JP2018012666A - 卵巣明細胞腺がん治療薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】卵巣がんの中でも予後が悪いとされる卵巣明細胞腺がんの有効な治療薬の提供。
【解決手段】MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤とを組み合わせてなる卵巣明細胞腺がん治療薬。
【選択図】なし

Description

本発明は、卵巣明細胞腺がん治療薬に関する。
卵巣がんは、近年増加傾向にあり、その中でも卵巣明細胞腺がんは40歳代から急に増え、発生頻度も上昇傾向にある。卵巣がんは、組織型で、漿液性、粘液性、類内膜、明細胞、未分化型、混合型に分類されるが、組織型に着目した治療法は行われておらず、化学療法のレジメンも共通である。分子標的薬で現在卵巣がんで適応拡大されているベバシズマブにおいても、組織型による使い分けは行われていない。また、欧米では約60%が漿液性腺がんで、明細胞腺がんは5%前後であることから、臨床試験や前臨床試験のいずれにおいても、卵巣がん研究の圧倒的多数を漿液性腺がんが占めているのが現状である。明細胞腺がんは、日本人に特に多いという特徴があり、臨床試験においても日本が中心で行われてきたものが多い。しかしながら、卵巣明細胞腺がんの治療戦略を変えるだけの治療法は未だに確立されていないのが現状である。がん抑制遺伝子p53がほぼ全例で変異を来たしている卵巣漿液性腺がんと子宮内膜症由来とされている卵巣明細胞腺がんでは、発がん機序が全く異なると考えられており、事実、これまでのゲノム解析結果や遺伝子変異プロファイルを比較してみても、共通性は極めて低い。以上の背景より、卵巣明細胞腺がんについては、臨床検体を入手し、その生物学的特性を調べるうえで、日本に大きなアドバンテージがあり、臨床検体から得られた生物学的特性に裏打ちされた新規の分子標的治療法を開発していくことは、個別化治療に直結するところであり、日本の製薬企業の関心も高くなっている。
卵巣明細胞腺がんの治療手段としては、まず手術で除去することが重要であるが、抗がん剤が効きにくいため予後が悪いという特徴がある。一般に卵巣がんの治療には、シスプラチンやカルボプラチンが標準的に用いられるが、卵巣明細胞腺がんの多くはプラチナ製剤に抵抗性があり、再発しやすい要因となっている。上述の通り、化学療法に低感受性の卵巣明細胞腺がんにおいては、既存の化学療法のみでは再発例の予後は極めて不良であり、新規の治療法の開発が喫緊の課題である。
がん抑制遺伝子として知られるp53は、ユビキチン−プロテアソーム誘発分解によるMDM2との結合を介して不活性化される。またp53は、p53がMDM2から遊離されると活性化する(非特許文献1)。従って、p53−MDM2結合の阻害は、抗がん剤のターゲットとして注目されている。しかし、卵巣がんについてみると、漿液性卵巣がんはp53の変異が96%に見られるものの、明細胞腺がんではp53の変異は10%未満であることが知られている(非特許文献2、3)。変異によって失われた機能を回復させることは困難であり、多くの他のがん腫と同様に、漿液性卵巣がんにおいて、p53機能を活用した遺伝子治療法は行われていない。しかしながら、p53の変異率が低いことと、p53ががん抑制遺伝子としての機能を保持していることとは別に考える必要がある。すなわち、上記の通り、p53はMDM2との結合により不活化されているため、MDM2が発現上昇などにより活性化している場合、p53の分解が進み、p53に変異がないにもかかわらず、機能できるp53タンパクが存在しない(不活化している)という状態が生じうる。p53に変異はないものの、MDM2による分解によって失活しているがんにおいては、MDM2−p53結合が分子標的治療のターゲットとなりうる。
一方、卵巣明細胞腺がんでは、PI3K経路の遺伝子であるPIK3CAの遺伝子変異率が高く、PI3K/AKTとその下流にあるmTORが分子標的治療のターゲットとして注目されている(非特許文献4、5)。実際にmTOR経路の阻害剤は、卵巣明細胞腺がんで抗腫瘍効果を示している(非特許文献4)。mTOR阻害剤は腎細胞がんをはじめとしていくつかの癌腫で臨床応用されているものの、単剤での使用にとどまっており、増殖抑制効果は示すものの、細胞死の誘導効果は低く、腫瘍を縮小させる効果は乏しい。従って、卵巣明細胞腺がんを含めて、PI3K/mTOR経路は活性化している頻度は高いが、実際にどのようにがん細胞を死に至らしめるのか、腫瘍を縮小させるのかについての治療ストラテジーは未解明の状況が続いてきた。
