[第1実施形態]
図1に示すように、内視鏡システム10は、観察対象を撮像する内視鏡12と、照明光を発生する光源装置14と、観察対象を撮像して得た画像(以下、撮像画像という)を用いて観察用の画像(以下、観察画像という)を生成するプロセッサ装置16と、観察画像を表示するモニタ18と、ユーザインタフェースの1つであるコンソール19と、を有する。内視鏡12は、光源装置14と光学的に接続し、かつ、プロセッサ装置16と電気的に接続する。内視鏡12は、被検体内に挿入する挿入部12aと、挿入部12aの基端部分にある操作部12bと、挿入部12aの先端側に設けられた湾曲部12cと、先端部12dと、を有している。挿入部12aにあるアングルノブ12eを操作すると、湾曲部12cが湾曲する。湾曲部12cが湾曲した結果、先端部12dが所望の方向に向く。なお、先端部12dには、観察対象に向けて空気または水等を噴出する噴出口(図示しない)が設けられている。
また、操作部12bには、アングルノブ12eの他、モード切り替えスイッチ13a及びズーム操作部13bが設けられている。モード切り替えスイッチ13aは、内視鏡システム10が複数の観察モードを有する場合に、観察モードの切り替え操作に用いる。本実施形態においては、内視鏡システム10は、観察モードの1つである通常観察モードで作動する。通常観察モードは、照明光に白色光を用いて観察対象を撮像する。そして、得られた撮像画像を用いて、自然な色合いの観察画像(以下、通常観察画像という)を生成し、表示部であるモニタ18に表示する。
図2に示すように、光源装置14は、光源部20と、光源部20を制御する光源制御部22と、を備える。光源部20は、第1色光と、第1色光とは波長帯域または分光スペクトルが異なる第2色光の点灯及び消灯を各々独立に制御可能であり、かつ、少なくとも第1色光または第2色光のいずれかを含む照明光を発生する。
より具体的には、図3に示すように、本実施形態においては、光源部20は、B広帯域光源24、G広帯域光源25、及び、R広帯域光源26の3つの光源を備える。また、B広帯域光源24、G広帯域光源25、及び、R広帯域光源26は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の半導体光源である。
B広帯域光源24は、青色の広帯域な光(以下、B広帯域光という)を発光する光源である。青色とは、主に約400nmから約500nm程度の波長を有する光の色を言う。広帯域とは、内視鏡システム10において単一の波長(単波長)であるとはみなせない程度に広い波長帯域を言う。例えば、数10nmから100nm以上の波長帯域が広帯域である。B広帯域光源24が発光するB広帯域光27は、例えば、図4に示す波長帯域及び分光スペクトルを有する。
G広帯域光源25は、緑色の広帯域な光(以下、G広帯域光という)を発光する光源である。緑色とは、主に約500nmから約600nm程度の波長を有する光の色を言う。また、R広帯域光源26は、赤色の広帯域な光(以下、R広帯域光という)を発光する光源である。赤色とは、主に約600nmから約700nm程度の波長を有する光の色を言う。G広帯域光源25が発光するG広帯域光28、及び、R広帯域光源26が発光するR広帯域光29は、例えば、図4に示す波長帯域及び分光スペクトルを有する。
光源制御部22は、B広帯域光源24、G広帯域光源25、及び、R広帯域光源26の点灯、消灯、及び光量を、イメージセンサ48の駆動タイミングに合わせて各々に制御する。点灯とは、イメージセンサ48において観察対象を撮像できる程度(すなわち観察画像において観察対象の像を視認できる程度)の光量で発光することを言う。消灯とは、完全に発光を停止することの他、イメージセンサ48において観察対象を撮像し得ない程度の光量に減光することを含む。
なお、本実施形態においては、赤色光であるR広帯域光29が第1色光であり、かつ、赤色光の波長帯域よりも短波長帯域の青色光であるB広帯域光27が第2色光である。上記の通り、R広帯域光29とB広帯域光27は、波長帯域及び分光スペクトルが異なる。また、本実施形態においては、B広帯域光27はイメージセンサ48の駆動タイミングに合わせて点灯と消灯を繰り返す。一方、光源部20は、内視鏡12が観察対象を撮像する際に、R広帯域光29の点灯を維持する。したがって、光源部20は、イメージセンサ48の駆動タイミングに合わせて、照明光を、B広帯域光27とR広帯域光29の両方を含む照明光と、R広帯域光29だけを含む照明光とで切り替えるが、少なくともR広帯域光29またはB広帯域光27のいずれかを含む照明光を発生する。また、本実施形態においては、B広帯域光27の代わりにG広帯域光28を第2色光と捉えることもできる。G広帯域光28も、R広帯域光29に対して上記B広帯域光27と同様の関係にあるからである。
光源部20が発生した照明光は、ライトガイド41に入射する。ライトガイド41は、内視鏡12及びユニバーサルコード内に内蔵されており、照明光を内視鏡12の先端部12dまで伝搬する。ユニバーサルコードは、内視鏡12と光源装置14及びプロセッサ装置16とを接続するコードである。なお、ライトガイド41としては、マルチモードファイバを使用できる。一例として、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径がφ0.3〜0.5mmの細径なファイバケーブルを使用できる。
内視鏡12の先端部12dには、照明光学系30aと撮影光学系30bが設けられている。照明光学系30aは、照明レンズ45を有しており、この照明レンズ45を介して照明光を観察対象に照射する。撮影光学系30bは、対物レンズ46、ズームレンズ47、及びイメージセンサ48を有している。イメージセンサ48は、対物レンズ46及びズームレンズ47を介して、観察対象から戻る照明光の反射光等(反射光の他、散乱光、観察対象が発する蛍光、または、観察対象に投与等した薬剤に起因した蛍光等を含む)を用いて観察対象を撮影する。なお、ズームレンズ47は、ズーム操作部13bの操作をすることで移動し、イメージセンサ48を用いて撮影する観察対象を拡大または縮小する。
イメージセンサ48は、CMOSセンサであり、かつ、いわゆる原色系のカラーセンサである。すなわち、イメージセンサ48の各画素は、青色の光を透過する青色カラーフィルタ、緑色の光を透過する緑色カラーフィルタ、または、赤色の光を透過する赤色カラーフィルタのうちいずれかを有する。青色カラーフィルタを有する画素がB画素(「B」)であり、緑色カラーフィルタを有する画素がG画素(「G」)であり、赤色カラーフィルタを有する画素がR画素(「R」)である。これら各色のカラーフィルタは、例えば、図5に示す分光透過特性を有する。このため、例えば、イメージセンサ48は、観察対象によるB広帯域光27の反射光をB画素で受光し、観察対象によるG広帯域光28の反射光をG画素で受光し、かつ、観察対象によるR広帯域光29の反射光はR画素で受光する。本実施形態においては、R広帯域光29が第1色光であるため、R画素が第1色光を受光する第1色画素である。また、本実施形態においては、B広帯域光27が第2色光であるため、B画素が第2色光を受光する第2色画素である。したがって、イメージセンサ48は、少なくとも第1色画素または第2色画素を用いて観察対象を撮像する。
