、ヴィクーニャ、グアナコ又はアルパカ、並びにそれらの任意
の交配であることができる。リャマ(ラマ・グラマ(Lama glama))及びアルパカ(ラマ・パ
コス(Lama pacos))は、本発明の全ての態様に関して好ましいラクダ科の種である。
本発明の抗原結合ポリペプチドは、それらが、ラクダ科ファミリーの種のVHドメイン又
はVLドメインから得られる、少なくとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域を含むこ
とで特徴づけられる。誤解を避けるために、これらの用語「VHドメイン」「VLドメイン」
は、ラクダ科動物の通常型抗体由来のドメインをいう。この定義は、ラクダ科動物の重鎖
のみのVHH抗体、及びラクダ科動物のVHHドメインのHV又はCDRだけを含む組換え構築体を
除外し、これらは本発明の範囲内に包含されない
「ラクダ科ファミリーの種のVHドメイン又はVLドメインから得られた超可変ループ又は
相補性決定領域」は、その超可変ループ(HV)又はCDRが、ラクダ科免疫グロブリン遺伝子
によりコードされている超可変ループ又はCDRのアミノ酸配列と同一であるか、又は実質
的に同一であるアミノ酸配列を有することを意味する。この文脈において、「免疫グロブ
リン遺伝子」は、生殖系列遺伝子、再編成を受けている免疫グロブリン遺伝子、及び同じ
く体細胞変異された遺伝子を含む。従って、ラクダ科種のVH又はVLドメインから得られた
HV又はCDRのアミノ酸配列は、成熟したラクダ科通常型抗体に存在するHV又はCDRのアミノ
酸配列と同一であることができる。この文脈において用語「から得られた」とは、本発明
の抗原結合ポリペプチドのHV又はCDRは、ラクダ科免疫グロブリン遺伝子により当初コー
ドされたアミノ酸配列(又はそれらの重要でない変異型)を具現化するという意味での構造
的関係を暗示している。しかしこれは、本発明の抗原結合ポリペプチドの調製に使用され
る製造方法の観点から特定の関係を必ずしも暗示していない。以下に考察するように、ラ
クダ科免疫グロブリン遺伝子により当初コードされた配列と同一(又は実質的に同一)のア
ミノ酸配列を伴うHV又はCDRを含む抗原結合ポリペプチドを調製するために使用されるこ
とができる、いくつかの方法が存在する。
誤解を避けるために、用語「ラクダ科動物の通常型抗体のVHドメイン」及び「ラクダ科
種から得られたVHドメイン」は、同義語的に使用され、かつ合成の又は操作された組換え
遺伝子(コドン-最適化された合成遺伝子を含む)の産物であるVHドメインを包含しており
、これらのVHドメインは、ラクダ科免疫グロブリン遺伝子(生殖系列、再編成された又は
体細胞変異された)によりコードされたVHドメインのアミノ酸配列と同一(又は実質的に同
一)のアミノ酸配列を有する。同様に、用語「ラクダ科動物の通常型抗体のVLドメイン」
及び「ラクダ科種から得られたVLドメイン」は、同義語的に使用され、かつ合成の又は操
作された組換え遺伝子(コドン-最適化された合成遺伝子を含む)の産物であるVLドメイン
を包含しており、これらのVLドメインは、ラクダ科免疫グロブリン遺伝子(生殖系列、再
編成された又は体細胞変異された)によりコードされたVLドメインのアミノ酸配列と同一(
又は実質的に同一)のアミノ酸配列を有する。
本発明の抗原結合ポリペプチドは、典型的には組換えにより発現されたポリペプチドで
あり、かつキメラポリペプチドであることができる。用語「キメラポリペプチド」は、そ
うでなければ隣接して生じることのない2つ以上のペプチド断片の並立により作製される
人工の(非天然の)ポリペプチドをいう。この定義に含まれるのは、例えばラクダ科動物と
ヒトのような、2種以上の種によりコードされたペプチド断片の並立により作製された「
種」キメラポリペプチドである。
本発明の抗原結合ポリペプチドは、ラクダ科動物由来の少なくとも1個の超可変ループ(
又はCDR)を必要とするため、天然のヒト抗体、特にヒト自己抗体ではない。「天然の」ヒ
ト抗体は、ヒト対象内で自然に発現される抗体を意味する。天然の抗体又は断片がキメラ
でなく、かつアミノ酸配列にいかなる操作された変化も施されていない(体細胞変異を除
く)、天然のヒト抗体のアミノ酸配列と100%同一であるアミノ酸配列を有する抗原結合ポ
リペプチド、又はそれらの断片は、本発明の範囲から除外される。
本発明の抗原結合ポリペプチドは、重鎖可変(VH)ドメイン及び軽鎖可変(VL)ドメインの
両方を含み、かつVHドメイン中又はVLドメイン中のいずれかの少なくとも1個の超可変ル
ープ又は相補性決定領域は、ラクダ科ファミリーの種から得られることで特徴づけられる
代替の実施態様において、VHドメイン中のH1若しくはH2のいずれか、又はH1及びH2の両
方は、ラクダ科ファミリーの種から得、かつ独立してVLドメイン中のL1若しくはL2のいず
れか、又はL1及びL2の両方は、ラクダ科ファミリーの種から得ることができる。更なる実
施態様において、VHドメイン中のH3又はVLドメイン中のL3も、ラクダ科ファミリーの種か
ら得ることができる。全ての可能性のある前述のものの並べ替えが可能である。
ひとつの具体的実施態様において、VHドメイン及びVLドメインの両方における超可変ル
ープH1、H2、H3、L1、L2及びL3の各々は、ラクダ科ファミリーの種から得ることができる
一実施態様において、全VHドメイン及び/又は全VLドメインは、ラクダ科ファミリーの
種から得ることができる。その後ラクダ科VHドメイン及び/又はラクダ科VLドメインは、1
つ以上のアミノ酸の置換、挿入又は欠失がラクダ科配列に導入されるタンパク質操作に供
されることができる。これらの操作された変化は好ましくは、ラクダ科配列に対するアミ
ノ酸置換を含む。このような変化は、ラクダ科動物-コードされたVH又はVLドメイン中の1
個以上のアミノ酸残基が、相同のヒト-コードされたVH又はVLドメイン由来の同等の残基
と置き換えられる「ヒト化」又は「生殖系列化(germlining)」を含む。
ある実施態様において、ラクダ科超可変ループ(又はCDR)は、所望の標的抗原によるラ
クダ科ファミリーの種の能動免疫化により得ることができる。本明細書において詳細に考
察されかつ例証されるように、標的抗原によるラクダ科(未変性の動物又はラクダ科動物
の種の免疫グロブリンレパトアを発現するように操作されたトランスジェニック動物のい
ずれか)の免疫化後、所望の抗原に対する特異性を有するB細胞産生(通常型ラクダ科)抗体
が、同定され、かつそのような抗体のVH及びVLドメインをコードしているポリヌクレオチ
ドが、公知の技術を用い単離され得る。
従って具体的な実施態様において、本発明は、標的抗原と免疫反応性である組換え抗原
結合ポリペプチドを提供し、このポリペプチドは、VHドメイン及びVLドメインを含み、こ
こでVHドメイン又はVLドメイン中の少なくとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域は
、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られ、その抗原結合ポリペプチドは
、下記の工程を含む方法により入手可能である:
(a)ラクダ科ファミリーの種を、標的抗原又は該標的抗原をコードしているポリヌクレ
オチドにより、免疫化し、該標的抗原に対する抗体を作出する工程;
(b)該標的抗原と免疫反応性のラクダ科通常型抗体のVH及び/又はVLドメインの少なくと
も1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)をコードしているヌクレオチド配列を決定
する工程;並びに
(c)該標的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプチドを発現する工程であって、該抗原
結合ポリペプチドが、VH及びVLドメインを含み、ここでVHドメイン又はVLドメインの少な
くとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)は、パート(a)において決定されたヌ
クレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列を有する工程。
能動免疫化により得られた単離されたラクダ科VH及びVLドメインは、本発明に従い抗原
結合ポリペプチドを操作するための基礎として使用されることができる。無傷のラクダ科
VH及びVLドメインから出発し、出発ラクダ科配列から逸脱する1つ以上のアミノ酸の置換
、挿入又は欠失を操作することが可能である。ある実施態様において、そのような置換、
挿入又は欠失は、VHドメイン及び/又はVLドメインのフレームワーク領域中に存在するこ
とができる。一次アミノ酸配列におけるそのような変化の目的は、恐らく好ましくない特
性(例えば、ヒト宿主における免疫原性(いわゆるヒト化)、可能性のある生成物の不均一
性及び/又は不安定性の位置(グリコシル化、脱アミド化、異性体化など)を減らすか、又
はこの分子のいくつかの他の好ましい特性(例えば、溶解度、安定性、生物学的利用能な
ど)を増強することである。別の実施態様において、一次アミノ酸配列の変化は、能動免
疫化により得られたラクダ科VH及び/又はVLドメインの1個以上の超可変ループ(又はCDR)
において操作されることができる。このような変化は、抗原結合親和性及び/若しくは特
異性を増強するため、又は恐らく好ましくない特性、例えばヒト宿主における免疫原性(
いわゆるヒト化)、可能性のある生成物の不均一性及び/又は不安定性の位置、グリコシル
化、脱アミド化、異性体化などを減少するため、又はこの分子のいくつかの他の好ましい
特性、例えば溶解度、安定性、生物学的利用能などを増強するために導入されることがで
きる。
従って一実施態様において、本発明は、標的抗原によるラクダ科ファミリーの種の能動
免疫化により得られたラクダ科VH又はVLドメインと比較して、VHドメイン又はVLドメイン
のいずれかの少なくとも1個のフレームワーク又はCDR領域内に少なくとも1つのアミノ酸
置換を含む組換え抗原結合ポリペプチドを提供する。この特定の実施態様は、能動免疫化
により作出された未変性のラクダ科VH及びVLドメインを含む抗原結合ポリペプチドは除外
している。
標的抗原(又は標的抗原若しくはこれをコードしているポリヌクレオチドを含有する組
成物)による「能動免疫化」の代わりに、所望の抗原-結合特性を持つ抗原結合ポリペプチ
ドの成分として使用されるVH及び/又はVLドメインの給源として、罹患したラクダ科動物
における免疫応答又はラクダ科の種内で自然に生じる免疫応答を使用することも可能であ
る。このようなVH/VLドメインは、能動免疫化により得られたVH/VLドメインと類似した方
式で抗原-結合ポリペプチドを操作するための出発点として使用されることもできる。本
発明は、また非免疫ライブラリーの使用、及びそれらから得られた/由来した抗原-結合ポ
リペプチドを更に包含している。
別の実施態様において、本発明は、ラクダ科由来のVH及びVLドメイン(又はそれらの操
作された変異型)並びに非ラクダ科動物の抗体由来の1つ以上の定常ドメイン、例えばヒト
-コードされた定常ドメイン(又はそれらの操作された変異型)を含む、「キメラ」抗体分
子を包含している。本発明は、VH又はVLドメインの一方はラクダ科動物でコードされてお
り、かつ他方の可変ドメインは非ラクダ科動物(例えばヒト)であるキメラ抗原結合ポリペ
プチド(例えば抗体分子)にも及ぶ。そのような実施態様において、VHドメイン及びVLドメ
インは両方とも、ラクダ科動物の同じ種から得られることが好ましく、例えば、VH及びVL
の両方はラマ・グラマ由来であるか、又はVH及びVLの両方はラマ・パコス由来であること
ができる(操作されたアミノ酸配列の変動の導入前)。そのような実施態様において、VH及
びVLドメインの両方は、単独の動物、特に能動免疫化された単独の動物に由来することが
できる。
ラクダ科VH及び/又はVLドメインの一次アミノ酸配列において変化を操作する代わりに
、個別のラクダ科超可変ループ若しくはCDR、又はそれらの組合せが、ラクダ科VH/VLドメ
インから単離され、かつCDRグラフティングされることにより、代替(すなわち非ラクダ科
)フレームワーク、例えばヒトVH/VLフレームワークへ移されることができる。
(ヒト可変ドメインとの配列同一性/相同性)
本発明者らは、ラクダ科ファミリーの種由来の通常型抗体のVH及びVLドメインの両方を
コードしているラクダ科生殖系列及び体細胞変異されたDNA配列は、フレームワーク領域
について、ヒト抗体のVH及びVLドメインをコードしているヒト生殖系列DNA配列と高度の
配列同一性/配列相同性を示すことを認めた。
従って本発明の抗原結合ポリペプチドは、これらがヒト抗体のVH及びVLドメインと、高
度のアミノ酸配列相同性を示すことで特徴づけられる。
一実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドのVHドメインは、フレームワーク
領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり、1つ以上のヒトVHドメインと、80%以上アミノ酸配
列同一性又は配列相同性を示すことができる。他の実施態様において、当然少なくとも1
個の超可変ループ又はCDRは、ラクダ科から得られる、すなわち、ラクダ科VH又はVL遺伝
子によりコードされた超可変ループ又はCDRのアミノ酸配列と同一(又は実質的に同一)で
あるアミノ酸配列を有することを条件として、本発明のポリペプチドのVHドメインと1つ
以上のヒトVHドメインの間のアミノ酸配列同一性又は配列相同性は、85%以上、90%以上
、95%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%でさえであることができる。
一実施態様において、本発明のポリペプチドのVHドメインは、フレームワーク領域FR1
、FR2、FR3及びFR4にわたり、最も近いマッチしたヒトVH配列と比べ、1個以上のアミノ酸
配列ミスマッチを含むことができる。この後者の実施態様は、そのフレームワーク領域が
全体としてヒト配列を有する、VHドメイン、又はVH及びVLドメインの両方を含むポリペプ
チドを明確に除外するであろう。
別の実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドのVLドメインは、フレームワー
ク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり1つ以上のヒトVLドメインと、80%以上の配列同一
性又は配列相同性を示すことができる。他の実施態様において、本発明のポリペプチドの
VLドメインと1つ以上のヒトVLドメインの間のアミノ酸の配列同一性又は配列相同性は、8
0%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%でさえであること
ができる。
一実施態様において、本発明のポリペプチドのVLドメインは、フレームワーク領域FR1
、FR2、FR3及びFR4にわたり、最も近いマッチしたヒトVL配列と比べ、1個以上のアミノ酸
配列ミスマッチを含むことができる。この後者の実施態様は、そのフレームワーク領域が
全体としてヒト配列を有する、VLドメイン、又はVL及びVHドメインの両方を含むポリペプ
チドを明確に除外するであろう。
本発明の抗原結合ポリペプチドは、ただ1つの完全にヒト可変ドメインが存在し、次に
ラクダ科から得られた超可変ループ又はCDRを含む可変ドメインと組合せることを条件と
して、「完全にヒト」のVH又はVLドメインを含むことができる。
付随する実施例に含まれるラクダ科配列とヒト生殖系列配列の代表的アラインメントは
、通常型ラクダ科動物のVH及びVLドメインは、それらのヒトの対応物と著しく高い配列相
同性を示すことを明らかにしている。これらの実施例から、VH又はVLドメインのフレーム
ワーク領域中に存在する典型的には8個未満の、頻繁にはわずか5個のみのアミノ酸残基が
、最も近いヒト生殖系列-コードされた配列から所定の位置で異なることを結論づけるこ
とができる。これらの位置に関連した構造上の制限が存在しないならば、位置指定変異誘
発によるヒト化は、複雑でないと予想される。
従って特定の実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドは、通常型ラクダ科抗
体の、例えば、標的抗原(又は該標的抗原をコードしているポリヌクレオチド)によるラク
ダ科の能動免疫化により得られた(入手可能な)通常型ラクダ科抗体のVH及び/又はVLドメ
インを含むことができ、ここで該VH及びVLドメインは、VHドメイン及びVLドメインのいず
れか一方又は両方においてフレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり、合計1〜1
0個の、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸置換を導入するように、
(独立して)操作されている。そのようなアミノ酸置換は、出発ラクダ科VH又はVLドメイン
中のミスマッチのアミノ酸残基を、ヒト生殖系列-コードされたVH又はVLドメインにおい
て認められる同等の残基と交換することにより、「ヒト化」を生じる置換を含むことがで
きる(しかし、これに限定されるものではない)。該ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイ
ンの超可変ループ(CDR)中に独立してアミノ酸置換を作製することも可能であり、かつそ
のような変異型は、本発明の一部を形成することができる。本明細書における「アミノ酸
置換」の言及は、天然のアミノ酸が、非天然のアミノ酸、又は翻訳後修飾を施されたアミ
ノ酸と交換されているような置換を含む。
ラクダ科とヒト生殖系列のVH及びVLの間の配列同一性の割合を解析する前に、そのカノ
ニカルフォールドが決定されることができ、このことは、H1及びH2又はL1及びL2(及びL3)
に関するカノニカルフォールドの同一の組合せを伴う、ヒト生殖系列セグメントファミリ
ーの同定を可能にする。その後、関心対象のラクダ科可変領域と最高程度の配列相同性を
有するヒト生殖系列ファミリーの一員が、配列相同性のスコア化のために選択される。超
可変ループL1、L2、L3、H1及びH2のショティア(Chothia)カノニカルクラスの決定は、ウ
ェブページwww.bioinf.org.uk/abs/chothia.html.page.上で公に利用可能なバイオインフ
ォマティクスツールにより実行された。このプログラムのアウトプットは、データファイ
ルにおける重要残基の必要要件を示す。これらのデータファイルにおいて、重要残基の位
置は、各位置で許容されたアミノ酸と共に示される。この抗体の可変領域の配列は、イン
プットとしてもたらされ、かつカバット(Kabat)番号付けスキームを割り当てるために、
最初にコンセンサス抗体配列と並置される。このカノニカルフォールドの解析は、Martin
及びThorntonにより開発された自動化された方法によりもたらされた重要残基鋳型のセッ
トを使用する(Martinらの論文、J. Mol. Biol. 263:800-815 (1996))。
H1及びH2又はL1及びL2(及びL3)に関するカノニカルフォールドの同じ組合せを使用する
、公知の特定のヒト生殖系列Vセグメントにより、配列相同性に関するベストマッチング
ファミリーメンバーが決定された。ラクダ科VH及びVLドメインフレームワークアミノ酸配
列と、ヒト生殖系列によりコードされた対応する配列の間の配列同一性の割合は、バイオ
インフォマティクスツールにより決定されることができるが、実際にはこれらの配列の手
作業による並置も適用されることができる。ヒト免疫グロブリン配列は、VBase (http://
vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)又はPluckthun/Honeggerデータベース(http://www.bioc.uniz
h.ch/antibody/ Sequences/Germlines)のような、いくつかのタンパク質データベースか
ら同定されることができる。ヒト配列をラクダ科VH又はVLドメインのV領域と比較するた
めに、www.expasy.ch/tools/#alignなどのウェブサイトを介して利用可能なもののような
配列アラインメントアルゴリズムが使用されることができるが、同じく配列の限定された
セットとの手作業によるアラインメントも行われ得る。カノニカルフォールドの同じ組合
せ並びに各鎖のフレームワーク領域1、2、及び3との最高度の相同性を伴うこれらのファ
ミリーのヒト生殖系列軽鎖及び重鎖配列が選択され、かつ関心対象のラクダ科可変領域と
比較され;同じく、このFR4は、ヒト生殖系列JH及びJK又はJL領域に対してチェックされ
る。
配列相同性の全体の割合の計算において、FR1、FR2及びFR3の残基は、カノニカルフォ
ールドの同じ組合せを持つヒト生殖系列ファミリーから最も近いマッチング配列を用いて
評価されることに留意されたい。カノニカルフォールドの同じ組合せを持つ最も近いマッ
チングの又は同じファミリーの他のメンバーと異なる残基のみが、スコア化される(NB-プ
ライマーにコードされた差異は除外する)。しかしヒト化の目的のためには、カノニカル
フォールドの同じ組合せを有さない他のヒト生殖系列ファミリーのメンバーと同じフレー
ムワーク領域内の残基は、先に説明されるストリンジェントな条件に従い「ネガティブ」
とスコア化されるという事実にもかかわらず、これらは「ヒト」と考えることができる。
この前提は、ヒト化のための「ミックス及びマッチ」法を基本にしており、これは、Quと
同僚(Quらの論文、Clin. Cancer Res. 5:3095-3100 (1999))並びにOnoと同僚(Ono らの論
文、Mol. Immunol. 36:387-395 (1999))により行われたように、FR1、FR2、FR3及びFR4の
各々が、その最も近いマッチングのヒト生殖系列配列と個別に比較され、その結果ヒト化
された分子は、様々なFRの組合せを含む。
個々のフレームワーク領域の境界は、ショティア番号付けスキームの改変である、IMGT
番号付けスキームを用いて割り当てられることができる。(Lefrancらの文献、NAR, 27:20
9-212 (1999);http://imgt.cines.fr)。
VH及びVLドメインのフレームワーク領域にわたるラクダ科とヒトの間の予想外に高度な
配列相同性にもかかわらず、それでもなおラクダ科動物とヒト生殖系列のVH及びVL配列の
直接的配列比較により、ラクダ科動物-コードされた超可変ループ(CDR)を、ヒト-コード
された超可変ループ(CDR)から識別することは可能である。
(ヒト-コードされたVH及びVLドメインとの構造相同性)
好ましい実施態様は、以下に詳細に考察するように、更にヒト又はヒト様カノニカルフ
ォールドを有するラクダ科動物の超可変ループ又はCDRを使用することである。
従って一実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドのVHドメイン又はVLドメイ
ンのいずれかの中の少なくとも1個の超可変ループ又はCDRは、ラクダ科の種から得られた
VHドメイン又はVLドメインから得られ、その上ヒト抗体において生じるカノニカルフォー
ルド構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造を示す。
ヒト生殖系列によりコードされたVHドメイン及びVLドメインの両方に存在する超可変ル
ープの一次アミノ酸配列は、定義により、高度に可変性であるが、VHドメインのCDR H3以
外の全ての超可変ループは、カノニカルフォールドと称されるほんの数種類の独特な構造
のコンホメーションを採用し(Chothiaらの論文、J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987);Tr
amontanoらの論文、Proteins, 6:382-94 (1989))、これは超可変ループの長さ及びいわゆ
るカノニカルアミノ酸残基の存在の両方に左右される(Chothiaらの論文、J. Mol. Biol.