Wade M, Li YC, Wahl GM.MDM2, MDMX and p53 in oncogenesis and cancer therapy. PMID 23303139 or [21] Pei D, Zhang Y, Zheng J. Regulation of p53: a collaboration between Mdm2 and Mdmx. Oncotarget 2012; 3: 228-235. Cancer Genome Atlas Research Network. Integrated genomic analyses of ovarian carcinoma. Nature 2011; 474: 609-615. Kuo KT, Mao TL, Jones S, Veras E, Ayhan A, Wang TL, Glas R, Slamon D, Velculescu VE, Kuman RJ, Shih IeM. Frequent activating mutations of PIK3CA in ovarian clear cell carcinoma. Am J Pathol 2009; 174: 1597-160. Kashiyama T, Oda K, Ikeda Y, Shiose Y, Hirota Y, Inaba K, , Makii C, Kurikawa R, Miyasaka A, Koso T, Fukuda T, Tanikawa M, Shoji K, et al. Antitumor activity and induction of TP53-dependent apoptosis toward ovarian clear cell adenocarcinoma by the dual PI3K/mTOR inhibitor DS-7423. PLoS One 2014; 9:e87220 Okamoto A, Glasspool RM, Mabuchi S, Matsumura N, Nomura H, Itamochi H, Takano M, Takano T, Susumu N, Aoki D, Konishi I, Covens A, Ledermann J, et al. Gynecologic Cancer InterGroup (GCIG) consensus review for clear cell carcinoma of the ovary. Int J Gynecol Cancer 2014; 24: S20-25.
しかし、卵巣明細胞腺がんはp53の異常が少ないなど卵巣がんの中でも特殊であり、シスプラチン抵抗性でもあり、また欧米で頻度が低いことから、治療標的分子の解明が未だに十分解明されておらず、どのような阻害剤をどのように組み合わせればよいのかは未だ明らかにされていない。
従って、本発明の課題は、卵巣がんの中でも予後が悪いとされる卵巣明細胞腺がんにおいて、新規の治療標的分子を明らかとし、有効な治療薬を提供することにある。
そこで本発明者は、卵巣明細胞腺がんにおける臨床検体を用いた発現解析により、卵巣明細胞腺がんでは、他の組織型や正常組織に比べて有意にMDM2高発現例が多いこと、さらにはMDM2高発現例では有意に予後不良であること、および多変量解析により、卵巣明細胞腺がんでMDM2高発現が独立予後不良因子であることを見出した。しかも、MDM2高発現例ではいずれもp53変異は陰性であり、卵巣明細胞腺がんにおいて、p53に変異は認めないものの、p53機能がMDM2高発現によって抑制されている機序が存在することを見出した。すなわち、一つ目の知見として、MDM2高発現かつp53変異陰性が卵巣明細胞腺がんのコンパニオン診断に応用できることを見出した。これにより、MDM2−p53結合を阻害するストラテジー(MDM2阻害剤)が卵巣明細胞腺がんにおいて、合理的な治療戦略であることが明らかとなった。