図6に示すように、イメージセンサ48は、RGB各色の画素を配列した撮像面を有する。例えば、図6に示す通り、奇数番目の画素行(図6において横方向に並んだ画素の組)にはB画素とG画素を交互に配列してあり、かつ、偶数番目の画素行にはG画素とR画素を交互に配列してある。また、列方向(図6の縦方向)に見れば、B画素を含む画素列はB画素とG画素が交互に配列してあり、かつ、R画素を含む画素列はG画素とR画素が交互に配列してある。
イメージセンサ48はCMOSセンサであるため、各画素ごとに信号の読み出し及びリセット等を任意に行うことができるが、本実施形態においては、イメージセンサ48は信号の読み出し及びリセット等の動作を画素行ごとにまとめて行う。また、イメージセンサ48は、信号の読み出し及びリセット等の動作を任意の画素行を選択して行うことができるが、本実施形態においては、行番号が小さい順に全ての画素行の信号の読み出し及びリセットを順次行う。すなわち、本実施形態においては、イメージセンサ48の信号の読み出し方式は、いわゆるプログレッシブ方式である。
また、イメージセンサ48の読み出し方式は、いわゆるローリングシャッタ方式である。すなわち、イメージセンサ48の各画素は、各画素の信号の読み出しを行って各画素が蓄積した電荷を破棄(リセット)すると、光電変換により電荷を蓄積し得る状態になる。前述のとおり、イメージセンサ48は画素行ごとに順次信号の読み出し及びリセットを行うので、1回の撮像において光電変換により電荷を蓄積し得る期間の開始及び終了のタイミングには画素行ごとにずれがある。
プロセッサ装置16は、制御部52と、画像取得部54と、画像処理部61と、表示制御部66と、を有する。
制御部52は、内視鏡システム10を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)等であり、少なくともイメージセンサ48の動作を制御する撮像制御部53を含む。例えば、制御部52は、照明光の発光タイミングと撮影フレームの同期制御を行う。具体的には、制御部52による同期制御の結果、光源制御部22は、蓄積期間において第1色光及び第2色光を点灯し、読出期間において第1色光の点灯を維持し、かつ、読出期間において第2色光を消灯する。「点灯を維持する」とは、読出期間における第1色光の光量を、蓄積期間における第1色光の光量と実質的に等しくすることを言う。光量を「実質的に等しくする」とは、自動露光制御による光量変化を含めて、取得する撮像画像の明るさが等しくなるように光量を制御することを言う。また、本実施形態においては、光源制御部22は、読出期間における第2色光の光量を、少なくとも蓄積期間における第2色光の光量よりも小さくすることで、読出期間において第2色光を消灯する。
また、内視鏡システム10が複数の観察モードを有する場合、制御部52は、モード切り替えスイッチ13aからモード切り替え信号の入力を受けて、光源制御部22、撮像制御部53、及び画像処理部61等に制御信号を入力することにより、観察モードを切り替える。
撮像制御部53は、蓄積期間と読出期間とに分けてイメージセンサ48を制御し、かつ、蓄積期間と読出期間と一定の時間ごとに(例えば1/60秒ごとに)交互に繰り返すようにイメージセンサ48を制御する。本実施形態においては、1つの蓄積期間と、この1つの蓄積期間に続く読出期間の合計が1単位の撮像フレームである。
蓄積期間とは、どの画素行からも信号の読み出しをせずに、イメージセンサ48の全画素が照明光の反射光等を各々受光して電荷を蓄積する期間である。読出期間とは、蓄積期間に続き、イメージセンサ48の各画素から信号を読み出す期間である。また、本実施形態においては、撮像制御部53は、信号の読み出し後直ちに画素が蓄積した電荷を破棄して、画素のリセットを行う。したがって、読出期間には、信号の読み出し及びリセットを行う期間である。
すなわち、撮像制御部53は、蓄積期間にイメージセンサ48の各画素において電荷を蓄積し、かつ、蓄積期間に続く読出期間に、イメージセンサ48の各画素から信号をローリングシャッタ方式で読み出す。ここで言うイメージセンサ48の各画素には、少なくとも第1色画素(R画素)または第2色画素(B画素)を含む
画像取得部54は、撮像制御部53がイメージセンサ48から読み出す信号を受信することで、イメージセンサ48から撮像画像を取得する。より具体的には、画像取得部54は、撮像フレームごとに、B画素から読み出した信号によって形成するB画像、G画素から読み出した信号によって形成するG画像、及び、R画像から読み出した信号によって形成するR画像の3種類の撮像画像を取得する。
画像取得部54は、DSP(Digital Signal Processor)56と、ノイズ低減部58と、変換部59と、を有し、これらを用いて、取得した撮像画像に各種処理を施す。
DSP56は、取得した撮像画像に対し、必要に応じて欠陥補正処理、オフセット処理、ゲイン補正処理、リニアマトリクス処理、ガンマ変換処理、デモザイク処理、及びYC変換処理等の各種処理を施す。
欠陥補正処理は、イメージセンサ48の欠陥画素に対応する画素の画素値を補正する処理である。オフセット処理は、欠陥補正処理を施した撮像画像から暗電流成分を低減し、正確な零レベルを設定する処理である。ゲイン補正処理は、オフセット処理をした撮像画像にゲインを乗じることにより各撮像画像の信号レベルを整える処理である。リニアマトリクス処理は、オフセット処理をした撮像画像の色再現性を高める処理であり、ガンマ変換処理は、リニアマトリクス処理後の撮像画像の明るさや彩度を整える処理である。デモザイク処理(等方化処理または同時化処理とも言う)は、欠落した画素の画素値を補間する処理であり、ガンマ変換処理後の撮像画像に対して施す。欠落した画素とは、カラーフィルタの配列のため、イメージセンサ48において他の色の画素を配置しているために、画素値がない画素である。例えば、B画像はB画素において観察対象を撮像して得る撮像画像なので、イメージセンサ48のG画素やR画素に対応する位置の画素には画素値がない。デモザイク処理は、B画像を補間して、イメージセンサ48のG画素及びR画素の位置にある画素の画素値を生成する。YC変換処理は、デモザイク処理後の画像を、輝度チャンネルYと色差チャンネルCb及び色差チャンネルCrに変換する処理である。
ノイズ低減部58は、輝度チャンネルY、色差チャンネルCb及び色差チャンネルCrに対して、例えば、移動平均法またはメディアンフィルタ法等を用いてノイズ低減処理を施す。変換部59は、ノイズ低減処理後の輝度チャンネルY、色差チャンネルCb及び色差チャンネルCrを再びBGRの各色の撮像画像に再変換する。