196:901-917 (1987))ことは、当該技術分野においてよく確立されている。無傷のVH又はV
Lドメイン中の超可変ループの実際のカノニカル構造は、構造解析(例えばX線結晶解析)に
より決定されることができるが、特定の構造に特徴的である重要なアミノ酸残基を基に、
カノニカル構造を予測することも可能である(以下に更に考察される)。本質的に、各々の
カノニカル構造を決定する残基の特異的パターンは、そのカノニカル構造が未知の構造の
VH又はVLドメインの超可変ループにおいて認められることを可能にする「署名(signature
)」を形成し;その結果カノニカル構造は、一次アミノ酸配列だけを基に予測されること
ができる。
生殖系列及び体細胞変異されたVH及びVL配列の解析を基に、本発明者らは、ラクダ科VH
及びVLドメインの超可変ループ(VHドメイン中のH3及び時にはVLドメインのL3も除いて)は
、ヒト抗体の超可変ループにより採用されたカノニカルフォールド構造と実質的に同一で
あるカノニカルフォールド構造を同じく採用することを予測している。
抗原結合ポリペプチド中のいずれか所定のVH又はVL配列の超可変ループに関して予測さ
れたカノニカルフォールド構造は、www.bioinf.org.uk/abs/chothia. html、www.biochem
.ucl.ac.uk/~martin/antibodies.html、及びwww.bioc.unizh. ch/antibody/Sequences/Ge
rmlines/Vbase_hVk.htmlから公に利用可能であるアルゴリズムを用いて解析されることが
できる。これらのツールは、クエリーVH又はVL配列を、公知のカノニカル構造のヒトVH又
はVLドメイン配列に対して並置ること、並びにカノニカル構造の予測をクエリー配列の超
可変ループに関して行うことを可能にする。
VHドメインの場合、ラクダ科に由来したH1及びH2ループは、少なくとも下記の第一の判
定基準、好ましくは両方の判定基準が満たされる場合、ヒト抗体において生じることがわ
かっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を
有するものとして、スコア化されることができる:
1.残基の数により決定された、最も近いマッチングのヒトカノニカル構造クラスと、同
一の長さ、
2.対応するヒトH1及びH2のカノニカル構造クラスに関して説明された重要なアミノ酸残
基との、少なくとも33%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性。
(前述の解析目的のために、H1及びH2ループは、個別に処理され、かつ各々その最も近
いマッチングのヒトカノニカル構造クラスに対し比較されることに留意されたい)。
前述の解析は、ラクダ科H1及びH2ループのカノニカル構造の予測に頼っている。例えば
X線結晶解析を基にH1及びH2ループの実際の構造がわかっている場合は、ラクダ科に由来
したH1及びH2ループは、そのループの長さが最も近いマッチングのヒトカノニカル構造ク
ラスの長さと異なる(典型的には±1又は±2個のアミノ酸)が、これらのラクダ科H1及びH2
ループの実際の構造がヒトカノニカルフォールドの構造とマッチする場合に、ヒト抗体に
おいて生じることがわかっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニ
カルフォールド構造を有するものとしてもスコア化できる。
ヒトVHドメインの第一及び第二の超可変ループ(H1及びH2)に関してヒトカノニカル構造
クラスにおいて認められた重要なアミノ酸残基は、Chothiaらの論文(J. Mol. Biol. 227:
799-817 (1992))に記載されており、この論文の内容はその全体が引用により本明細書中
に組み込まれている。特に、引用により本明細書中に具体的に組み込まれているChothia
らの論文の802頁の表3は、ヒト生殖系列において認められたH1カノニカル構造の重要な位
置での好ましいアミノ酸残基を列記しているのに対し、同じく具体的に引用により本明細
書中に組み込まれている802頁の表4は、ヒト生殖系列において認められたCDR H2カノニカ
ル構造の重要な位置での好ましいアミノ酸残基を列記している。
付随する実施例は、Chothiaらの論文(J Mol. Biol. 227:799-817 (1992))の判定基準に
従いカノニカルフォールド構造に関して重要であると考えられたH1及びH2及び基礎となる
フレームワーク領域内の各位置に関して、ラクダ科において認められた実際のアミノ酸残
基を、最も近いヒト生殖系列VH配列のアミノ酸残基に対して比較する、ラクダ科の種(具
体的にはリャマ及びヒトコブラクダ)由来の生殖系列VH配列の解析を含んでいる。ラクダ
科動物とヒトの間で同じ重要残基の数は、最も頻繁には33%以上、典型的には50〜100%
の範囲であることが認められた。
一実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドのVHドメイン中のH1及びH2の両方
は、ラクダ科の種のVHドメインから得られ、その上ヒト抗体において生じるカノニカルフ
ォールド構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造を示
す。
本発明者らは、超可変ループ、具体的にはVHドメイン中のH1及びH2に関して、個別にヒ
ト抗体において天然に生じる型のカノニカル構造を有することが重要であるのみならず、
いずれか所定のVHドメイン中のH1及びH2に関して、少なくとも1つのヒト生殖系列VHドメ
インにおいて生じることがわかっているカノニカル構造の組合せと同一であるカノニカル
フォールド構造の組合せを形成することも重要であることを推量している。H1及びH2での
カノニカルフォールド構造のある種の組合せのみが、ヒト生殖系列によりコードされたVH
ドメインにおいて実際に生じることが認められている。本発明者らは、解析され得る全て
の入手可能なラクダ科生殖系列又は体細胞変異されたVH配列は、ヒト抗体において使用さ
れるものと実質的に同一のH1及びH2での個別のカノニカルフォールド構造のみではなく、
ヒト抗体において認められる組合せにマッチするH1及びH2での構造の正確な組合せも示す
ことを発見し驚いた。このことは、H1及びH2での「正確な」ヒト様カノニカルフォールド
構造を有するが、ヒト抗体においては生じない組合せである抗体を産生することができる
、ヒトにおける可能性のある治療的用途のための抗体産生に関する他のプラットフォーム
に勝る、際だった利点を示す。例として、本発明者ら自身の非ヒト霊長類に由来した抗体
の構造の解析(Biogen IDEC社のガリキシマブ(抗-CD80)、ルミリキシマブ(抗-CD23)及び炭
疽菌毒素に対する非ヒト霊長類mAb、Pelatらの論文、J. Mol. Biol., 384:1400-7 (2008)
)は、これらは構造上、ヒト抗体構造、特にカノニカルフォールドの組合せとみなされる
構造に、一貫して非常に近くはないことを示している。H1及びH2でのカノニカルフォール
ドの正確な組合せが存在しないことは、ヒト宿主において免疫原性である所与の抗原結合
ポリペプチド(これはフレームワーク領域において「ヒト化され」ている)に繋がり得る。
従って更なる実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドのVHドメイン中のH1及
びH2は、ラクダ科種のVHドメインから得られ、その上ヒト生殖系列又は体細胞変異された
VHドメインにおいて生じることがわかっているカノニカルフォールド構造の組合せと同一
である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成する。
非限定的実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドのVHドメイン中のH1及びH2
は、ラクダ科種のVHドメインから得られ、かつ下記のカノニカルフォールド組合せのひと
つを形成する:1-1、1-2、1-3、1-6、1-4、2-1、3-1及び3-5。
本発明の抗原結合ポリペプチドのVHドメインは、ヒトVHと高い配列同一性/配列相同性
の両方を示すこと、更にはVHドメイン内の超可変ループは、ヒトVHと構造相同性を示すこ
とが好ましい。
本発明の抗原結合ポリペプチドのVHドメイン中のH1及びH2に存在するカノニカルフォー
ルド、並びにそれらの組合せに関して、全体の一次アミノ酸配列の同一性の観点で、本発
明の抗原結合ポリペプチドのVHドメインと最も近いマッチングを示すヒトVH生殖系列配列
に関して「補正」されることは有利である。例として、最も近い配列マッチングがヒト生
殖系列のVH3ドメインとである場合、H1及びH2(ラクダ科から得られた)に関して、ヒトVH3
ドメインにおいても自然に生じるカノニカルフォールドの組合せを形成することが有利で
あることができる。
従って一実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドのVHドメインは、フレーム
ワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたりヒトVHドメインと80%以上、85%以上、90%以
上、95%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%でさえもの配列同一性又は配列相
同性を示すことができ、かつ加えて、同じ抗原結合ポリペプチドのH1及びH2は、ラクダ科
種のVHドメインから得られるが、同じヒトVHドメインにおいて天然に生じることがわかっ
ているカノニカルフォールド組合せと同じである予測された又は実際のカノニカルフォー
ルド構造の組合せを形成する。
別の実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドのVLドメインのL1及びL2は、各
々、ラクダ科種のVLドメインから得られ、かつ各々、ヒト抗体において生じるカノニカル
フォールド構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造を
示す。
前述のVHドメインと同様に、Vλ型及びVκ型の両方のVLドメインの超可変ループは、長
さにより、及びあるカノニカル位置での重要なアミノ酸残基の存在によっても一部決定さ
れる、限られた数のコンホメーション又はカノニカル構造を採用することができる。
ラクダ科種のVLドメインから得られたL1、L2及びL3ループは、その上少なくとも下記の
第一の判定基準、好ましくは両方の判定基準が満たされる場合、ヒト抗体において生じる
ことがわかっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォール
ド構造を有するものとして、スコア化されることができる:
1.残基の数により決定された、最も近いマッチングのヒトの構造クラスと、同一の長さ

2.Vλ又はVκレパトアのいずれかからの、対応するヒトL1又はL2のカノニカル構造クラ
スに関して説明された重要なアミノ酸残基との、少なくとも33%同一性、好ましくは少な
くとも50%同一性。
(前述の解析目的のために、L1及びL2ループは、個別に処理され、かつ各々その最も近
いマッチングのヒトカノニカル構造クラスに対し比較されることに留意されたい)。
前述の解析は、ラクダ科L1、L2及びL3ループのカノニカル構造の予測に頼っている。例
えばX線結晶解析を基にL1、L2及びL3ループの実際の構造がわかっている場合は、ラクダ
科に由来したL1、L2又はL3ループは、そのループの長さが最も近いマッチングのヒトカノ
ニカル構造クラスの長さと異なる(典型的には±1又は±2個のアミノ酸)が、これらのラク
ダ科ループの実際の構造がヒトカノニカルフォールドとマッチする場合に、同じくヒト抗
体において生じることがわかっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カ
ノニカルフォールド構造を有するものとして、スコア化されることができる。
ヒトVλ及びVκドメインのCDRに関してヒトカノニカル構造クラスにおいて認められた
重要なアミノ酸残基は、Moreaらの論文、Methods, 20: 267-279 (2000)、及びMartinらの
論文、J. Mol. Biol., 263:800-815 (1996)に説明されている。同じくヒトVκドメインの
構造的レパトアは、Tomlinsonらの論文、EMBO J. 14:4628-4638 (1995)に、並びにVλド
メインの構造的レパトアは、Williamsらの論文、J. Mol. Biol., 264:220-232 (1996)に
説明されている。これらの文書全ての内容は、引用により本明細書中に組み込まれている
付随する実施例は、カノニカルフォールド構造に関して重要であると考えられたL1及び
L2の各位置に関して、ラクダ科において認められた実際のアミノ酸残基を、最も近いヒト
生殖系列Vλ又はVκ配列のアミノ酸残基に対して比較する、生殖系列VL配列又はラクダ科
種(具体的にはリャマ及びヒトコブラクダ)由来のκ型及びλ型の両方の解析を含んでいる
。ラクダ科動物とヒトの間で同じ重要残基の数は、典型的には33〜100%の範囲、より頻
繁には50〜100%、典型的には100%に近いことが認められた。
VLドメイン中のL1及びL2は、ヒト生殖系列VLドメインにおいて生じることがわかってい
るカノニカルフォールド構造の組合せと同一である予測された又は実際のカノニカルフォ
ールド構造の組合せを形成することができる。
非限定的実施態様において、Vλドメイン中のL1及びL2は、下記のカノニカルフォール
ド組合せのひとつを形成することができる:11-7、13-7(A,B,C)、14-7(A,B)、12-11、14-
11及び12-12(Williamsらの論文、J. Mol. Biol. 264:220-32 (1996)に規定され、かつhtt
p://www.bioc.uzh.ch/antibody/Sequences/Germlines/ VBase_hVL.htmlに示されている)
。非限定的実施態様において、Vκドメイン中のL1及びL2は、下記のカノニカルフォール
ド組合せのひとつを形成することができる:2-1、3-1、4-1及び6-1(Tomlinsonらの論文、
EMBO J. 14:4628-38 (1995)に規定され、かつhttp://www.bioc.uzh.ch/antibody/Sequenc
es/ Germlines/VBase_ hVK.htmlに示されている)。
更なる実施態様において、VLドメインのL1、L2及びL3の3種は全て、実質的にヒト構造
を示すことができる。ほとんどのヒトVκ生殖系列セグメントは、位置95上の保存されたc
is-プロリンにより安定化されている、L3ループの単独のコンホメーション(1型)もコード
しているが、V-J結合のプロセス及びこのプロリン残基の喪失の可能性のために、再編成
された配列における他のコンホメーションが可能である。公に入手可能な体細胞変異され
たヒトコブラクダVκ配列は、ヒトκ生殖系列配列において認められるようにL3(κ)に関
する1型カノニカルフォールドを有し、並びに位置95上のプロリンが、7つのヒトコブラク
ダVκドメインの中の6つにおいて生じる。従って本抗原結合ポリペプチドがVκドメイン
を含む場合、このドメインは、位置95上に保存されたプロリン残基を有することができる
ヒトVL生殖系列配列の構造的レパトアは、Williamsとその同僚により解析された(Willi
amsらの論文、J. Mol. Biol. 264:220-232 (1996))。その中で解析された3つのファミリ
ーは、L2ループの同じコンホメーションをコードしている。L3ループのコンホメーション
は、若干の長さの変動がありかつcis-プロリン残基は存在しないので、より高度に可変性
であると考えられる。実際に入手可能な体細胞変異されたヒトコブラクダVλ配列は、L3
の長さにおいて高度の可変性を示す。これらのほとんどは、L3についてカノニカルフォー
ルドを有する(f.i. Vλ3-1ファミリーメンバーCamvl19(10A)及びCamvl20(1/9A)、Vλ2-18
ファミリーメンバーCamvl5、17、30、36及び52(全て10B)、並びにVλ1-40ファミリーメン
バーCamvl44(5/11A))。
本発明の抗原結合ポリペプチドのVLドメインは、ヒトVLと高い配列同一性/配列相同性
の両方を示すこと、及び同じくVLドメイン内の超可変ループは、ヒトVLと構造相同性を示
すことが好ましい。
一実施態様において、本発明の抗原結合ポリペプチドのVLドメインは、フレームワーク
領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたりヒトVLドメインと80%以上、85%以上、90%以上、95
%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%でさえもの配列同一性を示すことができ
、かつ加えて、超可変ループL1及び超可変ループL2は、同じヒトVLドメインにおいて天然
に生じることがわかっているカノニカルフォールド組合せと同じである予測された又は実
際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成することができる。
当然、ヒト-コードされたVH/VL対合と最大の配列及び構造の相同性を伴う、(ラクダ科
動物-由来した)VH/VL対合を含む抗原結合ポリペプチドを提供するために、ヒトVHと高い
配列同一性/配列相同性、及びヒトVHの超可変ループと構造相同性も示すVHドメインは、
ヒトVLと高い配列同一性/配列相同性、及びヒトVLの超可変ループと構造相同性を示すVL
ドメインと組合せられることが描かれている。本発明により提供されたラクダ科動物のプ
ラットフォームの特別な利点は、VHドメイン及びVLドメインの両方が、ヒト抗体の可変ド
メインと高い配列及び構造の相同性を示すことである。
(抗原結合ポリペプチドの構造)
本発明の抗原結合ポリペプチドは、VHドメイン及びVLドメインの両方が存在することを
条件として、様々な異なる実施態様をとることができる。従って非限定的実施態様におい
て、本抗原結合ポリペプチドは、免疫グロブリン、抗体又は抗体断片であることができる
。本明細書において用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、かつそれらが標的抗原に
対し好適な特異性を示す限りは、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)
、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)を包含するが、これらに
限定されるものではない。本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」は、
実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体をいい、すなわちその集団を構成する個々の
抗体は、少量存在し得る可能性のある天然の変異を除いて、同一である。モノクローナル
抗体は、高度に特異性であり、単独の抗原部位に対し示されている。更に、抗原上の異な
る決定基(エピトープ)に対し示された様々な抗体を典型的には含む通常型(ポリクローナ
ル)抗体調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単独の決定基又はエピト
ープに対して示される。
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般にそれらの抗原結合又は可変ドメインを含む
。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、二重特異性Fab'、及びFv断片、ダイアボディ、
線状抗体、単鎖抗体分子、単鎖可変部断片(scFv)又は抗体断片から形成された多重特異性
抗体を含む(Holliger及びHudsonの論文、Nature Biotechnol., 23:1126-36 (2005)を参照
することとし、その内容は引用により本明細書中に組み込まれている。)。
非限定的実施態様において、本発明の抗体及び抗体断片は、CH1ドメイン及び/又はCLド
メインを含むことができ、それらのアミノ酸配列は、完全に又は実質的にヒトである。本
発明の抗原結合ポリペプチドが、ヒト治療的用途が意図された抗体である場合、これは、
その抗体の定常領域全体、又は少なくともそれらの一部について典型的には、完全に又は
実質的にヒトアミノ酸配列を有する。従って本発明の抗体は、VH及びVLドメインを含まな
ければならず、その少なくとも一方は、ラクダ科に由来した少なくとも1個の超可変ルー
プを含むが、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCLドメイン(並び
に存在するならばCH4ドメイン)の1つ以上若しくはいずれかの組合せは、そのアミノ酸配
列に関して完全に又は実質的にヒトであることができる。
有利なことに、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCLドメイン(
並びに存在するならばCH4ドメイン)は、全て完全に又は実質的にヒトアミノ酸配列を有す
ることができる。ヒト化又はキメラ抗体、又は抗体断片の定常領域の文脈において、用語
「実質的にヒト」とは、ヒト定常領域との少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少
なくとも97%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性をいう。この文脈において用語
「ヒトアミノ酸配列」は、生殖系列、再配列された及び体細胞変異された遺伝子を含む、
ヒト免疫グロブリン遺伝子によりコードされたアミノ酸配列をいう。本発明は同じく、ヒ
ト配列に関して1つ以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換により変更されている「ヒト」
配列の定常ドメインを含むポリペプチドも企図している。
本明細書の別所において考察されるように、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入又は欠失
は、重鎖及び/又は軽鎖の定常領域内、特にFc領域内に作製されることが企図されている
。アミノ酸置換は、置換されたアミノ酸の、異なる天然のアミノ酸との、又は非天然若し
くは修飾されたアミノ酸との交換を生じることができる。例えばグリコシル化パターンの
変化(例えば、N-又はO-連結されたグリコシル化部位の付加又は欠失による)などの、他の
構造的修飾も許容される。抗体の意図された用途に応じて、Fc受容体へのその結合特性に
関して、本発明の抗体を修飾すること、例えばエフェクター機能を変更することが望まし
いことがある。例えば、システイン残基は、Fc領域に導入されることができ、これにより
この領域内での鎖内ジスルフィド結合形成が可能になる。こうして作出されたホモ二量体
型抗体は、改善されたインターナリゼーション能並びに/又は増大された補体-媒介性細胞
傷害性及び抗体-依存性細胞傷害性(ADCC)を有する。Caronらの論文、J. Exp. Med. 176:1
191-1195 (1992)及びShopesの論文、B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照された
い。あるいは抗体は、二重Fc領域を有し、かつこれにより増強された補体溶解及びADCC能
を有し得るよう、操作されることができる。Stevensonらの論文、Anti-Cancer Drug Desi
gn, 3:219-230 (1989)を参照されたい。本発明は、化学療法薬、毒素(例えば、細菌、真
菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性がある毒素、又はそれらの断片)、又は放射性
同位元素(すなわち、放射性複合体)などの、細胞毒性物質に複合された、本明細書に説明
されたような抗体を含む免疫複合体も企図している。Fc領域は、半減期を延長するように
操作されることもできる。
本発明は、ある実施態様において、キメララクダ科/ヒト抗体、及び特にVH及びVLドメ
インが完全にラクダ科動物の配列(例えば、リャマ又はアルパカ)のものであり、かつその
抗体の残りが完全にヒト配列のものであるキメラ抗体を包含している。好ましい実施態様
において、本発明は、「ヒト化された」又は「生殖系列化された」ラクダ科抗体、並びに
VH及びVLドメインが、能動免疫化により得られたラクダ科VH及びVLドメインと比べ、その
フレームワーク領域内に1つ以上のアミノ酸置換を含む、ラクダ科/ヒトキメラ抗体も包含
している。そのような「ヒト化」は、出発のラクダ科VH又はVLドメイン中のミスマッチし
たアミノ酸残基を、ヒト生殖系列-コードされたVH又はVLドメイン中に認められた同等の
残基と置き換えることにより、ヒト生殖系列VH又はVLドメインとの%配列同一性を増大す
る。
本発明はなお更に、ラクダ科抗体、例えば標的抗原による能動免疫化により生じたラク
ダ科抗体に由来した、又はそうでなければラクダ科動物遺伝子によりコードされたCDR(又
は超可変ループ)が、ヒトVH及びVLフレームワーク上にグラフティングされており、その
抗体の残りも完全にヒト起源である、CDR-グラフティング抗体を包含している。しかしラ
クダ科免疫グロブリンとヒト免疫グロブリンの間で認められる高度のアミノ酸配列相同性
及び構造相同性を前提とすると、本発明者らは大半の場合において、CDRグラフティング
を必要としないラクダ科動物-由来のVH及びVLドメインのフレームワーク領域の「ヒト化
」を介するか、又は表面的修飾(veneering)を必要としない限定された数の骨格配列に対
するCDRグラフティングを介し、インビボでの治療的用途に必要とされるヒト相同性のレ
ベルを達成することが可能であることを予測する(同じくAlmagroらの論文、Frontiers in
Bioscience, 13:1619-1633 (2008)も参照することとし、その内容は引用により本明細書
中に組み込まれている)。
本発明に従うヒト化抗体、キメラ抗体及びCDR-グラフティング抗体、特に標的抗原によ
るラクダ科の能動免疫化に由来した超可変ループを含む抗体は、関心対象のポリペプチド
を作出するように操作され、かつ細菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞
を含むが、これらに限定されるものではない、原核又は真核宿主細胞を使用し、通常型組
換えDNA操作及び発現技術を用い、容易に作成することができ、それらの一部は本明細書
に説明されかつ付随する実施例において例示されている。
本発明は、VH又はVLドメインの一方又は他方のいずれかが、ラクダ科から得られるか、
又はラクダ科に由来した少なくとも1個のCDR又は超可変領域を含み、かつ「他方」の可変
ドメインが、非ラクダ科動物、例えばヒトのアミノ酸配列を有する、抗原結合ポリペプチ
ドも包含している。従ってラクダ科動物のVHドメインをヒトVLドメインと対合するか、又
はヒトVHドメインをラクダ科動物のVLドメインと対合することが企図されている。このよ
うな対合は、それらから所望の抗原結合特性を伴う高親和性の結合物質(binder)を選択す
るために利用可能な抗原に結合するレパトアを増大することができる。
本発明はなお更に、VHドメイン及び/又はVLドメインの超可変ループ又はCDRが、ラクダ
科から得られるが、該(ラクダ科動物由来の)超可変ループ又はCDRの少なくとも1個は、ラ
クダ科動物-コードされた配列と比べ1つ以上のアミノ酸の置換、付加又は欠失を含むよう
に操作されている、抗原結合ポリペプチドに及ぶ。そのような変化は、超可変ループ/CDR
の「ヒト化」を含む。この方式で操作されているラクダ科動物由来のHV/CDRは、ラクダ科