卵巣明細胞腺がんにおけるmTOR経路阻害剤の抗腫瘍効果は上述の通りであるが、細胞死の比率が低いという課題があった。そこで、卵巣明細胞腺がんに対する治療薬を開発すべく種々検討した。p53変異率が低いことから、これまで卵巣明細胞腺がんにおいてp53が関わる経路は治療標的として注目されてこなかったが、本研究の一つ目の上記発見により、MDM2発現上昇とp53変異陰性というコンパニオン診断を活用した治療戦略を候補に考えることが可能となった。MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤とを併用したところ、驚くべきことに、各阻害剤の作用が相乗的に増強され、アポトーシスシグナルの活性化とともに、卵巣明細胞腺がん細胞が次々にアポトーシスを起こすという、既存薬では見られなかった現象を、ヌードマウスモデルで証明し、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤の併用が卵巣明細胞腺がんの治療に有効であることを見出した。
すなわち、本発明は、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤とを組み合わせてなる卵巣明細胞腺がん治療薬を提供するものである。
また、本発明は、卵巣がん患者に由来するがん細胞のMDM2発現量及びp53変異の有無を測定し、MDM2発現量が高く、かつp53変異が陰性であるがん細胞を卵巣明細胞腺がんと判定することを特徴とする卵巣明細胞腺がんの判定方法を提供するものである。
本発明の判定方法によれば、卵巣がんのうちMDM2によってp53が失活している卵巣明細胞腺がんが明確に診断できる。
MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤とを併用すれば、卵巣がんの中でも予後が悪く、抗がん剤抵抗性の高い卵巣明細胞腺がんの増殖が相乗的に抑制される。
卵巣明細胞腺がん(CCC)、卵巣漿液性腺がん(CS)及び正常組織(Normal)のMDM2発現量の比較を示す。 卵巣明細胞腺がんにおけるMDM2発現量が高い群とMDM2発現量が低い群の予後(生存率)の比較を示す。 ヒト卵巣明細胞腺がん細胞株に対する増殖抑制作用を示す。図4〜図11中、RG又はRG7112は、RG7112(MDM2阻害剤)を示す。DS7423又はDSはDS7423(PI3K/mTOR同時阻害剤)を示す。 ヒト卵巣明細胞腺がん細胞株におけるRG7112とDS7423によるp53及びアポトーシスレベルに対する作用を示す。 ヒト卵巣明細胞腺がん細胞株におけるRG7112とDS7423によるsub−G1に対する作用を示す。 ヒト卵巣明細胞腺がん細胞株におけるRG7112とDS7423によるアネキシンVに対する作用を示す。 ヒト卵巣明細胞腺がん(RMA1株)に対するRG7112とDS7423による増殖抑制作用を示す(in vivo)。 ヒト卵巣明細胞腺がん(OVISE株)に対するRG7112とDS7423による増殖抑制作用を示す(in vivo)。 ヒト卵巣明細胞腺がんにおけるRG7112とDS7423によるアポトーシス誘導作用を示す(in vivo)。 ヒト卵巣明細胞腺がんにおけるRG7112とDS7423によるDNA合成に対する作用を示す(in vivo)。 ヒト卵巣明細胞腺がんにおけるRG7112とDS7423による血管新生に対する作用を示す(in vivo)。
本発明の卵巣明細胞腺がんの判定方法は、卵巣がん患者に由来するがん細胞のMDM2発現量及びp53変異の有無を測定し、MDM2発現量が高く、かつp53変異が陰性であるがん細胞を卵巣明細胞腺がんと判定することを特徴とする。
判定の対象となる細胞は、卵巣がん患者に由来するがん細胞である。卵巣がん細胞は、患者の卵巣から手術による摘出や生検法により採取することができる。がん細胞が存在すると考えられる卵巣の一部の組織を採取して用いることができる。原発の卵巣腫瘍が摘出困難な場合には、転移・播種巣のみであっても、その生検組織を用いることで評価が可能である。
対象組織のMDM2発現量の測定は、例えば免疫組織染色法、RNA定量法、マイクロアレイ法、染色体コピー数判定法等により行うことができる。例えば、免疫組織染色法は、手術・生検検体等より得られたパラフィン切片を用いて市販の抗MDM2抗体により発現強度を判定できる。一般にスコア化することが可能であり(HER2の過剰発現のように)、定量化が可能である。