画像処理部61は、上記各種処理を施した撮像画像に対して、必要に応じて例えば、色変換処理、色彩強調処理、及び構造強調処理等を施し、1つのカラーの観察画像を生成する。通常観察モードにおいては、画像処理部61が生成する観察画像は通常観察画像である。色変換処理においては、BGR各色の画像に対して3×3のマトリクス処理、階調変換処理、3次元LUT(ルックアップテーブル)処理等を行う。色彩強調処理は、画像の色彩を強調する処理であり、構造強調処理は、例えば、血管やピットパターン等の観察対象の組織や構造を強調する処理である。表示制御部66は、画像処理部61が生成した観察画像を順次取得し、適した形式に変換してモニタ18に順次出力表示する。これにより、医師等は、観察画像を用いて観察対象を観察できる。
次に、内視鏡システム10の一連の動作の流れを、図7に示すフローチャートに沿って説明する。まず、観察を開始すると、撮像制御部53は、イメージセンサ48の動作を蓄積期間の動作にする(S11)。同時に、光源制御部22は、光源部20によって白色の照明光を発生する(S12)。具体的には、光源制御部22は、B広帯域光源24、G広帯域光源25、及びR広帯域光源26を全て点灯する。これにより、光源部20は、B広帯域光27と、G広帯域光28と、R広帯域光29と、を含み、全体として白色の照明光を発生する。このため、上記蓄積期間(S11)においては、イメージセンサ48は、各画素において白色の照明光の反射光等を光電変換し、電荷を蓄積する。
蓄積期間(S11)の開始後一定時間が経過すると、撮像制御部53は、イメージセンサ48の動作を読出期間の動作に切り替える(S13)。同時に、光源制御部22は、照明光を切り替える(S14)。具体的には、光源制御部22は、読出期間においては、B広帯域光27とG広帯域光28を消灯し、かつ、R広帯域光29の点灯は維持する。このため、読出期間においても、光源部20はR広帯域光29を照明光として発生する。
撮像制御部53は、読出期間(S13)において、イメージセンサ48から画素行ごとに信号を読みだすと、画像取得部54はRGB各色の撮像画像を取得する(S15)。そして、図8に示すように、画像処理部61は、画像取得部54が各種処理を施したR画像、G画像、及びB画像の3色の撮像画像を用いて通常観察画像を生成し、かつ、表示制御部66は、通常観察画像をモニタ18に表示する(S16)。内視鏡システム10は、これらの動作を、通常観察モードを終了して他の観察モードに切り替えるか、観察自体を終了するまで、繰り返し行う(S17)。
上記のように、内視鏡システム10は、ローリングシャッタ方式で読み出しを行うイメージセンサ48が蓄積期間と読出期間の動作を交互に繰り返し行う際に、蓄積期間においては、B広帯域光27、G広帯域光28、及びR広帯域光29を点灯する。そして、読出期間においては、B広帯域光27及びG広帯域光28を消灯する一方、R広帯域光29の点灯は維持する。このため、内視鏡システム10は、B画像とG画像との同時性を向上し、B画像及びG画像のローリングシャッタ歪みを低減できる。かつ、これらローリングシャッタ歪みを低減したB画像及びG画像とともに、内視鏡システム10では、読出期間にR広帯域光29も消灯する場合よりも明るいR画像が得られる。したがって、内視鏡システム10で生成及び表示する観察画像は、ローリングシャッタ方式で読み出しを行うイメージセンサを用いた従来の内視鏡システムにおける観察画像よりも、診断において特に重要な像が写る画像のローリングシャッタ歪みが小さく、かつ、明瞭である。
より具体的には、イメージセンサ48が蓄積期間と読出期間を交互に繰り返し、かつ、読出期間においてはローリングシャッタ方式で読出を行う場合に、蓄積期間においてB広帯域光27、G広帯域光28、及びR広帯域光29を点灯し、かつ、読出期間においてB広帯域光27及びG広帯域光28を消灯すると、図9に示すように、1つの撮像フレームF1においてイメージセンサ48がB広帯域光27及びG広帯域光28の反射光等を受光する期間は蓄積期間に一致する。例えば、時刻T1から時刻T2の蓄積期間(以下、蓄積期間T1−T2と記す。他の蓄積期間及び読出期間についても同じ。)に電荷を蓄積した各画素の信号は、この蓄積期間T1−T2に続く、次の読出期間T2−T3において読み出す。しかし、読出期間T2−T3においてはB広帯域光27及びG広帯域光28の反射光等は発生しないので、読出期間T2−T3におけるB画素及びG画素が蓄積した電荷の量は、蓄積期間T1−T2において蓄積した量のまま増減しない。したがって、読出期間T2−T3においてローリングシャッタ方式で画素行ごとに信号を順次読み出ししたとしても、B画像及びG画像にはローリングシャッタ歪みはほぼ発生しない。B画像及びG画像に写る細かい血管等の像は、その細かさ故、わずかなローリングシャッタ歪みがあるだけでも観察し難くなってしまう場合がある。しかし、上記のように、B画像及びG画像のローリングシャッタ歪みを抑えたことで、このB画像及びG画像を用いて生成した観察画像を用いれば、診断に特に重要な細かい血管等の像を明瞭に観察可能である。
一方、R広帯域光29については、蓄積期間だけでなく、読出期間においても点灯を維持するので、R画素がR広帯域光29の反射光等を受光する期間は、イメージセンサ48における蓄積期間よりも長い。例えば、読出期間T2−T3に信号を読み出すR画素が、R広帯域光29の反射光等を受光する期間は、以前の読出期間T0−T1において信号を読み出てリセットした後、読み出し期間T2−T3において実際に信号を読み出すまでの期間(以下、実質的蓄積期間という)L2になる。このR画素の実質的蓄積期間L2は、各蓄積期間の長さL1よりも長い(L1<L2)。蓄積期間の長さと読出期間の長さが全て等しければ、実質的蓄積期間L2は、各蓄積期間の長さL1の2倍である。したがって、B画像及びG画像と比較して、R画像は明るさが確保しやすくなっている。この明るいR画像を観察画像の生成に用いれば、観察画像の明るさ等が向上する。もちろん、読出期間までR広帯域光29の点灯を維持しているので、R画像にローリングシャッタ歪みは生じる。しかし、R画像にはB画像等と比べると、もともと細かい血管等の像は写らないので、多少のローリングシャッタ歪みがあったとしても診断に支障はない。
[第2実施形態]
上記第1実施形態においては、内視鏡システム10は通常観察モードで動作し、自然な色合いの通常観察画像を生成及び表示しているが、いわゆる狭帯域観察画像を生成及び表示する狭帯域観察モードにおいても本発明は好適である。狭帯域光観察モードとは、青色及び緑色の狭帯域光を用いて観察対象を撮像し、得られた撮像画像を用いて、血管等を強調した観察画像(狭帯域観察画像)を生成及び表示する観察モードである。