動物-コードされたHV/CDRのアミノ酸配列と依然「実質的に同一」であるアミノ酸配列を
示すことができる。この文脈において、「実質的同一性」とは、ラクダ科動物-コードし
ているHV/CDRとの、わずかに1個、又はわずかに2個のアミノ酸配列ミスマッチを容認する
ことができる。
本発明の抗体は、任意のアイソタイプであることができる。ヒトの治療的用途が意図さ
れた抗体は、典型的にはIgA、IgD、IgE、IgG、IgM型であり、頻繁にはIgG型であり、その
場合これらは4種のサブ-クラスIgG1、IgG2a及びb、IgG3又はIgG4のいずれかに属すること
ができる。これらのサブ-クラスの各々において、そのFc部分内に1つ以上のアミノ酸の置
換、挿入若しくは欠失を生じるか、又は例えばFc-依存型機能性を増強若しくは低下させ
るために、他の構造上の修飾を生じることが可能である。
本発明の抗原結合ポリペプチドは、疾患の研究並びに診断及び/又は治療の両方におけ
る、広範な適用において有用であることができる。天然ヒト抗体のVH及びVLドメインとの
高度のアミノ酸配列同一性、並びに高度の構造相同性(具体的にはヒト抗体において認め
られるようなカノニカルフォールドの正確な組合せ)のために、本発明の抗原結合ポリペ
プチドは、特にモノクローナル抗体の形で、ヒト治療薬としての特定の有用性を認めるで
あろう。
本発明は、広範な抗原に対する抗原結合ポリペプチド、及び具体的にはモノクローナル
抗体の作製のためのプラットフォームを提供し、かつ本発明は、その最も広い態様におい
て、標的抗原の厳密な同一性に関して、実際に標的抗原への結合の特異性又は親和性に関
しても、限定されることを意図しない。しかし特定の非限定的実施態様において、この標
的抗原は、非ラクダ科動物の抗原、細菌抗原、ウイルス抗原又はヒト抗原であることがで
きる。好ましい実施態様において、この標的抗原は、特定の治療上重要な抗原であること
ができる。用語「治療上重要な標的」とは、ヒト又は動物の疾患の形成、発症、進行、媒
介に、又は各々の疾患に関連した作用に関与した標的をいう。この定義に含まれるのは、
標的の発現レベル及び/又は活性が、抗体結合により変更される標的(例えば、その活性が
作動性若しくは拮抗性の抗体との結合により変更され得る受容体)、並びに標的の活性及
び/又は発現が、疾患への直接若しくは間接の影響を有する標的である。
例として、「ヒト抗原」は、受容体、受容体リガンド、細胞-シグナル伝達分子、ホル
モン、サイトカイン若しくはサイトカイン受容体、神経伝達物質などとして機能する天然
のヒトポリペプチド(タンパク質)を含むことができる。「天然の」により、このポリペプ
チドは、その発達のいずれかの段階で人体内で発現されることを意味し、疾患過程におい
て人体により発現されたポリペプチドを含む。
本発明の抗原結合ポリペプチドの非限定的実施態様は以下を含む:
VHドメイン又はVLドメイン中の少なくとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)
が、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られる、VHドメイン及びVLドメイ
ンを含むキメラ抗原結合ポリペプチド。特定の実施態様において、VHドメイン及びVLドメ
インの両方は、リャマ(ラマ・グラマ)から得られる。
VHドメイン又はVLドメイン中の少なくとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)
が、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られる、VHドメイン及びVLドメイ
ンを含む組換えにより発現された抗原結合ポリペプチド。特定の実施態様において、VHド
メイン及びVLドメインの両方は、リャマ(ラマ・グラマ)から得られる。
VHドメイン又はVLドメイン中の少なくとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)
が、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られる、VHドメイン及びVLドメイ
ンを含むモノクローナル抗体。特定の実施態様において、VHドメイン及びVLドメインの両
方は、リャマ(ラマ・グラマ)から得られる。
VHドメイン又はVLドメイン中の少なくとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)
が、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られ、かつ該抗原結合ポリペプチ
ドが、治療上又は診断上重要な標的抗原と免疫反応性である、VHドメイン及びVLドメイン
を含む抗原結合ポリペプチド。特定の実施態様において、VHドメイン及びVLドメインの両
方は、リャマ(ラマ・グラマ)から得られる。
ラクダ科動物(特にリャマ又はアルパカ)の通常型抗体のVHドメイン、ラクダ科動物(特
にリャマ又はアルパカ)の通常型抗体のVLドメイン及び1個以上のヒト抗体定常ドメインを
含む、キメラ抗原結合ポリペプチド。特定の実施態様において、VHドメイン及びVLドメイ
ンの両方は、リャマ(ラマ・グラマ)から得られる。
抗原結合ポリペプチドが、ラクダ科動物(特にリャマ又はアルパカ)の通常型抗体のVHド
メイン、ラクダ科動物(特にリャマ又はアルパカ)の通常型抗体のVLドメイン及び1個以上
のヒト抗体定常ドメインを含むか又はこれらからなる、治療上又は診断上重要な標的抗原
と免疫反応性である、キメラ抗原結合ポリペプチド。特定の実施態様において、VHドメイ
ン及びVLドメインの両方は、リャマ(ラマ・グラマ)から得られる。
ラクダ科動物(特にリャマ又はアルパカ)の通常型抗体のVHドメイン、ラクダ科動物(特
にリャマ又はアルパカ)の通常型抗体のVLドメイン、並びにIgG、IgM、IgD、IgE及びIgAか
らなる群から選択されるアイソタイプのヒト抗体の定常ドメインを含むか又はこれらから
なる、キメラ抗体。特定の実施態様において、VHドメイン及びVLドメインの両方は、リャ
マ(ラマ・グラマ)から得られる。
抗原結合ポリペプチドが、ラクダ科動物(特にリャマ又はアルパカ)の通常型抗体のVHド
メイン、ラクダ科動物(特にリャマ又はアルパカ)の通常型抗体のVLドメイン、並びにIgG
、IgM、IgD、IgE、IgAからなる群から選択されるアイソタイプのヒト抗体の定常ドメイン
を含むか又はこれらからなる、治療上又は診断上重要な標的抗原と免疫反応性である、キ
メラ抗原結合ポリペプチド。特定の実施態様において、VHドメイン及びVLドメインの両方
は、リャマ(ラマ・グラマ)から得られる。
前述の特定の実施態様において、VH及びVLドメインの両方は、ラクダ科動物の同じ種(
特にリャマ又はアルパカ)に由来することができ、かつこの種内の同じ動物、例えば能動
免疫化されている単独の動物に由来することさえできる。特にVHドメイン及びVLドメイン
の両方は、単独の能動免疫化されたリャマから得ることができる。しかし、VH及びVLドメ
インを、異なる動物、又は非免疫ライブラリーから得ることは除外されない。
前述の実施態様において、用語「ラクダ科動物の通常型抗体のVHドメイン」及び「ラク
ダ科動物の通常型抗体のVLドメイン」は、本明細書の別所に説明されたように、1個以上
のフレームワーク領域において「ヒト化された」又は「生殖系列化された」変異型のよう
に、アミノ酸配列に1個以上の変化を導入するように操作されている変異型を包含し、か
つ本明細書の別所に説明されたように、合成(例えばコドン最適化された)遺伝子の産物も
包含することが意図されている。
(ポリヌクレオチド、ベクター及び組換え発現)
本発明は、本発明の抗原結合ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド分子、宿
主細胞又は無細胞発現システムにおいて本抗原結合ポリペプチドの発現を可能にする調節
配列に機能的に連結された本発明の抗原結合ポリペプチドをコードしているヌクレオチド
配列を含む発現ベクター、並びにこの発現ベクターを含む宿主細胞又は無細胞発現システ
ムも提供する。
本発明の抗原結合ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド分子は、例えば組換
えDNA分子を含む。
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド分子」は、本明細書にお
いて互換的に使用され、かつ1本鎖又は二本鎖のいずれかのDNA又はRNA分子、及び1本鎖の
場合、その相補配列の分子をいう。核酸分子の考察において、特定の核酸分子の配列又は
構造は、5'から3'方向で配列が提供される通常の慣習に従い本明細書において説明され得
る。本発明の一部の実施態様において、核酸又はポリヌクレオチドは、「単離され」てい
る。この用語は、核酸分子に適用される場合、それが起源とする生物の天然のゲノム内で
それが直ぐ近接している配列から分離されている核酸分子をいう。例えば「単離された核
酸」は、プラスミドベクター若しくはウイルスベクターなどのベクターに挿入されたDNA
分子、又は原核細胞又は真核細胞若しくは非-ヒト宿主生物のゲノムDNAに組み込まれたDN
A分子を含むことができる。RNAに適用される場合、用語「単離されたポリヌクレオチド」
とは、主に先に定義された単離されたDNA分子によりコードされたRNA分子をいう。あるい
は、この用語は、その自然の状態(すなわち細胞又は組織内)ではそれが会合されるであろ
う他の核酸から精製/分離されたRNA分子をいうことができる。単離されたポリヌクレオチ
ド(DNA又はRNAのいずれか)は、生物学的手段又は合成手段により直接作製され、かつその
作製時に存在する他の成分から分離された分子を更に表すことができる。
本発明の抗原結合ポリペプチドの組換え生成に関して、これをコードしている組換えポ
リヌクレオチドは、(標準の分子生物学的技術を用いて)調製され、かつ選択された宿主細
胞、又は無細胞発現システムにおいて発現するために、複製可能なベクターに挿入される
ことができる。好適な宿主細胞は、原核細胞、酵母細胞、又はより高等な真核細胞、具体
的には哺乳類細胞であることができる。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40により形質
転換されたサル腎CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎株(293細胞又は懸濁培養に
おける増殖のために継代された293細胞、Grahamらの論文、J. Gen. Virol. 36:59 (1977)
);ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHF
R(CHO、Urlaubらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルト
リ細胞(TM4、Matherの論文、Biol. Reprod. 23:243-251 (1980));マウス骨髄腫細胞SP2/
0-AG14(ATCC CRL 1581;ATCC CRL 8287)又はNSO(HPAカルチャーコレクション番号8511050
3);サル腎細胞(CV1、ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-158
7);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファ
ロー系ラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝
細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherらの論
文、Annals N. Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;並びに、ヒト
肝癌株(Hep G2)、更にはDSMのPERC-6細胞株である。これらの宿主細胞の各々における使
用に適した発現ベクターも、概して当該技術分野において公知である。
用語「宿主細胞」は一般に、培養された細胞株をいうことは留意されなければならない
。本発明の抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターが導入されているヒト全
体は、本発明の範囲から明白に除外される。
重要な態様において、本発明は、本組換え抗原結合ポリペプチドをコードしているポリ
ヌクレオチド(例えば発現ベクター)を含む宿主細胞(又は無細胞発現システム)を、該抗原
結合ポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養すること、並びに発現された抗原結合
ポリペプチドを回収することを含む、組換え抗原結合ポリペプチドを作製する方法も提供
する。この組換え発現方法は、ヒトの治療的用途のために意図されたモノクローナル抗体
を含む、本発明の抗原結合ポリペプチドの大規模製造に使用されることができる。インビ
ボ治療的用途に適した組換え抗体の大規模製造に適したベクター、細胞株及び製造方法は
、一般に当該技術分野において利用可能であり、かつ当業者に周知であろう。
本発明の更なる態様は、本発明の抗原結合ポリペプチドを備える、診断用キットなどを
含む、試験キット、及び同じく本発明の抗原結合ポリペプチドを含有する医薬製剤に関す
る。
本抗原結合ポリペプチドが診断的用途のために意図される場合、例えば本抗原結合ポリ
ペプチドが病態又は易罹患性の生体マーカーである抗原に特異的である場合、本抗原結合
ポリペプチドを試験キットの成分として供給することは都合がよくあり得る。診断試験は
典型的には、ELISA、ラジオイムノアッセイ、Elispotなどの標準のイムノアッセイの形を
とる。このような試験キットの成分は、試験又はアッセイの性質に応じて変動することが
でき、これは本発明の抗原結合ポリペプチドを使用し実行されることが意図されるが、典
型的には本発明の抗原結合ポリペプチドを用いるイムノアッセイを実行するために必要と
される追加試薬を含む。診断試薬として使用するための抗原結合ポリペプチドは、例えば
蛍光部分、酵素標識、又は放射標識などの顕在化標識(revealing label)を保持すること
ができる。
インビボ治療的用途のために意図された抗原結合ポリペプチドは、典型的には1種以上
の医薬として許容し得る希釈剤、担体又は賦形剤と一緒に、医薬剤形に製剤される(「レ
ミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、第16版、Osol, A.編集、198
0)。本発明の抗原結合ポリペプチドは、典型的には、それを必要とする哺乳類対象、典型
的にはヒト患者へ、静脈内へ、又は筋肉内、腹腔内、脳室内、腫瘍内、経口、腫瘍周辺、
皮下、滑液嚢内、髄腔内、局所的、舌下若しくは吸入経路により、投与される、無菌の水
溶液として製剤される。疾患の予防又は治療のための、抗原結合ポリペプチドの適量は、
治療されるべき疾患の種類、該疾患の重症度及び臨床経過に加え、患者の年齢、体重及び
既往歴により左右され、かつ担当医の判断により決定されるであろう。
(抗原結合ポリペプチドの作製方法)
本発明の重要な態様は、関心対象の標的抗原に対する高親和性抗原結合ポリペプチド、
具体的にはモノクローナル抗体の作製方法に関する。
従って本発明は、標的抗原と免疫反応性である抗原結合ポリペプチドを調製する方法を
提供し、該方法は:
(a)該標的抗原と免疫反応性であるラクダ科通常型抗体のVH及び/又はVLドメインの少な
くとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)をコードしているヌクレオチド配列を
決定すること;並びに
(b)該標的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプチドを発現することであり、該抗原結
合ポリペプチドが、VH及びVLドメインを含み、ここでこのVHドメイン又はVLドメインの少
なくとも1個の超可変ループ若しくは相補性決定領域(CDR)は、パート(a)において決定さ
れたヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列を有すること:を含む。
一実施態様において、パート(b)において発現された抗原結合ポリペプチドは、パート(
a)のラクダ科通常型抗体と同一ではない。
ひとつの非限定的実施態様において、本発明は、標的抗原と免疫反応性である(又は特
異的に結合する)組換え抗原結合ポリペプチドを調製する方法を提供し、該抗原結合ポリ
ペプチドは、VHドメイン及びVLドメインを含み、ここでVHドメイン又はVLドメインの少な
くとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)が、ラクダ科ファミリーの種から得ら
れ、該方法は:
(a)該標的抗原と免疫反応性のラクダ科通常型抗体のVH及び/又はVLドメインの少なくと
も1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)をコードしているラクダ科核酸を単離する
工程;
(b)工程(a)において単離された核酸によりコードされた超可変ループ又は相補性決定領
域と同一のアミノ酸配列を有する超可変ループ又は相補性決定領域をコードしているヌク
レオチド配列を含む組換えポリヌクレオチドを調製する工程であり、この組換えポリヌク
レオチドが、該標的抗原と免疫反応性である(又は特異的に結合する)VHドメイン及びVLド
メインを含む抗原結合ポリペプチドをコードしている、前記工程;並びに
(c)工程(b)の組換えポリヌクレオチドから該抗原結合ポリペプチドを発現する工程:を
含む。
一実施態様において、パート(c)において発現された抗原結合ポリペプチドは、パート(
a)のラクダ科通常型抗体と同一ではない。
前述の方法は、本明細書において、抗原結合ポリペプチドの調製に関する「全般的方法
」と称されることができる。
いずれかの方法の第一の工程は、標的抗原に対する免疫応答を誘起するための、ラクダ
科ファミリーの種の能動免疫化、これによる該標的抗原に対し免疫反応性のラクダ科動物
の通常型抗体の発生に関与し得る。ラクダ科動物の免疫化に関するプロトコールは、付随
する実施例において説明される。免疫化に使用される抗原調製品は、標的抗原、例えば組
換えにより発現されたポリペプチド、又はそれらの免疫原性断片の精製型であることがで
きる。しかし、該標的抗原を発現若しくはコードしている単離された細胞又は組織調製品
、細胞溶解液、細胞上清若しくは細胞膜などの画分などのような抗原の粗調製品によるか
、又は該標的抗原をコードしているポリヌクレオチドにより(DNA免疫化)、免疫化するこ
とも可能である。
この方法は典型的には、ラクダ科種の動物(リャマ及びアルパカを含むが、これらに限
定されるものではない)の免疫化に関与し、かつ有利なことにこれらの動物は、非近交系
集団に属するであろう。しかし、ラクダ科動物の通常型Ig遺伝子座、又は少なくともそれ
らの一部を含むトランスジェニック動物(例えばトランスジェニックマウス)を使用するこ
とも企図される。
関心が増大しつつある話題は、インビボ及びインビトロで作出された抗体の相補性決定
領域(CDR)間の差異であるように見える。本発明者らは、インビボ選択が得られる抗体の
免疫原性、機能性、安定性、その結果として改善された製造可能性に対し好ましい影響を
有する一方で、インビトロにおいて作出されかつ選択された合成CDRは、この観点で不都
合があると推量している。所与の治療的抗体は、患者からのいわゆる抗-イディオタイプ
抗体反応により中和されるリスクがあるので、このことは重要である(Lonbergの論文、Na
ture Biotechnology, 23:1117-1125 (2005))。
ラクダ科動物の能動免疫化を基にした本発明の方法の重要な利点は、ラクダ科の全ての
種は、個々の動物が異なる遺伝的背景を有する巨大な非近交系集団において維持され得る
という事実に端を発する。従って、それから可能性のある抗原結合分子の多様なプールを
得ることができる関心対象の抗原に対する強力かつ多様な免疫応答を誘起するために能動
免疫化を使用することが可能である。付随する実施例において例証されるように、本発明
者らは、ラクダ科動物の能動免疫化は、高度の免疫多様性を伴う標的抗原に結合するFab
断片を作出することができることを認めている。理論により結びつけられることを意図す
るものではないが、本発明者らは、ヒトとラクダ科動物の間の系統学的距離は、所与の標
的抗原に対する多様な免疫応答を生じる上で重要であると推量している。対照的に、非ヒ
ト霊長類は、系統学的にヒトに近く、従って非ヒト霊長類とヒトの間で高い相同性を持つ
標的は、非ヒト霊長類において強度及び多様性の点で限定された免疫応答のみを誘起する
ことができる。
ヒトから系統学的に離れている非近交系集団において能動免疫化を使用する能力は、そ
のように作製された抗体が、ヒト抗体と低い配列相同性及び構造相同性を示す場合に、特
に有利ではなく、その結果治療的可能性のある候補抗体を作出するためには、実質的「タ
ンパク質操作」が必要であろう。従って本発明者らが、ラクダ科生殖系列(及び体細胞変
異された配列)は、ヒトVH及びVLドメインと非常に高度の配列相同性及び構造相同性を伴
うVH及びVLドメインの両方をコードしている(先に説明されたように)ことを示したことは
極めて重要である。この高度の相同性は、巨大な非近交系集団の利用可能性と組合せて、
ヒト治療薬として使用するためのモノクローナル抗体の開発のための非常に強力なプラッ
トフォームを生じる。
標的抗原による能動免疫化後、末梢血リンパ球又はリンパ節若しくは脾臓生検標本など
の生検標本を、免疫化された動物から単離でき、かつ標的抗原に対する通常型ラクダ科動
物抗体の産生についてスクリーニングできる。本実施例において例示されるように、スク
リーニングされるべきB細胞レパトアの複雑度を低下させるために、パニング又はFACS選
別を使用する濃厚化などの技術を、この段階で使用することができる。その後抗原-特異
性B細胞が選択され、かつ総RNA抽出及び引き続きのcDNA合成のために使用される。(前記
標的抗原に特異的な)未変性のラクダ科動物VH及びVLドメインをコードしている核酸は、P
CRにより単離されることができる。
関心対象の標的とのラクダ科動物の通常型抗体の免疫反応性を同定するために、能動免
疫化を使用することは必須ではない。別の実施態様において、ラクダ科動物自身の免疫応
答を使用すること、この動物、又は例えば罹患した動物若しくは例えば通常の感染経路に
より特定の病原体に自然に曝された動物に天然に存在するいずれかの免疫多様性を使用す
ることは可能である。これに関して、本発明は、非-免疫ライブラリーの使用を包含して
いる。ラクダ科動物内の「自然」免疫応答が関心対象の標的抗原に結合する抗体を既に生
じている場合、そのような抗体を産生するB細胞を培養及び単離するため、又はそのよう
な抗体のモノクローナル培養物を作製するため、並びに/又はそのような抗体のVH及び/若
しくはVLドメインをコードしているラクダ科動物の遺伝子セグメントのヌクレオチド配列
を決定するために、本明細書に説明されたような遺伝子操作技術、及び当該技術分野にお
いて公知の他の標準技術を使用することが可能である。この配列情報で武装された後、ラ
クダ科動物由来のVH及び/若しくはVL、又はそれらの超可変ループ(若しくはCDR)を具現化
している抗原結合ポリペプチドをコードしている組換えDNA構築体を操作することが可能
である。
ラクダ科動物のVH及びVLドメインをコードしている核酸(能動免疫化又は他の手段のい
ずれかにより得られた)は、本発明の抗原結合ポリペプチドを作製するために、発現ベク
ターに直接クローニングされることができる。特にこれらの配列は、キメラ抗体を作製す
るために、ヒト抗体定常領域又はその一部もコードしている発現ベクターへクローニング
されることができる。しかしヒト定常領域配列のクローニング及び発現の前に、単離され
たラクダ科動物VH及びVL配列に更なる操作を実行することは典型的である。
第一の工程として、候補ラクダ科動物VH及びVL配列(能動免疫化後に単離された配列を
含む)を使用し、ラクダ科動物ライブラリー(例えば、付随する実施例において説明された
Fabライブラリー)を調製することができる。次にこのライブラリーは、標的抗原への結合
に関してスクリーニングされる(例えば、ファージディスプレイを用いて)。有望なリード
候補は、例えば、Biacore又は好適なバイオアッセイを使用し、標的抗原結合について更
に試験されることができる。最後に、最も有望なリードのVH及びVLドメインをコードして
いる配列が、ヒト抗体定常領域をコードしている配列とのインフレーム融合としてクロー
ニングされることができる。
(ラクダ科動物由来の)HV/CDRをコードするために使用されるポリヌクレオチド配列(例
えば、本発明の抗原結合ポリペプチドの組換え発現のため)は、ラクダ科動物においてHV/
CDRを天然にコードしている未変性のポリヌクレオチド配列と同一であることは必須では
ない。従って本発明は、コードされたアミノ酸配列を変更しない、クローニング及び/又
は発現に関連したポリヌクレオチド配列中のコドン最適化及び他の変化を包含し/可能と
する。
ある実施態様において、関心対象の抗原に結合することがわかっている特定の可変ドメ
インを、反対型の可変ドメインの各セットと対合し(すなわち、VHはVLライブラリーと対
合し、逆もまた同様)、ライブラリーを作製するために、「鎖シャッフリング」が行われ
ることができ、かつ得られるVH/VLの「不規則な」組合せは、抗原結合の親和性及び/又は
特異性について試験される。あるいは、VHドメインのライブラリーは、無作為に又は階層
的な様式のいずれかで、VLドメインのライブラリーと対合され、かつ得られる組合せが試
験される(Clacksonらの論文、Nature, 352:624-638 (1991)を参照されたい)。この方法に
おいて、これらのライブラリーは、関心対象の抗原に対する免疫性を提示しているラクダ
科動物(能動免疫化された動物を含む)からの再配列されたVH及びVL(Vκ又はVλ)のライブ
ラリーであることができる。この鎖シャッフリングプロセスは、免疫多様性を増大し、か
つ著しく増強された親和性による対合を生じることができる。
本発明は、ラクダ科動物VH又はVLドメインから出発するエピトープインプリンティング
された選択(いわゆる「ガイド付き選択」)を行うことも企図しており、ここで他方の可変
ドメインは、非ラクダ科動物種、例えばヒトから得られる。従って一実施態様において、
ラクダ科動物VHドメインは、ヒト-コードされたVLドメインのライブラリーと「シャッフ
ル」され、未変性のラクダ科動物-コードされたVLドメインを置き換え、ラクダ科動物VH/
ヒトVLの対合を生じることができる。1つ以上のこれらの対合は、次にヒトVLドメインが
、ヒト-コードされたものであることができるVHドメインのライブラリーに対してシャッ
フルされる第二の鎖シャッフリング工程に供される。この第二の工程は、当初のラクダ科
動物-コードされたVH/VL組合せのエピトープインプリンティングを有する、ヒト-コード
されたVH/VL組合せを作製することができる。
同じく本発明の範囲内に、関心対象の抗原に結合する非ラクダ科動物(好ましくはヒト)
-コードされたVH/VLドメイン組合せで始まる、逆「鎖シャッフリング」プロセスも含まれ
る。これは、例えば実証(validate)された疾患標的に対する完全ヒト治療的抗体であるこ
とができる。このVH/VL組合せから出発し、VHドメインが、ラクダ科動物-コードされたVL
ドメインのライブラリーにより「シャッフル」される(逆もまた同様)選択の第一ラウンド
を実行し、かつこの対合が抗原結合について試験されることが可能である。次に、選択さ
れた非ラクダ科動物(例えばヒト)VH/ラクダ科動物VLの対合は、ラクダ科動物-コードされ
たVLが、ラクダ科動物-コードされたVHのライブラリーに対してシャッフルされる選択の