対象組織のp53変異の測定は、例えば免疫組織染色法、腫瘍からのゲノムDNAを用いたPCR+Direct Sequence法、等により行うことができる。例えば、免疫組織染色法は、手術・生検検体等より得られたパラフィン切片を用いて市販の抗p53抗体により発現強度を判定できる。p53の免疫組織染色は一般病理診断でも卵巣がんを含めて広く行われており、p53変異の有無を予測することができる。例えば、p53に変異があると、MDM2による分解も行われないため、p53タンパクが核に蓄積し(過剰発現)、変異陽性と判定できる。
MDM2の発現量は、正常組織中のMDM2発現量や卵巣漿液性腺がん組織中のMDM2発現量と対比して高い場合に、MDM2の発現量が高いと判断すればよい。すなわち、予め正常組織や卵巣漿液性腺がん組織中のMDM2発現量を測定しておき、その値と対比すればよい。摘出腫瘍検体では、正常組織を通常含んでいるため、同一症例において検討することができる。
またp53変異率は、卵巣明細胞腺がんでは、他の卵巣がんに比べて有意に低い。すなわち、対象組織が卵巣明細胞腺がんの場合には、p53変異は通常陰性になる。陽性か陰性かは、p53の過剰発現により変異を判定できる。まれに、変異および/あるいは染色体欠失により、p53発現が完全に消失することがあるが、その場合のp53変異判定もすでに病理診断上確立されている。他の卵巣がん、例えば卵巣漿液性腺がんのp53変異と判定されたものをポジティブコントロールとして用いることができる。
対象組織のMDM2発現量が正常組織や漿液性腺がんのMDM2発現量よりも高く、かつp53変異性が陰性であれば、その対象組織は卵巣明細胞腺がんであると判定できる。
また、卵巣明細胞腺がん組織のMDM2発現量をさらに検討した結果、MDM2発現量が高い群はMDM2発現量が低い群に比べて、生存率が有意に低く、予後が悪いことも判明した。従って、卵巣明細胞腺がん組織のMDM2発現量を測定し、予め測定しておいて卵巣明細胞腺がん組織におけるMDM2発現量と対比し、MDM2発現量が高ければ予後が悪い、MDM2発現量が低ければ予後が良好であると判定できる。
本発明の卵巣明細胞腺がん治療薬の有効成分は、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤である。
MDM2は、p53を制御する主要なユビキチンリガーゼであり、p53をプロテアソーム依存性の分解へ導くタンパクである。がん細胞でみられるMDM2の発現増加の異常は、p53発現を著しく低下させ、持続的ながん細胞の増殖を可能にすることが知られている。従って、MDM2阻害剤は、抗がん剤として有用であると考えられている。しかし、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤との併用が、卵巣明細胞腺がんに対してどのような作用を示すかは知られていない。また、卵巣がんの中で、MDM2が高発現を示す組織型が卵巣明細胞腺がんであることも知られていない。
MDM2阻害剤としては、以下に示す化合物が挙げられる。
これらの化合物は、既知であり、市販品を入手できる。
がん細胞では、細胞死シグナルの機能喪失とともに生存シグナルの亢進が認められ、その中心的なシグナル伝達経路としてPI3K/mTOR経路が知られており、このmTOR経路はがんの生存、分化、増殖に重要な役割を担っている。従って、mTOR経路阻害剤は、抗がん剤として有用であると考えられている。しかし、mTOR経路阻害剤とMDM2阻害剤との併用が卵巣明細胞腺がんに対してどのような作用を示すかは知られていない。
mTOR経路阻害剤としては、AKT阻害剤、mTORC1/mTORC2阻害剤、PI3K阻害剤、mTOR阻害剤及びPI3K/mTOR同時阻害剤から選ばれる阻害剤が挙げられ、具体的には、以下に示す化合物が挙げられる。
これらの化合物は、既知であり、容易に入手できる。