内視鏡システム10に狭帯域観察モードを設ける場合、図10に示すように、光源部20に、少なくともB狭帯域光源224、G狭帯域光源225、及びR広帯域光源26を設ける。B狭帯域光源224及びG狭帯域光源225は、第1実施形態のB広帯域光源24及びG広帯域光源25の代わりに設けても良いが、狭帯域観察モードを通常観察モードと切り替えて使用する場合には、第1実施形態のB広帯域光源24及びG広帯域光源25に加えて、B狭帯域光源224及びG狭帯域光源225を設ける。また、光学フィルタ等と第1実施形態のB広帯域光源24及びG広帯域光源25とでB狭帯域光源224及びG狭帯域光源225を構成しても良い。R広帯域光源26は、第1実施形態と同様である。
B狭帯域光源224は、青色の狭帯域な光(以下、B狭帯域光という)を発光する光源である。狭帯域とは、内視鏡システム10において概ね単波長であるとみなせる程度に狭い波長帯域を言う。例えば、中心波長に対して±数10nmの波長帯域が狭帯域である。B狭帯域光源224が発光するB狭帯域光227は、例えば、図11に示す波長帯域及び分光スペクトルを有する。すなわち、B狭帯域光227は、中心波長が約450nmであり、この中心波長を中心に概ね±数10nm程度の波長帯域を有する。B狭帯域光227の反射光等は、B画素が受光する(図5参照)。
G狭帯域光源225は、緑色の狭帯域な光(以下、G狭帯域光という)を発光する光源である。G狭帯域光源225が発光するG狭帯域光228は、例えば、図11に示す波長帯域及び分光スペクトルを有する。すなわち、G狭帯域光228は、中心波長が約550nmであり、この中心波長を中心に概ね±数10nm程度の波長帯域を有する。G狭帯域光228の反射光等は、G画素が受光する(図5参照)。
狭帯域観察モードの場合、図12に示すように、光源制御部22は、第1実施形態におけるB広帯域光27及びG広帯域光28の代わりに、イメージセンサ48の蓄積期間に合わせてB狭帯域光227及びG狭帯域光228を点灯し、かつ、読出期間においてはB狭帯域光227及びG狭帯域光228を消灯する。また、R広帯域光29については、第1実施形態の通常観察モードと同様である。すなわち、光源制御部22は、イメージセンサ48の蓄積期間においてR広帯域光29を点灯し、かつ、読出期間においてもR広帯域光29の点灯を維持する。
したがって、狭帯域観察モードにおいては、B狭帯域光227の反射光等を用いて観察対象を撮像して得るB画像と、G狭帯域光228の反射光等を用いて観察対象を撮像して得るG画像には、ローリングシャッタ歪みがほぼ生じない。また、R広帯域光29の反射光等を用いて観察対象を撮像して得るR画像は従来よりも明るい。
狭帯域観察モードにおいては、図13に示すように、画像処理部61は、画像取得部54からB画像及びG画像を取得する。そして、B画像及びG画像を用いて、狭帯域観察モードの観察画像である狭帯域観察画像を生成及び表示する。具体的には、画像処理部61は、例えば、B画像をBチャンネル及びGチャンネルに割り当て、かつ、G画像をRチャンネルに割り当てることにより、狭帯域観察画像を生成する。
上記の通り、狭帯域観察モードにおいては、R画像を狭帯域観察画像の生成に使用しない。その代わり、図13に示すように、狭帯域観察モードを設ける内視鏡システム10においては、プロセッサ装置16に静止度算出部251を設けることが好ましい。
静止度算出部251は、1または複数のR画像を用いて静止度を算出する。静止度とは、観察対象の動きを大きさ、観察対象の動きの向き、または、観察対象の動きの大きさ及び向きを表す数値である。ここで言う観察対象の動きには、観察対象自身の動きの他、内視鏡12の動きによる相対的な観察対象の動きを含む。静止度は、1枚のR画像を用いて算出する場合、例えば周波数解析により算出する。R画像に高周波成分が少なければ観察対象の動きが大きいと評価できるので、高周波数成分の量に基づいて静止度を算出することができる。また、複数のR画像を用いて静止度を算出する場合、例えば、各R画像に写る観察対象の対応する点間の位置から求まる動きベクトルの向きや大きさから静止度を算出することができる。いずれにしても、静止度算出部251は、読出期間まで点灯を維持したR広帯域光29の反射光等を用いて観察対象を撮像して得たR画像を使用する。このR画像は従来のR画像よりも明るいので、このR画像を用いた結果、従来よりも正確に静止度を算出することができる。
静止度算出部251は、算出した静止度を、例えば、表示制御部66に入力し、狭帯域観察画像とともに、モニタ18に静止度を表示する。医師等は、静止度をみれば、観察対象の動きの大きさを容易かつ客観的に把握することができる。
また、上記第2実施形態においては、B狭帯域光源224を用いているが、内視鏡システム10に狭帯域観察モードを設ける場合、図14に示すように、B狭帯域光源224の代わりに、あるいは、B狭帯域光源224に加えて、V狭帯域光源252を設けることができる。V狭帯域光源252は、紫色の狭帯域な光(以下、V狭帯域光という)を発光する光源である。紫色とは、主に約350nmから約400nm程度の波長を有する光の色を言う。
V狭帯域光源252を設ける場合、光源制御部22は、V狭帯域光を上記第2実施形態のB狭帯域光227とともに、または、B狭帯域光227の代わりに、イメージセンサ48の蓄積期間に点灯し、読出期間においては消灯する。B狭帯域光227とV狭帯域光を比較すると、より波長が短いV狭帯域光の方が、観察対象の粘膜表面に近い血管等を捉えやすい。このため、V狭帯域光をB狭帯域光227の代わりに用いれば、B狭帯域光227を用いた場合とは狭帯域観察画像において強調する血管等が変わる。また、B狭帯域光227とともにV狭帯域光を用いれば、狭帯域観察画像において、B狭帯域光227だけを用いた場合には強調できなかった血管等が強調できるようになることがある。
上記第2実施形態においては、イメージセンサ48の蓄積期間において、B狭帯域光227とG狭帯域光228を同時に点灯しているが、B狭帯域光227及びG狭帯域光228の光量が足りていれば、図15に示すように、B狭帯域光227とG狭帯域光228は、蓄積期間内において順次に点灯することができる。すなわち、B狭帯域光227とG狭帯域光228を時分割点灯にすることができる。第1実施形態におけるB広帯域光27及びG広帯域光28についても同様である。また、図16に示すように、B狭帯域光227、G狭帯域光228、及び、R広帯域光29を時分割点灯にすることができる。第1実施形態におけるB広帯域光27、G広帯域光28、及び、R広帯域光29についても同様である。
上記第2実施形態においては、R広帯域光29が第1色光であり、かつ、B狭帯域光227とG狭帯域光228の両方またはいずれか一方が第2色光である。B狭帯域光227を第2色光とする場合にはB画素が第2色画素であり、G狭帯域光228を第2色光とする場合にはG画素が第2色画素である。B狭帯域光227及びG狭帯域光228を第2色光とする場合には、イメージセンサ48にはB狭帯域光227及びG狭帯域光228を両方とも受光する画素がないが、B画素及びG画素の集合(例えば、行方向に隣接するB画素とG画素のペア)が実質的に第2色画素を構成する。いずれにしても、第2実施形態においては、第1色光は赤色光であり、第2色光は赤色光の波長帯域よりも短波長帯域の光である。