第二ラウンドに供され、得られた対合が抗原結合について試験される。結果として、出発
VH/VL組合せのエピトープインプリンティングを保持する、ラクダ科動物VH/ラクダ科動物
VLの組合せを作製することが可能であることができる。このラクダ科動物VH/VL組合せは
、本明細書に説明された方法のいずれかを使用し、必要ならば、更に操作/修飾され、か
つヒト-コードされた定常ドメインと組合せられる。
本発明の方法において、「未変性の」ラクダ科動物由来のVH及びVLドメインは、典型的
にはフレームワーク領域内に、1個以上の選択的アミノ酸置換が導入される、タンパク質
操作に供されることができる。このような置換を「野生型」ラクダ科動物配列に導入する
理由は、(i)フレームワーク領域のヒト化、(ii)安定性、生物学的利用能、生成物の均一
性、組織透過などの改善、又は(iii)標的抗原結合の最適化であることができる。
フレームワーク領域内での1個以上のアミノ酸残基の選択的交換によるラクダ科動物由
来のVH及びVLドメインの「ヒト化」は、良く確立された原理に従い実行されることができ
る(付随する実施例において例示され、かつAlmagroらの論文、Frontiers in Bioscience,
13:1619-1633 (2008)において検証され、その内容は具体的に引用により本明細書中に組
み込まれている)。所与のVHドメイン、VLドメイン又はそれらの組合せのいずれかの許容
し得る「ヒト化」を実現するために行われるアミノ酸変化の正確な同一性は、ラクダ科由
来のフレームワーク領域の配列及びこれらのフレームワーク領域と最も近い並置されたヒ
ト生殖系列(又は体細胞変異された)フレームワーク領域の間の出発相同性によって決まり
、かつ恐らく抗原結合部位を形成する超可変ループの配列及びコンホメーションによって
も決まるので、これらは個別的基準で変動することは理解されるであろう。
ヒト化の全般的目的は、ラクダ科によりコードされた親のVH及びVLドメイン(例えば能
動免疫化により得られたラクダ科動物VH/VL)により形成された抗原結合部位の特異性及び
親和性は保持しながら、VH及びVLドメインが、ヒト対象に導入された場合に、最小の免疫
原性を示すような分子を作製することである。この目的を達成するために使用することが
できるヒト化には、多くの確立されたアプローチが存在する。技術は一般に、理論的アプ
ローチ又は経験的アプローチのいずれかとして分類されることができる。理論的アプロー
チは、CDR-グラフティング、再表面形成(resurfacing)又は表面的修飾、超ヒト化及びヒ
トストリング(string)含量最適化を含む。経験的アプローチは、FRライブラリーアプロー
チ、ガイド付き選択、FRシャッフリング及びヒューマニア化(humaneering)を含む。これ
らの技術は全て、Almagroの文献、「生物科学最前線(Frontiers in Bioscience)」、2008
(同書)において検証されており、かつこれらの技術のいずれか又はそれらの組合せ若しく
は改変を使用し、本発明の「ヒト化された」抗原結合ポリペプチドを調製することができ
る。
(ライブラリー構築方法)
関連した態様において、本発明は、ラクダ科動物の通常型抗体のVH及び/又はVLドメイ
ンをコードしている発現ベクターのライブラリーを作製する方法も包含しており、該方法
は:
a)増幅された遺伝子セグメントを得るために、ラクダ科動物の通常型抗体のVH及び/又
はVLドメインをコードしている核酸分子の領域を増幅する工程であって、各遺伝子セグメ
ントが、ラクダ科動物の通常型抗体のVHドメインをコードしているヌクレオチド配列又は
VLドメインをコードしているヌクレオチド配列を含む、工程、並びに
b)各発現ベクターが、VHドメインをコードしている遺伝子セグメント及び/又はVLドメ
インをコードしている遺伝子セグメントを少なくとも含むように、工程a)において得られ
た遺伝子セグメントを発現ベクターにクローニングし、これにより発現ベクターのライブ
ラリーが得られる工程:を含む。
前記「ライブラリー構築」の方法は、先に説明されたように、本発明の抗原結合ポリペ
プチドの作製のための全般的方法の一部を形成することもできる。従って本発明のこの態
様に関連して好ましい又は有利であると説明された任意の特徴は、別に指定されない限り
は、本全般的方法に関連して好ましい又は有利であるとすることもでき、逆もまた同様で
ある。
一実施態様において、工程a)において増幅された核酸は、ラクダ科動物のリンパ系組織
から調製されたcDNA又はゲノムDNAを含み、該リンパ系組織は、B細胞、リンパ節、脾細胞
、骨髄細胞の1種以上、又はそれらの組合せを含む。循環B細胞が特に好ましい。本発明者
らは驚くべきことに、末梢血リンパ球(PBL)を、通常型ラクダ科動物抗体のVH及びVLドメ
インをコードしている核酸の供給源として使用することができる、すなわちPBL試料中に
直接増幅することが可能である十分な量の血漿細胞(抗体を発現している)が存在すること
を発見した。このことは、PBLは動物(ラクダ科動物)から採取された全血試料から調製さ
れることができるので、利点である。これは、(例えば脾臓又はリンパ節から)組織生検標
本を得るための侵襲的手法、及び試料採取手法が必要なだけ頻繁に繰り返される手段を使
用する必要を回避し、動物に対する衝撃を最小化する。例えば、ラクダ科動物を能動免疫
化し、その動物から最初の血液試料を採取しかつPBLを調製し、次に同じ動物を同じ抗原
の「追加免疫」用量又は異なる抗原のいずれかで2回目免疫化し、その後第二の血液試料
を採取しかつPBLを調製することが可能である。
従って、本発明のこの方法の特定の実施態様は、ラクダ科動物からPBLを含む試料を調
製すること、このPBLからcDNA又はゲノムDNAを調製すること、及びこのcDNA又はゲノムDN
Aをラクダ科動物の通常型抗体のVH又はVLドメインをコードしている遺伝子セグメントの
増幅の鋳型として使用することに関連することができる。
一実施態様において、前記リンパ系組織(例えば循環B細胞)は、本明細書の別所に説明
されたように、能動免疫化されたラクダ科動物から得られる。しかしこの実施態様は非限
定的であり、かつ同じく本明細書の別所に説明されたように、非-免疫ライブラリー及び
罹患したラクダ科動物のリンパ系組織由来のライブラリーを調製することも企図される。
好都合なことに総RNA(又はmRNA)は、リンパ系組織試料(例えば、末梢血細胞又は組織生
検標本)から調製され、かつ標準技術によりcDNAに転換されることができる。出発材料と
してゲノムDNAを使用することも可能である。
本発明のこの態様は、多様なライブラリーアプローチ、及びそのライブラリーの構築の
ためのB細胞選択アプローチの両方を包含している。多様なライブラリーアプローチにお
いて、VH及びVL-コードしている遺伝子セグメントのレパトアは、いかなる先行するB細胞
選択も伴わずにリンパ系組織から調製された核酸から増幅されることができる。B細胞選
択アプローチにおいて、所望の抗原-結合特性を持つ抗体を提示しているB細胞は、核酸抽
出並びにVH及びVL-コードしている遺伝子セグメントの増幅の前に、選択されることがで
きる。
様々な慣習的方法を用い、所望の抗原-結合特性を持つ抗体を発現しているラクダ科動
物のB細胞を選択することができる。例えばB細胞は、蛍光標識されたモノクローナル抗体
(mAb、リャマ又は他のラクダ科動物由来の通常型抗体を特異的に認識する)により、及び
別の蛍光色素で標識された標的抗原により、通常型IgGの細胞表面提示のために染色され
ることができる。次に個々のダブルポジティブB細胞は、FACSにより単離され、かつ総RNA
(又はゲノムDNA)が個別の細胞から抽出される。あるいは、細胞はインビトロ増殖に供さ
れ、かつ分泌されたIgGを含む培養上清はスクリーニングされることができ、かつ総RNA(
又はゲノムDNA)が陽性細胞から抽出される。なお更なるアプローチにおいて、個々のB細
胞は、特異的遺伝子により形質転換されるか、又は腫瘍細胞株と融合され、「自由自在に
」増殖することができる細胞株を作出することができ、引き続き総RNA(又はゲノムDNA)が
これらの細胞から調製される。
FACSによる選別の代わりに、通常型IgGを発現している標的特異的B細胞は、固定された
モノクローナル抗体(ラクダ科動物の通常型抗体に対して向けられた)上で、引き続き固定
された標的抗原上で、「パニング」されることができる。RNA(又はゲノムDNA)は、抗原特
異的B細胞のプールから抽出されることができるか、又はこれらのプールは、形質転換さ
れることができ、かつ個々の細胞は、限定希釈又はFACSによりクローニングされる。
B細胞選択方法は、陽性選択、又は陰性選択に関与することができる。
いかなるB細胞選択も伴わない多様なライブラリーアプローチ又はB細胞選択アプローチ
を使用するかにかかわらず、リンパ系組織から調製された核酸(cDNA又はゲノムDNA)は、
個々のVHドメイン又はVLドメインをコードしている遺伝子セグメントを増幅するために、
増幅工程に供される。
リンパ系組織(例えば、末梢B細胞又は組織生検標本)から抽出された総RNAは、ランダム
プライミングされたcDNAに転換でき、又はオリゴdTプライマーは、cDNA合成に使用される
ことができるか、あるいはIg特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、cDNA合成に適用で
き、又はmRNA(すなわちポリA RNA)は、cDNA合成の前に、オリゴdTセルロースにより総RNA
から精製されることができる。B細胞から単離されたゲノムDNAは、PCRに使用されること
ができる。
少なくともVH又はVLをコードしている重鎖及び軽鎖(κ及びλ)遺伝子セグメントのPCR
増幅は、CH1又はCκ/Cλ領域の3'末端へのプライマーアニーリングと組合せた、可変領域
の5'末端へアニーリングするFR1プライマーにより行うことができ、これらの定常領域プ
ライマーに関して、唯一のプライマーが各型に必要とされるという利点がある。このアプ
ローチは、ラクダ科動物のFabがクローニングされることを可能にする。あるいはこれら
の可変領域の3'末端へアニーリングするFR4プライマーのセットは、Fabとして(ベクター
にコードされた定常領域に融合された)又はscFvとして(単鎖Fv、そこで重鎖及び軽鎖可変
領域は、柔軟なリンカー配列を介して連結されている)再度クローニングするために使用
されることができるか;あるいは、これらの可変領域は、発現ベクター中にクローニング
されることができ、哺乳類細胞上に提示された完全長IgG分子の生成が可能である。
一般に増幅は、二工程で実行され;第一工程においては、タグなしプライマーにより、
大量のcDNAを使用し(多様性を維持するため)、及び第二工程においては、これらのアンプ
リコンは、クローニングのために5'側に導入された制限部位を伴う延長されたプライマー
であるタグ付きプライマーによりわずかに数サイクルで再増幅される。第一の増幅工程(
タグなしプライマー)において作製されたアンプリコンは、第二の増幅工程の前に、過剰
なプライマーを除去するために、ゲル-精製されることができる。あるいは、プロモータ
ー配列が導入され、これはリボソーム提示のためにRNAへ転写され得る。制限部位の代わ
りに、Cre-Lox部位又はTOPO部位などの、組換え部位が導入されることができ、これらは
適当なベクターへの位置指定された挿入を可能にする。
ラクダ科動物の通常型VH及びVLドメインをコードしている増幅された遺伝子セグメント
はその後、機能的抗原結合ポリペプチドとしてVH/VL組合せの発現に適したベクターへク
ローニングされることができる。例として、B細胞(又はいずれのB細胞選択にも供されな
い他のリンパ系組織)のプールから増幅されたVHCH1/VKCK/VLCL遺伝子セグメントは、個々
のライブラリー(一次ライブラリー)として個別に最初にクローニングされることができ、
次に第二工程において、Fab又はscFVライブラリーは、軽鎖断片を切断し、かつこれらを
重鎖断片をコードしているベクターへ連結することにより、集成され得る。この二工程手
順は、PCR産物のクローニングが相対的に不充分であるので(制限酵素による部分最適な消
化のため)、大きいライブラリーの作製を裏付けている。scFvをコードしているDNA断片は
、アンプリコン内の小さい重複配列を基にしたオーバーラップ伸長によるスプライシング
PCR(SOE)により作出されることができ;VH及びVLコードしているアンプリコンのPCRにお
けるリンカーをコードしている小型DNA断片との混合により、前記重複配列のために、単
独のDNA断片が形成される。
VH及びVL-コードしている遺伝子セグメントを含むアンプリコンは、ファージベクター
又はファージミドベクターにおいてクローニングされることができ、ファージディスプレ
イをベースにした選択方法を使用することにより、標的特異的抗体断片の選択を可能にし
ている。あるいはアンプリコンは、酵母細胞(Fab、scFv又は完全長IgGとして)又は哺乳類
細胞(IgGとして)上の提示を可能にする発現ベクターへクローニングされることができる
別の実施態様において、クローニングは、T7(又は他の)プロモーター配列及びリボソー
ム結合部位が増幅のためのプライマー内に含まれているリボソームディスプレイのための
アンプリコンを用いることにより避けることができる。標的抗原への結合に関する選択後
に、プールはクローニングされ、かつ個々のクローンが分析される。理論上、ファージに
よるライブラリーのクローニング及び選択は1010〜1012クローンに制限されるので、より
大きい免疫レパトアは、ファージディスプレイライブラリーアプローチとは対照的に、こ
のアプローチを用いてサンプリングされることができる。
B細胞選別を適用する場合、抗体断片(scFV又はFab)又は完全長IgGさえも作製するため
に、個々の標的特異的B細胞のVH又はVL-コードしている遺伝子セグメントを含むアンプリ
コンは、細菌又は哺乳類の発現ベクターへ直接クローニングされることができる。
「ライブラリー構築」プロセスの特定の非限定的実施態様において、本発明は、ラクダ
科動物の通常型抗体のVH及びVLドメインをコードしている発現ベクターのライブラリーの
作製方法を提供し、該方法は:
a)ラクダ科動物を能動免疫化し、これにより標的抗原に対する通常のラクダ科動物の抗
体を産生する工程;
b)該免疫化されたラクダ科動物(リャマ又はアルパカを含むが、これらに限定されるも
のではない)由来のリンパ系組織(例えば循環B細胞)を含む試料から、cDNA又はゲノムDNA
を調製する工程;
c)該cDNA又はゲノムDNAの領域を増幅し、増幅された遺伝子セグメントを得、各遺伝子
セグメントが、ラクダ科動物の通常型抗体のVHドメインをコードしているヌクレオチド配
列又はVLドメインをコードしているヌクレオチド配列を含む工程;並びに
d)各発現ベクターが、VHドメインをコードしている遺伝子セグメント及びVLドメインを
コードしている遺伝子セグメントを含み、かつ該VHドメイン及び該VLドメインを含む抗原
結合ポリペプチドの発現を指示するように、c)において得られた遺伝子セグメントを発現
ベクターへクローニングし、これにより発現ベクターのライブラリーが得られる工程:を
含む。
前述の方法は、例えばscFV、Fab又は完全長抗体の形での、機能的抗原-結合ポリペプチ
ドとしてのVH/VL組合せの発現に適している、ラクダ科動物-コードされたVH及びVLドメイ
ン(特にリャマ及びアルパカのVH及びVLドメイン)のライブラリーを調製するために使用さ
れることができる。
前述の方法に従い調製され、かつラクダ科動物(リャマ又はアルパカを含むが、これら
に限定されるものではない)のVH及びVLドメインをコードしている発現ベクターのライブ
ラリーも、本発明の主題の一部を形成している。
特定の実施態様において、本発明は、Fab又はscFV分子をコードしているファージベク
ターのライブラリーを提供し、ここでこのライブラリーにコードされたFab又はscFVの各
々は、ラクダ科動物の通常型抗体のVHドメイン及びラクダ科動物の通常型抗体のVLドメイ
ンを含む。
一実施態様において、本ライブラリーは、ライブラリー中の大部分のクローンが、独自
のアミノ酸配列のVHドメイン、及び/又は独自のアミノ酸配列のVLドメインをコードして
いる「多様な」ライブラリーであり、これはラクダ科動物のVHドメイン及びラクダ科動物
のVLドメインの多様なライブラリーを含む。従って多様なライブラリー中のクローンの大
部分(例えば>90%)は、VHドメイン及び/又はVLドメインのアミノ酸配列に関して、同じ
ライブラリー内のいずれか他のVH/VL対合とは異なるVH/VL対合をコードしている。
本発明は、ラクダ科動物(例えばリャマ又はアルパカ)の単独の選択されたB細胞から単
離されたVH及びVL-コードしている遺伝子セグメントを含む発現ベクターも包含している
更なる態様において、本発明は、標的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプチドをコー
ドしている発現ベクターを選択する方法も提供し、この方法は:
i)発現ベクターのライブラリーを提供する工程であり、ここで該ライブラリー中の各ベ
クターが、VHドメインをコードしている遺伝子セグメント及びVLドメインをコードしてい
る遺伝子セグメントを含み、ここで該VHドメイン又は該VLドメインの少なくとも1つがラ
クダ科動物通常型抗体に由来し、かつここで該ライブラリーの各ベクターが該VHドメイン
及びVLドメインを含む抗原結合ポリペプチドの発現を指示する、前記工程;
ii)該標的抗原と免疫反応性である該ライブラリーによりコードされた抗原結合ポリペ
プチドをスクリーニングし、かつこれにより該標的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプ
チドをコードしている発現ベクターを選択する工程:を含む。
本発明のこの方法は、VH/VL対合をコードしているクローンのライブラリーからの、標
的抗原と免疫反応性のクローンのスクリーニング/選択を包含している。本方法は、先に
説明されたライブラリー構築法を使用し実行されることができる、ライブラリー構築も包
含している。任意の下流のプロセッシング/最適化工程は、以下に説明されるように、選
択されたクローンに対して実行されることができる。この選択及びスクリーニング方法は
、先に説明された本発明の抗原結合ポリペプチドを生成する全般的方法の一部を形成する
こともできる。従って本発明のこの態様に関連して好ましい又は有利であると説明された
あらゆる特徴は、別に指定されない限りは、その全般的方法に関連しても好ましい又は有
利であるとすることもでき、逆もまた同様である。
(標的抗原と免疫反応性のクローンのスクリーニング及び選択)
スクリーニング/選択は典型的には、ライブラリーのクローンによりコードされた発現
産物(すなわち、抗原結合ポリペプチドの形のVH/VL対合、例えばFab、scFV又は抗体)を、
標的抗原と接触すること、並びに所望の抗原結合特性を示しているVH/VL対合をコードし
ている1つ以上のクローンを選択することが関与している。
ファージディスプレイライブラリーは、固定された標的抗原について又は可溶性(しば
しばビオチン化された)標的抗原について選択されることができる。Fabフォーマットは、
そのモノマー性の外観及びファージ上のその一価のディスプレイに起因した、親和性によ
る選択を可能にするが、これはscFv(凝集及びファージ上の多価ディスプレイの結果とし
て)及びIgG(二価のフォーマット)については可能ではない。3回の選択のうちの2回は典型
的には、標的特異的結合物質の十分な濃厚化を得るために必要とされる。
親和性による選択は、引き続きの選択ラウンドにおける標的抗原の量を減少することに
より実行されることができるのに対し、ビオチン化されない標的による延長された洗浄は
、極めて良好な親和性を伴う結合物質の識別を可能にする。
この選択手順は、使用者があるエピトープに的を絞ることを可能にするのに対し;固定
された標的からファージクローンを溶出する古典的方法は、抗体断片及び/又は標的を変
性するpHショックを基礎とし、標的抗原又は可溶性受容体又はサイトカインに対する参照
mAbとの競合は、その標的の関連エピトープへの抗体断片の結合を提示しているファージ
の溶出へつながる(これは当然B細胞選択法を含む、更なる他の提示システムに適用可能で
ある)。
選択のアウトプットから得られた個々のクローンは、細胞から又はそれらへ断片が細胞
から「漏出される」培養上清から調製されたペリプラズム画分を使用し、抗原-結合ポリ
ペプチド(例えば抗体断片)の小規模製造のために使用されることができる。発現は、誘導
性プロモーター(例えばlacプロモーター)により駆動され、これはインデューサー(IPTG)
添加時に、該断片の生成が開始されることを意味する。リーダー配列は、該断片のペリプ
ラズムへの輸送を確実にし、そこでこれは適切にフォールディングされ、かつ分子内ジス
ルフィド橋が形成される。
得られた粗タンパク質画分は、ELISAなどの、標的結合アッセイに使用されることがで
きる。結合試験に関して、個々のクローンから調製されたファージは、概して非常に低い
結合シグナルを生じる、Fabの低い発現収量を回避するために使用される。これらのタン
パク質画分は、拮抗性抗体を同定するためのインビトロ受容体-リガンド結合アッセイを
使用し、スクリーニングされることもでき;ELISAベースの受容体-リガンド結合アッセイ
を使用することができ、同じくAlphascreenなどのハイスループットアッセイも可能であ
る。
スクリーニングは、受容体を過剰発現している細胞株の膜画分が固定されている、放射
標識されたリガンド結合アッセイにより実行されることができ;後者のアッセイは、わず
かにピコモル量の放射性サイトカインが必要であるので、極めて感度がよく、このことは
粗タンパク質画分中に存在する微量の拮抗性Fabは、正の測定値を生じることを意味する
。あるいはFACSは、蛍光標識されたサイトカインの細胞上に発現されたその受容体への結
合を阻害する抗体のスクリーニングに適用されることができるのに対し、FMATは、これの
ハイスループット変法である。
ペリプラズム画分に存在するFab、又はそのヘキサヒスチジンタグへのIMACによるか若
しくはプロテインG(FabのCH1ドメインに結合することがわかっている)により部分的に精
製されたFabは、細菌夾雑物に対し感度が良くない細胞を用いるバイオアッセイにおいて
直接使用されることができ;あるいは、個々の大腸菌細胞由来のFabは、Fab又はIgGの発
現のための哺乳類システムにおいて再クローニングされ、引き続きバイオアッセイにおい
てスクリーニングされる。
陽性発現ベクタークローン、すなわち所望の標的抗原に結合する機能性VH/VL組合せを
コードしているクローンの識別後、可変領域のヌクレオチド配列を決定し、それによりコ
ードされたVH及びVLドメインのアミノ酸配列を推定することは慣習的手段である。
望ましい場合、Fab(又はscFV)コード領域は、代わりの発現プラットフォーム、例えば
細菌発現ベクター(ファージミドベクターと同じであるが、ファージディスプレイに必要
なgene3を伴わない)へ再クローニングされることができ、このことはより大量のコードさ
れた断片が生成されかつ精製されることを可能にする。
標的結合の親和性は、表面プラズモン共鳴(例えばBiacore)によるか又は他の方法を介
して、精製されたFab(又はscFV)について決定されることができ、かつその中和効力は、
インビトロ受容体-リガンド結合アッセイ及び細胞ベースのアッセイを用いて試験される
抗原-結合のファミリー、特に拮抗性Fab(又はscFV)は、配列解析(主にVHの、特にVHド
メインのCDR3の長さ及びアミノ酸配列)を基に識別されることができる。
(効力最適化)
所望の標的抗原に対する親和性を持つVH/VL組合せをコードするものとしてスクリーニ
ング/選択により同定されたクローンは、望ましいならば、親和性及び/又は中和化効力が
最適化される下流工程に供されることができる。
各VHファミリーの最良の成績(best performing)のメンバーの効力最適化は、軽鎖シャ
ッフリング、重鎖シャッフリング又はそれらの組合せにより達成され、これにより動物に
おける天然の親和性変異型を選択することができる。このことは、同じ免疫化された動物
から調製された当初のライブラリーを用い、鎖シャッフリングを行い、これにより同じ免
疫化された動物において生じる親和性変異型をスクリーニングすることは可能であるので
、当初のラクダ科動物のVH/VLドメインが、能動免疫化されたラクダ科動物から単離され
るような実施態様において特に有利である。
軽鎖シャッフリングに関して、望ましい抗原結合特性(例えば拮抗性Fab)を伴うVH/VL対
合のVH領域(又はVHCH1)をコードしている遺伝子セグメントは、この単独のVH-コードして
いる遺伝子セグメントを使用して、クローンが当初選択されたライブラリーの軽鎖レパト
アと組合せられるライブラリーを構築することができる。例えば、VH-コードしているセ
グメントが、標的抗原に対する免疫応答を誘起するために能動免疫化されたラクダ科動物
から調製されたライブラリー(例えばFabライブラリー)から選択された場合、「鎖シャッ
フリング」ライブラリーは、このVH-コードしているセグメントを同じ免疫化されたラク
ダ科動物の軽鎖(VL)レパトアと組合せることにより構築されることができる。次に得られ
るライブラリーは、標的抗原の選択に供することができ、ストリンジェントな条件(標的
の低い濃度、溶液中のビオチン化されない標的による大規模な洗浄)下で、最良の親和性
変異型の単離を確実にする。ペリプラズム画分のオフレート(off-rate)スクリーニングも
、改善されたクローンの識別を補助することができる。配列解析及び細菌性産生ベクター
への再クローニング後、精製され選択されたFabは、親和性(例えば表面プラズモン共鳴に
より)及び効力(例えばバイオアッセイにより)について試験されることができる。
重鎖シャッフリングは、軽鎖シャッフリング後に選択されたクローンの軽鎖(VL)をコー
ドしている遺伝子セグメントの、同じ動物由来の当初の重鎖ライブラリー(そこから当初
のVH/VL-コードしているクローンが選択された)への逆クローニングにより行うことがで
きる。あるいは、CDR3特異性オリゴヌクレオチドプライマーは、VH領域のファミリーの増
幅のために使用されることができ、これは拮抗性Fabの軽鎖と組合せたレパトアとしてク
ローニングされることができる。親和性による選択及びオフレートスクリーニングは次に
、そのファミリー内の最良の成績のVHの識別を可能にする。
軽鎖シャッフリング工程及び重鎖シャッフリング工程は、実際には、いずれかの順番で
実行できること、すなわち軽鎖シャッフリングが最初に、引き続き重鎖シャッフリングが
行われるか、又は重鎖シャッフリングが最初に、引き続き軽鎖シャッフリングが行われる
ことができることは理解されるであろう。両方の可能性が、本発明の範囲内に包含されて
いる。
改善された親和性及び効力を持つVH/VL対合(例えばFab)の軽鎖又は重鎖から、配列、特
にCDRの配列を使用し、個々のFabの変異が組合せられている操作された変異型を作出する
ことができる。変異は、付加的であることが多いことはわかっており、このことはこれら
の変異の組合せは、更により増大された親和性に繋がり得ることを意味する。
(ヒト治療的用途のための生殖系列化及びフォーマット化)
望ましい抗原-結合特性を示しているVH/VL対合をコードしている選択された発現クロー
ンのVH及びVL-コードしている遺伝子セグメント(例えばscFV又はFabをコードしているフ
ァージクローン)は、下流のプロセッシング工程に供され、かつヒト治療的用途に適した
抗原結合ポリペプチドフォーマット(例えば完全にヒト定常ドメインを伴う完全長抗体)を
コードしているベクターなどの、代替の発現プラットフォームに再クローニングされるこ
とができる。
有望な「リード」の選択されたクローンは、VHドメイン及び/又はVLドメインをコード
しているヌクレオチド配列内に、1つ以上の変化を導入するように操作されることができ