後記実施例に示すように、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤とを併用すれば、MDM2を高発現し、p53の異常が少ない等特殊ながんである卵巣明細胞腺がんの増殖を相乗的に抑制する。また、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤の併用は、p53及び前駆アポトーシス蛋白を顕著に誘導し、アポトーシスを顕著に誘導する。従って、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤との組み合わせは、卵巣明細胞腺がん治療薬として有用である。
本発明の治療薬においては、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤とを組み合わせて使用すればよく、例えば次の形態が挙げられる。
(A)MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤とを含有する医薬組成物。
(B)MDM2阻害剤を含有する医薬組成物と、mTOR経路阻害剤を含有する医薬組成物を、別々に投与するための形態。
ここで、(B)の形態の場合、各医薬組成物を同時に投与するか、又は適宜別々に投与してもよい。また、(B)の形態の場合、各医薬組成物を単一包装中に含むキット製剤として提供することもできる。
MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤とは、それぞれの薬剤を単独で投与する形態と同じ形態で投与するのが好ましい。また、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤との投与量は、特に限定されるものではないが、1回あたりの投与量の質量比で1:500〜500:1が好ましく、1:400〜400:1がより好ましく、1:300〜300:1がさらに好ましい。
本発明の医薬の投与経路は特に限定されず、経口投与又は非経口投与のいずれであってもよい。前記(B)に係る形態においては、一方を経口投与製剤とし、他方を非経口投与製剤とすることもできる。経口投与製剤としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等が挙げられる。非経口投与製剤としては、例えば、注射剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、皮膚外用剤、点眼剤、点鼻剤等が挙げられる。
経口投与製剤、非経口投与製剤は、公知の製剤添加物を用いて、例えば、第15改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に基づいて製造することができる。
本発明の医薬の投与量は特に限定されず、患者の年齢、体重、症状、投与形態、投与回数等の種々の条件に応じて適宜投与量を増減することができるが、MDM2阻害剤は1回あたり0.1mg/body〜2,000mg/bodyまたは0.1mg/m2〜2,000mg/m2を1日〜28日間に1〜7回投与することができる。一方、mTOR経路阻害剤は1回あたり0.1mg/body〜2,000mg/bodyまたは0.1mg/m2〜2,000mg/m2を1日〜28日間に1〜7回投与することができる。
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
卵巣明細胞腺がん(CCC)の臨床検体75例、卵巣漿液性腺がんの臨床検体16例(SC)と13種類の正常組織(Normal)からRNAを抽出し、マイクロアレイにて発現を調べた。その結果、図1に示すように、卵巣明細胞腺がんでMDM2高発現例が多く、卵巣漿液性腺がんや正常組織と比較して有意に上昇していることが明らかとなった。さらに、卵巣明細胞腺がんの中でMDM2の発現を検討したところ、MDM2高発現は有意に無増悪生存期間が短く、有意に予後不良であった(図2)。
卵巣明細胞腺がんの臨床検体における単変量、多変量解析結果を表1に示す。MDM2高発現は単変量解析に加えて、多変量解析でも独立した予後不良因子であることが明らかとなった。
実施例2
ヒト卵巣明細胞腺がん由来細胞株(OVISE、RMGI、OVTOKO及びJHOC7)を用いて、MDM2阻害剤であるRG7112とPI3K/mTOR阻害剤であるDS7423の細胞増殖抑制作用を検討した。