[第3実施形態]
第1実施形態の通常観察モード、及び、第2実施形態の狭帯域観察モードの他に、本発明は、観察対象の酸素飽和度を算出する酸素飽和度観察モードにも好適である。
内視鏡システム10に酸素飽和度観察モードを設ける場合、図17に示すように、光源部20には、B広帯域光源24、G広帯域光源25、及び、R広帯域光源26に加え、酸素飽和度を測定するための狭帯域な光を発光する狭帯域光源301を設ける。狭帯域光源301は、酸素飽和度を測定するための光(以下、測定光という)を発光する。測定光は、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光係数の差が大きい波長を中心波長に有する狭帯域光である。図18に示すように、例えば、約470nmの波長において、酸化ヘモグロビンの吸光係数303と還元ヘモグロビンの吸光係数304の差が大きくなる。したがって、本実施形態においては、狭帯域光源301は、中心波長が約470nmの狭帯域光である。図18から分かる通り、約470nm以外にも、紫色、青色、または、緑色の波長帯域において、酸化ヘモグロビンの吸光係数303と還元ヘモグロビンの吸光係数304の差が大きい波長がある。したがって、これらのいずれかの波長を中心波長とする狭帯域光を発光する光源を狭帯域光源301にすることができる。
酸素飽和度観察モードにおいては、撮像フレームF1を第1撮像フレームと、次の撮像フレームF2を第2撮像フレームとする場合、図19に示すように、光源制御部22は、第1撮像フレームF1の蓄積期間においては、R広帯域光29と測定光を点灯する。そして、第1撮像フレームF1の読出期間においては、R広帯域光29の点灯を維持し、かつ、測定光等その他の光を消灯する。一方、第2撮像フレームF2の蓄積期間においては、B広帯域光27、G広帯域光28、及びR広帯域光29を点灯する。そして、第2撮像フレームF2の読出期間においてはR広帯域光29の点灯を維持し、かつ、その他の光を消灯する。
したがって、第1撮像フレームF1において取得するB画像は、測定光の反射光等を用いて観察対象を撮像した画像であり、かつ、ローリングシャッタ歪みがほぼない。第1撮像フレームF1において取得するR画像は、第1実施形態と同様、従来よりも明るい。また、第2撮像フレームF2において取得するB画像、G画像、及びR画像は、第1実施形態におけるB画像、G画像、及び、R画像と同様であり、B画像及びG画像はローリングシャッタ歪みがほぼない画像であり、R画像は従来よりも明るい。以下では、区別のため、第1撮像フレームF1において取得するB画像をB1画像といい、第1撮像フレームF1において取得するR画像をR1画像という。そして、第2撮像フレームF2において取得するB画像、G画像、及びR画像をそれぞれB2画像、G2画像、R2画像という。
図20に示すように、内視鏡システム10に酸素飽和度観察モードを設ける場合、画像処理部61には、信号比算出部311、酸素飽和度算出部312、相関関係記憶部313、及び、画像生成部314を設ける。そして、酸素飽和度観察モードの場合、画像処理部61は、画像取得部54からB1画像、B2画像、G2画像、及び、R2画像を取得する。
信号比算出部311は、例えば、G2画像に対するB1画像の比(以下、信号比B1/G2という)と、R2画像に対するG2画像の比(以下、信号比R2/G2)と、をそれぞれ画素ごとに算出する。信号比B1/G2は、主に観察対象の酸素飽和度の値と血液量によって変化し、信号比R2/G2は、主に観察対象の血液量に応じて変化する。
酸素飽和度算出部312は、信号比算出部311が算出した信号比B1/G2、及び、信号比R2/G2を、相関関係記憶部313が記憶する相関関係に照らし合わせることにより、観察対象の酸素飽和度を画素ごとに算出する。相関関係記憶部313は、例えば図21に示すように、信号比B1/G2及び信号比R2/G2と、酸素飽和度の相関関係をLogスケールで記憶している。なお、信号比B1/G2及び信号比R2/G2と、酸素飽和度の相関関係はシミュレーション等によって予め求めることができる。
画像生成部314は、観察対象の酸素飽和度を色で表す観察画像(以下、酸素飽和度画像という)を生成する。より具体的には、画像生成部314は、B2画像、G2画像、及びR2画像を用いて、第1実施形態と同様に、カラーの観察画像を生成する。その後、生成した観察画像の各画素を、酸素飽和度算出部312が算出した酸素飽和度の値に応じて着色することによって酸素飽和度画像を生成する。画像生成部314は、生成した酸素飽和度画像を表示制御部66に入力することにより、モニタ18に表示する。
上記酸素飽和度観察モードにおいては、撮像画像にローリングシャッタ歪みがあると、酸素飽和度の算出精度が低下する。酸素飽和度の算出には、上記の通り、B1画像、G2画像、及び、R2画像を用いるが、これらのうち酸素飽和度の算出精度向上のためにローリングシャッタ歪みをより厳密に取り除く必要がある撮像画像は、B1画像とG2画像である。本質的に酸素飽和度の情報を持っているのは信号比B1/G2だからである。信号比B1/G2は信号比B1/G2の血液量依存性を排除するためのリファレンスである。
上記第3実施形態においては、B1画像を得るための測定光と、G2画像を得るためのG広帯域光28は、イメージセンサ48の蓄積期間において点灯し、読出期間においては消灯するので、B1画像及びG2画像はローリングシャッタ歪みがほぼない。したがって、内視鏡システム10に上記のように酸素飽和度観察モードを設ければ、従来よりも正確に酸素飽和度を算出及び表示できる。
なお、上記第3実施形態のように、内視鏡システム10に酸素飽和度観察モードを設ける際には、プロセッサ装置16に静止度算出部321を設けることが好ましい(図20参照)。静止度算出部321は、第2実施形態の静止度算出部251と同様にR画像を用いて静止度を算出する。但し、本実施形態の静止度算出部321は、画像取得部54からR1画像及びR2画像を取得し、R1画像、R2画像、または、R1画像及びR2画像を用いて静止度を算出する。また、静止度算出部321は、算出した静止度を画像処理部61に入力する。
画像処理部61においては、例えば、信号比算出部311において静止度を使用する。具体的には、信号比算出部311は、信号比B1/G2を算出する際に、静止度を用いてB1画像及びG2画像の位置合わせをする。これらの撮像画像にローリングシャッタ歪みがないとしても、取得した撮像フレームが異なるので、観察対象等に動きがあれば、信号比B1/G2の算出精度が低下する。このため、信号比算出部311は静止度を用いてB1画像とG2画像の位置合わせをすることにより、より正確に信号比B1/G2を算出する。その結果、酸素飽和度算出部312においては、より正確に酸素飽和度を算出することができる。