、この変化は、VHドメイン及び/又はVLドメインのコードされたアミノ酸配列を変更して
もよく、しなくてもよい。VH又はVLドメインの配列のそのような変化は、生殖系列化又は
ヒト化、コドン最適化、増強された安定性、最適親和性などを含む、本明細書の別所に説
明された任意の目的のために操作されることができる。
本明細書に説明された生殖系列化又はヒト化の一般的原理は、本発明のこの実施態様に
おいて同等に適用される。例として、ラクダ科動物-コードされたVH及びVLドメインを含
むリード選択されたクローンは、ライブラリーアプローチを適用することにより、それら
のフレームワーク領域(FR)において生殖系列化/ヒト化されることができる。本明細書の
別所に詳細に説明されたように、最も近いヒト生殖系列(VH及びVLに関して)並びにCDR1及
びCDR2の同一のカノニカルフォールドを伴うその他のヒト生殖系列に対するアラインメン
トの後、FR中の変更されるべき残基が同定され、かつ好ましいヒト残基が選択される。生
殖系列化は、ラクダ科動物-コードされた残基の、最も近いマッチングしているヒト生殖
系列由来の同等の残基との交換に関与するが、これは必須ではなく、他のヒト生殖系列由
来の残基が使用されることもできる。
ヒトVH3ファミリーのメンバーと相同なアミノ酸配列を有するVHドメインの生殖系列化
は、多くの残基の交換/置換に関与することが多く、これは公知のラマ・グラマ、ラマ・
パコス又はカメールス・ドロメダリウス(Camelus dromedarius)由来の生殖系列配列に既
に逸脱している。ラマ・グラマ、ラマ・パコス又はカメールス・ドロメダリウスの、特に
ラマ・グラマのVH3ドメインの生殖系列化/ヒト化のための許容されたアミノ酸置換は、フ
レームワーク領域内の位置71、83及び84(カバット番号付けを使用)のいずれかひとつ又は
いずれかの組合せでのアミノ酸交換を含むが、これらに限定されるものではない。このよ
うな交換は、天然の又は非天然のアミノ酸であることができ、かつ好ましくはヒト-コー
ドされたVH3ドメインの同等の位置に生じることがわかっているアミノ酸である、様々な
アミノ酸との、これらの位置でのラクダ科動物-コードされた残基の置換に関連している
。例えば、位置71のアラニンはセリン又はアラニンと交換され、位置83のリジンはアルギ
ニンと交換され、かつ位置84のプロリンはアラニンと交換されることができる。従って、
本発明の抗原結合ポリペプチドの特定の非限定的実施態様は、ヒトVH3ドメインと配列相
同性を示すラクダ科動物(及びより詳細にはリャマ、アルパカ又はヒトコブラクダ)のVHド
メインを含む変異型を含み、このVHドメインは、位置71、83及び84(カバット番号付けを
使用)の1つ以上又は全てでのアミノ酸置換(ラクダ科動物-コードされた配列に対して)を
含む。特に、下記の置換の1つ以上又はいずれかの組合せを伴う変異型が許容される:位
置71のAのSへの変化、位置83のKのRへの変化、又は位置84のPのAへの変化。
一旦リードVH及びVLドメインのアミノ酸配列(適宜効力最適化後)がわかったならば、VH
及びVLの合成遺伝子がデザインされることができ、そこではヒト生殖系列から逸脱してい
る残基が、好ましいヒト残基と交換される(最も近いマッチングしているヒト生殖系列か
らの、又は他のヒト生殖系列において生じる残基で、又は更にはラクダ科動物野生型残基
で)。この段階において、可変ドメインをコードしている遺伝子セグメントは、遺伝子合
成時又は好適な提示ベクターにおけるクローニングによるかのいずれかで、Fabのヒト定
常領域に融合される発現ベクターに再クローニングされることができる。
得られるVH及びVL合成遺伝子は、Fabライブラリーへ組換えられることができるか、又
は生殖系列化されたVHは、野生型VLと組換えることができる(及び逆もまた同様、「ハイ
ブリッド」ライブラリーと称される)。親和性による選択は、最良の成績の生殖系列化さ
れたバージョンの単離を可能にし、「ハイブリッド」ライブラリーの場合、この最良の成
績の生殖系列化されたVHは、最良の成績の生殖系列化されたVLと組換えられることができ
る。
生殖系列化されたFabに関するアミノ酸及びヌクレオチドの配列情報は、好ましいアイ
ソタイプの完全長ヒトIgGの生成(ADCC及びCDCに関してIgG1、限定されたエフェクター機
能に関してIgG2、IgG2については一価の結合が必要とされる場合にIgG4)のための、コド
ン-最適化された合成遺伝子を作出するために使用されることができる。長期でない適用
及び急性適応のために、細菌で又は哺乳類細胞で生成されたヒトFabも更に作製されるこ
とができる。
特定の非限定的実施態様において、前述の方法の工程を組合せて、本発明は、標的抗原
と免疫反応性のキメラ抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターの作製方法を
提供し、該方法は:
a)ラクダ科動物(リャマ又はアルパカを含むが、これらに限定されるものではない)を能
動免疫化し、これにより標的抗原に対する通常型ラクダ科動物抗体を生じる工程;
b)該免疫化されたラクダ科動物由来のリンパ系組織(例えば循環B細胞)を含有する試料
からcDNA又はゲノムDNAを調製する工程;
c)該cDNA又はゲノムDNAの領域を増幅し、増幅された遺伝子セグメントを得、各遺伝子
セグメントがラクダ科動物の通常型抗体のVHドメインをコードしているヌクレオチド配列
及びVLドメインをコードしているヌクレオチド配列を含む工程;
d)工程c)で得られた遺伝子セグメントを、発現ベクターへクローニングし、その結果各
発現ベクターがVHドメインをコードしている遺伝子セグメント及びVLドメインをコードし
ている遺伝子セグメントを含み、かつ該VHドメイン及び該VLドメインを含む抗原結合ポリ
ペプチドの発現を指示し、これにより発現ベクターのライブラリーを作製する工程;
e)該標的抗原との免疫反応性について、工程d)で得られたライブラリーによりコードさ
れた抗原結合ポリペプチドをスクリーニングし、これにより該標的抗原と免疫反応性の抗
原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターを選択する工程;
f)軽鎖シャッフリング工程及び/又は重鎖シャッフリング工程を任意に実行し、該標的
抗原と免疫反応性の効力最適化された抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクタ
ーを選択する工程;
g)工程e)若しくは工程f)で選択されたベクターのVHドメインをコードしている遺伝子セ
グメント及び/又は工程e)若しくは工程f)で選択されたベクターのVLドメインをコードし
ている遺伝子セグメントを、生殖系列化及び/又はコドン最適化に任意に供する工程;並
びに
h)パートe)又はf)で選択されたベクターのVHドメインをコードしている遺伝子セグメン
ト又は工程g)において作製された生殖系列化及び/若しくはコドン最適化されたVH遺伝子
セグメント及びパートe)又はf)で選択されたベクターのVLドメインをコードしている遺伝
子セグメント又は工程g)において作製された生殖系列化及び/若しくはコドン最適化され
たVL遺伝子セグメントを、ヒト抗体の1個以上の定常ドメインをコードしているヌクレオ
チド配列と機能的に連結している更なる発現ベクターへクローニングし、これによりヒト
抗体の1個以上の定常ドメインに融合されたVH及びVLドメインを含むキメラ抗原結合ポリ
ペプチドをコードしている発現ベクターを作製する工程:を含む。
本発明は、前述の方法に従い調製された発現ベクター、及び標的抗原と免疫反応性の抗
原結合ポリペプチドの作製方法にも拡大され、この方法は:
a)先に説明された方法を使用し、標的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプチドをコー
ドしている発現ベクターを調製する工程;
b)該発現ベクターを、コードされた抗原結合ポリペプチドの発現を可能にする条件下で
、宿主細胞又は無細胞発現システムへ導入する工程;並びに
c)発現された抗原結合ポリペプチドを回収する工程:を含む。
一実施態様において、後者の方法は、組換え発現による、本発明の抗原-結合ポリペプ
チドのバルク生産規模での製造、特に医薬活性物質としての使用が意図された治療用抗体
のバルク規模製造を包含している。そのような実施態様において、工程a)において調製さ
れた発現ベクター及び工程b)において使用される宿主細胞/発現システムは、ヒト患者へ
の投与が意図された組換え抗体の大規模製造に適しているように選択される。この目的に
適したベクター及び発現システムの一般的な特徴は、当該技術分野において周知である。
本発明は、以下の非限定的な例証的実施例を参照し、更に理解されるであろう。
実施例1から9は、リャマの免疫化から始まる、「サイトカインx」と示された例として
の抗原に対する抗体が生じる方法を例示している。同じ一般的プロトコールは、任意のラ
クダ科動物種における任意の標的抗原に適応されることができ、従って「サイトカインx
」の正確なアイデンティティは実質ではない。本方法は、IL-1βに結合するFabの調製に
ついても例証される(前方の実施例15)。
様々な刊行物が、前述の説明において及び以下の実施例を通じて引用されており、その
各々は、その全体として引用により本明細書中に組み込まれている。
(全般的プロトコール)
(実施例1:リャマの免疫化)
リャマ(ラマ・グラマ)の免疫化及び末梢血リンパ球の収集に加え、引き続きのRNA抽出
及び抗体遺伝子断片の増幅を、De Haardとその同僚により説明されたように行った(De Ha
ardらの論文、J. Bact. 187:4531-4541 (2005))。1頭のリャマを、フロイント完全アジュ
バント又は好適な動物に優しいアジュバントStimune(Cedi Diagnostics BV社、オランダ)
を使用し、組換えヒトサイトカインxにより筋肉内へ免疫化した。サイトカインx(操作さ
れたヒト細胞株中において組換えにより発現された)は購入した。免疫化の前に、凍結乾
燥されたサイトカインxを、PBS(Dulbecco社)中、濃度250μg/mlに再構成した。リャマは
、隔週で6回の注射を受け、最初の2回の注射は、1回の注射につきサイトカイン100μg、
最後の4回の注射は1回の追加免疫につき50μgであった。最後の免疫化後4日目に、血液試
料(PBL1)150mlを該動物から採取し、かつ血清を調製した。最終免疫化後10日目に、第二
の血液試料(PBL2)150mlを採取し、かつ血清を調製した。リャマ免疫グロブリンの遺伝子
給源としての末梢血リンパ球(PBL)は、フィコール-パク勾配法(Amersham Biosciences社)
を用い、これらの血液試料から単離し、1〜5×108個PBLを収集した。抗体の最大多様性は
、試料採取されたBリンパ球の数と等しいと予想され、これはPBL数(1〜5×107)の約10%(
9.2〜23.2%(De Genstらの論文、Dev. Comp. Immunol. 30:187-98 (2006))である。リャ
マ血清中の通常型抗体の画分は、総免疫グロブリンの最大80%であり、これは通常型抗体
を産生するBリンパ球の類似の画分に外挿されることができる。従って血液試料150ml中の
通常型抗体の最大多様性は、0.8〜4×107の異なる分子と計算される。総RNAは、Chomczyn
skiらの論文の方法(Anal. Biochem.162:156-159 (1987))に従い、PBLから単離した。
(実施例2:パニング又はFACS選別による抗原反応性B細胞の濃厚化(任意))
組換えFabファージディスプレイライブラリーの効果的クローニングを可能にする試料
採取されたB細胞レパトアの複雑性を低下するために、抗原反応性B細胞を、蛍光標識され
た抗原及び特異的にラクダ科動物の通常型抗体を認識するmAb(B細胞マーカーとして)を用
いるFACS選別によるか(Weitkampらの論文、J. Immunol. Meth., 275:223-237 (2003))、
又は固定された抗原に対するパニング手法により(Lightwoodらの論文、J. Immunol. Meth
. 316:133-143 (2006))、濃厚化した。
免疫化された動物由来のPBLは、先に説明されたフィコール-パク上での密度勾配遠心分
離により単離した。任意に同時精製した赤血球細胞を、溶解緩衝液(8.29g/L NH4Cl、1.09
g/L KHCO3及び37mg/L EDTA)20ml中でのPBLペレットの室温での再懸濁、引き続きの200×g
、10分間の遠心分離により溶解した。単球のTI50培養フラスコのプラスチック表面への接
着による単球の枯渇も任意であった。これを実現するために、細胞を、10%ウシ胎仔血清
、Glutamax、25mM Hepes、ペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen社)及び0.38%ク
エン酸ナトリウムが補充されたRPMI(Invitrogen社)70ml中に再懸濁し、そのフラスコ内で
37℃及び5%CO2下で2時間インキュベーションした。選択されたB(細胞)を含有する上清画
分を回収し、かつ細胞をカウントした。
標的特異的通常型抗体を提示している(生存している)B細胞のFACSにおけるバルク選別
は、ラクダ科動物の通常型抗体を特異的に認識する蛍光標識されたmAb及び更に別の蛍光
色素により標識された標的抗原による同時染色により行った。1,000〜100,000個の間の抗
原特異的細胞を選別し、Goughと同僚のプロトコールの適用によるか(Goughの論文、Anal.
Biochem. 173:93-95 (1988))、又はTRIzolキット(Invitrogen社)の使用による、RNA抽出
に使用した。総RNAは、抗体重鎖及び軽鎖の可変遺伝子の増幅のための鋳型としてランダ
ムプライミングされたcDNAへ転換した(実施例3以降を参照されたい)。
(実施例3:可変領域遺伝子の増幅及びクローニング)
ランダムプライミングされたcDNAは、RT-PCRのためのSuperscript IIIファーストスト
ランド合成システム(Invitrogen社)を用い、PBL RNA 80μgから調製した。RNAは、反応液
20μlの8種の独立した反応において、2.5μMランダムヘキサヌクレオチドプライマー及び
500μM dNTP類の存在下で、65℃で5分間熱変性した。引き続き、供給業者の指示に従い、
緩衝液及びジチオスレイトールを添加し、更に最終総容積8×40μl中で、640ユニットのR
NasOUT(40ユニット/μl、Invitrogen社)、及び3200ユニットのSuperscriptIII逆転写酵素
(200ユニット/μl;Invitrogen社)を添加した。50℃で50分間、85℃で5分間、及び1℃で1
分間の後、RNAse Hを添加し(〜4ユニット)、かつ37℃で20分間インキュベーションした。
プールされたcDNAを、QIAquick PCR精製キットを供給業者の推奨に従い用いて浄化し、PC
Rに使用した。
CH1の3'末端並びにVHの5'及び3'末端へのプライマーアニーリングを、リャマ及びヒト
コブラクダの生殖系列配列を基にデザインし、それらの寄託された配列は、De Genstとそ
の同僚の論文からの引用に従い、IMGT及び他のデータベースから検索することができた(D
e Genstらの論文、Dev. Comp. Immunol., 30:187-198 (2006))。軽鎖増幅のためのオリゴ
ヌクレオチドのデザインに関して、学位論文(I. Legssyer、ブリュッセル自由大学)にお
いて公表された再配列されかつ体細胞変異されたヒトコブラクダ配列を使用した。
全てのプライマリーPCRは、最大多様性を維持するように鋳型として比較的大量のラン
ダムプライミングされたcDNA(総RNA 6μgに相当する最大2.5μl)に対し、可変領域の5'末
端へアニーリングする個別のBACKプライマーを、CH1の3'末端へアニーリングするFORプラ
イマーと組合せて実行した。重鎖由来のアンプリコンは、VHの3'末端にアニーリングし、
かつ天然のBstEII部位を含むJHFORプライマー及びVH遺伝子の5'末端にアニーリングされ
るSfil-タグ付きVHBACKプライマーの組合せにより、再増幅され、かつ引き続きVH断片と
してクローニングされることができる。軽鎖V-遺伝子は、定常ドメインの3'末端にアニー
リングするCKFOR又はCLFORプライマー及びV-領域の5'末端でプライミングするBACKプライ
マーのセットによる、PCRにより得た。第一のPCR反応からのアンプリコンは、伸長された
CH1FOR(NotI部位を含む)又はCKFOR及びCLFORプライマー(AscI部位を含む)により再増幅さ
れ、引き続きリャマFab断片としてクローニングされる。あるいは、前記DNAセグメントは
、制限部位(AscI部位を持つFORプライマー及びXhoI部位を持つFR4ベースのBACKプライマ
ー)によりタグ付けられたプライマーにより再増幅され、かつVL断片としてクローニング
され、その結果ヒトC領域と組合せられたリャマ由来のV領域を含むキメラFab'sを作製す
る。
PCRは、Phusionポリメラーゼ(Finnzymes社)及び各プライマー 500pMを用い、容積50μl
反応液中、28サイクルで(96℃で1分間、60℃で1分間、及び72℃で1分間)実行した。全て
の生成物は、QIAex-II抽出キット(Qiagen社)により、アガロースゲルから精製した。制限
部位を導入する再増幅のための投入物として、精製されたDNA断片100〜200ngを、反応容
積100μl中において、鋳型として使用した。大量の投入物は、可変性の維持を確実にする
が、これは、アガロースゲル上の「増幅されなかった」PCR混合物4μlの分析によりチェ
ックした。
(実施例4:一次及び二次ラクダ科動物Fabレパトアの構築)
一次重鎖レパトア及びふたつの一次軽鎖レパトアの構築のために、制限部位が添えられ
たPCR産物を、ゲル精製し、その後消化し、かつ様々なVH、VK及びVLファミリーを3群にま
とめた。VHCH1断片を、SfiI及びNotIにより消化し、かつVKCK及びVLCL断片を、ApaLI及び
AscIにより消化し、かつファージミドベクターpCB3(適用させた複数のクローニングサイ
トを伴うベクターpCES1に類似)へクローニングした。消化された断片(1〜2μg)は、消化
されかつ精製されたpCB3(2〜4μg)へ、T4-DNAリガーゼ(Fermentas社)を用い、室温で数時
間、その後37℃で1〜2時間ライゲーションした。軽鎖又は重鎖プールに関する脱塩された
ライゲーション混合液を、大腸菌株TG1の電気穿孔に使用し、1本鎖ライブラリーを作製し
た。
あるいは、合計1.5μgのVH断片を、SfiI及びBstEII(VHに存在する)により消化し、反応
混合液100〜200μl中でT4-DNAリガーゼ9ユニットにより、室温で、ゲル精製されたベクタ
ーpCB4(ベクターpCB3に類似しているが、pIII遺伝子欠失)4μgへライゲーションできる。
加えて、これらのVH遺伝子セグメントは、SfiI及びBstEIIを介して、並びにVK/VL遺伝子
セグメントは、ApaLI及びXhoIを介して、クローニングすることができ、キメラFd及びVKC
K及びVLCLを生じる。
Fabライブラリーを、軽鎖レパトアから調製されたプラスミドDNAから消化された軽鎖断
片の、重鎖レパトアを含むプラスミドコレクションへのクローニングにより得た。VLライ
ブラリーの少なくとも3×109個細菌(ドナーベクター)から単離されたプラスミドDNAを、A
paLI及びAscIにより消化し、既に重鎖ライブラリーに含まれているアクセプターベクター
中でゲル精製されたDNA断片にクローニングし、その結果κ軽鎖を伴う個別のFabライブラ
リー及び1〜10×109クローンのサイズのλ軽鎖を伴うFabからなる別のライブラリーを作
製した。同様に、単鎖ライブラリー由来のVLCL又はVKCKを、ApaLI/AscIを用いアガロース
ゲルから抽出し、かつ同じ制限部位を用い、VHCHライブラリーベクターへクローニングす
ることができる。
(実施例5:ライブラリーの選択)
出発接種材料中の各クローン由来の少なくとも10種の細菌の存在を確実にするために、
ヘルパーファージM13-KO7又はVCSM-13によるファージミド粒子のレスキューを、接種のた
めのライブラリー由来の細菌の代表的数を用い、2Lスケールで実行した。選択に関して、
1013個のコロニー-形成単位が、イムノチューブ(Maxisorpチューブ、Nunc社)又は96ウェ
ルマイクロタイタープレート(Maxisorp、Nunc社)内に固定された抗原と共に、又は可溶性
ビオチン化された抗原と共に使用した。固定された抗原の量は、ラウンド1では10μg/ml
で出発し、引き続きの選択ラウンドの間に10〜100倍減少された。抗原は、供給業者の推
奨に従い、抗原1分子につきNHS-ビオチン(Pierce社)3〜10分子の比でビオチン化し、かつ
バイオアッセイにおいてそれらの生物活性について試験した。別に言及されない限りは、
これらの抗原は、ラウンド1の間10nMの濃度で、引き続きのラウンドの間には10pM〜1nMで
、選択のために使用した。
(実施例6:拮抗性サイトカインx特異的Fabのスクリーニング)
可溶性Fabは、Marksらの論文に説明されたように個別のクローンから(Marksらの論文、
J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991))、しかし好ましくは感度を高める(boost)ためにモノ
クローナルファージとして(Leeらの論文、Blood、108:3103-3111 (2006))作製した。可溶
性Fab又はFabディスプレイファージを含有する培養上清を、直接コーティングされた抗原
によるELISAにおいて試験するか、又は固定されたストレプトアビジンを介して捕獲した
。組換えヒトサイトカインx及びストレプトアビジンは、0.1M NaHCO3(pH9.6)中10μg/ml
で、4℃で16時間コーティングした。PBS、0.1%(v/v)Tween 20で3回洗浄した後、ビオチ
ン化された抗原を、濃度0.5μg/mlで、30〜60分にわたり室温で添加した。これらのプレ
ートを、PBS中の2%(w/v)半-脱脂粉乳(Marvel)又は1%カゼイン溶液(PBS中)により、室温
で30分間かけてブロックした。この培養上清を、2%(w/v)Marvel/PBS中で1倍又は5倍希釈
し、かつ2時間インキュベーションし;結合したFabを、重Fd鎖のカルボキシル端でmyc-ペ
プチドタグを認識する抗-myc抗体9E10(5μg/ml)、及びウサギ抗-マウス-HRP複合体(Dako
社)により検出した。最後のインキュベーション後、基質としてテトラメチルベンジジン
及びH2O2により染色を行い、0.5容量の1M H2SO4の添加により停止し;光学密度を、450nm
で測定した。ELISAにおいて陽性シグナル(バックグラウンドの2倍を上回る)を生じるクロ
ーンを、オリゴヌクレオチドプライマーM13-リバース及びgeneIII-フォワード(4)による
増幅により得られたPCR産物の、又は個別のFd及びVKCK又はVLCLアンプリコンの、BstNI又
はHinfIフィンガープリントにより解析した。
サイトカインxのその受容体への結合を妨害するFabの能力のスクリーニングは、好適な
受容体-リガンド結合ELISAにおいて実行した。これに関して、少量のビオチン化されたサ
イトカインxを、サイトカインx-受容体でコーティングされたプレート上で、培養上清中
のFabと共にインキュベーションし、かつ引き続き結合されたサイトカインxを、ストレプ
トアビジン-HRP複合体により検出した。陽性のヒットを配列決定し、かつFabを、インビ
トロ受容体-リガンドアッセイにおいてそれらの効力(IC50)を決定するため、及び固定さ
れたサイトカインxに対するBIAcoreにおけるそれらの親和性を評価するために、精製した
個別のクローンからの可溶性Fab断片の大規模誘導は、100μg/mlカルベニシリン及び2
%グルコースを含有する2×TY中で、50ml又は250mlの規模で行った。OD600が0.9となるま
で37℃で増殖した後、これらの細胞を、ペレットとし(2,934×gで10分間)、かつカルベニ
シリン及び1mMイソプロピル-1-チオ-D-ガラクトピラノシド(IPTG)を含有する2×TY中に再
懸濁した。代わりのDe Bellis手法(De Bellis及びSchwartzの論文、NAR, 18(5):1311 (19
90))は、2%グルコースの代わりに0.2%を用いて進められ、その結果対数期後期の細胞の
培地へのIPTGの直接添加が可能である。30℃で3.5時間増殖した後、遠心分離(前述のよう
に)により、細菌を収集し;細胞ペレットを1mlの氷冷したPBS中に再懸濁することにより
、ペリプラズム画分を調製した。4℃で2〜16時間上下(head-over-head)回転した後、2回
の遠心分離工程により、スフェロプラストを除去し;3,400×gで10分間遠心した後、その
上清を、エッペンドルフ遠心機において13,000×gで10分間の追加の遠心分離工程により
透明化した。得られたペリプラズム画分を、様々な分画アッセイ(標的結合ELISA、インビ
トロ受容体-リガンド結合アッセイ及びBiacore)において直接使用した。
配列決定のために、プラスミドDNAを、Qiagenミニキット(Qiagen社)を使用するか、又
はFab挿入断片の境界でアニーリングするベクタープライマーM13-リバース及びgeneIII-
フォワードによるアンプリコン上で、100μg/mlカルベニシリン及び2%グルコースを含有
するLB培地内で、30℃で増殖された5ml培養物から調製した。
(実施例7:リードFabの大規模生成及び精製)
3〜6種の異なるリード由来のFab挿入断片を、Fdのカルボキシ端に融合されたヘキサヒ
スチジン及びC-MYCタグを含むが、バクテリオファージM13gene3を欠いている、pCB3と同
一の発現ベクター(pCB5とコード)において、ApaLI-NotIにより再クローニングした。平行
して、それらのV領域を、制限酵素の好適な組合せにより再クローニングし、引き続きキ
メラFabの発現のためにヒトCH1及びCK又はCLを含むgene3欠失ベクターにおいてクローニ
ングした。フィンガープリント解析後、再クローニング後に得た個別のクローンを、50ml
又は250mlスケールで増殖し、かつペリプラズム画分を先に説明したように調製した。Fab
断片を、IMAC精製し、かつ正確に形成されたFabは、Superdex 75HRカラム(Amersham Phar
macia Biotech社)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーにより更に精製した。細胞ベ
ースのアッセイに応じて、エンドトキシンを、1M NaOH中で一晩増感し、引き続きD-PBS中
で平衡化した陰イオン交換カラム(Source30Q、GE Healthcare社)上の通過により除去した
。この収量は、Fabに関してモル吸光計数13を使用し、280nmで光学密度を測定することに
より決定した。
精製されたFabを、インビトロ受容体-リガンド結合アッセイ及びBiacoreにおいて試験
し、gene3を含むpCB3ベクターにより作製されたFab断片について成された知見を確認した
。最後に、このFabの効力を、バイオアッセイにおいて決定した。
(実施例8)
本実施例において、サイトカインxに対するリャマ由来のリードFabを、フレームワーク
残基の小さいセットを標的化するソフトランダム化手順を用い、かつ親和性ベースの選択
により高親和性フレームワーク配列を同定するための、線維状ファージの表面に得られた
Fabライブラリーの一価ディスプレイ(US2003/0190317 A1、引用により本明細書中に組み
込まれている)により、ヒト化した。例えばヒトコブラクダ由来の生殖系列VH(IGHV1S20)
に関して、野生型残基の70%を維持している、位置5(Val、Leu)、55(Gly、Ala)、83(Ala