細胞増殖はテトラゾリウム塩WST−8(同仁堂、日本国東京都港区)をベースにした細胞数測定キットを用いて測定した(MTTアッセイとして知られる)。簡潔に言うと、細胞を96穴プレートに2,000細胞/wellで撒き、24時間後、RG7112(OVISEおよびRMG1に対しては0.625μM、OVTOKOおよびJHOC7に対しては1.25μM)の存在下または非存在下でDS7423を0〜3,000nMで添加し、細胞を72時間インキュベートした。細胞増殖数はマイクロプレートリーダー(バイオテック:米国バーモント州ウィノースキー)を用いて450nmの吸光度を測定することにより数えた。細胞増殖はDMSO処理した細胞培養と比較して正規化した。相乗効果はChou−Talalay法の併用係数(CI)を計算することによって評価した。全数値は0.725以下であったので、相乗効果があったことを示す(CI<1であれば、相乗効果、CI=1は相加効果、CI>1は拮抗作用を表す。)。
その結果を図3に示す。図3から明らかなように、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤を併用すると、それぞれ単独の場合に比べて細胞増殖抑制作用を示すIC50が顕著に低下し、相乗的に強力な細胞増殖抑制作用を示すことが明らかになった。
実施例3
ヒト卵巣明細胞腺がん細胞株(OVTOKO、OVISE)を用いて、MDM2阻害剤であるRG7112とPI3K/mTOR同時阻害剤であるDS7423のp53とアポトーシスに及ぼす作用を検討した。
ウェスタンブロット法:細胞をRG7112(2.5〜5μM)および/またはDS7423(156nM)で処理し、その後細胞よりタンパクを抽出した。抽出タンパクを用いて、p53、ホスホ−p53(ser46)、ホスホ−p53(ser15)、p21、PUMA、Cleaved−PARP(PARPタンパクが断片化された状態)(セルシグナリングテクノロジー、米国マサチューセッツ州ダンバース)およびアクチン(シグマ・アルドリッチ、米国ミズーリ州セントルイス)に特異的な抗体で解析を行った。
細胞周期はフローサイトメトリ法によって分析した。細胞(5×10)を60mmの培養皿に撒き、RG7112(2.5μM)および/またはDS7423(156nM)で48時間処理した。浮遊・付着した細胞をトリプシン処理によって集め、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、冷70%エタノール中に再懸濁し、4℃で終夜インキュベートした。次に細胞をPBSでさらに2回洗浄し、0.25mg/mL RNase A(シグマ・アルドリッチ)で30分間37℃で処理し、50μg/mL ヨウ化プロピジウム(シグマ・アルドリッチ)で染色し、FACS Calibur HG(ベクトン・ディッキンソン・アンド・カンパニー)で分析した。データをCELL Quest pro ver.3.1.(ベクトン・ディッキンソン・アンド・カンパニー)により分析した。
アポトーシスの検出は、アネキシンVアッセイによって行った:細胞(5×10)を60mmプレートに24時間播種し、DMSOまたはRG7112のいずれかに72時間曝露した。細胞はその後トリプシン処理し、二回洗浄し、製造者の指示書に従ってアネキシンV−フルオレシンイソチオシアネートおよびヨウ化プロピジウムで二倍染色した。実験は3回繰り返した。
その結果を図4〜6に示す。図4からMDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤の併用により、p53レベル及びアポトーシス蛋白であるPUMAやPARP切断(Cleaved PARP)のレベルが、それら単独使用の場合に比べて顕著に増加した。図5から、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤の併用により、sub−G1が顕著に増加し、アポトーシス誘導が促進された。また、図6から、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤の併用により、アネキシンVが相乗的に増加しており、アポトーシス誘導が相乗的に増強されたことがわかる。
実施例4
ヒト卵巣明細胞腺がんに対するMDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤の併用による効果をin vivoで検討した。