上記第3実施形態においては、R広帯域光29が第1色光であり、かつ、測定光とG広帯域光28の両方またはいずれか一方が第2色光である。測定光を第2色光とする場合には、測定光を受光可能な画素が第2色画素である。上記第3実施形態においては測定光は青色の光なのでB画素が第2色画素である。G広帯域光28を第2色光とする場合には、G画素が第2色画素である。また、測定光とG広帯域光28の両方を第2色光とする場合、使用する測定光の波長によっては、イメージセンサ48に測定光とG広帯域光28の両方を受光する画素がない場合があるが、測定光を受光可能な画素とG画素の集合が実質的に第2色画素を構成する。上記第3実施形態においては、B画素及びG画素の集合(例えば、行方向に隣接するB画素とG画素のペア)が実質的に第2色画素を構成する。いずれにしても、第3実施形態においては、第1色光は赤色光であり、かつ、第2色光は赤色光の波長帯域よりも短波長帯域の光である。
[第4実施形態]
第1実施形態の通常観察モード、第2実施形態の狭帯域観察モード、及び、第3実施形態の酸素飽和度観察モードの他に、本発明は、特定の深さにある組織または構造を選択的に強調する特定深さ強調観察モードにも好適である。
内視鏡システム10に特定深さ強調観察モードを設ける場合、図22に示すように、光源部20には、少なくとも、第1狭帯域光源401、第2狭帯域光源402、及び、R広帯域光源26を設ける。第1狭帯域光源401及び第2狭帯域光源402は、互いに異なる中心波長を有する狭帯域光を発光する。本実施形態においては、図23に示すように、第1狭帯域光源401はV狭帯域光(以下、本実施形態において第1狭帯域光という)403を発光し、かつ、第2狭帯域光源402はB狭帯域光(以下、本実施形態において第2狭帯域光という)404を発光する。なお、第1狭帯域光源401及び第2狭帯域光源402は、発光する狭帯域光の波長を変更可能にすることが好ましい。この場合、第1狭帯域光源401は、例えば、互いに波長が異なる狭帯域光を発光する複数のLED、広帯域光源と複数の光学フィルタの組み合わせ等によって構成することができる。第2狭帯域光源402も同様である。
特定深さ強調観察モードにおいては、撮像フレームF1を第1撮像フレームと、次の撮像フレームF2を第2撮像フレームとする場合、図24に示すように、光源制御部22は、第1撮像フレームF1の蓄積期間においては、R広帯域光29と第1狭帯域光403を点灯する。そして、第1撮像フレームF1の読出期間においては、R広帯域光29の点灯を維持し、かつ、第1狭帯域光403は消灯する。一方、第2撮像フレームF2の蓄積期間においては、R広帯域光29と第2狭帯域光404を点灯する。そして、第2撮像フレームF2の読出期間においては、R広帯域光29の点灯を維持し、かつ、第2狭帯域光404は消灯する。
したがって、第1撮像フレームF1において取得するB画像は、第1狭帯域光403の反射光等を用いて観察対象を撮像した画像であり、かつ、ローリングシャッタ歪みがほぼない。第2撮像フレームF2において取得するB画像は、第2狭帯域光404の反射光等を用いて観察対象を撮像した画像であり、かつ、ローリングシャッタ歪みがほぼない。第1撮像フレームF1及び第2撮像フレームF2において取得するR画像は、第1実施形態と同様、従来よりも明るい。以下、区別のため、第1撮像フレームF1において取得するB画像をB1画像といい、第2撮像フレームにおいて取得するB画像をB2画像という。R画像については、第1撮像フレームF1及び第2撮像フレームF2においてR広帯域光29の反射光等を用いて観察対象を撮像した画像であり、実質的な蓄積期間の長さも共通するので、区別せずにR画像という。
図25に示すように、内視鏡システム10に特定深さ強調観察モードを設ける場合、画像処理部61には、変化量算出部411と画像生成部412を設ける。そして、特定深さ強調観察モードの場合、画像処理部61は、画像取得部54からB1画像とB2画像を取得する。
変化量算出部411は、B1画像とB2画像の変化量を画素ごとに算出し、この変化量を各画素の画素値とした変化量画像(図示しない)を生成する。変化量とは、例えば、B1画像とB2画像の各画素の比または差である。
画像生成部412は、B1画像とB2画像のうちいずれか一方を輝度チャンネルに割り当て、かつ、変化量算出部411が生成した変化量画像を色差チャンネルに割り当てた観察画像を生成する。この観察画像は、第1狭帯域光403及び第2狭帯域光404の波長の組み合わせによって定まる特定の深さにある組織または構造等を強調した画像(以下、特定深さ強調画像という)になる。画像生成部412は、生成した特定深さ強調画像を表示制御部66に入力することにより、モニタ18に表示する。なお、色差チャンネルは、CrチャンネルとCbチャンネルの2つのチャンネルがあるので、画像生成部412は、CrチャンネルとCbチャンネルに、例えば、それぞれ異なる重み付けをした変化量画像を割り当てる。
上記特定深さ強調観察モードにおいては、撮像画像にローリングシャッタ歪みがあると、変化量算出部411が算出する変化量の算出精度が低下する。変化量の算出精度が低い場合、例えば、特定深さ強調画像において強調する組織または構造等の深さの精度(深さの選択精度)が低下する。しかし、B1画像及びB2画像にはローリングシャッタ歪みがほぼないので、本実施形態の特定深さ強調観察モードにおいては正確な変化量を算出することができる。その結果、特定深さ強調画像においては、第1狭帯域光403及び第2狭帯域光404の波長によって定まる任意深さの組織または構造を正確に強調することができる。
なお、上記第4実施形態のように、内視鏡システム10に特定深さ強調観察モードを設ける際には、プロセッサ装置16に静止度算出部421を設けることが好ましい(図25参照)。静止度算出部421は、第2実施形態の静止度算出部251及び第3実施形態の静止度算出部321と同様に、R画像を用いて静止度を算出する。また、本実施形態の静止度算出部421は、第3実施形態の静止度算出部321と同様に、算出した静止度を画像処理部61に入力する。
画像処理部61においては、変化量算出部411において静止度を使用する。具体的には、変化量算出部411は、変化量を算出する際に、静止度を用いてB1画像及びB2画像の位置合わせをする。これらの撮像画像にはローリングシャッタ歪みがないとしても、取得した撮像フレームが異なるので、観察対象等に動きがあれば、変化量の算出精度が低下するからである。変化量算出部411は、静止度を用いてB1画像とB2画像の位置合わせをすることにより、より正確に変化量を算出することができる。その結果、特定深さ強調画像においては、強調する組織又は構造の深さの選択精度が向上する。