、Ser)、95(Lys、Arg)、96(Ser、Ala)及び101(Met、Val)の小さいライブラリーが作製さ
れた(IMGT番号付け)。超可変ループ中のアミノ酸は、同様の方法で位置づけすることがで
きる。
PCRエラーを補正するため又は追加の特異的単独コドン変化を導入するための部位特異
的変異誘発を、本質的にKunkelらの論文(Curr. Protoc. Mol. Biol. CH8U8.1 (2001))に
説明されたように実行するか、あるいはこれらの変異型をコードしている合成遺伝子をGe
neArtに注文した。部位特異的実験のための鋳型は、ヒト化Fabクローン由来の1本鎖DNAで
あった。
部位特異的変異誘発は、野生型Fab又はヒト化FabをコードしているDNAにおけるヒト化
又は修飾の目的で、限定された数のアミノ酸コドンを直接変化させるためにも使用した。
個々のリードは、選択された後、親和性及び効力について試験し、かつヒトFab/IgGへ
の再フォーマットのための最良のリードを選択した。
(実施例9:ヒトFab断片及びヒトモノクローナル抗体の発現)
ヒト化VH及びVL領域から出発する、ヒト化Fabの発現を、Rauchenbergerらの論文(J. Bi
ol. Chem. 278:38194-204 (2003))に説明されたように行った。ヒトモノクローナル抗体
の発現のために、ひとつは軽鎖及びひとつは重鎖の構築のための2つの個別の発現ベクタ
ーを、pcDNA3.1ベクターを基に構築した。軽鎖のための発現ベクターは、CMVプロモータ
ーの下流にヒトCκ又はヒトCλ配列のいずれか、更にはCMVプロモーターの下流及び軽鎖
定常ドメインとインフレームのKPN1 BsmB1断片のような、軽鎖構築体のクローニングを可
能にする制限部位を含んだ。次に重鎖のための発現ベクターは、CMVプロモーターの下流
にヒトCH1-ヒンジ-CH2-CH3配列、更にはCMVプロモーターの下流及び重鎖定常ドメインと
インフレームのKPN1 BsmB1断片のような、VH構築体のクローニングを可能にする制限部位
を含んだ。
これらのVL及びVH断片は、コザック配列、それに続き各VL又はVH配列とインフレームで
マウスIgGκリーダー配列を含む、KPN1 BsmB1断片のような好適な発現ベクターにクロー
ニングした。これらの配列は、遺伝子合成により得られ、かつ哺乳類細胞における発現の
ために最適化された(Geneart社)。
完全長IgG生成に関して、VH及びVL発現ベクター構築体を、哺乳類細胞(HEK-293(一過性
)又はCHO(安定))へ同時トランスフェクションした。一過性にトランスフェクションされ
た細胞又は安定してトランスフェクションされた細胞由来の上清は、プロテインAクロマ
トグラフィーにより精製した。
モノクローナル抗体又はFabは、受容体結合アッセイ及びバイオアッセイにおいて試験
し、かつ最良のリードを更なる開発のために選択した。
(実施例10:ラクダ科動物対ヒトの相同性解析)
(方法論)
FR4をコードしている生殖系列リャマ及びヒトコブラクダのJ領域の配列を、ヒト配列と
比較し、かつこれらは完全に同一であり(10残基中10がマッチ);唯一の例外は、FR4の位
置6にグルタミン(ロイシン又はメチオニンの代わり)を含むIGHJ4であった(アラインメン
トは以下に示される)。体細胞変異されたVλに関して、ヒトコブラクダ由来のFR4の10残
基中9は、マッチしており(相同性90%)、その理由は入手可能な配列のほとんどは、位置6
にリジン又はグルタミン酸又はグルタミンの代わりにヒスチジンを有するからである(ア
ラインメントは以下に示される)。最後に、6種の入手可能な体細胞変異されたヒトコブラ
クダVκ配列のセットのFR4中に再度90%同一性(10残基中9)が存在し、その理由は位置3の
残基セリンは、ヒト生殖系列JKセグメントにおいて認められるものとは異なる、すなわち
グルタミン、プロリン及びグリシンであるからである(アラインメントは以下に示される)
VH、Vλ及びVκに関する解析は、アラインメントにより支援される(下記参照)。配列ア
ラインメントは、同一のH1及びH2カノニカルフォールドを有する最も近いヒト生殖系列配
列と行った。
揃わないが、同じ生殖系列の別のファミリーメンバー(又はサブクラス)に見られる残基
は、それらを該最も近いヒト生殖系列配列に復帰変異することが実行可能であるという仮
定を基に、相同であるとみなされる。
カノニカル構造は、下記のプログラムを用いて比較される:
http://www.bioinf.org.uk/abs/chothia/html、及びhttp://www.bioc.unizh.ch/ antibod
y/Sequences/Germlines/VBase_hVK.html。カノニカルフォールドアルゴリズムと厳密には
フィットしない解析されたラクダ科動物の抗体(又は他の種由来の)残基は、カノニカルフ
ォールドの同じ組合せとマッチしているヒト生殖系列ファミリーのメンバーの配列中のそ
れらの出現についてチェックされるか、又は言及されたフォールドが可能である残基は、
解析される抗体が属するラクダ科動物の抗体ファミリー内のそれらの出現についてチェッ
クされる。
結果は、下記節において示される:
10.1−ヒトコブラクダVH
10.2−ラマ・グラマVH
10.3−VL1-40
10.4−VL2-18
10.5−VL3-1
10.6−VL3-12
10.7−Vκ2-40
10.8−リャマとヒトのJ(H)領域比較
10.9−軽鎖J領域の比較
10.10−ラマ・パコスVH生殖系列相同性
10.11−ラマ・グラマ由来のVH相同性解析
10.12−ラマ・グラマ由来のVL解析
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(実施例11:H1及びH2のカノニカルフォールドに関する重要残基の解析並びにヒト生殖系
列とのH1及びH2残基の比較)
抗体の構造解析は、配列と相補性決定領域により形成された結合部位の形状の間の関係
を明らかにした(Chothia及びLeskの論文、J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987);Tramonta
noらの論文、J. Mol. Biol. 215:175-82 (1990))。それらの高度な配列可変性にもかかわ
らず、6つのループ中の5つは、「カノニカル構造」と称される、主鎖コンホメーションの
小さいレパトアのみを採用する。これらのコンホメーションは、まず第一にループの長さ
により決定され、かつ第二にそれらのパッキング、水素結合又は一般的でない主鎖コンホ
メーションを推定する能力を通じたコンホメーションを決定するループ内及びフレームワ
ーク領域内のある位置での重要残基の存在により全て決定される。
本発明者らは、生殖系列ヒトコブラクダ及びリャマのVHセグメントについてH1及びH2の
予測されたカノニカル構造を、これらのループの長さ及び先に言及した重要残基の存在を
基に解析した。この比較は、カノニカルフォールドの同一の組合せの存在と全般的配列相
同性に関して、最も近いマッチングのヒト生殖系列において生じるような重要残基により
行い(表1);加えて、Moreaとその同僚により提唱されたような対応するカノニカルフォー
ルドと同等のアミノ酸が示された(Moreaらの論文、Methods, 20:267-279 (2000))。H1に
関するカノニカルフォールド1(表1においてH1:1としてコードされた)及びH2に関するフォ
ールド1(H2:1)を有するヒトコブラクダ生殖系列VHファミリーIGHV1S(1-19)、並びにH1に
関するフォールド1(H1:1)及びH2に関するフォールド3(H2:3)を伴うファミリーIGHV1S(20
、22、23、24)、並びにH1に関するフォールド1(H1:1)及びH2に関するフォールド2 (H2:2)
を伴うファミリーIGHV1S(21、25-39)、並びにH1に関するフォールド1(H1:1)及びH2に関す
るフォールド2(H2:2)を伴うリャマ生殖系列IGHV1S8について、H1のカノニカルフォールド
に関する重要残基24、26、27、29、34及び94が、同じカノニカルフォールド組合せを伴う
類似のヒト生殖系列ファミリー由来のもの(表1上側部分)と一緒に示されている。同じくH
1に関するフォールド1(H1:1)及びH2に関するフォールド1(H2:1)を伴うヒトコブラクダ生
殖系列VHファミリーIGHV1S(1-19)、並びにH1に関するフォールド1(H1:1)及びH2に関する
フォールド3(H2:3)を伴うファミリーIGHV1S(20、22、23、24)、並びにH1に関するフォー
ルド1(H1:1)及びH2に関するフォールド2(H2:2)を伴うファミリーIGHV1S(21,25-39)、並び
にH1に関するフォールド1(H1:1)及びH2に関するフォールド2(H2:1)を伴うリャマ生殖系列
IGHV1S8について、残基71と組合せた重要残基52a又は54又は55は、同じカノニカルフォー
ルド組合せを伴う類似のヒト生殖系列ファミリー由来のもの(表1下側部分)と一緒に示さ
れている。
ラクダ科動物VHセグメントに認められる重要残基は、対応するヒトVHセグメントにおい
て認められるものと同一であるので、この解析は、これらのカノニカルループの「ヒト性
質」を明確に実証している。例えば、ヒトコブラクダのコードされたIGHV1S(1-19)由来の
19の生殖系列VHセグメントは全て、これらのヒトコブラクダ生殖系列配列同様、H1に関し
てカノニカルフォールド1型及びH2に関してフォールド1型を有するヒト生殖系列ファミリ
ー3メンバーにおいて優先的に生じるように、位置19にアラニン、26にグリシン、27及び2
9にフェニルアラニン、並びに34にメチオニンを有する。位置94は、(合計39の生殖系列VH
セグメントの中の)ひとつの生殖系列ヒトコブラクダにおいてのみコードされ、このこと
は適切な解析は不可能であることを意味する。Nguyenとその同僚(Nguyenらの論文、EMBO
J. 19:921-930 (2000))は、ヒトコブラクダ生殖系列VH及びVHHセグメントは、「保存され
た八量体(すなわち組換えシグナル)からFR3のシステイン残基92まで広がる」(引用の最後
)のに対し、このヒトセグメントは、2つの追加の残基(93及び94)をコードしていることを
注記した。しかし本発明者らは、リャマ由来の通常型抗体に由来したわずか6個の既知の
体細胞変異されたVHセグメントの解析時に、この残基を考察する。
ヒト類似体はトレオニンを使用するが、その位置にセリンを有する、ループH2に関する
カノニカルフォールド2型のためのリャマ生殖系列IGHV1S6の残基52aに加えて、Moreaとそ
の同僚により提唱された(Moreaらの論文、Methods, 20:267-279 (2000))ヒト生殖系列セ
グメントとの完全なマッチ及びそれらの重要残基に関して、事実上例外は存在しない。こ
れは、体細胞変異された通常型抗体に由来した6種の公開されたリャマVHの4種において(V
uらの論文、Mol. Immunol. 34:1121-31 (1997))、トレオニンが位置52aに見られることを
認めることを促している。セリン及びトレオニンは両方とも極性ヒドロキシル基及び小型
側鎖を有するので、これらは密接に関連していることに注意することは価値があり、この
ことはヒト化の間に両残基を交換することは可能であり得ることを示唆している。
ループH2に関してカノニカルフォールド1型を伴う19のヒトコブラクダ生殖系列VHセグ
メントの中の1つ、及びH2に関してカノニカルフォールド2型を伴う16のヒトコブラクダ生
殖系列VH中の4つに生じる位置71のグルタミンは、むしろ異例であるように見える。このH
2ループは、位置71の残基に対しパックし、かつこのフレームワークに対するループの位
置は、この位置の残基のサイズにより主に決定される。カノニカル構造2及び3は、6個の
残基を伴うH2ループにおいて認められる。構造2は、残基52a及び71が、小型又は中型のサ
イズの疎水性残基である場合に生じるのに対し、カノニカルフォールド3は、残基71がア
ルギニン又はリジンである場合に生じる。位置71にグルタミンを伴うヒトコブラクダ生殖
系列セグメントは、体細胞変異された通常型抗体においてどのくらいの頻度で使用される
かは予測できないが、抗体のこの残基のヒト化は、慎重に試験される必要があるこの特定
の残基につながる。H2に関してカノニカルフォールド2を伴うヒトコブラクダIGHV1S(20、
22、23、24)ファミリーメンバーにおける位置71のアルギニン及びグルタミンの存在は、
むしろ予測できず、しかし他方でH2に関してカノニカルフォールド2を伴うヒト生殖系列V
H1ファミリーメンバーVH1-9、VH1-10及びVH1-11は、アルギニンを有するのに加え、H2に
関してフォールド2を伴うVH5メンバー5-1は、この位置にグルタミンを保持する。
Chothiaとその同僚が、ヒトVHセグメントの構造レパトアを考察した際に行ったように(
Chothiaらの論文、J. Mol. Biol. 227:799-817 (1992))、本発明者らは、前述の重要残基
と共にヒトコブラクダ及びラマVHセグメントのH1及びH2ループの個別のアミノ酸残基を試
験し、かつこれらを同じカノニカルフォールド組合せを有するヒト対応物と比較した(表2
)。H1に関するカノニカルフォールド1及びH2に関するフォールド1を伴うヒトコブラクダ
生殖系列VHファミリーIGHV1S(1-19)、並びにH1に関するフォールド1(H1:1)及びH2に関す
るフォールド3(H2:3)を伴うファミリーIGHV1S(20、22、23、24)、並びにH1に関するフォ
ールド1(H1:1)及びH2に関するフォールド2(H2:2)を伴うファミリーIGHV1S(21、25-39)、
並びにH1に関するフォールド1及びH2に関するフォールド2を伴うラマ生殖系列IGHV1S8に
ついて、H1残基26から33が、H1の外側に配置された重要残基24及び94と一緒に示されてい
る(表2A)。加えて、H1に関するカノニカルフォールド1(H1:1)及びH2に関するフォールド1
(H2:1)を伴うヒトコブラクダ生殖系列VHファミリーIGHV1S(1-19)、並びにH1に関するフォ
ールド1(H1:1)及びH2に関するフォールド3(H2:3)を伴うファミリーIGHV1S(20、22、23、2
4)、並びにH1に関するフォールド1(H1:1)及びH2に関するフォールド2(H2:2)を伴うファミ
リーIGHV1S(21、25-39)、並びにH1に関するフォールド1(H1:1)及びH2に関するフォールド
2(H2:2)を伴うリャマ生殖系列IGHV1S8について、H2残基52から56は、H2の外側に配置され
ている重要残基71と共に解析した(表2B)。
関連のあるヒト配列とほとんど差異がないその可変ループにおいて、特にH1において非
常に高度の配列相同性が見られることは驚きである。例えば、カノニカルフォールド組合
せH1:1/H2:1を伴う生殖系列ヒトコブラクダファミリーIGHV1S(1-19)は、優先的に位置24
にアラニン、26にグリシン、27にフェニルアラニン、28にトレオニン、29にフェニルアラ
ニン、30及び31にセリン、33にチロシン、34にメチオニン並びに35にセリンを含み、これ
はH1及びH2カノニカルフォールドの同じ組合せを共有しているヒト生殖系列ファミリー3
メンバーと完全にマッチしている。例外は、唯一の公知のリャマ生殖系列VHセグメントの
残基27(フェニルアラニン)及び32(セリン)であるが、また一方で公知の6種の体細胞変異
されたリャマVH中の4種においてでもある(Vuらの論文、Mol. Immunol. 34:1121-1131 (19
97))。類似のヒト生殖系列において認められるように、チロシンは32に存在する。同じ高
度な配列相同性が、ファミリーIGHV1S(1-19)の残基54の例外を伴う、ヒトコブラクダ生殖
系列VHセグメントのH2ループに認められる。特にヒトコブラクダファミリーIGHV1S(21、2
5-39)は、H2ループの多くの位置(すなわち53、54、56及び58)で逸脱している。同じフォ
ールドを伴うリャマ生殖系列VHセグメントのH2ループは、はるかに良好にスコア化される
が、加えて位置50、52、52a、54、55及び58に多くの逸脱している残基を含み、しかしこ
の解釈はかなり難しく、その理由はこの解析は既知の生殖系列セグメントのみで実行され
たからである。リャマに由来した体細胞変異されたVHの解析は、これらの位置上にある種
の残基が生じることを示し、これは対応するヒト生殖系列配列においても出現するが、頻
繁ではない(f.i. 50のグリシン、52及び58のアスパラギン、52aのトレオニン並びに55の
グリシン)。
本発明者らは、リャマ由来の6種の公知の体細胞変異されたVH配列のパネルも解析した(
Vuらの論文、Mol. Immunol. 34:1121-31 (1997))。以下にヒトVH3メンバー3-23とのアラ
インメントが示され、これは非常に高度な配列相同性を示し:全体でわずかに3つの逸脱
残基が認められ、そのうちの1つは増幅に使用されたプライマーによりコードされ、残り
の2つは同じクラスのヒト生殖系列において生じる。CDRは非常に高度の配列相同性を有す
ることを示すとしても:CDR1は恐らく同一であり、CDR2の3つの残基のみが異なるであろ
う。カノニカルフォールド解析は、2つのVHは、唯一の入手可能なリャマ由来の生殖系列V
Hについて観察されたように、H1に関するフォールド1及びH2に関するフォールド2を有す
るが、残りの4つは、3-23及びヒトファミリーVH3生殖系列セグメントの大半において生じ
るように、H1に関してフォールド1及びH2に関してフォールド3を有することを明らかにし
ている。このことは、これらは、公知の生殖系列VHセグメントではなく、他のものに由来
することを示唆しているであろう。カノニカルフォールドを支援している重要残基の検討
は、表1に列挙されたリャマ生殖系列VHセグメントについて既に観察されたように、同じ
カノニカルフォールドの組合せを伴うヒト生殖系列において生じるものとの完全なマッチ
をもたらす。これらの体細胞変異された配列における重要残基94は、リジン(5種中2種)、
セリン(5種中1種)及びアルギニン(5種中1種)であることを認めることは非常に興味深く、
これらは全て、同じフォールド組合せを伴うヒト生殖系列において認められるか又はMore
aとその同僚により提唱された(Moreaらの論文、Methods 20:267-279 (2000))。
Figure 2018064561
(実施例12−L1(λ)及びL2(λ)のカノニカルフォールドに関する重要残基の解析並びにヒ
ト生殖系列のL1(λ)及びL2(λ)残基との比較)
同じく予測されたL1及びL2のカノニカル構造を、ループの長さ及びカノニカルフォール
ドに関連した重要残基の存在をベースにして、体細胞変異されたヒトコブラクダVλセグ
メントについて解析した。この比較は、カノニカルフォールドの同じ組合せ及び全体の配
列の相同性を持つ、最も近いマッチングのヒト生殖系列に生じる重要残基で行った(表3)
。L1に関してフォールド11(L1:11)及びL2に関してフォールド7(L2:7)を伴う体細胞変異さ
れたヒトコブラクダVLファミリーVL3-1(Camvl8、18、19、20及び23)、並びにL1に関して
フォールド11(L1:11)及びL2に関してフォールド7(L2:7)を伴う体細胞変異されたヒトコブ
ラクダVLファミリーVL3-12/32(Camvl11)、並びにL1に関してフォールド14(L1:14)及びL2
に関してフォールド7(L2:7)を伴う体細胞変異されたヒトコブラクダVL1-40(Camvl44)、並
びにL1に関してフォールド14(L1:14)及びL2に関してフォールド7(L2:7)を伴う体細胞変異
されたヒトコブラクダVL2-18(Camvl5、17、30-33、36、52、57、59、60及び65)について
、L1のカノニカルフォールドに関連した重要残基2、25、29、30、33及び71が、同じカノ
ニカルフォールドの組合せを伴う類似のヒト生殖系列ファミリー由来のものと一緒に示さ
れている(表3上側部分)。L1に関してフォールド11(L1:11)及びL2に関してフォールド7(L2
:7)を伴う体細胞変異されたヒトコブラクダVLファミリーVL3-1(Camvl8、18、19、20及び2
3)、並びにL1に関してフォールド11(L1:11)及びL2に関してフォールド7(L2:7)を伴う体細
胞変異されたヒトコブラクダVLファミリーVL3-12/32(Camvl11)、並びにL1に関してフォー
ルド14(L1:14)及びL2に関してフォールド7(L2:7)を伴う体細胞変異されたヒトコブラクダ
VL1-40(Camvl44)、並びにL1に関してフォールド14(L1:14)及びL2に関してフォールド7(L2
:7)を伴う体細胞変異されたヒトコブラクダVL2-18(Camvl5、17、30-33、36、52、57、59
、60及び65)について、L2のカノニカルフォールドに大切な重要残基48及び64が、同じカ
ノニカルフォールドの組合せを有する類似のヒト生殖系列ファミリー由来の重要残基と一
緒に示されている(表3下側部分)。
ここでラクダ科動物Vλセグメントの重要残基も、対応するヒトVλセグメントのものと
同一であるので、VHに関して認められたように、本解析は、カノニカルループL1及びL2の
両方の「ヒト性質」を明らかにしている。例えば、ヒトコブラクダVL3-12/32、VL1-40及
びVL2-18において、L1の重要残基は全て対応するヒト生殖系列において生じるものと同一
であり、かつヒトコブラクダVL3-1、VL3-12/32及びVL2-18において、L2の重要残基は、対
応するヒト生殖系列VLセグメントと完全にマッチする。基本的にただ2つの例外が存在す
る。まず第一に、VL1-40のL2重要残基64はグルタミン酸であり、これはVL1-40と同じカノ
ニカルフォールドL1/L2組合せを伴うヒト生殖系列Vλ1に存在するグリシンとはむしろ異
なる。VL1-40は、孤立したもの(orphan)(すなわちCamvl44)からのみなるので、一般的結
論を描くことは困難である。第二の例外は、VL3-1であり、ここではフェニルアラニンが
、位置30に最も優先して生じるL1重要残基であるのに対し、VL3-1とL1に関するフォール
ド11及びL2に関するフォールド7を共有するヒトVλファミリー3メンバーにおいては、ロ
イシンが頻繁に認められる。しかし、ロイシンは、5種のVL3-1メンバー中1種においても
存在する。
本発明者らは、重要残基と共に体細胞変異されたヒトコブラクダVλセグメントのL1及
びL2ループの個々のアミノ酸残基を解析し、同じカノニカルフォールド組合せを共有する
ヒト対応物と比較した(表4)。L1に関してフォールド11(L1:11)及びL2に関してフォールド
7(L2:7)を伴う体細胞変異されたヒトコブラクダVLファミリーVL3-1(Camvl8、18、19、20
及び23)、並びにL1に関してフォールド11(L1:11)及びL2に関してフォールド7(L2:7)を伴
う体細胞変異されたヒトコブラクダVLファミリーVL3-12/32(Camvl11)について、L1残基27
から33は、L1の外側の重要残基71と一緒に、L1及びL2に関して同じフォールドの組合せを
伴う対応するヒト生殖系列Vλに存在する同じ残基と比較されている(表4A上側部分)。ヒ
トコブラクダについて、L1に関してフォールド14(L1:14)及びL2に関してフォールド7(L2:
7)を伴う体細胞変異されたヒトコブラクダVL1-40(Camvl44)、並びにL1に関してフォール
ド14(L1:14)及びL2に関してフォールド7(L2:7)を伴う体細胞変異されたヒトコブラクダVL
2-18(Camvl5、17、30-33、36、52、57、59、60及び65)について、L1残基26から33は、L1
の外側の重要残基2及び71と一緒に、L1及びL2に関して同じフォールドの組合せを伴う対
応するヒト生殖系列Vλファミリーに存在する同じ残基と比較されている(表A下側部分)。
加えて、L1に関してフォールド11(L1:11)及びL2に関してフォールド7(L2:7)を伴う体細胞
変異されたヒトコブラクダVLファミリーVL3-1(Camvl8、18、19、20及び23)、並びにL1に
関してフォールド11(L1:11)及びL2に関してフォールド7(L2:7)を伴う体細胞変異されたヒ
トコブラクダVLファミリーVL3-12/32(Camvl11)、並びにL1に関してフォールド14(L1:14)
及びL2に関してフォールド7(L2:7)を伴う体細胞変異されたヒトコブラクダVL1-40(Camvl4
4)、並びにL1に関してフォールド14(L1:14)及びL2に関してフォールド7(L2:7)を伴う体細
胞変異されたヒトコブラクダVL2-18(Camvl5、17、30-33、36、52、57、59、60及び65)に
ついて、L2残基49から53は、L2の外側の重要残基48及び64と一緒に、L1及びL2に関して同
じカノニカルフォールドの組合せを伴う対応するヒト生殖系列Vλファミリーに存在する
同じ残基と比較されている(表4B)。L1、L2及び重要残基の間で、ヒト生殖系列配列と、高
度な配列相同性が存在し、かつごくわずかな例外が存在し、これらは主に、VL3-12/32及
びVL1-40ファミリーの孤立したメンバーにおいて認めることができる。VL3-12/32のL1に
関して、残基27、28、30、30a及び30bは、対応するヒト生殖系列Vλファミリー3から逸脱
しているのに対し、VL1-40の同じループの残基30b、31及び32は、マッチングするヒト生
殖系列Vλファミリー1とは異なる。VL3-12/32の孤立したメンバーにおいて、L2の残基50
は、ヒト類似体とは異なるのに対し、VL1-40の唯一のメンバーに関して、重要残基64が、
ヒト類似体とは異なる。基本的差異は、L1に関して、ヒトコブラクダファミリーVL2-18の
残基 28に認めることができる(アスパラギン又はグルタミン酸、対、類似のヒトVλファ
ミリー2中のセリン)。
(実施例13−L1(κ)及びL2(κ)のカノニカルフォールドに関する重要残基の解析並びにヒ
ト生殖系列のL1(κ)及びL2(κ)残基との比較)
予測されたL1(κ)及びL2(κ)のカノニカル構造を、ループの長さ及び重要残基の存在を
ベースにして、体細胞変異されたヒトコブラクダVκセグメントについて解析した。前述
のように、この比較は、カノニカルフォールドの同じ組合せ及び全体の配列の相同性を持
つ、最も近いマッチングのヒト生殖系列に生じる重要残基で行った(表5)。L1に関してフ
ォールド3(L1:3)及びL2に関してフォールド1(L2:1)を伴う体細胞変異されたヒトコブラク
ダVKファミリーVK2-40(Kp1、3、6、7、10、20及び48)について、L1のカノニカルフォール
ドに関連した重要残基2、25、29、30e、33及び71が、同じカノニカルフォールドの組合せ
を伴う類似のヒトVκ生殖系列ファミリー2由来のものと一緒に示されている。加えて、Mo
reaらにより提唱されたような対応するカノニカルフォールドと同等な重要残基は、一番
下の列に印されている。重要残基2、25、33及び71に関して完全なマッチが、並びに残基2
9に関してある程度のマッチが存在する。ヒトコブラクダVκの残基30eは、グリシンの代
わりにグルタミンであるが、Moreaとその同僚は、この残基はL1に関するフォールド3と完
全に同等であることを示唆している(Moreaらの論文、Methods, 20:267-279 (2000))。
L1に関してフォールド3(L1:3)及びL2に関してフォールド1(L2:1)を伴う同じ体細胞変異
されたヒトコブラクダVKファミリーVK2-40(Kp1、3、6、7、10、20及び48)について、L1の
カノニカルフォールドを決定している重要残基48及び64は、類似のヒトVκ生殖系列ファ
ミリー2由来のものと一緒に示されている。ここでもこのマッチは再度完全である。
重要残基と共に体細胞変異されたヒトコブラクダVκセグメントのL1及びL2ループの個
々のアミノ酸残基を、同じカノニカルフォールド組合せを共有するヒト対応物(VKファミ