ヌードマウス中の腫瘍キセノグラフト: クレア・ジャパン社(日本国東京都目黒区)から病原菌のないメスヌードマウス(BALB/cAJc1−nu/nu)を購入した。5〜6週齢において、マウス脇腹に200μLPBS中の10RMG−IまたはOVISE細胞の皮下注射を行った。腫瘍が非常に大きくなった後に収穫し、3mm大にすりつぶし、他のマウスの右脇腹に皮下移植を行った。腫瘍が直径5mmに成長した後、マウスを無作為に5〜6匹の群二つに分けた。一方の群は一日経口注射0.5w/v%メチルセルロース400(和光純薬工業、日本国大阪府大阪市)に懸濁したRG7112および/またはDS7423(3mg/kg)を(50mg/kg)行った。他方はメチルセルロースの同用量を投与した。腫瘍サイズはデジタル測定器を用いて毎週3回測定し、腫瘍体積を式(長軸×短軸)/2に従って予測した。マウスは20日間の処置の後人道的に殺処分し、腫瘍は免疫ブロット分析のために4%パラホルムアルデヒド内で保存した。
TUNELアッセイ:腫瘍部は4%パラホルムアルデヒド中で4℃で10分間固定し、1%過酸化水素水に室温で30分間浸漬して内因性ペルオキシダーゼを不活化し、ブロッキングワン(ナカライテスク、日本国京都府)で30分間室温でブロッキング処理した。TUNELアッセイはPromega DeadENDTM Fluorometric TUNEL System(Promega)を用いて製造者の指示書に従って行った。
免疫組織化学:CD31を免疫染色するために、腫瘍部を4%パラホルムアルデヒド水に4℃で10分間固定し、1%過酸化水素水に室温で30分間浸漬して内因性のペルオキシダーゼを不活化し、ブロッキングワン(ナカライテスク、日本国京都府)で30分間室温でブロッキング処理した。腫瘍部は次に4℃で終夜1:500抗CD31(PECAM−1;BDバイオサイエンス、ニュージャージー州フランクリンレイク)で調査し、トリス緩衝生理食塩水中で洗浄し、1:400ビオチニル化ウサギ抗ラット(DAKO)で、そして室温でLSAB(DAKO)でラベル化した。最後に、腫瘍部は3,3−ジアミノベンジジン(DAKO)およびヘマトキシリン(和光)で染色した。
微小血管新生の定量化:収穫した皮下腫瘍をアンチマウスCD31(PECAM−1;BDバイオサイエンス)で免疫染色した。染色された微小血管の数をそれぞれの腫瘍で4つの無作為な領域において400倍で計測した。
その結果を図7〜図11に示す。図7及び図8から、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤との併用は、それぞれ単独投与の場合に比べて相乗的にヒト卵巣明細胞腺がんの増殖を抑制した。また、図9〜11から、MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤の併用は、それぞれ単独投与の場合に比べて、相乗的にアポトーシスを誘導(TUNEL細胞増加)し、DNA合成を抑制(BrdUの低下)し、血管新生を抑制(CD31の低下)した。

Claims (5)

  1. MDM2阻害剤とmTOR経路阻害剤とを組み合わせてなる卵巣明細胞腺がん治療薬。
  2. MDM2阻害剤が、APR−246、NSC207895、MI−773、Nutlin−3、Nutlin−3a、Nutlin−3b、YH239−EE、RG7112及びDS3132bから選ばれる薬物である請求項1記載の卵巣明細胞腺がん治療薬。
  3. mTOR経路阻害剤が、ラパマイシン、エベロリムス、テムシロリムス、DS7423、GDC0980、PF−04691502、PF−05212384、SF1126、XL765、SAR245409、GSK2126458、NVP−BEZ235、NVP−BKM120及びイデラリシブから選ばれる薬物である請求項1又は2記載の卵巣明細胞腺がん治療薬。
  4. 卵巣がん患者に由来するがん細胞のMDM2発現量及びp53変異の有無を測定し、MDM2発現量が高く、かつp53変異が陰性であるがん細胞を卵巣明細胞腺がんと判定することを特徴とする卵巣明細胞腺がんの判定方法。
  5. 卵巣明細胞腺がんにおけるMDM2発現量を対比することを特徴とする卵巣明細胞腺がんの予後の判定方法。
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