上記第4実施形態においては、R広帯域光29が第1色光であり、かつ、第1狭帯域光403及び第2狭帯域光404の両方またはいずれか一方が第2色光である。上記第4実施形態においては第1狭帯域光403と第2狭帯域光404はいずれもB画素において受光するのでB画素が第2色画素である。但し、第1狭帯域光403及び第2狭帯域光404の各波長の選択の仕方によっては、第1狭帯域光403の反射光等を受光する画素と、第2狭帯域光404の反射光等を受光する画素とが異なることがあるが、第1狭帯域光403を第2色光とする場合には第1狭帯域光403の反射光等を受光する画素が第2色画素であり、第2狭帯域光404の反射光等を第2色光とする場合には第2狭帯域光404を受光する画素が第2色画素である。そして、第1狭帯域光403及び第2狭帯域光404の両方を第2色光とする場合には、第1狭帯域光403の反射光等を受光する画素と第2狭帯域光404の反射光等を受光する画素の集合が実質的に第2色画素を構成する。いずれにしても、第1色光は赤色光であり、かつ、第2色光は赤色光の波長帯域よりも短波長帯域の光である。
[第5実施形態]
上記第1実施形態から第4実施形態の各観察モードの他に、本発明は、粘膜下の特に深い位置にある太い血管(以下、深層血管という)を強調する深層血管強調観察モードにも好適である。
内視鏡システム10に深層血管強調観察モードを設ける場合、図26に示すように、光源部20には、少なくとも、第1R狭帯域光源501、第2R狭帯域光源502、R広帯域光源26、及び、Cy広帯域光源503を設ける。第1R狭帯域光源501は、図27に示すように、例えば中心波長が約600nmの赤色の狭帯域光(以下、第1R狭帯域光という)506を発光する。また、第2R狭帯域光源502は、例えば中心波長が約630nmの赤色の狭帯域光(以下、第2R狭帯域光という)507を発光する。そして、Cy広帯域光源503は、波長帯域が約400nmから約550nmに及ぶシアン色の広帯域光(以下、Cy広帯域光という)509を発光する。
深層血管強調観察モードにおいては、撮像フレームF1を第1撮像フレームと、次の撮像フレームF2を第2撮像フレームとする場合、図28に示すように、光源制御部22は、第1撮像フレームF1の蓄積期間においては、第1R狭帯域光506とCy広帯域光509を点灯する。そして、第1撮像フレームF1の読出期間においては、第1R狭帯域光506を消灯し、代わりにR広帯域光29を点灯し、かつ、Cy広帯域光509の点灯を維持する。一方、第2撮像フレームF2の蓄積期間においては、第2R狭帯域光507とCy広帯域光509を点灯する。そして、第2撮像フレームF2の読出期間においては、第2R狭帯域光507を消灯し、代わりにR広帯域光29を点灯し、かつ、Cy広帯域光509の点灯を維持する。
したがって、第1撮像フレームF1において取得するR画像は、第1R狭帯域光506の反射光等を用いて観察対象を撮像した画像成分と、R広帯域光29の反射光等を用いて観察対象を撮像した画像成分と、を重ね合わせた画像であり、少なくとも第1R狭帯域光506の反射光等を用いて撮像した画像成分にはローリングシャッタ歪みがほぼない。同様に、第2撮像フレームF2において取得するR画像は、第2R狭帯域光507の反射光等を用いて観察対象を撮像した画像成分と、R広帯域光29の反射光等を用いて観察対象を撮像した画像成分と、を重ね合わせた画像であり、少なくとも第2R狭帯域光507の反射光等を用いて撮像した画像成分にはローリングシャッタ歪みがほぼない。以下、区別のため、第1撮像フレームF1において取得するR画像をR1画像といい、第2撮像フレームF2において取得するR画像をR2画像という。なお、第1撮像フレームF1及び第2撮像フレームF2において取得するB画像は、Cy広帯域光509が含む青色の成分の反射光等を用いて観察対象を撮像した画像である。同様に、第1撮像フレームF1及び第2撮像フレームF2において取得するG画像は、Cy広帯域光509が含む緑色の成分の反射光等を用いて観察対象を撮像した画像である。
図29に示すように、内視鏡システム10に深層血管強調観察モードを設ける場合、画像処理部61には、変化量算出部511と画像生成部512を設ける。そして、深層血管強調観察モードの場合、画像処理部61は、画像取得部54からR1画像及びR2画像と、少なくともG画像を取得する。
変化量算出部511は、R1画像とR2画像の変化量を画素ごとに算出する。本実施形態における変化量とは、例えば、R1画像とR2画像の各画素の比または差である。また、変化量算出部511は、変化量を算出すると、算出した変化量に基づく補正係数を算出し、R1画像またはR2画像にこの補正係数を乗算して補正画像(図示しない)を生成する。そして、変化量算出部511は、生成した補正画像を画像生成部512に入力する。
画像生成部512は、R1画像またはR2画像のうち補正画像の生成に使用していない方の画像と、変化量算出部511が生成した補正画像と、画像取得部54から取得するG画像を、Bチャンネル、Gチャンネル、及びRチャンネルに割り当てることによって観察画像を生成する。この観察画像は、深層血管を強調した画像(以下、深層血管強調画像という)になる。画像生成部512は、生成した深層血管強調画像を表示制御部66に入力することにより、モニタ18に表示する。
上記深層血管強調観察モードにおいては、R1画像における第1R狭帯域光506によって撮像した画像成分と、R2画像における第2R狭帯域光507を用いて観察対象を撮像した画像成分にローリングシャッタ歪みがあると、変化量算出部511が算出する変化量の算出精度が低下する。変化量の算出精度が低い場合、例えば、深層血管強調画像において、深層血管の強調が弱まって、深層血管の視認性が低下する。しかし、R1画像においては、少なくとも第1R狭帯域光506によって撮像した画像成分にローリングシャッタ歪みはほぼなく、かつ、R2画像においては、少なくとも第2R狭帯域光507を用いて観察対象を撮像した画像成分にローリングシャッタ歪みがほぼない。したがって、本実施形態の深層血管強調観察モードにおいては正確な変化量を算出することができる。その結果、深層血管強調画像においては、深層血管を明瞭に強調することができる。
なお、上記第5実施形態のように、内視鏡システム10に深層血管強調観察モードを設ける際には、プロセッサ装置16に静止度算出部521を設けることが好ましい(図29参照)。静止度算出部521は、第2実施形態から第4実施形態の各静止度算出部と同様の静止度を算出する。但し、本実施形態においては、静止度算出部521は、G画像またはB画像を用いて静止度を算出する。本実施形態におけるG画像及びB画像は、ローリングシャッタ歪みがあるため、第1実施形態から第4実施形態のG画像またはB画像よりも、細かい血管等の像が写りにくくなっている。このため、本実施形態においてはG画像またはB画像を用いて正確な静止度を算出可能である。
静止度算出部521は、第4実施形態の静止度算出部421と同様に、算出した静止度を画像処理部61に入力する。画像処理部61では、変化量算出部511が変化量を算出する際に、静止度を用いてR1画像とR2画像の位置合わせをする。これにより、変化量算出部511は、より正確に変化量を算出することができる。その結果、深層血管強調画像においては、より明瞭に深層血管を強調することができるので、深層血管の視認性が向上する。