リー2)において生じるものと比較した(表6)。L1に関してフォールド3(L1:3)及びL2に関し
てフォールド1(L2:1)を伴う体細胞変異されたヒトコブラクダVKファミリーVK2-40(Kp1、3
、6、7、10、20及び48)について、L1及びL2残基は、同一のカノニカルループ組合せを有
する生殖系列VKファミリー2において認められるものと比較した。これらの残基の大半は
、位置2のイソロイシン、25、26、28及び30bのセリン、27のグルタミン、32のチロシン、
33のロイシン、並びに71のフェニルアラニンのように、ヒトコブラクダ体細胞変異された
VKとヒト生殖系列の間で共有されている。しかし、ヒト類似体とは、わずかに異なり、す
なわち、29のバリン(しかしヒト生殖系列のロイシンはヒトコブラクダVKにおいても生じ
る)、30のフェニルアラニン(再度ヒト残基ロイシンは同じくヒトコブラクダVKにおいても
認められる)、30aのセリン(ヒト残基グルタミン酸はヒトコブラクダVKにおいて頻繁では
ないが生じる)、30cのセリン、30dのアスパラギン、30eのグルタミン、30fのリジン、及
び最後に31のセリンである。
これらの重要残基と一緒に、体細胞変異されたヒトコブラクダVκセグメントのL2ルー
プの残基を、同じカノニカルフォールド組合せを共有するヒト対応物(VKファミリー2)に
生じるものと比較した(表6)。ここで再度、48のイソロイシン、49のチロシン、52のセリ
ン、及び64のグリシンの残基から、完全なマッチが認められたのに対し、位置50(ヒトVK
ファミリー2由来のトレオニンの代わりにチロシン)、及び51(ロイシンの代わりに51のア
ラニン)において逸脱が認められた。
全般的結論:
このラクダ科動物のVH及びVL配列の解析は、カノニカルフォールドを規定するヒトの重
要残基と、更には超可変ループにおいて認められた残基それら自身と同一でない場合の、
非常に高度の相同性を実証している。このことは、圧倒的多数のラクダ科動物の免疫グロ
ブリン配列は、個々の超可変ループについてのみならず、更にはヒトVH及びVLにおいて認
められるカノニカルフォールドの組合せについても、ヒト生殖系列において認められるよ
うなカノニカルフォールドを採用することを示唆している。
Figure 2018064561
Figure 2018064561
Figure 2018064561
Figure 2018064561
Figure 2018064561
Figure 2018064561
Figure 2018064561
(実施例14−リャマ由来の体細胞変異されたVH、VK及びVLの配列解析)
先に説明されたように、4頭のリャマ末梢血から、リンパ球を単離し、RNAを抽出し、か
つランダムプライミングしたcDNAを合成した(de Haardらの論文、JBC 1999)。VHCH1、VLC
L及びVKCKの増幅を行い、これらのアンプリコンを、ベクターpCB3においてクローニング
し、重鎖又は軽鎖のライブラリーを得た。抗体ドメイン挿入断片の存在をチェックするた
めのクローンのPCRによるスクリーニングを行った後、個々のクローンを増殖し、かつプ
ラスミドDNAを配列解析のために精製した。
14.A節は、同じCDR1及びCDR2長並びに恐らく同じカノニカルフォールド組合せを有する
最も近いヒト生殖系列類似体に従いファミリーに群別されたλ軽鎖可変領域を示している
。ヒトにおいて最も頻繁に使用されるλ生殖系列、すなわちVL1、VL2及びVL3は、解析さ
れたリャマ配列においても頻繁に認められ、加えてVL4、VL5、VL6(14.A節において示され
ず)及びVL8において認められ、このことはヒトにおいて認められる10種のλファミリーの
うちの7種は、リャマにおいても使用されることを意味している。14.B節は、3種のκ軽鎖
可変領域中2種を示し(すなわちVK1及びVK4;VK2は示されず)、これはκを含むヒト抗体の
約50%において生じる。VK3ファミリーのメンバーは、ヒト抗体において最も頻繁に使用
される(50%)が、これらは同定されなかったが、しかし増幅のために使用されたプライマ
ーがこれに寄与すること、並びにこれらは採用されなければならないことが良く示され得
る(can well be)。14.C節は、最も頻繁に使用されるヒトVH3セグメント(ヒト抗体におい
て34%生じる)及びVH1(17%)と、高い配列相同性を明らかにしているVH配列のアラインメ
ントを示す。Achourらの最新の文献(J Immunol, 2008)は、ヒトVH4ファミリーに最も密に
関連しているアルパカの生殖系列中のVH2ファミリーの存在に言及していることは注目さ
れなければならない(実施例10.10を参照されたい)。
全般的に、ラクダ科動物は、ヒト免疫系において認められるものに類似した、重鎖及び
軽鎖ファミリーの高い多様性を使用することを結論づけることができ、このことはヒト疾
患標的による能動免疫化により、ヒト抗体と高い配列相同性を伴うリード抗体の優れた選
択が有望であり、従って治療的適用のために容易に操作され得ることを意味する。
Figure 2018064561
Figure 2018064561
Figure 2018064561
Figure 2018064561
(実施例15−IL-1βに対するFab作製)
別に指定しない限りは、以下の試験に使用した材料及びプロトコールは、実施例1-9に
おいて使用したものと類似していた。
(リャマはIL-1βによりうまく免疫化された)
2頭のリャマ(ラマ・グラマ)を、標準プロトコールに従い(実施例1に説明されたように)
、ヒトIL-1βにより免疫化した。
両方のリャマ由来の血清を、免疫化の前(0日目)及び後(28日目)にELISAにより、IL-1β
に対する抗体の存在について試験した。図1に示されたように、IL-1βに対する特異的シ
グナルは、免疫化後にELISAにおいて認められ、血清を10,000倍希釈した後であっても認
められた。この高い抗体力価は、特異的かつ好適な免疫応答を示す。
(良好な多様性を伴うFabライブラリーが構築された)
両方の免疫化されたリャマから単離されたPBLは、Haardらの論文(JBC 1999)に説明され
た戦略をする、ファージミドにおけるFabのRNA抽出、RT-PCR及びPCR-クローニングに使用
し、良好な多様性を伴う多様なライブラリー(2〜5×108)を得た。
下記のプライマーを使用した:
Figure 2018064561
独立したVλCλ及びVκCκライブラリーを、単独の(タグ付き)-PCR工程(30サイクル)を
用いて構築し、より大きいクローン多様性を保存した。
VHCH1ライブラリーを、平行して、2工程PCR(タグなしプライマーで25サイクル(工程1)
、それに続くタグ付きプライマーで10サイクル(工程2))を用いて構築した。
次に、VλCλ及びVκCκライブラリー由来の軽鎖を、VHCH1-発現ベクターにおいて個別
に再クローニングし、各々、「λ」及び「κ」リャマFab-ライブラリー(各免疫化された
リャマについて2つ)を作製した。これらのライブラリーの品質管理は、PCRを用い、慣習
的に行った。
これらの試験したクローンの最大93%は、完全長Fab配列を無作為に含み、このことは
これらのライブラリーの高い品質を示している。
(ヒトIL-1β特異的Fabが選択された)
ファージディスプレイを使用し、ビオチン化されたIL-1βに結合するリャマFabの大き
い多様性を同定した。ビオチン化されたIL-1ベータを捕獲するために使用し、タンパク質
の活性のあるコンホメーションを保存した。2ラウンドの選択の後、対照に比べ優れた濃
厚化が認められた。ファージELISAは、サイトカイン特異的Fabを発現しているクローンの
存在を明らかにした(データは示さず)。
ビオチン化されたIL-1βに結合するファージは、pHショックにより溶出した。溶出物(o
utput)の段階希釈(10-1〜10-5)を使用し、新鮮な大腸菌TG1細胞を感染した。得られたコ
ロニー数は、この選択時に結合されたファージの数を示している。前述の例において、選
択がbiot-IL-1βの100nM及び10nMにより行われる場合に、溶出物5μlは、およそ105個の
ファージを生じた。非特異的結合により得られた102個のファージと比べ、これは、1000
倍の濃厚化を生じた。
94種の単独クローンを増殖し、モノクローナルファージを作製するために使用した。こ
れらのファージは、ファージELISAにおいて使用した。多くのファージは、ビオチン化さ
れたIL-1β上での2ラウンドの選択の後、biot-IL-1βに良好に結合することを示した。
(ヒトIL-1β特異的Fabはヒト生殖系列に対し高い出発相同性を有する)
標的特異的VH及びVλドメインは、そのような一般的ヒト生殖系列とマッチし、このこ
とは同一のCDR1及びCDR2長並びに対応するカノニカルフォールドを示している。引き続き
最も近いヒト生殖系列を、それらのフレームワーク領域における配列相同性を基に選択し
た。マッチングしないアミノ酸残基は、他の関連のあるヒト生殖系列中のそれらの存在に
ついてチェックした。マッチングが存在しない場合、これらの残基は、外来(foreign)と
カウントした:
Figure 2018064561
Figure 2018064561
考察及び結論:
・合計14種の標的特異的VHファミリー、9種の標的特異的Vλファミリー及び3種のVκファ
ミリーは、このまず第一の選択を基に同定した。
・14種の抗-IL-1βWT VH及び12種の抗-IL-1βWT VLの最初のパネルは、ヒト生殖系列と驚
くほど高い配列相同性を示した。
・これらのVHドメインの33%は、ヒト状況に対し95%以上の出発相同性を有し、かつVLド
メインの約44%は、ヒト状況に対し95%以上の出発相同性を有し、更なるヒト化の必要性
を排除している。
・VHドメイン2D8は、VH1C2のヒト化型であり、その理由はこれは、最も近いヒト生殖系列
と比べより少ない1個の逸脱しているアミノ酸残基を有するからである。その対応するVL
ドメイン(VL2D8)は、最も近いヒト生殖系列に対し95%の出発相同性を有し、これは更に1
つの復帰変異(VL 2G7)により96%に増大された。
・先に説明された方法を用いて評価した場合に、VH及びVLドメインは全て、1つの例外も
なく、ヒト3-D結合部位構造を示した(すなわち、マッチングするヒト生殖系列セグメント
において生じるようなCDR1及びCDR2と同一のカノニカルフォールドの組合せ)(データは示
さず)。
(Fab 1E2及び1F2のヒト化)
ヒト化は、1E2及び1F2とコードされた2つのIL-1β特異的Fabに行った。最も近いヒト生
殖系列に対するアラインメントを基に、それらのVH及びVλフレームワーク領域における
変異を提唱した(図2)。ヒトVH3ファミリーへマッチングするVHの生殖系列化には、多くの
残基がかかわることが多く、これらは既に公知のラマ・グラマ、ラマ・パコス又はカメー
ルス・ドロメダリウス由来の生殖系列配列において逸脱している。例えば、位置71のアラ
ニン(Kabat番号付け)及び83のリジン及び84のプロリンは、各々、セリン(しかしあるヒト
生殖系列VH3メンバーにおいてアラニンが存在する)、アルギニン(しかし多くのヒトVH3生
殖系列により、リジンが使用される)及びアラニンに変更されることができる。軽鎖可変
配列に関して、ラクダ科動物について生殖系列配列は入手可能ではないが、恐らくリード
抗体の大半において変更される、ヒト生殖系列由来のFRにおいて多くの変異が存在する。
完全にヒト化された(hum)及び野生型(wt)V領域に加え、残存するわずかに3個の野生型残
基を伴う「安全な(safe)変異型」も提唱された。
Fab 1E2は、工程毎のアプローチでフォーマットされ、これによりヒト定常ドメインに
融合されたVλの様々な型(wt、safe及び完全にヒト化された)は、表9に示されたFabを作
出するために、ヒト定常CH1ドメインに融合されたVHの様々な型と組合せられた:
Figure 2018064561
これらのFab遺伝子を、GeneArt社(独国)に合成遺伝子として注文し、かつ引き続き大腸
菌において産生し、精製し、biot-IL-1βへ結合するそれらの能力について試験した。こ
れに関して、Fabは、抗-mycコートされたMaxisorpプレート上に捕獲した。ビオチン化さ
れたヒトIL-1βを添加し、かつ結合したサイトカインを、HRP-複合されたストレプトアビ
ジンを用いて検出した。このアッセイの測定値を、下記図3に示した。
・野生型定常ドメインCH1及びCλのそれらのヒト対応物による交換は、結合能に影響を及
ぼさなかった。
・1E2のVHドメインの部分的ヒト化(wt Vλ/safe VH)及び完全にヒト化(wt Vλ/hum VH)は
、機能的Fabを作出した。
クローン1F2のヒト化された変異型は、gene3-Fab融合体を発現しているファージにより
試験した(図4)。ファージは、各構築体に関して4つの独立したクローンから作出した
・wt 1F2及びwt 1E2(ヒトCλ及びCH1に融合されたリャマVλ及びVH)
・safe変異型1F2及びsafe変異型1E2(ヒトCλ及びCH1に融合された部分的ヒト化されたVλ
)
・hum 1F2及びhum 1E2(ヒトCλ及びCH1に融合された完全にヒト化されたVλ及びVH)
各Fabに関する4種のクローンを、クローンの変動(細菌増殖、ファージ産生効率及び毒
性などに起因した)を克服するように試験した。ファージELISAは、ビオチン化されたIL-1
βをニュートラアビジンでコートされたMaxisorpプレート上に捕獲し、引き続き粗ファー
ジ抽出物(すなわち細菌培地)をインキュベーションすることにより行った。過度の洗浄後
、結合したファージを、抗-M13-HRPモノクローナル抗体により検出した。ニュートラアビ
ジンでコートされたウェル(ビオチン化されたIL-1βを含まない)上で試験する場合、同じ
ファージ調製物は、シグナルを生じなかった(データは示さず)。
・最も近いヒト生殖系列への1F2 VL及びVHドメインのフレームワーク領域内の復帰変異は
、抗原特異性を維持している、部分的(safe)及び完全に(hum)ヒト化された変異型をうま
く生じる。
(ヒト定常ドメインによるラクダ科動物可変ドメインの良好なフォーマット化)
IL-1β特異的クローン1E2のVL及びVH可変ドメインは、ヒトCλ及びCH1定常ドメインへ
うまく融合され、産生されかつ精製された「キメラ」Fabを生じた。
このキメラ1E2 Fabは、pCB5ファージミド(Δgene3)から、37℃で4時間(o/d)又は28℃で
16時間(o/n)の誘導を行うことにより作製した。この野生型リャマ1E2 Fabを、pCB3(gene3
含むファージミド)から30℃で16時間の誘導を行うことにより作製した。精製後、これら
のFabを、DTT含有(還元型)又は非含有(非還元型)SDS-PAGE上に装荷した。クマーシー染色
を行い、予想された分子量バンド(示さず)に、これらのFab又はそれらを構成する軽鎖及
び重鎖の存在を巧く示した。
先に説明された精製されたリャマ及びキメラ1E2 Fabを、抗-mycでコートされたMaxisor
pプレート上に捕獲した。ビオチン化されたヒトIL-1βと一緒にインキュベーションし、
十分に洗浄した後、Fabに結合したビオチン化されたIL-1βを、HRP-複合したストレプト
アビジンを用いて検出した。精製されたリャマ及びキメラの両1E2 Fabは、機能的標的結
合を示した(図5)。この知見は、ラクダ科動物に由来した可変ドメインのヒトIgGの定常ド
メインとの連関の実行可能性を実証している。
(Fabサブセットは標的の機能阻害を示した)
下記表は、以下のELISA実験から生じたOD値を示している。ウェルは、IL1-βのその受
容体との結合を阻害することがわかっているマウスモノクローナル抗体(Diaclone SAS社
により提供)によりコートした。
ビオチン化されたIL-1βを、これらのウェルに、ビオチン化されたIL-1βに対する2ラ
ウンドの選択後に、同定されたFabのペリプラズム抽出物と一緒に添加した。結合された
ビオチン化されたIL-1βの検出は、HRP標識されたストレプトアビジンにより生じた。減
少されたシグナルは、特異的Fabのブロッキングマウスモノクローナル抗体との競合を示
し、拮抗作用を示唆している。
陽性対照は、大量の競合するマウスモノクローナル中でスパイクすることにより、ウェ
ルG12中に含まれた(表10においてウェル12G)。
Figure 2018064561
ブロッキングマウスモノクローナル抗体と良好に競合する(表10において影のついた細
胞により示される)、多くのFabが同定された。競合するクローンの配列解析は、異なるVH
を伴う3種のFabの存在を明らかにし、これは48のスクリーニングしたクローンに存在した
(表10において6Aとコードされたプレートの部分)。拮抗性Fab 1A1(表10の競合アッセイに
おいてシグナル0.205を生じる)、1B3(シグナル0.444)及び関連クローン1G1(シグナル0.49
8)並びに最後に1C3(シグナル0.386)のVHの最も近いヒト生殖系列に対する配列アラインメ
ント及び構造相同性解析を、以下に示している。
3つは全て、マッチングしたヒト生殖系列と非常に高度の配列相同性を有し、かつヒト
生殖系列において認められるものと同一のカノニカルフォールド組合せを有する。これは
、3つの拮抗性リードのλ軽鎖についても認められる(データは示さず)。Fab 1A1は、拮抗
性参照モノクローナル抗体と強力に拮抗する(ELISAベースの競合アッセイにおいてIC50は
12μg/ml)のに対し、Fab 1C3は、競合をほとんど示さない(50μg/mlを超える濃度でのみ)
。しかしバイオアッセイにおいて、1C3(IC50は3μg/ml)は、1A1(IC50は10μg/ml)よりも
より強力であり、このことは異なるエピトープ認識を示唆している。高頻度の様々な拮抗
性Fab(48のスクリーニングされたクローン中の3つの異なる抗体)及びこれらのうちの2つ
において認められるエピトープ認識における差異は、ラマの非近交系の性質の結果として
の抗体の高い多様性を例証している。ヒト生殖系列V領域との高度の配列相同性は、(強力
な)抗体の高い多様性及び広範なエピトープ範囲と組合せ、免疫化されたラクダ科動物由
来の治療用抗体のパネルの同定を可能にする。
Figure 2018064561
Figure 2018064561
(実施例16)
下記実施例は、確立されたマウスモノクローナル抗体アプローチと比較して、本発明に
より達成され得る機能的多様性を実証している。
10匹のBALB/cマウスを、小さい分子量の組換え生成されたサイトカインにより免疫化し
た。この免疫化プロトコールの完了後、動物を屠殺し、それらの脾細胞の不死化によりハ
イブリドーマを作出した。得られたハイブリドーマの上清を、サイトカイン結合ELISAに
おいて、引き続き好適なバイオアッセイにおいて試験した。1つの高度に強力なアンタゴ
ニスト及び1つの弱いアンタゴニストを同定することができた。
同じく4頭のリャマを、本明細書に説明された一般的プロトコールを使用し、同じ組換
え生成されたサイトカインにより免疫化した。この免疫化プロトコールの完了後、末梢B
リンパ球を収集し、かつそれらのRNAを抽出し、精製した。リャマ特異的プライマーのセ
ットを使用し、ファージディスプレイ技術を用い、Fabライブラリーを作製した。これら
のFabは、サイトカイン/サイトカイン受容体結合ELISAにおいて試験した。5種の異なるVH
ファミリーは、最初の2頭のリャマから同定され、かつ6種の別の異なるVHファミリーは、
次の2頭のリャマから同定され、これは高い効力でサイトカイン/受容体相互作用をブロッ
クし、このことは、これらのVHドメインは、長さ及びアミノ酸配列の両方が、独自の異な
るCDRを含むことを意味する。
従ってより高い機能的多様性は、より多数の近交系BALB/cマウスとは対照的に、少数の
非近交系リャマから達成することができる。リャマの能動免疫化により得られた全てのVH
ファミリーは、最も近いヒト生殖系列と比較して、並はずれた配列相同性を示し、かつCD
R1及びCDR2に関してマッチングするヒト生殖系列と同じカノニカルフォールド組合せを有
した。
(実施例17)
以下の表は、アルパカ(ラマ・パコス)の生殖系列VHドメインと、最も近いマッチングの
ヒト生殖系列VHドメインの間のアミノ酸配列相同性比較の結果をまとめている。%相同性
は、ラマ・グラマに関して本明細書において説明されたものと同じアルゴリズムを用いて
算出した。ラマ・パコスに関する生のVH配列データは示していない:
Figure 2018064561
下記表は、検索目的でST.25フォーマットに提出された配列リストと、本明細書に列記
されたヌクレオチド及びアミノ酸配列を相互参照するために提供される。
Figure 2018064561
Figure 2018064561
Figure 2018064561
Figure 2018064561
Figure 2018064561

Claims (86)

  1. VHドメイン又はVLドメイン中の少なくとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)
    が、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られる、VHドメイン及びVLドメイ
    ンを含む抗原結合ポリペプチド。
  2. 前記VHドメイン中の超可変ループH1若しくは超可変ループH2のいずれか、又は超可変ル
    ープH1及び超可変ループH2の両方が、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得
    られる、請求項1記載の抗原結合ポリペプチド。
  3. 前記VLドメイン中の超可変ループL1若しくは超可変ループL2のいずれか、又は超可変ル
    ープL1及び超可変ループL2の両方が、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得
    られる、請求項1又は2記載の抗原結合ポリペプチド。
  4. 前記VHドメイン中の超可変ループH3、又はVLドメイン中の超可変ループL3又は両方が、
    同じくラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られる、請求項2又は3記載の抗
    原結合ポリペプチド。
  5. 前記VHドメイン及びVLドメインの両方の中の超可変ループ又は相補性決定領域の各々が
    、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られる、請求項1記載の抗原結合ポ
    リペプチド。
  6. 前記ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られた超可変ループ又は相補性
    決定領域(CDR)が、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVL遺伝子によりコードされているア
    ミノ酸配列を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド。
  7. 前記ラクダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られた超可変ループ又は相補性
    決定領域 (CDR)が、ラクダ科ファミリーの種の能動免疫化により得られた通常型抗体の超
    可変ループ又は相補性決定領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を有する、請
    求項1〜5のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド。
  8. 前記ラクダ科ファミリーの種の能動免疫化により得られたラクダ科VH若しくはVLドメイ
    ンと比較して、又はラクダ科ファミリーの種のVH若しくはVL遺伝子によりコードされたVH
    若しくはVLドメインと比較して、VHドメイン又はVLドメインのいずれかの少なくとも1個
    の超可変ループ又は相補性決定領域内に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項1〜
    5のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド。
  9. 前記ラクダ科ファミリーの種の能動免疫化により得られたラクダ科VH若しくはVLドメイ
    ンと比較して、又はラクダ科ファミリーの種のVH若しくはVL遺伝子によりコードされたVH
    若しくはVLドメインと比較して、VHドメイン又はVLドメインのいずれかの少なくとも1個
    のフレームワーク領域内に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項1〜8のいずれか1
    項記載の抗原結合ポリペプチド。
  10. 前記VHドメインが、ヒト生殖系列又は体細胞変異されたVH遺伝子によりコードされたVH
    ドメインと比較して、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり少なくとも1つ
    のアミノ酸配列ミスマッチを含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチ
    ド。
  11. 前記VLドメインが、ヒト生殖系列又は体細胞変異されたVL遺伝子によりコードされたVL
    ドメインと比較して、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり少なくとも1つ
    のアミノ酸配列ミスマッチを含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチ
    ド。
  12. 前記VHドメインが、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり1つ以上のヒトV
    Hドメインと、80%以上、好ましくは85%以上の配列同一性を示す、VHドメインを含む請
    求項1〜11のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド。
  13. 前記VHドメインが、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり1つ以上のヒトV
    Hドメインと、90%以上の配列同一性を示す、請求項12記載の抗原結合ポリペプチド。
  14. 前記VHドメインが、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり1つ以上のヒトV
    Hドメインと、95%以上の配列同一性を示す、請求項13記載の抗原結合ポリペプチド。
  15. 前記VHドメインが、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり1つ以上のヒトV
    Hドメインと、97%以上の配列同一性を示す、請求項14記載の抗原結合ポリペプチド。
  16. 前記VLドメインが、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり1つ以上のヒトV
    Lドメインと、80%以上、好ましくは85%以上の配列同一性を示す、VLドメインを含む請
    求項1〜15のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド。
  17. 前記VLドメインが、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり1つ以上のヒトV
    Lドメインと、90%以上の配列同一性を示す、請求項16記載の抗原結合ポリペプチド。
  18. 前記VLドメインが、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり1つ以上のヒトV