上記第5実施形態においては、Cy広帯域光509が第1色光であり、Cy広帯域光509を受光するG画素またはB画素が第1色画素である。また、第5実施形態においては、第1R狭帯域光506及び第2R狭帯域光507が第2色光であり、これらの反射光等を受光するR画素が第2色画素である。したがって、第1実施形態から第4実施形態とは異なり、第5実施形態においては第2色光が赤色光であり、かつ、第1色光は赤色光よりも短波長帯域の光である。
なお、上記第3実施形態から第5実施形態の各観察モードにおいてはいずれも、光源制御部22が、イメージセンサ48の蓄積期間ごとに照明光の波長帯域または分光スペクトルを変更し、これら複数の撮像フレームにおいて取得した複数の撮像画像を用いた演算(以下、マルチフレーム演算という)をし、かつ、これら複数の撮像フレームにおいて取得した複数の撮像画像を用いて観察画像(以下、マルチフレーム観察画像という)を生成する。上記第3実施形態から第5実施形態から分かる通り、マルチフレーム演算をする場合、または、マルチフレーム観察画像を生成する場合には、静止度算出部を設け、静止度算出部が算出した静止度を用いて、マルチフレーム演算またはマルチフレーム観察画像の生成に使用する撮像画像の位置合わせをすることが好ましい。
また、上記第3実施形態から第5実施形態においては、複数の読出期間において取得した信号を用いて生成した複数の撮像画像を用いて、1つのマルチフレーム観察画像を静止しているが、複数の読出期間においてそれぞれ取得する複数の信号を用いて1つのマルチフレーム観察画像を生成することができる。例えば、画像処理部61が画像取得部54の機能を有する場合、または、画像取得部54が画像処理部61の機能を有する場合は、複数の読出期間においてそれぞれ取得する複数の信号を用いて1つのマルチフレーム観察画像を生成することになる。
また、上記第3実施形態から第5実施形態の通り、マルチフレーム演算をするシステムまたはマルチフレーム観察画像を生成するシステムにおいて静止度算出部を設ける場合には、静止度算出部は、第1色画素から得た信号、または、第1色画素から得た信号を用いて生成した撮像画像を用いて静止度を算出することが好ましい。第1色画素から得た信号、または、第1色画素から得た信号を用いて生成した撮像画像を用いれば、静止度を正確に算出できるからである。
なお、第1実施形態から第5実施形態の各観察モードは、内視鏡システム10に任意に組み合わせて設けることができる。
上記第1実施形態から第5実施形態においては、撮像制御部23は、いわゆるプログレッシブ方式でイメージセンサ48の画素から信号を読み出すが、いわゆるインタレース方式でイメージセンサ48の画素から信号を読み出しても良い。この場合、撮像制御部53は、1画素行おきに信号の読み出し及びリセットを行う。この場合、イメージセンサ48の各画素は、R画素(第1色画素)を含む画素行の集合体である第1画素群と、R画素(第1色画素)を含まない画素行の集合体である第2画素群と、を構成する。すなわち、インタレース方式で読み出しを行う場合には、第1画素群と第2画素群の各画素群ごとに信号の読み出し及びリセットを行う。そして、第1画素群または第2画素群が含む色ごとに、撮像画像を取得する。
例えば、第1実施形態の通常観察モードの場合、図30に示すように、画素行ごとの読み出しを、奇数行の読み出しと偶数行の読み出しとに分けて、順次読み出す。各画素群の信号の読み出し及びリセットはローリングシャッタ方式である。また、各画素群なかでは、画素行の番号が小さい順に順次信号の読み出し及びリセットを行う。上記のように、インタレース方式で読み出しを行う場合、第1画素群のR画素の信号を用いて形成するR画像と、第1画素群のG画像の信号を用いて形成するG画像(以下、区別のためGr画像という)と、第2画素群のB画素の信号を用いて形成するB画像と、第2画素群のG画素の信号を用いて形成するG画像(以下、区別のためGb画像という)と、の4種類の撮像画像を取得することになる。このため、図31に示すように、画像処理部61は、まずGr画像とGb画像を用いて、上記第1実施形態と同様のG画像を生成し、その後、このG画像と、B画像及びR画像とを用いて通常観察画像を生成する。なお、第2実施形態から第5実施形態の各観察モードにおいても、第1実施形態の通常観察モードと同様にインタレース方式で信号の読み出しをすることができる。
第1実施形態から第5実施形態においては、イメージセンサ48はいわゆる原色系のカラーセンサであるが、シアン、マゼンタ、イエロー、及びグリーン等の補色系のカラーフィルタを用いた補色系カラーセンサも使用することができる。イメージセンサ48を補色系のカラーセンサを使用する場合には、照明光が含む第1色光及び第2色光の成分を第1実施形態から第5実施形態のように制御すれば良い。また、補色系のカラーセンサから取得する補色画像は、第1実施形態から第5実施形態のようにRGB各色の画像に変換可能であるから、画像処理等は上記第1実施形態から第5実施形態と同様に行うことができる。
上記第1実施形態から第5実施形態においては、イメージセンサ48の画素配列はいわゆる正方配列であるが、イメージセンサ48の画素配列はいわゆるハニカム配列等、正方配列以外の配列であっても良い。
上記第1実施形態から第5実施形態においては、光源部20が有する光源はLEDであるが、内視鏡システム10は、LEDの代わりに、LD(Laser Diode)等の他の半導体光源を用いても良い。半導体光源と、半導体光源が発光する光を励起光として他の色の光を発光する蛍光体等を組み合わせて用いても良い。キセノンランプ等のランプ光源も光源部20に使用しても良い。また、半導体光源、半導体光源と蛍光体、及び、ランプ光源とともに波長帯域または分光スペクトルを調節する光学フィルタを組み合わせて光源部20の光源を構成しても良い。例えば、白色LEDに光学フィルタを組み合わせて使用することで、第1実施形態から第5実施形態で使用する各色の光を発生することができる。
第1実施形態から第5実施形態においては、イメージセンサ48が設けられた内視鏡12を被検体内に挿入して観察を行う内視鏡システムにおいて本発明を実施しているが、カプセル内視鏡システムにおいても本発明は好適である。図32に示すように、例えば、カプセル内視鏡システムにおいては、カプセル内視鏡700と、プロセッサ装置(図示しない)とを少なくとも有する。
カプセル内視鏡700は、光源部702と制御部703と、イメージセンサ704と、画像処理部706と、送受信アンテナ708と、を備えている。光源部702は、光源部20に対応する。制御部703は、光源制御部22及び制御部52と同様に機能する。また、制御部703は、送受信アンテナ708を用いて、カプセル内視鏡システムのプロセッサ装置と無線を使用して通信可能である。カプセル内視鏡システムのプロセッサ装置は、上記各実施形態のプロセッサ装置16とほぼ同様であるが、画像取得部54及び画像処理部61に対応する画像処理部706はカプセル内視鏡700に設けられ、観察画像は、送受信アンテナ708を介してプロセッサ装置に送信される。イメージセンサ704はイメージセンサ48と同様である。