    Lドメインと、95%以上の配列同一性を示す、請求項17記載の抗原結合ポリペプチド。
  19. 前記VLドメインが、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり1つ以上のヒトV
    Lドメインと、97%以上の配列同一性を示す、請求項18記載の抗原結合ポリペプチド。
  20. 前記VHドメイン又はVLドメインのいずれかの中の少なくとも1個の超可変ループが、ラ
    クダ科ファミリーの種のVH又はVLドメインから得られ、かつヒト抗体において生じるカノ
    ニカルフォールド構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド
    構造を示す、請求項1〜19のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド。
  21. 前記VHドメイン中の超可変ループH1及び超可変ループH2が、各々、ラクダ科ファミリー
    の種のVHドメインから得られ、かつ各々、ヒト抗体において生じるカノニカルフォールド
    構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造を示す、請求
    項20記載の抗原結合ポリペプチド。
  22. 前記VHドメイン中の超可変ループH1及び超可変ループH2が、ヒト生殖系列VHドメインに
    おいて生じることがわかっているカノニカルフォールド構造の組合せと同一である予測さ
    れた又は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成する、請求項21記載の抗原結合
    ポリペプチド。
  23. 前記VHドメイン中の超可変ループH1及び超可変ループH2が、1-1、1-2、1-3、1-4、1-6
    、2-1、3-1及び3-5からなる群から選択されるカノニカルフォールド組合せを形成する、
    請求項22記載の抗原結合ポリペプチド。
  24. 前記フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたりヒトVHドメインと80%以上配列
    同一性を示し、かつ超可変ループH1及び超可変ループH2が、同じヒトVHドメインにおいて
    天然に生じることがわかっているカノニカルフォールド組合せと同じである予測された又
    は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成する、請求項22又は23記載の抗原結合
    ポリペプチド。
  25. 前記VLドメイン中の超可変ループL1及び超可変ループL2が、各々、ラクダ科ファミリー
    の種のVH又はVLドメインから得られ、かつ各々、ヒト抗体において生じるカノニカルフォ
    ールド構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造を示す
    、請求項21〜24のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド。
  26. 前記VLドメイン中の超可変ループL1及び超可変ループL2が、ヒト生殖系列VLドメインに
    おいて生じることがわかっているカノニカルフォールド構造の組合せと同一である予測さ
    れた又は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成する、請求項25記載の抗原結合
    ポリペプチド。
  27. 前記VLドメイン中の超可変ループL1及び超可変ループL2が、11-7、13-7(A,B,C)、14-7(
    A,B)、12-11、14-11、12-12、2-1、3-1、4-1及び6-1のカノニカルフォールド組合せのひ
    とつを形成する、請求項26記載の抗原結合ポリペプチド。
  28. 前記VHドメイン及び/又はVLドメインが、ラクダ科ファミリーの種のVH又はVL遺伝子に
    よりコードされているアミノ酸配列を有する、請求項1記載の抗原結合ポリペプチド。
  29. 前記ラクダ科ファミリーの種が、フタコブラクダ、リャマ、ヒトコブラクダ、ヴィクー
    ニャ、グアナコ及びアルパカからなる群から選択される、請求項1〜28のいずれか1項記載
    の抗原結合ポリペプチド。
  30. 標的抗原と免疫反応性である、請求項1〜29のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド
  31. 標的抗原と特異的に結合する、請求項1〜30のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド
  32. 前記標的抗原が、非ラクダ科動物の抗原である、請求項30又は31記載の抗原結合ポリペ
    プチド。
  33. 前記標的抗原が、ヒト抗原である、請求項32記載の抗原結合ポリペプチド。
  34. 前記標的抗原が、ウイルス抗原又は細菌抗原である、請求項32記載の抗原結合ポリペプ
    チド。
  35. 前記標的抗原が、治療上又は診断上重要な標的である、請求項30〜34のいずれか1項記
    載の抗原結合ポリペプチド。
  36. キメラポリペプチドである、請求項1〜35のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド。
  37. 組換えにより発現されたポリペプチドである、請求項1〜36のいずれか1項記載の抗原結
    合ポリペプチド。
  38. 抗体である、請求項1〜37のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド。
  39. ヒト免疫グロブリン遺伝子によりコードされているアミノ酸配列、又はそれと少なくと
    も90%同一のアミノ酸配列を有する少なくとも1個の定常ドメインを含む、請求項1〜38の
    いずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド。
  40. ヒト抗体の完全定常領域を含む、請求項39記載の抗原結合ポリペプチド。
  41. Fab、Fab'、F(ab')2、二重特異性Fab'、Fv断片、ダイアボディ、線状抗体、単鎖可変部
    断片(scFv)又は抗体断片から形成された多重特異性抗体である、請求項1〜37のいずれか1
    項記載の抗原結合ポリペプチド。
  42. 請求項1〜41のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチドをコードしているか、又は断片
    がラクダ科ファミリーの種のVH若しくはVLドメインから得られた少なくとも1個の超可変
    ループ若しくは相補性決定領域(CDR)を含む、該抗原結合ポリペプチドの断片をコードし
    ている、ポリヌクレオチド分子。
  43. 宿主細胞又は無細胞発現システムにおける前記抗原結合ポリペプチドの発現を可能にす
    る調節配列に機能的に連結されている、請求項42記載のポリヌクレオチド分子を含む、発
    現ベクター。
  44. 請求項43記載の発現ベクターを含む、宿主細胞又は無細胞発現システム。
  45. 前記抗原結合ポリペプチドの発現を可能にする条件下で、請求項44記載の宿主細胞又は
    無細胞発現システムを培養すること、並びに発現された抗原結合ポリペプチドを回収する
    ことを含む、組換え抗原結合ポリペプチドを作製する方法。
  46. 標的抗原と免疫反応性である抗原結合ポリペプチドを調製する方法であって、該方法が

    (a)前記標的抗原と免疫反応性であるラクダ科の通常型抗体のVH及び/又はVLドメインの
    少なくとも1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)をコードしているヌクレオチド配
    列を決定すること;並びに
    (b)該標的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプチドを発現することであり、該抗原結
    合ポリペプチドが、VH及びVLドメインを含み、ここでこのVHドメイン又はVLドメインの少
    なくとも1個の超可変ループ若しくは相補性決定領域(CDR)は、パート(a)において決定さ
    れたヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列を有すること:を含む、前記方法
  47. 前記パート(a)のラクダ科通常型抗体が、ラクダ科ファミリーの種の免疫化、それによ
    る該標的抗原と免疫反応性である通常型抗体の産生により得られる、請求項46記載の方法
  48. 前記工程(a)が、該標的抗原と免疫反応性のラクダ科通常型抗体のVH及び/又はVLドメイ
    ンをコードしているヌクレオチド配列を決定することを含み;並びに、工程(b)が、該標
    的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプチドを発現することを含み、該抗原結合ポリペプ
    チドが、VH及びVLドメインを含み、ここでVHドメイン又はVLドメインの少なくとも1つは
    、パート(a)において決定されたヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列を有
    する、請求項46又は47記載の方法。
  49. 前記工程(b)において発現された抗原結合ポリペプチドが、非ラクダ科動物の抗体、好
    ましくはヒト抗体の少なくとも1個の定常ドメインを含む、請求項46〜48のいずれか1項記
    載の方法。
  50. 標的抗原と免疫反応性である(又は特異的に結合する)組換え抗原結合ポリペプチドを調
    製する方法であって、該抗原結合ポリペプチドが、VHドメイン及びVLドメインを含み、こ
    こでこのVHドメイン又はVLドメイン中の少なくとも1個の超可変ループ又は相補性決定領
    域(CDR)が、ラクダ科ファミリーの種から得られ、該方法が:
    (a)該標的抗原と免疫反応性のラクダ科通常型抗体のVH及び/又はVLドメインの少なくと
    も1個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)をコードしているラクダ科核酸を単離する
    工程;
    (b)工程(a)において単離された核酸によりコードされた超可変ループ又は相補性決定領
    域と同一のアミノ酸配列を有する超可変ループ又は相補性決定領域をコードしているヌク
    レオチド配列を含むポリヌクレオチドを調製する工程であり、このポリヌクレオチドが、
    該標的抗原と免疫反応性である(又は特異的に結合する)VHドメイン及びVLドメインを含む
    抗原結合ポリペプチドをコードしている、工程;並びに
    (c)工程(b)の組換えポリヌクレオチドから該抗原結合ポリペプチドを発現する工程であ
    り、ここで該抗原結合ポリペプチドは、パート(a)のラクダ科の通常型抗体と同一ではな
    い、工程:を含む、前記方法。
  51. 前記工程(a)が、該抗体のVHドメイン及び/又はVLドメインをコードしているラクダ科核
    酸を単離すること、並びに該核酸が、1個以上のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加を伴
    うVHドメイン及び/又はVLドメインをコードするように、該核酸の配列を変更することを
    含む、請求項50記載の方法。
  52. 前記工程(b)において調製された組換えポリヌクレオチドが、非ラクダ科動物の抗体、
    好ましくはヒト抗体の1個以上の定常ドメインをコードしているヌクレオチド配列を追加
    的に含む、請求項50又は51記載の方法。
  53. 前記工程(a)のラクダ科の通常型抗体が、ラクダ科ファミリーの種の免疫化、それによ
    る該標的抗原に対する通常型抗体の産生により得られる、請求項50〜52のいずれか1項記
    載の方法。
  54. 前記ラクダ科ファミリーの種が、フタコブラクダ、リャマ、ヒトコブラクダ、ヴィクー
    ニャ、グアナコ又はアルパカである、請求項53記載の方法。
  55. 前記標的抗原が、ヒト抗原、ウイルス抗原、細菌抗原及び治療上又は診断上重要な標的
    抗原からなる群から選択される、請求項53又は54記載の方法。
  56. 前記方法により調製された抗原結合ポリペプチドが、パート(a)のラクダ科の通常型抗
    体と同一ではない、請求項46〜55のいずれか1項記載の方法。
  57. 請求項46〜56のいずれか1項記載の方法により入手可能である、請求項1記載の抗原結合
    ポリペプチド。
  58. 請求項1〜41のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチドを備える、試験キット。
  59. 前記試験キットが、該抗原結合ポリペプチドを使用するイムノアッセイを実行するため
    に必要とされる少なくとも1種の追加試薬を備える、請求項58記載の試験キット。
  60. 請求項1〜41のいずれか1項記載の抗原結合ポリペプチド、及び少なくとも1種の医薬と
    して許容し得る希釈剤、賦形剤又は担体を含有する、医薬製剤。
  61. ラクダ科の通常型抗体のVH及び/又はVLドメインをコードしている発現ベクターのライ
    ブラリーを作製する方法であって、該方法が:
    a)増幅された遺伝子セグメントを得るために、ラクダ科の通常型抗体のVH及び/又はVL
    ドメインをコードしている核酸分子の領域を増幅する工程であって、各遺伝子セグメント
    が、ラクダ科の通常型抗体のVHドメインをコードしているヌクレオチド配列又はVLドメイ
    ンをコードしているヌクレオチド配列を含む、工程;並びに
    b)各発現ベクターが、VHドメインをコードしている遺伝子セグメント及び/又はVLドメ
    インをコードしている遺伝子セグメントを少なくとも含むように、工程a)において得られ
    た遺伝子セグメントを発現ベクターにクローニングし、これにより発現ベクターのライブ
    ラリーが得られる工程:を含む、前記方法。
  62. 前記工程a)において増幅された核酸が、ラクダ科動物のリンパ系組織から調製されたcD
    NA又はゲノムDNAを含み、該リンパ系組織が、B細胞、リンパ節、脾細胞、骨髄細胞の1種
    以上、又はそれらの組合せを含む、請求項61記載の方法。
  63. 前記リンパ系組織が、能動免疫化されたラクダ科動物から得られる、請求項62記載の方
    法。
  64. 前記リンパ系組織が、所望の抗原結合特性を伴うラクダ科動物の通常型抗体の発現のた
    めに選択された1種以上のB細胞を含む、請求項62又は63記載の方法。
  65. 前記標的抗原が、ヒト抗原、ウイルス抗原、細菌抗原及び治療上又は診断上重要な標的
    抗原からなる群から選択される、請求項64記載の方法。
  66. 前記工程b)が、VH及びVLドメインをコードしている遺伝子セグメントを発現ベクターへ
    クローニングし、発現ベクターのライブラリーを作製することを含み、ここで該ライブラ
    リー中の各発現ベクターが、VHドメインをコードしている遺伝子セグメント及びVLドメイ
    ンをコードしている遺伝子セグメントを含み、かつ該VHドメイン及び該VLドメインを含む
    抗原結合ポリペプチドの発現を指示する、請求項61〜65のいずれか1項記載の方法。
  67. 前記ライブラリー中の発現ベクターが、ファージベクター、ファージミドベクター、酵
    母、哺乳類の発現ベクター及び細菌発現ベクターからなる群から選択される、請求項61〜
    66のいずれか1項記載の方法。
  68. ラクダ科の通常型抗体のVH及びVLドメインをコードしている発現ベクターのライブラリ
    ーを作製する方法であって、該方法が:
    a)ラクダ科動物を能動免疫化し、これにより標的抗原に対する通常型のラクダ科動物の
    抗体を産生する工程;
    b)該免疫化されたラクダ科動物由来のリンパ系組織(例えば循環B細胞)を含有する試料
    から、cDNA又はゲノムDNAを調製する工程;
    c)該cDNA又はゲノムDNAの領域を増幅し、増幅された遺伝子セグメントを得、各遺伝子
    セグメントが、ラクダ科の通常型抗体のVHドメインをコードしているヌクレオチド配列又
    はVLドメインをコードしているヌクレオチド配列を含む工程;並びに
    d)各発現ベクターが、VHドメインをコードしている遺伝子セグメント及びVLドメインを
    コードしている遺伝子セグメントを含み、かつ該VHドメイン及び該VLドメインを含む抗原
    結合ポリペプチドの発現を指示するように、工程c)において得られた遺伝子セグメントを
    発現ベクターへクローニングし、これにより発現ベクターのライブラリーが得られる工程
    :を含む、前記方法。
  69. 前記工程d)において得られた発現ベクターが、scFV、Fab及び抗体からなる群から選択
    される抗原結合ポリペプチドの形での該VHドメイン及び該VLドメインの発現を指示する、
    請求項68記載の方法。
  70. 前記ラクダ科動物が、リャマ又はアルパカである、請求項61〜69のいずれか1項記載の
    方法。
  71. 請求項61〜70のいずれか1項記載の方法により作製された発現ベクターのライブラリー
  72. 標的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターを調製す
    る方法であって、該方法が:
    i)発現ベクターのライブラリーを調製する工程であり、ここで該ライブラリー中の各ベ
    クターが、VHドメインをコードしている遺伝子セグメント及びVLドメインをコードしてい
    る遺伝子セグメントを含み、ここで該VHドメイン又は該VLドメインの少なくとも1つは、
    ラクダ科動物の通常型抗体に由来し、かつここで該ライブラリー中の各ベクターは、該VH
    ドメイン及びVLドメインを含む抗原結合ポリペプチドの発現を指示する工程;
    ii)該標的抗原と免疫反応性である該ライブラリーによりコードされた抗原結合ポリペ
    プチドをスクリーニングし、かつこれにより該標的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプ
    チドをコードしている発現ベクターを選択する工程:を含む、前記方法。
  73. 前記VHドメイン及び該VLドメインの両方が、ラクダ科動物の通常型抗体に由来する、請
    求項72記載の方法。
  74. 前記工程i)のライブラリーが、請求項66〜69、72又は73のいずれか1項記載の方法によ
    り調製される、請求項73記載の方法。
  75. iii)前述のパート(ii)で選択されたベクターのVHドメインをコードしている遺伝子セグ
    メント及びパート(ii)で選択されたベクターのVLドメインをコードしている遺伝子セグメ
    ントを、ヒト抗体の1個以上の定常ドメインをコードしているヌクレオチド配列に機能的
    に連結されている更なる発現ベクターへクローニングし、これによりヒト抗体の1個以上
    の定常ドメインに融合された工程ii)において選択されたVH及びVLドメインを含むキメラ
    抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターを作製する更なる工程を含む、請求
    項72〜74のいずれか1項記載の方法。
  76. 前記パート(ii)で選択されたベクターのVHドメインをコードしている遺伝子セグメント
    及び/又はパート(ii)で選択されたベクターのVLドメインをコードしている遺伝子セグメ
    ントが、更なる発現ベクターへクローニングされる前に、該VH及び/又は該VLドメインを
    コードしているヌクレオチド配列に1つ以上の変更を導入するように操作される、請求項7
    5記載の方法。
  77. iii)発現ベクターの第二のライブラリーを調製する工程であり、ここで該ライブラリー
    中の各ベクターが、工程ii)で選択された発現ベクターのVHドメインをコードしている遺
    伝子セグメント及びVLドメインをコードしている遺伝子セグメントを含む工程;
    iv)該標的抗原との免疫反応性について、該第二のライブラリーによりコードされた抗
    原結合ポリペプチドをスクリーニングし、これにより該標的抗原と免疫反応性の抗原結合
    ポリペプチドをコードしている発現ベクターを選択する工程:を含む、軽鎖シャッフリン
    グプロセスを更に含む、請求項72〜74のいずれか1項記載の方法。
  78. v)前記パート(iv)で選択されたベクターのVHドメインをコードしている遺伝子セグメン
    ト及びパート(iv)で選択されたベクターのVLドメインをコードしている遺伝子セグメント
    を、ヒト抗体の1個以上の定常ドメインをコードしているヌクレオチド配列に機能的に連
    結されている更なる発現ベクターへクローニングし、これによりヒト抗体の1個以上の定
    常ドメインに融合された工程iv)において選択されたVH及びVLドメインを含むキメラ抗原
    結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターを作製する更なる工程:を含む、請求項
    77記載の方法。
  79. 前記パート(iv)で選択されたベクターのVHドメインをコードしている遺伝子セグメント
    及び/又はパート(iv)で選択されたベクターのVLドメインをコードしている遺伝子セグメ
    ントが、更なる発現ベクターへクローニングされる前に、該VH及び/又は該VLドメインを
    コードしているヌクレオチド配列において1つ以上の変更を導入するように操作される、
    請求項78記載の方法。
  80. v)発現ベクターの第三のライブラリーを調製し、ここで該ライブラリーの各ベクターが
    、工程iv)で選択された発現ベクターのVLドメインをコードしている遺伝子セグメント及
    びVHドメインをコードしている遺伝子セグメントを含む工程;
    vi)該標的抗原との免疫反応性について、該第三のライブラリーによりコードされた抗
    原結合ポリペプチドをスクリーニングし、これにより該標的抗原と免疫反応性の抗原結合
    ポリペプチドをコードしている発現ベクターを選択する工程:を含む、重鎖シャッフリン
    グプロセスを更に含む、請求項77記載の方法。
  81. vii)前記パート(vi)で選択されたベクターのVHドメインをコードしている遺伝子セグメ
    ント及びパート(vi)で選択されたベクターのVLドメインをコードしている遺伝子セグメン
    トを、ヒト抗体の1個以上の定常ドメインをコードしているヌクレオチド配列に機能的に
    連結されている更なる発現ベクターへクローニングし、これによりヒト抗体の1個以上の
    定常ドメインと融合された工程vi)において選択されたベクターのVH及びVLドメインを含
    むキメラ抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターを作製する更なる工程:を
    含む、請求項80記載の方法。
  82. 前記パート(vi)で選択されたベクターのVHドメインをコードしている遺伝子セグメント
    及び/又はパート(vi)で選択されたベクターのVLドメインをコードしている遺伝子セグメ
    ントが、更なる発現ベクターへクローニングされる前に、該VH及び/又は該VLドメインを
    コードしているヌクレオチド配列に1つ以上の変更を導入するように操作される、請求項8
    1記載の方法。
  83. 請求項72〜82のいずれか1項記載の方法により調製された発現ベクター。
  84. 標的抗原と免疫反応性のキメラ抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターを
    作製する方法であって、該方法が:
    a)ラクダ科動物(リャマ又はアルパカ)を能動免疫化し、これにより標的抗原に対する通
    常型のラクダ科動物の抗体を産生する工程;
    b)該免疫化されたラクダ科動物由来のリンパ系組織(例えば循環B細胞)を含有する試料
    からcDNA又はゲノムDNAを調製する工程;
    c)該cDNA又はゲノムDNAの領域を増幅し、増幅された遺伝子セグメントを得る工程であ
    って、各遺伝子セグメントは、ラクダ科動物の通常型抗体のVHドメインをコードしている
    ヌクレオチド配列又はVLドメインをコードしているヌクレオチド配列を含む工程;
    d)前記工程c)で得られた遺伝子セグメントを、発現ベクターへクローニングし、その結
    果各発現ベクターは、VHドメインをコードしている遺伝子セグメント及びVLドメインをコ
    ードしている遺伝子セグメントを含み、かつ該VHドメイン及び該VLドメインを含む抗原結
    合ポリペプチドの発現を指示し、これにより発現ベクターのライブラリーを作製する工程

    e)該標的抗原との免疫反応性について、工程d)で得られたライブラリーによりコードさ
    れた抗原結合ポリペプチドをスクリーニングし、これにより該標的抗原と免疫反応性の抗
    原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターを選択する工程;
    f)軽鎖シャッフリング工程及び/又は重鎖シャッフリング工程を任意に実行し、該標的
    抗原と免疫反応性の効力最適化された抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクタ
    ーを選択する工程;
    g)工程e)若しくは工程f)で選択されたベクターのVHドメインをコードしている遺伝子セ
    グメント及び/又は工程e)若しくは工程f)で選択されたベクターのVLドメインをコードし
    ている遺伝子セグメントを、任意に生殖系列化及び/又はコドン最適化に供する工程;並
    びに
    h)前記パートe)若しくはf)で選択されたベクターのVHドメインをコードしている遺伝子
    セグメント又は工程g)において作製された生殖系列化及び/若しくはコドン最適化されたV
    H遺伝子セグメント、並びにパートe)若しくはf)で選択されたベクターのVLドメインをコ
    ードしている遺伝子セグメント、又は工程g)において作製された生殖系列化及び/若しく
    はコドン最適化されたVL遺伝子セグメントを、ヒト抗体の1個以上の定常ドメインをコー
    ドしているヌクレオチド配列に機能的に連結されている更なる発現ベクターへクローニン
    グし、これによりヒト抗体の1個以上の定常ドメインに融合されたVH及びVLドメインを含
    むキメラ抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターを作製する工程:を含む、
    前記方法。
  85. 請求項84記載の方法により調製された発現ベクター。
  86. 標的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプチドを作製する方法であって、該方法が:
    a)請求項72〜82のいずれか1項記載の方法又は請求項84記載の方法を使用し、標的抗原
    と免疫反応性の抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターを調製する工程;
    b)該発現ベクターを、コードされた抗原結合ポリペプチドの発現を可能にする条件下で
    、宿主細胞又は無細胞発現システムへ導入する工程;並びに
    c)発現された抗原結合ポリペプチドを回収する工程:を含む、前記方法。
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